古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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カテゴリ: アメリカ政治

 古村治彦です。

 アメリカとイスラエルがイランに対して大規模攻撃を行うことで始まったイラン戦争は、パキスタンのシャバーズ・シャリフ首相が仲介役となり、2週間の停戦が合意に至ったという発表を行ったことで事態が急速に動いた。アメリカもイランも停戦に合意医したことを認め、イスラエルは停戦に合意するとしているが、イランから支援を受けているヒズボラに対する攻撃を継続するとして、レバノンへの大規模攻撃を継続している。パキスタンのシャリフ首相はレバノン攻撃停止が停戦条件に入っているとしているが、認識の違いはこれからの停戦に方向に影響を与えることになるだろう。
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(左から)トランプ、ヴァンス、ルビオ、スージー・ワイルズ大統領首席補佐官

 そうした中で、ニューヨーク・タイムズ紙は、ドナルド・トランプ大統領によるイラン攻撃決定に進むまでの内幕を報じた。2026年2月11日に、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が極秘裏にホワイトハウスを訪問し、外国首脳はほぼ入ったことがないシチュエーションルームで1時間にわたり、イラン戦争開始を勧奨するプレゼンテーションを行った。プレゼンテーションの内容について以下の記事では、「第一部分は最高指導者の暗殺、つまりハメネイ師の殺害。第二部分はイランの軍事力投射能力と近隣諸国への脅威能力の弱体化、第三部分はイラン国内での民衆蜂起、そして、第四部分は世俗的な指導者を擁立する政権転覆(体制転換)である」としている。アメリカ政府関係者たちは、最初の2つの部分は達成可能であるが、残り2つは達成不可能であるという評価を下していた。このプレゼンテーションの会合には、JD・ヴァンス副大統領は出席していなかった。アゼルバイジャンに外遊中で当日までに帰国できなかった。

 翌日12日にプレゼンテーションの内容を評価する会合が開かれ、ヴァンス副大統領はこちらには出席することが出来た。そして、この会合で、トランプ大統領に対して、イラン攻撃に反対する意見を述べた。以下の記事から引用する。

(引用はじめ)

ヴァンス副大統領は、イランとの政権転覆戦争は破滅的な結果を招くと考えていた。彼の望みは、一切の攻撃を行わないことだった。しかし、トランプが何らかの形で介入する可能性が高いことを承知していたヴァンスは、より限定的な行動へと舵を切ろうとした。その後、大統領が大規模な作戦に踏み切ることが確実になると、ヴァンスは、目的を迅速に達成するためには圧倒的な武力行使が必要だと主張した。

ヴァンスは同僚たちの前で、イランとの戦争は地域的な混乱と計り知れない数の犠牲者をもたらす可能性があるとトランプに警告した。また、トランプの政治連合を崩壊させ、新たな戦争は起こさないという約束を信じていた多くの有権者から裏切りとみなされるだろうとも述べた。

ヴァンス副大統領は他にも懸念を表明した。副大統領として、彼はアメリカの軍需品問題の深刻さを認識していた。生き残りを強く望む政権との戦争は、アメリカを今後数年間、紛争を戦う上で極めて不利な立場に追い込む可能性がある。

副大統領は側近に対し、政権の存続がかかっている状況でイランがどのような報復行動に出るかを、どれほど軍事的見識があっても正確に予測することはできないと語った。戦争は容易に予測不可能な方向へ進む可能性がある。さらに、彼は戦争後に平和なイランを築く可能性は低いと考えていた。

そして、おそらく最大の懸念は、ホルムズ海峡におけるイランの優位性だった。膨大な量の石油と天然ガスを輸送するこの狭い海峡が封鎖されれば、ガソリン価格の高騰をはじめとするアメリカ国内への影響は甚大になるだろう。

(貼り付け終わり)

 現状はヴァンス副大統領の懸念の通りになっている。その他の最高幹部たちでは、ピート・ヘグセス国防長官が攻撃に賛成し、マルコ・ルビオ国務長官は曖昧な態度を取った。ただ全員が、トランプ大統領が攻撃を決定するならば支持し、それぞれの役職で支えるということは変わらなかった。最終的には、2月26日に会合が開かれ、トランプ大統領から攻撃決定の意思が示された。トランプの決断の理由は、記事によると、「イランが核兵器を保有できないようにしなければならないこと、そしてイランがイスラエルや中東地域全体にミサイルを発射できないようにしなければならないことを確実にしなければならない」ということだった。ネタニヤフ首相のプレゼンテーションで示された4つの部分のうちの2つを実行するということだった。これは、「イラン国内での民衆蜂起と世俗的な指導者を擁立する政権転覆(体制転換)」はゴールとはしないということだった。ここから、開戦直前において、アメリカとイスラエルは戦争のゴールが異なっていたということが明らかだ。

 2月11日にネタニヤフ首相がホワイトハウスのシチュエーションルームでプレゼンテーションを行ったが、それよりも前に両国政府の実務者レヴェルですり合わせが行われ、実際に攻撃決定となれば、どの程度の攻撃をどの範囲で実行するかということは決定されていただろう。そうでなければ、攻撃開始までの準備期間が短期間過ぎるということになる。さらに、イスラエル側はヴァンス副大統領がホワイトハウスに来られない日程を狙ってプレゼンテーションを行ったということも考えられる。プレゼンテーションの場所で、ヴァンス副大統領に反対されたら、ネタニヤフ首相の面子はなくなってしまう。ネタニヤフ首相による下準備は2025年から開始されていた。2025年だけで6回もホワイトハウスを訪問している。ここで「説得」、いや「洗脳」「刷り込み」が行われたということは考えられる。

ヴァンス副大統領はその過程を注視している訳で、イスラエルとネタニヤフ首相に対して不信感を募らせていたことは明らかだ。実際に、3月23日、ヴァンス副大統領はネタニヤフ首相と電話会談を行い、そこで、イラン戦争に関して見通しが甘かったこと、イスラエルの入植者たちの暴力をイスラエル政府が統制できていないことを強く口調で非難したという報道が出ている。

 ヴァンスがトランプが錯誤の結果として開始したイラン戦争の尻拭いをするということになるのは当然のことだ。彼にはそれを実行するだけの資格がある。懸念はイスラエルによる妨害である。ヴァンスがイラン戦争停戦を成功させれば、2028年の大統領選挙での勝利に大きく近づく。そうなれば、イスラエルとしては具合が悪い。イスラエルに対して懐疑的な大統領が誕生すれば、イスラエルにとっては利益にならない。イスラエルがヴァンスに対して妨害工作を仕掛けてくるという可能性がある。しかし、ヴァンスは「トランプ主義」、「アメリカ・ファースト」と「アイソレイショニズム」の正統な後継者である。ヴァンスをアメリカ国民が支えることになるだろう。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領はいかにしてアメリカをイランとの戦争へと導いたか(How Trump Took the U.S. to War With Iran

-一連のシチュエーションルームでの会議において、トランプ大統領は自身の直感と、副大統領の強い懸念、そして悲観的な情報機関の評価との間で葛藤した。ここでは、トランプがいかにして運命的な決断を下したのか、その内幕を明らかにする。

ジョナサン・スワン、マギー・ハーバーマン筆

2026年4月7日
『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2026/04/07/us/politics/trump-iran-war.html

ベンヤミン・ネタニヤフ首相を乗せた黒塗りのSUVは、2月11日午前11時前にホワイトハウスに到着した。イランへの大規模攻撃にアメリカが同意するよう数カ月にわたり働きかけてきたイスラエル首相は、記者たちの目から隠れるように、ほとんど式典もなくホワイトハウス内へと案内された。彼の長い政治キャリアの中でも最も重要な局面の一つに向けて進めた準備が実現した瞬間だった。

アメリカとイスラエル両国の高官たちはまず、大統領執務室に隣接する閣議室に集まった。その後、ネタニヤフ首相は階下へ移動し会談本番に臨んだ。ホワイトハウスのシチュエーションルームで、ドナルド・トランプ大統領と側近たちに対し、イランに関する極秘のプレゼンテーションが行われた。このシチュエーションルームは、外国首脳との直接会談にはほとんど使用されていなかった。

トランプ大統領は着席したが、いつものマホガニー製の会議テーブルの最上座ではなく、壁に設置された大型スクリーンが見える反対側の椅子に腰掛けた。ネタニヤフ首相は反対側、大統領の真向かいに座った。首相の背後のスクリーンには、イスラエルの対外情報機関モサドの長官であるダヴィッド・バルネアと、イスラエル軍関係者たちが映し出されていた。ネタニヤフ首相の背後に視覚的に配置された彼らは、戦時指導者が自身の率いるティームに囲まれているような印象を与えた。

ホワイトハウス・大統領首席補佐官スージー・ワイルズはテーブルの端に座り、国家安全保障問題担当大統領補佐官を兼任するマルコ・ルビオ国務長官はいつもの席に着いていた。国防長官ピート・ヘグセスと米統合参​​謀本部議長ダン・ケイン大将は、こうした会談では通常一緒に座るのだが、この日は片側に座った。彼らに加わったのは、CIA長官ジョン・ラトクリフだった。大統領の義理の息子であるジャレッド・クシュナーと、イランとの交渉を担当していたトランプ大統領特使スティーヴ・ウィトコフが主要メンバーを構成した。

会合は情報漏洩を防ぐため、意図的に小規模に抑えられていた。他の閣僚たちは会合が開かれていることすら知らなかった。副大統領も欠席していた。JD・ヴァンス副大統領はアゼルバイジャンに滞在しており、会合は急遽決定されたため、開始時間までに戻ることができなかった。

ネタニヤフ首相がこの後1時間で行うプレゼンテーションは、世界で最も不安定な地域の一つである中東地域において、アメリカとイスラエルを大規模な武力衝突へと導く決定的な役割を果たすことになるだろうと考えられた。そして、この決定は、その後の数日間、数週間にわたりホワイトハウス内で一連の議論へと発展した。その詳細はこれまで報じられていないが、トランプはイラン攻撃でイスラエルと共闘することを承認する前に、選択肢とリスクを慎重に検討した。

トランプがアメリカを戦争へと導いた経緯を詳述した今回の記事の内容は、発刊予定の著書『政権転覆(体制転換):ドナルド・トランプ皇帝型大統領の内幕(Regime Change: Inside the Imperial Presidency of Donald Trump)』のための取材に基づいている。本書は、政権内部での協議がいかに大統領の直感、側近間の亀裂、そしてホワイトハウス運営の実態を浮き彫りにしたかを明らかにしている。匿名を条件に行われた広範なインタヴューに基づき、内部の議論やデリケートな問題について詳述している。

今回の報道は、トランプのタカ派的な考え方が、数カ月にわたりネタニヤフの考え方とどれほど密接に一致していたかを明らかにしている。その一致度は、大統領の主要な補佐官たちの一部でさえ認識していなかったほどだ。両者の緊密な関係は、2つの政権にわたって一貫して見られ、その力関係は、時に緊張をはらむこともありながらも、アメリカ政治の左右両派から激しい批判と疑念を招いてきた。

そして、最終的には、トランプの戦争内閣の中でも懐疑的なメンバーでさえ―全面戦争に最も反対していたホワイトハウス内の人物であるヴァンスを除いて―、戦争が迅速かつ決定的なものになるという大統領の確信を含む、大統領の直感に従ったことを示している。ホワイトハウスはコメントを控えた。

2月11日、ホワイトハウスのシチュエーションルームで、ネタニヤフ首相はイランの政権転覆(体制転換)がまさに実現可能な時期にあると強く訴え、アメリカ・イスラエル合同作戦によってイスラム共和国を終焉させることができるとの確信を表明した。

イスラエル側はトランプ大統領に対し、強硬なイラン政権が崩壊した場合に国家を掌握する可能性のある新たな指導者たちの映像をまとめた短いヴィデオを上映した。その中には、イラン最後のシャー(国王)の亡命中の息子で、現在はワシントンを拠点とする反体制派のレザ・パラヴィーも含まれていた。パラヴィーは、自分自身を、イランを神権政治後の政権へと導くことができる世俗的な指導者として、位置づけようとしてきた。

ネタニヤフ首相とそのティームは、ほぼ確実な勝利を示唆する条件を提示した。イランの弾道ミサイル計画は数週間以内に破壊される可能性がある。イラン政権は弱体化し、ホルムズ海峡を封鎖することは不可能になるだろう。また、イランが近隣諸国のアメリカの権益を攻撃する可能性は極めて低いと評価された。

さらに、モサドの情報によると、イラン国内で再び街頭デモが始まるとみられ、イスラエル諜報機関が暴動や反乱を煽ることで、激しい爆撃作戦はイラン反体制派による政権転覆(体制転換)の条件を整える可能性があるという。イスラエル側はまた、イランのクルド人戦闘員がイラクから国境を越えて北西部に地上戦線を開き、政権軍をさらに分散させ、崩壊を加速させる可能性も指摘した。

ネタニヤフ首相は自信に満ちた単調な口調でプレゼンテーションを行った。その発言は、その場にいた最も重要な人物、つまりアメリカ大統領に好印象を与えたようだった。

トランプ大統領はネタニヤフ首相に「いい考えだ」と告げた。ネタニヤフ首相にとって、これはアメリカ・イスラエル共同作戦へのゴーサインが出されたことを意味していた。

トランプ大統領が最終的な決断を下したと感じたのはネタニヤフ首相だけではなかった。大統領の補佐官たちは、トランプ大統領がネタニヤフ首相の軍事・情報機関の能力に深く感銘を受けていたことを察知していた。それは、6月のイランとの12日間の戦争前に両者が会談した時と同様だった。

2月11日のホワイトハウス訪問の際、ネタニヤフ首相は閣議室に集まったアメリカ国民に対し、86歳のイラン最高指導者アリ・ハメネイ師がもたらす存亡の危機について改めて認識させようと努めた。

シチュエーションルームにいた他の出席者から作戦に伴う潜在的なリスクについて質問されると、ネタニヤフ首相はリスクを認めつつも、重要な点を1つ強調した。それは、何もしないことのリスクは行動することのリスクよりも大きいという見解だった。攻撃を遅らせれば、イランにミサイル生産を加速させ、核開発計画を防御する「防護壁(a shield of immunity)」を構築する時間を与えてしまうことになり、結果として行動の代償は増大するだけだと首相は主張した。

シチュエーションルームにいた全員が、イランはミサイルとドローンの備蓄を、アメリカが中東地域におけるアメリカの国益と同盟国を守るために、はるかに高価な迎撃ミサイルを製造・供給するよりもはるかに低コストで、はるかに迅速に増強できる能力を持っていることを理解していた。

ネタニヤフ首相のプレゼンテーション、そしてそれに対するトランプ大統領の好意的な反応は、アメリカ諜報・情報機関にとって喫緊の課題となった。アナリストたちは夜通し、イスラエル側がトランプ大統領に伝えた内容の妥当性を評価する作業に追われた。

●「茶番劇」(‘Farcical’

米諜報・情報機関の分析結果は、翌日の2月12日、ホワイトハウスのシチュエーションルームで、アメリカ政府当局者のみが出席する別の会議で共有された。トランプ大統領の到着に先立ち、2人の諜報・情報部門の高官が大統領側近たちにブリーフィングを行った。

諜報・情報機関関係者たちはアメリカ軍の能力に関する深い専門知識を持ち、イランの体制とその構成員を隅々まで知り尽くしていた。彼らはネタニヤフ首相のプレゼンテーションを4つの部分に分解していた。第一部分は最高指導者の暗殺、つまりハメネイ師の殺害。第二部分はイランの軍事力投射能力と近隣諸国への脅威能力の弱体化、第三部分はイラン国内での民衆蜂起、そして、第四部分は世俗的な指導者を擁立する政権転覆(体制転換)である。

アメリカ政府当局は、最初の2つの目標はアメリカの情報収集力と軍事力で達成可能だと判断した。一方、クルド人によるイランへの地上侵攻の可能性を含むネタニヤフ首相の提案の第三と第四の部分は、現実離れしていると判断した。

トランプ大統領が会議に出席すると、ラトクリフCIA長官はトランプ大統領にこの評価を説明した。CIA長官はイスラエル首相の政権交代シナリオを一言で「茶番劇」と表現した。

その時、ルビオ国務長官が口を挟んだ。「それはつまり、それはでたらめということだね」と彼は言った。

ラトクリフ長官は、紛争における事態の予測不可能性を鑑みれば、政権転覆(体制転換)は起こり得るものの、達成可能な目標と考えるべきではないと付け加えた。

アゼルバイジャンから帰国したばかりのヴァンス副大統領をはじめ、数名がこれに加わり、政権交代(体制転換)の見通しについて強い懐疑的な見解を示した。

トランプ大統領は次にケイン大将に目を向けた。「大統領、どう考える?」。

ケイン大将は次のように答えた。「大統領閣下、これは私の経験上、イスラエルの常套手段です。彼らは誇張し、計画は必ずしも十分に練られてはおりません。彼らは私たちを必要としていることを知っており、だからこそ強引に売り込んでいると考えております」。

トランプ大統領はすぐにその評価を検討した。政権交代は「彼らの問題だ」と述べた。トランプ大統領が述べた「彼ら」がイスラエル国民を指しているのか、イラン国民を指しているのかは不明だった。しかし、肝心なのは、イランとの戦争に踏み切るかどうかのトランプの決断は、ネタニヤフ首相のプレゼンテーションの第三の部分と第四の部分が実現可能かどうかには左右されないということだった。

トランプは、第一の部分と第二の部分、すなわち最高指導者とイランの最高幹部の殺害、そしてイラン軍の解体という目標の達成に依然として強い関心を示していたようだ。

トランプが「壊し屋ケイン(Razin’ Caine)」と呼んだケイン統合参謀本部議長は、数年前にイスラム国は他の予想よりもはるかに早く壊滅させることができるとトランプに語り、強い印象を与えた。トランプはその信頼に応え、元空軍戦闘機パイロットだったケイン大将を大統領の最高軍事顧問に任命した。ケイン将軍は政治的な忠誠心を持つ人物ではなく、イランとの戦争には深刻な懸念を抱いていた。しかし、彼は大統領に自らの見解を伝える際には非常に慎重だった。

計画に関与していた少数の補佐官たちが数日間協議を重ねる中、ケイン大将はトランプ大統領たちに、イランに対する大規模作戦はミサイル迎撃ミサイルを含むアメリカの兵器備蓄を大幅に減少させるという、憂慮すべき軍事的評価を伝えた。これらの兵器は、ウクライナとイスラエルへの長年の支援によって既に備蓄が逼迫していた。ケイン大将は、これらの備蓄を迅速に補充する明確な道筋は見当たらないと述べた。

また、ホルムズ海峡の安全確保の極めて困難な点と、イランが海峡を封鎖するリスクについても指摘した。トランプ大統領は、イラン政権がそのような事態になる前に降伏するだろうという前提で、この可能性を軽視していた。大統領は、戦争は非常に短期間で終わると考えていたようで、6月のイラン核施設へのアメリカ軍爆撃に対するイランの反応が冷淡だったことが、その印象をさらに強めていた。

開戦に至るまでのケイン大将の役割は、軍事顧問と大統領の意思決定との間の典型的な緊張関係を如実に物語っている。統合参謀本部議長は立場を明確にせず、大統領に指示を与えるのは自分の役割ではなく、選択肢と潜在的なリスク、そして起こりうる二次的・三次的な影響を提示するのが自分の役割だと繰り返し主張したため、聞いている人の中には、まるで問題のあらゆる側面を同時に論じているように見える者もいた。

彼は常に「それで、どうなるのか?(And then what?)」と問いかけたが、トランプはしばしば、自分が聞きたいことしか聞いていないように見えた。

ケイン大将は、前任者のマーク・A・ミリー大将とはほぼあらゆる点で異なっていた。ミリー大将はトランプ政権初期にトランプと激しく対立し、大統領が危険または無謀な行動を

両者のやり取りに詳しいある人物は、トランプがケイン大将からの戦術的な助言と戦略的な助言を混同する癖があったと指摘した。具体的には、ケイン大将は作戦のある側面における困難について警告したかと思えば、その直後に、アメリカには安価な精密誘導爆弾が事実上無尽蔵にあり、制空権を確保すれば数週間にわたってイランを攻撃し続けることができると述べる、といった具合だった。

統合参謀本部議長にとって、これらは別々の見解だった。しかし、トランプは、2番目の見解が1番目の見解をほぼ確実に打ち消すと考えていたようだ。

審議中、統合参謀本部議長はイランとの戦争は恐ろしい考えだと大統領に直接伝えることはなかったが、ケイン大将の同僚の中には、まさにそう考えていたと確信する者もいた。

●タカ派のトランプ(Trump the Hawk

ネタニヤフ首相は、大統領補佐官の多くから不信感を抱かれていたが、首相の見解は、トランプ陣営の反介入主義者や、より広範な「アメリカ・ファースト」運動の支持者たちが認めたがる以上に、トランプ大統領の見解にずっと近かった。これは長年にわたり事実だった。

トランプ大統領が二期にわたって直面した外交上の課題の中で、イラン問題は特に異質なものだった。彼はイランを極めて危険な敵とみなし、イラン政権の戦争遂行能力や核兵器保有能力を阻害するためなら、大きなリスクを冒すことも厭わなかった。さらに、ネタニヤフ首相の主張は、トランプが32歳だった1979年に権力を掌握したイランの神権政治体制を解体したいというトランプの願望と合致していた。イランはそれ以来、アメリカにとって目の上のこぶのような存在だった。

現在、彼は聖職者による政権掌握から47年が経過した現在、イランで政権交代(体制転換)を成し遂げた最初の大統領となる可能性があった。通常は言及されないものの、常に背景には、イランがトランプ暗殺を企てていたというもう一つの動機があった。これは、アメリカではイランの国際テロ活動の推進力と見なされていたカセム・ソレイマニ司令官が2020年1月に暗殺されたことへの報復だった。

大統領に復帰したトランプ大統領は、アメリ軍の能力に対する自信をさらに強めていた。特に、1月3日にヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を邸宅から拉致した、特殊部隊による華々しい襲撃作戦は、大統領の自信を一層高めた。この作戦でアメリカ兵の死者は一人も出なかったが、これは大統領にとって米軍の比類なき能力を改めて証明する出来事となった。

トランプ政権の中で、イランに対する軍事作戦を最も強く主張したのはヘグセス国防長官だった。

一方、ルビオ国務長官は同僚たちに対し、より複雑な心境であることを示唆していた。イランが交渉による合意に応じるとは考えていなかったものの、全面戦争に踏み切るよりも、最大限の圧力をかけ続けることを望んでいた。しかし、ルビオ長官はトランプ大統領に作戦中止を説得しようとはせず、開戦後は政権の正当化について、確信を持って演説した。

ワイルズ大統領首席補佐官は、新たな海外紛争がもたらす影響について懸念を抱いていたものの、大規模な会議で軍事問題について積極的に発言することはあまりなく、むしろ補佐官たちが大統領に意見や懸念を伝えるよう促していた。ワイルズ補佐官は他の多くの問題では影響力を行使していたが、トランプ大統領や将軍らが集まる場では、一歩引いて傍観していた。ワイルズに近い関係者によると、軍事的な決定について大統領に懸念を表明するのは自分の役割ではないと考えていたという。そして、ケイン大将、ラトクリフ長官、ルビオ長官といった補佐官たちの専門知識こそ、大統領が耳を傾けるべき重要なものだと考えていた。

それでも、ワイルズは同僚に対し、アメリカが中東地域で再び戦争に巻き込まれることを懸念していると語っていた。イランへの攻撃は、中間選挙の数カ月前にガソリン価格の高騰を引き起こす可能性があり、その選挙はトランプ大統領の2期目の最後の2年間が、成果を上げる年になるのか、それとも連邦下院民主党からの召喚状を受ける年になるのかを左右する可能性がある。しかし最終的には、ワイルズは作戦に賛成した。

●懐疑論者ヴァンス(Vance the Skeptic

トランプの側近の中で、イランとの戦争の可能性を最も懸念し、それを阻止するために最も尽力したのは、副大統領のヴァンスだった。

ヴァンスは、まさに今真剣に検討されているような軍事的冒険主義(military adventurism)に反対することで政治家としてのキャリアを築いてきた。彼はイランとの戦争を「莫大な資源の浪費(a huge distraction of resources)」であり「莫大な費用がかかる(massively expensive.)」と述べていた。

しかし、彼は全面的にハト派だった訳ではない。2026年1月、トランプがイランに対しデモ参加者の殺害を止めるように公的に警告し、支援を約束した際、ヴァンスは非公式に大統領にレッドラインを厳格に執行するよう促していた。しかし、副大統領が主張したのは、限定的な懲罰的攻撃であり、2017年にトランプがシリアの民間人に対する化学兵器使用を理由にミサイル攻撃を行ったような形態に近いものだった。

ヴァンス副大統領は、イランとの政権転覆戦争は破滅的な結果を招くと考えていた。彼の望みは、一切の攻撃を行わないことだった。しかし、トランプが何らかの形で介入する可能性が高いことを承知していたヴァンスは、より限定的な行動へと舵を切ろうとした。その後、大統領が大規模な作戦に踏み切ることが確実になると、ヴァンスは、目的を迅速に達成するためには圧倒的な武力行使が必要だと主張した。

ヴァンスは同僚たちの前で、イランとの戦争は地域的な混乱と計り知れない数の犠牲者をもたらす可能性があるとトランプに警告した。また、トランプの政治連合を崩壊させ、新たな戦争は起こさないという約束を信じていた多くの有権者から裏切りとみなされるだろうとも述べた。

ヴァンス副大統領は他にも懸念を表明した。副大統領として、彼はアメリカの軍需品問題の深刻さを認識していた。生き残りを強く望む政権との戦争は、アメリカを今後数年間、紛争を戦う上で極めて不利な立場に追い込む可能性がある。

副大統領は側近に対し、政権の存続がかかっている状況でイランがどのような報復行動に出るかを、どれほど軍事的見識があっても正確に予測することはできないと語った。戦争は容易に予測不可能な方向へ進む可能性がある。さらに、彼は戦争後に平和なイランを築く可能性は低いと考えていた。

そして、おそらく最大の懸念は、ホルムズ海峡におけるイランの優位性だった。膨大な量の石油と天然ガスを輸送するこの狭い海峡が封鎖されれば、ガソリン価格の高騰をはじめとするアメリカ国内への影響は甚大になるだろう。

右派の有力な介入懐疑論者として台頭したコメンテーターのタッカー・カールソンは、前年に何度かホワイトハウスを訪れ、イランとの戦争はトランプ大統領の政権を崩壊させると警告していた。トランプ大統領は、開戦の数週間前、長年の友人であるカールソンに対して、電話で安心させようとした。「心配しているのは分かっているが大丈夫だ(I know you’re worried about it, but it’s going to be OK)」と大統領は言った。カールソンがどうしてそう言えるのかと尋ねると、「いつもそうだったからだ(Because it always is)」とトランプ大統領は答えた。

2月末、アメリカとイスラエルは、作戦のスケジュールを大幅に前倒しする新たな情報について協議した。イランの最高指導者が、他の政権幹部らと白昼堂々と地上で会合を開くという情報だった。これは、イラン指導部の中枢を攻撃するまたとない機会であり、二度とないかもしれない標的だった。

トランプ大統領はイランに対し、核兵器開発への道を阻む合意に至るための新たな機会を与えた。この外交努力は、アメリカが中東地域への軍事資産の移転を進めるための時間的猶予も与えた。

大統領は数週間前に事実上決断を下していたと複数の側近は述べている。しかし、具体的な時期はまだ決めていなかった。ネタニヤフ首相はトランプ大統領に迅速な行動を促した。

同じ週、クシュナーとウィトコフは、イラン当局者との最新の協議後、ジュネーブから電話をかけた。オマーンとスイスで行われた3回の交渉で、両者はイランの合意意欲を探っていた。ある時点で、両者はイランに対し、核開発計画期間中、無償で核燃料を提供すると申し出た。これは、テヘランがウラン濃縮に固執する理由が、本当に民生用エネルギーのためなのか、それとも核兵器製造能力の維持のためなのかを見極めるための試みだった。

イラン側はこの申し出を拒否し、自国の尊厳に対する攻撃だと非難した。

クシュナーとウィトコフは大統領に状況を説明した。交渉は可能だろうが、数カ月はかかるだろうと彼らは述べた。トランプ大統領が、彼らが自分の目を見て問題を解決できると言えるかと問うているのなら、そこに至るまでには相当な努力が必要になるだろうとクシュナーは告げた。それはイラン側が駆け引きをしているからだった。

●「やらなければならないと思う」(‘I Think We Need to Do It’

2月26日木曜日の午後5時頃、最終のシチュエーションルーム会議が始まった。この時点で、会議室にいる全員の立場は明確になっていた。これまでの会議で全てが議論され、全員が互いの立場を把握していた。議論は約1時間半続いた。

トランプ大統領はいつものようにテーブルの最上座に座った。右隣には副大統領ヴァンス、その隣にはワイルズ補佐官、その隣にはラトクリフ長官、ホワイトハウス法律顧問のデイヴィッド・ウォリントン、そしてホワイトハウス広報部長スティーヴン・チャンが座っていた。チャンの向かい側にはホワイトハウス報道官のカロライン・リーヴィットが座り、その右隣にはケイン大将、続いてヘグセス長官、そしてルビオ長官が座っていた。

戦争計画グループは極秘裏に進められ、世界石油市場史上最大規模の供給途絶を管理する必要のある主要幹部2名、スコット・ベッセント財務長官とエネルギー長官クリス・ライト、そして国家情報長官ドゥルシー・ギャバードも除外されていた。

大統領は会議の冒頭で、「さて、現状はどうなっているのか?(OK, what have we got?)」と問いかけた。

ヘグセス長官とケイン大将は攻撃の手順を説明した。その後、トランプ大統領は全員の意見を聞きたいと述べた。

この作戦の前提そのものに反対していたヴァンスは、大統領に対し、「これは悪い考えだと思いますが、もしあなたが実行したいのであれば支持します」と述べた。

ワイルズ補佐官はトランプ大統領に対し、アメリカの国家安全保障のために必要だと感じるなら実行すべきだと述べた。

ラトクリフ長官は実行の是非については意見を述べなかったが、イラン指導部がテヘランの最高指導者の邸宅で収集しようとしている驚くべき新たな情報について説明した。CIA長官は大統領に対し、政権交代は言葉の定義次第であるが、可能だと述べ、「最高指導者の殺害だけを意味するなら、おそらく実行できるだろう」と語った。

ホワイトハウス法律顧問ウォリントンは、質問を受けた際、この計画はアメリカ政府当局者によって立案され、大統領に提示された経緯から見て、法的に許容される選択肢であると述べた。個人的な意見は述べなかったが、大統領から意見を求められると、海兵隊の退役軍人として、数年前にイランによって殺害されたアメリカ軍兵士を知っていたと語った。この問題は、彼にとって非常に個人的なものだった。ウォリントンは大統領に対し、イスラエルが計画を強行するのであれば、アメリカも同様に行動すべきだと述べた。

チャン部長は、予想される広報上の影響について説明した。トランプは、さらなる戦争に反対して大統領選に立候補した。国民は海外での紛争を望んで投票したわけではない。この計画は、6月のイラン爆撃作戦後に政権が述べてきたこと全てに反するものだった。イランの核施設は完全に破壊されたと8カ月月間主張し続けてきたことを、どのように説明するのか。チャンは賛成も反対も表明しなかったが、トランプがどのような決定を下そうとも、それは正しいものになるだろうと述べた。

リーヴィットは大統領に対し、これは大統領の決定であり、報道ティームは最善を尽くして対応すると伝えた。

ヘグセス長官は限定的な立場を取った。いずれイランに対処しなければならないのだから、今やってしまえば良い、というものだ。彼は技術的な評価として、与えられた兵力で一定期間内に作戦を遂行できると述べた。

ケイン大将は冷静に、作戦のリスクと、それが弾薬の枯渇にどのような影響を与えるかを説明した。彼は意見を述べず、トランプ大統領が作戦を命じれば軍は実行する、という立場を示した。大統領の最高軍事指導者2人は、作戦の展開と、イランの軍事力を低下させるアメリカの能力について概説した。

ルビオ長官は発言の番になると、より明確な見解を示し、大統領に次のように述べた。「もし私たちの目標が政権転覆(体制転換)や反乱であるならば、作戦は行うべきではないです。しかし、目標がイランのミサイル計画を破壊することであるならば、それは達成可能な目標です」。

誰もが大統領の直感(instincts)に従った。彼らは大統領が大胆な決断を下し、想像を絶するリスクを負い、そして何とか成功を収めてきたのを見てきた。その時、誰も大統領を阻むことはできなかった。

「私たちは作戦を実行する必要があると思う(I think we need to do it)」と大統領は部屋にいる人々に告げた。彼は、イランが核兵器を保有できないようにしなければならないこと、そしてイランがイスラエルや中東地域全体にミサイルを発射できないようにしなければならないことを確実にしなければならないと述べた。

ケイン大将はトランプ大統領に、まだ時間があるので、翌日の午後4時までに承認を与えればよいと伝えた。

翌日の午後、エアフォースワン機内で、ケイン大将に対して、期限の2分前、トランプは次のように命令を送った。「エピック・フューリー(壮絶な怒り)作戦を承認する。中止はない。幸運を祈る」

※ジョナサン・スワン:ニューヨーク・タイムズ紙ホワイトナイト特派員。ドナルド・J・トランプ政権を担当。シグナル・アカウント:@jonathan.941

マギー・ハーバーマン:ニューヨーク・タイムズ紙ホワイトナイト特派員。トランプ大統領を担当。

※ジョナサン・スワンとマギー・ハーバーマンはニューヨーク・タイムズ紙ホワイトナイト特派員であり、近刊の『政権転覆(体制転換):ドナルド・トランプ皇帝型大統領の内幕(Regime Change: Inside the Imperial Presidency of Donald Trump)』の共著者。この記事は、近刊のために取材した内容に基づいている。

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緊迫した電話会談でJD・ヴァンス副大統領はイラン体制転換の可能性を過大評価しているとベンヤミン・ネタニヤフ首相を批判した:報道(In tense call, Vance knocked PM for overselling likelihood of Iran regime change — report

-アメリカ政府当局者たちは、海外での軍事介入に長年懐疑的であり、イランとの停戦交渉で主導的な役割を担う予定のヴァンス副大統領に対し、「イスラエルによる工作」が行われたと疑っていると報じられている。

『タイム・オブ・イスラエル』紙スタッフ

2026年3月27日

『タイム・オブ・イスラエル』紙

https://www.timesofisrael.com/in-tense-call-vance-knocked-pm-for-overselling-iran-regime-change-likelihood-report/

JD・ヴァンス米副大統領は月曜日の電話会談で、イランにおけるアメリカ・イスラエル共同爆撃作戦がイラン政権を転覆させる可能性を過大に強調したとして、ベンヤミン・ネタニヤフ首相を厳しく批判したと、米情報筋とイスラエル情報筋の話として『アクシオス』誌が金曜日に報じた。

「開戦前、ネタニヤフ首相は政権交代(体制転換)が実際よりもはるかに容易だとトランプ大統領に説得していた。ヴァンス副大統領はそうした発言の一部について冷静に見抜いていた」とネタニヤフ首相の愛称を用いたアメリカ政府の情報筋は語った。

アメリカ政府当局者たちはまた、イスラエル側の一部関係者がヴァンス副大統領のタカ派姿勢が不十分だと考えており、イスラエル側は戦争終結に向けた取り組みで主導的な役割を担う副大統領の立場を弱体化させようとしていると考えている。

アクシオス誌が引用したある高官は、「イランがヴァンス副大統領と合意できなければ、合意は得られない。彼こそがイランにとって最良の相手だ」と述べた。

しかし、アクシオス誌は、ヴァンス副大統領がイランとの合意を急いでいるという見方に反論する政権関係者の発言も引用している。「これはイスラエルによるヴァンス副大統領に対する策略だ」とイランが副大統領との交渉を望んでいるとの報道を受け、この関係者は述べた。

ヴァンス副大統領の顧問らはまた、イスラエルの批判者たちが、ヴァンス副大統領がヨルダン川西岸地区におけるパレスティナ人に対するイスラエル入植者たちによる暴力の激化をイスラエルが抑制できていないとして、ネタニヤフ首相に電話で怒鳴りつけたとするヘブライ語メディアの報道を捏造したのではないかと疑っている。アメリカとイスラエルの政府当局はこの報道を否定している。

イラク戦争の退役軍人であるヴァンス副大統領は、特に中東地域における無期限のアメリカ軍介入に長年懐疑的な姿勢を示してきた。イランとの戦争前、ヴァンスはトランプ米大統領政権の中でも最も懐疑的な人物の1人であり、戦争の期間、目的、そしてアメリカの軍需物資への影響について懸念を表明していたと、アクシオス誌が引用したアメリカ政府情報筋は伝えている。

しかし、ヴァンスは、イランが反体制派デモ隊を弾圧してから約6週間後の2月28日にアメリカとイスラエルがイランに対して開始した爆撃作戦を支持する姿勢を、トランプ政権内の他のメンバーと公に一致させている。

以前の報道によると、イスラエルの情報機関モサドの長官は、作戦が成功すれば、モサドとCIAが政権転覆(体制転換)につながる蜂起を扇動できると戦争前に評価していたという。

『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、ネタニヤフ首相はイランとの戦争に先立ち、ホワイトハウスとモサドの計画について協議したが、計画が実現せず、トランプ大統領が「いつでも」戦争を終結させる可能性があることに不満を抱いているという。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体』(ビジネス社、2025年11月)では、新・軍産複合体(パランティア社、スペースX社、アンドゥリル社)について詳しく書いた。現在の第二次ドナルド・トランプ政権における重要人物である、イーロン・マスクとJD・ヴァンス、パランティア社の創業者であるピーター・ティールの関係についても詳しく分析した。

 軍産複合体という言葉は1961年にドワイト・アイゼンハワー大統領が退任する際の演説の中で使った言葉である。政府と軍、企業が緊密な関係を築いて、お互いに巨額な利益を生み出す関係である。そのためには緊密な人脈が重要になってくる。私は、これまでの軍複合体の形成過程について分析を行い、20世紀の財界と政界の重要人物たちが協力してきたことを明らかにした。

 アメリカ空軍は、無名に近かった二つのドローン開発企業、カリフォルニア州コスタメサのアンドゥリル・インダストリーズとサンディエゴのジェネラル・アトミックスを選び、協調型戦闘機(CCA)のプロトタイプ製造を発注した。CCAはパイロット搭乗機と連携して高リスク任務を担う次世代無人機と位置付けられ、空軍は今後十年で少なくとも千機、1機能あたりの単価約三千万ドルを調達する計画だが、この重大なプロジェクトが大手メディアでほとんど取り上げられなかった一方で、両社の受注は従来の巨大防衛企業三社(ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン)を破り、既存の軍産複合体(military-industrial complexMIC)の支配構造を揺るがす可能性を示した。

新・軍産複合体についても同じ構図・図式となる。ピーター・ティールやイーロン・マスク、パルマー・ラッキーとJD・ヴァンス、更にアメリカ軍の文民幹部たちの緊密な協力関係があってこそ、新・軍産複合体は形成され、発展していく。現在は、これまでの巨大な軍事産業を中心とする古い軍産複合体が力を保持しているが、新・軍産複合体が追い上げている状況だ。アメリカ政治の大きな動きについては、これから更に研究・分析を深化させていきたい。
(貼り付けはじめ)
ペンタゴン内部の秘密戦争がトランプ世界を分裂させる可能性(A Secret War Inside the Pentagon Could Divide the Trump Universe

-新たな軍産複合体が誕生しつつあり、その目標と利益追求者は既存のものとは大きく異なる可能性がある。

マイケル・クレア筆

2025年2月12日

『インクスティック・メディア』誌

https://inkstickmedia.com/a-secret-war-inside-the-pentagon-could-divide-the-trump-universe/
昨年4月、メディアの注目をほぼ浴びない中で、アメリカ空軍は無名のドローンメーカー2社、カリフォルニア州コスタメサのアンドゥリル・・インダストリーズとサンディエゴのジェネラル・アトミックス社を選定し、提案中の協調型戦闘機(Collaborative Combat AircraftCCA)のプロトタイプ版を製造させると発表した。CCAは将来の無人機で、パイロット搭乗機と共に高リスク戦闘任務に投入されることが想定されている。アメリカ空軍が今後10年間に、1機あたり約3000万ドル、少なくとも1000機の CCA を調達する予定であり、これは国防総省にとって最も費用のかかる新規プロジェクトの1つであることを考えると、この報道の少なさは驚くべきことだった。しかし、メディアが注目しなかったことはそれだけではない。CCA の契約を獲得したアンドゥリルとジェネラル・アトミックスは、アメリカ最大かつ最も強力な防衛関連企業3社、ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンを打ち負かし、既存の軍産複合体(military-industrial complexMIC)の継続的な支配に深刻な脅威を与えている。

数十年にわたり、これら3社のような少数の巨大企業が国防総省の武器契約の大半を獲得し、毎年同じ航空機、艦船、ミサイルを生産しながら、株主たちに巨額の利益をもたらしてきた。しかし、シリコンヴァレーで誕生した、あるいはその破壊的技術革新(イノヴェイション)精神を取り入れた様々な新興企業が、収益性の高い国防総省の契約獲得をめぐり、既存企業に挑戦し始めている。この過程で、主流メディアではほとんど報じられていないが、画期的な動きが進行中だ。新たな軍産複合体が誕生しつつあり、既存のものとは全く異なる目標と利益享受者を持つ可能性がある。旧来の軍産複合体と新軍産複合体の間の避けられない戦いがどう展開するかは予測できないが、1つ確かなことがある。今後数年間で、それらが重大な政治的混乱(political turbulence)を引き起こすことは間違いない。

「軍産複合体」という概念、巨大防衛企業と連邦議会・軍部の有力者たちを結びつける存在は、1961年1月17日、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領が連邦議会と国民に向けた退任演説で初めて提唱した。冷戦下のこの時代、強力な外国の脅威に対応するため、アイゼンハワー大統領は「私たちは巨大な恒久的な軍需産業を構築せざるを得なかった」と指摘した。しかし同時に、この言葉を初めて用いて、次のように続けた。「私たちは、軍産複合体が意図的か否かを問わず、不当な影響力を獲得することに対して警戒しなければならない。誤った権力の危険な台頭の可能性は存在し、今後も続くだろう」。

それ以降、軍産複合体の権力拡大をめぐる議論はアメリカ政界を揺るがし続けてきた。数多くの政治家や著名な公人たちは、ヴェトナム、カンボジア、ラオス、イラク、アフガニスタンなどにおける一連の破滅的な海外戦争へのアメリカの介入を、軍産複合体が政策決定に及ぼす不当な影響の結果として描いてきた。しかし、こうした主張や不満が、国防総省の兵器調達に対する軍産複合体の鉄壁の支配を緩めることに成功したことは一度もない。今年度の防衛予算は約8500億ドルと過去最高を記録し、うち1432億ドルが研究開発費、さらに1675億ドルが兵器調達費に充てられる。この3110億ドルの大半は巨大防衛企業に流れ込み、地球上の他の全ての国の防衛費総額を上回っている。

時間の経過とともに、数十億ドルの国防総省契約をめぐる競争は、軍産複合体のエコシステムを淘汰し、その結果、少数の大手産業巨人が支配的な地位を築くこととなった。2024年には、ロッキード・マーティン(防衛関連収益647億米ドル)、RTX(旧レイセオン、406億米ドル)、ノースロップ・グラマン(352億米ドル)、ゼネラル・ダイナミクス(337億米ドル)、ボーイング(327億米ドル)の5社だけが、国防総省の契約の大部分を占めた。(アンドゥリル社とジェネラル・アトミックス社は、契約獲得額トップ100社のリストにさえ登場していない)。

通常、これらの企業は、国防総省が毎年購入を続けている主要な兵器システムの主要、つまり「プライム」契約業者(“prime,” contractors)だ。たとえば、ロッキード・マーティンは、アメリカ空軍の最優先事項であるF-35ステルス戦闘機(運用では明らかに期待外れであることがしばしば証明されている航空機)のプライム契約業者だ。ノースロップ・グラマンはB21ステルス爆撃機を製造している。ボーイングはF-15EX戦闘機を生産し、ゼネラル・ダイナミクスは海軍のロサンゼルス級攻撃型潜水艦を製造している。このような「高額商品(Big-ticket)」は通常、長年にわたって大量に購入されるため、生産者は安定した利益を確保できる。こうしたシステムの初期購入が完了に近づくと、生産者は通常、同じ兵器の新ヴァージョンやアップグレイド版を開発すると同時に、ワシントンで強力なロビー活動を行い、連邦議会に新設計の資金提供を説得する。

長年にわたり、「ナショナル・プライオリティーズ・プロジェクト」や「フレンズ・コミッティ・オン・ナショナル・レギスレーション」といった非政府組織は、軍産複合体のロビー活動に抵抗し、軍事費を削減するよう連邦議員たちを勇敢に説得しようと試みてきたが、目立った成果は得られていない。しかし今、シリコンヴァレーのスタートアップ文化という新たな勢力が参入し、軍産複合体の構図は突如として劇的に変化しつつある。

昨年4月、軍産複合体の大手3社を凌駕し、協働型戦闘機の試作機製造契約を獲得した、目立たない2社のうちの1社であるアンドゥリル・インダストリーズについて考えてみよう。アンドゥリル(JRR・トールキンの『指輪物語』でアラゴルンが所持する剣にちなんで名付けられた)は、仮想現実(virtual-reality)ヘッドセットの設計者であるパルマー・ラッキーによって2017年に設立され、人工知能(AI)を新型兵器システムに組み込むことを目指している。この取り組みは、ファウンダーズ・ファンドのピーター・ティールや、防衛関連のスタートアップ企業パランティア(これも『ロード・オブ・ザ・リング』に由来する名前)の代表者など、シリコンヴァレーの著名な投資家たちの支援を受けた。

ラッキーとその仲間たちは当初から、従来の防衛関連企業を排除し、ハイテク新興企業のためのスペースを確保しようと努めてきた。この2社をはじめとする新興テクノロジー企業は、長年にわたり、多数の弁護士を擁し、政府の書類処理に精通した巨大防衛関連企業に有利になるように作成されていたため、国防総省との主要契約から締め出されることがしばしばあった。2016年には、パランティアは米陸軍が大規模なデータ処理契約の選定を拒否したとして訴訟を起こし、後に勝訴した。これにより、将来的に国防総省から契約を獲得する道が開かれた。

アンドゥリルは、その積極的な法的姿勢に加え、創業者であるパルマー・ラッキーの率直な意見表明によっても名声を得ている。他の企業幹部が国防総省の活動について議論する際には通常、言葉遣いを控えるのに対し、ラッキーは、将来の紛争で中国とロシアを圧倒するために必要だと考える先進技術への投資を犠牲にして、伝統的な防衛関連企業との協力を国防総省が根強く好んでいることを公然と批判した。

ラッキーは、そのような技術は民間技術産業でしか入手できないと主張した。「大手防衛関連請負業者は愛国心旺盛な人材を抱えているが、必要な技術を開発するためのソフトウェアの専門知識やビジネスモデルは持ち合わせていない」と、ラッキーとアンドゥリル社の幹部たちは2022年のミッションドキュメントで次のように主張した。「これらの企業は仕事が遅いが、優秀な[ソフトウェア]エンジニアはスピード重視だ。そして、敵よりも速く開発できるソフトウェアエンジニアの才能は、大手防衛関連企業ではなく、民間部門に存在するのだ」。

ラッキーは、軍の近代化(military modernization )の障害を克服するには、政府が契約規則を緩和し、防衛関連のスタートアップ企業やソフトウェア企業が国防総省と取引しやすくする必要があるとして次のように主張した。「スピードのある防衛企業が必要だ。それは単に願うだけでは実現しない。はるかに寛容な国防総省の政策によって、企業が動くようインセンティヴが与えられる場合にのみ実現する」。

こうした議論やティールのような重要人物の影響によって、アンドゥリル社は軍や国土安全保障省から小規模ながらも戦略的な契約を獲得し始めた。2019年には、日本と米国の基地にAIを活用した境界監視システムを設置する海兵隊の小規模契約を獲得した。1年後には、アメリカ・メキシコ国境に監視塔を建設する5年間2500万ドルの契約を税関・国境警備局Customs and Border ProtectionCBP)から獲得した。2020年9月には、同国境沿いにさらに監視塔を建設する3600万ドルの契約も税関・国境警備局から獲得した。

その後、より大きな契約が次々と舞い込むようになった。2023年2月には、国防総省がウクライナ軍への納入用にアンドゥリル社のアルティウス600監視・特攻ドローンの購入を開始し、昨年9月には陸軍が戦場監視作戦用にGhost-Xドローンを購入すると発表した。アンドゥリル社は現在、小型の偵察・攻撃ドローンの一斉発射を目的とした中型ドローン「エンタープライズ・テスト・ビークル」の試作機を開発するために空軍に選ばれた4社の1社でもある。

アンドゥリル社は国防総省から大型契約を獲得し、その成功は防衛関連スタートアップ企業の成長期待から利益を得る機会を模索する富裕層投資家の関心を集めている。2020年7月には、ティールのファウンダーズ・ファンドとシリコンヴァレーの著名投資家アンドリーセン・ホロウィッツから新たに2億ドルの投資を受け、企業価値は20億ドル近くにまで上昇した。1年後には、これらのヴェンチャーキャピタル企業やその他のヴェンチャーキャピタル企業からさらに4億5000万ドルを調達し、推定企業価値は45億ドル(2020年の2倍)に達した。それ以来、アンドゥリル社への資金流入は拡大しており、民間投資家による防衛関連スタートアップ企業の台頭を後押しし、その成長が現実のものとなった暁には利益を得ようとする動きが勢いを増している。

アンドゥリル社は、大型防衛契約の獲得と資本注入に成功しただけでなく、国防総省の多くの高官に対し、国防スタートアップ企業やテクノロジー企業のための余裕を創出するために、国防総省の契約業務改革の必要性を納得させることにも成功した。2023年8月28日、当時国防総省で2番目に高官だったキャスリーン・ヒックス国防副長官は、軍への先進兵器の配備を迅速化することを目的とした「レプリケーター」構想(the “Replicator” initiative,)の開始を発表した。

「(私たちの)予算編成と官僚的な手続きは遅く、煩雑で、複雑怪奇だ」とヒックスは認めた。こうした障害を克服するため、レプリケーター構想は煩雑な手続きを簡素化し、スタートアップ企業に直接契約を交付することで、最先端兵器の迅速な開発と供給を実現すると彼女は示唆した。「私たちの目標は技術革新の種を蒔き、火をつけ、燃え上がらせることだ」とヒックスは宣言した。

ヒックスが示唆したように、レプリケーター契約は確かに連続したバッチ、つまり「トランシェ」で交付される。昨年5月に発表された最初のトランシェには、エアロバイロンメント社製のスイッチブレード600カミカゼドローン(標的に衝突し、接触すると爆発することからこの名がつけられている)が含まれていた。アンドゥリル社は、11月13日に発表された第2回の資金提供で3つの勝利を収めた。国防総省によると、この資金提供には、陸軍のゴーストX監視ドローン購入、海兵隊のアルティウス600特攻ドローン取得、そして空軍のエンタープライズ・テスト・ビークル開発への資金が含まれており、アンドゥリル社は参加ヴェンダー4社のうちの1社である。

おそらく同様に重要なのは、ヒックスがパーマー・ラッキーの示した国防総省の調達改革の青写真を支持したことだろう。「レプリケーター構想は、技術革新への障壁を明らかに低減し、戦闘員に迅速に能力を提供している」とヒックスは11月に断言した。「私たちは従来型および非従来型の防衛・テクノロジー企業を含む幅広い企業に機会を創出している・・・そして、それを繰り返し実行できる能力を構築している」。

*
キャスリーン・ヒックス国防副長官は、ドナルド・トランプがホワイトハウスに復帰した2025年1月20日、多くの高官たちと同様に国防副長官を辞任した。新政権が軍事調達問題にどう取り組むかはまだ不明だが、イーロン・マスク氏やJD・ヴァンス副大統領など、トランプ政権の高官の多くはシリコンヴァレーとの繋がりが強く、レプリケーター構想のような政策を支持する可能性が高い。

先日国防長官に指名されたFOXニューズの元司会者ピート・ヘグゼスは兵器開発の経歴がなく、この件についてほとんど発言していない。しかし、トランプが副長官(そしてヒックス氏の後任)に選んだのは、サーベラス・キャピタル・マネジメントの最高投資責任者(CIO)として軍事スタートアップ企業ストラトローンチを買収した億万長者の投資家スティーヴン・A・ファインバーグだ。これは、彼がレプリケーター構想のようなプログラムの拡大を支持する可能性を示唆している。

ある意味、トランプ政権の今回の動きは、国防総省に関して言えば、これまでのワシントンのパターンに当てはまると言えるだろう。大統領と連邦議会の共和党支持者たちは、国防予算が既に過去最高水準に達しているにもかかわらず、間違いなく国防費の大幅な増額を推し進めるだろう。こうした動きは、従来の元請け企業であれ、シリコンヴェレーの新興企業であれ、あらゆる兵器メーカーに利益をもたらすだろう。しかし、トランプと共和党が支持する減税やその他の高額な対策を賄うために国防費が現状水準に維持されれば、軍産複合体の2つの形態の間で激しい競争が再び勃発する可能性は容易に考えられる。そうなれば、トランプの側近たちの間で分裂が起こり、旧軍産複合体支持者と新軍産複合体支持者が対立する事態に発展する可能性がある。

一般的に、選挙資金は古くからの軍産複合体企業からの献金に依存している共和党議員の大半は、このような競争では主要な元請け企業を支持せざるを得ない。しかし、トランプの主要な側近である JD・ヴァンスとイーロン・マスクの2人は、彼に反対の方向へと働きかける可能性がある。ピーター・ティールやその他のテクノロジー業界の大富豪たちによる強力なロビー活動の結果、トランプの副大統領候補となったとされる、シリコンヴァレーの元幹部であるヴァンスは、かつての同盟者たちから、国防総省との契約をアンドゥリル、パランティア、および関連企業にもっと振り向けるよう促される可能性が高い。ヴァンスのプライヴェート・ヴェンチャー・ファンドであるナリヤ・キャピタル(そうだ、これも『指輪物語』に由来する名前だ!)が、アンドゥリルやその他の軍事・宇宙関連ヴェンチャー企業に投資していることから、それはまったく驚くことではないだろう。

トランプによって、まだ設立されていない政府効率化省の責任者に指名されたイーロン・マスクは、アンドゥリルのパーマー・ラッキーと同様に、自身の企業であるスペースXの契約を獲得するために国防総省と争い、国防総省の伝統的なやり方に深い軽蔑を表明してきた。特に、AI制御のドローンの能力が高まっているにもかかわらず、高価で一般的に性能の悪いロッキード社製のF-35ジェット戦闘機を酷評している。その進歩にもかかわらず、彼が現在所有するソーシャルメディアプラットフォーム「X」に「一部の馬鹿たちは、F-35のような有人戦闘機を作り続けている」と投稿している。続く投稿で彼は「いずれにせよ、有人戦闘機はドローンの時代には時代遅れだ」と付け加えた。

F-35に対する彼の批判はアメリカ空軍を怒らせ、ロッキードの株価は3%以上下落した。「私たちは、世界最先端の航空機であるF-35と、その比類なき性能を、政府および業界パートナーと協力して提供することに全力を尽くしています」と、ロッキードはマスクのツイートに対して声明を発表した。一方、国防総省では、フランク・ケンドール空軍長官が次のように述べている。「私は、エンジニアとしてのイーロン・マスクを非常に尊敬している。彼は戦闘員ではなく、このような大々的な発表を行う前に、この事業についてもう少し学ぶ必要があると思う」と述べた。さらに、「F35が置き換えられることはないと私は考えている。購入を継続し、アップグレイドも続けるべきだと思う」と付け加えた。

トランプ大統領は、F-35や国防総省予算のその他の高額項目について、まだ立場を明らかにしていない。トランプ大統領は、この航空機の購入を遅らせ、他のプロジェクトへの投資拡大を求めるかもしれない(あるいは求めないかもしれない)。それでも、伝統的な防衛請負業者が製造する高価な有人兵器と、アンドゥリル、ジェネラル・アトミックス、エアロバイロンメントなどが製造するより手頃な無人システムとの間にある、マスクが露呈した分断は、新たな軍産複合体が富と権力を増大させるにつれ、今後数年間で確実に拡大していくだろう。旧来の軍産複合体が自らの優位性に対するこの脅威にどう対処するかは未知数だが、数十億ドル規模の兵器メーカーが抵抗なく退くことはまずないだろう。そしてその対立は、トランプ世界を分断することになるだろう。

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『トランプの電撃作戦』
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 古村治彦です。

 スティーヴン・M・ウォルトによる以下の論稿は2025年7月に発表された論稿であるが、現状を理解する上で重要な内容となっている。ここで重要なのは、政治的力、政治的な魅力と政策立案・遂行を分けて考えている点だ。私はこのことが出来ていなかった。第二次ドナルド・トランプ政権に持つ違和感を言語化できていなかったが、この政治的な力と政策立案・遂行を分けることで、私の抱える違和感を言語化できるように思う。

トランプは生粋の政治家ではなく、財界人としても主流から外れたアウトサイダーだ。そうした人物が既存の政治を破壊するためにワシントンに乗り込んだ。彼の個人的な魅力で大きな政治力を持った。しかし、政策立案・遂行は彼一人ではできない。周囲に人材を配置しなければならない。第二次政権の特徴は、イスラエルとの関係が深い人物が揃ったことだ。国家情報長官であるトゥルシー・ギャバードは民主党所属の連邦下院議員時代から、非主流派であり、イランやロシアとの交渉を主張し続けてきた。ギャバード長官以外は親イスラエル派であり、今回のイラン攻撃を推進した。トランプは政治的な力を持つが、政策立案・遂行の力を持たず、結果として、政策の失敗をしてしまうことになった。更に言えば、トランプに周辺に配置された人物たちはワシントンの既存政治、エスタブリッシュメントの息のかかった人物たちであり、彼らによって、トランプ政治が変容させられたということが考えられる。

 トランプが政策立案・遂行を任せる人物の選定に失敗したとも言えるだろう。しかし、選定の過程で述べたことと実際に政権発足後に実行することに乖離がある場合、つまり、嘘をついた、もしくは態度を変化させたと言うことになる。

 私がここで重要だと考えているのは、JD・ヴァンス副大統領の存在である。第二次トランプ政権が大統領選挙期間の公約をことごとく破っている状況で、ヴァンスは非常に苦心してトランプ政権内でバランスを取りながら、選挙期間中の公約を守る、もしくは守る姿勢を見せている。トランプが州に騙されて搦(から)めとられている様子も見ている。そうした中で、彼がトランプの後継者として、トランプの失敗を学んでいると私は見ている。政治力を持ちながら、政策立案・遂行に失敗するのは、自分を利用しようとして集まる、もしくは集められる人物たちの影響が大きいということを学んでいるだろう。

 トランプもまた騙され、利用されたということを考えると、ワシントンの既存の政治、エスタブリッシュメントたちの力は大きく、簡単に打ち破ることが出来ないということが認識される。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプが逃した好機は積み上がっている(Trump’s Missed Opportunities Are Piling Up

-トランプ政権にはアメリカをより良い方向に変えるという前例のない好機があった。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年7月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/07/29/trumps-missed-opportunities-are-piling-up/

好むと好まざるとにかかわらず、ドナルド・トランプ米大統領は、この10年近くにわたり、アメリカ政界で最も重要な人物であり続けている。今や、私たちは彼を評価する十分な時間があり、彼について2つのことが明白になっている。第一に、トランプの政治的魅力は当初から過小評価されていたこと、そして彼は時を経るごとに、より有能な政治家へと成長してきたことだ。度重なる嘘、公約違反、重罪判決、性犯罪、そして自分の望みを阻むあらゆる規範を容赦なく破壊する姿勢にもかかわらず、彼は共和党を自らの理想とする姿へと変貌させ、最初の任期の惨憺たる実績にもかかわらず、2024年の再選を果たした。彼は今、アメリカ史上最も過激な政治変革を試みている。権威主義的な政権掌握(an authoritarian takeover)は着々と進んでおり、成功する可能性が高い。

彼について分かったもう一つのことは、彼が政策立案者として極めて無能だということだ。無知、衝動性、そして能力よりも忠誠心を優先する傾向が相まって、彼は幾度となく愚かな決断を下してきた。彼は権力を集中させ、私腹を肥やし、弱者を威圧することには長けているが、アメリカ全体に利益をもたらす建設的な政策を立案・実行する能力には長けていないことが明らかになった。

政治的手腕(political adroitness)と政策立案能力の欠如(policymaking ineptitude)の組み合わせは、まさに悲劇(tragedy)のようになっている。なぜなら、トランプはそのカリスマ性と有利な立場(共和党が連邦上下両院を支配し、従順とは言わないまでも、トランプに理解を示す最高裁判所が存在する)を活かせば、近年の大統領が国家の深刻な問題に取り組むことを困難にしてきた膠着状態と機能不全(the logjams and dysfunction)を打破できたはずだからだ。もしトランプがこの機会を建設的に、そして異なる政策のために活用していれば、「アメリカを再び偉大にする(make America great again)」ために大きく貢献できたかもしれないし、ひいては彼が長年主張してきた「アメリカ史上最も偉大な大統領の一人(one of the country’s greatest presidents)」という称号にふさわしい人物になれたかもしれない。

しかし、イギリス国教会の祈祷書を言い換えるならば、トランプは「なすべきことをせず、なすべきでないことをした。彼には健全さが全くない([has] left undone those things which [he] ought to have done,; and [he has] done those things which [he] ought not to have done; and there is no health in [him])」となる。そして、アメリカはこれらの失敗によって大きな苦しみを味わうことになるだろう。

私が言いたいことは何か?

まず、トランプはアメリカの過剰な軍事プレゼンスを縮小し、同盟諸国に防衛努力のより大きな分担を促し、国防総省の肥大化した軍事予算を抑制することで、差し迫った国内のニーズに対応し、増大する国家債務を削減するために必要な資源を確保できたはずだ。ロシアのウクライナでの行動も少なからず影響しているものの、トランプは一部の同盟国にさらなる協力を促すことに成功したが、アメリカの世界的な軍事プレゼンスは縮小されておらず、国防予算は増え続けている。その一方で、連邦議会が可決したばかりの予算案は、アメリカの債務水準を数兆ドル増加させ、上位1%の富裕層をさらに富ませ、幅広い公共サーヴィスを削減し、大多数のアメリカ人の生活を改善する効果はほとんどないだろう。さらに、この予算案には、警察国家(police state)の萌芽となる要素も含まれている。

なんという機会の損失だろう! 中国を含む先進工業国を訪れれば、きらびやかな近代的な空港、安全で効率的かつ手頃な価格の公共交通機関、穴だらけではない道路、超高速の都市間鉄道、そして最先端の港湾やその他の重要なインフラが整っていることに気づくだろう。これらの国の多くは、優れた医療制度と高い平均寿命も誇っている。かつてアメリカはそのインフラの質で世界を驚嘆させたが、同盟諸国やライヴァル諸国に追いつくことはできなかった。その代わりに、愚かな対外戦争や長期にわたる介入(foolish foreign wars and protracted interventions)に数兆ドルを浪費してしまった。さらに悪いことに、国内は深刻な分極化に陥っており、政治システムには拒否権が行き渡っているため、私たちが求める長期的なプログラムを立ち上げ、実行することはほぼ不可能となっている。トランプは、自らが繰り返し主張する(そして最高裁が認める意向を示している)大統領権限を行使し、こうした行き詰まりを打開して国内で「国家建設(nation-building)」を行うこともできたはずだ。しかし彼は、大学への脅迫、NPR(公共ラジオ)やPBS(公共テレビ)への資金削減、トランスジェンダーの選手への処罰、メディケイドの縮小、そしてジョー・バイデン前大統領やバラク・オバマ元大統領が関与したあらゆる政策の解体を選んだ。

トランプは、科学に対する連邦政府の支援を大幅に削減し、大学キャンパスには反ユダヤ主義が蔓延しているという荒唐無稽な主張に基づいて高等教育を攻撃する代わりに、連邦政府の権限を活用して、科学研究におけるアメリカの優位性を維持することもできたはずだ。ソ連がスプートニクを打ち上げた後、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領がそうしたように、連邦政府の支援によって生み出された発見から、その後の世代のアメリカ人は多大な恩恵を受けてきた。アメリカはまた、世界中から最も優秀な人材を引き寄せ、留める能力からも恩恵を受けてきた。しかしトランプは今、その優位性を逆転させようとしている。中国はすでに研究開発費でアメリカを上回り、研究者たちはより多くの特許や科学論文を生み出しており、電気自動車やクリーンエネルギーといった将来の重要技術のいくつかにおいて主導的な役割を獲得している。トランプの対応とはどうだろうか? それは一方的な知的武装解除(unilateral intellectual disarmament)の政策である。

もし、その強大な権力を公益のために使おうとする強力な大統領であれば、アメリカ国民の健康を守ることを使命とする機関をロバート・F・ケネディ・ジュニアのようなペテン師たちに委ねたりはしなかっただろうし、気候危機に対処するための、遅ればせながらなお不十分な国の取り組みを後退させるようなこともなかったはずだ。もしトランプが真に偉大なことを成し遂げたいと望むなら、彼は自身の第一期政権における数少ない成功事例の一つ記録的な速さで命を救うCOVID-19ワクチンの開発を可能にした「ワープ・スピード」計画を基盤とし、バイデンが推進しようとしたグリーン・トランジションを加速させるはずだ。誤解のないように言っておくが、気候変動は現実のものであり、事態はさらに悪化するだろう。なぜなら、大気物理学の法則はフォックスニューズを見たり、ソーシャルメディア上のプロパガンダに左右されたりしないからだ。パリ協定からの離脱や化石燃料への依存強化を促すというトランプ氏の決定は、問題を悪化させ、米国はその結果に対する備えが不十分になるだろう。

アメリカの偉大さについて言えば、より賢明なトランプであれば、同盟諸国を搾取すべき属国(vassals)のように扱うのではなく、アメリカの戦略的パートナーシップの改革と強化に尽力するだろう。あるヨーロッパ連合(EU)当局者が「ゆすりたかり(shakedown)」と正しく指摘した彼の気まぐれで強圧的な関税政策は、アメリカの消費者の物価を上昇させ、国内外の経済成長を鈍化させるだろう。また、アメリカの同盟諸国がトランプの国防費増額要求に応じることをより困難にするだろう。デンマーク、カナダ、韓国、日本といった親米諸国と対立することは、歴代大統領の中でも最も愚かな決断の一つと言えるだろう。これらの国々は歯を食いしばってトランプの要求の一部を受け入れるかもしれないが、二度とアメリカを以前と同じように見ることはなく、ワシントンの指示に従う、もしくは、将来的にワシントンが望むような調整を行うことに消極的になるだろう。

トランプ大統領が本当に前任者よりも外交手腕に優れていることを示したいのであれば、ガザ地区での虐殺を終わらせるためにアメリカの影響力を活用し、イランとの新たな核合意に現実的なアプローチを取り、ウクライナ和平に向けて飴と鞭(carrots and sticks)を組み合わせるべきだった。しかし、彼はこの問題を素人外交官のスティーヴ・ウィトコフに任せてしまい、結果として中東地域でのさらなる惨劇(carnage)、アメリカのイメージのさらなる悪化(もはやこれ以上悪化する余地があるのか​​どうかも怪しいが)、そしてロシアの前進を招いた。

一方、トランプ大統領とマルコ・ルビオ国務長官は外交団を弱体化させ、かつて多くの国際機関で支配的だったアメリカの地位を放棄している。『ニューヨーク・タイムズ』紙が先週報じたように、北京はこれにいち早く乗じて、様々な国際フォーラムで存在感を高め、取引を成立させている。こうした動きは一見不可解に思えるかもしれないが、これらの機関こそ、多くの国際関係を形作るルールや技術基準が確立される場なのである。中国当局は、将来的に影響力を拡大するための専門知識と人脈を築き上げており、一方で、アメリカはますます存在感を失っている。スコット・ベセント米財務長官は、先日開催されたG20サミットに出席することさえしなかった。なぜか? それは、南アフリカで開催されたからだ。中国は、外交の価値、直接対話の利点、そしてソフトパワーの重要性を理解しているからこそ、すでにアメリカよりも多くの外交官と在外公館を擁している。トランプ大統領はそれを理解していない。アメリカの当局者やビジネスリーダーが、もはや「アメリカ製(made in America)」ではないルールで世界を渡り歩かなければならないことに気づいた時、それは大きな衝撃となるだろう。そして、まさにトランプ大統領がアメリカを導こうとしている世界こそが、そうした世界なのだ。

最後に、トランプは、国をさらに分断するのではなく、共和党に対する影響力と、政府の三権全てを掌握している立場を利用して、国を統一することもできたはずだ。彼は、実績のある女性やマイノリティを政府の要職から追放し、「無能な白人男性のためのアファーマティブ・アクション(affirmative action for incompetent white guys)」を推進するのではなく、より過激な形の「ウォークイズム(wokeism)」からの撤退を(すでに進行中だったプロセスだが)巧みに促し、厳格な実力主義の必要性を強調することもできたはずだ。その好例が、ピート・ヘグセス米国防長官、あるいはダレン・ビーティーだ。ビーティーは、白人至上主義者とのつながりを理由に第一期トランプ政権から解雇された陰謀論者だが、つい先日、アメリカ平和研究所の所長に任命されたばかりだ。トランプは、法的に疑問の残る強制送還を承認し、海外からの有能な人材にとってアメリカをはるかに魅力のない場所にしてしまうのではなく、賢明な移民制度改革を推進することもできたはずだ。

要するに、トランプには、アメリカを弱体化させている政治的分断を縮小し、国際的な地位を強化する可能性のある、広範囲にわたる、そして長らく待望されていた改革(far-reaching and long-overdue reforms)に着手する絶好の機会があった。もし彼がそのカリスマ性と政治的手腕を、より思慮深く、国民の利益を重視する政策に注いでいれば、私を含め、彼を最も厳しく批判する人々も納得したかもしれない。しかし彼は正反対の道を選び、支持率が急速に低下しているにもかかわらず、その姿勢を改める気配は全く見られない。

読者の皆さんが何を考えているかは分かっている。「もしトランプがこうしたことを少しでも実行していたら、穏健な民主党員のような振る舞いになり、MAGA支持層が反旗を翻していただろう」と考えているだろう。私はそうは考えない。ジェフリー・エプスタインのスキャンダルはさておき、トランプの支持層は、たとえ過去の立場と真っ向から矛盾していても、彼が言うことならほぼ何でも飲み込む用意があるようだ。私は、彼が支持基盤を説得し、上述した政策を受け入れさせることができたと確信している。特に、その多くの施策が彼らにとってすぐに利益となるものであったならばなおさらだ。無党派層や穏健派は喜んだだろうし、それによって2024年の大統領選挙で彼に僅差の勝利をもたらした緩やかな連合が固まったはずだ。化石燃料業界は反対しただろうが、その他の経済界は、規制改革や、おそらくは控えめな減税によって、説得できたかもしれない。

しかし、私のこのフィクションのシナリオには致命的な欠陥(a fatal flaw)がある。それは、別のトランプを想定している点だ。自らの天才性を確信し、自己顕示欲にのみ執着し、ルールや規範を軽視する復讐心に燃えるナルシストではなく、私のシナリオが想定するのは、真に民主政治体制を守り、できるだけ多くのアメリカ人の生活を向上させ、世界政治におけるアメリカの特権的な地位を維持したいと願う大統領である。残念ながら、トランプはそのような人物ではない。だからこそ、彼に与えられた機会は浪費され、あるいはそれ以上に台無しにされているのだ。素晴らしい未来はあり得たはずだが、この大統領の下では実現しなかった。トランプ自身が称賛されることを切望していることを考えれば、これは彼自身の悲劇だと捉えることもできるだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 現在は世界中で過剰さがあふれている。極端さと言っても良いだろう。政治の世界で言えば、ドナルド・トランプ大統領や高市早苗首相がその象徴である。過度なナショナリズム、過度な断定(言い切り)、過度な自己中心、過度な依存が特徴である。有権者にしても、中庸ではなく、過激を求める傾向がある。そのことは日本だけではなく、西側先進諸国において共通の現象になっている。このことはこのブログでも既に紹介した。

※古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ:「20260309日先進西側民主政体国家の有権者は破れかぶれになっているのかもしれない」

https://suinikki.blog.jp/archives/90360730.html

 過剰を求める反対の動きが抑制であり、中庸である。国際関係論ではその考えを持つ人たちを「リアリスト(Realist)」「抑制者(restrainer)」と呼ぶ。ウォルトは「抑制主義」について以下のように書いている。長くなるが、いくつか引用する。「アメリカ外交政策における抑制という考え方は、アメリカの力を用いて民主政治体制、市場経済、法の支配、その他のリベラルな価値観を世界中に広め、できるだけ多くの国をアメリカが支配する国際機関に取り込もうとする、リベラル覇権(liberal hegemony)の大戦略(grand strategy)に反対する形で生まれた。抑制者は、軍事力によって民主政治体制を広めようとするのは無謀な試みであり、他国を脅迫したり威嚇したりすることは通常逆効果となり、敵対国を疑心暗鬼にさせ、同盟国や中立国を敵に変えてしまうと確信している(Restrainers believe that trying to spread democracy with military force is a fool’s errand, and that threatening or bullying other states usually backfires, making adversaries more suspicious and turning allies or neutrals into enemies)。そのため、外交こそがアメリカ・ファーストの行動であり、武力行使は最後の手段(last resort)であるべきだと彼らは考えている」「抑制者は、世界は危険な場所であり、アメリカは一部の国と深刻な利害の衝突を抱えていることを認識しているものの、過剰な軍事費支出や海外での武力行使を正当化するために用いられる、絶え間ない脅威の誇張には反対している」「アメリカが国家安全保障への支出を減らし、依然として大きな力を持っているにもかかわらず、より賢明にその力を行使すれば、より安全で繁栄した国になると考えている」。第一次政権時のドナルド・トランプは抑制主義であったが、現在のドナルド・トランプは全くの別人である。下記論硬はスティーヴン・M・ウォルトによる昨年9月の論稿であるが、現在の状況を警告しているかのようでもある。

 私は昨年の5月頃に第二次ドナルド・トランプ政権における外交政策に大きな転換点があったと考えている。ここで抑制者から介入主義者に変化している。私たちはこのことをより深く研究する必要がある。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプは決して抑制者にはなれない(Donald Trump Will Never Be a Restrainer

-最終判決は下された。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年9月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/09/30/donald-trump-foreign-policy-restrainer-realist-war-defense-diplomacy/

ドナルド・トランプ米大統領が外交政策におけるリアリスト(foreign-policy realist)もしくは、「抑制者(restrainer)」なのかという議論に終止符を打つべき時が来た。確かに、彼の政策決定における気まぐれなアプローチや、言行不一致の傾向は、特に明確な理由もなく極端から極端へと態度を翻す時(ウクライナ問題を参照)には、彼の見解を捉えること(to pin down)を困難にしている。彼の発言や行動の中には、リアリスト・抑制者というレッテル(labels)に合致するように見えるものもあるかもしれないが、彼はリアリスト・抑制者ではない。

私がこの問題を提起するのは、レッテルが重要であり、誰がどのようなアプローチや思想と結びつけられるかによって、様々な考え方や政策提案がどのように受け止められるかが左右されるからだ。公平を期すために言えば、トランプは「永久戦争(forever wars)」への批判、外交政策エスタブリッシュメントへの不信感、裕福な同盟諸国に自衛のための行動を促そうとする姿勢、そして海外におけるリベラルな価値観の擁護への明らかな無関心などにおいて、抑制の提唱者のように聞こえる時もある。(この点において、彼は異例なほど一貫性を見せている。なぜなら、言論の自由や法の支配といった、厄介なリベラルな価値観に対しても、アメリカ国内で同様に敵対的な姿勢をとっているからだ。)要するに、内容ではなくスタイルだけを見れば、トランプはリアリスト・抑制者の典型的なメンバーだと結論づけるかもしれない。

この議論をしているもう一つの理由は、トランプをリアリスト・抑制者とレッテルを貼ることが、時に政治的な得点稼ぎ(to score political points)に利用されることがあるからだ。JD・ヴァンス副大統領のようなMAGA支持者の中には、抑制者というレッテルを受け入れることで、トランプが以前の公約を守り、アメリカが莫大な予算のかかる海外関与に陥るのを防いでいるとアピールする人たちもいる。(トランプ政権1期目には、傲慢なマイク・ポンペオ国務長官も同様の策略を試みたが、説得力はなかった。)対照的に、抑制に反対する人々は、アメリカの外交政策の軍事化(the militarization of U.S. foreign policy)に反対し、世界各地へのアメリカの介入を批判してきた個人や組織(例えば、クインシー責任ある国家運営研究所など)の信用を失墜させるために、トランプにそのレッテルを貼ろうとすることがある。(念のため申し添えておくと、私はクインシー研究所の理事を務めており、時折、同研究所の出版物に寄稿している。)

しかしながら、現時点ではトランプの実績が、この問題を解決する上で重要な手がかりとなる。そのためには、抑制者が何を主張しているのかを明確にする必要がある。そして、その出発点として最も適切なのは、この運動にその名を与えたバリー・ポーゼンの著書『抑制:アメリカの大戦略の新たな基盤(Restraint: A New Foundation for U.S. Grand Strategy)』であろう。さらに、ダリル・プレス、ユージン・ゴールズ、ハーヴェイ・サポルスキーによる初期の論文、クリストファー・レインによる注目すべきエッセイ、そしてジョン・ミアシャイマー、モニカ・トフト、シディタ・クシ、そして私自身による後期の著作も参照すべきだろう。

アメリカ外交政策における抑制という考え方は、アメリカの力を用いて民主政治体制、市場経済、法の支配、その他のリベラルな価値観を世界中に広め、できるだけ多くの国をアメリカが支配する国際機関に取り込もうとする、リベラル覇権(liberal hegemony)の大戦略(grand strategy)に反対する形で生まれた。抑制者は、軍事力によって民主政治体制を広めようとするのは無謀な試みであり、他国を脅迫したり威嚇したりすることは通常逆効果となり、敵対国を疑心暗鬼にさせ、同盟国や中立国を敵に変えてしまうと確信している(Restrainers believe that trying to spread democracy with military force is a fool’s errand, and that threatening or bullying other states usually backfires, making adversaries more suspicious and turning allies or neutrals into enemies)。そのため、外交こそがアメリカ・ファーストの行動であり、武力行使は最後の手段(last resort)であるべきだと彼らは考えている。彼らはアイソレイショニストでも平和主義者でもない。なぜなら、アメリカは主要地域における有利な勢力均衡(balances of power)の維持に貢献する利益を有しており、同盟国は有用ではあるが、責任を果たさせるべきであり、重要な国益を守るためには武力行使が必要となる場合もあり、適切に設計された国際機関は国家間の競争の中でも協力関係を促進できると信じているからである。抑制者は、世界は危険な場所であり、アメリカは一部の国と深刻な利害の衝突を抱えていることを認識しているものの、過剰な軍事費支出や海外での武力行使を正当化するために用いられる、絶え間ない脅威の誇張には反対している。

抑制者はあらゆる問題について意見が一致する訳ではない。例えば、中国に対してより積極的に対抗すべきだと主張する者もいれば、中国の台頭を容認する努力を強化すべきだと主張する者もいる。しかし、彼らは近年の民主党政権と共和党政権下でアメリカの国家戦略を特徴づけてきた、自己中心的で傲慢な姿勢に反対するという点では一致している。何よりも、抑制者は気まぐれな軍事力行使に反対し、アメリカが国家安全保障への支出を減らし、依然として大きな力を持っているにもかかわらず、より賢明にその力を行使すれば、より安全で繁栄した国になると考えている。

それでは、なぜトランプは真の抑制者ではないのか? その理由をいくつか挙げてみよう。

第一に、トランプ大統領はアメリカの国防予算の不必要な増額を依然として支持しており、その額は最近1兆ドルを超え、依然として他のどの国の国防予算をも大きく超えている。さらに悪いことに、彼はこれらの巨額の予算の一部を本来の目的である「外国の脅威からアメリカを守る(defending the United States against foreign dangers)」ことから逸脱させ、国内の架空の敵(fictitious domestic enemies)を追いかけるために流用している。脅威を弱めるどころか、トランプ大統領は国内外の架空の敵を利用して、大統領権限を危険なレヴェルまで拡大することを正当化している。抑制者は長年、過剰な軍事化(excessive militarization)は最終的にアメリカ国内の市民の自由を脅かすと警告してきたが、トランプ大統領は彼らの警告が正しかったことを証明してしまった。

第二に、抑制者は、アメリカはヨーロッパと中東地域における軍事的プレゼンスを縮小し、中東地域ではより公平な姿勢を取るべきだと考えている。トランプ大統領にはこれら両方を行う十分な機会があったにもかかわらず、どちらも実行していない。両地域におけるアメリカのプレゼンスはほぼ変わらず、トランプ大統領は中東地域におけるアメリカの「特別な関係(special relationships)」をさらに強化し、中東地域の敵対勢力との真剣な対話を拒否している。

第三に、トランプ大統領は、際限のない紛争にアメリカ軍地上部隊を投入することには慎重な姿勢を示しているものの、目に見える形ではあるものの戦略的に疑わしい軍事行動に空軍力を行使することには全く抵抗がない。2025年1月に大統領に復帰して以来、イエメンとイランの標的を攻撃し、カリブ海で麻薬密輸に関与していたとされる複数の船舶を軍に撃沈するよう命じた。これらの行動の合法性は疑わしいだけでなく、いずれも重要かつ永続的な戦略的目的を達成する可能性は低い。フーシ派は依然として強硬な姿勢を崩さず、イランは核開発計画を放棄しておらず、数隻の船舶を撃沈すればアメリカへの麻薬流入が減少すると考える者は夢物語を語っているに過ぎない。トランプ大統領の関税政策と並んで、こうした無意味な軍事行動は外交政策における自制とは正反対であり、トランプ政権に今もなお仕えている数少ない真の抑制者たち(彼らは自分が誰であるかを分かっている)が、こうした行動をどう思っているのか、私は疑問に思わずにはいられない。

第四に、トランプ大統領は、抑制者の一部が提唱するように、経済・安全保障に関する諸問題に関して中国と包括的な合意に達することも、また、他の抑制者が主張するように、アジアにおける中国の勢力均衡を図り、地域覇権の確立を阻止するための連合を強化する真剣な努力もしていない。それどころか、トランプ政権は日本、韓国、インドといったアメリカの重要なパートナー国との貿易をめぐって対立を煽り、ジョージア州のバッテリー工場で韓国人労働者を不当に扱うことで韓国との関係をさらに悪化させ、科学技術分野における中国に対するアメリカの競争力を組織的に弱体化させている。

第五に、抑制者、特に超党派を標榜するクインシー研究所のような組織が提唱する重要な提言の1つは、アメリカ外交を活性化させ、軍事力の反射的な行使を控えることである。しかし、以前にも述べたように、トランプ大統領とその側近たちは、準備不足、人員不足、一貫性のない取り組み、そして最終的には失敗に終わる外交交渉の典型例と言えるだろう。トランプ大統領とマルコ・ルビオ国務長官兼国家安全保障担当大統領補佐官は、国務省を骨抜きにし、通常の省庁間協議プロセスを無視し、ガザ地区とウクライナに関する重要な交渉を、明確な資格がなく、潜在的な利益相反を抱える不動産弁護士(スティーヴ・ウィトコフ)に委ねてしまった。彼らがほとんど成果を上げていないのは何も不思議に思うものではないか?

トランプ大統領自身の外交姿勢については、先週の国連総会での彼の全くもって奇妙なパフォーマンスをご覧になることをお勧めしたい。国連が好きであろうと、トランプ大統領を嫌っていようと、彼がそこで見せた光景、そしてそれが我が国とその指導者について世界に何を物語ったのかを知れば、誰もが不快感を覚えるはずだ。トランプは持ち時間15分をほぼ45分も超過し、数十人の世界の指導者たちを前に、支離滅裂で自己憐憫に満ち、虚偽と侮辱に満ちた長時間のスピーチを続けた。この演説は、世界で最も力のある国がこれほど無能な人物の手に委ねられていることに、アメリカの敵対諸国を安堵させ、残されたアメリカの友好諸国を同じ理由で不安にさせたことは間違いない。

従って、トランプは抑制者でもリアリストでもない。もっと適切な表現はいくつかあるが、それらを挙げるには私は礼儀正し過ぎるのかもしれない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 私は昨年11月末に著書『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』を出した。著作の中で私は次のように主張した。ピーター・ティール率いるビッグデータ分析やAI開発のパランティア・テクノロジーズ社、イーロン・マスク率いる宇宙開発のスペースX社、パルマー・ラッキー率いるドローン開発のアンドゥリル・インダストリーズ社が「新・軍産複合体(Neo Military-Industrial Complex)」を形成し、アメリカ政府とアメリカ軍に食い込む形で、大型契約を締結し、巨額の利益を生むということになる。その具体例が「ゴールデンドーム」という、ドナルド・トランプ大統領が発表した、アメリカ全土を防衛するシステムである。このシステムの重要な点は、長期契約(サブスクリプション契約)によって、長期にわたり、巨額の利益を上げる点にある。そして、彼らは大規模な戦争を忌避するだろう。新・軍産複合体は長期契約で利益を上げるが、米中衝突などの大規模な演奏は望まないし、そのようなことになったら、技術提供を止めるなどして阻止することになるだろう。


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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 

 今回のイラン攻撃は大規模攻撃である。私の主張の一部は外れているという指摘があるだろう。しかし、今回のイラン攻撃について、イスラエルとアメリカの目論見は、最初の一撃でイランを屈服させるというものであった。しかし、それが外れてしまい、大規模化、長期化せざるを得なくなった。アメリカはこのような形になることを望んでいなかったし、想定していなかった。

 以下の論稿は、私の主張の正当性を担保してくれる内容になっている。「サブスクリプション」という言葉も出てくる。最先端の高度技術を提供する民間企業が政府の政策遂行、軍の作戦遂行においてイニシアティヴを取るという時代がそこまで来ている。最後に宣伝になって恐縮だが、是非、拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』をお読みください。よろしくお願いいたします。

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スターリンクは地政学を民営化した(Starlink Has Privatized Geopolitics

-ウクライナからイランまでイーロン・マスクのサーヴィスは外交政策の仲裁者(an arbiter)となった。

ロバート・ムガー、ミシャ・グレニー筆

2026年3月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/20/starlink-spacex-musk-geopolitics-war-ukraine-russia-iran/

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ウクライナのドネツクで戦闘任務中にウクライナ兵がスターリンク衛星モデムを調整している(2025年3月12日)

スターリンクは単なる商用通信サーヴィスではない。それは、戦争をいかに戦われるか、国内の混乱へ国家は以下に対処するか、そして政府の統治が及ばない分野において犯罪組織が如何に活動するかについて、ますます左右する戦略的インフラ(strategic infrastructure)になっている。スターリンクが政治的にこれほど重要な意味を持つのは、その地球規模のネットワーク網だけでなく、その背後にあるガヴァナンスモデルにもある。

今や民間企業が軌道上のゲートキーパーとなり、誰が、どこで、どのような条件で、どのような技術的制約の下で接続できるかを決定する役割を担っている。多くの紛争において、こうした決定は軍事的、政治的な影響を及ぼし、国家はそれを再現したり制御したりすることが困難になっている。多くの戦略的サプライチェインが民間企業に依存している現状において、スターリンクは公共の安全保障機能に対する民間企業の裁量権が極めて集中している事例と言えるだろう。

スターリンクの地政学的な重要性は、その規模に比例する。2025年12月中旬時点で、軌道上には9357基のスターリンク衛星が存在していた。 2026年1月、アメリカ連邦通信委員会(FCC)はスペースXに対し、第2世代衛星7500基の追加配備を承認した。これにより、スペースXの衛星総数は約17000基となる。スペースXは以前から、最大42000基の衛星運用を目指すという野心を表明してきた。

スターリンクのサーヴィス提供範囲も拡大している。現在、160の市場でサーヴィスを展開しており、その決定に対処しなければならない軍、通信規制当局、法執行機関の数も増加している。競合他社と比較すると、スターリンクの圧倒的な優位性はより明確になる。低軌道における最大のライヴァルであるユーテルサット・ワンウェブ(Eutelsat OneWeb)は約650基の衛星を運用している一方、アマゾンのカイパー衛星群(Amazon’s Kuiper constellation)は2月時点でわずか200基強にとどまっている。スターリンクは事実上の独占状態にあり、当面の間、競合相手は存在しないことになる。

スターリンクは現在、世界中で1000万人以上のアクティヴユーザーを抱えていると発表しており、スペースXは2026年末までにその数を倍以上に増やすことを目標としている。その成長は、米国のT-Mobileをはじめとする携帯電話事業者との提携によってさらに加速しており、ドイツテレコムは2028年からヨーロッパでスターリンクを利用した衛星通信サーヴィスを開始する予定だ。

スターリンクの商業的な強みは、地上基地局や光ファイバー網が届かない農村部、遠隔地、災害被災地への接続にある。しかし、こうした重要な通信レイヤーを支配することで、スターリンク社は地政学的に大きな影響力を持つことになる。特に紛争、緊急事態、そして接続性が軍事、政治、人道的な結果を左右するあらゆる状況において、その影響力は顕著になる。

ウクライナ情勢は、スターリンクが戦場の通信にどのような影響を与え、戦略的な依存関係を生み出すかを示す、これまでで最も明確な事例と言えるだろう。2022年のロシアによる本格的な侵攻で地上ネットワークが機能停止した後、ドローン、分散型指揮、迅速な標的設定サイクルが特徴的なこの戦争において、スターリンク端末は運用インフラとなった。2025年初頭までに、ウクライナは少なくとも4万7000台のスターリンク端末を確保したが、その大部分はポーランド、ドイツ、アメリカ、そしてスペースX自身を含むパートナー国政府やその他の支援国から供給されたものだった。安定したモバイル帯域幅がなければ、ウクライナ軍はドローン映像の送信、兵站の調整、そしてこの紛争の特徴である分散型火力支援ネットワークの維持ができなかった。これらの端末は単なる利便性ではなく、効果的な抵抗のための必要条件だったのだ。

この依存関係は即座に攻撃対象領域を生み出した。ロシア軍は第三者ルートを通じてスターリンクへのアクセス権を取得したと報じられており、2024年にはロシア支配地域におけるスターリンクネットワークの利用が繰り返し懸念事項となった。問題は深刻で、スペースXとウクライナ国防省は不正接続を抑制するために認証管理を導入した。ウクライナ当局は、前線におけるロシア軍の利用が阻害されたと述べ、軍事顧問たちは、この影響はロシア軍の作戦にとって重大な後退であると評した。

この一連の出来事は示唆に富む。企業内のエンジニアが商業アクセスに関する方針に基づいて下した決定が、実戦中の戦争における戦術的バランスを崩した。条約による承認も、議会での採決もなかった。その決定を左右したのは、一企業の利用規約(a firm’s terms of service)だった。

戦略的、地政学的な側面はさらに深刻だ。2025年初頭、アメリカの交渉担当者は、ウクライナが重要な鉱物資源に関する合意を受け入れなければ、スターリンクへのアクセスを制限するとア圧迫を与えたとされる。スペースXのオーナーであるイーロン・マスクは関連性を否定したが、圧迫の信憑性と、それがキエフにもたらした不安は、その具体的な内容よりも重要だった。

すでに前例があった。2022年、マスクは、ロシア占領下のクリミア半島近辺でのスターリンクの通信網をウクライナ海軍のドローン作戦支援のために提供することを拒否したと報じられている。その理由として、事態のエスカレーションに関するリスクについて個人的な見解を挙げた。民間供給業者が個人的な直感に基づいて、最前線の国家が実施できる作戦を決定できる場合、その関係はもはや商業的なものではなくなる。それは主権の委譲であり、説明責任を負わない行政機関によって行使される戦略的機能である。

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衛星放送受信アンテナが点在するテヘラン中心部の住宅街の窓(2026年1月20日)

イランは、スターリンクの地政学的影響を示すもう1つの事例である。2026年1月に大規模な抗議デモが発生した後、イランの政権は史上最長かつ最も厳しいインターネット遮断を実施し、国内の接続率を通常の約4%にまで低下させた。近年、密輸され闇市場で取引された数万台のスターリンク端末は、弾圧の様子を外部に伝える重要な経路となったようだ。イラン国内の利用者には利用料が免除されたと報じられており、トランプ政権はスターリンク端末約6000台を密かにイランに持ち込んだ。これらの端末は単なる消費財としてではなく、アメリカの外交政策の手段として利用された。

テヘランの対応は前例のないものだった。政府当局は、地上妨害装置、GPSスプーフィング装置、携帯電話妨害装置を各地域に配備した。報道によると、治安当局は戸別訪問による捜索を行い、ドローンや情報提供者を使って衛星アンテナや端末の位置を特定し、利用者をスパイ容疑で告発した。イラン議会は既に、スターリンク端末の無許可所持・使用を犯罪と定めており、軽微な違反には懲役刑、スパイ行為や協力行為には死刑を含むさらに厳しい刑罰を科すことを規定していた。イランは国際電気通信連合(ITU)に対し、スターリンクが国家主権を侵害しているとして正式に提訴していた。

第2段階は2月28日に始まり、アメリカとイスラエルがイランの軍事施設、核施設、政府機関を標的とした共同攻撃を開始した。最高指導者アリ・ハメネイ師の暗殺は、イランによるイスラエル、中東各地のアメリカ軍基地、湾岸諸国、その他複数の国へのミサイルとドローンによる報復攻撃を引き起こした。イラン国内の通信状況はさらに悪化し、通常の約1%にまで低下した。

この段階において、スターリンクの役割はまさに矛盾をはらんだものとなった。密輸された端末によって、一部のイラン人は政府庁舎への攻撃を記録し、通信規制の努力にもかかわらず映像を拡散することができた。しかし、衛星通信へのアクセスは反体制派に限られていた訳ではないようだ。従来のネットワークが劣化するにつれ、スターリンクは国家と関係のある主体によっても利用された可能性がある。サイバーセキュリティ研究者たちは、インターネット遮断期間中、イラン情報保安省に関連する一部の活動がスターリンクのIPアドレス範囲から発信されていたと指摘している。同時に、イラン政府当局は検閲を回避しようとする市民によるスターリンクへのアクセスを妨害または低下させていたと報じられている。

また、別のサイバーセキュリティグループは、スターリンクを装った罠を利用した監視マルウェアを特定した。これは、同じ通信プラットフォームが抗議活動参加者、監視活動者、そして国家と関係のあるサイバー攻撃者によってどのように利用されうるかを示している。

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カリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられた28基のスターリンク衛星を搭載したスペースX社のファルコン9ロケットが上昇している(2025年9月28日)

米国防総省は、イランを、低軌道システムが持続的な電子妨害や戦時下の混乱下でどのように機能するかを示す好例として捉えている。持続的な圧力によってスターリンクの耐障害性が著しく低下する可能性があるならば、例えば台湾におけるスターリンクの役割を支える前提は見直される必要がある。これはシステムの有用性を損なうものではない。単に、ネットワークが宇宙空間にあるというだけで耐障害性が保証される訳ではないことを意味する。

スターリンク技術は、犯罪組織や反乱組織のネットワークにも浸透しつつある。犯罪組織は、分散型通信の力を活用して作戦を遂行しようとしている。統治能力が低く、スペースXに対する影響力も乏しい脆弱な国家にとって、課題は喫緊の課題だ。通信網が地上の基地局やケーブルではなく、上空から提供されるようになると、遠隔地や紛争地域でのアクセス規制が困難になり、民間事業者がどのような条件で協力してくれるのかを交渉することもさらに難しくなる。

ブラジルのアマゾン熱帯雨林は、その具体的な例を示している。2025年6月、ブラジル連邦検察庁は、違法採掘や犯罪行為におけるスターリンクサーヴィスの利用を抑制するため、スターリンクと協定を締結した。この協定では、アマゾン地域における新規利用者に対し、身分証明書と居住証明の提出を義務付け、捜査対象となっている端末に関するデータをブラジル当局と共有することを認めている。また、違法行為に関与している疑いのある端末については、サーヴィスが停止される可能性がある。ブラジル環境庁の作戦調整官であるヒューゴ・ロスは、犯罪組織がスターリンクを利用して取締チームのリアルタイム位置情報を送信し、摘発を予測したり、現場の職員の安全を脅かしたりしていたことを指摘している。ブラジルは実行可能な合意を取り付けたものの、それは問題が環境犯罪の現場に深く根付いた後のことだった。

メキシコの組織犯罪の状況は、関連するリスクを示唆している。麻薬カルテルは、アメリカ国境沿いで拡大する技術軍拡競争の中で、密輸、監視、治安部隊への攻撃にドローンを活用している。このエスカレーションは、今や民間空域管理にも波及している。2026年2月、アメリカ連邦航空局(FAA)は、アメリカの対ドローン対策の展開への懸念から、テキサス州エルパソ周辺の空域を突然閉鎖したが、数時間後に制限を解除した。この一件は、犯罪組織によるドローンの脅威が、戦術的な安全保障対応だけでなく、深刻な外交的・航空的混乱を引き起こしかねないことを示した。

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左:メキシコ陸軍の対ドローン特殊部隊がメキシコ・ナウカルパン州で報道陣向けにデモンストレーションを行った(2026年2月17日)右:チャド・アドレの難民キャンプで、仮設小屋の横に設置されたソーラーパネルがスターリンク回線に電力を供給している(2026年2月19日)

アフリカのサヘル地域では、状況はさらに深刻だ。イスラム国家ジャマート・ナスル・アル・イスラム・ワル・ムスリミン(JNIM)やイスラム国西アフリカ州(ISWAP)などの反政府勢力は、リビアとナイジェリアからマリ、ニジェール、その他の紛争地域へとスターリンク機器の違法な供給網を構築している。2024年6月、JNIMはマリのガオ地域での作戦中にスターリンク端末が使用されている様子を映した動画を公開した。昨年(2025年)、ナイジェリア軍はボコ・ハラムに対する襲撃作戦で、サンビサ森林地帯の司令官からスターリンクの機器を押収した。

2025年を通して、ジハード主義グループは衛星通信をますます活用し、分散した部隊の連携、プロパガンダの配信、そして地上ネットワークに対する国家統制によって恩恵を受けていた傍受型監視の回避を図った。ニジェールとチャドは監視体制強化のため、2025年初頭にスターリンクの合法化と規制に着手したが、密輸ネットワークは今後も存続する可能性が高い。

スターリンクは宇宙分野における唯一の存在ではない。商業宇宙セクターは、国​​家防衛と軍事力にとってますます重要な役割を担うプレーヤーで溢れている。その結果、各国が同時に受け入れ、統制しようとする戦略的サーヴィスの市場が拡大している。通信分野では、イリジウムが防衛通信に深く根付いている。2024年、スターリンク社は合えりか宇宙軍と、高度なモバイル衛星サーヴィスとその維持管理に関する5年契約を発表した。これは、見通し外通信における商用プロバイダーへの依存が続いていることを示している。

ユーテルサット・ワンウェブとアマゾンのカイパー衛星群も防衛・政府市場で競合しており、ヨーロッパ連合(EU)のIRIS2構想は、EUの主権能力強化への野心を反映している。マクサール(Maxar)、プラネット(Planet)、ブラックスカイ(BlackSky)の商用画像データは、カペラ(Capella)とICEYEのレーダーデータとともに、軍事目標設定と状況認識に組み込まれている。

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ウクライナのロボティネ近郊の最前線の雪原に立つスターリンクデヴァイス。ドローン偵察・攻撃部隊の一部(2024年1月23日)

近年の紛争は、こうした仕組みをさらに深化させている。商用衛星、端末、データ契約は、今や軍事サプライチェインの一部となっている。そして、弾薬や防空システムと同様に、政治的圧力によってその供給が制限、転用、あるいは兵器化される可能性がある。商用宇宙は、国家が権力を行使し、また抑制する手段の一部になりつつある。

イランが最も鮮明に露呈させたのは、ウクライナやその他のスターリンク利用事例で部分的にしか明らかにならなかった統治上の欠陥である。国際人道法は、国家に対し軍事目標と民間目標を区別することを求めているが、午前中に反体制派に利用されていた端末が、午後には軍事攻撃を支援するために利用される可能性もある。

国連憲章の下で、商用衛星ネットワークの妨害行為を武力行使とみなすべきかどうかを判断するための、確立された国際的な枠組みは存在しない。商用機器の秘密裏の配備が情報戦行為に該当するか否かを規定する規則もない。CEOの意見が戦場の結果を左右する場合、民間事業者の責任を問う仕組みも存在しない。また、リアルタイムで民生用と軍事用を行き来するシステムを運用する商用衛星事業者の義務についても、明確な合意は得られていない。

戦略的な接続性は、もはや地理的な問題ではなく、ガヴァナンスの問題となっている。帯域幅は軌道上から供給され、情報はサブスクリプション方式(subscription)で購入される。主権(sovereignty)は、民間企業との関係、交渉によるアクセス協定、そして争点となる技術的設定を通じて、ますます行使されるようになっている。商用衛星インフラを、それに伴う規律、冗長性、そして法的枠組みといったあらゆる要素を含めた戦略的依存関係として扱わない国家は、危機に際して、その依存関係が他国によって管理されることを覚悟しなければならないだろう。

スターリンクの新たな地政学は既に始まっている。問題は、各国がそれを統治するのか、それとも単に反応するだけなのか、ということである。

※ロバート・ムガー:「セクデヴ」グループ最高責任者、イグナイト研究所共同創設者、ロバート・ボッシュ・アカデミー研究員。著述家であり、イアン・ゴールデンとの共著『未知の地:今後100年を生き抜くための100枚の地図(Terra Incognita: 100 Maps to Survive the Next 100 Years)』がある。Xアカウント:@robmuggah

※ミシャ・グレニー:人間科学研究所所長。多くの著作があり、『マクマフィア:深刻な組織犯罪(McMafia: Seriously Organised Crime)』と『宿敵:ブラジル最重要指名手配犯の追跡(Nemesis: The Hunt for Brazil’s Most Wanted Criminal)』がある。

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