古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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カテゴリ: 中東政治

 古村治彦です。

 サウジアラビアはムハンマド・ビン・サルマン(MBS)王太子が権力を掌握した2017年、アメリカではドナルド・トランプが大統領を務めていた。これが両国関係を深めることになった。正確に言えば、サルマン王太子とトランプの個人的な関係が深まり、それがサウジアラビアとアメリカの関係を深めるということになった。サウジアラビア政府は、トランプと娘婿で特使を務めるジャレッド・クシュナーの会社と巨額の契約を結び、資金を提供することになった。サルマン王太子は、同時に、中国の仲介でイランとの関係改善を進めていた。サウジアラビアは紅海を挟んでの隣国イエメンの内戦に介入し、イランの支援を受けているシーア派組織フーシ派を攻撃してきた。イラン、そして中国との関係を使って、状況を打開しようとしての動きだった。こうした動きはサウジアラビアの安全を確保するための手段になるはずだった。
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 しかし、アメリカとイスラエルによるイラン戦争によって状況は大きく変化した。サウジアラビアにとって状況は悪化している。アメリカとイスラエルによる大規模攻撃で、イランの体制転換が起きればサウジアラビアにとって良いことだった。しかし、そうはうまくいかなかった。イラン戦争は長期化し、アメリカは戦争の最初の段階で多くの武器を消耗している。イランは報復攻撃を行ったが、その対象はイスラエルと湾岸諸国になった。湾岸諸国にあるアメリカ軍基地が攻撃を受け、さらには民間施設も攻撃を受ける事態になった。サウジアラビアも攻撃を受け、報復攻撃を行うことになった。イエメンのフーシ派はイラン戦争後に攻撃を活発化させ、サウジアラビアへの攻撃も激化している。これも、イランによる報復攻撃の一環である。サウジアラビアはアメリカに対して、フーシ派への攻撃を要請しているが、トランプ大統領は他人事の態度を取っている。トランプは、フーシ派の攻撃対象はサウジアラビアだけであり、自分たちはその対象外だと述べている。下記論考の表現を借りれば、「サウジアラビアは間違った人間(トランプとクシュナー)に賄賂を贈った」ということになる。

 イランによるホルムズ海峡封鎖、フーシ派によるバブ・エル・マンデブ海峡封鎖は世界経済にも影響を与えるが、サウジアラビアへの攻撃激化は石油の生産と流通にさらに悪影響を及ぼす。私たちが現在の中東情勢から得るべき教訓は、「アメリカ依存は安全の確保を意味しない」ということである。「アメリカに頼っていれば大丈夫、アメリカがいれば安心」という時代ではないということを私たちは学ぶべきであり、頭の中を変えるべきである。

(貼り付けはじめ)

●「サウジ首都の国際空港に攻撃 12人が死亡 300人以上けが フーシ派関与か」

10/11(日) 7:57配信 TBS NEWS DIG Powered by JNN

サウジアラビアの首都リヤドにある国際空港が再び攻撃を受け、12人が死亡、300人以上がけがをしました。敵対するイエメンの武装組織フーシ派によるものとみられています。

サウジアラビアの航空当局は10日、首都リヤドの国際空港が攻撃を受け、12人が死亡、309人がけがをしたと発表しました。

アメリカのニューヨーク・タイムズは、今回の攻撃による死者数が、2月にアメリカとイスラエルがイランとの戦闘を開始して以降、湾岸諸国で起きた攻撃としては最多だと報じています。

ロイター通信によりますと、空港では爆発が起き、出発ゲート付近の天井の一部が崩落したほか、地面に倒れた複数の負傷者が目撃されたということです。

運航は一時停止され、航空便の欠航や目的地の変更が相次いでいます。

リヤドの空港では今週、イエメンの武装組織フーシ派による攻撃が相次ぎ、これまでに4人が死亡。

今回の攻撃について犯行声明は出ていませんが、フーシ派はサウジアラビアが支援するイエメン暫定政権側の軍事攻勢に対抗し、サウジアラビア国内の空港などへの攻撃を強めています。

今回の攻撃を受け、アメリカやイギリス、ドイツなどの大使館は、自国民に対し、リヤドの国際空港に近づかないよう呼びかけています。

イランをめぐる戦争が周辺国にも波及するなか、サウジアラビアでは民間航空への影響が深刻化していて、地域情勢のさらなる緊迫化が懸念されています。

トランプ大統領

「(フーシ派を攻撃する)可能性はある。検討する。先ほどの攻撃については知ったばかりなので今後判断する」

アメリカのトランプ大統領は10日、サウジアラビアを支援するためのフーシ派への攻撃について、「検討する」と述べました。

トランプ氏はリヤドの空港への攻撃について「本当にひどいことだ」と話しています。

また、ルビオ国務長官は10日、「X」への投稿で空港への攻撃でアメリカ人1人が死亡したことを明らかにしたうえで、「攻撃はただちに止められなければならない」と強調しています。

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サウジアラビアは間違った相手に賄賂を贈った(Saudi Arabia Bribed the Wrong People)

-リヤドのトランプ主義への賭けは失敗した。

ニコラス・グロスマン筆

2026年9月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/09/24/iran-trump-saudi-war-mbs-bad-bet/?tpcc=recirc_right_rail051524

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ワシントンのホワイトハウスにある大統領執務室で行われた二国間会談で、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子と会談するドナルド・トランプ米大統領(右)(2025年11月18日)

サウジアラビアは深刻なトラブルの中にある。サウジアラビアの世界的な影響力は、大きくは主要産油国としての地位とそこから得られる莫大な富に由来するものだが、今や中東地域は火事の状態にある。現在、サウジアラビアのタンカーはペルシャ湾で足止めされ、紅海では脅威に晒されており、サウジアラビア最大の石油パイプラインもドローン攻撃を受けて停止を余儀なくされた。しかし、サウジアラビアにとって最大の長期的問題は、長年にわたり安全保障を保証してきたアメリカが、この火災を消火できず、また消火しようという意欲も特に見せていないことであろう。

第二次世界大戦後、特に冷戦終結以降、中東情勢はある種の合意の上に成り立ってきた。それは、アメリカの軍事的優位性が相対的な安定をもたらすというものだ。具体的には、侵略の抑止と対抗、航行の自由の確保、イランの封じ込め、防空体制の構築、そして友好政権の維持支援などが含まれる。その見返りとして、サウジアラビアやクウェート、バーレーン、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)といった湾岸のアラブ諸国は、アメリカ軍基地の受け入れやテロ対策での協力、そして石油の円滑な供給維持を担ってきた。この仕組みが最も明確に機能した例が1990年から1991年にかけての出来事だ。当時、アメリカ主導の有志連合が、イラクによるサウジアラビアの油田占拠を阻止し、クウェートからイラク軍を排除したのである。

ドナルド・トランプ米大統領によるイランへの攻撃は、この取り決めを修復不可能なまでに破壊してしまったが、サウジアラビアにはそれに代わる新たな枠組みが存在しない。

サウジアラビアの石油産業は、あらゆる方面から圧力を受けている。サウジアラビアの主要な油田や製油所の多くは湾岸地域に位置しているが、そこではイランがホルムズ海峡を経由する輸出を阻害している。しかし、サウジアラビアには「プランB」があった。それが、湾岸地域と、国の反対側にある紅海沿岸の港や製油所を結ぶ「東西パイプライン(the East-West pipeline)」である。

この春、その投資が功を奏した。開戦前、このパイプラインは1日あたり約100万バレルの原油を東方へ輸送していたが、イランがホルムズ海峡を封鎖した後、その量は400万〜500万バレルにまで増加した。

しかし、7月になり、イランと連携するイエメンの武装組織フーシ派が、紅海におけるサウジアラビア関連船舶の封鎖を宣言した。彼らは南部の要衝であるバブ・エル・マンデブ海峡周辺で船舶への攻撃を行っており、北側の出口はサウジアラビアの船舶に対して開かれているものの、スエズ運河はサウジアラビアの船団の約半数を占める超大型タンカーの通航に対応していない。

災難は重なっている。フーシ派は最近、港湾都市モカとバブ・エル・マンデブ海峡内の島を占拠し、サウジアラビアの船舶を攻撃する能力を強化した。イラクのイラン系武装勢力がサウジアラビアに向けてドローンを発射し、東西パイプラインのポンプ場に損傷を与えて稼働停止に追い込んだが、復旧には1カ月以上かかる可能性がある。9月15日には、サウジアラビアが紅海のヤンブー港での原油積み出し停止を発表したと、貿易関係者がロイター通信に語った。同じ週、サウジアラムコはヨーロッパの製油所に対し、当面は原油の供給を行わないと伝えたと報じられている。今週に入り、フーシ派はサウジアラビアへの攻撃を拡大させ、首都リヤドやサウジアラビアの主要国際空港、さらには各地の石油施設に向けて攻撃を行った。

報道によれば、パイプライン攻撃を受けてサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子はトランプ大統領に2度電話をかけ、フーシ派の進撃を食い止めるためにフーシ派を爆撃するようアメリカに求めた。ホワイトハウスはこの要請を拒否し、記者会見でイエメン情勢について問われた際、トランプ大統領は次のように述べた。「フーシ派から連絡があった。彼らは私たちと戦いたいと思っていない。戦うつもりはないと伝えてきた。私たちに攻撃されたくもないし、私たちが関与しないことを望んでいる。彼らは大半の船舶を通航させている。彼らが快く思っていない国は、たった1つだけだ」。

それがトランプ特有の空想なのか、あるいはフーシ派の言葉をそのまま信じることにした実際の会話だったのかは定かではないが、いずれにせよリヤドにとっては最悪の事態と言える。

サウジアラビアにとってこれは苛立たしいことだろう。彼らは長年、トランプ大統領とその義理の息子で国際特使のジャレッド・クシュナーに賄賂を渡してきたのだから。アメリカ・サウジアラビア関係は常に取引的なものだったが、それは国家安全保障や石油といった分野に限った話であり、今回のように個人的な利害に基づくものではなかった。

サウジアラビア側は、アメリカの民主政治体制の後退や腐敗を歓迎し、資金力を駆使してそれを利用しようとしたようだ。2016年にトランプが大統領に当選すると、彼らはトランプの所有するホテルで多額の支出を始めた。トランプが大統領として最初に訪問した外国はサウジアラビアであり、サウジアラビアは彼を豪華な歓待と賛辞で迎え入れた。

当初、それは成功した投資のように見えた。その訪問の際、トランプはサウジアラビアと1100億ドル規模の武器売却契約を締結した。2018年にムハンマド・ビン・サルマン王太子が権力を掌握した際、クシュナーはサウジ王室内の政敵に関するアメリカが持つ機密情報を提供してサルマン王太子を支援したと見られ、王太子はクシュナーを「懐に入れている(in his pocket)」と豪語していたと伝えられている。その年の後半、トランプはサウジアラビアの支持を受けてイラン核合意から離脱し、ジャーナリストのジャマル・カショギ殺害をムハンマド・ビン・サルマン王太子が命じたとするCIAの分析を公然と退けた。

トランプの任期終​​了後も、サウジアラビアはさらに深く関与を強めた。サウジアラビアが支援する「LIVゴルフ」リーグは、トランプ所有のゴルフ場にトーナメント開催の対価を支払った。サウジ政府系企業はトランプ・オーガナイゼイションと不動産取引を行い、数百万ドルのライセンス料を支払ったほか、さらなる支払いの約束も交わした。

最も露骨だったのは、サウジアラビア政府がクシュナーの新しい投資会社に20億ドルを拠出したことだ。サウジの政府系ファンドの運用担当者たちはこれに異議を唱え、デューデリジェンス(資産査定)報告書もクシュナーの会社を「あらゆる面で不十分」と評価していた。さらに、この取引には異例の高額な手数料が含まれており、ファンドの運用成績にかかわらず、クシュナーらは毎年2500万ドルものサウジアラビアからの資金を懐に入れる仕組みになっていた。それでも、ムハンマド・ビン・サルマン王太子は取引を強行した。

トランプが再び大統領に就任し、クシュナーがガザ情勢をめぐるアメリカの外交を主導する立場にあったことから、あの資金は有効に使われたかのように見えた。しかしその後、トランプはイランを攻撃した。

リヤドは、公には紛争への関与を避けつつ、水面下ではトランプに体制転換(regime change)を促した。だが、それが実現しないことが明らかになると、停戦と交渉を支持する姿勢へと転じた。今夏、アメリカとイランとの間の覚書が破綻し、トランプ大統領が再びイランへの爆撃を試みた際、イランはイエメンとイラクの同盟民兵組織の活動を活発化させた。これらの民兵組織は、戦争初期には活動を抑制されていたようで、サウジアラビアを多方面から攻撃している。

サウジアラビアの視点からすると、トランプ大統領は選択戦争(a war of choice)を仕掛けたことでサウジアラビアへの攻撃と船舶輸送の制限を引き起こし、その後、勝利につながる可能性のある地上侵攻と真の政権交代という手段を放棄し、代わりに外交を試みたが失敗に終わり、結果としてサウジアラビアへの攻撃をさらに激化させたということになる。

自力では十分に対抗できない勢力からの攻撃にさらされているサウジアラビアにとって、アメリカは不可欠な存在であるが、数十年にわたり安全保障を支えてきたそのアメリカも、この問題を解決できずにいる。サウジアラビア軍はフーシ派の攻撃への報復としてイエメンを空爆していますが、イエメン内戦において長年にわたり現地政府を支援し空爆を続けてきたにもかかわらず、フーシ派を打ち負かすことはできていない。サウジアラビアは巨額の軍事予算を投じているものの、その軍隊は構造的に脆弱で戦績も芳しくない。こうした状況は、アメリカへの依存を助長する要因であると同時に、その依存の結果でもある。

フーシ派の攻勢に対するトランプの最初の反応は良く知られているものだ。それは、問題を問題ではないかのように装い、他者にも同様の態度を取るよう求めるというものだ。これは、当初彼が求めていた体制転換や「無条件降伏(unconditional surrender)」をアメリカとイスラエルの最初の攻撃が体制転換を実現できなかった後、対イラン戦争において彼が取ってきた主な戦略でもある。

トランプの戦争のやり方には明確なパターンがある。大口を叩き(big threats)、壮大な目標を掲示し、死傷者を避けるための航空作戦を実施し、そして威嚇や空爆が功を奏さなかった場合には、身を引き、嘘をつくというものだ。この手法は対イランでは失敗しつつあるが、対フーシ派ではすでに失敗に終わっている。

2025年、フーシ派は紅海を航行する船舶への攻撃を行った。彼らは、ガザ地区でのイスラエルの戦争に反対して、パレスティナとの連帯を主張した。2025年3月、トランプはイエメンへの空爆を開始し、ピート・ヘグセス国防長官は航行の自由を回復するために「容赦ない(unrelenting)」取り組みを行うと宣言した。

アメリカは航空戦力のみによる作戦を試みた。しかし、1カ月半後、約10億ドル相当の弾薬を費やし、戦闘機を数機失い、いくつかの標的を破壊したもののフーシ派の攻撃を止めることはできず、さらに、トランプ政権の無能さを露呈するように、作戦計画が「Signal(シグナル)」を通じて誤って流出するという失態まで演じた末に、アメリカは作戦を打ち切り、これを大成功(a great success)だったと主張した。

その結果、サウジアラビアは困難な立場に置かれることになった。海上輸送路やパイプラインは、確実に防衛するよりも攻撃する方がはるかに容易だからだ。サウジアラビアはオマーン沖でのタンカー間積み替え(ship to ship)を増やすことで損失を補おうとしているが、失われた輸送量を全てそれで賄うことは不可能だ。

サウジアラビアがトランプとクシュナーに対して行った投資から得られた唯一の確実な見返りは、最も厳しい国際査察を受けることなくウラン濃縮を進められるようにする核合意である。核拡散のリスクや、イランのウラン濃縮阻止を求める自らの主張を損なう恐れがあるため、歴代のどの米大統領もこのような合意には踏み切らなかっただろう。しかし、サウジアラビアから自身の個人口座に資金を振り込ませた唯一の大統領であるトランプは、それを実行した。ホワイトハウスは最近、この合意を連邦議会に提出したが、連邦議会ではトランプの所属する共和党が上下両院を支配しており、これまで概ね追認機関(a rubber stamp)としての役割を果たしてきた。

とは言え、サウジアラビアが実際にその核関連の利益を手にできるかどうかは不透明だ。弱腰や汚職に対する批判をかわそうと、トランプは「合意の成立はイスラエルを承認することが条件だ」と述べたが、サウジアラビアがそれに応じることはないだろう。少なくとも、イスラエルが認めないパレスティナ国家の樹立なしにはあり得ないからだ。

仮に合意が成立したとしても、民主党が次に政権を奪還すれば、それを覆す可能性がある。国際安全保障上の懸念に加え、トランプの個人的な関係者が不正に利益を得る構図になっているからだ。また、サウジアラビアの財政状況が悪化すれば、ワシントンでロビー活動を行うための資金も減ることになる。

サウジアラビアは、腐敗したアメリカの政権こそ自国の利益にかなうと考え、誠実さ、倫理、法、人権といった厄介さ(pesky)を抜きにしても、有能さと相対的な安定性を手に入れられると信じていたようだ。しかし現実には、賄賂を受け取るような指導者は、往々にして利己的で脆弱なものだ。

賄賂に応じる指導者は、本質的に無責任だ。フェルディナンド・マルコス、サダム・フセイン、モブツ・セセ・セコ、あるいは最近ではヴィクトル・オルバンといった、個人支配的かつ腐敗した指導者たちは、自国であれ他国であれ、国益に関わる問題において極めてお粗末な実績を残してきた。世界の圧倒的な軍事大国の中心でこのような事態が起きるのを、少なくとも現代において私たちは目撃したことがなかったが、アメリカが個人支配的な政治へと転落した結果もまた、同様に悲惨なものとなった。賄賂を受け取る指導者は、相手が聞きたいことを口にするかもしれないが、実際にそれを実現できるとは限らない。

腐敗した指導者は、物事、特に法や規範を破壊することには長けているが、それ以外のあらゆることに関しては無能である。サウジアラビアは、トランプによる破壊的な影響はアメリカ国内にとどまるものであり、金で動かせるワシントンは今後も自国に有益な存在であり続けるだろうと、誤った認識を抱いていた。

※ニコラス・グロスマン:イリノイ大学国際関係論教授。「アーク・ディジタル(Arc Digital)」編集者。著書に『ドローンとテロリズム(Drones and Terrorism)』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

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 古村治彦です。

 イスラエルとパレスティナの和平こそは現代の最大の難事と言わざるを得ない。ウクライナ戦争やイラン戦争の停戦ももちろん難事であるが、イスラエルとパレスティナ紛争はこれらよりも解決が難しいのではないかと思ってしまうほどだ。イスラエルとパレスティナ国家の二国共存が決まってからも、イスラエルはその実態を骨抜きにしようとし、入植地拡大という形で占領地を固定化しようとしている。さらに、日本と同様に、極右勢力が政権を奪取して以降、国際協調などには目もくれず、暴力的な施策を進めている。

 ドナルド・トランプ米大統領はイスラエル寄りの姿勢を崩していないが、平和評議会(Board of Peace)を設立し、パレスティナ問題の解決を図ろうとしている。しかし、ガザ地区の非武装化は良いとしても、パレスティナ人を移動させて、リゾート開発を行う(「中東のリヴィエラを目指す」)という青写真を出して世界を困惑させている。それには、岐阜ドナルド・トランプと同様に不動産開発にも携わる娘婿ジャレッド・クシュナーの存在もある。クシュナーはウクライナ戦争やイラン戦争の停戦交渉にも関わり、同時に、パレスティナ問題にもかかわっている。義父ドナルド・トランプの代理人とも言える立場にある。

 パレスティナ側はこのような動きを受け入れていない。トランプやイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスの武装解除を強く求め、ハマス側はイスラエル軍のガザ地区での攻撃停止と完全撤退を条件として合意したが、実質的には不可能であろう。イスラエルがガザ地区からの撤退を実施する可能性は限りなく低いからだ。少なくとも、ベンヤミン・ネタニヤフ政権が続く限り、イスラエルがパレスティナ国家との二国共存を推進するということはあり得ない。

しかし、その姿勢は既に世界各国に明らかになっている。アメリカ国内でもイスラエルに対する支持が現書している。そうなると、ますます意固地になって、居丈高な姿勢を取ることになるだろう。パレスティナ問題について国際社会がどのようなそしきや機関を作っても意味はない。イスラエルが解決する意向を持たねば何も進まない。そして、現在のアメリカはそれを支持し、擁護するだけの力を持っている。しかし、アメリカが西半球に引きこもる時代が近いうちにやってくる。そうなると、イスラエルは、そして、日本は国際的な孤立を避けられないということになる。そのことを認識して、問題解決を進めることが重要だが、残念なことに、イスラエルも日本も内部にいる人間たちは「アメリカに従って、アメリカの威を借りて威張っていれば大丈夫」という考えから抜け出せないでいる。
(貼り付けはじめ)

誰もがトランプ氏のガザ和平案が消滅するのを待っている(Everyone Is Waiting for Trump’s Gaza Plan to Die)
-平和評議会(the Board of Peace)はあまりに欠陥が多く、完全に実行不可能であることが明らかになった。

アンチャル・ヴォーラ筆

2026年6月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/05/trump-gaza-peace-board-israel-war/?tpcc=recirc_latest062921

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2025年10月13日、エジプトのシャルム・エル・シェイクにて、ガザ紛争終結に向けた首脳会議の看板の横で身振りを交えながらポーズをとるドナルド・トランプ米大統領。イスラエルとハマスの間では、米国が仲介した捕虜・人質の交換および停戦合意が成立している。

2025年10月、ドナルド・トランプ米大統領はハマスとイスラエルの間の停戦実現に尽力し、大々的な宣伝と共に、この長引く紛争を解決するための青写真として20項目の計画を発表した。当時、イスラエルは人質の奪還を、ハマスはガザ地区への容赦ない爆撃の停止を必死に求めていた。しかし、双方は自らの最大限の要求について譲歩するつもりはなく、また、成果を挙げることに執念を燃やす米大統領の機嫌を損ねることも望んでいなかった。

両者はそれぞれ独自の理解に基づいてトランプの計画に同意した。イスラエルは合意された境界線まで撤退するがガザ地区の約53%の支配権を維持し、ハマスが武装解除した後にのみ、破壊し尽くされた地域の再建を許可するつもりであった。一方のハマスは、将来のパレスティナ国家樹立に向けた確実な道筋が整った段階で武装解除について協議する構えだった。どちらの側も先に譲歩する用意はできていなかった。計画には、実行の順序が明記されていなかったからだ。

これが計画の唯一の欠陥という訳ではない。計画では、「ガザ地区の非武装化プロセス(process of demilitarization of Gaza)」を独立した監視団の監督下で、「合意された武装解除プロセスを通じて(through an agreed process of decommissioning)」実施するとされていた。しかし、誰が監視団となるのか、あるいはそのプロセスが具体的にどのようなものになるのか―例えば、ハマスがまず重火器を放棄するのか、それとも小火器やトンネル、兵器製造施設を放棄するのか―については何ら明記されていなかった。

こうした混乱こそが、ガザ紛争に決定的な終止符を打つはずだったトランプ主導の「平和評議会(Board of Peace)」の進展を遅らせる主要な原因となっている。トランプの関心がイランとの戦争に向けられる中、ガザ地区の人々は依然として悲惨な環境下で暮らす以外にない状況が続いている。

平和評議会の重要な任務の1つは、ガザ地区の治安を維持するための国際安定化部隊(an international stabilization force)、アラブ諸国やヨーロッパ諸国、さらにはインドネシアなどの一部のアジア諸国からの部隊で構成される部隊を編成することであった。言い換えれば、必要とあれば武力を行使してでもハマスの武装解除を断行することが期待される国際武装部隊である。

ガザ地区に上陸した兵士は一人もいない。国際安定化部隊(ISF)は依然として構想段階にとどまり、現地で活動する実力組織にはなっていない。元イスラエル軍情報部大佐で、かつて国家安全保障担当首相補佐官代理を務め、現在はイェルサレム戦略安全保障研究所(Jerusalem Institute for Strategy and Security、JISS)の副所長であるエラン・レルマンは、『フォーリン・ポリシー』誌に対し、「私たちの代わりにハマスと戦うという任務を担おうとする者は誰もいない」と語った。

ブルガリア元国防相ニコライ・ムラデノフが平和評議会の上級代表(high representative)に任命され、ガザ統治のための新たなテクノクラート(technoctatic)主導のパレスティナ組織「ガザ行政国家委員会(National Committee for the Administration of Gaza、NCAG)」を率いている。NCAGのウェブサイトによれば、NCAGはガザ地区における「日常的な公共サーヴィス」の運営を担うことになっており、事実上のガザの「亡命政府(government in exile)」と広く見なされている。しかし、NCAGは数カ月にわたりカイロのホテルで足止めされており、ガザの地には一歩も足を踏み入れていない。

ヨーロッパ外交問題評議会(European Council on Foreign Relations、ECFR)の客員研究員であるムハンマド・シェハダは、ハマスがムラデノフを「イスラエルの圧力下で動いている」と疑っており、意図的にNCAGのガザ訪問を阻止していると指摘した。その狙いは、ハマスが武装解除に応じるまで、復興や政治プロセスの進展を遅らせることにあるとされている。3月には、ハマスの意思決定機関である政治局のメンバーであるバセム・ナイムがXに投稿し、ムラデノフが「アメリカやイスラエルを喜ばせるため(to please the Americans and Israelis)」、パレスティナの人々を犠牲にして「自身の目的(own ends)」を達成しようとしていると非難した。

一方、ガザの住民は、紛争前と比べて半分以下の広さの地域に密集して暮らしている。イスラエル軍は停戦後もさらに土地を占拠し、いわゆる「イエローライン(yellow line)」を越えて進出した。この境界線は、イスラエルが管理するガザ地区の53%の地域とハマス支配地域を隔てる、黄色のコンクリートブロックで示された境界だ。

イスラエル軍はさらに約11%の領土を占拠するまでに拡大し、現在ではガザ地区の64%を支配下に置いている。新たにイスラエルが支配する区域の境界は、地図上で「オレンジライン(orange line)」として示され、事実上の新たな境界線となっていると報じられている。イエローラインとオレンジラインの間(イスラエルが拡大した緩衝地帯にあたる地域)に居住する人々に支援物資を届けるには、イスラエル側の事前承認が必要とされている。

また5月末には、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がイスラエル軍に対し、ガザ地区の70%を掌握するよう指示したと述べた。この発言は、イスラエルがガザ地区の領土拡大や占領を意図しているのではないかという疑念を強めるものとなった。

さらに活動家たちは、パレスティナ人の追放が国家政策の一環として行われていると指摘している。パレスティナ人の移動の自由を擁護するイスラエルの法律団体「ギシャ(Gisha)」や、イスラエル国内のアラブ人の権利を支援する法律センター「アダラ(Adalah)」は、ガザ地区での生活の様々な側面について実態を記録し続けてきた。2月には、エジプト経由のラファ検問所からガザ地区への帰還を試みるパレスティナ人住民に対し、「嫌がらせや違法な制限」が課されていると主張し、それらの「即時停止」を求める書簡をイスラエル当局に送付した。

ギシャは2月、戦争中にガザ地区を離れた人々のうち再入国を許可されたのはごくわずかであると主張した。また、イスラエル国防省の部局である「占領地政府活動調整官(COGAT)」が、2023年の開戦前にガザ地区外にいたパレステクナ人の帰還を阻んでいるとも指摘している。

ギシャの事務局長タニア・ハリーは、「エジプトには10​​万人以上のパレスティナ人が滞在しており、そのうち約3万人がガザ地区への帰還を希望して登録しているが、入国が許可されるペースは極めて遅い」と述べている。ハリーによれば、交渉で合意された条件に基づき、毎日50人の患者が付き添い人と共にガザ地区から出国し、同数の人々がガザ地区へ帰還できるはずだといいます。しかし、実際に行き来している人々の数は「人為的に低く抑えられている」とハリーは指摘している。

交渉の際、エジプトは、出国を許可される人々の数と帰還する人々の数を同数にすべきだと主張した。イスラエルがパレスティナ人を呼び戻さないのではないかという懸念から、エジプトやその他のアラブ諸国はガザ地区を離れるパレスティナ人を受け入れざるを得なくなる事態を恐れている。一方で、『フォーリン・ポリシー』誌の取材に応じた活動家たちは、イスラエルは帰還を望むパレスティナ人を受け入れることよりも、パレスティナ人がガザ地区から出ていくことを強く望んでいると指摘した。

ハリーは、ガザ地区からパレスティナ人を追放することが国家の方針であるように見えると述べた。「イスラエルは、パレスティナ人にガザ地区から出ていくことを望むという意向を非常に率直に示しており、それを隠そうともしていない。イスラエルのカッツ国防相は、ガザ地区のパレスティナ人を受け入れてくれる国を探しているとさえ発言している。政策の目標は極めて明確だ」と彼女は『フォーリン・ポリシー』誌に語った。

人権団体「ギシャ」や「アダラ」は、パレスティナ人のガザ地区への帰還を阻むことは「住民の強制移送(forcible transfer of a population)」にあたり、戦争犯罪を構成すると主張している。

レルマンは、イスラエルの極右勢力の一部がガザ地区を占領し、パレスティナ人を追放する意向を表明していると指摘した。これはおそらく、ネタニヤフ政権の一員であり、ガザ地区からのパレスティナ人の「自発的移住(voluntary emigration)」を支持してきたイタマル・ベン・グヴィル治安相やベザレル・スモトリッチ財務相を指しているだろう。

しかしながら、レルマンは、パレスティナ人の追放が政府の方針であるとは考えていないとも付け加えた。レルマンによれば、その構想は、ハマスがもはや脅威ではなくなるまでイスラエル軍がガザ地区に駐留し続けるというものだ。

「ムラデノフはイェルサレムに対し、ハマスが武装解除に応じる気配はなく、国際安定化部隊も派遣されないことをネタニヤフ首相に伝えるよう求めた」とレルマンは述べた。つまり、ハマスの武装解除に必要な条件をイスラエル自身が作り出さなければならないということだとレルマンは付け加えた。

「その戦略はガザ地区を征服することではなく、ハマスの司令官を排除し、全面的な衝突には至らない範囲で少しずつ前進しながらハマスの支配地域を縮小していくことにある」と、レルマンは『フォーリン・ポリシー』誌に語った。

ECFR(欧州外交評議会)の研究員であるシェハダは、イスラエルが完全な武装解除を出発点としようとしているのに対し、ハマスは段階的な兵器廃棄を求めているという点が問題だと指摘した。シェハダによれば、もしハマスが小火器などを手放せば、イスラエルの入植者がその地域に入り込み、占拠する恐れがあるということだ。

シェハダは、「もし兵器がなくなり、ハマスが解体されれば、ヨルダン川西岸地区で起きているのと同様に、入植者たちが入り込み、数カ月のうちにガザ地区を掌握してしまうだろう」と述べ、ヨルダン川西岸地区における入植者による暴力行為に言及した。「トランプの和平案における取り決めは、イスラエルによる占領を防ぐための保証とは見なされていない」。

一方、イスラエル政府は、2023年10月7日のような攻撃の再発を防ぐためにハマスの武装解除を図っているに過ぎないと主張している。イスラエル国内では、ハマスを打倒する前にパレスティナ国家樹立について議論することは、10月7日の攻撃に対する「ご褒美」と見なされ、ハマスを勢いづかせる恐れがあるとの懸念が出ている。またハマス側は、イスラエル軍に兵器を引き渡せば、イスラエルと協力関係にある地元の敵対勢力から攻撃されることを危惧している。

ハマスは、パレスティナ国家樹立に向けた現実的な道筋が整うまでの間(5年、10年、あるいは15年)、NCAGの監督下で武器を廃棄または保管する用意があると表明している。ハマスのナイムは昨年12月、「停戦や休戦の期間中は一切武器を使用しないというパレスティナ側の保証を前提に、武器の凍結、保管、あるいは放棄について協議することは可能だ」と述べている。

一方、レルマンはNCAGを非武装の組織と見なしており、そのようなプロセスを実効的に監視する能力はないと考えている。「ハマスの言葉が本心だとは到底信じられないし、(武器の保管という提案は)観測気球(a trial balloon)に過ぎないように聞こえる」と彼は指摘する。

要するに、事態を前進させることに消極的な姿勢は、単なる不信感だけでなく、イスラエルとパレスティナ双方が(たとえそれが自滅的な結果を招くものであっても)自分たちの方が優位に立っていると感じていることに起因している。ハマスは、イランをめぐる紛争におけるアメリカとイスラエルの失態や、レバノンの武装組織ヒズボラが存続していることに勢いづいているようだ。自らが守るべき人々が困窮し荒廃した生活を送っているにもかかわらず、ハマスは武器を保持し続け、いずれまた戦術を再開できると考えているのである。

イスラエルは自国の軍事的優位性を認識しており、パレスティナ人を追放し、戦禍に見舞われた200万人もの人々から住居や医薬品、義肢を奪っているとの非難を浴びながらも、ハマスを効果的に追い詰めていると考えている。イスラエルとパレスティナの双方は、トランプがホワイトハウスを去ること、そして、平和評議会が静かに消滅することを待ち構えている。

※アンチャル・ヴォーラ:ブリュッセルを拠点とする『フォーリン・ポリシー』誌のコラムニストであり、ヨーロッパ、中東、南アジア情勢について執筆している。これまでに『タイムズ・オブ・ロンドン』紙で中東情勢を取材したほか、アルジャジーラ・イングリッシュやドイチェ・ヴェレ(DW)でテレビ特派員を務めた経験を持つ。以前はベイルートやデリーを拠点とし、20カ国以上で紛争や政治に関する報道を行ってきた。Xアカウント:@anchalvohra

(貼り付け終わり)

(終わり)


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『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)

 アメリカとイスラエルによる攻撃から始まったイラン戦争は正式な最終和平が達成されずに3カ月が過ぎようとしている。4月7日にパキスタンの仲介により、2週間の一時停戦が合意され、4月22日からは停戦が継続しているが、お互いにホルム海峡を封鎖し合い、にらみ合っている状況だ。5月24日には、60日間の停戦合意間近という報道が出た。アメリカのドナルド・トランプ大統領は再攻撃を検討しているが、ペルシア湾岸諸国が攻撃をしないように依頼しているという報道も出ているが、アメリカはウクライナ戦争も抱え、思うように武力行使ができない状況にある。
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 イラン戦争に関しては、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がアメリカのドナルド・トランプ大統領に戦争を「売り込んで」、トランプをやる気にさせて始まったことは、このブログですでにご紹介した。イスラエルにとっての最大の利益は「イランを弱体化させること」であり、中東地域を一種の混乱状態にすることで、自分たちに攻撃を向けないようにして、「目立たない」うちに、「パレスティナ処分」を行うということだ。それが現在はうまくいっている。アメリカを中東地域から撤退させないで、泥沼に足を取られるようにするということにも成功した。さらには、「保険」として、ペルシア湾を挟んでのイランの隣国UAEを味方に引き入れ、依存させ、イランと敵対させることで、「喉に刺さった魚の小骨」のようにすることにも成功した。イスラエルはペルシア湾に対イラン橋頭保(bridgehead)を確保したと言える。

※古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ:UAE(アラブ首長国連邦)のOPEC離脱は中東地域の不安定化を助長する↓ https://suinikki.blog.jp/archives/90508844.html

 しかし、アメリカと中東諸国にとっては良い迷惑である。平和と安定がなければ、ビジネスもうまくできない。石油が輸出できなければ、他に主要な産業がないは干上がってしまう。他の産業として、金融や観光を発展させようとしてきたが、これらの産業分野こそは平和と安定が必須条件となってくる。危険な場所に投資はしないし、人は観光に行こうとは思わない。中東諸国が石油を売って儲けたお金(ドル)でアメリカへの投資も行われていた訳だが(ペトロ・ダラー体制)、この投資の流れが細くなれば、アメリカの利益にもならない。このように考えると、イラン戦争はアメリカの国益には適わない。そのことを痛感し、じりじりとしているのがトランプ大統領だろう。一日も早い停戦と和平達成こそがイスラエル以外の世界にとって望ましいことだ。

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イラン内戦はアメリカの国益にはならない(An Iranian Civil War Is Not in America’s Interest)

-イスラエルは政権崩壊(regime collapse)による混乱を歓迎するかもしれない。しかし、アメリカとその同盟諸国は歓迎できない。

ファリード・ザカリア筆

2026年3月6日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/06/iran-civil-war-united-states-allies-regime-collapse/

「ジャズの即興演奏による政権転覆(Regime change by jazz improvisation)」。イラン研究の権威であるカリム・サジャドプールは、トランプ政権がイランとの戦争で用いた戦略をこう評した。残念ながら、これはワシントンから発せられる、散漫で、変化に富み、不確実なアプローチを最も的確に表現した言葉と言えるだろう。

トランプ大統領はこの戦争を、イラン国民に政府打倒を呼びかけることで開始した。おそらく彼は、政権が即座に崩壊すると想定していたのだろう。しかし、そうならなかったため、わずか1、2日で方針転換した。政権内部の潜在的な指導者への対処を検討し始め、ヴェネズエラへのアメリカの介入を模範とすべき「完璧な(perfect)」事例だと称賛した。なぜなら、ヴェネズエラへの介入は政権転覆とは程遠く、逮捕したのはたった2人だったからだ。ピート・ヘグセス国防長官は、この戦争が「政権転覆[体制転換]戦争(regime change war)」であることを明確に否定し、側近のエルブリッジ・コルビーも同様の見解を示した。両者とも、目標はイランの軍事力を弱体化させることだけだと述べていた(昨年6月、ステルス爆撃機を含む12日間の爆撃で、イラン軍の多くはすでに「壊滅(obliterated)」していた)。しかしその後、事態は一転し、ドナルド・トランプ大統領はイランとイラクのクルド人指導者に接触し、イランの軍事力を弱体化させるためではなく、テヘラン政権の転覆、ひいてはイランの国境線の変更さえも視野に入れ、戦闘に参加するならば支援を約束した。トランプ大統領は現在、イランの「無条件降伏(UNCONDITIONAL SURRENDER)」なしには合意はあり得ないと宣言している。

つまり、目標は政権交代ではない―ただし、時折そうなることもある。

しかし、この戦争で最も危険な要素は、主役がサックス奏者のように即興で行動していることではない。戦争を遂行する2国が、それぞれ異なる、そしておそらく相容れない目的を持っていることだ。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相にとって、この戦争の目的は明らかにイスラム共和国の破壊である。彼は、この戦争が40年来の夢の集大成であることを認めた。また、この機会を利用してヒズボラを根こそぎ排除しようとしている。

イスラエルの軍事戦略は、的確かつ巧みに実行され、その目標に完全に合致している。イスラエルの攻撃は、イラン指導部を壊滅させ、軍事力を弱体化させ、指導部施設を攻撃し、さらには警察施設までも標的にしている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が報じたように、イスラエルはイランの抑圧的な国家体制を組織的に破壊し、政権崩壊の危機をもたらしている。そして、現状のままでは、イスラエルは目的を達成する可能性が高い。そうなれば、イラン国内に権力の空白が生じ、反乱を招く恐れがあるが、ほぼ確実に内戦へと発展するだろう。誰が権力を握ろうとも、この政権は必ず抵抗するだろう。ここで適切な具体例は、10年以上内戦に苦しみ、数十万人が死亡し、数百万人が難民となったシリアである。

トム・フリードマンが指摘したように、イランは容易に崩壊する可能性のある国だ。クルド人、アルメニア人、アゼルバイジャン人など、近隣諸国と繋がりを持つ民族集団が多数存在する。彼らはこれまで平和的に共存してきたが、歴史が示すように、バルカン半島からイラクに至るまで、秩序が崩壊し力の空白(a power vacuum)が生じると、人々は部族集団に引きこもり、他者への信頼を失う。そして、こうして内戦が始まるのだ。この戦争を煽る要因は、イラン政府が、いかなる新政府や新勢力に対しても戦う覚悟のある、武装した献身的な兵士を多数擁しているという事実である。革命防衛隊は推定20万人規模で、さらに数十万人規模の準軍事組織であるバシジも存在する。そして、約40万人の正規軍も存在する。サダム・フセインの軍隊がアメリカの侵攻後に崩壊し、その多くが反乱軍として再び姿を現したように、革命防衛隊も別の装いで戦い、いかなる新政府も国を支配できないようにするだろうと想像できる。リビアでは、カダフィ政権崩壊から14年以上経った現在もなお、国全体を掌握する単一の勢力は存在しない。国家を破壊することは、再建するよりもはるかに容易なのだ。

イスラエルにとって、これはおそらく受け入れられる結果だろう。最大の敵を排除できたのだから、イラン(とレバノン)に混乱が生じても仕方がない。シリア内戦は、イスラエルが、イスラエルと戦うことを使命とする主要なアラブ国家と対峙しなくてよくなったため、実際にはイスラエルの安全保障を向上させた。しかし、イラン内戦はアメリカの国益にはならず、石油、物資、資金、そして人々の自由な往来を可能とするために、地域の安定と予測可能性に依存しているアメリカの最も緊密なアラブ同盟国にとっても国益にはならない。

ワシントンは、イランを内戦に陥れることなく、この戦争で得た成果―武装解除され、牙を抜かれたイラン―を確実に維持する方法を見つけ出す必要がある。

成果を強化し、この戦争を終結させる方法はまだ残されている。いつものように、カタールは仲介者として有益な役割を果たすことができるだろう。しかし、時間は刻々と過ぎている。いずれこの戦争は転換点(a tipping point)に達し、誰もその波及効果(the spillover)を制御できなくなるだろう。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、最近では『革命の時代(Age of Revolutions)』を著した。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

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(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

中東情勢は、イスラエルとハマスとの間で停戦合意がなされても、不安定なままだ。これは、アメリカの中東政策の失策とも言えるが、中東地域が持つ複雑さも原因となっている。そうした中で、ロシアも中東情勢において、重要な役割を果たそうとしている。ロシアの場合は、イランとの親密な関係を維持していると同時に、イスラエルとも良好な関係を持っている。それは、イスラエル国内に多くのロシア系ユダヤ人たちを抱えているからだ。彼らはイスラエル国内で一大勢力となっており、ロシア語を話せることから、ロシアとも関係を保っている。
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 ロシアは非西洋の一員として、イランを支援しているが、イランとイスラエルとの間の紛争には介入していない。あくまで中立を保っている。イスラエルによるガザ地区の攻撃について、イスラエルを非難しているが、最終的な断絶には至っていない。イランは、中東地域内に、イスラエルとサウジアラビアという潜在的な敵対国、ライヴァル国を抱えている。中国の仲介によって、イランはサウジアラビアとの関係を改善した。そうなると、イスラエルに集中することができる。イスラエルは軍事面、そして、情報・諜報面において、イランを凌駕している。アメリカの軍事支援を受けており、イスラエルが有利な立場にあってもおかしくない。しかし、実際はそうではない。イスラエルは狭小な国土に少ない人口を支えるのが精一杯だ。アメリカの支援がなければ厳しい。現在のような強硬姿勢をいつまで続けられるのかは不透明だ。ロシアとしては自分たちを高く売るために、イスラエルが弱体となるのを待っているように見える。イスラエルが強硬な姿勢を取る極右勢力とアメリカのために沈んでしまうのを選ぶかどうかは注目される。それは、日本にも当てはまる構図だからだ。

(貼り付けはじめ)

ロシアが今回のイスラエル・イラン紛争に介入しない理由(Why Russia Is Sitting Out This Round of the Israel-Iran Conflict)

-ウラジーミル・プーティン大統領はイランへの依存度を低下させつつあり、その中で、彼はイランの地域ライヴァル諸国との関係維持を目指している。

ディミタール・ベチェフ筆

『フォーリン・ポリシー』誌

2025年6月25日

https://foreignpolicy.com/2025/06/25/russia-putin-iran-israel-nuclear-diplomacy/

10年前、ロシアは中東で最高の時を持っているように見えた。しかし、現在の視点から見ると、その瞬間は紛れもなく一時的なものに過ぎない。モスクワは2024年12月にシリアのバシャール・アサド大統領の失脚を阻止するために介入することはなかった。これは多くの人々を驚かせた。現在、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は、イスラエルとイランの対立において中立的な姿勢を装い、テヘランへの具体的な支援ではなく、和平仲介者(a peacemaker)としての役割を果たすことを申し出ている。

プーティン大統領のそうした決断は、弱さによってなされている。窮地に陥った時、ロシアにはパウア・ポリティックス(power politics)に介入する意志も能力もない。しかし、距離を置くという決断は、モスクワの相反する動機(Moscow’s conflicting motives)も反映している。ロシアの利益は、イランの敵対者たちや競争者たち(Iran’s adversaries and competitors)を含む地域のプレイヤーたちとの複雑な関係をうまく切り抜けることを求めている。

2022年のウクライナ侵攻後、ロシアはイランとの関係を劇的に改善させた。その動機は実利的なもので、モスクワはテヘランを、テヘランがモスクワを必要とするよりも。はるかに必要としていた。イランはロシアにシャヘド・ドローンと関連技術を提供し、ロシアはこれらを用いてウクライナの都市やインフラを攻撃した。また、イランは西側諸国の制裁を回避するための実証済みのノウハウを共有し、モスクワの石油タンカー船団「ゴースト・フリート(ghost fleet)」がイランの経験から学ぶことを可能にした。両国はまた、ユーラシア大陸を横断する南北貿易ルートを強化するため、鉄道と港湾インフラの強化にも着手した。

ロシアはテヘランとの関係から間接的な利益も得ている。イランによるハマスとヒズボラへの支援は、2023年10月7日のイスラエルへの攻撃と、それに続く地域紛争(regional conflict)への道を開いた。中東における暴力の激化は、ウクライナから国際社会の注目を逸らし、西側諸国と南半球の大部分の間に確執(bad blood between the West and large parts of the global south)を生み出し、重要な大統領選挙を前にアメリカの国内政治に緊張をもたらした。さらに、中東の不安定化は通常、原油価格の上昇を招くが、これはロシア連邦の財政にとって常に好材料となる。

しかし、ロシアはイランへの支援に報いる形で対応した。10月7日の直後、ロシアの対応は、本来であれば考えられなかったほど反イスラエル連合寄りになった。ハマスの代表団は10月下旬にモスクワに到着し、表向きはロシア国籍を持つ人質の解放交渉を行った。2024年1月には、フーシ派の代表団がロシアのミハイル・ボグダノフ外務次官と会談した。また、アメリカの情報機関は、ロシアの軍事情報機関であるGRU(参謀本部情報総局)が、紅海を通過する西側諸国の船舶へのイエメン民兵による攻撃を支援しているとの報道を示唆している。

さらに重要なのは、プーティン大統領がイスラエルからの直接攻撃を受けたイランへの支持を表明したことだ。2024年8月にイスラエルの攻撃でハマスの指導者イスマイル・ハニヤが殺害された後、プーティン大統領は最高指導者アリー・ハメネイ師に接触し、自制を促した。そして今回とは異なり、プーティンはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に電話をかけなかった。その後、イスラエルがロシア・ウクライナ戦争で中立を装おうとしていた一方で、モスクワは2025年1月にテヘランと安全保障提携を締結した。

しかし、イランとイスラエルの最近の戦闘に対するロシアの反応は、ロシアとテヘランの友好関係が決して「無制限(no limits)」な類のものではなかったことを示している。第一に、両国の絆を裏付ける文書には、依然として漠然とした希望的観測に満ちた表現が散見される。テヘランとの安全保障パートナーシップに署名してから5カ月が経過したが、ロシアはイスラエルの戦闘機に対抗するための防空ミサイルシステム(air defense missile systems)といった、意味のある軍事支援(meaningful military assistance)を一切提供していない。テヘランが2023年に購入した最新鋭のSu-35戦闘機はまだ移管されておらず、イランは1970年代に購入したアメリカ製の航空機に頼らざるを得ない状況にある。

モスクワの姿勢は、イランに対するより根深い、相反する反映している。確かに、プーティン大統領はイスラエルの攻撃を非難し、アメリカが自らの攻撃によって「世界を非常に危険な状況に陥らせている(bringing the world to a very dangerous point)」と非難している。そして、介入主義的な行動を断固として拒否してきたクレムリンにとって、テヘランの政権交代の可能性は真に憂慮すべき事態である。しかし一方で、2010年にモスクワが国連安全保障理事会によるイランへの制裁を支持したことからもわかるように、核保有国であるイランはロシアにとっても利益にならない。同盟国としてのテヘランの有用性も低下しつつある。何しろ、シャヘド・ドローンは現在、ジェットエンジンやスターリンク対応のナビゲーション・コンポーネントといった主要なアップグレイドが施された状態で、ロシアで製造されている。

ロシアがイスラエル・イラン戦争に事実上介入しないという決定は、近年のイランとの関係を考えると意外に思えるかもしれないが、これはこの地域におけるモスクワのこれまでの行動と合致する。2015年にロシアがシリアに介入して以来、ロシア軍と対空ミサイルは、イスラエルがヒズボラをはじめとするイランの代理勢力を攻撃する間、傍観してきた。2018年9月のイスラエル空襲で、ロシア機がラタキア上空で撃墜されたことは事実だが、これはアサド政権の防空システムが引き起こした事故だった。モスクワの政策は、シリアにおける新たな地位を活用し、トルコ、サウジアラビア、そして程度は低いもののイスラエルを含むイランのライヴァル諸国と交渉することだった。

クレムリンはシリアへの軍派遣という選択において、確かに賭けに出た。しかしその後、外交的に利益を得ようと、比較的バランスの取れたアプローチを練り上げた。モスクワは、イランとイスラエル、アサド大統領とシリア反体制派、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とクルド労働者党(Kurdistan Workers’ Party、PKK)など、地域内のあらゆる利害関係者と交渉することで、地域間の対立を回避しようと努めてきた。戦時中のイランへの傾倒を経て、ロシアは今、この均衡(equilibrium)を取り戻そうとしている。

モスクワがテヘランに対して相反する感情を抱いているとすれば、ロシアの指導部と社会全体はイスラエルに対して愛憎入り混じった関係にあると言えるだろう。モスクワから発信されるプロパガンダは、イスラエルをアメリカの覇権の延長線上にあるかのように描くことが多い。さらに、反ユダヤ主義は東欧全域、そしてもちろんロシアにおいても、歴史と社会に深く根付いている。

しかし、こうした態度は、時に隠されながらも、しばしば非常に明白な、根深いイスラエル愛と共存している。多くのロシア人は、イスラエルの強硬な外交政策と、国際的な非難を無視して軍事力を行使し、既成事実を作り上げようとする姿勢を称賛している。テレグラム上のロシアの超国家主義者たちは、イスラエルの軍事力を称賛し、腐敗したエリート層がいなければ、ロシアも同等の力を発揮できたはずだと主張している。最後に、イスラエルに居住する大規模なロシア系移民の存在は、両国の間に強い絆を生み出している。

最近、プーティン大統領は「旧ソ連とロシア連邦からは約200万人がイスラエルに移り住んでいる。今日、イスラエルはほぼロシア語圏の国だ」と宣言した。このレトリックは誇張かもしれないが、その感情は実際的でもある。

モスクワがテヘランに対して相反する感情を抱いているとすれば、ロシアの指導部と社会全体はイスラエルに対して愛憎入り混じった関係にあると言えるだろう。モスクワから発信されるプロパガンダは、イスラエルをアメリカの覇権の延長(an extension of the U.S. hegemony)として描くことが多い。さらに、反ユダヤ主義(antisemitism)は東欧全域、そしてもちろんロシアにおいても、歴史と社会に深く根付いている。

しかし、こうした態度は、時に隠され、時に非常に明白な、根深いイスラエル愛と共存している。多くのロシア人は、イスラエルの強硬な外交政策と、国際的な非難を無視して既成事実を作り上げるために軍事力を行使する傾向を称賛している。テレグラム上のロシアの超国家主義者たちは、イスラエルの軍事力を称賛し、腐敗したエリート層がいなければロシアも同等の力を発揮できたはずだと主張している。さらに、イスラエルに多数のロシア系移民が存在することが、両国の間に強い絆を生み出しているとも主張している。

最近、プーティン大統領は「旧ソ連とロシア連邦出身の約200万人がイスラエルに移り住んでいる。今日、イスラエルはほぼロシア語圏の国だ」と宣言した。このレトリックは誇張かもしれないが、その感情は実際的でもある。

ロシアの行動は、結局のところ、中東における自らの影響力の限界を反映している。ワシントンを羨ましがるロシアだが、地域秩序の要としてアメリカに取って代わる立場にはない。また、地域諸国ほどリスクを負うことも決してないだろう。ロシアの最優先事項は、ウクライナを従属させ、旧ソ連圏における優位性を維持することにある。そのため、ロシアは中東において機会主義的(opportunistic)であると同時に、ある程度リスク回避的(risk averse)でもある。

結果として、ロシアはイスラエルを含む全ての地域プレイヤーと引き続きビジネスを行うだろう。イラン指導部はこのことを痛感している。

※ディミタール・ベチェフ:オックスフォード大学セント・アントニーズ・カレッジ・ヨーロッパ研究センター・ダーレンドルフ・プログラム部長。著書に『ライヴァル勢力:南東ヨーロッパにおけるロシア(Rival Power: Russia in Southeast Europe)』(イェール大学出版局、2017年)がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 パレスティナの飾築を実効支配しているハマスによって2023年10月7日にイスラエルが攻撃を受け、それに対する報復でガザ地区に大規模な攻撃が実行されている。イスラエルとイランの間でのミサイル攻撃の応酬もあった。その後、一時的な停戦が実現したが、再び状況は悪化している。ガザ地区では生活環境は悪化し、攻撃は続いている。イスラエルはイラン国内を空爆し、核開発関連施設を破壊し、イラン革命防衛隊の司令官と参謀総長などの最高幹部を殺害している。ベンヤミン・ネタニヤフ首相はイスラエルの極右勢力に支えられているが、国民の支持率は低下している。そうした中で、起死回生の策がイランに対する空爆だった。

 イスラエルは国際社会を信頼せず、自国の防衛のためにはあらゆる犠牲を強いる。こうした点では北朝鮮に類似している。それは、あまりにも排他的な、選民思想的な原理が国家にあるからだろうと私は考えている。

 ガザ地区に関して言えば、私たちは歴史の授業で習ったゲットー(ghetto)を類推することができる。中世以来のヨーロッパの各都市に存在した、ユダヤ人たちが強制的に居住させられた地域である。ナチスドイツの侵略によって、各国のゲットーには厳しい抑圧がなされた。そうした中で、1943年にワルシャワ・ゲットー蜂起(Warsaw Ghetto Uprising)が起きたが、ナチスドイツによって鎮圧されたが、その方法は過酷なものだった。私たちは、ガザ地区の現状からワルシャワのゲットーを思い起こす。ユダヤ人が建国したイスラエルが、ゲットーの惨劇を繰り返す。「歴史は繰り返す(History repeats itself)」という言葉があるが、これはあまりにも皮肉なことである。人権や自由といった価値観を世界に拡大することを標榜するアメリカをはじめとする西側諸国は今回の事態に対してあまりにも無力だ。それどころか、ガザ地区の状況に対する批判を抑圧している。

 現在のガザ地区の状況は西側諸国の偽善と国際政治の野蛮さを改めて明らかにしている。そして、人間の愚かさを暴露している。
(貼り付けはじめ)
ガザ地区がいかにして西洋の神話を打ち砕いたか(How Gaza Shattered the West’s Mythology)

-この戦争は、第二次世界大戦後の共通の人間性に対する幻想(post-World War II illusions of a common humanity)を露呈させた。

パンカジ・ミシュラ筆

2025年2月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/02/07/pankaj-mishra-world-after-gaza-book-israel-war-global-order-history/

1943年4月19日、ワルシャワのゲットー(Ghetto)にいた数百人の若いユダヤ人が、入手できる限りの武器を手にナチスの迫害者たちに反撃した。ゲットーにいたほとんどのユダヤ人は、すでに絶滅収容所(extermination camps)に強制送還されていた。彼らの指導者の1人であったマレク・エデルマンが回想しているように、闘士たちはいくらかの尊厳(dignity)を取り戻そうとしていた。彼は次のように書き残している。「最終的には、私たちの番が来たときに、私たちを虐殺させないということだった。死に方を選ぶだけのことだった」。

絶望的な数週間が過ぎ、抵抗者たちは圧倒され、そのほとんどは殺害された。蜂起の最終日に生き残った者の中には、ナチスがガスを注入した司令部地下壕で自殺した者たちもいた。下水管を通って脱出できたのはほんの数人だけだった。その後、ドイツ兵はゲットーをブロックごとに焼き払い、火炎放射器を使って生存者たちを煙で追い出した。

ポーランドの詩人チェスワフ・ミウォシュは後に、「美しい静かな夜、ワルシャワ郊外の田舎の夜にゲットーから悲鳴が聞こえた」と回想している。

「この悲鳴には鳥肌(goose pimples)が立った。何千人もの人々が殺害される時の悲鳴だった。その悲鳴は、焚き火の赤々とした輝きの中から、無関心な星々の下から、都市の静寂な空間を通り抜け、植物が労を惜しまず酸素を放出し、空気が芳香を放ち、人が生きていてよかったと感じる庭園の慈悲深い静寂の中に入っていった。この夜の平和には特に残酷なものがあり、その美しさと人間の罪が同時に心を打った。私たちは互いの目を見なかった」。

占領下のワルシャワでミロシュが書いた詩「カンポ・デイ・フィオーリ」は、ゲットーの壁の横にあるメリーゴーランドを想起させる。メリーゴーランドに乗る人たちは、遺体の煙の中を空に向かって進み、その陽気な曲が苦悩と絶望の叫びをかき消す。カリフォルニア州バークレーに住んでいたミロシュは、アメリカ軍が何十万人ものヴェトナム人を空爆し、殺害している間、その残虐行為(atrocity)をアドルフ・ヒトラーやヨシフ・スターリンの犯罪と比較していた。「もし私たちが同情することができ、同時に無力であるならば、私たちは絶望的な憤りの中で生きているのだ(If we are capable of compassion and at the same time are powerless, then we live in a state of desperate exasperation)」とミロシュは書いている。

イスラエルによるガザ地区殲滅(annihilation of Gaza)は、西側民主政体諸国によって提供され、何百万もの人々にこの精神的試練(psychic ordeal)を何カ月も与えた。政治的悪(political evil,)の行為の自発的目撃者である彼らは、時折、生きていることは良いことだと考えることを自分自身に許しながら、イスラエルによって爆撃された別の学校で娘が焼け死ぬのを見る母親の悲鳴を聞いた。

ホロコースト(shoah)は数世代にわたるユダヤ人に傷跡を残した。1948年、ユダヤ系イスラエル人は生死を分ける問題として国民国家の誕生(birth of their nation state)を経験し、その後、1967年と1973年にも、アラブの敵による絶滅論のレトリックの中で再び経験した。ヨーロッパのユダヤ人がユダヤ人であるという理由だけでほぼ完全に消滅したという知識とともに育った多くのユダヤ人にとって、世界は脆弱(fragile)に見えざるを得ない。その中でも、2023年10月7日にイスラエルでハマスや他のパレスティナグループによって行われた虐殺と人質事件は、ホロコースト再来への恐怖を再燃させた。

しかし、歴史上最も狂信的なイスラエルの指導者たちが、蹂躙、死別、恐怖という遍在する感覚(an omnipresent sense of violation, bereavement, and horror)を利用することに躊躇しないことは、最初から明らかだった。イスラエルの指導者たちは、ハマスに対する自衛の権利を主張したが、ホロコーストの主要な歴史家であるオメル・バルトフが2024年8月に認めたように、彼らは最初から「ガザ地区全体を居住不可能にし、その住民を衰弱させて、死に絶えるか、その領土から逃れるためにあらゆる可能な選択肢を模索するようにする(to make the entire Gaza Strip uninhabitable, and to debilitate its population to such a degree that it would either die out or seek all possible options to flee the territory)」ことを目指したのである。こうして10月7日以降、何十億もの人々がガザ地区に対する異常な猛攻撃を目の当たりにした。その犠牲者たちは、ハーグの国際司法裁判所(the International Court of Justice in The Hague)で南アフリカを代表して弁論したアイルランドの弁護士ブリネ・ニ・グラレイに言わせれば、「世界が何かしてくれるかもしれないという絶望的な、今のところむなしい希望のために、自分たちの破壊をリアルタイムで放送していた」のである。

世界は、より特定すれば西側は何もしなかった。ワルシャワ・ゲットーの壁の向こうで、マレク・エデルマンは「世界の誰も何も気づかない(nobody in the world would notice a thing)」ことを「大変に恐れて(terribly afraid)」いた。ガザ地区ではそのようなことはなく、犠牲者は処刑される数時間前にデジタルメディアで自分の死を予言し、殺人犯はTikTokで自分たちの行為をさかんに流した。アメリカやイギリスの指導者たちが国際刑事裁判所や国際司法裁判所(he International Criminal Court and the International Court of Justice)を攻撃したり、『ニューヨーク・タイムズ』紙の編集者が社内メモで、「難民キャンプ(refugee camps)」、「占領地(occupied territory)」、「民族浄化(ethnic cleansing)」という用語を避けるようスタッフに指示したりと、西側の軍事的・文化的ヘゲモニー(the West’s military and cultural hegemony)の道具によって、ガザ地区のライブストリーミングによる情報発信は日々、見えないように、読めないようにされていった。

毎日が、自分たちが生活している間に、何百人もの普通の人々が殺され、あるいは自分たちの子どもが殺されるのを目撃させられているという意識に毒されるようになった。ガザ地区にいる人々、しばしば有名な作家やジャーナリストからの、自分や自分の愛する人が殺されようとしているという警告や、その後に続く殺害の知らせは、肉体的にも政治的にも無力であるという屈辱をより募らせた。無力な暗示された罪の意識に駆られ、ジョー・バイデン米大統領の顔をスキャンして慈悲の兆し、流血を終わらせる兆しを探そうとした人々は、不気味なほど滑らかな硬さを発見した。あれやこれやの国連決議、人道支援NGOの必死の訴え、ハーグの陪審員たちによる厳罰、そして土壇場でのバイデンの大統領候補交代によって喚起された正義の希望は残酷なまでに打ち砕かれた。

2024年末までには、ガザ地区の虐殺の現場から遠く離れた場所に住む多くの人々が、悲惨と失敗、苦悩と疲労の壮大な風景に引きずり込まれたことを、遠くからではあるが感じていた。これは、ただ傍観する者にとっては大げさな感情的負担に思えるかもしれない。しかし、ピカソが空からの攻撃で殺されながら叫ぶ馬と人間を描いた「ゲルニカ(Guernica)」を発表した際に引き起こされた衝撃と憤りは、ガザ地区で撮影された、父親が首のない我が子の遺体を抱く一枚の写真の影響だった。

戦争はやがて過去のものとなり、積み重なった恐怖の山は時とともに平らになるかもしれない。だが、ガザ地区では、負傷した身体、孤児となった子供たち、瓦礫の町、家を失った人々、そして、あちこちに漂う大量の死別意識と存在の中に、この惨劇の痕跡が何十年も残るだろう。そして、狭い海岸地帯で何万人もの人々が殺害され、重傷を負うのを遠くから無力に見守り、権力者の拍手喝采や無関心を目撃した人々は、心の傷と、何年も消えないトラウマを抱えて生きていくことになるだろう。

イスラエルの暴力を、正当な自衛なのか、厳しい都市環境での正当な戦争なのか、民族浄化や人道に対する罪なのか、という論争は決して決着がつかないだろう。しかし、イスラエルの一連の道徳的、法的違反行為の中に、究極の残虐行為の兆候を見出すことは難しくない。イスラエルの指導者によるガザ地区撲滅に向けた率直で決まりきった決意、ガザ地区でのイスラエル国防軍(Israel Defense Forces、IDF)による報復が不十分であることを国民が嘆くことで暗黙のうちに容認していること、犠牲者を和解不可能な悪と同一視していること、犠牲者のほとんどが全くの無実で、その多くが女性や子供だったという事実、第二次世界大戦での連合軍によるドイツ爆撃よりも比例して大きい破壊の規模、ガザ地区全体の集団墓地を埋め尽くす殺戮のペース、そしてその方法が不吉なほど非人格的(人工知能アルゴリズムに依存)かつ個人的(狙撃手が子供の頭を2発撃ったという報告が多い)であること。食料や医薬品へのアクセスの拒否、裸の囚人の肛門に熱い金属の棒が挿入されること、学校、大学、博物館、教会、モスク、さらには墓地の破壊、死んだり逃げたりするパレスティナ女性の下着を着て踊るイスラエル国防軍兵士に体現された悪の幼稚さ(puerility of evil)、イスラエルにおけるそのようなTikTokインフォテインメント(訳者註:情報[information]と娯楽[entertainment]の合成語)の人気、そして自国民の絶滅を記録していたガザ地区のジャーナリストの慎重な処刑。

もちろん、産業規模になった虐殺に伴う無慈悲さは前例がないわけではない。ここ数十年、ホロコースト(the Shoah)は人類の悪の基準を定めてきた。人々がそれを悪と認識し、反ユダヤ主義(antisemitism)と戦うために全力を尽くすと約束する程度は、西洋では彼らの文明の尺度となっている。しかし、ヨーロッパのユダヤ人が抹殺された年月の間に、多くの良心が歪められたり、麻痺したりした。非ユダヤ人のヨーロッパの多くは、しばしば熱心に、ナチスのユダヤ人攻撃に加わり、彼らの大量殺戮のニューズでさえ、西洋、特にアメリカでは懐疑的かつ無関心に迎えられた。ジョージ・オーウェルは、1944年2月になっても、ユダヤ人に対する残虐行為の報告は「鉄のヘルメットから豆が落ちるように(like peas off a steel helmet)」人々の意識から跳ね返ったと記録している。西側諸国の指導者たちは、ナチスの犯罪が明らかになってから何年もの間、大量のユダヤ人難民の受け入れを拒否した。その後、ユダヤ人の苦しみは無視され、抑圧された。一方、西ドイツは、ナチス化からほど遠いものの、ソ連共産主義に対する冷戦に加わりながら、西側諸国から安易な赦免(cheap absolution)を受けた。

記憶に残る中で起きたこれらの出来事は、宗教的伝統(religious traditions)と世俗的な啓蒙主義(the secular Enlightenment)の両方の基本的前提、つまり人間は根本的に「道徳的(moral)」な性質を持っているという前提を揺るがした。人間には道徳的性質がないという、腐った疑念が今や広まっている。冷酷さ、臆病さ、検閲の体制下での死や切断を間近で目撃した人々はさらに多く、あらゆることが起こり得ること、過去の残虐行為を覚えていても現在それが繰り返されない保証はないこと、そして国際法と道徳の基盤がまったく安全ではないことを衝撃とともに認識している。

近年、世界では多くの出来事が起こっている。それらは、自然の大災害、財政破綻、政治的激変、世界的パンデミック、征服と復讐の戦争などである。しかし、ガザ地区に匹敵する災害はない。これほど耐え難い悲しみ、困惑、良心の呵責(grief, perplexity, and bad conscience)を私たちに残したものはない。これほど、私たちの間での、情熱と憤りの欠如、視野の狭さ、思考の弱さ(lack of passion and indignation, narrowness of outlook, and feebleness of thought)を恥ずべき形で証明したものはない。西洋の若者の世代全体が、政治とジャーナリズムの長老たちの言葉と行動(そして無作為)によって道徳的に大人に成長させられ、世界で最も豊かで最も強力な民主政体国家の支援を受けた残虐行為を、ほぼ独力で認識せざるを得なくなった。

パレスティナ人に対するバイデンの頑固な悪意と残酷さは、西洋の政治家やジャーナリストたちが提示した多くのぞっとするような謎の1つに過ぎない。西側諸国の指導者たちにとって、10月7日の戦争犯罪の犯人を追及し、裁きを受けさせる必要性を認めながらも、イスラエルの過激派政権(an extremist regime in Israel)への無条件の支援を差し控えることは簡単だっただろう。それなのに、なぜバイデンは存在しない残虐行為のヴィデオを見たと繰り返し主張したのか? 元人権弁護士の英首相キール・スターマーは、イスラエルにはパレスティナ人から電力と水を差し控え、停戦(cease-fire)を求める労働党員を処罰する「権利がある(has the right)」と主張したのはなぜか? なぜ、西洋啓蒙主義(the Western Enlightenment)の雄弁な擁護者であるユルゲン・ハーバーマスは、自称民族浄化主義者たち(avowed ethnic cleansers)の擁護に飛びついたのか?

アメリカで最も古い定期刊行物の1つである『ジ・アトランティック』誌が、ガザ地区で約8000人の子供たちが殺害された後、「子供たちを合法的に殺すことは可能だ(it is possible to kill children legally)」と主張する記事を掲載したのはどうしてか? イスラエルの残虐行為を報道する際に西側主要メディアが受動態に頼り、誰が誰に、どのような状況下で何を行っているのかが分かりにくくなっているのはなぜか(「ダウン症のガザ地区在住男性が孤独死(The lonely death of Gaza man with Down’s syndrome)」というのが、障害のあるパレスティナ人男性にイスラエル兵が攻撃犬を放ったというBBCの報道の見出しだった)? なぜアメリカの億万長者たちが大学キャンパスでの抗議活動者への容赦ない弾圧を促進するのに協力したのか? 親イスラエルの合意に反抗しているように見えるという理由で、学者やジャーナリストたちが次々と解雇され、芸術家や思想家がプラットフォームを追われ、若者が就職を妨げられたのはなぜか? なぜ西側諸国は、ウクライナ人を悪意ある攻撃から守り保護しながら、あからさまにパレスティナ人を人間の義務と責任の共同体(the community of human obligation and responsibility)から排除したのか?

これらの疑問にどう対処するかに関わらず、私たちは直面している現象を正面から見つめざるを得ない。それは、西側の民主政治体制国家が共同で引き起こした大惨事(a catastrophe jointly inflicted by Western democracies)であり、1945年のファシズムの敗北後に生まれた、人権の尊重と最低限の法的・政治的規範に支えられた共通の人間性という必要な幻想(the necessary illusion that emerged after the defeat of fascism in 1945 of a common humanity underpinned by respect for human rights and a minimum of legal and political norms)を破壊したのだ。

※パンカジ・ミシュラ:インドのエッセイスト、小説家。『怒りの時代: 現在の歴史(Age of Anger: A History of the Present)』、『帝国の廃墟から:アジアを再構築した知識人たち(From the Ruins of Empire: The Intellectuals Who Remade Asia)』など、その他数冊のノンフィクションおよびフィクションの著書がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 昨年10月から始まった、イスラエル・ハマス紛争は8カ月を経過し、終息の兆しを見せていない。イスラエルは、ハマスの殲滅と人質奪還のために、ガザ地区での軍事作戦を遂行中であるが、パレスティナの民間人の犠牲者が3万7000人を超え、停戦に向けての国際的な圧力が高まっている。

 昨年のハマスの攻撃から、イスラエルでは中道派も入っての戦時内閣が形成され、紛争へ対処してきた。中道派野党「国民の団結」から、代表のベニー・ガンツ前国防相が閣僚として、ガディ・アイゼンコット元参謀総長がオブザーバーとして、入閣した。残りの4名はベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる与党リクードのメンバーである。ガンツとアイゼンコットは、イスラエル国防軍の参謀総長経験者である。国家団結が内閣から離脱ということで、挙国体制の戦時内閣が形成できないことから、戦時内閣の解散ということになった。ネタニヤフ内閣自体は、右派、極右派の連立政権となっている。
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 ガンツは、ネタニヤフ内閣には、ガザにおける戦争戦略の欠如を指摘し、「真の勝利に向けて前進させる」ことを阻害しているとしてネタニヤフを非難した。そして、速やかなクネセト(議会)選挙の実施を求めた。これは、イスラエル国内の、戦争に対する不満や、ネタニヤフ首相の腐敗に対する反感を反映したものだ。

 ネタニヤフ首相は、自身がスキャンダルを抱える身であり、戦争が終了する、選挙に負けるということになれば、逮捕・訴追を受ける可能性が高い。そうした面からも、戦争が継続することは彼個人にとって利益となる。国際社会は、事態のエスカレーションを望んでいない。イスラエルを手厚く支援しているアメリカも停戦を求めている。そうした中で、ネタニヤフは、極右派に更に依存し、戦争を進めていくことになる。

ガンツは、今年5月にレバノン国境の安全について発言している。イスラエルはガザ地区でのハマスの掃討作戦を行い、北部のレバノン国境では、ヒズボラとの戦いを続けている。ハマスもヒズボラもイランからの支援を受けているが、ヒズボラの方が武器のレヴェルが高く、かつ、練度も高い。イスラエルは両組織よりも軍事力としては圧倒的に上であるが、二正面作戦を長期間にわたって継続することで、イスラエル国内では、経済的、社会的な損失を被ることになる。
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 イスラエル・ハマス紛争については、やはりアメリカが圧力を強めての停戦、人道支援の実現ということが重要だ。中道派離脱による戦時内閣の解散は、イスラエルの戦争継続に影響を与えることになるだろう。アメリカとイスラエルは、何が自分たちの国益に適うことなのかを冷静に計算し、判断するべき時に来ている。

(貼り付けはじめ)

●「イスラエル首相、戦時内閣を解散 主要閣僚辞任で「必要性なくなった」と」

2024年6月18日 BBC NEWS Japan

https://www.bbc.com/japanese/articles/cnllv42qn9zo

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は16日、パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラム武装組織ハマスとの戦闘を指揮するために昨年10月に発足させた戦時内閣を解散した。中道派のベニー・ガンツ前国防相とその盟友のガディ・アイゼンコット元参謀総長が、6人からなる戦時内閣を辞任したことを受けてのもの。

政府報道官は17日、ガザでのハマスとの戦闘については既存の安全保障内閣と、それより大規模な内閣全体で決定していくと説明した。

ガンツ前国防相が9日に、ガザにおける戦争戦略の欠如を理由に戦時閣僚ポストを辞任して以降、政権閣僚を務める複数の極右政党幹部が後任として戦時内閣入りすることを求めていた。

戦時内閣を解散することでネタニヤフ首相は、連立政権に参加する極右政党や同盟国とのやっかいな状況を避けることになる。

イスラエル国防軍(IDF)の報道官は、指揮系統への影響はないとしている。

ガンツ氏とアイゼンコット氏はいずれもIDFの参謀長を務めた退役将軍。2人は昨年10月の開戦から数日後、ネタニヤフ氏率いる右派連合との挙国一致政府に加わった。

ガンツ氏は辞任の際、ネタニヤフ氏が「我々が真の勝利へ近づくことを妨げている」と述べた。

ガンツ氏の辞任発表直後、極右政党を率いるイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相は、自分を戦時内閣に参加させるよう要求した。

■ガンツ前国防相辞任で戦時内閣「必要なくなった」

ネタニヤフ氏は16日夜、新たなメンバーを迎え入れるのではなく、戦時内閣を解散することに決めたと閣僚に伝えた。

首相は「戦時内閣はベニー・ガンツの要請による連立協定にもとづいたものだった。ガンツが同内閣を去った今、この政府の追加部局はもう必要ない」と述べたと、ダヴド・メンサー政府報道官は17日の定例会見で述べた。

また、「安全保障内閣は、内閣全体とともに、決定を下す権限を国から与えられている」と付け加えた。

イスラエル紙ハアレツは、これまで戦争内閣が議題にしてきた問題のいくつかは、安全保障内閣が担当することになるだろうと報じた。同内閣はベン=グヴィル氏や極右のベザレル・スモトリッチ財務相ら14人で構成される。

同紙によると、センシティブな決定は「より小規模な協議の場」で扱われることになる。そこにはヨアヴ・ガラント国防相やロン・デルメル戦略担当相、超正統派政党シャス党のアリエ・デリ党首が含まれる見込み。この3人は戦時内閣に名を連ねていた。

■IDFの作戦に影響なしと、政府と対立も

IDFのダニエル・ハガリ報道官は17日、このような動きがIDFの作戦に影響を与えることはないと主張した。

「閣僚が交代し、方法が変更される。我々には階層というものがあり、指揮系統を知っている。我々は指揮系統に従って動いている。これは民主主義だ」

ハマスは昨年10月7日、イスラエル南部に前代未聞の攻撃を仕掛けた。これを受け、IDFはハマス壊滅を掲げてガザでの作戦を開始した。ハマス運営のガザ保健省は、同地区で3万7340人以上が死亡したとしている。

イスラエル政府内ではこの1日の間に、緊張が増している様子。IDFはガザへの人道支援物資の搬送を増やすため、ガザ南部ラファ近郊で日中の「軍事活動の戦術的一時停止」を導入する決定を下したが、ネタニヤフ氏と極右閣僚たちはこれを批判した。

この軍事活動の一時停止は、ラファの南東にあるイスラエル支配下のケレム・シャローム検問所から支援物資を集め、ガザを南北に走る主要ルートまで安全に輸送できるようにするもの。イスラエルが先月にラファでの作戦を開始して以降、同検問所で物資が滞留している。

しかし、ベン=グヴィル氏はこれは愚かな方針だと批判。ネタニヤフ氏は、「我々は軍隊を持つ国であって、国を持つ軍隊ではない」と述べたと、イスラエルメディアは報じた。

IDFは人道支援が確実にガザに届くよう、政治指導者たちの命令を遂行したとしている。

また、活動の一時停止はガザ南部での戦闘停止を意味するものではないとしており、現地では何が起きているのか混乱が生じている。

ガザで最大の人道支援組織、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、17日時点もラファや南部の他地区で戦闘が続き、「作戦上はまだ何も変わっていない」と報告している。

こうした中、IDFは部隊が「ラファで、情報に基づいて標的を絞った作戦を続けている」とした。また、ラファのタル・アルスルタン地区では複数の武器を発見したほか、爆発物が仕掛けられた建造物を攻撃し、「数人のテロリスト」を排除したという。

UNRWA推計では、ラファには今も6万5000人が避難している。ハマス戦闘員の根絶とパレスチナの武将集団が使用するインフラ解体のため「限定的な」作戦とIDFが呼ぶものを開始する以前は、この街には140万人が避難していた。

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ガザ紛争戦時内閣の解散でイスラエルの分極化が進む(Israel grows more polarized as Gaza wartime Cabinet dissolves)

ブラッド・ドレス筆

2024年6月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/4728638-gaza-war-israel-cabinet/

今週の戦時内閣(wartime Cabinet)の正式な消滅は、ガザでの紛争をめぐってイスラエルがいかに分極化(polarized)しているかを明らかにし、かつては団結していた連合が現在、紛争の方向性(conflict’s direction)、人質の返還(return of hostages)、増大するヒズボラの脅威(growing threat from Hezbollah)をめぐって争っている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が率いる内閣から、野党指導者ベニー・ガンツが退いたことで、イスラエルの指導者であるネタニヤフ首相は、極右政党の同盟者たちへの依存度を高めることになる。それによって、人質解放と停戦(cease-fire)に向けた合意形成に向けた取り組みが複雑になる可能性がある。

世界的な防衛情報会社「モザイク(MOSAIC)」社の最高経営責任者(CEO)であるトニー・シエナは、ガンツの「穏健な影響力(moderating influence)」がなければ停戦と人質解放の合意形成の可能性は低いと述べ、ネタニヤフ首相がガザ地区で積極的な行動に出る可能性が更に高まるかもしれないと付け加えた。

シエナは、ネタニヤフ首相の同盟者であるベザレル・スモトリッチ財務相とイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相の名前を挙げている。彼らは、最近、ガザへの人道支援を促進するためにイスラエル軍が日中に戦術的一時停止を行っていることに抗議した。

シエナは次のように語った。「彼らが一時停止を批判したという事実は、ネタニヤフ首相が、より大胆になることで、この状況が今後どうなるかを示している。それは彼に自分の力を再確認する機会を与える」。

ガザ地区には、約120人のイスラエル人の人質が残っているが、何人が生存し、ハマスに拘束されているのかは不明だ。

イスラエルは、数千人のハマスの戦闘員を殺害したと主張しているが、過激派組織ハマスは、イスラエルが以前に掃討した地域で再び勢力を拡大し続けている。イスラエル軍がガザ地区南部の都市ラファで最後に残ったハマスの各大隊と交戦しており、紛争は、ほぼ9カ月を経て、変曲点(inflection point)に達しつつある。しかしイスラエル政府高官たちは、紛争は今年いっぱい続く可能性があると述べている。

イスラエルでは戦争に対する不満が高まっており、イェルサレムにあるネタニヤフ首相の自宅近くで、月曜日の夜にデモが行われ、抗議活動参加者たちが大挙して不満を表明した。

不満を抱いたイスラエルの抗議活動参加者たちは再選挙を要求しており、ガンツとその同盟者たちもこれを推進している。しかしネタニヤフ首相は、それは戦争から注意を逸らす行為(distraction from the war)に過ぎないと言って、これらの呼びかけを拒否した。

大西洋評議会のミレニアムフェローであるアルプ・セビムリソイは、有権者が戦争に対処するための代替案を模索しているため、イスラエルでは「選挙が迫っている(election is looming)」と述べた。

セビムリソイは、「ベニー・ガンツや他の多くの人が戦争全般を支持しているとしても、少なくとも言論を通じて、戦争に向けた代替ロードマップの準備を始めたいという願望は多くの人にある」と述べた。

ガザ地区が更なる人道危機に陥る中、イスラエルは、国際的に、戦争を終わらせるよう求める更なる圧力に直面している。ガザでは3万7000人以上が死亡し、パレスティナ人は食料や水などの基本的必需品にアクセスできない。

ガザ戦争に関して、イスラエルに対する大量虐殺の告発を審理している国連の最高裁判所である国際司法裁判所(International Court of Justice)は、イスラエルに対しラファでの攻撃を停止するよう求めた。そして、独立の国際刑事裁判所は、ガザ紛争に関連した戦争犯罪の容疑で、ネタニヤフ首相とイスラエル国防相ヨアヴ・ガラント、ハマスの幹部らに対する逮捕状を発行した。

戦時内閣では、ガンツ、ネタニヤフ、ガラントの3人のメンバーの間に団結が投影されていた。 

また、ネタニヤフ首相とガンツのような対立する人物たちは、ガザ地区での紛争や、イランの支援を受けた過激派・政治組織ヒズボラがイスラエルにロケット弾や大砲を撃ち続けるレバノンとの国境での紛争をめぐり、意思決定のバランスを取ることも可能にしていた。

アメリカ国家安全保障ユダヤ研究所のマイケル・マコフスキー所長兼最高経営責任者(CEO)は、戦時中の内閣の方が「国にとって良かった(better for the country)」と述べた。

マコフスキーは、「イスラエルの自然な分裂状態は、数カ月ぶりに再発しており、これは状況を更に悪化させる可能性が高い。彼らはガザにどのように対処するかについても解決する必要があるのでこれは不幸なことだ」と述べた。

ガンツが戦時中の政策プロセスに関与しなくなったことで、ネタニヤフ首相に対する政治的圧力はより強まる可能性が高い。

中東研究所のイスラエル担当上級研究員ニムロッド・ゴーレンは、内閣とともに危機感と団結の必要性が消滅しており、ガンツはネタニヤフ首相との連携で「本当にチャンスを与えたのだが、成功できなかった」と述べた。

ゴレンは、戦争への不満が高まる中、一部のイスラエル国民はネタニヤフ首相抜きの新たな指導部を求めるだろうと予想した。

ゴレンは、「人々は現状にうんざりしている。人質は戻ってこない。一般的に言って、より多くの兵士が殺されている。南部と北部の状況は何も変化がなく続いている。戦争は長引いており、戦略目標が何なのかは明らかではない」と述べた。

今月初めに、テレビ中継された辞任を表明する声明発表の中で、ガンツは「真の勝利に向けて前進させる」ことを阻害しているとしてネタニヤフを非難した。

今年5月、ガンツは、ネタニヤフが以下のことを実行しない場合には辞任すると記載した最後通告を発した。ガンツが突きつけた条件とは、レバノン国境にいる住む場所を奪われたイスラエル避難民の帰還、人質の解放とハマスの殲滅、サウジアラビアとの国交正常化の道筋をつけること、ガザ地区に政府を樹立することの諸計画を発表するというものだ。

ガンツと同様、ガラントもまた、ネタニヤフ首相のガザ戦後計画について公の場で懸念を表明し、ハマス壊滅への道筋をめぐって首相と激しく議論してきた。

ネタニヤフ首相は、イスラエルがガザ地区に関して、無期限で治安管理し(indefinite security control)、過激派組織ハマスとつながりのないパレスティナ人が沿岸部の領土を統治することを含む、戦後計画の曖昧な概要しか発表していない。

ヒズボラとの紛争に対処するイスラエルの苦闘は、より深い問題にもなりつつある。イスラエルは、レバノン国境での戦闘から逃れた約8万人のイスラエル人避難民の帰還を望んでいる。

ガラントは、ヒズボラの壊滅を主張しているが、アメリカや他の同盟諸国は外交を通じて緊張を和らげようとしており、イスラエルに対してエスカレーションさせないように警告している。ネタニヤフ首相は、2006年にイスラエルとヒズボラとの間で起こった、犠牲を伴う戦争の舞台となったレバノンを攻撃することに前向きではないようだ。

しかしガンツが内閣から退いたことで、ネタニヤフ首相はガラントや、ヒズボラとの全面戦争を望むスモトリッチ財務相やベン=グヴィル国家安全保障相のような極右の同盟者の攻撃を受けやすくなる可能性がある。

大西洋評議会のアルプ・セビムリソイは、ネタニヤフ首相は、レバノン問題で中道寄りにシフトしているとしながらも、イスラエルの指導者がヒズボラを含む未解決の「軍事的目標の多くに取り組む」ことを近いうちに期待すると付け加えた。

セビムリソイは、イスラエルは「前回の紛争で未解決だった問題の解決」を目指しているため、イスラエル国防軍に言及し、「レバノンへのイスラエル軍の対応が見られるだろう」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 イスラエル・ハマス紛争は長期化している。イスラエルはハマスのせん滅と、2023年10月7日に連れ去られた人質の解放を目指している。ハマスはガザ地区での抵抗を続けて、民間人の犠牲者が増えている。ハマスはイスラエルの存在を認めておらず、パレスティナとの二国共存はそもそも彼らの中にはない。イスラエルの右派・強硬派にとっても、二国共存という選択肢は存在しない。二国共存の否定という点では、ベンヤミン・ネタニヤフ首相もハマスも奇妙な一致をしている。パレスティナ穏健派、イスラエル穏健派は二国共存で妥協しているので、いわば、両方の強硬派が暴れているということになる。

 アメリカのジョー・バイデン政権はイスラエルに対して厳しい姿勢を取りつつある。イスラエルに対して、と言うよりも、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に対してという方がより正確だ。アメリカとしては、ガザ地区での報復攻撃を停止し、停戦させたい。しかし、イスラエルは攻撃を停止しようとしない。アメリカ国内では民主党支持が多い若者・学生たちが抗議活動を活発化させており、大統領選挙を控えるバイデン政権としては、イスラエルを抑えたいということになる。国外的にも、イスラエルに対する批判は高まっており、イスラエルを支援しているアメリカに対しても批判がなされている。

今回、紹介する、スティーヴン・M・ウォルトの論稿では、国際関係論のリアリストたちがイスラエルのガザ地区での攻撃に反対しており、その理由について述べている。リアリストたちは戦争の限界や国家の重要性を認識し、イスラエルの戦略は失敗すると結論づけている。イスラエルの行動とアメリカの関与はアメリカの世界的立場を弱め、ロシアや中国の利益を高めている。一方、アメリカは数十億ドルを支援し、他の重要な問題に時間やエネルギーを費やすべきだと指摘されている。

結果として、アメリカのリーダーシップは揺らぎ、中国やロシアの影響力が増している。リアリストは、現在の政策がアメリカの安全や価値観に反するものであり、安全をもたらすには紛争を政治的に解決する必要があると主張している。彼らは、戦略的利益と道徳的志向を同時に追求できる政策を求めており、アメリカとイスラエルが行っていることに疑問を投げかけている。

 アメリカは国益という観点から、戦後の冷戦期から長きにわたり、イスラエル支援を続けてきた。しかし、世界の構造は大転換を迎えつつある。世界の構造が変われば、アメリカの国益も変化する。イスラエル支援が、アメリカの国益に適うかどうか、ということがこれから重要になっていく。

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リアリストたちはガザ地区での戦争に反対する理由(Why Realists Oppose the War in Gaza)

-もし、あなたがリアリズムの姿勢に驚いているのなら、それはリアリズムを本当に理解していないからだ

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年5月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/21/why-realists-oppose-the-war-in-gaza/?tpcc=recirc062921

写真

イスラエル南部のガザ国境付近に陣取る部隊のあるイスラエル兵が、自走砲榴弾砲の砲身に頭を預ける(2023年10月9日)。

一見したところ、外交政策分野のリアリストたちは、イスラエルがガザ地区で行っていることなど、どうでもよいと思っているように見える。確かに人道的災害であり、大量虐殺の可能性もあるが、国際政治を行う上で残忍な行動がそれほど珍しいことだろうか? 中央的な権威のないこの世界では、政府は自分たちが得をし、誰もそれを止めないと考えれば、本気になって攻撃を行うということを、リアリストたちは真っ先に指摘するのではないだろうか? 真珠湾攻撃や911後のアメリカの対応、ウクライナでのロシアの動き、スーダンでの対立勢力の動きを考えてみれば、私の言っていることが理解できるだろう。

しかし、チャス・フリーマン、ジョン・ミアシャイマー、そして、僭越ながら私を含む著名な外交政策リアリストたちは、イスラエルのガザ地区での行動とイスラエルの行動を支持するバイデン政権の姿勢を強く批判している。世界政治に対する、硬派で感傷的でないアプローチの信奉者たちが、突然道徳(morality)について語るのは奇妙ではないか?

いや、そうではない。

こうした混乱の一部は、リアリズムについてのよくある誤解(common misconception)から生じている。つまり、リアリズムの支持者たちは、外交政策の遂行において倫理的考慮(ethical considerations)はほとんど、あるいは全く役割を果たすべきではないと考えている、という誤解である。これは馬鹿げた批判(silly charge)であり、リアリストたちの著書をざっと読むだけでも分かる。ハンス・J・モーゲンソーは、政治的効力(political efficacy)と道徳的原則(moral principles)の間の緊張関係を探求した本を1冊書き、「[政治の]道徳的問題は声を上げて答えを求めている(the moral issues [of politics] raise their voice and demand an answer)」と強調した。E・H・カーは真のリアリストではなかったが、リアリストの古典的著作を一冊書き、政治生活から道徳的配慮を排除することはできないと明言した。ケネス・ウォルツの国際政治に関する著作のほとんど全ては、平和の問題と、それを強化または損なう条件や政策に焦点を当てており、彼は強力な国々が理想主義的な目的を追求するために悪行を犯す傾向(the tendency of powerful states to commit evil acts in the pursuit of idealistic objectives)を繰り返し批判した。そして、ジョージ・ケナン、ウォルター・リップマン、モーゲンソー、ウォルツなどの著名なリアリストたちや、彼らの知識人の後継者たちは、戦略的および道徳的見地から、アメリカが最近選択した戦争の多くに反対した。

全ての人間と同様、リアリズムが世界政治を考える上で役立つと考える私たちも道徳的信念を持っており、そうした原則がより一貫して守られる世界(a world where those principles were observed more consistently)に住みたいと願っている。実際、リアリストたちが国際政治の道徳的側面に関心を持つのは、国家やその他の政治グループがいかに簡単に不道徳な行為を犯すかを認識しているからだ。リアリストたちはガザ地区で起きていることに驚いていない。前述のように、他の多くの国も自国の重大な利益が危険に晒されていると感じたときに恐ろしい行為を行ってきた。しかし、だからといってリアリストたちがイスラエルとアメリカの行為を承認している訳ではない。

ガザ地区での戦争に対するリアリストたちの批判は、軍事力の限界とナショナリズムの重要性(the limits of military power and the importance of nationalism)を認識していることから生じている。彼らは、外国の侵略者たちが武力で他民族を支配・破壊しようとするときに、通常直面する困難を痛感している。だからこそ、イスラエルがガザ地区を爆撃・侵攻して、ハマス壊滅を図ろうとする試みは失敗する運命にあると結論づけたのだ。ハマスがイスラエルの猛攻撃を生き延びようとしていることは益々明らかであり、たとえ生き延びられなかったとしても、パレスティナ人たちが占領され、基本的な政治的権利が否定され、徐々に土地を奪われていく限り、新たな抵抗組織が出現するに違いない。

同様に重要なのは、リアリストたちがイスラエルの行動(およびそれに対するアメリカの共謀[U.S. complicity])に反対するのは、その組み合わせがアメリカの世界的立場を弱めているからだ。ガザ地区での戦争は、アメリカの「ルールに基づく秩序(rules-based order)」への関与が無意味であることを明らかにした。率直に言って、アメリカ政府高官たちがいまだに真顔でその言葉を口にできるとは信じがたい。最近の国連総会(U.N. General Assembly)でのパレスティナへの新たな「権利と特権(rights and privileges)」付与の投票は、賛成143、反対9、棄権25で可決されたが、これはアメリカの孤立(isolation)が深まっていることを如実に示している。停戦(cease-fire)を求める国連安全保障理事会(U.N. Security Council)の決議(resolution)に対するアメリカの度重なる拒否権(veto)も同様だ。国際刑事裁判所(International Criminal Court、ICC)の最高検察官(top prosecutor)は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ギャラント国防相に対し、戦争犯罪と人道に対する罪(war crimes and crimes against humanity)で逮捕状(arrest warrants)を請求した(ハマスの指導者ヤヒヤ・シンワル、イスマイル・ハニヤ、モハメド・ディアブ・イブラヒム・アル・マスリも対象となっている)。ワシントンは間違いなくこの措置を拒否するだろうが、これはワシントンが世界の多くの国々といかに足並みを揃えていないかを更に強調することになる。

各種世論調査では、アメリカの人気は中東で大幅に低下し、ヨーロッパでもわずかに低下している一方、中国、ロシア、イランへの支持が高まっていることも示されている。戦争開始か1カ月も経たないうちに、親イスラエルのワシントン近東政策研究所(Washington Institute for Near East Policy)の報告書では次のように書かれている。「ガザ地区での戦争により、アメリカは敵国に負けつつある。この戦争でアメリカがプラスの役割を果たしていると考えるアラブ人の割合はわずか7%で、ヨルダンなどの国では2%にまで低下している。対照的に、中国が紛争でプラスの役割を果たしていると考えるアラブ人の割合は、エジプトで46%、イラクで34%、ヨルダンで27%であった。加えて、この戦争でイランが大きな恩恵を受けているようだ。平均すると、イランが戦争にプラスの影響を与えたと答えた人の割合は40%であるのに対し、マイナスの影響を与えたと答えた人は21%である。エジプトやシリアなどの国では、イランがガザに良い影響を与えていると答えた人の割合はさらに高く、それぞれ50%と52%に達している。」

そして戦争は安くつくことはない。アメリカ連邦議会は、イスラエルがガザ地区を壊滅させるための数十億ドルの追加援助を承認した。また、私たちが支援している「同盟国(ally)」が人道支援(humanitarian aid)を届けるために救援団体にトラックを送らせてくれないため、アメリカが建設しなければならなかった浮桟橋のための3億2000万ドルもある。アメリカ軍はイエメンのフーシ派に対し、高価なミサイルや爆弾を使い果たしている。フーシ派はイスラエルがやっていることに抗議して、紅海やその周辺の船舶を恐怖に陥れ始めたのだ。私には分かっている。しかし、ガザ地区でパレスティナ人を殺すのを助ける代わりに、アメリカ人を助けるためにこのお金を使うのはいいことだ。今度、アメリカ連邦議会の予算タカ派が国内プログラムを削減しなければならないと言い出したら、彼らがイスラエルの戦争にどれだけ熱心にお金を出していたかを思い出して欲しい。

この戦争はまた、バイデン政権高官たちの膨大な時間、エネルギー、そして関心を浪費している。アントニー・ブリンケン国務長官とウィリアム・バーンズCIA長官は何度も現地に赴き、数え切れないほどの時間をこれらの問題に費やしてきた。ジョー・バイデン米大統領を含む他の高官たちも同様だ。アメリカの指導者たちがイスラエルとパレスティナのおよそ1500万の人々の間の紛争に費やしてきた時間は、他の重要な同盟国を訪問したり、ウクライナでより良い政策を考案したり、アジアで効果的な経済戦略を開発したり、気候変動に対処するために世界的な支援を集めたり、あるいははるかに重要な問題の数々に費やすことができなかった時間である。

勝者は誰だ? もちろんロシアと中国だ。世界中の多くの人々、特にグローバルサウスの多くの人々にとって、ガザ地区での大虐殺は、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席が繰り返し主張している、アメリカの世界的な「リーダーシップ(leadership)」は紛争と苦しみの種をまいており、力がより平等に分配される、多極秩序(multipolar order)の方が世界はより良くなるという主張を正当化するものだ。あなたはその主張に同意しないかもしれないが、何百万人もの人々が既に同意しており、私たちの現在の政策により、その主張ははるかに信憑性があるように見えてしまっている。一方、中国の指導者たちは、ネタニヤフから屈辱を受ける特権を得るためにイスラエルに飛んで時間を無駄にしてはいない。彼らは関係を修復し、経済関係を育み、ロシアとの「無制限の(no limits)」パートナーシップを強化することに忙殺されている。彼らは、ガザ地区での戦争が、アメリカにとって高くつく混乱になったことに、毎日感謝しているに違いない。

最後に、リアリストたちはイスラエルの行動に反対している。なぜなら、それがアメリカにまったく戦略的利益(strategic benefits)をもたらさないからだ。その価値は誇張されることもあったが、冷戦中はイスラエルが中東におけるソ連の影響に対する有効なチェック機能を果たしたともっともらしく主張できた。しかし、冷戦は30年以上前に終結しており、今日、イスラエルへの無条件の支援は、アメリカ人の安全を高めていない。イスラエル擁護者の中には、イスラエルがイランに対する強力な防壁であり、テロに対する貴重なパートナーであると主張する者もいる。彼らが言及していないのは、アメリカとイスラエルの関係が、アメリカがイランとの関係を悪化させている理由の1つであり、アルカイダのようなテロリスト勢力がアメリカを攻撃することを決めた理由の1つであるということだ。

明白な事実は、ガザ地区を爆撃して石器時代(Stone Age)に戻しても、アメリカ人はより安全になったり、より豊かになったりはしないということであり、それはアメリカ人が主張したい価値観とはまったく相容れない。むしろ、故オサマ・ビン・ラディンのような反米テロリストの新世代を刺激すれば、アメリカの安全はわずかに低下するかもしれない。また、この政策でイスラエルが安全になるものでもない。紛争を政治的に解決することだけが、安全をもたらすのである。

だからこそ、私のようなリアリストたちは、アメリカとイスラエルが現在行っていることに首をかしげるのだ。稀で素晴らしい状況では、国家は戦略的利益(strategic interests)と道徳的志向(moral preferences)を同時に促進する政策を追求できる。また別の場合には、両者のトレードオフに直面し、難しい選択を迫られる(通常は前者を優先する)。しかし今回の場合、アメリカは戦略的利益を積極的に損ない、罪のない人々の大量殺戮を支援している。その主な理由は、アメリカの指導者たちが紛争に関する時代遅れの見解にとらわれ、強力な利益団体に過度に従順であるためだ。良きリアリストにとっては、善良な目的なしに悪事を働くことは、最悪の罪業(sin)である。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 中東におけるキープレイヤーとしては、サウジアラビア、イラン、イスラエル、アメリカが挙げられる。これらの国々の関係が中東情勢に大きな影響を与える。アメリカは、イスラエルと中東諸国との間の国交正常化を仲介してきた。バーレーンやアラブ首長国連邦(UAE)といった国々が既にイスラエルとの国交正常化を行っている。アメリカにとって重要なのは、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化であった。昨年、2023年前半の段階では、国交正常化交渉は進んでいた。こうした状況が、パレスティナのハマスを追い詰めたということが考えられる。

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中東諸国がイスラエルと国交正常化を行うと、自分たちへの支援が減らされる、もしくは見捨てられるという懸念を持ったことが考えられる。ハマスをコントロールしているのはイランであり、イランの影響力はより大きくなっていると考えられる。イランは、レバノンの民兵組織ヒズボラも支援している。イランは、ハマスとヒズボラを使って、イスラエルを攻撃できる立場にいる。イランの大後方には中国がいる。

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 イスラエルとしては、サウジアラビアと国交正常化を行い、中東地域において、より多くの国々をその流れに乗せて、自国の安全を図りたいところだった。イランを孤立させるという考えもあっただろう。しかし、ここで効いてくるのが、2023年3月に発表された、中国の仲介によるサウジアラビアとイランの国交正常化合意だ。これで、イランが中東地域で孤立することはなくなった。イスラエルとすれば、これは大きな痛手となった。そして、アメリカにしてみても、自国の同盟国であるサウジアラビアが「悪の枢軸」であるイランと国交正常化するということは、痛手である。これは、中国が中東地域に打ち込んだくさびだ。

 アメリカはサウジアラビアと防衛協定を結ぼうとしているが、それには、イスラエルとの関係が関わってくる。アメリカはサウジアラビアとイスラエルという2つの同盟国を防衛するということになるが、サウジアラビアとイスラエルとの関係が正常化されないと、アメリカとサウジアラビアとの間の防衛協定交渉も進まない。サウジアラビアのアメリカ離れということもある。ここで効いてくるのはサウジアラビアとイランの国交正常化合意だ。アメリカとイスラエルの外交が難しくなり、中国の存在感が大きくなる。

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サウジアラビアは次のエジプトへの道を進んでいる(Saudi Arabia Is on the Way to Becoming the Next Egypt)

-アメリカ政府はリヤドとの関係を大きく歪める可能性のある外交協定を仲介している。

スティーヴン・クック筆

2024年5月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/08/saudi-arabia-us-deal-israel-egypt/?tpcc=recirc062921

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サウジアラビアの紅海沿岸都市ジェッダのホテルで開催されたジェッダ安全保障・開発サミット(GCC+3)期間中に、家族写真のために到着したジョー・バイデン米大統領とサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子(2022年7月16日)

彼らはそうするだろうか、それとも、しないだろうか? それがここ数週間、中東を観察している専門家たちが問い続けてきた疑問だ。アメリカとサウジアラビアは、両国当局者たちが少なくとも2023年半ばから取り組んでいる大型防衛協定プラス協定(big defense pact-plus deal)を発表するだろうか?

2024年4月末のアントニー・ブリンケン米国務長官のリヤド訪問と、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官の保留中のリヤド訪問計画により、合意の可能性の話に緊迫感と期待感が注入された。報道によると、サウジアラビアとジョー・バイデン政権は準備ができているが、「いくつかの障害は残っている(obstacles remain)」という。これはイスラエルを指す良い表現だ。

ワシントンとリヤドの当局者間の協議が始まったとき、バイデン政権はサウジアラビアとの単独合意では、米連邦議会から適切な支持は決して得られないという確信を持っていた。連邦上院で過半数を占める民主党の議員と少数派の共和党の議員(防衛協定に署名する必要がある)は、アメリカをサウジアラビアの防衛に関与させることに二の足を踏む可能性が高い。しかしホワイトハウスは、そのような協定がイスラエルとサウジアラビアの国交正常化を巡るものであれば、連邦議会の支持が得られる可能性が高いと推測していた。

2023年9月時点では、それは素晴らしいアイデアだったが、今ではやや理想的過ぎる考えになっている。ガザでの7カ月にわたる残忍な戦争の後に、サウジアラビアがイスラエルとの国交正常化実現に求めている代償は、イスラエル人にとって大き過ぎ、イスラエル人の約3分の2がこの考えに反対している。それだけに基づいて、国防協定のための正常化協定を追求し続ける正当性はない。

しかし、ワシントンの当局者、そして、特にリヤドは、いずれにせよイスラエルをこの協定案から外したがっているはずだ。そうでなければ、アメリカとサウジアラビアの二国間関係に三国間関係の論理を持ち込むことになる。アメリカとエジプトの関係が何かを示すものであるとすれば、それはワシントンとリヤドの関係を深く不利な方向に歪めかねない。

ジョー・バイデン米大統領がサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子を本質的にペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物、persona non grata)であると宣言し、米連邦議会の議員たちがサルマン王太子の人権侵害疑惑の責任を追及するよう要求したのは、ずいぶん昔のことのように思える。

リヤド当局者たちが当時予測していたように、バイデン大統領がサウジアラビアの指導者たちを必要とする時が来るだろう。彼らはそれほど長く待つ必要がなかった。新型コロナウイルス感染拡大後の旅行客の急増とロシアのウクライナ侵攻によるガソリン価格の上昇圧力は、ホワイトハウスに特別な難題を突きつけた。その結果、世界規模のエネルギー価格の高騰はアメリカ経済の健全性を脅かし、ひいてはバイデンの選挙での見通しを脅かした。このためバイデンはリヤドに外交官を派遣し、最終的には2022年7月に自らリヤドを訪問するに至った。サウジアラビア政府高官たちにもっと石油を汲み上げるよう説得し、アメリカ人のガソリン代負担を軽減させ、大統領は低迷する世論調査の数字を少しでも改善することを望んでいた。

そして、エネルギー価格の高騰が部分的に後押ししたインフレと、ヨーロッパにおけるロシアのウクライナ侵攻は、ホワイトハウスの中国に対する厳しいアプローチを背景にしていた。バイデンは政権発足当初から、世界中で北京を出し抜くことを優先課題としていた。最も影響力のあるアラブ国家として、サウジアラビアはその戦略の重要な要素になると期待されていた。

そしてイランの脅威が存在した。ドナルド・トランプ米大統領(当時)が2018年にワシントンを脱退させた核合意である「包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action)」にテヘランが再加盟するよう、米政府高官たちが政権発足後2年の大半の期間を費やして追い回した結果、バイデンは、イランが実際にはアメリカやペルシャ湾西側の近隣諸国との新たな関係を望んでいないという結論に達したようだ。

結果として、アメリカ政府はイランの封じ込め(containing)と抑止(deterring)を目的とした、地域の安全保障を強化する取り組みに乗り出したが、その取り組みにおいてサウジアラビアが重要な役割を果たすことが期待されている。しかし、核合意と、2019年の自国領土へのイラン攻撃に対するトランプ大統領の反応に消極的だったことを受けて、リヤド当局者らは賢明に振舞った。その結果、彼らは現在、サウジアラビアの安全保障に対するアメリカの取り組みを大枠で規定する、正式な合意を望んでいる。

2017年と2018年に自らが負った傷のせいで、米連邦議事堂内におけるサウジアラビアの不人気が続いており、その結果、かつてはサウド家の忠実な召使であったが、ムハンマド王太子を激しく批判するようになった、ジャーナリストのジャマル・カショギの殺害にまで至ったことを考えると、連邦議会では支持大きいイスラエルが協定を締結するはずだった。しかし、このアイデアはうまく設計されているかもしれないが、サウジアラビアとアメリカとの防衛協定のための、サウジアラビアとイスラエルとの国交正常化は、アメリカとサウジアラビア当局者が最も重要であると信じている関係に、重大な下振れリスクをもたらすことを示している。

アメリカのサウジアラビアへの関与が、サウジのイスラエルとの国交正常化を条件とするならば、その関係、すなわちイスラエルとサウジアラビアの関係の質は、明白な意味でも、そうでない意味でも、ワシントンとリヤドの二国間関係に影響を及ぼす可能性が高い。

エジプトは、このダイナミズムがどのように展開するかを示す典型的な例である。ホスニ・ムバラク前大統領の時代を通じて、とりわけ長期政権末期には、アメリカ・エジプト・イスラエルの三者関係の論理がエジプト政権に対する、破壊的な政治批判をもたらした。ムバラクの敵対勢力、特にムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)は、イスラエルのせいで、ワシントンがエジプトをこの地域の二流大国(second-rate power)にしたのだと主張した。

換言すれば、ムバラクと側近たちは、イスラエルが2度にわたってレバノンに侵攻し、ヨルダン川西岸とガザ地区を入植し、イェルサレムを併合するのを傍観していた。そうしなければイスラエルとの関係が危険に晒され、ひいてはイスラエルとの関係が損なわれるからである。そうなれば、エジプトとアメリカとの関係を損なうことになる。その結果、エジプトはイスラエルに直接挑戦するのではなく、国連やその他の国際フォーラムの場でイスラエルに抗議をする、つまり弱者の武器(weapons of the weak)を使うことになった。

2007年頃、エジプトからガザ地区への密輸トンネルの存在が初めて発見されたとき、イスラエルとその支持者たちはワシントンでそれを喧伝した。もちろん、彼らが憤慨するのは当然のことだが、エジプト政府関係者たちは、イスラエルがこの事態を二国間問題として処理せず、ワシントンを巻き込むことを選択したため、エジプトはカイロの軍事支援が危険にさらされることを恐れたと、私的な会話で苦言を呈した。米連邦議会の議員たちも、エジプトの軍事援助を削減し、他の支援にシフトするかどうか公然と議論していた時期だった。エジプトから見れば、特に敏感な時期に密輸トンネルをめぐって批判を浴びせられたことで、エジプトとイスラエルの二国間の問題が、ワシントンとカイロの問題になり、アメリカとエジプト関係に不当に緊張が走ることになった。

サウジアラビアとの安全保障協定を確保する努力にイスラエルを含めることは、既に複雑な二国間関係を更に複雑にすることを求めるだけだ。そのようなことをする価値はほとんどない。もちろん、エジプトとサウジアラビアには多くの違いがある。国境を接していないことから、イスラエルの安全保障上の懸念が、アメリカとエジプトとの関係で見られるような形でアメリカとサウジアラビアとの関係に影響を与えることはないだろう。

それでも、イランを管理するサウジアラビアの微妙なアプローチがイスラエルを怒らせた場合はどうなるのか? エジプトと同様、サウジアラビアは、アメリカの安全保障援助に依存している。イスラエルがサウジアラビア王室の外交政策の進め方を好まなければ、アメリカとサウジアラビアの関係に問題が生じる可能性は現実のものとなる。

バイデン政権がサウジアラビアとの防衛協定を望むなら、締結しよう。協定を結ぶにあたり、十分な根拠があるはずだし、バイデン大統領は懐疑論者を説得できるほど熟練した政治家だ。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会エニ・エンリコ・マッテイ記念中東・アフリカ研究上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、将来』は2024年6月に刊行予定。ツイッターアカウント:@stevenacook

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。2023年を回顧し、2024年、その先を見通す内容となっています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 新刊でも取り上げたが、2023年10月7日からパレスティナ紛争が続いている。ハマスによるイスラエルに対する攻撃とそれに対するイスラエルの大規模な報復攻撃によって、多くの民間人が犠牲になっている。1948年にイスラエルが建国されて以来、パレスティン紛争は、強弱はありながらも継続中で、もうすぐで75年が経過しようとしている。問題は親から子へ、子から孫へと引き継がれて、より複雑化しているようだ。どうしてパレスティナ紛争は解決しないのか。1993年にパレスティナ解放機構(PLO)とイスラエルの間で成立したオスロ合意に基づく、二国家共存解決策(two-state solution)は破綻寸前なのはどうしてか。

 ハーヴァード大学教授スティーヴン・M・ウォルトはその主要な理由を5つ挙げている。ウォルトは、妥協不可能な目的、イスラエルが拡大すればするほど国内が脆弱になってしまう安全保障のディレンマ、無責任な部外者の介入、過激派の存在、アメリカに存在するイスラエル・ロビーが主要な5つの理由として挙げている。

 興味深いのは、イスラエルが拡大を続けて、アラブ人、パレスティナ人が住む領域を国土に編入していくと、イスラエル国民の構成がユダヤ人とアラブ人で半々になってしまう、そうした場合に、アラブ人にユダヤ人と同等の政治的権利を与えるべきかどうかということが大きな問題になるということだ。ベンヤミン・ネタニヤフ首相はアパルトヘイト政策を実施して、アラブ系のイスラエル国民に政治的権利を認めないということを実行しているが、それでは、イスラエルが建国の理念として掲げる民主政治体制の公平性を毀損することになる。これは国家の存在理由を毀損することになる。イスラエルを拡大し、二国家共存路線を否定すればするほど、イスラエルの建国の理念は毀損され、イスラエル国家の正統性は失われていく。

 イスラエルの過激派は、二国家共存路線を放棄させようとして、パレスティナの過激派であるハマスと手を結んだ。彼らは共通の目的である「二国家共存路線の放棄」のために共闘できた。その結果が現在である。この過激派同士が手を組むというのはよく見られる現象である。ここで重要なのは、穏健派同士が手を組んで主導権を握ることだ。そうすることで、問題解決の糸口が見つかるだろう。パレスティナ紛争の解決(もしくは小康状態)は世界にとっても重要である。そして、それを75年間も成功させられなかったアメリカは、仲介者や保護者の役割を降りるべきではないかと私は考えている。パレスティナとイスラエル、双方と話ができる、非西側諸国(the Rest、ザ・レスト)の旗頭である中国に任せてみたいとなどと言えば、反発を受けるだろうが、サウジアラビアとイランの国交正常化交渉合意を取り付けた実績がある。アメリカの失敗を土台にしてそこから学び、方法を見つけることができるのではないかと考える。

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イスラエルとパレスティナの紛争がすぐには終わらない5つの理由(5 Reasons the Israel-Palestine Conflict Won’t End Any Time Soon)

-過激派、ロビイスト、お節介な部外者、そしてより深い構造的問題の存在は、この問題が未解決のままであることを意味するものだ。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年1月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/01/08/israel-palestine-conflict-gaza-hamas/

関連する歴史にあまり馴染みがなく、今現在のように何か酷いことが起きている時にしかこの問題に注意を払わない傾向があるのなら、あなたは自問するかもしれない。それは次のような一連の疑問だ。「何が問題になっているのだろうか? なぜイスラエルとパレスティナは和解し、うまくやっていくことができないのだろう? アメリカは第二次世界大戦後、ドイツや日本と和解したし、アメリカとヴェトナムの関係は現在友好的だ。南アフリカや北アイルランドのような問題を抱えた社会でさえ、正義と平和に向かって進んできた。それなのになぜ、これらとは別の紛争を終わらせるための多種多様な努力が失敗に終わり、1948年にイスラエルが誕生して以来最悪のイスラエルとパレスティナの血を見ることになったのだろうか?」

私は疑問解消の手助けをするためにここにいる。イスラエルとパレスティナの紛争が、罪のない人々の命を奪い続け、地域を不安定化させ、ワシントンの政治的処理能力(Washington’s political bandwidth)を不釣り合いなほど消費し、恐怖、苦しみ、不正義を永続させ続けている理由のトップ5を紹介しよう。

(1)割り切れない目的(Indivisible objectives)。紛争の核心には、深い構造的問題がある。イスラエルとパレスティナの民族主義者・ナショナリストたちはともに、同じ領土に住み、その支配を望んでおり、それぞれがそれを自分たちの正当な権利だと確信している。両者はそれぞれ主張の根拠を持っており、それぞれが自分の立場が相手の立場を打ち負かすべきだと熱烈に信じている。国際関係学者たちはこのような状況を「不可分性(indivisibility)」問題と呼ぶ。紛争を解決するためには、当事者双方が納得できるような方法で問題を分割する必要がある。さらに、三大宗教の聖地であるイェルサレムの複雑で争いの絶えない地位が加われば、紛争が繰り返されることになる。過去100年にわたり、土地の共有に関するいくつかの提案がなされてきたが、妥協を求める声は、係争中の領土の全てを求める人々によってかき消され、あるいは排除されてきた。悲しいことに、ナショナリズムとは通常このように機能するものだ。

(2)安全保障のディレンマ(The security dilemma)。1つ目の問題と、紛争地域の狭さが相まって、2つの共同体は安全保障上の深刻なディレンマに直面している。シオニストの指導者たちは当初から、アラブ人が多数派どころかかなりの少数派として存在する、ユダヤ人が支配する国家を作ることは困難か不可能であると認識していた。その信念が、1948年のアラブ・イスラエル戦争、そして1967年にイスラエルがヨルダン川西岸を占領した際の民族浄化行為(acts of ethnic cleansing)につながった。しかし、このような行為は、アメリカを含む、他の多くの場所で国家建設の努力が同じような性質の行為に及んでいるように、決して特異なものではなかった。当然のことながら、追放されたパレスティナ人もイスラエルのアラブ近隣諸国も、この事態に激怒し、結果を覆そうと躍起になった。

更に悪いことに、イスラエルは人口が少なく、地理的に脆弱なため、指導者たちは国境を拡大することで国の安全性を高めようとする強力な動機を持っていた。ダヴィド・ベン=グリオン(David Ben-Gurion)首相は、1956年のシナイ戦争(Sinai War)[第二次中東戦争]でイスラエルが占領した土地の一部を保持することを一時的に望んだが、アメリカからの確固とした圧力により、この計画を断念せざるを得なかった。その11年後、同じ拡張主義的な衝動によって、イスラエルは1967年の6日間戦争(the Six-Day War)[第三次中東戦争]後もヨルダン川西岸とゴラン高原を支配し、1967年から1979年のエジプト・イスラエル和平条約調印まで、シナイ半島の大部分を支配し続けた。

残念なことに、ガザ地区を支配しながらヨルダン川西岸を保持し定住するということは、数百万人のパレスティナ人が永久にイスラエル支配下に置かれることを意味し、事実上、建国者が避けようとしていた人口動態の問題(demographic problem)、つまりイスラエルが支配する領域でユダヤ人とパレスティナ人の数がほぼ同数になるという問題を引き起こすことになる。「大イスラエル(Greater Israel)」という目標を追求すれば、その指導者たちは、ほぼ同数のパレスティナ人従属民に完全な政治的権利を与えるか、彼らの大半を追放する別の口実を見つけるか、イスラエルの民主政治体制と人類への公約とは相容れないアパルトヘイト制度(apartheid system)を導入することを強いられるだろう。元イスラエル外務大臣シュロモ・ベン=アミは2006年に、「民主政治体制とユダヤ国家の地位と領土拡大とを両立させることはできない」と書いた。最も悪くない選択肢は、イスラエルが現在支配している領土のかなりの部分を放棄し、パレスティナ人が独自の国家を持つことを認めるという選択肢だ。この目標は、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ、そして現在のジョー・バイデン政権が掲げた政策である。

しかし、安全保障のディレンマは、「2つの民族のための2つの国家(two states for two peoples)」を交渉する努力を複雑にしている。イスラエルの交渉担当者たちは、パレスティナの国家がイスラエルを深刻に脅かすことがないよう、イスラエルが国境と領空を実質的に支配したまま、将来のパレスティナの実体(あるいは国家)を事実上非武装化しなければならないと主張している。しかし、そのような取り決めをすれば、パレスティナ人はイスラエル(そしておそらく他の国家)に対して永久に脆弱な立場に置かれることになる。それぞれの安全意識を向上させ、最終的な和解を促すような取り決めを想像することは可能だが、絶対的な安全は到達不可能な目標である。残念なことに、10月7日のハマスの犯罪と、現在ガザで罪のないパレスティナ人に加えられている犯罪は、当面の間、2国家解決を達成することをより困難にするだろう。

(3)役に立たない部外者。 この2つの人々の間の対立は、利己的な介入(self-interested interventions)が通常は逆効果である一連の第三者によっても煽られ、維持されてきた。イギリスは1917年のバルフォア宣言(Balfour Declaration)によって問題が始まり、戦間期(the interwar period)には国際連盟(League of Nations)の任務を誤って管理し、第二次世界大戦後は問題を国際連合(United Nations)に突きつけることになった。1948

年以降、繰り返される一連のアラブ間対立の一環として、競合するアラブ諸国はパレスティナ内部の別々の派閥を支援し、パレスティナの統一を損なった。

冷戦時代、アメリカはイスラエルを、ソ連はいくつかのアラブの重蔵国を、それぞれ利己的な理由から武装させたが、どちらの大国も問題解決の糸口が見つからないパレスティナ問題や、ヨルダン川西岸一帯に入植地(settlements)を建設するというイスラエルの決定を覆すことには十分な関心を払わなかった。そしてイランは、ハマス、パレスティナを根拠とするイスラム聖戦、レバノンを根拠とするヒズボラを支援することで、主にテヘランが脅威とみなす方法でこの地域を再編成しようとする、アメリカの努力を頓挫させようとしてきた。こうした外部からの介入はいずれも、イスラエル・パレスティナ紛争の解決には役立たず、むしろ悪い状況をより悪化させる傾向にあった。

(4)過激派。中東でも他の地域と同様、少数の過激派が、困難な問題を解決しようとする善意の努力(well-intentioned efforts)を頓挫させることがある。1990年代のオスロ和平プロセスは、両陣営がこれまでで最も紛争終結に近づいたものだったが、両陣営の過激派がこの希望に満ちた和平への道を台無しにした。ハマスとパレスチナ・イスラム聖戦による一連の自爆テロはイスラエルの和平派を弱体化させ、1994年にはイスラエル系アメリカ人入植者が和平努力を阻止するために意図的にパレスティナ人29人を殺害し、その後、別のイスラエル人狂信者がイツハク・ラビン首相を暗殺し、ベンヤミン・ネタニヤフが首相に就任するのを間接的に助けた。

二国家解決(two-state solution)への反対はネタニヤフ首相の政治キャリア全体の道標であり、二国家解決を実現させることに関心を持っていた穏健派パレスティナ自治政府(moderate Palestinian Authority)を弱体化させるという明確な目的のために密かにハマスを支援したほどだ。その政策の悲惨な結果は10月7日に明らかになった。

(5)イスラエル・ロビー。AIPAC、名誉毀損防止同盟(Anti-Defamation League)、クリスチャンズ・ユナイテッド・フォー・イスラエル(Christians United for Israel)のような諸団体が紛争を長引かせていると考える人もいるだろうが、紛争を長引かせている唯一の責任があるとは思わない。しかし、彼らや他の志を同じくするグループや個人が問題解決にとっての重大な障害となっている。彼らの行動の詳しい説明については、『イスラエル・ロビー』の第7章を​​参照するか、ピーター・ベイナートの最近の論稿を読んで欲しい。

これらのグループは、アメリカの政治家に紛争に対する一方的な見方を教え込むだけでなく、紛争を終結させようとするアメリカ大統領の真剣な試みをことごとく妨害することに積極的に取り組んできた。ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマの各大統領は、いずれも二国家による解決を公に約束し、クリントンとオバマはそれを実現しようと真剣に試みた。それはなぜか? オバマが言うように、2つの民族のための2つの国家は「イスラエルの利益、パレスティナの利益、アメリカの利益、そして世界の利益(Israel’s interest, Palestine’s interest, America’s interest, and the world’s interest)」だからである。しかし、大きな影響力を行使できるにもかかわらず、どの大統領もイスラエルに深刻な圧力をかけようとはしなかった。イスラエルが入植地建設を中止し、占領地のアパルトヘイト体制を解体し始めることを条件に、アメリカの援助や外交的保護を行うことさえできなかった。

Jストリートやアメリカンズ・フォー・ピース・ナウのような、二国家間解決を支持する著名な親イスラエル団体でさえ、アメリカの指導者たちにこの措置をとるよう公然と呼びかけたり、イスラエルに意味のある圧力をかけることを支持するよう連邦議会議員に圧力をかけたりすることはなかった。イスラエルはその主要な後援者であり庇護者(principal patron and protector)であるアメリカから責任を追及されることがなかったため、歴代のイスラエル政府は妥協する必要性を感じることもなく、自分たちの行動の長期的な影響を考慮することもなかった。その結果、ジョン・ミアシャイマーと私が(そして他の多くの人々が)何年も前に警告したように、イスラエルとパレスティナ人が今日直面しているような災難が起こった。

これら5つの要因はそれぞれ、単独でも和平への困難な障害となるだろうし、このリストから外した他の障害も間違いなく存在する。こうしたことが物語っているのは、残念なことだが、この紛争はすぐには終わらないということだ。それは、イスラエル人にとってもパレスティナ人にとっても悲劇(tragedy)である。パレスティナ人が最大の損失を被っているとおりそれは悲劇であるが、イスラエル人にとっても悲劇である。

更に言えば、現在のガザ戦争におけるイスラエルの行為は、反ユダヤ主義(antisemitism)を煽ることによって、世界中のユダヤ人を危険にさらすかもしれない。バイデン政権は、イスラエルのガザにおける残忍かつ大量虐殺の可能性のある作戦に積極的に加担しているため、アメリカはこの惨事(disaster)における役割のために、道徳的にも戦略的にも深刻な代償を払うことになるだろう。「ルールに基づく国際秩序(rules-based international order)」の指導者であると自称するアメリカの信用を失墜させようと躍起になっている世界の指導者たちにとって、これ以上素敵な休暇のプレゼントはないだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt
(貼り付け終わり)
(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今回はアメリカとサウジアラビアの関係、更にウクライナ戦争開始以降の両国関係に関する記事を紹介する。長くなってしまって読みにくくなってしまっていることをお詫び申し上げる。ご紹介したい関連記事が複数あってこのように長くなってしまった。
 現在、世界の石油価格は高騰している。新型コロナウイルス感染拡大で石油価格が下落していたが、その騒ぎも収まりつつある中で石油価格が上昇していった。それに加えて2月末からのウクライナ戦争で対ロシア経済制裁と先行き不安のために石油価格は高騰している。

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石油価格の推移(2021年11月から) 

 アメリカはロシアからの石油が輸入の7%を占めていたがそれが入らなくなったために、これまでさんざん虐めてきたヴェネズエラとの関係修復を試みている。しかし、世界全体では増産まで時間がかかる上に、何より最大の産油国であるサウジアラビアがアメリカに非協力的であるために、石油価格が上昇している。

 サウジアラビアのアメリカに対する非協力的な態度はサウジアラビアの実質的な支配者であるサルマン王太子のバイデン政権に対する怒りが源泉となっている。ジョー・バイデン米大統領は大統領選挙期間中からサウジアラビアとサルマン王太子に対して批判的であり、『ワシントン・ポスト』紙記者だったジャマル・カショギ殺害にサルマン王太子が関与しているというインテリジェンスレポートを公表するということを約束しており、就任後に実際に公表した。また、バイデン政権は、ドナルド・トランプ前政権との違いを強調するためもあり、サウジアラビアの人権状況に批判的となっている。更には、サウジアラビアが関与しているイエメンの内戦でサウジアラビアの立場を支持してこなかった。こうしたことはサルマン王太子とサウジアラビア政府を苛立たせてきた。そして、サルマン王太子の中国とロシアへの接近ということになった。

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プーティンとサルマン王太子
 今回のウクライナ戦争で、アメリカは慌ててサウジアラビアとの関係を改善しようとしている。サルマン王太子とジョー・バイデン米大統領との直接の電話会談を実現させようとしたが、サウジアラビア側から拒否された。バイデン政権はサウジアラビアからしっぺ返しをされている。また、イエメン内戦でイランから支援を受けているフーシ派武装勢力がサウジアラビアの石油関連施設に攻撃を加えていることで、「石油の増産したいのだが、フーシ派が邪魔をしてうまくいかない」という大義名分も手に入れた。
 アメリカは理想主義的な建前外交をやって、アメリカ国民と世界の人々の生活を苦境に陥れている。実物を握っている国々はいざとなったら強い。だから、理想主義でどちらか一方に偏っていざとなったらしっぺ返しを食ってしまうという外交は結果としてよくない。汚い、裏がある、両天秤をかけて卑怯だ、そんな人々から嫌われるような外交がいざとなったら強い。「敵とも裏でつながっておく」ことが基本だ。

 

(貼り付けはじめ)

フーシ派からの攻撃の後、サウジアラビアは石油不足について「責任を持たない」と発表(Saudi Arabia says it 'won't bear any responsibility' for oil shortages after Houthi attack)

クロエ・フォルマー筆

2022年3月21日

『ザ・ヒル』

https://thehill.com/policy/international/middle-east-north-africa/599014-saudi-arabia-says-it-wont-bear-any

サウジアラビアは、イランに支援されたフーシ派の反政府勢力が国営石油施設を最近攻撃したことによる流通への影響について、イエメンの内戦に対処するアメリカを明らかに非難し、石油増産に対して責任を取らないことを明らかにした。

国営サウジアラビア通信は、世界最大の石油輸出国サウジアラビアは、「石油施設へ攻撃を受けたこともあり、世界市場への石油供給が不足しても、いかなる責任も負わないことを宣言する」と報じている。

サウジアラビア外務省は、「イランに支援されたテロリストのフーシ派民兵から我が国の石油施設が攻撃されたこと」を受けて声明を発表した。

サウジアラビアの指導者たちは、エネルギー市場を安定させ、禁輸されているロシアの石油を相殺するために供給を増やして欲しいというアメリカらの要請に抵抗しているため、ロシアのウクライナ侵攻でアメリカ・サウジ間の緊張は既に高まっている。

サウジアラビアのエネルギー省は日曜日、国営石油大手アラムコが所有する石油製品流通ターミナル、天然ガスプラント、製油所などがドローンとミサイルによる攻撃を受けたと発表した。

サウジアラビアのエネルギー省は、この攻撃により「製油所の生産が一時的に減少したが、これは在庫から補填される」と述べた。

サウジアラビア外務省は、西側諸国がサウジアラビアと共にイランとフーシを非難し、「世界のエネルギー市場が目撃している、この極めて微妙な状況において、石油供給の安全に対する直接的な脅威となる彼らの悪意ある攻撃を抑止する」よう呼びかけた。

2018年にイスタンブールのサウジアラビア領事館に誘い込まれて殺害された『ワシントン・ポスト』紙のジャーナリスト、ジャマル・カショギの殺害以来、アメリカ政府はサウジアラビアへの批判を強めている。

サウジアラビアの人権記録やイエメン内戦をめぐる緊張が、アメリカ連邦議会において超党派の議員たちからの批判を招き、それがまた両国間の争いに拍車をかけている。

しかし、アメリカのジョー・バイデン政権は、ロシアのウラジミール・プーティン大統領に最大限の圧力をかけるために外交政策を立て直し、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子との関係を再構築しようとしていると複数のメディアが報じている。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は日曜日、ここ数週間にわたり、アメリカはサウジアラビアに「相当数」のパトリオット迎撃ミサイルを送り込んだと報じた。サウジアラビア政府はアメリカ政府に対してフーシ派からの攻撃に対処するための防衛的な武器を送るように求めていた。

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フーシ派勢力がサウジアラビアのエネルギー施設に複数のミサイルを発射(Houthi's fire missiles at Saudi energy facility)

オラミフィハーン・オシン筆

2022年3月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/middle-east-north-africa/598959-houthis-fire-missiles-at-saudi-energy-facility?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ロイター通信は、サウジアラビア政府は、イエメンのイランから支援を受けているフーシ派が土曜日の夜から日曜日の朝にかけて、様々なエネルギー施設や淡水化施設に向けて複数のミサイルを発射したと発表したと報じた。

サウジアラビアのエネルギー省は日曜日に発表した声明で、ジザン地方の石油製品流通ターミナル、天然ガスプラント、紅海のヤンブ港にあるヤスレフ製油所がドローンとミサイルによる攻撃を受けたと発表した。

サウジアラビアのエネルギー省からの声明には、「ヤスレフ製油所への攻撃により、製油所の生産が一時的に減少したが、これは在庫から補填される」と書かれている。

サウジアラビアのエネルギー省はまた、多くの石油物流工場が攻撃され、ある工場で火災が発生したと付け加えた。サウジアラビア政府のある高官によると、火災は制御され、死傷者は報告されていないということだ。

フーシ派のスポークスマンであるヤシャ・サレアは、過激派グループがサウジアラビアで多くの施設を攻撃したことを認めた。

サウジアラビア主導の軍事連合によると、武装勢力フーシ派はこの他、アル・シャキークの海水淡水化プラント、ダーラン・アル・ジャヌブの発電所、カミス・ムシャイトのガス施設などを攻撃対象として攻撃を加えてきた。ロイター通信によると、サウジアラビア国防軍は弾道ミサイル1発とドローン9機を迎撃したと報じている。

ハンス・グルンドベルグ国連特使は、数万人が死亡し、数百万人が飢餓に直面している7年間の戦闘を終わらせるための条約の可能性について、双方が協議したと述べたとロイター通信は報じている。

ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は日曜日の声明の中で、フーシ派からの攻撃を非難した。

サリヴァン補佐官は声明の中で、「アメリカは内戦終結に向けた取り組みを全面的に支持し、フーシ派の攻撃から自国の領土を守るパートナーを今後も全面的に支援していく。国際社会にも同じことをするよう求める」と述べた。

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ムハンマド・ビン・サルマンはバイデンに対して影響力を持ち、それを利用している(Mohammed bin Salman Has Leverage on Biden—and Is Using It)

-サウジアラビアの原油価格引き下げへの協力は欧米諸国の価値観の犠牲の上に成り立つ。

アンチャル・ヴォウラ筆

2022年3月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/24/mohammed-bin-salman-saudi-ukraine-oil-biden-opec/?tpcc=recirc_trending062921

ウクライナ侵攻後にロシアへ科された制裁によって、世界のエネルギー市場には大混乱がもたらされた。西側諸国は、1バレル140ドル近くまで高騰した原油価格をどう抑制するか、ロシアのエネルギー供給への依存からどのように脱するかでパニックに陥った。アメリカとイギリスはロシアの石油購入の禁止を発表し、伝統的な同盟国であるサウジアラビアに対して石油の供給を開始し、世界の石油価格を下げるように説得することに躍起となっている。

しかし、最大の産油国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦は、この危機を自分たちの好機と捉えて、それに応じようとはしなかった。アメリカと欧米諸国へのメッセージは明白である。サウジアラビアは、人権侵害で批判され続ける対象として扱われるには、あまりにも大きな影響力を地政学的に持っている、ということである。

サウジアラビアはアラブ首長国連邦以上に油田の鍵を握っており、油田を開放し、親ロシアの石油政策を転換する前に、アメリカから大きな譲歩を得ることを期待している。エネルギー安全保障のために人権が再び犠牲になることを、活動家たちは恐れている。アメリカもイギリスも、サウジアラビアが3月中旬に行った81人の大量処刑を公然と批判していない。欧米諸国の対サウジアラビア政策は、消費者の財布への圧力を緩和するためのおだてが中心となっている。

サウジアラビアとアラブ首長国連邦は日量300万バレル以上の余力を持ち、その一部を放出することで原油価格を下げることができる。さらに、ロシアは日量約500万バレル、その8割近くを欧州に輸出しているため、リヤドとアブダビが支援を確約すれば、欧州諸国の懸念を払拭し、ロシアへの依存を減らすよう促すことができる。

しかし、湾岸諸国は、ロシアを含む石油カルテルの拡大版である「OPEC+1」への参加を理由に、これを控えている。その理由は、ウクライナ戦争は今のところ石油の供給に大きな支障をきたしていないため、生産量を増やす必要がないためだとしている。しかし、専門家たちは、これは世界政治の大きな変化を反映した政治的決断であると見ている。ロシアの戦争マシーンをも利する価格を維持する選択は、湾岸諸国の独裁者たちがもはやアメリカの緊密な同盟諸国の地位にいる必要性を感じず、同じような権威主義者たちとの新たな同盟を受け入れていることを示すものである。過去に何度か、サウジアラビアの支配者はアメリカの同盟諸国を喜ばせるために増産や減産を行ったことがある。

しかし今回、サウジアラビアの事実上の支配者であるムハンマド・ビン・サルマン王太子は、ジョー・バイデン米大統領に復讐をするチャンスが到来したと見ているようだ。サルマンはこれまでバイデンから数々の侮辱を受け、優遇されてこなかったと考えているようだ。バイデンはまだ大統領選挙の候補者だった時期に、サウジアラビアをパーリア国家(pariah state 訳者註:国際社会から疎外される国家)と評し、大統領就任後にサウジアラビアの反体制派でワシントン・ポスト紙の記者ジャマル・カショギの暗殺に王太子が関与したとする情報報告書を公開した。さらに、サウジアラビアもアラブ首長国連邦も、イラン核合意の再開の可能性についての懸念を持っているがこれは無視され、イエメンのフーシ派が自国の船や都市を攻撃したことに対してアメリカが行動を起こさないことには、軍事同盟国としての義務を果たさなかったと感じたという。最近では、フーシ派を指定テロリストのリストに入れ続けて欲しいという嘆願さえもワシントンによって無視された。

ロシアのプーティン大統領の戦争をきっかけに燃料価格が上昇したため、ホワイトハウスはバイデンと不貞腐れた王太子の電話会談を実現しようと奔走したが拒否された。しかし、サウジアラビアの後継者サルマンはカショギ殺害を命じたという疑惑を通してプーティンの側に立ち、女性人権活動家が逮捕され囚人が大量に処刑されても非難を囁くこともなかった。サルマンはプーティンの緊密な同盟者と見られることに全く不安を感じていないのである。

サウジアラビアが同じ権威主義者プーティンに近づいたのは、当時のバラク・オバマ米大統領との関係が悪化した2015年に遡る。その1年後、ロシアがOPECに加盟した。リヤドはその後、モスクワとの関係を強化する一方、アメリカとの関係は、オバマ時代のイランとの核合意から離脱したドナルド・トランプ米大統領の在任中に改善し、バイデンが指揮を執って合意復活のための協議を再開すると再び悪化するなど、一進一退を繰り返している。トランプ政権時代、ムハンマド・ビン・サルマンは改革者として描かれていたが、バイデン政権下では、サウジアラビアのイエメン攻撃で民間人が死亡したことや、自国内の人権侵害で再び厳しく批判されるようになった。

クインシー・インスティテュート・フォ・レスポンシブル・ステイトクラフトの共同設立者であり上級副会長を務めるトリタ・パルシは、サウジアラビアがロシアを支持している理由は、サルマン王太子がロシア大統領の地位をプーティンが継続し、アメリカで政権交代が起きることを確信しているからだと述べている。

パルシは次のように発言している。「サウジアラビアの王太子サルマンはプーティンに賭けている。サルマンはプーティンを信じているだけでなく、共和党が中間選挙で勝利し、バイデンがレイムダックになることを望んでいる。2025年までに、バイデンと民主党は政権を失い、プーティンはロシアの大統領に留まるとモハメド・ビン・サルマン王太子は信じているようだ」。

今回の危機は、アメリカが主張するエネルギーの独立性を改めて認識し評価することを余儀なくさせた。新型コロナウイルス感染拡大によって大きな損失を被った国内のエネルギー産業をよりよく管理するために、より首尾一貫した長期計画を打ち出すか、口を閉じて権威主義者たちを容認するかのどちらかでなければならない。

エネルギー分野の専門家たちによれば、いずれにせよ、米国のフラッキング企業(訳者註:シェールガス採掘を行う企業)が新たな井戸を掘るには数カ月かかるという。イランやヴェネズエラに対する制裁が解除されたとしても、その石油を世界市場に供給できるようになるにはまだ時間がかかるだろう。先週末、ドイツはカタールと液化天然ガス(LNG)輸入の長期契約に調印した。カタールはロシア、イランに次いで3番目に大きなガス埋蔵量を持つ国であり、この契約によりドイツは液化天然ガスを迅速に輸入することができる。この協定により、ドイツはカタールのガスを輸入できるように2つの液化天然ガス基地の建設を急ぐが、それでもそのガスがドイツの家庭に供給されるまでには何年もかかるだろう。これまでドイツは、パイプラインで輸送される安価なロシアのガスに頼っていた。

現在世界最大の産油企業であるサウジアラムコは、2021年に過去最高益となる1100億ドルを稼ぎ出し、前年の490億ドルから124%増の純利益を記録した。サウジアラムコは石油の増産に向けた一般的な投資を発表したが、短期的に供給を増やすことは何もしていない。サウジアラムコのアミン・ナセルCEO(最高経営責任者)は、「私たちは、エネルギー安全保障が世界中の何十億人もの人々にとって最も重要であると認識しており、そのために原油生産能力の増強に引き続き取り組んでいる」と述べた。

国際エネルギー機関(IEA)は、今年末までにロシアから少なくとも日量150万バレルの原油が失われる可能性があると発表している。それが更なる価格高騰につながることは間違いない。OPEC+は次回今月末に会合を開き、状況を把握して原油の生産量を決めると見られている。しかし、サウジアラビアとアラブ首長国連邦の要求についてアメリカに耳を傾けてもらえたとどれだけ感じられるかに大きく左右される。

彼らは、アメリカが核取引に関する立場を変えないことを確信しているが、イエメンのフーシ派との戦いにおいて湾岸諸国を支援し、人権侵害に対する批判を減らすことができるだろうか? 厳しい国益の世界で最も低い位置にあるのは、個人の自由である。サウジアラビアの活動家たちは、世界の石油の安定と価格の引き下げのために、再び代償を払うことになるかもしれない。しかし、ムハンマド・ビン・サルマン王太子は、バイデンからそれ以上のものを求めるかもしれない。

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バイデンはロシアを支持するサウジアラビアを罰するべきだ(Biden Should Punish Saudi Arabia for Backing Russia)

-リヤドは石油市場に変化をもたらすことができたが、アメリカではなく、権威主義者の仲間に味方することを選択した。

ハリド・アル・ジャブリ、アニール・シーライン筆

2022年3月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/22/biden-mbs-oil-saudi-arabia-russia-ukraine/

アメリカとその同盟諸国が一致団結してロシアのウクライナ侵攻に反対している中、サウジアラビアはロシアに味方している。侵略を公に非難せず、OPEC+協定へのコミットメントを繰り返したことで、サウジアラビア政府はアメリカとの長年のパートナーシップに亀裂が入っていることを露呈した。

原油増産の懇願にもかかわらず、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子は、ロシアのプーティン大統領と会談した1週間後に、ジョー・バイデン米大統領との会談を拒否したとされる。ロシアの石油の補償を拒否することで、王太子は国際社会が科す制裁に直面してエネルギーを武器として、エネルギーに依存するヨーロッパ諸国をロシアの石油とガスの人質にすることを許可し、プーティンの侵略を助長している。

月曜日になっても、サウジアラビア政府はロシアの行動を非難することを拒否している。その代わりに、サウジアラビアの外務大臣はロシア側と会談し、両国の二国間関係とそれを「強化・統合する方策」を確認した。

サウジアラビアの強硬姿勢にもかかわらず、バイデン政権は最近、フーシ派がサウジアラビアの水とエネルギー施設を攻撃したため、パトリオット対ミサイルシステムをサウジアラビアに追加配置した。サウジアラビアは、アメリカの保護が必要であることを表明し、これらの攻撃による石油供給不足の責任を否定する声明を出した。米国は、アラムコによる投資拡大の約束にもかかわらず、リヤドによる増産の保証を報告することなく防衛策を送ったのである。

バイデン米大統領から要求を受けてもサウジアラビアが石油の増産に消極的なのは、忠誠心が変化していることを示す最新の兆候である。70年にわたるパートナーシップを通じて、ワシントンはリヤドの主要な安全保障の保証人として機能し、その見返りとして、サウジアラビアの歴代国王はエネルギー問題でアメリカと緊密に協調してきた。しかし、ムハンマド・ビン・サルマン王太子が権力を掌握して以降、二国間関係は、7年間続くイエメン戦争などサウジアラビアの無謀な外交政策の決定や、ジャーナリストのジャマル・カショギの殺害で最も顕著に表れた人権状況の悪化によってますます緊迫してきた。

複雑な関係にもかかわらず、バイデン政権関係者の多くは、サウジアラビアの安全保障に対するアメリカのコミットメントを繰り返し表明し続けた。このような発言は、フーシの越境ミサイルやドローンによる攻撃からサウジを防衛するために最近6億5000万ドルの武器売却を行うなど、サウジアラビア主導のイエメン戦争に対するアメリカの継続的支援に裏打ちされたものである。

更に言えば、アメリカは最近、カタールを重要な非NATO加盟国に指定し、1月にアブダビで起きたフーシ派の無人機攻撃を受けてアラブ首長国連邦に追加の軍事資産を動員するなど、他の湾岸諸国のパートナーの安全確保に献身的であることを示している。このような安心感を持ちながらも、サウジアラビアは石油の増産と引き換えにイエメンでの戦争に対するアメリカの支持をもっと強要しようとしている。

現実には、サウジアラビアはアメリカの安全保障に関する保証を疑っていない。王太子が望んでいるのは、自らの支配を確実にすることである。アメリカは、湾岸諸国のパートナー諸国の物理的な安全を支援するために行動することはあっても、権威主義的なアラブの指導者が行うように、自分たちの好む体制を守るために民間人を攻撃することはないことを示してきた。湾岸諸国の支配者たちは、「アラブの春」におけるアメリカの中立的な姿勢が、エジプトにおけるワシントンの長年にわたるパートナー、ホスニー・ムバラクの失脚を許したと考えている

サウジアラビアの王室は、2011年にサウジアラビアが直接軍事介入したことでバーレーンのアル・ハリファ王家を救うことができた、マナーマの港に米海軍の第5艦隊がいたにもかかわらず、アメリカは役に立たなかったと考えている。それ以来、サウジアラビアの対米不信と国内の異論に対するパラノイア(被害者意識)は高まる一方である。サウジアラビアはサルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン王太子の統治下で、ロシアや中国との密接な関係の育成を加速させている。

アメリカと異なり、ロシアと中国にはサウジアラビアを保護した歴史も、湾岸における意味のある軍事的プレゼンスもない。

プーティンや中国の習近平のように、サウジアラビアの歴代の支配者たちは資本主義における独裁的モデルを好み、権威主義体制の生存と国家間関係からの人権の排除に基づいた代替的な世界秩序を構築しているのである。

中国やロシアが両国内のイスラム系少数民族を虐待していることに対してサウジアラビアや他の主要イスラム国家が無関心であることは、これらの政府が人権に反対していることの相性の良さを示している。中国とロシアがイスラム主義運動を政権の不安定要因と考えて偏執狂的に恐れているが、サウジアラビアとアラブ首長国連邦はこうした考えを共有している。

サウジアラビアの国王と王太子は、イスラム教の重要性をサウジアラビアの国家戦略から切り離し、王室の役割を中心に据えることで、イスラム教徒を積極的に疎外しようとしてきた。例えば、2022年2月22日、サウジアラビアは初めて建国記念日を祝った。この新しい祝日は、サウジアラビアがワッハーブ派の創始者であるムハンマド・イブン・アル・ワッハーブと提携し、それによってサウジアラビアの宗教的正当性を高め、領土拡大を開始した1744年ではなく、ムハンマド・ビン・サウドが支配権を得た1727年を起源とするものであった。

西側諸国の多くは、サウジアラビア政府が宗教警察のようなアクターを無力化し、厳しい男女分離を若干緩和する決定を歓迎したが、これらの変化はまた、前例のないレヴェルの内部抑圧に対応している。人権活動家の投獄、海外での反体制派に対する弾圧、そして最近の81名の囚人の大量処刑は、ムハンマド・ビン・サルマン王太子の意図の本質を明らかにしている。それは、かつて国家権力を握っていた聖職者や保守派エリートを含む全ての反対意見を、より西側の社会規範の皮をかぶって黙らせることだ。

カショギの殺害をめぐる長引く憤慨と政治的疎外は、王太子に、欧米諸国から見たサウジアラビアのブランドを再構築する努力は失敗したと確信させたのかもしれない。その代わりに、中国とロシアは、ジャーナリストを殺害した皇太子を決して非難しないパートナーである。ロシアの場合、最近の歴史では、その行為すらも支持する可能性さえある。

しかし、中国とロシアに安全保障の保証に賭けるのはギャンブルである。アメリカと異なり、ロシアと中国にはサウジアラビアを保護した歴史もなければ、湾岸地域における軍事的なプレゼンスもない。仮にサウジアラビアが米国製の軍備から移行する場合、そのプロセスには数十年と数千億ドルを要するだろう。

更に言えば、中国とロシアはイランと緊密な互恵関係にあり、サウジアラビアの顔色をうかがってこの関係を犠牲にすることはないだろう。サウジアラビアは、アメリカと対話する際、イランやイランが支援する集団に対するアメリカの保護をこれまで以上に保証するよう主張してきた。リヤドが北京やモスクワとの提携のためにそうした懸念を払拭したいと望んでいるとすれば、こうした姿勢はテヘランに対するアメリカの不信感を煽ることが主な目的であることが明らかになるであろう。

サルマン王太子のイランへの不安は本物だとしても、それ以上に国内状況への不安もまた大きい。そのためには、民間人に多大な犠牲を強いてでもシリアのアサド政権を維持しようとする姿勢を示したプーティンのようなパートナーが望ましい。今のうちにロシアと手を組んでおけば、サウジアラビア市民の大規模な抗議行動など、いざというときにクレムリンが助けてくれるだろうと期待しているのだ。

現在の米国のサウジアラビア宥和政策は、リヤドがワシントンを必要としている以上にバイデンが自分を必要としているという王太子の認識を強めているだけのことだ。

ムハンマド・ビン・サルマン王太子は、任期付きで選出された欧米諸国の政府高官たちのためにプーティンと敵対するリスクを冒すよりも、むしろプーティン支持という長期的なギャンブルに出るだろう。ボリス・ジョンソン英首相やジェイク・サリヴァン米国家安全保障問題担当大統領補佐官、ブレット・マクガーク米国家安全保障会議中東担当調整官らアメリカ政府高官たちによる最近の直接の懇請の失敗や、アントニー・ブリンケン米国務長官との面会を拒否したことは、サウジアラビア王太子が心を決めていることの証拠である。プーティンのエネルギー力を弱め、ロシアの石油ダラーの生命線を断つような石油政策を採用することはないだろう。彼は、ワシントンよりモスクワを選んだのだ。

同様に、バイデン政権がヨーロッパの同盟諸国にロシアの化石燃料を手放すよう圧力をかけているこの時期に、アメリカ政府がサウジアラビアに石油を懇願するのは止めるべきだ。アメリカの民主政治体制とサウジアラビアの権威主義体制は相容れず、長い間その関係を緊張させてきた。アメリカがサウジアラビアに石油をねだるのを止めるのは、もう過去のことだ。もう一つの残忍な炭化水素を基盤としている独裁国家に力を与えている場合ではないのだ。

ロシアの石油をサウジアラビア、イラン、ヴェネズエラの石油に置き換えるという不愉快な見通しに直面したとき、イラン核取引に再び参加し、イランの化石燃料を世界市場に戻すことは、最近の価格上昇に対処するためという理由はあるにしても、最悪の選択だ。イラン産原油の購入は、再交渉された核取引の条件によって制約されたままである。一方、サウジアラビア(またはヴェネズエラ)の要求に応じれば、アメリカが懸念する分野に対処するための追加の安全措置はないことになる。長期的には、バイデンは化石燃料への依存を減らし、それによって避けることができない石油価格ショックからアメリカ経済を守るよう努力しなければならない。そうしてこそ、アメリカ政府は石油を保有する権威主義者たちとの偽善的な取引を止めることができる。

リヤドは、最近の関係の冷え込みにもかかわらず、依然としてワシントンの保護を当然と考えているようだ。その理由の一つは、カショギの殺害とイエメンの荒廃についてサルマン王太子の責任を追及するというバイデン大統領の約束が守られなかったことが挙げられる。

現在のアメリカのサウジアラビアに対する宥和政策は、リヤドがワシントンを必要としている以上にバイデンが自分を必要としているというムハンマド・ビン・サルマン王太子の認識を強めるだけであり、この見解は、アメリカ政府が自分を支援し続ける以外に選択肢がないと考えて、ロシアや中国とより緊密に提携することを促すだろう。

その代わり、バイデンはこの機会に、全ての武器売却を中止し、サウジアラビア軍への保守(メンテナンス)契約を停止するなど、アメリカとサウジアラビア王国の関係を根本的に見直すべきだ。そうすることで、リヤドに対して唯一の安定した安全保障上のパートナーを失う危険性があることを示すことができる。

もし、サルマン王太子が独裁者たちへの支援を強化するならば、アメリカにとって大きな損失にはならないだろう。

※ハリド・アル・ジャブリは、医療技術の起業家であり、心臓専門医でもある。サウジアラビアから追放され、兄弟2人が政治犯となっている。ツイッターアカウント:@JabriMD

※アニール・シーラインはクインシー・インスティテュート・フォ・レスポンシブル・ステイトクラフト研究員である。ツイッターアカウント:@AnnelleSheline

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