古村治彦です。

 19世紀、インド植民地化を進めた大英帝国と南下政策でインド洋を目指したロシア帝国はアフガニスタンをめぐり衝突した。このことをチェスに例えて、「グランド・チェスボード(Grand Chessboard)」、「グレイト・ゲーム(Great Game)」と呼んだ。中央アジアと呼ばれる地域は諸大国の進出を招く地域である。現在もまたそうである。現在は、レアアースをめぐり、アメリカ、中国、EUが進出をしている。
centralasiancountriesmap001

 アメリカやEUは中央アジア5カ国との関係を深めようとしている。中国は一帯一路計画を策定し、ユーラシア大陸全体の協力関係を構築しようとしている。諸大国が狙っているのはレアアースだ。中央アジア諸国はレアアースを多く埋蔵している。レアアースを制する者が21世紀世界を制するということで、諸大国は中央アジアへの進出を進めている。

 しかし、中央アジアに関しては中国に一日(いちじつ)の長がある。中国は多層的な国際的枠組みに中央アジアを組み込んでいる。それが上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization、SCO)であり、一対一路構想(the Belt and Road Initiative、BRI)である。また、BRICSにはオブザーバー国としてウズベキスタンとカザフスタンが参加している。
shanghaicooperationorganizationmap101
beltandroadinitiativemap101

 中国は、中央アジア諸国との間で、多層的な国際的枠組みを通じて、多くの分野での協力関係を深化させている。欧米諸国は、「レアアースを中国が支配している」と主張し、警戒し、中国を排除しようと躍起になっているが、それならば、中央アジア諸国にはレアアースや重要な天然資源が多く埋蔵されているということが分かっていたのだから、そのために時間をかけて、努力を傾けて、中央アジア諸国との協力関係を構築してきたのかということになる。欧米諸国が「札束で頬を叩けば尻尾を振ってなびいてくる」という考えでいる場合、中国を出し抜いて中央アジアでの勝負に勝つということは不可能である。

 欧米諸国が遅ればせながら、様々な形で協力関係を構築しようとしている。「●●パートナーシップ協定」というものをいくつも締結している。しかし、既に中国ががっちりと固めている中で、この牙城を崩すことは非常に難しい。中央アジア諸国はロシアとの関係も深いということもポイントになる。21世紀のグレイト・ゲームは今のところ、中国とロシアに軍配が上がりそうである。

(貼り付けはじめ)

中央アジアで新たな「グレイト・ゲーム」が進められている(A New Great Game Is Underway in Central Asia)

-世界の諸大国は重要鉱物を求めて新たな争奪戦を繰り広げている。

ジョヴァンニ・レゴラノ筆

2026年7月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/07/20/great-game-central-asia-rare-earths/?tpcc=recirc_trending062921

talcogoldtajikistan2025001

タジキスタン西部のサリタグ鉱山にある露天掘り現場でタジキスタンと中国の合弁鉱業会社「タルコ・ゴールド(Talco Gold)」の作業員たちがアンティモンを採掘している(2025年8月26日)

2026年2月中旬、アメリカ政府はウズベキスタンとの間で、ウズベキスタンが保有する重要鉱物へのアクセスを拡大するための合意を締結した。アメリカ国際開発金融公社(the U.S. International Development Finance Corp、DFC)とウズベキスタン(中央アジアで最多の人口を擁する国)との間のこの「共同投資枠組み(the Joint Investment Framework)」は、探査、採掘、加工を含む重要鉱物のバリューチェイン全体にわたる投資を優先させることで、両国間の協力を推進することを目指すものである。DFCが「歴史的」と評したこの合意には、将来の鉱物およびインフラ・プロジェクトを担う「アメリカ・ウズベキスタン共同投資持株会社(U.S.-Uzbekistan Joint Investment Holding Co.)」の設立案も盛り込まれた。

この動きは、トランプの政権復帰以来、アメリカが中央アジアの旧ソ連5カ国への働きかけを強め、ロシアが長年支配し、近年では中国が主導的役割を果たそうと躍起になっているこの資源豊富な地域において、アメリカの影響力を拡大しようと取り組んできた成果である。

しかし、中央アジア諸国への接近を図っているのはアメリカだけではない。この地域におけるロシアの伝統的な存在感が中国に取って代わられる形で後退する一方で、欧州連合(European Union、EU)やイギリスもこの地域との関係を強化しており、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)といった湾岸諸国もまた、この分野で重要なビジネス・パートナーシップを築いている。

経済協力開発機構(the Organization for Economic Cooperation and Development、OECD)でグローバル関係・協力担当副局長を務めるカリム・ダウは、19世紀の大半を通じてイギリスとロシアの帝国がこの地域を巡って繰り広げた政治的・外交的対立に言及し、「まるで『グレイト・ゲーム(Great Game)』のようだ」と語った。ダウは「資源確保をめぐる世界的な競争の中で、この地域の鉱物資源を巡る激しい争奪戦が起きている」とも語った。中央アジアは、埋蔵量は豊富ながら未開発のままとなっているレアアース(希土類)をはじめとする重要原材料の争奪戦において、主要な舞台として浮上している。

これらの国々への進出を大きく進めてきた中国は現在、こうした資源の供給および精製の双方において世界を圧倒する存在となっている。例えば、国際エネルギー機関(the International Energy Agency、IEA)の「2025年重要鉱物見通し(2025 critical minerals outlook)」によれば、中国は硫酸マンガンやリン酸といった重要鉱物のサプライチェインを支配している。また、中国は精製分野でも主導的な地位にあり、IEAの報告書で分析された20種類の重要な戦略的鉱物のうち19種類において、平均で約70%の市場シェアを握っている。

こうした状況を背景に、世界の主要経済国は、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタンといった国々が抱える莫大な資源の獲得を競い合っている。OECDによると、中央アジアは世界のマンガン鉱石埋蔵量の39%、クロムの31%、鉛の20%、亜鉛の13%、ティタンの9%、アルミニウムの6%、銅の5%、コバルトの5%、モリブデンの5%を保有している。

カザフスタンは、ヨーロッパ連合(EU)が重要物資と指定した34種類の原材料のうち21種類を輸出可能となっている。キルギスは世界第3位のアンティモン埋蔵量を、ウズベキスタンは世界第11位の銅埋蔵量をそれぞれ有している。ウズベキスタンはすでに、リチウムおよびモリブデンの生産に向けた開発に着手している。

これらの素材は、太陽光パネルや風力タービンから蓄電システムに至る幅広いクリーンエネルギー技術に加え、デジタル技術や防衛技術にとっても不可欠だ。その結果、これらの元素に対する需要は今後大幅に拡大すると見込まれている。例えば、国連貿易開発会議(the United Nations Conference on Trade and Development、UNCTAD)は最近、リチウムと黒鉛の需要が2040年までにそれぞれ353%、131%増加すると予測した。

2026年2月の合意に先立ち、トランプは昨年11月、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの首脳をワシントンに招き、重要鉱物をめぐるパートナーシップについて協議を行った。その後、アメリカは鉱物に関するサミットを開催し、その結果、ウズベキスタンを含む11カ国との間で、重要鉱物の供給に関する初期段階の覚書(memorandums of understanding、MOU)が締結された。

これと並行して、EUも中央アジア地域との関係強化に向けた取り組みを再活性化させた。昨年11月下旬にウズベキスタンで開催された第3回EU・中央アジア経済フォーラムでは、6つの主要な合意が成立した。これには、民間投資を呼び込むための地質データの近代化や、重要原材料の透明性の高いサプライチェイン構築に向けたプロジェクトへの資金提供が含まれる。さらに、中央アジア全域におけるこれらの鉱物の持続可能な採掘開発に向け、EUとヨーロッパ復興開発銀行(the European Bank for Reconstruction and Development、EBRD)との間で300万ユーロ(約340万ドル)規模の協定も結ばれた。

2026年6月には、サウジアラビアとカザフスタンが、鉱業分野での協力強化、鉱物探査や関連技術に関する知見の共有、共同での鉱業投資の促進を目的とした覚書に署名した。一方、ロシアは、自国の勢力圏とみなす中央アジアにおいて、アメリカやEUがレアアースや重要鉱物の確保に向けた動きを強めていることに懸念を表明している。特に、中国も中央アジア地域への関心を高めている中でのこうした動きを警戒している。

ロシアのミハイル・ガルージン外務次官は2026年5月、「ワシントンが重要鉱物やレアアース(希土類)をめぐる協定の締結を強力に推進していることを懸念している」と述べた。「これは単なる経済競争の問題ではなく、ロシアを排除し、私たちの国境のすぐ近くに西側諸国が主導するインフラを構築しようとする試みなのである」。

中央アジア地域の鉱物資源に対する関心の高まりは、一般的に、これらの国々にとって経済成長を促進し、経済の多角化を図る好機と捉えられている。しかし、こうした資源の開発にはいくつかの課題も伴う。 OECDは2026年3月の報告書の中で、「独立以来、地質調査が行われていないことや、旧態依然とした埋蔵量報告システムが使用されていることから、潜在的な投資家は資源の賦存量に関する信頼性の高い最新のデータを入手できずにいる。また、この資源セクターにおける国内国有企業の優位性や、過去に外国の投資家との間で生じた紛争も、投資意欲を削ぐ要因となっている」と指摘した。

OECDは3月の報告書の中で、「独立以来、地質調査が十分に行われてこなかったことや、旧態依然とした埋蔵量報告システムが使用されていることから、潜在的な投資家は資源の賦存量に関する信頼できる最新のデータを入手できずにいる。また、この資源セクターにおける国内国有企業の優位性や、過去に外国投資家との間で生じた紛争も、投資意欲を削ぐ要因となっている」と指摘した。

コンサルティング会社「アウトポスト・ユーラシア(Outpost Eurasia)」の上級アナリストであるアルジャン・メイルハノワは、探査活動の近代化が極めて重要な第一歩であると述べた。メイルハノワは「地質マッピングへの人工知能(AI)の活用やデータのデジタル化といった先端技術の導入において、外国からの技術支援を受けることは、現地の能力を構築しつつ資源管理を改善する助けとなるだろう」と語った。さらに彼女は、外国からの投資には、技術移転や現地での一定程度の加工能力の確立といった「開発上の利益(developmental dividends、ディベロップメンタル・ディビデンド)」が伴うべきだと付け加えた。

中央アジア諸国が直面する重要な課題は、重要鉱物ビジネスが経済成長の原動力となるか、それとも世界の大国や富裕国への依存を永続させるものとなるか、という点にある。「新興国において、重要鉱物の採掘は、コモディティ(commodity、一次産品)への依存を悪化させ、環境破壊を招き、社会経済的な不平等を拡大させる恐れがある」とメイルハノワは指摘する。「投資が資源の採掘のみに集中し続ければ、中央アジアもこうした落とし穴に陥るリスクがある」。

世界各国がこの分野における中国の圧倒的な支配力に対抗しようとする中、中国自身は比較的高いレヴェルの自給自足体制を維持している。しかし、ハーグ研究所(Hague Research Institute)の最近の報告書によれば、中国もまた、特にレアアース(希土類)に関して、差し迫った課題に直面している。

競合する大国による「脱中国(away from China)」的なサプライチェイン再構築の動きに加え、資源の枯渇や世界的な技術競争の激化といった問題にも直面している。こうした課題への解決策の1つとして考えられるのが、中央アジアのような主要な新興地域との間で、安定的かつ戦略的なパートナーシップを確立することである。ハーグ研究所の報告書の執筆者たちは、中国とカザフスタンがウラン採掘で採用した既存のモデルを基盤としつつ、探査・採掘から分離・精製、さらには高度な製造に至るまで、垂直統合型産業(vertically integrated industries)の構築を支援する形で中国が協力できるのではないかと主張している。

この報告書によると、中国のアプローチは、短期的な株主価値の最大化や規制リスクの回避を優先しがちな欧米の資源企業の姿勢とは対照的だ。中国は中央アジア諸国と連携し、採掘から中流工程(加工)、下流工程(最終製品への応用)までを統合した産業モデルを構築する可能性がある。「中国の二国間協定には、技術移転、職業訓練、インフラ投資といった要素が盛り込まれることが多く、協力関係は単なる資源採掘の取引ではなく、開発プロジェクトとして位置づけられている」と報告書は指摘している。

欧米諸国が中国への依存脱却を模索する動きの一環として、トランプ政権は先月フランスで開催されたG7サミットにおいて、重要鉱物を対象とした欧米の貿易圏を構築し、それらの価格に協調的な「価格下限(price floors)」を設けるという提案を再び持ち出した。現在、これらの鉱物は一般的に透明性の低い相対取引(over the counter、OTC)で行われており、その価格は中国の市場価格に連動している。中国が圧倒的な生産シェアを誇るため、中国の価格が世界市場の指標となる傾向がある。

この計画に対し、EU(当局者は貿易圏の将来的なガヴァナンスなど、提案のいくつかの側面について懸念を表明)や、価格規制に警戒感を示す鉱業企業からは慎重な反応が示された。有力企業や鉱業関連団体の中には、価格設定を行うことに反対する意見も出た。サミットの閉幕に際し、G7諸国は重要鉱物における中国への依存低減に向けて連携することで合意し、データ共有のための新たなプラットフォームの立ち上げや、共同備蓄の強化を進める方針を打ち出した。

つまり、中央アジアは今後も、こうした鉱物資源の調達をめぐる競争の中心であり続けると見られる。そして、ここ数年で中央アジア地域との間に築かれた数多くのパートナーシップに続き、今後さらに多くの連携が生まれることになるだろう。

※ジョヴァンニ・レゴラノ:イタリアを拠点とするジャーナリスト

(貼り付け終わり)

(終わり)



sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める