古村治彦です。
2026年6月19日にスイスで、アメリカとイランによる停戦延長60日間の覚書の調印式が行われる。リモートでの電子署名にはドナルド・トランプ大統領、J・D・ヴァンス副大統領が署名を行い、スイスでの調印式にはヴァンス副大統領が出席する。トランプ政権高官がメディアの求めに応えて、14項目からなる覚書の内容を発表した。電話取材に対して、読み上げたということだ。
この内容を読むと、アメリカ側がイラン側に大きく譲歩しており、アメリカとイスラエルの敗北を認める文書である。そのようには読めないが、内容はまさにそうなっている。そして、私はさらに、この文書は実質的に、アメリカとイランの国交回復文書ではないかという印象を持った。それは第2項が「アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、互いの主権と領土保全・一体性を尊重し、互いの内政に干渉しないことを約束する」となっているからだ。イランでイスラム革命が起きてから、アメリカとイランは国交断絶している。お互いに存在を公式には認めないということだ。もちろん、裏では交渉があり、国連には両国とも加盟している。しかし、両国が相互に「主権と領土保全を尊重し、内政干渉しない」ということを文書にして残したのはイラン革命が起きてから初めてのことである。これが国交正常化の第一歩となる。今回のアメリカとイランの交渉には中国も裏で重要な役割を果たしている。「アメリカが敗北したということが目立たないようにしながら、イランの顔を立てて、実質的にイランが利益を得られるような形」で、覚書まで進めたのは中国の影響力行使もあっただろう。
今年5月上旬にはイランのアッバス・アラグチ外相、中旬にはトランプ大統領の訪中が実施された。それから1カ月での覚書合意ということになる。2023年には中国の仲介で、サウジアラビアとイランの間での国交回復が行われている。中国による中東地域の平和と安定の推進が実行されていると私は考える。
このブログでもすでにご紹介したが、イランの復興のための3000億ドル規模の基金も覚書の中に含まれている。この3000億ドルという数字は、イランが今回のイラン戦争で被った被害の推計額である。イランは戦争の被害の補償・賠償を求め、アメリカは支払いを拒否していた。イランがホルムズ海峡の通行料徴収を主張したのも、戦争被害の復興の資金獲得のためだ。この基金については、第6項で、「アメリカ合衆国は、地域パートナー諸国と協力し、イラン・イスラム共和国の復興および経済発展のために、少なくとも3000億ドル規模の、相互に合意した最終的な計画を策定する」と書かれている。地域パートナー諸国にはペルシア湾岸諸国と東アジア諸国が含まれるという報道があった。中国、日本、韓国などの中東地域の石油に依存している国々が出資することになる。アメリカとイスラエルという「ならず者国家」の乱暴狼藉の尻拭いをするというのはおかしな話だが、「金持ち喧嘩せず」で、支払うのも国際社会のお付き合いということになるのだろう。その代わり、アメリカには、イスラエルへの支援の減額、関税率の引き下げやトランプ関税時の交渉で決まった条件の見直しを要求するのは当然だ。
アメリカ国内ではすでに今回の条件について「大惨事」「無残な降伏」という批判が出ている。それは当然のことだ。今回のイラン戦争については、アメリカは「(1)イラン指導部の排除(2)イランの軍事力の弱体化」を目的とし、イスラエルはこれら2つに加えて、「(3)イラン国内での反体制運動の醸成(モサドの調略もあり)(4)イランの政権転覆(体制転換)」を目的として攻撃を実施した。しかし、結果として、これらは達成されなかった。さらに、停戦のためにイランに対して譲歩を迫られる結果になった。トランプ大統領は、イランのミサイル保有も認めている。これでは何のために戦争をしたのか分からない。さらにはアメリカ軍の最強神話は崩れ去った。戦争前よりもアメリカの利益になること、状況が改善することは何もない。ただ数兆円の予算を浪費しただけということにもなる。党派を問わず、連邦議会で激しい追及が行われるだろう。アメリカに寄るイスラエルの支援の減額ということも検討されるだろう。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はトランプ大統領を利用して、イランを攻撃することまではできたが、見事に失敗に終わった。トランプ大統領は責任をネタニヤフに押し付けようとしている。イスラエルとネタニヤフは戦争前よりも厳しい状況に置かれることになった。イスラエルは現在、レバノンの親イラン・シーア派組織ヒズボラへの攻撃を実施しているが、覚書にある通り、レバノン攻撃を停止しなければならない。ヒズボラもイスラエルへの攻撃を停止しなければならない。しかし、イスラエルは何らかの口実をつけて(「ヒズボラが合意を破って攻撃してきた」など)、レバノン攻撃を実施するだろう。合意の枠組みが崩壊することがイスラエルの利益ということになれば、どんなことでもするだろう。覚書調印は喜ばしいが、先行きには不安もある。
アメリカとイスラエルは今回のイラン戦争でイランに敗北した。このことを素直に認めることが状況を改善する第一歩である。トランプ大統領は彼特有の「素直さ」「率直さ」で状況を認めている。しかし、これから責任追及が実施され、中間選挙まで厳しい状況が続くだろう。嫌気がさして大統領職から退くということも十分に考えられる。
(貼り付けはじめ)
ドナルド・トランプ大統領は批判の中イランとの合意を擁護:5つのポイント(Trump defends Iran deal amid criticism: 5 takeaways)
ジュリア・マンチェスター、マロリー・ウィルソン、フィリプ・ティモティジャ、ラウラ・ケリー筆
2026年6月17日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/5929083-trump-defends-iran-mou/
ドナルド・トランプ大統領は、フランスのエビアン・レ・バンで開催されたG7サミットでの記者会見で、水曜日に発表されたイランとの戦争終結に関する覚書(memorandum of understanding、MOU)を擁護しつつも、それが「恒久的(permanent)」ではない可能性を示唆した。
トランプ大統領は、他のG7加盟国も戦争終結を支持し、紛争終結の時が来たと主張していることに言及した。
また、世界の石油供給への脅威を理由に戦争終結が必要だと述べた一方で、イランに対する新たな軍事行動の可能性も示唆した。
この合意は、イランの核開発計画に関する60日間の新たな交渉期間を設けるもので、この問題は今年初めにアメリカとイスラエルがイランを攻撃するきっかけとなった。
以下に5つのポイントを挙げる。
(1)トランプ大統領イランとの覚書は恒久的ではないと示唆する(Trump
suggests the MOU with Iran isn’t permanent)
トランプ大統領は記者会見で、暫定合意の恒久性(the permanence of
the preliminary agreement)を軽視し、イランが合意内容を遵守しなければ合意は崩壊すると述べた。
トランプ大統領は記者団に「もし彼らが合意を守らない場合、あるいは合意書に記載されていない事項がある場合、それは覚書に過ぎないが、私たちは書面化していなくても一定の理解を持っている」と語った。
トランプ大統領は「もし彼らがそれを守らないなら、彼らが尊重するまで爆撃を再開するだろう」と大統領は続け、「爆弾の威力は驚くべきものだ」と付け加えた。
トランプ大統領の発言は、水曜日に「イランが言うことを聞かなければ爆撃する(to
bomb Iran “if they don’t behave”)」と脅迫した発言と酷似している。
トランプ大統領はまた、この覚書は最終合意ではないと記者団に強調した。
「いや、最終合意ではない。これは覚書だ。もし私が気に入らなければ、再び銃撃し、爆弾を投下するだろう」とトランプ大統領は述べた。
ドナルド・トランプ大統領とJ・Dヴァンス副大統領は日曜日、ホルムズ海峡再開に向けた暫定合意に電子署名した。大統領は水曜日、正式な対面署名は木曜日か金曜日に行われる可能性があると述べた。
(2)G7首脳が戦争終結を支持したことを強調し国際法違反を否定(Touts G7 support for ending war, dismisses violation of
international law)
トランプ大統領はサミットで勝利宣言を行い、G7首脳は個別の声明と共同声明で合意への支持を表明した。
世界の石油供給量の20%が通過するホルムズ海峡の再開にこの覚書がつながることに多くの首脳が安堵した様子だった。
ヨーロッパの諸大国と日本は、海峡閉鎖の結果、エネルギー価格の高騰に大きく打撃を受けている。
トランプ大統領はこれらの声明を称賛し、それらは交渉された合意の価値を反映していると主張した。
「彼らは皆、この合意を支持し、実現を望んでいるという声明を出している」とトランプ大統領は述べた。「そして、ホルムズ海峡が開かれたという事実も支持している。もし私たちが爆撃を行っていたら・・・さらに3カ月かかるかもしれない・・・何が残るだろうか?
おそらく何も残らないだろう。しかし、海峡は決して開かれることはなかっただろう」。
トランプ大統領は、G7首脳がアメリカによるイランへの攻撃が国際法違反であると懸念を表明したかどうかという記者の質問を一蹴した。G7加盟国であるドイツ、イタリア、フランスの政府当局者は当初、この戦争は国際法違反(violating
international law)だと批判していた。
トランプ大統領は「いや、いや、実際は正反対だ。彼らは彼ら(イラン)を非常に危険な存在だと感じていた」と答えた。
「彼らは自分たちも攻撃される可能性があるので、非常に安心していた。いや、そんなことは一度も話し合ったことはない。いや、むしろ逆だ」。
(3)トランプ大統領がイランのミサイル保有を容認したことを擁護している(Trump
defends letting Iran maintain missile arsenal)
大統領は、イランの弾道ミサイル保有を容認したことを擁護し、これはイランの核開発計画とは関係のない問題の1つとして、アメリカがペルシア湾岸の同盟諸国と協力して取り組む課題になると述べた。
また、イスラエルやサウジアラビアといったイランのライヴァル国がミサイルを保有している現状では、イランのミサイル保有を禁止することは不可能だっただろうと示唆した。これはイスラエルにとって深刻な懸念事項である。
トランプ大統領は水曜日、記者団に対して「つまり、他国が保有しているのだから、イランも多少は保有しなければならない。多少は必要だ」と語った。
「私は彼らの何人かを気に入っているが・・・彼らは賢いとは思わない。『大統領、彼らにミサイルを持たせるべきではありません』」と大統領は名前を明かさなかった補佐官たちについて語った。「『では、どうすればいいんだ?
サウジアラビアにミサイルを持たせるが、イランに持たせないというわけにはいかないだろう?』と私が言うと、『はい、大統領』と答えたのだ」。
「そういうことはできないだろう。ミサイルは問題ではない」とトランプ大統領は述べ、ミサイルは「特定の場所に多少の被害を与えることはあっても、地球を吹き飛ばすことではない」とトランプ大統領は付け加えた。
イラン指導部は、ミサイル計画の変更は、和平合意に向けた外交交渉におけるレッドラインの1つであると述べている。イランは、このミサイル計画を用いて、イスラエルとペルシア湾のアメリカ軍基地を攻撃した。
「我々は彼らのミサイルの84~85%を破壊した。残りは地下に埋まっている。彼らはそれらを地上に出すことすらできないのだ」と、トランプ大統領は水曜日、イランがミサイル能力の一部を保持することをなぜ容認するのかという質問に対し、このように答えた。
(4)トランプ大統領がネタニヤフ首相との「対立」を強調する(Trump
highlights ‘dispute’ with Netanyahu)
トランプ大統領は、1時間以上にわたる記者会見で、イランとの戦争をめぐるアメリカとイスラエルの利害の相違(America’s and Israel’s divergent interests over the war with Iran)を浮き彫りにした。
トランプ大統領は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相への批判は比較的控えめで、両者はレバノンのヒズボラがもたらす脅威をめぐって「対立(dispute)」していると述べ、イスラエル人の死傷者や甚大な被害を出さない限り、アメリカがテロ組織に指定するヒズボラへの攻撃を控えるようネタニヤフ首相に助言した。
イランは覚書においてレバノンでの停戦を優先事項とし、合意文書の冒頭にその項目を盛り込んでいる。
「レバノンを巡って、私たちは少しばかり意見の相違を抱えている」とトランプ大統領はネタニヤフ首相に言及しながら述べた。
「ビビ(ネタニヤフ首相の愛称)、もう少しソフトな対応ができるだろうと言った。ヒズボラ関係者が建物に侵入するたびに、建物を壊す必要はないだろう」と大統領は続けた。
「彼らが自衛すべきではないと言っているのではない。砂漠にドローン2機が撃ち込まれ、無害な状態で落下したのなら、ベイルートの建物を壊す必要はないと言っている」。
トランプ大統領のネタニヤフ首相に対する批判は、週初めに罵詈雑言を交えた激しい(in a
profanity-laced tirade)非難を浴びせた時と比べると、穏やかなトーンだった。
トランプ大統領は、週末にイスラエル、ヒズボラ、イランの間で相次いだ報復攻撃を受けて、これらの攻撃が覚書の合意を危うく覆すところだったと述べた。
(5)トランプ大統領はガソリン備蓄が危険なほど減少していると発言した(Trump
says gas reserves running dangerously low)
トランプ大統領は発言の中で、海峡が再開されていなければ、石油備蓄は4週間で枯渇していたと述べた。
「備蓄は4週間ほどで枯渇する」とトランプ大統領は述べた。「世界中に備蓄はあるが、本当に枯渇してしまうだろう。そうなれば、石油を入手できなくなる時が来るだろう。」
石油が枯渇すれば「大混乱(bedlam)」になると大統領は述べた。
「この合意によって船舶が航行できるようになる」とトランプ大統領はイランとの合意について述べた。「爆撃を続ければ、船舶は航行できなくなるだろう」。
トランプ大統領がアメリカの石油在庫を指していたのか、世界の石油在庫を指していたのかは、必ずしも明確ではない。ホワイトハウスは詳細な説明を拒否し、『ザ・ヒル』誌に対し、トランプ大統領の元の発言を参照するよう求めた。
石油消費国で構成される国際エネルギー機関(IEA)は、石油備蓄量の減少について警告を発している。
IEAはまた、5月に今年の石油需要が供給を上回るとの見通しも示した。
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メモ:ドナルド・トランプ大統領がイランとの合意成立に苦心する中でタカ派はイラン情勢の「惨事」を嘆く(The
Memo: Hawks lament ‘disaster’ on Iran as Trump strains to sell deal)
ナイオール・スタンジ筆
2026年6月17日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/5929372-trump-defends-iran-missile-rights/
ドナルド・トランプ大統領は水曜日、イランとの暫定和平合意の正当性を訴えようと試みたが、長時間の記者会見は、批判を和らげるための土壇場での特ダネ(no last-minute rabbits)など存在しないことを露呈したに過ぎなかった。
フランスで開催されたG7サミットを終え、帰国を控えたトランプ大統領の発言は、紛争終結を強く望むあまり、アメリカが当初の戦争目的(original war aims)からどれほど逸脱しているかをも明らかにした。
特に衝撃的だったのは、トランプ大統領がイランの弾道ミサイル保有権を擁護したことだ。かつてアメリカとイスラエルは、イランの弾道ミサイル能力の破壊を目標としていたにもかかわらず、認めることになった。
「他国が保有しているのだから、イランも保有しなければならない。イランも保有する必要がある」とトランプ大統領は述べ、ペルシ湾岸諸国との比較においてイランの立場に言及した。
トランプ大統領は、名前を出さないがある補佐官からイランの通常兵器を完全に排除する必要があると告げられた際、「私は『それでは、どうすればいいんだ?
サウジアラビアにはミサイルを持たせておいて、彼らには持たせないのか?』と答えた」と付け加えた。
トランプ大統領は、ホルムズ海峡再開に向けた自身の取り組みを、アメリカの繁栄にとって極めて重要だと位置づけた。合意に至らなければ「経済的大惨事(economic catastrophe)」に陥ると警告し、大恐慌を悪化させたとして広く非難されているハーバート・フーヴァー元大統領のような事態は避けたいと述べた。
イランの濃縮核物質保有という核問題の核心部分について、トランプ大統領は懸念を払拭し、アメリカには「それを入手する手段がある(the equipment to get it)」し、入手できれば「心理的に(psychologically)」満足感を得られるだろうとしながらも、「実際にはそれほど価値はない。大した価値はない(it’s actually not valuable. Not a lot of value)」と述べた。
さらにトランプ大統領は、アメリカとイラン交渉団の間で合意された暫定覚書には、イランの復興費用を支援するための3000億ドルの基金設立が含まれていることを確認した。この基金はアメリカが直接資金援助するものではないものの、ワシントンは基金の計画と運営に関与し、ペルシア湾岸の同盟諸国にも拠出が期待される見込みだ。
トランプ大統領が演説していたのとほぼ同時刻、あるトランプ政権高官が記者会見を開き、覚書の全文を記者団に読み上げた。この合意は金曜日にスイスで署名される予定だ。
高官が確認した覚書の内容によると、この覚書は双方による、重要なホルムズ海峡の再開、イランによる原油輸出の即時再開、そして合意が履行される限りアメリカがイランの資産凍結を解除するという条項を含んでいる。
その見返りとして、イランは核兵器を「調達も開発もしない(procure or
develop)」と約束した。トランプ大統領はこれを大きな勝利として喧伝しているが、実際にはイランが過去に何度も繰り返してきた約束を繰り返しているに過ぎない。バラク・オバマ前大統領時代に締結された包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action、JCPOA)にも同様の約束が含まれており、現在のトランプ大統領はこのJCPOAを厳しく批判している。
覚書には、イランが保有する高濃縮ウランは、少なくとも国際原子力機関(IAEA)の監視下で現地希釈(dilution on-site)されることが明記されている。しかし、該当箇所は曖昧で、「濃縮問題(the issue of enrichment)」に関する最終的な解決は最終合意に持ち越されるとされている。懐疑派は、これがテヘランに相当な裁量権を与えるのではないかと懸念している。
左派、右派を問わず、もしこれが戦争の解決策となるのであれば、そもそもなぜ戦争が戦われたのかと疑問を呈する声が上がっている。
特に保守強硬派の間では、強い不安が広がっている。イスラエル支持派のコメンテーターのベン・シャピロは水曜日のフォックスニューズのインタヴューで、この合意を「大惨事(disaster)」と評した。著名な保守派コメンテーターであるエリック・エリクソンもソーシャルメディアで、この合意は「アメリカの降伏(an American surrender)」だと書き込んだ。
憤慨しているのは専門家たちだけではない。
トランプ大統領が対立候補の1人を支持したことで先月の予備選挙で敗れたビル・キャシディ連邦上院議員(ルイジアナ州選出、共和党)は、この合意を「数十年来最悪の外交政策の失策(the worst foreign policy blunder in decades)」と非難した。
トランプ政権1期目に米国連大使を務め、その後2024年の大統領予備選挙でトランプと争ったニッキー・ヘイリーは、ソーシャルメディアで、イランは受け取った資金を「核開発の野望と、我々に対するテロリストの代理活動に利用するだろう(further their nuclear ambitions and on terrorist proxies against us)」と書き込んだ。
ヘイリーはさらに、「私たちが破壊したばかりの脅威を再建するために金を払うのは大きな間違いだ(It’s a huge mistake to pay to rebuild the threat we just destroyed)」と述べた。
これだけでも右派の反発を招くには十分だったが、トランプ大統領は記者会見で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とレバノンにおけるイスラエルの行動を幾度となく批判した。イスラエルによるレバノン侵攻と、ヒズボラとの戦闘の中で続く攻撃は、アメリカ・イラン和平合意に深刻な脅威を与えており、トランプ大統領はこれに強い不満を抱いている。
トランプ大統領は、最近のイスラエルによるベイルートへの攻撃は「私の見解では不必要だった(unnecessary in my book)」と述べた。
記者会見の冒頭で、トランプ大統領はレバノンにおけるイスラエルの行動は概して不均衡であると主張した。
「彼らが自衛すべきではないとは言っていない」と大統領は述べた。「砂漠にドローン2機が撃ち込まれて無害に落下したのなら、ベイルートの建物を破壊する必要はないはずだ。彼らはもっとましな行動を取るべきだし、率直に言って、もっとうまくやれるはずだ。」
インターネット上では、この発言に対し、意外な方面から大統領に穏やかな称賛が寄せられた。それは、ガザ地区とレバノンの両方でイスラエルが取ってきた行動にかねてから強い憤りを感じてきた、主に左派のコメンテーターたちからのものだった。
しかしながら、イスラエル国内でこの合意が引き起こした動揺は、すぐに明らかになった。
「一体なぜトランプ大統領はイランの弾道ミサイル計画を支持するのか?」と『イェルサレム・ポスト』紙の論説記事は一面トップで報じた。
『タイムズ・オブ・イスラエル』紙のホームページでは、創刊編集者のデイヴィッド・ホロヴィッツがトランプ大統領の合意を「壊滅的な降伏(catastrophic capitulation)」と評した。
もちろん、共和党内にもこの合意を擁護する人たちはいる。
リバータリアンで戦争批判派のランド・ポール連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、自身の投稿で「私は平和に関してトランプ大統領を支持する(I stand with President Trump on peace)」と述べた。
また、共和党内、そしてより広範なMAGAメディアのエコシステムには、ほぼあらゆる状況でトランプ大統領を支持すると見なせる人々が数多く存在する。
しかし、イラン合意はまさに嵐を巻き起こした。問題は、トランプ大統領とその支持者たちがどれだけ早く、そしてどれだけ効果的にこの嵐を鎮めることができるかということだ。
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関連記事:アメリカ・イラン14項目合意、戦争終結とホルムズ海峡開放(Read:
14-point US-Iran agreement to end war, open Strait of Hormuz)
『ザ・ヒル』誌(TheHill.com)
2026年6月17日
https://thehill.com/policy/international/5928797-us-iran-war-deal-text/
複数のトランプ政権高官は水曜日、記者団との電話会見で、イラン戦争終結とホルムズ海峡再開に向けたアメリカ・イラン合意の内容を読み上げた。
J・D・ヴァンス副大統領は、金曜日にスイスで行われる覚書の正式署名式にアメリカ代表として出席する予定だが、トランプ大統領はG7サミットに出席するため既にヨーロッパ入りしているため、水曜日に出席する可能性もあると述べた。
合意内容は以下の通りだ。
●第1項
アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国、および現在の戦争における両国の同盟国は、本覚書に署名することにより、レバノンを含む全ての戦線における軍事作戦の即時かつ恒久的な終結を宣言し、今後、相互にいかなる戦争または軍事作戦も開始せず、相互に対する武力による威嚇または武力行使を控え、レバノンの領土保全・一体性と主権(sovereignty and territorial integrity)を確保することを約束する。最終合意は、レバノンを含む全戦線における戦争の恒久的終結、および本項のその他の規定を確認するものである。
●第2項
アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、互いの主権と領土保全・一体性を尊重し、互いの内政に干渉しないことを約束する。
●第3項
アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、双方の合意により延長可能な最長60日以内に最終合意の交渉および達成に尽力することを約束する。
●第4項
本覚書の署名後直ちに、アメリカ合衆国はイラン・イスラム共和国に対する海上封鎖およびあらゆる妨害行為の解除を開始し、30日以内に海上封鎖を完全に解除する。この期間中、船舶の航行量は、イラン・イスラム共和国が戦前の水準まで回復する船舶数に比例するものとする。アメリカ合衆国はさらに、最終合意後30日以内に、イラン・イスラム共和国近海から自国軍を撤退させることを約束する。
●第5項
本覚書の署名後、イラン・イスラム共和国は、ペルシア湾からオマーン湾、およびその逆方向への商船の安全な航行を、60日間限定で、無償で確保するため、最大限の努力を尽くすものとする。商船の航行は直ちに再開され、イラン・イスラム共和国による技術的・軍事的障害物の除去および機雷除去の必要性を考慮し、30日以内に再開される。イラン・イスラム共和国は、適用される国際法およびホルムズ海峡沿岸国の主権を尊重しつつ、他のペルシア湾沿岸諸国との協議を経て、オマーン・スルタン国と対話を行い、ホルムズ海峡における将来の行政および海上サーヴィスについて定める。
●第6項
アメリカ合衆国は、地域パートナー諸国と協力し、イラン・イスラム共和国の復興および経済発展のために、少なくとも3000億ドル規模の、相互に合意した最終的な計画を策定する。この計画の実施メカニズムは、60日以内に最終合意の一部として確定される。関連する金融取引に必要な全ての許可、免除、および認可は、アメリカ合衆国が付与する。
●第7項
アメリカ合衆国は、最終合意の一部として、合意されたスケジュールに従い、イラン・イスラム共和国に対するあらゆる種類の制裁措置(国連安全保障理事会決議、国際原子力機関(IAEA)理事会決議、および全てのアメリカによる一方的な制裁措置[一次制裁および二次制裁を含む])を解除することを約束する。イラン・イスラム共和国とアメリカ合衆国は、上記の制裁解除問題の重要性を認識し、これらの問題について相互合意に達するため、交渉において直ちにこれらの問題に取り組む意向を表明する。
●ポイント8
イラン・イスラム共和国は、核兵器の調達または開発を行わないことを改めて表明する。アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、第7項に記載されたスケジュールに従い、相互に合意するメカニズムに基づき、備蓄されている濃縮核物質の処分について解決することに合意した。その最低限の方法論は、国際原子力機関(IAEA)の監督下での現地での希釈(down-blending on site)である。両当事者はまた、最終合意で合意される法的枠組みに基づき、濃縮問題およびイラン・イスラム共和国の核ニーズに関連するその他の相互に合意された事項について協議することに合意した。最終合意は、この項の規定を確認するものである。アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、上記の核問題の極めて重要な意義を認識し、これらの問題について相互合意を達成するため、交渉において直ちにこれらの問題に取り組む意向を表明する。
●第9項
最終合意が成立するまでの間、アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は現状維持(status
quo)に合意する。イラン・イスラム共和国は核開発計画の現状を維持し、アメリカ合衆国は新たな制裁措置を課さず、また地域への追加部隊の派遣も行わない。
●第10項
アメリカ合衆国は、本覚書の署名後直ちに、かつ制裁措置が解除されるまでの間、米財務省がイラン産原油、石油製品および派生製品、ならびに銀行取引、保険、輸送等を含む全ての関連サーヴィスの輸出に対する免除措置を発令することを約束する。
●第11項
アメリカ合衆国は、本覚書の実施に伴い、イラン・イスラム共和国の凍結または制限された資金および資産を全面的に利用可能にすることを約束する。アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、交渉期間中にこれらの資金の解放に関する手続きについて相互に合意する。これらの資金は、元の口座に留保されているか、または移転されているかにかかわらず、イラン・イスラム共和国中央銀行が指定する最終受益者への支払いに全面的に利用可能となる。アメリカ合衆国は、これに伴い必要な全ての許可および承認を発令することを約束する。
●第12項
アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、本覚書の成功裏の履行と最終合意の将来的な遵守を監視するための執行メカニズムを設置することに合意する。
●第13項
本覚書の署名後、本覚書の第1項、第4項、第5項、第10項および第11項の履行開始およびこれらの措置の継続的履行を条件として、アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、最終合意に関する交渉を、他の項のみについて開始する。
●ポイント14
最終合意は拘束力のある国連安全保障理事会決議(a binding U.N.S.C.
resolution)によって承認される。
(貼り付け終わり)
(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』



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