古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は独裁者だろうか。好き勝手なことを言い、態度をくるくると変えて、「自分が最高だ」という傲慢な態度を見せる。突然、高関税をかけてみたり、引っ込めてみたり、「海外での戦争なんてやらない」と選挙の時に言っておきながら、ヴェネズエラやイランを攻撃してみたり、やりたい放題のように見える。トランプはやりたいことを邪魔されずにやれて、誰にも、どんな組織や機関も止められないと考える人も多いだろう。

 しかし、アメリカは三権分立(Separation of Powers)の体制になっている。立法権(Legislative):連邦議会、行政権(Administrative):大統領、司法権(Jurisdictive):連邦裁判所がそれぞれに権限を持ち、お互いに牽制をしている。抑制と均衡(Check and Balance)とも言う。フランスの思想家シャルル・ド・モンテスキューが『法の精神(De l'esprit des loisThe Spirit of Law)』(1748年)で唱えた。アメリカにおける三権分立の概念図は以下の通りだ。

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 アメリカの連邦最高裁判所は、トランプ関税は違憲だという判決を下した。現在の最高裁の判事の構成は保守派が多く、本来であればトランプ関税を支持するということも考えられるが、公開税は憲法違反ということで取り消すという判決が下された。また、連邦議会下院では、戦争終結の決議案が可決されたことはこのブログでもご紹介した。連邦下院も共和党が過半数を握っていて、このような決議案が可決されない可能性もあったが、共和党議員の中から賛成が出て可決された。このように、権力分立は機能している。もちろん、戦争終結決議案は抑制と均衡の機能街ではあるが、トランプの動きを止めようという動きとして機能している。

 トランプは大統領令を頻発してこの権力分立、抑制と均衡を崩そうとしているが、アメリカの政治体制においてはその動きにも限界がある。このようにしてみると、一概にトランプが権力を拡大して、独裁的になっていると言うこともできない。日本でも権力分立が導入されているが、「忖度」「空気」によって実際には、行政権の拡大が著しい。日本は近代的な制度を持ちながら、実際には前期断定黄な運用をしているという点で、遅れていると言わざるを得ない。そして、それは私たち国民の責任でもある。

(貼り付けはじめ)

真の「文明の消滅」はアメリカで起きている(The Real ‘Civilizational Erasure’ Is Happening in America

-トランプによる国家権力(state power)の拡大は西洋の核心的な成果である「権力への制約(limits on authority)」を損なう。

ファリード・ザカリア筆

2026年1月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/30/trump-vance-western-civilization/

ドナルド・トランプ、JD・ヴァンス、そしてその他のMAGA支持者たちは、西側諸国が直面する深刻な危機は「文明の消滅(civilizational erasure)」であると繰り返し主張し、ヨーロッパでまさにそれが起こっていると訴えている。彼らは、ヨーロッパがアイデンティティと移民問題に関して危険なほど誤ったアプローチを採用することで、西側諸国の独自の遺産を破壊していると主張している。

しかし、西側諸国の特徴は、部族もしくは宗教的連帯(tribal or religious solidarity)ではない。それは世界の大半に当てはまることだ。西側諸国の貴重で、ほとんど他に類を見ない功績は、国家権力の制限(he limitation of state power)である。1215年のマグナ・カルタ(Magna Carta)以来、西側諸国は市民の権利(rights of citizens)、独立した裁判所(independent courts)、主権を持つ教会(a sovereign church)、そして私有財産の神聖さ(the sanctity of private property)を通して、統治者に対する制約(constraints on rulers)を徐々に課してきた。この遺産こそが、西側諸国を民主的で繁栄した国家にしたのだ。そして、この遺産こそが、西側諸国を安定させた。権力が法によって制限されていたからこそ、市民は異議を唱えることができ、企業は投資することができ、市民社会は繁栄することができた。

トランプ政権2期目は、こうした伝統を急速に侵食しようとしている。

ミネアポリスでは、憲法修正第1条で保障された権利を行使していた2人が射殺された。ミネアポリスをはじめとする各地で、連邦捜査官たちが覆面を着用し、しばしばナンバープレートのない車両で、令状なしに逮捕を行っている。その実態は、権威主義的な警察活動、際限のない国家権力の行使を如実に物語っている。

そして、これは単なる見かけ上の問題ではない。現政権は、驚くほど攻撃的な方法で権力を行使し、裁判所の判決への服従をしばしば意図的に遅らせ、事実上、判決を無視していると言っても過言ではないほどだ。

トランプ政権は市民社会、すなわちメディア、大学、非政府組織、法律事務所、さらには民間企業にまで宣戦布告した。司法省がジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ財団のような組織を捜査する計画(大統領はこれを恐喝行為[racketeering]と表現している)は、不穏な兆候を示している。それは、好ましくない集団を犯罪者扱いする動きだ。これは、ハンガリーやロシアの論理をアメリカ政治に持ち込んだものだ。批判者を反論するのではなく、捜査するのだ。

そして、法曹界も例外ではない。政府が法律事務所を脅迫する―機密情報へのアクセス制限、連邦政府機関への立ち入り制限、そして「不適切な」依頼人を代理すれば不利益を被るという示唆―これは、政府が好まない法律事務所を選べば適正手続きの保護は条件付きになる、と静かに、しかし明確に国民に告げているのだ。

大学もまた、前例のない規模で正面から攻撃され、捜査を受けている。現代の大学を愛する必要はない。ここに潜む危険性は明らかだ。政府は資金提供を利用して、独立した教育機関から政治的な譲歩を強要しているのだ。

自由社会の早期警戒システムとして常に重要な役割を担ってきた報道機関は、容赦ない脅迫としか言いようのない状況に直面している。報道機関は訴訟を起こされ、規制当局の権限が公然と行使され、経営者に党の方針に従うよう強要しようとしているかのようだ。8月には、連邦判事が、トランプ政権による左派団体メディア・マターズに対する連邦取引委員会の調査は、同団体の憲法修正第1条の権利を侵害した可能性が高く、中立的な規制ではなく政治的報復のように見えるとの判断を下した。

トランプ政権は経済における国家権力を拡大しているが、それはルール制定者としてではなく、むしろ交渉役や規律維持者としての役割を果たしている。公表された基準と競争的な補助金制度に基づく産業政策と、CEOがホワイトハウスに召喚され、罰せられたり、褒賞を与えられたり、あるいは「奨励されて(encouraged)」従うよう促されるようなシステムとの間には、天地ほどの隔たりがある。規制当局が、企業が特定の政策を採用(あるいは放棄)するかどうかによって、日常的な承認、更新、あるいは審査が左右される可能性を示唆すると、資本主義は競争の場ではなくなり、恩恵供与のシステムへと変貌し始める。

そして、これら全てに影を落としているのが、政権が過激派ではなく反体制派に対して、国家安全保障の手段を用いようとする姿勢である。例えば、一部の「アンティファ(antifa)」グループを外国テロ組織に指定しようとする動きを考えてみよう。この概念はあまりにも曖昧で定義が不十分なため、国家安全保障の専門家たちでさえ、あらゆる組織に適用されかねないと警告している。現行法では、指定された外国テロ組織に故意に「物的支援(material support)」を提供した場合、最高20年の懲役刑が科せられる可能性がある。しかも、「支援(support)」は些細な援助まで含めて広く解釈される可能性がある。民主政体はこうして衰退していく。異議申し立て(dissent)を違法と宣言することによってではなく、異議申し立てを別のものとして再分類することによって、国家権力が拡大し、民主政体は衰退していく。

政権は「西洋(the West)」をまるで文化遺産博物館(a heritage museum)のように語る。象徴、スローガン、アイデンティティといったものだ。しかし、西側諸国の真の偉大さは制度にある。その制度とは、強者も弱者も関係なく全ての人を拘束する法、慈悲深い指導者ではなく、制約を受けた指導者によって守られる自由、そして国家に反対しても犯罪行為とみなされることを恐れないほど強固な市民社会である。

西側諸国は血統(a bloodline)ではない。それは、権力が抑制され、権利が保護され、強制力が説明責任を負うという、一種の取引である。西側諸国にとって最大の脅威は、寛容になりすぎたり、個人の権利を過度に重視しすぎたりすることではない。国家権力の拡大こそが、西側諸国を、強者が弱者を支配する他のあらゆる社会と同じようなものにしてしまうことなのだ。

こうした観点から見れば、「文明の消滅(civilizational erasure)」は確かに起こっていると断言できる。しかし、それはヨーロッパではなく、ここアメリカで起きている。アメリカ政府が無制限の権力(unbounded power)に慣れ、国全体が無制限の権力と生活するに慣れきってしまっているからだ。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、最新刊『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)

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