古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は132年ぶりの返り咲き(カムバック)で第二次政権をスタートさせた。第二次トランプ政権は変質した。「アメリカ・ファースト(America First)」は、国内問題解決優先、海外での戦争はしないということが本質である。ドナルド・トランプはアメリカ・ファーストを裏切った。この状況を何とかしようとしているのが、JD・ヴァンス副大統領である。

 それでも、ドナルド・トランプは第45代、第47代大統領として、アメリカ誌に名前を刻むことになる。それでは、ドナルド・トランプはどのような形で、名前を刻み、人々に記憶され、人口に膾炙することになるのだろうか。

 下記論稿の著者スティーヴン・M・ウォルトは、トランプについて「政策遂行」ではなく「常識破壊」の卓越した政治力の大統領として記憶されるだろうと述べている。以下に引用する。

(貼り付けはじめ)

大統領としてのトランプの最大の功績は、アメリカの民主政治体制秩序を形作ってきた多くの規範を打ち破り、多くの常識に挑戦したことだ。支持者たちにとっては、それはトランプの天才性(his genius)であり、批判者にとっては、それは彼の危険さの理由(why he’s so dangerous)だ。残念ながら、彼は効果的な改革を実行するために必要な細部を把握する能力も意欲も欠けており、経験豊富で強硬な外国の敵対勢力を出し抜く交渉力も持ち合わせていない。しかし、現実がどうであれ、自分が素晴らしいことを成し遂げていると人々に信じ込ませる能力がある限り、こうした欠点は問題にならないかもしれない(But these failings may not matter, given his ability to convince people that he’s doing great things no matter what the reality may be

(貼り付け終わり)

 決して褒めている訳ではないが、人々を惹きつける力があり、カリスマ的な能力を持つ人物であるということを述べている。そのような力がなければ、アメリカ大統領にはなれないだろう。ドナルド・トランプはこれまでも、そして、これからも人々の関心を引き、研究者たちによって研究されていく大統領であろう。

(貼り付けはじめ)

トランプはどのように記憶されるのか(How Trump Will Be Remembered

-これほどまでに在任期間を自分自身と自身の功績のためだけにあからさまに利用した大統領は他にいない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年6月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/30/trump-president-us-history/

アメリカ大統領は皆、強い自我・自尊心(egos)を持っていたし、持っている。そうでなければ、大統領執務室(the Oval Office)にたどり着くことすら難しいだろう。そして、彼らは死後、良い形で記憶されたいと願っている(they want to be remembered favorably after they are gone)。ジョージ・ワシントン、エイブラハム・リンカーン、フランクリン・D・ルーズヴェルトといった少数の大統領は、卓越した資質に加え、並外れたリーダーシップを必要とする困難な状況を克服したことで、崇高な地位を築いている。平穏な時代に政権を担った大統領、あるいは在任中の行動が明らかな失敗によって評判が傷ついた大統領は、歴代大統領をランキング形式で評価するようなリストで、最下位に沈まないことを祈るしかない。

他の多くの事柄と同様に、ドナルド・トランプの歴史における自身の地位への執着(obsession)は異例の程度である。これほどまでに露骨に自己中心的であり、アメリカ史上最も偉大な大統領の1人として記憶されたいと願う姿勢を、これほどまでに明白に示した大統領は他にいない。実際、彼はすでにその栄誉にふさわしいと信じているようだ。

トランプの個人的な栄光への熱望は、至るところに見られる。一期目の政権時、トランプは記者団に対し、重要なポストの補充が遅れていることは問題ではない、なぜなら重要なのは自分だけだからだと語った。彼はノーベル平和賞への希望を繰り返し表明しており、その一因は前任者のバラク・オバマが受賞したことだ。2024年の大統領選キャンペーン中、彼は自分がリンカーンやワシントンよりも優れた、史上最高の大統領であると明言した。トランプは自身の知性を自慢し、閣僚やその他の高官には公の場で媚びへつらうような儀式的な行為を行うことを期待している。カルト的なMAGA共和党員たちはすでにトランプを崇拝する活動を始めており、彼の顔をラシュモア山に加えることを提案する連邦議会法案まで提出されている。

しかしながら、トランプの問題は、在任中の実績が良くて平凡、最悪の場合は大失敗だったということだ。1期目には、新型コロナウイルス感染症のパンデミックへの対応を誤り、アメリカの債務を8兆ドル以上増加させ、アメリカの貿易赤字を悪化させ、アフガニスタン戦争を終結させることに失敗し、北朝鮮に核兵器削減を説得できず、長年の同盟諸国との関係を何の利益も生み出すことなく、逆に混乱させた。こうした実績だったので、有権者たちは当然ながらトランプを退任させた。2期目の政権を獲得できたのは、ジョー・バイデンがもっと早く選挙戦から撤退しなかったことが大きな理由であり、現在トランプはアメリカの国内政策と外交政策の根本的な変革を試みているが、これは景気後退への正当な懸念を引き起こし、アメリカが世界をリードする科学技術力と学術力を破壊する恐れがあり、支持率が過去80年間でどのアメリカ大統領よりも急速に低下する原因となっている。時代遅れと言われるかもしれないが、私にはラシュモア山に刻まれるような人物には見えない。

しかし、トランプをまだ見限ってはいけない。政治家になる前も後も、彼のキャリアは、事実がそうでない場合でも、あたかも成功しているかのような錯覚を作り出す驚くべき能力に基づいていたからだ。トランプは莫大な財産を相続してビジネスキャリアをスタートさせたが、その後、度重なる破産や事業の失敗、そして数々の詐欺行為に見舞われた。こうした平凡な実績にもかかわらず、執拗な自己宣伝(relentless self-promotion)、巧妙かつ恥知らずな嘘(adroit and shameless lying)、そしてリアリティ番組スターとしての幸運な仕事(a fortuitous gig as a reality TV star)が相まって、何百万人もの人々が彼をビジネスの天才(a business genius)であり、交渉の達人(a master dealmaker.)だと信じ込むようになった。

大統領としてのトランプの最大の功績は、アメリカの民主政治体制秩序を形作ってきた多くの規範を打ち破り、多くの常識に挑戦したことだ。支持者たちにとっては、それはトランプの天才性(his genius)であり、批判者にとっては、それは彼の危険さの理由(why he’s so dangerous)だ。残念ながら、彼は効果的な改革を実行するために必要な細部を把握する能力も意欲も欠けており、経験豊富で強硬な外国の敵対勢力を出し抜く交渉力も持ち合わせていない。しかし、現実がどうであれ、自分が素晴らしいことを成し遂げていると人々に信じ込ませる能力がある限り、こうした欠点は問題にならないかもしれない(But these failings may not matter, given his ability to convince people that he’s doing great things no matter what the reality may be)。

しかし、大統領が歴史に名を残そうと努力することに、何か問題があるのだろうか? 大統領には野心を持って欲しいものであり、単に現状を維持したり、細かい手直しをするだけで満足したりしてはいけないのではないだろうか? 答えは「イエス」だ。ただし、(1)国益(単に自身や最大の支援者を豊かにすることではなく)に資する、よく練られた構想を持っていること、そして、(2)それらの計画を効果的に実行する方法を知っていることが条件となる。野心(ambition)は、公共の利益を促進し、精力的かつ効果的に追求されるのであれば歓迎されるが、たまたまホワイトハウスに居座っている個人を称賛することだけが目的である場合は別だ。

指導者たちが公共の利益への真摯な貢献ではなく、個人的な栄光への欲求に突き動かされている場合、彼らはほとんど利益をもたらさない無意味な「実績(achievements)」(例えば、メキシコ湾の名称変更)を追求し、何百万人もの人々を助けるようなより困難な問題(インフラ整備や経済格差の是正など)を無視する可能性が高くなる。彼らは大きなリスクを冒し、極端な措置を正当化するために架空の緊急事態をでっち上げ、一般市民が最終的に負担することになる、壮大だが杜撰な計画を推し進める傾向がある。そして、見かけだけが全てだとすれば、野心的な指導者たちは、実際に統治するよりも、個人崇拝を築き上げ、批判を抑圧することに多くの時間を費やすだろう(And if appearances are all that matter, an ambitious leader will spend more time building up cults of personality and suppressing criticism than on actually governing)。以前にも聞いたことがあるような話ではないか?

トランプが繰り返し表明してきたグリーンランド併合の願望は、こうした傾向を如実に示している。グリーンランドを併合する説得力のある安全保障上の理由は存在しない。なぜなら、アメリカは既にグリーンランドの正当な主権者であるデンマークと条約を結んでおり、状況に応じてアメリカ軍の駐留を増強することを認めているからだ。また、グリーンランドの鉱物資源開発は商業的に採算が取れるとは限らず、アメリカ企業は望むなら自由にこれらの機会を追求できるため、グリーンランドを併合する説得力のある経済的理由もない。さらに厄介なことに、グリーンランドの住民はアメリカの一部になることを望んでいない。

グリーンランドを併合すれば、比較的穏健な大国としてのアメリカのイメージは損なわれ、かつて世界で最も親米的な国の1つであったデンマークとの関係も悪化し、領土拡大に反対する長年の規範もさらに揺らぐことになるだろう。簡潔に述べれば、愚かな考えだ。しかしトランプの考えでは、グリーンランドを奪取すること(あるいはカナダを51番目の州にすること)は、アメリカをより大きく、ひいては「より偉大(greater)」にすることになる。どんな結果や副次的被害があろうとも、そのような劇的な「医業」(a dramatic “achievement”)を成し遂げれば、歴史に名を刻むことができると確信している。

実際、歴史は、個人的な栄光に固執する指導者たちは、往々にして自国に甚大な損害を与えると警告を発している。ナポレオン・ボナパルトは疑問の余地なく傑物であり、世界史に名を残す偉人であったが、個人的な栄光への執着は、数百万人のヨーロッパ人(おそらく100万人のフランス国民を含む)の命を奪い、最終的にはセントヘレナ島で孤独な死を遂げた。アドルフ・ヒトラーは「千年帝国」(a “1,000-year Reich”)の建設を夢見た誇大妄想狂(a megalomaniac)だったが、彼の最大の「実績(achievement)」は数千万人のヨーロッパ人の死と、40年以上にも及ぶドイツの分裂だった。イランのシャー、フィデル・カストロ、ウゴ・チャベス、サダム・フセイン、毛沢東、ガマル・アブデル・ナセル、ヨシフ・スターリンなど、自らの歴史的使命を確信した野心的な指導者たちは、確かにいくつかの偉業を成し遂げたかもしれないが、最終的にはいずれも自国に利益よりも害をもたらした。

アメリカ建国の父たちは、過剰な個人的野心がもたらす害を理解していた。だからこそ彼らは君主制を否定し、憲法を制定し、アメリカ合衆国は法治国家(a nation ruled by laws)であるべきだと主張し、「野心は野心によって抑制されなければならない([a]mbition must be made to counteract ambition)」という統治体制を構築したのだ。ジェイムズ・マディソンが『フェデラリスト・ペーパーズ』第51篇の中で、「共和制政府においては、立法権が必然的に優位に立つ(republican government, the legislative authority necessarily predominates)」と述べたことは、大統領が権力を持ちすぎたり、国の利益よりも自身の名声や称賛を求めることに熱心になったりする場合に生じる危険性をマディソンが鋭く認識していたことを示している。

真実がますます希少資源となり、謙虚さが時代遅れとなり、露骨な自己宣伝が常態化している現代社会において、トランプはMAGA支持者たちに自分が真に偉大な大統領だと信じ込ませることに成功するかもしれない。しかし、最終的に彼の歴史的な評価は結果(results)によって決まるだろう。これまでの実績に基づけば、彼は非常に重要な大統領として評価される可能性が高い。なぜなら、彼が規範を打ち破り、その他の過激な行動を取ってきたことで、退任する頃には計り知れない影響を与えているはずだからだ。

しかし、アメリカ国民が、自国がより弱くなり、より病み、より貧しくなり、より知性が低下し、より借金が膨らみ、より尊敬されなくなり、より分断が深まり、ひいてはもはや真の民主主政治体制国家でさえなくなっても、それでもなお幸せだと決断しない限り、真の偉大さという栄光は、彼の手に永遠に届かないだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt
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