古村治彦です。

 なぜアメリカのドナルド・トランプ大統領がイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に乗せられて(ほぼ洗脳のような形で)、イランに対して大規模攻撃に踏み切ったのかということはこれから様々な分析がなされるだろう。大きく分ければ、トランプの個人的な資質や考え、アメリカ政府やホワイトハウス、アメリカ国内の状況とそれによる影響、そして、国際関係の状況の大きく3つに分けることが出来るだろう。

 下記論稿の著者スティーヴン・M・ウォルト(ハーヴァード大学教授)は、2007年に、ジョン・J・ミアシャイマー(シカゴ大学)と『イスラエル・ロビー』(邦訳は副島隆彦訳、講談社、2007年)を発表した。『イスラエル・ロビー』は衝撃を持って迎えられた。アメリカ国内では称賛を集める一方で、激しい批判にも晒された。特にユダヤ系諸団体や親イスラエル派の個人からは罵詈雑言に近い非難が寄せられた。「アメリカの外交政策に国内のロビー団体が影響を与える」というのは先ほどの分類で言えば、二番目の分類になる。是非、『イスラエル・ロビー』をお読みいただきたい。
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スティーヴン・M・ウォルト(左)とジョン・J・ミアシャイマー
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 今回のイラン攻撃について、ウォルトはイスラエル・ロビーの影響があったと分析している。ドナルド・トランプ大統領の周辺人物はほぼ親イスラエル、親ネタニヤフの人物で方得られていること、トランプが選挙資金の面から恩義を感じていること、民主党側もイスラエル・ロビーの影響力を受けて、戦争阻止や停戦に積極的に動いていないということを挙げている。確かに、アメリカ連邦議会ではトランプ大統領のイラン戦争に関する権限を制限する決議案を上下両院で否決している。『イスラエル・ロビー』で詳しく分析されているが、アメリカの選挙区(都市部がほとんど)によってはユダヤ系アメリカ人が集住しており、有権者グループとして力を持っている、もしくは弁護士や医師などの高学歴で専門職に就く割合が高く、巨額の政治資金を提供できるということから、政治家に影響を与えることが出来るということから、選挙に勝とうと思えば、イスラエル・ロビーやユダヤ系の人々の意向に反対することは難しいということになる。

 ウォルトは論稿の結語で「ロビー活動の影響力が弱まり、アメリカがイスラエルとのより正常な関係を確立するまで、こうした事態は繰り返される可能性が高く、アメリカは冷酷ないじめっ子のように見え、私たち全員にとって不利益となるだろう」と書いている。今まさに、このような状況になっている。そうした中で、アメリカ一辺倒の外交を行う日本と高市早苗首相は異常と言わざるを得ない。

(貼り付けはじめ)

イラン戦争におけるイスラエル・ロビーの責任(The Israel Lobby’s Responsibility for the Iran War

-アメリカ・イスラエル間の特別な関係を擁護する人々は特別な役割を果たしてきた。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年3月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/17/israel-lobby-iran-war-trump-responsibility/
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ドナルド・トランプ氏が2016321日、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)の年次政策会議で演説を行った(2016年3月21日、ワシントンDC

速報:イラン戦争は予想通りに進んでいない。「計画通り(planned)」に進んでいないと言いたいところだが、この状況ではその言葉は全く不適切に思える。アメリカをはじめとする各国が、またしても中東地域で惨敗を喫する中、誰が責任を負うべきかを知りたがっている。責任の所在を明確にすることは極めて重要だが、同時に、責任のない人間が不当に非難されることもあってはならない。

当然のことながら、有識者の一部は、これはイスラエルのために戦われている戦争だと考えている。彼らはその証拠として、マルコ・ルビオ米国務長官の発言を挙げている。ルビオ長官は、トランプ政権はイスラエルが攻撃を仕掛けてくることを知っており、イランがアメリカ軍に対して報復する可能性を予測したため、先制攻撃を選択したと述べていた。さらに、イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは数カ月前からイランとの戦争を強く主張しており、元『イェルサレム・ポスト』紙編集長で、現在は『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムニストであるブレット・スティーヴンスのような親イスラエル派の評論家は、過去に繰り返しイランに対する戦争を訴え、現在もなお今回の戦争を擁護している。

ここで1つの明らかな疑問が生じる。アメリカ国内の「イスラエル・ロビー(Israel Lobby)」はこの戦争にどの程度の責任を負っているのだろうか? しかしながら、この問題を詳しく検討する前に、2つの注意点を述べておく。

第一に、まだ初期段階であり、今後数カ月の間に、この事態がどのように、そしてなぜ起こったのかを示す証拠がさらに明らかになるだろう。また、事態がさら​​に悪化すれば(go further south)、いつものように責任転嫁や混乱(kick up dust and shift the blame)を招く動きも出てくるだろう。2003年のイラク戦争とは異なり、今回の紛争はアメリカ国民に戦争を正当化するための長期にわたるキャンペーンが行われなかったため、誰が戦争を推進し、誰が疑問を呈していたのかを正確に把握するのは困難だ。

第二に、ロビー活動の影響を評価する際には、その定義を正しく定めることが不可欠となる。ジョン・ミアシャイマーと私が2007年に出版したこのテーマに関する著書で明らかにしたように、イスラエル・ロビーは宗教や民族によって定義されるものではなく、むしろその構成員が推進しようとする政治的立場によって定義される。それは、アメリカとイスラエルの「特別な関係(special relationship)」を維持することを共通の目標とする、諸団体や諸個人の緩やかな連合体である。実際には、この特別な関係とは、イスラエルがどのような行動を取ろうとも、寛大な軍事的・外交的支援を提供することを意味する。このイスラエル・ロビーはユダヤ人と非ユダヤ人の両方で構成されており、多くのアメリカ系ユダヤ人はイスラエル・ロビーに属しておらず、特別な関係を支持していない。さらに、イスラエル・ロビーの中核を成す人々(キリスト教シオニスト[Christian Zionists]など)の中には、ユダヤ人ではない人もいる。

したがって、イラク戦争の責任をアメリカ系ユダヤ人コミュニティに押し付けることは、2003年のイラク戦争の責任をアメリカ系ユダヤ人コミュニティに押し付けたのと同様に、分析的に誤りであるだけでなく、危険な分断を招くことになる。実際、2002年から2003年にかけて行われた調査では、ユダヤ系アメリカ人はアメリカ国民全体に比べて、イラクのサダム・フセイン大統領に対する戦争への支持が低いことが示された。イスラエルのユダヤ人政策研究所(Jewish People Policy InstituteJPPI)は最近、ユダヤ系アメリカ人の大多数がイランとの戦争を支持していると主張する世論調査結果を発表したが、これは慎重に選ばれた、明らかに代表性のない回答者グループによるものであり、ほぼ間違いなく偽りだ。(ちなみに、JPPIがこのような疑わしい調査結果を発表するのは無責任であり、まさに私たちが皆阻止したい反ユダヤ主義を助長する危険性がある。)また、最大の主流派リベラル系親イスラエル団体であるJストリートや、ニュー・ジューイッシュ・ナラティブ、ユダヤ平和の声といった進歩的な団体が、既に戦争を非難する声明を発表していることも注目に値する。

それでは誰に責任があるのか?

第一の、そして最も明白なのは、ドナルド・トランプ大統領と、彼の無能で無責任な忠実な側近たちだ。2003年のジョージ・W・ブッシュ大統領と同様に、トランプも決断を下し、その結果に対する最終的な責任を負う。そしてもちろん、地域全体におけるイスラエルの覇権確立を目指しているものの、米国の積極的な支援なしにはそれが不可能なベンヤミン・ネタニヤフ首相も、直接的な責任を負う。

しかし、トランプ大統領が私たちに信じさせようとしていることとは違い、どの大統領も完全に単独で行動する訳ではなく、トランプ大統領が周囲の人々から聞くことに左右される可能性があることは周知の事実である。そして、トランプ大統領の側近たちには、イスラエルを熱烈に擁護する者、イスラエルからの選挙資金を長年受け取ってきた者、あるいはその両方である者が多数含まれている。トランプ大統領の中東特使であるスティーヴ・ウィトコフとジャレッド・クシュナーは、駐イスラエル米大使のマイク・ハッカビーと同様に、イスラエルの熱烈な支持者である。国家安全保障担当大統領補佐官も兼務するルビオ国務長官は、連邦上院議員時代からイスラエルとの特別な関係を反射的に支持し、親イスラエル派の選挙資金を最も多く受け取った人物の1人である。現ホワイトハウス大統領首席補佐官のスージー・ワイルズは、ネタニヤフ首相の2020年の再選キャンペーンでコンサルタントを務めた。国家情報長官を務めたトゥルシー・ギャバード(トランプ政権発足以前にイスラエルへの過剰な支援を批判していた)を除けば、政権上層部でイスラエルとの距離を置くことを公然と支持する人物はほとんどいない。

第二に、トランプ大統領自身も、故シェルドン・アデルソンとその妻ミリアムといった熱心な親イスラエル派の人物に恩義を感じていることを認めている。エリ・クリフトンとイアン・ラスティックが『ザ・ネイション』誌の最近の記事(および近刊予定の著書)で述べているように、トランプ大統領は2025年10月のクネセト(イスラエル議会)演説で、近年のアメリカの選挙で最大の献金者であるミリアム・アデルソンを名指しし、彼女はアメリカよりもイスラエルを愛しているかもしれないとさえ示唆した。こうした懸念は、一部の民主党指導者がイスラエルの開戦やトランプ政権の参戦を批判することに消極的で、むしろ戦争計画の不備に焦点を当てている理由を説明するかもしれない。

第三に、この戦争は突如として起こったものではない。確かに、アメリカとイランは何十年にもわたって対立しており、両国が互いに抱く疑念は、イスラエルやロビー団体だけの責任ではない。とはいえ、AIPAC、民主政体防衛財団、アメリカ・シオニスト連盟、反核イラン連合といったロビー団体は、長年にわたりイランを悪者扱いし、アメリカ企業がイランで事業を行うことを阻止し、イランの元大統領であるアクバル・ハシェミ・ラフサンジャニとモハメド・ハタミによる関係改善の試みを妨害してきた。(後者の点については、2007年に出版した書籍の第10章をお読みいただきたい。)Jストリートとは異なり、これらの団体は、イランのウラン濃縮能力と核兵器備蓄を削減した2015年の合意を阻止するために奔走し、イランが完全に合意を遵守していたにもかかわらず、最終的には2018年にトランプ大統領に合意を破棄するよう説得した。トランプがそうしていなければ、当然ながら、今日イランの核開発計画を懸念する理由ははるかに少なかっただろう。

最後に、民主党と共和党のどちらの大統領もイスラエルに実質的な圧力をかけることをほぼ不可能にすることで、ロビー活動はネタニヤフ首相が地域全体で「無謀な行動(reckless driving)」を取ることを可能にした。イスラエルによるパレスチナ住民への継続的な抑圧、ガザ地区、レバノン、イエメン、シリア、イラン、そしてカタールへの度重なる攻撃などがその例だ。スティーヴン・サイモンが指摘するように、イスラエルがアメリカを今回の戦争に参加することを「強制(compel)」したのではない。トランプ政権は自発的に、そして熱心に参戦した。このことは事実だが、ロビー活動が特別な関係を守り、イスラエルが平和を乱し続けることを可能にした役割は、なぜアメリカ人が遠く離れた地で多大な犠牲を伴う紛争に巻き込まれ続けるのかを理解する上で役立つ。

結論は以下の通りだ。今回の惨事が展開する中で、アメリカ人をはじめとする人々は、責任者を追及したいと考えるのは当然のことだ。彼らは、大統領をはじめとする特定のグループや個人に焦点を当てるべきだ。彼らは、イスラエルの地域政策を支持し、さらなる暴力の乱発がアメリカの国益になると自らを納得させた。ロビー活動の影響力が弱まり、アメリカがイスラエルとのより正常な関係を確立するまで、こうした事態は繰り返される可能性が高く、アメリカは冷酷ないじめっ子のように見え、私たち全員にとって不利益となるだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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