古村治彦です。

 イラン戦争は4月上旬に一時的に停戦が合意され、その後、停戦が延長されている状況だ。アメリカやイランによる小規模な攻撃は実施されているが、大規模な攻撃の再開には至っていない。アメリカとイランによる和平交渉は継続されており、アメリカ側が少しずつ条件を緩めている、譲っているという状況である。イラン側はホルムズ海峡を握っており、これが世界経済に深刻な影響を与えており、アメリカ側にとっても厳しい状況になっている。数週間で戦争は終わり、イランの政権転覆、もしくは体制転換までつながるという甘い目論見で戦争を始めたドナルド・トランプ大統領にとっての致命的な失策となり、また、アメリカにとっても国力や存在感、影響力を毀損するほどの重大な出来事ということになるだろう。

 アメリカ軍は世界第一の規模と戦闘力を持っており、予算額でいえば、世界第2位から第10位までの9カ国の予算の合計総額を一国で上回る規模を誇っている。アメリカ軍は最強であるということは世界の「常識」であった。それが崩れつつある。アメリカは弱い相手、確実に圧勝できる相手を選んで戦争を仕掛けて軽く勝ってきたが、少し骨のある相手となると途端に弱くなるということが今回のイラン戦争で明らかになった。また、ウクライナ戦争への支援もあり、アメリカは装備面で不安を持っていることも明らかにされた。あれだけの防衛予算がありながら、武器や装備に不安があるということも驚きであった。イラン戦争ではイスラエルやペルシア湾岸諸国のアメリカ軍基地に攻撃が加えられ、被害が出た。「アメリカ軍があっても屁のツッパリにもならんではないか」ということにもなっている。

 ドナルド・トランプ大統領はアメリカが世界から撤収する、西半球(南北アメリカ大陸)に戻る、21世紀型のモンロー主義であるドンロー主義を打ち出していた。2026年1月のヴェネズエラ攻撃やキューバに対する非人道的な封鎖は批判されるべきだが、ドンロー主義としては筋が通っている。しかし、イラン攻撃に関してはトランプの主張と矛盾している。イラン戦争と中東地域の不安定は、イスラエルの利益となる。トランプは「アメリカ・ファースト」ではなく、「イスラエル・ファースト」の選択をし、失敗してしまった。トランプを失敗させる方向に誘導したイスラエルの洗脳力は大したものだと言わねばならない。

 しかし、イラン戦争はトランプとアメリカにとって墓穴ということになる。国力を毀損し、世界を混乱に陥れ、信頼を失い、世界帝国、世界覇権国の地位からの陥落を内外に印象付けた。イラン戦争の影響は数年の間続くだろう。その間にアメリカはますます衰退していくだろう。日本政府、高市早苗政権はイラン戦争がすぐに終わると見込んで、無策で大事な3月、4月、5月を過ごした。その付けをこれから支払うことになるだろう。アメリカ追従一辺倒が、これからの時代に以下に危険かということを私たちは痛みの中で学んでいくことになるだろう。

(貼り付けはじめ)

イラン問題はトランプにとっての最大の失敗となる可能性がある(Iran Could Be Trump’s Greatest Failure

-多くのことが恐ろしいほど間違った方向に進んでいる―そして、事態はまだ終わっていない。

ラヴィ・アグラワル筆

2026年5月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/18/iran-war-trump-foreign-policy-failure-energy-crisis-military/

先週北京で行われた華やかな式典の中、ドナルド・トランプ米大統領は、習近平中国国家主席にワシントンとテヘラン間の和平合意の仲介を依頼できると期待していた。しかし、それは実現しなかった。中国も、ロシアを除くほとんどの国と同様に、戦争の終結を望んでいるだろう。しかし、イランの新指導者たちは、相手が明らかに逃げ腰になっているチキンゲーム(a game of chicken in which their opponent has long made it clear that he wants to chicken out)を楽しんでいるように見える。

テヘランは、私たちと同じようにニューズの見出しを読んでいる。そして、トランプ大統領にとってこの戦争が破滅的(disastrous)になるという証拠は増え続けている。現時点で、戦争がどのように終結しようとも、トランプ大統領、アメリカ、そして世界経済全体にとっての苦痛は、しばらくの間続くことになるだろう。それは一体何のためであろうか?

それでは、イラン攻撃によって何が得られたのかを見てみよう。最高指導者アリ・ハメネイ師を含む主要指導者が殺害された。イランの空軍と海軍は壊滅的な打撃を受け、ミサイル発射能力も低下した。しかし、得られたのはここまでだ。イランの政権は依然として存続しており、より若く、より復讐心に燃える新たな指導者が誕生した。『ニューヨーク・タイムズ』紙がアメリカの情報機関の評価に基づいて発表した衝撃的な報道によると、イランは戦前のミサイル備蓄量の70%、移動式発射機の70%を依然として保有しており、ホルムズ海峡沿いのミサイル基地の90%以上を運用可能な状態で利用していることが明らかになった。この最後の点は、イランが将来いつでも世界で最も重要なエネルギーの要衝であるホルムズ海峡を通る航行を妨害し続けることができることを意味する。テヘランはミサイルでイスラエルやアメリカのペルシア湾岸の同盟諸国を攻撃することも依然として可能である。そして最も驚くべきことに、イランは依然として高濃縮ウランを保有している。もし戦争の目的の1つが、テヘランが核爆弾を開発できないようにすることであったとすれば、その目的は達成されていない。

一方、米国防総省は損失の算定に追われている。『ワシントン・ポスト』紙の調査によると、イランは中東地域のアメリカ軍基地15カ所で217棟の建造物を損傷させた。CNNは、バーレーン、クウェート、イラク、アラブ首長国連邦、カタールにある少なくとも9カ所のアメリカ軍基地がイランの攻撃により「甚大な被害(significantly damaged)」を受けたと報じた。これらの施設の再建には数年と数十億ドルの費用がかかる。戦略国際問題研究所(CSIS)によると、アメリカは現在進行中の戦争の激戦期に、パトリオット防衛ミサイルの半分から60%(ウクライナがロシアとの4年間の戦争で使用した数よりも多い)とトマホークミサイルの3分の1をイランとの交戦に使用した。費用はさておき、これらのミサイルは製造と補充に最大4年かかる。もしアメリカが別の戦場、例えば台湾防衛に投入された場合、戦力は大幅に低下した状態で戦闘に臨むことになるだろう。そして、人命の損失も忘れてはならない。これまでの戦闘で少なくとも13名のアメリカ軍兵士が死亡し、400名以上が負傷した。遺族はただただ、なぜこのような事態になったのかと問い続けるしかないだろう。

ここでソフトパワーの代償について語るのは少々無粋に思えるかもしれないが、国内的あるいは国際的な合意なしに戦争を遂行すれば、ホワイトハウスは他国が戦争を始めたことを非難する際に、規範や規則を持ち出す余地が少なくなるという点を考慮する価値はある。アメリカは他国の指導者の処刑を命じることを常態化させてしまった。

そして、エネルギー危機もある。アメリカのガソリン価格は昨年同時期と比べてほぼ50%上昇している。商用車が使用するディーゼル燃料は59%も上昇した。明白な理由は戦争だ。ホルムズ海峡の封鎖によって、それまで供給過剰だった市場が圧迫された。以前にも書いたように、ヨーロッパやアジアではその影響はさらに深刻だ。パキスタンやフィリピンなどの国々は、エネルギー節約のため、公務員の勤務時間を短縮し、大学を閉鎖している。世界第5位の経済大国であるインドでさえ、先週、14億人の国民に対し、燃料消費量を削減し、金(きん)の買い占めをやめるよう要請した。これだけでも十分悪い状況だが、最悪の事態はまだこれからだ。アメリカが石油輸出を拡大し、戦略石油備蓄を取り崩していなければ、エネルギー価格は今頃もっと高騰していたはずだ。国内需要が減少している中国も、膨大な石油備蓄を使い果たしている。ワシントンが輸出を削減したり、北京が備蓄ではなく市場に供給し始めたりすれば、価格は急騰する可能性がある。いつものように、最も大きな打撃を受けるのは小規模経済国だろう。

他の商品も深刻な不足に見舞われており、世界全体に様々な波及効果が及ぶことが予想される。ホルムズ海峡は、平時であれば世界の原油と天然ガスの5分の1を輸送するだけでなく、世界の肥料供給量の5分の1、ヘリウム供給量の3分の1も担っている。世界的な食糧危機と、ヘリウムを必要とする半導体の不足は、すでにエコノミストたちの来年の予測に織り込まれている。危機が長引けば長引くほどコストは増大する。

世界経済の成長はすでに鈍化している。4月、国際通貨基金(IMF)は成長率予測を3.4%から3.1%に下方修正した。本日発表される新たな予測では、さらに0.3ポイントの下方修正が必要となるだろう。IMFは、エネルギー供給が正常に戻らなければ、来年の成長率は2%まで低下すると予測しており、このシナリオはますます現実味を帯びてきている。この事態を客観的に捉えるために、1980年以降、世界の経済成長率が2%を下回ったのはわずか4回しかないことを指摘したい。また、1950年以降、世界経済が景気後退に陥ったのは、2008年の世界金融危機と2020年の新型コロナウイルス感染症パンデミックの2回だけだ。もしイラン戦争がこれら2つの予期せぬ衝撃に並ぶ事態になれば、トランプとアメリカにとって、歴史的なオウンゴールとなるだろう。

アメリカの同盟諸国へのコストも考慮に入れるべきだろう。トランプ大統領は、ホルムズ海峡の強制的な再開と機雷除去のために、ヨーロッパのNATO同盟国に協力を求めた。しかし、支援が得られないことに気づくと、支援を要請したことを否定した。率直さで知られていないドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、アメリカはイランによって「屈辱を与えられた(humiliated)」と述べ、トランプ大統領を激怒させ、すでに緊張状態にあった両国関係をさらに悪化させた。ペルシア湾岸諸国では、アメリカに自国領土に軍事基地を建設するよう要請した国々が、なぜ自ら進んで標的になったのかと疑問を抱いている。例えば、カタールは戦前の天然ガス生産量に戻るには数年かかる見込みで、今年の経済成長率は8.6%のマイナスになると予測されている。ショックに耐える力が限られているアジアの同盟諸国は、アメリカが国際舞台でならず者国家なのではないかと疑問を抱いている。しかし、アメリカの敵対諸国は、この戦争を別の視点で見ている。中国は、アメリカ軍が過負荷状態に陥り弱体化したことを喜んでいるだろう。そして、ロシアはこの紛争の明白な勝者となり、開戦以来、月間石油収入を倍増させている。

トランプ大統領は、戦争をさらに強化するという選択肢を公然と検討している。しかし、それは以前にも増して不確実な利益と、はるかに大きな潜在的な苦痛を伴うだろう。この状況から抜け出す方法としては、外交が望ましいが、そもそもなぜ戦争を始めたのかという疑問が残る。これは、先週のトランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談に立ち返る。もしあなたが北京の指導者だったら、最大の長期的競争相手が致命的な過ち(a catastrophic mistake)を犯している最中に、その邪魔をしたいと思うだろうか? 私はそのように考えない。

※ラヴィ・アグラワル:『フォーリン・ポリシー』誌編集長Xアカウント:@RaviReports

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ドナルド・トランプのイラン戦争はオウンゴール(Trump’s Iran Own Goal

-イラン戦争は強硬派を勢いづかせ、重要な海上輸送路を封鎖し、ロシアの勢力を拡大させた。

ファリード・ザカリア筆

2026年4月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/03/trump-iran-war-israel-united-states-military-nuclear-weapons-missiles-winners-losers/

アメリカ・イスラエルとイランの戦争が始まって2カ月が経過した現在、現状を改めて確認しておく価値がある。2月末に戦争が始まる前のイランとその周辺地域の状況は以下の通りだ。

昨年6月、イランの核濃縮施設は、ドナルド・トランプ大統領の言葉を借りれば、アメリカとイスラエルの空軍によるステルス爆撃機と3万ポンド(約13.6トン)のバンカーバスター爆弾を用いた12日間の爆撃作戦によって「完璧に完全に破壊された(completely and totally obliterated)」。イスラエル国防軍司令官もトランプ大統領の意見に同意し、「私たちはイランの核開発計画を何年も遅らせた。ミサイル計画についても同様だ」と述べた。イスラエル原子力委員会もこの結論を改めて表明し、イランが核物質を入手しない限り、「この成果は無期限に続く」と付け加えた。そして、イランが核物質を入手することは積極的に阻止されていると強調した。

2024年にイスラエルが行った複数の空爆作戦により、イランの軍事力は大幅に弱体化していた。これらの作戦では、イスラム革命防衛隊の主要幹部が殺害され、防空システムが破壊され、弾道ミサイル施設が攻撃された。イスラエルはまた、イランの最も強力な同盟民兵組織であるヒズボラを激しく爆撃し、その指導部を複数殺害した。多くの分析によれば、ヒズボラの軍事力は壊滅的な打撃を受けた。イスラエルは既にガザ地区のハマスを壊滅させていた。さらに、シリア政府を支援していたイラン系民兵組織に対するイスラエルの作戦は、2024年12月のシリア政権崩壊の一因となった。

言い換えると、イランは軍事的に非常に劣勢な状況にあった。加えて、経済も制裁強化と腐敗した政権によって崩壊寸前だった。イランが近隣諸国、ましてや約6000マイル離れたアメリカにとって脅威であると主張する者はほとんどいなかった。トランプ大統領は水曜日、事実上これを認め、「アメリカは必ずしもそこにいる必要はないが、同盟諸国を支援するためにそこにいる」と述べた。注目すべきは、ヨーロッパやアジアの同盟諸国は事前に相談を受けておらず、多くの国が戦争に反対の声を上げている点である。

実際、報道によると、ベンヤミン・ネタニヤフ首相がトランプ大統領にこの戦争を説得したのは、イランが差し迫った脅威だったからではなく、イランのかつてない弱体化が政権交代を迫る好機となったからだという。そうでなければ、トランプ大統領が開戦直後の短い声明を、イラン国民に立ち上がって政権を打倒するよう呼びかける言葉で締めくくった理由は何だろうか? ネタニヤフ首相も自身のメッセージで同様の呼びかけを行った。

これまでのところ、イランに壊滅的な打撃を与え、既に脆弱な軍事力を弱体化させたこと(このような一方的な戦いでは予想できたことだが)を除けば、望まれた成果はほとんど得られていない。イランの政権は崩壊していない。主要な指導者は交代したが、その内容は悪化している。核兵器開発を禁じたことで知られる86歳のアリ・ハメネイ師は殺害され、息子が後を継いだ。息子は父親よりも強硬派と言われている。概して、常に好戦的だった革命防衛隊は勢力を拡大しているように見えるが、これは戦時下においては当然のことと言えるだろう。

47年間にわたるアメリカ・イラン間の緊張関係の中で、数々の脅威にもかかわらず自由航行を維持してきたホルムズ海峡は、トランプ大統領が「はるかに理性的(much more reasonable)」と評する新指導部によって封鎖されている。トランプ大統領は、あと数回の爆撃の後、イランが自国の石油を輸出したがるため、海峡は「自然に(naturally)」開通するだろうと述べている。これは状況を誤解している。海峡は閉鎖されていない。イラン産原油は自由に、特に中国に向けて流れている。戦争の結果、イランは紛争前と比べて、日々の原油販売で約2倍の収入を得ている。さらに、タンカー1隻あたり200万ドルという通行料を徴収し続ければ、テヘランは毎月数億ドルもの追加収入を得ることになる。これは軍事力の再建に十分な額であり、それ以上の利益をもたらすだろう。

アメリカの湾岸同盟諸国は、戦争前よりもはるかに不安定で緊張した環境に直面している。彼らのビジネスモデルは、平和、安定、そして経済統合を必要としている。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子は、近代化という野心的な計画を推進するために地政学的な緊張を緩和しようと、2023年にイランとの関係を修復した。しかし現在、石油輸出が停滞し、地域が安定のオアシスへと向かう道筋から紛争のるつぼへと転落したことで、こうした進展はすべて危機に瀕している。

勝者がロシアであるのは明白だ。原油価格の高騰とアメリカによる制裁解除により、ロシアは毎月数十億ドルもの追加収入を得ることになる。ウクライナは必要な武器が中東地域に転用されるため、損失を被る。ヨーロッパはエネルギーコストの高騰に苦しむ一方、トランプ大統領はNATOにアメリカが起こした戦争への参加を要求し、従わなければ脱退すると脅迫している。(NATOは防衛同盟であり、朝鮮戦争、ヴェトナム戦争、イラク戦争には参加していないことに留意すべきである。)アメリカが中東地域の新たな紛争に巻き込まれ、アジアへの関心を失うことで、中国は利益を得る。一方、北京はグリーンテクノロジーへの巨額投資によって、この戦争の多くのコストから守られており、世界からはより責任感があり、混乱を招かない超大国(a more responsible, less disruptive superpower)として認識されている。

もちろん、状況は変わる可能性がある。戦争は予測不可能(unpredictable)だ。しかし、これまでのところ、これほど多くのコストを費やして、これほど少ない利益しか得られなかったアメリカの軍事行動はかつてあっただろうか?

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、最近では『革命の時代(Age of Revolutions)』を著した。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria
(貼り付け終わり)

(終わり)

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