古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 東アジア政治

 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2024年12月3日から4日にかけて起きた、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による戒厳令布告と失敗について、「誰が戒厳令布告を勧めたのだろうか」と思っていたら、どうやら金龍顕(キム・ヨンヒョン)国防相だったようだ。金国防相は辞表を提出し、尹大統領はそれを受理したということだが、実質的には解任・罷免で、金国防相が責任を取る形になった。

 金前国防相は尹大統領の高校の同窓生(一学年下らしい)で、個人的に親しい関係があったということだ。金龍顕は韓国軍制服組の最高幹部にまでなった人物であり、尹大統領が就任してからは警備部長をしていた。尹大統領の信頼が厚い人物であったようだ。また、韓国軍政府組の最高幹部であり、短慮の人物であるとは思えない。金前国防相がどういう計算で、勝算があって、戒厳令布告を進言したのか、もしくは破れかぶれで、もうこれしか手段が残っていないということで、戒厳令布告を進言したのか、そこのところを知りたいところだ。

 興味深いのは、今年9月に金龍顕が新しい国防相に指名された際に、「戒厳令」へ向けた動きであるという批判が起きて、与党人民の力党はそれを否定していることだ。金龍顕が国防相に就任するということは、尹大統領が非常手段を行使する可能性があるということを今年の9月の段階で既に批判者たちが主張していたということになる。金前国防相が強硬な手段を選ぶことに躊躇しないということを韓国政界では分かっていたようだ。

 金前国防相は、日韓安全保障関係、日米韓三カ国の協力関係を強化することを主張しつつ、それだけでは不十分ということで、韓国の核武装についても主張していた。韓国の核武装は、アメリカや日本にとって微妙な、難しい問題である。韓国の核武装は、朴正煕大統領も検討し、そのために、アメリカによって暗殺されたという説もある。韓国が持つ核兵器が北朝鮮に備えるものではなく、日米に向かうものになりかねないという懸念がある。今回の戒厳令布告は、国会での予算審議に行き詰まりが原因ということになっているが、韓国政治の基底にある韓国の地政学的な位置やナショナリズムが大きな原因ということも考えられるのではないかと思う。

(貼り付けはじめ)

●「韓国大統領、戒厳令進言の国防相の辞表を受理 後任は駐サウジ大使」

12/5() 11:21配信 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/501f986fde9c28c69394d085f3eab0f6f36237b9

 韓国大統領府は5日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が金龍顕(キム・ヨンヒョン)国防相の辞表を受理したと明らかにした。金氏は、尹氏に戒厳令の宣布を進言。戒厳令の解除後、「関連した全ての事態の責任がある」として辞意を表明していた。

 大統領府は、後任に崔秉赫(チェ・ヒョンヒョク)駐サウジアラビア大使を充てる方針を発表した。崔氏は軍人出身で、米韓連合軍司令部の副司令官などを歴任した。【ソウル福岡静哉】
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●「韓国新国防相に金龍顕氏就任 北朝鮮に「政権終末」警告 無人戦闘体系構築急ぐ」

2024/9/6 19:10 産経新聞

https://www.sankei.com/article/20240906-5CSRX2YA45L37KWQS3PYX7VAVQ/

韓国の尹錫悦大統領は6日、新たな国防相に軍出身で、大統領警護庁トップを務めた金龍顕氏を任命した。金氏は国防省での就任式で、北朝鮮に対し「挑発すれば『政権の終末』に直面する」と警告、無人機などを活用した「無人戦闘体系」の構築を急ぐとも強調した。

申源湜前国防相は、北朝鮮が挑発に出れば「即刻、強力に最後まで」懲らしめると重ねて発言してきた。金氏もこのスローガンを踏襲する意向を表明。米国の「核の傘」提供を軸とした拡大抑止を強化していく考えも示した。

金氏を巡っては、軍の学閥人事や不正に関与した疑惑があるとして野党が任命に反対。手続きの一つである国会での人事聴聞経過報告書の採択には至らなかったが、尹氏は任命を強行した。(共同)
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プロファイル:韓国の新しい国防相の金龍顕(Kim Yong-hyun、キム・ヨンヒョン)(Profile: New ROK Defense Minister Kim Yong-hyun

-韓国の新しい国防相に任命されたことを受けて、このプロファイルは金龍顕(Kim Yong-hyun、キム・ヨンヒョン)の経歴と主要な役職の概要を提供する。

ケイトリン・カン筆

2024年9月10日

スティムソン・センター

https://www.stimson.org/2024/profile-new-rok-defense-minister-kim-yong-hyun/

9月2日、韓国の尹錫悦(Yoon Suk Yeol、ユン・ソンニョル)大統領大統領は、金龍顕(Kim Yong-hyun、キム・ヨンヒョン)を国防相に任命した。812日に、国防相の辛源植(Shin Won-sikシン・ウォンシク)が国家安全保障問題担当大統領補佐官に、国家安全保障問題担当大統領補佐官の張浩鎮(Chang Ho-jin、チャン・ホジン)が新たに創設された大統領外交・国家安全保障特別補佐官に任命されるなどの予想外の人事異動が行われた中で、金は新しい地位に任命された。これらの人事異動は、安全保障と地政学的な懸念の高まりが動機となっているとの憶測が広まっている。

韓国は核の選択肢を求める可能性を排除すべきではないという金の発言は、特に尹政権の公式見解が、アメリカの同盟関係や拡大抑止の約束を通じて安全保障問題に対処するというものであることを考えると、注目を集めた。更に、金は、エスカレートする北朝鮮の脅威に対処するため、米韓二国間および米韓日三国間の安全保障協力を重視する尹政権の政策を推し進める可能性が高い。

●金とはどんな人物か?(Who Is Kim?

金龍顕は、2022年5月の尹政権発足以来、大統領警護部長を務めていた。2017年に三ツ星の陸軍大将として退任するまで、首都防衛軍司令官から陸軍司令官まで、軍の要職を務めた。統合参謀本部(JCS)の作戦部長を率いる。彼は生活の質の向上と徴兵制の支援を強く支持し、そのキャリアを通じてさまざまな軍体内の生活の質向上政策を推し進めたことでも知られている。

尹大統領とは高校時代の同窓生という長年のつながりがあり、金龍顕は以前尹大統領と仕事をしたことがあり、彼の政策志向を熟知している。尹大統領の大統領選挙では、軍事システムの技術統合を支援するなど、安全保障と外交政策についてユン大統領に緊密に助言した。また、大統領府を龍山(ヨンサン)にある国防省の敷地内に移転させ、安全性を高めるという尹大統領の選挙公約を実現させた。

このような経歴から、金龍顕は「最高司令官(大統領)の意向を格別に理解している」と評価されており、北朝鮮の脅威に対する安全保障を強化し、アメリカとの協力を深めるという尹大統領のヴィジョンに近い形で政策実行をサポートするのではないかと期待されている。

●主要なテーマでの立場(Key Positions

・北朝鮮(North Korea

金龍顕は、増大する北朝鮮の脅威に対する国家安全保障の強化と「最悪のシナリオに備える」必要性に焦点を当てた尹政権の方針を維持している。金は、北朝鮮に対する政府のタカ派的な姿勢を継続する意向であり、この姿勢は、「挑発(provocations)」が高まった場合の報復を警告する過去の発言によって強化されている。

北朝鮮に対する韓国の防衛アプローチについて、金龍顕はアメリカの拡大抑止が北朝鮮の脅威に対応する基礎となるべきだと述べたが、韓国の核武装も排除せず、「あらゆる選択肢が開かれている。アメリカの拡大抑止だけでは北朝鮮に対する核抑止力として十分ではない」とも述べた。これは、アメリカの拡大抑止力を通じて北朝鮮の脅威に対処するという尹政権の公式政策や、韓国の核能力が米韓同盟に及ぼす影響に対する直前の前任者辛源植の懸念とはいくらか矛盾している。金は過去に、北朝鮮が完全な非核化する可能性は低いことを認め、アメリカの戦術核兵器の再配備や国産核開発などの選択肢を含め、韓国が対応して自国を守ることを可能にする別のアプローチを主張してきた。

・米韓同盟と日本との安全保障協力(US-ROK Alliance and Security Cooperation With Japan

金龍顕は、核の選択肢を残しておくことに関心があるにもかかわらず、格上げされた米韓同盟と拡大抑止力への継続的な依存への支持を明確にしている。金は、特にロシアと北朝鮮の軍事協力の深化に直面して、米韓共同訓練の強化と、進化する北朝鮮の脅威に対する抑止力の拡大を強調してきた。

韓国の核の選択肢に関する金龍顕の立場や、日本が「核武装を追求する」可能性についての過去の懸念の声にもかかわらず、金は、対北朝鮮防衛を強化するための日米との共同作業に関する尹大統領の優先順位を強化する可能性が高い。金はまた、尹政権下で進展した日韓二国間関係を維持するため、日本との関係において肯定的なバランスを維持するだろう。

・中国(China

金龍顕は、尹大統領の目的に沿って、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)システム砲台の増設を支持し、増大する北朝鮮の能力に対して重層的なミサイル防衛システムが必要だと主張している。金は、中国の反発に対する懸念を払拭し、更なる報復は「明確な主権侵害(a clear infringement of sovereignty)」であると主張した。

金龍顕は、米中競争の激化と中国、北朝鮮、ロシアの連携強化を指摘し、朝鮮半島の安全保障に対するさまざまな脅威を緩和するため、韓国の軍事力を強化することを誓った。

●主要な利害関係者たちからの反応(Reaction From Key Stakeholders

・与党「人民の力」党:金龍顕の指名は保守的な与党によって支持されており、戒厳令(martial law)への動きを示唆する指名であるとの非難を否定した。

・野党「共に民主」党:リベラルな民主党は、金龍顕の指名に反対しており、尹大統領との個人的なつながりが国防相としての役割に影響することを懸念している。共に民主党はまた、2023年の海兵隊員死亡事件の隠蔽疑惑など、現在進行中の事件への金の関与の可能性についても問題を提起している。

国家革新党:韓国第三党の趙国(チョ・グク)代表は、金が韓国の核オプションに前向きであることを批判し、そのような動きは北東アジアの不安定性を悪化させると述べた。

●今後の見通し(Looking Ahead

金龍顕の国会承認公聴会は9月2日に開かれた。尹大統領は国会の承認なしに首相以外の閣僚を任命する権限を持っているため、この公聴会はほとんど形式的なものと見られている。公聴会中、与党人民の力党と野党共に民進党は金龍顕の資質について意見を交わし、金自身は攻撃を「誤報に基づく虚偽宣伝」として拒否し、北朝鮮の脅威と核武装への開放に対処する方法について政策スタンスを維持した。

尹大統領はこの人事を推し進め、金龍顕は96日に就任した。米韓同盟や米韓日三カ国の安全保障協力を通じて北朝鮮の脅威を抑止することを柱とする尹大統領の安全保障政策を継承する上で主導的な役割を果たすと期待されており、就任演説では前任者の姿勢を再確認し、「圧倒的な」防衛態勢を構築することを誓った。

(貼り付け終わり)
(終わり)

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 2024年12月3日に、韓国の尹錫烈(ユン・ソンニョル)大統領が非常戒厳令を布告し、戒厳司令官となった韓国陸軍参謀総長の朴安洙は、「国会、地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁じる」という布告を出した。尹大統領は国会議事堂を韓国陸軍で封鎖し、政治家たちを拘束しようと試みたが、それが失敗し、4日未明に、国会に登院した190名の議員たちの全会一致の投票で、戒厳令解除の要求が可決され、尹大統領は戒厳令布告を撤回した。最大野党の共に民主党を始め、野党側は大統領の弾劾、もしくは自発的な辞任を求めている。

 数々のスキャンダルで、低支持率に苦しむ尹錫烈と与党「国民の力」党は、2024年の総選挙でも敗北し、国会(300議席)で、108議席しか持っておらず、野党の共に民主党が170議席を握っており、少数与党という状態に置かれている。このため、政策実現が難しい中で、自身の権力を強化しようという自作自演クーデター(英語では、self-coup[背フル・クー]、中国語では自我政変、スペイン語ではautogolpe[アウトゴルペ])に賭けて失敗した。アウトゴルペは、1992年のペルーのアルベルト・フジモリ大統領の戒厳令布告に伴うクーデターの時に使われた言葉だ。この時はフジモリ大統領側が勝利し、憲法改正が行われた。この時のクーデターは、フヒモラソ(Fujimorazo)とも呼ばれているそうだ。

 アメリカ政府には事前の連絡がなかったということで、クーデター失敗を受けて、ホワイトハウスは「安堵した」という声明を出している。アメリカ軍が自国内に駐留している国家において、アメリカ軍が承認していない、この種の非情な手段が成功することはない。日韓関係、日米韓三カ国関係を緊密化しようとしていた尹錫烈大統領の無謀な行動と失敗、失脚は、アメリカの対中戦略において、マイナスの影響を及ぼすだろう。尹大統領は、自身に反対する勢力を「親北朝鮮の反国家的な存在」と呼んでいたが、今回の尹大統領の失敗を喜んでいるのは、北朝鮮と中国、ロシアである。

私は、尹錫烈大統領の今回の行動は、彼単独ではなく、教唆をした人物がいるのではないかと思っている。彼の強い反北朝鮮感情を利用して、かえって北朝鮮や中国を利するような結果を招く行動を起こすように仕向けた人物や勢力がいるのだろうと思う。更に言えば、アジアの状況を不安定化させるために、突発的な事件が起きること(事件を起こすこと)を望んだ人物や勢力の存在も考えられる。ただ単に、「自分の思い通りにならないから」ということで、ここまでの無謀な行動をするのは考えにくい。朴槿恵元大統領の最後を知っているならば猶更だ。

 韓国の位置は現在の地政学において非常に複雑なバランスの上に立っている。そのために、国内、国外の様々な思惑が複雑に絡み合っている。今回の出来事を解明するのは一筋縄ではいかないだろう。

(貼り付けはじめ)

韓国人はいかにして戒厳令を拒否したか(How South Koreans Rejected Martial Law

-尹錫烈(Yoon Suk -Yeol、ユン・ソンニョル)大統領による自作自演クーデターの試みは劇的に失敗した。

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韓国の尹錫悦大統領が戒厳令を布告した後に韓国国会の建物に入ろうと試みる兵士たち(12月4日)

ジェイムズ・パーマー筆

2024年12月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/12/03/south-korea-yoon-martial-law-declaration-army-parliament-vote/?tpcc=recirc_trending062921

2024年12月3日更新:この記事は戒厳令が引き上げられる前に出された。進行中の出来事を反映するために更新されている。

窮地に陥った韓国の尹錫烈(ユン・ソンニョル)大統領は火曜日、権力を強化するための異例の試みとして戒厳令(martial law)を布告した。しかし、韓国国会が全会一致でこの動きを否決した後、尹大統領の自作自演クーデターは屈辱的な失敗に終わった。

尹大統領は韓国軍を使って国会の採決を阻止しようとしたが、全政党の政治家たちがこの動きに反対し、抗議者たちは兵士たちに対して人間のバリケードを形成した。もし軍隊が尹大統領に従っていたら、軍隊と国民との対立など危機的状況は更に悪化していたかもしれない。代わりに軍は国会から撤退し、尹大統領は午前中に戒厳令を正式に解除すると発表した。危機は尹大統領の弾劾(impeachment)で終わる可能性が高い。

尹大統領は先週、国会との予算対決をエスカレートさせた。ユン首相が率いる「国民の力」党(People Power Party)は今年の選挙で大敗を喫し、現在は共に民主党(Democratic Party)が過半数を占めている。尹大統領は火曜日の発表で、この対立に言及し、「反乱を煽ることを目的とした明らかな反国家的行動(clear anti-state behavior aimed at inciting rebellion)」であり、共に民主党は「恥知らずな親北反国家勢力(shameless pro-North anti-state forces)」であると非難した。

尹大統領の戒厳令布告は全く予想外の動きだった。

尹大統領がそのような試みをするのではないかという噂は数カ月前から流れていたが、主流派の政治アナリストたちは、それを少数派の陰謀論だと決めつけていた。韓国の民主政治体制のもとでの戒厳令は、戦争や北朝鮮との大規模な対立への対応としてのみ想定されていた。しかし、平壌はここ数カ月、ロシアのウクライナ戦争を支援するために兵士を派遣するなど、憂慮すべき措置をとっているが、軍事的危機はない。

韓国憲法第77条は、大統領に戒厳令を布告し、国家非常事態の際に言論や集会、その他の自由に対する「特別措置(special measures)」を一時的に執行する権限を与えている。しかし、国会はまた、尹大統領の宣言のわずか数時間後に行ったように、単純な賛成・反対投票で大統領に戒厳令の解除を要求する権利も持っている。

憲法上、尹大統領は立法府に従う義務があるが、立法府の行動を阻止しようとする措置を講じた。尹大統領の盟友で戒厳司令官に任命された朴安秀(Park An-soo、パク・アンス)韓国陸軍参謀総長は、国会を含む政治活動を阻止し、メディアを統制するという布告を出した。韓国メディアは応じなかったが、共に民主党の李在明(Lee Jae-myung、イ・ジェミョン)代表は政治家と国民に対し、ソウルの国会議事堂に集まるように求めた。

韓国の戒厳令下において、国会に対する軍隊の使用は違法となる可能性が高い。憲法第77条で大統領に認められるのは行政府と司法に影響する措置のみであり、立法府には影響しないからだ。尹大統領は現職の指導者が独裁権力を掌握するアウトゴルペ(autogolpe)、自作自演クーデターを企てた。

戒厳令の布告は、4月の韓国国会選挙以来危機と闘ってきた不人気政治家による苦肉の策(desperate move)だった。 2022年5月に就任した尹大統領は、影響力が大きい、重大なスキャンダルに直面しており、それが支持率低迷の一因となっている。最近の尹大統領の支持率は連続して20%を下回っている。

それでも尹大統領は、北朝鮮に対する厳しい姿勢により、ワシントンでは支持を維持している。シカゴ国際問題評議会のアジア政策フェローであるカール・フリードホフは、「ユン大統領はまさに常に不人気だった。しかし、ワシントンの人々にとって、彼は正しいことを言ったりやったりしていた。彼は冷戦時代のレトリックに戻り、例えば進歩主義派を北朝鮮シンパ(North Korea sympathizers)と呼んだ。それは、前韓国大統領の文在寅(Moon Jae-in、ムン・ジェイン)に対する大韓民国の多くの人々の見方と一致するものだ」と述べている。

尹大統領の所属する「国民の力」党の多くは韓東勲(Han Dong-hoon、ハン・ドンフン)代表を含め、韓国の戒厳令に反対すると表明し、最終的に宣言解除の投票は国会に投票に来た議員190人全員の満場一致で行われた。韓東勲は尹大統領の側近(検察時代の後輩でもある)だったが、ここ1年で政敵として浮上した。

韓東勲をはじめとする「国民の力」党の議員たちは、大統領弾劾に賛成する野党に加わる可能性が高い。スティムソン・センターのロバート・マニング研究員は、「この動きは、2027年にブルーハウス(大統領府)を獲得するのに十分な位置にいる野党に、更に勢いを与えることになるだろう」と述べている。

韓国の国民は尹大統領の行動に抗議するために大挙して集まり、尹大統領が大統領職から去るまで街頭に留まる可能性が高い。戒厳令という考えは韓国では極めて不人気で、高齢者の多くは1980年、元独裁者の朴正煕(Park Chung-hee、パク・チョンヒ)暗殺後に権力を掌握した全斗煥(Chun Doo-hwan、チョン・ドゥファン)将軍の軍事独裁政権下で戒厳令が発動されたことを思い出している。1980年5月、韓国軍は光州で多数のデモ参加者を殺害したが、この事件は現在韓国で記念碑的出来事として記憶されている。

また、韓国には、独裁政権下での生活、国内のアメリカ軍駐留に対する数十年にわたる抗議活動、そして2017年に保守派の朴槿恵(Park Geun-hye、パク・クネ)大統領を打倒した大衆運動の経験に基づいて構築された、効率的で洗練された抗議活動のインフラがある。 この時には、1600万人以上が街頭に繰り出した。

徴兵制の軍隊(conscript forces)は、デモ参加者に対して武力を行使することに他の兵士よりも不本意かもしれないが、韓国軍では徴兵の兵士が僅差ではあるが過半数を占めている。朴大統領は当時の国防保安司令部(Defense Security Command)、防諜部隊を使って政敵を弾圧しようとし、2016年には抗議デモの中で自ら戒厳令を敷こうとした。

尹大統領の戒厳令発令の決定にアメリカ政治が大きな役割を果たした可能性は低い。韓国政府はドナルド・トランプ次期米大統領との関係構築に努めているが、ジョー・バイデン大統領の任期はまだ1カ月以上残っている。ソウルでの出来事はすぐに終了する可能性が高い。バイデン政権は尹大統領を支持するかのか、全面的に非難するのか、はっきりしない中途半端な内容の声明を出した。

クーデター未遂の結果の1つは、尹大統領が重要な役割を果たした日韓和解におけるアメリカの努力を損なうことになるだろうが、それは国内での政治的損失にもなった。前述のフリードホフは「ワシントンDCでは、国内政策の失敗が外交政策にどのような波及効果をもたらすかについて十分に考えられていなかった」と述べている。

※ジェイムズ・パーマー:『フォーリン・ポリシー』副編集長。「X」アカウント:@BeijingPalmer
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 北朝鮮が朝鮮半島、東アジアの情勢を不安定化させる動きに出ている。2024年10月には韓国とつながる道路を爆破し、憲法を改正して、韓国を「主敵(principal enemy)」に規定した。これまで北朝鮮にとって韓国は「自国の領土(朝鮮半島)の南部に盤踞するアメリカの傀儡政権が違法に支配する地域」であり、韓国民は「アメリカと韓国からの支配を受けており解放しなければならない同胞」ということになっていた。しかし、韓国を「主敵」と定義することで、北朝鮮が韓国を攻撃するのではないかということで朝鮮半島の状況は危機感が増した。朝鮮戦争が再び起きる(現在は休戦中なので休戦が終わって戦闘が始まる)可能性が取り沙汰されている。北朝鮮が繰り返しているミサイル実験もこのような可能性に拍車をかけている。

 北朝鮮の金正恩総書記とアメリカのドナルド・トランプ前大統領は朝鮮半島の非核化に向けて合意を取り付けた。しかし、その後、ジョー・バイデン政権が発足し、この合意は無効化されている状況だ。北朝鮮はバイデン政権との交渉を行わなかった。バイデン政権もまた積極的に北朝鮮との交渉を行わなかった。結果として、北朝鮮の核開発とミサイル開発が進められることになった。そして、現在、状況が不安定化している。この北朝鮮の強気の裏には、ロシアとの関係深化がある。北朝鮮はウクライナに派兵さえも行った。こうした動きは中国を刺激し、敏感にさせている。中国としては朝鮮半島の状況の不安定化は望ましいものではない。

 北朝鮮のこのような動きは北朝鮮が破滅に向かうためにやっているのではない。合理的に考えれば、北朝鮮は状況を不安定化して、交渉材料にしようとしている。誰に対しての交渉材料か。それはアメリカだ。アメリカは来週には新大統領が決まる。交渉相手はドナルド・トランプか、カマラ・ハリスかということになる。トランプとは交渉を行った実績がある。トランプは早期に北朝鮮との交渉を行おうとするだろう。カマラ・ハリスが大統領になれば、ジョー・バイデン政権の路線を引き継いで、北朝鮮との交渉を行わないと打ち出すだろうが、状況が切迫してくれば、交渉のテーブルに着かざるを得ないことになるだろう。北朝鮮としては、ロシアの支援を受けており、アメリカに対しては強気に出られる状況にある。そして、何かしらのリターン、見返りを受け取ることを目指すことになるだろう。

 北朝鮮が派手に動いている時は逆にそこまで危険ではないと考えられる。本当に韓国を攻撃し、戦争を引き起こそうとするならば、静かに奇襲作戦を準備するだろう。従って、現状は朝鮮半島の状況は不安定化しているが、戦争の危険はそこまで高まっていない。問題は突発的な事件で戦争が起きてしまうことだ。北朝鮮と韓国の当局者はこの点を注意してもらいたい。

(貼り付けはじめ)

●「北朝鮮、憲法改正で韓国を「敵対国」と定義」

20241017日 BBCニューズ日本語版

https://www.bbc.com/japanese/articles/cq643vdnm5vo

北朝鮮の国営メディアは17日、同国が韓国を「敵対国」と定義する憲法改正を行ったと伝えた。北朝鮮が憲法改正を公にしたのはこれが初めて。

国営紙「労働新聞」は、北朝鮮と韓国の緊張がここ数年で最高潮に達しているなか、この変更は「避けられない正当な措置」だと報じた。

北朝鮮は15日、韓国とつながる2本の道路の一部を爆破した。国営メディアはこの動きを、両国を「完全に分離するための段階的措置の一部」だと説明している。

専門家らは、今回の憲法改正は主に象徴的な動きだとみている。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は今年202312月の段階で、南北統一を放棄していた。

国営メディアは当時、金総書記が南北関係を「敵対する二つの国、戦争状態にある二つの交戦国」と表現したと報じた。

そして今年1月には、韓国との統一は不可能であると宣言し、憲法を改正して韓国を「第1の敵国」と指定する可能性を示唆した。

それ以来、特にここ数か月の間、南北間で批判の応酬となり、緊張は着実に高まっている。

 米シンクタンクのランド研究所の防衛アナリスト、ブルース・ベネット氏は、「敵対国」という表現は、ほぼ1年前から北朝鮮の発信の特徴となっていると述べた。

2023年末にこの発言が出た時は、対立のリスクとエスカレーションの可能性を高め、重要な進展となった」と、ベネット氏はBBCに語った。

「それ以来、金総書記とその妹(与正氏)は、韓国とアメリカに対して何度も核兵器による脅迫を行い、多くの行動で緊張を高めてきた。そのため、リスクは高まっている」

専門家の多くは、先週の最高人民会議で北朝鮮が統一政策と国境政策に関する憲法改正を行うとみていたが、そのような変更は現在まで公表されていない。

それでも、アナリストらは本格的な戦争の可能性については懐疑的だ。

「状況が戦争レベルにまでエスカレートするとは思わない」と、韓国・釜山の東亜大学で政治学と外交を教えるカン・ドンワン教授は言う。「北朝鮮は軍事対立を悪用し、国内の結束を強めている」。

一方、ソウルの北韓大学院大学校のキム・ドンヨプ教授は、北朝鮮が全面戦争を開始する能力があるのか疑問視している。

「政権は、そのような紛争がもたらす深刻な結果を十分に認識している」と、キム教授は述べた。

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再び朝鮮戦争が起こるリスクはかつてないほど高まっている(The Risk of Another Korean War Is Higher Than Ever

-北朝鮮はロシアと中国それぞれを利用しており、アメリカには見切りをつけている。

ロバート・A・マニング筆

2024年10月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/10/07/northkorea-war-nuclear-russia-china/?tpcc=recirc_trending062921

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「北朝鮮とロシアの無敗の友情と団結万歳!」「ロシア連邦大統領ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン同志を温かく歓迎する」と書かれた横断幕が平壌の平壌屋内競技場外掲げられている。そして、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領と北朝鮮の指導者金正恩の肖像画も掲示されている(2024年6月20日)。

今年1月、経験豊かな韓国専門家であるロバート・カーリンとジークフリード・ヘッカーが、北朝鮮の指導者金正恩が戦争の準備をしていると書き、多くの人々を驚かせた。それは誇張かもしれないが、その懸念は的外れではない。私は過去30年にわたり、政府内外で朝鮮の核問題に取り組んできたが、朝鮮半島は1950年以降のどの時期よりも危険で不安定になっているように見える。

2019年以来、北朝鮮の核問題をめぐって3つの相互に関連した戦略的転換があり、1992年以来のアメリカと韓国の外交を導いてきた中核的な前提を無効にしている。まず、2019年にハノイで金正恩とドナルド・トランプ前米大統領との首脳会談が失敗に終わったことを受けて、金正恩は2021年に固体燃料大陸間弾道ミサイル、小型弾頭、戦術核兵器、極超音速ミサイルを含む核・ミサイルの大規模増強の5カ年計画を明らかにした。北朝鮮の核産業複合体への投資と、核を手放さないという金正恩委員長の強調した声明(これは北朝鮮の憲法と先制核理論に具体化されている)は、姿勢の戦略的変化を強調している。

これらの新たな能力と表明された意図は、北東アジアの戦略的バランスを変化させ、アメリカの拡大抑止力(United States’ extended deterrence)に対する新たな信頼性の問題を引き起こし、韓国が独自の核兵器を手に入れたいという願望を増大させた。

そして、北朝鮮の地政学的な再配置もある。それは、金正恩が諸大国の均衡(balancing major powers)を図る、アメリカとの国交正常化という北朝鮮の長期目標を放棄したことから始まった。これは30年にわたる核外交の論理を支えていた。

同時に、北朝鮮は2016年と2017年の北朝鮮核実験後に中国が国連の厳しい経済制裁を支持したことで緊張が高まっていた中国との関係を強化した。金正恩は2019年1月に北京を訪問し、中国の習近平国家主席も2019年6月に平壌に続いて交流訪問を行った。それ以来、中国はロシアとともに、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル実験に対して新たな制裁を課そうとするアメリカの取り組みを阻止してきた。

ウクライナ侵攻後、ロシアが北朝鮮と新たな安全保障パートナーシップを結び、経済的・軍事的援助を弾薬やミサイルと交換する中で、地政学的変化は激化した。中国当局者やシンクタンクの専門家との非公式な協議で伝えられたように、この動きは中国を不快にさせた。彼らは、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領が中国政府の影響力を奪い、金正恩の祖父である金日成が2つの共産主義大国を敵対させた1950年代と1960年代によく似た状況を作り出しているのではないかと懸念している。

3つ目の変化も同様に深刻だ。今年1月、金正恩は歴史によって分断された1つの同族国家として北朝鮮と韓国が定義していた70年間の統一政策を放棄し、韓国を「主敵(principal enemy)」と宣言した。彼は、統一への誓約を消去する北朝鮮憲法の変更を要求し、南北和解を扱う機関を解体し、父親が平壌に建てた統一記念碑を取り壊した。

最近の出来事はこれらの変化を強めている。金正恩にとって、アメリカの選挙サイクルはしばしば楽しいメッセージの機会となる。9月、北朝鮮は短距離弾道ミサイルの集中発射実験を開始し、金正恩は核戦力をアメリカとの戦闘に備えさせると誓約し、その後、念のため、極秘施設内を散歩する自身の珍しい写真を公開した。ウラン濃縮工場を建設し、より多くの核兵器を製造すると約束した。しかし、これは私たちが期待できることのほんの一部を示しているに過ぎない。

なぜこれが重要なのだろうか? 少なくとも今のところ、それがそれぞれアメリカと韓国の政策目標であり続けているという事実にもかかわらず、金正恩は非核化と南北統一(denuclearization and North-South reunification)の両方を議題から外した。

韓国問題は今やゼロサムの大国間競争(great-power competition)の中に組み込まれている。北東アジアには、中国、ロシア、北朝鮮という対立する2つのブロックが存在し、別に、アメリカ、韓国、日本が存在する傾向にある。中国とロシアが(アメリカ、中国、ロシア、日本、韓国、北朝鮮が参加する)「六者協議(Six Party Talks)」で協力することを可能にした核拡散(nuclear proliferation)に対する共通の懸念はもはや存在しない。金正恩は現在、進化する核・ミサイル兵器、プーティン大統領の支援、そして最悪の場合は中国の無関心によって、これまでにないほど勇気づけられている。

しかし、私の言葉を鵜呑みにしないで欲しい。北朝鮮に関する国家情報会議(National Intelligence Council)の2023年の報告書では、新たなリスク環境の概要が述べられている。その判断は次のようになる。

北朝鮮は今後も、核兵器使用という立場を利用して強圧的な外交を続けるだろうし、核兵器や弾道ミサイルの質と量が増えれば増えるほど、よりリスクの高い強圧的行動を検討するのはほぼ間違いない。

報告書は、金正恩が「体制が危機に瀕していると確信(believes the regime is in peril)」しない限り、核兵器を使用することはないと評価する一方で、「核兵器がアメリカや韓国の容認できないほど強力な反応を抑止できると考え、より大きな通常軍事的リスクを取ることを厭わないかもしれない(He may be willing to take greater conventional military risks, believing that nuclear weapons will deter an unacceptably strong US or South Korean response)」と述べ、誤算(miscalculation)の可能性を示唆している。

報告書は、武力による「領土を奪取し、半島の政治的支配を達成しようとする攻撃戦略(an offensive strategy that seeks to seize territory and achieve political dominance over the Peninsula)」は「強制戦略よりも可能性が低い(less likely than the strategy of coercion)」としているが、後から考えると評議会が修正する可能性があるのではないかと私が疑う重要な警告を発している。

金正恩がアメリカの介入を阻止し、中国の支援を維持しながら韓国軍を圧倒できると信じている場合、あるいは国内または国際危機が修正主義的な目標を達成する最後のチャンスであると判断した場合、攻撃戦略(offensive strategy)の可能性はさらに高まるだろう。

このような戦略の結果、どのようなシナリオが考えられるだろうか? エスカレートする可能性のある火種は、南北朝鮮の海洋境界線である北方限界線(Northern Limit LineNLL)である。NLLは1953年の休戦前後に国連軍司令部によって画定されたが、北朝鮮はこれを争っており、長年の不満と度重なる軍事衝突の原因となっている。2010年、平壌は、NLLが韓国領と定義する5つの島の1つである延坪島を砲撃した。この攻撃で韓国海兵隊員2人が死亡し、韓国船1隻も沈没した。北朝鮮は今年初めにもこの島の近くで砲弾を発射している。

金正恩が憲法改正を要求し、韓国を「主敵(principal enemy)」と宣言したのと同じ1月の演説で、彼は将来の最高人民会議(Supreme People’s AssemblySPA)会議で北方限界線の国境主張を修正することにも言及した。「我が国の南側国境線は明確に引かれているため、違法な『北方限界線』やその他の境界線は決して容認できない。韓国が我が国の領土である陸地、空域、水域を0.001ミリでも侵犯すれば、戦争挑発(war provocation)と見なすだろう」。金正恩は10月7日に最高人民会議の会議を予定している。

朝鮮半島のこうした現実と北東アジアの地政学的苦境から生じるリスクは、いくつかの危険だがもっともらしいシナリオを示唆している。まず、国家情報会議報告書や韓国のアナリストたちが予見している核の影のシナリオがある。それは次のようなものだ。

米韓軍事演習を非難した後、北朝鮮はそのうちの2つの島の近くで実弾射撃訓練と思われる演習を開始し、その後砲弾を集中砲火し、続いて軍隊が延坪島に上陸した。韓国を牽制するアメリカの努力は失敗し、韓国政府は空軍と海軍をその地域に派遣し、北朝鮮の船舶に砲撃し、海兵隊を島に上陸させた。戦闘が続く中、北朝鮮は近くの無人島に戦術核兵器を発射した。

アメリカや韓国は軍事的に対応し、エスカレーションの危険を冒すだろうか? 広島以来初の核使用に直面して、中国は国連安全保障理事会決議に拒否権を発動するだろうか、それとも状況を封じ込めるために米国と協力するだろうか? アメリカと韓国の両国が北朝鮮との信頼できる外交的または軍事的コミュニケーション手段を欠いている現在、北朝鮮は簡単に制御不能になる可能性がある。

更に憂慮すべきシナリオは、朝鮮半島危機と台湾危機が同時に発生するアジアでの二正面戦争(two-front war)である。ウォーゲーム(wargaming)、政府関係者へのインタヴュー、ワークショップに基づく2023年の詳細な報告書の中で、北朝鮮担当の元国家情報担当官であるマーカス・ガラウスカスは、抑止力(deterrence)がどのように失敗する可能性があるか、また、例えば中国が台湾に侵攻し、アメリカが軍事介入(military intervention)して焦点と資源を逸らした場合、金正恩が韓国を攻撃する論理と力学について詳述している。あるいは逆に、中国と北朝鮮の両方が台湾と韓国を攻撃するような、協調しての同時攻撃(simultaneous offensives)の可能性もある。

3つの核保有国が対立する(そしてプーティンがどのように行動するかを推測するかもしれない)というのは、空想的に聞こえるかもしれないし、ハルマゲドンに向けて夢遊病になるのではないかと危惧する人もいるかもしれない。そのような最悪のシナリオがすぐに起こる可能性は低いが、北朝鮮の地政学的な再配置によって、今後6~18カ月以内に平壌が劇的な動きを見せる可能性は高まっている。

アメリカも中国も、朝鮮半島をめぐる危機感に欠けている。中国当局者によれば、北京は平壌の行動をアメリカの制裁のせいであり、自分たちの問題ではないと見ている。ウクライナや中東地域での紛争が激化し、中国とのゼロサム競争が高い議題となっている今、北朝鮮は後回しにされているし、今後もされ続けるだろう。しかし、金正恩はそれについて何か言うかもしれない。

※ロバート・A・マニング:スティムソン・センターの戦略的先見ハブ上級研究員を務めており、世界的な先見性と中国プログラムに取り組んでいる。ツイッターアカウント:@Rmanning4

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2023年9月13日、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領と、北朝鮮の最高指導者である金正恩朝鮮労働党総書記・国務委員会委員長が、ロシア極東のボストチヌイ宇宙基地で首脳会談を行った。両国は西側世界では特に評判が悪い「ならず者国家(rouge state)」である。プーティンと金正恩は独裁者として忌み嫌われている存在だ。その2人が首脳会談を行って、西側メディアが悪口ばかりになるのは当然のことだ。

 ウクライナ戦争が2年目を迎え、戦況は膠着状態に陥っている。ロシアは、戦争の初期段階で、西側諸国からの経済制裁を受けたが、それを持ちこたえ、石油の輸出によって外貨を稼ぐことができている。それでも戦争の長期で、武器の減少が取り沙汰されている。そうした中で、金委員長をプーティンが直接出迎えて厚遇したということは、北朝鮮からの武器供与を求めてのことだろうというのが多くの人の見方だ。北朝鮮からすれば、ロシアからの技術供与や食糧支援を求めているということのようだ。

 北朝鮮とロシアの二国関係は、互恵的な関係ということが言える。お互いがお互いの望むものを持っており、それを与え合うことで、お互いが利益を得るということになる。北朝鮮とロシアの接近によって、ロシアが北朝鮮にミサイル技術や宇宙技術を供与することになれば、北朝鮮のミサイル、核兵器がより高度になり、東アジア地域における、危険が増すという考えも出てくるだろう。

 しかし、ロシアも中国もそこまで甘くはない。北朝鮮の位置を考えれば(両国と国境を接している)、北朝鮮に高度のミサイルを持たせることは、中露両国の安全保障にとっても脅威となる。特に中国の場合、黄海を超えれば、すぐに北京である。北朝鮮のミサイルがアメリカや日本を向いているうちは良いが、それがいつ北側(ロシア)や西側(中国)に向かうかは分からない。従って、致命的に重要な技術を北朝鮮に供与することはない。中露は全面的に北朝鮮を信頼してはいない。あくまで自分たちがコントロールできる範囲に置いておかねばならない。

 アメリカからすれば、北朝鮮を中露両国から引き離すということが重要だ。ドナルド・トランプ前米大統領は、前代未聞の米朝首脳会談を成功させた(2018年のシンガポール、2019年のヴェトナムの首都ハノイ)。ここで、北朝鮮の非核化の見返りとしてのアメリカからの経済支援による経済開発といった話も出ていた。しかし、ジョー・バイデン政権になってからは米朝関係には何の進展もない。トランプのような政界のアウトサイダーだからこそなしえた成果であったのだろう。北朝鮮からすれば、トランプがいなくなれば、アメリカは約束を反故にする、もしくは北朝鮮の体制転換のために北朝鮮に浸透してくるということは分かっていることであり、アメリカとの交渉にはおいそれとは乗れないということになる。

 北朝鮮は、この機会にロシアとの関係を良好なものとしておくことは、対中関係にも影響を与えるという計算もあるだろう。中露両国を両天秤にかけるということだ。北朝鮮はいつも実にしたたかだ。

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プーティンと金がお互いから欲しいもの(What Putin and Kim Want From Each Other

-最近の両者による首脳会談は、ロシアと北朝鮮の関係がいかに取引的なものになっているかを示した。

アンキット・パンダ筆

2023年9月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/09/15/russia-north-korea-putin-kim-summit-diplomacy-weapons-missiles-space-cooperation-sanctions/

新型コロナウイルスの感染拡大のさなか、3年以上にわたって自主的に課した、厳しい孤立主義(isolationism)を経て、北朝鮮の指導者金正恩は今週、思い切って国境の外に飛び出した。金委員長はロシアのウラジーミル・プーティン大統領に会うため、かつて父親が好んだのと同じ装甲列車(armored train)に乗って、ロシア極東に向かった。金委員長が外国指導者と会談するのは2019年以降では初めてのこととなった。プーティン露大統領は、ホスト役を務めることで、最近のG20BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)首脳会談への欠席が象徴する、プーティン自身の外交的孤立の中で、外交分野における自身の正常なイメージを示すことができた。

プーティン大統領は、2019年に初めて会った北朝鮮の指導者である金正恩に対する親近感を示し、ロシア語で非公式に挨拶した。金委員長は、ウクライナに対するモスクワの「聖なる闘争(sacred struggle)」に対する北朝鮮の献身を告白した。両者とも西側諸国が支配する世界秩序に対して団結を示すことを目的としていたが、その戦略的一致は実際には両指導者にとって困難な状況によって引き起こされた、より取引的な論理から生じている。簡単に言えば、それぞれが相手に提供できるものがたくさんあるということだ。

金正恩とプーティンは、お互いに正確に何を求めてきたのかを胸に秘めている。典型的な首脳同士による首脳会談とは異なり、両者は協議や合意内容を示唆するいかなる種類の共同声明も発表しないことを選択した。しかし、両国間で行われている、最近の他のハイレヴェルの外交行為と同様に、両者の会談の様子は、より明白なものであった。

金委員長の訪問に先立って、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣は、兵器調達に携わる他の国防高官らに囲まれ、北朝鮮の兵器が豊富に展示されている平壌の展示場を視察した。北朝鮮が、ロシアが長年支持してきた国連安全保障理事会の支持による包括的な武器禁輸下にあるという事実は、大きな障害ではないようだ。

金・プーティン首脳会談の開催地の選定も同様に微妙だった。まず、両首脳はロシアの比較的新しいボストチヌイ宇宙基地での会談を選んだ。これは、モスクワがカザフスタンのバイコヌール宇宙基地への依存を減らすために設計されたロシア東部の宇宙基地である。ロシア国営メディアは、プーティンが、そこで会談することを決めたのは、金正恩が「ロケット技術に大きな関心を持っている」ことを認めたからだと述べ、北朝鮮の指導者は「宇宙開発を進めようとしている。だから私たちはボストチヌイ宇宙基地に来たのだ」と述べたと報じた。実際、北朝鮮は成熟した宇宙開発プログラムを開発しようとしているが、今年2度の衛星打ち上げ失敗が示すように、成長の余地がある。ロシアの宇宙打ち上げ技術の援助は、軍事偵察衛星(military reconnaissance satellites)の開発を含む平壌の軍事的近代化の野望(military modernization ambitions)の実現に大いに貢献するだろう。

しかし、北朝鮮がロシアの利益を全力で支援することで得られる恩恵は他にもある。プーティン大統領との会談後、金委員長の列車はコムソモリスク・ナ・アムーレに向けて進み、そこで金委員長はSu-35戦闘機とSu-57戦闘機を生産する工場を訪れた。これらの戦闘機は現在朝鮮人民軍空軍が利用できる旧式の機体よりもはるかに先進的なシステムだ。新しい戦闘機を調達できなくても、北朝鮮は、既存のソ連製軍用機を強化し、耐空性と信頼性を大幅に向上させるためのスペアパーツやコンポーネントの安定供給から恩恵を受ける可能性がある。

金正恩はまた、自国のミサイル計画を強化するために、ロシアのサプライヤーから調達した原材料や複合材へのアクセスも求めるだろう。北朝鮮は、ケブラーやアラミド繊維のような素材をロシアから調達し、高度なミサイルに使用するために、組織的な犯罪ネットワークに長い間依存してきた。ロシアがこのような移転を積極的に促進することは、国連制裁違反ではあるが、平壌の軍事的野望の実現を支援することになる。北朝鮮はまた、秘密裏に技術支援を求める可能性もある。国際的なルールや規範を蔑ろにするプーティン大統領によって、これまで両国間で考えられなかったような技術協力が実現可能になるかもしれない。

ミサイルや戦闘機といったハード面以外で、金正恩は、新型コロナウイルス感染拡大を通じて、北朝鮮で深刻化している栄養面の問題に対処できる食糧援助の可能性についてもプーティンに打診したようだ。このような援助は制裁に違反するものではないが、それにもかかわらず、金正恩が近年、核の近代化に巨額の資金をつぎ込みながらも公然と認めている食糧不足に対処する一助となるだろう。北朝鮮とロシアは国境と領海を接しているので、大規模輸送も容易だ。

ロシアは北朝鮮の目的に対して外交的支援を提供することもできる。北朝鮮は既に、国連安全保障理事会におけるロシアと中国の庇護からかなりの恩恵を受けている。 2019年の米朝外交の最終段階の崩壊以来、中国政府とロシア政府はいずれも新たな制裁や国連での正式な非難さえも明確に拒否している。2016年と2017年の、例外的に広範な分野別の措置に対する黙認とは全く異なり、北朝鮮を積極的に支援していることになる。昨年は、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル実験を非難する米大統領声明を両国とも支持しなかった。

一方、今回の会談に対するロシア政府の関心は、ロシア軍が使用しているソ連時代の発射装置と逆互換性のある、北朝鮮が大量に保有している砲弾やロケット弾の弾薬にあると考えられる。昨年9月に『ニューヨーク・タイムズ』紙が取材したあるアメリカ政府の情報筋は、そのような移送はすでに行われていたと示唆したが、これはおそらく時期尚早であったと思われる。むしろ、最近相次いでいる北朝鮮とロシアの二国間外交は、こうした移転を促進することを目的としていたとみられ、ホワイトハウス報道官はショイグ防衛相の訪問後、それが「積極的に進められている(actively advancing)」と述べた。

プーティン大統領と金委員長の首脳会談で、イデオロギーを共有する姿勢を見せようとしたにもかかわらず、プーティンと金正恩は相手の要求に完全に応じるつもりはないかもしれない。例えば、北朝鮮はロシア海軍の核推進技術へのアクセスを求めるかもしれない。同様に、ロシアはウクライナで使用される可能性のある、より高度な北朝鮮ミサイルの入手を求めるかもしれないが、金正恩は自国の国防と抑止力のためにミサイルを保有することを好むかもしれない。

両国の会談は、北東アジアにおける新たな権威主義的枢軸(a new authoritarian axis)の話を促すだろうが、この関係の最近の高まりが、各国の目先の戦略的利益よりも、深い基盤を持っていることを示唆するものはほとんどない。モスクワは自国に有利なように世界秩序を修正しようとしているかもしれないが、その努力のパートナーとして北朝鮮を参加させても使い道は限られる。

一方、北朝鮮にとって、ロシアとより深い関係を築きたいという願望は、新型コロナウイルス感染拡大とロシアのウクライナ侵攻の両方に先行している。金正恩が2019年にロシアの極東でプーティンと初めて会ったのは、前回失敗した米朝首脳会談の直後だった。その年の暮れ、金正恩は自国の戦略的アプローチについて「新しい方法」に従うことを示唆した。ロシアとのより良い関係は、この新しい方法の一部であると思われる。ロシアが孤立し、世界的な規範に背くことを厭わなくなるなど、現在の地政学的ダイナミクスは、平壌に絶好の機会を与えている。

金正恩の訪問は人々を驚かせた。特に注目すべきは、2019年以来の海外訪問に中国ではなくロシアを選んだことだ。2018年、金委員長は最終的に韓国やアメリカとの首脳外交に向かう前に、中国の習近平国家主席との会談を選んだ。中国側の声明によれば、両者の最初の会談で、習主席は何よりもまず、両国間の「ハイレヴェルの交流」の重要性を強調し、「同志委員長(Comrade Chairman)と頻繁に連絡を取り合いたい」と述べたということだ。

しかし、金委員長の選択は、北京と平壌の間に大きな溝があることを示すものではない。金委員長と習近平は新型コロナウイルス感染拡大の最中に書簡を交換し、ある中国高官は最近、平壌の軍事パレードに出席した。しかし、少なくとも短期的には、金正恩は習近平よりも、ますます絶望的になっているプーティンを、より積極的な後援者となるだろうと評価している可能性が高い。北京と平壌はともにプーティンの戦争努力を支持しているが、大規模な軍需物資の提供を望んでいるのは北朝鮮だけだ。

ロシアの対ウクライナ作戦に対する北朝鮮の支援は、戦場での変革にはつながらないだろう。通常弾薬の不足は、ロシアと迅速な勝利の間に立ちはだかる要因とは言い難い。平壌による弾薬供給に対して、期待される最も重要な短期的効果は、ロシアが将来NATOと衝突する場合、自国の備蓄を補充し、維持できるようになることであろう。

アメリカにとって、金委員長とプーティンの関係が緊密になるという見通しは悪いニューズだが、終末をもたらすようなものではない。仮にプーティンと金正恩が互いにほとんど関心を持たなかったとしても、両首脳は単独でアメリカの利益に対する深刻な挑戦を続けるだろう。

おそらく、この関係がもたらす結果として、北朝鮮の継続的な核兵器保有に対する現状維持の外交アプローチへの影響ほど重要なものはないであろう。既存の国連制裁体制に直面して、ロシアが公然と北朝鮮を露骨に支援すれば、空想的な短期目標である非核化(denuclearization)が不可能になるだろう。

このことは、ここ数十年でアメリカの対北朝鮮アプローチを見直すための最も重大なきっかけとなる可能性が高い。現在、外交の展望は漠然としているように見えるが、ワシントンは、かつて金正恩がドナルド・トランプ前米大統領に会うためにハノイ行きの列車に乗るように仕向けたのも、大国との関係を進めるための、ほぼ同じ取引的アプローチだったことを思い起こすべきだ。

金委員長にモスクワから目を背けるよう促すのは難しいだろう。しかし、アメリカは北朝鮮に少なくとも外交の可能性をもう一度考えるきっかけを与えるために、外交部門が持つ、あらゆるツールを活用する用意を行っているはずだ。金委員長は昨年、アメリカは無制限の交渉を求め、北朝鮮に対して敵意がないことを公言しているにもかかわらず、「ジョー・バイデン政権の行動、特に韓国を安心させるために取った措置の多くが北朝鮮に悪影響を与えている。無制限の交渉や敵は存在しない、などの言葉を信じるに足る理由は存在しない」と不満を述べた。

ワシントンはまた、金正恩がハノイに行った際に求めていたのは、限定的な核の譲歩と引き換えに、自国の経済に対する分野別の制裁を緩和するという取引であったことを思い起こすべきだ。制裁緩和の見通しを利用することは、北朝鮮の不遵守を防ぐためのスナップバック(訳者註:元の状態に素早く戻すという意味)条項付きで、誘惑としての価値を持ち続けるかもしれない。しかし、ワシントンがすぐに行動を起こさなければ、金正恩がかつて交渉の場で制裁緩和を求めていた意義はかなり薄れてしまうかもしれない。ロシアが北朝鮮との取引の意欲を示している現在ではなおさらである。

最後に、アメリカとその同盟諸国は、より高性能化する北朝鮮の核兵器が危機や紛争で使用されるリスクを軽減することに引き続き関心を持っている。今後の交渉の前提が核リスクの軽減や抑制に焦点を当てることができると金委員長に示唆すれば、北朝鮮が外交的により苦境に陥る理由を生み出すことになるだろう。

※アンキット・パンダ:ワシントンに本拠を置くカーネギー国際平和財団各政策プログラムスタントン記念上級研究員。著書に『金正恩と彼の爆弾:北朝鮮における生存と抑止(Kim Jong Un and the Bomb: Survival and Deterrence in North Korea)』がある。ツイッターアカウント:@nktpnd

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 古村治彦です。

 

 先週のヴェトナム・ハノイでの2回目の米朝首脳会談については既にこのブログでも書きました。ワーキングランチが取り止めになり、共同宣言発表もなくなり、何の成果もないままで終了ということになりました。金正恩委員長は不機嫌な態度で会場を後にし、その後、ヴェトナム政府が主催の公式行事には出席しましたが、その他の経済視察などは行いませんでした。前回は、夜のシンガポールに出て、トランプ大統領の支持者である、シェルドン・アデルソンが経営するマリーナベイ・サンズを訪問しましたが、今回そのようなことはありませんでした。

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 こうした中、北朝鮮政府の神経を逆なでする出来事がいくつか起きました。まず、2019年2月22日に、スペインの首都マドリードにある北朝鮮大使館に賊が侵入し、館員を一時監禁し、コンピューターなど情報機器が盗まれるという事件が起きました。

 

 諜報やスパイといった世界での暗闘の一部なのだろうと思いますが、大使館に賊が侵入するというのはよほどのことです。コンピューターなど情報機器が盗まれたということですが、これでは北朝鮮が在外公館で構築している情報ネットワークや使用している暗号などが流出したということになります。

 

 スペインは第二次世界大戦では中立国となり、マドリードでは各国の大使館が情報戦を戦っていた場所です。日本も須磨弥吉郎公使を中心とする東機関(とうきかん)を設立し、アメリカの情報を日本に送っていました。アンヘル・べラスコというスペイン人が日本のスパイとなっていました。マドリードという場所は今でもスパイ戦、諜報戦の第一線なのかもしれません。

 

 更に、1919年の三一運動から100年の今年3月1日、金正恩委員長の兄で、金委員長の移行で殺害されたとされる金正男(故金正日国防委員長の長男)の息子である金漢率(キム・ハンソル)氏を保護していると主張しているグループ「千里馬民間防衛(CCD)」が名前を「自由朝鮮」に変え、朝鮮臨時政府の設立を宣言しました。金漢率氏が首班にはなっていないようですが、外国に北朝鮮の亡命政府というか、臨時政府を設立すると宣言しました。


 

 2回目の米朝首脳会談の直後のタイミングというのが気になるところです。この自由朝鮮というグループの実態ははっきりしていません。しかし、故金日成国家主席の曾孫、故金正日国防委員長の孫であり、長男の長男である金漢率を擁しているということは重要なことです。血筋で見れば、金漢率氏の方が故金日成主席に近いということになります。




 この自由朝鮮の動きの裏に、アメリカ、特にアメリカのネオコン派がいるとするならば、この動きは北朝鮮政府にとっては神経を逆なでするものであり、金正恩委員長が外出を控えるようになったというのも、暗殺の危険を避けるためということになるのだろうと思います。

 

 米朝首脳会談の不調と朝鮮臨時政府の発足ということを結び付けて考えると、この先、米朝交渉が決裂せずに、だらだらとでも続いていくことは重要である、成果を急いで出そうとすると交渉が決裂し、最悪の場合にはアメリカによる北朝鮮攻撃という可能性が息を吹き返してくるということになります。

 

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スペインの北朝鮮大使館、襲撃受ける=職員一時監禁

 

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2019022800368&g=int

 

 【ソウル時事】28日付の韓国紙・朝鮮日報などは、スペインのマドリードにある北朝鮮大使館が22日、何者かの襲撃を受け、職員が数時間、監禁されたと報じた。職員3人が軽いけがをしたほか、コンピューターなど情報機器が盗まれたという。地元メディアなどを引用して伝えた。AFP通信によると、スペイン内務省スポークスマンは27日、「(事件を)捜査中だ」と述べた。

 

 朝鮮日報は、脱北者支援団体とみられる「チョルリマ・シビル・ディフェンス(千里馬民防衛)」が事件に関与したかどうかが注目されると指摘。同団体は金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄で、2017年2月にマレーシアで殺害された金正男氏の息子ハンソル氏の安全確保のために活動しているといわれる。(2019/02/28-09:41

 

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正恩氏一転、不機嫌に去る=トランプ氏「関係継続」

 

2/28() 17:08配信 時事通信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190228-00000082-jij-kr

 

 【ハノイ時事】第2回米朝首脳会談は合意に達することができないまま幕を下ろし、わずか数時間で両首脳は劇的に表情を変えた。

 

日本「悪夢のような状況懸念」=米朝再会談で韓国TV

 

 会談2日目の28日午前、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は「私の直感では良い結果が出ると信じている」とトランプ米大統領に語り掛け、余裕すらうかがわせた。しかし、午後に会場のホテルを後にする際は一転、不機嫌そうな様子を隠さなかった。一方のトランプ氏は、会談後の記者会見で「正恩氏との関係を継続したい」と未練をのぞかせた。

 

 28日午後、会談が行われたホテルを出発し、走り去る専用車では、後部座席に座る正恩氏の「仏頂面」が確認された。午前中、トランプ氏とホテルの中庭を散策しながら見せた柔和な表情とリラックスした雰囲気は消え、両国に依然大きな隔たりがあることを無言のまま世界に知らせた。

 

 中国を経由し専用列車でベトナム入りした26日、正恩氏は対中国境の越北部ドンダン駅前で、歓迎する地元の人々に専用車から手を振る気配りを見せていた。しかし、会場を後にした際の表情は、事実上物別れに終わった会談の雰囲気を反映して厳しかった。ベトナムで高まっていた正恩氏への好印象を吹き飛ばすように去って行った。 

 

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記事入力 : 2019/03/02 09:09

 

金正男氏息子救援団体「自由朝鮮」、臨時政府発足を宣言

 

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/03/02/2019030280008.html

 

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の腹違いの兄である故・金正男(キム・ジョンナム)氏の息子キム・ハンソル氏を支援する団体「千里馬民防衛」が1日「自由朝鮮の建立を宣言する」とした上で「この政府が北朝鮮人民を代表する単一かつ正当な組織だ」と主張した。団体名も「自由朝鮮」に変更し、自分たちを「臨時政府」と名乗った。この団体について一部では「北朝鮮の元政府高官だった脱北者を中心に組織されたのでは」との見方も出ている。

 

 「千里馬民防衛」はこの日ホームページを通じ「光復(植民地支配からの解放)という明るい光が平壌に届くまで、人民を苦しめる者たちに対抗してたたかう」などとする「自由朝鮮のための宣言文」を韓国語と英語で公表した。ソウル市内のタプコル公園とみられる場所で、白の韓服に黒いチマを着た女性がこの宣言文を読み上げる735秒の動画も公開された。この日が三・一節から100周年だったことを意識したようだ。団体は「過去数十年間、人道主義に反する莫大な犯罪を行ってきた北の権力に対抗するため立ち上がった」とも主張し、北朝鮮住民や国際社会などに賛同と連帯を呼びかけた。

 

 この団体は先月25日「今週中に重大発表を行う」と予告していた。時期的に考えると、この重大発表とは今回の宣言を意味するものと思われる。亡命政府の設立には北朝鮮住民と国際社会の後押しが必要となるため、団体は今後キム・ハンソル氏ら北朝鮮出身者を前面に出すとの見方もある。

 

 団体はこの日ソウル市内で撮影された動画を公開することで、関係者の一部が韓国国内にいることを暗に示した。元北朝鮮政府高官の脱北者は「金正恩体制に反旗を翻した元工作員たちの団体のようだ」との見方を示し「彼らは情報力も資金力もあるので、海外の情報機関と連携した反体制活動も可能だ」と指摘した。この脱北者はさらに「北朝鮮が工作機関を偵察総局に統廃合した2009年と、張成沢(チャン・ソンテク)氏が処刑された13年を前後した頃、複数の元北朝鮮工作員が亡命したと聞いている」とも伝えた。

 

 一方で韓国の中道系野党・正しい未来党の李彦周(イ・オンジュ)議員は1日「北朝鮮内の反独裁運動に関する特別法(仮称)」を国会に提出する方針を明らかにした。李議員は「北朝鮮の臨時政府や亡命政府を名乗る団体への支援策について議論すべき時だ」とコメントした。

 

キム・ミョンソン記者 , ユン・ヒョンジュン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

 

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North Korea’s ‘government in exile’: who is the group dedicated to ‘restoring light to Pyongyang’?

 

    Little is known about CCD and it is unclear who is behind the organisation – although some have speculated it has links to South Korea’s spy agency

    The group emerged in 2017 when it said it had guaranteed the safety of Kim Han-sol, the son of Kim Jong-nam, who was murdered

 

 

Agence France-Presse 

Updated: Friday, 1 Mar, 2019 1:09pm

https://www.scmp.com/news/asia/east-asia/article/2188191/north-koreas-government-exile-who-group-dedicated-restoring

 

A shadowy group believed to be protecting the son of North Korean leader Kim Jong-un’s assassinated brother declared the formation of a government-in-exile on Friday, dedicating itself to the abolition of the “great evil”.

 

The Cheollima Civil Defence (CCD) organisation – which offers to assist people attempting to defect from North Korea emerged in 2017 when it posted an online video of Kim Han-sol, saying it had guaranteed his safety after his father was killed

by two women who smeared him with nerve agent.

 

In a lengthy statement posted on its website in both Korean and English on Friday – the 100th anniversary of a Korean movement against Japanese colonial rule – the group announced itself as a provisional government for the North called “Free Joseon”. Joseon is an old name for Korea.

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We dedicate ourselves completely to the abolition of this great evil, a stain on the very soul of humanity,” it said in a statement, saying it will continue its campaign until “the day that light is truly restored to Pyongyang”.

 

It claimed to be “the sole legitimate representative of the Korean people of the north”, adding: “Joseon must and shall be free. Arise! Arise, ye who refuse to be slaves!”

 

The group posted a video of a woman – dressed in an old-fashioned black and white hanbok and her face blurred or only showing her back – reading out the statement in front of a traditional Korean pavilion in a field.

 

Little is known about CCD and it is unclear who is behind the organisation – although some have speculated it has links to South Korea’s

spy agency. It is named after a mythical winged horse.

 

CCD uses South Korean transliteration for its name, while some of the Korean text on its website reads as if it could have been a translation from English.

 

In the past the group has said it responded to urgent requests for protection from “compatriots” and has thanked countries including the Netherlands, China and the United States for their help.

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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