古村治彦です。

 アメリカでは一般国民、中流層の生活が厳しいということは日本でも報道されている。物価高騰が生活を直撃し、都市部では住宅費も高騰している。家族で暮らすとなると、数千ドル(日本円で100万円ほど)になる場合もある。私がアメリカにいた20年ほど前、ロサンゼルスのワンルーム(アメリカではstudio、ストゥディオ)は駐車場付きで700ドルほどであった。日本円が130円くらいで約9万円であるが、日本のワンルームとは違い、実質的には1LDKほどであった。先ほど、インターネットで私が住んでいたアパートメントを調べてみたところ、ワンルームが1950ドルだった。日本円が160円とすると、約31万円である。30万円というのは留学当時の私の生活費よりもはるかに高い。学費高騰や物価高騰も考えると、留学中の方々や留学を考えている方々は大変だろうと思う。もう気軽に行けるような状況ではない。

 ワンルームで30万円となれば、家族でベッドルームが2つあってなどと考えると100万円ほどになるのは当然だ。もちろん、これは大都市部の話ではあるが、日本円で2000万円以上の収入がなければ、100万円の家賃を払うことは難しい。ロサンゼルスの平均所得は7万4000ドルほどであるから、日本円で1000万円は超えるが、生活は大変だ。

 カリフォルニア州全体でこうだという訳ではないが、生活費と税金の高さに嫌気がさして、他州に移住する人たちも多くいる。下記論考では転入転出の差し引きで、転出の方が190万人も多かったということだ。テキサス州がその行く先に選ばれることも多い。テキサス州は税金が安く、土地も広く、住宅費も比較的抑えられるということから、カリフォルニア州のシリコンヴァレーのIT企業も移転、もしくは移転を検討ということもあり、産業と雇用も含めて流出しているということもある。

 象徴的なのは、下記論考にある通り、映画産業やエンターテインメント産業の衰退だ。このことは全く分かっていなかった。ロサンゼルスのハリウッドと言えば、アメリカ映画の代名詞である。ハリウッドサインは日本人誰もが思い浮かべることができる。映画産業も衰退しているそうだ。それはもちろん、映像技術の進歩やIT技術の活用によって、従業員が少なくてもやっていけるということもあるだろうし、作品の傾向も変化しているということもあるだろう。

 これらについて民主党がカリフォルニア州の知事や州議会を抑えていることが問題であるかのように非難するが、もちろんそうした要因はあるだろうが、アメリカの長期インフレ、米国債の金利上昇といったマクロの問題が大きい。アメリカも日本もそうだが、こちらを押さえるとあっちが出てくるというようなもぐら叩きゲームのような状況になっている。国力低下がある限り、厳しい状況が続いていくことになるだろう。

(貼り付けはじめ)

カリフォルニア州は統治の失敗を示す好例となっている(California Is a Case Study in Failed Governance

-有権者たちはそのことを認識し始めている。

ファリード・ザカリア筆

2026年6月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/12/california-politics-governor-election-housing-homelessness-technology-hollywood-silicon-valley-voters/

atentinlosangeles2026001
ロサンゼルスのダウンタウンのテント(6月11日)

ドナルド・トランプ米大統領や共和党が多くの世論調査で苦戦を強いられる中、カリフォルニア州での物語は全く違っている。知事選挙では、共和党のスティーヴ・ヒルトンが多額の選挙資金を投じた多くの民主党候補を抑え、1月の本選挙で民主党のゼイヴィア・ベセラと対決することになった。圧倒的に民主党支持者が多いロサンゼルス市では、元リアリティ番組出演者で無所属として出馬した共和党員のスペンサー・プラットが、市長選挙の本選挙に進出する可能性さえ見せ、最終的に3位につけた。

カリフォルニア州の民主党関係者は、こうした動きを単なる「副次的なこと」として片付けてしまいたい誘惑に駆られるかもしれない。しかし、そこにある不満は紛れもない現実であり、もっともな理由に基づいている。カリフォルニア州は、世界で最も活気ある地域の1つだ。シリコンヴァレーやハリウッド、世界有数の大学、極めて優れた農業、港湾、才能ある人材、そして豊かな自然を有している。しかし、カリフォルニア州は、豊かな社会であっても、一般市民が必要とするものを生み出す力は低下する一方で、支出だけが増大し続けるという事態を示す典型的な事例となっている。

今日のカリフォルニア州が抱えるパラドックス(paradox1)は、経済的な成功を収めている一方で、統治の仕組みとしては破綻したモデル(a failing model of governance)に縛られているという点にある。

財政記録について考えてみよう。2000年以降、カリフォルニア州の人口は約15%増加した。しかし、州の一般歳出は200%以上も増え、780億ドルから約2480億ドルに増大した。一人当たりの一般歳出も、約2300ドルから約6300ドルへと上昇した。ある統計によれば、州職員の数も50%以上増加した。過去25年間で、カリフォルニア州の行政や住民が受ける恩恵が200%向上したと考える人が果たしているだろうか?

住宅問題こそが、最大の失敗と言える。カリフォルニア州は長らく「思いやり(compassion)」を標榜してきたが、実際には排除(exclusion)の仕組みを構築してきた。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の論説でアリシア・フィンリーが指摘しているように、人口約1300万人を抱えるロサンゼルス都市圏において、2021年から2024年の間に発行された新規住宅の建設許可はわずか11万8000件にとどまった。一方、人口がその約半分の規模であるアトランタでは、16万3000件の許可が発行されている。

カリフォルニア州では、住宅建設のハードルが高く、手続きに時間がかかり、費用もかさむ状況が続いている。その結果は予想されるとおりだ。住宅価格は高騰し、家賃は上昇している。労働者の通勤距離は延び、ホームレスの数は増え、若者たちは州外へと流出している。

そして、人々は州を去っている。雇用・経済センターによると、過去7年間で、カリフォルニア州は国内からの転出入の差し引きで190万人の人口を失った。何世代にもわたり、人々は未来を求めてカリフォルニアに移り住んできた。しかし今や、多くの中間層の人々が、その未来を築く経済的余裕がないために州を去っている。

教育の状況に目を向けてみよう。長年にわたり、カリフォルニア州の学校には資金不足(underfunded)というもっともらしい言い訳があった。しかし、幼稚園から高校までの教育総支出は2010年代初頭から倍増し、2023年時点での生徒一人当たりの支出額は全米平均を大きく上回っている。それにもかかわらず、教育成果は依然として全米で下位3分の1に留まっている。

ホームレス問題もまた、より深刻な形で同様の現実を物語っている。2024年の監査により、カリフォルニア州がこの問題に5年間で240億ドルを費やしていたことが明らかになった。しかし、2024年、カリフォルニア州のホームレス人口は過去最多の約20万人に達した。2024年から2025年にかけてホームレス人口は3%ほど減少したものの、カリフォルニア州が巨額の費用を投じて構築した複雑なホームレス支援体制は、この問題を根本的に解決する有効な手段とはなっていないの。

ハイテク産業など一部の産業が牽引するカリフォルニア州の表向きの繁栄は、その足元にある弱さを覆い隠している。雇用の創出は低迷している。雇用・経済センターのデータによれば、2025年、カリフォルニア州では実質的に新規雇用の純増がなかった。政府部門や公的支援を受ける医療分野を除くと、民間産業全体ではむしろ雇用が減少している。つまり、カリフォルニア州は、民間部門の停滞を公的支出で取り繕っているに過ぎない。

この状況が最も如実に表れているのがロサンゼルスだ。それは、ロサンゼルスを象徴する産業であるハリウッドが、緩やかな崩壊の過程にあるからだ。その影響を被っているのは、著名な俳優やインフルエンサーではない。かつて世界有数の産業クラスターを形成していた大工、衣装担当、音響技師、カメラマン、編集者、ドライバー、ケータリング業者、クリーニング店、小道具業者、そして中小企業といった人々だ。

数字は厳しい現実を物語っている。ある報告書によると、ロサンゼルスでの撮影日数は2022年の3万6792日から、2025年には1万9694日へと減少した。ロサンゼルス郡における映画関連の雇用者数は、2022年末の約14万2000人から、2年後には約10万人へと落ち込んだ。また別の報告書では、映画、テレビ、音響関連の雇用が2022年から2025年の間に30%近く減少したと推定されている。

ハリウッドは今もなお、象徴であり、ブランドであり、神話的な存在だ。そして、この1世紀近くにわたり世界最高のエンターテインメントの数々を生み出してきた大手スタジオも、依然としてここに拠点を置いている。しかし、主に高い税金やコスト、規制が原因で、仕事はジョージア州、ニュージャージー州、トロント、ロンドン、ワルシャワといった他の場所へと流出している。ソニー・エンタテインメントを率いたマイケル・リントンは私に、大手スタジオの敷地は今やゴーストタウンのようだと語った。何十エーカーにも及ぶサウンドステージや録音スタジオがありながら、そこでは何も行われていない。彼は、ロサンゼルスは「デトロイトの晴天版(a sunny version of Detroit)」になりつつあると述べた。

ある単純な事実を考えてみて欲しい。『フォーチュン』誌によると、今年のアカデミー賞作品賞にノミネートされた10作品のうち、ハリウッドを主たる制作拠点としたものは1つもなかった。ロサンゼルスは今もアカデミー賞の開催地だが、そこで表彰される映画の実際の制作は、ロサンゼルスでは行われないケースが増えている。

長年にわたり、カリフォルニア州の民主党は実質的な競争相手不在の状態で政権を担ってきた。しかし、最近の予備選挙の結果は、民主党の牙城(ディープ・ブルー、deep-blue)であっても有権者が現状に不満を抱いていることを示唆している。彼らが共和党支持に回っている訳ではない。しかし、彼らはもっともな疑問を抱いている。「これほどの資金、才能、そして将来性を備えた州でありながら、なぜ一般の人々の生活はこれほど困難なものになっているのか?」という疑問を持っている。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)



sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める