古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権下のアメリカに対処することが世界の課題になっている。ドナルド・トランプの自己顕示欲と名誉欲、そして、気まぐれに私たちは振り回されている。アメリカにとっての従順な従属国である日本は、アメリカの国益の為だけに行動している。アメリカ以上に「アメリカ・ファースト」である。高市早苗首相の訪米は手に抱えきれないほどの貢物(みつぎもの)を持ち、喜び勇んで朝貢を行う対米従属・朝貢外交である。私たちが歴史の授業で習った、中国の各王朝への朝貢は、貢物の価値の何十倍ものお土産をいただいて帰ってくるものであったが、現在の対米朝貢外交はお土産などない。

 世界各国で、対トランプにとっての重要なポイントは異なる。しかし、下記論稿を読むと分かるが、共通する点としては、トランプの不確実性に備えることとアメリカ(トランプ)の言いなりにならないことである。それは、自国や地域の利益を追求する途でもある。

 以下の論稿で重要なのは、イスラエルの部分である。この論稿は2025年12月29日に発表されたもので、この段階では、アメリカによるヴェネズエラ攻撃とニコラス・マドゥロ大統領拘束も、イスラエルとアメリカによるイランへの大規模攻撃も全く予想されていなかった(可能性としては議論されていたが)。イスラエルに関しては、トランプがイスラエルへの支援を削減する可能英について言及されている。それを避けるためには、イスラエルがアメリカに見返りを与えるべきだという主張がなされている。しかし、実際には、トランプ大統領はイスラエルと共にイラン攻撃を行うという決断を行った。これは、国際関係論や世界政治の専門家から見て「例外的な」「通常では考えられない」決断であったことを示している。そして、それはまた、トランプと言う人物が原理原則にとらわれない、素人の無手勝流の判断をする人物であることを示している。

 素人の無手勝流が成功を収めることもある。しかし、多くの場合にはやはり失敗に終わる。トランプを戦争に引きずり込んだことで、イスラエル、そして、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「勝利」したということになる。アメリカが中東地域から撤退する、イスラエルに対うる支援を削減するということを阻止して、イラン攻撃に巻き込んだ。そして、トランプはそれにまんまと乗ってしまったということはアメリカにとっての失敗となった。イラン戦争によって世界経済は大きく混乱し、アメリカとイスラエルに対する反感も大きくなっていく。そして、トランプの「騙されやすさ」という最大の欠点が曝露されたことで、日本以外の世界各国はそこを利用して国益の追求を行うだろう。

(貼り付けはじめ)

2026年の世界リーダーのためのトランプへの対処に関する6つの教訓(6 Trump Lessons for Global Leaders in 2026

-『フォーリン・ポリシー』誌コラムニストたちが世界は新しいワシントンにどう対処するかについて考察する。

ゾンユアン・ゾー・リュー、ラジャ・モハン、ジェイムズ・クラブトゥリー、エリザベス・ブラウ、アガテ・デマライス、スティーヴン・A・クック筆

2025年12月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/29/trump-lessons-2026-china-india-europe-middle-east/

年初の恒例として、コラムニストたちに水晶玉(crystal ball)を覗き込み、これからの1年がどうなるかを占ってもらう。

今年は、ドナルド・トランプ米大統領がホワイトハウスに復帰した1年間の教訓を、そして世界の指導者たちが今後これらの教訓をどのように活かしていくのかを、ライターたちに考察してもらった。トランプ政権は、最初の任期よりもはるかに大きな変革をもたらし、世界中に関税を課し、同盟関係を縮小し、敵対国との妥協を模索するなど、アメリカの外交政策を変革した。混乱を極め、予測不能な展開もしばしば見られたが、各国の指導者たちは、より不安定な時代において、ワシントンとの関係をいかに築くべきかを学んでいる。

2026年の世界政治を形作るであろう、トランプ政権2期目からの6つの教訓をご紹介する。-ステファン・タイル副編集長

●中国にとっての教訓:トランプをどう操るか(Lesson for China: How to Play Trump

ゾンユアン・ゾー・リュー(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、外交評議会研究員)

トランプ政権の関税最後通牒に世界の多くが反発する中、中国は抵抗を続け、2025年をほぼ無傷で乗り切った。そこから得られた教訓は単純だが、極めて重要だ。トランプは現在、一期目の任期中よりもはるかに奔放で、予測不可能であり、アメリカ経済を武器として用いることに積極的になっている。しかし、アメリカからの最も厳しい圧力でさえ、曲げられたり、鈍化されたり、時には覆されたりする可能性がある。

特に注目すべき教訓は3つある。一つ目の教訓は、トランプの過剰な脅威は滅多に効果を発揮しない(Trump’s maximalist threats rarely stick)というものだ。注目を集める関税、制裁、ハイテク製品の禁輸措置は、市場の圧力、ロビー活動、あるいは大統領が勝利と呼べる取引を何でも手に入れたいという欲求に屈することが多かった。二つ目の教訓は、中国は貿易の多様化を加速させ、アメリカの圧力を吸収し、弱みを示唆することを避ける余裕が生まれたというものだ。三つ目の教訓は、アメリカのサプライチェインの脆弱性と政治的に敏感な支持層に対する標的型報復は、広範な反撃よりもはるかに効果的であることが証明されたというものだ。

さらに明らかになったのは、中国がトランプ政権最初の貿易戦争で洗練され、アメリカの輸出管理体制を巧みに乗り越えてきた10年近くの経験に基づいて策定された戦略を実行に移したことだ。中国は自国の輸出管理体制を洗練させ、重要鉱物やその他の上流原材料の輸出を制限することで、アメリカに対して戦略を試した。象徴的なものではなく、実効的な手段で実行した。その結果は、中国政府当局が長らく疑念を抱いていたであろう事実を裏付けるものとなった。アメリカのサプライチェインは脆弱だ。価格高騰、メーカーからの苦情、ロビー活動による圧力は、その具体的な証拠となった。トランプ大統領がNVIDIA H200チップの中国への輸出許可を撤回したのは、善意によるものではなく、北京の調整された圧力が功を奏した証拠だ。

アメリカの最新の「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」はこの解釈を裏付けている。アナリストたちは、アメリカが地政学的な闘争を軽視し、中国を主に経済的・技術的な競争相手として位置付けていることを指摘した。この文書は緊張緩和(détente、デタント)を約束しているものではないが、戦場を明確に示している。それは経済と技術の影響力であり、まさに中国が実力を発揮している分野である。

この経験は、もう一つの教訓を確固たるものにした。トランプ政権は中間選挙が近づくにつれ、中核支持層の活性化を図る必要性から、制度的な基盤がさらに薄れ、取引中心になり、短期的な政治的勝利にばかり焦点を絞るようになる可能性がある。したがって、トランプは標的を絞った圧力にさらに影響を受けやすくなる可能性がある。彼は、中国に利益をもたらす貿易や規制上の譲歩―様々な関税の緩和、技術ライセンス規則の調整、特定の中国企業の米国市場参入の許可など―を進んで行うかもしれない。同時​​に、これらの決定を勝利―交渉の成功、貿易赤字の「勝利(win)」、あるいは中国が報復措置の一部から手を引く―として位置づけるかもしれない。トランプの譲歩(concessions)がアメリカの中核的な国家安全保障上の利益を直ちに損なうものではないとしても、中国が時間をかけてつけ込む可能性のある脆弱性(vulnerabilities)を蓄積させる可能性がある。

2026年に向けた中国の姿勢は明確だ。トランプがほとんど譲歩することなく勝利を収められるような、限定的で取引的な合意を追求するだろう。ヨーロッパ、東南アジア、ペルシア湾岸諸国との関係を深めることで、アメリカの影響力を弱め、国内の技術自立を加速させるだろう。不安定さは今や構造的なものとなり、トランプが4月に予定している訪中でさえ、失われた安定と信頼を回復することはできないだろう。中国が期待しているのは緊張緩和(デタント)ではなく、時間だけだ。アメリカの脆弱性を探り、自国の体制を強化し、ワシントンの圧力が徐々に弱まるようにするための時間だ。忍耐、緻密さ、そして調整された影響力(patience, precision, and calibrated leverage)こそが、北京の国家運営における決定的な武器(Beijing’s defining arsenal of statecraft)となっている。

●インドにとっての教訓:アメリカとの関係を改善する(Lesson for India: Repair U.S. Relations

C・ラジャ・モハン(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、OP・ジンダル・グローバル大学教授)

インドのナレンドラ・モディ首相ほどトランプのアメリカ大統領復帰を熱狂的に歓迎した政府はほとんどなく、そしてこれほど失望した政府もほとんどない。

モディ首相はトランプ大統領就任後、最初に会談した世界の首脳の一人であり、インドは商業がアメリカの外交政策の中心軸となったことを認識し、速やかに貿易交渉を開始した。

しかし、インドとアメリカの戦略的パートナーシップを強化するという期待は、2025年8月にトランプ大統領がインド製品への関税を50%に引き上げたことで打ち砕かれた。問題の一因は、モディがトランプの平和構築に関する壮大な妄想、特にインドとパキスタンの軍事衝突に関する見解を誤読した点にあった。もしモディが、南アジアを自滅から救うというトランプの役割についてもっと熱心に賛辞を述べていれば、ニューデリーとワシントンの関係は少し違った展開を見せていたかもしれない。

モディ首相の側近たちは、トランプをホワイトハウスに復帰させた連合勢力をある程度把握していた。しかし、MAGA運動の力と熱狂に不意を突かれ、予想外の勢いでインドとその在外インド系市民たちに牙を剥いた。それ以来、インド政府はそのアプローチを調整し、現在は3つの原則に基づいて行動している。トランプが繰り返しパキスタンとの戦争を終結させたと主張しているにもかかわらず(インド政府はこれを虚偽だと考えている)、公の場でトランプ氏と議論することを避けること、ガザ地区とウクライナにおけるトランプの和平努力を称賛すること、そして貿易、技術、防衛といった分野におけるアメリカの幅広いシステムの関与を維持することである。

2026年には、トランプの国内での地位が低下の兆しを見せているため、インド政府はワシントンにおいて活動ができる政治的余地が拡大すると見ている。インドの戦略は今、3つの軸を中心に展開している。

第一に、2025年のトランプ政権下で沈黙を強いられた、伝統的な親インド派の支持基盤、すなわち安全保障体制、アメリカ連邦議会、ビジネス団体、そして在外インド人ネットワークを動員することだ。これまで発言をためらっていた人たちも、今こそ米印両国関係の均衡回復に貢献してくれる可能性がある。インド政府はまた、MAGA連合の少なくとも一部との関係改善策を見つけなければならないことも認識している。

第二に、インドはトランプ大統領の干渉を招く可能性のあるパキスタンとの新たな危機を回避する決意を持っている。新たな軍事紛争が勃発すれば、インドは再びトランプ大統領の奔放な衝動の標的となる可能性がある。

第三に、そして最も重要なのは、インド政府が多様化戦略(diversification strategy)を加速させていることだ。関税ショックは、インドに輸出先の拡大、ヨーロッパとの貿易交渉の迅速化、そしてロシアをはじめとする新興市場との経済連携の拡大を促した。安全保障政策においては、インドはより慎重にリスク回避(ヘッジ)を行っており、アメリカとのパートナーシップを維持しながら中国との緊張を緩和し、ロシアとの関係を深め、ヨーロッパと戦略的に関わっている。

人間と同じように、国も痛みに慣れる。モディ首相はトランプの関税への対応を学ぶ中で、ワシントンの威圧的な圧力に毅然とした態度で臨むことが国内で効果を発揮し、海外でも尊敬を得られることを学んだ。インド国内の伝統的にアメリカに懐疑的な人々にとって、トランプの2期目は、アメリカに戦略的な依存を過度に求めるべきではないという戒めとなる。楽観主義者にとっては、2025年の混乱は、トランプがその年のオリンピックのような政治的高みから退く2026年には、より良い基盤へと変わるかもしれない。この楽観主義の根底にあるのは、インドとの戦略的パートナーシップにおける25年以上にわたる超党派によるアメリカの投資が、どんなに予測不可能なホワイトハウスでさえ、1、2年で破壊される可能性は低いというインドの賭けとなっている。

●同盟諸国にとっての教訓:ヤマアラシになれ(Lesson for Allies: Become Porcupines

ジェイムズ・クラブトゥリー(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ヨーロッパ外交評議会客員研究員)

アメリカの同盟諸国やパートナーがトランプ政権下のアメリカ外交政策の変革に適応する中、彼らが直面する厳しい戦略的計算を一言で表すなら「ヤマアラシ(porcupine)」である。ウクライナ、バルト三国、ポーランドから台湾、日本に至るまで、潜在的に脆弱な国々は過去1年間から同じ不快な結論を導き出しているトランプの新世界秩序における生存は、もはや旧来のアメリカの保証に依存せず、自らを攻撃するのがあまりにも痛みを伴う存在にするということにかかっている(survival in Trump’s new world order no longer depends on old-fashioned U.S. guarantees but on making yourself too painful to attack.)。

ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領は2025年12月、2014年のロシア初侵攻以来、ウクライナの戦略的目標の礎であったNATO加盟がもはや現実的な目標ではないことを公に認めた。代わりにウクライナとヨーロッパの指導者たちはより現実的な目標に焦点を当てている。それは、将来のロシアの侵略を抑止するのに十分な軍事能力を再構築するための十分な余裕をもたらす停戦を確保することだ。ヨーロッパ委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が最近述べたように、「ウクライナは潜在的な侵略者にとって消化できない鋼鉄のヤマアラシ(a steel porcupine, undigestible for potential invaders)にならねばならない」。

アメリカの新しい「国家安全保障戦略(National Security Strategy)」は、ワシントンがヨーロッパの安全保障に関与する姿勢も、せいぜい条件付きであることを示している。ウクライナに当てはまることは、ロシアの他の潜在的な標的にしても同様である。特にヨーロッパのNATO加盟諸国が、かつての大西洋横断西側陣営の指導者に頼れなくなった今、その傾向は顕著だ。ヨーロッパ全域でトランプ・ショックは、各国に既に進行中だった「一世代で最大規模の再軍備(their most significant rearmament in a generation)」を加速させる要因となった。ドイツやポーランドといった主要諸国は軍事予算を劇的に拡大させている。

台湾もほぼ同様の計算を受け入れてきた。ワシントンの台北に対する安全保障上の関与は長らく公式には曖昧だったが、その戦略的な曖昧さは今や大統領の気まぐれに取って代わられた(that strategic ambiguity has now been replaced by changing presidential whims)。トランプ大統領が中国との「合意(deal)」と呼べるものの確保と、それに伴う国賓訪問に注力する今後数カ月は、特にこの傾向が顕著になるだろう。

台湾の頼清徳総統は最近、野心的な国防強化を発表し、2026年には軍事費をGDPの3%、2020年代末には5%に引き上げるという。これは台湾の戦略的脆弱性に対する懸念を反映している。台北の投資には、移動式対艦ミサイル、機雷、分散型防空システムなどが含まれる。これらは、アメリカの支援が不確実になる中で、中国の侵攻を高コストにすることを目的とした、いわばヤマアラシ兵器の集積である。

ヨーロッパと同様に、インド太平洋地域における長年のアメリカの同盟諸国は、2025年のトランプ大統領の不安定なアプローチを研究し、自国がより鋭い防衛戦略を開発することの賢明さを見出した。日本は防衛改革を加速させる計画で、軍事費は当初の計画より1年早い2026年にはGDPの2%を超える見込みだ。

冷戦時代と冷戦後の時代において、ワシントンは同盟諸国がアメリカの拡大抑止の下で繁栄できる秩序を築き上げた。同盟国の多くは、アメリカの安全保障保証への依存を当然のことながら高く評価していた。トランプ大統領が、アメリカは大統領が関心を持つ場合にのみ約束を守ると明確に表明した今、これらの国々は、鋼鉄の棘(steel spines)のような強靭さこそが最善の防衛手段であると判断しつつある。

●各大企業のCEOたちにとっての教訓:投資について慎重に考慮せよ(Lesson for CEOs: Think Twice About Investing

エリザベス・ブラウ(『フォーリン・ポリシー』コラムニスト、大西洋評議会上級研究員)

2025年はトランプ政権による数々の驚きの出来事に見舞われ、その中にはビジネス界に影響を与えたものも複数あった。特に経営者たちを驚愕させた事件が1つある。2025年9月にアメリカ移民税関捜査局(U.S. Immigration and Customs EnforcementICE)がジョージア州で現代自動車とLGの従業員約500人を拘束した事件だ。

労働者の中には、韓国の二大製造業大手が所有する新工場の設立を支援するためジョージア州に派遣された韓国国民317人も含まれていたことを思い出して欲しい。複雑な近代工場の設立には専門技術が必要だが、現代とLGはジョージア州で即座にそのような専門知識を持つ人々を見つけることができなかった。さらに緊急性もあった。トランプ大統領が韓国からアメリカへの輸入品に25%の関税を課した直後であり、ソウルは自国企業がアメリカにどれだけ投資できるかを示すことでホワイトハウスを喜ばせようと躍起になっていた。H-Bヴィザや類似の就労ヴィザ取得に通常かかる長い待機期間がこの取り組みを頓挫させる恐れがあった。『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じたところでは、韓国人たちは短期ビジネス訪問者向けのB-1ヴィザと、短期ビジネス訪問も認めるESTAヴィザ免除プログラムを利用してアメリカに入国した。しかしこれはICE(移民関税捜査局)の方針に反するものだったので、彼らは拘束された。

このニューズは、アメリカへの投資を検討していた製造業の経営者たちに衝撃を与えた。中国が欧米に対してより敵対的になる中、多くの欧米メーカーはアメリカへの「フレンドショア(friendshore)」計画を立てており、トランプは関税措置など明確な手段でそれを促していた。結局のところ、産業をアメリカに呼び戻すことがトランプの経済政策の中核である。経営者たちを襲った「トランプ・ショック」とは、彼の意向に沿ってアメリカに製造拠点を設けることが自社ビジネスに逆効果となり得るという認識だった。そのリスクはICE(移民関税執行局)による労働者拘束を超えている。世界中から部品を調達するアメリカ製造企業—今日ではほぼ全ての主要メーカーが該当する—は今や複数の高額関税の直撃を受けている。

2026年、このトランプ・ショックが経営陣にアメリカ以外の立地を検討させるきっかけになっても驚くことはないだろう。ヴェトナムからケベックまで、中国からの生産分散を図る企業を歓迎する国や地域が相次いでおり、こうした管轄区域は取り組みを強化する可能性が高い。アメリカは依然として魅力的なビジネス拠点だが、企業が最も嫌うのは不確実性だ。製造業には多くの段階、複雑なサプライチェイン、長期的な視野で計画された投資が伴う。いずれかの部分が機能不全に陥ったり、混乱を経験したり、新たな政策によって突然混乱に陥ったりすれば、サプライチェイン全体が狂ってしまう。

2000年代初頭の中国ショックは、欧米諸国全体で賃金抑制と製造業雇用喪失を引き起こした。迫り来るトランプ・ショックは異なる様相を呈するだろう。経営者たちが「トランプ流のアメリカ」が想定とは全く異なるビジネス環境であるという現実を認識する契機となる。

●ヨーロッパにとっての教訓:冷静さを保ち物事を実行し続ける(Lesson for Europe: Keep Calm and Carry On

アガテ・デマライス(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ヨーロッパ外交評議会上級研究員)

昨春、ウォーレン・デービッドソン米連邦下院議員は、「トランプ錯乱症候群研究法案(the Trump Derangement Syndrome Research Act)」を提出した。これは、アメリカ国立衛生研究所に対し、なぜトランプとその政策が軽蔑されるのかを調査するよう命じる法案だった。一部の外国政策立案者も、同様の症候群に陥っている可能性がある。つまり、突発的な不安から途方もない政策を採用してしまうというものだ。その一例が、昨年日本がアメリカと締結した貿易協定である。この協定では、2029年1月までに5500億ドルの日本の納税者の税金をアメリカで支出することが約束されている。

これまでのところ、ヨーロッパの指導者たちは、この危険な症候群の最悪の症状を何とか回避してきた。反対の主張があるにもかかわらず、2025年7月に締結されたアメリカとヨーロッパ連合(EU)の貿易協定は、ヨーロッパの屈服とは程遠い内容だ。むしろ、EUはトランプへの対応について、既にいくつかの教訓を学んでいるようだ。まず、EUはトランプの関税への愛着を説得する時間を無駄にせず、関税率15%で合意した。第二に、EU首脳は、自国企業と消費者に損害を与えるだけの報復関税を課したいという衝動を賢明に抑えた。第三に、EUは結束を重視した。個々のヨーロッパ各国政府は、ワシントンに駆けつけて二国間協定を締結したいという衝動をうまく抑えることができた。二国間協定は、EUの集団交渉力を弱めることになるだろう。

2026年には、ヨーロッパ首脳にとって、トランプ政権への対応策を見直す十分な機会が与えられるだろう。大西洋をまたぐ最初の戦いはウクライナ問題だ。2025年11月、ヨーロッパとウクライナの頭ごなしに提案された、米露和平協定は、トランプが主にベルギー、そして比較的小規模ながらフランスをはじめとするEU加盟国に保有されているロシア中央銀行の凍結中の準備金3000億ドルを狙っていることを非常に明確にした。第二に、アメリカはおそらく、EU製鉄鋼への関税引き下げと引き換えに、透明性、コンテンツモデレーション、データプライバシーを含むデジタルルールの緩和をヨーロッパに迫るよう圧力を強めるだろう。第三に、フロリダ州マイアミ近郊にあるトランプが所有するゴルフリゾートで開催される今年のG20サミットは、驚きに満ちたものになるかもしれない。トランプがこの会合を、世界経済の80%以上を占める首脳を説得し、アメリカに利益をもたらす二国間協定に署名させる絶好の機会と捉えることは容易に想像できる。これら3つの戦いに打ち勝つために、EUは冷静さを保ち、継続する必要がある。ヨーロッパにとって、自助努力と結束(self-help and unity)は依然として今日の合言葉である。

●イスラエルにとっての教訓:トランプは容易に支援について再考する可能性がある(Lesson for Israel: Trump Could Easily Rethink Aid

スティーヴン・A・クック(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、外交評議会研究員)

トランプの中東地域へのアプローチが驚きだったと言うのは、その言葉の意味を軽視することになる。振り返ってみよう。彼はイランの核施設への空爆を命じ、イスラエルとハマスに停戦を強制し、おそらく元ジハード(聖戦)主義者であろうシリアのアハメド・アル・シャラー大統領と大統領執務室で会談した。アメリカは現在、ガザ地区における国家建設(nation-building)を支援し、ヒズボラの武装解除に取り組み、イスラエルとレバノンの正常な関係構築を推進し、サウジアラビアへの安全保障保証の拡大について広範な協議を行っている。
これは、トランプが約1年前に大統領に復帰した際に支持者や同調者が皆に告げた中東地域からの撤退とは異なる。MAGAやそのシンクタンクの頭の中には「アメリカ・ファースト」外交政策があるかもしれないが、ホワイトハウスはそのような原則を一切遵守していない。中東地域を含むアメリカの外交政策は、トランプ大統領の直感に基づいていることが判明した。トランプ大統領は、耳を傾ける者全員にそう語ってきた。もし書面で確認したいのであれば、最新の「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」は、その一貫性のなさ、そしてこの地域におけるトランプ大統領の行動と滑稽なほど矛盾しているという点で特筆すべきものだ。

それでは、トランプ大統領は2026年に何をするのだろうか? 私は決して賭けるようなことはしないが、イスラエルへの軍事援助に関しては、トランプが事態を一変させるだろうと断言する。現在の支援協定はトランプ大統領の任期末まで期限切れにならないが、この問題は既にトランプの頭の中にある。2025年4月、ホワイトハウスでイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談した際、トランプ大統領は「私たちはイスラエルに年間40億ドルを支援している。これは多額の援助である。とにかく、おめでたいことではある」と述べた。これは、イスラエルがアメリカ内でこの援助の全てを支出しているにもかかわらず、トランプ大統領がこれを大した金額だとは考えていないことを示唆していると言えるだろう。

アメリカとイスラエルの両首都においては、私怨延長をめぐって多くの疑問が投げかけられている。これまでのところ、ネタニヤフ首相顧問のロン・ダーマーは、20年間の最終合意を提案しており、その後に支援は停止されるとしている。アメリカの軍事支援を段階的に縮小するのは良い考えだが、トランプを説得するには、イスラエル側が何か大きなものを提示しなければならないだろう。サウジアラビアが約束したように最大1兆ドルの投資を約束するだけの資金はイスラエルにはないため、工夫を凝らさなければならないだろう。トランプが3度にわたり大統領選に出馬した際、常に中心的テーマとして掲げてきたのは、アメリカは世界の平和と安定のために多大な犠牲を払っているにもかかわらず、何の見返りも得ていないという主張だった。今度はイスラエルが代償を支払う番である。

※ゾンユアン・ゾー・リュー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会モウリス・Rグリーンバーグ記念中国研究研究員。最新作に『ソヴリン・ファンド:中国共産党は如何にして世界規模の野望に資金を提供しているか(Sovereign Funds: How the Communist Party of China Finances Its Global Ambitions)』(ハーヴァード大学出版局、2023年)がある。

C・ラジャ・モハン:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。OP・ジンダル・グローバル大学モトワニ・ジャデジャ記念アメリカ研究所卓越教授。シンガポール国立大学客員研究教授。インド安全保障諮問会議元委員。Xアカウント:@MohanCRaja

※ジェイズム・クラブトゥリー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。著書に『億万長者のインド支配:インドの新たな黄金時代に続く旅路(The Billionaire Raj: A Journey Through India’s New Gilded Age)』がある。Xアカウント:@jamescrabtree

※エリザベス・ブラウ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。大西洋評議会上級研究員。著書に『さらばグローバライゼーション(Goodbye Globalization)』がある。Blueskyアカウント:@elisabethbraw.bsky.social

※アガテ・デマライス:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ヨーロッパ外交評議会地経学上級政策研究員。著書に『逆効果:制裁がいかにしてアメリカの利益に反して世界を変えていくか(Backfire: How Sanctions Reshape the World Against U.S. Interests)』がある。Blueskyアカウント:@agathedemarais.bsky.socialXアカウント:@AgatheDemarais

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会中東・アフリカ研究担当エニ・エンリコ・マッテイ記念上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東地域における過去、現在、未来(The End of Ambition: America’s Past, Present, and Future in the Middle East)』がある。Xアカウント:@stevenacook

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