古村治彦です。
イスラエルが主導して始まった、イスラエルとアメリカによるイランに対する大規模攻撃と、イランによる報復攻撃は終息の目途が立っていない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、レバノンにまで侵略の手を伸ばし、21世紀にもなって、遅れてきた帝国主義、植民地主義を展開している。イランの石油関連施設への攻撃はイスラエルが単独で実施し、これに対してトランプ大統領は、アメリカは攻撃に参加しておらず、このような攻撃を止めるようにネタニヤフ首相に求め、ネタニヤフ首相も今後はそのような攻撃を控えると発言した。しかし、トランプ大統領はイランに対して、ホルムズ海峡の安全航行を保証しなければ、電力設備攻撃を行うと発言し、イラン側は湾岸諸国へのさらなる攻撃を行うと発表し、事態は深刻化している。
そうした中で、私が懸念しているのは、BTCパイプラインへの攻撃である。BTCパイプラインはカスピ海沿岸のアゼルバイジャンのバクー油田から、ジョージアを通り、トルコの地中海沿岸にあるジェイハン港までをつないでいる。ここからイスラエルに石油が輸出されている。アゼルバイジャンの国民の大多数が、イランと同じイスラム教シーア派(世俗主義である)であるが、イスラエルとの良好な関係を維持している。それは、石油を通じての経済的つながりということになる。
以下にあるように、アゼルバイジャンとトルコはイスラエルに対して複雑な態度を取らざるを得ない。ガザ地区やヨルダン川西岸地区におけるイスラエルの圧制と横暴に対しては、同じイスラム教として反発をするのが当然であるが、経済や安全保障の面でイスラエルと敵対することはできない。従って、どっちつかず、どちらも支援するということになる。
イランがエスカレーションを望んでいるならば、開戦当初にBTCパイプラインを攻撃するはずだ。イスラエルへの石油供給を断てば、イスラエルの軍事行動を制限できるし、イスラエル国内の生活にも打撃を与えることができるからだ。しかし、イランはそれをしなかった。問題は、アメリカとイスラエルがエスカレーションを辞さない姿勢を崩さないことだ。そうなれば、イランとしておBTCパイプライン攻撃を選択することになる。これに対して、イスラエルが保有する核兵器を使用するという最悪の決断をするする可能性も出てくる。
ホルムズ海峡の安全航行に注目が集まるが、BTCパイプライン攻撃の可能性について、私たちは憂慮すべきである。アメリカとイスラエルの自制と反省、そして、辞を低くしての停戦要請が必要になってくるが、それは不可能であろう。せめて事態の悪化、エスカレーションが進まないことを祈るのみだ。
(貼り付けはじめ)
トルコは自国の石油禁輸措置を破っているのか?(Is Turkey Breaking
Its Own Oil Embargo?)
-レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はパレスティナの大義(the
Palestinian cause)を擁護する一方で、彼の政権がイスラエルへの支援を助長していることを示す証拠が存在する。
ハンナ・ルシンダ・スミス筆
2025年1月29日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2025/01/29/israel-gaza-war-cease-fire-turkey-oil-export-embargo/
2024年11月末、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、国営放送のフォーラムで基調講演を行い、ガザ地区への支持を改めて表明した。聴衆の中にいたトルコの親パレスティナ活動家セイマ・ユルドゥルムは声を上げるべき時が来たことを悟った。彼女は「パレスティナへの支持表明と現場での行動との矛盾を指摘せざるを得ないと感じた」と語った。
ユルドゥルムとトルコの活動家グループ「パレスティナのための千人の若者」のメンバー8人は、生放送のテレビカメラの前で「ジェノサイドを支援するのをやめろ!」と叫び、水面下で行われているトルコからイスラエルへの石油輸出に注目を集めた。武器輸出ほど目立たないものの、石油輸出はイスラエルの戦争遂行に不可欠な要素である。抗議者たちが会場から退場させられると、エルドアン大統領は激しく反論した。「ここでシオニストの代弁者になるな(Do not be the mouthpiece of Zionists here)」。
エルドアン大統領は、特に2023年10月7日のハマスの攻撃とそれに続くイスラエル軍によるガザ地区への攻撃以降、世界中のスンニ派イスラム教徒の擁護者としてのイメージを確立する上で、パレスティナ人への支持を長らく中心的な要素としてきた。当初は紛争の仲介役を申し出ていたエルドアン大統領は、その後ハマスへの明らかな支持を表明し、イスラエルを「パレスティナの兄弟たちに対する全面的なジェノサイド政策を実行しているテロ国家(terrorist state [that] is implementing a policy of total genocide
against our Palestinian brothers)」と非難した。
ガザ国境でイスラエル治安部隊がパレスティナ人60人を殺害した事件を受け、4年間の凍結状態を経て2022年に回復したトルコとイスラエルの関係は、昨年再び断絶した。2024年4月9日、トルコは建設資材を含む54品目のイスラエルへの輸出を停止した。数週間後、トルコは二国間貿易を全面的に停止した。2023年の貿易額は68億ドルに達し、その76%はトルコからの輸出品(主に鉄鋼、建設資材、機械装置)だった。
エルドアン大統領はその後、トルコはイスラエルとの「あらゆる関係を断絶した()severed
all ties」と表明した。1月19日に発効したイスラエルとハマスの停戦合意後も禁輸措置は継続されており、エルドアン大統領はイスラエル指導者たちの戦争犯罪に対する責任追及を「増強する(intensify)」と表明している。
しかし、ロビー団体プログレッシヴ・インターナショナルが支援する、イスラエルへのエネルギー販売停止を各国政府に求めるキャンペーン「ストップ・フューリング・ジェノサイド」の研究者たちは、禁輸措置にもかかわらず、石油を積んだ貨物船が依然としてトルコからイスラエルへ航行し、痕跡を隠蔽しようとしていることを示す証拠をメディアに公開した。
研究者たちは、船舶追跡データ、港湾記録、衛星画像、目撃証言を用いて、2024年10月28日にトルコのジェイハン港を出港し、イスラエル方面へ向かった原油タンカー「シーヴィゴール号」を追跡した。2日後、タンカーは追跡装置の電源を切った。7日後に再び電源が入った時、シーヴィゴール号はイスラエル沿岸からまっすぐ離れ、シチリア島方面へ向かっていた。イタリアのリポスト港に入港した際、タンカーはトルコを出港した時よりも大幅に軽量化されていた。『フォーリン・ポリシー』誌が入手した調査報告書によると、これらの期間の間に、衛星画像にはシーヴィゴール号と外観が一致するタンカーが11月5日にイスラエルのアシュケロン港に入港する様子が写っていた。12月にメディアに公開された追加調査では、他のタンカーも同様の手法を用いていることが示唆されている。
トルコは、自国の港からイスラエルへ向けて貨物が出荷されている事実はないと否定している。2024年11月10日、トルコ政府エネルギー省は、石油輸出継続の主張は「根拠がない(baseless)」とし、イスラエルへの出荷が通常行われるジェイハン港で操業する全ての企業および関係者は、トルコの公式禁輸措置を遵守していると断言する声明を発表した。
しかし、問題はこうした否定が示唆するよりもはるかに複雑である。石油輸出は二国間の単純な取引ではなく、複数の国家および企業間の複雑な外交的・法的合意に基づいている。今回のケースでは、イスラエルへの石油輸出は、トルコの最も強力な同盟国の1つであるアゼルバイジャンをも巻き込むことになる。石油輸出を完全に停止しても、エルドアン大統領にとってイスラエルとの関係において政治的な代償はほとんどないだろうが、トルコの財政に打撃を与え、ひいては最も重要な地域関係の1つを損なう可能性もある。エルドアン大統領は、この代償を支払うつもりはないようだ。
トルコは自国のエネルギー資源は乏しいものの、主要なエネルギー輸送国(a major
energy transit country)であり、それが国庫収入をもたらし、外交上の影響力を高めている。この地域は、アゼルバイジャン、イラクのクルド人地域、ロシアからトルコを経由してヨーロッパへガスと石油を運ぶパイプラインが縦横に走っている。トルコを通過する2本の石油パイプラインのうち、イラクからジェイハンまでを結ぶパイプラインは、アンカラとバグダッド間の紛争により2023年に停止された。もう1本のバクー・トビリシ・ジェイハン(BTC)パイプラインは2006年から稼働しており、カスピ海からジョージアを経由してトルコの地中海沿岸までアゼルバイジャン産の原油を運び、そこからイスラエルへ送っている。
パイプラインの終点であり、原油が貨物船に積み込まれるジェイハンでは、アゼルバイジャンとのつながりを示す痕跡が至る所に見られる。そこにはトルコ・アゼルバイジャン友好公園があり、パイプラインのルートを示す地図が刻まれた記念碑が建ち、その前には近代トルコの建国者ムスタファ・ケマル・アタテュルクとアゼルバイジャンの元大統領ヘイダル・アリエフの像が立っている(ターミナル自体もアリエフの名にちなんで名付けられている)。両国関係はソ連崩壊以降、友好的であったが、近年ではトルコがアゼルバイジャンによるアルメニアからのナゴルノ・カラバフ地域奪還に多大な支援を提供することで、アゼルバイジャンの支持をさらに高めた。
しかし、両国はイスラエル問題で意見が分かれている。エルドアン大統領はパレスティナの大義を声高に支持しているが、アゼルバイジャンはイスラエルと緊密ながらも異例の同盟関係にある。2011年以降、アゼルバイジャンとイスラエルの関係は、イスラエルによるアゼルバイジャンへの武器売却と、アゼルバイジャンによるイスラエルへの石油売却によって強化されてきた。2024年1月、トルコによる禁輸措置が発効する前、イスラエルはアゼルバイジャン産原油の最大の輸入国であり、この月だけで2億9700万ドル相当の原油を購入し、そのすべてがジェイハン・パイプラインを経由して輸出された。(『フォーリン・ポリシー』誌は、アゼルバイジャンのエネルギー省と国営石油会社SOCARに対し、BTCパイプラインを通じたイスラエルへの輸出が継続されているかどうかを問い合わせたが回答は得られなかった。)
関係する企業の利害関係が事態をさらに複雑にしている。パイプライン建設に関する協定はアゼルバイジャン、トルコ、ジョージアが締結したが、運営はBTC社が行っている。同社の11の株主のうち、最大株主はBPである。その他は、アゼルバイジャン、フランス、ハンガリー、インド、日本、ノルウェー、トルコ、アメリカに拠点を置くエネルギー企業である。各社は、生産された原油の自社分を個別に販売する権利を有している。
トルコが1999年にこのコンソーシアムと締結したホスト政府協定に基づき、トルコは自然災害、トルコが開始していないトルコ領内での戦争、または国際的な禁輸措置の場合にのみ、パイプラインを通る石油の輸送を停止できる。トルコはBTCパイプラインからイスラエルへの石油輸送を一方的に禁止することはできず、もしそうすれば関係者への賠償責任を負うことになる。
つまり、BTC契約によれば、トルコは他の関係者の合意を得るか、多額の罰金を科されるかのどちらかを選ばなければ、イスラエルへの石油輸送を阻止することはできない。これはエルドアン大統領にとって禁輸措置問題の格好のスケープゴートとなり得る。法的に、トルコは身動きが取れない状態にあるのだ。(トルコのエネルギー省と通信局は、一方的な禁輸措置を課すことが可能かどうかについてのコメント要請に回答しなかった。)
しかし、エルドアン大統領はこの件について説明するどころか、親パレスティナの姿勢を改めて強調し、トルコは石油輸送による経済的利益を享受している。2024年11月、エルドアン大統領率いる公正発展党(AKP)所属のオズレム・ゼンギン議員は議会で、トルコがBTCパイプラインを通じて原油1バレルあたり1.27ドルの収入を得ていることを明らかにした。このパイプラインは毎日70万バレルが輸送されており、年間約3億2500万ドルの収入となる。これは、トルコが経常収支赤字の削減を目指す上で、極めて重要な外貨獲得源となっている。
活動家たちは、BTC協定の条項に関わらず、トルコは国際法に基づきイスラエルへの石油輸出を阻止する権限を有していると主張している。トルコは国連ジェノサイド条約の締約国であり、ジェノサイド行為の防止と処罰を義務付けられている。英国を拠点とするロビー団体「パレスティナのためのグローバル・エネルギー禁輸」の活動家ナジ・ムハンマドは、国際司法裁判所がイスラエルに対して起こしたジェノサイド訴訟の当事国として、トルコはBTCパイプラインの終点における立場を利用してイスラエルへの輸出を阻止する法的根拠も有していると述べている。「ジェノサイドを防止するというこの法的義務は、いかなる契約上の問題にも優先する」とムハンマドは語った。
エルドアン大統領にとって、この問題は当分解決しそうにない。「人々はエネルギー輸送とジェノサイドがどのように関連しているかを理解し始めている」とムハンマドは述べた。国内では、これらの疑惑はエルドアン大統領の支持基盤である宗教的・親パレスティナ派の有権者、特に若い保守層を激怒させている。すでに、石油輸出の継続を詳述した「ジェノサイドを助長するのを止めろ」報告書は抗議活動を引き起こし、左派と保守的なイスラム教徒という政敵同士が結集して二重基準を非難する声を上げている。
これらの暴露はエルドアン大統領にとって国際的にも問題となり、彼がしばしば西側諸国に対して向ける偽善という非難を、イスラエルに対しても浴びることになるだろう。これはイスラム世界における彼の評判を傷つけ、急速に変化する中東情勢において西側諸国に対する影響力を獲得しようとする彼の試みを阻害する可能性がある。
シリアのバッシャール・アル・アサド大統領の失脚に伴い、エルドアン大統領はダマスカスの新政権に対する政治的影響力を行使しようと画策している。トルコの情報機関トップであるイブラヒム・カリンは、アサド大統領が国外に逃亡してからわずか4日後にダマスカスを訪問した。シリアの新閣僚の何人かはトルコと直接的なつながりを持っている。アメリカは既にトルコを、アサド政権を打倒した過激派組織「ハヤト・タハリール・アル・シャーム」への裏ルートとして利用しており、他の地域大国を関与させないようにしている。
しかし、トルコがイスラエルとの関係を継続していることに対する地域全体のイスラム教徒の怒りが高まれば、イスラエルによるシリア領土の占領が続いている現状を鑑みると、エルドアン大統領のダマスカスにおける影響力は阻害される可能性がある。
抗議活動で最大4年8カ月の懲役刑に直面しているユルドゥルムは、トルコの政策変更にはほとんど期待を抱いていない。彼女の目には、エルドアン大統領は自らの言動と現実との乖離を指摘する人々を黙らせようとしているように映る。ユルドゥルムは次のように述べている。「エルドアン大統領は、イスラエルとの重要な貿易・ビジネス取引、特に大企業や多額の資金が絡む取引について、一貫して言及を避け、あるいは全面的に否定している。これは無視できない厳しい現実だ」。
※ハンナ・ルシンダ・スミス:トルコ在住のジャーナリスト。著書に『エルドアン台頭:トルコの魂をめぐる戦い(Erdogan Rising: The Battle for the Soul of Turkey)』、共著に『ザリファ:男社会における女性の闘い(Zarifa: A Woman’s Battle in a Man’s World)』がある。Xアカウント:@hannahluci
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』



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