古村治彦です。

 アメリカ一極支配体制がすでに終焉を迎えつつあるということを私たちは日々目撃している。毎日毎日の報道ではどうした、こうしたという細かい動きが報じられるが、少し長いスパン、数年のスパン、数十年のスパンで見ていけば、アメリカは国力を大幅に低下させ、世界を支配する力を失いつつあることは明らかだ。

 2022年のウクライナ戦争によってはっきりしたのは、「西側諸国(the West、ジ・ウエスト)」対「西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」の二極構造だ。ロシアに侵攻されたウクライナを西側諸国が支援し、ロシアに対しては結束して経済制裁を加えるという構図になったが、ロシアは戦争を継続できた。これは、ロシアに対して、積極的ではないが、西側以外の諸国が陰ながら支援を行ってきたことが理由の一つに挙げられる。さらに、イラン戦争において、「西側諸国」を率いるアメリカの世界支配の正統性にまで疑義が出ている。

 中国とロシアをはじめとする西側以外の国々は経済成長が進み、これから世界において重要な役割を果たすようになっていく。その中核がBRICS(拡大されたBRICS)であり、G20に入っている菱西側諸国である。一方で、欧米に日本を含む西側諸国は少子高齢化がますます進行し、経済力を失い、世界の中心的な役割を担えなくなっていく。拡大BRICSを見ると、それぞれの地域の中心的な諸国が入っている。これらがそれぞれの地域で大国として主導的な役割を果たすようになる。
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拡大BRICS
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G20諸国

 現在から約15年後の2040年には世界の状況は大きく変化しているだろう。1945年に第二次世界大戦が終結し、2045年で100年、中国が西洋(イギリス)に敗れ、屈辱の苦しい時代に入ったアヘン戦争開戦からは2040年で200年、屈辱的な不平等条約となった天津条約からは2042年で200年ということになる。2040年から2045年となるとまだ先のようであるが、それまでの20年ほどという期間は、世紀単位のスパンで見れば、短い期間とも言える。西側諸国の衰退、西側以外の国々の経済成長と台頭は進んでいるだろう。そうした中で、アメリカ一極支配は終わり、「そんな時代もあったね」と、有名な歌の歌詞にあるセリフを私たちは話していることになるだろう。下記論稿のサブタイトルの通り、「10年後、世界は大きく様変わりしているだろう」。

(貼り付けはじめ)

トランプ後の世界における3つのシナリオ(Three Scenarios for a Post-Trump World

―10年後、世界は大きく様変わりしているだろう。

ハル・ブランズ筆

2026年3月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/23/post-trump-world-order-cold-war-spheres-of-influence/?tpcc=recirc_more_from_fp051524

イタリアの哲学者アントニオ・グラムシは1930年に次のように記した。「旧世界は滅びつつあり、新世界は生まれようとあがいている(The old world is dying, and the new world struggles to be born)」。マルクス主義の信条を持つグラムシだが、トランプ時代にも違和感を覚えるだろう。ここでいう旧世界とは、第二次世界大戦後、アメリカ合衆国が西側諸国に築き上げ、冷戦勝利後にグローバル化を目指した国際秩序(the international order that the United States built in the West after World War II and then sought to globalize after its victory in the Cold War)のことである。この計画は、世界を変えるほどの平和、繁栄、そして自由をもたらした。しかし今日、旧秩序はその役割を終えようとしている。

長年にわたり、修正主義国家、特に中国とロシアは、この秩序を徐々に侵食してきた。そして今、アメリカ合衆国もまた、この秩序と戦っているように見えることがある。10年後、世界は大きく様変わりしているだろう。しかし、この過渡期の先に何が待ち受けているのか、新しい世界がどのような形をとるのかは、まだ誰にも分からない。

一つの可能​​性は、冷戦時代を彷彿とさせる二極世界シナリオ(a two-worlds scenario reminiscent of the Cold War)、すなわち世界がワシントンと北京が率いる二つの陣営に分断されるシナリオだ。二つ目の可能性は、二つの陣営ではなく、複数の帝国が跋扈する時代(an age not of two blocs but of several empires)、すなわち様々な勢力が地域的な勢力圏を掌握していく(an array of potentates capture regional spheres of influence)時代だ。三つ目の可能性は、自力救済の世界(a self-help world)、すなわちアメリカの行動が略奪的になり、システムが無政府状態の深淵へと陥る世界(U.S. behavior turns predatory and plunges the system into an anarchic abyss)だ。

現状がこれほど不安定に感じられるのは、これらのシナリオがどれも現実味を帯びており、しかもそれぞれが、葛藤を抱える超大国の外交政策によって支えられているからだ。多くのことが不確定要素であり、今後のアメリカの決断と選挙サイクルに大きく左右される。しかし、この過渡期(interregnum)の先に何が待ち受けているのかを探ることは、たとえ最良のシナリオであっても、私たちがこれまで経験してきた世界よりもさらに分裂し、激化するだろう未来に備えるための第一歩となるだろう。

現代世界はアメリカが生み出したものだ。第二次世界大戦後、アメリカはユーラシア大陸周辺に世界規模の同盟関係を築き上げた。荒廃した国々を復興させ、世界貿易を再建した。遠洋航路の航行の自由(freedom of navigation)を守り、その他の公共財(public goods)を提供した。世界政府に最も近い存在は、国連ではなくアメリカだった。こうした政策は、繁栄する西側体制の基盤となり、その後ソ連を打倒し、冷戦後には拡大する自由主義的な秩序へと発展した。

あらゆる英雄的偉業と同様に、この偉業にも神話、省略、誇張(myths, elisions, and exaggerations)が存在する。ワシントンは、時に残忍な軍事介入(military interventions)や秘密工作(covert intrigues)といった非自由主義的な手段を用いて自由主義秩序を維持した。同盟諸国の連帯を称える賛歌は、1956年のスエズ危機から2003年のアメリカ主導によるイラク侵攻に至るまで、民主政治体制世界を揺るがした激しい対立を無視している。アメリカは、都合が悪くなると自らのルールを無視したり変更したりしてきた。1971年に国際金融のブレトン・ウッズ体制を離脱したのもその一例だ。偽善と強制(hypocrisy and coercion)なしに秩序は成り立たない。

しかし概して言えば、パクス・アメリカーナ(Pax Americana)は、驚異的な力(power)を用いて、極めて広範な自己利益観を支えてきた。それは、地理的に孤立した大国であっても、弱小国を繁栄させ、安全を確保することによってのみ、自らの力で繁栄できるという認識である。この組み合わせは、歴史を覆すほどの恩恵をもたらした。一世代のうちに二度の世界大戦を経験した後、アメリカが築いた秩序は、数十年にわたる大国間の平和をもたらした。アメリカ主導の経済は、生活水準の飛躍的な向上をもたらした。アメリカの影響力は、民主政治体制の優位性を確立し、「国家の死(state death)」、すなわち独立国家の暴力的な消滅(the violent eradication of independent countries)を、衝撃的で稀なものにした。ワシントン自身も、比較的平和で活気に満ちた時代に生きたことだけでなく、同盟やその他の協力ネットワークによって、比類なき力を増幅させ、世界的な影響力を拡大させたことで、莫大な利益を得た。

しかしながら、何事も永遠ではない。そして、アメリカが築き上げた秩序、特に冷戦後に台頭したグローバル志向の秩序は終焉を迎えつつある。この秩序は外部からの攻撃にさらされている。北京、モスクワ、そしてその同盟諸国は、この秩序を自らの野望を阻む障壁であり、これらの国々の独裁体制への脅威とみなしている。彼らは、ユーラシア大陸全域で、勢力均衡(the balance of power)や、海洋の自由、武力による征服の禁止といった重要な規範を揺るがしている。これらの国々、特に中国は、内部からも秩序を破壊しようとしている。北京は世界経済への参入を利用して、現在アメリカに挑戦するために用いる製造力と軍事力を築き上げてきた。一方、ワシントン自身も、自らが築き上げた秩序に疲弊し、おそらくは致命的な幻滅を感じているのだろう。

こうした複雑な感情は、現実的な問題に根ざしている。アメリカの同盟関係における根強い不均衡とフリーライダー問題、グローバライゼーションに伴う経済的・物理的な不安、中東地域におけるアメリカの戦争がもたらした反動、そして自由主義秩序が中国の台頭を助長した経緯などだ。こうした感情は、少なくともアメリカの関与の条件を積極的に再交渉しようとする政権、そしてしばしばアメリカの国力を回復するには既存の体制を解体する必要があると主張する政権に、今や顕著に表れている。

こうした状況が、今の不安定な雰囲気を生み出している。ワシントンの国力は依然として比類なきものである。アメリカの同盟関係やG7といった、既存の秩序を支える主要な構造は依然として健在だ。しかし、その秩序の将来は暗く、おそらくは終焉を迎えようとしているように見える。断末魔(the death throes)の苦しみが終わった後、一体何が起こるのだろうか?

過去10年間、アメリカ主導の世界は二つの世界に分裂し、統合された世界秩序という夢は、陣営間の争いへと転じるだろうと思われていた。このシナリオでは、中国主導の陣営には、攻撃的なユーラシアの独裁国家に加え、キューバからパキスタン、そしてグローバル・サウス(global south)の広範囲にわたる国々が加わる。一方、アメリカ主導の陣営は、ユーラシア周辺部の民主政体同盟諸国で構成される。インドからサウジアラビア、ブラジルからインドネシアといった様々なスイングステート(swing states)は、これらの陣営に選択的に加わりながら、その間を巧みに動き回るだろう。国際政治の未来は、冷戦時代へと回帰するだろう。

これは完全な再現ではない。世界と繋がった中国は、クレムリンがかつて持っていたよりもはるかに優れた経済的誘引力と強制力を持っている。しかし、このシナリオでは、制裁とサプライチェインが武器化されるにつれ、国際経済は徐々に分断されていくことになるだろう。デカップリング(decoupling)は、起こるかどうかという問題ではなく、いつ、誰の条件で起こるかという問題となるだろう。冷戦時代と同様、二極構造の対立(a bipolar rivalry)があらゆる地域を巻き込むことになる。ウクライナ、台湾、南シナ海といった最も危険な地域は、地政学的な境界線上に位置することになる。

好むと好まざるとにかかわらず、強力な構造的力(strong structural forces)がこの未来を後押ししている。米中間の緊張は、首脳会談や危機によって高まったり低まったりするかもしれない。ドナルド・トランプ米大統領は習近平中国国家主席について畏敬の念をもって言及すべきかもしれない。しかし、中国が基幹技術、世界貿易、西太平洋における覇権を追求する動きが、アメリカの国力と特権に衝突するにつれ、根本的な対立は激化する一方だ。大国間の争い(Great-power fights)は世界政治を分極化させる傾向があり、相互依存(interdependence)は激しい紛争の中で脆弱性(vulnerability)の源泉となる。多くの点で、この未来への勢いは加速している。ロシアによるウクライナ侵攻は、ユーラシア大陸の独裁国家間の経済、技術、軍事面での連携(alignment)を加速させた。習近平国家主席とウラジーミル・プーティン大統領は、民主政体国家を相手に一斉に戦うことでしか勝利できないことを理解している。真の問題は、ワシントンが依然として自由世界を結集できるかどうかである。

トランプ政権の政策における善意の側面は、新たな冷戦においてワシントンとその同盟諸国を成功へと導く可能性を秘めている。しかし、その裏にある悪意は全く異なる様相を呈している。

トランプ政権の功績として、相互に絡み合う脅威に対抗するため軍事費の増額を要求することで、武装した民主政体共同体を構築している点が挙げられる。同盟国からの投資をアメリカの技術革新基盤にもたらす貿易協定は、中国の経済規模に対抗するために必要な資源と生産の統合を促進する可能性がある。重要鉱物資源に関するパートナーシップは、中国の支配から脱却するための道筋を示す(ただし、その道のりは長い)。そして何よりも、トランプはイランとヴェネズエラという弱小国を攻撃することで、独裁国家の枢軸に打撃を与えた。次はキューバかもしれない。歴史が示唆するところでは、西半球における覇権の再確立を目指すトランプの熱意(his drive to reassert hemispheric hegemony)―ドンロー主義(Donroe Doctrine)―は、より広い世界における影響力拡大の前提条件となるだろう。

大国が主導権を握り(call the shots)、小国は運命を受け入れる(accept their lots)というトランプの姿勢は、彼をアメリカの同盟国の大半よりも習近平やプーティンにとって都合の良い相手にしている。彼の強圧的で非対称的な交渉手法は、民主政体共同体の強化よりも、そこから最大限の譲歩(maximum concessions)を引き出すことに重点を置いているという印象を与える。グリーンランドとカナダに対するトランプの要求は、ワシントンを領土拡大を渇望する修正主義者たちと結びつけ、自由世界の核心である大西洋を挟んだ同盟関係を崩壊させる恐れがある。ヨーロッパの同盟諸国は、中国、ロシア、そしてアメリカという三つの強欲な大国に挟まれることをますます恐れている。もしそうなれば、新たな冷戦は起こらないだろう。なぜなら、独裁国家の勢力を弱める民主政体ブロックは存在しないからだ。

それでも、二極世界シナリオを軽視すべきではない。トランプ時代は、破壊(carnage)だけでなく建設(construction)ももたらすだろう。独裁政権の脅威が強まるにつれ、民主政体国家間の取引的な協力さえも促すインセンティヴが高まる。トラ​​ンプの後継者たちが、単なる自己利益追求ではなく、共通の目的を訴える物語を語ることができれば、新たなレヴェルの集団的努力(collective effort)と負担分担(burden-sharing)への新たなアプローチを伴う、自由世界の協定を再構築できるかもしれない。この未来にも危機と紛争はつきまとうだろう。危険は尽きない。しかし、それでもなお、全ての民主政体国家にとって最善のシナリオである。二極世界は、中国が支配する体制、あるいはさらに分裂する体制よりも望ましい。

第二のシナリオは、ポスト・アメリカ世界が二つの巨大ブロックではなく、いくつかのより小さな地域圏に分裂するというものだ。アメリカは、ホノルルからヌーク(グリーンランド)、北極圏、アルゼンチンにまたがる半球帝国(a hemispheric empire)に再び焦点を当てることで、戦略的な孤立(strategic insulation)を図る。ワシントンが大洋を越えた重荷から解放されるにつれ、中国は東南アジアから北東アジアにかけての広大な三日月地帯(the vast crescent)で支配権を握る。ロシアは、旧ソ連圏と東ヨーロッパの一部で、おそらくは血なまぐさい手段を用いて、支配を固めるだろう。

しかし、この勢力圏の分割(this spheres-of-influence partition)は、大国間のゲームにとどまらない。分裂する世界において、インドは南アジアとインド洋での支配を狙う。トルコは、ヨーロッパ、中東地域、アフリカの交差点に、オスマン帝国崩壊後の領域を築こうとする。イスラエル、サウジアラビア、その他の国々は、ペルシャ湾とアフリカの角を結ぶ紅海地域で覇権を争う。パクス・アメリカーナの後には、諸帝国存立の新たな時代(a new age of empires)が到来する。

これらの帝国は、ナチス支配下のヨーロッパのように、完全に閉鎖されたり軍事占領されたりする必要はなく、覇権は多様な形態で表現される。しかし、この未来において、世界秩序は勢力政治の岩礁に打ち砕かれる。

国際法が崩壊し、地域の有力者たち(regional potentates)が許容される行動規範を定め、従わない従属諸国(disobedient clients)に圧力をかけたり、打倒したりする。地域の支配者たちは貿易、投資、資源の流れを再構築し、弱い近隣諸国の他国との関係に厳しい制限を課す。新たな帝国の時代において、ラテンアメリカにヨーロッパやアジアの軍事基地は存在せず、ワシントンの海外同盟は崩壊するか、あるいは崩壊寸前となるだろう(Washington’s overseas alliances are dead or in tatters)。これは、世界の様々な地域におけるモンロー主義の集合体と考えることができる。

歴史的には、勢力圏はギャングの協定によって形成されてきた。その典型的な例は、アドルフ・ヒトラーとヨシフ・スターリンによる東欧分割(the division of Eastern Europe)である。現代のアナリストの中には、習近平、トランプ、プーティンが世界分割を企むような協定を結ぼうとしていると考える者もいる。しかし、勢力圏は非公式に、あるいは段階的に形成されることもある。

もしアメリカがNATO加盟国から領土を奪うことでNATOを崩壊させれば、西半球におけるアメリカの勢力圏の台頭は、東ヨーロッパにおけるロシアの勢力圏の台頭を助長する可能性がある。もし中国の容赦ない軍備増強によって、日本から台湾、フィリピンに至る第一列島線(the first island chain)が防衛不可能になれば、たとえ国防総省が明言しなくても、西太平洋は北京の影に覆われることになるだろう。つまり、ワシントンが半球覇権に全力を注ぎ込み、トランプ大統領自身が述べているように、遠い海を隔てた出来事は他国の問題だと考えるならば、多圏的な世界(a multisphere world)が生まれる可能性がある。

まさにその方向に向かっているように感じられる。ロシアと中国は長年にわたり地域支配(regional mastery)を争ってきた。そして今、トランプ大統領は南北アメリカ大陸においてワシントンの権威を容赦なく押し付けている。敵対的な支配者を強制的に排除し、重要な資源を主張し、公海上で致命的な武力を行使する一方で、ユーラシア大陸の最前線に位置する同盟諸国には自国の防衛を担うよう迫っている。トランプ大統領の国際法に対する軽視は、19世紀にリチャード・オルニー国務長官が「ワシントンはこの大陸において事実上主権者である(practically sovereign on this continent)」と宣言した言葉を21世紀に彷彿とさせる。西半球支配が、グローバルなプレゼンスを可能にするのではなく、いずれ取って代わる可能性が、今まさに見え始めているのだ。

しかし、トランプは決して厳格な半球主義主義者(hemisphericist)ではない。遠く離れた大陸での和平交渉を推進し、中東地域では野心的な戦争を繰り広げながら、ドンロー主義を声高に主張している。おそらくそれは、世界が厳密に勢力圏に分割されることが超大国アメリカにとって大きな痛手となることを彼が理解しているからだろう。

アメリカの保護を必死に求めるユーラシアの同盟諸国との一方的な貿易協定はもはや成り立たなくなり、日本やドイツがドルの支配を支える理由もなくなる。活気ある経済、重要な貿易ルート、そして高付加価値のサプライチェインを擁する東アジアからアメリカが締め出されれば、中国との競争は間違いなく困難になるだろう。台湾とホンジュラスの交換は、決して良い取引とは言えない。グローバルな影響力は、グローバルな関与から生まれる。

そして、勢力圏に基づくシステムがアメリカの国力を弱体化させるならば、その支持者が切望する安定性そのものをも弱体化させる可能性がある。理論上、勢力圏は小国の従属(lesser-power subservience)を通じて大国の平和を維持する。強大な国家は世界を分割し、手に負えない勢力を抑え込む。確かに、ワシントンが西太平洋から撤退すれば、台湾を巡る米中衝突は起こらないだろう。しかし、永続的な平和を期待することはできない。

複雑な相互依存関係は、勢力圏への移行を険悪なものにする。南アメリカにおける中国のデジタル浸透とインフラ整備を後退させるには、アメリカによる相当な圧力が必要となるだろう。逆に、東アジアにおける勢力圏の確立は、中国の野望の終わりではなく、始まりに過ぎないかもしれない。アメリカにとって、西半球における支配は、世界への介入の出発点だったのだ。

より重要なのは、勢力圏は単に与えられるものではないということだ。その起源はしばしば血塗られた歴史に彩られている。野心的な独裁国家は、支配地域において残虐行為、さらには大規模虐殺さえも厭わない傾向がある。そして、中小国家は、自分たちに何が待ち受けているかを認識しているため、支配をただ受け入れる以外の選択肢を持っている。ウクライナはロシア帝国から逃れるために激しく戦ってきた。日本も同様の行動をとるかもしれないし、あるいは単に核兵器を開発して北京に対する服従を避けるかもしれない。この危険性は、衰退していく秩序の後に起こりうる第三のシナリオ、すなわち醜悪で暴力的な混乱(ugly, violent disarray)を示唆している。

今年の世界経済フォーラムで、カナダのマーク・カーニー首相は、旧秩序の崩壊はミドルパワー国家にとって好機をもたらすと宣言した。協力し、能力を強化することで、これらの国々は大国間の道を切り開き、自らにとって許容可能なシステムを維持できると彼は主張した。

これは古くからの夢である。1970年代以来、学者や戦略家たちは、支配者なきルールの世界、つまり小国家が、たとえアメリカの指導力が失われた後でも、アメリカが築いた秩序の最良の部分を何とか維持できる世界が実現できると期待してきた。しかし、それは幻想(an illusion)に過ぎない。秩序は、最も強大な国々の関与なしには、ましてや反対を押し切っては維持できない。したがって、新たな冷戦や新たな帝国主義の時代に対する最も可能性の高い代替案は、無政府状態の混乱(an anarchic mess)である。

このシナリオでは、アメリカは暴走する。トランプのより暗い衝動は、残忍で規範を破る超大国の出現を予兆している。ワシントンは攻撃的な領土拡大に乗り出すだろう。アメリカは、武力や強制によって弱小国家から重要な資源を奪い取り、従属国家にますます大きな貢納(tribute)を要求し、非自由主義的なポピュリストのためにヨーロッパをはじめとする地域の政治に絶えず干渉している。アメリカは、自らのグローバルな役割を放棄するどころか、むしろ武器として利用している。

このような状況が深刻なのは、アメリカの行動によって、三大強国(米中露)全てが強欲で貪欲な歴史修正主義者として振る舞う世界が作り出されているからだ。特にユーラシア大陸の紛争地帯に位置する小国家は、四方八方から圧迫される危険に晒される。自助努力、つまり各国が自国のために戦うことこそが、唯一現実的な対応策と言えるだろう。

領土侵略、ひいては国家の消滅さえも、現状維持(status quo)や弱小国家の主権擁護に尽力する大国が存在しないために、はるかに頻繁に起こるようになる。自助努力の世界では、脆弱な国家が破壊され、従属させられ、あるいは分断されることになるだろう。ウクライナ戦争は、過去の醜い記憶ではなく、未来の予兆となるかもしれない。他の国々は、生き残るための最善策として核兵器を求めるなど、猛烈な勢いで軍備を増強するだろう。

一方、アメリカの力によって長らく抑え込まれてきた対立が再燃する可能性もある。ヨーロッパ連合が(おそらくアメリカとロシアの圧力によって)分裂する中で、ヨーロッパ諸国が再軍備を進めれば、かつてヨーロッパ大陸で頻繁に見られた軍拡競争と安全保障上の競争が再び激化する恐れがある。航行の自由はもはや過去のものとなるだろう。国際社会の安定が崩壊するにつれ、各国、さらには準国家主体(quasi-state actors)までもが、パナマ運河や北極海航路からバブ・エル・マンデブ海峡、ホルムズ海峡に至るまで、重要なチョークポイントの支配権を巡って争奪戦を繰り広げることになる。無法地帯と化した世界(a lawless world)では、貿易、資源、市場の物理的な支配がますます重要視されるようになり、それは征服の動機をさらに強めるだけである。

たとえ世界が最終的に新たな安定モデルを見出したとしても、1945年以降の輝かしい成果が、その間の混乱の中で失われてしまう可能性もある。

これは悪夢のように聞こえるかもしれない。しかし、歴史の視点から見れば、決して荒唐無稽な話(a stretch)ではない。

1900年代初頭のイギリス覇権の終焉は、すぐに新たな世界をもたらしたわけではない。それは数十年にわたる混乱の幕開けとなったのだ。イギリスの覇権が台頭する何世紀も前、当時は国際システムの中心地だった多極化したヨーロッパ(a multipolar Europe)は、専制政治と戦争の温床(a hothouse of tyranny and war)だった。

相対的な安定が常態であり、横行する残虐行為は例外であるという私たちの信念は、何世代にもわたるアメリカの穏やかな覇権が残した知的遺産(the intellectual residue)である。もしその覇権が終焉を迎えるか、あるいは略奪的なものへと変貌すれば、恐ろしい逆戻りに備えなければならない。

実際、無政府状態は私たちが考えているほど完全に抑圧されることはなく、自助努力の世界の兆候は既に現れている。アメリカの信頼性(U.S. reliability)に対する懸念は核への関心を刺激している。韓国と日本が原子力潜水艦の取得に関心を示していること、あるいはスウェーデンやドイツでさえ核兵器に関する議論が激化していることがその証拠だ。最悪の事態を想定した計画が広まりつつある。カナダは、何世代にもわたって初めて、アメリカの侵略から自国を守るための準備を進めていると報じられている。

新たな防衛協力関係が生まれつつあり、しばしば新たな緊張を生み出している。昨年締結されたパキスタンとサウジアラビアの防衛協定は既にインドの不安を煽っており、トルコが加われば、イスラエルとの中東における対立をさらに激化させる可能性がある。主要地域では、対立(rivalry)が激化している。ペルシャ湾岸地域は言うまでもなく紛争の渦中(awash in conflict)にある。しかし、複数の大国が資源と戦略的要地を巡って代理戦争(proxy wars)を繰り広げるリビアやアフリカの角地域における状況は、これから起こる多極化の混乱(multipolar disorder)を予見させるものかもしれない。

この混乱は永遠に続くものではない。いずれは新たなルールに基づく新たな階層構造(a new hierarchy)が確立されるだろう。しかし、パクス・ブリタニカとパクス・アメリカーナの間の空白期間を埋めるには、世界恐慌と二度の世界大戦が必要だった。たとえ世界が最終的に新たな安定モデルを見出したとしても、その間の混乱の中で、1945年以降の輝かしい成果が失われてしまったことに気づくかもしれない。

今この瞬間を、世界の政治がいくつもの道筋を辿る岐路について考えてみよう。それぞれの道が全く異なる目的地へと繋がるため、不確実性(uncertainty)は極めて大きい。すでに分かっているのは、次の時代は前時代よりも分断され、危険な時代になるということだ。

10年前、新たな冷戦は最悪のシナリオのように思われた。しかし今や、それはおそらく私たちにとって最良の希望と言えるだろう。二つの世界が存在するシナリオでは、危険な危機が頻発し、世界経済はさらに分断されるだろう。自信に満ち、好戦的な中国に対抗するには、民主政体陣営からの莫大な資源と卓越した知恵が必要となる。しかし、このシナリオは少なくとも、かつてディーン・アチソン元米国務長官が述べたように、「世界の半分(half a world)」を維持するものだ。それは、許容範囲内の勢力均衡を維持し、北京の最も野心的な衝動を抑えるために、十分な民主主義的協力が必要となることを意味する。他のシナリオ―宣伝されていたほど安定も利益も得られない新たな帝国の時代、あるいは再び混沌へと陥るシナリオ―は、より悲惨なものだ。そうした道は、パクス・アメリカーナ以前の時代がいかに悲惨だったかをほとんど忘れてしまった超大国を誘惑するかもしれないが、その結末は必ず暗黒に終わる。

皮肉なことに、アメリカは自らが築き上げた秩序のその後に何が起こるかについて、依然として大きな発言力を持っている。なぜなら、良くも悪くも、世界最強のアクターの選択が依然として最も重要だからだ。もしアメリカがトランプ政権の最良の政策を踏襲すれば、大きく動揺しながらも改革された民主政体共同体を、独裁的な圧力に抵抗するために必要な集団的努力へと導くことができるかもしれない。しかし、ワシントンが海外の舞台から撤退すれば、勢力圏争奪戦(a spheres-of-influence scramble)を招くことになるだろう。もしアメリカが反逆者(renegade)となれば、旧秩序を破壊しようとする修正主義者たちに加わり、世界を新たな自助努力の時代へと突き落とすことになるだろう。

トランプの折衷的な(eclectic)外交政策には、これら3つの傾向全てが見られる。今後数年間、そしてアメリカの選挙サイクルによって、これらの傾向のうちどれが定着し、覆すことがますます困難になるパターンへと発展していくかが決まるだろう。

グリーンランド併合に対するアメリカ国内の支持の欠如は、トランプの行き過ぎた行動が、いずれ彼の過激な本能を失墜させることを示しているのかもしれない。後継者、民主党であれ共和党であれ、より伝統的な外交政策の理念を、「アメリカ・ファースト(America First)」時代の国内政治の現実と融合させる方法を見出すかもしれない。その大統領は、トランプの混乱を緩和しつつ、彼の有益な遺産を活用して、新たな冷戦(a new cold war)に向けて自由世界を再構築するだろう。

あるいは、トランプの軍事冒険の一つが裏目に出る可能性もある。その結果、MAGA運動のネオアイソレイショニズム派、つまりタッカー・カールソンなどの評論家から影響を受けた派閥が勝利し、超大国が自国の勢力圏に固執することになるかもしれない。あるいは、共和党と大統領職におけるトランプの真の後継者は、彼がアメリカの力を駆使して既存秩序を破壊するには不十分だったと主張する人物かもしれない。革命が最終的に最も過激な勢力に乗っ取られるというのは、決して初めてのことではない。

旧秩序は崩壊しつつある。グローバル志向のリベラルな国際秩序を称賛したところで、それが復活するわけではない。今後10年間で答えを出すべき重要な問いは、ワシントンがその世界を、困難を伴うものの容認できるものに置き換えようとするのか、それとも現在の不確実性をさらに悪化させる方向へと推し進めるのかということだ。

※ハル・ブランズ:ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際関係大学院(School of Advanced International StudiesSAIS)ヘンリー・A・キッシンジャー記念国際問題担当教授。アメリカ・エンタープライズ研究所上級研究員。マクロ・アドヴァイザリー・パートナーズ経営担当部長。Xアカウント:@HalBrands

(貼り付け終わり)

(終わり)

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