古村治彦です。

 イラン戦争の仲介役はパキスタンのシャバズ・シャリフ首相であり、パキスタン陸軍参謀長のアシム・ムニール元帥である。ムニール元帥はパキスタン軍情報・諜報機関ISI長官を長年務め、イランやイスラエルの各国の情報・諜報機関との太いパイプを持ち、また、アメリカのドナルド・トランプ大統領とも昵懇の仲である。表に出ている仲介役はパキスタンであるが、実質的にイランに働きかけを行っているのは中国である。そのことは、トランプ大統領もシャリフ首相も認めている。中国側は正式には働きかけを認めて、発表していないが、中国は積極的にイランに働きかけを行ったことは事実である。

 イランから輸出される石油の80%以上が中国向けである。イスラム革命防衛隊によるホルムズ海峡封鎖が実施された3月初旬以降も、イランは石油輸出を実施しており、そのことはアメリカも認めていた(原油価格安定のため)。イラン側は人民元による決済を条件として民間タンカーの航行を認めていた。

 2026年4月11日にパキスタンのイスラマバードで、アメリカとイランによる和平交渉が行われたが、21時間に及ぶ交渉も合意には至らなかった。その後、トランプ大統領はアメリカ海軍によるホルムズ海峡封鎖の実施を発表した。現在、イラン戦争は停戦状態にあるが、ホルムズ海峡をお互いが封鎖するという状態になっている。これによって、中国向けのイランからの石油輸出もできないということになる。トランプ大統領によるホルムズ海峡封鎖発表は中国に対して、イランへの働きかけを強めるように求める措置だ。

 2026年5月14日にアメリカのドナルド・トランプ大統領は中国を公式訪問する。この時までに、トランプ大統領は和平合意を達成することで、意気揚々と訪中したいところだろう。中国もトランプを中国に招いて、トランプを称揚しながら、同時に、台湾統一について、踏み込んだ発言、「台湾問題は中国の内政問題である」をさせて、アメリカが台湾に関して関与しないということを明らかにさせたいだろう。

 イラン側としては、和平合意の条件として、体制と安全の保証をアメリカと中国に求めるだろう。アメリカがイランの体制と安全の保証を行っても、それを信用することはできないというところが最大の問題点となる。中国による保証ということも求めることになるだろうが、中国としては、アメリカと直接対峙する最悪の事態ということにもなりかねず、ここをどう解決するかということになる。問題の根本は、アメリカの信頼性が欠如しているという点だ。そこをこれから中国がどのようにして埋めていくかということになる。世界政治における中国の役割はより大きくなっていく。このことをイラン戦争の現状は示している。

(貼り付けはじめ)

中国、アメリカのイラン港湾封鎖は「無責任で危険」と非難

赤い船体に黄色いクレーンのついた貨物船が洋上にある画像提供,Reuters

BBC NEWS JAPAN2026415

ジェイムズ・グレゴリー

https://www.bbc.com/japanese/articles/c15dd704jpno

中国政府は14日、アメリカによるイラン港湾の海上封鎖を「無責任で危険だ」と非難した。中国外務省は、この動きが「ただでさえもろい状態にある停戦合意を損なう」と主張。アメリカとイスラエルの攻撃に対抗してイランが事実上封鎖した重要航路のホルムズ海峡で、通過する船舶の安全をさらに危険にさらすとした。

中国外務省の郭嘉昆報道官は記者会見で、「海峡の状況緩和の条件を根本的に整えるには、包括的な停戦を実現し、戦争を終らせる以外に方法はないと、中国は考えている」と述べた。

「中国は全当事者に対し、停戦の取り決めを順守し、対話と和平交渉という全般的な方向性に専念し、地域情勢の緩和促進のため実務的に行動し、海峡の通常の航行をできるだけ早く回復させるよう求める」とも、報道官は述べた。

郭報道官はこのほか、中国がイランに新しい防空システムを供与する準備を進めているとの報道について、「完全な作り事だ」と一蹴した。

ドナルド・トランプ米大統領は、中国がイランに軍事支援を提供した場合、中国製品に50%の関税を課すと警告している。

郭報道官は、「アメリカがこれを口実に中国に対する追加関税を課すことに固執するならば、中国は必ず断固とした対抗措置を取る」と述べた。

アメリカによる封鎖は13日に発効した。この前日には、パキスタンが仲介したアメリカとイランの協議が決裂している。

封鎖措置について、トランプ氏は、イランに核開発の野心を放棄させるためのものだと主張している。専門家の中には、イラン産原油を最も購入している中国に圧力をかけ、イラン政府に海峡の開放を促す狙いがあるとする人もいる。

usblockadeofhormuzstraitmap2026001

イランの国連大使はアメリカによる封鎖を、イランの主権に対する「重大な侵害」だと非難している。

これまでのところ中国の船舶は、海峡を通過できている数少ない船の一部だった。海峡通過のために、イランに通行料を支払っていたかどうかは明らかになっていない。

アメリカによる封鎖は、中国への石油供給を断ち切り、中国経済に広範な影響を及ぼす可能性がある。

中国の主張に先立ち、JD・ヴァンス米副大統領はホルムズ海峡をめぐるイランの封鎖について「経済的テロ」だと非難していた。イランは先月以降、通過する船舶を実際に攻撃し、さらに攻撃すると脅してきた。

ヴァンス氏は米FOXニュースに対し、「合衆国大統領が示したように、こちらも同じように対抗できる」と述べた。「イランが経済的テロを実施しようとするなら、こちらはイランの船舶は1隻も外へは出さないという、単純な原則を順守する」。

アメリカは、イラン以外の港との往来のために海峡を利用する船舶を軍が妨害することはないとしている。イラン沿岸近くで米海軍艦船を危険にさらすよりも、オマーン湾やインド洋で海軍を展開し、イランの湾岸港湾を封鎖しようとしている。

しかし、BBCヴェリファイ(検証チーム)が分析した航行データによると、14日には少なくとも4隻のイラン関連船が海峡を通過した。

一方、原油価格は14日に1バレルあたり100ドルを下回った。

アメリカとイランの間の不安定な停戦は、48日に発効して以来、維持されている。ホルムズ海峡の地位や、停戦にレバノンが合意に含まれているかどうかが、両国の間で争点となっている。

イスラエルは、停戦が適用されるのはイランのみだと主張。イランの支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派武装勢力ヒズボラに対する激しい攻撃を継続しており、レバノンではこれまでに何百人も殺害している。

こうした中、レバノンとイスラエルの当局者による直接協議が14日、米ワシントンで行われた。両国が直接的に対話したのは1993年以来初めて。

=====

中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦によって中国が「最大の勝者」となる理由

4/11() 8:05配信 ニューズウィーク日本版

https://news.yahoo.co.jp/articles/03f78918876e11a6c23c47a354a3d4c2f6f8d6b0

https://news.yahoo.co.jp/articles/03f78918876e11a6c23c47a354a3d4c2f6f8d6b0?page=2

今週成立した停戦について、アメリカとイランはいずれも自らが勝者だと主張している。しかし、水面下で最大の勝者となったのは中国である可能性がある。

417日、ドナルド・トランプ米大統領は、中国指導部がイランとの2週間の停戦実現に貢献したと考えていると公に述べた(この停戦が維持されるかどうかは別問題だが)。

この発言は、5月中旬に予定されているトランプの中国公式訪問に向けて前向きな材料となる。

中国政府も、戦闘の一時停止を歓迎すると表明した。

「戦闘開始以来、中国は紛争終結に向け積極的に取り組んできた」と、在米中国大使館の報道官、劉鵬宇(リュー・ペンユー)は本誌に語った。「王毅(ワン・イー)外相は関係各国の外相と26回協議を行った。その中にはイラン外相との2回の協議も含まれる」

中国は中東に特使を派遣したほか、3月下旬にはパキスタンとともに5項目からなる和平案を発表した。

48日、イラン政府は地域の平和維持を支援する安全保障の後ろ盾として中国を招いた。アフリカの角に近いジブチに海外軍事基地を持つ中国は、この提案を受け入れていないが、今回の成果はすでに中国にとって大きな実績となっている。

劉は「関係各国がこの平和の機会を捉え、対話によって相違を埋め、できるだけ早く敵対行為を終わらせることを望む」と述べた。「責任ある大国として、中国は今後も建設的な役割を果たし、湾岸および中東地域の平和と安定の回復に積極的に貢献していく」

●理想的な仲介者

イラン戦争で中国が調停役を引き受けることは、ある意味で予想外ではなかった。

中国とイランの関係は、イランの石油輸出の90%以上を中国が購入していることにとどまらない。両国は長年にわたり外交および防衛面でも結びつきを持っている(イランが導入した中国製の防空システムを含む軍事装備は、アメリカとイスラエルによる激しい爆撃を防ぐには至らなかったが)。

46日、ニューヨークで開催された国連安全保障理事会では、バーレーンが提出したホルムズ海峡の安全保障に関する決議案が、中国とロシアの拒否権により採択されなかった。

中国の傅聡(フー・ツォン)国連大使は、この決議案は「紛争の根本原因と全体像を捉えていない」と指摘したうえで、「アメリカは文明の存続そのものを公然と脅かしている」とアメリカ批判を展開した。

ニューヨーク・タイムズ紙は、イラン最大の貿易相手国である中国が停戦成立に重要な介入を行ったと報じている。この実績により、中国の紛争調停の能力に対する評価が高まる可能性がある。

ただし、停戦実現に向けた具体的な働きかけや、テヘランに対してどのような圧力をかけたのかについては明らかにされていない。

中東諸国は、これまでアメリカが打開できなかった外交的行き詰まりに対し、中国が関与することを歓迎したとみられる。

その背景には、中国がペルシャ湾地域から石油の約半分、天然ガスの約3分の1を輸入しているという事情がある。

●ウクライナ戦争への介入の可能性は?

一方、イランの新指導部には選択肢がほとんど残されていなかったようだ。ドローンやミサイル攻撃によりカタールやオマーンの重要なエネルギーインフラを攻撃し、従来の交渉相手との関係をほぼ断絶していたためである。

米ワシントンD.C.のシンクタンク、ジャーマン・マーシャル基金のインド太平洋プログラム責任者であるボニー・グレイザーは、「中国が世界中で仲裁者としての役割を積極的に求めているとは思わない。中国の利益が重大に脅かされ、かつ強い影響力を持つ場合に限り積極的に関与する傾向がある」と分析している。

「中国は紛争の激化や長期化が自国の利益を損なうことを防ぐため、イランに圧力をかけた可能性が高い。中国はイラン(の現政権)が存続し、安価な石油を(中国に)供給し続けることを望んでいる」

また、中国によるウクライナ戦争への可能性については、「ウクライナ戦争は中国の利益に直接的脅威を与えていない。さらに、習近平はイランに対するほどロシアに圧力をかける意欲は低いと考えられる。特にプーチンは停戦や仲介による解決に関心を示していない点でイランと異なる」と否定的な考えを示した。

●戦後はどうなる?

アメリカとイランの協議が長期的な和平合意に向かう中、中国は戦後復興に関与する最初の国の1つとなるという形で利益を得る可能性がある。

中国はすでにイランにとって重要な経済パートナーであり、2016年には習近平主席の「一帯一路」構想にイランを参加させている。中国はインフラ整備だけでなく、最新技術をイランの都市に導入する上でも有利な立場にある。

パキスタンのシェバズ・シャリフ首相は48日、中国を含む各国が停戦実現に向けて「極めて重要かつ全面的な支援」を行ったとXに投稿した。同国政府は411日にイスラマバードで和平協議を主催する予定だ。

ホルムズ海峡におけるイランの「通行料」構想が今後どうなるかは依然として不透明であり、今後の協議の争点となる可能性がある。トランプはすでに、共同事業によって海峡の通行を維持できる可能性に言及しているが、イラン革命防衛隊は、最終的な決定権を自分たちが握っておきたいと考えているようだ。

また、フィナンシャル・タイムズ紙は48日、イランが海峡を通過する石油1バレル当たり1ドルを暗号通貨で支払うことを要求していると報じた。

さらに、イランの核開発問題のような難題に入る以前から、停戦そのものについて意見の相違が存在している。

特に、イスラエルがイランの代理勢力であるヒズボラに対して行っている攻撃が、停戦の対象に含まれるかどうかが争点となっている。アメリカとイスラエルは、これらは停戦の対象外としている。

中国はイランの戦争に積極的に介入しているわけではない。しかし、大国となった中国の動きは、中国から離れた場所での戦争においても無視できないだろう。

ジョン・フェン

=====

トランプ「中国がイランを停戦交渉の場に引き込んだ」 習近平の思惑は?

遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士)

4/9() 12:49

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c11d00fa28cc17dd6c6430a51f7c345447b29beb

 パキスタンのシャバズ・シャリフ首相は48日、パキスタンの仲介によって、米国、イラン、そして両国の同盟国がレバノンを含む「あらゆる場所」での停戦に合意したと発表した。トランプ大統領がイランを壊滅させる期限としていた日本時間8日午前9時のわずか1時間前のことである。

 いったい何が起こって、いきなり「2週間の即時停戦」が実現したのか?

 その陰には中国の動きがあったことをトランプは認めている。

 中国自身はそれに関して沈黙しているが、習近平にはどのような思惑があるのだろうか?

◆(ペルシャ)文明を消滅させるとまで豪語したトランプ

 トランプの口汚さは限界を超えていた。ここでは書けないような言葉を吐き続けた。

 イランは紀元前500年とも300年とも言われる歴史を持ったペルシャ帝国の文明を引き継いでいる国だ。その文明を破壊しつくし、この世から消滅させてやるとトランプはわめいた。一般庶民が生きていくことができなくなる橋や発電所も全て爆撃して破壊するとわめき続け、遂には「イラン人は動物なので殺しても戦争犯罪にはならない」とまで言ってのけたのである。

 このような人が「世界最大の民主主義国家のリーダー」であっていいのか?

 民主主義でなくとも、少なくとも人類が築き上げている一国家のリーダーであり続けていいのか?

 一部のアメリカ人と少なからぬイスラエル人以外は、誰一人トランプの狂気じみた罵詈(ばり)雑言(ぞうごん)に賛同する人はいないだろう。

 なぜここまで品性のない言葉を吐き続けるかといえば、おそらくトランプには、イラン攻撃から抜け出したいと思ってももう退路がなく、絶望的な悪口(あっこう)雑言を吐く以外に道が無くなったからではないだろうか。

 筆者には、トランプが「誰か助けてくれー!俺をこの泥沼から掬(すく)い出してくれ―!」と、助けを求めているようにしか聞こえない。

 彼はイラン攻撃から抜けだしたいのだ。イランは思ったより強かった。

 この底なしの攻撃を続ければ、石油価格は高騰し米国民の生活は苦しくなり、中間選挙で必ず敗北することは分かっている。

 しかし「名誉ある撤退」ができない。

 習近平は、そこに目を付けたのではないかと思う。

 ――あなたを救い出してあげる方法が一つだけあります。それはイランにホルムズ海峡を開かせることです。そしてイランの方が停戦交渉に積極的に応じることです。そうすれば、あなたは自分で勝手に「これは米国の勝利だぁ!」と叫ぶことができます。せめて2週間でもいい。休戦していれば、あなたはもう二度と、あの抜け出せない泥沼に戻りたいとは思わないようになるでしょう。

 習近平は、こう考えたのではないかと「推測」するのである。

 もちろん習近平の頭には、ある「狙い」があることは容易に想像できる。その具体的内容は後述するとして、まずはトランプが「中国がイランに即時停戦を促してくれた」と本音を吐いたファクトを確認したい。

◆トランプが「イランを停戦交渉に引きずり込んだのは中国だ」と言った!

 なんと、トランプは8日、AFPの電話取材を受けて、以下のように答えている。

 ●これは完全に米国の勝利だ!

 ●中国がイランを交渉のテーブルに着かせ、2週間の停戦合意に導いたと信じている。

 ●私は5月に北京を訪問し、中国の習近平国家主席と会談する予定だ。

 ●(主要同盟国であるイランを停戦交渉に導く上で中国が関与していたのか、という質問に対して)「そうだと聞いている」答えた。

                     (AFPの取材に対する回答の概要は以上)

 習近平が考えているだろうと予測した通りの展開だ。

 同日、CNN(日本語)も<トランプ氏、イランが停戦交渉に応じるよう中国が後押ししたとの考え>という見出しで同様の報道をしている。トランプのこの発言に関してコメントを求められた在ワシントン中国大使館の報道官はCNNに対し、「紛争が始まって以降、中国は停戦を実現し、紛争を終結させるために働きかけてきた」としか述べなかったという。中国が手を貸したのだということを中国側は明かそうとしない。

 CNN48日の中国外交部定例記者会見でも「中国が手を差し伸べたのではないか」という質問を外交部報道官に向けたようだが、報道官は在ワシントン中国大使館と同様の回答しかしなかった。

 習近平は、「いまこそイランを説得しろ!」と王毅外相に命じて激しく動いたにもかかわらず、それを誇示しないというか、隠そうとさえしている。そこにはトランプに花を持たせて、やがて北京で開かれる米中首脳会談のときに習近平に圧倒的に有利なディールを持ちかける材料にしたいという思惑が見え隠れする。

NYtimesAPが「中国が最後に介入し、停戦を促進した」と報道

 48日 午後420(東部標準時)、ニューヨークタイムズは<米国、イラン、イスラエルが停戦に合意>というタイトルで、以下のように報道している。

 ――イラン当局者3人によると、パキスタンの必死の外交努力と、イランの主要同盟国である中国による土壇場での介入(イランに対し柔軟な姿勢を示し緊張緩和を求めた)を受け、イランはパキスタンの2週間の停戦提案を受け入れた。これは、重要インフラへの被害による経済的打撃への懸念が高まっていることが背景にある。当局者らは、停戦は新最高指導者モジュタバ・ハメネイ師によって承認されたと述べた。

                    (ニューヨークタイムズからの引用は以上)

 同じ48日のAP通信は<中国当局はイランに対し、米国との停戦の道を模索するよう促した>と、もっとストレートに報道している。そこには以下のように書いてある。

 ――中国当局はイランに対し、米国との停戦に向けた道筋を見出すよう促した。イラン最大の貿易相手国である中国は、イラン側と協議し、停戦合意への道筋を見出すよう働きかけた。匿名を条件に取材に応じた2人の当局者が明らかにした。当局者らによると、交渉が進展するにつれ、中国当局者はイラン当局者と連絡を取り合い、停戦合意への道筋を見出すようイランに促した。外交問題について公に発言する権限を持たない当局者の1人は、中国は影響力を行使しようと、主にパキスタン、トルコ、エジプトなどの仲介者と連携してきたと述べた。中国外務省はコメント要請にすぐには応じなかった。

 火曜日、中国外務省の毛寧報道官は、「すべての当事者は誠意を示し、そもそも起きるべきではなかったこの戦争を速やかに終結させる必要がある」と述べた。彼女は、中国は今回の紛争が世界経済とエネルギー安全保障に与える影響について「深く懸念している」と述べた。 (AP通信からの引用は以上)

 このように複数の米メディアが、イラン側からの証言として「中国が動いたために即時停戦への急転した」ことを報道しているのである。

 中国自身といえば、327日の王毅外相とパキスタンの外相との電話会談や、331日に王毅外相がパキスタンの副首相と会談して「即時停戦」など5項目の提案をしたことしか報道していない。

 トランプとのディールに使うため、あたかも「これはトランプの功績だ」と言えるようなプレゼントをしているとしか思えないのである。

◆中国にはなぜイランを説得する力があるのか

 ならば、なぜ中国にはそこまでイランを説得する力を持っているのだろうか?

 それはイランの経済収入の柱である石油の約100%に近い量を中国が購入してくれているからである。

 イランの2025GDP3565.1億ドル(IMFデータ)で、中央政府の歳入はGDP9.5%なので、約339億ドルになる。

 一方、米エネルギー情報局(EIA)が推測したイランの原油収入は2023420億ドル、2024430億ドルとなる。

 また、米中経済安全保障調査委員会のファクトシートでは、以下のように述べている。

 ――中国はイラン最大の貿易相手国であり、イラン産原油の主要な購入国である。中国による購入はイランの原油輸出量の約9割を占め、イラン政府の予算や軍事活動を支える年間数百億ドルの収入をもたらしている。(以上)

 そこで筆者独自に「イラン原油輸出における中国の比率の推移」を、米国に拠点を置く超党派の非営利団体United Against Nuclear IranIran Tanker Trackingにあるデータに基づいて図表化することを試みた。Iran Tanker Trackingでは、1回アクセスして1ヵ月のデータを1個取得する方法しかない。そこで根気よく毎月のデータを入手すべく、毎回アクセスして1データずつ入手して作成したのが図表1である。

図表1:イラン原油輸出における中国の比率推移

iranoilexporttochinapercentage001

United Against Nuclear IranIran Tanker Trackingに基づいてグラフは筆者作成

 2024年のイランの原油収入は430億ドルで、原油輸出における中国の比率は89.9%なので、2024年中国に原油を販売して得る収入は386億ドルとなり、イラン政府の歳入(2025年は339億ドル)の規模を上回っている。ただし、EIAの原油収入推計は国際の原油価格に基づいているのに対して、中国はイランから割引価格で購入しているため、実際の収入はもう少し少ない可能性がある。それでもなお、中国への原油輸出によって得られる収入は、イランの国家歳入値にほぼ相当する。

 これをもう少し長期的スパンで見ると、中国のイラン原油の輸入量は図表2のような推移を辿(たど)っている。

図表2:中国がイランから輸入した原油の推移(トランプ1.0の対イラン制裁以降)

chinaimportoilfromiran20172026001

公開されている各種情報から引用したケプラーデータ(実線)に基づき、20263月は中旬までのケプラー推測データ(点線)に基づき、グラフは筆者作成

 引用した報道には以下の記事がある。

 https://ifpnews.com/irans-crude-oil-shipments-china-tripled-2020/

 https://iranprimer.usip.org/blog/2019/sep/11/irans-increasing-reliance-china

 https://www.reuters.com/world/china-trade-spat-undermines-trumps-max-pressure-iran-campaign-bousso-2025-04-10/

 https://www.reuters.com/business/energy/chinas-heavy-reliance-iranian-oil-imports-2026-03-21/

 https://www.kpler.com/blog/strait-of-hormuz-watch-amid-iran-conflict-risk-tracking-crude-flows-interference-and-diversions-in-kpler

 https://www.kpler.com/blog/explainer-why-kharg-island-is-the-backbone-of-irans-oil-economy---and-its-greatest-vulnerability

 なお、20263月のデータは、ケプラーの316日の記事に基づくので、3月全体のデータではない。

 このように、イラン経済は中国によって支えられており、人民元で決済している。米国の制裁によりイランはドルを使えないからだ。36日のコラム<イラン「ホルムズ海峡通行、中露には許可」>で書いたように、だからこそイランはホルムズ海峡において中国の船舶の通航を許可し、さらに人民元で決済する船舶の通航を追加許可したのである。

 その意味でイランの戦費は「中国からの石油購入による収入がなければ成立しない」と言っても過言ではない。

 すなわち、イランは中国に「今はホルムズ海峡を開放して、戦争を一時停止しろ」と言われたら、「中国のアドバイス(指示?)に従う」という関係にあるのである。

 だからこそ、今回は「中国の指示によって即時停戦が実現した」ということになる。

 NHKをはじめ日本のメディアは、イランとアメリカの間の紛争なので、アメリカやイラン問題に詳しい専門家の話だけを聞いていればいいと思っているようだが、どの専門家も「真の理由」を知らないで「不可解ですね・・・」とか「予測がはずれました・・・」をくり返している。

 真相を知るには、もっと大局的な視点を持たなければならない。

 今回の盲点は、中国の動きを見ていなかったところにある。

◆習近平の思惑

 では最後に、習近平の思惑は何処にあるのかに触れたい。

 習近平の政治生命を懸けた最大の目標は台湾統一である。

 ここまでの蛮行をくり返すトランプのやり方は、習近平にとっては大きなプレゼントでもあり、唯一のチャンスでもある。じっと動かず観察していた習近平は、ここで意を決して動いたものと考えられる。しかもそれをトランプの手柄にするという手腕は、さすが中国数千年の戦乱の歴史が残した賜物だろう。

 晴れて北京で米中首脳会談が行われた時には、心理的に習近平に有利の立場から「台湾統一」を持ち出す。「中華民族の統一なので、口出しをしないように」と言える力関係に持っていった。

 これが習近平の唯一にして最大の目的だ。

 もちろん中東におけるイランの存在も、習近平にとっては無視できない。

 202557日のコラム<膨大な海外米軍基地が示す戦後体制 習近平は貿易で世界制覇を狙っている>に書いたように、中東諸国のほとんどの国には米軍基地があり、イランが米軍に押さえられてしまったら、中東地域が全て米国追随国になってしまう。それでは困るのである。一帯一路の理念も貫徹できなくなるしグローバルサウスを束ねようとする習近平の夢も潰える。

 2023312日のコラム<中国、イラン・サウジ関係修復を仲介 その先には台湾平和統一と石油人民元>に書いたように、中国はイランとサウジアラビアを和解させて中東諸国に和解雪崩現象をもたらした。イランを上海協力機構やBRICSにも加盟させて国際舞台に上らせ、国際秩序の中に組み込もうとした。

 そうしないと経済貿易で世界をつなごうとしている習近平の狙いが果たせないからだ。経済貿易で世界覇権を握ることによって、台湾統一の阻害要因を取り除こうとしているのである。

 奇しくもいま、台湾の国民党主席・鄭麗文が訪中しており、習近平とは10日に10年ぶりに国共党首会談を行う。習近平の思惑が凝縮されているような一日となろう。

 その思惑が米イスラエルのイラン攻撃の期限付き即時停戦をもたらしたことから、日本人は目を逸らしてはならない。

 その視線で、高市総理が何をやっているのかを見ると、世界が見えてくるだろうと願う。

 但し残念ながら、結局イスラエルはレバノンを攻撃し続けており、イランは停戦合意違反と反発してホルムズ海峡を再封鎖しようとしている。果たしてこの停戦合意がどこまで続くかは定かでない要素があることを最後に付け加えておきたい。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める