古村治彦です。
米国務省が「キューバがアメリカ国内の左翼団体を通じてアメリカ転覆の試みを行ってきた」とする報告書を発表した。1960年代から現在まで、キューバはアメリカの左翼団体、古くはブラック・パンサーやウェザー・アンダーグラウンド、現在でいえばアメリカ民主社会主義者への支援や影響力行使を行っていると主張している。アメリカはキューバの政権転覆、体制転換を試みるために、軍事侵攻や暗殺、フィデル・カストロ議長のひげをはやさせないための研究まで行っており、経済制裁を通じてキューバを貧困化させてきた。これも立派な内政干渉であり、転覆の試みである。自分たちの行うこのような試みは素晴らしい試みで問題ではないが、キューバの試みは攻撃をするための口実になるという「二重基準」である。
近年、アメリカで民主社会主義が支持を集めているということはこのブログでもご紹介した。マルコ・ルビオのような対中強硬ネオコンにとってはキューバも民主社会主義もどちらも目障りな存在であり、それを攻撃するために報告書を出したということもあるだろう。アメリカで民主社会主義が支持を集めているのは、キューバが支援しているからではない。アメリカ国内で「分断」が深刻化し、所得格差や教育格差といった「格差(inequality)」が拡大しているからだ。アメリカ国内で一般国民の生活が苦しくなれば、民主社会主義の支持が拡大していくのは当然のことだ。それをキューバと結びつけるのは「牽強付会」も甚だしいということになる。
アメリカで民主社会主義が拡大しないためには、ドナルド・トランプ大統領が唱えている「アメリカ・ファースト」を徹底することだ。国内の電気、水道、ガス、道路、橋梁などのインフラ(社会資本)の整備から始めることだ。世界第一の経済大国で豊かな国であるならば、どうしても高速道路がデコボコで、橋が落ちてしまうというようなことが起きてしまうのか。国民が最低限の医療に手ごろな価格でアクセスできるようにすべきではないか。これは税金の使い道を変更すればできることだ。トランプの「アメリカ・ファースト」は、貧しい白人労働者たちのための政策であるはずだ。しかし、実際には物価高で、医療費高騰もあり、厳しい生活が続いている。都市部の住宅費高騰も酷い。きちんとした仕事のあるホームレスという変な言葉がまかり通る状態である。トランプの支持率低下は、イラン戦争の失敗ということもあるが、公約が実現していない、生活が苦しいままだという不満も理由として挙げられるだろう。
国内の不満を和らげる、逸らすために、外国に目を向けさせるというのは古今東西、どんな政権でも使う、常套手段である。日本の高市早苗政権も中国敵視をして国民の不満を逸らそうとしている。アメリカはなんと経済制裁で青色吐息のキューバがアメリカの政権転覆を目論む悪の親玉というようなことを言い始めた。このような外国の脅威を強調し、外国に侵攻するというマイナスのサイクルにトランプ政権が入りつつある。トランプの神通力も陰りを見せているということになるだろう。
(貼り付けはじめ)
米国務省がキューバについて左翼団体を通じた重大な脅威と位置づけた(State
Department Frames Cuba as Major Threat via Left-Wing Groups)
-この報告書はキューバ政権の転覆に向けたアメリカの動きが強まる中で発表された。
サム・スコーヴ筆
2026年7月20日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/07/20/state-department-cuba-report-left-wing-terrorism-rubio-trump/
米国務省が月曜日に発表した100ページに及ぶ報告書は、キューバが数十年にわたる破壊工作(subversive operations)を通じてアメリカを転覆させようと画策してきたと主張している。その工作の多くは、アメリカ国内の左派勢力の活動と結びついたものだとされている。
この報告書は、キューバを、アメリカ政府当局者たちがこれまで一般的に認識していたよりも危険な存在として位置づけている。報告書によると、キューバの「工作員や協力者(agents and operatives)」は「数百」もの組織内で活動しており、「現代アメリカ史上、敵対的な外国勢力による影響力行使の手段として、最大級かつ最も巧妙で危険なものの1つ」を構成している。
ごく最近まで、トランプ政権の当局者たちは、ロシア、中国、イランといった国々に焦点を当てることが多く、キューバをアメリカに対する重大な脅威として言及することはあまりなかった。
この報告書は特に、アメリカの有力政治団体である「アメリカ民主社会主義者(DSA)」を、キューバと連携する「偽装団体や同調者(front groups and fellow travelers)」のリストに含めるなど、アメリカ国内の政治問題にも踏み込んでいる。その根拠の1つとして、DSAのメンバーによるキューバへの渡航などが挙げられている。アメリカ民主社会主義者(DSA
)は、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員やニューヨーク市長ゾーラン・マムダニといった著名な政治家を支援してきた。DSAは、コメントの求めに対し、すぐに返答をすることはなかった。
報告書のいくつかの章では、1960年代から1970年代にかけて最も活発に活動した「ブラック・パンサー(Black Panthers)」や「ウェザー・アンダーグラウンド(Weather
Underground)」など、アメリカの左派団体とキューバとの歴史的なつながりについても詳述されている。また別の箇所では、1980年代における南米の左派団体へのキューバによる支援についても取り上げられている。
この報告書は、一連の出来事と、現代のアメリカ政治に対するキューバの関与(とされるもの)との間に結びつきを見出している。「ジョージ・フロイド事件に伴う暴動から『アンティファ(Antifa)』の台頭、さらにはアメリカの大学キャンパスにおけるテロ擁護的な活動の急増に至るまで、近年のアメリカ政治史における最も重大な激動の多くは、何らかの形でキューバの影響と結びつけることができる」と報告書は結論づけている。
報告書は、キューバの行動を、アメリカによる一連の工作活動、1961年のピッグス湾事件をはじめとする軍事行動、暗殺、制裁、政治的圧力によるキューバ政権の転覆の試みへの反応としては捉えていない。むしろ、キューバの行動を「西洋文明そのものに対する革命(revolution against Western civilization itself)」の一環として位置づけている。
しかし、専門家の中には、かつて野心的な冷戦時代の工作活動を展開していたキューバと、制裁によって弱体化した現在のキューバとを結びつけるこの報告書の主張は誇張であると指摘する人たちもいる。
南米を専門とするノーステキサス大学ダラス校の政治学教授オーランド・ペレスは次のように書いている。「キューバの情報機関は忍耐強く有能であり、その点に異論の余地はない。しかし、孤立し崩壊しつつある国家を、西半球を操る黒幕として描き直すことは、その『弱さ(weakness)』を『脅威(menace)』へとすり替える行為である」。
アメリカは1月以降、制裁の強化やエネルギー供給の封鎖を通じてキューバへの圧力を強めており、その結果、キューバでは深刻なエネルギー不足が生じている。ドナルド・トランプ米大統領は、イランとの現在の対立が収束した暁には、次はキューバに矛先を向ける意向を繰り返し示唆してきた。
キューバ出身の両親を持つマルコ・ルビオ米国務長官は、長年にわたりキューバの共産主義政権への圧力を求めてきた。ルビオ長官は月曜日、Xへの投稿で報告書を紹介し、「キューバ政権は急進左翼思想(radical leftism)の最大の支援者である」と指摘した。
しかしながら、キューバは共産主義政権の打倒を狙うアメリカの試みに何十年にもわたって抵抗し続けてきた歴史を持ち、軍事行動以外の手段でトランプ政権がキューバ政府にさらなる影響を及ぼそうとする場合、具体的にどのような手法をとるのかは不透明だ。
※サム・スコーヴ:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Xアカウント:@samuelskove
(貼り付け終わり)
(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』



コメント