古村治彦です。

 アメリカはイスラエルを建国以来支援してきた。最近で言えば、毎年38億ドル(約6100億円)の軍事支援を行い、2024年には臨時として約140億ドル(約2兆2500億円)の軍事支援を行った。イスラエルは核不拡散体制から離脱し、1960年代から核兵器開発を行ってきた。アメリカは核兵器開発に関して、イラクやイランに対して厳しい姿勢を取ってきたが、イスラエルに関しては「見て見ぬふり(turning a blind eye)」をしてきた。また、国連安全保障会議の場で、イスラエルの立場を擁護し続けてきた。アメリカはイスラエルを「育て、甘やかしてきた」ということになる。それは、アメリカ国内の「イスラエル・ロビー(Israel Lobby)」の存在がある。アメリカ国内の親イスラエルのロビー団体が政治資金や投票行動を通じて、アメリカの政治家たちをコントロールしようとしてきた。

 しかし、2022年のイスラエルとハマスの紛争から今年のイラン戦争において、アメリカ国内におけるイスラエル支持が低下している。イラン戦争に関しては、アメリカのドナルド・トランプ大統領を「説得(コントロール)」し、イラン攻撃を実施させたということで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対する批判の声が大きくなっている。アメリカを泥沼に引き込むということになったからだ。アメリカ国内でのイスラエル支持が低下するとなれば、当然のことだが、アメリカのイスラエルに対する支援も低下することになる。若い人々のイスラエル支持が大きく低下しているとなれば、その流れは止まることはないだろう。

 そうした中で、イスラエルとしては軍事的な「自立」をしなくはならないということになるが、イスラエルの専門家たちは楽観的な考えを持っているようだ。アメリカ製の武器ではなくてもどこからでも購入できると考えているようだ。軍事企業がイスラエルに対して、自由市場で兵器を売却するというのは簡単にできそうであるが、それぞれの軍事企業の最大のお得意さんは各国政府であり、各国政府の意向が大きく影響することになる。イスラエルへの兵器売却の制限ということも考えられる。多くの場合、軍事企業は欧米各国に本社を置く。これらの政府が圧力をかけることになれば、イスラエルへの兵器売却も制限されることになるだろう。「防衛用」という名目でということになり、攻撃力の高い武器を売却するということは考えられるが、思うほどにイスラエルの思い通りにはならないだろう。

 イスラエルがアメリカからの支援を受けられないということになれば、やはり大きな痛手である。イスラエル寄りのアメリカが望む方針は国際社会に受け入れられる最低ラインとなる。それを嫌がって「自立」をしても国際的な孤立の途を進むだけだ。「中東に存在する明るい北朝鮮」ということになる。

(貼り付けはじめ)

イスラエルが自身で采配を振るうことを維持する計画を持っている(Israel Has a Plan to Keep Calling Its Own Shots

-イスラエルは自国の政策をトランプの中東政策に合わせるよう求めるトランプの要求に抵抗している。

アンチャル・ヴォーラ筆

2026年6月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/16/israel-netanyahu-trump-iran-deal-war-lebanon-deal-shots/

ドナルド・トランプ米大統領やアメリカ国民の対イスラエル感情が悪化する中、イスラエルはアメリカとの安全保障関係をそうした動向から切り離し、守ろうとする計画を立てている。イスラエルは、最も重要な同盟国であるアメリカへの圧倒的な依存を痛感している。アメリカは何十年にもわたり、戦場への最新鋭軍事装備の提供や国連での外交的擁護を通じて、イスラエルを支え続けてきたからだ。

しかし、だからといってイスラエルが戦略的自律性(strategic autonomy)を失ったり、この重要な関係の運営を誤った首相の責任を問うことを控えたりしたい訳ではない。

トランプ米大統領がイランとの合意を発表した際、イスラエルが脇にどかされていたことは明らかだった。ベンヤミン・ネタニヤフ首相でさえ、詳細を全て把握している訳ではないと認めたほどだ。

トランプ大統領は、イスラエルがイランとの合意条件に同意したと述べているが、つい最近には『フィナンシャル・タイムズ』紙に対し、この件に関してイスラエル首相には「選択の余地はない」とも語っていた。「私が采配を振るう。全て私が決める(I call the shots. I call all the shots)」とトランプは言明したのだ。

ネタニヤフ首相は、トランプをなだめつつ独自の意思決定権を維持し、さらに選挙の年に指導力を発揮するという、綱渡り(a tightrope walk)のような状況を強いられている。「私たちは互いを知り尽くしたパートナーとしての関係にある」とネタニヤフ首相は月曜日に記者団に語った。「多くの場合は意見が一致するが、一致しないこともある。それはどんなに仲の良い家族にだって起こりうることだ」。

ネタニヤフ首相は両国関係の緊張を軽視する姿勢を見せたが、イスラエル国内の報道からは、特にイランが求めた「イスラエルによるレバノンへの攻撃停止」という条件に対する不満がうかがえる。イスラエルはレバノン問題を別の次元の問題と捉えており、ヒズボラの武装解除に関しては自由な裁量を求めているからだ。実際、アメリカとイランが合意を発表する数時間前の日曜日には、イスラエルはベイルートを爆撃している。

イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は次のように述べた。「私たちは、イランによる核兵器の保有を阻止するために独自に行動する能力を持つことになる。イスラエルは、レバノン、シリア、ガザ地区における安全保障上の領域から撤退することはない」。

先週、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、攻撃を控えるよう命じたトランプの警告を無視し、イランへの攻撃に踏み切ることでアメリカに逆らった。

『フォーリン・ポリシー』誌の取材に応じたイスラエルの戦略家たちは、ベイルートにあるヒズボラの拠点を攻撃した後にイランから攻撃を受けた際、イスラエルがそれに応じなければ、テヘラン(イラン政府)にレバノンへのイスラエルの攻撃を「イスラエルを攻撃するための挑発」と位置づけさせ、危険な前例を作らせることになっただろうと語った。また、それはイスラエルの政策を、将来のイランとアメリカの関係に従属する(subordinate)ものとして映し出すことにもなりかねなかった。

今のところ、イスラエルはトランプの怒りを回避できたようだ。トランプは緊張を緩和させ、BBCに対し、ネタニヤフがイランへの攻撃を行ったのは自分に逆らったからではなく、ミサイルが「すでに発射されていたからだ」と語った。しかし、敵対的な勢力に囲まれていると考える国にとって、それだけでは十分な保証とは言えない。

イスラエルはアメリカのどの政権をも刺激しないよう努める一方で、アメリカの軍事装備品の調達において「トランプの気まぐれ」を回避する必要性を痛感している。また、アメリカで高まる反イスラエル感情から両国の関係を守るための新たな指針も採用しつつある。

イスラエルは、外交的・経済的な支援に加え、多岐にわたる兵器システムをアメリカに依存している。もしネタニヤフがアメリカ・イラン間の合意を危うくしていると見なされれば、トランプはその気になればイスラエルの足元をすくい、敵対的な地域の中で孤立無援の状態に追い込むことも可能だ。

イスラエルの戦闘機部隊は、F-35、F-15、F-16といったステルス攻撃機や戦闘機をはじめ、その大部分がアメリカ製である。「こう言えば分かりやすいだろう。アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃において、IDF(イスラエル国防軍)が飛ばした航空機はすべてアメリカ製だった」。ネタニヤフ首相の元国家安全保障顧問であり、現在はワシントンDCを拠点とするイスラエルのシンクタンク「イェルサレム戦略安全保障研究所(Jerusalem Institute for Strategy and SecurityJISS)」の研究員を務めるヤアコフ・アミドロールは、電話取材に対しこのように語った。イスラエルは、アパッチ、ブラックホーク、シースタリオンといった攻撃・輸送ヘリコプターや、155mm砲弾、120mm迫撃砲弾、戦車砲弾、精密誘導爆弾などの弾薬について、アメリカに大きく依存している。

また、イスラエルとアメリカは、「アイアン・ドーム(Iron Dome)」、「ダヴィデの投石(David’s Sling)」、「ジ・アロー(the Arrow)」といった高度なミサイル防衛システムを共同開発してきた。これらは敵の攻撃からイスラエルの都市や国民を守り、人的被害を最小限に抑えるものだ。こうしたシステムのおかげで、イスラエルは自国の被害を比較的低く抑えつつ、強力な力で敵を攻撃することが可能になっている。

アメリカの法律では、中東諸国に提供されるいかなる兵器も、イスラエルの「質的軍事優位性(qualitative military edgeQME)」すなわち軍事的な優位性を損なうものであってはならないと定められており、アメリカ政府は最先端の軍事装備をイスラエルに優先的に提供しなければならない。さらにアメリカは、情報共有を行うほか、国連決議に対して外交的にイスラエルを度々擁護し、ヨーロッパのパートナー諸国の政策をイスラエルに有利な方向へ導き、数千億ドル規模の経済支援も行ってきた。

もしトランプが、イラン核合意やレバノン政策をめぐってイスラエルがアメリカの方針に反していると判断すれば、兵器の供給を停止する可能性もゼロではない。兵器売却の停止は「いわば『核の選択肢』(極めて強硬な最終手段)だ」とトランプ政権第1期に国務次官補(近東地域担当)を務め、現在はワシントン近東政策研究所の上級研究員であるデイヴィッド・シェンカーはアメリカ公共ラジオ(NPR)に語っている。

イスラエルで高い人気を誇ってきたトランプがそこまで極端な措置に出る可能性は低いだろう。考えられる選択肢としては、兵器供給の遅延、情報共有の縮小、あるいは国連での支持撤回を示唆することなどが挙げられる。

イスラエルは、トランプの突発的な言動よりも、アメリカ国内世論によるイスラエル支持の低下こそが、アメリカとの関係にとってより大きな脅威であると捉えている。ピュー・リサーチ・センターが3月に行った世論調査によると、アメリカの成人の実に60%がイスラエルに対して否定的な見方を持っている。

イスラエルに対する支持の低下には、タッカー・カールソンのような保守派の論客たちが拍車をかけている。彼らは、ガザ地区におけるイスラエルの行動や、イスラエルに対するアメリカの軍事支援の根拠について公然と疑問を呈している。こうした状況下で、イスラエルはアメリカ人の支持を失いつつあり、軍事協力体制に深刻な支障が生じることを懸念している。

イスラエルは物資の供給減に備え始め、大型爆弾の独自開発・製造、弾薬の増産、そして装甲車両の追加調達を計画している。

アミドロールは、「弾薬や兵器システムの予備部品の自国生産、さらには情報収集能力の強化など、あらゆる面で自立性を高めたいと考えている」と述べた。一方で、アミドロールはイスラエルが抱える限界も認めている。

「私たちがアパッチ(攻撃ヘリ)やF-35、F-15といった機体を製造することはない。こうした主要なシステムについては、何らかの形で今後もアメリカから購入し続けるだろう」とアミドロールは語った。もしトランプや他のアメリカの指導者によってそれが不可能になった場合には、「自由市場に戻って、売ってくれる相手から調達するだけのことだ」と付け加えた。

アミドロールはさらに続けて次のように述べた。「1960年代初頭まで、私たちはアメリカの兵器を持っていなかった。1967年の戦争では、ベルギー製の小銃を使って戦ったし、運用していた航空機はフランス製だった。1948年の独立戦争の際も、アメリカからの購入が禁じられていたため、チェコスロバキアから兵器を調達した」。

イスラエルの戦略家たちは、アメリカの財政支援の受け取りを停止することが、軍事協力関係を維持する道になり得ると考えている。

アメリカは2018年から2028年にかけて、イスラエルに380億ドルの軍事支援を行うことで合意している。しかし最近、ネタニヤフ首相は、この支援をゼロにする意向を表明した。これは、イスラエルを強大な軍事力と富を持つ国と見なし、アメリカの支援は不要だと考えるアメリカ国内の人々の懸念を和らげるための動きだ。

「アメリカでは、他国の防衛費を負担することに反対する声が高まっている。そこで私たちが提案するのは、アメリカの直接的な支援に代えて、双方が資金を出し合って義塾確信や高度なシステムを共同開発・製造する合弁事業を進める方が賢明だと考えている」とアミドロールは述べた。

イスラエルは、援助に依存した防衛の枠組みを、両国が知識を共有し技術を大規模に交換する共同生産体制へと転換しようとしている。これにより、両国の防衛当局間の結びつきを強固にし、より大きな相互の利害関係と軍事協力体制を構築することを目指しているのだ。そうすることで、アメリカの政治家の気まぐれや、アメリカ国内世論の変動といった不確実な要素から、イスラエルの安全保障を切り離そうとしているのである。

元情報機関大佐であり、イスラエル国家安全保障会議の元副代表、現在はイェルサレム戦略安全保障研究所(JISS)の副所長を務めるエラン・レルマンは電話取材に対して次のように語った。「未来は『施し(handouts)』にあるのではない。私たちは真剣なパートナーとなり得る立場にあり、おこぼれ(scraps)など必要としていない」。

「私たちは、アメリカとの関係を真のパートナーシップへと変えるべく、専門家たち―すなわち(政権交代に左右されない)恒久的な実務機構―に働きかけている」とレルマンは述べた。

アンチャル・ヴォーラ:ブリュッセルを拠点とする『フォーリン・ポリシー』誌のコラムニストであり、ヨーロッパ、中東地域、南アジア情勢について執筆している。これまでに『タイムズ・オブ・ロンドン』紙で中東情勢を取材したほか、アルジャジーラ・イングリッシュやドイチェ・ヴェレ(DW)でテレビ特派員も務めた。以前はベイルートやデリーを拠点とし、20カ国以上で紛争や政治に関する報道を行ってきた。Xアカウント:@anchalvohra

(貼り付け終わり)

(終わり)



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