古村治彦です。
今週金曜日にアメリカとイランの間で署名される覚書について、その全容は明らかにされていない。60日間停戦が継続され、ホルムズ海峡が解放されるということは明らかになっている。その間にアメリカとイランの間で核開発に関する交渉が実施される。今回の各交渉では、バラク・オバマ政権時代に締結した核合意よりも譲歩を迫られる可能性があり、おうなれば、イラン戦争を開始した意味はなく、実質的には「敗北」ということになる。
イラン側はホルムズ海峡の管理権、通行料徴収を強く主張してきたが、60日間は徴収しないということになったようだ。この期間が終了後にはどうなるかは分からない。イラン側はアメリカとイスラエルによる攻撃で受けた被害の復旧のためという理由をつけているが、これは、アメリカとイスラエルが賠償金を支払うことで解消されるが、アメリカとイスラエルは賠償金を支払うことはしないということになれば、世界各国に負担してもらうということで通行料徴収ということになるようだ。アメリカとイスラエルは世界に多大な迷惑をかける「ならず者国家」である。
覚書にはイランの復興と経済発展(reconstruction and
economic development)」のための3000億ドル規模の基金(fund)設立がふくまれているようだ。48兆円規模の基金というのは何とも大きな話である。この金額はイランがこの戦争で受けた被害の総額ということになり、この基金は実質的には戦争被害に対する「賠償・補償(compensation)」の意味合いを持つ。そして、重要なのは以下の記事にあるが「この構想は、ペルシア湾岸諸国と東アジア諸国からの民間投資を想定している」ということであり、J・D・ヴァンス副大統領は「アメリカの納税者からのお金ではない」と発言している。
今回の停戦交渉には中国が大きな役割を果たしているが、イラン側が戦争被害の補償を強く主張する一方で、アメリカとしては「敗北」を印象付けるような賠償や保証は受け入れられないということで、この点が大きな摩擦点となったと言えるだろう。そこで、「お金で解決する」という考えを基本にして、中国が主導して、基金を作ってイランの復興を支援する、アメリカは支払わなくてよいという形でまとめたことになるのだろうと考える。中国は善意でやっているのではなく、その代わりに石油の確保と海外での投資先、中国企業のイラン復興プロジェクトの優先的な受注、中国国内の失業者の雇用といったことで、資金提供を決めたと考えられる。アメリカとしては、最大の属国である日本にある程度の資金を出させて、「中国だけが復興に参加しているのではない」という形にさせようという考えもあるだろう。アメリカとイランは国交断絶して約半世紀が経過しており、アメリカにはイラン国内に何の足掛かりもない。日本は長年にわたり、イランとの友好関係を保っている。日本を利用して、中国独占という形を取らせないということになるだろう。
イラン戦争は中国が舞台裏で仲介し、資金を提供することで停戦に進むということになりそうだ。イラン戦争はアメリカと西側諸国没落と衰退、非西洋諸国の台頭と強靭さを印象付けることになった。
(貼り付けはじめ)
スクープ:CIA長官はイランの合意意図に疑問を抱いていると情報提供者たちが語る(Scoop: CIA director doubts Iran's intentions on deal, sources say)
バラク・ラヴィド筆
2026年6月15日
『アクシオス』誌
https://www.axios.com/2026/06/15/us-iran-deal-cia-director-ratcliffe
関係者3人によると、ジョン・ラトクリフCIA長官はドナルド・トランプ大統領をはじめとする政府高官たちに対し、米情報・諜報機関が収集した証拠は、イランが最終合意でアメリカが求める核譲歩に応じる考えがあるのかどうかについて深刻な疑念を抱かせるものだと述べた。
●摩擦点(Friction point):トランプ政権の側近の中で懐疑的なのはラトクリフ長官だけではない。関係者2人によると、内部協議では、マルコ・ルビオ国務長官とピート・ヘグセス国防長官が、日曜日に発表された覚書(the memorandum of understanding、MOU)について懸念を表明し、疑問を呈した一方、J・D・ヴァンス副大統領、スティーヴ・ウィトコフ特使、ジャレッド・クシュナー特使は覚書を支持した。
●舞台裏(Behind the scenes):日曜日の発表に先立ち、トランプ大統領と側近の間で、この合意に関する一連のハイレヴェル会合が開かれた。
・関係者2人によると、一連の会合の中で、トランプとそのティームは、アメリカの複数の情報・諜報機関が収集した情報について協議した。その情報によると、イラン当局者が内部でこの合意について話し合っている内容は、仲介者やアメリカに対して述べている内容と矛盾していたという。
・情報者2人によると、ラトクリフ長官とルビオ長官は、その情報に基づき、アメリカが求める核措置にイランが同意するとは考えにくいと述べた。
・ある関係者は、「情報によると、イランの意図は合意に基づく約束と一致していない」と述べた。
●彼らが述べていること(What they're saying):「トランプ大統領はあらゆる問題についてあらゆる意見に耳を傾けるが、最終決定権は彼にあることは誰もが理解している」とホワイトハウス当局者は本記事に関する質問に対し答えた。
「この覚書は、イランが核兵器を保有できないこと、高濃縮ウランを保有できないこと、世界のエネルギー供給を人質にできないことを保証するという、政権が長年表明してきた全てのレッドラインを満たしている」とホワイトハウス当局者は述べ、トランプ大統領は「良い(good)」最終合意にのみ同意すると付け加えた。
・CIAと国務省はコメントを拒絶した。
・国防総省のショーン・パーネル報道官は記事掲載後に回答し、ヘグセス長官は「和平合意(the
peace deal)とトランプ大統領の全ての目標」を支持していると述べた。
●より広い視点(Zoom out):日曜日に署名された覚書の核関連条項は、今後60日以内に当事者間でより詳細な核合意が成立するかどうかにかかっている。
ヴァンス、ウィトコフ、クシュナーは、イラン国家のモハマド・バゲル・ガリバフ議長、アッバス・アラグチ外相、そしてパキスタンとカタールの仲介者と金曜日に会談し、次の段階について協議する予定だ。
●行間を読む(Between the lines):14項目からなる初期合意の全文はまだ公表されていないが、内容に詳しい情報筋によると、イランは覚書の下で譲歩する以上に多くのものを得ることになるだろう。ただし、イランがアメリカの目標を満たす核合意に署名することに同意すれば話は別だ。
●全体像(The big picture):この合意は停戦を延長し、60日間の交渉を開始することを目的としており、交渉期間は双方の合意により延長可能である。
・これらの交渉において、イランは核兵器を決して取得または調達しないという過去の約束を改めて表明した。
・情報筋によると、覚書には、アメリカとイランが「備蓄されている濃縮物質の処分問題を解決する(resolve the disposition of stockpiled enriched material)」こと、そして「最終合意で合意される満足のいく枠組みに基づき、将来の濃縮問題およびイランの核ニーズに関連するその他の相互に合意された事項について協議する(discuss the issue of future enrichment and other mutually agreed
matters related to Iran's nuclear needs based on a satisfactory framework being
agreed upon in the final deal)」ことを約束すると記されている。
・覚書には、交渉が継続する限り、イランは核開発計画の現状維持(the status
quo)を行うと明記されている。一方、アメリカは新たな制裁を課したり、地域に増派したりはしない。
・複数の情報者による覚書の説明によれば、最終的な核合意が成立した場合、アメリカは30日以内に戦争のために動員した部隊を撤退させ、合意されたスケジュールに従ってイランに対する全ての制裁を解除する。
●要点(Breaking it down):この合意に懐疑的な国内勢力は、イランがアメリカの条件で核合意に署名する可能性は低く、その間、覚書によってアメリカよりもイランの方が利益を得るだろうと主張している。
・しかしながら、アメリカの政府高官2人は月曜日の記者会見で、イランにとっての利益は全て、イランが具体的な措置を講じるかどうかにかかっていると主張した。
・1人の政府高官は、イランが核譲歩に真剣かどうかは2、3週間で分かると述べた。もし真剣でなければ、イランが大きな利益を得ることなく交渉は決裂する可能性がある。
・リンジー・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は『アクシオス』誌に「イランの合意に対する見解は、アメリカの交渉ティームが主張しているものと異なっているように思えるのでやや懸念している」と語り、合意文書の即時公開を求めた。
●詳細(Zoom in):核関連事項は条件付きだが、覚書ではホルムズ海峡の早期再開が求められている。
・覚書の内容を知る情報筋によると、この覚書は「イランは最大限の努力を尽くし、60日間、商船の安全な航行を無償で確保する」と規定しており、アメリカは段階的に封鎖を解除し、30日以内に完全に解除する予定だという。
ある関係者によれば、覚書には、イランがオマーンと海峡における「将来の管理と海上サーヴィスを定める(to define future administration and maritime services)」ための対話を行い、他のペルシア湾岸諸国もこの対話に参加して、地域諸国の「適用される国際法と主権に沿った(in line with applicable international law and sovereign rights)」解決策を見出すと記されている。
イラン国営メディアは、60日間の期間終了後、通過料(transit fees)を徴収する可能性について報じている。
交渉における最も争点となった問題の1つは、イランの凍結された資金と資産の解放(the
release of Iran's frozen funds and assets)だった。
関係者たちによると、覚書は「アメリカは、本覚書の履行に伴い、(資金を)完全に利用可能にする」と明記しており、解釈の余地が大きく残されている。
アメリカ政府当局者たちは、これは「成果報酬型()pay for performance」モデルになると述べている。あるアメリカ政府高官は記者団に対し、イランから前向きな「ジェスチャー(gesture)」が見られれば、アメリカは見返りとして一部の資金を解放する可能性があると語った。
また、覚書には、最終合意には、イランの「復興と経済発展(reconstruction
and economic development)」のための3000億ドル規模の基金(fund)設立に関する「明確かつ相互に合意された計画(definitive and mutually agreed plan)」と、その実施メカニズムが含まれると記されていると関係者たちは述べた。
合意の支持者たちは、これは長期的な構想であり、イランが核開発計画を放棄し、大幅な国内改革を実施して初めて実現すると主張している。
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トランプ合意に基づきイランが受け取る可能性のある数十億ドルの内訳(Breaking
down the billions Iran could receive under Trump's deal)
デイヴ・ロウラー、バラク・ラヴィド筆
2026年6月16日
『アクシオス』誌
https://www.axios.com/2026/06/16/trump-iran-deal-billions-frozen-funds
ドナルド・トランプ大統領のイラン核合意の、いまだ秘密にされている条件は、テヘランがどれだけの経済的利益を得るのか、そしてそれがいつ実現するのかをめぐって激しい議論を巻き起こしている。
●全体像(The big picture):この合意により、イランは60日間の交渉期間中、石油を自由に販売できると見込まれている。さらに、より広範な制裁緩和(broader sanctions relief)、凍結資金へのアクセス(access
to frozen funds)、そして最終的な核合意が成立すれば、最大3000億ドル規模の復興投資基金(a potential $300 billion rebuilding investment fund)への道が開かれる可能性がある。
●摩擦点(Friction point):批判者たちは、トランプ大統領が1期目に2015年の核合意を破棄した後、今回も同じ手法、つまり核譲歩と引き換えに資金凍結を解除するという手法を繰り返していると主張している。さらに、復興基金に関しては、さらに一歩踏み込んだ可能性もあるとしている。
・ホワイトハウスは、イランの「偽情報(misinformation)」によって議論が歪められているとし、「成果報酬型(pay for performance)」の仕組みこそが、可能な限り強力な合意を実現するための最善の方法だと主張している。
・しかし、アメリカ政府当局者たちは、少なくとも一部の利益はイランに前払いされることを認めている。
●現状(State of play):金曜日に正式に署名される予定の覚書は、より詳細な核合意に向けた60日間の交渉を開始することを目的としている。
・アメリカ政府当局者たちは、長期的な核合意が成立するかどうかは不確実だと認めつつも、イランの経済的利益は合意にかかっていると主張している。
・一方、覚書の内容に関する詳細がほとんど明らかにされていないため、数十億ドルが既にテヘランに流れているという憶測が飛び交っている。
・本件に関する質問に対し、あるアメリカ政府当局者は『アクシオス』誌に対し、「これは成果主義に基づく合意だ。イランは、核兵器の保有禁止、濃縮物質の無害化、ホルムズ海峡における航行の自由の阻害禁止など、合意した全ての条項を遵守した場合にのみ、覚書の恩恵を受けることができる」と述べた。
以下に、この合意における財政的インセンティヴの内訳を示す。
■イランが直ちに得るもの(What Iran gets right away)
・あるアメリカ政府当局者によると、この合意には、協議が継続する限りイランが石油を販売できる一時的な制裁免除(sanctions waivers)が含まれている。これは、厳しいアメリカの海上封鎖が解除されるにつれて、莫大な収入源となる可能性がある。
・イラン国営メディアは、テヘランは署名するだけで凍結資金に即座にアクセスできるようになると主張しているが、アメリカ政府当局者たちはこれを断固として否定している。
・あるアメリカ政府高官は、イランは相互に遵守の意思を示すジェスチャーと引き換えに、制裁緩和や凍結資金へのアクセスといった「ジェスチャー(gestures)」を受け取る可能性があると述べた。
・アラブ首長国連邦(UAE)やカタールなどのペルシア湾岸諸国が、保有するイランの資金凍結を解除する裏取引(side delas)が行われているとの報道について、アメリカ政府高官は「馬鹿げている(preposterous)」と一蹴した。
・それでも、この覚書には解釈の余地が残されている。覚書の内容に詳しい情報筋によると、アメリカは「(凍結された資金を)この覚書の履行に伴い、完全に利用可能にする」と約束している。
■核合意でイランが得られるもの(What Iran gets under a
nuclear deal)
・最終的な核合意が成立した場合、アメリカは覚書に基づき、合意されたスケジュールに従ってイランに対する全ての制裁を解除することを約束しているとあるアメリカ政府関係者は覚書の内容を説明している。
・ホワイトハウスは、いかなる合意にも、イランの高濃縮ウランの回収、将来の濃縮の一時停止、およびそれに伴う査察体制が含まれるべきだと述べている。
・あるトランプ政権高官は、アメリカはイランが真剣に取り組むかどうかを2、3週間以内に判断できると見込んでおり、もし真剣に取り組まなければ、財政的な利益は限定的なものになるだろうと述べた。
■3000億ドルの基金(The $300 billion fund)
・政治的に最も物議を醸す条項の1つは、イランのための復興基金(rebuilding
fund)の可能性である。
・覚書の内容を知るある関係者によると、最終的な合意には、イランの「復興と経済発展(reconstruction
and economic development)」を支援する基金に関する「明確かつ相互に合意された計画(definitive
and mutually agreed plan)」が含まれるという。
・協議に詳しい複数の関係者によると、「繁栄基金(prosperity fund)」構想はカタール発案で、アメリカとイランの間で数週間にわたり協議されてきた。この構想は、ペルシア湾岸諸国と東アジア諸国からの民間投資を想定している。
・J・D・ヴァンス副大統領はフォックスニューズに対し、この資金はアメリカの納税者から拠出されるものではなく、イランが核開発計画を永久に放棄し、濃縮ウランを放棄し、核査察を受け入れた場合にのみ活用されると述べた。
●注目すべき点(What to watch):トランプ大統領は火曜日、覚書の本文は公表されるだろうと改めて述べたが、おそらく金曜日の正式署名までは公表されないだろう。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』



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