古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: アメリカ政治

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。アメリカ政治について2つの章で詳しく分析しました。2024年はアメリカ大統領選挙もあり、アメリカ政治にとって重要な年になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

著書『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(2021年、秀和システム)と『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(2023年、徳間書店)で取り上げた、ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の創業者にして、元米国防次官(国防総省ナンバー3)ミッシェル・フロノイが書いた重要な論稿をご紹介する。この論稿のもう1人の著者であるウェンディ・R・アンダーソンは、ビッグデータ分析業であるパランティア社の上級副社長を務めている。パランティア社は、フロノイが創設した、コンサルティング会社ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の顧客だ。現在、アメリカ政府の国家情報長官(Director of National IntelligenceNDI)を務める、アヴリル・ヘインズは、ウエストエグゼク社在職中に、パランティア社のコンサルタント業務を行っていた。パランティア社の技術は、アメリカ政府の各情報・諜報機関と国防総省の対テロ対策に使用されている。パランティア社と国防総省は高度技術の提供契約を結んでいる。ウエストエグゼク社とジョー・バイデン政権にかかわる人脈については是非拙著を読んでいただきたい。

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ミッシェル・フロノイ

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アヴリル・ヘインズ

 民間のアトランティック・カウンシルが、アトランティック・カウンシルの国防技術革新採用委員会を設置し、中間報告書を発表した。この報告書を取りまとめたのが、ミッシェル・フロノイとウェンディ・R・アンダーソンだ。

彼女たちが取りまとめた内容は、以下の通りだ。国防総省が中国との競争に対応するために法的制限の緩和や予算データの改善を求めており、連邦議会にも新しいデジタル「ダッシュボード」の導入を提案している。国防総省内の官僚的なプロセスを合理化し、新たな兵器計画の立ち上げを促している。国防総省が技術革新を迅速に導入する能力不足に言及し、国防総省がソフトウェアの開発や取得において問題を抱えていると報告書で指摘している。

報告書は、連邦議会が主導する予算編成と計画プロセスに焦点を当て、国防技術革新ユニット(Defense Innovation UnitDIU)の役割拡大や運用実験との連携を強調している。アメリカのソフトウェアの優位性を活かすためには、国防総省全体で革新的なソフトウェアを採用し、従来の取得システムを超える必要がある。国防総省のチーフ・デジタル・AI局(CDAO)の設立や戦略資本局の活用を提案し、中国の脅威に対抗するためにソフトウェアの取得を加速させることが不可欠であると述べている。アメリカの戦闘力を維持するために、国防総省がソフトウェアの活用に注力する必要があり、議会と指導者が行動を起こすことが重要だ。そのためには連邦議会とホワイトハウスの指導力が必要だと主張している。

 国防総省は中国に対抗するために、最先端技術を導入して、アメリカ軍を増強すること、そのためには、国防総省により柔軟な予算運用が必要であり、そのためには国防総省により権限を持たせるべきだということになる。そして、民間の最先端技術開発を行っている各企業との協力関係を強化するということになる。これは、アメリカの「新・軍産複合体」づくりの一環であり、アメリカの産業政策の一環でもある。中国と対抗するために、アメリカは官民を挙げての「総動員」体制を取るということになる。

(貼り付けはじめ)

報告書では、「連邦議会は国防総省に武器や物資購入と予算編成の面で柔軟性を与えるべきだ」と主張(Congress should give Pentagon more flexibility in buying, budgeting, report urges

-マーク・エスパー元国防長官とデボラ・リー・ジェイムズ元空軍長官が共同議長を務めるアトランティック・カウンシルの国防技術革新採用委員会が報告書を発表し、国防に関する武器や物資取得を加速させるために政府の国防以外の諸機構における改革を奨励している。

シドニー・J・フリードバーグ・ジュニア筆

2023年4月12日

『ブレイキング・ディフェンス』

https://breakingdefense.com/2023/04/congress-should-give-pentagon-more-flexibility-in-buying-budgeting-report-urges/

ワシントン発。国防総省を改善するための動きは連邦議会から始まる。これこそが、マーク・エスパー(Mark Esper、1964年~、59歳)元国防長官(トランプ政権)とデボラ・リー・ジェイムズ元空軍長官が共同議長を務めるアトランティック・カウンシルの委員会の中心的主張である。

本日発表された委員会の中間報告書は、国防総省が中国と競争するために必要なスピードと規模で新技術を導入する前に、立法府は年度途中でのプロジェクト間の資金組み替えから新興企業との契約に至るまで、様々な分野で法的制限を緩和しなければならないと主張している。また、国防総省の年次予算要求において、より詳細でない予算データを連邦議会が受け入れることも求めている。

その見返りとして、連邦議会は新しいデジタル「ダッシュボード」を手に入れ、国防総省のアドヴァナ取得分析から最新のプログラム情報に直接アクセスできるようにする、というものだ。

報告書はまた、新たな兵器計画の立ち上げに必要な多くの公式要件を生み出す、悪名高い官僚的な、統合能力統合開発システム(Joint Capabilities Integration and Development System JCIDS)プロセスを回避して合理化するなど、国防総省自身が実行できる内部改革を促している。 ジェームズは本日、これらの勧告の1つである防衛技術革新ユニット(Defense Innovation Unit)の強化が既に先週国防総省によって実行されたことを指摘した。しかし、報告書でなされた10の広範な勧告のうち、9つは少なくとも、連邦議会における太陽を必要としている。

エスパーは本日午後の報告書発表の席で、「技術革新に関しては、アメリカは世界のリーダーである。私たちは世界の羨望の的だ。この国に技術革新の問題はない。しかし、国防総省がこの先端技術を迅速に導入する能力は、極めて不十分である。問題はそこにある」。

リーも同様に次のように述べた。「アメリカ合衆国には技術革新の問題がないということではない。しかし、国防総省内では技術革新の導入に関する明らかな問題を抱えている」。

国防総省が、重要な技術を試作品やパイロット・プロジェクトの段階から、官僚的ないわゆる死の谷(valley of death)を越え、大規模な製造と配備にこぎつけるのに苦労していることは、一般的な理解である。しかし、報告書の処方箋の中には、国防総省が直接関与しないものも含め、明白とは言い難いものもある。

例えば、報告書は連邦議会に対し、国防総省がよく利用するが運営はしていない、中小企業庁の中小企業技術革新研究(Small Business Innovation ResearchSBIR)助成金プログラムを改革するよう求めている。現在SBIRは、上場企業やヴェンチャーキャピタルからの出資が50%以上の小規模企業には申請を認めていない。しかし報告書は、この2つの条件によって、特にソフトウェア分野の研究開発新興企業の多くが除外されていると主張している。「これらの企業にSBIR補助金での競争を認めないことで、国防総省は産業基盤の中で最も技術力のある一角の技術競争を制限している」と報告書の著者は書いている。

しかし、報告書の提言の大部分は、議会が主導する予算編成と計画プロセスに焦点を当てたものである。エスパーとジェームズは序文で、5人のプログラム・エグゼクティブ・オフィサー(Program Executive OfficersPEO)に、各PEOが監督する複数の調達プログラム間で資金をシフトする権限を与えるパイロット・プロジェクト案を紹介している。これには連邦議会の承認が必要である。

報告書はまた、現在1700を超えるBLIPEが存在する小規模なプロジェクトが、予算内で独自の予算項目とプログラム要素を持つようになり、国防当局がそれらの間で資金を自由に移動できるようになった。この場合、国防総省は事前に許可を得なければならない現在のシステムではなく、30日以内に連邦議会に資金を戻すことができる。どちらの変更も、失敗したり行き詰まったりしたプロジェクトから、より将来性のある、あるいは緊急性の高い他のプロジェクトに資金を移動させることを、より簡単にかつ迅速にするものである。

なお、エスパーとジェームズは報告書の序文を書いたが、本文を書いた訳ではないし、必ずしも全ての項目を支持しているわけでもない。そのため、小さな字で 「本中間報告書に示された分析および提言は執筆者個人の見解であり、必ずしも委員会の見解を反映するものではない」と断り書きが入っている。

これらの執筆者は、シンクタンク所属の研究者で元国防総省高官からコンサルタントに転身したホイットニー・マクナマラ、MITREのソフトウェア取得専門家であるピーター・モディリアーニ、ジョージ・メイソン大学の研究員時代に委員会のために働いたが、その後連邦上院軍事委員会のスタッフになったエリック・ロフグレンである。

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決定的に重要なこの10年間においてアメリカのソフトウェアの優位性をどう活かすか(How to leverage America’s software advantage in the decisive decade

ミッシェル・フロノイとウェンディ・R・アンダーソンは、この新しい論説記事の中で、国防総省がソフトウェアの開発と取得を加速させる方法についてのヴィジョンを述べている。

ウェンディ・R・アンダーソン、ミッシェル・A・フロノイ筆

2023年6月13日

『ブレイキング・ディフェンス』

https://breakingdefense.com/2023/06/how-to-leverage-americas-software-advantage-in-the-decisive-decade/

アトランティック・カウンシルは今年4月、国防総省とそのパートナー機関が技術取得のスピードアップを図るために取るべき措置を取りまとめた新しい報告書を発表した。以下の論説では、その報告書の執筆者の2人、ミシェル・A・フロノイとウェンディ・R・アンダーソンが、ソフトウェア取得をめぐる問題をどのように解決すべきかについて、さらに詳しく述べている。

ジョー・バイデン大統領の国家安全保障戦略(National Security Strategy)は、2020年代を「決定的に重要な10年間(decisive decade)」と呼んでおり、ウクライナにおけるロシアの侵略や台湾に対する中国の脅威の増大によって、そのことが強調されている。しかし、アメリカの国家安全保障に必要な多くの主要防衛装備計画(major defense acquisition programs)は、今後10年間で実現される予定はなく、各軍は2030年代まで、これまでのレガシー・プラットフォームに依存し続けることになる。

このギャップを埋める1つの方法は、国防総省全体で革新的なソフトウェアを採用し、活用することである。ソフトウェアは、アメリカ軍が既存のプラットフォームから新たな能力を引き出すと同時に、信頼できる安全な意思決定のスピードと資源配分の効率を高めるのに役立つ。

しかしながら、大規模で精巧な兵器システム用に設計された現在の取得システムは、ソフトウェア開発や「サーヴィスとしてのソフトウェア(software as a service)」モデルの活用に最適化されていない。また、従来の国防総省のソフトウェア取得は、しばしば苦痛を伴うほどの時間がかかり、エンドユーザーから切り離され、到着時には時代遅れになっている。

国防総省のソフトウェアへの取り組み方について、レガシー・システムを超える時が来た。今後、国防総省は、軍がソフトウェアを迅速に実戦投入し、テストやユーザーからのフィードバックによって継続的に改善できるようなプロセスを導入すべきである。ソフトウェアを多用するシステムは、運用上のニーズや脅威が発生した場合に対応できるよう、迅速に更新されるべきである。

ここ数年、いくつかの進展があった。国防革新会議(Defense Innovation Board)と国防科学会議(Defense Science Board)の両方が、ソフトウェア取得への新たなアプローチを求めており、その結果、ソフトウェア取得経路(software acquisition pathway)が創設された。2022年には、キャスリーン・ヒックス国防副長官が国防総省ソフトウェア近代化戦略(Department of Defense Software Modernization Strategy)に署名し、今年3月には実施計画が承認された。ソフトウェア取得経路は、迅速かつ反復的な能力提供を可能にするため、ソフトウェア開発に安全性テストを統合することで、従来の官僚主義的な障害を克服しようとするものである。

しかし、これはまだ有意義な形で実施されていない。今こそ、現在の勢いを利用して、ソフトウェアの採用を数十のプログラムから省庁の隅々まで確実に拡大する時である。

これが、私たちがアトランティック・カウンシルの「国防技術革新採用委員会(Commission on Defense Innovation Adoption)」に参加している理由の一つだ。先月、同委員会は、国防総省が最先端技術を採用し、運用ソリューションを迅速かつ大規模に戦闘員に提供する能力を加速させるための10の提言を強調した中間報告書を発表した。

最初の提言のひとつである国防技術革新ユニット(Defense Innovation UnitDIUの役割拡大は、既に部分的に実施されている。4月、ロイド・オースティン国防長官は、DIUを同長官直属に昇格させた。これは有望なスタートである。私たちの報告書は、DIUが国防総省全体でソフトウェアを含む商用技術の効果的な採用と拡大のための中心的な接点として機能するよう、適切な資源を確保することを勧告している。

DIUは、ソフトウェア取得経路のような既存の権限を活用するための組織的な擁護者となり、営利企業が国防総省とビジネスを行う方法を知るための調整機関となることができる。DIUはまた、サーヴィスおよび防衛機関が、商用ソリューションを購入するための方法を活用し、可能な限り共通技術を活用するよう努めるべきである。同時に、多くのソフトウェア企業が国防総省とビジネスを行う際に直面する障壁(クラウド環境へのアクセス、データ権利契約、施設や職員のクリアランスの確保など)を減らすことも重要である。

また、運用実験を獲得成果に結びつけることも極めて重要である。有望な技術が演習で実証されても、取得が遅れたり、まったく取得されなかったりすることが発生することが多い。アメリカ議会は、環太平洋合同演習や、その他の合同演習・サーヴィス関連演習のような、新しい技術やソフトウェア・アプリケーションをテストすることを目的とした主要な演習で実証される、運用上適切で成熟した商用技術のスケーリングのための資金を承認するよう勧告する。この資金は、有望なソリューションのより迅速な生産と実戦配備を可能にするため、連邦議会が提供したより柔軟な取得権限を採用するよう訓練され、インセンティヴを与えられた人員を擁するプログラム実行局または組織に向けられるべきである。

アメリカ会計検査院(Government Accountability OfficeGAO) は、国防総省のチーフ・デジタル・AI局(CDAO)は省全体のAI取得戦略を策定すべきであり、軍サーヴィスもAI取得プロセスをナビゲートするための独自のガイダンスを策定すべきであると述べている。

この資金は、民間資本を活用して生産と規模拡大を支援することができる、新設の戦略資本局(Office of Strategic Capital)を通じた融資保証の利用とマッチングされるべきである。この提言は、今日戦闘指揮官が直面している深刻な作戦上の課題に対する重要な解決策の獲得を劇的に加速させるために利用できる。

革新的なソフトウェアの取得を加速させることは、この10年間、アメリカの戦闘力を維持する上で極めて重要である。現在の課題は、アメリカの民間部門がこの技術の生産に苦労していることではなく、国防総省がこの技術を迅速かつ効果的に活用するのに苦労していることである。中国が2027年までに軍事近代化計画を完了させることを目指しているため、時間は限られている。幸いなことに、ソフトウェアの採用は、議会と国防総省の指導者が今行動すれば、実質的な進展を迅速に実現できる分野の一つだ。

ウェンディ・R・アンダーソン:パランティア社上級副社長(連邦政府、国家安全保障担当)。故アシュトン・カーター元国防長官首席補佐官を務めた。

※ミッシェル・A・フロノイ:ウエストエグゼク社共同創設者・経営パートナー。元国防次官。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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ビッグテック5社を解体せよ

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2024年11月5日に投開票が実施されるアメリカ大統領選挙は、現職のジョー・バイデン大統領(民主党)と前職のドナルド・トランプ前大統領(共和党)の一騎打ちになっている。各種世論調査の結果では、トランプが有利な状況になっている。しかし、ジョー・バイデンが追い上げている状況になり、大接戦になっている。アメリカはインフレが続き、一般国民の生活は苦しい状況が続いているが、経済は好調とされている。ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス紛争は終結が見えていない中で、バイデン政権は支援を継続している。

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 アメリカ大統領選挙は候補者への直接投票ではなく、各州での選挙人への投票が実施される。そして、各州で多くの票を取った候補者が選挙人を総取りする。各州の選挙人は、その州から選出される、連邦上院議員(人口や規模にかかわらず各州2名)と連邦下院議員(人口によって大きく異なる)の合計数となっている。連邦議員が出ていないワシントン・コロンビア特別区は3名となっている。一番多いカリフォルニア州で54名(上院議員が2名で、下院議員が52名)、一番少ないのはメイン州やワイオミング州の3名(上院議員が2名で、下院議員が1名)となっている。選挙人数は全米で合計538であり、過半数は270だ。

各候補の総得票数と選挙人獲得数の間に乖離があり、総得票数で勝っても、選挙人獲得数で負けた選挙というのは複数回ある。最近では、2016年(敗者はヒラリー・クリントン)と2000年の大統領選挙(敗者はアル・ゴア)がそうだった。

ちなみに、選挙人数が同数となる、あるいは、過半数を獲得する候補者が出なかった場合には、連邦下院で選挙を実施して大統領を決定するが(連邦下院では副大統領を決める)、その際には各州の代表が1票を投じる形になり、26州以上の支持を得た候補者が大統領になる。

 州ごとの各種世論調査の結果を細かく見ていき、それを選挙人獲得数に反映させていく作業を行った。その結果、トランプが268,バイデンが226、決めきれない州の合計が44となった。決めきれなかった州は、ペンシルヴァニア州(19)、ミシガン州(15)、ウィスコンシン州(10)である。2016年にドナルド・トランプを勝利に導いた、五大湖周辺州、以前はアメリカの製造業を支えたラストベルト(Rust Belt)と呼ばれる地域だ。2016年、2020年の大統領選挙で、この3つの州で勝利を得た候補者が最終的な勝利者となっている。

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※ペンシルヴァニア州

■2016年

○ドナルド・トランプ:297万733票(48.18%)、●ヒラリー・クリントン:292万6441票(47.46%)

■2020年

○ジョー・バイデン:345万8229票(49.85%)、●ドナルド・トランプ:337万7674票(48.69%)

※ミシガン州

○ドナルド・トランプ:227万9543票(47.50%)、●ヒラリー・クリントン:226万8839票(47.27%)

■2020年

○ジョー・バイデン:280万4040票(50.62%)、●ドナルド・トランプ:264万9852票(47.84%)

※ウィスコンシン州

■2016年

○ドナルド・トランプ:140万5284票(47.22%)、●ヒラリー・クリントン:138万2536票(46.45%)

■2020年

○ジョー・バイデン:163万866票(49.45%)、●ドナルド・トランプ:161万184票(48.82%)

 今回の選挙でもこれらの州は大接戦であり、ジョー・バイデンがこれら3つの州で勝利を収めることができれば、選挙人270名を獲得し、勝者ということになる。トランプとしては、2016年の選挙結果の再現を目指すことになる。

 バイデンが現職の強みで、ウクライナ戦争か、イスラエル・ハマス紛争で、大きな進展、具体的には停戦を実現することができれば、バイデンには追い風となり、再選ということになるだろう。トランプはバイデン政権の動きの遅さを攻撃しながら、ラストベルトに注力したいところである。

(終わり)
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 イスラエルのガザ地区での攻撃について、アメリカの各大学で抗議活動が盛んに行われているは日本でも盛んに報道されている。大学当局が排除する様子も映り、「せっかく一流大学に入っているのに、退学の危険があるのにどうしてこんなことをするのか」というコメンテイターがいた。暴力的、破壊的な抗議活動は批判されるべきだが、平和的な抗議活動は、大学のキャンパス内で行われるのは自然なことだ。日本でも学生運動が盛んだった時代もあるが、過激化、尖鋭化したために、暴力的、破壊的な運動になって、かえって、こうした活動ができにくくなってしまった。私の同郷のある友人は、東京のとある大学に進学する際に、「少々のギャンブルやお酒での失敗、恋愛関係での失敗は大丈夫。ただ、学生運動とか、政治に関心を持つとかは止めるように」と言われたと教えてくれた。

 ハーヴァード大学の教授であるスティーヴン・M・ウォルトは、抗議活動を行う学生たちに賛意を示しながら、「抗議活動でやるべきではないこと」をまとめた論稿を発表している。論稿の内容は、政治活動や抗議活動全般に言えることだと思う。

 ウォルトは、主流メディアやソーシャルメディアの影響や抗議活動の戦術について述べ、多くの学生たちと彼らの親族が卒業式での行動に慎重であるべきだと述べた。祝辞の邪魔をしたり、他の学生が卒業証書を受け取るのを序増したりはすべきではないとしている。また、学生たちに対し、自分たちの主張を表明する自由はあるが、他者の権利を尊重するようにと忠告している。根拠のない、過激な主張は支持を得られないので、そこにも注意するように求めている。ウォルトの忠告は非常に有益である。

(貼り付けはじめ)

アメリカ国内のパレスティナ支持の抗議者たちがすべきこととすべきではないこと(What America’s Palestine Protesters Should and Shouldn’t Do

-一人の同情を持つ観察者から大学生たちに向けたハウトゥガイド。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年5月6日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/06/what-americas-palestine-protesters-should-and-shouldnt-do/

シカゴで行われたパレスティナ支持のデモの中、シカゴ美術大学、ルーズベルト大学、コロンビア・カレッジ・シカゴの学生や教職員たちを阻止しようとする警察(4月26日)。

世捨て人(hermit)でないなら、全米の大学キャンパスが学生のデモで騒然となっているのをご存知だろう。そのデモでは、広場やその他の公共スペースにテントを張って野営するのが一般的だ。デモ参加者たちはガザ地区でのイスラエルの行動と、それに対するアメリカの支援に抗議し、即時停戦(immediate cease-fire)を要求し、時には、大学がイスラエルへの投資から撤退し、他の方法で距離を置くよう要求している。大学管理者たちは現在、理想主義的で情熱的な学生、怒りを持っている寄付者、イスラエル・ロビーの影響力のあるグループ、陰険な連邦議員、そして学問の自由の重要な要素が危険にさらされていると懸念する教員らの間で板挟みになっていることを認識している。

私は学生たちに同情するが、彼らの行動全てや一部の学生の発言全てに同意してはいない。私は、ハマスが10月7日にイスラエルで行ったことは、犯罪的で間違っていると疑ったことは一度もないが、その犯罪はイスラエルの無差別で意図的に残酷な過剰反応(Israel’s indiscriminate and deliberately cruel overreaction)を正当化するものでは決してない。また、ハマスの犯罪を理由に、パレスティナ人が数十年にわたって経験してきた苦しみや避難を無視するべきではない。これらの抗議活動に参加している、少数の人々は非難されるべき発言をしているが、参加者の大多数(かなりの数の若いユダヤ系アメリカ人を含む)は反ユダヤ主義(antisemitism)ではなく、苦境(plight)に立たされたガザ地区の住民たちの窮状に対する同情、アメリカがイスラエルに与え続けている支援に対する嫌悪感(disgust)、そして、パレスティナ人とイスラエル人双方のために平和の大義を推進したいという願望から行動していることは、複数の証言から明らかである。特に驚くべきことではないにしても、学生たちを批判する人々が、3万5000人のパレスティナ人の無差別殺害(indiscriminate killing)やイスラエルの重要な政府高官たちが表明した虐殺感情(genocidal sentiments)よりも、少数の無知な短気の嘆かわしい発言に腹を立てているように見えるのは、皮肉で憂慮すべきことである。一方の、少数の過激派の発言を非難するつもりなら、公平性を保つためには、もう一方の過激派も非難する必要がある。

これらの抗議運動は、その様々な目的を達成するのだろうか? 私には分からない。イスラエルの略奪(predations)とアメリカの共犯行為(complicity)に注目を集めることに成功した今、私は、特に大学の卒業式が始まろうとしている今、彼らが集めた共感と支持を知らず知らずのうちに損なうような行動を取るのではないかと心配している。

この件に関する私の考えは、私が住むマサチューセッツ州のあるリベラルアーツ・カレッジ(liberal arts college)での最近の経験に一部基づいている。私は元国務省職員とともにアメリカの中東政策に関する公開イヴェントに出席し、司会の教授による質問に答えるのに1時間ほど費やした。いくつかの点では同意したが、他の点では大きく意見が食い違ったものの、全体としては敬意を払いつつ、実りある意見交換となった。私は、アメリカの過去および現在の政策は大きく誤っており、アメリカは今やイスラエルが犯している犯罪に加担していると考えていることを明確にした。

イヴェントは質疑応答まで何事もなく終わった。他のスピーカーと私が聴衆からのいくつかの質問に答えた後、1人の学生指されて、立ち上がり、ガザ地区で起きていることを非難する長い声明を読み始めた。そのスピーチは、それまでの1時間に私たちが話した内容には何ら反応しておらず、要約して質問を投げかけるよう何度も要求されたにもかかわらず、その学生は声明を最後まで読み上げ、その後、おそらく十数人の他の学生のグループとコール・アンド・レスポンスで唱和(chant)を始めた。昭和はさらに数分間続き、数人の警備員が到着し、学生たちは立ち上がって自主的に行進して去っていった。

質疑応答は再開されたが、数分後、別の学生が指され、立ち上がり、同じ発言を繰り返し、もう1人の学生とともに再び唱和を始めた。最初のグループとは異なり、2人の学生はステージの前方を占拠し、立ち去ろうとしなかった。さらに数分後、主催者はイヴェントを終了させた。

学生たちの発言や唱和には、攻撃的なものや脅迫的なものは何もなかった。もし私たちに反論する機会があれば、彼らの言っていることの多くに同意すると言っただろう。しかし、そうすることで他の聴衆を敵に回してしまったのだから、イヴェントを強制終了させたのは重大な戦術ミスだと感じた。最初の中断の後に抗議が終わっていれば、抗議者たちは自分の主張を行い、パネリストたちは彼らの主張に反論し、聴衆はその応酬から利益を得ただろう。しかし、結果的には、聴衆の大半は、早々に終了せざるを得ないほどイヴェントが中断されたことに、目に見えて苛立っていた。

私自身、アメリカとイスラエルの関係についてかなり物議を醸すような激しい主張を行い、また、意見の異なる人々を含む聴衆の前でかなりの数の講義を行ってきたが、大学(およびアメリカ)にパレスティナ人の権利にもっと注意を払い、イスラエルの行動から距離を置くよう求めている学生たちに、頼まれもしないがアドヴァイスをしたい。

(建設的な行動についての追加的な提案については、ニコラス・クリストフのコラムを参照して欲しい)。

第一に、既にあなたの方向に傾いている人々の本能を強化し、まだ決心していない人々を説得しようとしていることを決して忘れないようにして欲しい。あなたは、熱心なシオニストたちに意見を変えるよう説得しようとはしないだろう。同様に、シオニストたちがあなたの意見を変えることもないだろう。しかし、まだ決心していない人々は通常、事実(facts)、論理(logic)、理性(reason)、証拠(evidence)に惹かれる。私の経験では、彼らは怒り(anger)、無礼(rudeness)、不寛容(intolerance)、そして特に、より知りたいという自分の欲求(desire)を邪魔する人にうんざりする。15年前、私がイスラエル・ロビー(Israel Lobby)について公開講演をしていたとき、聴衆の誰かが私に向かって怒鳴ったり、人身攻撃を始めたりするのはいつも助けになった。それはなぜだろうか? それは、聴衆の残りの人々がそのような行動を無礼で、私が言ったことへの反論に何の裏付けもないと見なし、したがって私がおそらく正しいと結論付けたからだ。

第二に、主流メディアにもソーシャルメディアにも十分にアクセスできる、潤沢な資金を持ち、組織化され、献身的な敵対勢力に立ち向かっていることを認識することだ。彼らは、行き過ぎた行為(excesses)、残念な出来事(regrettable incidents)、不注意(careless)や憎悪に満ちた発言(hateful statements)、怒りの表現(expressions of anger)などを利用して、運動全体の信用を落とそうとするだろう。それがうまくいかなければ、でっち上げるだろう。従って、相手側に更なる弾みを与えるような行動を取らないことは理にかなっている。

第三に、卒業式のとき、出席者たちがあなたに反対するほどに式典を妨害するのは間違いだ。出席する学生や家族のほとんどは、あなたほどこれらの問題に関心がなく、彼らの多くはガザ地区の破壊と、アメリカがそれを可能にしている方法について明確な意見を持っていないかもしれない。ほとんどの学生は、両親、祖父母、兄弟、友人の誇らしげな視線の下で、自分の成果を祝うために卒業式に出席する。それらの人々は皆、その祝賀を不可能にする人に対して怒りを覚えるだろう。確かに、彼らの怒りはパレスティナ人が苦しんでいることに比べれば、大きなことではないが、それは重要ではない。目標は、できるだけ多くの人々をあなたの側に引き入れることであり、あなたが達成しようとしていることを支持してくれるかもしれない人々を遠ざけることではない。

まとめよう。希望するなら、カフィエ(訳者註:アラブの頭に着ける四角い布)を着用。卒業証書(diploma)を受け取るために壇上を横切るとき、「今すぐ停戦だ(cease-fire now)」と叫ぶのも自由だ。しかし、他の人々がそのエリアに入るのを妨げたり、卒業式のスピーカー(たち)の声が聞こえないようにしたり、出席者がガザ地区で起きていることに腹を立てるのではなく、あなたに対して腹を立てるような環境を作ったりしてはならない。なぜなら、卒業式を台無しにしたところで、学生仲間やその家族は、ジョー・バイデン大統領やイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフに腹を立てることはないからだ。彼らはあなたに腹を立てるだろうし、それこそが相手側が望んでいることなのだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム、2021年)と『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店、2023年)で、取り上げたが、私はアメリカの産業政策に注目している。特に、アメリカ軍部とシリコンヴァレーの情報産業・IT産業との新・軍産複合体づくりが行われていることを指摘した。そして、ジョー・バイデン政権では、産業政策が重視されていることも併せて紹介した。

 産業政策とは、「政府の政策を利用して、市場だけが生み出す可能性のある結果とは異なる、できればもっと前向きな結果を生み出そうとすることだ(Industrial policy is the use of government policy to try to produce an outcome that’s different—hopefully, more positive—than what the market alone is likely to produce)」と定義されている。政府が産業を保護し、指導して、より良い結果を生み出そうとするもので、その元祖は日本である。その研究を行ったのが、日本研究の大家だった故チャルマーズ・ジョンソンだった。このことも詳しく拙著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で紹介している。

 そして、現在、産業政策によって、急激な経済発展を成功させ、アメリカの地位を脅かすまでになっているのが中国だ。そして、アメリカ国内では、「中国の成功をけん引している産業政策なるものを私たちやるべきだ」という主張が出ている。下に紹介する論稿はまさにそれだ。現在、電気自動車、バッテリー、クリーンエネルギー(太陽光パネルなど)、人工知能、ロボット工学といった最先端分野で、中国がアメリカをリードしている分野が多い。それは、中国が産業政策をうまく使ったからだ。中国の産業政策の特徴は、「中央統制[central control](ただし反抗的な地方[recalcitrant localities])、巨額の補助金[massive subsidies](ただし熾烈な競争[ferocious competition])、保護主義[protectionism](ただし外国投資の勧誘[courting foreign investment])が入り混じった混乱した状況」であるが、「保護をしながら同時に激しい競争をさせる」「外資導入も積極的に行う」ということにある。加えて、こうした政策を首尾一貫して行える政府機関も存在する。それが中国国家発展改革委員会(China’s National Development and Reform Commission)である。日本では、通商産業省が「経済参謀本部(Economic General Staff)」であった。

 この論稿で重要なのは、アメリカ政府は権力、職掌が分立しており、こうした1つの本部機能を持つことは難しいのであるが、ジョー・バイデン政権1期目の前半は、ジェイソン・マセニー(Jason Matheny)という人物を、「技術・国家安全保障担当大統領次席補佐官(deputy assistant to the president for technology and national security)、国家安全保障会議(NSC)技術・国家安全保障担当調整官(National Security Council [NSC] coordinator for technology and national security)、そして、ホワイトハウス科学技術政策局(Office of Science and Technology PolicyOSTP)国家安全保障担当副局長の3つの異なる役職に任命した」ということだ。この人物が調整役となって、首尾一貫した政策の陣頭指揮(国内政策と対外政策)を執っていたということだ。現在はランド研究所所長となっている。この人物の存在が非常に重要ということになる。

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ジェイソン・マセニー

 米中は最先端の産業分野において官民協働で戦っている。その戦いは激しいものであるが、そのような戦いができることは羨ましい。しかも、産業政策を立案し、成功させたのは、戦後日本であった。日本がこの戦いに加われないほどに落ちぶれ果ててしまったこと花とも残念なことである。

(貼り付けはじめ)

迷走するアメリカの産業政策は中国から教訓を得ることができる(America’s Flailing Industrial Policy Can Take Lessons From China

-北京の経験は、数々のチャンスと罠(opportunities and traps)の両方を示す行程表(ロードマップ、roadmap)である。

ボブ・デイヴィス筆

2024年4月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/11/america-industrialpolicy-china-economics-infliation-manufacturing/

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ジョー・バイデン大統領率いるホワイトハウスは、ここ数十年で最も野心的な産業政策プログラム(industrial policy program)を策定し、海外との競争によって、国内で衰退した戦略的産業(strategic industries)を復活させようとしている。その目的は次の通りだ。クリーンエネルギー(clean energy)と半導体製造(semiconductor manufacturing)に重点を置き、アメリカの産業と技術力を強化することで、中国の先を行くことである。

しかし、北京と対決しようとするあまり、ワシントンは中国が何十年にもわたり西側諸国(the West)に追いつくことを目的とした産業政策を試行錯誤しながら(through trial and lots of errors)学んだ教訓を無視してきた。米中両国の政治体制が異なっているが、ワシントンが学ぼうと思えば学べることはまだたくさんある。

アメリカは少なくとも第二次世界大戦後、産業政策の一分野、すなわち新技術の育成(fostering new technologies)において主導してきた。ジェット飛行機からスーパーコンピューター、通信衛星、インターネットに至るまで、世界経済に革命をもたらす技術の開発には、多くの場合、国防総省を介した(via the Pentagon)連邦資金(federal dollars)と支援が重要な役割を果たした。しかし、アメリカが日本のような外国の競争相手に負けることに悩み始めた1980年代初頭以降、政府は重要産業の再国内化で惨めに失敗してきた。

アメリカ政府が何も試さなかった訳ではない。ロナルド・レーガン元大統領は国内の小型車製造を復活させようとし、ジョージ・HW・ブッシュは薄型テレビ(flat-screen televisions)に狙いを定め、ビル・クリントンは小型車に再挑戦した。バラク・オバマはソーラーパネルを推進した。ドナルド・トランプは電気通信機器を推した。どれも成功しなかったが、その主な理由は、補助金を得るアメリカ国内生産よりも、海外生産の方がはるかに安価なままだからである。

だからといって、ジョー・バイデン大統領の取り組みが絶望的であることを意味する訳ではないが、課題の大きさと、他の国の経験に目を向ける必要性を指摘している。中国は産業政策で失敗したこともあるが、繊維、タイヤ、電子機器製造、太陽エネルギー、風力発電、バッテリー、高速鉄道など多様な分野で、西側のライヴァルに打ち勝つ強力な産業を自国内で構築するために政府の政策を利用してきた。過去45年間、こうした成功によって、中国は貧しい国から、世界第2位の経済大国に成長した。

ホワイトハウスの元国際経済担当シニア・ディレクター、ピーター・ハレルは次のように語っている。「私の知る限りでは、バイデンのホワイトハウスでも中国の産業政策を研究する努力はなされてきた。しかし、その目的は、私たちにとってプラスになる教訓があるかどうかを確認することよりも、中国からの報復や被害を軽減する方法を見つけ出すことだった」。

第一に、定義だ。産業政策とは、政府の政策を利用して、市場だけが生み出す可能性のある結果とは異なる、できればもっと前向きな結果を生み出そうとすることだ(Industrial policy is the use of government policy to try to produce an outcome that’s different—hopefully, more positive—than what the market alone is likely to produce)。基本的に、政府は、経済成長の基礎となる産業の発展や技術の進歩のために投資する。

中国の産業政策をアメリカと比較するのは難しい。中国は一般的に西側諸国に追いつくことに重点を置いてきたのに対し、アメリカは他国よりも抜きんでる(stay ahead of the pack)ことを目指してきた。中国は、全権を握る(しかししばしば目に見えない)共産党をトップとする独裁的な政府(autocratic government)によって運営されている。ワシントンでは、経済における政府の役割についてまったく異なる見解を持つ2つの政党の間で権力がシフトしている。

中国の産業政策を説明する明確なハンドブックも存在しない。中央統制[central control](ただし反抗的な地方[recalcitrant localities])、巨額の補助金[massive subsidies](ただし熾烈な競争[ferocious competition])、保護主義[protectionism](ただし外国投資の勧誘[courting foreign investment])が入り混じった混乱した状況だ。しかし、このシステムにはアメリカが学ぶことができる部分がまだある。

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中国の東部、山東省の煙台港で輸出を待つ数百台の電気自動車(1月10日)。

中国は世界的な補助金のチャンピオンだ。アメリカが世界の軍事支出を支配しているのと同じように、補助金支出を支配している。戦略国際​​問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)の中国専門家スコット・ケネディは、2019年に中国はGDPに占める割合で、アメリカの12倍の補助金を支出したと推定している。これらの補助金には、研究開発費(R&D dollars)や税額控除(tax credits)、安価な資金調達(cheap financing)、地価の割引(cut-rate land prices)、政府による優先購入(government purchasing preferences)、さまざまな投資基金の支払い(investment fund payouts)などが含まれていた。

バイデン政権のある元高官によれば、バイデンの税控除と補助金は数年間で6000億ドルに達する可能性があるという。しかしケネディは、それが中国との格差を縮めることにつながるかどうかは疑問であると述べている。ケネディは中国を「先進国には同輩がいない特異な存在(an outlier that has no peers in the industrialized world)」と呼んでいる。

中国専門の研究者たちは、中国の成功の秘訣は、単なる支出ではなく、驚くべきことに競争(competition)にあると述べている。中国共産党と中央政府は産業政策の優先順位(industrial policy priorities)を設定するが、計画を実施し、支出のほとんどを賄うのは地方自治体に委ねられている。地方レヴェルでは、地元の党幹部が中国政府の意向を実行して昇進を目指して争っているため、競争は熾烈である。

シカゴ大学の経済学者チャン・タイ・シエは、この競争が計画されることはほとんどないと語った。中央政府は、自らの制御を超えた競争を引き起こすよりも、むしろ州のチャンピオンを生み出すことに努めたいと考えている。しかし、政治的に安全と見なされているため、中国政府が優先分野に指定している分野に資金が殺到している。「中国の産業政策の秘訣は地方政府間の競争だ(The secret sauce of China’s industrial policy is competition among local governments)。各都市で役人たちは(経済的に)意味のないことをしているが、彼らは党階層内の人々を喜ばせたいのである」と述べた。

戦略国際問題研究所(CSIS)の調査によると、電気自動車(electric vehiclesEVs)が優先事項になってから、2020年までに全米約400社が電気自動車ビジネスの様々な分野に参入した。同じプロセスが太陽エネルギーでも起こり、現地レヴェルでの競争が激しすぎて太陽光パネルの価格が暴落し、中国企業は収益を上げるために輸出に目を向ける一方で、事業を存続させるために政府の融資に頼った。

これら全てが外国の競合他社を市場から追い出す巨大な力を生み出した。中国は現在、世界需要の3倍の太陽光パネルを生産していると『フィナンシャル・タイムズ』紙は報じた。 戦略国際問題研究所(CSIS)の研究者イラリア・マゾッコによると、昨年の中国の太陽光パネル、電池、電気自動車の輸出は鉄鋼および関連品目の輸出とほぼ同額だった。太陽光パネル業界は長年中国特有の過剰生産(overproduction)が蔓延してきた業界だという。

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ジョージア州ノークロスの同社を訪問した太陽電池会社スニバのマット・カード社長(中央)がジャネット・イエレン米財務長官としている(2024年3月27日)。

ジャネット・イエレン米財務長官は、最近の中国訪問中に中国の財務長官に対し、クリーンエネルギー製品の超安価な輸出を止めるよう強く求めたと述べた。イエレン財務長官は、最近の講演で「過剰生産能力は、アメリカの労働者や企業、世界経済だけでなく、中国経済の生産性や成長にもリスクをもたらす」と述べた。

中国製品の価格は非常に安いので、アメリカ国内の太陽光発電会社の一部は、インフレ抑制法(Inflation Reduction ActIRA)の補助金だけでは中国に代わる代替手段を生み出すのに十分ではないと主張している。『ウォールストリート・ジャーナル』紙の試算によると、IRAインフレ抑制法可決以降にアメリカで発表された新たな太陽光パネル生産量の約4分の1を中国企業が占めており、中国企業は最大14億ドルの補助金を受け取ることになる。

アメリカに本社を置く最大手の太陽光発電メーカーである「ファースト・ソーラー」社のマーク・ウィドマー最高経営責任者(CEO)は連邦上院委員会で、「インフレ抑制法の太陽光エネルギー税額控除の最大受益者が中国になる大きなリスクがある」と述べている。

それでも、補助金は中国の成功を保証しているものでもない。中国を中心とした市場調査会社であるガベカル・ドラゴノミクスの技術アナリストであるダン・ワンは、中国は半導体の設計と製造に何十億ドルもの補助金を費やしているが、先進的なコンピューターチップの製造において市場リーダーである台湾積体電路製造(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.TSMC)に少なくとも5年遅れを取っていると推定している。

資金の洪水は腐敗も招く。清華紫光集団(Tsinghua Unigroup Inc.)は、中国政府から巨額の半導体製造補助金を受けった。清華紫光集団を率いた趙偉国は、中国の汚職防止当局から「自分が経営する国有企業を私的に支配とした」との申し立てを受けて拘束された。

ここには、アメリカにとっていくつかの教訓がある。第一に、補助金だけでは産業政策を進めるのに十分ではない。第二に、中国が優先している産業で、中国と競争するには莫大な費用がかかり、おそらくアメリカがほぼ提供しないレヴェルの保護主義が必要となる。

国内企業の業界団体であるアメリカ太陽エネルギー製造業者連合のエグゼクティブディレクターであるマイケル・カーは、政府は何が必要なのかの一例として砂糖産業に注目すべきだと述べた。そこでは、アメリカは価格が一定の水準を下回った場合に、砂糖のローン返済を受け入れており、ミシガン州、ミネソタ州、およびカリブ海気候とは程遠い他の場所で砂糖が栽培されるという奇妙なシステムを支持している。

しかし、おそらく最も重要なことは、中国の例は、産業政策が競争を促進することを保証することの重要性を示しているということになるだろう。ピーター・ハレルは、「私たちが産業政策を考えるとき、補助金や税金補助金が少数の企業を固定化し、既存企業を弱体化させないようにすることを考える必要がある」と語った。

バイデン政権の国家経済会議前委員長ブライアン・ディーズは、バイデン政権の計画のように、現金補助金よりも税額控除に依存する方が競争を促進し、中国に蔓延する過剰生産を回避するはずだと述べた。税額控除が認められる前に、投資家たちは市場を評価し、収益性があるかどうかを判断し、資金を投下する必要がある。政府が決定を下している訳ではない。利益を追求する企業が決断しているのだ。

ディーズは次のように語っている。「補助金は収益を向上させる。しかし、最終的には、誰かが多額の資本を危険に晒さねばならない。返済能力がなければ、利用率は低くなる」。

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左:2020年1月22日、中国北部の河北省邯鄲の工場でフェイスマスクを生産する労働者たち。右:2月15日、フロリダ州マイアミ北部にある家族経営の医療機器工場で呼吸用マスクを生産する労働者たち 202115日。

中国の産業政策目標は、1970年代後半に経済が世界に開放されて以来、変化してきた。当初、中国は膨大な、かつ低賃金の労働力を利用して、繊維、アパレル、エレクトロニクス製造業を中国に誘致した。それ以降、北京はより野心的になり、現在ではロボット工学、半導体、クリーンエネルギー、人工知能などの未来の技術でリーダーシップを発揮することを目指している。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の経済学者バリー・ノートンは、中国は特に「ショートボード(short board)」技術と呼ばれるもの、つまり西側諸国の封鎖によって中国が機能不全に陥る可能性がある分野に重点を置いている、と指摘している。例えば、トランプ政権以降、中国は中国のコンピューター産業がアメリカ主導の輸出規制に耐えられるよう、国内の半導体設計・製造装置メーカーの強化(strengthening its domestic semiconductor design and manufacturing equipment makers)に注力してきた。

産業政策に依存し過ぎることには、明らかに敗者となるプロジェクトを、撤退するべき時期よりも、はるかに長く続けることなどのマイナス面もある。たとえば、国際競争力のあるガソリン車、燃料電池、水素エネルギーの開発という失敗した取り組みに資金をつぎ込むことなどだ。しかし、多くの場合、中国は挫折もあったが、必要な調整を行ってきた。自動車分野では、ガソリン車が中国の産業政策計画から除外されるようになった。その代わりに、電気自動車が登場した。5カ年計画や指導者が次の選挙を心配する必要がないシステムに対する中国の執着を真似するよう、アメリカに勧める人はいないが、民主的な制度においては、関与と長期計画は米国の弱点となるのは必然であろう。

アメリカの繊維メーカーは既に、バイデン政権が新型コロナウイルス感染拡大期間中に当初提案された2021年の法律で義務付けられている、アメリカ製のマスク、ガウン、その他の個人用保護具の購入や、国防生産法(Defense Production Act)への資金提供がうまくいかずに、役に立たなかったと不満を漏らしている。全国繊維組織評議会のキンバリー・グラスは、アメリカ企業は約束された注文に向けて準備を進めたが、連邦政府機関は安価な中国からの輸入品を購入し続けたと述べている。

あるホワイトハウス高官は、退役軍人省はアメリカ製の物品129点を特定し購入を開始しており、他の機関も同様の取り組みを始めていると述べた。しかしグラス会長は、彼女のグループのメンバーたちはアメリカ製の注文を見たことがないと語った。

アメリカ政治の分裂状態について考えると、バイデンのクリーンエネルギー計画のどれだけが第二期トランプ大統領の任期後にも存続できるかは、まったくもって不透明だ。トランプ大統領は現在、電気自動車を雇用の喪失者として非難し、自動車産業は政府の自動車推進政策によって「暗殺」されていると主張している。そして、クリーンエネルギーに対する補助金や税制上の優遇措置の大部分を盛り込んだインフレ抑制法は、共和党からの投票を1票も得られずに可決された。半導体製造に対して、390億ドルの補助金と税額控除を提供するCHIPSおよび科学法(CHIPS and Science Act)は、超党派の支持を得ており、トランプ政権での提案として始まったため、より安全であるように思われる。

過去に共和党政権は民主党の産業政策努力を阻止しようと努めてきた。例えば、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、超効率のガソリン車を開発するというクリントン政権の取り組みを即座に中止した。連邦議会共和党はオバマ大統領の太陽光パネル開発計画を縮小した。

ディーズは、地方政治での動きもあり、クリーンエネルギーへの補助金は政権交代後も存続するとみている。インフレ抑制法可決後に行われたクリーンエネルギーへの投資の約75%は共和党が勝利した連邦下院選挙区で実施された。ディーズは、「産業能力に、より精力的な方法でもっと投資する必要があるという基本的な命題には、より継続性がある」と述べている。

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北京のビルに飾られている巨大な中国国旗の近くで自身の電話を見る男性(2017年10月23日)。

アメリカが中国指導部の経済支配を真似て近づくことは、たとえそれを望むとしても、不可能なことだ。中国には、小規模な共産党指導グループが大規模な政府計画システムを監督する並行システムがあり、優先事項の承認を得るために様々な機関や国有企業によるロビー活動が渋滞するほどに活発である。

アメリカの産業政策へのアプローチは様々な機関の間で分裂しており、国家計画委員会(state planning agency)の後継である中国国家発展改革委員会(China’s National Development and Reform Commission)のような全体をまとめる機関はない。商務省が半導体プログラムを運営し、エネルギー省、財務省、内国歳入庁、その他の機関がクリーンエネルギー奨励金について発言権を持ち、国防総省が半導体や通信技術に関連する他のプログラムを管理している。ホワイトハウスの無名機関である科学技術政策局(Office of Science and Technology PolicyOSTP)が調整役として起用される可能性もあるが、大きな影響力を持つことはほぼない。

産業政策の監督を調整するため、ホワイトハウスは著名なテクノロジスト(technologist)であるジェイソン・マセニーを、技術・国家安全保障担当大統領次席補佐官(deputy assistant to the president for technology and national security)、国家安全保障会議(NSC)技術・国家安全保障担当調整官(National Security Council [NSC] coordinator for technology and national security)、そして、ホワイトハウス科学技術政策局(Office of Science and Technology PolicyOSTP)国家安全保障担当副局長の3つの異なる役職に任命した。国家安全保障が技術の進歩にますます依存する中、ホワイトハウスは政策が「一致している(in sync)」ことを確認したいとマセニーは語った。マセニーが国防シンクタンクのランド研究所所長に就任するために2022年に政権から離れた後は、彼の仕事は複数の人物に分担されていた。

オバマ政権で、国家安全保障委員会に勤務した経験を持つ、現在は政治コンサルティング会社バウンダリー・ストーン・パートナーズ社に勤めるクリスティン・ターナーは次のように語っている。「全体像を把握できる人は誰もいない。業界政策を全面的に機能させるための全ての糸を引く責任を負う閣僚レヴェルの担当者は存在しない」。長年にわたり、商務長官や新たな競争力強化担当政府機関(new competitiveness agency)を産業政策調整担当(industrial policy czar)にするという提案があったが、政府諸機関の間で、そして、連邦議会の各委員会の間の対立のため、実現には至らなかった。

あるホワイトハウス高官は、非常に多くの様々な機関が産業政策の取り組みに関与する必要があることで、アメリカの制度には利点があると反論した。「これは政府全体のアプローチだ」とこの人物は述べ、この計画はホワイトハウス次席補佐官のナタリー・クイリアンが調整していると述べた。

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オハイオ州ジョンズタウンにあるインテル社の新しい半導体製造工場を訪問するジョー・バイデン米大統領(2022年9月9日)。

ある意味、アメリカは中国の産業政策への取り組み方を真似し始めている。アメリカは何年もの間、中国がアメリカの経済モデルに従うことに利点を見出し、中国は保護主義を続ければ貿易が遮断されることを恐れるようになると考え、アメリカを中国の自由市場モデルとして提示しようとしてきた。しかし、それはもはや行われていない。現在、アメリカ政府も中国政府と同程度に、国内産業を活性化している。ライヴァル国が不利になる行動を取る理由として「互恵性(reciprocity)」を挙げる可能性が高い。

バイデン大統領が、中国の政府諸機関が収集する可能性のあるデータを送信しているとして、中国製電気自動車のアメリカへの輸入を禁止する大統領令案を発表したとき、バイデンの考えは明確だった。バイデン大統領は「中国は、中国で操業するアメリカ車やその他の外国車に制限を課している。なぜ中国からのコネクテッドヴィークル(connected vehicles)が安全対策措置なしで、我が国で走行することを許可されなければならないのか?」と述べた。

おそらく、中国の例が示すアメリカ政府にとって最も難しい問題は、このような保護主義にどこまで傾くかということだろう。中国の成功の重要な部分は、通信製造(telecommunications manufacturing)などの分野で巨大な国内市場を遮断したことだ。これにより、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)は、国際競争に必要な研究開発や自動化の費用を賄える確実な収益基盤を手に入れた。中国はインターネットサーヴィスでもこの方式を繰り返し、百度(Baidu)はグーグルやその他の企業との競争から自由に成長できるようになった。

しかし、中国は多くの産業で海外からの投資も奨励してきた。中国は、合弁事業(joint ventures)、規制(regulations)、審査委員会(review committees)、そしてあからさまな盗用(outright theft)を利用して、濫用される可能性のある秘密技術を学習してきた。その例は数多く存在する。中国で事業を行う条件として、日本とヨーロッパの新幹線メーカーは中国鉄道省と中国企業にノウハウを移転した。やがて、中国企業が強力な競争相手となった。中国が電気自動車市場を開拓していた頃、外国自動車メーカーはアップグレードを支援するために地元企業からバッテリーを購入する必要があった。一方、中国資本のヴォルヴォ・カー・グループは韓国から、より先進的なバッテリーを購入することができ、電気自動車での競争力が高まった。

トランプ政権は、中国がアメリカに輸出する品目の4分の3に関税を課すことで、アメリカ国内市場の保護に努めたが、中国企業がサプライチェーンを再構築し、ヴェトナムとメキシコでの事業を通じて、アメリカに輸出できるようにしたため、大きな影響はなかった。審査に関わった弁護士らによると、バイデンは関税を維持し、中国企業が国家安全保障審査に合格してアメリカ企業を買収することをほぼ不可能にすることで保護を倍増したということだ。市場調査会社ロジウム・グループによると、中国の対アメリカ投資は2016年の540億ドルから2022年には約15億ドルに急減した。フォードが電気自動車での競争力を高めるために、中国の「コンテンポラリー・アンペレックス・テクノロジー」社から先進的な電池技術のライセンス供与を受けるという契約でさえ、連邦議会とヴァージニア州知事から非難を浴びた。

外国投資に対する偏見は、中国とその他の少数の敵対国家にのみ適用される。アメリカの産業政策計画は一般に海外投資(foreign investment)に大きく依存している。半導体メーカーに対するCHIPS法の補助金は主に、台湾に本拠を置くTSMCに、アメリカに先進的な工場を建設するよう説得する方法として始まった。最近、バイデン政権はアリゾナ州の新しい半導体製造工場3カ所へのTSMCの650億ドルの投資を支援するため、TSMCへの66億ドルの補助金を承認したが、プロジェクトの作業進行は予定より遅れている。これは、インテル社やその他の米メーカーへの補助金に、追加されるものである。

中国に関して、アメリカのアプローチは曖昧だ。バイデン政権が太陽光発電の設置拡大を推進しているので、アメリカ国内に新設される中国資本の太陽光パネル工場は税額控除の対象となる可能性がある。しかし、中国の電池メーカーや半導体企業は一般的にそうではない。そこでは、アメリカは中国企業を締め出し、アメリカ企業が技術分野で中国企業を追い越すことを期待している。

戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家であるケネディは、中国企業がアメリカの市場リーダーから学んでアップグレードしたのと同じように、中国企業がリーダーとなっている、バッテリーや電気自動車、その他のグリーンテクノロジーなどの分野で、中国からの投資が必要だと述べた。

ケネディは次のように指摘している。「私たちは、表が出ればあなた方の勝ち、裏が出れば私たちの負けというアプローチを採っている。もし、私たちが技術的に進んでいるのであれば、中国に技術を与えたくないので中国からの投資は望まない。私たちが遅れている場合、それは国家安全保障上のリスクであると感じ、従って中国に依存したくないということになる」。

中国企業への投資優遇措置を全面的に禁止するよりも、リスクと利益を比較検討するアプローチの方が、筋が通っている。中国はまさにその手法を使っている。中国は、テスラの高級電気自動車生産能力を高めるために上海に工場を建設するよう奨励しようとしたとき、様々な減税措置や低利融資を提供した。

同様に、アメリカが明らかに遅れている、バッテリー分野での中国の投資を奨励することは、アメリカで生産する中国企業に、非中国企業が受けるのと同じ優遇措置を与えることを意味する。太陽光発電では、サプライチェーンを多様化する方法の1つとして、アメリカで生産する全ての企業(中国企業、非中国企業を問わず)は、使用する材料が中国以外の供給源から来ている場合、より多くの利益を得るべきである。

アメリカは、中国がこれまで非常にうまく利用してきた別のアプローチ、つまり、アメリカへの投資承認と引き換えに技術へのアクセスを要求するというアプローチを試すこともできる。アメリカでは連邦下院が、アメリカに友好的な買い手に販売されない限り、アプリを禁止する法案を可決したが、これは北京へのシグナルとして解釈すべきだ。基本的に、この法案は、TikTokの基盤となる技術を西側諸国の管理下に移すことを求めている。

技術交流(technology exchange)は、中国がアメリカでビジネスを行うために支払う代償となる可能性がある。カリフォルニア大学サンディエゴ校のエネルギー専門家マイケル・デイビッドソンは次のように指摘している。「非常に皮肉な状況がある。アメリカは、技術移転(technology transfer)を強制する中国の保護主義政策について長い間不満を述べてきた。アメリカには、それを覆し、中国から有利な条件で技術を手に入れるチャンスがある」。

この種の圧力戦術を使うことは、被害者が一流の弁護士や独立した司法機関にアクセスできる民主的なシステムにおいては難しいかもしれない。それでも、何がうまくいき、何がうまくいかないかを知るために、アメリカ人は中国の経験を研究するのがよいだろう。

※ボブ・デイヴィス:『ウォールストリート・ジャーナル』紙で長年にわたり、米中経済関係の特派員を務めた。共著に『超大国の対決: トランプと習近平の戦いが新たな冷戦をどのように脅かすか(Superpower Showdown: How the Battle Between Trump and Xi Threatens a New Cold War)』がある。ツイッターアカウント:@bobdavis187

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 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカ国民の間で、「アメリカで内戦が起きる」「アメリカで第二次南北戦争が起きる」という不安感が漂っている。このブログでも既に紹介したが、今年の4月に全米で「シヴィル・ウォー(Civil War)」(アレックス・ガーランド監督作品)という映画が公開され、ヒットした。「そんな馬鹿な」という思いもありつつも、「アメリカ国内の内戦はもしかして本当になるかもしれない」という不安が存在する。

 世界の内戦の研究を専門にしている政治学者(カリフォルニア大学サンディエゴ校教授)バーバラ・F・ウォルターの著作『アメリカは内戦に向かうのか(How Civil Wars StartAnd How to Stop Them)』(井坂康志訳、東洋経済新報社、2023年)が日本でも刊行された。アメリカでは2022年に刊行されている。

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バーバラ・F・ウォルター

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アメリカは内戦に向かうのか

 ウォルターはアメリカ国内で内戦が勃発する可能性に警鐘を鳴らしている。ウォルターによれば、内戦が発生するのは、「完全に民主政体でもなく、完全に独裁政体でもない」アノクラシー(anocracy)状態にある時だと述べている。そして、人種、民族、宗教の線で分断が起きるアイデンティティ政治(identity politics)に戻っている場合に、2つ以上のアイデンティティ(例えば、経済各社と人種)が結びついて発生したグループである「超派閥(super faction)」が政治的暴力を主導するということになる。こうした場合に、元々支配的な地位にあったグループがその地位を失い(「格下げ[downgrade]」と呼ばれる)、その憤激によって暴力に走るということになる。総体的には、「希望」が失われて、最後に武器を取るということになる。

 アメリカは民主政体の総本山である。民主政体の素晴らしさをアメリカの価値観とし、世界中に拡散しようとしてきた(そして、失敗してきた)。アメリカの観点からすれば、近代化とは民主化と資本主義化である。しかし、アメリカ国内で、民主政治、民主政体に対する疑義が出ている。2020年の選挙では、トランプ陣営と支持者たちは、「選挙は盗まれた」と主張した。彼らからすれば、アメリカの民主政体は傷つけられ、機能しないようになっている。「国の状態を良くしよう」という思いで、選挙という手段を使っても、選挙結果が不正であれば、どうしようもないではないかということになる。「希望」は失われ、「憤激」が生じる。ここに、内戦ぼっ発の可能性が生まれる。また、経済各社と人種が結びつき(トランプを支持した、貧しい白人[経済格差と人種])、暴力を主導するグループである超派閥が生まれる。

 私は、もしアメリカが内戦状態になるとするならば、選挙後だと思う。選挙までは、まだ希望があると考える人たちは多いだろう。しかし、ジョー・バイデン、ドナルド・トランプのどちらが勝利しても、負けた方は不満を持つ。これまでだって、負けた方は不満を持ってきた訳だが、暴力に至るまでの怒りや悲しみ、絶望の程度がかなり上がると私は考える。アメリカで内戦まで進まなくても、政治的暴力は各地で起きるだろう。それだけでも、アメリカの民主政治体制を毀損するものになるし、アメリカ経済にも悪影響が出るだろう。アメリカ国債の金利は上昇し、ドル安に振れるだろう。そうなれば、アメリカ国内の人々の生活は厳しいものとなる。そうなれば、益々不安、不満が募るということになる。アメリカ政治の見通しは暗いものとなる。アメリカ国債の世界第債の保有国は日本だ。このような不安な米国債については、保有量を減らすこと、「貸したお金を返してもらう(現金化)」ことをして、国内に還流する方が良いのではないか。

(貼り付けはじめ)

アメリカは本当に第二次内戦に向かっているのか?(Is the US really heading for a second civil war?

-国内が分極化し、共和党が権威主義(authoritarianism)を支持する中、一部の専門家は北アイルランド型の反乱(Northern Ireland-style insurgency)を懸念しているが、他の専門家たちは、武力衝突(armed conflict)は依然としてありそうにないと主張している。

デイヴィッド・スミス筆

2022年1月9日

『ザ・ガーディアン』紙

https://www.theguardian.com/us-news/2022/jan/09/is-the-us-really-heading-for-a-second-civil-war

ジョー・バイデンは、アメリカが正常に戻ることを願って1年を過ごした。しかし、先週の木曜日、連邦議会議事堂での暴動から1周年を迎えたこの日、大統領はついにアメリカの民主政治体制(American democracy)に対する現在の脅威の規模を認識した。

バイデンは、1年前に暴徒が群がったスタチュアリーホールで次のように語った。「この瞬間、私たちは決断しなければならない。私たちの国は、どのような国家になるだろうか? 政治的暴力を規範として受け入れる国になるのか?」。

アメリカ国内外を問わず、多くの人々が今、この問いを投げかけている。1月6日のような国家的な悲劇でさえも、人々を更に分裂させるだけであるような、深く分断された社会では、あの日が不安(unrest)、紛争(conflict)、国内テロ(domestic terrorism)の波の始まりに過ぎないのではないかという恐れがある。

最近の複数の世論調査の結果を見ると、政府に対する暴力という考えを堅持しているアメリカ人はかなり少数派であることが分かる。第二次アメリカ内戦(第二次南北戦争)の話さえ、フリンジ・ファンタジーからメディアの主流になりつつある。

今週、『ニューヨーカー』誌に掲載された記事の見出しは、「南北戦争が目前に迫っている?(Is a Civil War ahead?)」だった。金曜日の『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムのタイトルは「私たちは本当に第二次南北戦争(内戦)に直面しているのか?(Are We Really Facing a Second Civil War?)」だった。『ワシントン・ポスト』紙の最近のコラムでは、3人の退役したアメリカ軍将軍が、もう1回クーデターの試み(coup attempt)が起きれば「内戦に発展しかねない」と警告している。

そのような概念が、公の場での話題になりつつあるという単なる事実は、たとえそれが依然としてあり得ないと主張する人もいるとしても、かつては考えられなかったことが考えられるようになったということを示している。

バイデンの超党派協力への願望(Biden’s desire for bipartisanship)が、共和党の急進的な反対によって衝突している。そうした状況の中で、ワシントンでのわだかまりによって、内戦が起きるのではないかという懸念が大きくなっている。木曜日のバイデン大統領の発言は、「私は誰に対しても、民主政体の喉元に短剣を突き立てるような行為をすることを許さない(I will allow no one to place a dagger at the throat of our democracy)」というもので、アメリカの主要政党の1つが権威主義を受け入れている以上、通常通りにはいかないことを認めているように見えた。

この点を例示すると、共和党はトランプ大統領の選挙敗北を覆そうとした暴徒を民主政体のために戦った殉教者(martyrs fighting for democracy)に仕立て直し、歴史を書き換えようとしているため、記念式典に出席した共和党議員はほとんどいなかった。保守的なフォックス・ニューズネットワークで最も注目されている司会者であるタッカー・カールソンは、バイデンの演説の映像を再生することを拒否し、2021年1月6日は歴史的に「脚注の程度にすぎない(barely rates as a footnote)」のは「その日は本当に多くのことが起きなかった(really not a lot happened that day)」からだと主張した。

共和党内ではトランプ崇拝がかつてないほど優勢であり、オース・キーパーズやプラウド・ボーイズといった過激な右翼グループが台頭していることから、民主政治体制に対する脅威は1年前よりも大きくなっていると見ている人たちもいる。そうした人々の中に、カリフォルニア大学サンディエゴ校の政治学者で、新著『アメリカは内戦に向かうのか(How Civil Wars StartAnd How to Stop Them)』という新著の著者であるバーバラ・ウォルターがいる。

ウォルターは以前、CIAの諮問委員会である「政治的不安定性タスクフォース(political instability taskforce)」の委員を務めていたが、このタスクフォースは、アメリカ本国を除く、世界中の国々での政治的暴力(political violence)を予測するモデルを持っていた。しかし、トランプ大統領の人種差別的煽動が台頭する中、30年間内戦を研究してきたウォルターは、自宅の玄関先(doorstep)のすぐそばに、証拠となる兆候があることに気づいた。

1つは、完全に民主的でも完全に独裁的でもない政府、つまり「アノクラシー(anocracy)」の出現である。もう1つは、政党がイデオロギーや特定の政策(ideology or specific policies)を中心に組織されるのではなく、人種や民族、宗教の線(racial, ethnic or religious lines)に沿ったアイデンティティ政治(identity politics)に戻っていく光景である。

ウォルターは『ジ・オブザーバー』紙に次のように語っている。「2020年の選挙までには、共和党員の90%が白人になっている。もし、二大政党制(two-party system)を採用している他の多民族・多宗教の国(multiethnic, multi-religious country)でこのような現象が起きるとしたら、これは超派閥(super faction)と呼ばれるもので、超派閥は特に危険である」。

最も悲観的な人でさえ、北軍と南軍が激戦を繰り広げた1861年から1865年の内戦(南北戦争)の再現を予測してはいない。ウォルターは続けて次のように語った。「それは北アイルランドやイギリスが経験したような、より反乱(insurgency)のようなものになるだろう。私たち国アメリカは非常に大きな国であり、国中に非常に多くの民兵組織(militias)が存在するため、おそらく北アイルランドよりも拡散化(decentralized)が進むことになるだろう」。

ウォルターは次のように述べている。「反乱を起こす人々は、連邦政府の建物、シナゴーグ、大勢の人が集まる場所を標的とする、通常では考えられない戦​​術、特にテロ戦術、場合によっては、小規模のゲリラ戦に目を向けるだろう。この戦略は脅迫の一形態であり、連邦政府が彼らに対処する能力がないとアメリカ国民に恐怖を感じさせることになるだろう」。

2020年、民主党所属のミシガン州知事グレッチェン・ウィットマーを誘拐する計画が、起きる可能性の高い事態の兆しかもしれない。ウォルターは、野党の有力者、穏健な共和党の政治家、反乱を考える人々に対して同情的ではないと見なされる裁判官などが、暗殺のターゲットになる可能性があることを示唆している。

ウォルターは次のように語った。「ここアメリカでは、権力が分断されているため、民兵組織がその地域の法執行機関(law enforcement)と連携して、それが可能な地域で小さな白人の民族国家を作る状況も想像できる。それは確かに1860年代に起こった内戦とはまったく似ていないものとなるだろう」。

ウォルターは、内戦(civil wars)は貧しい人や虐げられた人が起こすものだと考えられやすいと指摘する。しかし、そうではない。アメリカの場合は、2008年のバラク・オバマの当選に象徴されるように、2045年頃にはマイノリティになる運命にある白人マジョリティからの反動なのだ。

ウォルターは次のように説明している。「内戦を起こす傾向を持つグループがあるのは、かつて政治的に支配的であったが、衰退しているグループである。彼らは政治権力を失ったか、政治権力を失いつつあり、国が自分たちのものは自分たちの正当な権利であり、体制がもはや自分たちのために機能しないため、支配権を取り戻すために武力を行使することが正当化されると本気で信じている」。

1月6日の暴動から1年が経った今も、礼儀正しさ、信頼、共有規範が崩壊し、連邦議事堂の雰囲気は有害なままだ。共和党所属の連邦議員の中からは、トランプ大統領が反対した超党派のインフラ法案に賛成票を投じた後、殺害の脅迫を含む脅迫的なメッセージを受け取った人たちが出た。

1月6日のテロを調査する連邦下院特別委員会の2人の共和党議員、リズ・チェイニーとアダム・キンジンガ―は、共和党からの追放を求められている。ソマリア出身のイスラム教徒であるミネソタ州選出の民主党所属の連邦下院議員イルハン・オマルは、イスラム嫌悪な嫌がらせに苦しんでいる。

しかし、トランプ大統領の支持者たちは、民主政治体制を救うために戦っているのは自分たちだと主張している。ノースカロライナ州のマディソン・コーソーン連邦下院議員は昨年、「選挙制度が不正操作(rigged)され続け、盗まれ(stolen)続ければ、ある1つの場所に行きつくことになるだろう。それは流血の惨事(bloodshed)だ」と語った。

先月、ジョージア州選出のマージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員は、テロに関与したとして収監された1月6日事件の被告6人の処遇について嘆き、ブルーステイト(blue states、共和党優勢州)とレッドステイト(red states、共和党優勢州)の間の「国家的別離(national divorce)」を呼びかけた。民主党所属のルーベン・ガレゴ連邦下院議員は力強く次のように反論した。「『国家間の離婚』などありえない。内戦に賛成か反対かだ。内戦を望むならば、そう言って、正式に自分たちは裏切り者だと宣言せよ(There is no ‘National Divorce’. Either you are for civil war or not. Just say it if you want a civil war and officially declare yourself a traitor)」。

トランプが2024年の大統領選に再出馬する可能性もある。共和党が主導する各州は、共和党に有利になるよう計算された有権者制限法(voter restriction laws)を課す一方、トランプ支持者たちは、選挙運営の主導権を握ろうとしている。大統領選挙が紛糾すれば、煽動的なカクテル(incendiary cocktail)になりかねない。

ヴァージニア工科大学平和研究・暴力防止センター所長ジェイムズ・ホウドンは、「私は人騒がせな人(alarmist)になるのは好きではないが、この国は暴力から遠ざかるどころか、ますます暴力に向かっている。再び争点となった選挙は悲惨な結果をもたらす可能性がある」と述べている。

ほとんどのアメリカ人は安定した民主政治体制を当然のことだと思って育ってきたが、アメリカ先住民の大量虐殺(genocide of Native Americans)から奴隷制度、内戦(南北戦争)から4度の大統領暗殺、そして、アメリカ国内で銃による暴力によって年間4万人が殺害されていることから海外で数百万人の命を奪っている軍産複合体(military-industrial complex)まで、アメリカは、暴力が例外なく常態化している社会でもある

ミネソタ大学政治・ガヴァナンス研究センターのラリー・ジェイコブス所長は次のように述べている。「アメリカは暴力に慣れていない訳ではない。非常に暴力的な社会であり、私たちが話しているのは、暴力に明確な政治的意図が与えられている(violence being given an explicit political agenda)ということだ。これはアメリカにおける恐ろしい新しい方向性だ」。

現在のところ、政治的暴力が風土病(endemic)になるとは予見していないが、ジェイコブスは、そのような崩壊はまた、北アイルランドの紛争に似ている可能性が高いことに同意している。

ジェイコブスは続けて次のように述べている。「このような物語的で、散発的なテロ攻撃を私たちは目撃することになるだろう」。彼は加えて、「北アイルランドモデルは、率直に言って最も恐れられているモデルだ。なぜなら、これを行うのに膨大な数の人員が必要ではなく、現在、こうした反乱を実行するのに、非常に意欲的で、十分な武装をしたグループが存在するからだ。問題は、彼らがテロ活動を開始する前に、FBIが彼らをノックアウトできるほど十分に潜入できるのかということだ」と述べた。

ジェイコブスは更に「もちろん、アメリカでは銃が蔓延していて、FBIの捜査も役に立たない。誰でも銃を手に入れることができ、爆発物にもすぐにアクセスできる。これら全てが、私たちが今置かれている不安定な立場を更に悪化させている」と述べた。

しかし、避けられないものなど何もない。

バイデンはまた、2020年の選挙について、新型コロナウイルス感染拡大にもかかわらず、過去最高の1億5000万人以上が投票し、アメリカ史上最大の民主政治体制のデモンストレーションになったと賞賛した。この結果に対するトランプ大統領の偽りの異議申し立ては、依然として強固な裁判制度によって退けられ、依然として活気のある市民社会やメディアによって精査された。

ハーヴァード大学の政治学者ジョシュ・カーツァーは、現実を確認して、「内戦を研究している学者をたくさん知っているが、アメリカが内戦勃発の瀬戸際にいると考えている人はほとんどいない」とツイートした。

しかし、「ここでは起こりえない」という思い込みは、政治そのものと同じくらい古い。ウォルターは、内戦に至るまでについて多くの生存者にインタヴューしてきた。ウォルターは次のように述べている。「バグダッドにいた人も、サラエヴォにいた人も、キエフにいた人も、みんな口をそろえて言ったのは、こんなことになるとは思わなかった、ということだった。実際、丘の中腹で機銃掃射を聞くまで、私たちは何かが間違っていることを受け入れようとはしなかった。その時にはもう遅かったのだ」。

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南北戦争が目前に迫っている?(Is a Civil War Ahead?

-連邦議事堂襲撃事件から1年経過し、アメリカは民主政治体制(democracy)と独裁政治(autocracy)の間で宙ぶらりんの状態にある。

デイヴィッド・レムニック筆

2022年1月5日

『ニューヨーカー』誌

https://www.newyorker.com/news/daily-comment/is-a-civil-war-ahead

アメリカ例外主義(American exceptionalism)の体系は、自己幻想(self-delusion)という粗末な基盤の上で常にぐらつき続けてきたが、それでもほとんどのアメリカ人は、アメリカが世界最古の継続的な民主政治体制国家(the world’s oldest continuous democracy)であるという常識を疑わずに受け入れてきた。その冷静な主張は今や崩れ去った。

2021年1月6日、白人至上主義者(white supremacists)、民兵、MAGA信者たちがトランプ大統領からインスピレーションを得て、2020年大統領選挙の結果を覆すために連邦議事堂を襲撃し、議員たちと副大統領が実質的に人質になった状態で、私たちは完全な民主政治体制国家としての活動を中止した。その代わりに、私たちは現在、学者たちが「アノクラシー」と呼ぶ限界的な状況に住んでいる。つまり、この200年で初めて、私たちは民主政治と専制政治の間で板挟みになっている。そして、その不確実性(uncertainty)の感覚は、アメリカでの突発的な流血の可能性を根本的に高め、さらには内戦の危険さえも高めている。

これが、カリフォルニア大学サンディエゴ校の政治学者バーバラ・F・ウォルターの新著『アメリカは内戦に向かうのか(How Civil Wars Start)』の説得力ある主張である。ウォルターは、スリランカから旧ユーゴスラビアまでの国々における政治的暴力の根源を研究する「政治的不安定性タスクフォース」と呼ばれるCIAの諮問委員会の委員を務めた。ウォルターは、このタスクフォースが外国の政治力学を分析するために使用している「センター・フォ・システミック・ピース(Center for Systemic Peace、システム平和センター)」がまとめたデータを引用しながら、民主政体が最も古くから続いているという「栄誉(honor)」は、現在スイスが持ち、ニュージーランドがそれに続いていると説明している。アメリカでは、侵食されつつある不安定さ(instability)と非自由主義的な流れ(illiberal currents)が悲しい状況を呈している。ウォルターが書いているように、「私たちはもはやカナダ、コスタリカ、日本のような国々と肩を並べる存在ではない」のである。

ウォルターは著書と今週の「ニューヨーカー・ラジオ・アワー」での対談の中で、「恐怖を煽る行為(an exercise in fear-mongering)」は避けたいと明言した。彼女は扇情主義者(センセーショナリスト、sensationalist)だと思われることを警戒している。実際、彼女は過熱する憶測を避けるために苦労しており、臨床的な観点から内戦の可能性について警告を伝えている。しかし、数十年前に地球温暖化の危険性について明確に声を上げた人々と同様に、ウォルターは重大なメッセージを伝えているが、それを無視すると危険が伴う。依然として、多くのことが流動的だ(So much remains in flux)。ウォルターは、21世紀のアメリカの内戦は、1860年代の戦場で繰り広げられた、消耗的で対称的な紛争(symmetric warfare)とは似ても似つかないだろう、と注意深く言っている。むしろ、最悪の事態が起こった場合、爆弾テロ、政治的暗殺、ソーシャルメディアを介して結集した過激派グループによって実行される非対称戦争(asymmetric warfare)の不安定化行為など、散在的かつ持続的な暴力行為の時代が到来すると彼女は予想している。これらは比較的小規模で、緩やかに連携した、自己拡大を目指す戦士の集まりであり、「加速主義者(accelerationists、アクセレイショニスツ)」と呼ぶこともある。彼らは、救いようのない非白人社会主義共和国(non-white, socialist republic)の崩壊を早める唯一の方法は、暴力やその他の超政治的手段によるものだと自分たちに確信させている。

ウォルターは、この国が民主的制度を強化しない限り、冒頭のような脅威に耐えることになるだろうと主張する。2020年、ミシガン州の民兵組織「ウルヴァリン・ウォッチメン」がグレッチェン・ウィットマー知事を誘拐しようとした事件である。ウルヴァリン・ウォッチメンは、ウィットマー知事がミシガン州で新型コロナウイルス感染対策(公衆衛生を守るためではなく、自分たちの自由を侵害する耐えがたい行為と見なした規制)を実施したことを軽蔑していた。トランプが公言したウィットマーへの軽蔑は、こうした狂人たちを思いとどまらせることはできなかっただろう。FBIは幸いにもウルヴァリン・ウォッチメン一味を阻止したが、必然的に、このような企てが十分な数存在し、十分な武器があれば、標的を見つける組織が複数出てくるだろう。

アメリカは常に政治的暴力行為、つまりKKKのテロ行為に悩まされてきた。1921年のタルサの黒人コミュニティで虐殺が起きた。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの暗殺は、全てのアメリカ人にとって民主政体が決して定着し、完全に安定した状態ではなかったが、それでもトランプ時代は、移民に「取って代わられる」ことを恐れた多くの右翼の田舎の白人たちの激しい憤りによって特徴づけられている。有色人種だけでなく、最も独裁的な扇動者に屈し、もはや民主主義の価値観や制度を擁護するつもりはないようである共和党指導部も同様である。他の学者と同様、ウォルターも、168人が死亡した1995年のオクラホマシティのアルフレッド・P・ムラー記念連邦ビル爆破事件など、現在の反乱の初期の兆候があったと指摘している。しかし、多民族民主政体(multiracial democracy)の台頭を最も鮮明に浮き彫りにしたのはバラク・オバマの選挙であり、過半数の地位を失うことを恐れた多くの白人アメリカ人にとって脅威と受け止められた。ウォルターは、オバマが当選した2008年当時、アメリカではおよそ43の民兵組織が活動していた、と書いている。 3年後、その数は300以上に増加した。

ウォルターは世界中の内紛の前提条件(preconditions)を研究してきた。そして。ウォルターは、自己満足と7月4日の神話を取り去り、現実的なチェックリストを見直し、「内戦の可能性を高める各条件を評価(assessing each of the conditions that make civil war likely)」すれば、アメリカは「非常に危険な領域に入った(has entered very dangerous territory)」と結論づけざるを得ないと言う。この結論は彼女だけではない。ストックホルムの民主政体・選挙支援国際研究所は最近、アメリカを「後退している」民主政体国家(“backsliding” democracy)としてリストアップした。

1月6日以降の数週間ほど、後退が憂鬱にはっきりと表れたことはなかった。ミッチ・マコーネルは当初、反乱におけるドナルド・トランプの役割を批判した後、2024年の大統領選挙で党の候補者になれば、トランプを支持すると述べた。深淵を見つめながら、彼は闇を追い求めた(Having stared into the abyss, he pursued the darkness)。

少し前までは、ウォルターは人騒がせな人物だと思われていたかもしれない。2018年、スティーヴン・レビツキーとダニエル・ジブラットは、トランプ時代の研究『民主主義はいかにして滅びるか(How Democracies Die)』を出版した。この本は、アメリカの読者に法の支配が、アメリカの多くの時代と同様に攻撃に晒されているという現実を目覚めさせようとした数多くの本の1つである。しかし、レヴィツキーが私に語ったように、「私たちでさえ1月6日を想像することはできなかった。」レヴィツキーは、ウォルターやこのテーマに関する他の高く評価されている学者の著書を読むまでは、内戦の警告は行き過ぎだと思っていただろうと語った。

ロシアやトルコとは異なり、アメリカは、たとえどれほど欠陥があったとしても、民主政体統治の深い経験に恵まれている。裁判所、民主党、両党の地方選挙管理者、アメリカ軍、メディアは、たとえどれほど重大な欠陥があったとしても、独裁的な大統領の最も暗い野望に抵抗することが可能であることを2020年に証明した。民主政体と安定のガードレールは決して突破できないものではないが、ウラジーミル・プーティン大統領やレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領が立ち向かわなければならないものよりも強力である。実際、トランプは再選を目指して共和党史上最大の票を集めたが、それでも700万票の差で落選した。それも諦観が支配する運命論(fatalism)を阻害することになる。

レヴィツキーは私に次のように語った。「私たちは、ファシズムやプーチニズムに向かうわけではない。しかし、憲法上の危機が繰り返され、権威主義的な、もしくは少数派による支配が拮抗し、爆弾テロや暗殺、集会で人々が殺されるなど、かなり重大な暴力のエピソードが起こる可能性はあると思う。2020年には、政治的な理由で人々が路上で殺された。これは黙示録(apocalypse)ではないが、恐ろしいことが起きたのだ」。

アメリカの民主政治体制を守るための戦いは、対称的(symmetrical)ではない。一方の政党である共和党は現在、反主流主義(anti-majoritarian)、反民主的を装っている。そして、伝統的な政策的価値観にはあまり焦点を当てず、部族的所属(tribal affiliation)や怨恨(resentments)を重視する党になっている。リズ・チェイニーやミット・ロムニーをはじめとする少数の人物は、これが権威主義的な党のレシピであることを知っているが、最も憂慮すべき傾向を逆転させるために必要なこと、すなわち、共和党指導者たちが立ち上がり、民主的価値の再認識に基づく連合に民主党や無党派層とともに参加するための広範な努力の兆候は見られない。

反乱の記念日を迎えるにあたり、より大きなドラマが起こっていることは明らかだ。私たちはバラク・オバマを、そしてその8年後にはドナルド・トランプを選出することができる国だ。私たちは、ジョージア州がアフリカ系アメリカ人とユダヤ人の2人の連邦上院議員を選出した1月5日と、馬鹿馬鹿しい陰謀論の名のもとに数千人が連邦議事堂を襲撃した1月6日のことを思い浮かべることができる。

レヴィツキーは次のように語っている。「同じ国で2つの全く異なる運動が同時に起きている。この国は初めて多民族民主政体(multiracial democracy)に向かって進んでいる。21世紀において、私たちは多様な社会と平等の権利を保証する法律を持つことを支持する多民族の民主的な多数派(multiracial democratic majority)を持っている。多民族による民主的な多数派が存在しており、それが普通選挙で勝利する可能性がある。そして少数派の共和党員もいるが、危険な過激派が共和党員のために行動しているのを見て見ぬふりをすることがあまりにも多い。新しい種類の内戦についての警告が無駄になり、ウォルターのような本が警鐘を鳴らしたものとして振り返ることができることを祈ろう。しかし、私たちが気候の危機的な状況で学んだように、願うだけではそれは叶うことはない」。

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私たちは本当に第二次南北戦争(内戦)に直面しているのか?(Are We Really Facing a Second Civil War?

ミッシェル・ゴールドバーグ筆

2022年1月6日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2022/01/06/opinion/america-civil-war.html

カリフォルニア大学サンディエゴ校の政治学者バーバラ・F・ウォルターは、内戦を経験した多くの人々にインタヴューしてきたが、内戦が起こるとは誰もが思っていなかったと言っていると語った。ウォルターは「彼らは全員、驚いたと述べている。それを研究している人にとっては、何年も前からそれが明らかだったとしても、実際に経験した人たちには驚きだった」と述べた。

アメリカが再び内戦に陥るかもしれない、という考えを否定したい衝動に駆られるなら、このことは心に留めておく価値がある。今でも、この国の、殴られ過ぎてフラフラな状態になっている、崩壊に常に恐怖を感じているにもかかわらず、私は完全なメルトダウン(meltdown)という考えにはなかなか納得がいかない。しかし、ウォルターのように内戦を研究している一部の人々にとっては、アメリカの崩壊は、明白ではないにせよ、1月6日の事件以降は、可能性ははるかに低い状態ではないということである。

今月発売された2冊の本は、ほとんどのアメリカ人が理解している以上にこの国は内戦に近づいていると警告している。ウォルターは、『アメリカは内戦に向かうのか』の中で次のように書いている。「私は内戦がどのように始まるかを見てきた。私は人々が見過ごす兆候について知っている。そして、その兆候がここでは驚くほどの速さで現れているのを目撃している」。カナダの小説家で評論家のスティーヴン・マルシェは、著書『次の南北戦争:アメリカの未来からの警告(The Next Civil War: Dispatches From the American Future)』の中でより率直に述べている。マルシェは「アメリカは終わりに近づいている。問題はそれがどのように実現するかである」と書いている。

トロントの『グローブ・アンド・メール』紙において、暴力紛争を研究する研究者トーマス・ホーマー=ディクソンは最近、カナダ政府にアメリカの崩壊に備えるよう促した。ホーマー・ディクソンは次のように書いている。「2025年までにアメリカの民主政体は崩壊し、広範な市民暴力を含む極度の国内政治的不安定を引き起こす可能性がある。早ければ2030年までに、アメリカは右翼の独裁政権に支配されるかもしれない」。ジョン・ハリスが『ポリティコ』誌で書いているように、「真剣に考えてエイル人々は今、比喩としてではなく、文字通りの前例として『南北戦争(Civil War)』を持ち出している」。

もちろん、全員が真剣に懸念している人ばかりではない。ハーヴァード大学の政治学者ジョシュ・ケルツァーは、多くの内戦研究をしている学者を知っているが、「アメリカが内戦の瀬戸際にあると考えている学者はほとんどいない」とツイッターに書いた。しかし、内戦の話に抵抗する人たちでさえ、アメリカがどれほど危険な状況にあるのかを認識する傾向がある。『ジ・アトランティック』誌でフィンタン・オトゥールは、マルシェの本について書いて、内戦の予言は自己実現(self-fulfilling)する可能性があると警告している。アイルランドでの長い紛争中、双方は相手が動員している(mobilizing)のではないかという恐怖に駆られていた、とオトゥールは述べている。オトゥールは続けて、「アメリカが分裂し、暴力的に分裂する可能性があるという現実の可能性を認めることは1つのことだ」と書いている。その可能性を必然性として捉えるのはまったく別のことだ(It is quite another to frame that possibility as an inevitability)」と書いている。

内戦を当然の結論として扱うのは馬鹿げているというオトゥールの意見に私も同意するが、内戦発生の可能性が明らかにあるように見えるのは、やはりかなり酷い状態にあるということだ。内戦に関する憶測が偏屈な末端から主流に移ったという事実自体が、市民の持つ危機感の兆候であり、我が国がいかに崩壊しているかを示している。

ウォルターやマルシェが懸念しているような内戦は、北軍と南軍が戦場で対峙するようなものではないだろう。もし起こるとすれば、ゲリラの反乱(guerrilla insurgency)ということになるだろう。ウォルターが私に語ったように、彼女はマルシェと同様、年間少なくとも1000人の死者を出す紛争を「大規模な武力紛争(major armed conflict)」と学術的に定義している。「小規模な武力紛争(minor armed conflict)」とは、年間25人以上の死者を出す紛争である。この定義によれば、マルシェが主張するように、「アメリカは既に内紛状態にある(America is already in a state of civil strife)」ということになる。名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation LeagueADL)によれば、過激派(その多くは右翼)は2018年に54人、2019年に45人を殺害した。(2020年には17人を殺害したが、これは新型コロナウイルス感染拡大のためか、過激派の銃乱射事件がなかったため低い数字となった)

ウォルターは、内戦には予測可能なパターンがあると主張し、著書の半分以上を費やして、そうしたパターンが他の国々でどのように展開したかを整理している。内戦は、ウォルターや他の学者たちが「アノクラシー(anocracy)」と呼ぶ、「完全な独裁国家でも民主主義国家でもない、その中間のような国(neither full autocracies nor democracies but something in between)」においてよく起こる。警告の兆候としては、イデオロギー(ideology)よりもむしろアイデンティティ(identity)に基づく激しい政治的分極化の台頭(the rise of intense political polarization)、特に、それぞれが他方に押しつぶされることを恐れる、ほぼ同規模の2つの派閥間の分極化が挙げられる。

内乱を引き起こすのは、自分たちの地位が失墜していくのを目の当たりにした、以前は支配的だった集団である。戦争を始める民族は、その国が「自分たちのものである、あるいはそうあるべきだと主張する集団だ」とウォルターは書く。左翼にも暴力的な行為者はいるが、彼女もマルシェも左翼が内戦を起こすとは考えていない。マルシェが書いているように、「左翼の急進主義(left-wing radicalism)が重要なのは、それが右翼の急進化(right-wing radicalization)の条件を作り出すからである」ということである。

右派の多くが内戦を空想し、計画していることは周知の事実だ。1年前に連邦議事堂に押し寄せた人々の中には、「MAGA内戦・南北戦争(MAGA Civil War)」と書かれた黒いトレーナーを着ていた人もいた。超現実的で暴力的、ミームに取り憑かれた反政府運動「ブーガルー・ボワ」は、南北戦争の続編についてのジョークからその名を得た。共和党はますます武力衝突のアイデアを投げかけている。8月、ノースカロライナ州選出のマディソン・コーソーン連邦下院議員は、「選挙システムが不正に操作され、盗まれ続ければ、行き着く先は1つ、それは流血の惨事だ」と述べ、消極的ではあるが、武装する意向を示唆した。

ウォルターは、ミシガン州のグレッチェン・ホイットマー知事の誘拐を計画した男たちを引き合いに出して、現代の内戦は「こうした自警団(vigilantes)、つまり国民に直接暴力を振るう武装好戦派から始まる」と書いている。

ウォルターの議論には、私が完全に納得できない部分がある。たとえば、アノクラシーとしてのアメリカの状況を考えてみよう。アメリカの民主政体の後退の憂慮すべき範囲を示すために彼女が依存している政治学の尺度に私は異論を唱えない。しかし、彼女は権威主義から民主政体に向かう国々と、その逆の道を進む国々の違いを過小評価していると考える。ユーゴスラビアのような国が、国をまとめていた独裁体制が消滅したときになぜ爆発するのかが分かるだろう。新たな自由と民主的競争により、ウォルターが「民族主義仕掛人(ethnic entrepreneurs)」と呼ぶ人々の出現が可能になる。

しかし、民主政体から権威主義への移行が同じように不安定化するかどうかは分からない。ウォルターも認めているように、「自由民主政体国家の衰退は新しい現象であり、全面的な内戦に陥った国はまだない」ということだ。私にとっては、アメリカが共和党大統領のもとでハンガリー型の右翼独裁政治国家(Hungarian-style right-wing autocracy)へと硬化する脅威の方が、大規模な内戦よりも差し迫っているように思える。彼女の理論は、権力を失った右派が反旗を翻すというものだ。しかし、右派はますます、有権者が望むと望まざるとにかかわらず権力を維持できるよう、硬直化したシステムを不正に操作している。

内戦の可能性がまだ低いとすれば、多くのアメリカ人が慣れ親しんだ民主的な安定に戻るよりは可能性が高いように私には思える。

マルシェの本では、アメリカがどのように崩壊するかについて、現在の動きや傾向から推測した5つのシナリオが示されている。そのうちのいくつかは、完全にもっともらしいとは私にはとても思えない。例えば、ウェーコ、ルビー・リッジ、マルヒア国立野生生物保護区での極右勢力との連邦政府の対立の歴史を考えると、主権市民の野営地を壊滅させようと決意したアメリカ大統領は、対反乱ドクトリンに頼る陸軍大将ではなく、FBIを派遣するであろう。

※ミッシェル・ゴールドバーグ:2017年から論説コラムニストを務めている。政治、宗教、女性の権利に関する数冊の著書を持ち、2018年には職場のセクシャルハラスメントに関する報道でピューリッツァー賞(公共サービス部門)を受賞したティームの一員でもある。ツイッターアカウント:@michelleinbklyn

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