古村治彦です。

 このブログで以前にもご紹介したが、ドナルド・トランプ大統領は大統領在職中であるにもかかわらず、頻繁にかつ大規模に株式取引を行い、巨額の利益を得ている。また、トランプ大統領の親族も同様のことを行っている。インサイダー取引や株価操作が疑われるが(この疑いは濃厚だと思われるが)、今のところ、深刻な問題になっていない。以下の記事であるように、司法長官代行がトランプの親族と事業体に対する税務調査の永久免除を発表したことや、トランプの株式取引が政府措置に先んじる形で行われたことを考えると、これは深刻な問題である。何も問題がないのなら税務調査の永久免除ということにはならない。「何もやましいことはない。是非調べてください」ということになる。それがそうではないというのは犯罪行為があったということを自白しているようなものだ。

「トランプ取引」の具体例としては、2026年1月6日にエヌヴィディア株を購入し一週間後にエヌヴィディアへの輸出許可が出たこと、米商務省がトランプの親族と利害関係を持つ量子コンピューティング企業への投資を発表したこと、UAEからトランプの暗号通貨ベンチャーへの巨額投資、不動産取引、国防総省と契約を結んだドローン企業への出資などが挙げられる。トランプは制度を悪用してむしろ古風で露骨な私利追求を加速させているという指摘が出ている。

下記論考の著者ザカリアは、この件に関して、アメリカの制度的脆弱性を露呈しており、建国の父たちの憲法設計は公職者が共有する「市民的規範」を前提としていたが、現実には政党や支持基盤の個人崇拝によりその前提が損なわれつつあると指摘している。また、こうした非常事態に対する成熟した対応は報復ではなく法の支配の回復であり、トランプ政権の後には規範を法制化し大統領の倫理的免責を制限することで、大統領職が二度と一族の私的ビジネスの場とならないよう法的仕組みを確立することが急務であるとも主張している。

トランプ一族が大統領職を利用して巨額の利益を手にしていることは、今は問題にならなくても、退任後にはやはり大きな問題となるだろう。トランプとトランプの子供たちに対して、日本で言えば国税庁にあたるIRS(内国歳入庁)が徹底的な調査を行うだろう。税務調査の永久的な免除ということはまず許されない。トランプ以降の政権で、必ず問題となり、覆されることになる。そして、厳しい調査が実施され、逮捕者が出るほどのスキャンダルになる可能性もある。アメリカの法の支配と規律が試されることになる。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプの極めて無謀な2期目(Donald Trump’s Incredibly Reckless Second Term

-歯止めを失い利益追求へと向かう大統領。

ファリード・ザカリア筆

2026年5月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/22/trump-family-corruption-immunity-loyalty-second-term-united-states/

ドナルド・トランプ大統領の2期目について、グリーンランドやカナダを併合しようとする拙劣な試み、世界の大半を対象とした大規模な関税引き上げ、法律を無視した非人道的かつ効果の少ない移民取り締まり、そして国連の承認も連邦議会との協議も明確な戦略もなく突如として開始された戦争についてどうしても目が留まる。従って、『ワシントン・ポスト』紙のオーナーであり、明らかに聡明で成功を収めた実業家であるジェフ・ベゾスが今週、「彼(トランプ)は1期目の頃よりも、より成熟し、より自制の効いた人物になっていると思う」と語ったのを聞いて、私は驚かされた。

トランプの1期目が「自制の効いた(disciplined)」ものだったのは、彼自身に自制心があったからではなく、彼が何らかの制約を受けていた(constrained)からだ。トランプは、不本意ながらも、共和党主流派や国家安全保障の専門家エリートたちの意見に従うことが多々あった。初期の立法課題はポール・D・ライアン連邦下院議長によって形成され、ラインス・プリーバス首席補佐官によって実行された。経済顧問のトップであったゲーリー・コーンは、トランプが長年望んでいた世界的な関税引き上げを思いとどまらせようと繰り返し説得した。周囲の将軍たちは、イランに対しては慎重な対応を、NATO(北大西洋条約機構)に対しては支持を、そしてウクライナに対しては武器供与を行うよう促した。

しかしながら、トランプがその1期目から学んだ教訓は、「専門知識が重要である」ということではなかった。「専門家たちは十分に忠実ではなかった」ということだった。2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件の後、多くの政府高官が彼から距離を置き、中には彼を公然と非難する者さえ出てきた。そのため今回、彼は「忠誠(fealty)」を最大の資質とする人々を周囲に固めた。経歴が平凡であればあるほど好都合だ。そうした人々は、自らの地位の全てを彼に負っているからだ。そこでは、プロセスは衝動に、手続きは直感に、そして統治は「腹の虫(直感的な思いつき)」に取って代わられている(Process has given way to impulse, procedure to instinct, government to gut)。

しかし、トランプの1期目と2期目の間で最も際立った違いは、政策そのものではない。それは「私腹を肥やすこと(enrichment)」その規模、厚顔無恥さ、そして抑制に対する露骨な軽視にある。今週初め、司法長官代行は、トランプ本人、その家族、および彼の事業体に対し、過去の税務関連の不正行為に関するあらゆる監査や捜査を免除すると発表した。しかもその発表によれば、この免除措置は「永久に(forever)」続くものとされている。

その前の週、トランプは自身の株式ポートフォリオにおいて、第1四半期だけで約3700件もの取引が行われていたことを明らかにした。その多くは、ある銘柄にとって有利な政府の措置や声明が出る直前にその株が購入されるという、疑わしいほど都合の良いパターンをたどっていた。例えば、今年1月6日にはエヌヴィディア(NVIDIA)の株式を50万ドル分購入しているが、その1週間後、エヌヴィディアはH200チップを中国へ販売する許可をアメリカ政府から得ている。

それだけではない。今週、米商務省はトランプ一家が利害関係を持つ量子コンピューティング企業への投資を発表した。さらに、トランプ一家の暗号通貨ヴェンチャー(crypto venture)に対するUAE(アラブ首長国連邦)からの5億ドルの投資や、この企業のステーブルコインを利用したUAEからの20億ドルの投資、トランプ・オーガナイゼイションによる相次ぐ不動産取引、あるいはトランプ一家が出資し後に国防総省との契約を獲得したドローン企業といった事例も忘れてはならない。ある数字が全てを物語っている。ロイターの試算によれば、2024年前半から2025年前半にかけて、トランプ・オーガナイゼイションの収入は5100万ドルから8億6400万ドルへと急増した。これはある種の「規律(discipline)」を示唆している。すなわち、大統領という地位を金銭的利益に変えることに専念する、執拗なまでの規律である。

トランプ・オーガナイゼイションは、トランプ本人やその家族、そして組織自体が、個別の投資の指示や影響力行使に関与することはないと主張し続けてきた。

より根本的な疑問は、なぜこのようなことが可能なのか、そしてなぜこれほど抵抗が少ないのか、という点にある。汚職を研究する専門家たちは長い間、先進民主政治体制国家における不正行為は、選挙献金やロビー活動のネットワーク、コンサルティング契約といった、より巧妙で制度化されたものになると想定してきた。しかしトランプは、先進工業諸国の精緻なシステムを悪用し、それとは対照的な、はるかに粗野なもの―つまり、古臭い個人的な私腹を肥やす行為old-fashioned personal grift()―を加速させている。

一般国民は懸念を抱き、その数は増えている。しかし、トランプを抑制し得る唯一の支持層である「MAGAMake America Great Again)」の支持者たちは、そうは思っていないようだ。極端な分断が進む国(a hyperpolarized country)であるアメリカでは、汚職はもはや客観的な道徳的欠陥(an objective moral failing)としては判断されない。それは「自分たちの仲間(tribe)」というフィルターを通して見られるものとなっている。「自分たちの側」が行うことであれば、それは「フェイクニューズ(fake news)」か「巧みな政治(clever politics)」、あるいは「正当な報復(justified revenge)」のいずれかとして片付けられてしまう。

この事実は、アメリカの体制が抱えるより根深い脆弱性を露呈させている。建国の父たち(Founding Fathers)は見事な憲法上の枠組みを構築したが、その基盤には明文化されなかったある前提があった。それは、公職に就く者たちが、不文律としての「市民的規範」(unwritten civic norms)に対する共通の責任意識を保ち続けるという前提である。ジェイムズ・マディソンが描いた「野心には野心をぶつけて対抗させる(ambition must be made to counteract ambition)」という構想は、連邦議会が行政権力に対して自らの権限をあくまで守り抜くことを前提としていた。マディソンは、1人の人物への個人崇拝(personality cult)のために、政党が自らの制度的な野心や矜持を放棄してしまうような事態など、想像をしていなかったのである。

法的な歯止め(legal guardrails)は、多くのアメリカ人が認識しているよりもはるかに脆弱なものだ。大統領は、連邦政府の一般的な利益相反法規(federal conflict-of-interest laws)の適用を事実上免除されている。上述したような行為の多くは、たとえ閣僚のトップであっても深刻な法的危機の渦中に追い込まれるようなものだ。しかし大統領に関しては、最高裁判所が「公的な行為(official acts)」に対する唯一の是正手段は弾劾(impeachment)と、連邦上院の3分の2以上の賛成による有罪判決(conviction)のみであるとの判断を下している。党派対立が激化する現代において、それを実現するには「市民的奇跡(a civic miracle)」とも呼ぶべき事態が必要となるだろう。

こうした常軌を逸した事態に対する成熟した対応とは、報復(revenge)ではなく、法の支配の回復(a restoration of the rule of law)である。トランプ政権の後、アメリカという共和国にとっての急務となるのは、規範を法制化し、大統領職に認められている倫理的な免責特権を制限することだ。そして、世界最高位の公職が二度と一族の私的なビジネスの場と化すことのないよう、法的な仕組みを確立することである。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)



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