古村治彦です。
2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことで始まったウクライナ戦争と、2026年2月28日にアメリカとイスラエルによる大規模攻撃で始まったイラン戦争はアメリカ軍の武器弾薬、装備品の貯蔵(stockpiles)に大きな影響を与えている。これらの戦争を支援し、攻撃を実行し、また、相手の攻撃を防ぐために、武器が次々と使われている。それにかかる予算は莫大なものとであるが、それ以上に、武器弾薬、装備品の貯蔵が減少している。これはアメリカの防衛計画にも影響を与えるほどのレヴェルになっている。
なんでもそうだが、武器や弾薬を製造するということはその設備投資や人員確保に時間がかかる。また、おいそれと投資をして生産量を増やすということも難しい。設備投資や雇用を行い、増産を始めるとなった段階で、停戦となって「武器がいらなくなりましたので増産は必要ありません」となると請け負った民間企業は大きな赤字を抱えることになる。そのようなことがないように調整をしなくてはならない。太平洋戦争において、日本の軍部は当時の財閥系の重工業企業に対して、増産を要請した。特にミッドウェイ海戦での敗北は生産拡大が急務となった。しかし、当時の財閥系企業の幹部たちは、「報道によれば、日本軍は連戦連勝、この勢いでいけば時期に戦争は日本の勝ちで終わるでしょう。そうなったら武器はいらなくなります。今から増産を準備していざ始めるとなった時に戦争に勝ったらむだになりますから」と増産に消極的だった。日本軍部は「報道での連戦連勝は嘘だ」と言えずに苦労したという話も残っている。経営者はやはり投資に慎重になる。これは現代でも同じだ。
ドナルド・トランプ大統領は強気で、何度もイランに大規模な攻撃を行うと警告しているが、実際にどんどんと武器を使用してしまうと、アメリカ軍の手持ちがなくなって厳しい状況になる。そもそもが既存の軍需産業に対して、「あいつらはミサイル一発で大儲けする、自分は彼らを儲けさせる気はない」と訴えて選挙に当選しておきながらのこの状態である。ある意味では自業自得である。アメリカにとっても一日も早い停戦こそが望ましいが、イラン側、そして世界中に見透かされている。アメリカが望む形での停戦は厳しいだろう。戦争は始めるよりも終わらせることの方がはるかに難しい。勇ましいことをいくら言っても駄目だ。私たちはそのことを学ばねばならない。
(貼り付けはじめ)
イランとの紛争の完全な終結が見通せない中でアメリカの兵器備蓄は減少の一途をたどっている(US weapons stockpiles continue to dwindle with permanent end to Iran
war nowhere in sight)
デイヴィス・ウィンキー、ザッカリー・コーエン筆
CNN
2026年7月29日
https://edition.cnn.com/2026/07/29/politics/us-weapons-stockpiles-dwindle-iran-war
韓国・平沢(ピョンテク)のアメリカ軍基地に配備されたアメリカ軍のパトリオット・ミサイル防衛システム(2026年3月10日)
米国防総省の最新データや外部アナリストによる新たな報告書に詳しい3人の情報筋によると、ここ数週間でイランとの紛争が激化したことを受け、アメリカ軍の兵器備蓄(重要な防空ミサイルを含む)は依然として著しく枯渇した状態にある。
紛争を終結させるための実質的な解決策は見通しが立っておらず、こうしたミサイルの不足は、他の戦域におけるアメリカ軍の対応能力に影響を及ぼす可能性がある。
シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の複数の研究員は月曜日に発表した報告書の中で、アメリカ軍の備蓄に残る「パトリオット」迎撃ミサイルは827発未満、「THAAD(サード、高高度防衛ミサイル)」弾道ミサイル迎撃ミサイルは278発未満であると推定した。アメリカ軍の備蓄状況について語るために匿名を条件とした前述の3人の情報筋は、CNNに対し、CSISの推定値は政府内部の数値に近いものであると述べている。
これらの数字は、戦前の備蓄が大幅に減少していることを示している。CSIS(戦略国際問題研究所)の推定によれば、戦前の備蓄量は「パトリオット」ミサイル(このシステムの最新鋭2タイプ)が約2200発、THAADミサイルが452発だった。これらは飛来する敵の弾道ミサイルを迎撃するためのアメリカ軍の主要な迎撃手段であり、迎撃ミサイルは1発あたり数百万ドルの費用がかかる。
CSIS報告書の執筆者たちは次のように書いている。「備蓄の減少により、アメリカと同盟諸国は迎撃において、より大きなリスクを負わざるを得なくなる可能性がある。弾道ミサイル防衛において、パトリオットやTHAADに代わる有効な手段は存在しない。こうした脅威を迎撃可能な『スタンダード』ミサイル(Standard Missiles)を搭載した海軍艦艇は、通常、現場から遠く離れた場所に位置しているからだ」。
ドナルド・トランプ米大統領は月曜日、エアフォース・ワン(大統領専用機)の機内で弾薬の備蓄について問われた際、「より高度な装備(the more sophisticated stuff)」を補充したいとの意向を示しつつも、現在の在庫状況は「非常に良好である」と主張した。一方、統合参謀本部議長ダン・ケイン大将は先週、連邦上院議員たちに対し、要請している追加予算がなければ国防総省は必要な「弾薬を確保できない(not get the munitions)」と述べた。
CNNの以前の報道によると、ケイン大将は金曜日にトランプ大統領と会談した際、弾薬備蓄の減少について言及した。この会談は、大統領が紛争の大規模な激化を検討していた際に行われた。紛争拡大に伴うさらなるリスクについてケイン大将などから説明を受けたトランプ大統領は、会談後にイランへの攻撃を一時停止すると発表した。しかし、その停止措置は短期間で終わった可能性がある。火曜日、アメリカ軍とサウジアラビア軍はイラク国内のイランの代理勢力に対して共同攻撃を実施した。また、アメリカ軍は、中東地域のアメリカ軍部隊に対するイランからの「奇襲攻撃(surprise attack)」を迎撃したと発表した。
この報告書の筆頭執筆者であるCSISの防衛アナリストであるマーク・キャンシアン(元海兵隊大佐)は今月初め、CNNに対し、イランとの戦闘が続けば備蓄が極度に枯渇し、中国や北朝鮮との戦闘能力にまで影響が及ぶ恐れがあると語った。
NBCニューズは、迎撃ミサイルを無駄にしたくないという判断から、アメリカ軍の指揮官たちが、中東地域のアメリカ軍基地内の無人エリアに着弾する軌道にあるイランの飛翔体については、あえて迎撃しない選択をしていると報じた。今回報告された戦術は、中東地域における従来の防空・ミサイル防衛の運用からの変化を示すものだ。これまでの運用例としては、2025年6月、カタールのアル・ウデイド空軍基地(当時、人員の大部分は退避済み)において、アメリカ軍が運用するパトリオット部隊がイランによる弾道ミサイルの波状攻撃を迎撃・防御した事例が挙げられる。
カタールのアル・ウデイド基地をミサイルで標的にしたとイラン軍が発表した後で迎撃が行われた(2025年6月23日)
国防総省はここ数カ月、迎撃ミサイルの増産に向けた取り組みを加速させており、今週も「パトリオット」や「THAAD(サード)」のロケットモーター製造を拡大する2件の契約を締結した。しかし、広報担当者は、この増産がいつ具体的な成果につながるかという質問への回答を避けた。
アナリストたちは、パトリオット・ミサイルのような高性能兵器の在庫を完全に補充するには、その製造にかかるリードタイム(準備・製造期間)を考慮すると、数年を要する可能性があると指摘している。
国防総省のショーン・パーネル報道官は、4月以降CNNに送付された同件に関する2つの声明と同一の内容を7月28日に発表し次のように述べた。「アメリカ軍は世界最強であり、大統領が選択した時と場所で任務を遂行するために必要なあらゆる能力を備えている。私たちは、国民と国益を守るための強固な能力を維持しつつ、各統合軍(コンバタント・コマンド)を通じて数多くの作戦を成功させてきた」。
トランプ大統領とピート・ヘグセス国防長官は、弾薬不足の主な原因はジョー・バイデン前政権にあると主張している。しかし、この問題はイランとの紛争によってさらに深刻化した。戦略国際問題研究所(CSIS)の分析によると、この紛争の間にアメリカ軍は主要な迎撃ミサイルであるパトリオットとTHAADの在庫の60%以上を使用した。
国防総省が求めている追加の防衛予算案には、在庫に関連するいくつかの条項が含まれている。ヘグセス長官は先週、追加予算に関する連邦上院歳出委員会の公聴会で、バイデン政権について次のように主張した。「バイデン政権は弾薬を(在庫から)そのままウクライナへ送った一方で、その補充には、あまりに遅く、即時の補充ができない官僚的なプロセスを使い続けようとした」。
しかし、民主、共和両党の議員たちは、この不足問題は特定の政権の責任にとどまるものではなく、解決には超党派の協力が必要だと主張している。
「弾薬不足の問題は、以前からこの委員会に周知されていた」とメイン州選出の共和党所属スーザン・コリンズ連邦上院議員は先週火曜日の歳出委員会公聴会で述べた。「この弾薬不足(munitions shortfalls)は長年にわたって蓄積されてきた問題だが、今やその緊急性はますます高まっている」。
※CNNのケヴィン・リプタク、ジム・スキットはこの記事の作成に貢献した。
※CNNにおけるデイヴィス・ウィンキーの活動は、アウトライダー財団とジャーナリズム・ファウンディング・パートナーズ(JFP)の提携により支援されている。報道に関する編集上の決定権は全面的にCNNが保持している。
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●「イラン、米軍が攻撃停止なら報復停止 米は弾薬枯渇懸念か」
Parisa Hafezi, Phil Stewart, Raphael Satter
2026年7月27日午前 7:09 GMT+92026年7月27日更新
https://jp.reuters.com/world/ukraine/HOUKMG7VPJJIPPWDAYVYGWOAHY-2026-07-26/
[ドバイ/ワシントン 26日 ロイター]
- イラン高官は26日、米国の攻撃停止が続く間はイランも攻撃を控えるとロイターに述べた。トランプ米大統領は側近から、標的が尽きつつあるほか、米軍の兵器備蓄が枯渇する恐れがあるとの懸念を伝えられ、作戦の一時停止を決定した。
米軍は24日、前日まで13日連続で実施していたイランへの空爆を見送り、25日と26日も米軍の攻撃は報告されていない。米国の攻撃が行われるたびに近隣の米軍基地受け入れ国に報復攻撃を実施してきたイランも、今のところ2日間にわたり攻撃を控えている。
イラン高官は匿名を条件に、同国の立場は「『攻撃には攻撃で応じる』ということに変わりはない。攻撃が止まれば、イランも作戦を停止する。このメッセージはすでに米国に伝えられている」と述べた。
ウォルツ米国連大使は、FOXニュースなど米メディアに対し、トランプ氏が外交により多くの時間を与えるために攻撃の一時停止を決定したとし、「大統領は交渉に一定の余地を与えている」と述べた。
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匿名を条件に語ったある米当局者によると、米軍当局者はここ数日、ホルムズ海峡の船舶に対するイランの脅威を抑止するため過去2週間実施してきた空爆により、事前に選定していた標的がおおむね尽きたと警告していた。
また、大規模な戦闘作戦の再開は依然として選択肢の一つだが、ケイン統合参謀本部議長はトランプ氏に対し、弾薬の備蓄に悪影響を与えることを踏まえるとリスクを伴うと非公式に警告したという。同当局者は、これには中東で米国の防空システムに使われる迎撃ミサイルも含まれると述べた。
ウォルツ氏はNBCの番組で、米軍は「必要なものを全て備えている」と述べる一方、ヘグセス国防長官がトランプ政権下で就任した際には「枯渇した状況を引き継いだ」とも語った。
イラン高官は、トランプ氏の攻撃停止決定が米国の交渉姿勢の大きな転換を意味するとの期待はあまり抱いていないと述べた。
「攻撃停止については楽観よりも懐疑の見方が強い。今回の停止は本心からではなく戦術的なものであるとの見方が支配的だ。イランは米国の欺瞞(ぎまん)と見なす行為について十分に苦い経験を積み重ねてきた」と語った。
複数のメディアによると、トランプ氏の攻撃停止決定は24日に開かれた会議を受けたもので、その席上、ケイン氏や他の軍事・政治顧問らが懸念を示したという。
CNNはバンス副大統領が難色を示したと報じた。アクシオスによると、中央軍のクーパー司令官は空爆作戦が効果の限界に達したとして、作戦停止を進言した。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』





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