古村治彦です。

 アメリカで民主社会主義への支持が若い人たちを中心に拡大していることはこのブログでもご紹介している。都市部を中心に、地方選挙や国政選挙で民主社会主義を標榜する候補者たちが躍進、もしくは当選している。連邦議員でも下院ではあるが、民主社会主義者の議員が増えることが確実だ。その多くはニューヨーク市長ゾーラン・マムダニの支援を受けている。マムダニのアメリカ政界における存在感と影響力が増している。アメリカの左派、進歩主義派の躍進の中で、ライジングスターということになる。

 マムダニはニューヨーク市長洞泉寺に目玉政策として、手ごろな住宅と無料の公共交通を挙げている。アメリカの都市部の居住費はインフレも相まって高騰しており、何度も書いているが、きちんとした仕事のあるホームレスになり人々が多く出ている。それでは都市部から離れて暮らせばよいとなるが、日本のように通勤で1時間半とか2時間となると、ワークライフバランスが崩れてしまう。

 マムダニ市長はニューヨーク市に10年間で20万戸の住宅建設を進めようとしている。生活が苦しい、大学を卒業しても生活ができるだけの給料がもらえる仕事に就けない若者たちがアメリカの体制自体に不満と疑問を持っている。彼らが求めているのは他の先進諸国並みのことだ。国民皆保険もその1つだ。公共住宅や国民皆保険などはこれまで、アメリカでは「社会主義的」として忌避されてきた。「社会主義」という言葉自体が忌避されてきた。「日本やヨーロッパはアメリカ的ではないから、社会主義的だから、ダメなんだ」と言って、アメリカが素晴らしい論をこれまでアメリカ人たちは述べてきた。しかし、実際の生活がどんどん苦しくなり、「アメリカ帝国の臣民」としての「分け前(dividend)」としての豊かな生活ができなくなり、「アメリカンドリーム」も幻想ということになれば、資本主義に対しての不満と疑念が大きくなる。それをすくいあげているのが民主社会主義である。

 これは大きく言えば、アメリカの国力低下がもたらしている現象である。国力が低下し、分け前を寄こせ運動が起きている。これからアメリカも大きく変化していくことだろう。世界の大きな構造変化が起きる時代が始まっている。

(貼り付けはじめ)

アメリカのZ世代の7割が社会主義を支持斎藤幸平「日本も他人事ではない"赤いニューヨーク"の選択」

PRESIDENT Online 2026/06/22 6:00

斎藤 幸平

東京大学大学院総合文化研究科准教授

https://president.jp/articles/-/114868

https://president.jp/articles/-/114868?page=2

https://president.jp/articles/-/114868?page=3

https://president.jp/articles/-/114868?page=4

https://president.jp/articles/-/114868?page=5

生活基盤をおびやかす物価高が止まらない。『人新世の「黙示録」』(集英社シリーズ・コモン)を出した経済思想家の斎藤幸平さんは「社会に問うべきなのは、なぜ普通に働いている人が普通に暮らせないのか、だ」という――。

資本主義より社会主義を好むZ世代

「ある『亡霊』が、アメリカを徘徊している。それは、Z世代の社会主義という亡霊だ」

今のアメリカの若者を見ていると、マルクスにならって、こんなふうに言いたくなる。彼らのあいだで社会主義の人気が急上昇しているのだ。最近の世論調査では、アメリカの大学生のうち67%が社会主義を好意的に見ているという結果が出ている(*1)。

英『The Economist(エコノミスト)』誌も、「Z世代の社会主義にどう立ち向かうか」という特集を組んだばかりだ(66日号)。この記事で『エコノミスト』誌は、パニックに陥ったかのように、アメリカにおける社会主義の台頭を恐れ、社会主義が成長やイノベーションの停滞をもたらすというカビの生えたような社会主義批判を繰り返している。

正直、その様は滑稽ですらある。アメリカの若者にとっては「社会主義」という言葉が、ソ連崩壊とともに終わった古臭い言葉ではなくなっているのは、先の世論調査のとおりだ。

Z世代の若者たちは資本主義が引き起こした生活の不安に日々、苛まれている。「家賃が払えない」「医療費が高すぎる」「子育てができない」「食料品が買えない」「通勤だけで生活が削られる」。豊かさをもたらすと教えられてきた資本主義に苦しめられ続けた結果、彼らにとって、社会主義こそが、資本主義とは別の社会を構想するための、もっとも実感に近い言葉になりつつあるのだ。

1 「米ニュースサイトAxios」 Poll College students prefer socialism to capitalism 

●民主的社会主義者のニューヨーク市長誕生

その変化を象徴しているのが、202511月のニューヨーク市長選で勝利したゾーラン・マムダニである。

34歳の民主的社会主義者であるマムダニは、元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモや共和党候補を破り、ニューヨーク初のムスリム、南アジア系市長となった。投票者数は200万人を超え、市長選としては1969年以来の高投票率だった。

これは歴史的勝利であり、「左派ポピュリズム」の単なる一例として片づけることはできない。振り返れば、2011年のウォール街占拠運動から始まって、バーニー・サンダース旋風、ブラック・ライブズ・マター運動、気候正義運動、そしてガザをめぐる抗議運動を経て、若い世代は、自己責任や格差を当然視する政治言語に深い不信を抱くようになった。実際、若者の投票率は過去のニューヨーク市長選と比べて大きく上昇し、とりわけ若い女性や有色人種の若者がマムダニを強く支持したのである。

若い世代にとって「社会主義」とは、国家がすべてを命令する全体主義を意味しない。それは、生活に不可欠なものを市場の気まぐれと富裕層の投資判断に委ねさせず、もちろん一部の企業に独占などさせない、という、素朴で切実な日々の要求である。

家に住めること。子どもを安心して預けられること。健康な食べ物を買えること。自由に移動できること。これらを商品としてではなく、誰もがアクセスできる〈コモン(共有財)〉として再建すること。それがマムダニの言う「社会主義」の核心である。

●市政で注目を集める「家賃凍結」の攻防

マムダニが掲げた政策は、きわめて具体的だ。市営食料品店の設置、保育の無償化、公営バスの高速化と無償化などだ。どれも、抽象的なイデオロギーではなく、インフレでニューヨーカーの暮らしを圧迫している生活コストを下げるための政策である。

202611日に市長に就任したのち、マムダニの政策はすぐに実行段階に入った。本稿執筆時点の6月上旬に、もっとも注目されているのは家賃凍結をめぐる攻防だ。

ニューヨーク市には中低所得者層の賃貸住宅を確保するために「家賃安定化(Rent Stabilization)」制度という法的規制があり、対象となる物件は市のガイドライン委員会の決定にそって賃上げ率が制限されている。この運用を強化しようとしているのだ。

まず5月に市の家賃ガイドライン委員会は、1年契約では02%、2年契約では04%という、極めて低い家賃上昇率の暫定値を採択した。つまり、6月下旬の最終決定で、家賃の完全凍結もありうる数字が示されたのだ(ただし、不動産業界や家主団体は、修繕費や保険料の高騰を理由に強く反発しており、予断は許さない)。

●住宅、保育、食料、交通を〈コモン〉へ

手ごろな公営住宅の供給を増やす「攻め」の政策もマムダニは進めている。5月に発表された「ブロック・バイ・ブロック」計画は、10年で20万戸のこうした住宅(アフォーダブル住宅)を新規に建設するというものだ。さらに既存住宅を修繕して20万戸を確保する。市の資本投資を拡大し、住宅供給を市場任せにしない姿勢が明確に打ち出された。

また、公営住宅の建設にかかわる労働者には時給40ドル以上を支払うという。金融で儲ける人たちではなく、「労働者の街ニューヨーク」を取り戻すべく政策がデザインされているのだ。

保育については、2歳児向けの無料プログラムが4つの地域で募集開始となり、年間で最低でも250万円かかっていた子育て世帯の費用を軽減できることになった。市営食料品店についても、イースト・ハーレムに最初の候補地が発表され、任期中に五つの行政区すべてで開設する計画が示されている。

バスの無料化・高速化に関しては、管轄するニューヨーク州交通局(MTA)との調整が始まった。早期実現は、ニューヨークの中心部に住めない中低所得の労働者にとっては悲願でもある。

もちろん、これらの政策は簡単には実現しない。財源の問題は大きい。また、州政府やMTAとの権限配分の問題がある。不動産資本、金融資本、保守メディアからの攻撃もある。さらに、市営食料品店が既存の小規模商店とどう共存するのか、家賃凍結が老朽化した住宅の修繕を妨げないか、といった現実的な課題もある。

●ニューヨークの源流となる「赤いウィーン」

だが、ここで強調しておきたいのは、マムダニが政治の問いを根本から変えていることだ。

これまでの都市政治では、「市場が決めた家賃を払えない人に、どれだけ補助金を出すか」が問題にされてきた。だが、マムダニはそうではなく、「そもそも住宅や食料や交通を、なぜ投機と利潤の対象にしてよいのか」と問うている。ここにこそ、民主的社会主義の新しさがある。

この点で、マムダニ市政は1世紀前の「赤いウィーン」を想起させる。第一次世界大戦後、オーストリアの首都ウィーンは、食料不足、住宅不足、インフレ、疫病、帰還兵の失業に苦しんでいた。極度の欠乏のなかで、人々は容易に排外主義とファシズムへと引き寄せられうる状況にあった。

そこでウィーンのマルクス主義者たちが率いる社会民主党政権が選んだのは、市場にすべてを委ねる道ではなかった。水道・ガス・電力などのインフラを公的に整備し、奢侈しゃし税や累進的な税制によって財源を確保し、労働者向けの公営住宅を大量に建設した。その際、住宅は単なる寝る場所ではなく、診療所、保育所、浴場、ランドリー、図書館、集会場、公園などを備えた生活の基盤として構想された。

つまり、「赤いウィーン」が試みたのは、欠乏のなかで人々を互いに競争させるのではなく、必要なものを共有し、生活を共同化し、連帯をつくり出す都市計画だった。これは、ソ連型の上からの中央集権的計画とは異なる。むしろ、都市に暮らす人々のニーズを満たしながら、暮らしの安心を〈コモン〉として制度化する民主的計画だった。

●競争社会から互いに支え合う社会への移行

マムダニの「赤いニューヨーク」もまた、極端な欠乏に直面している。もちろん、それは物資が絶対的に不足しているという意味ではない。

ニューヨークには富が溢れている。高級マンション、金融、IT、不動産、観光、広告、大学、病院――世界中の資本と才能を吸い寄せる都市である。だが、まさにその豊かさが、普通に働く人々から住む場所を奪い、食費を押し上げ、子育てを不可能にしている。これは自然な希少性ではなく、資本主義がつくり出す「人工的希少性」である。

だからこそ、マムダニが就任演説で「荒々しい個人主義の冷たさを、集団主義の温かさで置き換える」と語ったことは象徴的だった。

この言葉は、右派から激しい攻撃を受けた。彼らはすぐに「集団主義」を全体主義や共産主義の恐怖に結びつけようとする。だが、マムダニが言おうとしているのは、国家が個人を押しつぶすということではない。むしろ、孤立した個人が市場で必死に競争しなければ生きられない社会から、人々が互いに支え合う社会へと移行するということだ。

●「生活費を下げる政治」は反ファシズム

この転換は、単なる福祉政策ではない。それは、反ファシズムの政治でもある。

『人新世の「黙示録」』(集英社シリーズ・コモン)でも論じたように、インフレや戦争がもたらす恒久的な欠乏のなかでは、人々は不安に駆られ、他者を敵とみなしやすくなる。移民が仕事を奪っている。生活保護受給者が税金を食いつぶしている。環境規制が経済を壊している。こうした物語は、実際には資本とレントの独占が生み出した不安を、弱い立場の人々へと向け変える。これが現代のファシズムによる煽動せんどうの基本的な手口である。

それに対して、家賃を下げ、保育を無償化し、交通を安くし、食料へのアクセスを保障することは、人々の不安を直接減らす。誰かを排除することで自分だけが助かろうとするのではなく、みんなで生き延びる条件をつくる。これは、ファシズムが利用する恐怖の循環を、逆回転させる政治である。

ここで重要なのは、マムダニの勝利が、ひとりのカリスマの登場によるものではないということだ。選挙戦では10万人規模のボランティアが戸別訪問を行い、街角で対話し、集会を開き、動画を拡散した。つまり、マムダニ市政の力は、市長個人のものではなく、「社会主義」という言葉を日常の言葉へと引き戻した草の根の運動によるものなのだ。

●マムダニ市政が日本に示す明らかなこと

この点は、日本から見ても重要である。日本でも、インフレによって、住宅費、食費、教育費、介護費、光熱費は家計を圧迫し続けている。

それにもかかわらず、政治はやるのは「減税」を掲げるくらいだ。多少手取りは増やすから、あとは「自己責任」でやってくれと言わんばかりである。

だが、本当に問うべきなのは、なぜ普通に働いている人が普通に暮らせないのか、である。なぜ生活の基盤がこれほどまでに商品化され、民営化され、投機の対象にされているのか、ということなのである。

マムダニの政策は、まだ途上にある。家賃凍結がどこまで実現するかも、無料バスがどの範囲で制度化されるかも、公営食料品店がどれほど効果を持つかも、現時点では確定していない。むしろ、これからが本当の攻防である。

だが、すでに一つのことは明らかだ。ニューヨークの政治は、「市場の暴力に耐える」政治から、「生活の基盤を共同でつくる」政治へと舵を切り始めているのである。

●なぜ「赤いウィーン」の記憶は消えないか

ただし、20世紀の赤いウィーンは、最終的にはファシズムの暴力に敗れた。国政で保守と極右が力を増し、社会民主主義の都市実験は1934年に武力で押しつぶされたのだ。

その歴史を思えば、都市レベルの社会主義がどれほど脆弱ぜいじゃくであるかを忘れてはならない。都市だけでは、連邦政府、金融市場、資本逃避、司法、警察、軍、メディアの力に対抗しきれない。

それでも、「赤いウィーン」の記憶が消えないのは、欠乏のなかでも別の豊かさをつくれることを示したからである。市場がもたらす消費の豊かさではない。誰もが住める家、子どもを預けられる場所、病気になったときに頼れる制度、孤立しないための公共空間。そうした〈コモン〉の潤沢さこそが、人々をファシズムの誘惑から遠ざける。

●「赤いニューヨーク」はどこまで広がるか

繰り返そう。マムダニの「赤いニューヨーク」がどこまで進むかは、まだわからない。それは今後の闘争にかかっている。だが、彼の登場が示したのは、資本主義の中心地でも、社会主義はもはや過去の言葉ではないということだ。むしろそれは、気候危機、インフレ、孤立、戦争、排外主義が重なり合う時代に、普通の暮らしを守るための新しい言葉になっている。

●ファシズムか、社会主義か。

この選択は、20世紀の古いスローガンではない。恒久的な欠乏と不安の時代に、誰かを切り捨てて自分だけが生き延びるのか、それとも生活の基盤を共同でつくり直すのか。トランプ大統領に対抗するマムダニ市政の実験は、その問いを私たちの前に突きつけている。日本で暮らす私たちも、海の向こうの出来事として眺めているだけではいられないはずだ。

=====

ヨーロッパ規模の課税、ニューヨーク規模の機能不全(European-Scale Taxation, New York-Scale Dysfunction

-マムダニは政府を機能させる代わりに、彼なりの増税と支出で生活費の値ごろ感(affordability)を実現しようとしている。

ファリード・ザカリア筆

2026年2月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/20/zohran-mamdani-new-york-city-affordability-taxes-housing/

ゾーラン・マムダニは、ニューヨーク市の生活費の値ごろ感(affordability)を実現するという公約を掲げて選挙に臨んだ。しかし今週、彼が発表した予算案は、一言で言えば、到底支払える額ではない(unaffordable)。

ニューヨーク市は長年にわたり財政の浪費を続けてきたため、1270億ドル(約20兆円、訳者註:東京都の予算は約9兆6500億円)という予算案の数字自体にあまり驚かない。しかし、比較のために言えば、これはギリシャやタイといった中規模国家(国家運営に必要なあらゆる支出を含む)の予算額と同等だ。一つの都市の統治に費やす年間支出額が国家予算に匹敵するということだ。

ニューヨーク市の予算は近年、急激に膨れ上がっている。マイク・ブルームバーグ前市長が最後に採択した2014年度予算は約700億ドルだった。わずか10年余りで、予算はほぼ倍増し、インフレ率や市の経済成長率を上回るペースで増加している。

そして、こうした状況の多くは、大規模な行政運営の財源確保に不可欠な要素、すなわち「人」が、ニューヨーク市から失われつつある中で起こっている。パンデミックの影響でニューヨーク市の人口は急激に減少し、2020年4月から2022年7月にかけて5.3%減少した。最近の報告では回復傾向が示されているが、2024年時点でも2020年の水準を下回っている。計算は残酷だ。より大きな負担を、より少ない負担者で分担していることを示している。

一人当たりの不均衡は顕著だ。リンカーン研究所の財政標準化データによると、2023年のニューヨーク市の一般支出は、ロサンゼルス市の一人当たり支出を30%以上上回り、ヒューストン市の2倍以上となっている。

それでは、ニューヨーカー(ニューヨーク市民)は一体何を得ているのか? 全米最大の学区であるニューヨーク市の学校について見てみよう。市の教育予算は増加の一途をたどる一方で、生徒数は減少している。2019年の約340億ドルから400億ドル以上に膨れ上がり、生徒一人当たりの支出は2026年度には約3万5000ドルに達すると予測されている。これは全米でも最高水準に達する。しかし、卒業率、テストの点数、読解力といった成果は、よく言っても平凡で、ニューヨーク市の教育費のほんの一部しか支出していない地域と大差がない。

そして、税金の話が出てくる。それは、ニューヨークのあらゆる政治的議論は、最終的に同じ結論にたどり着くからだ。「誰が税金を払うか?」である。

ニューヨーク市はすでに、アメリカの税制の中でも極めて高い水準にある。高所得者の場合、州と市の所得税を合わせた税率は14.776%にも達する。連邦税を加えると、限界合計税率は50%を超え、特定の投資所得では約55%にもなる。ニューヨーク市民は、ヨーロッパ諸国と同等の税率を支払っている。ヨーロッパの人々は、その見返りとして、国民皆保険制度、大学無償教育、そして素晴らしいインフラ整備といった恩恵を受けている。一方で、ニューヨーク市民は、約300マイルにも及ぶ歩道上の仮設構造物や工事用フェンスの恩恵を受けている。

法人税に関しても、ニューヨーク市は桁外れに高い。市民予算委員会の報告によると、ニューヨーク市の企業活動は、州、市、地域税を合計すると、全米で最も高い法人税率(17.44%)に直面している。マムダニ市長は、所得税と法人税率をさらに引き上げるか、さもなければ固定資産税を10%近く引き上げると述べている。2022年時点で、固定資産税は既にニューヨーク市の住宅所有コストの27%以上を占めており、これは全米平均を上回っている。

ニューヨーク市は、民主党が直視したがらない問題の典型例と言えるだろう。民主党が支配する都市は制御不能に陥り、約束ばかりで支出は増え、成果は乏しく、財政問題を先送りにしている。

ロサンゼルス市も例外ではない。こちらも一党支配の都市で、住宅価格の高騰と社会の混乱に苦しんでいる。2025~2026年度のホームレス対策予算は約9億5000万ドル(約1500億円)だ。ロサンゼルスホームレスサービス局の報告によると、2023年には郡全体でホームレスが9%、市内で10%増加した。また、2024年のAP通信の記事では、数十億ドルもの資金が投入されたにもかかわらず、市民の不満が高まる中、2015年以降、郡全体でホームレスが70%(市内では80%)も急増したと報じられている。市のホームレス対策予算24億ドルを監査した結果、当局は資金の使途や成果を正確に把握できていないことが判明した。シカゴ市を例にとってみよう。市長の支持率は極めて低く、年金支出の約束額は膨大で、いずれ市は財政破綻に陥るだろう。

ここでいう「良い統治(good government)」とは一体何だろうか? もし答えが「次々とプログラムを追加する(keep adding programs)」というものなら、シカゴ市は生活費の高騰を招き続けるだろう。なぜなら、生活費の高騰とは、政府が統治する対象の社会よりも速いスピードで肥大化する機械と化したときに起こる現象だからだ。

マムダニの基本的な直感は正しい。住宅、特に住宅価格の値ごろ感に注力すべきだ。しかし、政府補助金によるものではない。補助金は当然のことながら、家賃の高騰を招くだけだからだ。(市の家賃補助支出は、2020年度の2億6300万ドルから、直近の会計年度では13億4000万ドルにまで増加した。わずか数年で5倍に膨れ上がったにもかかわらず、住宅価格は悪化の一途を辿っている。)マット・イグレシアスは、市が市場価格の住宅を豊富に供給することを容易に、そして日常的に行うべきだと説得力をもって主張している。そうすれば、人口流入が増え、税収基盤が拡大し、学校が満員になり、地域GDPが増加する。そして、財政も健全になるだろう。

市役所の民主党員は正しい選択ができるはずだ。新たな社会保障制度の導入を目標とするような政治ではなく、より安全な街路、機能する学校、安定した衛生環境、そして何よりも、中流階級が住む場所を見つけられるだけの住宅供給といった、本来の機能を果たす行政に注力すべきだ。

ニューヨーク市にはこれ以上の空虚な美辞麗句など必要ない。もっと多くの住宅こそが必要だ。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

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