古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: ヨーロッパ政治

 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 ウクライナ戦争は2022年2月に始まってもうすぐ3年が過ぎようとしている。初期段階でウクライナ軍が善戦してロシア軍の進撃を止め、西側諸国がロシアに経済制裁を科して戦争は早期に集結するかと思われたが、結局、ロシアは経済制裁を受けても持ちこたえ、戦争は継続している。

西側諸国はウクライナに支援を続けているが、そのほとんどはアメリカが負担している。ウクライナ戦争停戦を訴えて当選した、ドナルド・トランプ次期大統領が正式に就任するのが2024年1月20日で、それ以降、ウクライナ戦争の停戦協議は本格化すると考えられる。現状は、ウクライナは東部や南部で奪われた地域を奪還できていないが、ロシア領内クルスク州の一部を占領している。地図を見てもらえれば分かるが、ロシアにとっては喉に刺さった小骨程度のことであるが、やはり、ここを奪還できるかどうかということは重要になってくる。ウクライナとしてはクルスク州を取引材料にして、ロシアから何らかの条件を引き出したいところだ。
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 ロシアとしては、停戦協議にはクルスク州を奪還してから応じたいところだ。アメリカの支援が切れる今年1月以降に攻勢をかけて、ウクライナ軍をロシア領内から撤退させ、それから停戦交渉をするということになる。また、自分たちで攻勢をかけなくても、トランプ大統領に停戦協議に応じたいが、クルスク州を奪還しない限り無理だと言えば、トランプ大統領が、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領に圧力をかけてウクライナ軍を撤退させるということも外交交渉で出来るだろう。

 停戦後に、平和維持活動として、ポーランドとフランスがウクライナに将兵4万人を派遣するという計画があるという報道もある。ウクライナのゼレンスキー大統領がウクライナのNATO加盟の必要性を訴え、NATO加盟まで、外国の軍隊の駐留を求めるという発言があった。これはロシアを非常に刺激する発言であり、ポーランドとフランス両国の軍隊がウクライナに4万人も駐兵するということはロシアにとって受け入れがたいことだ。ウクライナとしては逆に、外交交渉の材料として、NATO加盟と外国軍隊の駐留を取引材料に仕える可能性もある。ここで重要なのはポーランドである。ポーランドは中欧の大国であるが、同時に、歴史的にヨーロッパ全体に不安定要因ともなる国家である。ポーランドは、反ロシアという点ではウクライナと共闘できるが、ウクライナの南西部ポーランド国境地帯ガリツィア地方には実質はカトリック教徒のユニエイトがおり、ウクライナとの関係が深い。ポーランドがウクライナ南西部の支配を狙っている可能性がある(ロシアがウクライナの頭部を持っていったんだから自分たちもという考え)。
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 ウクライナ戦争の停戦交渉はロシアの占領地域はそのままという現状を認めるところが前提となり、ウクライナのNATO加盟を認めるかどうか、外国軍駐留を認めるかどうかというところになるだろう。軍事同盟ではないEU加盟については、ロシアも認められるところがあるだろう。しかし、EU側が負担増大を懸念してウクライナの加盟を認めない。トランプ次期大統領がNATOからの脱退も示唆しており、NATOの力が弱体化し、西側諸国の国力も低下している中で、ウクライナは西側とロシアの間で両天秤をかけるという柔軟な動きが必要となってくる。

(貼り付けはじめ)

●「ポーランドとフランス、軍派遣を協議か 戦闘終結後のウクライナに」

毎日新聞 2024/12/12 09:37(最終更新 12/12 09:37

https://mainichi.jp/articles/20241212/k00/00m/030/036000c

 ポーランドのメディアは11日、同国とフランスが、ロシアとの戦闘終結後のウクライナで平和維持活動に当たる4万人規模の外国軍派遣の可能性を協議していると報じた。フランスのマクロン大統領は12日にポーランドの首都ワルシャワでトゥスク首相と会談する予定で、議題に上るとみられる。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、自国の安全を保証するには北大西洋条約機構(NATO)加盟が必要だとした上で、加盟までの間、外国軍が駐留する案を検討していると述べていた。

 マクロン氏とゼレンスキー氏は7日、トランプ次期米大統領を交えた3者会談をパリで行っており、こうした案を議論した可能性もある。

 フランスのルモンド紙は11月、フランスと英国が欧州各国からのウクライナへの派兵を議論していると報じた。米メディアによると、トランプ氏の政権移行チームでは、ロシアとの戦闘を凍結し非武装地帯が設けられた場合、欧州諸国が警備を担う案が浮上している。(共同)

 

 

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ウクライナのクルスク侵攻がもたらす地政学的チャンス(The Geopolitical Opportunity of Ukraine’s Kursk Offensive

-ウクライナのクルスク侵攻はワシントンに対して、より賢いアジアへの意向(pivot to Asia)を示す道となる。

A・ウェス・ミッチェル筆

2024年8月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/08/15/kursk-ukraine-russia-offensive-incursion-china-asia-us-geopolitics-strategy/?tpcc=recirc062921

写真

ウクライナのロシアへの奇襲侵攻の中、破壊された国境検問所を通過するウクライナの軍用車両(2024年8月14日)

現在、クルスク地方で進められているような、ウクライナのロシア本土への侵攻は、アメリカの地政学的課題を順序立てて解決するという広範な戦略の一環として、戦争をより迅速に終結させる好機である。ロシアの侵攻2日目に私が『フォーリン・ポリシー』誌に書いたように、このような順序立ての戦略は、中国、イラン、ロシアとの同時かつ多方面にわたる戦争を回避するための最良の選択肢である。ウクライナ人が最近の成果を強固なものにし、おそらくそれを土台にするのに必要な手段を与えることで、ワシントンはキエフがモスクワを交渉のテーブルにつかせるのを助け、西側諸国が再武装する時間を稼ぎ、アメリカがインド太平洋に関心を移すのを可能にするチャンスがある。しかし、そのためには、ジョー・バイデン政権が、ウクライナによるアメリカ製兵器の使用制限を撤廃し、紛争の明確かつ達成可能な最終状態を定義する必要がある。これはリスキーではあるが、中国かイランが二正面戦争でアメリカと対峙するまでウクライナに援助を垂れ流すという選択肢よりは望ましい。

クルスク攻防戦がチャンスを生み出すには、この攻防戦が2022年以降のウクライナのロシア侵攻作戦とどう違うのかを理解する必要がある。第一に、ウクライナで最も優秀で西側で訓練された部隊を含む少なくとも5個旅団(brigades)の要素に加え、戦車、大砲、無人機、戦闘機が関与しており、規模がはるかに大きい。

第二に、今回の侵攻は過去の侵攻よりもはるかに深い。詳細は確認されていないが、ウクライナ側は国境のロシア側にある70以上の村、鉄道路線、重要なガス中継ハブ、合計1000平方キロメートル(386平方マイル)以上を支配しているようだ。第三に、ウクライナ側は急襲(raid)に成功しても立ち去るどころか、更に兵力と装備を投入し、侵攻を強めているようだ。

まだ多くのことがうまくいかない可能性がある。1つは、ロシア軍が攻撃している他の戦線からウクライナの兵力を引き離す可能性があることだ。モスクワはクルスクへの新戦力の投入を遅らせているが、ロシア軍にはまだ多くの予備兵力がある。

それにもかかわらず、この侵攻によってロシアの意外な弱点が明らかになった。ロシアの国境はほとんど守られていなかった。ウクライナ軍は戦略的な奇襲を仕掛け、敵国に戦争を持ち込み、ウクライナに必要な士気を高めた。ウラジーミル・プーティンは今、この攻撃を厄介なものとして軽視し、徴兵制(政治的に不人気な行動)と国内治安部隊、そして再配置された少数の前線部隊でやり過ごすか、あるいはウクライナ人を退去させ、より大規模な再配置で国境の残りの部分を強化するかというディレンマに直面している。つまり、ウクライナの橋頭堡を封じ込めることはできても、追い出すことはできそうにない。

数的劣勢にもかかわらず、ウクライナ側が地歩を固める可能性は十分にある。これまでのところ、この戦争では、陣地戦(positional warfare)における攻撃よりも防御の方が思いのほか有利であることが明らかになっている。秋の雨季を間近に控え、ウクライナ軍は容易に離脱できないような強固な突出部を形成できる可能性がある。今後、ロシア側は、ウクライナの長くて、穴だらけの国境を監視するために、より多くの軍隊を配備することを避けられないだろう。

このような事態は戦略的に重要である。それは、これまでロシアが勝利のセオリーとしてきた、戦争を長引かせることが、より大規模でおそらくより強力な紛争当事者であるロシアに有利に働くという考えに疑問を投げかけるからだ。クルスク作戦が最終的に失敗したとしても、現在の膠着状態を逆転させ、ウクライナが相対的に有利になるようなウクライナの戦略を描くことができる。プロイセンの軍事理論家カール・フォン・クラウゼヴィッツが19世紀に記したように、「軽く保持された、あるいは無防備な地方の占領は、それ自体が有利であり、この有利さが敵に最終的な結果を恐れさせるのに十分であれば、それは平和への近道と考えることができる」。もしキエフが小規模でもロシアの国境地帯を占領し、保持することができれば、モスクワは自国の領土において、西側の制裁によってこれまで耐えてきたことよりも重大な痛手を被る可能性を考慮しなければならなくなる。

これらは全て、より広範なアメリカの戦略に影響を与える。私は以前から、ウクライナにおけるロシアの戦争に対するアメリカの最適なアプローチは、中国が台湾に対して準備するよりも速い時間軸で、ロシアに代理敗北を与える機会として利用することだと主張してきた。過去2回の国家防衛戦略で、アメリカは複数の主要な相手と同時に戦争する準備ができていないことが明らかになった。ロシアの継続的な侵略に対して集中的かつ規律ある方法で資源を使うことで、アメリカはヨーロッパに対するロシアの脅威を弱め、その上でインド太平洋における抑止力を強化するための余地(bandwidth)を確保するチャンスがある。

問題は、アメリカが敵国ほど時間をうまく使えていないことだ。ウクライナ戦争が始まって以来、アメリカの国防予算は比較的横ばいで推移している。中国はこの時間を利用して、自国の銀行業界を制裁から守り、エネルギー供給をアメリカが混乱させにくいルートへと方向転換し、台湾近辺に攻撃部隊を増強し、アメリカとの核バランスを達成する努力を加速させている。イランはこの間、国防予算を増やし、中東全域の代理勢力に軍備を提供し、核兵器開発期間をほぼゼロに縮めてきた。

敵国が24時間体制で武装している一方で、アメリカは自国の防衛産業基盤を、ウクライナを支援できる状態にまで引き上げるのに苦労している。国防総省の推計によれば、アメリカは毎月8万発の155ミリメートル榴弾砲の砲弾を生産する予定だ。ウクライナが防衛陣地を維持するだけでも月に少なくとも7万5千発が必要であること、そして1990年代半ばには、アメリカが月に80万発以上の砲弾を生産していたことを考えるまでは、この数字は印象的だろう。オランダと同規模の経済規模を誇るロシアは現在、アメリカとヨーロッパを合わせた量の3倍の弾薬を生産している。最近の試算によると、アメリカがウクライナに提供したパトリオットミサイル迎撃機、ジャヴェリン対戦車システム、スティンガー防空システムの在庫を補充するには、現在の生産レヴェルで5年かかるという。

ヨーロッパの状況は更に悪い。高飛車な美辞麗句を並べ立てながらも、ほとんどのNATO諸国は、戦争を抑止するための必須条件である戦争への備えについて、中途半端な努力しかしていない。再軍備への意欲を好転させると宣言したにもかかわらず、ドイツは過去2年間、国防予算の不足を容認してきた。最近ではウクライナ支援を半減させ、2025年の国防予算はドイツ国防省が要求した額ではなく、インフレを補うのがやっとというわずかな増額にとどめた。2022年と2023年のNATO首脳会議で、西ヨーロッパの同盟諸国がNATOの東側に師団規模の部隊を配備すると約束し、その後、東側の防空を改善すると約束したが、実現されていない。最近の報告書によれば、ヨーロッパには長期にわたる紛争を遂行するための「備え、産業能力、サプライチェーン、雑誌の充実度、兵站、質量、資源、そして特に『戦う意志(will of fight)』が欠けている」という。

要するに、ワシントンとその同盟諸国は、ロシアの侵攻という衝撃を受けてからの時間を賢く使わなかったが、敵対国は賢く使ったということだ。2年以上前から、主要先進諸国との長期にわたる紛争にどのような規模の努力が必要かは明白であった。それにもかかわらず、アメリカもその同盟諸国も、そのような事態に備えるために必要な準備に近いものは何もしてこなかった。

このような背景から、クルスク侵攻のようなウクライナのロシアへの侵攻は戦略的な意味を持つ。もしウクライナ側が、ロシアの小さな地域さえも危険に晒すことができることを証明できれば、時間さえかければ、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領に、キエフにとってより有利な条件で交渉のテーブルにつかせることができるかもしれない。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、これが作戦の目的だと明言している。プーティンは、「敵は将来的に交渉の立場を改善しようとしている」と発言し、それを認めた。

東ヨーロッパ戦争の最終段階で領土が果たしてきたユニークな役割を強調するのは価値があることだ。過去において、ロシアが戦争後に不利な条件を達成できなかったのは、相手がロシアの領土を保持していたときだけである。例えば、1921年のポーランド・ソヴィエト戦争終結時、ソヴィエト・ロシアはポーランド軍がソ連領の一部を占領した後に西進を終了した。これとは対照的に、フィンランド・ソヴィエト冬戦争では、フィンランド軍がほとんどの軍事戦に勝利したにもかかわらず、ソヴィエト領土を占領することができなかったため、フィンランド領土の大部分を割譲して終結した。

言い換えれば、ウクライナにとって領土は、ロシアに対する制裁緩和やその他の経済的インセンティヴよりも価値のある、最も重要な影響力なのである。したがって、西側諸国の目的は、ウクライナにとって可能な限り最良の条件で、できるだけ早く戦争を終結させる方法として、ゼレンスキーがロシアの領土を保持するのを支援することであるべきだ。

そのためには、バイデン政権はこれまでやりたがらなかった2つのことを実行する必要がある。第一に、戦場での優位性を維持するために必要な武器をウクライナに提供し、キエフがそれらの武器を使用する方法に対する制限を撤廃すべきである。これにはリスクがない訳ではなく、ロシアはNATOやアメリカを直接脅かす形で紛争をエスカレートさせて対応する可能性がある。しかし、これらのリスクは、代替案のリスクと対比させて考慮する必要がある。例えば、ヨーロッパが安定する前にアジアを優先しようとする試みや、イランに対する先制攻撃など、より劇的で危険な試みである。おそらく最悪は、現在の漸進的な路線を継続することであり、その場合、アメリカの軍事備蓄が枯渇した瞬間に台湾に対する中国の動きでアメリカ政府に直面する可能性があり、おそらくそれ自体がさらにエスカレートする可能性を秘めたシナリオとなるだろう。

第二に、ワシントンは戦争に対する明確で達成可能な政治目標を定義する必要がある。その目標は、2022年2月までのウクライナの国境内に主権を回復し、独自の外交政策を担当し、経済的に実行可能で軍事的に強力になることである。それは本質的に価値がある。また、将来のロシアのヨーロッパ侵略に対する防波堤(breakwater against future Russian aggression)として機能する可能性もあり、それによってアジアにより重点を置くというアメリカの目標を支援する。

これらの線に沿ってアメリカの目標を定義することは、バイデン政権の曖昧で不安定な戦争アプローチを放棄することを意味する。バイデン大統領は、最終目標について、ロシアの体制転換(regime change)であると繰り返し示唆した。明らかに達成可能ではないことに加えて、このような、アメリカの目標を組み立てると、戦場で交渉が望ましい地点に達したときにアメリカがウクライナを支援することが困難になる。外交とは、侵略に直面したときの降伏や甘い合理性のことではない。むしろ、クラウゼヴィッツが書いたように、それは国家が「敵軍を殲滅するよりも目標に向かうより短い道(shorter route to the goal than the destruction of the opposing armies)」を見つけるための重要な媒体である。

制限のない軍事援助の拡大と最終目標の明確化という両方の点で、ワシントンとその同盟諸国は緊迫感を持って行動する必要がある。時計の針はアメリカに不利に働いている。時間が賢明に活用されていないという単純な理由で、順序決定戦略は2022年当時よりもリスクが高まっている。しかし、配列決定のリスクは、代替手法のリスクよりも依然として低い。配列処理には、おそらく最後の一押しが必要となる。

だからこそ、ウクライナ人を助けると同時に、複数の大国が敵対する戦争でアメリカ軍を支援できるよう防衛産業基盤の整備を急ぐという、2つの側面からアプローチすることが重要だ。また、ワシントンがヨーロッパの同盟諸国に対し、戦争に備えて現在行っている以上のことを行うよう働きかけることも重要だ。そうでなければ、得られるのは短い猶予だけで、アメリカが戦争を抑止するためにアジアでの態勢を強化することはできない。

戦略は固定されたものではなく、状況に応じて決まる。アメリカとその同盟諸国は現実と差し迫った選択に目を覚ます必要がある。アメリカが真剣に戦争の準備を始めない限り、実際には一度に一つ、あるいはもっと悪いことに複数の戦争を同時に戦わなければならないことになるかもしれない。

A・ウェス・ミッチェル:「ザ・マラソン・イニシアティヴ(The Marathon Initiative)」代表。トランプ政権でヨーロッパ・ユーラシア担当国務次官補を務めた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 古村治彦です。

 イギリスの総選挙の投開票が実施され、労働党が圧倒的な議席を獲得し、14年ぶりに政権交代となった。保守党は歴史的な惨敗を喫した。中道派の自由民主党や右派のリフォームUKは議席を増やした。議席数は労働党が412議席(214議席増)、保守党が121議席(252議席減)、自由民主党が71議席(63議席増)、スコットランド国民党が9議席(37議席減)、リフォームUKが5議席(5議席増)、緑の党が4議席(3議席増)などとなっている。興味深いのは得票率で、労働党は前回とほぼ同じ、保守党は19.9%減、自由民主党も横ばい、リフォームUKは12.3%増となった。得票率が横ばいでも獲得議席数が激増した労働党と自由民主党、得票率は半減だったのに議席減が壊滅的となった保守党、得票率が激増したが議席数には反映されなかったリフォームUKという構図になる。
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 今回の選挙について、労働党が獲得議席数では大勝利ながら、得票率では前回とほぼ同じで、横ばいだったことを考えると、「保守党が自滅した、しかも大規模に」ということになる。このようなことが起きるのは、単純小選挙区制(first-past-the-post voting system)であるからだ。単記非移譲式投票(single non-transferable voteSNTV)と呼ぶこともある。各選挙区の定数は1で、最多得票者が当選者となる。非常にシンプルだ。炭塵小選挙区制では、死票(wasted vote)が多く出るのが特徴で、それが欠点とされる。日本では衆議院選挙で小選挙区制が導入されたが、この時に比例代表での復活も可能な制度が導入された。日本の制度では死票が減少するが、「小選挙区で落選した候補者が復活するのはおかしい」という批判がなされる。完全な比例代表制度(proportional representationPR)を採用している国もあるが、少数政党が乱立し、過半数を握る単一政党が出にくいために、連立政権となり、政治が安定しないという批判もある。完璧な選挙制度は今のところ考え出されていない。
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死票が多く出る

 今回のイギリスの総選挙では、保守党への大きな批判があったのは確かで、それをうまく利用したのが労働党であり、選挙戦術として、勝利の可能性の高い選挙区に集中した自由民主党が勝利を収めたということになる。そして、保守党への不満・批判票はリフォームUKに流れたと推察される。リフォームUKは得票率だけならば、第3位になった。労働党、保守党とリフォームUKの合計得票率は3割超えというところで、拮抗している。リフォームUKが出ていなければ保守党の議席減、労働党の議席増はそこまで大きくなかったと考えられる。私が子供の頃は、アメリカとイギリスは二大政党制と習った。小選挙区制では二大政党以外は勝ち抜くのがなかなか大変だと言われているし、実際そうである。

政治学では、デュヴェルジェの法則(Duverger's law)というものがあり、フランスの政治学者モーリス・デュヴェルジェが主張したものだが、選挙区でM人が選出される場合には、候補者はM+1人になるというものだ。小選挙区制度ではM=1なので、2人が候補者となる。この考えは最初、候補者ではなく、政党数が収れんしていくと主張するもので、小選挙区制度の国では政党数は2つになる、ということになる。昔の日本では中選挙区制(multi-member district)を採用しており、一番大きな選挙区では5人が選出されるとなっていたので、6つの政党が存在できるということになる。55年体制下の日本で考えると、自民党、社会党、公明党、民社党、共産党、社民連が国政政党として存在した。

 イギリスでは第三党、中道の第三勢力を求める動きがあり、自由民主党が一定の勢力を持つことにつながっているようであるが、リフォームUKの出現がどこまで影響を与えるかが注目される。今回の投票率は約60%であり、これはこれまでと比べての低い数字となった。有権者の関心が低かったということもあるだろうが、政治に関する無関心が拡大しているということも考えられる。
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 労働党は大きな議席を得たが、国民生活の改善、物価高の抑制と移民対策、外交政策で成果を出すことが必要で、それがなければ、次の選挙では大敗を喫するということは十分に考えられる。

●イギリスのここ最近の選挙の概略的な結果表示●

■2010年

・保守党306議席(96議席増)36.1%

・労働党258議席(91議席減)29.0%

・自由民主党57議席(議席減)23.0%

■2015年

・保守党330議席(24議席増)36.9%

・労働党232議席(26議席減)30.4%

・スコットランド国民党56議席(50議席増)4.7%

・自由民主党8議席(49議席減)7.9%

■2017年

・保守党317議席(13議席減)42.3%

・労働党262議席(30議席増)40.0%

・スコットランド国民党35議席(21議席減)3.0%

・自由民主党12議席(4議席増)7.4%

■2019年

・保守党365議席(48議席増)43.6%

・労働党202議席(60議席減)32.1%

・スコットランド国民党48議席(13議席増)3.9%

・自由民主党11議席(1議席減)11.6%

■2024年

・保守党121議席(251議席減)23.7%

・労働党411議席(211議席増)32.1パーセント

・自由民主党72議席(64議席増)12.2%

・スコットランド国民党9議席(38議席減)2.5%

・リフォームUK5議席(5議席増)14.3%

(貼り付けはじめ)

イギリス労働党は全国総投票数のわずか34%で選挙において大勝利を収めた(Britain’s Labour pulled off a thumping election victory with just 34% of the national vote

ヴィッキー・マッキ―ヴァー筆

CNBC

2024年7月5日

https://www.cnbc.com/2024/07/05/uk-election-2024-britains-labour-pulled-off-a-thumping-election-victory.html

・イギリス労働党は全国総投票数のわずか34%を獲得し、一方で保守党は約24%を獲得した。

・中道派の自由民主党、右派のリフォームUK、緑の党は一般投票の約43%を獲得したが、確保した議席は総議席数の18%弱にとどまった。

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キア・スターマー英首相と妻ヴィクトリア・スターマーが選挙の結果を受けてダウニング街10番地で労働党の選挙活動参加者や活動家たちに挨拶(イギリスロンドン、2024年7月5日)

ロンドン発。イギリスの労働党が総選挙でイギリス議会の議席で巨大な過半数を勝ち取った。しかし、独特なイギリスの選挙制度では、わずか総投票数の34%で大勝が実現した。

選挙結果によると、野党労働堂は全650議席中412議席を獲得した。残り2議席はまだ結果が判明していない。この議席数は全議席数の約63%を占めることを意味している。しかし、労働党は全「一般」投票(“popular vote”)の僅か34%を獲得しただけだ。一方の保守党は総投票数の約24%を獲得した。

他方、中道派の自由民主党、右派のリフォームUK、緑の党を含む少数政党は合計で約43%の得票となったが、獲得議席は全議席の18%にとどまった。

これは、有権者が国内650の各選挙区の地元リストから候補者を1人だけ選ぶという英国の単純小選挙区制度、「先取り」制度(first past the post” system)が手助けをしているものだ。各選挙区で最も多くの票を獲得した人物が、イギリスの下院である庶民院(the House of Commons)議員に選出される。通常、下院で最も多くの議席を獲得した政党が新政府を樹立し、その党首が首相になる。

他の投票システムとは異なり、第2ラウンドや、第1候補者と第2候補者の順位付けはない。これは、小規模政党が一般投票の増加したシェアを議席につなげることが難しいことを意味する

アクサ・インベストメント・マネージャーズのG7担当エコノミストのガブリエラ・ディケンズは金曜日に発表したメモの中で、今回の選挙は「一般投票の3分の1強で過半数を大きく超える議席が得られたため、政治制度に対する警告サインとなった」と述べた。

彼女は、今回の選挙の投票率は60%にとどまったことを指摘している。これは、投票率が59.4%に低下した2001年に次いで、1918年以降、2番目に低い投票率だ。2019年の投票率から7.6%低下した。これは「広範な政治的断絶(broader political disconnect)」を示しているとディケンズは述べた。

ディケンズは「労働党の過半数を大きく超えての大勝は、労働党の人気復活によるものというよりも、私たちの投票システムの持つ特殊性と、票の分散とスコットランド国民党(Scottish National PartySNP)の崩壊の相互作用の結果である」と述べた。

そうは言っても、ディケンズは「投票はより一般的に左にシフトした」と付け加えた。

「労働党政権が今後5年間統治し、経済成長、投資、個人の実質所得を回復させることができれば、彼らは、将来的に真の改善が見られる立場に立つだろう」とディケンズは語った。

一方、パンテオン・マルコ・エコノミクスのイギリス担当首席エコノミストのロブ・ウッドは、投資家たちは「投票シェア、右派リフォームUKの結果、政治的忠誠を転換しようとする有権者の意欲がどのように政策に反映されるのかをよく吟味する必要がある」と述べた。

ナイジェル・ファラージ率いるリフォームUK党は一般投票の14%を獲得したが、確保した議席はわずか4議席だった。

ウッドは「通常、今回の労働党が獲得した過半数よりも大幅な議席数があれば、複数期の政権を保証することになるだろう。しかし、投票動向を考慮すると、スターマーの過半数は通常ほど安全であるとは言えない」と述べた。

ウッドは、労働党は「約束した変化を実現できることを証明するために、政策変更に迅速に取り組む必要があるだろう」と述べている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 古村治彦です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行いたしました。ウクライナ戦争について詳しく分析しました。是非お読みください。

 ヨーロッパには、ヨーロッパ連合(European UnionEU)とNATO(北大西洋条約機構)という大きな国家連合、協力の枠組みがる。NATOはヨーロッパを超えて、アメリカやトルコも加盟している。EUは元々が経済協力のための枠組みであったヨーロッパ経済共同体(European Economic CommunityEEC)が前身のため、経済活動がメインとなる。もちろん、軍事組織もあるが、それがメインではない。NATOは、冷戦下に、対ソ連の集団防衛を目的としたもので、ソ連崩壊後も存続し、現在はロシアの脅威に対抗する組織となっており、安全保障がメインだ。NATOがヨーロッパの防衛、安全保障のメインの枠組みということになり、これは、アメリカが大きな役割を果たすということになる。アメリカ側皮すれば、好意的に解釈すれば「アメリカにとって重要なヨーロッパ地域の安全保障に貢献する」ということになるが、悪く解釈すれば「ヨーロッパはアメリカのお金と軍隊にただ乗りして、自分たちをアメリカに守らせている」ということになる。ドナルド・トランプ前大統領は、アメリカ軍の引き上げ、ヨーロッパ諸国の負担増を求めたが、これはアメリカ国民の多くの意思を反映している。

 ヨーロッパは、2022年2月からのウクライナ戦争を受けて、自分たちの防衛について真剣に考えねばならなくなった。アメリカに頼るのか、アメリカに頼るにしてもどの程度頼るようにするか、自分たちでどれだけのことができるか、ロシアの脅威はどれくらいで、自分たちの負担はどれくらいになるか、負担をどのように分担するかということが問題になってくる。ヨーロッパの防衛のためには、各国の協力が不可欠であるが、以前に昇華した論稿にもあったが、それぞれの国の軍事装備の基準の違いやインフラの規格の違いなどから、協力は大変難しい状況だ。それでも、ウクライナ戦争を受けて、防衛協力について、真剣に考えねばならないようになっている。

 しかし、ここで考えねばならないことは、ロシアがヨーロッパ諸国にとって脅威とならないように対応するということだ。ロシアがヨーロッパを脅威と捉えて侵攻するということがないような状況を作ることも大切だ。戦争が起きない状況を作ることも真剣に考えねばならない。アメリカやイギリスが「作り出す」ロシアの脅威という幻想に踊らされないことが何よりも重要だ。これは日本にも言えることだ。「中国の脅威」「台湾危機」といった言葉に安易に踊らされないようにしたいものだ。

(貼り付けはじめ)

何故ヨーロッパは軍事行動を合同して行えないのか(Why Europe Can’t Get Its Military Act Together

-ヨーロッパ大陸は、軍事的自立(military autonomy)への道のりで複数の障害に直面している。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年2月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/21/europe-military-trump-nato-eu-autonomy/

ドナルド・トランプ前米大統領は選挙集会で、自身が防衛義務を怠っていると判断した国々について、ロシアに対し「やりたいことは何でもする(do whatever the hell they want)」よう促すと述べ、ヨーロッパに警鐘を鳴らした。ヨーロッパ諸国は既に、トランプの2度目の大統領就任の可能性について懸念していたが、今回の発言でこうした懸念がさらに高まった。ヨーロッパ委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は数日後、『フィナンシャル・タイムズ』紙に対し、ヨーロッパは「より荒れた(tougher)」世界に直面しており、「私たちはより多くの支出をしなければならないし、より賢く支出をしなければならないし、そしてヨーロッパのための支出をしなければならない」と語った。

しかし、疑問が残る。ヨーロッパは自らを守るために十分なことを実行するだろうか? ヨーロッパ諸国がアメリカの保護に過度に依存し(overly dependent)、十分な防衛力を維持しようとしないという、アメリカ側の不満には長い歴史があり、2022年にロシアがウクライナに侵攻したことで警鐘が鳴らされたが、ヨーロッパの使える軍事力が劇的に向上することはまだない。たしかに、NATO加盟諸国は現在、より多くの資金を費やしており、EUは最近、ウクライナへの追加的な500億ユーロの財政支援を承認した。しかし、数週間以上にわたって実戦部隊を維持するヨーロッパの能力は、依然として微々たるものだ。つまり、いくつかの重要な能力は依然としてアメリカに依存しており、NATO加盟諸国の一部には、自分たちが攻撃された場合、そのパートナーが助けようと努力したとしても、それほどのことができるのか疑問を持つ国もある。

確かに、ヨーロッパの高官たちのレトリックはより激しくなっている。デンマークのトロエルス・ルンド・ポウルセン国防相は最近、ロシアは「3年から5年以内に」NATOの相互防衛条項を試すかもしれないと警告し、別のNATOの幹部外交官は、もはや「ロシアがウクライナで止まってくれると考える余裕はない」と考えていると述べた。別の上級外交官によれば、ロシアが2030年までにNATO加盟諸国を攻撃する「意図と能力(intent and capability)」は、現時点では同盟内の「ほぼ総意(pretty much consensus)」だと述べた。ヨーロッパが独自に十分な能力を開発するには10年以上かかる可能性があるため、熱心な大西洋主義者たちは、アメリカの時間、注意力、資源に対する競合する全ての要求にもかかわらず、アメリカをヨーロッパにしっかりと関与させ続けたいと考えている。

ヨーロッパは行動を共にできるのか? ここでは、2つの確立された理論体系(well-established bodies of theory)が関連する。1つは、私が貢献しようとしている「力の均衡(balance of power)」(あるいは「脅威の均衡[balance of threat]」)理論である。この理論では、ヨーロッパの安全保障に対する深刻な外的脅威(external threat)、たとえば強力な軍事力と高度な修正主義的な野心を持つ大国が近隣に出現した場合、その脅威を抑止するために(あるいは必要であれば、その脅威を打ち負かすために)、これらの国のほとんどが力を合わせると予測している。このような衝動は、もしこれらの国々が、自分たちは他の誰にも保護を頼ることができないと理解すれば、より強くなるだろう。最近のヨーロッパの国防費の増加とスウェーデンとフィンランドのNATO加盟決定は、脅威に晒されている国々が完全に均衡(バランス)を取る傾向を示しており、この確立された傾向により、ヨーロッパが自らの防衛に対してより大きな責任を負う能力と意欲について、私たちがより楽観的になれるはずだ。

しかし、残念なことに、2つ目の理論体系がこの明るい結果を確実なものにはしていない。安全保障は「集合罪(collective good)」であるため、同盟関係にある国家は、自国の安全保障を維持するために、たとえ自国の貢献が少なくても、パートナーが十分な貢献をしてくれることを期待して、他国の努力を「バックパス(back-pass)」したり、もしくは、フリーライド(ただ乗り、free-ride)したりしたくなる。この傾向は、同盟の最強メンバーが集団的努力に不釣り合いなほど貢献する傾向がある理由を説明するのに役立つ。同盟の主要メンバーが攻撃を抑止または撃退するのに十分な働きをすれば、小規模なメンバーの貢献は余計なものになるかもしれない。結局のところ、同盟は彼らの努力を倍増させたとしても、それほど強くはならないのである。それゆえ、強力なアクターが自らの利己的な利益のために十分なことをしてくれると確信し、力の弱いアクターたちはより少ない貢献をする誘惑に駆られるのである。しかし、もし十分な数のメンバーが、より大きな負担を他のメンバーに負わせる誘惑に屈したり、他の利己的な利害が協力の必要性に打ち勝ったりすれば、同盟は安全確保に必要な統合能力(combined capabilities)と協調戦略(coordinated strategy)を生み出さないかもしれない。

これら2つのよく知られた理論を合わせると、NATOが今日直面しているディレンマが浮き彫りになる。良いニューズとしては、NATOのヨーロッパ加盟諸国はロシアよりもはるかに潜在的な力を持っているということだ。ヨーロッパの人口はロシアの3倍から4倍、経済規模はロシアの10倍にも達する。いくつかのヨーロッパ諸国は、優れた兵器を生産できる高度な軍事産業を持っており、冷戦後期には強大な地上軍と空軍を保有していた国もある(ドイツなど)。さらに驚くべきことに、NATOのヨーロッパ加盟諸国だけで、毎年少なくともロシアの3倍以上の防衛費を費やしている。人件費の高騰や努力の重複、その他の非効率を考慮したとしても、潜在的な能力が適切に動員され、指揮されることを前提にすれば、ヨーロッパにはロシアの攻撃を抑止したり、撃退したりするのに十分すぎるほどの潜在的戦力がある。ウクライナ戦争が始まって以来、ロシアの軍事力と国防生産能力は大幅に向上しているが、数が少なく、武装も不十分なウクライナ軍を打ち負かすのは難しい。バフムートやアブディフカを占領するのに数カ月かかる軍隊が、他の誰に対しても電撃戦(blitzkrieg)を成功させることはできない。

悪いニューズは、有能なヨーロッパ防衛力を構築するための持続的な取り組みが大きな障害に直面していることだ。第一に、NATOのヨーロッパ加盟諸国は主要な安全保障問題のレヴェル、あるいはその正体についてさえ意見が一致していない。バルト三国やポーランドにとっては、ロシアが最大の危険をもたらしていることは明らかである。しかし、スペインやイタリアにとっては、ロシアはせいぜいが遠い問題であり、不法移民の方が大きな課題である。アナリストの一部とは異なり、私はヨーロッパがこうした状況にあっても、ロシアに対して効果的な防衛を行うことを邪魔するとは考えない。しかし、負担の分担や軍事計画の問題をより複雑にしている。ポルトガルにエストニアを支援するよう働きかけるには、ちょっとした説得が必要だろう。

第二に、ヨーロッパに更なる努力を求める人々は、微妙なディレンマに直面している。深刻な問題があることを人々に納得してもらわなければならないが、同時に、その問題を解決するのにそれほど費用がかかったり困難であったりする訳ではないと納得してもらわなければならない。ロシアの軍事力を誇張し、ウラジーミル・プーティンを無限の野望を抱く狂人として描くことで、大規模な防衛力増強への支持を集めようとすれば、ヨーロッパが直面している課題は克服不可能に見え、アメリカに頼ろうという誘惑が強まるかもしれない。しかし、ロシアの力と野望がより控えめであり、それゆえ管理可能であると信じられれば、今大きな犠牲を払い、長期にわたって真剣な努力を維持するようにヨーロッパ各国の国民を説得することは難しくなる。より大きな自主性を機能させるためには、ヨーロッパの人々にロシアが危険であることを信じさせねばならないが、同時に、たとえアメリカの力が大幅に弱まったとしても、自分たちならこの問題に対処できると信じさせねばならない。このため、アメリカの全面的な関与を維持するために、ヨーロッパ諸国が自国を防衛することは単に不可能だと主張することは、ヨーロッパの真剣な取り組みを抑制し、アメリカがいずれにせよ関与を縮小することになれば、逆効果になりかねない。

第三の障害は、核兵器の曖昧な役割である。核兵器が大規模な侵略行為を抑止すると確信している場合、英仏の核戦力とアメリカの「核の傘(nuclear umbrella)」が、どんな状況下でも、ロシアの攻撃からNATOを守ってくれると考えるだろう(ウクライナはNATO加盟国ではないことを覚えておく価値がある)。そうであれば、大規模で高価な通常戦力を構築する必要はない。しかし、拡大核抑止の信頼性に確信が持てない場合や、低レヴェルの挑戦に対して核兵器使用の威嚇をする必要がない場合は、能力のある通常戦力が提供するような柔軟性を求めることになる。この問題は、1960年代の「柔軟な対応(Flexible Response)」をめぐる同盟内論争や1980年代の「ユーロミサイル(Euromissiles)」論争が示すように、冷戦期を通じてNATO内で争点となった。核兵器が存在し続けることで、通常戦力を停滞させる誘惑に駆られる国が出てくる可能性があるという点で、この問題は今日でも関連している。

第四に、ヨーロッパ諸国は武器の標準化や共通戦略や防衛計画の策定に協力する代わりに、依然として自国の防衛産業や軍隊に投資することを好んでいる。戦略国際​​問題研究所の2023年の報告書によると、2014年にロシアがクリミアを占領して以来、ヨーロッパ全体の国防費は急激に増加しているものの、共同調達努力(cooperative procurement efforts)に充てられる割合は、2021年まで着実に減少し、EUによって設定された、以前の目標である35%に近づくことはなかった。 EU諸国は、支出が少ないにもかかわらず、約178の異なる兵器システムを配備していると報告されており、アメリカよりも148も多い。単独で行動しようとする頑固な傾向は、ヨーロッパが潜在的な挑戦者に対して享受している膨大な潜在的資源の優位性を無駄にしており、もはや余裕のない贅沢である可能性がある。

最後の障害は、少なくとも現時点では、ヨーロッパの自立を奨励することに対するアメリカの長年の曖昧さである。アメリカは一般に、ヨーロッパのパートナー諸国が軍事的に強いが強力すぎないこと、政治的に団結しているが団結しすぎていないことを望んでいる。それは何故か? それは、NATOは、有能ではあるが従属的なパートナーの連合に対するアメリカの影響力を最大化したからである。アメリカ政府は、NATOの残りの国々が有用であるだけでなく、アメリカの要望に完全に従うのに十分な強さを持たせたいと考えており、これらの国々がより強くなり、一つの声で発言し始めれば、現状のNATOを維持するのは難しくなるだろう。ヨーロッパの依存と従順さを維持したいという願望により、歴代のアメリカ政権は、ヨーロッパの真の戦略的自治につながる可能性のあるあらゆる措置に反対するようになった。

しかし、そうした時代は終わりを告げようとしている。アメリカが「全てを持つことはできない」こと、そして集団的防衛(collective defense)の重荷をヨーロッパのパートナー諸国にもっと転嫁する必要があることを認識するのに、トランプ的である必要はない。しかし、過去の例を見る限り、ヨーロッパの指導者たちが、どんな状況下でもアメリカが「全面的(all-in)」に関与してくれると信じているのであれば、ヨーロッパがその責任を負うことはないだろう。1950年代初頭にヨーロッパ経済統合が推進された背景には、アメリカがやがて大陸から軍を撤退させ、ワルシャワ条約機構に対抗する能力が、大規模で統一されたヨーロッパ経済秩序の構築によって強化されるというヨーロッパ全体の懸念があったことは、思い出す価値がある。ヨーロッパ統合の背後にある安全保障上の衝動は、アメリカの残留が明らかになった時点で後退したが、アメリカの関与に対する疑念の高まりは、ヨーロッパの優れた経済力と潜在的な軍事力を、純粋に自己の利益のために、より効果的に動員する十分な動機を与えるだろう。

来年のホワイトハウスが誰になるかにかかわらず、アメリカ政府関係者たちはこの動きを後押しすべきである。以前にも主張したように、ヨーロッパの安全保障をヨーロッパに戻すプロセスは、大西洋間の新たな役割分担の一環として、徐々に行うべきである。アメリカへの依存度が下がれば、ヨーロッパはより精力的にバランスを取るようになり、この方向にゆっくりと、しかし着実に進むことで、同盟諸国は必然的に生じる集団行動のディレンマを克服する時間を得ることができる。ヨーロッパ諸国はロシアよりもかなり多くの軍事的潜在力を持っているため、これを完璧に行う必要はなく、かなり安全な状態にすることができる。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 下に紹介しているシェンゲン協定(Schengen Agreement)とは、ヨーロッパ諸国間で国境での審査や検査なしで国境通過を許可する協定だ。加盟している国(ヨーロッパの国)の国民であれば、加盟している国々の間を自由に往来できる。日本のパスポート所有者であれば、それに近い形で往来ができる。ヨーロッパ連合(European UnionEU)の加盟諸国とほぼ重なるが、EUに加盟していなくてもシェンゲン協定に加盟している国があるし、逆にEUに加盟していながら、シェンゲン協定には加盟していない国もある。

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シェンゲン協定に関するヨーロッパの現状

 今回ご紹介している論稿では、「ヨーロッパ諸国の間での武器や装備品の軍事移動が自由にできるようにすべきだ」という内容だ。ヨーロッパはEUNATOという枠組みでまとまっている(加盟していない国もあるが)。両組織共に、大雑把に言ってしまえば、「対ソ連(現在は対ロシア)でまとまる」ということになる。ロシアが戦車部隊と先頭にして退去として押し寄せてくるというイメージがあるようだ。

 それが、2022年2月からのウクライナ戦争で現実のものとなるかもしれないとヨーロッパ諸国で懸念が高まった。また、ロシアがウクライナ戦争への参戦はロシアに対する敵対行為となり、核兵器による攻撃の可能性も排除しないということになって、ヨーロッパ諸国、特に西ヨーロッパの先進諸国は及び腰となった。ウクライナが戦闘機をはじめとする、より効果の高い、より程度の高い武器の供与を求めているのに、西側諸国は、ロシアからの核攻撃が怖いものだから、ウクライナの要請を聞き流している。ヨーロッパ諸国の考えは、「自分たちにとばっちりが来ないようにする、火の粉が降りかからないようにする」というものだ。

 ヨーロッパ諸国はまた、アメリカの力の減退、衰退を目の当たりしている。そこで、「これまではアメリカに任してきたし、本気で取り組む必要がなかった、対ロシア防衛を本気で考えねばならない」という状況に追い込まれた。ロシアはヨーロッパの東方にあり、もし戦争となれば、ロシアに隣接する、近接する国々の防衛をしなければならないが、これらの国々は小国が多く、とても自分たちだけでは守り切れない。そこで、西ヨーロッパからの武器や装備人の支援が必要となる。しかし、これが大変に難しい。
 ヨーロッパはEUとして一つのまとまりになっているが、それぞれの国の制度が個別に残っているので、道路や鉄道の規格が異なるために、武器を陸上輸送するだけも大変なことだ。軍事移動の自由がかなり効かない状態になっている。まずはそこから何とかしなければならないということになる。

 今頃になって慌てているヨーロッパ諸国、NATOはお笑い草だが、ロシアが西ヨーロッパに手を出すと本気で心配して慌てだしているのは何とも哀れだ。経済制裁を止めて、エネルギー供給を軸にした以前の関係に戻れば何も心配はいらない。そのうちにこう考えるようになるだろう、「アメリカがいるから邪魔なんじゃないか」と。ヨーロッパのウクライナ戦争疲れからアメリカへの反発が大きくなっていくかもしれない。

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「軍事シェンゲン圏」時代が到来(The ‘Military Schengen’ Era Is Here

-ヨーロッパ共通の軍事的野心の第一歩は自由な移動について理解することである。

アンチャル・ヴォーラ筆

2024年3月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/04/europe-military-autonomy-nato-schengen/

2024年1月下旬、ドイツ、オランダ、ポーランドの3カ国は、3カ国の間に軍事輸送回廊(military transport corridor)を設置する協定に調印し、ヨーロッパ全域の軍事的流動性(military mobility)を向上させるという、長い間議論されてきたがほとんど追求されてこなかった目標に大いに弾みをつけた。ドイツ国防省のシェムティエ・メラー政務次官は、この回廊によって軍事移動が「真の軍事シェンゲン圏(true military Schengen)への道を歩むことになる」と述べた。ヨーロッパの政策立案者たちが、シェンゲン圏内の人と商業物資のヴィザなし移動を、ヨーロッパ全域の軍隊と軍事装備の移動に適応させるというアイデアを浮上させたのは、これが初めてではない。しかし、このアイデアは現在、明らかに勢いを増している。

軍事シェンゲン圏構想が浮上したのは、ロシアによるクリミア併合の後だった(2014年)。ロシアによるクリミア併合から10年、ウクライナへの侵攻から2年が経過した今、ヨーロッパはロシアのウラジーミル・プーティン大統領が更に西側への軍事行使に踏み切る可能性に備える必要があることを認識しつつある。ヨーロッパの軍事関係者たつは、冷戦で学んだ教訓を掘り下げている。その中には、軍の機動性に関する具体的な教訓も含まれている。

しかし、複数の専門家、外交官、軍関係者が本誌に語ったところによると、その進展は望まれているよりもはるかに遅れている。ポーランドのNATO常任代表であるトマシュ・シャトコフスキは本誌に対し、「ルールの自由化は誰もが支持している。しかし、問題は2015年以来、私たちはそれについて話し続けてきたということだ」。彼らは、ヨーロッパは冷戦時代の緊張が戻ってきた可能性があることを認めており、ヨーロッパ諸国が兵員や物資を効果的に移動させるには「長い道のり(long way to go)」があると述べた。

ヨーロッパにおける軍事ミッションに関連するあらゆるものの通過には、官僚的なハードルから決定的な遅れの原因となるインフラのギャップまで、さまざまな障害がつきまとう。バルト三国であるエストニアのヨーロッパ連合(European UnionEU)議員で、外務委員会の副委員長を務めるウルマス・パエトは、軍事的機動性を10段階の中で3段階でしかないと評価し、現在、バルト三国に物資を送るには「数週間から少なくとも1週間以上」かかると述べた。

書類仕事は煩雑で大変だ。様々な国の様々な省庁から、時には国内の様々な地域から、いくつもの承認を得る必要がある。ほとんどの道路や橋は民間用に建設されたものであり、重い軍事機材の重量に耐えられるとは考えられない。中央ヨーロッパの燃料パイプラインは東部諸国に伸びていないため、燃料供給の遅れが長期化すれば、決定的な要因となりかねない。更に言えば、旧ソ連諸国の鉄道の軌間はヨーロッパの鉄道の軌間とは大きさが異なり、戦時に数千人の兵員や装備を列車から別の列車に移すことは、さらに時間のかかる作業となる。

軍事シェンゲン圏の最初の提唱者であり、この言葉を作ったと思われる、NATO司令官を務めたベン・ホッジス中将は、少なくともここ数年、軍事移動性について議論が盛り上がっているのは良いことだと評価している。ホッジス司令官は最近のミュンヘン安全保障会議に出席し、本誌の取材に対して、「現在、様々な国の様々な政府機関の閣僚たちが軍事シェンゲン圏について話しているのを聞くようになっている」と語った。

ホッジス元司令官は、危機に際して迅速に行動する能力は、軍事抑止ドクトリンの重要な部分であると述べた。彼は更に、軍隊が動員され、迅速に移動する能力は、敵にとって目に見えるものでなければならず、そもそも攻撃することを抑止するものでなければならない、と述べた。

ホッジスは「私たちは装備や兵力だけでなく、迅速に移動し、予備部品を供給し、燃料や弾薬を保管する能力など、真の能力を持たなければならない。ロシアに私たちがそうした能力を持っていることを理解させる必要がある」と述べた。

ホッジスは、ドイツ、オランダ、ポーランドの合意は素晴らしいスタートだと称賛し、このような回廊は他にも数多く検討されていると述べた。ブルガリアのエミール・エフティモフ国防長官は、同盟諸国はギリシャのアレクサンドロウポリスからルーマニアへの回廊と、アドリア海からアルバニアと北マケドニアを通る回廊を優先すべきだと述べた。

ホッジスは続けて、「彼ら(同盟諸国)はギリシャからブルガリア、ルーマニアまでの回廊を望んでいる。これら全ての回廊の目的は、インフラの面でスムーズなルートを確保するだけでなく、税関やすべての法的なハードルを前もって整理しておくことだ」と述べた。

ドイツ、オランダ、ポーランドの回廊は多くの構想の中の最初のものであり、ボトルネックを特定して解決し、将来の回廊のモデルとなる可能性があると期待されている。匿名を条件に本誌の取材に応じたあるドイツ軍幹部は、この回廊ではあらゆる問題を調査すると述べた。この軍幹部は、ドイツでは各州、つまり連邦州が領土内を通過する軍隊や危険な装備について独自の法律を定めているため、平時においては当局が連邦手続きを円滑化することも可能になると述べた。戦争時には、回廊は「単なる通り道以上のもの(much more than a road)」になるだろうと彼は付け加えた。

上述の軍幹部は「危機発生時にはおそらく10万人以上の兵士が出動するだろう。移動を停止し、休憩し、スペアパーツを保管する倉庫や燃料保管センターにアクセスできる場所が必要となるだろう。そのようなシナリオには、戦争難民の世話をするための取り決めも必要になるだろう」と述べた。

これは、3カ国の間でさえ難しいことだ。20数カ国の加盟国間の協力、特に武装した兵士や危険な機械が関係する協力には、更に数え切れないほどの規制が課されることになる。前述のウルマス・パエトは、「防衛は、『国家の権限(a national competence)』であり、各国は共有したいものを共有する」と述べた。軍事的な荷重分類があり、重戦車の重量に耐えられる橋がどこにどれだけあるかといったような重要なインフラの詳細については、各国はなかなか共有しない。

ヨーロッパ外交評議会(European Council of Foreign Relations)というシンクタンクの防衛専門家であるラファエル・ロスは、インフラの必要性に関するカタログは存在しないと述べた。ロスは「どこにどのようなインフラが必要なのか、明確になっていない」と本誌に語った。ヨーロッパ政策分析センター(Center for European Policy AnalysisCEPA)が2021年に発表した報告書によると、欧州では高速道路の90%、国道の75%、橋の40%が、軍事的に分類される最大積載量50トンの車両を運ぶことができる。ウクライナの戦場でロシアを相手にステルス性を証明したレオパルド戦車やエイブラム戦車は、重量がかなりある。

ホッジスは次のように語っている。「レオパルド戦車の重量は約75トンで、エイブラムス戦車はもう少し重い。これらの戦車のほとんどは、重装備輸送車(heavy equipment transportersHETs)の荷台に載せられて輸送され、HET1台あたりの重量は約15トンから20トンだ」。CEPAは、トラック、トレーラー、重戦車の組み合わせは120トンをはるかに超える可能性があると指摘し、軍事的移動に適したインフラはほぼ存在しないことになる。

EUは、軍民両用インフラに資金を提供する必要性を認めており、既に95件のプロジェクトへの資金提供を承認している。ポーランド大使とホッジスはともに、EUのインフラ資金調達手段であるコネクティング・ヨーロッパ・ファシリティ(Connecting Europe FacilityCEF)に割り当てられた資金が65億ユーロから17億ユーロに削減されたことを懸念していると述べた。

CEFを通じて資金提供される国境を越えた鉄道プロジェクト「レイル・バルティカ(Rail Baltica)」は、ヨーロッパの鉄道網をリトアニア、エストニア、ラトビアのバルト三国まで拡大する計画で、2030年までに機能する予定だ。しかし、資金面での懸念が現地のニューズで報じられている。更に、フランス、ベルギー、そしてドイツでさえも、ヨーロッパの集団的自衛権にGDPの大きな部分を費やすことが多い東ヨーロッパ諸国への中央ヨーロッパパイプラインの拡張に費用をかけることに強い抵抗がある。

EUの防衛協力を調整するヨーロッパ防衛庁は、陸空の移動に関する官僚的プロセスの標準化と事務手続きを簡素化するための共通フォームの開発に取り組んでいる。しかし、これは25の加盟国によって合意されているものの、これらの「技術的取り決め(technical arrangements)」を国内プロセスにまだ組み込んでいない加盟国は消極的である。

EUの27カ国、NATOの30カ国以上の全加盟国を合意に導くのは大変に困難だが、リトアニアのヴィリニュスで開かれた前回のNATO首脳会議以来、ホッジスには希望を抱くことができる理由がある。昨年7月、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は3つの地域防衛計画(regional defense plans)を発表した。ストルテンベルグ事務総長は、北は大西洋とヨーロッパ北極圏、中央はバルト海地域と中央ヨーロッパ、南は地中海と黒海における抑止力を計画・強化すると述べた。これらの計画によって、NATO加盟国は正確な防衛要件を評価し、それを各同盟国に配分し、その過程で具体的な後方支援の必要性を理解することができる。ホッジスは、これが「ゲームチェンジャー(game changer)」となることを期待している。

※アンチャル・ヴォーラ:ブリュッセルを拠点とする『フォーリン・ポリシー』誌コラムニストでヨーロッパ、中東、南アジアについて記事を執筆中。ロンドンの『タイムズ』紙中東特派員を務め、アルジャジーラ・イングリッシュとドイツ国営放送ドイチェ・ヴェレのテレビ特派員を務めた。以前にはベイルートとデリーに駐在し、20カ国以上の国から紛争と政治を報道した。ツイッターアカウント:@anchalvohra

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2022年2月24日にウクライナ戦争が始まって約1年半が経過した。ウクライナ政府は今年の春頃に春季大攻勢(Spring Offensive)をかけてロシアに大打撃を与えると内外に宣伝していた。春が終わり、暑い夏がやってきても(ヨーロッパ各国でも気温40度に達している)、戦争は膠着状態に陥っている。春季大攻勢は宣伝倒れに終わってしまったようだ。西側諸国もこれまで支援を続けているが、現状維持が精いっぱいというところだ。
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NATO加盟国地図

 ウクライナは戦争が始まる前からEUNATOへの参加を熱望してきた。NATO加盟諸国、特にアメリカが軍事支援を強化していたが、ウクライナのNATO加盟に消極的であった。それはウクライナがNATOに加盟し、その後に外国から攻撃を受けたら、NATO加盟諸国は自分たちが攻撃を受けたと見なし、即座に軍事行動を起こさねばならないからだ。ウクライナの仮想敵国はロシアであり、もし2022年のウクライナ戦争前にウクライナがNATOに入っていたら、ウクライナ戦争はロシア対NATOの全面戦争となっていたところだ。アメリカはウクライナへの軍事支援を強めながら、NATO加盟は認めないという、ウクライナもロシアもいたぶるような状態を長く続けていた。アメリカの火遊びが過ぎたのが現状である。

 ウクライナのNATO加盟に関しては、一時期、トルコがスウェーデンとの関係が悪化していたために、反対の姿勢を示していたが(全会一致が原則)、それが解消された。しかし、NATOは様々な条件を付け、更に時期も明確にしないという形で、ウクライナの加盟を保留している。ウクライナ戦争が終わっても、ウクライナがNATOに加盟できるかは不透明だが、ロシアの断固とした姿勢を前にして、NATO加盟諸国は躊躇している。
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EU加盟国地図

 ウクライナのEU加盟も難航している。こちらは軍事同盟という訳でもないし、「ウクライナをEU経済圏に入れてやればよいではないか」と多くの人たちが思っていることだろう。何よりもロシアのウラジーミル・プーティン大統領さえも、「EUは軍事同盟ではないから、ウクライナが加盟しても良い」と述べているほどだ。しかし、EU加盟も又厳しい状況だ。ウクライナは長年にわたり、EU加盟申請を行ってきたが、加盟候補国にすらなれない状況だった。経済状況、民主政治体制の状況、汚職の状況などでEU側が加盟を断ってきた。今回のウクライナ戦争を受けて、EUはやっとウクライナを加盟候補国として認めた。

 ウクライナのEU加盟のハードルになるのは、まず旺盛な農業生産力、特に小麦の生産力だ。ウクライナの安価な小麦がEU市場に流れ出れば、他のEU諸国の農業を破壊することになる。現在でも補助金頼みのEU各国の農業が壊滅することになる。しかも、ウクライナは経済力自体が低いために、EUから補助金を受けられる立場になる。これでは他の貧しい国々にとっては踏んだり蹴ったりだ。

 ウクライナ自体は国土も大きく、軍事力も戦争を経て強大なものとなる。そうした国が新たにEUに加盟することは、東ヨーロッパや中央ヨーロッパの国際関係に変化をもたらすことになる。東ヨーロッパの大国はポーランドであり、ポーランドがウクライナを取り込んで、反ロシアでタッグを組み、東ヨーロッパで影響力を持つと、EU自体とロシアとの間の関係の悪化にもつながる。また、他の国々は、ウクライナが入ることでの発言力の低下を懸念している。しかし、実質的には28カ国の加盟国があっても発言力があるのはドイツとフランスくらいのものではあるが。ウクライナが加盟することで支出する圃場金をどうするかということをまだ多少豊かな国々で話さねばならないが、ウクライナのような貧しい国が加盟するのは迷惑なことというのが本音である。
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 EU諸国はウクライナが加盟することでのデメリットを考え、二の足を踏んでいるが、言葉だけは立派だ。ウクライナ戦争が終わって、事態が落ち着いたら、「そんな話ありましたか?」ととぼけて知らんぷりをするだろう。その時になって、ウクライナは西側諸国、アメリカとヨーロッパに騙された、いいように弄ばれたということに気づくだろう。西側とロシアの間に会って、中立を保ちながら、うまくその状況を利用するということができなかったのは残念なことだ。日本も同様の状況に置かれている。調子に乗って、小型犬が吠え散らかすように虚勢を張って「中国と戦う覚悟を持って」などと平和ボケして叫んでいると大変な目に遭うだろう。後悔先に立たず、だ。

(貼り付けはじめ)

EUはウクライナ参加の準備ができていない(The EU Isn’t Ready for Ukraine to Join

―キエフのNATOへの途が困難であると考えるならば、EU加盟への苦闘を目撃するまでその判断を待つべきだ。

イルク・トイロイジャー、マックス・バーグマン筆

2023年7月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/07/17/ukraine-eu-european-union-nato-membership-reform-subsidies-budget-reconstruction-agriculture-war-russia/?tpcc=recirc_trending062921

ウクライナはNATOEUの両方に加盟するための待機室にいる。リトアニアのヴィリニュスで開催されたNATO首脳会議は先週、「条件が整えば(considerations are met)」、将来的に同盟に加盟するという漠然とした声明を出しただけで終わり、キエフは失望した。

しかし、少なくともNATOは、同盟諸国間にまだ克服すべき障害があることを正直に示している。これは、EUとそのウクライナ加盟に関するメッセージとは対照的だ。ウクライナのNATO加盟が難航していると考えるならば、ウクライナのEU加盟が真剣に検討される際に何が起きるかがはっきりするまで、その判断を待った方が良い。

ブリュッセル(EU本部)は、ウクライナのEU加盟後の将来について大袈裟な言い回しを使い、キエフのEU加盟があたかも決定事項であるかのように語っている。2月にウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領がブリュッセルを訪問した際、EU首脳たちは戦時中の指導者との記念撮影のために互いに肘がくっつき合うほどに近づいた。シャルル・ミシェルヨーロッパ理事会議長は、ツイートでゼレンスキー大統領に挨拶を送った。その文言は、「お帰りなさい、EUへようこそ」というものだった。

ウクライナとの間でEU加盟について詳細な議論がなされる際に、焦点となるのは、加盟のためにウクライナが何をなすべきなのかということである。戦争によって深く団結したウクライナの人々は、EU加盟に必要な新しい法律の採択や規制の実施など、自分たちの役割を果たすために前進している。ウクライナ人は、司法改革から新しいメディア法の策定、汚職の取り締まりまで、EU加盟のための長い「やることリスト」のチェック済み項目をどんどん増やしている。

ウクライナはモルドヴァと共に、2022年6月にEU加盟候補国(EU candidate)の地位を獲得し、他の加盟待機国が何年もかかっていた複雑なプロセス(byzantine process)を大幅に短縮した。キエフは2023年10月に欧州委員会から最初の書面による進捗評価を受ける予定だ。この勢いを維持するため、ウクライナ政府関係者は年内にも加盟交渉を正式に開始するよう働きかけている。

EUの予算と再分配のプロセスに変更がなければ、あっという間に、キエフはEU予算の膨大な部分を吸い上げることになるだろう。

しかし、ウクライナがEU加盟に向けて急ピッチで取り組んでいる一方で、ブリュッセルとEU加盟諸国はウクライナを吸収するための準備をほとんど整えていない。そのため、ウクライナの加盟に関するEU首脳の大袈裟な美辞麗句は、彼らの行動と一致していない。戦禍に見舞われたウクライナのような規模、人口、低い所得水準、資金調達、復興ニーズを持つ国を吸収するには、EUの制度、政策、予算プロセスの大改革が必要だ。少なくとも、EU資金の分配をめぐって現加盟諸国間で厳しく悪意に満ちた対立を引き起こすだろう。

従って、EU首脳たちが真剣にウクライナの加盟を考えているのであれば、EU改革への取り組みは既に始まっているはずである。この問題の核心はEU予算である。EU予算は、農業補助金と貧困地域への開発プロジェクトという2つの大きな要素に支配されており、これらを合わせるとEUの長期予算の約65%を占める。この2つの問題を考えると、ウクライナの加盟は爆発的なインパクトとなる。ウクライナはヨーロッパで最も貧しい国の一つであり、一人当たりの所得はEU平均の10分の1、EU最貧国のブルガリアの半分以下である。また、ウクライナは現在、膨大なインフラ整備と復興のニーズを抱えている。これに、EUの補助金の対象となる大陸最大級の農業部門が加わる。

もしEUの予算と再分配のプロセスに変更がなければ、キエフはEU予算の膨大な部分を即座に吸い上げることになる。現在、それらの資金は東ヨーロッパをはじめとするあまり豊かではない加盟諸国に流れている。現在EU資金の恩恵を受けている国々の多くは、一夜にして純支出国に転落するだろう。このようなことがスムーズに進むと思うのであれば、あなたはヨーロッパの政治についてよく知らないということになる。

現在のEU内の資金再配分を考えれば、ウクライナの加盟支持に大きな亀裂が入ったのは、EU内部の純資金受給国が集中する東ヨーロッパで起きたことは不思議ではない。実際、ウクライナのヨーロッパ農産物市場へのアクセスをめぐる争いは、EUの農業補助金が再配分されるずっと前からすでに始まっている。ロシアの侵攻後、ブリュッセルはウクライナの穀物やその他の農産物のEU単一市場への参入を認め、ウクライナを支援した。安いウクライナ産品は、ウクライナ周辺のポーランド、ハンガリー、スロヴァキアの農民たちの収入を減少させることになった。ウクライナが収入を得るために必死だったにもかかわらず、ポーランドはEUの規則に違反し、ウクライナの穀物がポーランド領内に入るのを一方的に阻止した。EUは妥協案を提示し、ウクライナの農産物のEU入りを認めたが、歓迎されない競争の影響を最も受ける東ヨーロッパ5カ国を迂回することを義務付けた。

また、ウクライナの最大の軍事的・外交的支援国であるこれら東ヨーロッパ諸国の一部が、ウクライナのEU加盟の前提となるEU改革に真剣に取り組むことに反対しているのも驚くべきことではない。これらの国々は、多額の資金を失う可能性があるだけでなく、ウクライナの加盟に向けたEU改革には、EUの意思決定ルールの合理化も含まれる可能性が高く、個々の加盟国、特にハンガリーやポーランドのようにEUの決定に影響を与えるために拒否権を自由に行使してきた国の力が低下する可能性もある。

EU拡大は、歴史上最も成功した政治的、経済的、社会的政策の1つであり、EUを平和的に拡大し、27カ国、4億5000万人を含むまでになった。新規加盟国にとって、EUへの加盟はしばしば経済的な奇跡をもたらす。市場アクセス、EUからの資金提供、より良い統治に関するEUの規則、そして確かな未来を手に入れることでもたらされる自信などである。しかし、過去10年間、更なる拡大は凍結されてきた。その主な理由は、新規加盟国(通常は貧困国)の加盟に伴う再分配が、政治的に非常に困難だったからである。

2022年2月28日、ロシアの侵攻が始まってわずか4日後にゼレンスキーがEU加盟の正式な申請書を提出して以来、更なる拡大の問題が再び議題に上るようになった。ウクライナとモルドヴァの加盟に加え、EUの指導者たちは、ヨーロッパの安全保障と安定を確保するためには、まだEUに加盟していない国々、特にバルカン半島西部の各国も加盟させなければならないとの認識を強めている。

ウクライナの加盟がEU予算に与える爆発的な影響は、EUが財政連合(fiscal union)を結ぶという議論を迫ることになるだろう。言い換えると、ドイツやフランス、一部の小金持ち国家など、より裕福な加盟国による拠出金の大幅な増加、EU全体の所得税やその他の累進課税、EU独自の債務発行能力の大幅な増加、あるいは上記の全ての実施を意味する。明らかに、これは小さな議論ではない。

また、EUの更なる拡大は、既にハンディキャップを負っているEUの意思決定能力や新しい法律や政策の採択能力にも負担をかけるだろう。例えば、外交政策で必要とされる全会一致を27の主権国家(sovereign member states)の間で達成することは既に至難の業であり、ハンガリーのような非自由主義的でロシアに友好的な国家の存在によって更に複雑になっている。ウクライナや他の加盟を辛抱強く待っている国々が加われば、EUの加盟国は30カ国をはるかに超えるだろう。加盟国が拒否権を武器にしてきた長い歴史があり、他の加盟国がEUの機能を変えることなく意思決定の場に国を増やすことをためらう理由もそこにある。

例えば、ドイツは、外交政策など新たな政策分野への特定多数決方式(qualified majority)の拡大を推進している。全会一致を必要としなくなれば、EUの外交政策決定能力は大幅に効率化される。小国は、拒否権を失うことはEUにおける発言力を失うことになると懸念しているが、これは憲政史を学んだ人なら誰でも知っている議論である。この他、ヨーロッパ委員会の委員(現在は加盟国1カ国につき1人)やヨーロッパ議会の議席の配分に関する懸念もある。EUの拡大は、これらの分野でも改革を必要とするだろう。

EU拡大は、法の支配(rule of law)と民主政治体制(democracy)という未解決の問題にもスポットを当てることになる。EUは自らを民主政体国家の連合体として定義し、市民的権利に関する厳格な規則を定めているが、ハンガリーやポーランドにおける民主主義の衰退や法の支配の後退には深い懸念がある。特に西ヨーロッパ各国政府は、民主政治体制の衰退に対抗するEUの行動力を強化することなしにEUを拡大することに強い警戒感を抱いている。この懸念は、フリーダムハウスが発表した2023年の「世界の自由度」指数で、候補リストに完全に自由と評価された国が1つもないことから、特に深刻である。

ウクライナは、新たなEU拡大の波を起こすきっかけになるかもしれない。EU加盟には改革が必要であり、その改革はバルカン半島西部の各国の加盟を同様に妨げてきた障害の多くを取り除くことになる。ロシアによるウクライナへの残忍な攻撃は、EUが安全保障にとって不可欠な存在であることをヨーロッパの人々に示すことで、別の意味で既にEUの起爆剤となっている。国防に関する調査では、ヨーロッパの人々はEUがより大きな役割を果たすことを望んでいる。決定的に重要なのは、EU加盟各国市民のウクライナ支持率が信じられないほど高いままであることだ。ユーロバロメーターの世論調査によれば、制裁措置、数百万人の難民、エネルギーの切り離し、生活費の危機が1年続いた後でも、EU各国市民の74%がEUのウクライナ支援を支持している。

ウクライナ人はヨーロッパの未来のために戦っている。EUの指導者たちは今、ウクライナを加盟させる準備のために自らの役割を果たす必要がある。ウクライナの加盟を成功させるために必要なEUの制度やプロセスについて、長年の懸案であった改革を進めれば、EUの規模が拡大するだけではない。EUはより強くなる。

※イルク・トイロイジャー:戦略国際問題研究所ヨーロッパ・ロシア・ユーラシア研究プログラム上級研究員、カルロス三世大学講師。ツイッターアカウント: @IlkeToygur

※マックス・バーグマン:戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)ヨーロッパ・大西洋・北ヨーロッパ研究センター部長、ヨーロッパ・ロシア・ユーラシア研究プログラム担当部長。米国務省上級顧問を務めた経験を持つ。ツイッターアカウント:@maxbergmann
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