古村治彦です。

 2026年5月1日、アラブ首長国連邦(UAE)が石油輸出国機構(OPEC)から離脱を表明した。OPECは1960年に設立された石油の生産量や価格を石油関連巨大資本(メジャー)から守るための国際組織であり、現在は9カ国で構成されている。OPECを主導しているのはサウジアラビアである。UAEOPEC内では2位の生産量を誇っていたが、離脱した。これによって、生産量や輸出先などを決定する自由裁量が増加することになる。
 UAEは経済多様化を進めており、石油以外の金融、観光、運輸、再生可能エネルギー、不動産などの石油以外の経済分野がGDPの約75%を占めるまでになっている。その象徴がドバイである。現在のイラン戦争ではイランからの攻撃に晒されてしまったが、世界を代表する金融センターとなっている。UAEは石油に頼る必要がない経済になっているので、OPECの「ご近所づき合い」をしなくても済むことになった。

 OPECの「ご近所づきあい」をしなくてよくなったことで、OPECは石油生産に関して、自身で決められる自由裁量を欲するようになった。OPECを支配しているのはサウジアラビアであり、サウジアラビアの意向で物事が決まる。そうなると、UAEの望むとおりにならないことも出てくる。UAEは豊富な埋蔵量を背景にして現在よりも生産量を増やすことを望んでいるが、サウジアラビアは価格の高値維持を望む。ここで利害が一致しないことで、サウジアラビアとの対立ということまで起きている。
uaeiransaudiarabiausaisraelrelations001

 そして、今回のイラン戦争である。UAEはイスラエルとの国交正常化を行っており、アメリカ軍基地も存在するために、イランからの攻撃の標的となった。ホルムズ海峡封鎖の影響も大きい。UAEはホルムズ海峡の外側にフジャイラという石油積み出し港があり、ここからホルムズ海峡封鎖の影響を受けずに、石油を輸出することができる。イラン側はフジャイラを攻撃したが、これはUAEを反イラン、親イスラエルへと動かすことになった。中東地域において新たな火種ということになる。しかも、UAEはイランとペルシア湾を挟んでの隣国である。ペルシア湾とホルムズ海峡における不安定な状況が新たに起きるということになれば、たとえイラン戦争が停戦となっても、中東地域における不安定状況が残り続ける。そうなれば、アメリカ軍は容易に撤退することはできない。UAEをイランから守るという役割を放棄することはできない。中国に肩代わりということも現在のところ考えにくい。
uaemajorportsmap001

 UAEが石油を増産して、石油価格が低下してくれればありがたいが、UAEとイランの関係の悪化は気がかりだ。もちろん、UAEは馬鹿ではないので、ドバイを危険に晒すようなことはしないだろうが、イランとの関係悪化はペルシア湾、ホルムズ海峡、中東地域における緊張と不安定化をもたらす。それを歓迎する国がある。イスラエルだ。イスラエルはUAEをイランに対する抑えの駒として使えることになる。イスラエルがUAEに接近しているという内容の記事を明日、ご紹介する。中東情勢は複雑怪奇、である。

(貼り付けはじめ)

UAEOPEC離脱の真の意味(The Real Meaning of the UAE’s OPEC Exit

-地政学的な再編は、石油市場だけにとどまらない、はるかに深い意味を持つ。

アミール・ハンジャニ筆

2026年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/01/uae-opec-exit-meaning-oil-middle-east/

アラブ首長国連邦(UAE)が5月1日にOPECOrganization of the Petroleum Exporting Countries、石油輸出国機構)を脱退する際、それは単に組織を放棄するのではなく、もはやOPECが自国の利益に合致しないと宣言することを意味する。この違いは重要である。アブダビの脱退は、単一の不満に対する反応ではなく、3つの要因が重なり合った結果である。すなわち、イラン・イラク戦争、サウジアラビアとの対立の激化、そして長年にわたり進められてきたワシントンとの戦略的再編である。

アメリカとイスラエルによるイラン戦争は、UAEを予想もしなかった形で最前線国家(a front-line)へと押し上げた。イランは、アブダビが数十年にわたりワシントンと戦略的に連携してきたことを理由に、UAE領土への攻撃を正当化した。この連携は、2024年にアメリカがUAEを「主要防衛パートナー(major defense partner)」に指定したことで正式なものとなった。イランの攻撃はフジャイラの工業地帯を直撃し、ジェベル・アリ港を揺るがし、ドバイのスカイラインを煙で覆った。UAEはこの打撃をほぼ単独で受け止めた。湾岸協力会議(GCC)加盟国は連帯を示したが、アラブ首長国連邦(UAE)大統領顧問のアンワル・ガルガシュが月曜日の湾岸諸国影響力フォーラムで指摘したように、彼らの政治的・軍事的対応は「歴史上最も弱いもの(the weakest historically)」だった。OPECの発表前夜に公に表明されたこの不満は、不吉な兆候となった。

イランとの紛争は、歴史的な規模のエネルギーショックを引き起こした。イランによる湾岸諸国のインフラへの攻撃とホルムズ海峡の航行への脅威によってサプライチェーンが寸断されたため、OPECの総生産量は3月に27%減の1日あたり2079万バレルにまで落ち込んだ。その結果生じた供給量の減少は、わずか1ヶ月で1日あたり788万バレルにも達し、1973年の石油禁輸措置や1991年の湾岸戦争をも上回った。世界の原油と液化天然ガスの約5分の1が通過するホルムズ海峡は、現在、激しい攻防にさらされる要衝となっている。このような状況下で、相当な余剰生産能力を保有し、長年にわたりその拡大に投資してきたアラブ首長国連邦(UAE)は、極めて重要な地政学的価値を持つ資産を保有している。生産割当制と合意形成型のガヴァナンスを特徴とするOPECに留まることは、もはやアブダビの利益を適切に代表できない集団的枠組みに、その資産を従属させることを意味する。こうした観点からすれば、離脱の論理は合理的であると言える(The logic of exit is, in that light, rational)。

しかしながら、今回の離脱のタイミングと方法は、より根深い問題、すなわちサウジアラビアとの長年にわたる対立の結果をも反映している。湾岸地域の安定の要と称されるリヤドとアブダビの関係は、石油の支配権をめぐる根本的な問題をめぐり、長年にわたり静かに亀裂を生じさせてきた。

この対立の根源は、2016年にロシアとOPECプラスが結成されたことに遡る。当時、UAEは自国に割り当てられた生産枠が、急速に拡大する生産能力を反映していないと感じ始めた。2020年の新型コロナウイルス感染症による価格競争では、サウジアラビアが主導して大幅な減産を実施し、この溝はさらに深まった。アブダビは、生産量増加に多額の投資を行ってきたにもかかわらず、サウジアラビアの減産は不当な負担だと考えた。2021年までに、UAEはサウジアラビアが支援する生産量拡大を公然と拒否するようになり、最終的にアブダビに日量365万バレルというより高い基本生産枠を与えることで決着がついた。この妥協は意見の相違を表面化させただけで、根本的な解決には至らなかった。

その後、緊張関係はより構造的なものへと発展した。サウジアラビアは、財政均衡と「ビジョン2030」プロジェクトの実現のために、ブレント原油価格が1バレル80ドル近辺で推移することを必要としており、供給管理と高価格維持に強い関心を持っている。一方、ドバイが金融、物流、航空のグローバルハブとして機能し、経済の多角化をはるかに積極的に進めてきたアラブ首長国連邦(UAE)は、高価格の底値への依存度が低い。アブダビが石油部門に求めるのは価格管理ではなく、生産量の最大化、つまりアブダビ国営石油会社(ADNOC)の生産能力拡大に投資された数十億ドルの収益である。これらは単なる政策嗜好の違いではなく、経済モデルの違いと言える。UAEのエネルギー大臣は火曜日、アブダビが離脱を発表する前にリヤドに相談すらしていなかったことを認めた。この事実こそが、両国関係の現状を如実に物語っている。 OPECの絶対的なリーダーであるリヤドは、プレスリリースを通じてこの離脱を知った。

この物語におけるワシントンの役割も同様に重要である。アブラハム合意、イスラエルとの安全保障パートナーシップの深化、アブダビを湾岸諸国にとって不可欠な同盟国として位置づけること、これらは全て、アメリカがUAEから手を引いた場合に政治的にも戦略的にも大きな代償を払うことになるよう仕向けるためのものだ。この賭けは今まさに試されており、ワシントンは対応策を講じたようだ。スコット・ベセント米財務長官は、OPECの発表に先立ち、アブダビへの緊急ドルスワップ協定を公に支持した。長年、OPECはアメリカ軍の保護を悪用していると批判してきたドナルド・トランプ米大統領は、事実上、アブダビが離脱するための外交的後ろ盾を与えたことになる。UAEが自由に生産したいという願望と、トランプ政権がより多くの石油を低価格で世界市場に供給したいという願望が一致しているのは偶然ではない。構造的に言えば、これはワシントンとアブダビの間で何年も前から進められてきた利害の一致なのだ。

UAEはまた、中国との関係を巧みに利用してきた。アブダビのハリド・ビン・ムハンマド・アル・ナヒヤーン王太子の最近の北京訪問は、数々の経済協定を生み出した。また、UAE当局は、ドル流動性が逼迫した場合、一部の石油取引を人民元建てで価格設定する可能性を示唆している。これは、2023年にサウジアラビアが行った戦略と同様のもので、アメリカがリヤドとの外交関係を加速させるきっかけとなった。アブダビは中国に軸足を移しているのではなく、中国を利用してワシントンからより有利な条件を引き出そうとしている。UAEの政府系ファンドは依然として、アメリカとヨーロッパの資産に圧倒的に偏っている。北京のシグナルは、軸足の転換ではなく、ワシントンに対し、アブダビとのパートナーシップを当然のことと考えてはならないという警告として、慎重に調整された交渉材料と解釈するのが適切だろう。

それでは、OPEC自体にとって、今回の離脱は何を意味するのだろうか? その損失は深刻であり、中期的には存続に関わる可能性もある。UAEは、今回の離脱以前はOPEC全体の供給量の12%を占める、OPEC3位の産油国だった。アンゴラは割当量をめぐる争いを理由に2024年に離脱した。カタールは2019年に脱退した。それぞれの離脱は特異な事例として捉えられたが、その累積的なパターンは、アブダビをも巻き込んだ戦略的乖離という同じ力によって、カルテルが内部から空洞化していく様相を呈している。サウジアラビアはOPECの組織構造と、それを主導する政治的意思を維持しているが、歴史的な供給混乱の時期に、規模が縮小し能力が低下した組織を率いることは、控えめに言っても困難だろう。リヤドは今後、構造的に弱体化したOPECを率いていくことになる。

イラン核戦争は湾岸諸国を統一するどころか、むしろ既存の断層線(fault line)に沿って分裂させた。イエメン政策、経済競争、そしてワシントンとテヘランとの関係管理に関する異なる判断など、様々な面で意見の相違が加速している。この分裂は、湾岸諸国がイランに対して取った全く異なる姿勢にも表れている。戦前のアメリカとイランの核交渉を主催し、地域で最も一貫した仲介役を務めてきたオマーンは、イランの攻撃が自国領土を直撃しているにもかかわらず、外交を呼びかけ続けている。イランと広大なガス田を共有し、歴史的にテヘランとの関係を維持してきたカタールは、共存を強調し、外務省は両国が「人類の未来において隣人となる(will be neighbors for the future of humankind)」と述べている。サウジアラビアも、イランの攻撃を受けているにもかかわらず、同様に緊張緩和を望む姿勢を示しており、サウジアラビアの経済変革計画を脅かす戦争を警戒している。

アラブ首長国連邦(UAE)は単独で強硬路線(the hard line)を貫き、賠償(reparations)、ホルムズ海峡の無条件再開(he unconditional reopening of the Strait of Hormuz)、そしてイランの国力の全面的な縮小を要求している。OPECからの離脱は、アブダビをリヤドだけでなく、より広範な湾岸諸国の合意からも切り離す地政学的姿勢の結果である。UAEは、カルテルの一員としてではなく、主権国家として行動することが自国の利益に最も資すると結論付けた。この判断が正しかったかどうかは、戦争がどのように終結し、そこからどのような地域構造が生まれるかにかかっている。OPECの決定が明確に示しているのは、共通の制度と統一された利益という虚構の上に築かれた旧来の湾岸諸国間の協定はもはや存在しないということだ。

※アミール・ハンジャニ:クインシー責任ある国家運営研究所の理事であり、ニューヨークに拠点を置く戦略アドバイザリー会社KARVのパートナーである。Xアカウント:@ahandjani

(貼り付け終わり)

(終わり)<
thefunal202607cover001

ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
/p>sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める