古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 米中関係

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 世界の構造について大きく分類すると、一極(超大国が1つ)、二極(超大国が2つ)、多極(大国が多く存在する)ということになる。一極の例で言えば、ソヴィエト連邦崩壊後、世界ではアメリカのみが超大国として君臨する状態ということになる。二極は、冷戦期の米ソ、現在の米中ということになる。多極は第一次世界大戦前、第二次世界大戦前のような状況だ。ヨーロッパではヨーロッパの協調ということで、複数の大国が平和を維持するという体制になっていたが、相互に誤解と誤った認識をしてしまうと、平和が破綻するということが起きた。このことから、二極の方がお互いの意図を誤らずに認識できるということで、平和が続くということが言われている。冷戦期は世界各地で戦争や紛争は起きたが、米ソ双方が直接戦い、核戦争まで至らなかったということで、「長い平和(Long Peace)」という評価がなされている。

 一極体制は最も安定しているように見えるが、新興大国が出てくると、不安定さが増す。また、一極体制の支配国、覇権国が安全保障などで、不公平な取り扱いをするということになれば、各国が反感や怒りを持つということもある。アメリカの一極体制は、アメリカが介入した外国からの反感による「ブローバック(blowback、吹き戻し)」に遭った。

 現在の世界は、米中による「G2」体制(Great of Two)となっている。そして、世界は、これから多極化していくという予想も出ている。

下に掲載した論稿の著者ジョー・インゲ・ベッケウォルトは以下のように主張している。

政治家、外交官、国際政治の専門家たちが世界の多極化に関する議論を展開しているが、現実はまだ多極化していない。現在、アメリカと中国のみが経済的、軍事的に大国として存在し、他の国はそのレベルに達していない。インドやロシアも有力候補として挙げられるが、極になるには経済力や軍事力の面で足りていない。

多極化論が人気の理由は、規範的概念としての魅力や対立回避の希望があるからだ。一極、二極、多極体制では行動や政策が異なり、誤解は誤った政策を生む可能性がある。多極化は未来に期待される可能性もあるが、現状では二極化した世界に生きる必要があり、戦略と政策はその状況に応じて考えられるべきだ。

 私は、現在は二極体制であるが、これはあくまで、アメリカがまだまだ強く、中国が弱いというところであり、二極体制の性格がこれから変化していく途中であり、しばらくは多極化しないと考えている。アヘン戦争勃発200周年の2040年、中華人民共和国建国100周年の2049年、この2040年代に中国はアメリカを追い抜くということを考えていると思う。この時期でも米中に匹敵する国は出てこず、それ以降は、中国が大、アメリカが小の二極体制が続くものと考える。その時期には、ヨーロッパ連合、インド、ロシアなどが米中に続く存在となっているだろうが(日本は脱落しているだろう)、世界の重要な決定に関与できるまでは行っていないだろう。短期的(10~30年)、中期的(30~50年)でみれば、米中二極体制が関係性の面で変化を起こしながら、続いていくことになるだろう。二極体制が安定し、平和が続いていくためには、相互の正しい理解と認識が必要ということになる。

(貼り付けはじめ)

いいえ、世界は多極的ではない(No, the World Is Not Multipolar

-新興大国の出現という考えは人気を集めているが、間違っている。そして、深刻な政策の誤りを導くことになるだろう。

ジョー・インゲ・ベッケウォルト筆

2023年9月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/09/22/multipolar-world-bipolar-power-geopolitics-business-strategy-china-united-states-india/

政治家、外交官、国際政治の専門家たちが主張する最も根強い議論の1つは、世界は多極化(multipolar)している、あるいはまもなく多極化するだろうというものだ。ここ数カ月、この議論は国連事務総長のアントニオ・グテーレス、ドイツのオラフ・ショルツ首相、ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領によってなされてきた。ヨーロッパ連合(EU)のジョゼップ・ボレル外務上級代表は、2008年の世界金融危機以来、世界は「複雑な多極化(complex multipolarity)」のシステムになっていると主張している。

この考え方はビジネス界でも普及しつつある。投資銀行のモルガン・スタンレーは最近、「多極化した世界を乗り切る」ための戦略文書を発表し、ヨーロッパの名門ビジネススクールであるINSEADは、そのような世界におけるリーダーシップ能力について懸念している。

しかし、政治家、専門家、投資銀行家たちが言うことに反して、今日の世界が多極化に近いというのは単なる神話に過ぎない。

その理由は単純明快だ。極性とは、国際システムにおける大国の数のことだ。そして、世界が多極化するには、そのような大国が3カ国以上存在する必要がある。現在、極を形成できるほどの経済規模、軍事力、世界的な影響力を持つ国は、アメリカと中国の2カ国だけだ。他の大国はどこにも見当たらず、当分の間は見当たらない。人口が多く経済が成長している中堅国や非同盟国が台頭しているという事実だけでは、世界が多極化する訳ではない。

国際システムにおける他の極の不在は、明らかな候補を見れば明らかだ。2021年、急成長を遂げるインドは、力を測る指標の1つである防衛費支出で第3位だった。しかし、ストックホルム国際平和研究所の最新の数字によると、インドの軍事予算は中国の4分の1にすぎない。(そして、中国の数字は一般に信じられているよりも更に高いかもしれない。)今日、インドは依然として主に自国の発展に集中している。インドの外交サーヴィスは規模が小さく、インド太平洋での影響力の重要な尺度である海軍は、過去5年間で5倍の海軍トン数を進水させた中国と比較すると小さい。インドはいつかシステムの極になるかもしれないが、それは遠い将来のことだ。

経済的な豊かさは、権力を行使する能力を示すもう1つの指標である。日本は世界第3位の経済大国だが、国際通貨基金の最新の数字によると、日本のGDPは中国の4分の1以下である。ドイツ、インド、イギリス、フランスという日本に続く、4つの経済大国は、更に小さい。

また、エマニュエル・マクロンや他の多くの人々がそのような主張を精力的に展開してきたとしても、EUは第三極(third polar)ではない。ヨーロッパ諸国には様々な国益があり、ヨーロッパ連合には亀裂が生じやすい。ヨーロッパ連合(EU)のウクライナ支援は一見結束しているように見えるが、ヨーロッパの防衛、安全保障、外交政策は統一されていない。北京、モスクワ、ワシントンがパリやベルリンと対話し、めったにブリュッセルを訪れないのには理由がある。

もちろん、ロシアは国土の広さ、膨大な天然資源、膨大な核兵器の備蓄から、大国になる可能性のある候補である。ロシアは、国境を越えて影響力を持っていることは確かだ。大規模なヨーロッパ戦争を繰り広げ、フィンランドとスウェーデンをNATOに加盟させた。しかしながら、経済規模はイタリアより小さく、軍事予算はせいぜい中国の4分の1に過ぎないため、ロシアは国際システムの第三極にはなれない。せいぜい、ロシアは中国を支援する役割しか果たせない。

多極化を信じる人々の間で広く議論されているのは、グローバルサウスの台頭と西側の地位の低下だ。しかし、インド、ブラジル、トルコ、南アフリカ、サウジアラビアなどの新旧中堅大国(middle powers)の存在は、システムを多極化するものではない。これらの国はいずれも、自国の極となるための経済力、軍事力、その他の影響力を持っていないからだ。言い換えれば、これらの国にはアメリカや中国と張り合う能力がないのだ。

アメリカの世界経済におけるシェアが縮小しているのは事実だが、特に中国と合わせると、依然として優位な立場にある。この二超大国は世界の防衛費の半分を占めており、両国のGDPを合計すると、それから下の経済大国33カ国の合計とほぼ同等となる。

先月ヨハネスブルグで開催されたBRICSサミットでBRICSフォーラムが拡大したこと(以前はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのみだった)は、多極秩序(multipolar order)が到来したか、少なくとも前進しつつある兆候と解釈されている。しかし、ブロックは極(poles)として機能するにはあまりにも異質であり、簡単に崩壊する可能性がある。BRICSは首尾一貫したブロックには程遠く、加盟諸国は国際経済秩序に関する見解を共有しているかもしれないが、他の分野では大きく異なる利益を持っている。協調関係を示す最も強力な指標である安全保障政策では、2大加盟国である中国とインドは対立している。実際、北京の台頭により、インド政府は米国とより緊密に協調するようになっている。

従って、世界が多極化していないのなら、どうして多極化論はこれほど人気が​​あるのだろうか? 国際関係に関する事実や概念を無視するという怠惰なやり方に加えて、3つの明白な説明が浮かび上がる。

第一に、多極化の考えを推し進める多くの人々にとって、それは規範的な概念である。それは、西洋の支配の時代は終わり、権力は分散している、あるいは分散しているべきだと言っている、あるいは望んでいることの別の言い方である。グテーレスは、多極化(multipolarity)を、多国間主義(multilateralism)に修正し、世界システムに均衡(equilibrium)をもたらす方法と見なしている。多くのヨーロッパ各国の指導者たちにとって、多極化(multipolarity)は二極化(bipolarity)よりも好ましい選択肢とみなされている。なぜなら、多極化はルールによって統治される世界をより良く実現し、多様な主体とのグローバルなパートナーシップを可能にし、新しいブロックの出現を防ぐと考えられているからだ。

実際に、多国間枠組は確かに想定通りに機能しておらず、西洋の人々の多くは、多極化の考えをより公平なシステム、多国間主義を復活させるより良い方法、そして、グローバルサウスとの拡大する断絶を修復する機会と見ている。言い換えれば、存在しない多極化を信じることは、世界秩序に対する希望と夢の花束の一部だ。

多極化の考え方が流行している2つ目の理由は、30年にわたるグローバル化(globalization)と比較的平和な状況の後、政策立案者、専門家、学者たちの間で、アメリカと中国の間にある激しく、包括的で、二極化した対立の現実を受け入れることに非常に抵抗感があることだ。この点で、多極化を信じるということは、一種の知的回避(intellectual avoidance)であり、冷戦が再び起こらないようにという願いの表れだ。

第三に、多極化に関する議論はしばしば権力争いの一部である。北京とモスクワは、多極化をアメリカの力を抑制し、自国の立場を前進させる手段と見なしている。アメリカが圧倒的な優位を占めていた1997年に遡ると、ロシアと中国は多極化世界と新国際秩序の確立に関する共同宣言に署名した。中国は今日では大国であるが、依然としてアメリカを主な課題と見なしている。北京はモスクワとともに、多極化という概念は、南半球を喜ばせ、自国の大義に引き付ける手段として利用している。多極化は2023年を通じて中国の外交的魅力攻勢の中心テーマであり、プーティン大統領は7月のロシア・アフリカ首脳会談で、出席した指導者らが多極化世界を推進することで合意したと宣言した。同様に、ブラジルのルラ大統領のように台頭する中堅国の指導者が多極化という概念を推進する場合、それは自国を主要な非同盟国として位置づけようとする試みであることが多い。

極、そしてそれに関する誤解が広まっていること自体が重要なのかと疑問に思う人もいるかもしれない。簡単な答えは、世界秩序における極の数は非常に重要であり、誤解は戦略的思考を不明瞭にし、最終的には誤った政策につながるということだ。極が重要な理由は2つある。

第一に、一極(unipolar)、二極(bipolar)、多極(multipolar)体制では、国家の行動に対する制約の度合いが異なり、異なる戦略と政策が必要となる。例えば、6月に発表されたドイツの新しい国家安全保障戦略では、「国際および安全保障環境は多極化が進み、不安定になっている」と述べている。多極体制は確かに一極や二極体制よりも不安定であると見なされている。多極体制では、大国は同盟や連合を結成して、1つの国が他の国を支配することを避ける。大国が忠誠心を変えた場合、継続的な再編や突然の変化につながる可能性がある。二極体制では、2つの超大国が主にお互いのバランスを取り、主なライバルが誰であるかを疑うことはない。したがって、ドイツの戦略文書が間違っていることを願うべきだ。

極は企業にとっても重要だ。モルガン・スタンレーと INSEAD は、顧客と学生を多極化した世界に向けて準備させているが、二極化したシステムで多極化戦略を追求することは、高くつく間違いとなる可能性がある。これは、貿易と投資の流れが極の数によって大きく異なる可能性があるためだ。二極化システムでは、二大国は相対的な利益を非常に気にするため、経済秩序はより二極化し、分裂する。秩序の種類ごとに異なる地政学的リスクが伴い、企業が次の工場をどこに建設すべきかという戦略を誤ると、非常に高くつく可能性がある。

第二に、明らかに二極化している世界が多極化すると、友好国にも敵国にも同様に誤ったシグナルを送る可能性がある。4月のマクロン大統領の中国訪問中に発せられた発言が引き起こした国際的な騒動が、この点を物語っている。ヨーロッパに帰る途中の機内でのインタヴューで、マクロン大統領はヨーロッパが第三の超大国になることの重要性を強調したと伝えられている。マクロン大統領が多極化について熟考する姿勢は、ワシントンやヨーロッパのフランスの同盟諸国には受けが悪かった。中国側のホストは喜んでいるように見えたが、マクロン大統領の多極化に関する考えを、米中対立で中国を支持するフランスや欧州の姿勢と混同すれば、誤ったシグナルを受け取ったことになるかもしれない。

多極体制は、敵対する超大国が2つある世界ほど、露骨に二極化していないかもしれないが、必ずしもより良い世界につながるわけではない。多国間主義の手っ取り早い解決策ではなく、更なる地域化(regionalization)につながる可能性もある。多極化を望み、存在しないシステムにエネルギーを費やすよりも、より効果的な戦略は、既存の二極体制内で対話のためのより良い解決策とプラットフォームを探すことである。

長期的には、世界は確かに多極化する可能性があり、インドはアメリカと中国に加わる最も明白な候補である。しかし、その日はまだ遠い。私たちは予見可能な将来、二極化した世界に生きることになるだろう。そして、戦略(strategy)と政策(policy)はそれに応じて設計されるべきである。

※ジョー・インゲ・ベッケウォルト:ノルウェー国防研究所中国担当上級研究員、元ノルウェー外務省外交官。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカの有名なシンクタンクである、アメリカ・エンタープライズ研究所から「台湾とコントロールするための中国の3つの方途(China’s Three Roads to Controlling Taiwan)」という報告書が出たのは2023年3月13日だった。
下記アドレスから見ることができる。
https://www.aei.org/research-products/report/chinas-three-roads-to-controlling-taiwan/

 そして、今年5月に『ザ・ヒル』誌にその内容の概略が、報告書の著者であるダン・ブルーメンソールとフレッド・ケーガンによって論稿として発表された。ブルーメンソールは中国専門家として知られ、国務省に勤務した経験を持つ。フレッド・ケーガンは、アメリカのネオコン派の「名家」ケーガン一族に属しており、兄はロバート・ケーガン、義姉は、ヴィクトリア・ヌーランド前国務次官、妻は戦争研究所(Institute for the Study of War)の所長を務めるキンバリー・ケーガンである。フレッドは、2007年のイラクへのアメリカ軍増派作戦(「大波」計画[Surge Plan])の立案者として知られる。アメリカを戦争の泥沼に引き入れた一族の一員だ。

 この報告書の内容は、「中国は武力侵攻などしなくても台湾統一を実現できるということに今気づいた。アメリカは非武力的な方法にも注意をしなくてはいけない」というものだ。

 私は拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』や『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』、このブログで、散々、「中国は台湾に侵攻しなくても統一できるし、現状は既にぴったりとくっついていて、両岸関係は緊密だ」と書いてきた。中国が武力で台湾に侵攻することなど書いてきた。「台湾有事だ」「ウクライナの次は台湾だ」「日本はアメリカと一緒になって台湾防衛のために中国と戦う」といったお勇ましい言論は、為にする言論であって、日本にとって害悪だ。

 私が不思議に思っているのは、昨年に発表した報告書の内容を今年になって論説にまとめて発表したことだ。どうしてこんなことをするのだろうかと考えて、私なりの答えにたどり着いた。それは、彼らの飯の種を何とか確保するということだ。現在のアメリカh、ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス紛争の2つに注目が集まり、お金を出す出さないでお重めしてきた。しかし、共和党系のネオコン派や民主党系の人道的介入主義派の主敵は、中国である。ウクライナ戦争もパレスティナ紛争も先行きが見えない現状では、中国のために割くエネルギーは残っていない。それでは、この人たちは困るのだ。

 だから、バイデンが中国製の電気自動車に100%の関税をかけると発表した時期に、「中国も大変なんだよ」というアピールをするということだ。何とも迷惑な話である。

 中国はアメリカの衰退という大きな政界史的転換期の動乱を乗り越えようとしている。しかし、それが過ぎて安定期に入り、世界覇権国になっていく時期には、少しずつ、自由化や民主化を行っていくだろう。それはしかしまだ10年単位で先の話である。そして、台湾をゆっくりと中国に近づけさせていきながら、中国国内の制度も変更していき、台湾の人々が統一を選べるようにしていくだろう。そこにアメリカが付け入るスキはないし、アメリカが介入して良い問題でもない。もっとも、その頃にはアメリカは力を失っているだろう。

(貼り付けはじめ)

台湾統一を実現するために中国は侵攻する必要はない(China doesn’t need to invade to achieve Taiwanese unification

ダン・ブルーメンソール、フレッド・ケーガン筆

2024年5月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/4657439-china-doesnt-need-to-invade-to-achieve-taiwanese-unification/

アメリカは第二次世界大戦後、最も厳しい国際安全保障環境に直面している。

戦争が続いており、中東においても拡大する恐れがあるにもかかわらず、ウクライナ戦争は激化している。一方、中華人民共和国は近隣諸国への嫌がらせと威嚇を続けており、アメリカ政府は台湾に対する中国の攻撃の脅威をより強く認識している。

台湾の安全保障への関心が高まるのは歓迎されることだが、現在の言論は、中国による台湾侵攻の脅威に焦点を当てすぎている。北京には、台湾に対する現在進行中のハイブリッド戦争作戦(hybrid warfare campaign)をエスカレートさせるなど、侵攻という手段を取らずに統一を強制する他の選択肢がまだある。アメリカの政策は、そのような戦略を抑止したり打ち負かしたりするようには設計されていない。

中国は、主に次の3つの理由により、台湾侵攻よりも限定的な運動行動(limited kinetic action)を伴う政治的・経済的戦争を中心とした、私たちが「戦争に至らない強制作戦(short of war coercion campaign)」と呼ぶ作戦を追求する可能性が高い。

第一に、戦争ではない手段で台湾を併合すれば、中国の他の大戦略目標(Chinese grand strategic objectives)にダメージを与える可能性を大幅に抑えることができる。中華人民共和国の長期的な戦略目標は、包括的な国力を構築し続け、世界を主導する超大国になることだ。そして、国際政治秩序を決定的に再編成し、自らをその中心に据えることを目指している。中国の国家最高指導者の習近平は、台湾を大陸と統一することがこの大戦略の重要な要素であると考えていることは明らかだが、本格的な、そしておそらく、世界規模の戦争を始めることで、中国の地政学的支配への歩みを危険に晒すことを嫌っているのかもしれない。

第二に、政治戦(political warfare)と限定的な運動行動を中心とした、戦争に至らない戦略が成功する可能性がある。台湾の直近の選挙では、国内の政治的分裂が浮き彫りになり、アメリカの支持に対する懐疑的な見方が高まった。このような感情は、台湾が国際的に孤立しているという事実によって更に強化されている。台湾の地位は国際問題において特異なもの(sui generis)であり、世界の諸大国に承認されていない、完全に機能する国民国家(nation-state)である。このことは、台湾の見捨てられてしまうという、理解できる恐怖を中国が操る隙を生み出す。

第三に、戦争に至らない戦略は、中国の戦略的思考とこれまでの行動と一致している。中国の戦闘コンセプトの中には、伝統的な運動論的武力の行使を超える手段を用いて戦争を戦うことの有用性に言及しているものが数多くある。これらのコンセプトは、南シナ海や東シナ海、台湾海峡における中国の「グレーゾーン作戦(gray zone operations)」において定期的に採用されてきた。一般的な成功例からすると、中国は台湾併合作戦において、これらの手段の採用を強化する可能性が高い。

私たちの新しい報告書は、北京が現実的にそのような戦略を達成できることを示している。中国の戦略立案者たちの考え方を採用することで、私たちは、中国が侵略や明白な軍事封鎖(overt military blockade)を行うことなく台湾に対する政治的支配を確立できるような、実現の高い戦争に至らない強制作戦を考案した。

私たちがモデルとした作戦は、台湾の新総統の就任からその一期目までの4年間にわたって実施された。この期間中、中国は米台関係を破壊し、台湾政府の統治能力を低下させ、台湾の抵抗意志(Taiwanese will to resist)とアメリカの台湾支援の意欲を著しく損なうだろう。

私たちは、4年間にわたる絶え間ない中国の空軍および海軍の侵攻、準封鎖(quasi-blockade)、政治戦と工作(political warfare and manipulation)、台湾の重要インフラに対する大規模なサイバーおよび物理的破壊行為(extensive cyber and physical sabotage of Taiwan’s critical infrastructure)、および沖合の島々への致命的な武力が、台湾政府内で「認知的過負荷(cognitive overload)」を引き起こし、台湾国民全体が混乱を感じるようになっている。

このような作戦の過程で、アメリカは中国の情報戦(information warfare)に晒され、特に中国との新たな経済協定の後、台湾は戦争をする「価値がない(not “worth”)」と確信するようになるだろう。アメリカの対応を麻痺させる中国の能力に懐疑的な人々は、2015年以来、ウクライナをめぐるNATOとの決裂につながりかけたロシアの対アメリカ政治戦争に注目していない。特に、中国による苦痛を与える作戦が、アメリカが準備している侵攻の兆候や警告を何ら引き起こさないのであれば、アメリカは中国の強制的な作戦には参加しない可能性が高い。

私たちが想定している作戦では、台湾が混乱に陥り、最強の同盟国から見捨てられたように見えるということになる。中国は「和平(peace)」を申し出る機会を捉え、北京が指示するガイドラインに従って協力する代わりに、強制的な作戦を停止し、ある程度の自治を保証することを約束する。

そして、台湾政府は中国の一部になることを望んでいないにもかかわらず、最終的には中国の望む統一につながるであろう計画に同意することで、国民の苦しみを終わらせることを選択する。

私たちの報告書に概説されているシナリオは、私たちが必然的に起こると考えていることの評価を表している訳ではない。むしろ、戦争による強制という短時間のシナリオが現実的であり、非常に危険であることを示そうとしている。

このような戦略を阻止するために、アメリカ、台湾、そして地域の同盟諸国が取るべき手段はいくつかある。これらの政府は、国際法の下での台湾の主権的権利(Taiwan’s sovereign rights)を明確に示すことから始めなければならない。そうすることで、封鎖や船舶検査体制(shipping inspections regimes)を「内政問題(internal matters)」として正当化する中国の法律戦作戦(lawfare campaigns)に対抗することができる。

台湾とアメリカの両政府は、台湾の対干渉・対破壊工作の法的権限と能力(Taiwan’s counter-influence and anti-subversion legal authorities and capabilities)を向上させるためにも協力すべきである。この協力は、台湾が封鎖や封鎖に類似した経済活動に耐えられるようにするための、より広範な取り組みにも及ぶべきである。

最後に、アメリカ主導の連合は、中国の軍事的威嚇努力を阻止するために政治的、経済的コストを課すべきである。例えば、現在の台湾海峡での中国の空軍侵攻に対する回答は、台湾と国際社会との間の民間航空協力の拡大と、地域の防空体制への台湾の統合の両方であるべきである。

中国政府は、進行中の「グレーゾーン(gray zone)」作戦を強化するなど、台湾の支配を成功させるための多くの方法を持っている。中国は、台湾社会に多大な苦痛を与え、アメリカの介入(U.S. intervention)を阻止するための、戦争強制以外の組織的な作戦において、主に台湾の国際的孤立(Taiwan’s international isolation)と同盟関係の欠如(lack of alliance relations)といった台湾の脆弱性(Taiwanese vulnerabilities)を利用しようとする可能性がある。

中国が威圧的な取り組みを強化しそうな手段に焦点を当てることで、アメリカはそれを克服することができる。

※ダン・ブルーメンソール:アメリカ・エンタープライズ研究所上級研究員。
※フレッド・ケーガン:アメリカ・エンタープライズ研究所クリティカル・スレッツ・プロジェクト部門部長。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカのジョー・バイデン大統領は、中国からアメリカに輸出される電気自動車の関税を100%に引き上げると発表した。電気自動車をめぐり、米中の間は争いになっている。

バイデン大統領が強いドル政策を維持していれば、自然とアメリカからの輸出は高くなり、中国からの輸入は安くなる。関税を引き上げて、国内メーカーを保護するにしても、アメリカ最大の電気自動車メーカーであるテスラは中国との関係は悪くないし、既に進出して一定のシェアを保っている。

アメリカのテスラ(Tesla Motors)のイーロン・マスクは、中国との関係が悪くないどころか、良好である。上海にテスラの工場があり、テスラにとっての最大の市場は中国市場である。テスラのイーロン・マスクにしてみれば、バイデン政権の輸入電気自動車の関税引き上げは、中国からの報復を引き起こす可能性があり、迷惑なことだろう。テスラは電池だけの電気自動車に特化しており、バッテリー関連で制裁されると、テスラにとっては大きな痛手となる。イーロン・マスクがバイデンを支持していないこと、アメリカの三大メーカーが電気自動車で後塵を拝していることから、関税引き上げがやりやすかったということが考えられる。

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 バイデンの関税引き上げは、国家安全保障上の懸念から実施された面がある。アメリカ国内で中国メーカーの電気自動車が「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」であり、個人情報の流出やハッキングを警戒している。コネクテッド・ヴィークル「インターネットを介し、さまざまな情報を送受信できる次世代の自動車」のことであり、ジーナ・ライモンド米商務長官は中国製の電気自動車を「車輪のついたスマートフォン」と呼んでいる。個人情報が外国(中国)に流れることを懸念している。また、ハッキングされたり、遠隔操作をされたりして、運転できない状態にされることや、この電気自動車を通じて、政府機関のコンピュータへの侵入されてしまうことを懸念している。アメリカ国内市場で、安価な中国製の電気自動車がシェアを伸ばすことは、こうした懸念を増大させることになる。しかし、他国からすれば、アメリカ製の電気自動車に対して、同様の懸念がある。
 今回のバイデン大統領の措置は経済的な懸念というよりは、安全保障上の懸念の側面が強いということになる。また、政治的に見て、自分の再選に大きな影響がないと判断したものでもあるだろう。

(貼り付けはじめ)

●「バイデン氏、中国製品国家経済会議分への関税引き上げ 電気自動車は100%に」

2024.05.14 Tue posted at 20:30 JST CNN

https://www.cnn.co.jp/usa/35218904.html

ワシントン(CNN) バイデン米大統領は14日までに、中国からの輸入品のうち、国家安全保障に戦略的な重要性を持つ180億ドル(約2兆8000億円)相当の製品に対する関税を引き上げる方針を明らかにした。

鉄鋼やアルミニウム、汎用(はんよう)(レガシー)半導体、電気自動車、バッテリー部品、重要鉱物、太陽電池、クレーン、医療用品などに適用される。

電気自動車の関税を現行の27.5%から100%と約4倍に引き上げるほか、太陽光パネル関連は50%、他分野の製品は25%とする。

米国家経済会議(NEC)のブレイナード議長は、中国が自国の成長のために他国を犠牲にする戦略を続けていると批判した。

トランプ前大統領は在任中、中国から輸入される3000億ドル相当の製品に追加関税を課した。この措置は4年に1度、効果を検証することが法律で義務付けられている。バイデン政権の新たな関税は、この検証結果に基づいているという。

ホワイトハウス当局者らによると、バイデン政権は政策の優先順位に沿って算定法の見直しも図り、クリーンエネルギー技術に重点を置いた。

中国はこれまでの関税に、高い報復関税で対抗してきた。ホワイトハウスは、中国が今回どのような対抗措置を取るかについての言及を避けた。

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バイデン氏、中国の電気自動車を取り締まる(Biden Cracks Down on Chinese Electric Vehicles

-外国の「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」に関する新たな調査は、将来的に北京のハイテク部門に対する措置を可能にする可能性がある。

A new investigation into foreign “connected vehicles” could enable future action against Beijing’s tech sector.

クリスティーナ・リュー、リシ・イエンガー筆

2024年3月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/01/biden-china-electric-vehicles-tech-security-investigation-commerce/

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中国東部の江蘇省にある蘇州港にある国際コンテナターミナルで船への積み込みを待つBYD製の電気自動車(2023年9月11日)

バイデン政権は木曜日、米商務省に対し、中国製の「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」がもたらす潜在的な国家安全保障上の脅威を調査するよう命令した。これは、中国との関係のリスクを軽減し、中国のハイテク産業に対して、圧力をかけようとするアメリカの最近の取り組みを示すものである。

ジョー・バイデン米大統領は声明の中で次のように警告している。「これらの電機自動車は、私たちの電話やナビゲーションシステム、重要なインフラ、そしてそれらを製造した企業に接続されている」と述べた。このような自動車は、わが国の市民やインフラに関する機密データを収集し、そのデータを中華人民共和国に送り返す可能性がある」。これらの電気自動車事態は「遠隔操作でアクセスされたり、機能停止させられたりする」とバイデンは述べている。

中国は電気自動車(electric vehicleEV)生産大国に成長し、アメリカとヨーロッパの同盟諸国を動揺させてきた世界の産業内で支配的な地位を築いている。バイデン政権が発表した調査は、テクノロジーへの懸念が米中関係を支配するようになった最新の例であり、車両を対象とした将来のアメリカの措置の基礎を築く可能性がある。

バイデンは続けて次のように述べている。「中国は、不公正な慣行を用いるなどして、将来の自動車市場を支配しようとしている。中国の政策は、私たちの市場に中国製の電機自動車を氾濫させ、私たちの国家安全保障にリスクをもたらす可能性がある。私の目の前でそのようなことが起こるのを許すつもりはない」。

バイデン政権の最新の攻撃は、テクノロジーの未来と未来のテクノロジーの両方をめぐる米中競争の、より広範なエスカレートに当てはまる。半導体チップ(semiconductor chips)、人工知能(artificial intelligence)、対外技術投資(outbound tech investment)に対する行動が最も注目されているが、ワシントンは更に多くの蛇口を閉めようとしているようだ。

コロラド鉱山大学ペイン研究所のモーガン・所長は、本誌に宛てた電子メールの中で、バイデン政権が発表の中で国家安全保障上の必要性を強調したことに触れながら、「これは米中間の現在進行中の貿易戦争の一環のように考えられる」と書いている。

バジリアンは、「確かに、サイバーとデータの面で実際のセキュリティ上の脅威は存在するが、私にとって主な推進力は経済的な闘争のように見える」と付け加えた。

こうした経済的懸念は、アメリカに限ったものではない。ここ数カ月間、安価な中国製電気自動車の流入に対する懸念は、中国政府の主要電気自動車市場の1つであるヨーロッパでも動揺しており、ヨーロッパ議会議員らは、中国政府が国内の電池式電気自動車メーカーに与えた補助金疑惑について調査を開始するまでに至っている。中国政府は、中国の電気自動車に補助金を与えることで、EUの電気自動車メーカーを圧倒しているという疑いだ。中国の電気自動車輸出は過去3年間で851%と爆発的に増加し、中国製のほとんど電気自動車がヨーロッパ市場に上陸した。

アメリカにおける中国製電気自動車の販売は依然として比較的小規模だが、特にバイデン大統領と共和党の対抗馬となる可能性が高いドナルド・トランプ前大統領が、11月の大統領選挙に向けて準備を進める中、アメリカの政治論争でも、ヨーロッパにおけるのと同様の懸念が浮上している。バイデンは先月、全米自動車労働組合がバイデン大統領の再選を正式に支持し、政治的に大きな勝利を確実にした一方、トランプ前大統領は自動車労働者の支持を集めるために選挙期間中、バイデンの電気自動車政策を激しく非難してきた。

そして実際、バイデンは木曜日の声明で、自身の政治的動機を隠そうとはしなかった。バイデンは次のように述べた。「大統領として、私は自動車労働者と、自動車産業に雇用を依存する中流家庭に対して正しいことをすると誓った。今回の措置やその他の措置によって、私たちは、自動車産業の未来がここアメリカでアメリカ人労働者によって作られることを確実にするつもりだ」。

戦略国際​​問題研究所の中国ビジネス専門家イラリア・マッツォッコは、「自動車産業をめぐる政治経済は非常に強力かつ重要だ。中国の電気自動車が先進諸国の主要産業を、非常に破壊的な形で脅かす可能性があるという深刻な懸念があると考えている」と述べている。

複数の米政府高官は、今回の調査は、データをめぐる国家安全保障上の懸念に根ざしていると強調する。ジーナ・ライモンド米商務長官は、「コネクテッド・ヴィークルにアクセスできる外国政府が、国家安全保障とアメリカ国民の個人的プライバシーの双方に深刻なリスクをもたらす可能性があると考えるのは、ほぼ想像力を必要としないものだ」と述べ、電気自動車を「車輪のついたスマートフォン(smart phones on wheels)」と例えた。

ライモンド長官は、「これらの自動車に搭載され、広範囲のデータを取得したり、コネクテッド・ヴィークルを遠隔操作で無効化したり、操作したりできる技術の範囲を理解する必要がある」と続けて述べた。

バイデン政権の今回の発表は、中国やロシアを含む6つの「懸念国(countries of concern)」に対する、アメリカ人の個人データの売却を制限することに焦点を当てた大統領令を発表した翌日に行われた。この大統領令では、ゲノムデータ(genomic data)、バイオメトリックデータ(biometric data)、金融データ(financial data)、個人健康データ(personal health data)、地理位置情報(geolocation data,)、そして個人を特定できる特定のカテゴリーという6つの機密情報のカテゴリーについて概説している。

しかし、データの流れを監督し取り締まることはより難しくなる可能性があり、バイデン政権による最新の規制は、アメリカ市民にとって意図しない結果をもたらす可能性があると、アメリカ自由人権協会(ACLU)は水曜日に警告した。ACLU上級政策顧問コーディ・ヴェンスキは声明の中で次のように述べた。「この大統領令は、政府の干渉を受けずに情報を共有しアクセスする私たちの権利を更に侵食し、消費者たちがプライバシーとセキュリティのニーズに最も適したオンラインサービスを選ぶことを禁じ、プライバシーを保護するどころか、むしろ害する結果になりかねない」。

ヴェンスキは続けて、「私たちのオンライン上の安全を本当に守るために、バイデン政権はその代わりに、私たちに関して収集されるデータの氾濫を食い止め、暗号化のような強力な保護を受け入れる、強固なプライバシー法を可決するよう議会を後押しすることに集中すべきだ」と述べた。

この2つの措置は互いに接近しており、中国のアメリカのテクノロジーへのアクセスを遮断することを目的とした過去数年間にわたる一連の大統領指示の最新のものである。

戦略国際​​問題研究所(CSIS)の貿易・技術専門家エミリー・ベンソンは、「これらの政策を総合すると変化が起こり、新たなパラダイムが生まれる。全体として、テクノロジーがこの新たな経済と国家安全保障の課題の最前線にあるということは、改めて非常に明白な象徴であり、それがすぐに変わる可能性は低い」と述べている。

※クリスティーナ・リュー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。ツイッターアカウント:@christinafei

リシ・イエンガー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。ツイッターアカウント:@Iyengarish

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が発売になりました。米中関係についても書いておりますので、是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 米中貿易戦争はドナルド・トランプ前政権から始まった。制裁的な関税をかける競争を行ったが、こうした状況はジョー・バイデン政権でも変更がない。バイデン政権は対中強硬姿勢という点ではトランプ前政権を踏襲しているということになる。

アメリカ連邦議会は、米中経済安全保障評価委員会という委員会を設置し、中国の経済や貿易に関する評価を依頼したそうだ。そして、委員会は勧告書を発表し、更なる制裁的な対応を行うように勧告している。アメリカ経済は中国経済に依存し、結果として中国をここまで大きくした。そして今頃になって、中国経済や貿易の慣習はおかしいとして、制裁を加えようとしている。

 一方、中国はアメリカ依存からの脱却を目指している。中国は基本的に、アメリカにとっての「工場」として機能してきたが、重要な部品は中国国内で開発できず、「組み立て工場」の地位に甘んじてきた。それでは先はないということを分かっていた。そこで、重要な部品の研究開発を2010年代から始め、その成果が出つつある。そのことを最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)で書いた。是非お読みいただきたい。

 アメリカは逆に国内での工業生産を復活させようとしているが、それはうまくいっていない。アウトソーシングしつくしたアメリカ国内に工業生産を復活させる力は残っていない。ウクライナ戦争において、アメリカは大量の武器や装備をウクライナに支援してきたが、そのために、アメリカ軍自体が武器や装備不足に落ちっているが、その回復の見込みは立っていない。厳しい状況だ。

 アメリカは中国に依存すべきではなかった、「アメリカと経済的に接近すれば中国は変化する」という理由付けは間違っていたということになるが、それは今更の話である。それではアメリカはどうすべきなのかということで、アメリカは解決策を見いだせないでいる。中国が一枚上手だったのである。

(貼り付けはじめ)

米中貿易戦争はヒートアップする可能性が高い(U.S.-China Trade War Could Heat Up

-米連邦議会委員会はバイデンに対して中国との貿易関係を再考するように望んでいる。

ジャック・ディッチ筆

2022年11月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/15/u-s-china-trade-war-wto-sanctions-xi-jinping-biden-trump/?tpcc=recirc_latest062921

米連邦議会が委任した委員会は、バイデン政権に対し、中国が略奪的な貿易慣行に従事しているかどうかを評価するよう求めており、この評価が、最終的に、アメリカが中国との通常貿易関係を永久に停止させることにつながる可能性がある。

もしこの勧告の内容が採用されれば、米中経済安全保障評価委員会(U.S.-China Economic and Security Review Commission)が火曜日に発表した連邦議会への年次報告書は、20年にわたる貿易関係をひっくり返し、2つの超大国の間の既に乱れた力学をさらに揺るがすことになるだろう。中国が世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)への加盟を推進する中、2000年に連邦議会が承認したいわゆる恒久的な通常貿易関係を撤回することで、アメリカは中国の輸入品に対する関税を更に引き上げるための舞台を整えることができる。トランプ政権は2019年、様々な中国製品に25%の関税をかけた。

超党派の委員会は、基本的にトランプ時代の中国との経済対決をさらに推奨しており、ワシントンの多くの人々は、ここ数十年のアメリカ国内の製造業の雇用喪失と、アメリカの経済競争力の浸食の原因を中国に求めているのだ。

米中経済安全保障評価委員会委員長で、トランプ政権時代の国務省元高官であるアレックス・ウォンは次のように語った。「これはバイデン政権にも連邦議会にも権限を与え、連邦議会にも、うまくいかない、アメリカの利益に役立たない貿易関係を再調整するためのものだ。この委員会は、米中関係に影響を与えるだろうか? もちろんそうなるだろう。しかし、そこが重要だ。私たちは、対中貿易関係を評価し、適切に再均衡するために、連邦議会とバイデン政権がこの仕組みを検討することを推奨している」。

アメリカはWTOの最恵国待遇貿易規則(WTO’s most-favored-nation trade rules)を広く適用しており、この規則は加盟諸国に対し、他のすべての加盟国に同じ条件を適用するよう求めている。ヨーロッパ連合(EU)やアメリカ・メキシコ・カナダ協定など、自由貿易協定には例外もあるが、アメリカはキューバと北朝鮮を除くほとんどの国に自由な地位を与えている。WTOの規則によれば、アメリカは国家安全保障の例外として、中国の最恵国待遇を取り消すことができる。これはまた、中国が20年来の貿易関係において、その取り決めを守っていないことを認めることにもなる。具体的には、委員会は中国がWTOの誓約に違反し、産業補助金(industrial subsidies)を制定し、知的財産を盗み、保護主義的な政策を実施し、アメリカ企業に損害を与えていることを指摘した。

特恵貿易ステータスの取り消しが決定されれば、連邦議会は貿易関係の再評価を迫られることになる。これまでのところ、バイデン政権はドナルド・トランプ前大統領が最初に導入し、中国政府からの数十億ドルの報復関税につながった一連の関税をほぼ維持している。中国の略奪的な貿易慣行を見直す動きは、この問題への対応が遅れているアメリカの官僚機構を混乱させる可能性もある。『フォーリン・ポリシー』誌は9月、キャサリン・タイ米通商代表部が中国からの輸入品に関する4年間にわたる見直しを来年まとめる予定だと報じた。

しかし、たとえバイデン政権と連邦議会が、ホワイトハウス部局の設置からアメリカのサプライチェーンの強化、対中エネルギー封鎖の実現可能性まで、すべてを網羅する報告書の、39点の広範な勧告の実施を決定しなかったとしても、この報告書は、ワシントンが政治的通路の両側で中国に対してよりタカ派的なスタンスを採用することに拍車をかけている。

2022年10月、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、バイデン政権の国家安全保障戦略を発表したジョージタウン大学でのスピーチで、冷戦後の時代は「最終的に終わった(definitively over)」と宣言した。中国のWTO加盟後、議会法に基づいて設置された委員会は、北京の貿易慣行に対して、より厳しい姿勢を取り、中国が組織的に自国通貨を過小評価し、不公正な貿易慣行に関与することでアメリカの貿易赤字を膨らませてきたという主張を20年近く続けてきた。

一方、中国もアメリカへの経済依存(economic dependence)からの脱却に向けた動きを見せている。 2022年9月の第20回中国共産党大会で歴史的な3期目の任期を与えられた中国の指導者である習近平は、アメリカおよび西側諸国からの輸​​入、特に重要技術に対する中国の依存度を減らすことを目的とした「二重循環(dual circulation)」戦略を推し進めてきた。バイデン政権は、ウクライナへの本格的な侵攻に対抗して、ロシア国内のコンピューターチップを減少させようとしており、半導体生産をアメリカに戻すことを目指すCHIPS法など、最近のアメリカの法律は中国のハイテク分野を脅かしている。報告書はまた、台湾に対する中国の軍事行動に対抗するための制裁やその他の経済措置を検討する常設のアメリカ政府委員会の設置を議会に求めている。

WTOが中国の貿易慣行を取り締まることができない中で、トランプ政権がWTOを意地でも中途半端にしていることもあり、米中経済安全保障評価委員会はワシントンの政策立案者たちに立ち上がるよう働きかけている。

ウォンは、「1999年の投票にさかのぼれば、それは本質的に、このステータスを付与することが私たちの貿易関係を繁栄させるだけでなく、中国との関係全般の改善につながり、中国を国際システムに引き入れ、より大きな安定を生み出すという、アメリカ側の情報に基づいた賭けだった。そして20年後、私たちの賭けがうまくいったのか、それともそれによって私たちが傷ついたのかが強く問われている」と述べている。

※ジャック・ディッチ:『』誌米国防総省・安全保障分野担当記者。ツイッターアカウント:@JackDetsch
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 「中国怖い怖い」「中国が攻めてくる」「中国と戦ってやる(アメリカが戦う前提で)」という浅薄な中国脅威論が日本でも幅を利かせている。これは、中国に関するある一つのイメージに基づいて、事実を冷静に分析することなしに、自分勝手なストーリー作りということになる。外国を知る、外国の知識を蓄積する、データを集め分析するということは大変難しい作業だ。大きな象を数十センチの至近距離から見るようなもので、頭を見るか、鼻を見るか、足を見るかということになって、全体を把握することは難しい。文化が違う国を理解することは難しい。しかし、「難しい、難しい」と言い続けるだけでは、意味がない。私たちは手に入る知識やデータを冷静に、客観的に分析するという技法を獲得しなければならない。

 アメリカは戦後しばらく、ソ連(ロシア)研究に多額の資金を投入し、多くの俊才がソ連研究に参加した。1970年代からは日本研究、そして現在は中国研究に資金と人材を投入している。それでは、どれだけの成果を挙げているのかという話になると、これはなかなか難しい。各分析家、研究家、学者たちがそれぞれの意見を述べているが、その幅も広い。アメリカでも「中国怖い怖い」から「冷静に観察しよう」まで、専門家発で様々な意見が飛び交っている。

 中国の台頭は事実である。経済的にも軍事的にも政治的にも世界の大国になっている。こうした事実を踏まえて、中国を「正しく」怖がるということが必要だ。その際に、まず過激な意見や分析は排除すべきだ。こうした意見や分析はどこか無理が出る。自分たちの願望に基づいたストーリーなので、事実とは合わないところも出てくる。そうした部分を敏感に感じられるようになるべきだ。

 アメリカが中国を正しく怖がることができれば、世界の安定と平和が保たれる。現在のジョー・バイデン政権の外交政策を司る人物たちは、そうしたことができていないようである。だから、世界は不安定になり、平和に対する脅威が高まっている。

(貼り付けはじめ)

中国をどれだけ怖がるべきか(Here’s How Scared of China You Should Be

-このことはこれから述べる5つの疑問に対する回答による。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2023年8月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/08/07/china-rise-geopolitics-great-power-scared/

アメリカの大戦略(grand strategy)に関する現在の議論で重要なことは、中国との競争に優先順位を置くべきかどうかという疑問である。アメリカはこの疑問の解決に向けて、どれだけのリソース(資金、人材、時間、関心など)を対中関係に割くべきなのか? 中国はアメリカがこれまで直面したことのない地政学的な最大の挑戦者(脅威)なのか、それとも土台が弱い、砂上の楼閣なのか? 中国への対抗は、他の全ての問題(ウクライナ、気候変動、移民、イランなど)よりも優先されるべきなのか、それとも数ある問題の中の1つに過ぎず、必ずしも最重要ではないのか?

エルブリッジ・コルビーのような一部の専門家にとって、中国対策は最優先事項であり、アメリカの指導者はウクライナやその他の外交問題に気を取られてはならないということになる。私の共著者であるジョン・ミアシャイマーと、ハーヴァード大学での同僚であるグレアム・アリソンも同様に、中国からの挑戦、特に戦争リスクの高まりに懸念を抱いているようだ。最近の米外交問題評議会(Council on Foreign Relations)のタスクフォースは、アジアにおける軍事的トレンドが中国に有利にシフトしていると主張し、特に台湾海峡における抑止力(deterrence)強化のための努力を強化するよう求めた。ハル・ブランズとマイケル・バックリーは、中国のパワーはピークに近づきつつあり、北京が最終的な衰退を食い止めるためにできることはほとんどないと考えている。対照的に、クインシー・インスティチュートの同僚であるマイケル・スウェインとコーネル大学の学者ジェシカ・チェン・ワイスは、私たちは中国がもたらす危険を誇張していると考えており、2つの国家が疑心暗鬼の自己充足スパイラル(self-fulfilling spiral of suspicion)に陥り、最終的にどちらが競争に勝つにしても、両者がより悪い状況に陥ることを心配している。

これらの様々な評価は、最近の中国の将来の進む道筋に関する意見のほんの一例に過ぎない。誰の考えが正しいか、私には分からない。読者である皆さんもそうだろう。これらの専門家の中には、私よりも中国についてよく知っている人もいることは認める。もちろん私にも直感はあるが、真剣に中国を観察している人たちのコミュニティが統一的なコンセンサスを得られていないことに不満を感じている。そこで、公益事業として(そして彼らを少し鼓舞するために)、中国に関する私の大きな疑問トップ5を紹介しよう。これらの質問に対する答えは、あなたがどれだけ心配すべきかを教えてくれるだろう。

第1問:中国経済の未来は明るいのか、暗いのか、それともそれらの中間か?

国際政治におけるパワーは、最終的には経済にかかっている。「ソフト・パワー(soft power)」、個々の指導者の天才性、「国民性(national character)」の重要性、偶然の役割など、いくらでも語ることはできる。簡単にまとめると、国が自国を守り、より広い環境を形成する能力は、最終的にはその国の経済力にかかっているということになる。大国になるには人口が多くなければならないが、同時に相当な富と多様で洗練された経済も必要となる。高度な兵器を大量に製造し、一流の軍隊を訓練し、他国が買い求め、自国民の生活を豊かにする商品やサーヴィスを提供し、世界中に影響力を行使できる余剰資金を生み出すことができるのは、ハードな経済力があってこそということになる。他国から有能で経済的に成功していると認められることは、他国から尊敬され、助言を聞いてもらい、自国の政治モデルの魅力を高める良い方法でもある。

過去40年間の中国の経済パフォーマンスは特筆すべきものであり、大国から脱落するほど中国経済が悪化するとは誰も考えていない。しかし、新型コロナウイルス後の不振が示すように、中国経済は現在、弱まる見込みのない逆風に直面している。高齢化と人口減少が進み、増え続ける定年退職者を支える労働者はますます少なくなっている。若年層の失業率は21%を超え、全要素生産性の伸びは過去10年間で急激に低下している。中国の金融システムは依然として不透明で大幅な債務超過であり、先行成長の主要な源泉である不動産セクターは特に問題を抱えている。これらを総合すれば、なぜ多くのアナリストが中国の長期的な見通しについて悲観的なのか、容易に理解できるだろう。これから述べるように、アメリカの政策と中国の指導者の資質が、これらの問題を更に悪化させる可能性がある。

しかし、中国を空売りするのは危険な賭けということになる。中国の産業は、太陽光発電や風力発電技術など重要なセクターを独占しており、電気自動車産業は他国を凌駕している。世界トップクラスの建設会社のうち3社(年間売上高1位を含む)が中国企業だ。中国は、重要な鉱物や金属へのアクセスを確保するために多大な労力を費やしてきた。中国が将来にわたって主要な経済プレーヤーであり続けると予測するに足る十分な理由がある。大きな問題は、中国がアメリカを追い越すのか、それとも経済力のほとんどの面で永久に遅れを取るのか、あるいは大まかに同程度になるのか、ということだ。その答えが分かれば、どの程度心配すべきなのかが分かるはずだ。

第2問:アメリカの輸出管理(export control)は機能するだろうか?

1つ目の質問にどう答えるかは、ジョー・バイデン政権の対中経済戦争が成功すると思うかどうかにかかっている。中国が先端半導体(および関連技術)にアクセスできないようにすることで、アメリカはこの重要な分野での技術的優位を維持したいと考えている。アメリカ政府高官たちは、こうした措置は狭い国家安全保障上の懸念(ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は「小さな庭と高いフェンス(small yard and high fence)」と表現している)に限定されたものだと主張しているが、本当の狙いは、中国の技術的進歩をより広い範囲で遅らせることにあると思われる。

ここで出てくる疑問は、このキャンペーンが長期的に成功するかどうかということだ。部分的なデカップリング(切り離し)であっても、コストがかからないということはない。このような制限は、アメリカや、アメリカのキャンペーンに協力しなければならない他の国々の技術革新を遅らせることにつながるだろう。技術的障壁が100%有効であるということはなく、この政策は中国に、時間をかけて自給自足を高める大きなインセンティヴを与えることになる。これらの理由やその他の理由から、これらの措置がどれほど効果的であるかについては、十分な知識を持った専門家の間でも意見が分かれている。

1941年に日本に対して行ったように、輸出管理が功を奏した場合、対象となる国家が黙ってそれを受け入れるとは限らないことを忘れてはならない。中国は既にアメリカ企業や同盟諸国に報復しており、その対抗措置はそれだけにとどまらないかもしれない。

しかしながら、重要なことは、このキャンペーンがうまくいくと思っているのであれば、中国がアメリカの優位性や既存の世界秩序に長期的な挑戦をしてくることを心配する必要はないということだ。しばらくはうまくいくかもしれないが永遠には続かない、あるいはいずれ中国や他の主要国で反発を招くと考えるのであれば、もっと懸念すべきである。

第3問:習近平はもう一人の毛沢東なのか、それとももう一人のリー・クワン・ユーなのか?

中国の急速な台頭は、毛沢東支配以後の「集団指導(collective leadership)」の下で始まった。たとえ鄧小平が中国共産党のヒエラルキーの中で「同輩中の首席(first among equals)」であったとしても集団指導体制が堅持されてきた。しかし今日、習近平は毛沢東時代以降初めて、権力を自身に集中させ、毛沢東のようなカルト的な人格崇拝を促進している。そうした人格崇拝においては、彼の思想は完全無欠、無誤謬であり、彼の決定に疑問を呈することは不可能ということになる。

一国の権力を1人の人間に任せきりにすることは、たいていの場合、災いの原因となる。人間は無誤謬ではない。野心的で意志の強い人物が制約を受けることなく活動できるようにすれば、大きな過ちを犯し、長い間修正されない可能性が高くなる。毛沢東の無謀な大躍進政策[Great Leap Forward](何百万人もの死者を出した飢饉を引き起こした)や、文化大革命(Cultural Revolution)で中国が被った被害を考えれば明らかだ。それでもまだ警告が足りないなら、トルコのレセップ・エルドアン大統領の金融政策に対する悲惨な見解や、かつてツイッターとして知られていたソーシャルメディア・サイトでイーロン・マスクが仕切るようになって起きている大混乱の代償について考えてみればいい。

確かに、不利な状況を逆転する、もしくは市場を打ち負かし続け、深刻な誤りを犯すことのないごく少数の人物たちが存在する。ウォーレン・バフェットやリー・クワン・ユーはそのレヴェルに近いかもしれないが、ほとんどの指導者はそのレヴェルに達していない。私が言いたいのは、中国の短期的、中期的な未来は、習近平が自分で思っている半分でも賢いかどうかに大きくかかっているということだ。最近の秦剛前外交部長と軍幹部数名の粛清が思い起こさせるように、習近平は明らかに権力強化の天才である。しかし、彼は新型コロナウイルスの管理を誤り、中国経済で最も輝かしいスターの何人かを貶め、中国の世界的イメージの着実な低下を指揮してきた。そして、権力を手に入れれば入れるほど、彼の政策判断は悪化しているように見える。中国経済の見通しについて弱気な人は、習近平がおそらく終身的に指導者の地位に座り続けるであるという事実を心強く思うかもしれない。

第4問:アジアは効果的にバランスを取るか?

習近平の大きな失敗の1つは、中国の近隣諸国が力を合わせて北京を牽制しようとするのを効果的に阻止しなかったことだ。中国の台頭は他のアジア諸国にとって何らかの懸念材料になるはずだったが、中国の世界的野心を公然と宣言し、「戦狼外交(wolf warrior diplomacy)」を採用し、知覚された侮辱に過剰反応し、台湾や南シナ海で攻撃的なサラミ戦術(訳者註:敵を少しずつ撃滅していく戦術)を採用したことで、問題は更に悪化した。

その結果はどうなるか? インドとアメリカは接近を続け、現在では日本とオーストラリアとともに四極安全保障対話(Quadrilateral Security Dialogue)に参加している。AUKUS協定は、アメリカ、オーストラリア、イギリスの戦略的関係(および安全保障協力)を強化した。日本は防衛費を急増させ、韓国との微妙な関係を修復しつつある。より遠い地域においては、ヨーロッパ連合(European UnionEU)が中国からの投資に魅力を感じなくなりつつあり、ヨーロッパとアジアの世論は中国の国際的な役割に警戒感を強めている。

とは言え、こうした措置の最終的な効果はまだ分からない。以前にも書いたように、アジアにおける均衡する連合(balancing coalition)は集団行動上の重大な問題に直面しており、ヨーロッパはそこで主要な戦略的役割を担う意図を持っていない。これらの国家を隔てる距離は大きく(そのため、遠くで問題が起きれば、一部の国家は引き下がるかもしれない)、誰も中国市場への完全なアクセスを失いたくはないし、韓国や日本のような国々には問題のある過去がある。これらの国の多くは、自分たちがただ乗りしている間、アンクル・サム(アメリカ)に中国に関する問題解決を任せたいと思うかもしれない。これらの国々はまた、アメリカが対立的になりすぎると神経質になる傾向がある。

バランス・オブ・パワー(力の均衡)理論(balance of power theory)、もしくは脅威理論(threat theory)から予想できるが、アメリカとアジアのパートナー諸国は今日、積極的に中国に対してバランスを取っている。もしそうであれば、中国がアジアで覇権(hegemony)を握る可能性はかなり低くなり、戦争のリスクは低下する。そうでない場合は、もう少し心配する必要があるだろう。この場合、アメリカが分裂しかねない連合を率い、やりすぎとやりなさすぎの間のスイートスポットを見つけられるかどうかに、多くのことがかかっている。それに賭けたい人はいるだろうか?

第5問:世界の残りの地域はどうするだろうか?

最後の疑問は、中国そのものについてではなく、世界の他の国々の対応についてである。明確なパターンが出現しつつある。中国を最も懸念するアジア諸国は互いにより接近し、アメリカに引き寄せられつつある。ヨーロッパ諸国の大半は、アメリカの保護に依存しているため選択の余地がなく、しぶしぶアメリカに尽き従っている。南アフリカ、サウジアラビア、ブラジル、そしてその他の国々にとっては、中国とアメリカの対立は、これらの大国が米中両国を翻弄し、米中両国との関係から利益を得るチャンスとなる。

ここで重要な問題となるのは、米中両国のうちどちらがこの新しいゲームを最も効果的にプレイできるかということだ。アメリカは過去30年間、多くの発展途上国において多くの善意を無駄遣いしてきたが、その失敗が中国にチャンスを与えている。しかし、「一帯一路構想(Belt and Road Initiative)」をはじめとする中国自身の行動は、多くの人が期待するようなゲームチェンジャーにはなっていない。アメリカはヨーロッパと東アジア・太平洋地域の大部分の国々と同盟関係を結び、中国はロシアと発展途上国の主要国と同盟関係を結び、その他の中堅国はその間を行き来している。これらのスコアカードの顔ぶれは完璧に一致する訳ではなく、チームを入れ替えた選手もいるだろうが、全体的なパターンは以前見たものと同様となっている。

更にもう1つについて述べる。

また、名前を知られていない選手もいるかもしれない。もし本当に中国について心配したいなら、あるいは脅威を煽ることが仕事の一部なのであるならば、部外者がその真偽を判断することがほとんど不可能なほどの、人々の恐怖心を煽り立てるシナリオにいつでも頼ることができる。1950年代の赤狩り(Red Scare)が典型的な例だ。多くのアメリカ人が、自分たちの社会の中に、愛国的な市民のふりをしながらも、実際には邪悪なクレムリンの支配者に密かに忠誠を誓っている大勢の人々が浸透してきており、蝕まれていると本気で信じていた。そのような懸念は過大で大袈裟だったが、誤りであることを証明する(disprove)ことも難しかった。私たちは他人の内心や忠誠心をどうやって知ることができるだろうか?

このような観点から見ると、中国のハッカーたちがアメリカの重要なインフラに密かに埋め込んだとされるコンピュータ・マルウェアを発見し、除去するためのアメリカの取り組みについて述べた最近の『ニューヨーク・タイムズ』紙の記事をどう考えればいいのだろうか? 中国のハッカーたちの意図は、将来の衝突の際にアメリカの軍事的な反応を破壊する、もしくは遅らせることだと報じられている。サイバー空間における真珠湾攻撃の懸念は以前からあったが、この記事ではその危険性が非常に現実的であることを示唆している。と言うのも、マルウェアがどの程度効果的なのか分からないし、サイバーセキュリティの専門家がまだ見つけていない、もっと危険なコードがどこかに潜んでいないと100%言い切れないからだ。

しかし、ニューヨーク・タイムズの記事で私が驚いたのは、匿名のアメリカ政府高官たちへのインタヴュー(つまり、公式に許可されたリーク)に基づいているにもかかわらず、中国における同様の取り組みについてほとんど何も語っていないことだ。ある中国政府高官が、自国が直面しているサイバー攻撃について不満を述べているのを引用しているが、そのほとんどが「アメリカから」だと主張している。中国が何年も前からアメリカの重要なインフラにマルウェアを仕込んでいて、国家安全保障局や米サイバー軍司令部にいる資金力のある天才たちが防衛を演じているだけだとは考えにくい。もしそうなら、私たちはもっと大きな問題を抱えることになる。

中国をどのくらい怖がるべきか? 私には分からない。歴史に照らし合わせれば、アメリカは中国からの挑戦に過剰に反応する可能性の方が、過小に反応する可能性よりも高い。しかし、私たちの行動が過剰だと思うか、過小だと思うかは、上記の5つの疑問にどのように答えるかによって、かなりの程度変わってくる。賢明な中国の専門家たちが額を寄せ合い、意見の相違の幅を狭めようとしてくれるのであれば、これほどありがたいことはない。そうすることで、この重要な戦略的問題について、この問題に関心を持つ私たちが、より良い情報に基づいた議論を行えるようになる。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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ビッグテック5社を解体せよ

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