古村治彦です。

 現在は世界中で過剰さがあふれている。極端さと言っても良いだろう。政治の世界で言えば、ドナルド・トランプ大統領や高市早苗首相がその象徴である。過度なナショナリズム、過度な断定(言い切り)、過度な自己中心、過度な依存が特徴である。有権者にしても、中庸ではなく、過激を求める傾向がある。そのことは日本だけではなく、西側先進諸国において共通の現象になっている。このことはこのブログでも既に紹介した。

※古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ:「20260309日先進西側民主政体国家の有権者は破れかぶれになっているのかもしれない」

https://suinikki.blog.jp/archives/90360730.html

 過剰を求める反対の動きが抑制であり、中庸である。国際関係論ではその考えを持つ人たちを「リアリスト(Realist)」「抑制者(restrainer)」と呼ぶ。ウォルトは「抑制主義」について以下のように書いている。長くなるが、いくつか引用する。「アメリカ外交政策における抑制という考え方は、アメリカの力を用いて民主政治体制、市場経済、法の支配、その他のリベラルな価値観を世界中に広め、できるだけ多くの国をアメリカが支配する国際機関に取り込もうとする、リベラル覇権(liberal hegemony)の大戦略(grand strategy)に反対する形で生まれた。抑制者は、軍事力によって民主政治体制を広めようとするのは無謀な試みであり、他国を脅迫したり威嚇したりすることは通常逆効果となり、敵対国を疑心暗鬼にさせ、同盟国や中立国を敵に変えてしまうと確信している(Restrainers believe that trying to spread democracy with military force is a fool’s errand, and that threatening or bullying other states usually backfires, making adversaries more suspicious and turning allies or neutrals into enemies)。そのため、外交こそがアメリカ・ファーストの行動であり、武力行使は最後の手段(last resort)であるべきだと彼らは考えている」「抑制者は、世界は危険な場所であり、アメリカは一部の国と深刻な利害の衝突を抱えていることを認識しているものの、過剰な軍事費支出や海外での武力行使を正当化するために用いられる、絶え間ない脅威の誇張には反対している」「アメリカが国家安全保障への支出を減らし、依然として大きな力を持っているにもかかわらず、より賢明にその力を行使すれば、より安全で繁栄した国になると考えている」。第一次政権時のドナルド・トランプは抑制主義であったが、現在のドナルド・トランプは全くの別人である。下記論硬はスティーヴン・M・ウォルトによる昨年9月の論稿であるが、現在の状況を警告しているかのようでもある。

 私は昨年の5月頃に第二次ドナルド・トランプ政権における外交政策に大きな転換点があったと考えている。ここで抑制者から介入主義者に変化している。私たちはこのことをより深く研究する必要がある。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプは決して抑制者にはなれない(Donald Trump Will Never Be a Restrainer

-最終判決は下された。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年9月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/09/30/donald-trump-foreign-policy-restrainer-realist-war-defense-diplomacy/

ドナルド・トランプ米大統領が外交政策におけるリアリスト(foreign-policy realist)もしくは、「抑制者(restrainer)」なのかという議論に終止符を打つべき時が来た。確かに、彼の政策決定における気まぐれなアプローチや、言行不一致の傾向は、特に明確な理由もなく極端から極端へと態度を翻す時(ウクライナ問題を参照)には、彼の見解を捉えること(to pin down)を困難にしている。彼の発言や行動の中には、リアリスト・抑制者というレッテル(labels)に合致するように見えるものもあるかもしれないが、彼はリアリスト・抑制者ではない。

私がこの問題を提起するのは、レッテルが重要であり、誰がどのようなアプローチや思想と結びつけられるかによって、様々な考え方や政策提案がどのように受け止められるかが左右されるからだ。公平を期すために言えば、トランプは「永久戦争(forever wars)」への批判、外交政策エスタブリッシュメントへの不信感、裕福な同盟諸国に自衛のための行動を促そうとする姿勢、そして海外におけるリベラルな価値観の擁護への明らかな無関心などにおいて、抑制の提唱者のように聞こえる時もある。(この点において、彼は異例なほど一貫性を見せている。なぜなら、言論の自由や法の支配といった、厄介なリベラルな価値観に対しても、アメリカ国内で同様に敵対的な姿勢をとっているからだ。)要するに、内容ではなくスタイルだけを見れば、トランプはリアリスト・抑制者の典型的なメンバーだと結論づけるかもしれない。

この議論をしているもう一つの理由は、トランプをリアリスト・抑制者とレッテルを貼ることが、時に政治的な得点稼ぎ(to score political points)に利用されることがあるからだ。JD・ヴァンス副大統領のようなMAGA支持者の中には、抑制者というレッテルを受け入れることで、トランプが以前の公約を守り、アメリカが莫大な予算のかかる海外関与に陥るのを防いでいるとアピールする人たちもいる。(トランプ政権1期目には、傲慢なマイク・ポンペオ国務長官も同様の策略を試みたが、説得力はなかった。)対照的に、抑制に反対する人々は、アメリカの外交政策の軍事化(the militarization of U.S. foreign policy)に反対し、世界各地へのアメリカの介入を批判してきた個人や組織(例えば、クインシー責任ある国家運営研究所など)の信用を失墜させるために、トランプにそのレッテルを貼ろうとすることがある。(念のため申し添えておくと、私はクインシー研究所の理事を務めており、時折、同研究所の出版物に寄稿している。)

しかしながら、現時点ではトランプの実績が、この問題を解決する上で重要な手がかりとなる。そのためには、抑制者が何を主張しているのかを明確にする必要がある。そして、その出発点として最も適切なのは、この運動にその名を与えたバリー・ポーゼンの著書『抑制:アメリカの大戦略の新たな基盤(Restraint: A New Foundation for U.S. Grand Strategy)』であろう。さらに、ダリル・プレス、ユージン・ゴールズ、ハーヴェイ・サポルスキーによる初期の論文、クリストファー・レインによる注目すべきエッセイ、そしてジョン・ミアシャイマー、モニカ・トフト、シディタ・クシ、そして私自身による後期の著作も参照すべきだろう。

アメリカ外交政策における抑制という考え方は、アメリカの力を用いて民主政治体制、市場経済、法の支配、その他のリベラルな価値観を世界中に広め、できるだけ多くの国をアメリカが支配する国際機関に取り込もうとする、リベラル覇権(liberal hegemony)の大戦略(grand strategy)に反対する形で生まれた。抑制者は、軍事力によって民主政治体制を広めようとするのは無謀な試みであり、他国を脅迫したり威嚇したりすることは通常逆効果となり、敵対国を疑心暗鬼にさせ、同盟国や中立国を敵に変えてしまうと確信している(Restrainers believe that trying to spread democracy with military force is a fool’s errand, and that threatening or bullying other states usually backfires, making adversaries more suspicious and turning allies or neutrals into enemies)。そのため、外交こそがアメリカ・ファーストの行動であり、武力行使は最後の手段(last resort)であるべきだと彼らは考えている。彼らはアイソレイショニストでも平和主義者でもない。なぜなら、アメリカは主要地域における有利な勢力均衡(balances of power)の維持に貢献する利益を有しており、同盟国は有用ではあるが、責任を果たさせるべきであり、重要な国益を守るためには武力行使が必要となる場合もあり、適切に設計された国際機関は国家間の競争の中でも協力関係を促進できると信じているからである。抑制者は、世界は危険な場所であり、アメリカは一部の国と深刻な利害の衝突を抱えていることを認識しているものの、過剰な軍事費支出や海外での武力行使を正当化するために用いられる、絶え間ない脅威の誇張には反対している。

抑制者はあらゆる問題について意見が一致する訳ではない。例えば、中国に対してより積極的に対抗すべきだと主張する者もいれば、中国の台頭を容認する努力を強化すべきだと主張する者もいる。しかし、彼らは近年の民主党政権と共和党政権下でアメリカの国家戦略を特徴づけてきた、自己中心的で傲慢な姿勢に反対するという点では一致している。何よりも、抑制者は気まぐれな軍事力行使に反対し、アメリカが国家安全保障への支出を減らし、依然として大きな力を持っているにもかかわらず、より賢明にその力を行使すれば、より安全で繁栄した国になると考えている。

それでは、なぜトランプは真の抑制者ではないのか? その理由をいくつか挙げてみよう。

第一に、トランプ大統領はアメリカの国防予算の不必要な増額を依然として支持しており、その額は最近1兆ドルを超え、依然として他のどの国の国防予算をも大きく超えている。さらに悪いことに、彼はこれらの巨額の予算の一部を本来の目的である「外国の脅威からアメリカを守る(defending the United States against foreign dangers)」ことから逸脱させ、国内の架空の敵(fictitious domestic enemies)を追いかけるために流用している。脅威を弱めるどころか、トランプ大統領は国内外の架空の敵を利用して、大統領権限を危険なレヴェルまで拡大することを正当化している。抑制者は長年、過剰な軍事化(excessive militarization)は最終的にアメリカ国内の市民の自由を脅かすと警告してきたが、トランプ大統領は彼らの警告が正しかったことを証明してしまった。

第二に、抑制者は、アメリカはヨーロッパと中東地域における軍事的プレゼンスを縮小し、中東地域ではより公平な姿勢を取るべきだと考えている。トランプ大統領にはこれら両方を行う十分な機会があったにもかかわらず、どちらも実行していない。両地域におけるアメリカのプレゼンスはほぼ変わらず、トランプ大統領は中東地域におけるアメリカの「特別な関係(special relationships)」をさらに強化し、中東地域の敵対勢力との真剣な対話を拒否している。

第三に、トランプ大統領は、際限のない紛争にアメリカ軍地上部隊を投入することには慎重な姿勢を示しているものの、目に見える形ではあるものの戦略的に疑わしい軍事行動に空軍力を行使することには全く抵抗がない。2025年1月に大統領に復帰して以来、イエメンとイランの標的を攻撃し、カリブ海で麻薬密輸に関与していたとされる複数の船舶を軍に撃沈するよう命じた。これらの行動の合法性は疑わしいだけでなく、いずれも重要かつ永続的な戦略的目的を達成する可能性は低い。フーシ派は依然として強硬な姿勢を崩さず、イランは核開発計画を放棄しておらず、数隻の船舶を撃沈すればアメリカへの麻薬流入が減少すると考える者は夢物語を語っているに過ぎない。トランプ大統領の関税政策と並んで、こうした無意味な軍事行動は外交政策における自制とは正反対であり、トランプ政権に今もなお仕えている数少ない真の抑制者たち(彼らは自分が誰であるかを分かっている)が、こうした行動をどう思っているのか、私は疑問に思わずにはいられない。

第四に、トランプ大統領は、抑制者の一部が提唱するように、経済・安全保障に関する諸問題に関して中国と包括的な合意に達することも、また、他の抑制者が主張するように、アジアにおける中国の勢力均衡を図り、地域覇権の確立を阻止するための連合を強化する真剣な努力もしていない。それどころか、トランプ政権は日本、韓国、インドといったアメリカの重要なパートナー国との貿易をめぐって対立を煽り、ジョージア州のバッテリー工場で韓国人労働者を不当に扱うことで韓国との関係をさらに悪化させ、科学技術分野における中国に対するアメリカの競争力を組織的に弱体化させている。

第五に、抑制者、特に超党派を標榜するクインシー研究所のような組織が提唱する重要な提言の1つは、アメリカ外交を活性化させ、軍事力の反射的な行使を控えることである。しかし、以前にも述べたように、トランプ大統領とその側近たちは、準備不足、人員不足、一貫性のない取り組み、そして最終的には失敗に終わる外交交渉の典型例と言えるだろう。トランプ大統領とマルコ・ルビオ国務長官兼国家安全保障担当大統領補佐官は、国務省を骨抜きにし、通常の省庁間協議プロセスを無視し、ガザ地区とウクライナに関する重要な交渉を、明確な資格がなく、潜在的な利益相反を抱える不動産弁護士(スティーヴ・ウィトコフ)に委ねてしまった。彼らがほとんど成果を上げていないのは何も不思議に思うものではないか?

トランプ大統領自身の外交姿勢については、先週の国連総会での彼の全くもって奇妙なパフォーマンスをご覧になることをお勧めしたい。国連が好きであろうと、トランプ大統領を嫌っていようと、彼がそこで見せた光景、そしてそれが我が国とその指導者について世界に何を物語ったのかを知れば、誰もが不快感を覚えるはずだ。トランプは持ち時間15分をほぼ45分も超過し、数十人の世界の指導者たちを前に、支離滅裂で自己憐憫に満ち、虚偽と侮辱に満ちた長時間のスピーチを続けた。この演説は、世界で最も力のある国がこれほど無能な人物の手に委ねられていることに、アメリカの敵対諸国を安堵させ、残されたアメリカの友好諸国を同じ理由で不安にさせたことは間違いない。

従って、トランプは抑制者でもリアリストでもない。もっと適切な表現はいくつかあるが、それらを挙げるには私は礼儀正し過ぎるのかもしれない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める