古村治彦です。

 2026年2月28日に始まったイラン戦争について、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がアメリカを巻き込む形で攻撃が始まったことは既にご紹介した。ネタニヤフ首相による「誘導(induction)」にドナルド・トランプ大統領が乗せられてしまったということになる。もちろん、トランプ大統領個人だけではなく、政権内部にもイラン攻撃に賛成する人物たちが揃っていたということはある。下記論稿では次のように書かれている。

(引用貼り付けはじめ)

第二次トランプ政権では、ワシントンは遠隔地での戦争を通じて莫大な富を蓄積するロビイストの巨大なネットワークと、アメリカの覇権維持のために戦争も辞さない新世代のネオコンによって支配されている(Under the second Trump administration, Washington has been gripped by a vast network of lobbyists accumulating immense wealth through remote wars and new neocons willing to go to war to maintain US hegemony

(引用貼り付け終わり)
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マイク・ウォルツ国連大使(左)とマルコ・ルビオ国務長官
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エリオット・エイブラムス

 下記論稿では、「ワイトハウス大統領次席補佐官スティーヴン・ミラー、国務長官マルコ・ルビオ、国連大使マイク・ウォルツ、元国家安全保障問題担当次席大統領補佐官アレックス・ウォン、そして政策担当国防次官エルブリッジ・コルビー」といった人々がネオコンとして名前が挙がっている。ネオコンとして、ジョージ・W・ブッシュ政権で国家安全保障問題担当大統領次席補佐官を務め、第一次ドナルド・トランプ政権では、ヴェネズエラとイラン問題の特別代表を務めたエリオット・エイブラムスが創設したシンクタンクのヴァンデンバーグ・コアリションの影響力についても下記論稿では言及されている。下記論稿ではさらに、「ロックブリッジ・ネットワーク(Rockbridge Network)」について軽く振られているが、この団体はかなり重要であるので、このブログで後ほど紹介する。
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ドナルド・トランプ大統領とスティーヴン・ミラー(右)

 第二次ドナルド・トランプ政権の内部で大きな力を持っているのは、スティーヴン・ミラーホワイトハウス大統領次席補佐官兼国土安全保障問題担当大統領補佐官である。第一次政権ではスピーチライターと特別顧問を務めた。強硬な国境政策や不法移民政策を策定し、実行しているのはミラーであるが、このミラーはイスラエルとのベンヤミン・ネタニヤフ首相ともユタ野人同士ということもあり昵懇の間柄だ。ミラーがトランプ大統領のイラン攻撃決定に影響を及ぼしたということは十分に考えられることだ。

 第二次ドナルド・トランプ政権の内部の動きについてはこれからも随時追いかけ、ご報告する。このブログを継続するためにも、定期的にブログを開きお読みいただきたい。また、著書についてもお買い上げいただきたい。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプの暴走を操る新世代のネオコンたち(The new class of neocons guiding Trump’s rampages

キム・ドンスク筆

2026年4月21日

『ハンギョレ』紙(韓国)

https://english.hani.co.kr/arti/english_edition/e_international/1255216.html

ドナルド・トランプはネオコンを敬遠していたが、トランプ2.0時代において、新世代のネオコンが相当な権力を握っている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、どのようにしてドナルド・トランプ米大統領を説得し、イランとの戦争に踏み切らせることができたのだろうか?

ネタニヤフ首相は、この合意を一気に成立させたのではない。むしろ、それは綿密な計画の成果であり、保守的なシオニストやイスラエル企業の協力を得て、2024年の大統領選挙におけるトランプの立候補を支援するという戦略に基づいていた。この計画の中心は、イスラエルを支持する保守派の政治的影響力を行使し、第二次トランプ政権の外交・国家安全保障ティームに新たなネオコン層を送り込むことだった。

これらの人物は、保守系シンクタンクであるヘリテージ財団が2024年の大統領選挙前に作成した、第二次トランプ政権を想定した政策綱領「プロジェクト2025(Project 2025)」の執筆者の中にも含まれていた。

トランプが昨年(2025年)1月にホワイトハウスに復帰するとすぐに、ワシントンに拠点を置くシンクタンクであるヴァンデンバーグ・コアリションは、新たな外交政策を提唱する報告書を発表した。その報告書のタイトルは「世紀の取引:中東問題の解決(Deals of the Century: Solving the Middle East)」だった。

この報告書は、トランプの2期目に向けたネオコンのマニフェストとも言えるもので、アメリカはイスラエルへの軍事援助をさらに拡大し、イランに対して根本的に異なる姿勢を取るべきだと主張していた。

これは、トランプの選挙公約で掲げた「海外での軍事冒険はしない(o stay out of foreign military adventures)」というアイソレイショニスト(アメリカ国内問題解決最優先的)な姿勢から脱却させるための、まさに強硬なロードマップだった。

報告書は、アメリカの最優先事項は「イランの核兵器開発計画を抑止すること(deter Iran’s nuclear weapons ambitions)」だと述べ、中東地域における中国の影響力拡大への懸念を表明するとともに、中国をアメリカの主要な敵対国と位置づけるよう促した。要するに、ヴァンデンバーグ・コアリションは、イランと中国がトランプの2期目における主要な外交課題であると強調したのである。

ヴァンデンバーグ・コアリションの報告書は、過去1年間、アメリカ政府の最高レヴェルで繰り返し参照されてきた。特に、ホワイトハウス大統領次席補佐官スティーヴン・ミラー、国務長官マルコ・ルビオ、国連大使マイク・ウォルツ、元国家安全保障問題担当次席大統領補佐官アレックス・ウォン、そして政策担当国防次官エルブリッジ・コルビーなどが、ヴァンデンバーグ・コアリションの提案を実行するための具体的な措置を準備し、トランプ大統領に提示した。

結局のところ、ヴァンデンバーグ・コアリションの戦略的焦点は中国の封じ込め(containing China)にある。報告書の中で、ヴェネズエラ政府をアメリカの勢力圏(sphere of influence)に組み込むことで、ヴェネズエラが足がかりとなっていた西半球(the Western Hemisphere)における中国の影響力を弱めることができると主張している。

アメリカは、外交・軍事資源を他の分野に集中させれば、中東地域などの重要地域における中国の影響力拡大を効果的に抑制できると考えている。これは、中国の世界的な影響力を弱体化させるための多段階イニシアティヴの一環である。一部のアナリストは、トランプ大統領の対イラン攻撃は、北京訪問のための布石だったと考えている。

トランプ大統領の勢力志向の外交政策は、「破壊して取引する(destroy and deal)」という行動様式として体系化され、以前よりも攻撃的で予測不可能なものとなっている。

2021年に設立されたヴァンデンバーグ・コアリションは、介入主義的な外交政策と国防費の増額を提唱している。2025年、この組織はヴェネズエラとイランに関する多数の報告書を発表し、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の逮捕を促し、イランを非難した。

著名なネオコンであるエリオット・エイブラムスは、ヴァンデンバーグ・コアリションの創設者兼会長だ。彼は介入主義(interventionism)の熱烈な支持者であり、中東地域にアメリカに友好的な政権を樹立することが、世界からテロリストを一掃する最善かつ最も確実な方法だと信じている。また、2003年のイラク侵攻を執拗に支持したネオコン運動の中核人物でもある。彼はイラン・コントラ事件への関与で有罪判決を受けた。

バラク・オバマ政権の8年間を通して、エイブラムスは外交問題評議会の上級研究員を務め、その間、オバマの「後ろから導く(leading from behind)」外交政策はアメリカの影響力を弱めていると主張した。

エイブラムスはオバマのキューバとイランとの関係正常化の試みを強く批判し、オバマが敵国に接近していると非難した。イラク戦争の反動が無視できないほど深刻化した後も、エイブラムスはシリア内戦とイスラエル・パレスティナ紛争について持論を展開し続け、イラク戦争後に散り散りになったネオコン勢力を再結集させた。

2019年、第一次トランプ政権に、エイブラムスはイラン・ヴェネズエラ担当米特別代表に任命され、公職に復帰した。エイブラムスはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と特別な関係にある。

私はかつて2007年のAPEC首脳会議でエイブラムスに直接会う機会があった。私が韓国人だと知ると、エイブラムスは「中国、イラン、北朝鮮が連携している以上、アメリカ、イスラエル、韓国は国家安全保障に関して協力する必要がある」と述べた。

トランプが2024年の大統領選挙で孤立主義を唱え、「新たな戦争は起こさない(there would be no new wars)」と主張した際、エイブラムスはヴァンデンバーグ・コアリションに所属する複数のネオコン戦略家を招き入れ、ヘリテージ財団の「プロジェクト2025」計画ティームに加えた。

エイブラムスは第二次トランプ政権には公式な役職には就いていないものの、舞台裏のアドヴァイザー兼アナリストとして中東政策に関する理論的助言を提供し、影響力を行使している。何よりも、エイブラムスの指導の下、トランプ政権の要職に就く新世代のネオコンたちは、絶大な権力を振るっている。

トランプ大統領の側近の多くは、エイブラムスに同調するネオコンの中に名を連ねている。スティーヴン・ミラー、マイケル・ウォルツ、マルコ・ルビオなどがその例だ。連邦上院では、テッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)、リンジー・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)、トム・コットン連邦上院議員(アーカンソー州選出、共和党)が、エイブラムスの政策を支持するネオコンである。

その他、注目すべきネオコンとしては、ジェイミソン・グリア米通商代表、ブライアン・キャバノー(国土安全保障次官候補)、アール・マシューズ(国防総省法律顧問)、モーガン・オルタガス(中東地域担当米国特使代理)、マイク・ハッカビー駐イスラエル米大使などが挙げられる。

ハッカビーの側近であり、イスラエルを熱烈に支持し、MAGA運動の柱としてホワイトハウスで影響力を持つデイヴィッド・ミルスタインは、トランプ大統領が揺るぎない信頼を寄せているFOXニューズの司会者で保守派コメンテーターのマーク・レヴェンの義理の息子でもある。さらに、韓国でよく知られたエルブリッジ・コルビーは、エイブラムスの義理の姉の息子である。

かつてネオコンはアメリカの外交政策に大きな影響力を持っていたが、イラク戦争の惨禍の後、ジョン・ボルトンを最後の生き残りとしてワシントンから姿を消したかに見えた。

しかしながら、彼らはイスラエル中心の中東政策という長年の戦略を擁護することで、トランプ政権の中枢に静かに深く入り込んできた。これらの新たなネオコンは、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト(America First)」の原則と、介入主義への揺るぎない信念を融合させ、新たなタカ派政策を築き上げている。

彼らはもはや、旧来のネオコンが掲げていた民主政治体制の普及というスローガンを唱えていない。代わりに、圧倒的な武力による制圧と取引に焦点を当てることで、第二次トランプ政権の外交・安全保障政策を主導している。価値観(values)よりも実利主義(pragmatism)を優先することで、彼らは敵対国、つまり中国を効果的に無力化する(neutralizing)という目標を設定し、トランプの注目を集めている。

こうした新ネオコンと同盟を結んだネタニヤフ首相が用いているもう一つの戦略は、トランプ一族が経営する企業に巨額の資金を投入することだ。これらの企業の多くは、防衛、人工知能、航空宇宙、バイオテクノロジーといった分野の巨大企業である。

トランプがイランを攻撃し戦争を仕掛ける中、彼の2人の息子は防衛産業への投資で莫大な利益を上げている。次男のエリック・トランプは、イスラエルのドローンメーカーで米防総省の契約企業であるエクステンド社に投資し、この戦争においてドローンの能力がますます重要になるにつれて巨額の富を築いた。

トランプ大統領の長男であるドナルド・トランプ・ジュニアは、ドローン部品を製造するスタートアップ企業アンユージュアル・マシーンズの株主兼アドヴァイザーを務めている。アンユージュアル・マシーンズはドローン部品製造のため、米国防総省から6億2000万ドルの融資を受けた。これは国防総省戦略資本局が過去に行った融資の中で最大規模である。

トランプ・ジュニアはまた、「愛国的資本主義(patriotic capitalism)」を推進し、防衛技術系スタートアップ企業に投資するヴェンチャーキャピタル企業である1789キャピタルのパートナーでもある。1789キャピタルは、シリコンヴァレーのヴェンチャーキャピタリストの中でもトランプを支持する億万長者ネットワークであるロックブリッジ・ネットワーク(the Rockbridge Network)の億万長者たちが支援する投資運用会社である。

1789キャピタルは、トランプ大統領の再選直後にトランプ・ジュニアがパートナーとして加わって以来、爆発的な成長を遂げている。1789キャピタルは主に防衛・兵器産業分野に投資しており、アンドゥリル・インダストリーズ、ハドリアン・オートメーション、スペースX、そして米国防総省のパートナー企業である希土類磁石の新興メーカーであるバルカン・エレメンツなどが投資ポートフォリオに含まれている。

トランプ・ジュニアは、物議を醸している予測市場企業ポリマーケットのアドヴァイザーも務めており、主要な外交政策や国家安全保障に関する決定を事前に予測することで巨額の利益を得ていると疑われている。

第二次トランプ政権では、ワシントンは遠隔地での戦争を通じて莫大な富を蓄積するロビイストの巨大なネットワークと、アメリカの覇権維持のために戦争も辞さない新世代のネオコンによって支配されている(Under the second Trump administration, Washington has been gripped by a vast network of lobbyists accumulating immense wealth through remote wars and new neocons willing to go to war to maintain US hegemony)。

ネタニヤフ首相の影響力は、こうした新たな政治情勢の中で発揮されている。これらの人物は、中国、ロシア、イラン、北朝鮮をまとめて「CRINK」という新しい略語を作り出し、これらの国々を「新たな悪の枢軸(the new axis of evil)」と位置づけている。

韓国では、トランプ大統領の5月の中国訪問が、米朝関係の打開につながるのではないかと期待されている。個人的には、その見通しに不安を覚える。ペルシア湾が炎上している状況が、まるで他人事のように感じられないと言うのは、大げさな反応だろうか。

キム・ドンスク:韓国系アメリカ人グラスルーツ会議議長。

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ドナルド・トランプの熱狂者:スティーヴン・ミラーの恐怖政治の内幕(Trump’s ZealotInside Stephen Miller’s Reign of Terror

―ドナルド・トランプのアメリカについてあなたが嫌悪したり愛したりするもの全てはスティーヴン・ミラーの恐怖共和国についてあなたが憎んだり大切にしたりするものと全く同じだ。

アサウィン・スエブサエング、ニッキ・マカン・ラミレズ、アンドリュー・ぺレズ筆
2025年9月14日

『ローリングストーン』誌
https://www.rollingstone.com/politics/politics-features/stephen-miller-trump-terror-ice-immigration-military-1235426023/

昨年(2024年)11月6日午前3時過ぎ、ヒルトン・ウェストパームビーチ・ホテルの受付近くに立っていた、薄毛で痩せ型の男性ほど、この世で幸せそうな人はいなかっただろう。

ドナルド・トランプは、隣接するフロリダ・コンヴェンションセンターで2024年大統領選挙の開票速報パーティーを終えたばかりで、「史上最も素晴らしい政治的出来事(the most incredible political thing)」と雄弁に語る演説で勝利を宣言した。歓喜に沸く共和党の献金者、選挙スタッフ、将来の政府高官、そして出席者たち(もちろんジョン・ヴォイトも)が、祝賀のためにこの高級ホテルに押し寄せた。

ロビーの正面に立っていたのはスティーヴン・ミラー。トランプが間もなくホワイトハウスの政策決定と行政権限の絶対的な責任者として指名する人物だ。

ミラーは、トランプ政権初期の主要な政策立案者の一人であり、特に大統領による合法移民の抑制政策において重要な役割を果たした。ジョー・バイデン政権の高官たちは、トランプ政権1期目にミラーが移民政策に与えたダメージは今もなお国に重くのしかかっており、バイデン陣営は4年間の政権期間中にその多くを覆すことができなかった、あるいはそうしようとしなかったと語るだろう。

しかし、フロリダでのあの夜、当時39歳だったミラーにとって何かが違っていた。目の前に無限の可能性が広がっていたのだ。

祝賀ムードの中、ミラーはトランプ政権の高官たちと集まり、次々と祝福の言葉をかけてくる熱狂的な保守派有権者や共和党の大物たちに感謝の意を伝えた。彼らは皆、あの夜の勝利はトランプだけのものではなく、ミラー自身の勝利でもあることを理解しており、多くの人がトランプから贈られたミラーの指輪にキスをせざるを得ないと感じていた。

トランプの復権を目の当たりにした瞬間、ミラーの顔に浮かんだ抑えきれない喜びの表情は、未来を見通す者の目を見ていたかのようだった。トランプのトップ補佐官であり、最も忠実な信奉者であり、1期目のMAGA派幹部の度重なる粛清をどうにか生き延びた唯一の側近は、この国が今や自分のものになったことを悟っていた。

喜びにあふれた女性に語りかけるミラーは「素晴らしいことになるだろう」と言った。

トランプの2期目が始まって7カ月以上が経ち、スティーヴン・ミラーは、アメリカ、いや世界でも最も権力を持つ非選出官僚となった。トランプの承認を得て、ミラーは、その階級のアメリカ政府高官としては前例のないほど、国家を自由に運営し、再構築することを許されている。トランプ政権の悪名高い政策を思い浮かべてみてほしい。おそらく、それはスティーヴン・ミラーによって推進されたものだろう。

全てにトランプの署名があるものの、大統領が夜な夜な大統領令を書き、法理論を自らの意のままに操っている訳ではない。そのほとんど全てはミラーの著作(あるいは少なくとも共著)である。ドナルド・トランプのアメリカについてあなたが嫌悪したり愛したりするものはすべて、スティーヴン・ミラーの恐怖の共和国についてあなたが憎んだり大切にしたりするものと同じだ。

ミラーの指導の下、大統領が望めば、政府は適正な手続きを経ずに、あなたやあなたの配偶者を国外の強制収容所に強制送還(あるいは誘拐して身柄を引き渡す)することができる。ホワイトハウスは、人身保護令状(habeas corpus)のような最も基本的な憲法上の権利を剥奪すると繰り返し脅迫することができる。大統領は、最高司令官を苛立たせたか、選挙を盗むのに協力することを拒否した以外に何も悪いことをしていない敵に対して、司法省による刑事捜査を開始することができる。大統領とその側近は、たとえ犯罪歴がなくても、裁判所への定期的な出頭時、教会、子供の学校の前など、どこでもあなたを逮捕することができる。彼らは極めて厳格な移民逮捕「割り当て(quotas)」制度を導入し、大量強制送還ではなく、大量失踪と刑務所や新設された収容所での無期限拘留を主とする体制を確立した。

彼らは連邦法執行機関の大部分を、大統領とそのスタッフの気まぐれで活動する、覆面をした匿名で責任を問われない秘密警察(secret police)へと急速に変貌させた。大統領はいつでも、武装した州兵や海兵隊をアメリカの都市の街路に派遣し、そこを敵地とみなすことができる。政権は、ホワイトハウス西棟から連邦通信委員会に至るまで、言論の自由を抑圧する十字軍(an anti-free-speech crusade)を展開し、メディア、コメディアン、そして老齢のロックスターに対する検閲を政策の最優先事項としている。

「影の国防長官(Shadow Sec Def)」。

「ミラー総理大臣(Prime Minister Miller)」。

「本当の司法長官(The REAL Attorney General)」。

「国土安全保障省のボス(The DHS boss)」。

「ミラー大統領(President Miller)」。

トランプ政権の当局者や大統領およびホワイトハウスに近い他の共和党員は、ミラーがいつか陰で自分の悪口を言われるのではないかと疑心暗鬼になっているが、それでも彼らはホワイトハウス副首席補佐官に付けた非公式の肩書きやニックネームをささやき合っている。

ローリングストーン誌が、元FOXニューズのスターで国防長官を務めるピート​​・ヘグセスについてある政権高官に尋ねたところ、この情報源は自ら進んで「彼はスティーヴン(・ミラー)の言うことを聞いている」と答えた。

国防総省報道官のショーン・パーネルは、ヘグセス長官は「スティーヴン・ミラーと良好な協力関係を築いている。両者はトランプ大統領の『アメリカ・ファースト(America First)』政策の遂行において完全に一致している」と述べた。

●「とんでもない奴」(‘One Intense Motherfucker’

カリフォルニア州サンタモニカで十代だった頃、ミラーは学校で自分と関わりのないハンサムな少年たちを挑発することに何よりも熱中していた。

サンタモニカのリンカーン中学校でミラーと初めて出会ったジェイソン・イスラスは、自分とミラー、そしてもう一人の友人は仲の良いアウトサイダー集団で、中学時代はスタートレックの話をするなど、思春期の男の子らしいことをして過ごしたと語る(イスラスはミラーがカーク船長の大ファンだったことを覚えている)。しかし、1999年の夏、中学2年生から3年生になる頃、状況は一変した。イスラスによれば、ミラーは彼に「もう友達ではいられない」と告げたという。「彼が言ったことの一つは、僕がラテン系の血を引いていることが気に入らないということだった」とイスラスは回想する。

その後数十年、ミラーは成長するどころか、過激な思想をますます強固にしていった。バラク・オバマ政権時代にアラバマ州選出のジェフ・セッションズ連邦上院議員の事務所で広報担当補佐官として働いていた頃、彼は連邦議事堂の保守派の同僚たちから非常に嫌われていた。そのため、他の共和党議員事務所のスタッフは、ミラーが陶器の人形遊びが好きだといった悪意のある噂をでっち上げたり、広めたりしていた。(ホワイトハウス当局者は、彼の連邦議会での活動に関するそのような描写は「不正確で根拠のない噂話」だと主張している。)当時のスタッフは、彼が極右のヘイトサイトを読み過ぎてワシントンの最も過激な沼に足を踏み入れるとどうなるかという、単なる笑い話か、あるいはあまり知られていない教訓話以上の存在になるとは夢にも思っていなかった。

今日に至るまで、状況はほとんど変わっていない。トランプ大統領の政策立案者であり執行者でもあるスティーヴン・ミラーは、3人のトランプの補佐官によれば、いかなる犠牲を払ってでも、自らが「反白人憎悪(anti-white hatred)」「反白人人種差別(anti-white racism)」「反白人差別(anti-white discrimination)」とみなすものを根絶するために、政府の力を駆使することに執着している。

ミラー氏は、軍事戦闘(military combat)、永遠の戦争(forever war)、文化と国土への侵略(invasion against the culture and the homeland)といった、誇張された表現を用いた終末論的な単語(apocalyptic terms)ばかりを用いる。

彼は、収容と大量強制送還のための「キャンプ(camps)」と名付けた、巨大で超軍事化されたネットワークを構築することを切望している。このネットワークによって、アメリカの政治的・物理的な景観が永久に変わることを期待しているのだ。

ユダヤ人であるミラーは、自身のおじから、ユダヤ人の道徳的・政治的価値観を裏切った人物として非難されている。ミラーは長年、1924年移民法に深い敬意を抱いており、アメリカをあの時代に戻したいと願っている。この法律は、ナチスから逃れようとしたユダヤ人がアメリカへの安全な渡航を拒否されたことで、ホロコーストをより悲惨なものにしたことで悪名高い。

2024年の大統領選挙結果が確定した直後、人権団体や移民擁護派は、ミラーがこれから解き放とうとしている猛攻に全く備えができていないと痛感せざるを得なかった。トランプ政権の任命者の中で、彼らを夜も眠らせないほど心配させたのはミラーだった。トランプ政権の次期「国境警備責任者(border czar)」トム・ホーマンが大量強制送還について大々的に語っていたとしても、ミラーに比べれば取るに足らない存在だった。ホーマンの仕事ぶりを知る者にとって、元移民税関執行局(ICE)長官代行は、時折、規則や制限が多少なりとも存在することを認めていた。ミラーのような男にとって、重要な法律とは、彼とトランプが都合よく歪めることができる法律だけだった。

ミラーは、匿名の人種差別主義者のインターネット荒らしが苦痛に満ちた現実世界に具現化し、権力を授けられたような存在かもしれない。しかし、だからといって、彼は自らが唱えるイデオロギーの正当性を心から信じていない訳ではない。彼自身は、自らを勝利の英雄、軟弱なリベラリズムに対する唯一の解毒剤、そして、彼自身や仲間たちが多元的な現実によって不当な扱いを受けていると感じている、寛容な合法・非合法移民に対する聖戦士(a holy warrior against the permissive legal and illegal immigration)だと考えている。

トランプ政権の最高幹部である共和党員にミラーについて尋ねると、賞賛と不安が入り混じった独特の反応が返ってくる。「とんでもない奴だ(One intense motherfucker)」と長年トランプの顧問を務めてきた人物は言う。

友人たちが彼をより穏やかで、親切で、面白い人物に見せようと試みても、たいていは失敗に終わり、偏屈者(a crank)か、これまで出会った中で最も意地悪なオタク(the meanest dork)のように映ってしまう。例えば、ミラーの長年の側近数名によると、ホワイトハウスの最高補佐官である彼は、これまでに出会った中で最も「MAHA(アメリカを再び健康に、Make America Healthy Again)」(マナーの悪い、傲慢な)人物の一人であり、ロバート・F・ケネディ・ジュニア流の食と健康(あるいは反健康)に関するプロパガンダにどっぷり浸かっているという。彼の私生活に関する話を聞くと、控えめに言っても退屈な人物像が浮かび上がる。

ローリングストーン誌に、ミラーに言い寄られたある女性は、2017年頃、デュポンサークル近くのバーで、結婚前のミラーに口説かれた時のことを語っている。その話によると、彼女は服の襟にどこの国名が書いてあるのか(中国とは言わないように)と執拗に聞かれ、保守派の典型的なタイプではないという理由で「グローバリスト(globalist)」だと非難されたという。

ワシントンで彼を奇妙だと思うのは、見知らぬ女性だけではない。長年にわたる緊密な協力関係の中で、トランプ大統領は、まるで核兵器を携えたおしゃべりな意地悪女のように、ミラーの陰口を言うことをためらわなかった。この件を直接知る2人の情報筋によると、トランプは過去に、ミラーの強烈でぎこちなく、時には人を遠ざけるような態度について、他の人に話していたという。

しかし、トランプにとって、ミラーは頼りになる突破口(a useful battering ram)であり、「ロイ・コーンはどこにいるのか?」という長年の疑問に対する政策的な答えなのだ。

ホワイトハウス報道官キャロライン・リーヴィットは次のように述べている。「スティーヴン・ミラーは、トランプ大統領の最も長く仕え、最も信頼されている顧問の一人として、ほぼ10年間務めてきた。大統領がスティーヴンをどれほど尊敬しているかは、私自身が日々目の当たりにしているので、このように断言できる。だからこそ、スティーヴンは政策担当大統領次席補佐官兼国土安全保障担当大統領補佐官を務めている。大統領はスティーヴンと、その実績あるリーダーシップ能力に絶大な信頼を寄せているからだ。スティーヴンは職務を非常に効率的にこなすだけでなく、忠実な同僚であり友人でもある。これに反する意見は、彼をよく知らない人々の根拠のない噂話に過ぎない」。

報道官の声明に加え、トランプ政権はローリングストーン誌に対し、共和党所属の連邦議員たちからの長々とした推薦文リストを送付した。それはまるで、トランプ支持派のリンクトインの推薦欄を彷彿とさせるもので、スティーヴン・ミラーが個人的にも人々に好かれていることを証明するためだった。

例えば、ジョシュ・ホウリー連邦上院議員は、ミラーを「友人(a friend)」と呼べることを嬉しく思うと述べ、「彼はアメリカの家族が繁栄できる未来の実現に深く尽力している」と付け加えた。

スティーヴ・スカリス連邦下院多数党(共和党)院内総務は、「スティーヴン・ミラーは聡明で思慮深く、議員たちの意見や懸念に耳を傾ける時間を惜しまず、常に一緒に仕事がしやすい人物だ」と述べ、「スティーヴン・ミラー氏を親しい友人と呼べることを誇りに思う」と付け加えた。

ホワイトハウスは、トム・コットン連邦上院議員、マイク・リー連邦上院議員、ジム・ジョーダン連邦下院議員からも同様の声明を発表し、報道官は、これらの議員によるミラーへの称賛は全てこの記事に掲載される予定だと述べた。

●「やり遂げる」(‘Get It Done’

トランプ政権のホワイトハウス・ウエストウイングで働く複数の情報筋によると、現在、大統領の側近は形式上はホワイトハウス副首席補佐官だが、トランプ政権の政策責任者として、実際の首席補佐官であるスージー・ワイルズ(トランプの2024年大統領選共同責任者)をはるかに凌駕している。

ミラーは、事実上あらゆる政策と行政措置(特に国内政策関連)に関与し、事実上全ての文書、トランプ大統領の指示、憲法上疑わしい命令、メモに関わっている。ワシントンDC、ロサンゼルス、そしてあなたの街の民主党優勢都市にも迫りつつあるトランプ政権の軍事介入の構図は、ミラーが軽蔑するリベラル派の牙城を制圧するという彼の構想の産物でもある。

「スティーヴンにとっては最高に楽しい仕事だ」とトランプ氏の側近の一人は、アメリカ軍の国内展開を指揮しているミラーの役割について語る。

トランプ政権による多様性推進プログラム、高等教育、そしてトランプが好まない言論の自由に対する徹底的な締め付けは、ミラーの理念を如実に表しており、かつては粗野とみなされていた方法で保守派の「文化戦争(culture war)」を連邦政府の手に委ねるという長年の野望を実現させた。トランプの広範な移民・国境警備政策は、まさに「スティーヴン・ミラー・ショー」であり、スティーヴン・ミラー・プロダクションズLLCが制作し、スティーヴン・ミラー自身が演出を手がけている。

大統領がこれらの国内プログラムを開始するために署名する書類の一枚一枚を、トランプの側近であるミラーは精査し、時には修正を加え、連邦政府機関のあらゆる部署のトランプ政権関係者に、彼自身の言葉を借りれば「やり遂げる(get it done)」と圧力をかける。

彼が省庁や機関の職員を叱責する様子は、もはや悪夢とまではいかないまでも、伝説となっている。トランプ政権2期目が始まって以来、連邦政府で働き、ミラーと直接やり取りをしたことのある2人の情報筋がローリングストーン誌に語ったところによると、ミラーの叱責によって、それぞれ職場で泣いてしまったという。

省庁間の協議において、ミラーは日常的に相手を罵倒し、怒鳴りつけ、職員の職や党内での将来を脅し、同僚の前で屈辱を与えようとしてきた。移民逮捕者数が十分に水増しされていないと感じたり、トランプ大統領の国内政策が少しでも停滞していると感じたりすると、激怒する。彼は長時間労働と、新政権が打ち出す過酷な政策の細部にわたる管理で知られている。2017年以来、共和党上層部では、トランプ大統領のためなら何でも言い、何でもやり、ほとんど誰でも裏切ることを厭わない人物として、そして何よりも大統領との権力関係と近さを維持するために、そうした姿勢を貫いてきた人物として、長年にわたり悪評がつきまとっている。

トランプ政権の最高幹部レヴェルでは、パム・ボンディ司法長官が司法省を、クリスティ・ノーム国土安全保障長官が国土安全保障省を牛耳っているという考えは、あまりにも不完全である。名目上は独立している各省庁は、ホワイトハウスのウエストウイング、つまり実質的にはミラーによって運営されている。

政府関係者の中には、トランプ大統領は州兵や武装した海兵隊を民主党が統治する都市部に派遣できるものの、これらの部隊は従来の法執行活動を行うことはできないと指摘する者もいた。こうした状況に対し、ミラーは政権の弁護士やスタッフに対し、トランプ大統領は彼らにその法的制約を回避する方法を見つけ出し、得られた法的​​理論を報告するよう求めている。

ミラーは、トランプ政権発足当初の数カ月間、非常事態宣言ではなく国内政治目的のために、アメリカ国内へのアメリカ軍派遣を常態化させることを最優先事項としてきた。関係者によると、トランプ大統領とミラーは、これに反対する者を「弱者(weak)」「臆病者(cowards)」「犯罪擁護者(pro-crime)」と見なしているという。

●「私たちは命令に従うしかない」(‘We Just Have to Follow Orders’
トランプ大統領がロサンゼルスでの移民税関執行局(ICE)の作戦を支援するため、州兵と海兵隊を派遣した後、ミラーは、不法移民を市から一掃すれば、残された住民にとってユートピアが生まれると主張した。

「不法移民がいなくなれば、アメリカ国民のためにどれだけの資源が解放されるか、想像できるか?」とミラーはフォックスニューズに語った。「救急外来で列に並ぶ必要もなくなり、ロサンゼルスのひどい交通渋滞もなくなる。健康保険料は下がり、公立学校の教室の規模も縮小する。・・・そして、もし政府の支援が必要になったとしても、第三世界から来た何百万人もの不法移民の後ろに並ぶ必要はない。これは、一般のアメリカ国民の生活の質にとって、まさに大きな恩恵となるだろう」。

2025年7月、ホワイトハウス前で記者団の取材に応じた際、ミラーは「幼い子供を持つ母親(moms with young kids)」を標的にすることが政権の資源の最適な使い方なのかと問われた。それに対し、彼は記者に対し、不法移民のうち何パーセントを滞在させるべきかと問い詰めた。「どの不法移民がレイプや殺人を犯すかを、魔法の8ボールで予知できるとでも思っているのか?」。

ミラーには法律の専門知識はないが、トランプ政権関係者によると、ミラーはトランプが外国人敵対者法(AIEA)を利用して適正手続きを経ずに大量強制送還を行うという策略の首謀者だったという。この計画は、2023年に保守系ラジオパーソナリティのクレイ・トラビスとバック・セクストンとのインタヴューで詳細に語られたものだ。

ミラーはまた、国家による恣意的拘束からの保護という憲法上の基本的権利である人身保護令状の停止を公に示唆した最初の政権関係者でもある。2025年5月にホワイトハウスで記者団に対し、ミラーは「侵略時には人身保護令状の特権を停止することができる。したがって、我々はそれを積極的に検討している選択肢の一つだ」と述べた。もちろん、侵略など起きていない。

ミラーの遺産と、彼が現代社会で果たした役割の真髄を理解したいなら、ペンシルヴァニア通り1600番地(ホワイトハウス)の向こう側を見据える必要がある。トランプの主要な執行者であるミラーを理解するには、彼が全米各地で無数の人々に何をしているのかを理解する必要がある。そして、被害者の話を聞いた時の彼の個人的な、本能的な反応を理解しなければならない。

全米には、トランプとミラーの集団によって引き裂かれた何千もの家族がいる。そのほとんどは、世に出回ることもなく、おそらく耳にすることもないだろう。そのうちの一つが、今年初めにオハイオ州の移民弁護士からローリングストーン誌に伝えられた。ローリングストーン誌はこの話の詳細を確認し、妻、夫、そして3歳の娘には仮名を使用することに同意した。弁護士は、ミラーとトランプ政権が無償で移民支援を行う弁護士を標的にしていることを理由に、身元を明かさないよう求めた。

2020年、「リカルド」(ここではそう呼ぶ)は、ラテンアメリカの故郷を逃れ、アメリカに亡命を求めた。リカルド自身が語るように、彼は故郷で軍隊に所属していたが、汚職や強力な組織犯罪を理由に、もし故郷に留まれば自分に何が起こるか恐れるようになったという。

2025年までに、彼はすでにアメリカで生活基盤を築いていた。妻の「エレン」と幼い娘の「ジェシカ」と共に、オハイオ州コロンバスに暮らしていた。彼は家族を養うために働き、エレンはジェシカの世話をしていた。2人の間には、軽犯罪や暴力犯罪、その他の犯罪歴は一切なかった。しかし、2024年初頭、2人は予定されていた公聴会に出頭したものの、実際には出席せずに帰ってしまった。受付係が誤って、その日の公聴会の予定に入っていないと告げたためだった。このたった一つの不手際誰の言い分にも反するはずのない出来事だったが、トランプ政権2期目の下で、彼らの家族を破滅(doom)へと導くことになった。

今年の6月、リカルドはICE(移民税関執行局)から、地元のICE事務所に出頭するよう求めるテキストメッセージを受け取った。トランプ政権がミラーとトランプによって推進した数々の新政策や逮捕割り当てを前に、彼の弁護士は疑念を抱いた。それでも、リカルドはこの偉大な国を信じていた。彼は自分が犯罪者ではないこと、正しい方法でここに来たかったこと、そして隠すことは何もないことを示したかったのだ。

オハイオ州を拠点とする弁護士は、コロンバス郊外の連邦入国管理局の受付で、建物に入るために列に並んでいた3人家族と出会った。ジェシカとエレンはお揃いの服装で、ジェシカはリボンで結んだおさげ髪にピンクのワンピースを着ていた。弁護士は、ジェシカが父親の頬を触って遊んでいると、父親がフグのように頬を膨らませて笑っていたのを覚えている。

待合室を過ぎると、武装した移民税関執行局(ICE)職員2人が間もなく彼らの両脇に現れ、そのうちの1人が弁護士と家族に、職員には選択の余地がないと告げた。ICEは「ワシントンからの(from Wasington)」指示を受けていると職員は言った。その指示は1月のトランプ大統領就任後に出されたもので、ミラー長官が直接作成した、逮捕・強制送還件数の増加を求める新たな基準と要求(既存の犯罪歴の有無に関わらず)が含まれていた。

職員は、父親にその場で手錠をかけ、連行しなければならないと告げた。「私たちは命令に従うしかない」とICE職員は言った。

スペイン語を話す家族は、最初は何が起こっているのか理解できなかった。夫婦と弁護士はICE職員に家族全員で自主退去させてほしいと懇願し、弁護士が通訳を交えながら、何度もやり取りをしなければならなかった。そうすればアメリカの納税者の負担が軽減されるはずだと彼らは訴えた。

ICE職員は謝罪した。どうすることもできないようだった。

職員たちは、エレンとジェシカが部屋を出られるように配慮してくれた。ジェシカが父親に手錠をかけられる場面を見なくて済むようにするためだ。父親はしゃがみ込み、ジェシカを抱き上げて別れのハグをした。混乱して泣きじゃくるジェシカは、父親の首に腕を回し、体を抱きしめて離れようとしなかった。

2人のICE職員のうち1人が、手続きを進める必要があると家族に告げた。ちょうどその時、エレンはジェシカの腰に手を回し、最初は就学前の幼い娘を父親から引き離すことができなかった。ICE職員の1人は父親の肩に手を置き、もう1人は家族を見守っていた。

「パパ!」少女はスペイン語で叫んだ。「パパに会いたい!パパに会いたい!」。

エレンはついにヒステリックになっているジェシカを部屋から連れ出すことができた。ICE職員がリチャードを連れて行く間も、ジェシカは「パパ、パパ、いやだー!」と叫び続けた。待合室に戻る途中、弁護士は待合室に座っていた移民たちや他の人々の顔を見た。彼らはドアの向こうで何が待ち受けているのか、困惑と恐怖の表情で見つめていた。数カ月後、弁護士はローリングストーン誌にこう語っている。「今でもあの少女の叫び声が耳に残っている」。

エレンとジェシカは荷物をまとめてリチャードの故郷へ向かった。2人は数日中に彼と再会できると期待していた。ところが、トランプ政権はリチャードをルイジアナ州の拘留施設に約2カ月間も拘束し、2人の恐怖をよそに、2人は彼を行方不明にしてしまった。その後、2人は再会を果たしたが、心の傷はまだ癒えていない。弁護士によると、ジェシカは今でも夜中に目を覚まし、「パパ!」と叫ぶという。

現代のどの政権下でも、厳しい移民取り締まりが行われ、胸が張り裂けるような決断が下されてきた。しかし、この話が起こっているのは、トランプ政権とミラーが、ミラー自身が逮捕者数を水増しするためだけに、各州の機関に取り締まり強化を強要しているからだ。

あなたにとって、これは悲しい、あるいは恐ろしいことのように思えるかもしれない。しかし、ミラーにとって、あなたの怒りは実に滑稽なものだ。今年、トランプ政権の側近であるミラーは、非公式の会話の中で、移民家族の「悲しい話(sob stories)」を煽るリベラル派は、ミラーと政府が決して騙されない感情的な「脅迫(blackmail)」を行っていると述べている。彼はそれを笑い飛ばし、再びホラーストーリーの創作に取り掛かった。
(貼り付け終わり)

(終わり)

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