古村治彦です。
私はこれまでこのブログで、アメリカの海外介入主義を批判してきた。アメリカの外交政策には大きくはリアリズム(Realism)と介入主義(Interventionism)の流れがあり、介入主義が共和党に流れるとネオコンになり、民主党に流れると人道的介入主義派となる。ジョージ・W・ブッシュ(子)政権時代、ネオコンが政権幹部を独占し、911事件を契機として、アフガニスタンとイラクに侵攻し、それぞれの戦争が泥沼化し、アメリカ軍将兵の議席者が増え、最終的にはアメリカ軍は両国から撤退した。残されたのは不安定な政権による支配だけだった。
下記論考は、カナダで開催されたディベートで、スティーヴン・M・ウォルトが参加して発言した内容をまとめたものだ。ウォルトは『イスラエル・ロビー』の共著者であるシカゴ大学教授ジョン・J・ミアシャイマーと組んで、第一次ドナルド・トランプ政権のCIA長官と国務長官を務めたマイク・ポンぺオ、ジョー・バイデン政権で国務次官を務めたヴィクトリア・ヌーランドのティームと対峙した。テーマは「決議される:怪物を退治しに出かけるな(Be It Resolved: Do Not Go Hunting Monsters)」というもので、カナダ人の聴衆を前にしてディベートを行ったということだ。結果は56対44でウォルトとミアシャイマーのティームに軍配が上がった。
アメリカは世界各地に資本主義と民主政治体制と西洋的価値観(自由、人権、平等、法の支配など)を拡散する使命を持つというのが介入主義の基本的な前提である。簡単に言えば、「世界各国をアメリカのようにすれば、戦争は起きない、平和になる」ということだ。しかし、それはあくまで理想論に過ぎない。実際には、アメリカが「良かれと思って」介入して「あげて」、民主的な政府を作るまでやってもうまくいかないことが多い。それは「上からの民主化(democratization from above)」でしかなく、根無し草のようなものだからだ。
アメリカはその力をおせっかいな押し付けに使うべきではない。もう自国内もインフラが老朽化し壊れ始めている(日本も他人事ではない)。国内でその日暮らしの人々が多く、絶望死の増加という状況になっている。国内問題が山積状態であるならば、それに対応するのが当然だ。そして、アメリカは世界支配から静かに少しずつ撤退していくということになるだろう。それがアメリカのためでもあり、世界のためだ。
アメリカ一極支配後は米中G2による世界分割管理路線となる。それぞれの下にG7とBRICSがあり、それらは協調体制を組むべきで、その枠組みがG20となる。こうした中で、中国に対してむき出しの鄭が維新を燃やしている頓珍漢の頭の悪い国がある。それが日本だ。中国に意味もなく喧嘩をふっかける様子は哀れである。国民も政治家もこの点で愚かであると言わざるを得ない。第二次世界大戦、太平洋戦争でもその愚かさで酷い目に遭った。私たちは学ぶことを止め、考えることを止め、再び愚行を繰り返そうとしている。極めて残念なことである。
(貼り付けはじめ)
怪物退治はもう止める時である(It’s Time to Stop Hunting Monsters)
-外国への介入(foreign intervention)は破滅的な結果を招いてきた長い歴史を持つ政策だ。
スティーヴン・M・ウォルト筆
2026年6月16日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/06/16/us-intervention-regime-change-hunting-monsters-debate/
5月20日、トロントで開催された「マンク・ディベート(Munk Debates)」主催の公開討論会に参加する機会を得た。私の討論のパートナーはジョン・ミアシャイマーで、対戦相手はマイク・ポンペオ元米国務長官とヴィクトリア・ヌーランド元米国務次官だった。今回の議題は「決議される:怪物を退治しに出かけるな(Be It Resolved: Do Not Go Hunting Monsters)」というものだった。本サイトの読者の皆さんならご想像の通り、ジョンと私はこの方針を支持する立場から議論を展開した。
ライヴストリーミングの視聴パスを購入すれば、討論の全編をご覧いただける。私の冒頭陳述や結びの言葉に関心をお持ちの『フォーリン・ポリシー』誌の読者のために、以下に、イヴェント会場で聴衆に向けて語った内容を一部編集したものを掲載する。
これは、「抑制派(restrainers、レストレイナーズ)」と「十字軍派(crusaders、クルセイダーズ)」の間の論争だ。私たちは皆、アメリカが世界に積極的に関与し(actively engaged in the world)、ルールに基づく秩序(a
rules-based order)を支持すべきだと考えている。議論の焦点は、アメリカが他国の政権を打倒して世界を作り変えようとする「十字軍国家」(a crusader state that tries to remake the world by overthrowing
other governments)であるべきかどうかという点にある。私たちの対戦相手は「イエス(そうあるべきだ)」と主張し、私たちは「ノー(そうあるべきではない)」と主張している。
私たちの見解では、アメリカはその力を、自国への攻撃を抑止または撃退すること(to
deter or defeat attacks on itself)、そして、重要かつ戦略的な地域における勢力均衡を維持すること(to uphold the balance of power in critical and strategic regions)に用いるべきだ。例えば、アメリカが第二次世界大戦に参戦したのは理にかなった判断だった。日本はアメリカを攻撃し、ドイツは宣戦布告を行った。そして日独両国とも、大規模な侵略戦争を遂行する大国だった。冷戦期において、アメリカの指導者たちがソ連を封じ込めるための同盟を構築し、主導したことは正しい判断だった。また、ジョージ・H・W・ブッシュ(父)政権が、イラクによるペルシャ湾の支配を防ぐために、イラクをクウェートから排除する取り組みを主導したことも正しかったと考えている。しかし、ブッシュ(父)は抑制的な姿勢を取った。彼は賢明にも、サダム・フセインを打倒するためにバグダッドへ進軍しないという選択をした。一方、息子のジョージ・W・ブッシュは2003年に異なる選択をした。当時、イラクはもはや主要な脅威ではなく、大量破壊兵器も保有していなかったにもかかわらず、進行するという決定を下した。その「十字軍」のような軍事介入がどのような結末を迎えたかは、皆さんのご存知の通りだ。
今夜の決議案は、1821年7月4日に行われたジョン・クインシー・アダムズ元米大統領の有名な演説に基づいている。アダムズは、アメリカが自由の原則(the principle of liberty)の上に建国されたことを強調し、次のように述べた。「自由の基準(旗印)が・・・掲げられた場所、あるいは今後掲げられる場所はどこであろうとも、[アメリカの]心があり、祝福があり、祈りがあるだろう。しかし、アメリカは打ち倒すべき怪物を求めて海外へ進出することはない(Wherever the standard of freedom … has been or shall be unfurled,
there will [America’s] heart, her benedictions, and her prayers be. But she
goes not abroad in search of monsters to destroy)」。
現代の言葉で言えば、アダムズが説いているのは、アメリカは「体制転換(regime
change、レジーム・チェンジ)」を行うために自国の力を行使すべきではないということだ。私たちもこの考えに同意する。なぜなら、民主政治体制(democracy)を推進するために外国の政権を打倒することは、ほとんどの場合、事態を悪化させる結果を招くからだ。他国の政治体制を入れ替えるという行為は、極めて巨大な「社会工学」的試み(a vast social engineering project)であり、通常、我々が十分に理解していない地域で行われる。その典型的な結末は、活気ある民主政体の実現ではなく、混乱、破壊、そして数千人もの罪なき人々の死(chaos, destruction, and thousands of innocent people dead)である。疑いを持つならば、イラク、アフガニスタン、リビアで何が起きたかを見て欲しい。あるいは、イランに対する現在の戦争が、わずか3カ月の間にどれほどの被害をもたらしたかを考えてみて欲しい。
外国の政権を打倒することはまた、「ルールに基づく秩序(a rule-based
order)」の基盤である主権の原則(the principle of sovereignty)を損なうことである。もし、自国を攻撃していない政権を転覆させることが許されるなら、他国の領土を奪う行為(ロシアのウラジーミル・プーティン大統領によるクリミア併合や、アメリカのトランプ大統領がグリーンランドに対して行おうとしたことなど)を誰が止められるのか?
気に入らない政権を武力で打倒することが容認されるならば、指導者の暗殺や、数千人の罪なき市民に害を及ぼす制裁の実施、さらには敵の捕虜への拷問さえも正当化しやすくなってしまう。アブ・グレイブ刑務所でのあの写真や、2カ月前にアメリカ軍の空爆で命を落とした約120人のイランの小学生たちのことを思い出してみてはどうだろうか?
私たちが怪物を退治しようと乗り出した結果、私たち自身が怪物のような行いをしてしまうことになるのである。
リアリストとして、私たちが理解しているのは、国家が時に、自らの価値観を妥協せざるを得ない状況に追い込まれるということだ。例えば第二次世界大戦中、アメリカは、より大きな脅威に対処するために、ソ連の独裁者ヨシフ・スターリン(彼は間違いなく「怪物」だった)と同盟を結んだ。しかし、世界を作り変えようと十字軍としての戦いを繰り広げ、その過程で暴力と苦しみ(violating and suffering)を撒き散らすことは、私たちの安全を高めることにも、自由の大義(the cause of liberty)を前進させることにもつながらない。自由を促進するどころか、他者に自らの意志を押し付けることで、私たちはむしろ自由を否定している。しかも、その実行には多くのルールを破る必要があるため、この政策は「ルールに基づく秩序」を支持するという主張の信憑性を失わせ、他国にもルールを破るよう促す結果を招いてしまう。
明確にしておこう。私たちは、アメリカは海外における自由の拡大を支援すべきだと考えている。ただし、それは、他国に人々から反感や恐怖を抱かれる(they resent and fear)ような社会ではなく、他国が憧れ、真似をしたいと思うような社会(a society in our own country that others will admire and want to
emulate)を自国で築くことによって成し遂げるべきだ。
具体的に説明しよう。アメリカと韓国は75年にわたる同盟関係にある。1980年代後半まで、韓国は軍事独裁政権(a military dictatorship)の支配下にあり、民主化勢力を暴力的に弾圧し、権力を維持するために拷問(torture)や強制労働(forced labor)、時には虐殺(massacres)さえも行っていた。北朝鮮ほどではなかったにせよ、自由とは程遠い状態だった。アメリカはその政権を打倒しようとしていたか?答えはノー
、そうではなかった。アメリカは、より良い道があることを韓国に納得させるべく、忍耐強く働きかけた。金大中のような民主化運動の亡命者を受け入れ、彼が安全に帰国できるよう手配した。そして、1987年、韓国の人々は自らの力で立ち上がり、軍事支配の終結を求めた。今日、韓国は世界有数の経済大国となり、フリーダム・ハウスの評価によれば、アメリカ以上に民主的な社会となっている。抑制こそが功を奏するのであり、「十字軍」のような介入は機能しない。
結論として、アダムズの考えは正しかったと言える。アメリカが国益を守り、自由を促進し、安定した国際秩序を築く最善の方法は、新たな怪物を退治しようと終わりのない戦いを繰り広げることではなく、自らが良き模範を示すことだ(America can best defend its interests, promote freedom, and foster a
stable world order by setting a good example, not by engaging in an endless
search for some new monster to slay)。私たちは「十字軍」のような存在になるのではなく、知恵と抑制(wisdom and restraint)を持って力を行使すべきだ。
相手となる参加者たちも冒頭の主張を述べ、続いて正式な反論、そして活発な討論が行われた。私の結びの言葉を述べる番になったとき、私は次のように述べた。
皆さんは今、アメリカの外交政策のあり方をめぐる4人のアメリカ人による討論を聞かれた。最後に、カナダ人の皆さんにもこの問いについて考えていただきたいと思う。カナダは長年にわたり、積極的に国際情勢に関与し、外交を重視してきた。カナダ人は自ら進んでトラブルを起こすことはしないが、第二次世界大戦の際に見せたように、トラブルを押し付けられれば、断固として立ち向かう姿勢を持っている。そして、世界で最も親切な国民の1つとして、その名声は広く認められている。
さて、もし何らかの奇妙な理由で、カナダの指導者たちが怪物退治(to slay
monsters)に乗り出すと決めたらどうなるか、想像してみて欲しい。つまり、外国に介入し、その国の指導者を打倒し、自国のような体制に変えようとすることだ。そのためには、はるかに大規模な軍隊と、おびただしい数のスパイが必要になるだろう。多くの新たな敵を作り出すことになり、中にはそうした転換の試みに抵抗する人たちもいるはずだ。そうなれば、国内の安全をより強く懸念せざるを得なくなり、敵に同調する者たちが共同謀議(conspiring)を企てていないか、互いに監視し合う必要も生じるだろう。政府高官は多くのことを秘密裏に行うようになり、真実を隠蔽し、数多くの嘘をついて、自らの行動を正当化するようになるはずだ。
カナダの安全や繁栄とは何ら関係のない理由で、遠い異国の地でカナダ人が命を落とすことになるだろう。「親切な国」という評判の代わりに、他国からは独善的で、他者を裁こうとし、自分たちの拙劣な「聖戦」の犠牲となった罪なき人々の命に無関心な国(self-righteous, judgmental, and indifferent to the lives of the
innocent victims of your clumsy crusading)だと見なされるようになるはずだ。たとえ当初は世界をより良くしたいと心から願っていたとしても、気づいたときには、世界は以前よりも疑問に満ち、暴力的な場所になっていることだろう。あなた方が変えようとしていた国々があなた方に似るのではなく、あなた方自身がそうした国々に似てしまっているはずだ。今日私たちが知っているカナダは、永遠に失われてしまう。
もしそのような未来が望ましくないと思われるなら、この決議に賛成票を投じるべきだ。そして、私の国が正気を取り戻し、怪物退治という愚かな試みを放棄して、代わりに「抑制(restraint)」の政策を採用することを願って欲しい。そうすれば、アメリカ人だけでなく、同盟諸国や世界中の人々にとっても、より良い結果がもたらされるはずだ。以上、ご清聴に感謝を申し上げる。
観客たちの投票の結果、56対44で決議案が支持されたということを報告できることを私は嬉しく思う。
※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ウォルトは現代世界を読み解くために不可欠な主要概念を解説する5つのパートを持つニューズレター・マスタークラス『新しい地政学(The New Geopolitics)』の著者。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social、Xアカウント:@stephenwalt
(貼り付け終わり)
(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』



コメント