古村治彦です。
アメリカとイスラエルが始めたイラン戦争によって、世界中が大迷惑をこうむっている。イランがホルムズ海峡封鎖を実施し、石油の流通が滞ることで、物資不足や物価上昇が世界各国で起きている。日本も例外ではない。高市早苗首相と日本政府は「大丈夫だ、大丈夫だ」と往年の志村けんのギャグのような発言を繰り返しているが、物資不足や物価上昇は日本国内でお発生している。石油価格は今のところ政府による補助金政策で急上昇してはいないが、輸入できる量が限定され、価格も高い中で(円安が進行している)、いつも通りの消費を続けるというのは常識的な対応ではない。
アメリカ国内でもディーゼル燃料と肥料の価格上昇と物資不足によって、物流や建設、農業生産に影響が出ている。アメリカ国民の生活を直撃する。インフレも進行する。こうした状況が続けば、2026年11月の中間選挙で共和党は敗北を喫する。共和党優勢州(レッドステイト)はアメリカの農業が盛んな州に多い。農家は共和党の大票田であるが、その農家たちが共和党にそっぽを向けば選挙結果が厳しいものとなるのは当然だ。「強いアメリカ」を求めるということで、トランプと共和党を支持する人たちもいるだろうが、何より、今回のイラン戦争で、トランプが証明してしまったのは「アメリカ軍はイランを崩壊させることができなかった」ということだ。そして、「ペルシア湾岸諸国を中心にアメリカ軍基地が設置されていたのに、屁のツッパリにもならなかった」ということだ。アメリカ軍がいれば安全安心という神話は崩れてしまった。
現在の世界の大きな関心は「イラン戦争がいつ終わるのか」「ホルムズ海峡はいつ以前のような状況に戻るのか」ということである。戦争が始まって3カ月が経過して、和平の見通しは明るくない。イラン側がホルムズ海峡を握っている限り、アメリカ側は自分たちの意向を通すことは難しい。譲歩をし続ける必要がある。それならば、アメリカは最強のアメリカ軍を使って、イランに大規模攻撃を仕掛けて、イランを徹底的に叩く、イランの現政権を打倒することが必要になるが、そのようなことは不可能である。「万能な(almighty)」はずのアメリカ軍にできないことがあると見せつけることはそれだけで敗北である。
イラン戦争はドナルド・トランプ大統領とアメリカ政府にとって大失策であった。トランプとトランプを操ったイスラエル、そしてベンヤミン・ネタニヤフ首相の罪は万死に値する。イスラエルの身勝手な、自己中心的な野心のために世界は混乱に陥り、人々の生活が破壊されている。現状を改善するためには、ネタニヤフ首相の退陣、ひいてはトランプの引責辞任ということも視野に入ってくるだろう。
(貼り付けはじめ)
イラン戦争が世界経済の「主要原動力」を圧迫している(Iran War Chokes
‘Major Driver’ of Global Economy)
-ホルムズ海峡危機は原油以上にディーゼル燃料に大きな打撃を与えている。
クリスティーナ・ルー、キース・ジョンソン筆
2026年5月11日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/05/11/us-iran-war-diesel-fuel-energy-economy/?tpcc=recirc_featured_horizontal051524
ドナルド・トランプ米大統領によるイラン戦争が経済の多くの分野に混乱をもたらしているが、エネルギー市場もその1つだ。その中でも特に大きな打撃を受けているのがディーゼル燃料である。
過去2カ月間でディーゼル燃料の価格は急騰し、アメリカのディーゼル価格は昨年比で60%も上昇した。これは、イランに対するアメリカの戦争によって油田、製油所、そしてエネルギーの流れが麻痺したためだ。
大型機械や重機を操作した経験がない場合、ディーゼル燃料に馴染みがないかもしれない。しかし、この燃料は世界経済の原動力であり、現在その供給量は以前よりも減少している。これは、トラクターの故障、大型トラックの停止、そしてこの燃料に依存して成り立っている世界にとって大きな痛手となる。結局のところ、私たちが購入するもの、食べるもの全てがディーゼル燃料で動いているのだ。
ロンドンに拠点を置くエネルギーコンサルタント会社エナジー・アスペクツ社の需要部門責任者であるコーエン・ウェッセルズはディーゼル燃料について「経済の主要原動力(major driver of the economy)」だと述べている。
トランプ政権と共和党にとって、原油価格の高騰は、2026年11月の重要な中間選挙を控えた時期にリスクとなり得る。それは、全米の有権者は、現在進行中の戦争による深刻な経済的影響に苦しんでいるからだ。トランプ大統領は紛争が「すぐに終わる(quickly)」と楽観的な見方を示しているものの、イランが封鎖している重要な海上交通路であるホルムズ海峡をめぐる不確実性が続いているため、海運業者や保険会社は安易に楽観視していない。
ペルシア湾岸における戦争は、1日あたり1500万バレルの原油と500万バレルの石油製品が封鎖されただけでなく、中東産の原油は中重質で硫黄分が多く、ディーゼル燃料やジェット燃料などの製造に理想的な原料であるため、特に深刻な問題となっている。
低硫黄で軽質なアメリカ産原油はガソリンの生産量が多いため、世界最大の産油国であるにもかかわらず、アメリカは依然としてメキシコ湾岸の製油所群のために重質原油を輸入している。この依存度は、特にアジア地域において顕著であり、アジアはペルシア湾岸地域産原油の最大の顧客である。
アメリカ・イラン和平合意への期待から、世界の原油価格は最近再び下落したが、世界中の製油所を悩ませているボトルネックの解消にはほとんど繋がらず、経済のほぼあらゆる分野でコストが少なくとも今後数カ月間は高止まりするだろう。これは農家、トラック運転手、海運会社、そして彼らが生産・輸送する物資を購入する人々にとって悪いニューズだ。
コンサルティング会社クリアビュー・エナジー・パートナーズ社のマネージングディレクターであるケヴィン・ブックは「貨物や商品の輸送にディーゼル燃料を依存している私たち全員にとって、これは経済全体に波及する」と述べている。
アメリカにおいては、おそらく最も大きな打撃を最も受けているのはトラック運転手だろう。彼らはこれまで国内の貨物輸送の約4分の3を担い、ディーゼル燃料の最大の購入者でもある。ラピダン・エナジー・グループ社の精製製品担当ディレクターであるリンダ・ギーゼッケによると、国内で消費されるディーゼル燃料の約3分の2はトラックによるものだという。
ディーゼル燃料価格の高騰は、すでに業界に大きな負担をかけている。アメリカ最大手のトラック運送会社であるUPSとフェデックス(正確には、顧客であるトラック運転手)は、ディーゼル燃料価格の高騰によって大きな打撃を受けている。しかし、アメリカのトラック運転手の約半数は個人事業主だとブックは指摘する。「これは彼らの経費を圧迫し、利益を大幅に減少させ、貨物輸送の請負事業で収益を上げることを困難にしている」とブックは述べた。
そして、こうした圧力はトラック輸送業界だけにとどまらないだろう。ディーゼル燃料価格の高騰は、最終的には配送料の値上げや商品価格の上昇という形で消費者に転嫁されると専門家は指摘する。
ギーゼッケは「輸送コストが単純に高くなったため、私たちが購入する全ての商品に価格が転嫁される」と述べている。
ディーゼル燃料価格の高騰による影響を受けるのは貨物輸送だけではない。農業もまた、より深刻な混乱に見舞われるだろう。戦争はすでに世界中の農家に大きな打撃を与えている。紛争とホルムズ海峡の事実上の封鎖によって、世界の農業を支えるエネルギーと貿易の流れが阻害されているのだ。
特に肥料価格は戦争の影響で急騰している。全米最大の総合農業団体である全米農業連盟(American
Farm Bureau Federation)が4月に実施した調査によると、多くのアメリカの農家がもはや肥料を購入できない状況にあることが明らかになった。5700人以上の農家を対象としたこの調査で、回答者の70%が、肥料価格の高騰によって必要な資材を全て購入できないと答えている。エネルギー価格の高騰は、こうした課題をさらに深刻化させ、農業機械や農機具の動力源としてディーゼル燃料に頼っている農家を一層苦しめることになるだろう。
エネルギー価格の高騰は、こうした課題をさらに深刻化させ、農業機械や農機具の動力源としてディーゼル燃料に頼る農家を一層苦しめることになるだろう。
元米農務省チーフエコノミストで現在は国際食糧政策研究所に所属するジョセフ・グラウバーは次のように述べている。「農家の利益率はここ数年で大幅に低下しており、今回の価格高騰はそれにさらなる圧力をかけることになる。農産物価格がほとんど改善していない中で、これは農家が負担しなければならない新たなコストとなる」。
世界中でディーゼル価格が高騰する中、地域社会は怒りを表明するために抗議活動を行っている。アイルランドでは、抗議者たちがトラクターやトラックで街頭に繰り出し、ディーゼル価格の高騰に対する不満を表明した。ノルウェーでも同様のデモが見られた。
国民の不安を受け、各国政府は対応に乗り出した。ヴェトナム政府は一部の産業に対し燃料節約を要請し、中国は消費者を保護するため、例年のような国内燃料価格の値上げを抑制した。世界的な価格上昇にもかかわらず、インドもディーゼルとガソリンの小売価格を据え置いているが、今後は状況が変わる可能性も懸念されている。
サプライチェインの混乱は長期化する見込みだ。先週、アントニオ・グテーレス国連事務総長はXへの投稿で、ホルムズ海峡の航行制限が直ちに解除されたとしても、「サプライチェインの回復には数カ月を要し、経済生産の低迷と物価高が長期化するだろう」と警告した。
「私たちは世界的な景気後退(global recession)という脅威に直面している。それは人々の生活、経済、そして政治的・社会的安定に深刻な影響を与えるだろう」とグテーレス事務総長は述べた。
※クリスティーナ・ルー:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Blueskyアカウント:@christinalu.bsky.social、Xアカウント:@christinafei
※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌地経学(geoeconomics)・エネルギー担当スタッフライター。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.social、Xアカウント:@KFJ_FP
(貼り付け終わり)
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