古村治彦です。

 下記論考は、現在の世界には4つの大国(昔は「列強と呼んでいた」)があり、大国に分類されるのは、アメリカ、中国、イギリス、ロシアであると主張している。下記論考の著者のケンブリッジ大学教授ブレンダン・シムズは、大国の条件として、(1)資源(resources)、(2)影響力(reach)、(3)名声(reputation)、(4)回復力(resilience)を挙げている。軍事力や経済力だけではなく、諸外国からの評価や歴史的な経緯を総合的に判断して、大国仮想ではないかということを決めている。ドイツや日本、インド、インドネシア、ブラジルなどは大国には認定されていない。

下記論考では、国連安保理常任理事国であるフランスを大国としては分類していない。しかし、私から見れば、イギリスもフランスもすでに昔日のような軍事力や経済力、世界への影響力を失っている。そうした点では似たり寄ったりであり、フランスどころか、イギリスも大国の分類から外れるのではないかと考える。国連安保理常任理事国、つまり第二次世界大戦の戦勝国側である、連合国(Allied Powers)が戦後世界の大国ということになっていたが、現在はそこから英仏が外れ、準大国[quasi great powers]ということになる。

そうなると、米中露が大国であり、この3カ国が「ヤルタ2.0(Yalta 2.0)」体制を構築しているのが現状ということになる。ヤルタ2.0体制の中心は中国である。20世紀の冷戦期に超大国であったアメリカとロシア(旧ソ連)は、現在、それぞれがイランとウクライナで戦争状態となっている。それぞれが停戦を模索する中で、その仲介役を引き受けられるのは21世紀の超大国である中国だ。中国は21世紀型の超大国、世界覇権国として新たな型を模索している。こうした動きを象徴しているのが、2026年に実施された、米中首脳会談、中露首脳会談である。
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 米中露の「ヤルタ2.0」体制は相互に戦争をしないようにということを取り決めている枠組みである。米中露が直接戦争をすることは世界に甚大な被害を与え、人類の文明に計り知れない影響を与える。そして、この枠組みは、21世紀における世界覇権国交代を平和裏に進めるための枠組みということも言える。「覇権戦争(hegemonic war)」を起こさないことが米中露の共通の目標であり、利益ということになる。

(貼り付けはじめ)

大国は4つのみ存在する(There Are Only Four Great Powers

-大国間の競争の時代が始まった―しかし、全ての競争相手が資格を満たしてはいない。

ブレンダン・シムズ筆

2026年6月2日
『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/02/great-powers-four-united-states-china-russia-great-britain-france-germany/

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大国間競争(great-power competition)の新たな時代において、競争相手を特定することは重要だ。しかし、大国について語ることは、それを定義するよりも常に容易だった。大国の地位、特にどの国が「最も偉大な(greatest)」国であるかについての意見の相違は、過去と同様に、今日の国際システムの特徴となっている。大国を構成する要素についての共通の定義はなく、大国がいくつ存在するかといった基本的な問題についても合意は存在しない。

それにもかかわらず、大国を共通の特徴によって区別することは可能だ。これらの特徴から、今日存在する大国は4つしかないことが明らかだ。そして、それらは必ずしも予想通りの国家ではない。

第一に、大国には共通の行動様式(a set of behaviors in common)がある。彼らは常に、その時々の主要な国際問題について、自らが影響力を行使するか、少なくとも意見を求められることを期待する。彼らは自らの存在感を強く示し、彼らの不在は埋めるべき空白を生み出す。多くの場合、大国は自らの絶対的な主権(absolute sovereignty)を主張する一方で、特に近隣の小国には限定的な主権(the qualified sovereignty)しか認めない。大国は、極限状況下では、自らを脅かしたり不快にさせたりする政権を転覆させる権利を留保する一方で、自国に対してはそのような権利を一切認めない。

大国は時に国際法を超越した存在(to be above international law)であると主張する。またある時は、国際法を擁護することを美徳とし(make a virtue of vindicating that law)、国際規範を守ると主張する。言い換えれば、大国はルールを作る力と破る力の両方を持ち、決してルールに従うだけの国ではない。彼らは秩序を与える側であり、秩序を与えられる側ではない。

大国がこのような振る舞いをできるのは、中堅国や小国(the middling and smaller states)に比べて圧倒的に優れた能力を持っているからである。その第一の能力は資源(resources)である。この国家は、自国の意思を押し付けたり、他国の意思に抵抗したりするだけの軍事力を持っているだろうか? 軍事力を完全に満足のいく形で評価する方法はないが、軍事費の額とその効果は、防衛能力を大まかに測る指標となる。

配備可能な核兵器(deployable nuclear weapons)もまた、今日の大国としての地位に不可欠な要素である。原子爆弾を運搬する確実な能力、ひいては核攻撃を抑止する能力を持つことは、国家に世界における特別な地位を与える。だからこそ、大国はこれらの兵器に関連する計画、研究、維持、保管、訓練、そして安全保障といった膨大な負担を担うのである。全ての核保有国が大国であるとは限らないが、すべての大国は核保有国である。

次に経済の問題がある。国家は地政学的競の経済的逆風(the financial headwinds of geopolitical competition)を乗り越え、大規模な軍事活動を維持できるだけの強さを持っているだろうか? 通常、経済力はGDPで測定される。GDPは国家の国境内で生産される全てのものを網羅している。購買力平価(purchasing power parity)という代替指標は、国内経済において一定額の資金がどれだけの価値を持つかを考慮に入れている。購買力平価は、生活水準や生産コストが低い非西洋諸国が高く出る傾向がある。

非常に重要でありながら評価が難しいのは、これらの資源がどれほど国家固有のものであるかという問題だ。平時のGDP、紛争時のGDP、そして戦時のGDPは、全く異なる。関税、制裁、あるいは封鎖によって国家を市場、信用源、原材料、食料供給から切り離せば、その経済はたちまち全く異なる様相を呈するだろう。だからこそ、特定の国家の管轄外にあるグローバル・コモンズ、特に世界の海上交通路を支配することが、大国の地位、あるいは少なくとも大国間の序列を決定する上で非常に重要だ。

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左:メリーランド州アナポリスで行われた卒業式と任官式(a graduation and commissioning ceremony)で、ブルーエンジェルスによる祝賀飛行(a flyover salute)を見守るアメリカ海軍兵学校の卒業生たち(2026年5月22日)、右:北京で行われた軍事パレードのリハーサルで、人民解放軍の兵士たちを指導した後、持ち場に戻る士官(2025年8月20日)

経済力は重要ではあるが、大国としての地位を決定づける唯一の要素ではない。過去20年間の軍事力と軍事費で測ると、世界最強の軍隊は、圧倒的なリードを誇るアメリカと中国であり、イギリスとロシアがそれに続く。上位3カ国は、世界経済大国ランキングでも5位、もしくは6位に入る。経済的に弱いロシアは、世界最大の核兵器保有量を誇ることで、大国としての地位を確立している。

大国としての地位を決定づける2つ目の基準は影響力(reach)である。その国家は世界的大国(global power)なのか、それとも単なる地域大国(regional power)なのか。また、本国から遠く離れた地域に武力を行使する意思と能力はどの程度あるのか? 地理的に認められた勢力圏を有しているのか。世界的な基地ネットワークを活用できるのか? 主要な輸送拠点やチョークポイントを支配しているのか? 情報・諜報機関は、世界のほとんどの地域、そしてサイバー空間や宇宙空間に関する質の高い情報を提供できるのか? 大規模で高度な外交組織を有しているのか? 多額の海外援助予算を有しているのか?

影響力は地理的な(geographic)ものと仮想的な(virtual)ものの両方を含む。大国は自国地域をはるかに超えて存在感を示す能力を持つだけでなく、国連、市場、その他の国際機関といった国際機関に影響を与え、場合によっては取り込む能力も持つ。

今日、影響力は各国間で非常に不均等に分布している。アメリカは、広大な軍事基地ネットワークによって際立っている。イギリスはかつてのような世界的な地位を享受してはいないが、ジブラルタル、キプロス、フォークランド諸島など、世界各地に重要な主権拠点を維持している。また、インド洋に面したオマーンのドゥクムなどにも拠点を置いている。ロシアは近隣諸国に勢力圏(a sphere of influence)を主張しているが、近年アフリカや中東では勢力を失っている。ロシアはまた、プロパガンダ、偽情報、破壊的なデジタル活動の分野で世界的な影響力を誇っている。

中国は、ジブチに基地を構え、世界各地のインフラプロジェクトを保護する大規模な準軍事組織を擁し、いずれは世界的な軍事大国となる可能性を秘めている。しかし、その真のグローバルな影響力は、世界のサプライチェインと、技術革命やグリーン革命を支える重要な鉱物資源(リチウムなど)を部分的に支配している点にある。

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3日間の国賓訪問中、ロンドンのザ・モールを馬車に乗ったチャールズ3世国王と日本の徳仁天皇が騎馬警官隊の先導で進んでいる(2024年6月25日)

3つ目の基準は、国家としての評判(reputation)である。その国は、他国、特に他の大国から大国とみなされているか? そして、ほぼ同じくらい重要なのは、その国自身が自らを大国と認識しているかだ。今日、アメリカと中国が大国であることに疑いを持つ者はほとんどおらず、ロシアも、世界秩序を形成、あるいは少なくとも混乱させる軍事力を持つ国として、多くの人が大国とみなしている。イギリスの地位については議論の余地があるものの、ほとんどのヨーロッパ人は依然として英国を主要大国とみなしている。

例えば、フィンランドとスウェーデンは、NATOの安全保障体制が発動する前の2022年に、英国から二国間安全保障の保証を求めた。イギリス主導の統合遠征軍は、バルト海と北極圏の安全保障に大きく貢献している。イギリスはまた、日本をはじめとするアジアの重要国、そしてレヴァントやペルシャ湾岸諸国からも同盟国として高く評価されている。さらに、アメリカがヨーロッパとアジアから撤退すれば、イギリスの限られた軍事力は重要性を増すだろう。

加えて、大国は常に武力以上のものを象徴している。その偉大さは、文化的、イデオロギー的なものだ。今日、イギリスをはじめとする西側諸国は、民主政治体制の原則と自由貿易に基づく自由主義的な国際秩序(a liberal international order)を支持している。イギリスは、ドナルド・トランプ米大統領によるイラン攻撃への参加を拒否することで、アメリカに追従する「プードル(poodle)」ではないことを証明し、そのイメージを強化した。他の国々は、より文明的な観点から自らの立場を表明している。

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ロシア国営通信社スプートニクが配信した写真で、モスクワでヴィデオリンクを通じて核訓練を視察するウラジーミル・プーティン大統領の姿が写っている(2023年10月25日)

例えば、中国の習近平国家主席は、中国は「巨大国家(major country)」として、「際立った中国らしさと中国のヴィジョン(salient Chinese feature and a Chinese vision)」を特徴とする「独自の(distinctive)」外交を展開すべきだと述べている。大国の中でも最も残忍な国の1つであり、軍事力と核兵器の威力を常に誇示するロシアでさえ、「魂のない(soulless)」西側諸国に対抗し、キリスト教的価値観と家族の価値観(Christian and family values)を世界的に代表していると主張している。かつてルールに基づく国際秩序の要であったアメリカが、トランプ政権再選後、一体何を象徴するのかはまだ明らかではない。

国家の評判は、グローバル・ガヴァナンスの構造におけるその国の立場によって左右される部分が大きい。アメリカは、国際通貨基金(IMF)や世界銀行といった経済機関において、主要な役割を担っており、支配的であると言う人もいる。ロシア、中国、イギリス、フランスとともに、国連安全保障理事会の常任理事国(a permanent member of the United Nations Security Council)でもある。これら5カ国は国際システムにおいて大きな特権を享受しており、その特権はしばしば批判にさらされるが、国連改革は依然として実現の可能性は低い。

大国としての地位を決定づける4つ目の基準である「回復力(resilience、レジリエンス)」は、社会と経済がどれだけの苦痛に耐えられるかを示す。歴史的な実績は重要な役割を果たす。過去において、勝利は必ずしも最も大きな損害を与えられる者にもたらされるとは限らず、時には最も大きな苦痛に耐えられる者にもたらされることもあった。ハプスブルク帝国のような過去の大国は、逆境の中で驚異的な粘り強さ(enormous staying power in adversity)を示した。敗北とそこからの回復は、勝利と同じくらい重要である。国家が豊富な資源を保有し、目覚ましい影響力と名声を誇っていたとしても、回復力を欠いていれば大国とは言えない。

長年にわたり最も回復力の高い国は、イギリスとアメリカだ。米英両国は長期にわたる戦いを戦い抜き、アメリカ植民地の喪失やヴェトナム戦争といった深刻な敗北から立ち直る能力を証明してきた。米英両国とも現在、それぞれ異なる形で国内危機に直面しているものの、比較的速やかに回復することが期待される。一方、ロシアと中国は、現在の形では比較的若い大国であり、中露両国とも政治的な混乱と分裂を経験したばかりである。他の多くの事柄と同様に、回復力は歴史、特に長期にわたる社会的な結束の発展に根ざしている。

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南アフリカのヨハネスブルグで開催されたG20サミットで、イタリアのジョルジア・メローニ首相(左)が日本の高市早苗首相と挨拶を交わす。傍らにはフランスのエマニュエル・マクロン大統領が立っている(2025年11月22日)

これらの基準に基づくと、大国候補として挙げられる国々のいくつかは除外される。ドイツや日本といった経済的に重要な国々は、大国となるための軍事力、特に核兵器を欠いている。

影響力という点では、ドイツ、日本、ブラジル、インドネシアは主に地域的な軍事力を有している。これらの国々の中には、外交活動や海外援助政策を通じて相当な国際的影響力を持つ国もある。ドイツと日本は大きなソフトパワーを持っているが、ブラジルとインドネシアはそうではない。これら4カ国は過去に脆弱な面を見せており、必要な回復力を欠いている。

多くの支持を得ているにもかかわらず、インドもほとんどの基準を満たしていない。インドは核兵器を保有し、世界第5位または第6位の経済規模を誇るが、ニューデリーの軍事力は主に地域的な範囲にとどまっている。インドは「世界の教師(world teacher)」としての評判を自負しているが、その役割を大国としての役割とは異なる視点から捉えている。近代国家としてのインドの歴史は比較的浅いため、その回復さを測るのは難しい。しかし、テロや民族間の暴力に悩まされやすく、貧困が根強く残っていることは、脆弱性(vulnerabilities)を示唆している。

フランスは評価することが難しい。巨大な経済規模を持ち、イギリスよりも独立した核兵器を保有しているが、国境管理や通貨管理といった主権の重要な部分をヨーロッパ連合に譲り渡している。パリは依然としてアフリカで大きな影響力を持ち、インド太平洋地域にも重要な存在感を示しているが、アフリカでは後退傾向にあり、インド太平洋地域では反植民地運動の脅威にさらされている。また、フランスはアングロサクソン諸国、中国、ロシアとは異なる独自のグローバルブランドを確立している。

しかし、回復力という点では、フランスは19世紀と20世紀に幾度となく国家崩壊を経験しており、中でも1940年にドイツに占領され、戦後英米連合(the Anglo-Americans after the war)によって再建されたことは特筆すべきである。フランスはイギリスよりもはるかに脆弱(brittle)である。

明らかなのは、大国が持つ資源(resources)、影響力(reach)、名声(reputation)、そして回復力(resilience)の程度、そしてこれらの能力のバランスは、国によって大きく異なるということである。どの大国も全く同じ構造ではなく、能力と脆弱性(capacity and vulnerabilities)において大きな違いがある。これは常にそうであった。過去には、どの大国も他の大国と全く同じ強さではなく、中には著しく弱い国もあった。例えば、18世紀のプロイセンや19世紀末のオーストリア=ハンガリー帝国などが挙げられる。

同様に、今日の大国も、個々の強みと総合的な強さの両面において、互いに大きく異なっている。アメリカと中国は経済力と軍事力においてロシアとイギリスをはるかに凌駕しているものの、これら4カ国はいずれも、世界の舞台における主要国の中でも、他の国々とは一線を画す特徴を持っている。また、フランスという、大国としての地位が明確でない国も存在する。

このリスト―含まれる国と含まれない国―は、一部の人々を驚かせるかもしれない。しかし、歴史的に見ると、その一貫性は驚くべきものだ。各国間の力関係は大きく変化してきたものの、この大国構成は、私たちの祖父母だけでなく、曽祖父母の世代にも馴染み深いものだっただろう。そしておそらく、私たちの子供や孫の世代にも、この構成は変わらないだろう。

※ブレンダン・シムズ:ケンブリッジ大学地政学センター部長。著書に『大国の復活(The Return of the Great Powers)』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)



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