古村治彦です。

 イスラエルはアメリカと共にイランに対して大規模攻撃を行い、イラン戦争が始まった。その後は、散発的に攻撃の応酬が行われているが、大規模な戦闘状態には至っていない。アメリカとイランの間で和平交渉が続けられているが(パキスタンの仲介であるが中国も大きな影響力を行使している)、和平合意に関しては、覚書の段階までは進んでいる。イラン側は、イスラエルが隣国レバノンへの攻撃を停止しない限り、交渉に応じないという通告をアメリカ側に行い、アメリカのドナルド・トランプ大統領が怒り狂って、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に電話をかけて、「あんたは狂っている」と述べ、イスラエルのレバノン攻撃を中止させたということは、このブログでもすでにご紹介した。
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 イスラエルが隣国レバノンに対して攻撃を行っているのは、同国に存在するイスラム教シーア派組織ヒズボラがイスラエル攻撃を継続しているからだ。ヒズボラは、レバノン内戦中の1982年に、内戦に介入していたイスラエル国防軍への抵抗として始まり、イランの支援を受けて拡大した。様々なテロ攻撃や武力攻撃を実施し、イスラエル国防軍をレバノンから撤退させることに成功した。ヒズボラ自体はイスラエルのせん滅を主張しており、イスラエルに対する攻撃を止めていない。イスラエルはこれまでもたびたび、ヒズボラを掃討するためにレバノンへの攻撃を実施しているが、成果は上がっていない。逆に、レバノン政府やレバノン軍を弱体化させることになり、ヒズボラの勢力を拡大させる結果となっている。
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 イスラエルは、今回のイラン攻撃と同時にレバノン南部を攻撃し、ヒズボラを掃討し、占領することで、イスラエル本土を防衛するということになっている。本来であれば、イスラエル国防軍が国境線まで撤退し、ヒズボラもレバノン南部から退去し、空白となったレバノン南部地域にレバノン軍が駐留することで安全が保たれるというかたちになるはずが、レバノン軍の実力不足もありそれもうまくいかない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は今回のレバノン攻撃で成果を挙げようとしているが、それも難しい。そうした中で、トランプ大統領から叱責されて、攻撃を中止しなければならなくなった。アメリカのトランプ政権としては、イランとの和平合意が優先される状況となっている。トランプ大統領がネタニヤフ首相にイラン戦争の責任を押し付けて逃げてしまうということも考えられる。そうなれば、ネタニヤフ首相の目論見は失敗する。そして、今年実施される議会選挙で敗北することになれば、以前からのスキャンダルに関する裁判も進められ、家族そろって服役ということにもなりかねない。ネタニヤフ首相の賭けの成否がどうなるかはこれから出てくることになるが、彼個人のことよりも世界の安定と平和こそが優先されるべきであるのは言うまでもないことだ。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプとイランの合意はネタニヤフ首相にトラブルをもたらす可能性がある(A Trump Deal With Iran Could Spell Trouble for Netanyahu

-イスラエルの指導者は重要な選挙を前に勝利を必要としている。

アーロン・デイヴィッド・ミラー筆

2026年6月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/01/trump-israel-iran-war-deal-election-netanyahu/

ドナルド・トランプ米大統領は、敵対国であろうと同盟国であろうと、自分の意向に従わなければ深刻な結果を招くと脅迫し、威圧することを常としている。これは「傑出した地位(bully pulpit)」のトランプ版と呼べるものだ。時にはそれが功を奏することもある。例えば、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し、2025年10月に20項目からなるガザ和平案を受け入れるよう迫った際、トランプはイスラエルの指導者との交渉から離脱すると脅迫した。しかし、グリーンランド問題でヨーロッパ諸国に圧力をかけたり、イランにアメリカの条件を受け入れさせようとしたりした際には、うまくいかなかった。そしてもちろん、先週、オマーンに対し、ホルムズ海峡でオマーン首脳がトランプの意向に反する行動を取れば「爆破する(blow them up)」と脅迫したこともあった。

つい先週も、トランプはイスラエルに対して再び威圧的な発言をした。実際、トランプはイスラエルの指導者について、歴代米大統領が公の場で発言したことのないようなことを述べた。ネタニヤフ首相はイラン問題に関して「私が彼に対してやって欲しいと望むことは何でもするだろう(will do whatever I want him to do)」と述べたのだ。

ネタニヤフ首相に対するトランプ大統領の影響力は、特にネタニヤフ首相が権力維持のためにトランプ大統領の支持を必要としている現状において、非常に現実的なものと言えるだろう。トランプ大統領はイスラエル国内でネタニヤフ首相よりも人気が高く、もしトランプ大統領がネタニヤフ首相への支持を撤回したと見なされれば、10月の選挙で首相は敗北を喫する可能性がある。1991年、当時のイツハク・シャミル首相が占領地へのロシア系ユダヤ人移民の再定住を否定しなかったため、ジョージ・HW・ブッシュ(父)元大統領がシャミル首相に対し、彼らの受け入れのための住宅ローン保証を拒否したことを思い出して欲しい。この決定はシャミル首相の政治的立場を弱め、1992年の選挙でイツハク・ラビン首相に敗北する一因となった。ラビン首相はその後数カ月もしないうちに住宅ローン保証を獲得した。

トランプ大統領がネタニヤフ首相の1期目に与えた数々の恩恵イェルサレムをイスラエルの首都と承認、在イスラエル米大使館のイェルサレム移転、ゴラン高原に対するイスラエルの主権承認、そして継続的な軍事支援は、ネタニヤフ首相が強固なアメリカ・イスラエル関係を維持する上で不可欠かつ他に類を見ない人物であるというイメージを作り上げた。

しかしながら、現在、ネタニヤフ首相の弱点、特にヒズボラ、ハマス、そしてイランを鎮圧​​できない現状を考えると、彼はトランプ大統領の積極的な支援を必要としている。トランプ大統領はネタニヤフ首相を直接首相として選ぶことはできないが、トランプ大統領の支援と、ネタニヤフ首相を強固なアメリカ・イスラエル関係に不可欠な存在として位置づける姿勢がなければ、ネタニヤフ首相の弱点は飛躍的に増大するだろう。

アメリカとイランの交渉が覚書締結(a memorandum of understanding)に向けた最終局面を迎えており、トランプ大統領の交渉力のテスト結果が間もなく明らかになるだろう。現状の見通しに基づけば、トランプ政権が採用しているアプローチは、ネタニヤフ首相とアメリカ国内のトランプ反対派の双方にとって不利なもの(a lose-lose)と映るだろう。

イラン政権は前政権よりも強硬な姿勢を維持し、政権転覆[体制転換]regime change)のための条件は一切浮上してこない。政権の結束は強まり、イランがアメリカによる大規模攻撃を乗り越え、将来的に自由に使える新たな武器、すなわちホルムズ海峡を封鎖しペルシア湾岸諸国の脆弱性を露呈させる能力を手に入れたことで、アメリカの抑止力(deterrence)は弱まっている。同様に、現時点でアメリカがイランの損傷した核インフラに深刻な制限を課すことができるという証拠もない。

ネタニヤフ首相にとって残念なことは、戦争の始まり方、理由、時期については彼が大きな影響力を持っていたとしても、終結の仕方や時期について発言権を持つ可能性は極めて低いということだ。覚書が予想通りに進めば、停戦によってあらゆる問題に対処するための交渉期間が設けられ、アメリカとイスラエルによる攻撃再開の可能性はなくなるだろう。

ホルムズ海峡が段階的にでも開かれ、アメリカの封鎖が解除されれば、責任のなすりつけ合いが始まる。ネタニヤフ首相は不満を募らせるだろうし、一方、名前は明かされていない側近たちは、アメリカが政権交代を成し遂げられなかったのは意志の欠如(a lack of will)が原因だと主張するだろう。トランプ大統領は、ネタニヤフ首相が戦争終結の合意を台無しにすることを許さないだろうし、特にレバノンにおけるイスラエルの行き過ぎた行動を非難することで、アメリカ国内の批判から身を守ろうとするだろう。トランプ大統領は、ネタニヤフ首相からの反発や、アメリカ軍の介入を招く恐れのあるイスラエル軍のさらなる行動を一切容認しないだろう。トランプ大統領は、イスラエルがドーハにあるハマスの外部指導部を爆撃した後、ネタニヤフ首相に強硬な姿勢を示したことを思い出して欲しい。トランプ大統領がネタニヤフ首相から戦争再開を促されることはないだろう。このシナリオにおいて、イスラエル首相にとって唯一の現実的な希望は、イランがやり過ぎて交渉が決裂することだけだ。

レバノン情勢はネタニヤフ首相にとっても悪い結果に終わる可能性が高い。ヒズボラは停戦協定を遵守せず、武装解除も行わず、イスラエルが想定していたよりも速いペースで、より強力な勢力へと回復している。レバノン政府は、特にワシントンの仲介の下でイスラエルと直接会談する姿勢など、以前よりも強硬な姿勢を見せているが、ヒズボラを武力で武装解除する考えと能力は持ち合わせていない。イスラエルはレバノン南部の一部を占領し、さらに多くの村に避難命令を出し、ヒズボラ攻撃の過程でレバノン市民を殺害することで、事態を悪化させている。攻撃的な軍事行動はイスラエル、特にイスラエル北部国境地帯の住民の間では人気が高いものの、レバノン政府を窮地に追い込んでいる。

最大の焦点は、レバノンがアメリカ・イラン間の駆け引きにどのような影響を与えるかである。これまでトランプ政権は、イスラエルがレバノンでの軍事作戦を継続する余地を与えてきた。しかし現在、イランが、イスラエルがレバノンとの停戦を受け入れない限り、アメリカとの交渉を停止すると決定したことを受け、トランプ大統領はネタニヤフ首相に電話をかけ、ベイルート地域へのイスラエル軍の攻撃を停止するよう強く求めた。これは、イランとアメリカが合意に達した場合に起こりうる事態を示唆している。実際、覚書が実現し、イランがレバノンでの真の停戦を条件とした場合、トランプ大統領は躊躇なくネタニヤフ首相に譲歩を迫るだろう。ネタニヤフ首相は従う以外に選択肢はないだろう。

トランプ大統領は最近、その影響力を駆使して、イランとの合意と湾岸諸国のアブラハム合意への参加を結びつけようとした。しかし、この結びつきは湾岸地域の現実とはかけ離れており、誰もその意図を理解できない。トランプ大統領は、イランとレバノン問題でイスラエルに圧力をかける必要が生じた場合、この要求が国内の批判から身を守る手段になると考えているのかもしれない。

しかし、ヨルダン川西岸地区を併合し、レバノンの一部を占領し、ガザ地区で新たな大規模軍事作戦の準備を進めているように見えるイスラエル政府に、湾岸諸国が自らを縛り付ける可能性はまったくない。イスラエルとの関係を強化しているように見えるアラブ首長国連邦(UAE)を除けば、他の国々、特にサウジアラビアにとって、ネタニヤフ政権との緊密な関係は最も望ましくない。

つまり、トランプ大統領の威圧的な言動、脅迫、そして影響力行使は、必ずしも良い結果をもたらしたとは言えない。トランプ大統領は未だイランとの合意を成立させておらず、イランの瓦礫の下に埋まっている高濃縮ウランの将来についても明確な答えを持っておらず、ホルムズ海峡におけるイランの影響力拡大を招き、ガザ地区の「平和委員会(Board of Peace)」もハマスの武装解除に失敗している。ヨルダン川西岸地区では圧力が日々高まっているが、驚くべきことに、トランプ大統領や和平交渉担当者たちはこの状況を懸念していないようだ。

イランとの合意が実現した場合、トランプ大統領によるイスラエルへの圧力に歯止めはかかるだろうか? イスラエルへの圧力は、特に中間選挙が近づくにつれ、イスラエルを支持する共和党支持者を怒らせる可能性がある。しかし、トランプ大統領は何よりもまず自分のことしか考えておらず、中間選挙など気にしないとまで言っている。トランプ大統領が唯一懸念するのは、イランに損害を与えたかもしれないが、戦争には負けたと主張する人々からの反発だろう。左派は戦争を始めたことで彼を非難し、右派の一部は戦争に負けたと非難する中で、トランプ大統領は他者に責任を押し付けようとするだろう。その標的の最有力候補はネタニヤフ首相かもしれない。

※アーロン・デイヴィッド・ミラー:カーネギー国際平和財団上級研究員であり、共和党政権と民主党政権の両方で米国務省の中東アナリスト兼交渉官を務めた経歴を持つ。著書に『偉大さの終焉:なぜアメリカはもう偉大な大統領を持てないのか(そして望まないのか)(The End of Greatness: Why America Can’t Have (and Doesn’t Want) Another Great President)』がある。Xアカウント:@aarondmiller2

※ダニエル・C・カーツナー:駐エジプト米大使、駐イスラエル米大使を歴任。プリンストン大学公共・国際問題大学院で外交と紛争解決について教鞭を執っている。Xアカウント:@DanKurtzer

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イスラエルのレバノン戦略は自滅的だ(Israel’s Lebanon Strategy Is Self-Defeating

-弱体化した国家はヒズボラを武装解除することはできない。

スティーヴン・サイモン筆

2026年5月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/14/israel-hezbollah-trump-iran-lebanon/

イスラエルのレバノン政策の中核には、矛盾した主張が存在する。それはあまりにも日常的になりすぎて、ほとんど気づかれないほどだ。イスラエルは、レバノン国家がヒズボラを武装解除し、自国領土に対する主権を確立しなければならないと正しく主張する。しかし、その一方で、レバノン国家がそれを実行できないように、あらゆる手段を講じる。レバノン軍(the Lebanese Armed ForcesLAF)へのアメリカ軍支援を妨害し、統治機構のインフラを攻撃し、南部におけるレバノン政府を支援する唯一の国際部隊を弱体化させるのだ。

レバノンの失敗を招く状況を作り出したイスラエルは、レバノン自身では対処できないと主張し、イスラエルが代わりに対処しなければならないと訴える。これは、強大な成果を要求する一方で、それを達成するための唯一の現実的な手段を無力化するという、矛盾した政策である。

これが自滅的な戦略であるからといって、イスラエルの根底にある戦略目標が不当であるとは限らない。もしカナダが、アメリカと国境を接していないものの、アメリカ人の殺害に強い関心を持つ遠方の勢力から資金援助と装備を受けた、重武装した過激派組織を匿っていたとしたら、ワシントンはカナダの主権を過度に懸念することはなく、あらゆる手段を用いてその脅威を排除しようとするだろう。

これはイスラエルがヒズボラに対して取る姿勢とほぼ同じであり、特に2023年10月7日の直後、そしてその後ヒズボラが行った、大部分はパフォーマンス的なハマスへの連帯表明キャンペーンにおいては、この対称性を念頭に置くことが不可欠である。最初の数週間、ヒズボラはロケット弾、迫撃砲、対戦車ミサイル、狙撃、ドローン、そしてイスラエルの監視システムへの攻撃を行った。交戦は続いたものの、ほとんどは国境付近に限定されていた。イスラエルは北部の多くの地域から住民を避難させ、南部のレバノン住民も国境沿いの村々から避難し始めた。

当時のヒズボラ指導者ハッサン・ナスララは、10月7日以降初めてとなる主要演説を2023年11月3日に行い、その姿勢を明確にした。彼は、ハマスの攻撃は「100%パレスティナ人によるもの」であり、ヒズボラの戦線は継続し、ガザ地区とイスラエルのレバノンに対する行動次第ではエスカレートする可能性があると述べた。その時点で、ヒズボラとイスラエルは10月8日から交戦を続けており、55人以上のヒズボラ戦闘員が死亡し、ヒズボラはまだ保有する兵器のごく一部しか使用していなかった。

ヒズボラは単なるレバノンの民兵組織ではなく、イスラエルに対するイランの抑止力の中核を成す存在であり、イランはイスラエルの人口密集地を危険に晒し、イランの核施設への攻撃を困難にするためにヒズボラを支援している。ヒズボラの解体は長年にわたりイスラエルの戦略的優先事項であり、10月7日の事件とその後の出来事は、その動機ではなく、むしろ引き金となった。

問題は、イスラエルが実際にこの目標を達成できるかどうかである。2年前、今回の作戦とほぼ同じような作戦が行われた際、ヒズボラは損害を受けたものの、組織自体はほぼ無傷で、再編成が可能であった。歴史的背景は示唆に富む。2006年の戦争終結から10月7日まで、イスラエルとレバノンの国境は、この地域の基準からすれば平穏であった。構造的な対立は消え去った訳ではないので平和とは言えないが、双方にとって、敵対行為を開始すれば容易に吸収できないほどの代償を払うことになると判断し、安定の方が望ましいと考えるほどに安定していた。

イスラエルは当時、ヒズボラがもたらす脅威に無関心だったということではなかったが、イランの前方抑止力が活動を停止している間はそれを容認し、動員される瞬間に備えて周到な準備を進めていた。ヒズボラの通信網への情報浸透、トンネル網のマッピング、上級司令官への標的設定、そしてポケベル攻撃の準備には数年を要した。

これは、イスラエルの計画立案者たちが10月7日以前から、ヒズボラに許容範囲内のコストで深刻な打撃を与えることができると確信していたにもかかわらず、北部の安定がイスラエルの国益に十分貢献していたため、攻撃を控えていたことを示唆している。ガザ地区におけるイスラエルとハマスの戦争は、この判断を覆し、行動を起こす口実と国内からの圧力をもたらしたが、この決断は必然的なものではなかった。

ここで再び循環論(circularity)に戻る。武装解除が成功するには、3つの条件が揃う必要がある。すなわち、国家または合意が、要求を信憑性のあるものにするだけの正当性(legitimacy)、それを強制するだけの強制力(coercive capacity)、そして武装集団の支持者からの反発を吸収または管理するだけの政治的権威(political authority)を備えていることだ。

比較事例がこれを裏付けています。アイルランド共和軍(Irish Republican ArmyIRA)は、ベルファスト合意(グッドフライデー合意)によってシンフェイン党が憲法上の政治に定着し、検証メカニズムが構築され、IRAが活動する安全保障および政治環境が変化した後になって初めて武装解除した。

コロンビア革命軍(Revolutionary Armed Forces of ColombiaFARC)は、武装解除と移行期正義、社会復帰、政治参加、国連監視を組み合わせたコロンビア和平協定によって武装解除したが、反体制派は存続した。インドネシアのアチェ分離主義者は、自治、恩赦、社会復帰、地域政治への参加、国際監視を約束する合意の後、インドネシア国家の残存する強制力に支えられ武装解除した。

国家の正当性、強制力、政治的権威という3つの前提条件のうち、どれか1つでも欠ければ、和平構想は崩壊する。レバノン政府は、分裂状態にあり、財政的に破綻し、2020年のベイルート港爆発と長年にわたるエリート層の略奪行為によって国民の信頼を壊滅的に失墜させており、既にこれらの条件を満たす水準をはるかに下回る状態で運営されていた。2019年には約20億ドルだった国防予算は、金融危機を受けて2020年には約4億3200万ドルにまで激減し、2023年になっても2億4000万ドルにまでしかならなかった。

名目上は約8万人の兵力を有しているが、慢性的な低賃金と基本的な装備を外国からの援助に依存しているレバノン軍(Lebanese Armed ForceLAF)は、広く用いられているある指標では世界118位にランク付けされている。これは、ヒズボラのような脅威とは比べものにならない国々よりも低い順位だ。ヒズボラは全盛期には、ヨーロッパのNATO加盟国の大半よりも多くの精密誘導ミサイルを保有していた組織だった。

イスラエルは、この既に脆弱な状況をさらに悪化させる一連の政策を導入した。長年にわたり、イスラエルはレバノン軍(LAF)への強力な軍事支援に反対するロビー活動をワシントンに対して行い、LAFの強化をヒズボラへの対抗勢力ではなく、潜在的な脅威とみなした。イスラエルは、レバノン軍がヒズボラの影響を受けずに独立して活動してきた実績を軽視し、ワシントンが本来提供するはずだった支援の流れを遅らせ、制限することに成功した。

2006年以降、アメリカはレバノン軍(LAF)に対し、軍事資金と装備を含め約25億ドルの支援を行ってきた。これは20年近くにわたる巨額の支援であったが、結果として、レバノン軍は旧式の装備、生活のために副業をせざるを得ないほど低い給与、そして防空能力の欠如という問題を抱えることになった。

同時に、イスラエルは国連レバノン暫定軍(the United Nations Interim Force in LebanonUNIFIL)の弱体化を図るべく積極的な行動をとった。UNIFILは、レバノン政府が南部で権限を行使するのを支援するために1978年に設立された、約8000人規模の国連平和維持軍(U.N. peacekeeping force)だ。イスラエル軍は2024年の作戦中にUNIFILの陣地を直接攻撃し、同時にアメリカの支援を受けてUNIFILの任務縮小を働きかけ、これを成功させた。

2024年の最初の停戦後、この状況を打破する真の、しかし限られた機会が訪れた。イスラエルがヒズボラに与えた制裁は、ヒズボラのレバノン南部における勢力を弱体化させ、国連安保理決議1701号の本格的な履行に向けた真の余地を生み出した。ジョー・バイデン政権はこの好機を認識していたものの、必要なエネルギーをもって行動することができなかった。

ジョー・バイデン前米大統領とそのティームは、イスラエルによるレバノン政府への軽蔑(Israeli contempt for the Lebanese government)にあまりにも迎合し、停戦が名目上有効である間、イスラエルが自衛を名目に攻撃や地上作戦を継続するのを黙認した。また、ヒズボラがレバノン南部で勢力を再構築する前に、レバノン政府がレバノン軍部隊を南部に大量投入することを可能にするような、ヨーロッパや地域の各種と、そしてイスラエル国内での持続的な外交キャンペーンを展開する勇気を持たなかった。

バイデン政権末期、ワシントンは停戦履行支援のため、レバノン軍(LAF)に約1億1700万ドルを急遽拠出した。この金額は、その運用上の価値はともかく、最も重要な局面において、レバノンの能力構築がいかに不十分であったかを浮き彫りにした。

ドナルド・トランプ米大統領の特使トム・バラックは、この問題を理解しているようで、段階的な武装解除計画を支持した。この計画では、ヒズボラが2025年末までに武装解除する代わりに、イスラエル軍の作戦停止とレバノン南部からの撤退が約束されている。バラックは「レバノン政府は自らの役割を果たした。今必要なのは、イスラエルがこの平等な約束を果たすことだ」と述べた。

アメリカが作成したロードマップは、バイデン政権によって完全には公表されなかった。レバノンによるヒズボラの武装解除とイスラエル軍の撤退および空爆停止を結びつけるものだったと報じられている。これは慎重かつ賢明なアプローチだった。なぜなら、ヒズボラに対する本格的な行動によって、レバノンが内政崩壊を起こしてしまうことを避けなければならなかったからだ。

これが真にアメリカの政策であったかどうかはともかく、イランとの核交渉とトランプ政権の戦争を経て、その政策はもはや通用しなくなった。イスラエルの黙認には代償が伴った。レバノンへの継続的な戦争は、その代償の一部だったようだ。

レバノンはこの作戦によって壊滅的な打撃を受けるだろう。一方、ヒズボラは損害を受けながらも壊滅には至らず、これまでと同様に再編成されるだろう。そして、イスラエル北部は依然としてヒズボラの兵器の射程圏内に留まることになる。最終的に行き詰まるであろう状況は、2000年5月の状況を不気味なほど彷彿とさせるだろう。当時、イスラエルは20年近くにわたる占領の後、政治的目的を何一つ達成することなく撤退した。そして、その占領の残虐行為によって、後に自らが排除することのできない勢力を育んでしまった。

こうした状況は必ずしも不可逆的なものではない。だからこそ、機会の浪費(the waste of opportunities)がこれほどまでに苛立たしい。トランプ大統領はいつものように「トゥルース・ソーシャル」で、イスラエルはレバノンへの爆撃を「禁止されている(prohibited)」と宣言し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と米国務省を驚かせた今回の停戦は、狭き門ではあったものの、確かに突破口となった。

トランプ政権は、この投稿とその後の声明を通して、レバノン問題には別途対処し、ヒズボラ問題にはイスラエルの空爆以外の手段で取り組む意向を示している。そのシグナルが、首尾一貫した持続的な政策へと結びつくのか(現トランプ政権にそれを期待するのは少々無理があるように思えるが)、それとも過去の同様のシグナルのように消え去ってしまうのか、それが全ての決定的な問題となる。

真剣なアメリカの取り組みは、まず多国間監視メカニズムを通じて停戦を安定させることから始まるだろう。このメカニズムは十分な実効性と国際的な支持を備え、違反行為が全ての当事者にとって政治的に大きな代償を伴うものとなるように設計されている。レバノン軍(LAF)の再建は後回しにされるものではなく、レバノンにおけるアメリカの政策の中核的な目標として位置づけられ、レバノン軍がレバノン南部を確実に占領できるレヴェルまで、体系的に装備、資金、組織体制を整える必要がある。

そして、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の任務を縮小する方向へ向かう現状の流れを、まさにその存在が最も重要な時期に継続するのではなく、ニューヨークで持続的な外交努力を展開し、UNIFILの任務を更新、資金援助、強化する必要がある。さらに、湾岸諸国、ヨーロッパのパートナー諸国、そして多国間機関から国際的な資源を動員し、戦闘によって破壊された国境両側の町々の復興を支援する必要がある。

そして、ヒズボラの特異な地位をレバノン独自の憲法秩序に適合させるためのレバノン政府の取り組みを強く支持するとともに、より安定した南部が最終的に実現するであろうイスラエルとレバノンの直接的な外交関係を促進するだろう。

異なる結果をもたらす手段は存在する。少なくともアメリカ側に欠けているのは、それらを一貫して用いる意志と、イスラエルが望む政治的結果を爆撃によって達成することはできないという認識である。トランプ政権がそのような取り組みを開始し、維持するための集中力、能力、そして意欲を持っているかどうかは、控えめに言っても自明ではない。しかし、もしトランプ大統領が本当に「新たな中東の歴史的な夜明け(the historic dawn of a new Middle East)」をもたらそうとするならば、レバノンにおける今後の道筋は決して不可解ではない。

※スティーヴン・サイモン:ダートマス大学特別研究員兼客員教授。著書に『大いなる妄想:中東地域におけるアメリカの野望の興亡(Grand Delusion: The Rise and Fall of American Ambition in the Middle East)』がある。アメリカ政府に20年間勤務し、国務省と国家安全保障会議で要職を歴任。Xアカウント:@sns_1239

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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