古村治彦です。
イスラエルはユダヤ人の国であり、ユダヤ教の国というイメージがある。それは正しいのであるが、そうとばかりも言えないところもある。人口が約990万人であるが、そのうち、ユダヤ人は約73%、アラブ人が約21%、その他が約6%となっている。アラブ人の割合がイメージよりも高いと思う人が多いだろう。また、宗教で見てみると、ユダヤ教が約74%、イスラム教が約18%、キリスト教が約2%、その他にドルーズ教が約1.6%となっている。ユダヤ人は約750万人弱というところだろうか。アメリカに住むユダヤ人が約500万から750万人(定義によって異なるが、アメリカの総人口の約2%)、ヨーロッパ諸国に住むユダヤ人が約130万人ということで、イスラエル以外に住むユダヤ人が多くいるということになる。
下の映像は、イスラエル国内におけるキリスト教徒への暴力の様子である。修道女を突き飛ばし転倒させたり、聖職者に対してイスラエル国防軍の兵士が唾を吐きかけたりということが起きている。イスラエル政府もこのような宗教を理由にした差別や暴力には神経を尖らせており、犯人は逮捕されているようであるが、イスラム教徒への差別や暴力については全く無頓着であり、このような措置自体が差別そのものである。アメリカやヨーロッパ諸国のキリスト教徒からの反発を恐れてのことである。ガザ地区での激しい攻撃やイラン戦争開戦によって、欧米諸国でのイスラエルへの支持は減少している。彼らの支持、支援がなければ、イスラエルは立ち行かない。
しかし、このような状況はイスラエル、特にベンヤミン・ネタニヤフ政権にとっては痛しかゆしである。このような排他的な、ナショナリズムが高揚することで、ネタニヤフ政権への国内での支持は高まるが、ナショナリズムが高揚することで少数派に対する暴力が増加するとなれば、欧米諸国をはじめとする諸外国からの非難は免れない。ネタニヤフ政権がそのようなナショナリズムの高揚と暴力事件を間接的に扇動しているということにもなる。
似たような状況は日本にも存在する。高市早苗政権の浅慮での対中強硬姿勢によって、排外主義が高まり、「差別でご飯を食べることができる」状況が生み出されている。しかし、これらは諸外国から見れば危険な状況である。外側からの目を持たない国民は滅びることになる。そのことを日本国民は80年以上前に学んだはずであるが、人間の悲しさで、忘却してしまっているようだ。再び、自分たちが厳しい体験をしてそのようなことを学ぶことがないように願うばかりだが、イスラエル国民も日本国民もそこまで賢くないだろうと悲観的になってしまう。
(貼り付けはじめ)
イスラエルでは深刻化する反キリスト教問題を抱えている(Israel Has a
Growing Anti-Christian Problem)
-イェルサレムで最近発生した襲撃事件は戦時下のナショナリズムによって激化した憂慮すべき傾向に光を当てている。
ジョヴァンニ・レゴラント筆
2026年6月2日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/06/02/israel-christian-violence-jerusalem-holy-land-nun-attack/
最近起きた、イェルサレムでフランス人修道女が理不尽な暴行を受けた事件は、イスラエルにおけるキリスト教徒コミュニティへの敵意の高まりに改めて注目を集めている。
4月28日に拡散された動画には、ある男性が修道女に駆け寄り、路上に突き飛ばす様子が映っている。修道女は石に頭をぶつけそうになりながらも、この男性は倒れた修道女を蹴りつけ、通行人が止めに入るまで暴行を続けた。
ユダヤ教のキッパ(帽子)と儀式用の房飾りを身につけたこの男性は、後に占領下のヨルダン川西岸地区に住む36歳のイスラエル人入植者と判明した。イスラエル検察庁によると、警察は容疑者を拘束し、宗教団体への敵意に基づく暴行罪で起訴した。
この襲撃事件は、イスラエル政府関係者からほぼ満場一致で非難されたほか、フランス、スペイン、イタリアからも批判の声が上がった。イスラエル外務省は、この事件を「イスラエル建国の理念である尊重、共存、信教の自由という価値観に真っ向から反する、卑劣で恥ずべき行為(a despicable and shameful act “in direct contradiction to the values
of respect, coexistence, and religious freedom upon which Israel is founded)」と非難した。
この事件は、イスラエルにおけるキリスト教徒への敵意の高まりという、近年の傾向に広く注目を集めている事象を示している。こうした暴力行為は処罰されないことが多く、当局はこれらの事件を、宗教的過激主義(religious extremism)と不処罰(impunity)というより広範な問題の兆候ではなく、孤立した行為として扱っていると批判されている。
キリスト教徒コミュニティへの差し迫った危険に加え、これらの攻撃はイスラエルの国際的地位を損ない、イスラエル、特にイェルサレムにおける信教の自由への懸念が外交的に大きな意味を持つヨーロッパやキリスト教世界との重要な関係を緊張させる恐れがある。これに対し、宗教指導者、市民社会団体、そして一部のイスラエル政治家は、高まる敵意を食い止めるために、法執行の強化、宗教的憎悪に対抗するための教育的取り組み、そして宗教間対話の拡大を求めている。
キリスト教徒に対する言葉による嫌がらせや身体的な暴力、そして教会のシンボルや聖地の冒涜行為は、イスラエルにおける宗教コミュニティ間の繊細な均衡を著しく損なっている。この均衡は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教にとって聖地が持つ特別な意義によって長年培われてきたが、近年、特にイェルサレム旧市街において、ユダヤ・ナショナリズム運動と過激派運動(Jewish nationalist and extremist movements)が台頭し、脅かされている。旧市街では、複数の宗教の聖職者や信者が近接して生活し、信仰を実践している。
イスラエルの人口約1020万人のうち、キリスト教徒は約2%を占めている。キリスト教徒の79%はアラブ人だ。イェルサレムに拠点を置く宗教間対話組織であるロッシング・センターによると、現在イスラエルには約2700人のキリスト教聖職者が居住しており、その大多数はイスラエル国籍を保持していない。
2023年10月7日のハマスによる攻撃以降、キリスト教徒に対する攻撃的な事件が増加している。キリスト教徒のためのホットラインを運営するユダヤ系イスラエル人ボランティア団体「宗教の自由データセンター(Religious Freedom Data Center、RFDC)」は、2025年に181件の敵対行為(唾吐き、暴言、器物損壊、身体的暴力、オンラインハラスメントなど)を記録した。これは2024年の107件と比較して大幅な増加である。
RFDCの創設者兼代表であるイスカ・ハラニは、キリスト教徒に対するハラスメントの多くは報告されていないため、彼女の統計は実際の件数を過小評価している可能性が高いと述べた。また、RFDCはイスラエル当局に苦情を申し立てているものの、ほとんど回答が得られていないとも述べている。
ハラニは次のように語って言う。「取り締まりがなければ、それは再び同じことを繰り返すことを容認する、いわば消極的な奨励(passive encouragement)に等しい。唾を吐いた犯人が捕まらず起訴されなければ、次回はもっとひどいことになるだろう。・・・一体何を待っているのか?
殺人の発生を待っているのか?」。
アナリストたちは、宗教団体や世俗団体とともに、イスラエルの与党連合政権が宗教的ナショナリズムとユダヤ人過激派の免責意識(a sense of impunity)を助長しているとして、高まる敵意を非難している。彼らはまた、イスラエルによるガザ地区侵攻開始以来、国内に蔓延する憎悪(hate)、恐怖(fear)、そして分極化(polarization)の風潮も指摘している。
ローマ教皇庁聖書研究所名誉教授ジョセフ・シーヴァーズは、イスラエルの特定の層におけるメシア思想(messianic views)が、「他者(others)」とみなされる人々に対する攻撃的な態度を煽る可能性があると述べた。「たとえキリスト教徒がハマスやヒズボラと何の関係もなくても、一部の人々は『自分たちの仲間(their people)』ではないとみなされる全ての人々に対して行動を起こす権利があると考えるかもしれない」と彼は語った。
ロッシング・センターが2025年に実施した、ユダヤ系イスラエル人のキリスト教徒に対する意識調査によると、「回答者の宗教性が高まるにつれて、キリスト教に対する不快感も高まり、・・・学習意欲、寛容性、理解への意欲は低下する(as the level of religiosity among respondents increases, so too do
levels of discomfort toward Christianity … and lower willingness to engage in
learning, openness, or tolerance)」ことが明らかになった。
ロッシング・センター傘下のイェルサレム・ユダヤ・キリスト教関係センターのプログラム・ディレクターであるハナ・ベンドコウスキーは、イスラエル政府と国民はここ数年、ますます孤立感(isolated)を募らせていると指摘する。戦時下の優先事項や、占領下のヨルダン川西岸における入植者とパレスティナ人コミュニティ間の絶え間ない緊張に追われる中で、治安当局は少数派の保護にあまり積極的ではなくなっており、その結果、ナショナリズム的な傾向を持つ人々が「攻撃的な行動になることを自分たちに容認する(allow themselves to be aggressive)」ようになっているとベンドコウスキーは語っている。
イスラエル当局が最近の襲撃事件の犯人を迅速に逮捕したことは、一部のキリスト教徒にとって事態改善の兆しと受け止められている。しかし、聖地における平和共存を促進するためには、より建設的な努力が必要だとフランシスコ会司祭で聖地管理区の学校長を務めるイブラヒム・ファルタスは語っている。
ファルタスは、イスラエル当局はキリスト教徒の要請に耳を傾け、しばしば介入する傾向があると指摘した。「しかし、この困難な共存関係を助長している(聖地をめぐる)紛争を解決するための、真摯で強い政治的意思が依然として欠如している」とファルタスは述べた。「結局のところ、中東地域全域で日々悪化している状況に対処するための、国際社会の権威ある関与が不足している」。
キリスト教徒はイスラエルに対して直接的な政治的影響力はほとんど持たないものの、その広範なネットワークを通じて、世界的に大きな外交的影響力と道徳的権威を行使している。キリスト教の巡礼と観光はイスラエルにとって経済的に重要であり、反キリスト教的な暴力は潜在的な旅行者を遠ざける可能性がある。
さらに、こうした事件への認識の高まりは、キリスト教徒が多数居住するヨーロッパにおけるイスラエルの主要同盟諸国の間で懸念を引き起こしている。例えば、3月には、イタリアのジョルジア・メローニ首相が、聖週間の始まりを告げるキリスト教の祝日である棕櫚の主日を祝うために聖墳墓教会に入ろうとしたカトリック教会の最高指導者であるピエルバッティスタ・ピッツァバラ枢機卿をイスラエル警察が阻止したことを非難した。(イェルサレムの聖地は、アメリカとイスラエルによるイラン戦争開始以来、信者の立ち入りが禁止されている。)ホワイトハウスのカロライン・リーヴィット報道官によると、ワシントンもこの事件についてイスラエルに懸念を表明した。
イスラエルとヨーロッパの関係は、ガザ地区におけるイスラエルの戦争行為をめぐって既に著しく悪化している。ヨーロッパ連合(EU)加盟国の一部は、EUに対しイスラエルとの関係を規定する協定の停止を求めているが、この動きはまだ十分な支持を得られていない。
5月13日にクネセト(イスラエル議会)で行われた公聴会で、ギラド・カリブ議員は、増加する反キリスト教暴力への対策はしばしばイスラエルの外交的地位という観点から議論されるが、より深刻な問題は、キリスト教徒への敵意がイスラエルの根本的な価値観への関与を損なうことだと主張した。彼は最近の事件を「教育の失敗(educational failure)」と呼び、クネセトでの議論にとどまらない行動を求めた。
カリブ議員は、「これらの事件は、イスラエル国家とイスラエル社会に道徳的な汚点を残した。改革派ユダヤ教のラビとして、私はこれらの事件を恥じている」と述べた。
教育と異文化交流の促進は、これらの問題に対処するための重要な手段となる可能性がある。研究者たちは長年、継続的な対人交流が、疎外されたコミュニティへの理解を深めることで偏見を軽減できることを発見してきた。北アイルランドからバルカン半島に至るまで、紛争後の社会は、対話プログラムや共同コミュニティ活動が、根深い政治的対立を解消する訳ではないにしても、時間の経過とともに緊張を緩和する上で成功を収めてきたことを示している。
こうした力学は、イスラエルの状況にも当てはまるようだ。ロッシング・センターの調査によると、回答者の約半数がキリスト教の慣習や信仰について誤った認識を持っており、教育水準が高いほどキリスト教徒に対する肯定的な態度が強まることが明らかになった。これは、知識と接触の機会が「異質な(othered)」集団への敵意を軽減できることを示唆している。ロッシング・センターは、キリスト教に関する誤解を解消するためのワークショップや学校プログラムを実施している。また、イェルサレムでは、ラビ、司祭、イマーム、学生、住民が一堂に会し、対話や地域活動を行う取り組みも行われている。
こうした取り組みが広く効果を発揮するには時間がかかるだろう。今のところ、クネセト(イスラエル議会)の公聴会をきっかけに高まった意識向上は、状況改善につながる可能性がある。駐イスラエル・ヴァティカン大使のジョルジオ・リングア大司教は、「理想と現実の間には常に隔たりがある」としながらも、緊張緩和に向けた努力がなされていると信じていると述べた。
アルメニア正教会総主教庁アガン・ゴグチャン総長は、公聴会は「イェルサレムにおけるキリスト教徒に対するヘイトクライムを監視している者がいる」ことを示したとし、イスラエル政府に対し「これらの行為をヘイトクライム(hate crimes)と呼ぶべきだ」と強く求めた。
4月の襲撃事件は、悪化する傾向への監視を強化し、イスラエル当局はキリスト教徒の懸念、そして国際社会の懸念をより真剣に受け止める必要性を認識しているようだ。しかし、取り締まりの強化は課題の一部に過ぎない。長年の戦争と恐怖によって既に荒廃した分極化した社会(a polarized society already devastated)において、大胆な教育活動と深い社会的な反省が不可欠となるだろう。さもなければ、コミュニティ間の亀裂は拡大し、暴力の連鎖は続き、さらなる分断と不信感を招くことになるだろう。
※ジョヴァンニ・レゴラノ:イタリアを拠点とするジャーナリスト。
(貼り付け終わり)
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