古村治彦です。
第二次ドナルド・トランプ政権になって、アメリカは世界の舞台でふらふらと一貫性のない行動を取っている。高関税をかけてみたかと思えば、税率を引き下げる、中国に対して攻撃的な姿勢を取って、中国がレアアースを材料にゆさぶりをかけると、すぐに腰砕けになった。米中首脳会談は共同記者会見や共同声明は出ていないが、最低限のラインは守られ、米中両国は戦争には至らないということで合意している。ドナルド・トランプ大統領の日規則発言やイレギュラーな行動はなかった。ウクライナ戦争はいまだに停戦の兆しを見せず、それに加えて、アメリカはヴェネズエラ攻撃やイラン戦争を実施し、ヴェネズエラ攻撃は成功したが、イラン戦争は失敗であった。アメリカは圧倒的な軍事力を持っており、世界のどんな国でもひとひねりでやっつけることができるというのは幻想(illusion)だ。アメリカは弱い低を慎重に選んで攻撃し、強そうに見せていたということが明らかになりつつある。
こうした混乱はトランプが大統領だからだと考えるのは浅薄だ。トランプはお金がない中で、一生懸命にアメリカを運営し、どうせ駄目な泥船だということは分かっていながら、何とか運営しようとしている。しかし、根本的に駄目な状態であるので、どうしようもない。どうしても、フラフラ、右往左往することになる。トランプはアメリカ帝国の「墓掘り人」として選ばれた。アメリカ帝国の後始末をつけるという大事な仕事がある。
しかし、それにしても大失敗はイラン戦争である。これで全く望んでいなかった中東地域の泥沼にはまり込んでしまった。アメリカが存在自体を公式に認めてこなかったイランの政権と真剣に外交交渉をして、しかも譲歩をしなければならない。アメリカが打倒の対象としてきた、イランの政権の体制の保証までしなければならない。これは屈辱である。イスラエルにいいように使われてこのような事態を招いた。こうしてアメリカは世界覇権国、世界帝国の地位から滑り落ちていく。
おとなしく、余計なことは何もしないで、経済に注力してきた中国の存在感が大きくなるのは当然のことだ。5月14日から15日にかけて米中首脳会談、20日には中露首脳会談が北京で開かれたことは象徴的だ。アメリカはイラン、ロシアはウクライナという問題を抱えており、中国は日本の新型軍国主義と高市早苗政権と台湾という潜在的な問題を抱えながら、米露という20世紀の超大国の上にいるというような形で、「ヤルタ2.0」体制を構築している。米露は辞を下げて中国にいろいろと「お願い」をしに行った。これは大きなことだ。中国は世界覇権国への途を進んでいくだろう。2042年のアヘン戦争後の天津条約200周年までにどれくらいこの状況が進むか注目される。
(貼り付けはじめ)
中国の覇権が実現するかもしれない(Chinese Hegemony Might Be
Happening)
-それが現実になる可能性を疑う理由はこれまでいくらでもあった、今までは。
スティーヴン・M・ウォルト筆
2026年5月12日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/05/12/china-hegemony-asia-trump-summit/
中国はアジアにおける覇権国になり得るのか? 2023年、私は中国の地域覇権(regional
hegemony)への懸念は誇張されているものの、全くの空想ではないと主張するコラムを発表した。その主張をより詳細にまとめたものが、2025年春号の『インターナショナル・セキュリティ』誌に掲載された。私は、近年の地域覇権への試みのほとんどが失敗に終わっている(アメリカは例外的に有利な状況下で成功した)だけでなく、アジアにおける強力な勢力均衡連合(a strong balancing coalition in Asia)の形成は実現可能性が高いと主張した。中国の近隣諸国のほとんどは、中国が地域を支配することを望んでいない。アメリカも同様だ。主要諸国が脅威を均衡させようとする傾向があることを踏まえ、私は中国による露骨な覇権への試みは失敗に終わる可能性が高く、北京がそのような試みを行うのは賢明ではないと結論付けた。
この議論の論理は今でも説得力があると思うが、ドナルド・トランプ米大統領が、実際に証明されているように、衝動的で、見当違いで、無能な外交政策の担い手となる可能性を十分に考慮していなかった。マルコ・ルビオ国務長官やエルブリッジ・コルビー国防次官(政策担当)といった強硬派の存在、そして連邦議会における超党派の合意によって、アメリカの国力はアジアの同盟諸国が中国を牽制するのを支援することに十分集中するだろうと想定していた。
ところが、2025年以降、トランプ大統領は、中国がアメリカに取って代わり、周辺地域で支配的な地位を確立することを意識的に望む者が行うであろうあらゆることを実行してきた。彼はアメリカの科学界の柱を攻撃し、国立科学財団(NSF)の予算を削減し、諮問委員会を粛清し、数十の政府機関で経験豊富な科学者を解雇し、アメリカの主要大学に対して破壊的な攻撃を仕掛けてきた。科学技術力が経済生産性と軍事力の鍵となる時代において、これは一方的な軍縮行為であり、中国がまさにその逆のことをしている時に行われる行為である。
関連して、トランプは太陽光発電や風力発電、先進バッテリー、電気自動車といった新興グリーンテクノロジーの分野で中国に主導権を譲り渡す一方で、化石燃料や内燃機関といった20世紀の技術に固執している。データセンターが急増し、人類の生存に必要な電力がますます増大する中で、この政権は風力発電所の建設を阻止するために税金を投入している。世界は化石燃料の使用を減らし、クリーンエネルギーへの依存度を高める必要があることを日々痛感しているにもかかわらず、トランプはその未来をアメリカではなく中国が握るようにあらゆる手段を講じている。
第三に、トランプ大統領は中国(およびその他の国々)に対して、設計が不十分で一見無作為に見える一連の関税を課したが、中国が多くの先端技術(私が今これを書いているノートパソコンも含む)の基盤となる精製レアアースの輸出を停止すると、トランプ政権は撤回した。結局、彼の関税措置は違法だったことが判明し、彼が主張していた目標(例えば、製造業の雇用をアメリカに取り戻すなど)を達成する可能性はさらに低くなった。
さらに悪いことに、彼は関税という強硬手段を用いて、アジアの最も重要なパートナー諸国を威圧し、彼らが望むか否かにかかわらず、アメリカ経済への投資を約束させた。同盟諸国の経済に打撃を与えることは、反感を招くだけでなく、アメリカが長年望んできた国防費の増額を困難にする。トランプと彼のティームは、アジア諸国との関係改善にもほとんど取り組んでいない。トランプは昨年、インドのナレンドラ・モディ首相と無意味な論争を繰り広げた。また、現在、オーストラリア、ミャンマー、カンボジア、フィジー、インドネシア、ラオス、マレーシア、マーシャル諸島、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、ヴェトナムには、米大使が誰も駐在していない。これらの国々の米大使のほとんどは、そもそも候補者すら指名されていない。
トランプとルビオは、アメリカを数十もの国際機関から脱退させた。これは、中国がますます活発かつ影響力を強めているもう一つの分野であり、国際関係の様々な側面を規定するルールや制度が策定される場にアメリカが参加できないことを意味する。もちろん、一部の国際機関はそれほど重要ではなく、強国は望む時にそれを無視できるという意見もあるだろう。しかし、こうしたフォーラムにおける外交的存在感の低下は、アメリカが他国との協力に関心がないというメッセージを世界に発信することになる。また、今後数年間、アメリカ企業は他国によって策定されたルールに基づくグローバルな規制環境に対応していかなければならないことを意味する。アメリカのような強国でさえ、これは不便で非効率的だと感じるかもしれない。
そして、イランとの戦争もある。
第一に、この紛争は大きな障害となっており、トランプの限られた集中力だけでなく、側近たちの時間とエネルギーも浪費している。ホルムズ海峡の開通方法を模索している最中に、どうやって効果的なアジア戦略を策定できるというのだろうか?
トランプ大統領は、アジアにおける中国の台頭に注力すると公約して就任した4人目の米大統領だが、歴代大統領と同様、結局は中東地域で泥沼にはまり込むことになった。そして、2003年のジョージ・W・ブッシュ大統領と同様、彼には自らの責任以外に責めるべき相手はいない(そしておそらくイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は責めることができるだろうが)。
この戦争は、アジアにおけるアメリカ軍の態勢を弱体化させ、もしアジアで紛争が発生した場合、アメリカがどれほど効果的に対応できるのかという正当な疑問を起こさせる。現在、アメリカ海軍は中東地域に3つの空母打撃群を配備しているが、東アジアには1つしかない。ペルシア湾岸に展開している空母は数カ月間も配備されており、この事態が収束すれば港での休息が必要になるだろう。米国防総省はトマホークミサイルやパトリオットミサイルなどの先進兵器を急速に消費しており、アジアの同盟諸国は防衛力が低下しつつある。中国や北朝鮮がこの状況を悪用するとは考えにくいが、アジアの同盟諸国にとっては決して喜ばしいことではないだろう。
さらに言えば、この戦争の「計画(planned)」(そもそも計画という言葉が適切かどうかは別として)と実行のあらゆる過程は、長年の同盟諸国に相当な懸念を抱かせているに違いない。事前に相談を受けた国は皆無であり、政権内部の誰も、イランへの再攻撃(2025年6月に続いて)が世界中のパートナー諸国にどのような影響を与えるかについて全く考えていなかったようだ。その影響は深刻だ。フィリピン、日本、韓国などでガソリン価格が急騰し、経済成長予測も下方修正された。さらに、戦争による肥料不足や農作物の収穫量減少といった経済的・人的被害も加われば、ワシントンが軽率に戦争に踏み切ったことへの怒りは当然と言えるだろう。
以前にも述べたように、トランプ政権の混乱した戦争遂行は、アメリカの判断力と能力(judgement
and competence)に対する深刻な疑念を抱かせるばかりだ。国際政治において、影響力と信頼性(influence
and credibility)は、国力、共通の利益、そして決意の表明によって部分的に形成されるが、同時に、他国の指導者が自らの行動をある程度理解しているという信頼にも左右される。これまでの政権の実績を考えると、アジア(あるいは他の地域)のアメリカの同盟諸国は、彼らの助言を受け入れたり、彼らが交わす約束を信じたりするべきか?
一方、中国は自らを穏健な大国[a benign power](実際はそうではない)として、あるいは少なくとも外国を爆撃したり、指導者を暗殺したり、世界経済を混乱に陥れたりするような国ではないかのように見せかけることができる。ギャラップ社の最近の世論調査によると、中国は今や世界中でアメリカよりも人気が高いという。これは驚くべき展開であり、私たち全員が懸念すべき事態だ。
こうした状況を踏まえると、私はアメリカのアジアにおける同盟関係の安定性、そして中国の覇権を阻止できる見込みについて、楽観的すぎたのではないかと疑問に思わざるを得ない。中国に対抗するための連合は、構造的に見てかなり強固なものになるはずだが、主要な同盟国、特に同盟のリーダーと目される人物があまりにも無能であれば、崩壊する可能性は依然として存在する。ほとんどのアジア諸国はアメリカから距離を置き、中国に迎合することを望んでいないが、その可能性は私がかつて考えていたほど低いものではないかもしれない。その主な理由は、アメリカの最近の失策ということになる。
こうしたことを言うのは躊躇してしまう。なぜなら、敗北主義(defeatism)は自己成就(self-fulfilling)になりかねないからだ。また、もはや万策尽きた状態で中国の覇権が確実だと示唆したくもないからだ。今でも、私は中国が持っている手札よりもアメリカの手札の方がはるかに良いと考えている。なぜなら、ワシントンは北京よりも多くのハイカードを握っているからだ。しかし、私たちの手札を、ゲームのルールを理解し、それぞれのカードの価値を知っている人物が握ってほしいと切に願っている。
スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social、Xアカウント:@stephenwalt
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』



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