古村治彦です。
アメリカで民主社会主義の勢いが増しているということはこのブログでもすでにご紹介した。その象徴ともいえる存在がアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員だ。氏名の頭文字から「AOC」とも呼ばれており、アメリカ政界での知名度は非常に高い。2018年に全くの無名な存在から、有力議員を破っての連邦下院議員当選を果たした。29歳で史上最年少の女性下院議員となった。このブログでAOCについて初めて紹介したのは以下の記事だ。
※古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ:2018年08月06日「アレクサンドリア・オカシオ=コルテスの人気が急上昇」↓ https://suinikki.blog.jp/archives/76573526.html

※同時期(2018年)に「TRANSIT(トランジット)41号 ニューヨークには夢がある! (講談社MOOK)」にアレクサンドリア・オカシオ=コルテスについて寄稿しました TRANSIT(トランジット)41号 ニューヨークには夢がある!
AOCは現在連邦下院議員4期目を務めており、中堅どころといった位置になっている。そして、2028年の大統領選挙での民主党の大統領選挙候補者として名前が挙がっている。
大統領選挙を目指さないとなると(少なくとも2028年は)、連邦上院議員が射程に入ってくる。ニューヨーク州からはともに民主党所属のチャック・シューマー(1999年から5回当選)、キルステン・ジルブランド(2009年から、4回当選)が連邦上院議員を務めている。シューマーはユダヤ系として知られ、連邦上院民主党の最高幹部の有力銀であり、現在は連邦上院少数党(民主党)院内総務(U.S. Senate Minority Leader)を務めている。ジルブランドはヒラリー・クリントンの後任議員であり、2020年の大統領選挙では民主党予備選挙に出馬した。シューマーの次の選挙は2028年、ジルブランドの次の選挙は2030年となっている。2028年の選挙では、シューマーの多選を批判しての挑戦ということも考えられる。連邦上院議員となれば、サンダースの後継者という形で、民主社会主義陣営の主要政治家として大統領選挙の候補者として名前が上がるようになるだろう。29歳で連邦下院議員となったのでまだ30代であるが、政治的なキャリアを積み重ねている。
これまで外交政策についてはあまり目立ってこなかったAOCだが、連邦上院議員になり、大統領選挙候補者ということになれば、外交政策についても自分なりの主張を持たねばならない。大学時代に国際関係論を先行していたということであれば下地(したじ)はあると思う。民主党エスタブリッシュメント、人道的介入主義派とは異なり、介入主義にはならない。「アメリカが世界の警察官にならない」ということでアイソレイショニズムという点でトランプと共通するだろうが、移民や気候変動問題ではリベラルな立場を維持するだろう。そして、イスラエルに対しては厳しい姿勢を取るだろう。アレクサンドリア・オカシオ=コルテスが大統領になる可能性は低いだろうが、これからアメリカ政界で左派の重要な政治家としての存在感を増していくのは間違いない。
(貼り付けはじめ)
AOCが世界と会う(AOC Meets
World)
-女性下院議員AOCの台頭は主に国内問題によって後押しされたものだった。しかし、彼女は徐々に外交問題へと活動の幅を広げつつある。
July 14, 2026, 7:00 AM
ジョナサン・ガイヤー筆
2026年7月14日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/07/14/aoc-progressive-foreign-policy-trump-democrats-taiwan-palestine-munich-2028/

ワシントンDCで記者団の取材に応じるアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(2023年1月23日)
Rep. Alexandria Ocasio-Cortez speaks with
reporters in Washington, D.C., on Jan. 23, 2023. Mark Peterson/Redux
2026年2月、ミュンヘン安全保障会議のパネルディスカッションで、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員が外交政策に関する初の本格的な発言を行った際、司会者から「中国による台湾侵攻が起きた場合、アメリカは軍隊を派遣すべきか」と問われた。彼女は少し言葉を詰まらせた後に次のように答えた。「私たちが望んでいるのはそのような事態に決して至らないようにすることだ」。
オカシオ=コルテスの答えはこの厄介な問題に関するアメリカの長年の政策を反映したものだった。しかし、台湾に対する「戦略的曖昧さ(strategic ambiguity)」方針を説明することはニューズで短く引用されるような「気の利いた一言(sound bite、サウンドバイト)」にはなりにくく、この36歳の女性議員を批判する人々は即座に攻撃を仕掛けた。ドナルド・トランプ大統領は「AOCは単純な質問にさえ答えられなかった」と述べた。『ニューヨーク・タイムズ』紙と『ワシントン・ポスト』紙も彼女の「えーと」や「あー」といった言葉をあえてそのまま書き起こすという異例の対応をとり、オカシオ=コルテスの「つまずき(stumbles)」を揶揄した。
国家安全保障の専門家たちがオカシオ=コルテスの答えを失態(a misstep)とみなしたのは、彼女がこれまで外交政策について曖昧な態度を取ってきたことも一因である。外交専門誌『フォーリン・ポリシー』が確認した書簡によると、彼女は2020年にもミュンヘンでの講演に招待されたがこれを辞退している。当時、彼女は自身の選挙区であるニューヨークでの活動に専念していたようだ。
今年、AOCがミュンヘン安全保障会議への参加を決めた背景には、2028年に連邦上院議員やあるいは大統領といったより高い地位を目指すのではないかという観測が高まっていることがある。ミュンヘンは野心的な政治家にとって「腕試しの場(practice stage)」として知られており、彼女の発言は、自身のリーダーシップの下で進歩主義派の外交政策がどのようなものになり得るかを示そうとする試みでもあった。しかし、重要なのは、彼女がそうした理念をいかにして実際の政策へと転換していくかという点にある。
『フォーリン・ポリシー』誌は、オカシオ=コルテスの周辺にいる現職・元顧問、進歩主義派の活動家、シンクタンクの専門家の25人に取材を行い、中東地域やラテンアメリカ、そして「トランプ後」の世界に対する彼女の見解を明らかにした
(オカシオ=コルテスは、本記事に関するインタヴューの依頼を拒絶した)。民主党内で彼女の存在感が高まるにつれ、その世界観をうかがわせる手がかりがいくつか見え始めている。

ドイツのミュンヘンで開催された第62回ミュンヘン安全保障会議のポピュリズムに関するパネルディスカッションで発言するオカシオ=コルテス(2026年2月13日)
オカシオ=コルテスが全米レベルの政治の舞台に登場したのは、2018年の連邦下院議員選挙民主党予備選挙で、長年議席を維持していたジョー・クロウリー連邦下院議員を破るという衝撃的な番狂わせ(upset)を演じたことがきっかけだった。「アメリカ民主社会主義者(DSA)」の支援を受けた彼女は、政治活動委員会(PAC)やロビイストからの献金を一切受け取らないという草の根の選挙戦運動a
grassroots campaign)を展開した。彼女の勝利は、活力を失っていると感じていた民主党に愛想を尽かしていた進歩主義派や若年層の有権者にとって、希望の光となった。
29歳で議員に就任したオカシオ=コルテスは、連邦議会史上最年少の女性議員となった。彼女は、トランプの1期目においてトランプに挑んだ左派議員グループ「スクワッド(Squad)」の一員としても活動している。連邦議会での活動当初は、地元のブロンクスやクイーンズの有権者のための取り組みに注力していたが、彼女は以前から国際的な諸問題にも関心を寄せてきた。
プエルトリコ系の家族で育ったオカシオ=コルテスの価値観は、プエルトリコが置かれた新・植民地主義的な中途半端な地位(neocolonial limbo)によって形成された。彼女を支持する「ワーキング・ファミリーズ・パーティー(Working Families Party)」でかつて勤務した国家安全保障戦略家のパメラ・カンポス=パルマは、「それは彼女のアイデンティティの大きな部分を占めている」と語っている。「植民地的な関係にある島で、恵まれない境遇にある家族と共に暮らすという現実を経験すれば、権力というものが理解できるようになる」。
カンポス=パルマによれば、プエルトリコを襲った自然災害に対するアメリカの対応が不手際であったことも、オカシオ=コルテスが「気候正義(climate justice)」を重視し、「グリーン・ニューディール」の推進に力を入れるようになった要因の1つだということだ。

ニューヨーク市ブロンクスで開催された祝勝会にて現職のジョセフ・クロウリー下院議員を破る番狂わせを演じたオカシオ=コルテスの看板(2018年6月26日)
オカシオ=コルテスはボストン大学で国際関係論と経済学を専攻し、1学期間をニジェールで過ごし、母子保健クリニックでの勤務やマイクロファイナンス(小口金融)の研究に従事した。彼女は2010年、学生新聞の取材に対し、「全く新しい形で人々と対話し、学び合うことができ、発展途上国での生活がどのようなものかを理解し始めることができた」と語っている。ニジェールのある家庭でラマダン(断食月)の断食明けの食事を共にした経験から、彼女は「どんな背景を持っていようと、私たちには皆、分かち合えるものがある」と学び、後にフェイスブックにそのように投稿した。
選挙戦においてオカシオ=コルテスが外交政策の分野で最初にとった行動の1つは、イスラエル・パレスティナ問題に対して大胆な立場を表明することだった。2018年、彼女はツイッター上で、ガザ地区での「帰還の大行進(March of Return)」の最中にイスラエル軍が60人以上の抗議参加者を殺害したことについて、「虐殺(a massacre)」という言葉を使って非難した。しかし、全国規模のメディアへの初出演となったPBSのインタヴューでは、この紛争に関する自身の見解をうまく説明できずに苦戦した。そこで彼女は、助言を求めてマット・ダスに連絡を取った。
当時、バーニー・サンダース連邦上院議員の顧問を務め、進歩主義派のシンクタンクで長年活動してきた中東問題の専門家であるダスは、オカシオ=コルテスに対し、自身の直感(instincts)を信じるよう伝えた。つまり、イスラエルはパレスティナ人を虐殺したのだという直感を信じるように伝えた。ダスはインタヴューで当時のことをそのように振り返った。ダスはAOCに次のように述べた。「『ザ・ブロブ(the blob)』―すなわちワシントンの外交政策エスタブリッシュメント―は、パレスティナ問題であれ、彼らの権力独占を脅かすいかなる問題であれ、議員たちが自らの目で見た事実を信じないよう圧力をかけてくるものだ」。
ダスはその後もオカシオ=コルテスのスタッフと連絡を取り続け、2023年にはサンダースの側近であるマイク・カスカが彼女の首席補佐官に就任した。ダスは、オカシオ=コルテスの台湾に関する発言に対するメディアの反応は的外れだったと考えている。ダスは「彼女の(当初の)ためらいを批判する人々の気持ちは分かるが、最終的に彼女は正しい結論にたどり着いた」と語っている。「より興味深い問いは、彼女が述べたように、事態を沈静化させるためにどのような政策を追求すべきかということだ」。―言うまでもなく、ジョー・バイデン前大統領は台湾を防衛すると発言した際、数十年にわたる先例を覆した。
オカシオ=コルテスは、ツイッター(現X)で300万人以上のフォロワーを有しながら下院議員となり、現在ではその数は約1200万に達している。ソーシャルメディアでの高い知名度は、あらゆる言動において完璧さが求められるというさらなるプレッシャーをもたらした。彼女が選出される前の2018年、『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載されたある論説記事は、「アレクサンドリア・オカシオ=コルテスは南シナ海についてどう考えているか?」という見出しの下、進歩主義派が新たな外交政策の考え方を構築する必要性を探る内容だったが、その中で彼女自身についてはほとんど触れられていなかった。
AOCはすぐに、中道派民主党員にとっては対照的な存在として、また左派が国際的な政策の指針を欠いていることの象徴(a caricature)として扱われるようになった。一方で、トランプを支持する右派勢力からは、陰謀論や人種差別的な暴言を浴びせられた。
オカシオ=コルテスは初当選直後から連邦下院監視・改革委員会に配属され、マーク・ザッカーバーグのような巨大企業のトップを厳しく追及することで、通常は堅苦しい連邦議会公聴会の様子をネット上で拡散される「バイラル動画(viral clips)」へと変貌させた。この役割は主に国内問題に焦点を当てたものだが、彼女が「説明責任(accountability)」を重視する外交政策の枠組みを形成する助けにもなった。無謀な戦争を推し進めてきた民主、共和両党の当局者たちに責任を負わせたり、アメリカ憲法や国連憲章の遵守を強化するために尽力したりする彼女の姿を想像することは難しくない。
2019年、オカシオ=コルテスはカンポス・パルマを伴い、当時のNATO事務総長イェンス・ストルテンベルグによる連邦議会合同演説に出席した。ストルテンベルグはロシアの侵略行為を激しく非難し、ウクライナとの防衛協定に対するトランプの支持を求めた。演説後、連邦議会のカフェテリアでカンポス・パルマとの昼食中、オカシオ=コルテスは、NATOをめぐる情勢が自身の選挙区の住民にとってどのような意味を持つのかを問いかけた。
オカシオ=コルテスは、ブロンクスやクイーンズの住民の心に響くような形で外交政策について有権者と対話する方法を見つけ出そうとしていた。有権者が国際政策に対して関心を失いがちであることや、進歩主義派がそれらの問題について効果的なメッセージを発信できていないことを理解していたからだ。「口に出すのは気が引けるのだが」とカンポス=
パルマと言いながら、「ロシアやウクライナ、あるいはパレスティナやイスラエルの問題に関して、私たちは支持を得られていない。成果を上げられていない」。オカシオ=コルテスは、民主党に対して異なる進むべき道を明確に示すよう促すために、自身の海外視察を活用し始めた。

チリのサンティアゴにあるラ・モネダ宮殿を訪問し、ガブリエル・ボリッチ大統領(当時)と対話するオカシオ=コルテス(2023年8月18日)
連邦議会での3期目を迎えていた2023年、オカシオ=コルテスは、スペイン語を話すアメリカ連邦下院議員たちで構成される代表団の一員として、ブラジル、チリ、コロンビアを訪問した。彼女はそれ以前にも、世界的な「グリーン・ニューディール」の推進のためにデンマーク(2019年)を、また2023年の早い時期には日本や韓国を訪れていたが、議員としての3度目となるこの海外訪問は「これまでとは異なるもの」だったと当時『ポリティコ』誌は報じている。それは、商工会議所の関係者のような人々と会うのではなく、左派の指導者や組織化の担い手、活動家らと交流を深めたからだ。
オカシオ=コルテスは、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ大統領の長年の外交顧問であるセルソ・アモリムの案内でブラジリアを視察した。彼女は閣僚や市長たちと会談したほか、ブラジル農村部で数十年にわたり農地改革を求めて闘ってきた草の根団体「土地なし労働者運動(the Landless Workers’ Movement)」による抗議キャンプも訪問した。彼女自身は自分が持つ組織化(organizing)の経験を政治の現場で活かしている。ルイジアナ州立大学の歴史学者アンドレ・パリアリーニは「彼女は、選挙政治と社会運動のつながりを、この国の多くの民主党員が理解していないような形で理解している」と述べている。
チリでは、50年前にアメリカが支援したクーデターで亡くなった社会主義者サルヴァドール・アジェンデ大統領の旧邸宅を視察した。「記憶と人権の博物館」で、強制失踪させられた活動家たちの写真や芸術作品に心を動かされた彼女は、アメリカはチリに対して公式に謝罪すべきだと主張し、当時のリチャード・ニクソン政権の機密文書を公開するよう求めた。その後、ジョー・バイデン政権はそれらの重要な文書の一部を公開するに至った。
「帝国としてのあり方や、ラテンアメリカにおけるアメリカの過去の関与といった問題について、彼女は非常によく理解しており、さらに深く探求したいと考えているテーマだ」と代表団の一員としてオカシオ=コルテスに同行した経済政策研究センター(CEPR)の国際政策担当ディレクターを務めるアレックス・メインは述べている。「今日のラテンアメリカの姿は、アメリカがそれらの国々に対して取ってきた政策の結果でもある」。
同行した側近たち(代表団の活動について率直に語るために匿名を条件に取材に応じた)によると、オカシオ=コルテスは訪問中、ラテンアメリカにおけるアメリカの制裁がもたらす弊害について聴取した。それ以来、オカシオ=コルテスはキューバからヴェネズエラに至るまで、制裁が民間人に及ぼす悪影響を繰り返し指摘してきた。2023年の声明では、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領に対する制裁に言及しつつ、バイデン大統領に対し「ラテンアメリカ政策を見直し、移民流出の要因となる不安定化を助長するのをやめる」よう求めた。
1月にアメリカがマドゥロ大統領を拘束して以来、オカシオ=コルテスはヴェネズエラに対するトランプ政権の介入を激しく批判している。AOCはソーシャルメディアに「介入の目的は石油と政権転覆[体制転換]だ(It’s about oil and regime change)」と投稿した。
関係維持のため匿名を条件に取材に応じた元連邦議会スタッフによると、オカシオ=コルテスは2023年、国連総会の開催に合わせてキューバのミゲル・ディアスカネル大統領と会談した(この会談はこれまで報じられてこなかった)。AOCは一貫してキューバへのアメリカによる制裁を批判してきたが、トランプ政権が厳しい封鎖措置を講じた今年は、その批判をさらに強めている。
「これはガザ地区で私たちが目の当たりにしたものと同じだ。かつては人権への公約として、罪のない民間人は戦争のルールや封鎖措置の対象から事実上除外されるべきだとされていたが、今は道徳的退廃の新たな時代(a new era of depravity)が開かれてしまった」とオカシオ=コルテスは記者団に語った。AOCはパレスティナ情勢を、軍事介入や経済制裁によってアメリカの目的を達成しようとするワシントンの既成政治勢力(エスタブリッシュメント)による、より広範な外交政策の失敗と結びつけて論じている。
2019年から2025年にかけての連邦下院公聴会でのオカシオ=コルテス
しかしながら、オカシオ=コルテスにとって、ミュンヘン安全保障会議への参加は、いわゆる外交・安全保障政策の既成勢力である「ザ・ブロブ(the blob)」の領域へと本格的に足を踏み入れる最初の機会となった。2月の登壇時、彼女はトランプやバイデンの双方とは異なるヴィジョンを提示した。彼女は「国内政治や国際政治において強大な影響力を行使する超富裕層」を批判し、労働者階級のために闘うと約束した。また、アメリカにはほとんど適用されてこなかった「ルールに基づく秩序(a rule-based order)」の短所についても指摘した。
「外国の国家元首を拉致することであれ、グリーンランドを植民地化しようと同盟国を脅すことであれ、あるいはジェノサイドを見て見ぬふりをすることであれ、そうした偽善(hypocrisies)は弱点となり、世界中の民主政治体制を脅かすものだ」とオカシオ=コルテスは述べた。
イラクやアフガニスタンで陸軍レンジャーとして従軍した経験を持つコロラド州選出の民主党連邦下院議員ジェイソン・クロウは、オカシオ=コルテスの親密な協力者となっており、ミュンヘンでの彼女の振る舞いに感銘を受けた。「私たちは異なる場所から来ており、背景も異なる」と彼は語った。「ドナルド・トランプやMAGA(米国を再び偉大に)、そしてアメリカで勢いを増しているアイソレイショニズムと闘うのであれば、その根本的な原因に目を向けなければならない。・・・だからこそ、私たちは耳を傾け、注視している。アレクサンドリア(オカシオ=コルテス)と私は協力して、この取り組みを前に進めようとしている」。
ミュンヘン安全保障会議において、イスラエルによるガザ地区での戦争をジェノサイドと表現した数少ない指導者の1人がオカシオ=コルテスであり、彼女は聴衆から拍手喝采を浴びた。「彼女は、ミュンヘン安全保障会議の聴衆を含め、多くの人々が同意するようなことを語っている」と語るのは、現在、進歩主義派のシンクタンク「国際政策センター(Center for International Policy)」で上級副代表を務めるダスだ。ダスは非公式な立場でオカシオ=コルテスへの助言を続けており、ミュンヘン安全保障会議に先立ち、中東地域やアジア情勢について彼女に説明する専門家を招集したり、彼女の演説原稿の作成に関与したりした。
オカシオ=コルテスは2024年の連邦下院本会議での演説において、ガザ地区で飢餓の危機が迫っていると警告した。「これは単にイスラエルやガザ地区の問題ではない。私たち自身の問題なのだ。世界は二度と元には戻らないだろう。そして私たち自身も、決して元には戻らない」と彼女は述べた。反シオニストの進歩主義派団体「ユダヤ・ボイス・フォー・ピース(Jewish Voice for Peace)」のベス・ミラーによると、彼女は、ワシントンの連邦議会議事堂のロタンダ(中央広間)やニューヨークのグランド・セントラル駅を封鎖するに至った親パレスティナ派の抗議活動に触発されたということだ。
「彼女は、そうした外部からの圧力が、連邦議員の行動にどのような影響を与え得るかを本当によく理解していると思う」とミラーは語った。
進歩主義派団体「ムーヴオン(MoveOn)」のプログラム責任者であるサラ・ハグドゥースティは、オカシオ=コルテスがミュンヘンでの発言を通じて、所得格差(income inequality)を国家安全保障の問題として位置づけ、社会的に疎外された人々のために声を上げたことは、大きな転換点となるものだったと述べた。「そうした考えを世に問う場を設けたことで、これまで入ることができなかった議論の場に、新しい世代の思想家や活動家たちが参加する余地が生まれるだろう」とハグドゥースティは語った。
ミュンヘン安全保障会議への出席後の2月15日にベルリン工科大学で講演を行うオカシオ=コルテス
ミュンヘンでの発言から2日後、オカシオ=コルテスはベルリンで、中道左派のドイツ社会民主党(SPD)が主催する大学フォーラムに参加した。ある参加者は彼女に対し、パレスティナ問題に関する自身の立場と、主催政党の立場との整合性をどう図るのかと問い質した。社会民主党は、ドイツの多くの政党と同様、強固な親イスラエル姿勢を取っているからだ。オカシオ=コルテスは、権威主義(authoritarianism)と戦うための世界的な連携を築くことの重要性を訴えた。「それぞれがバラバラに行動すれば、全てを失うことになるだろう」と彼女は述べた。「右派を勝たせてはならない。絶対に許されないことだ」。
「あの回答こそ、今回の訪問で最も注目を集めるべき瞬間だったはずだ」とニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長の顧問であり、シンクタンク「アメリカ進歩センター(Center for American Progress)」の元代表でもあるパトリック・ガスパードは語った。オカシオ=コルテスの発言は、世界的な権威主義に対処する緊急性を捉えたものであり、それは「選挙のたびに一過性の成果を上げるのではなく、持続的な成功」につながるようなアプローチだった。
しかし、実際に大きく報じられ、あらゆる方面から批判を浴びたのは、ミュンヘンでの発言の方だった。アメリカの右派勢力は、彼女の不用意なミス―例えばヴェネズエラを赤道より南にあると発言したことや、台湾に関する質問への回答の出だしがたどたどしかったことなど―をことさら取り上げた。トランプは記者団に対し、「彼女が愚かだとは知らなかった」と語った。さらにトランプはSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、オカシオ=コルテスは「アメリカについて、特に『外国の地(foreign soil)』において、悪く言うべきではない」と付け加えた。
一方、左派の批評家たちは、AOCが用いた「民主政治体制対専制体制(democracy-versus-autocracy)」という構図が、帝国主義的な思考を再生産するものだと批判した。「ミュンヘン安全保障会議は、タカ派やネオコンがウロウロする常軌を逸した世界だ」とある活動家は語った。政治的な関係を損なわないようにするために匿名を条件としての発言だった。「ミュンヘンに行って、ブロブを打ち負かすことなどできない」。
左派の間で、パレスティナ問題ほど意見の対立を招く外交課題は他にない。最近、オカシオ=コルテスは「国際法やアメリカ国内法を一貫して無視する政府に対し、これ以上、税金や軍事援助を投入すること」に反対だと表明した。一部の活動家や論客は、彼女が以前、イスラエル向けの防衛兵器(「アイアン・ドーム」など)への供与に賛成票を投じたことや、2024年8月の民主党全国大会での発言を撤回していないことに不満を抱き続けている。その発言とは、ガザ地区での停戦に向けたバイデン政権の取り組みについて、実際にはそうではないとする報道があるにもかかわらず、「絶え間なく努力している」と述べたものだった。2025年7月には、ブロンクスにある彼女の事務所に「AOCはガザ地区でのジェノサイドに資金を提供している」と書かれた看板が掲げられ、赤いペンキが投げつけられるという事件も起きた。
批判者たちは、オカシオ=コルテスの姿勢の軟化は政治的な打算によるものだと指摘するが、支持者たちは、AOCがキャリアを通じてパレスティナ問題に関しては概ね一貫した立場をとってきたと主張する。実際、「中東理解研究所(the Institute for Middle East Understanding、IMEU)」の評価によれば、パレスティナ支持の課題に関する連邦議会での投票実績において、彼女は最高水準にある。「AOCは『ライオンの巣窟(lion’s den)』に足を踏み入れているようなもので、何を言っても波紋を呼ぶか、あるいは不十分だと見なされることになるだろう」とカンポス=パルマは語った。
オカシオ=コルテスは、連邦上院選挙において極左(the far left)の支持を失ったとしても、勝利できる可能性がある。『ニュー・リパブリック』誌とエンボルド・リサーチが1月に実施した調査によると、18歳から34歳の民主党員の間での彼女の純好感度(好感度から非好感度を引いた値)は81%という驚異的な数字を記録しており、民主党員全体の間でもそれに次ぐ高い水準にある。
「データ・フォー・プログレス(Data for Progress)」による2025年の世論調査では、現職の連邦上院少数党(民主党)院内総務チャック・シューマー議員との連邦上院予備選挙を想定した場合、オカシオ=コルテスが19ポイント差で勝利するという結果が出ている。また、アトラス・インテルによる最近の世論調査では、民主党の大統領候補指名争いにおいて、彼女がトップに立っている。また、先月発表されたTPSIの調査によると、彼女は大統領選挙において、J・D・ヴァンス副大統領やマルコ・ルビオ国務長官を打ち負かす結果となる見通しになっている。

ミシガン州ハウエルにある精密金属プレス加工工場を訪れたJ・D・ヴァンス米副大統領。演説に先立ち、会場では「Vance 2028」と書かれた帽子をかぶる女性の姿が見られた(2025年9月17日)
ミュンヘンでの記者会見には、オカシオ=コルテスに加え、コロラド州選出のクロウ下院議員も同席した。両議員は、外交政策において労働者階級の視点を重視するアプローチを提唱した。ウィスコンシン州の共和党支持の家庭で育ったクロウは、オカシオ=コルテスの掲げるポピュリスト的なメッセージが、トランプの支持層からも共感を得られる可能性があると考えている。世論調査によれば、多くのアメリカ国民は、軍事力に過度に依存せず、外交を優先し、制裁措置や国防予算を縮小するような対外姿勢を望んでいる(Polls show that Americans want a less militaristic approach to the
world that prioritizes diplomacy, cuts back on sanctions, and scales back the
defense budget)。
民主党の議会指導部の一部は、依然として旧態依然とした外交政策の手法に固執しており、それが2024年の選挙で「反戦(antiwar)」という立ち位置をトランプに明け渡す結果を招いた一因かもしれない。しかし、極めて不人気なイランとの戦争をめぐる状況は、オカシオ=コルテスにとって、中間選挙やそれ以降を見据え、党を苦境から脱却させるための道筋となる可能性がある。こうした取り組みは、ゆくゆくは彼女がより高い公職を目指す上での助けとなるかもしれない。
クロウ議員は次のように述べている。「私たちは、新たな外交政策の基盤とヴィジョンを構築したいと考えている。アメリカ国民、とりわけ労働者階級のアメリカ国民が再び主導権を握れるようにしたい」。
※ジョナサン・ガイヤー:ユーラシア・グループ傘下の「インスティテュート・グローバル・アフェアーズ(Institute for Global Affairs)」プログラム・ディレクター。ポッドキャスト番組『ナン・オブ・ザ・アバヴNone of the Above』ホスト。また、『アメリカン・プロスペクト(American
Prospect)』誌の寄稿編集者でもあり、キャリアの初期には『フォーリン・ポリシー』誌で編集アシスタントを務めた。Xアカウント:@mideastXmidwest
(貼り付け終わり)
(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』





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