古村治彦です。
イラン戦争が始まってもうすぐ2カ月が経過しようとしている。現在は一時停戦となっているが、速やかな停戦に向けて、アメリカとイランの間を仲介しているパキスタンが奔走している。しかし、ホルムズ海峡封鎖一本で世界経済を人質にして勝負しているイランは、アメリカを焦らすだけ焦らして、自国の有利な条件を引き出そうとしている。5月14日と15日のドナルド・トランプ大統領による中国公式訪問までに一定の成果を挙げたい米中両国は、イランとの交渉において共通の利益を持っていると言えるだろう。
イラン戦争が始まって世界経済は石油価格高騰と物資不足の影響をつけつつある。日本は前回のオイルショックの教訓を活かし備蓄があるが、現在の状況が続けば、厳しい状況は早晩やってくる。日本にとっても早急な停戦が望まれる。アメリカは国内で石油が生産できるので、ホルムズ海峡が封鎖されても影響は少ないというトランプ大統領の発言があったが、アメリカ国内でも石油価格は上昇している。
アメリカでは5月や6月に卒業式(commencement ceremony)があり、夏休みのホリデーシーズンを迎える。移動も多くなり、ガソリン価格や航空機チケット代の上昇は人々の生活を直撃する。ここで人々に不満を持たれてしまうと、大統領の支持率にダメージを与える。何よりも今年は中間選挙が実施される年だ。共和党が連邦下院で過半数を失う可能性が指摘されている。そうなれば、「トランプの応援を受けても選挙に勝てない」ということになり、トランプの影響力や勢力は減退することになる。
アメリカはウクライナの支援、イスラエルの支援、そして、中東地域に派遣しているアメリカ軍の戦費ということで、巨額の予算が必要となる。それらは増税をして賄うことになるが、増税となれば有権者の反対や不満を増やすことになる。そうなれば国債発行に頼るしかないが、累積した国債はアメリカ政府に重くのしかかる。結局のところ、増税やインフレによって、一般庶民、有権者の生活を直撃することになる。海外での戦争をしないというトランプ大統領の訴えを信じて投票したアメリカの有権者にとっては大きな裏切りである。トランプはイラン戦争開戦の責任を取って実質的な政策運営から引退することが望ましいということになるだろう。それでなくても三期目はないので、中間選挙後は「死に体(lame deck、レイムダック)」状態になる。最後のお勤めは、J・D・ヴァンス副大統領にしっかりと引継ぎをして、大統領にさせることだ。
(貼り付けはじめ)
イラン戦争の経済的コスト:数字で見る(The Economic Costs of
the Iran War, by the Numbers)
―数百万ドル規模の兵器から原油価格の高騰まで、この戦争がもたらす経済的損失を以下に挙げていく。
マキシーン・デイヴィ、エリ・ウィゼヴィッチ筆
2026年3月13日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/03/13/iran-war-cost-economic-oil-gas-prices-hormuz/
アメリカとイスラエルが2月28日にイランを攻撃して以来、中東地域全域で戦争が勃発した。わずか13日でその被害は甚大だ。
人的被害は甚大である。イラン保健省によると、3月13日時点で少なくとも1444人のイラン人が死亡しており、その中には、アメリカが実行したとみられる小学校への攻撃で死亡した少なくとも168人の子どもも含まれている。イスラエルによるレバノンへの爆撃では600人以上が死亡、80万人以上が避難を余儀なくされた。イランによる地域各地への攻撃、そしてイランの代理勢力であるヒズボラによるイスラエルへの攻撃で、60人以上が死亡、数百人が負傷した。また、アメリカ軍兵士13人が死亡した。
エスファンディヤル・バトマンゲリジ氏は『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿し、「これは単なるペルシア湾での戦争ではなく、第二次世界大戦以来、グローバル経済の拠点となる都市や施設に直接的な影響を与えた初めての紛争だ」と述べた。
原油価格から欠航便まで、この戦争がすでに世界経済をいかに混乱させているかを示す主要な数字を以下に挙げていく。
『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、米国防総省当局者は火曜日、連邦議事堂で行われた連邦議員向け非公開ブリーフィングでこの推計値を示した。この数字には、2月28日以前の数カ月にわたるアメリカの軍備増強費用は含まれていない。
以前のブリーフィングで、国防担当当局者たちは最初の2日間で56億ドル相当の弾薬が使用されたと述べていた。マクドナルド・アモア、モーガン・D・バジリアン、ジャハラ・マティセクによる『フォーリン・ポリシー』誌の分析によると、アメリカは「壮大な怒り作戦」開始後最初の36時間で、推定1250発の防衛・攻撃用弾薬を消費した。
彼らは「消費された弾薬、そしてそれらを製造するために必要な鉱物資源は、西側諸国、特にアメリカにとって防衛産業に関する問題である」と述べている。
当初は市場の反応が鈍かったものの、国際指標であるブレント原油価格は3月9日の取引時間中に一時1バレル119.50ドルまで急騰し、その後同じ日の中で100ドルを下回った。3月11日以降、価格は3桁台で推移している。『フォーリン・ポリシー』誌のキース・ジョンソンは、「市場はついに、イラン戦争が世界経済に及ぼす脅威の深刻さに気づき始めた」と報じた。
今回の価格高騰は過去1年間で最大であり、イラン、イスラエル、アメリカによる12日間の戦争が行われた2025年6月の高騰を上回った。金曜日現在、原油価格は1バレル100ドル以上で推移している。
水曜日、国際エネルギー機関(IEA)は、加盟32カ国が市場の混乱緩和と原油価格高騰対策として、12億バレルを超える緊急備蓄原油の放出に全会一致で合意したと発表した。これはIEA史上最大規模の原油放出であり、協調的な放出としては6回目となる。
また、スコット・ベセント米財務長官は木曜日、アメリカが制裁対象となっているロシア産原油を既に海上に積載した状態で各国が購入することを一時的に許可すると発表した。
ジョンソンは、「トランプ政権は、自らが引き起こした戦争の影響を抑制するため、軍事、金融、エネルギーなどあらゆる政策手段を駆使してきたが、今のところ全て無駄に終わっている」と述べた。
アメリカのガソリン価格は平均で1ガロンあたり3.50ドルを超え、昨年同時期より0.50ドル以上高くなっている。
湾岸諸国からの石油製品と液化天然ガス(LNG)の輸出は戦争によって深刻な打撃を受けており、生産者の収入減は甚大である。コンサルティング会社ウッド・マッケンジーの推計によると、サウジアラビアは戦争開始以来、45億ドルという最大の収入を失ったと『フィナンシャル・タイムズ』紙は報じている。
世界第2位のLNG輸出国である国営カタールエネルギーは先週生産を停止し、世界のヘリウム市場と肥料市場に波及効果(knock-on effects)をもたらした。
カタールのサード・アル・カービ・エネルギー相はニューヨーク・タイムズ紙に対し、中東地域での戦争は「世界の経済を崩壊させる可能性がある」と警告した。
イランは3月2日、ホルムズ海峡を通過しようとする船舶は全て攻撃すると初めて宣言した。『ガーディアン』紙の報道によると、それ以来、約500隻の石油・ガスタンカー、500隻のコンテナ船、そして6隻のクルーズ船が海峡の両岸で立ち往生している。
戦争開始以来、ペルシア湾、ホルムズ海峡、オマーン湾周辺で運航するタンカー、コンテナ船、その他のばら積み貨物船を含む少なくとも2隻の民間船舶がイランの攻撃を受けている。
イランの新最高指導者(supreme leader)モジタバ・ハメネイ師は、就任後初の公式声明で木曜日、「ホルムズ海峡封鎖(blocking the Strait of Hormuz)という手段は、今後も間違いなく使い続けなければならない」と述べた。
ペルシア湾岸地域で運航する船舶の保険料高騰を受け、アメリカ国際開発金融公社(DFC)は、トランプ政権が海峡を通じたエネルギー輸送の再開を目指す取り組みの一環として、特定の船舶(具体的な船舶名は未公表)に対し海上再保険を提供すると発表した。DFCは、この計画の実施にあたり、米中央軍および米財務省と連携し、保険会社チャブが主導的な役割を担う。
3月11日時点で、中東地域発着便は4万6000便以上が欠航となった。イランは、世界で最も利用者の多い国際空港であるドバイを含む、中東地域の複数の国の空港を標的にしている。ドーハのハマド国際空港は3月1日から6日まで全便の運航を停止し、現在も通常の利用客数のごく一部でしか運航していない。
戦争勃発当初、航空便の運航停止により数十万人の旅行者が地域内で足止めされ、避難活動が困難を極めた。 『フォーリン・ポリシー』誌のサム・スコブ記者は3月10日、米国務省が解雇された職員からの支援申し出を断ったと報じた。
同時に、ジェット燃料価格は原油価格を上回るペースで上昇している。航空会社が運賃値上げや運航便数の削減を発表するにつれ、このコストは世界の消費者に転嫁されることになるだろう。
※マキシーン・デイヴィ:『フォーリン・ポリシー』誌編集研究員。
※エリ・ウィゼヴィッチ:『フォーリン・ポリシー』誌編集研究員。
(貼り付け終わり)
(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』









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