古村治彦です。
2026年11月3日に投開票が実施されるアメリカの中間選挙まで2カ月を切った。多くのメディアで報じられているように、連邦下院では民主党が過半数を奪還、連邦上院では接戦という状況になっている。ドナルド・トランプ大統領の支持率は40%を切るところまで落ちている。不支持率は50%台後半となっている。イラン戦争の支持率は30%台前半、不支持率は60%を超えている。共和党としては何とか敗北を最小限度にとどめたいところだ。現状では連邦下院は民主党に過半数を奪われるという見通しだが、「クック・ポリティカル・レポート(the Cook Political Report)」の情勢分析では、全435議席(過半数は218議席)で、共和党は209議席、民主党は205議席を固めており、21議席が接戦となっている。接戦の議席で民主党が13以上を獲得して民主党が過半数ということになる。私は民主党が過半数を握るが議席数の差は小さいものとなるのではないかと考えている。

こうした状況で、共和党は中間選挙前にテコ入れのための全国大会(national
convention)をテキサス州ダラスで開催している。共和党優勢州のテキサス州の連邦上院議員選挙で、民主党の候補である州下院議員のジェイムズ・タラリコが共和党の候補である州司法長官のケン・パクストンをリードしているという状況が象徴しているように、共和党優勢の週で苦戦が続く中で、何とか共和党優勢州を固めようという意図が透けて見える。
これまで、民主、共和両党は4年に1度、大統領選挙の年に全国大会を開催してきた。全国大会は大統領選挙の候補者を正式に決め、大々的に発表して盛り上げる機会として機能してきた。もちろん、中間選挙前に行ってはいけないということはないが、前例のないことだ。トランプ大統領は二期目であり、中間選挙が終われば、もう大きな選挙はない。どの大統領でもそうだが、二期目の中間選挙が終わると、注目は次の大統領選挙に集まり、人々の関心は薄れ、離れていく。この状態をレイムダック(lame duck)と呼ぶが、日本語では「死に体」と物騒な言葉を使う場合もある。そして、中間選挙は多くの場合、現職大統領の所属する党に厳しい結果となる。ここで、時間とお金を使って全国大会を開催してまで盛り上げる必要はない。今回の共和党全国大会の資金はピーター・ティールやイーロン・マスクから出ており、J・D・ヴァンスの後継指名も含まれているのではないかと私は勝手に推測している。
そうした中で、トランプ大統領は1時間45分の演説を行い、健康と活力をアピールした。80歳の人物が1時間45分も演説ができるだろうか。これは余計なことだが、トランプは肥満体であるが、相当な筋肉量があるのだろうと推測する。そして、演説の仲で最も人々の関心を引いたのは、「共和党が連邦上下両院で過半数を維持すれば」という条件で、「トランプ配当(Trump dividend)」を全成人に1人当たり5000ドル配布すると述べたところだ。
これは日本円に換算すると約76万5000円となる。夫婦ならば約153万円が支給されることになる。アメリカの成人の数は約2億7000万人である。この計画を実施するためには約1兆3500億ドルの資金が必要となる。日本円に換算すると約206兆5500億円となる。日本の国家予算約122兆円をはるかに超える金額である。
アメリカの国家予算は約7兆ドル、日本円で約1000兆円となる。アメリカのGDPは、約31兆ドル、日本円で約4700兆円となる。日本のGDPは約4兆ドル、約600兆円である。200兆円というお金はアメリカの国家予算の約5分の1(20%)、GDPから見れば約4.2%を占める規模である。日本のGDP(約600兆円)と国家予算(約122兆円)に引き付けて考えてみると、25兆円から30兆円くらいということになるだろう。日本では消費税の時限的引き下げの財源約5兆円のことで大騒ぎである。もっとも、それだけのお金を配ろうというのは史上最大規模の選挙買収ということになる。
共和党は小さな政府を志向し、民主党の福祉政策に対して、「ばらまき」と批判してきた。しかし、共和党所属の大統領が史上最大の国家予算を連邦議会に求め、大盤振る舞いを行等としている。現在、左派で勢力を伸ばしている民主社会主義勢力は教育や公共交通の無償化や安い公営住宅の建設拡大などを訴えているが、トランプもまたそれに負けじと大盤振る舞いを打ち出した。このブログでも何度も紹介しているが、急進的な右派と急進的な左派は主張が似てくるという馬蹄理論(horseshoe theory)がそのまま当てはまる状況である。
共和党が連邦議会で過半数を握っても、共和党には財政規律に厳しい議員たちも多く、1人に5000ドルを配るというトランプのアイディアが実現する可能性は低い。民主党側では民主社会主義勢力や進歩主義派から賛成が出そうであるが、エスタブリッシュメント系はシングルマザーや高齢者などターゲットを絞って手厚く支援をするべきということで反対に回るだろう。そうなれば、トランプは連邦議会で反対する議員たちを攻撃することになるだろう。ポピュリズムの真骨頂であるエスタブリッシュメント攻撃、エリート攻撃ということになるだろう。
ここまで長々と書いたが、トランプ配当5000ドルはただ単に破れかぶれ、もう負けては見えているのでド派手なことをぶち上げただけということも考えられる。その方がトランプらしいとも言えるだろう。
(貼り付けはじめ)
ドナルド・トランプ大統領が共和党が連邦議会で過半数を維持すれば5000ドルの「トランプ配当」を支給すると公約する(Trump pledges $5K ‘Trump dividend’ if Republicans hold onto Congress)
マロニー・ウィルソン筆
2026年9月9日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/6080741-trump-dividend-november-pledge/
ドナルド・トランプ大統領は水曜日、11月の選挙で共和党が連邦議会の過半数を維持することを条件にして、アメリカの成人に対して5000ドルを支給すると公約した。
テキサス州ダラスで開かれた共和党の中間選挙前の全国大会で次のように述べた。「ここに私は約束する。もし共和党が連邦下院と連邦上院の両方で勝利すれば、経済面での私たちの圧倒的な強さと成功のおかげで、アメリカの全ての成人市民に対し、5000ドルの配当金(a dividend)を支給するつもりだ」。
この給付の合法性(legality)は不明確だ。アメリカの成人人口は約2億7000万人だ。
トランプは水曜日の集会参加者たちに対し、提案した「トランプ配当金」を支給できる理由として、「私たちが素晴らしい成果を上げ、国家が莫大な利益を上げているからだ」と語った。
トランプは、この給付金はアメリカ国内でのみ使用可能であると付け加えたが、具体的な仕組みについては明らかにしなかった。
「そのお金を使うためにカナダへ行って欲しくない」とトランプは述べた。「中国やドイツへ行って欲しくもない」。
トランプは、ダラスの会場で行った長時間の演説の冒頭で、この発表について「演説の最良の部分(the best part of the speech)」になるだろうと思うと予告していた。
トランプ大統領がこうした構想を打ち出したのは今回が初めてではない。昨年も、関税収入を原資とする2000ドルの「配当小切手(dividend checks)」を国民に配布すると約束したがその詳細は曖昧なままだった。
こうした措置の実施に連邦議会の承認が必要かどうかは明らかになっていない。トランプは、関税を原資とする小切手の配布に連邦議会の承認は必要ないと「確信している(believe)」と述べたが、国家経済会議(National Economic
Council、NEC)のケヴィン・ハセット委員長は後に連邦議会の関与が必要になるだろうとの見解を示唆した。
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トランプ氏、米成人に5000ドル支給へ-中間選挙で共和党勝利なら
9/10(木) 11:24配信 ブルームバーグ日本語版
https://news.yahoo.co.jp/articles/ef71980c385f29ae921c1b8e0d177e97e09270e8
https://news.yahoo.co.jp/articles/ef71980c385f29ae921c1b8e0d177e97e09270e8?page=2
(ブルームバーグ): トランプ米大統領は、共和党が議会の上下両院で過半数を維持した場合、米国の成人市民全員に5000ドル(約76万7000円)の配当を支給すると約束した。11月の中間選挙で有権者に共和党への支持を促す異例の策だ。
共和党が議会の過半数を失う瀬戸際に立つ中、この提案は事実上、金銭的な恩恵を示して米国の有権者に支持を促すものだ。トランプ氏はダラスで開かれた中間選挙に向けた共和党の集会で、ゴールデンタイムに行った演説を通じてこの案を打ち出した。
トランプ氏は9日、支持者に対し「われわれの経済が驚異的な強さと成功を収めていることから、米国の成人市民全員に5000ドルの配当を支給する」と表明。「これはトランプ配当と呼ばれることになる」とし、「あとは勝つだけだ」と語った。
さらに、この提案は共和党が議会の上下両院で過半数を維持することが条件だとしたが、財源については明らかにしなかった。実施には議会の承認が必要となる。米国ではすでに40兆ドルに上る公的債務が借り入れコストを押し上げている。
トランプ氏はまた、支給金について「米国内で使わなければならない」との条件を設ける考えを示したが、この要件をどう徹底するかについても説明しなかった。
トランプ氏の説明通りに実施すれば、この措置にかかる費用は1兆ドルを大幅に上回る。
トランプ氏は以前にも、消費者に関税収入を原資とする配当を支給する案を打ち出していたが、議会では支持が広がっていない。有権者への直接給付を盛り込んだ法案も同様に、成立までには高いハードルがある。
それでも「トランプ配当」の提案は、投票日を前にトランプ氏が直面する政治的な危機と、それを何としても回避したい同氏の切迫感を浮き彫りにした。
世論調査でトランプ氏の支持率が過去最低水準に落ち込み、政治的立場を問わず米国民がイラン戦争や経済への対応に懸念を抱く中、民主党が議会の一方または両院を掌握する事態を避けるには、支持を一気に盛り上げる必要がある。
民主党が議会の一方または両院で過半数を握れば、トランプ氏の政策遂行が阻まれ、トランプ氏本人や政権が議会による新たな調査にさらされることになる。
原題:Trump Floats $5,000 Payment to US Adults
If GOP Wins Midterms、Trump Promises $5,000 Payment to
US Adults if GOP Wins Midterms(抜粋)
(c)2026 Bloomberg L.P.
(貼り付け終わり)
(終わり)

『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』



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