古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 中東政治

古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

中東情勢は、イスラエルとハマスとの間で停戦合意がなされても、不安定なままだ。これは、アメリカの中東政策の失策とも言えるが、中東地域が持つ複雑さも原因となっている。そうした中で、ロシアも中東情勢において、重要な役割を果たそうとしている。ロシアの場合は、イランとの親密な関係を維持していると同時に、イスラエルとも良好な関係を持っている。それは、イスラエル国内に多くのロシア系ユダヤ人たちを抱えているからだ。彼らはイスラエル国内で一大勢力となっており、ロシア語を話せることから、ロシアとも関係を保っている。
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 ロシアは非西洋の一員として、イランを支援しているが、イランとイスラエルとの間の紛争には介入していない。あくまで中立を保っている。イスラエルによるガザ地区の攻撃について、イスラエルを非難しているが、最終的な断絶には至っていない。イランは、中東地域内に、イスラエルとサウジアラビアという潜在的な敵対国、ライヴァル国を抱えている。中国の仲介によって、イランはサウジアラビアとの関係を改善した。そうなると、イスラエルに集中することができる。イスラエルは軍事面、そして、情報・諜報面において、イランを凌駕している。アメリカの軍事支援を受けており、イスラエルが有利な立場にあってもおかしくない。しかし、実際はそうではない。イスラエルは狭小な国土に少ない人口を支えるのが精一杯だ。アメリカの支援がなければ厳しい。現在のような強硬姿勢をいつまで続けられるのかは不透明だ。ロシアとしては自分たちを高く売るために、イスラエルが弱体となるのを待っているように見える。イスラエルが強硬な姿勢を取る極右勢力とアメリカのために沈んでしまうのを選ぶかどうかは注目される。それは、日本にも当てはまる構図だからだ。

(貼り付けはじめ)

ロシアが今回のイスラエル・イラン紛争に介入しない理由(Why Russia Is Sitting Out This Round of the Israel-Iran Conflict

-ウラジーミル・プーティン大統領はイランへの依存度を低下させつつあり、その中で、彼はイランの地域ライヴァル諸国との関係維持を目指している。

ディミタール・ベチェフ筆

『フォーリン・ポリシー』誌

2025年6月25日

https://foreignpolicy.com/2025/06/25/russia-putin-iran-israel-nuclear-diplomacy/

10年前、ロシアは中東で最高の時を持っているように見えた。しかし、現在の視点から見ると、その瞬間は紛れもなく一時的なものに過ぎない。モスクワは2024年12月にシリアのバシャール・アサド大統領の失脚を阻止するために介入することはなかった。これは多くの人々を驚かせた。現在、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は、イスラエルとイランの対立において中立的な姿勢を装い、テヘランへの具体的な支援ではなく、和平仲介者(a peacemaker)としての役割を果たすことを申し出ている。

プーティン大統領のそうした決断は、弱さによってなされている。窮地に陥った時、ロシアにはパウア・ポリティックス(power politics)に介入する意志も能力もない。しかし、距離を置くという決断は、モスクワの相反する動機(Moscow’s conflicting motives)も反映している。ロシアの利益は、イランの敵対者たちや競争者たち(Iran’s adversaries and competitors)を含む地域のプレイヤーたちとの複雑な関係をうまく切り抜けることを求めている。

2022年のウクライナ侵攻後、ロシアはイランとの関係を劇的に改善させた。その動機は実利的なもので、モスクワはテヘランを、テヘランがモスクワを必要とするよりも。はるかに必要としていた。イランはロシアにシャヘド・ドローンと関連技術を提供し、ロシアはこれらを用いてウクライナの都市やインフラを攻撃した。また、イランは西側諸国の制裁を回避するための実証済みのノウハウを共有し、モスクワの石油タンカー船団「ゴースト・フリート(ghost fleet)」がイランの経験から学ぶことを可能にした。両国はまた、ユーラシア大陸を横断する南北貿易ルートを強化するため、鉄道と港湾インフラの強化にも着手した。

ロシアはテヘランとの関係から間接的な利益も得ている。イランによるハマスとヒズボラへの支援は、2023年10月7日のイスラエルへの攻撃と、それに続く地域紛争(regional conflict)への道を開いた。中東における暴力の激化は、ウクライナから国際社会の注目を逸らし、西側諸国と南半球の大部分の間に確執(bad blood between the West and large parts of the global south)を生み出し、重要な大統領選挙を前にアメリカの国内政治に緊張をもたらした。さらに、中東の不安定化は通常、原油価格の上昇を招くが、これはロシア連邦の財政にとって常に好材料となる。

しかし、ロシアはイランへの支援に報いる形で対応した。10月7日の直後、ロシアの対応は、本来であれば考えられなかったほど反イスラエル連合寄りになった。ハマスの代表団は10月下旬にモスクワに到着し、表向きはロシア国籍を持つ人質の解放交渉を行った。2024年1月には、フーシ派の代表団がロシアのミハイル・ボグダノフ外務次官と会談した。また、アメリカの情報機関は、ロシアの軍事情報機関であるGRU(参謀本部情報総局)が、紅海を通過する西側諸国の船舶へのイエメン民兵による攻撃を支援しているとの報道を示唆している。

さらに重要なのは、プーティン大統領がイスラエルからの直接攻撃を受けたイランへの支持を表明したことだ。2024年8月にイスラエルの攻撃でハマスの指導者イスマイル・ハニヤが殺害された後、プーティン大統領は最高指導者アリー・ハメネイ師に接触し、自制を促した。そして今回とは異なり、プーティンはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に電話をかけなかった。その後、イスラエルがロシア・ウクライナ戦争で中立を装おうとしていた一方で、モスクワは2025年1月にテヘランと安全保障提携を締結した。

しかし、イランとイスラエルの最近の戦闘に対するロシアの反応は、ロシアとテヘランの友好関係が決して「無制限(no limits)」な類のものではなかったことを示している。第一に、両国の絆を裏付ける文書には、依然として漠然とした希望的観測に満ちた表現が散見される。テヘランとの安全保障パートナーシップに署名してから5カ月が経過したが、ロシアはイスラエルの戦闘機に対抗するための防空ミサイルシステム(air defense missile systems)といった、意味のある軍事支援(meaningful military assistance)を一切提供していない。テヘランが2023年に購入した最新鋭のSu-35戦闘機はまだ移管されておらず、イランは1970年代に購入したアメリカ製の航空機に頼らざるを得ない状況にある。

モスクワの姿勢は、イランに対するより根深い、相反する反映している。確かに、プーティン大統領はイスラエルの攻撃を非難し、アメリカが自らの攻撃によって「世界を非常に危険な状況に陥らせている(bringing the world to a very dangerous point)」と非難している。そして、介入主義的な行動を断固として拒否してきたクレムリンにとって、テヘランの政権交代の可能性は真に憂慮すべき事態である。しかし一方で、2010年にモスクワが国連安全保障理事会によるイランへの制裁を支持したことからもわかるように、核保有国であるイランはロシアにとっても利益にならない。同盟国としてのテヘランの有用性も低下しつつある。何しろ、シャヘド・ドローンは現在、ジェットエンジンやスターリンク対応のナビゲーション・コンポーネントといった主要なアップグレイドが施された状態で、ロシアで製造されている。

ロシアがイスラエル・イラン戦争に事実上介入しないという決定は、近年のイランとの関係を考えると意外に思えるかもしれないが、これはこの地域におけるモスクワのこれまでの行動と合致する。2015年にロシアがシリアに介入して以来、ロシア軍と対空ミサイルは、イスラエルがヒズボラをはじめとするイランの代理勢力を攻撃する間、傍観してきた。2018年9月のイスラエル空襲で、ロシア機がラタキア上空で撃墜されたことは事実だが、これはアサド政権の防空システムが引き起こした事故だった。モスクワの政策は、シリアにおける新たな地位を活用し、トルコ、サウジアラビア、そして程度は低いもののイスラエルを含むイランのライヴァル諸国と交渉することだった。

クレムリンはシリアへの軍派遣という選択において、確かに賭けに出た。しかしその後、外交的に利益を得ようと、比較的バランスの取れたアプローチを練り上げた。モスクワは、イランとイスラエル、アサド大統領とシリア反体制派、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とクルド労働者党(Kurdistan Workers’ PartyPKK)など、地域内のあらゆる利害関係者と交渉することで、地域間の対立を回避しようと努めてきた。戦時中のイランへの傾倒を経て、ロシアは今、この均衡(equilibrium)を取り戻そうとしている。

モスクワがテヘランに対して相反する感情を抱いているとすれば、ロシアの指導部と社会全体はイスラエルに対して愛憎入り混じった関係にあると言えるだろう。モスクワから発信されるプロパガンダは、イスラエルをアメリカの覇権の延長線上にあるかのように描くことが多い。さらに、反ユダヤ主義は東欧全域、そしてもちろんロシアにおいても、歴史と社会に深く根付いている。

しかし、こうした態度は、時に隠されながらも、しばしば非常に明白な、根深いイスラエル愛と共存している。多くのロシア人は、イスラエルの強硬な外交政策と、国際的な非難を無視して軍事力を行使し、既成事実を作り上げようとする姿勢を称賛している。テレグラム上のロシアの超国家主義者たちは、イスラエルの軍事力を称賛し、腐敗したエリート層がいなければ、ロシアも同等の力を発揮できたはずだと主張している。最後に、イスラエルに居住する大規模なロシア系移民の存在は、両国の間に強い絆を生み出している。

最近、プーティン大統領は「旧ソ連とロシア連邦からは約200万人がイスラエルに移り住んでいる。今日、イスラエルはほぼロシア語圏の国だ」と宣言した。このレトリックは誇張かもしれないが、その感情は実際的でもある。

モスクワがテヘランに対して相反する感情を抱いているとすれば、ロシアの指導部と社会全体はイスラエルに対して愛憎入り混じった関係にあると言えるだろう。モスクワから発信されるプロパガンダは、イスラエルをアメリカの覇権の延長(an extension of the U.S. hegemony)として描くことが多い。さらに、反ユダヤ主義(antisemitism)は東欧全域、そしてもちろんロシアにおいても、歴史と社会に深く根付いている。

しかし、こうした態度は、時に隠され、時に非常に明白な、根深いイスラエル愛と共存している。多くのロシア人は、イスラエルの強硬な外交政策と、国際的な非難を無視して既成事実を作り上げるために軍事力を行使する傾向を称賛している。テレグラム上のロシアの超国家主義者たちは、イスラエルの軍事力を称賛し、腐敗したエリート層がいなければロシアも同等の力を発揮できたはずだと主張している。さらに、イスラエルに多数のロシア系移民が存在することが、両国の間に強い絆を生み出しているとも主張している。

最近、プーティン大統領は「旧ソ連とロシア連邦出身の約200万人がイスラエルに移り住んでいる。今日、イスラエルはほぼロシア語圏の国だ」と宣言した。このレトリックは誇張かもしれないが、その感情は実際的でもある。

ロシアの行動は、結局のところ、中東における自らの影響力の限界を反映している。ワシントンを羨ましがるロシアだが、地域秩序の要としてアメリカに取って代わる立場にはない。また、地域諸国ほどリスクを負うことも決してないだろう。ロシアの最優先事項は、ウクライナを従属させ、旧ソ連圏における優位性を維持することにある。そのため、ロシアは中東において機会主義的(opportunistic)であると同時に、ある程度リスク回避的(risk averse)でもある。

結果として、ロシアはイスラエルを含む全ての地域プレイヤーと引き続きビジネスを行うだろう。イラン指導部はこのことを痛感している。

※ディミタール・ベチェフ:オックスフォード大学セント・アントニーズ・カレッジ・ヨーロッパ研究センター・ダーレンドルフ・プログラム部長。著書に『ライヴァル勢力:南東ヨーロッパにおけるロシア(Rival Power: Russia in Southeast Europe)』(イェール大学出版局、2017年)がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『人類を不幸にした諸悪の根源 ローマ・カトリックと悪の帝国イギリス』
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 パレスティナの飾築を実効支配しているハマスによって2023年10月7日にイスラエルが攻撃を受け、それに対する報復でガザ地区に大規模な攻撃が実行されている。イスラエルとイランの間でのミサイル攻撃の応酬もあった。その後、一時的な停戦が実現したが、再び状況は悪化している。ガザ地区では生活環境は悪化し、攻撃は続いている。イスラエルはイラン国内を空爆し、核開発関連施設を破壊し、イラン革命防衛隊の司令官と参謀総長などの最高幹部を殺害している。ベンヤミン・ネタニヤフ首相はイスラエルの極右勢力に支えられているが、国民の支持率は低下している。そうした中で、起死回生の策がイランに対する空爆だった。

 イスラエルは国際社会を信頼せず、自国の防衛のためにはあらゆる犠牲を強いる。こうした点では北朝鮮に類似している。それは、あまりにも排他的な、選民思想的な原理が国家にあるからだろうと私は考えている。

 ガザ地区に関して言えば、私たちは歴史の授業で習ったゲットー(ghetto)を類推することができる。中世以来のヨーロッパの各都市に存在した、ユダヤ人たちが強制的に居住させられた地域である。ナチスドイツの侵略によって、各国のゲットーには厳しい抑圧がなされた。そうした中で、1943年にワルシャワ・ゲットー蜂起(Warsaw Ghetto Uprising)が起きたが、ナチスドイツによって鎮圧されたが、その方法は過酷なものだった。私たちは、ガザ地区の現状からワルシャワのゲットーを思い起こす。ユダヤ人が建国したイスラエルが、ゲットーの惨劇を繰り返す。「歴史は繰り返す(History repeats itself)」という言葉があるが、これはあまりにも皮肉なことである。人権や自由といった価値観を世界に拡大することを標榜するアメリカをはじめとする西側諸国は今回の事態に対してあまりにも無力だ。それどころか、ガザ地区の状況に対する批判を抑圧している。

 現在のガザ地区の状況は西側諸国の偽善と国際政治の野蛮さを改めて明らかにしている。そして、人間の愚かさを暴露している。
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ガザ地区がいかにして西洋の神話を打ち砕いたか(How Gaza Shattered the West’s Mythology

-この戦争は、第二次世界大戦後の共通の人間性に対する幻想(post-World War II illusions of a common humanity)を露呈させた。

パンカジ・ミシュラ筆

2025年2月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/02/07/pankaj-mishra-world-after-gaza-book-israel-war-global-order-history/

1943年4月19日、ワルシャワのゲットー(Ghetto)にいた数百人の若いユダヤ人が、入手できる限りの武器を手にナチスの迫害者たちに反撃した。ゲットーにいたほとんどのユダヤ人は、すでに絶滅収容所(extermination camps)に強制送還されていた。彼らの指導者の1人であったマレク・エデルマンが回想しているように、闘士たちはいくらかの尊厳(dignity)を取り戻そうとしていた。彼は次のように書き残している。「最終的には、私たちの番が来たときに、私たちを虐殺させないということだった。死に方を選ぶだけのことだった」。

絶望的な数週間が過ぎ、抵抗者たちは圧倒され、そのほとんどは殺害された。蜂起の最終日に生き残った者の中には、ナチスがガスを注入した司令部地下壕で自殺した者たちもいた。下水管を通って脱出できたのはほんの数人だけだった。その後、ドイツ兵はゲットーをブロックごとに焼き払い、火炎放射器を使って生存者たちを煙で追い出した。

ポーランドの詩人チェスワフ・ミウォシュは後に、「美しい静かな夜、ワルシャワ郊外の田舎の夜にゲットーから悲鳴が聞こえた」と回想している。

「この悲鳴には鳥肌(goose pimples)が立った。何千人もの人々が殺害される時の悲鳴だった。その悲鳴は、焚き火の赤々とした輝きの中から、無関心な星々の下から、都市の静寂な空間を通り抜け、植物が労を惜しまず酸素を放出し、空気が芳香を放ち、人が生きていてよかったと感じる庭園の慈悲深い静寂の中に入っていった。この夜の平和には特に残酷なものがあり、その美しさと人間の罪が同時に心を打った。私たちは互いの目を見なかった」。

占領下のワルシャワでミロシュが書いた詩「カンポ・デイ・フィオーリ」は、ゲットーの壁の横にあるメリーゴーランドを想起させる。メリーゴーランドに乗る人たちは、遺体の煙の中を空に向かって進み、その陽気な曲が苦悩と絶望の叫びをかき消す。カリフォルニア州バークレーに住んでいたミロシュは、アメリカ軍が何十万人ものヴェトナム人を空爆し、殺害している間、その残虐行為(atrocity)をアドルフ・ヒトラーやヨシフ・スターリンの犯罪と比較していた。「もし私たちが同情することができ、同時に無力であるならば、私たちは絶望的な憤りの中で生きているのだ(If we are capable of compassion and at the same time are powerless, then we live in a state of desperate exasperation)」とミロシュは書いている。

イスラエルによるガザ地区殲滅(annihilation of Gaza)は、西側民主政体諸国によって提供され、何百万もの人々にこの精神的試練(psychic ordeal)を何カ月も与えた。政治的悪(political evil,)の行為の自発的目撃者である彼らは、時折、生きていることは良いことだと考えることを自分自身に許しながら、イスラエルによって爆撃された別の学校で娘が焼け死ぬのを見る母親の悲鳴を聞いた。

ホロコースト(shoah)は数世代にわたるユダヤ人に傷跡を残した。1948年、ユダヤ系イスラエル人は生死を分ける問題として国民国家の誕生(birth of their nation state)を経験し、その後、1967年と1973年にも、アラブの敵による絶滅論のレトリックの中で再び経験した。ヨーロッパのユダヤ人がユダヤ人であるという理由だけでほぼ完全に消滅したという知識とともに育った多くのユダヤ人にとって、世界は脆弱(fragile)に見えざるを得ない。その中でも、2023年10月7日にイスラエルでハマスや他のパレスティナグループによって行われた虐殺と人質事件は、ホロコースト再来への恐怖を再燃させた。

しかし、歴史上最も狂信的なイスラエルの指導者たちが、蹂躙、死別、恐怖という遍在する感覚(an omnipresent sense of violation, bereavement, and horror)を利用することに躊躇しないことは、最初から明らかだった。イスラエルの指導者たちは、ハマスに対する自衛の権利を主張したが、ホロコーストの主要な歴史家であるオメル・バルトフが2024年8月に認めたように、彼らは最初から「ガザ地区全体を居住不可能にし、その住民を衰弱させて、死に絶えるか、その領土から逃れるためにあらゆる可能な選択肢を模索するようにする(to make the entire Gaza Strip uninhabitable, and to debilitate its population to such a degree that it would either die out or seek all possible options to flee the territory)」ことを目指したのである。こうして10月7日以降、何十億もの人々がガザ地区に対する異常な猛攻撃を目の当たりにした。その犠牲者たちは、ハーグの国際司法裁判所(the International Court of Justice in The Hague)で南アフリカを代表して弁論したアイルランドの弁護士ブリネ・ニ・グラレイに言わせれば、「世界が何かしてくれるかもしれないという絶望的な、今のところむなしい希望のために、自分たちの破壊をリアルタイムで放送していた」のである。

世界は、より特定すれば西側は何もしなかった。ワルシャワ・ゲットーの壁の向こうで、マレク・エデルマンは「世界の誰も何も気づかない(nobody in the world would notice a thing)」ことを「大変に恐れて(terribly afraid)」いた。ガザ地区ではそのようなことはなく、犠牲者は処刑される数時間前にデジタルメディアで自分の死を予言し、殺人犯はTikTokで自分たちの行為をさかんに流した。アメリカやイギリスの指導者たちが国際刑事裁判所や国際司法裁判所(he International Criminal Court and the International Court of Justice)を攻撃したり、『ニューヨーク・タイムズ』紙の編集者が社内メモで、「難民キャンプ(refugee camps)」、「占領地(occupied territory)」、「民族浄化(ethnic cleansing)」という用語を避けるようスタッフに指示したりと、西側の軍事的・文化的ヘゲモニー(the West’s military and cultural hegemony)の道具によって、ガザ地区のライブストリーミングによる情報発信は日々、見えないように、読めないようにされていった。

毎日が、自分たちが生活している間に、何百人もの普通の人々が殺され、あるいは自分たちの子どもが殺されるのを目撃させられているという意識に毒されるようになった。ガザ地区にいる人々、しばしば有名な作家やジャーナリストからの、自分や自分の愛する人が殺されようとしているという警告や、その後に続く殺害の知らせは、肉体的にも政治的にも無力であるという屈辱をより募らせた。無力な暗示された罪の意識に駆られ、ジョー・バイデン米大統領の顔をスキャンして慈悲の兆し、流血を終わらせる兆しを探そうとした人々は、不気味なほど滑らかな硬さを発見した。あれやこれやの国連決議、人道支援NGOの必死の訴え、ハーグの陪審員たちによる厳罰、そして土壇場でのバイデンの大統領候補交代によって喚起された正義の希望は残酷なまでに打ち砕かれた。

2024年末までには、ガザ地区の虐殺の現場から遠く離れた場所に住む多くの人々が、悲惨と失敗、苦悩と疲労の壮大な風景に引きずり込まれたことを、遠くからではあるが感じていた。これは、ただ傍観する者にとっては大げさな感情的負担に思えるかもしれない。しかし、ピカソが空からの攻撃で殺されながら叫ぶ馬と人間を描いた「ゲルニカ(Guernica)」を発表した際に引き起こされた衝撃と憤りは、ガザ地区で撮影された、父親が首のない我が子の遺体を抱く一枚の写真の影響だった。

戦争はやがて過去のものとなり、積み重なった恐怖の山は時とともに平らになるかもしれない。だが、ガザ地区では、負傷した身体、孤児となった子供たち、瓦礫の町、家を失った人々、そして、あちこちに漂う大量の死別意識と存在の中に、この惨劇の痕跡が何十年も残るだろう。そして、狭い海岸地帯で何万人もの人々が殺害され、重傷を負うのを遠くから無力に見守り、権力者の拍手喝采や無関心を目撃した人々は、心の傷と、何年も消えないトラウマを抱えて生きていくことになるだろう。

イスラエルの暴力を、正当な自衛なのか、厳しい都市環境での正当な戦争なのか、民族浄化や人道に対する罪なのか、という論争は決して決着がつかないだろう。しかし、イスラエルの一連の道徳的、法的違反行為の中に、究極の残虐行為の兆候を見出すことは難しくない。イスラエルの指導者によるガザ地区撲滅に向けた率直で決まりきった決意、ガザ地区でのイスラエル国防軍(Israel Defense ForcesIDF)による報復が不十分であることを国民が嘆くことで暗黙のうちに容認していること、犠牲者を和解不可能な悪と同一視していること、犠牲者のほとんどが全くの無実で、その多くが女性や子供だったという事実、第二次世界大戦での連合軍によるドイツ爆撃よりも比例して大きい破壊の規模、ガザ地区全体の集団墓地を埋め尽くす殺戮のペース、そしてその方法が不吉なほど非人格的(人工知能アルゴリズムに依存)かつ個人的(狙撃手が子供の頭を2発撃ったという報告が多い)であること。食料や医薬品へのアクセスの拒否、裸の囚人の肛門に熱い金属の棒が挿入されること、学校、大学、博物館、教会、モスク、さらには墓地の破壊、死んだり逃げたりするパレスティナ女性の下着を着て踊るイスラエル国防軍兵士に体現された悪の幼稚さ(puerility of evil)、イスラエルにおけるそのようなTikTokインフォテインメント(訳者註:情報[information]と娯楽[entertainment]の合成語)の人気、そして自国民の絶滅を記録していたガザ地区のジャーナリストの慎重な処刑。

もちろん、産業規模になった虐殺に伴う無慈悲さは前例がないわけではない。ここ数十年、ホロコースト(the Shoah)は人類の悪の基準を定めてきた。人々がそれを悪と認識し、反ユダヤ主義(antisemitism)と戦うために全力を尽くすと約束する程度は、西洋では彼らの文明の尺度となっている。しかし、ヨーロッパのユダヤ人が抹殺された年月の間に、多くの良心が歪められたり、麻痺したりした。非ユダヤ人のヨーロッパの多くは、しばしば熱心に、ナチスのユダヤ人攻撃に加わり、彼らの大量殺戮のニューズでさえ、西洋、特にアメリカでは懐疑的かつ無関心に迎えられた。ジョージ・オーウェルは、1944年2月になっても、ユダヤ人に対する残虐行為の報告は「鉄のヘルメットから豆が落ちるように(like peas off a steel helmet)」人々の意識から跳ね返ったと記録している。西側諸国の指導者たちは、ナチスの犯罪が明らかになってから何年もの間、大量のユダヤ人難民の受け入れを拒否した。その後、ユダヤ人の苦しみは無視され、抑圧された。一方、西ドイツは、ナチス化からほど遠いものの、ソ連共産主義に対する冷戦に加わりながら、西側諸国から安易な赦免(cheap absolution)を受けた。

記憶に残る中で起きたこれらの出来事は、宗教的伝統(religious traditions)と世俗的な啓蒙主義(the secular Enlightenment)の両方の基本的前提、つまり人間は根本的に「道徳的(moral)」な性質を持っているという前提を揺るがした。人間には道徳的性質がないという、腐った疑念が今や広まっている。冷酷さ、臆病さ、検閲の体制下での死や切断を間近で目撃した人々はさらに多く、あらゆることが起こり得ること、過去の残虐行為を覚えていても現在それが繰り返されない保証はないこと、そして国際法と道徳の基盤がまったく安全ではないことを衝撃とともに認識している。

近年、世界では多くの出来事が起こっている。それらは、自然の大災害、財政破綻、政治的激変、世界的パンデミック、征服と復讐の戦争などである。しかし、ガザ地区に匹敵する災害はない。これほど耐え難い悲しみ、困惑、良心の呵責(grief, perplexity, and bad conscience)を私たちに残したものはない。これほど、私たちの間での、情熱と憤りの欠如、視野の狭さ、思考の弱さ(lack of passion and indignation, narrowness of outlook, and feebleness of thought)を恥ずべき形で証明したものはない。西洋の若者の世代全体が、政治とジャーナリズムの長老たちの言葉と行動(そして無作為)によって道徳的に大人に成長させられ、世界で最も豊かで最も強力な民主政体国家の支援を受けた残虐行為を、ほぼ独力で認識せざるを得なくなった。

パレスティナ人に対するバイデンの頑固な悪意と残酷さは、西洋の政治家やジャーナリストたちが提示した多くのぞっとするような謎の1つに過ぎない。西側諸国の指導者たちにとって、10月7日の戦争犯罪の犯人を追及し、裁きを受けさせる必要性を認めながらも、イスラエルの過激派政権(an extremist regime in Israel)への無条件の支援を差し控えることは簡単だっただろう。それなのに、なぜバイデンは存在しない残虐行為のヴィデオを見たと繰り返し主張したのか? 元人権弁護士の英首相キール・スターマーは、イスラエルにはパレスティナ人から電力と水を差し控え、停戦(cease-fire)を求める労働党員を処罰する「権利がある(has the right)」と主張したのはなぜか? なぜ、西洋啓蒙主義(the Western Enlightenment)の雄弁な擁護者であるユルゲン・ハーバーマスは、自称民族浄化主義者たち(avowed ethnic cleansers)の擁護に飛びついたのか?

アメリカで最も古い定期刊行物の1つである『ジ・アトランティック』誌が、ガザ地区で約8000人の子供たちが殺害された後、「子供たちを合法的に殺すことは可能だ(it is possible to kill children legally)」と主張する記事を掲載したのはどうしてか? イスラエルの残虐行為を報道する際に西側主要メディアが受動態に頼り、誰が誰に、どのような状況下で何を行っているのかが分かりにくくなっているのはなぜか(「ダウン症のガザ地区在住男性が孤独死(The lonely death of Gaza man with Down’s syndrome)」というのが、障害のあるパレスティナ人男性にイスラエル兵が攻撃犬を放ったというBBCの報道の見出しだった)? なぜアメリカの億万長者たちが大学キャンパスでの抗議活動者への容赦ない弾圧を促進するのに協力したのか? 親イスラエルの合意に反抗しているように見えるという理由で、学者やジャーナリストたちが次々と解雇され、芸術家や思想家がプラットフォームを追われ、若者が就職を妨げられたのはなぜか? なぜ西側諸国は、ウクライナ人を悪意ある攻撃から守り保護しながら、あからさまにパレスティナ人を人間の義務と責任の共同体(the community of human obligation and responsibility)から排除したのか?

これらの疑問にどう対処するかに関わらず、私たちは直面している現象を正面から見つめざるを得ない。それは、西側の民主政治体制国家が共同で引き起こした大惨事(a catastrophe jointly inflicted by Western democracies)であり、1945年のファシズムの敗北後に生まれた、人権の尊重と最低限の法的・政治的規範に支えられた共通の人間性という必要な幻想(the necessary illusion that emerged after the defeat of fascism in 1945 of a common humanity underpinned by respect for human rights and a minimum of legal and political norms)を破壊したのだ。

※パンカジ・ミシュラ:インドのエッセイスト、小説家。『怒りの時代: 現在の歴史(Age of Anger: A History of the Present)』、『帝国の廃墟から:アジアを再構築した知識人たち(From the Ruins of Empire: The Intellectuals Who Remade Asia)』など、その他数冊のノンフィクションおよびフィクションの著書がある。

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 古村治彦です。

 昨年10月から始まった、イスラエル・ハマス紛争は8カ月を経過し、終息の兆しを見せていない。イスラエルは、ハマスの殲滅と人質奪還のために、ガザ地区での軍事作戦を遂行中であるが、パレスティナの民間人の犠牲者が3万7000人を超え、停戦に向けての国際的な圧力が高まっている。

 昨年のハマスの攻撃から、イスラエルでは中道派も入っての戦時内閣が形成され、紛争へ対処してきた。中道派野党「国民の団結」から、代表のベニー・ガンツ前国防相が閣僚として、ガディ・アイゼンコット元参謀総長がオブザーバーとして、入閣した。残りの4名はベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる与党リクードのメンバーである。ガンツとアイゼンコットは、イスラエル国防軍の参謀総長経験者である。国家団結が内閣から離脱ということで、挙国体制の戦時内閣が形成できないことから、戦時内閣の解散ということになった。ネタニヤフ内閣自体は、右派、極右派の連立政権となっている。
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 ガンツは、ネタニヤフ内閣には、ガザにおける戦争戦略の欠如を指摘し、「真の勝利に向けて前進させる」ことを阻害しているとしてネタニヤフを非難した。そして、速やかなクネセト(議会)選挙の実施を求めた。これは、イスラエル国内の、戦争に対する不満や、ネタニヤフ首相の腐敗に対する反感を反映したものだ。

 ネタニヤフ首相は、自身がスキャンダルを抱える身であり、戦争が終了する、選挙に負けるということになれば、逮捕・訴追を受ける可能性が高い。そうした面からも、戦争が継続することは彼個人にとって利益となる。国際社会は、事態のエスカレーションを望んでいない。イスラエルを手厚く支援しているアメリカも停戦を求めている。そうした中で、ネタニヤフは、極右派に更に依存し、戦争を進めていくことになる。

ガンツは、今年5月にレバノン国境の安全について発言している。イスラエルはガザ地区でのハマスの掃討作戦を行い、北部のレバノン国境では、ヒズボラとの戦いを続けている。ハマスもヒズボラもイランからの支援を受けているが、ヒズボラの方が武器のレヴェルが高く、かつ、練度も高い。イスラエルは両組織よりも軍事力としては圧倒的に上であるが、二正面作戦を長期間にわたって継続することで、イスラエル国内では、経済的、社会的な損失を被ることになる。
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 イスラエル・ハマス紛争については、やはりアメリカが圧力を強めての停戦、人道支援の実現ということが重要だ。中道派離脱による戦時内閣の解散は、イスラエルの戦争継続に影響を与えることになるだろう。アメリカとイスラエルは、何が自分たちの国益に適うことなのかを冷静に計算し、判断するべき時に来ている。

(貼り付けはじめ)

●「イスラエル首相、戦時内閣を解散 主要閣僚辞任で「必要性なくなった」と」

2024618日 BBC NEWS Japan

https://www.bbc.com/japanese/articles/cnllv42qn9zo

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は16日、パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラム武装組織ハマスとの戦闘を指揮するために昨年10月に発足させた戦時内閣を解散した。中道派のベニー・ガンツ前国防相とその盟友のガディ・アイゼンコット元参謀総長が、6人からなる戦時内閣を辞任したことを受けてのもの。

政府報道官は17日、ガザでのハマスとの戦闘については既存の安全保障内閣と、それより大規模な内閣全体で決定していくと説明した。

ガンツ前国防相が9日に、ガザにおける戦争戦略の欠如を理由に戦時閣僚ポストを辞任して以降、政権閣僚を務める複数の極右政党幹部が後任として戦時内閣入りすることを求めていた。

戦時内閣を解散することでネタニヤフ首相は、連立政権に参加する極右政党や同盟国とのやっかいな状況を避けることになる。

イスラエル国防軍(IDF)の報道官は、指揮系統への影響はないとしている。

ガンツ氏とアイゼンコット氏はいずれもIDFの参謀長を務めた退役将軍。2人は昨年10月の開戦から数日後、ネタニヤフ氏率いる右派連合との挙国一致政府に加わった。

ガンツ氏は辞任の際、ネタニヤフ氏が「我々が真の勝利へ近づくことを妨げている」と述べた。

ガンツ氏の辞任発表直後、極右政党を率いるイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相は、自分を戦時内閣に参加させるよう要求した。

■ガンツ前国防相辞任で戦時内閣「必要なくなった」

ネタニヤフ氏は16日夜、新たなメンバーを迎え入れるのではなく、戦時内閣を解散することに決めたと閣僚に伝えた。

首相は「戦時内閣はベニー・ガンツの要請による連立協定にもとづいたものだった。ガンツが同内閣を去った今、この政府の追加部局はもう必要ない」と述べたと、ダヴド・メンサー政府報道官は17日の定例会見で述べた。

また、「安全保障内閣は、内閣全体とともに、決定を下す権限を国から与えられている」と付け加えた。

イスラエル紙ハアレツは、これまで戦争内閣が議題にしてきた問題のいくつかは、安全保障内閣が担当することになるだろうと報じた。同内閣はベン=グヴィル氏や極右のベザレル・スモトリッチ財務相ら14人で構成される。

同紙によると、センシティブな決定は「より小規模な協議の場」で扱われることになる。そこにはヨアヴ・ガラント国防相やロン・デルメル戦略担当相、超正統派政党シャス党のアリエ・デリ党首が含まれる見込み。この3人は戦時内閣に名を連ねていた。

IDFの作戦に影響なしと、政府と対立も

IDFのダニエル・ハガリ報道官は17日、このような動きがIDFの作戦に影響を与えることはないと主張した。

「閣僚が交代し、方法が変更される。我々には階層というものがあり、指揮系統を知っている。我々は指揮系統に従って動いている。これは民主主義だ」

ハマスは昨年107日、イスラエル南部に前代未聞の攻撃を仕掛けた。これを受け、IDFはハマス壊滅を掲げてガザでの作戦を開始した。ハマス運営のガザ保健省は、同地区で37340人以上が死亡したとしている。

イスラエル政府内ではこの1日の間に、緊張が増している様子。IDFはガザへの人道支援物資の搬送を増やすため、ガザ南部ラファ近郊で日中の「軍事活動の戦術的一時停止」を導入する決定を下したが、ネタニヤフ氏と極右閣僚たちはこれを批判した。

この軍事活動の一時停止は、ラファの南東にあるイスラエル支配下のケレム・シャローム検問所から支援物資を集め、ガザを南北に走る主要ルートまで安全に輸送できるようにするもの。イスラエルが先月にラファでの作戦を開始して以降、同検問所で物資が滞留している。

しかし、ベン=グヴィル氏はこれは愚かな方針だと批判。ネタニヤフ氏は、「我々は軍隊を持つ国であって、国を持つ軍隊ではない」と述べたと、イスラエルメディアは報じた。

IDFは人道支援が確実にガザに届くよう、政治指導者たちの命令を遂行したとしている。

また、活動の一時停止はガザ南部での戦闘停止を意味するものではないとしており、現地では何が起きているのか混乱が生じている。

ガザで最大の人道支援組織、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、17日時点もラファや南部の他地区で戦闘が続き、「作戦上はまだ何も変わっていない」と報告している。

こうした中、IDFは部隊が「ラファで、情報に基づいて標的を絞った作戦を続けている」とした。また、ラファのタル・アルスルタン地区では複数の武器を発見したほか、爆発物が仕掛けられた建造物を攻撃し、「数人のテロリスト」を排除したという。

UNRWA推計では、ラファには今も65000人が避難している。ハマス戦闘員の根絶とパレスチナの武将集団が使用するインフラ解体のため「限定的な」作戦とIDFが呼ぶものを開始する以前は、この街には140万人が避難していた。

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ガザ紛争戦時内閣の解散でイスラエルの分極化が進む(Israel grows more polarized as Gaza wartime Cabinet dissolves

ブラッド・ドレス筆

2024年6月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/4728638-gaza-war-israel-cabinet/

今週の戦時内閣(wartime Cabinet)の正式な消滅は、ガザでの紛争をめぐってイスラエルがいかに分極化(polarized)しているかを明らかにし、かつては団結していた連合が現在、紛争の方向性(conflict’s direction)、人質の返還(return of hostages)、増大するヒズボラの脅威(growing threat from Hezbollah)をめぐって争っている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が率いる内閣から、野党指導者ベニー・ガンツが退いたことで、イスラエルの指導者であるネタニヤフ首相は、極右政党の同盟者たちへの依存度を高めることになる。それによって、人質解放と停戦(cease-fire)に向けた合意形成に向けた取り組みが複雑になる可能性がある。

世界的な防衛情報会社「モザイク(MOSAIC)」社の最高経営責任者(CEO)であるトニー・シエナは、ガンツの「穏健な影響力(moderating influence)」がなければ停戦と人質解放の合意形成の可能性は低いと述べ、ネタニヤフ首相がガザ地区で積極的な行動に出る可能性が更に高まるかもしれないと付け加えた。

シエナは、ネタニヤフ首相の同盟者であるベザレル・スモトリッチ財務相とイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相の名前を挙げている。彼らは、最近、ガザへの人道支援を促進するためにイスラエル軍が日中に戦術的一時停止を行っていることに抗議した。

シエナは次のように語った。「彼らが一時停止を批判したという事実は、ネタニヤフ首相が、より大胆になることで、この状況が今後どうなるかを示している。それは彼に自分の力を再確認する機会を与える」。

ガザ地区には、約120人のイスラエル人の人質が残っているが、何人が生存し、ハマスに拘束されているのかは不明だ。

イスラエルは、数千人のハマスの戦闘員を殺害したと主張しているが、過激派組織ハマスは、イスラエルが以前に掃討した地域で再び勢力を拡大し続けている。イスラエル軍がガザ地区南部の都市ラファで最後に残ったハマスの各大隊と交戦しており、紛争は、ほぼ9カ月を経て、変曲点(inflection point)に達しつつある。しかしイスラエル政府高官たちは、紛争は今年いっぱい続く可能性があると述べている。

イスラエルでは戦争に対する不満が高まっており、イェルサレムにあるネタニヤフ首相の自宅近くで、月曜日の夜にデモが行われ、抗議活動参加者たちが大挙して不満を表明した。

不満を抱いたイスラエルの抗議活動参加者たちは再選挙を要求しており、ガンツとその同盟者たちもこれを推進している。しかしネタニヤフ首相は、それは戦争から注意を逸らす行為(distraction from the war)に過ぎないと言って、これらの呼びかけを拒否した。

大西洋評議会のミレニアムフェローであるアルプ・セビムリソイは、有権者が戦争に対処するための代替案を模索しているため、イスラエルでは「選挙が迫っている(election is looming)」と述べた。

セビムリソイは、「ベニー・ガンツや他の多くの人が戦争全般を支持しているとしても、少なくとも言論を通じて、戦争に向けた代替ロードマップの準備を始めたいという願望は多くの人にある」と述べた。

ガザ地区が更なる人道危機に陥る中、イスラエルは、国際的に、戦争を終わらせるよう求める更なる圧力に直面している。ガザでは3万7000人以上が死亡し、パレスティナ人は食料や水などの基本的必需品にアクセスできない。

ガザ戦争に関して、イスラエルに対する大量虐殺の告発を審理している国連の最高裁判所である国際司法裁判所(International Court of Justice)は、イスラエルに対しラファでの攻撃を停止するよう求めた。そして、独立の国際刑事裁判所は、ガザ紛争に関連した戦争犯罪の容疑で、ネタニヤフ首相とイスラエル国防相ヨアヴ・ガラント、ハマスの幹部らに対する逮捕状を発行した。

戦時内閣では、ガンツ、ネタニヤフ、ガラントの3人のメンバーの間に団結が投影されていた。 

また、ネタニヤフ首相とガンツのような対立する人物たちは、ガザ地区での紛争や、イランの支援を受けた過激派・政治組織ヒズボラがイスラエルにロケット弾や大砲を撃ち続けるレバノンとの国境での紛争をめぐり、意思決定のバランスを取ることも可能にしていた。

アメリカ国家安全保障ユダヤ研究所のマイケル・マコフスキー所長兼最高経営責任者(CEO)は、戦時中の内閣の方が「国にとって良かった(better for the country)」と述べた。

マコフスキーは、「イスラエルの自然な分裂状態は、数カ月ぶりに再発しており、これは状況を更に悪化させる可能性が高い。彼らはガザにどのように対処するかについても解決する必要があるのでこれは不幸なことだ」と述べた。

ガンツが戦時中の政策プロセスに関与しなくなったことで、ネタニヤフ首相に対する政治的圧力はより強まる可能性が高い。

中東研究所のイスラエル担当上級研究員ニムロッド・ゴーレンは、内閣とともに危機感と団結の必要性が消滅しており、ガンツはネタニヤフ首相との連携で「本当にチャンスを与えたのだが、成功できなかった」と述べた。

ゴレンは、戦争への不満が高まる中、一部のイスラエル国民はネタニヤフ首相抜きの新たな指導部を求めるだろうと予想した。

ゴレンは、「人々は現状にうんざりしている。人質は戻ってこない。一般的に言って、より多くの兵士が殺されている。南部と北部の状況は何も変化がなく続いている。戦争は長引いており、戦略目標が何なのかは明らかではない」と述べた。

今月初めに、テレビ中継された辞任を表明する声明発表の中で、ガンツは「真の勝利に向けて前進させる」ことを阻害しているとしてネタニヤフを非難した。

今年5月、ガンツは、ネタニヤフが以下のことを実行しない場合には辞任すると記載した最後通告を発した。ガンツが突きつけた条件とは、レバノン国境にいる住む場所を奪われたイスラエル避難民の帰還、人質の解放とハマスの殲滅、サウジアラビアとの国交正常化の道筋をつけること、ガザ地区に政府を樹立することの諸計画を発表するというものだ。

ガンツと同様、ガラントもまた、ネタニヤフ首相のガザ戦後計画について公の場で懸念を表明し、ハマス壊滅への道筋をめぐって首相と激しく議論してきた。

ネタニヤフ首相は、イスラエルがガザ地区に関して、無期限で治安管理し(indefinite security control)、過激派組織ハマスとつながりのないパレスティナ人が沿岸部の領土を統治することを含む、戦後計画の曖昧な概要しか発表していない。

ヒズボラとの紛争に対処するイスラエルの苦闘は、より深い問題にもなりつつある。イスラエルは、レバノン国境での戦闘から逃れた約8万人のイスラエル人避難民の帰還を望んでいる。

ガラントは、ヒズボラの壊滅を主張しているが、アメリカや他の同盟諸国は外交を通じて緊張を和らげようとしており、イスラエルに対してエスカレーションさせないように警告している。ネタニヤフ首相は、2006年にイスラエルとヒズボラとの間で起こった、犠牲を伴う戦争の舞台となったレバノンを攻撃することに前向きではないようだ。

しかしガンツが内閣から退いたことで、ネタニヤフ首相はガラントや、ヒズボラとの全面戦争を望むスモトリッチ財務相やベン=グヴィル国家安全保障相のような極右の同盟者の攻撃を受けやすくなる可能性がある。

大西洋評議会のアルプ・セビムリソイは、ネタニヤフ首相は、レバノン問題で中道寄りにシフトしているとしながらも、イスラエルの指導者がヒズボラを含む未解決の「軍事的目標の多くに取り組む」ことを近いうちに期待すると付け加えた。

セビムリソイは、イスラエルは「前回の紛争で未解決だった問題の解決」を目指しているため、イスラエル国防軍に言及し、「レバノンへのイスラエル軍の対応が見られるだろう」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 イスラエル・ハマス紛争は長期化している。イスラエルはハマスのせん滅と、2023年10月7日に連れ去られた人質の解放を目指している。ハマスはガザ地区での抵抗を続けて、民間人の犠牲者が増えている。ハマスはイスラエルの存在を認めておらず、パレスティナとの二国共存はそもそも彼らの中にはない。イスラエルの右派・強硬派にとっても、二国共存という選択肢は存在しない。二国共存の否定という点では、ベンヤミン・ネタニヤフ首相もハマスも奇妙な一致をしている。パレスティナ穏健派、イスラエル穏健派は二国共存で妥協しているので、いわば、両方の強硬派が暴れているということになる。

 アメリカのジョー・バイデン政権はイスラエルに対して厳しい姿勢を取りつつある。イスラエルに対して、と言うよりも、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に対してという方がより正確だ。アメリカとしては、ガザ地区での報復攻撃を停止し、停戦させたい。しかし、イスラエルは攻撃を停止しようとしない。アメリカ国内では民主党支持が多い若者・学生たちが抗議活動を活発化させており、大統領選挙を控えるバイデン政権としては、イスラエルを抑えたいということになる。国外的にも、イスラエルに対する批判は高まっており、イスラエルを支援しているアメリカに対しても批判がなされている。

今回、紹介する、スティーヴン・M・ウォルトの論稿では、国際関係論のリアリストたちがイスラエルのガザ地区での攻撃に反対しており、その理由について述べている。リアリストたちは戦争の限界や国家の重要性を認識し、イスラエルの戦略は失敗すると結論づけている。イスラエルの行動とアメリカの関与はアメリカの世界的立場を弱め、ロシアや中国の利益を高めている。一方、アメリカは数十億ドルを支援し、他の重要な問題に時間やエネルギーを費やすべきだと指摘されている。

結果として、アメリカのリーダーシップは揺らぎ、中国やロシアの影響力が増している。リアリストは、現在の政策がアメリカの安全や価値観に反するものであり、安全をもたらすには紛争を政治的に解決する必要があると主張している。彼らは、戦略的利益と道徳的志向を同時に追求できる政策を求めており、アメリカとイスラエルが行っていることに疑問を投げかけている。

 アメリカは国益という観点から、戦後の冷戦期から長きにわたり、イスラエル支援を続けてきた。しかし、世界の構造は大転換を迎えつつある。世界の構造が変われば、アメリカの国益も変化する。イスラエル支援が、アメリカの国益に適うかどうか、ということがこれから重要になっていく。

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リアリストたちはガザ地区での戦争に反対する理由(Why Realists Oppose the War in Gaza

-もし、あなたがリアリズムの姿勢に驚いているのなら、それはリアリズムを本当に理解していないからだ

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年5月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/21/why-realists-oppose-the-war-in-gaza/?tpcc=recirc062921

写真

イスラエル南部のガザ国境付近に陣取る部隊のあるイスラエル兵が、自走砲榴弾砲の砲身に頭を預ける(2023年10月9日)。

一見したところ、外交政策分野のリアリストたちは、イスラエルがガザ地区で行っていることなど、どうでもよいと思っているように見える。確かに人道的災害であり、大量虐殺の可能性もあるが、国際政治を行う上で残忍な行動がそれほど珍しいことだろうか? 中央的な権威のないこの世界では、政府は自分たちが得をし、誰もそれを止めないと考えれば、本気になって攻撃を行うということを、リアリストたちは真っ先に指摘するのではないだろうか? 真珠湾攻撃や911後のアメリカの対応、ウクライナでのロシアの動き、スーダンでの対立勢力の動きを考えてみれば、私の言っていることが理解できるだろう。

しかし、チャス・フリーマン、ジョン・ミアシャイマー、そして、僭越ながら私を含む著名な外交政策リアリストたちは、イスラエルのガザ地区での行動とイスラエルの行動を支持するバイデン政権の姿勢を強く批判している。世界政治に対する、硬派で感傷的でないアプローチの信奉者たちが、突然道徳(morality)について語るのは奇妙ではないか?

いや、そうではない。

こうした混乱の一部は、リアリズムについてのよくある誤解(common misconception)から生じている。つまり、リアリズムの支持者たちは、外交政策の遂行において倫理的考慮(ethical considerations)はほとんど、あるいは全く役割を果たすべきではないと考えている、という誤解である。これは馬鹿げた批判(silly charge)であり、リアリストたちの著書をざっと読むだけでも分かる。ハンス・J・モーゲンソーは、政治的効力(political efficacy)と道徳的原則(moral principles)の間の緊張関係を探求した本を1冊書き、「[政治の]道徳的問題は声を上げて答えを求めている(the moral issues [of politics] raise their voice and demand an answer)」と強調した。EH・カーは真のリアリストではなかったが、リアリストの古典的著作を一冊書き、政治生活から道徳的配慮を排除することはできないと明言した。ケネス・ウォルツの国際政治に関する著作のほとんど全ては、平和の問題と、それを強化または損なう条件や政策に焦点を当てており、彼は強力な国々が理想主義的な目的を追求するために悪行を犯す傾向(the tendency of powerful states to commit evil acts in the pursuit of idealistic objectives)を繰り返し批判した。そして、ジョージ・ケナン、ウォルター・リップマン、モーゲンソー、ウォルツなどの著名なリアリストたちや、彼らの知識人の後継者たちは、戦略的および道徳的見地から、アメリカが最近選択した戦争の多くに反対した。

全ての人間と同様、リアリズムが世界政治を考える上で役立つと考える私たちも道徳的信念を持っており、そうした原則がより一貫して守られる世界(a world where those principles were observed more consistently)に住みたいと願っている。実際、リアリストたちが国際政治の道徳的側面に関心を持つのは、国家やその他の政治グループがいかに簡単に不道徳な行為を犯すかを認識しているからだ。リアリストたちはガザ地区で起きていることに驚いていない。前述のように、他の多くの国も自国の重大な利益が危険に晒されていると感じたときに恐ろしい行為を行ってきた。しかし、だからといってリアリストたちがイスラエルとアメリカの行為を承認している訳ではない。

ガザ地区での戦争に対するリアリストたちの批判は、軍事力の限界とナショナリズムの重要性(the limits of military power and the importance of nationalism)を認識していることから生じている。彼らは、外国の侵略者たちが武力で他民族を支配・破壊しようとするときに、通常直面する困難を痛感している。だからこそ、イスラエルがガザ地区を爆撃・侵攻して、ハマス壊滅を図ろうとする試みは失敗する運命にあると結論づけたのだ。ハマスがイスラエルの猛攻撃を生き延びようとしていることは益々明らかであり、たとえ生き延びられなかったとしても、パレスティナ人たちが占領され、基本的な政治的権利が否定され、徐々に土地を奪われていく限り、新たな抵抗組織が出現するに違いない。

同様に重要なのは、リアリストたちがイスラエルの行動(およびそれに対するアメリカの共謀[U.S. complicity])に反対するのは、その組み合わせがアメリカの世界的立場を弱めているからだ。ガザ地区での戦争は、アメリカの「ルールに基づく秩序(rules-based order)」への関与が無意味であることを明らかにした。率直に言って、アメリカ政府高官たちがいまだに真顔でその言葉を口にできるとは信じがたい。最近の国連総会(U.N. General Assembly)でのパレスティナへの新たな「権利と特権(rights and privileges)」付与の投票は、賛成143、反対9、棄権25で可決されたが、これはアメリカの孤立(isolation)が深まっていることを如実に示している。停戦(cease-fire)を求める国連安全保障理事会(U.N. Security Council)の決議(resolution)に対するアメリカの度重なる拒否権(veto)も同様だ。国際刑事裁判所(International Criminal CourtICC)の最高検察官(top prosecutor)は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ギャラント国防相に対し、戦争犯罪と人道に対する罪(war crimes and crimes against humanity)で逮捕状(arrest warrants)を請求した(ハマスの指導者ヤヒヤ・シンワル、イスマイル・ハニヤ、モハメド・ディアブ・イブラヒム・アル・マスリも対象となっている)。ワシントンは間違いなくこの措置を拒否するだろうが、これはワシントンが世界の多くの国々といかに足並みを揃えていないかを更に強調することになる。

各種世論調査では、アメリカの人気は中東で大幅に低下し、ヨーロッパでもわずかに低下している一方、中国、ロシア、イランへの支持が高まっていることも示されている。戦争開始か1カ月も経たないうちに、親イスラエルのワシントン近東政策研究所(Washington Institute for Near East Policy)の報告書では次のように書かれている。「ガザ地区での戦争により、アメリカは敵国に負けつつある。この戦争でアメリカがプラスの役割を果たしていると考えるアラブ人の割合はわずか7%で、ヨルダンなどの国では2%にまで低下している。対照的に、中国が紛争でプラスの役割を果たしていると考えるアラブ人の割合は、エジプトで46%、イラクで34%、ヨルダンで27%であった。加えて、この戦争でイランが大きな恩恵を受けているようだ。平均すると、イランが戦争にプラスの影響を与えたと答えた人の割合は40%であるのに対し、マイナスの影響を与えたと答えた人は21%である。エジプトやシリアなどの国では、イランがガザに良い影響を与えていると答えた人の割合はさらに高く、それぞれ50%と52%に達している。」

そして戦争は安くつくことはない。アメリカ連邦議会は、イスラエルがガザ地区を壊滅させるための数十億ドルの追加援助を承認した。また、私たちが支援している「同盟国(ally)」が人道支援(humanitarian aid)を届けるために救援団体にトラックを送らせてくれないため、アメリカが建設しなければならなかった浮桟橋のための3億2000万ドルもある。アメリカ軍はイエメンのフーシ派に対し、高価なミサイルや爆弾を使い果たしている。フーシ派はイスラエルがやっていることに抗議して、紅海やその周辺の船舶を恐怖に陥れ始めたのだ。私には分かっている。しかし、ガザ地区でパレスティナ人を殺すのを助ける代わりに、アメリカ人を助けるためにこのお金を使うのはいいことだ。今度、アメリカ連邦議会の予算タカ派が国内プログラムを削減しなければならないと言い出したら、彼らがイスラエルの戦争にどれだけ熱心にお金を出していたかを思い出して欲しい。

この戦争はまた、バイデン政権高官たちの膨大な時間、エネルギー、そして関心を浪費している。アントニー・ブリンケン国務長官とウィリアム・バーンズCIA長官は何度も現地に赴き、数え切れないほどの時間をこれらの問題に費やしてきた。ジョー・バイデン米大統領を含む他の高官たちも同様だ。アメリカの指導者たちがイスラエルとパレスティナのおよそ1500万の人々の間の紛争に費やしてきた時間は、他の重要な同盟国を訪問したり、ウクライナでより良い政策を考案したり、アジアで効果的な経済戦略を開発したり、気候変動に対処するために世界的な支援を集めたり、あるいははるかに重要な問題の数々に費やすことができなかった時間である。

勝者は誰だ? もちろんロシアと中国だ。世界中の多くの人々、特にグローバルサウスの多くの人々にとって、ガザ地区での大虐殺は、ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席が繰り返し主張している、アメリカの世界的な「リーダーシップ(leadership)」は紛争と苦しみの種をまいており、力がより平等に分配される、多極秩序(multipolar order)の方が世界はより良くなるという主張を正当化するものだ。あなたはその主張に同意しないかもしれないが、何百万人もの人々が既に同意しており、私たちの現在の政策により、その主張ははるかに信憑性があるように見えてしまっている。一方、中国の指導者たちは、ネタニヤフから屈辱を受ける特権を得るためにイスラエルに飛んで時間を無駄にしてはいない。彼らは関係を修復し、経済関係を育み、ロシアとの「無制限の(no limits)」パートナーシップを強化することに忙殺されている。彼らは、ガザ地区での戦争が、アメリカにとって高くつく混乱になったことに、毎日感謝しているに違いない。

最後に、リアリストたちはイスラエルの行動に反対している。なぜなら、それがアメリカにまったく戦略的利益(strategic benefits)をもたらさないからだ。その価値は誇張されることもあったが、冷戦中はイスラエルが中東におけるソ連の影響に対する有効なチェック機能を果たしたともっともらしく主張できた。しかし、冷戦は30年以上前に終結しており、今日、イスラエルへの無条件の支援は、アメリカ人の安全を高めていない。イスラエル擁護者の中には、イスラエルがイランに対する強力な防壁であり、テロに対する貴重なパートナーであると主張する者もいる。彼らが言及していないのは、アメリカとイスラエルの関係が、アメリカがイランとの関係を悪化させている理由の1つであり、アルカイダのようなテロリスト勢力がアメリカを攻撃することを決めた理由の1つであるということだ。

明白な事実は、ガザ地区を爆撃して石器時代(Stone Age)に戻しても、アメリカ人はより安全になったり、より豊かになったりはしないということであり、それはアメリカ人が主張したい価値観とはまったく相容れない。むしろ、故オサマ・ビン・ラディンのような反米テロリストの新世代を刺激すれば、アメリカの安全はわずかに低下するかもしれない。また、この政策でイスラエルが安全になるものでもない。紛争を政治的に解決することだけが、安全をもたらすのである。

だからこそ、私のようなリアリストたちは、アメリカとイスラエルが現在行っていることに首をかしげるのだ。稀で素晴らしい状況では、国家は戦略的利益(strategic interests)と道徳的志向(moral preferences)を同時に促進する政策を追求できる。また別の場合には、両者のトレードオフに直面し、難しい選択を迫られる(通常は前者を優先する)。しかし今回の場合、アメリカは戦略的利益を積極的に損ない、罪のない人々の大量殺戮を支援している。その主な理由は、アメリカの指導者たちが紛争に関する時代遅れの見解にとらわれ、強力な利益団体に過度に従順であるためだ。良きリアリストにとっては、善良な目的なしに悪事を働くことは、最悪の罪業(sin)である。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 中東におけるキープレイヤーとしては、サウジアラビア、イラン、イスラエル、アメリカが挙げられる。これらの国々の関係が中東情勢に大きな影響を与える。アメリカは、イスラエルと中東諸国との間の国交正常化を仲介してきた。バーレーンやアラブ首長国連邦(UAE)といった国々が既にイスラエルとの国交正常化を行っている。アメリカにとって重要なのは、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化であった。昨年、2023年前半の段階では、国交正常化交渉は進んでいた。こうした状況が、パレスティナのハマスを追い詰めたということが考えられる。

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中東諸国がイスラエルと国交正常化を行うと、自分たちへの支援が減らされる、もしくは見捨てられるという懸念を持ったことが考えられる。ハマスをコントロールしているのはイランであり、イランの影響力はより大きくなっていると考えられる。イランは、レバノンの民兵組織ヒズボラも支援している。イランは、ハマスとヒズボラを使って、イスラエルを攻撃できる立場にいる。イランの大後方には中国がいる。

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 イスラエルとしては、サウジアラビアと国交正常化を行い、中東地域において、より多くの国々をその流れに乗せて、自国の安全を図りたいところだった。イランを孤立させるという考えもあっただろう。しかし、ここで効いてくるのが、2023年3月に発表された、中国の仲介によるサウジアラビアとイランの国交正常化合意だ。これで、イランが中東地域で孤立することはなくなった。イスラエルとすれば、これは大きな痛手となった。そして、アメリカにしてみても、自国の同盟国であるサウジアラビアが「悪の枢軸」であるイランと国交正常化するということは、痛手である。これは、中国が中東地域に打ち込んだくさびだ。

 アメリカはサウジアラビアと防衛協定を結ぼうとしているが、それには、イスラエルとの関係が関わってくる。アメリカはサウジアラビアとイスラエルという2つの同盟国を防衛するということになるが、サウジアラビアとイスラエルとの関係が正常化されないと、アメリカとサウジアラビアとの間の防衛協定交渉も進まない。サウジアラビアのアメリカ離れということもある。ここで効いてくるのはサウジアラビアとイランの国交正常化合意だ。アメリカとイスラエルの外交が難しくなり、中国の存在感が大きくなる。

(貼り付けはじめ)

サウジアラビアは次のエジプトへの道を進んでいる(Saudi Arabia Is on the Way to Becoming the Next Egypt

-アメリカ政府はリヤドとの関係を大きく歪める可能性のある外交協定を仲介している。

スティーヴン・クック筆

2024年5月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/08/saudi-arabia-us-deal-israel-egypt/?tpcc=recirc062921

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サウジアラビアの紅海沿岸都市ジェッダのホテルで開催されたジェッダ安全保障・開発サミット(GCC+3)期間中に、家族写真のために到着したジョー・バイデン米大統領とサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子(2022年7月16日)

彼らはそうするだろうか、それとも、しないだろうか? それがここ数週間、中東を観察している専門家たちが問い続けてきた疑問だ。アメリカとサウジアラビアは、両国当局者たちが少なくとも2023年半ばから取り組んでいる大型防衛協定プラス協定(big defense pact-plus deal)を発表するだろうか?

2024年4月末のアントニー・ブリンケン米国務長官のリヤド訪問と、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官の保留中のリヤド訪問計画により、合意の可能性の話に緊迫感と期待感が注入された。報道によると、サウジアラビアとジョー・バイデン政権は準備ができているが、「いくつかの障害は残っている(obstacles remain)」という。これはイスラエルを指す良い表現だ。

ワシントンとリヤドの当局者間の協議が始まったとき、バイデン政権はサウジアラビアとの単独合意では、米連邦議会から適切な支持は決して得られないという確信を持っていた。連邦上院で過半数を占める民主党の議員と少数派の共和党の議員(防衛協定に署名する必要がある)は、アメリカをサウジアラビアの防衛に関与させることに二の足を踏む可能性が高い。しかしホワイトハウスは、そのような協定がイスラエルとサウジアラビアの国交正常化を巡るものであれば、連邦議会の支持が得られる可能性が高いと推測していた。

2023年9月時点では、それは素晴らしいアイデアだったが、今ではやや理想的過ぎる考えになっている。ガザでの7カ月にわたる残忍な戦争の後に、サウジアラビアがイスラエルとの国交正常化実現に求めている代償は、イスラエル人にとって大き過ぎ、イスラエル人の約3分の2がこの考えに反対している。それだけに基づいて、国防協定のための正常化協定を追求し続ける正当性はない。

しかし、ワシントンの当局者、そして、特にリヤドは、いずれにせよイスラエルをこの協定案から外したがっているはずだ。そうでなければ、アメリカとサウジアラビアの二国間関係に三国間関係の論理を持ち込むことになる。アメリカとエジプトの関係が何かを示すものであるとすれば、それはワシントンとリヤドの関係を深く不利な方向に歪めかねない。

ジョー・バイデン米大統領がサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子を本質的にペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物、persona non grata)であると宣言し、米連邦議会の議員たちがサルマン王太子の人権侵害疑惑の責任を追及するよう要求したのは、ずいぶん昔のことのように思える。

リヤド当局者たちが当時予測していたように、バイデン大統領がサウジアラビアの指導者たちを必要とする時が来るだろう。彼らはそれほど長く待つ必要がなかった。新型コロナウイルス感染拡大後の旅行客の急増とロシアのウクライナ侵攻によるガソリン価格の上昇圧力は、ホワイトハウスに特別な難題を突きつけた。その結果、世界規模のエネルギー価格の高騰はアメリカ経済の健全性を脅かし、ひいてはバイデンの選挙での見通しを脅かした。このためバイデンはリヤドに外交官を派遣し、最終的には2022年7月に自らリヤドを訪問するに至った。サウジアラビア政府高官たちにもっと石油を汲み上げるよう説得し、アメリカ人のガソリン代負担を軽減させ、大統領は低迷する世論調査の数字を少しでも改善することを望んでいた。

そして、エネルギー価格の高騰が部分的に後押ししたインフレと、ヨーロッパにおけるロシアのウクライナ侵攻は、ホワイトハウスの中国に対する厳しいアプローチを背景にしていた。バイデンは政権発足当初から、世界中で北京を出し抜くことを優先課題としていた。最も影響力のあるアラブ国家として、サウジアラビアはその戦略の重要な要素になると期待されていた。

そしてイランの脅威が存在した。ドナルド・トランプ米大統領(当時)が2018年にワシントンを脱退させた核合意である「包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action)」にテヘランが再加盟するよう、米政府高官たちが政権発足後2年の大半の期間を費やして追い回した結果、バイデンは、イランが実際にはアメリカやペルシャ湾西側の近隣諸国との新たな関係を望んでいないという結論に達したようだ。

結果として、アメリカ政府はイランの封じ込め(containing)と抑止(deterring)を目的とした、地域の安全保障を強化する取り組みに乗り出したが、その取り組みにおいてサウジアラビアが重要な役割を果たすことが期待されている。しかし、核合意と、2019年の自国領土へのイラン攻撃に対するトランプ大統領の反応に消極的だったことを受けて、リヤド当局者らは賢明に振舞った。その結果、彼らは現在、サウジアラビアの安全保障に対するアメリカの取り組みを大枠で規定する、正式な合意を望んでいる。

2017年と2018年に自らが負った傷のせいで、米連邦議事堂内におけるサウジアラビアの不人気が続いており、その結果、かつてはサウド家の忠実な召使であったが、ムハンマド王太子を激しく批判するようになった、ジャーナリストのジャマル・カショギの殺害にまで至ったことを考えると、連邦議会では支持大きいイスラエルが協定を締結するはずだった。しかし、このアイデアはうまく設計されているかもしれないが、サウジアラビアとアメリカとの防衛協定のための、サウジアラビアとイスラエルとの国交正常化は、アメリカとサウジアラビア当局者が最も重要であると信じている関係に、重大な下振れリスクをもたらすことを示している。

アメリカのサウジアラビアへの関与が、サウジのイスラエルとの国交正常化を条件とするならば、その関係、すなわちイスラエルとサウジアラビアの関係の質は、明白な意味でも、そうでない意味でも、ワシントンとリヤドの二国間関係に影響を及ぼす可能性が高い。

エジプトは、このダイナミズムがどのように展開するかを示す典型的な例である。ホスニ・ムバラク前大統領の時代を通じて、とりわけ長期政権末期には、アメリカ・エジプト・イスラエルの三者関係の論理がエジプト政権に対する、破壊的な政治批判をもたらした。ムバラクの敵対勢力、特にムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)は、イスラエルのせいで、ワシントンがエジプトをこの地域の二流大国(second-rate power)にしたのだと主張した。

換言すれば、ムバラクと側近たちは、イスラエルが2度にわたってレバノンに侵攻し、ヨルダン川西岸とガザ地区を入植し、イェルサレムを併合するのを傍観していた。そうしなければイスラエルとの関係が危険に晒され、ひいてはイスラエルとの関係が損なわれるからである。そうなれば、エジプトとアメリカとの関係を損なうことになる。その結果、エジプトはイスラエルに直接挑戦するのではなく、国連やその他の国際フォーラムの場でイスラエルに抗議をする、つまり弱者の武器(weapons of the weak)を使うことになった。

2007年頃、エジプトからガザ地区への密輸トンネルの存在が初めて発見されたとき、イスラエルとその支持者たちはワシントンでそれを喧伝した。もちろん、彼らが憤慨するのは当然のことだが、エジプト政府関係者たちは、イスラエルがこの事態を二国間問題として処理せず、ワシントンを巻き込むことを選択したため、エジプトはカイロの軍事支援が危険にさらされることを恐れたと、私的な会話で苦言を呈した。米連邦議会の議員たちも、エジプトの軍事援助を削減し、他の支援にシフトするかどうか公然と議論していた時期だった。エジプトから見れば、特に敏感な時期に密輸トンネルをめぐって批判を浴びせられたことで、エジプトとイスラエルの二国間の問題が、ワシントンとカイロの問題になり、アメリカとエジプト関係に不当に緊張が走ることになった。

サウジアラビアとの安全保障協定を確保する努力にイスラエルを含めることは、既に複雑な二国間関係を更に複雑にすることを求めるだけだ。そのようなことをする価値はほとんどない。もちろん、エジプトとサウジアラビアには多くの違いがある。国境を接していないことから、イスラエルの安全保障上の懸念が、アメリカとエジプトとの関係で見られるような形でアメリカとサウジアラビアとの関係に影響を与えることはないだろう。

それでも、イランを管理するサウジアラビアの微妙なアプローチがイスラエルを怒らせた場合はどうなるのか? エジプトと同様、サウジアラビアは、アメリカの安全保障援助に依存している。イスラエルがサウジアラビア王室の外交政策の進め方を好まなければ、アメリカとサウジアラビアの関係に問題が生じる可能性は現実のものとなる。

バイデン政権がサウジアラビアとの防衛協定を望むなら、締結しよう。協定を結ぶにあたり、十分な根拠があるはずだし、バイデン大統領は懐疑論者を説得できるほど熟練した政治家だ。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会エニ・エンリコ・マッテイ記念中東・アフリカ研究上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、将来』は2024年6月に刊行予定。ツイッターアカウント:@stevenacook

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