古村治彦です。
イラン戦争は停戦交渉も進まず、かと言って、戦闘が激化しているということもなく、ダラダラと続く「日常の風景」になりつつある。世界最強のアメリカ軍は鎧袖一触、イラン国軍、イラン革命防衛隊を壊滅させ、イランの体制転換までできるはずだった、ドナルド・トランプ大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の空想の世界では。現実はホルムズ海峡を抑えられ、苦しい状況になっている。さらに、イランが支援するイエメンのフーシ派が紅海の出入口であるバブ・エル・マンデブ海峡を抑え、サウジアラビアの石油輸出インフラも攻撃することで、石油価格の面から厳しい状況になっている。チョークポイント呼ばれる重要地点を2カ所も抑えられ、アメリカは厳しい状況が続く。
そうした中で、アメリカ国防総省はイラン戦争に関する特別報告書を発表した。この報告書にはアメリカ軍のおかれた厳しい状況が書かれている。イラン戦争でペルシア湾に派遣された、アメリカ海軍が誇る原子力空母「エイブラハム・リンカーン」で長期勤務のために、乗組員の間で自殺未遂事件が多く発生し、補給も滞り、腐った食材による料理が出ているなどと報じられていた。アメリカ軍が世界最強と評価されているのは、補給や将兵の生活環境や食事なども一流であることがその前提となっている。それがどうして滞っているのかと言えば、イランがペルシア湾周辺諸国にあるアメリカ軍基地を徹底的に攻撃したからだ。それによって、軍隊にとって重要な兵站が大きな被害を受けた。補充用の弾薬や食料が「吹き飛ばされた」ことで欠乏に至った。また、補給基地をペルシア湾から近い場所で失ったことにより、遠く離れたインド洋のディエゴガルシア島が兵站拠点となっている。これでは兵站に割く人員、艦船や飛行機、更に予算までが多くかかることになる。
ウクライナ戦争開戦によって、アメリカはウクライナ支援のために弾薬や物資を送ったことで、アメリカ軍自体の必要な量自体を賄えない事態が起きていることは、バイデン政権を取り扱った拙著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも取り上げた。武器製造のために工場を新たに建設することは難しい。戦争画を終わる段階でその工場が出来上がってしまって丸々損ということになる可能性もあるからだ。アメリカは通常の海外展開に加えて、ウクライナ戦争への物資支援、更にはイラン戦争まで抱えることになり、武器製造が追いついていない。兵站が厳しい軍隊は戦闘継続が難しい。さらに言えば、アメリカは世界覇権国、帝国として「過剰拡大(overstretch)」状態になっており、それが国力低下を促進しているということもある。
(貼り付けはじめ)
●「米国防総省、イラン戦争で軍施設数百棟の損傷や弾薬備蓄の枯渇を公表 初の正式報告書」
2026.09.15 Tue posted at 13:50 JST CNN日本語版
https://www.cnn.co.jp/usa/35252629.html
(CNN) 米国防総省の監察総監が14日、イラン戦争に関する特別報告書を公表した。米国が戦闘で失った装備や施設について、国防総省が初めて正式にまとめた報告となる。
監察総監は米中央軍とのやり取りを引用し、戦争開始から数カ月間に「イランによる攻撃で、クウェート、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、イラク、オマーン、ヨルダンにある米軍基地の建物や構造物数百棟が損傷または破壊された」と述べた。報告書は、戦争が始まった2月28日から6月30日までを対象としており、米国の主要な弾薬の備蓄が枯渇したことも認めている。
イランの攻撃は、米軍がこの地域で行ってきた活動のあり方にも大きな変化をもたらした。米中央軍はイランやその代理勢力から攻撃を受ける中、「人員や資産、保管施設を移動させた」というのだ。
その一環として、陸軍の医療搬送用ヘリコプターをイラクとクウェートから撤収した。現在は、おおむね陸路で地元の治療施設に搬送しているという。
海軍幹部がイランに「徹底的に吹き飛ばされた」と表現したバーレーンの米海軍地域拠点の破壊も、「十分な海軍基地や支援港」の確立における「重大な課題」を増大させた。この拠点が破壊されたことで、遠く離れたインド洋のディエゴガルシア島が海上兵站(へいたん)の拠点となり、補給にかかる周期は14~18日に延びた。
その結果、断続的な物資不足や、郵便システムの中断が発生。過去最長期間にわたってペルシャ湾に展開した米海軍兵の困難をさらに深刻化させた。
中東での米軍の態勢変化は恒久化する可能性もある。戦争が最終的に終結した場合に地域の要員や施設を永続的に削減する見通しについて、軍や情報機関の当局者が水面下で協議を重ねていると、6人の情報筋がかねてCNNに明らかにしている。
報告書によると、イランによる攻撃で中東における米国の外交施設には約1億8400万ドル(約285億円)相当の損害が生じた(米軍施設の被害額の推計は示されていない)。
激しい戦闘が続いた数カ月間にわたり、イラク、クウェート、サウジアラビア、UAEにある米国の外交施設は、イランやその代理勢力の攻撃にさらされた。
2月23日から6月30日までの間に同地を離れた米国の外交関係者は最大3500人に上る。
大半の在外公館では現在も「制限付き業務」が続いている。これは通常の人員体制に戻ったという意味ではなく、退避命令が6カ月続いた後に適用される措置で、一部の外交官と家族はこの地域に戻り始めている。
(貼り付け終わり)

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