古村治彦です。

 2026年2月28日にアメリカとイスラエルがイランに対して大規模な軍事攻撃を行った。イラン政府や軍の指導者層の多くが死亡した。最高指導者であるアリ・ハメネイ師も自宅に攻撃を受けて死亡した。その後、イランがイスラエルとペルシア湾岸地域にあるアメリカ軍基地を中心にして報復攻撃を実施している。アメリカのドナルド・トランプ大統領は、攻撃実施後に、イラン国民に対して、現政府に対する蜂起を呼び掛けたがそのようなことは起きなかった。また、短期間で指導者たちを殺害して、イラン政府の機能不全を引き起こそうとしたが、そのようなことも起きなかった。イラン革命防衛隊はホルムズ海峡封鎖を通告し、民間のタンカーの航行できない状況になり、世界経済に悪影響を及ぼしている。アメリカ軍はタンカーの護衛を拒否している。イランから攻撃を受ける可能性が高いということを理由に挙げている。先制攻撃でイランを無力化するというアメリカとイスラエルの目論見は完全に外れたことになる。アメリカ制服組トップの統合参謀本部議長のダン・ケイン大将は、イラン攻撃について、リスクが高いという内容の報告書を出し、反対の意向を表明していたが、トランプ大統領は無視して攻撃を実行し、このような状況を引き起こした。責任は挙げて、アメリカ軍最高司令長官(commander-in-chief)であるドナルド・トランプ米大統領にある。

 そして、今回、アメリカをイラン攻撃に引きずり込んだのは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相である。ネタニヤフは自身のスキャンダルを抱え、有罪判決を受けると懲役を科されるということから戦争状態を維持し、選挙に勝ち続ける必要がある。また、イスラエルとしてはイランが弱体化することは望ましい。しかし、イスラエル単独でイランを大規模攻撃することはできない。そのために、これまでイランを攻撃することはできなかった。しかし、そこにトランプ大統領が出現した。「イランを攻撃するほど愚鈍な大統領」の出現はネタニヤフにとって僥倖となった。2025年だけで6回もホワイトハウスを訪問し、そこで、トランプを洗脳に近い形で説得して、イラン攻撃まで漕ぎつけた。

 イランは攻撃で大きな打撃を受けたが、反撃ができないほどの打撃ではなかった。そして、イランは2025年に続いて、軍事攻撃を受けたことで、アメリカとイスラエルからの攻撃は「国家存亡の危機」と位置付けて、総力を挙げて反撃を行っている。ここは攻撃を仕掛けた側であるアメリカとイスラエルにとって大きな誤算となった。この誤算は世界にとっての大きな不幸である。イスラエルは今回のイラン攻撃を実行したことで、世界からの信頼を失い、反イスラエル感情は高まるだろう。ここで注意すべきは、反ユダヤ感情に走らないことだ。イスラエル、特に現在の指導部、ネタニヤフに対する反感や批判は当然であるが、ユダヤ人全体に対する反感を持つことは間違っている。

 アメリカはウクライナ戦争に置いてウクライナへの支援を続け、同時にイラン戦争では、イスラエルを支援しながら、アメリカ軍を使っての攻撃も実施なければならない。アメリカの国力に一定程度のダメージを与えることになる。今回のイラン攻撃はアメリカにとって国益を損なう、最悪の選択だということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

ベンヤミン・ネタニヤフ首相が今、イラン攻撃を選択した理由な何か(Why Netanyahu Chose to Strike Iran Now

-数十年にわたり戦争の脅威を強調してきたイスラエルの指導者は好機が閉ざされていると悟っている。

ユーセフ・モナイヤー筆

2026年3月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/10/iran-war-us-israel-netanyahu-trump-elections-corruption-trial/

2026年3月1日、アメリカとイスラエルによって爆弾がテヘラン上空に投下された際、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イランとの戦争は「40年間も待ち望んでいた」ことだと語った(war with Iran is something he has “longed to do for 40 years”)。この発言は、なぜ彼が今になってようやくこのような対立を引き起こすことを選んだのかという疑問を提起する。

過去30年間、数年に一度、ネタニヤフは、イランの核兵器取得を阻止する窓(機会、window)が失われつつあると、ほとんど滑稽なほど繰り返し主張してきた。しかし、昨年の夏、いわゆる 12日間の戦争の終わりに、ドナルド・トランプ米大統領は、前例のないアメリカの攻撃によってイランの核開発計画は「全滅(obliterated)」したと述べた。それ以来、テヘランが核兵器の開発に近づいていることを示唆する証拠はまったく見当たらない。

今回、ネタニヤフ首相が窓(機会、window)の一つ、いや、実際には複数の窓が閉ざされつつあると正しく認識していた。しかし、それらの窓はどれもイランの核開発への野心とは関係がなく、むしろイスラエルとアメリカの政治に大きく関係していた。

ネタニヤフ首相は昨年、ホワイトハウスを過去最多の6回訪問した。これほど頻繁にホワイトハウスに訪問した外国首脳はかつて存在しなかった。アメリカとイスラエルの関係自体が特異な歴史を持つ中で、トランプとネタニヤフの関係は、その親密さにおいて際立っている。

その理由については様々な憶測が飛び交う。ネタニヤフ首相の側近とトランプ大統領の側近との個人的な繋がりが原因なのかもしれない。あるいは、クリス・ヴァン・ホーレン連邦上院議員の言葉を借りれば、ネタニヤフ首相は「ついにイランを攻撃するほど愚鈍な大統領を見つけた」のかもしれない(Or, perhaps, as U.S. Sen. Chris Van Hollen put it, Netanyahu “finally found a president stupid enough to attack Iran”)。確かなのは、トランプが歴代大統領の誰よりもネタニヤフ首相のために尽力してきたということだ。

しかし、この2人には期限がある。両国で選挙が行われるため、早ければ今年中にも期限が来るかもしれない。

イスラエルでは秋に選挙が予定されている。これは、ネタニヤフ首相が近年のイスラエル史上最大の安全保障上の惨事、すなわち、2023年10月7日にハマス主導の攻撃が発生して以来、初めての選挙となる。この攻撃では約1200人が死亡した。イスラエル国民は、この失態について彼に責任を問う機会をまだ得ていない。(ネタニヤフ自身は責任を認めていない。)また、今回の選挙は、イスラエルでアラブ系政党が連合を組む数期ぶりの選挙となる。いわゆる「統一リスト(Joint List)」という政党連合は、イスラエル政権にとって連立の計算を複雑化させる可能性がある。

ネタニヤフの勝利の可能性は、まだ不透明だ。彼は近年の選挙で大規模な連立政権の構築に苦戦しているが、その一因は法的な問題にある。現在進行中の汚職裁判で、彼は数々の容疑に直面しており、有罪判決を受けた場合、数年の懲役刑を科される可能性がある。ネタニヤフは、政権維持を目指し、イランとの戦争をめぐるイスラエル国民の結集を図るとみられる。イスラエル民主政治体制研究所の調査によると、ユダヤ系イスラエル人の圧倒的多数が戦争を支持しているのに対し、パレスティナ系イスラエル人ではわずか4分の1しか支持していない。

一方、トランプはアメリカで中間選挙を控えている。中間選挙は現職大統領にとって有利な結果になることは稀であり、世論調査はトランプにとって特に大きな打撃となる可能性を示唆している。大統領の好感度は、明確な撤退計画のない不人気な戦争を開始する前から低かった。ロイター通信とイプソス社の調査によると、イラン戦争を支持するアメリカ人はわずか4分の1に過ぎない。現在共和党が過半数を占める連邦議会に大きな変化が生じれば、イラン問題をはじめとする諸問題に関して、トランプ大統領の選択肢は狭まる可能性がある。

ネタニヤフ首相とトランプ大統領の狙いが、イランとの戦争を、彼らがほぼ野放しで活動できる時期と捉えることだとすれば、選挙上の理由だけでも、最も安全な賭けは2026年の春から夏だったと言えるだろう。

しかし、もう一つの窓も閉じつつある。それは世論の窓だ。イスラエルはアメリカ国民を失いつつある。先月のギャラップ社の世論調査によると、初めて、イスラエルよりもパレスティナ人に同情するアメリカ人が増えている。この傾向はガザ地区虐殺のずっと前から始まっていたが、虐殺によってさらに加速した。イラン戦争によって世論はさらに低下する可能性が非常に高いということだ。重要なのは、イスラエルが共和党支持者、特に若い世代を失い始めていることだ。過去20年間、アメリカの右派はイスラエルへの支持の基盤となってきた。

第三の窓は、戦争の性質の変化に関係している。イスラエルとイランの間では、秘密作戦や代理戦争が長らく一般的だったが、近年、通常戦争の力学が変化している。イスラエルとイランは2024年に初めて直接攻撃を相互に行った。イスラエルはシリアのイラン領事館を攻撃し、テヘランではハマス幹部を殺害した。イランはこれに対し報復した。両国は昨年も12日間の戦争で交戦した。

イスラエルとイラン両国はこれらの攻撃を通じて、自らの脆弱性について教訓を得た。イランはますます空襲にさらされるようになった。イスラエルも、特定の組み合わせの弾道ミサイルで攻撃された場合、イランの攻撃に対して脆弱だった。重要なのは、アメリカとイスラエルのミサイル迎撃ミサイルは、撃墜を狙ったイランの弾道ミサイルよりもはるかに高価で、供給量も少なく、製造にも時間がかかった。

これはイスラエル、アメリカ、そして地域における同盟国にとって不利なバランスを生み出した。イランとの紛争が長期化すれば、長期的には受け入れがたいコストにつながるだろう。アメリカとイスラエルの迎撃ミサイル生産とイランの弾道ミサイル生産がそれぞれ異なるスケジュールで進められる中で、12日間の戦争でイスラエルが得た戦略的利益は、一時的なものに過ぎなかった。

イラン戦争の原動力(driving force)は、そして今もなお、ネタニヤフ首相だった。複数の機会(窓)が同時に閉ざされる中で、ネタニヤフ首相は、長年抱いてきたアメリカ軍によるイラン爆撃という夢が実現しないかもしれないという現実を直視していた。次世代のアメリカ人がイスラエルから背を向けるにつれ、ネタニヤフはトランプのような愚か者(a sucker)が再び大統領執務室に座ることはないだろうと考えたのだろう。そうであれば、今しかない。

ネタニヤフ首相は、トランプに対して、新しい宴会場のインテリアデザインを提案するために、1年間で6回もホワイトハウスを訪問したのではない。ネタニヤフはアメリカにイラン戦争という自身の夢を実現させたかったのだ。戦争が早期に終結し、イスラエルに大きな負担がかからなければ、ネタニヤフ首相は投獄を免れるかもしれない。ひょっとすると、イスラエルの総選挙で政権にとどまる可能性もある。

しかしながら、中東地域ははるかに深刻な状況に陥るだろう。その過程でアメリカの利益も損なわれ、そのツケはアメリカ国民が負担することになる。皮肉なことに、ネタニヤフ首相とトランプ大統領による戦争こそが、アメリカ・イスラエル関係に致命的な打撃を与えることになる可能性がある。

※ユーセフ・モナイヤー:パレスティナ系イスラエル市民。ワシントンDCにあるアラブ・センター「パレスティナ・イスラエル」プログラム責任者。Xアカウント:@YousefMunayyer

(貼り付け終わり)

(終わり)

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