古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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カテゴリ: 米中関係

 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 高市早苗首相の台湾をめぐる発言で日中関係は悪化している。日本政府としては、「高市首相の発言と、これまでの姿勢は別で、日本側に変更はない」という何とも苦しい言い訳をすることになる。高市首相が国会の場で早めに発言を撤回・修正していればここまでの深刻な状況にならずに済んだ。「高市首相から失言を引き出した野党が悪い」という、なんとも考えの足りない、思考力と知恵を持つようにお勧めしたい人たちの擁護論がむなしく響く。一般国民が言うならまだしも、政治のプロの世界やマスコミに出ている人たちもそのようなことを述べているというのは滑稽さを通り越して、日本の将来への不安が増大するばかりである。

国際関係論学者であるジュリオ・プリエセが日本経済新聞の取材を受け、日中関係と米中関係について答えている。その内容な簡単にまとめると、アメリカが中国に対して融和的な態度を取り、「雪解け(デタント)」が進んでいる。トランプ関税でもアメリカが中国に譲歩した形になった。トランプ大統領は高市首相の発言とそれに対する中国の対応について、FOXニューズにインタヴューされ、日本を「友人」と言わないというはぐらかしで、高市首相を支持しなかった。こうしたことで、中国は日本に対して厳しい態度を取ることができると踏んで、現在のような状況になっている。

※日本経済新聞2025年11月17日付記事「中国、対日強硬の裏に米中「雪解け」 欧州大学院のジュリオ・プリエセ氏」(Deep Insight+ 本社コメンテーター 秋田浩之)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD1727K0X11C25A1000000/

 高市政権はアメリカからはしごを外された形になった。お金だけを数十兆円も取られて、味方をしてもらえないというのは何とも悲惨な話である。アメリカとしても、日本の軍国主義復活の用な動きは容認できない。日本は黙ってアメリカの言うことを聞いて、軍隊を出せと言われたと時に出し、死ねと言われた時に死ぬ、それ以上は求められていない。自分で何かをするように決めることなど許されていないのだ。米中関係の改善の中で、そうした動きの邪魔になるようなことをしても助けてもらえない。下手をすれば、「高市首相は危険だ、米中両国にとって共通の敵だ」という認定をされるシナリオも考えられる。

 知恵もなく、思考力もなく、高市首相を誕生させた、自民党と一般国民は歴史の教訓から多く学ぶべきである。そして、現実を客観的に直視すべきである。

(貼り付けはじめ)

日本の新首相の台湾への脅威に関する発言が中国との緊張を呼ぶ(Japan's new leader's remarks on threats toward Taiwan spark tensions with China

アンソニー・クーン筆

2025年11月17日

アメリカ公共ラジオ

https://www.npr.org/2025/11/17/g-s1-98081/spat-over-taiwan-china-japan
韓国ソウル発。高市早苗首相が、中国の台湾に対する軍事行動は日本の対応を正当化する可能性があると示唆したにもかかわらず、日本は中国政府に上級特使を派遣し、日本の政策に変化はないと中国政府に保証した。

中国は、高市首相が日本初の女性首相に就任してから1カ月も経たないうちに、政治的・経済的圧力を強めている。

中国外務省の毛寧報道官は記者会見で、高市首相の発言は日中関係の政治的基盤を深刻に損なうものであり、高市首相は「台湾に関する誤った発言(wrongful remarks on Taiwan)」を撤回すべきだと指摘した。

毛報道官はまた、中国の李強首相が南アフリカで開催されるG20サミットで高市首相と会談する予定はないと述べた。

11月7日、高市首相は複数の国会議員から、中国が、自治政府が支配している台湾に対して軍事行動を起こすシナリオについて問われ、「軍艦が使用され、武力行使が伴えば、どう見ても国家存亡の危機となる事態になり得る(If warships are used, accompanied by the exercise of military force, then however you look at it, it could be a situation posing an existential threat to the country)」と答えた。

日本は、第二次世界大戦後の憲法で戦争行為を禁じられている。しかし、2015年に成立した安全保障関連法制により、日本またはアメリカなどの緊密な同盟国が日本の存立を脅かす攻撃を受けた場合、自国を防衛する権限が認められている。

一方、中国は、台湾が独立を宣言した場合、あるいは外国の干渉があった場合、軍事力行使の可能性を排除していない。

●中国は撤回を要求している(China demands retraction
、中国外務省の林剣報道官は先週、「日本は直ちに卑劣な発言を訂正し、撤回しなければならない。さもなければ、日本はあらゆる責任を負わなければならない」と述べた。

高市首相は発言の撤回を拒否しているが、具体的な想定シナリオについては今後コメントしないとしている。

在大阪中国総領事の薛剣は、ソーシャルメディアへの投稿で、より強い言葉を使った。「無謀にも侵入する汚らしい首は、一瞬の躊躇もなく切り落とさなければならない(the filthy head that recklessly intrudes must be cut off without a moment's hesitation)」とXに書き込んだ。

多くの人がこれを高市首相の首だと解釈した。その後、日本政府が抗議したことで、この投稿は削除された。

金曜日、中国は経済的圧力をかけた。中国政府は、高市首相の挑発的な発言によって日本の安全が損なわれており、中国人は日本を訪問すべきではないと警告した。

専門家の中には、高市首相率いる日本が長年の台湾に対する曖昧な政策(long-standing policy of ambiguity towards Taiwan)を放棄するのではないかと懸念している人もいるが、変化はほとんどないと見ている人もいる。

高市首相の政治面の師である故安倍晋三元首相は、「台湾有事は日本有事でもある(a Taiwan contingency would also be a Japan contingency)」と発言したことで知られている。しかし、これは首相退任後の発言であり、具体的なシナリオには触れなかった。

インディアナ大学ブルーミントン校の東アジア国際関係論教授アダム・リフは「日本が長年続けてきた戦略的曖昧性(strategic ambiguity)の立場から脱却する可能性は極めて低いだろう」と述べている。

リフは、台湾が日本の南西諸島に近接していること、そしてアメリカと同盟関係にあることを考えると、台湾をめぐる紛争は日本の安全保障にとって、そしてあらゆるイデオロギーを持つ日本の指導者たちにとって、重大な問題となるだろうと述べている。

「特に平時において、日本が関心を持ち、必ずしも特定の行動方針を約束することなく、日本がこの問題に利害関係を持っていることを示すことは、歴代の指導者が抑止力を強化するために試みてきたことの一つだと思います。そして、これは何十年も前から行われてきました」とリフ氏は述べる。

"Especially in peacetime, signaling that Japan cares, Japan has a stake in this without necessarily committing to any particular course of action," Liff says, "is one thing that I think successive leaders have tried to do in order to bolster deterrence. And this goes back decades."

●堅調な世論調査の数字、脆弱な連立(Robust poll numbers, fragile coalition

しかし、慶應義塾大学名誉教授の添谷芳秀は、高市首相は強硬派の保守派という狭い政治基盤を喜ばせ、ひいては自身の政治信条を正当化しようとしているように見えると指摘する。

添谷教授は、「この発言を喜ぶのは、限られた支持者だけだろう。高市首相もそのことを承知しているはずだ。そして、こうした全体的な文脈において、日本の首相がこのような発言をするのは無謀(reckless)だ」と述べた。

高市首相とその内閣の支持率は70%近くと、歴代首相の支持率を上回っている。

しかし、共同通信社が週末に行った世論調査によると、台湾紛争の際に日本は自衛権を行使すべきだと回答した人が約49%、反対する人が約44%だった。

添谷教授はさらに、高市首相の発言は、先月韓国で習近平国家主席と会談し、日中関係を安定的かつ建設的に維持することで合意した外交的成果を無駄にしているようだと付け加えた。

高市首相はまた、日本の中核となる安全保障戦略文書の見直し、場合によっては改訂、さらには核兵器非保有の誓約についても検討したいと述べている。

しかし、数十年にわたる政策を根本から見直すのに必要な政治的影響力を高市首相が持っているかはまだ分からない。

高市首相が率いる与党自民党は国会で過半数を握っておらず、専門家の一部は、高市首相が政権維持のために築き上げた新たな連立政権は不安定で短命に終わる可能性があると見ている。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 


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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

 第二次ドナルド・トランプ政権は、各国からの輸入に高関税を掛ける政策を発表し。世界を混乱に陥れた。この高関税はアメリカの輸入業者に打撃を与え、消費者は物価高に苦しむことになった。私は、この高関税政策は、アメリカの製造業回帰に向けた第一段階と考えていた。しかし、現状は製造業の拠点づくりは進まず(数年単位のプロジェクトで当たり前だ)、ドルの価値は下がっているが、そこまでではない。やはり物価高もあり、強いドルで輸入品を買わねばならないということもある。
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 そうした中で、対中強硬姿勢を見せていたトランプ政権も、中国との妥協、合意をすることになった。アメリカが中国に頭を下げた格好である。レアアースの輸出制限がよほど厳しかったようだ。

※独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構のウエブサイト↓

https://www.jogmec.go.jp/publish/plus_vol29.html?mid=hp250515
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上記のページには、各資源について、どの国がどれだけ生産し、どれだけ精製しているかを示すグラフが出ている。このグラフに今回のアメリカと中国の貿易に関する合意の理由が明らかに示されている。グラフを見れば、重要資源とレアアースの分野においては、アメリカは中国に大きく後れを取っていることが分かる。レアアースの輸出制限をされてしまうのはアメリカにとって死活問題なのである。日本が石油を禁輸されてしまうようなものだ。下に掲載した論稿には具体的な国名が出てくるが、中国とインドネシアの名前が出てこない。これでは何の意味もないということもグラフを見れば明らかだ。

 ロシアは国際的な決済システムから除外されているのに、石油を輸出して外貨を稼いでいる。ロシア経済は破綻しなかった。それはロシアが資源大国であると同時に、ドルを使った国際決済システム以外に、金を使った決済を行えているからだ。ドルを基軸とするアメリカ中心の世界は終わりつつある。

 アメリカは今頃になって重要資源とレアアースの確保に躍起になっている。ドルを吸って買って来ればよいという石油で行えたシステムは機能しない。重要資源とレアアースの世界は中国が支配する世界である。アメリカは頭を下げるしかない。私たちはこのことをよくよく拳拳服膺する必要がある。

(貼り付けはじめ)

【解説】 トランプ氏の一連のレアアース合意、中国による世界的支配を変えられるのか

BBC NEWS JAPAN

20251030

スランジャナ・テワリ・アジアビジネス担当編集委員

https://www.bbc.com/japanese/articles/c0jd9ywzql1o

中国が長年、支配的な立場を保っているレアアース(希土類)の分野での供給を確保しようと、アメリカのドナルド・トランプ大統領がアジア歴訪中、次々と合意文書に署名している。

合意は、日本、マレーシア、タイ、ヴェトナム、カンボジアと結んだ。規模や内容は相手によって異なり、具体的な影響を評価するにはまだ早い。しかしいずれも、電気自動車やスマートフォンなど、先進的な製品の製造で不可欠となっている鉱物の入手方法を多様化させる取り組みを、合意の中身として含んでいる。

合意はまた、アメリカがパートナー各国のレアアース取引を、アメリカとの間だけに限定することを狙っている。このことは、トランプ氏が中国の習近平国家主席との重要な会談を前に、レアアースをめぐって中国への依存度を小さくしたいと思っていることをはっきり示している。

これらの合意は、いずれは中国のレアアース支配を脅かすかもしれない。ただ専門家らは、そうなるまでには何年もかかり、多くの犠牲を伴うだろうとしている。

英王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)環境社会センターのパトリック・シュローダー上席研究員は今週の論説で、「オーストラリア、アメリカ、ヨーロッパなどの地域で新たな採鉱場、精製施設、加工工場を建設するには、(中国に比べて)はるかに高い資本コスト、厳しい環境規制、費用のかかる労働力とエネルギーの投入が必要になる」と指摘した。

それでも今回の動きは、米中対立の転換点となる一歩だ。

中国は現在、世界のほぼすべてのレアアースの加工を支配している。このことが、アメリカとの貿易戦争において、習氏に強大な力を与えている。両国は、関税やTikTokの米国事業の売却など、さまざまな問題で合意を目指している。そうしたなか、中国が最近、輸出を規制したことで、レアアースの供給が減っている。

この輸出規制は、欧米やアジアの製造業の拠点で、これまでもみられた不安を引き起こしている。これは、世界のサプライチェーンが、揺れ動きの大きい米中関係の影響をいかに受けやすいかを示している。

トランプ氏は、今週のアジア歴訪を開始する前にすでに、オーストラリアと85億ドル規模の合意を成立させた。レアアースの加工などに関して、産業レベルでの協力と共同投資を約束した。

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相がホワイトハウスを訪れた際、トランプ氏は、「今から1年ほど後には、重要鉱物やレアアースが取れすぎて、どうしていいかわからなくなるだろう」と述べた。また、「値段は2ドルになる」と述べ、供給の急増に伴って価格が急落するとの見方を示した。

 

トランプ氏が提示した時期も価格も非現実的だ。だが、重要鉱物を欲しているアメリカにとって、オーストラリアが重要なパートナーであることは間違いない。

 

米シンクタンクの戦略国際問題研究所のグレイスリン・バスカラン氏とケサリン・ホーヴァス氏は、最近の小論文で、オーストラリアを「地球上で最も広範で豊富な鉱物資源を誇る、クリスマスツリーのように輝く周期表」だと表現した。

 

イルカ・リソーシズなどいくつかの豪企業は、すでに精製施設を建設している。同社は今年、BBCの取材で、政府の支援なしでは財政的にほぼ不可能だとした。

 

トランプ氏がクアラルンプールのコンベンションセンターで、署名した文書を掲げて見せている。後ろには米国旗が見える画像提供,Getty Images

画像説明,タイとの間で署名した合意書を掲げるトランプ米大統領(26日、マレーシア・クアラルンプール)

アメリカが日本との間で結んだ重要鉱物に関する合意は、レアアースの供給と生産を強化する内容だ。また、レアアースをめぐる協調投資と備蓄の計画、供給ショックに対処する緊急対応グループについても触れている。

東南アジアの小規模経済圏との合意は、詳細がはっきりしない。マレーシア、タイ、ヴェトナム、カンボジアの各国は、アメリカのレアアースに対するアクセスの拡大と、米企業を中国企業より優遇する輸出ルールに合意した。アメリカへの出荷を妨害しないという約束や、中国系ではない企業による現地での加工や投資を奨励するという約束も、合意には含まれている。

 

ただ、マレーシアおよびタイとの合意は、拘束力のない「基本合意書」(MOU)だ。これは関係国の政治的な変化に耐えられるのだろうか?

まだ取り上げられていない大きな問題に「規制」がある。環境破壊の可能性を考慮すると、これは特に重要だ。レアアースをめぐるビジネスは、採掘だけでなく、加工までダーティーだ。採掘、浸出、熱分解、精製のすべてで放射性物質が発生する。中国での影響については多くの記録があり、他国が積極的に乗り出したくなる産業ではないことを示している。

中国を除いて、世界で最も多くのレアアースを供給しているのが、豪企業のライナス・レアアースだ。精製の一部はマレーシアに頼っており、同国では長年にわたり、規制をめぐっていくつかの問題に直面している。

トランプ氏は、日本やオーストラリアといったアジア太平洋地域の大国を投資に参加させ、レアアースの供給をめぐるアメリカのコントロールを拡大する可能性を手に入れた。確固たる基盤に立って、非常に重要な習氏との交渉に30日に臨むことになる。

とはいえ、中国がレアアース加工の約7割を占めているのは事実だ。追いつくには、膨大な資本、強力な環境法、技術の専門性が必要だ。一つの加工工場を建設するだけでも、設計からフル生産までは何年もかかる。オーストラリアは長い間、レアアースの生産拡大に真剣に取り組んできたが、工場はまだ稼働していない。

中国はこの地域で決して黙っていることはない。世界2位の経済大国の中国との貿易は、日本を含むすべての国にとって不可欠となっている。中国がもつ影響力(特に東南アジアでの影響力)を、アメリカは軽視することはできない。

レアアースのサプライチェーンは多様化と変革が必要だ。協力と投資の約束は手始めではあるが、前途は長く、曲がりくねっている。
=====
ホワイトハウス「中国がレアアース規制停止」 米中合意の詳細公表

日本経済新聞 2025112 10:01

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0202J0S5A101C2000000/

米ホワイトハウスは1日、1030日に開いた米中首脳会談での合意内容の詳細を公表した。レアアースなど重要鉱物の輸出規制を「中国側が事実上撤廃する」と強調。「米国の労働者、農家、そして家族を最優先とする大きな勝利」だとアピールした。

米中が共同でまとめた文書ではなく、米国が独自に作成した説明資料「ファクトシート」の形式で発表した。ホワイトハウスは米中の約束事項を列挙したが、中国側の説明と食い違う可能性もある。

レアアース新規制「中国が施行停止」

ファクトシートによると、中国は109日に発表したレアアース(希土類)の新たな輸出規制を停止する。

新たな輸出規制は、中国産のレアアースをわずかでも含めば海外製品でも輸出時に中国政府の許可が必要だったり、レアアースの製錬ノウハウの国外提供を規制したりする内容。一部は施行前だった。

これらについて、ホワイトハウスは「中国が世界規模での施行を停止する」とした。

ホワイトハウスは中国が、重要鉱物であるガリウムやゲルマニウム、アンチモン、グラファイトの輸出許可を出すとも説明した。「20254月と2210月に中国が導入した輸出規制の事実上の撤廃を意味する」と主張した。

米戦略国際問題研究所(CSIS)はガリウムが「米国の主要な防衛サプライチェーンにおいて並外れた重要性を持つ」として、中国の輸出規制に警鐘を鳴らしていた。

オランダ半導体ネクスペリアの輸出再開

オランダに本社を置く中国資本の半導体メーカー、ネクスペリアの半導体については「世界各国に流通できるよう(中国が)適切な措置を取る」とも明記した。

同社の半導体は、オランダとの対立を背景に中国が輸出を一時停止し、ホンダのメキシコ工場が操業を一時停止するなど影響が広がっていた。米中合意を受け、中国商務省も1日、ネクスペリアの半導体の輸出を条件付きで解禁すると発表した。

米国は、中国当局が米テクノロジー企業に対する独占禁止法違反などの調査を「終了する」とも説明した。

中国当局は、米エヌビディアや米半導体大手クアルコムによる第三国企業の買収が、中国独禁法が定める手続きに違反したとして調査を始めたばかりだった。中国側が調査を終了すれば、米各社は違反を問われなくて済む可能性がある。

「中国がフェンタニルの原料輸出対策強化」

ファクトシートの説明によると、中国は合成麻薬フェンタニルの流入対策として、麻薬に用いられる可能性がある化学物質の北米向け輸出を停止する。

麻薬原料は代替となる物資も多いため、輸出停止の対象とした物質以外も管理を厳しくすることで米中は合意した。

中国側は3月以降に導入した鶏肉や小麦といった米国製品への報復関税も停止する。報復として導入した非関税障壁もすべて「停止または撤廃」するという。

中国が米国産の大豆を2025年にまず1200万トン以上輸入し、2628年にも少なくとも年2500万トンを購入することを約束したと明記した。

米国はフェンタニル関税引き下げ

米国側はフェンタニルの流入対策が不十分だとして中国に課した20%の追加関税のうち10%1110日から引き下げる。レアアースの輸出規制に対抗して示唆していた100%の追加関税も発動を見送る。

米国は中国企業に対する事実上の禁輸措置となる「エンティティーリスト」の対象を大幅に拡大する措置や、中国船からの入港料の徴収措置もそれぞれ1年延期する。

入港料については、中国側も報復措置として米国船から徴収する方針を示していたが、米国側が1年延期を決めたことで中国側も報復措置を「撤廃する」(ホワイトハウス)という。

米国の入港料を巡っては、中国船以外に日本の自動車運搬船も徴収対象になっていた。自動車運搬船の容積1トン当たり46ドルの入港料を、1210日以降に本格的に徴収する予定だった。

ファクトシートでは、日本の自動車運搬船からの入港料徴収も併せて延期となるかどうかはまだ明確になっていない。今後、連邦官報や米税関・国境取締局(CBP)の通達で詳細を公表するとみられる。

(八十島綾平、ワシントン=高見浩輔)

=====

重要鉱物でトランプ大統領のご機嫌を伺う国々(The Countries Courting Trump With Critical Minerals

-日本からパキスタンまで、取引は続いている。

リシ・イエンガー筆

2025年10月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/10/28/trump-critical-minerals-deals-rare-earths-list-japan-china/

ドナルド・トランプ米大統領は、重要鉱物がどこにあろうともその発見に躍起になっており、世界中の国々がそれらの供給に名乗りを上げている。

重要鉱物とレアアース(critical minerals and rare earths)は、和平協定から関税の脅威(peace deals to tariff threats)まで、トランプ大統領の第2期における外交政策の多くの柱となっている。その理由は明白だ。アメリカ地質調査所(U.S. Geological SurveyUSGS)がアメリカの安全保障に不可欠とみなす約50種類の鉱物は、ミサイルや戦闘機を含む多くの先進軍事技術に不可欠な原材料である。問題は、レアアースと重要鉱物の生産と加工の大部分を中国が占めていることであり、中国は貿易交渉においてこの締め付けをますます武器として利用しようとしている。

いくつかの国が、ワシントンのこうした優位性への対応を支援し、同時にトランプ大統領の支持を得ることで自国にも利益をもたらすべく、動き出している。

●日本(Japan

トランプ大統領は10月28日、日本の新首相であり、女性初の首相でもある高市早苗と会談し、レアアースおよび重要鉱物に関する協力に関する暫定合意に至った。

この合意に基づき、ワシントンと東京は、共同採掘投資、重要鉱物埋蔵量の地理的位置特定に関する協力、相互備蓄(joint mining investments, cooperation on geolocating critical mineral reserves, and mutual stockpiling)といった措置を通じて、両国それぞれおよび共同の重要鉱物供給の確保に向けて協力していく。

●マレーシア(Malaysia

トランプ大統領は大統領復帰後初のアジア歴訪で、まずマレーシアを訪れ、東南アジア諸国連合(Association for Southeast Asian NationsASEAN)首脳会議に出席した。マレーシアは、アメリカへの複数の投資約束とアメリカ製品に対する関税障壁の削減を約束する代わりに、貿易協定を締結した。

この協定には、アメリカとマレーシア両政府間の重要鉱物に関する覚書が含まれており、両国は「重要鉱物の代替市場を開拓」し、「世界の重要鉱物サプライチェーンの多様化を支援する」ために協力していくと表明した。

●タイ(Thailand

タイは、トランプ大統領がアジア歴訪中に重要鉱物協定に署名した2番目のASEAN加盟国となった。両国は枠組み貿易協定の締結に向けた交渉を継続している。

両政府間の覚書によると、アメリカ政府とアメリカ企業はタイの重要鉱物サプライチェインの発展を支援し、「タイの重要鉱物セクターの競争力向上」に貢献し、アメリカ企業にタイの重要鉱物への優先的なアクセスを与える可能性がある。

●オーストラリア(Australia

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相も、重要鉱物資源をトランプ大統領のご機嫌取りとして利用し、2025年10月のワシントン訪問時に、アメリカがオーストラリアの重要鉱物資源とインフラへのアクセスを拡大する協定に署名した。

この協定の一環として、両国は今後6カ月間で重要鉱物プロジェクトに30億ドルを共同投資し、ホワイトハウスによると推定530億ドル相当の鉱物の採掘を目指す。国防総省はまた、ガリウム鉱石を採掘するため、西オーストラリア州に先進的な精錬所建設への投資を行う。

「今から約1年後には、重要鉱物とレアアースがあまりにも大量に存在し、どう扱えばいいのか分からなくなるだろう」とトランプ大統領は記者団に語った。

●ウクライナ(Ukraine

重要鉱物は、トランプ大統領の最も困難な外交努力の1つであるロシアとウクライナの戦争終結交渉に絡んでいた。

2025年2月、トランプ大統領は、アメリカが既にキエフに提供した援助に対する補償として、ウクライナ産の5000億ドル相当の鉱物資源の提供を要求した。ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領は以前、アメリカの指導者トランプをなだめ、キエフの戦争遂行への支持を将来的に維持するため、アメリカにウクライナ資源へのアクセスを提供する用意があると示唆していた。しかし、ゼレンスキー大統領は「国を売る(sell our country)」ことはできないと明言し、トランプ政権の当初の提案には同意しなかった。

トランプ大統領がホワイトハウスでゼレンスキー大統領を叱責した悪名高い事件から数カ月後の4月下旬、ウクライナとアメリカは、リチウムやチタンなどの重要鉱物の100以上のウクライナ鉱床への優先的なアクセスをアメリカ企業に与える協定に署名した。

●コンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo

重要鉱物資源が豊富なアフリカ大陸の中でも、コンゴは際立っている。この中央アフリカの国は、タンタルとコバルトの世界最大の供給国であり、金や銅といった他の資源も豊富に埋蔵している。中国は長年にわたり、コンゴをはじめとする鉱物資源の豊富なアフリカ諸国に足場を築いてきた。歴代のアメリカ政権は、この優位性を打破しようと試みてきた。

トランプ大統領の最新の試みは2025年6月、コンゴと隣国ルワンダの間で数カ月にわたって続いていた軍事衝突を終結させる合意の仲介役を務めたことだ。この合意には、重要鉱物資源に関する両国の協力が含まれており、安全保障の保証と引き換えに、アメリカがこれらの鉱物資源へのアクセスを拡大する道が開かれている。

しかし、複数のアメリカの連邦議員たちの反対を受けている合意内容については、現在も交渉が続いており、和平合意自体も依然として不安定な状況にある。

●パキスタン(Pakistan

アメリカ政府の高官たちは数カ月にわたり、パキスタンの膨大な重要鉱物資源へのアクセスに関心を示してきたが、2025年9月初旬、パキスタンはついにその意向を表明した。パキスタン政府は、アメリカ企業U.S.ストラテジック・メタルズと5億ドルの契約を締結し、アンチモンや銅などの鉱物資源へのアクセスを認めた。

パキスタンは2025年10月初旬、これらの鉱物資源の最初の出荷をアメリカに引き渡した。この南アジアの国における重要鉱物・金属資源の埋蔵量は、推定23万平方マイル(約57万平方キロメートル)以上に及ぶ。これはイギリスの国土の2倍以上の面積に相当する。

●予想以上(Above and beyond

トランプ大統領は、やや型破りな方法で鉱物資源のパイのより大きな部分を掌握しようと試みてきた。2025年7月には国防総省がアメリカのレアアース採掘会社MPマテリアルズの筆頭株主となり、最近ではトランプ政権がカナダの重要鉱物企業2社の株式を取得した。

重要鉱物は、大統領就任当初、グリーンランドを買収あるいは武力行使によって支配するという執念を抱かせた重要な要因でもあったが、最終的には実現しなかった。

※リシ・イエンガー:『』誌スタッフライター。アカウント:@iyengarish.bsky.social Xアカウント:@Iyengarish Instagram: @iyengar.rishi

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 トランプ関税が発表され、日本には24%の関税が課されることになった。世界各国にはまず10%、それから個別の国々で、対米黒字が多い国を中心にして、様々な税率が課されることになった。中国には145%が課されるという発表があったために、「日本の24%は大したことはないな」という感想を持ってしまうが、やはりこれは日本にとっては重大な問題だ。

 今年4月からゴールデンウイークの連休までの間に、石破茂首相の側近である、赤澤亮正経済再生担当大臣が2度訪米し、関税や日米貿易について、スコット・ベセント財務長官、ジェイミソン・グリア米通商代表と議論した。1度目はドナルド・トランプ大統領も出てきて驚きを持って迎えられた。通常、こういう交渉事は同格のカウンターパートと行うものであり、大統領が大臣と交渉することはない。
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 中国はトランプ関税に対して一歩も引かず、対抗措置を取ることを表明している。トランプ関税によって、株式や債券が下落し、アメリカ側が譲歩や撤退を余儀なくされる中で、中国に一貫性は評価され、信頼性が高まっている。中国のトランプ関税対策の最高責任者になっているのが、何立峰(かりつほう、He Lifeng)副首相だ。何立峰は、習近平の「側近中の側近」であり、福建省で長くテクノクラートを務めた人物だ。習近平の部下となり、習近平の結婚式にも出席した、数少ない人物の1人である。経済学で博士号を取得しているが、英語も話せないということで(前任の劉鶴はハーヴァード大学で教育を受けて英語が堪能)、あまり評価が高くなかったが、最近になって評価を上昇させている。こうしたところは、石破茂首相と赤澤経済担当相との関係に似ている(赤澤大臣はコーネル大学留学経験があり英語は堪能であると考えられる)。

 何立峰副首相の動きをこれから注視していく必要がある。

(貼り付けはじめ)

アメリカの関税交渉で中心的な役割を担う中国の貿易担当最高責任者である何立峰とは何者か?(Who is He Lifeng, the Chinese trade tsar taking centre stage in US tariff talks?

ロウリー・チェン、マイケル・マルティナ筆

2025年5月7日

ロイター通信

https://www.reuters.com/business/autos-transportation/chinas-trade-tsar-limelight-us-tariff-talks-2025-05-07/?taid=681b618679cfff00010e4fe1&utm_campaign=trueAnthem:+Trending+Content&utm_medium=trueAnthem&utm_source=twitter

●要約(Summary

・何副首相が土曜日に複数のアメリカ政府高官と会談。

・当初は外国人投資家たちの期待に応えられなかったが、自信と経験を積んできている。

・国家主導の成長(state-led growth)をイデオロギー的に支える人物として評価されている。

北京・ワシントン発。5月7日(ロイター通信)。習近平国家主席の長年の側近であり、外国投資家たちの間では重要なフィクサーとしての評判を徐々に築き上げてきた何立峰(He Lifeng)が、アメリカとの貿易停滞打開(breaking a trade deadlock with the United States)に向けた土曜日の協議で中心的な役割を果たすことになる。

世界のトップ2経済大国が互いの輸入品に100%を超える関税を課すなど、数週間にわたって緊張が高まっている状況を受け、何立峰はスイスでスコット・ベセント米財務長官とジェイミソン・グリア米通商代表と会談する予定だ。

ドナルド・トランプ米大統領は、習近平国家主席に対し、貿易協定の可能性について自身に電話するよう繰り返し求めてきたが、緊張緩和への道筋は、米中経済貿易問題を統括する何副首相を経由するだろうと見られる。

ロイター通信は、過去1年間に何副首相と面会した外国人投資家や外交官13人にインタヴューを行った。彼らは、70歳の何副首相が、英語が全く話せず、用意された発言から逸脱することを嫌う、堅苦しい共産党官僚という印象だったが、実際には、より自信に満ちた人物へと成長し、その実行力(ability to get things done)に感銘を受けたと語っている。

会談について説明を受けたアメリカのビジネス関係者たちは、先月、世界有数の企業トップが北京で開催されたビジネスフォーラムに集まった際、多くの企業が何副首相に感銘を受けていたと述べている。

関係者のほとんどは匿名を条件に、中国の広大な金融セクターに対する広範な規制監督権も有する何副首相との秘密のやり取りについて語った。

ロイター通信が何副首相の公務に関する調査を行ったところ、何副首相は過去1年間に少なくとも60回、外国人と会談を行っている。これは、2023年3月に副首相に就任してから2024年3月までの45回から着実に増加していることを意味する。

中国国務院(China's State Council)は、この会談に関するファックスによるコメント要請に回答しなかった。

●現状維持の擁護者?(DEFENDER OF STATUS QUO?

しかし、何副首相が西側諸国の企業幹部との交渉にますます慣れてきたにもかかわらず、ロイター通信がインタヴューした多くのビジネスマンは、副首相は政策革新者ではないと述べた。

先月の会合について説明を受けたこのビジネスマンは、何副首相のアメリカ企業幹部たちから評判が上がってきているのは、アメリカにおける混乱を受けて、中国の指導者たちが特に予測可能で自信に満ちている(predictable and confident)ように見えたことが、その要因となった可能性が高いと述べた。

報道によると、ヨーロッパ委員会は、年間約1000億ドル相当のアメリカからの輸入品を対象とするリストに民間航空機を含める予定だという。

彼は最後に中国の主要なマクロ経済計画機関の最高責任者を務め、産業政策(industrial policy)の策定を担当した。また、外国との会談では、北京の輸出主導型成長戦略(Beijing's export-led growth strategy)を繰り返し擁護してきた。

あるアメリカ人実業家はロイター通信に対し、国内消費よりも製造業の振興を支持してきた何副首相は、習近平国家主席の「1兆ドル規模の黒字創出における最大の補佐官(chief lieutenant for building a trillion-dollar surplus)」を務めていると語った。

何副首相は別の意味で、中国の過剰生産能力に関する不満を繰り返し無視してきた。これは、中国が輸出圧力の抑制と新たな協力の道を模索する中で、多くの国々が共有している不満だと3人の関係者がロイター通信に語った。

大西洋評議会(アトランティック・カウンシル)のグローバル・チャイナ・ハブの上級研究員ウェン・ティ・ソンは次のように述べた。「日常的には、何副首相は中国の貿易黒字を擁護するだろう。何副首相が貿易黒字について軟化することは考えにくい。貿易黒字は中国の雇用創出にとって極めて重要な問題だ」。

何副首相は、トランプ大統領による関税攻撃の打撃を受けている日本やヨーロッパ連合(EU)といった先進市場への中国の最近の働きかけにおいて最前線に立ってきた。

何副首相はスイス訪問後、ハイレヴェル経済対話のためフランスを訪問する予定だ。

●期待外れのスタート(UNDERWHELMING START

何副首相が副首相に就任する前、経済問題は劉鶴(Liu He)前副首相が担当していた。劉鶴はハーヴァード大学で教育を受けた、英語が堪能な経済学者であり、トランプ政権下ではアメリカとの貿易協定交渉にも携わった。

何副首相は厦門大学で経済学の博士号を取得しているが、国内問題に注力してきた経歴を持つため、中国経済の代表として世界に向けて発信する上で、多くのことを学んできた。

出席者の1人によると、昨年7月に何副首相が重要な経済政策会合の結果を報告した後、アメリカ企業幹部の一部は何副首相に失望したという。

この人物によると、2027年の党大会で退任することになっている何副首相は、数十人の側近に囲まれた記者会見で、特に精力的な様子は見せなかったという。

一方、劉鶴や王岐山といった何立峰の前任者は、雄弁さと比較的くつろいだ物腰で外国人記者の間で知られていた。

また、何副首相は、2月に日本のビジネス代表団が提起した北京のレアアース輸出規制や、中国国内の日本人の安全に関する懸念を軽視した。

何副首相と3月の会談について説明を受けたこの実業家は、何副首相との過去の協議を「チャットGPTと話しているようだった(talking to ChatGPT)」と表現した。しかし、最近では、何副首相は欧米企業の幹部たちにもっと受け入れられるようなコミュニケーション方法を採るようになったと述べた。

何副首相と複数回面会したこの関係者は、習近平国家主席に近い立場にない当局者にはできない方法で、何副首相が経済政策に関する中国の立場を説明し、支援の約束を果たす能力にも感銘を受けたという。この関係者は具体的な内容を明らかにしなかった。

今年、何副首相と面会した別の外国当局者も、何副首相は関税や不動産危機に加え、デフレ圧力や高齢化といった中国の経済問題を深く理解しており、これらの問題について高度な分析を行ったと述べた。

また、何副首相は中国発のAIスタートアップ企業ディープシーク(Deepseek)の将来性にも非常に自信を持っているように見えたとこの関係者は述べた。

●「典型的な官僚」であり破壊者('TYPICAL BUREAUCRAT' AND DEMOLISHER

何副首相は故郷の福建省で地方官僚として出世し、習近平主席は1990年代から2000年代初頭にかけて福建省で地方官僚として権力基盤を築いた。ロイター通信が以前報じたように、彼はその頃に習近平主席の腹心となり、将来の指導者である習近平の結婚式にも出席した。

彼は2009年に工業港湾都市の天津に異動となり、大規模な都市再開発事業と高額なインフラ整備事業に着手したことで、地元住民から「破壊者(He the Demolisher)」というあだ名をつけられた。これらの事業は天津に華やかな外観を与えたが、同時に都市の債務をより深刻化させた。

シンガポール国立大学の中国専門家アルフレッド・ウーは、何副首相は経済成長の促進に力を入れ、特に「当時の多くの地方官僚と同様に、不動産と都市再開発(real estate and urban redevelopment)に熱心だった」と述べている。

福建省でジャーナリストとして働いていた際に何副首相と出会ったウーは、何副首相を「典型的な地方官僚であり、習近平の典型的な子分(typical local bureaucrat and a very typical protégé of Xi Jinping)」と評した。

ウーは続けて、「何副首相の最優先事項は習近平の指示を実行することであり、従属的な立場(a subordinate position)にある」と述べた。

※ロウリー・チェン:ロイター通信北京支局の中国特派員。政治と一般ニュースを担当している。ロイター通信入社前は、AFPと香港の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙で6年間、中国担当記者を務めた。中国語を流暢に操る。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 ヘンリー・キッシンジャーが最後に発表した(と考えられる)論稿を以下にご紹介する。この論稿については、『トランプの電撃作戦』でも取り上げた。論稿の共著者はハーヴァード大学教授グレアム・アリソンだ。これは推測になるが、この論稿の草稿はアリソンが書き、キッシンジャーが目を通し、加筆修正したのだろう。キッシンジャーが共著者として名前を出しているというのは、アリソンがそれだけの実力を持つ学者であるからだ。最新刊『トランプの電撃作戦』でも書いたが、アリソンはキッシンジャーのハーヴァード大学の教え子である。

 冷戦期、アメリカとソ連は、核兵器開発競争から協力しての核兵器管理に移行した。これは、突発的な核兵器を使っての戦争の発生を抑制して、世界を破滅させ異様にするとともに、核兵器開発や保有による負担を軽減するためのものであった。また、核兵器が多くの国に拡散しないようにするということもあった。核兵器の世界規模での管理体制構築が進められた。それによって、冷戦期は「長い平和(long peace)」と呼ばれるような状態を保つことができた(実際に戦争が起きた地域もあるが)。

 20世紀の核兵器開発技術に相当するのが、21世紀ではAIartificial intelligence、人工知能)である。AIの軍事転用は既に進んでいる。そのことも『トランプの電撃作戦』で取り上げている。20世紀に米ソ間で核兵器開発について管理(control)がなされたように、AIに関しても、管理なされるべきだというのが、キッシンジャーとアリソンの主張である。21世紀の管理は米中両国で行われることになる。そのためには米中間での対話が必要である。ドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席の間での対話が何よりも重要ということになる。

 『トランプの電撃作戦』で詳しく分析したが、米中露による新たな枠組みができつつある。アメリカ一極支配が終わる中で、アメリカと中露による世界管理ということになっていくだろう。詳しくは是非新刊をお読みいただきたい。

(貼り付けはじめ)

AI 軍備管理への道(The Path to AI Arms Control

-アメリカと中国は大惨事(Catastrophe)を回避するために協力する必要がある

ヘンリー・A・キッシンジャー、グレアム・アリソン筆

2023年10月13日

『フォーリン・アフェアーズ』誌

https://www.foreignaffairs.com/united-states/henry-kissinger-path-artificial-intelligence-arms-control

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上海で展示されるテスラのロボット(2023年7月)

※ヘンリー・A・キッシンジャー(HENRY A. KISSINGER):キッシンジャー・アソシエイツ会長。国家安全保障問題担当大統領補佐官(1969-1975年)、米国務長官(1973-1977年)を歴任。

※グレアム・アリソン(GRAHAM ALLISON):ハーヴァード大学ダグラス・ディロン記念政治学教授。著書に『戦争に進む運命:アメリカと中国はトゥキュディデスの罠を避けられるか?(Destined for War: Can America and China Escape Thucydides’s Trap?)』がある。

今年は、史上最も悲惨な戦争(the deadliest war in history)が終結し、近代において大国間戦争(great-power war)がなかった最長期間が始まってから78周年を迎える。なぜなら、第一次世界大戦のわずか20年後に第二次世界大戦が勃発したからであり、第三次世界大戦の亡霊(the specter of World War III)は、理論上全人類を脅かすほど破壊的となった兵器を使って戦い、その後の冷戦の数十年にわたって張り付いていたからである。アメリカによる広島と長崎の原爆を使用しての破壊により、日本は即時無条件降伏(Japan’s immediate unconditional surrender,)を余儀なくされたとき、世界が今後70年間にわたり核兵器の使用を事実上一時停止するとは誰も考えなかった。ほぼ80年後、核兵器保有国がわずか9カ国になるということは、さらにありそうもないことのように思えた。核戦争(nuclear war)を回避し、核拡散(nuclear proliferation)を遅らせ、数十年にわたる大国の平和をもたらした国際秩序の形成において、この数十年にわたってアメリカが示したリーダーシップは、アメリカの最も重要な成果の一つとして歴史に残るだろう。

今日、世界が別の前例のない、ある意味では更に恐ろしいテクノロジーである人工知能(artificial intelligence)によってもたらされる特有の課題に直面しているため、多くの人が歴史に教訓を求めているのは驚くべきことではない。超人的な能力を備えたマシンは、宇宙の支配者としての人類の地位を脅かすのだろうか? AIは集団暴力手段(means of mass violence)における国家の独占を弱体化させるだろうか? AIによって、個人や小集団が、これまで大国の権限であったような規模で人を殺すことができるウイルスを生成できるようになるのだろうか? AI は今日の世界秩序の柱である核抑止力(nuclear deterrents)を侵食する可能性があるだろうか?

現段階では、誰もこれらの質問に自信を持って答えることはできない。しかし、この2年間、AI革命の最前線に立つテクノロジー・リーダーたちと一緒にこれらの問題を探求してきた結果、AIの無制限な進歩がアメリカと世界に破滅的な結果をもたらすという見通しは非常に説得力を持ち、各国政府の指導者たちは今すぐ行動を起こさなければならないという結論に達した(we have concluded that the prospects that the unconstrained advance of AI will create catastrophic consequences for the United States and the world are so compelling that leaders in governments must act now)。彼らも他の誰も未来がどうなるかを知ることはできないが、困難な選択と行動を今日から始めるには十分なことが分かっている。

指導者たちがこうした選択をする際には、核時代に学んだ教訓がその決定に影響を与える可能性がある。何億人もの人々を殺害する可能性がある前例のないテクノロジーの開発と導入を競う敵対者たちでさえ、共通の利益が存在する島を発見した。二者独占(duopolists)として、アメリカとソ連の両国は、この技術が自国を脅かす可能性のある他の国家に急速に拡散するのを防ぐことに関心を持っていた。ワシントンとロシアは両国とも、核テクノロジーが自国の国境内で不正行為者やテロリストたちの手に渡った場合、脅威に利用される可能性があることを認識しており、それぞれが自国の兵器庫のために堅固な安全システムを開発した。しかし、敵対する社会の不正行為者が核兵器を手に入れれば、それぞれが脅される可能性もあることから、両者とも、このリスクを互いに話し合い、これが起こらないようにするために開発した慣行や技術について説明することが自分たちの利益になると考えた。米ソ両国の核兵器の保有量が、どちらも自滅する反応を引き起こさずに相手を攻撃できないレベルに達すると、相互確証破壊(mutual assured destructionMAD)という逆説的な安定性を発見した。この醜い現実が内面化されるにつれ、各勢力は自らを制限することを学び、戦争につながる可能性のある対立を避けるために敵対者を説得して自国の取り組みを抑制する方法を見つけた。実際、アメリカとソ連の両政府の指導者たちは、自国が最初の犠牲者となる核戦争を回避することが重大な責任であると認識するようになった。

今日 AI によってもたらされる課題は、単なる核時代の第2章ではない。歴史は、スフレを作るためのレシピを載せた料理本ではない。AI と核兵器の違いは、少なくとも類似点と同じくらい重要だ。しかし、適切に理解され、適応されれば、80年近く大国間戦争がなかった国際秩序の形成において学んだ教訓は、今日AIに立ち向かう指導者たちに利用できる最良の指針となる。

現時点では、AI 超大国は2つだけだ。最も洗練された AI モデルをトレーニングするために必要な人材、研究機関、大量のコンピューティング能力を備えているのはアメリカと中国だけだ。これは、AI の最も危険な進歩と応用を防ぐためのガイドラインを作成するための狭い機会を彼らに提供する。アメリカのジョー・バイデン大統領と中国の習近平国家主席は、おそらく11月にサンフランシスコで開催されたアジア太平洋経済協力会議の直後に首脳会談を開催することでこの機会を捉えるべきであり、そこでは、今日直面している最も重大な問題の1つと見るべきものについて、延長的で直接、対面で議論することができるだろう。

■核兵器時代からの様々な教訓(LESSONS FROM THE NUCLEAR AGE

1945年、原子爆弾が日本の都市を壊滅させた後、パンドラの箱を開けた科学者たちは、自分たちが作り出したものを見て恐怖に慄いた。マンハッタン計画の主任科学者ロバート・オッペンハイマーは、バガヴァッド・ギーター(Bhagavad Gita)の一節を暗唱した。「今、我は死神、世界の破壊者になれり(Now I am become Death, the destroyer of worlds.)」。オッペンハイマーは、原爆を制御するための過激な手段を熱烈に支持するようになり、機密保持資格(security clearance)を剥奪された。「ラッセル・アインシュタイン宣言(Russell-Einstein Manifesto)」は1955年、バートランド・ラッセルやアルバート・アインシュタインだけでなく、ライナス・ポーリングやマックス・ボルンなど11人の一流の科学者が署名し、核兵器の恐るべき威力を警告し、世界の指導者たちに決して核兵器を使用しないよう懇請した。

ハリー・トルーマン米大統領は、この決断について考え直すとは決して言わなかったが、彼も彼の国家安全保障ティームのメンバーたちも、この驚異的な技術を戦後の国際秩序にどのように組み入れることができるのか、実行可能な見解を持っていなかった。アメリカは、唯一の原子大国としての独占的地位を維持すべきなのか? それは可能なのか? その目的を達成するために、アメリカはソ連と技術を共有できるのか? この兵器のある世界で生き残るためには、指導者たちは各国政府よりも優れた権威を発明する必要があったのだろうか? トルーマンの陸軍長官であったヘンリー・スティムソン(ドイツと日本の勝利に貢献した人物)は、核兵器の拡散を防ぐ大国の「コンドミニアム(condominium)」を作るために、アメリカが独占している原爆をソ連の指導者ヨシフ・スターリンとイギリスの首相ウィンストン・チャーチルと共有することを提案した。トルーマンは、国務次官ディーン・アティソンを委員長とする委員会を設置し、スティムソンの提案を追求する戦略を練らせた。

アティソンは根本的にスティムソンに同意した。破滅的な戦争(catastrophic war)に終わる核軍拡競争を防ぐ唯一の方法は、原子兵器を単独で所有する国際機関を創設することである。そのためには、アメリカが核兵器の秘密をソ連や他の国連安全保障理事会のメンバーたちと共有し、核兵器を新しい国連の「原子力開発機関(atomic development authority)」に移譲し、全ての国が兵器を開発したり、兵器級の核物質を製造する能力を独自に構築したりすることを禁じなければならない。1946年に、トルーマンは、アティソンの計画を実現するための協定を交渉するため、金融家であり大統領顧問であったバーナード・バルークを国連に派遣した。しかし、この提案はソ連の国連代表アンドレイ・グロムイコによって断固拒否された。

3年後、ソ連が独自の(核)爆弾製造に成功すると、アメリカとソ連は人々が冷戦(Cold War)と呼び始めた時代、つまり爆弾と弾丸以外の競争に突入した。この競争の中心的な特徴は、核の優位性(nuclear superiority)を追求することでした。この2つの超大国の核兵器は、最盛期には6万発以上の兵器を備えており、その中には有史以来の全ての戦争で使用された、全ての兵器よりも爆発力の高い弾頭も含まれていた。専門家たちは、全面核戦争(all-out nuclear)が地球上の全ての生きている魂の終焉を意味するかどうかを議論した。

数十年にわたり、米政府とロシア政府は核兵器の開発に数兆ドルを費やしてきた。アメリカの原子力事業の現在の年間予算は500億ドルを超えている。この競争の初期の数十年間、米ソ両国は、決定的な優位性を獲得することを期待して、以前は想像もできなかった躍進を遂げた。兵器の爆発力の増加には、新しい指標の作成が必要だった。元の核分裂兵器のキロトン(1000トンの TNT が放出するエネルギーに相当)から、水素核融合爆弾のメガトン(100万トンが放出するエネルギーに相当)までだ。米ソ両国は、弾頭を30分以内に地球の反対側の標的に届けることができる大陸間ミサイル、数百マイルの高さで地球を周回する衛星を発明し、数インチ以内で標的の座標を特定できるカメラを搭載し、本質的に弾丸を弾丸で攻撃することができる防衛装置を発明した。ロナルド・レーガン大統領の言葉を借りれば、核兵器を「無力で時代遅れ(impotent and obsolete)」にする防衛を真剣に想像する専門家たちもいた。

■概念的な武器庫(THE CONCEPTUAL ARSENAL

こうした発展を形成しようとする中で、戦略家たちは第一撃と第二撃を区別する概念的な兵器を開発した。彼らは、確実な報復対応(retaliatory response)に不可欠な要件を明確にした。そして、敵が1つの脆弱性(vulnerability)を発見した場合でも、兵器の他の構成要素が壊滅的な対応に利用できるようにするために、潜水艦、爆撃機、地上発射ミサイルという核兵器の三本柱を開発した。兵器の偶発的または許可されていない発射のリスクが認識されたことで、許容アクションリンク (核兵器に埋め込まれた電子ロックで、適切な核発射コードがなければ作動しないようにする) の発明が促進された。冗長性(redundancies)は、指揮統制システム(command-and-control systems)を危険に晒す可能性のある技術革新(invention)から保護するために設計され、これがインターネットへと進化したコンピュータネットワークの発明の動機となった。戦略家ハーマン・カーンが有名な言葉で述べたように、彼らは「考えられないことを考えていた(thinking about the unthinkable)」ということになる。

核戦略(nuclear strategy)の中核にあるのは抑止(deterrence)の概念であり、考えうる利益に比例しないコストを脅し取ることで、敵の攻撃を防ぐことである。抑止を成功させるには、能力だけでなく信頼性も必要だと理解されるようになった。潜在的な犠牲者たちには、断固とした対応をとる手段(means)だけでなく、意志(will)も必要だった。戦略家たちは、この基本的な考え方をさらに洗練させ、拡大抑止(extended deterrence)などの概念を導入した。拡大抑止は、政治的メカニズム、すなわち同盟による保護の誓約(pledge of protection via alliance)を用いることで、主要諸国に自国の軍備を増強しないよう説得しようとするものであった。  

1962年、ジョン・F・ケネディ米大統領がソ連のニキータ・フルシチョフ書記長と、ソ連がキューバに配備した核弾頭ミサイルをめぐって対立したとき、米情報諜報機関は、ケネディが先制攻撃に成功したとしても、ソ連が既存の能力で報復し、6200万人のアメリカ人が死亡する可能性があると見積もっていた。1969年、リチャード・ニクソンが大統領に就任したとき、アメリカはアプローチを再考する必要があった。私たちの1人、キッシンジャーは後にこの課題について次のように述べている。「私たちが優勢だった時代に形成された防衛戦略は、新たな現実の厳しい光の下で再検討されなければならなかった。・・・いかなる好戦的なレトリックも、既存の核兵器備蓄が人類を破滅させるのに十分であるという事実を覆い隠すことはできない。・・・核戦争の惨事を防ぐこと以上に崇高な義務はない」。

この状態を明確にするため、戦略家たちは皮肉な頭文字をとってMADという言葉を作った。これは次のような意味である。「核戦争に勝つことはできない。だから決して戦ってはならない」。運用上、MADは相互確証脆弱性(mutual assured vulnerability)を意味した。米ソ両国はこの状態から逃れようと努めたが、最終的にはそれが不可能であることを認識し、米ソ両国の関係を根本的に再認識する必要があった。1955年、チャーチルは「安全が恐怖の丈夫な子供になり、生存が消滅の双子の兄弟になる(safety will be the sturdy child of terror, and survival the twin brother of annihilation)」という最高の皮肉を指摘した。価値観の違いを否定したり、重要な国益を損なったりすることなく、死闘を繰り広げるライヴァルは、全面戦争(all-out war)以外のあらゆる手段で敵を打ち負かす戦略を立てなければならなかった。

こうした戦略の柱の 1 つは、現在では軍備管理(arms control)として知られる、一連の暗黙的および明示的な制約だ。MAD 以前、各超大国が優位に立つためにあらゆる手を尽くしていたときでさえ、米ソ両国は共通の利益のある分野を発見していた。誤りを犯すリスクを減らすため、アメリカとソ連は非公式の協議で、相手国による領土監視(surveillance of their territory)に干渉しないことで合意した。放射性降下物から国民を守るため、大気圏内核実験(atmospheric testing)を禁止した。一方が、相手側が先制攻撃を仕掛けるだろうと確信して攻撃する必要性を感じる「危機不安定性(crisis instability)」を回避するため、米ソ両国は1972年の弾道弾迎撃ミサイル制限条約(Anti-Ballistic Missile Treaty)でミサイル防衛を制限することで合意した。1987年に調印された中距離核戦力全廃条約(Intermediate-Range Nuclear Forces Treaty)では、ロナルド・レーガン大統領とソ連の指導者ミハイル・ゴルバチョフが中距離核戦力を廃止することで合意した。1972年と1979年に締結された条約の締結につながった戦略兵器制限交渉(Strategic Arms Limitation Talks)により、ミサイル発射台の増加は制限され、その後、1991年に締結された戦略兵器削減条約(Strategic Arms Reduction TreatySTART)と2010年に締結された新STARTにより、ミサイル発射台数は削減された。おそらく最も重大なことは、アメリカとソ連が、核兵器の他国への拡散は両国にとって脅威であり、最終的には核の無政府状態(anarchy)を招くリスクがあると結論付けたことだろう。米ソ両国は、現在核拡散防止体制(nonproliferation regime)として知られる体制を樹立した。その中心となるのが1968年の核拡散防止条約(Nuclear Nonproliferation Treaty)であり、現在186カ国がこの条約を通じて独自の核兵器の開発を控えることを誓約している。

AIをコントロールする(CONTROLLING AI

AIを封じ込める方法に関する現在の提案には、こうした過去の響きが数多く聞こえてくる。億万長者のイーロン・マスクによるAI開発の6カ月間の停止の要求、AI研究者のエリゼル・ユドコウスキーによるAI廃止の提案、心理学者ゲイリー・マーカスによるAIを世界政府機関が管理すべきという要求は、核時代に失敗した提案の繰り返しである。その理由は、いずれも主要国に自国の主権を従属させる(subordinate)必要があるからだ。競争相手が新技術を適用して自国の生存と安全を脅かすのではないかと恐れて、大国が自国でその技術の開発を放棄した例は歴史上ない。イギリスやフランスなどアメリカの緊密な同盟国でさえ、アメリカの核の傘に頼るだけでなく、独自の国家核能力の開発を選んだ。

核の歴史から得た教訓を現在の課題に応用するには、AI と核兵器の顕著な違いを認識することが不可欠だ。まず、核技術の開発は政府が主導したのに対し、AI の進歩を推進しているのは民間の起業家、技術者、企業だ。MicrosoftGoogleAmazonMetaOpenAI、そして少数の小規模なスタートアップ企業で働く科学者たちは、政府の類似の取り組みをはるかに上回っている。さらに、これらの企業は現在、間違いなく技術革新を推進しているが、コストがかかる、企業間の闘争に巻き込まれている。これらの民間主体がリスクと報酬の間でトレードオフを行うため、国家の利益が軽視されることは間違いないところだ。

第二に、AIはデジタルだ。核兵器は製造が難しく、ウラン濃縮から核兵器の設計まで全てを実行するには複雑なインフラストラクチャが必要だった。製品は物理的な物体であるため、数えることができる。敵の行動を検証できる場合は、制約が生じる。AIは、全く異なる課題を表している。その主な進化は人間の心の中で起こる。その適用性(applicability)は実験室で進化し、その展開を観察することは困難だ。核兵器は実体があるが、人工知能の本質は概念的だ(the essence of artificial intelligence is conceptual)。

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中国国旗とアメリカ国旗を示すスクリーン(北京、2023年7月)

第三に、AIが進歩し普及するスピードが速く、長期にわたる交渉は不可能であることだ。軍備管理は数十年かけて発展してきた。AI に対する制限は、AIが各社会の安全保障構造に組み込まれる前に、つまり機械が独自の目的を設定し始める前に行う必要がある。専門家の一部には、これは今後5年以内に起こる可能性が高いと指摘している。このタイミングには、まず国内、次に国際的な議論と分析、そして政府と民間部門の関係における新たなダイナミクスが必要だ。

幸いなことに、生成型AIを開発し、アメリカを主要なAI超大国にした各種大手企業は、株主だけでなく、国と人類全体に対しても責任があることを認識している。多くの企業がすでに、導入前にリスクを評価し、トレーニングデータの偏りを減らし、モデルの危険な使用を制限するための独自のガイドラインを作成している。トレーニングを制限し、クラウド コンピューティング プロバイダーに「顧客を知る(know your customer)」要件を課す方法を模索している企業もある。バイデン政権が7月に発表したイニシアティヴは、正しい方向への大きな一歩であり、7つの大手AI企業のリーダーをホワイト ハウスに招き、「安全、セキュリティ、信頼(safety, security, and trust)」を確保するためのガイドラインを確立するという共同誓約を行った。

私たち著者の1人であるキッシンジャーが『AIの時代(The Age of AI)』の中で指摘しているように、進化し、しばしば目を見張るような発明や応用がもたらす長期的な影響について体系的な研究を行うことが急務となっている。アメリカが南北戦争以来の分断状態(divided)にあるとはいえ、AIの無制限な進歩がもたらすリスクの大きさは、政府と企業の両リーダーに今すぐ行動を起こすことを求めている。新たなAIモデルを訓練するマスコンピューティング能力を持つ各企業と、新たなモデルを開発する各企業や研究グループは、その商業的AI事業がもたらす人間的・地政学的影響を分析するグループを作るべきだ。

この課題は超党派的なものであり、統一した対応が必要だ。大統領と連邦議会は、その精神に則り、民間部門、連邦議会、アメリカ軍、情報諜報機関の著名な超党派の元リーダーで構成される国家委員会(national commission)を設立すべきだ。国家委員会は、より具体的な義務的セーフガードを提案すべきだ。これには、GPT-4などのAIモデルのトレーニングに必要な大量コンピューティング機能を継続的に評価することや、企業が新しいモデルをリリースする前に極度のリスクに対してストレステストを行うことなどが含まれるべきだ。ルール策定の作業は困難だが、国家委員会は人工知能に関する国家安全保障委員会(National Security Commission on Artificial Intelligence)にモデルを置くことになるだろう。2021年に発表された委員会の勧告は、アメリカ軍と米情報諜報機関が中国とのAI競争で行っている取り組みに弾みと方向性を与えた。

■二大AI超大国(THE TWO AI SUPERPOWERS

アメリカが国内でAIを統制するための独自の枠組みを構築しているこの初期段階であっても、世界で唯一のもう1つのAI超大国と真剣な対話を始めるのに早すぎることはない。中国のテクノロジー分野の国家的リーダーである百度(Baidu、同国最大の検索エンジン)、バイトダンス(ByteDanceTikTokの制作者)、テンセント(TencentWeChatのメーカー)、アリババ(Alibaba、電子商取引のリーダー)は、中国の政治システムがAIにとって特に困難をもたらしているにもかかわらず、ChatGPTの独自の中国語版を構築している。中国は高度な半導体を製造する技術ではまだ遅れをとっているが、近い将来に先行するための基本技術を備えている。

バイデンと習近平は近い将来、AI軍備管理について私的な会話をするために会うべきだ。11月にサンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議がその機会を提供してくれる。各首脳は、AIがもたらすリスクを個人的にどのように評価しているのか、壊滅的なリスクをもたらすアプリケーションを防ぐために自国は何をしているのか、国内企業がリスクを輸出しないよう自国はどのように保証しているのかについて話し合うべきだ。次回の協議に反映させるため、米中のAI科学者たちや、こうした進展の意味を考察してきたその他の人々で構成される諮問グループを設けるべきである。このアプローチは、他分野における既存のトラックII外交に倣ったものであり、政府の正式な承認はないものの、その判断力と公平性から選ばれた人物でグループを構成するものである。日米両政府の主要な科学者たちとの議論から、私たちはこれが非常に生産的な議論になると確信している。

この議題に関するアメリカと中国の議論と行動は、11月にイギリスが主催するAI安全サミットや国連で進行中の対話など、AIに関する新たな世界的対話の一部に過ぎない。各国が自国の社会の安全を確保しながら国民の生活を向上させるためにAIを採用しようとするため、長期的には世、界的なAI秩序(global AI order)が必要となる。その取り組みは、AIの最も危険で潜在的に破滅的な結果を防ぐための国家的取り組みから始めるべきである。これらの取り組みは、大規模なAIモデルの開発に携わる様々な国の科学者たちと、ここで提案されているような国家委員会のメンバーたちとの間の対話によって補完されるべきである。最初は先進的なAIプログラムを持つ国々の間での正式な政府交渉では、国際原子力機関に匹敵する国際機関とともに、国際的な枠組みを確立することを目指すべきである。

バイデンや習近平をはじめとする世界の指導者たちが、数十年前に核の脅威に対処した先人たちと同じように、AIがもたらす課題に真正面から向き合おうと今行動すれば、果たして成功するだろうか? 歴史という大きなキャンバスと今日の分極化の進展を見れば、楽観視することは難しい。それにもかかわらず、核保有国間の平和が78年続いたという白熱した事実は、AIの未来がもたらす革命的で避けられない課題を克服しようとする全ての人々を鼓舞するのに役立つはずだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカで麻薬として流通しているのがフェンタニルという薬だ。このフェンタニルという薬は、医療用の強力な鎮痛薬であり、ガン患者などの疼痛緩和などで、適正に使えば大変効果の高い薬だということだ。これを違法に、過剰摂取することで、中毒となる。アメリカの古都フィラデルフィアのある一角は、フェンタニル中毒者たちが街頭にあふれ、「ゾンビの街」と呼ばれるほどになっている。フェンタニルの蔓延と中毒患者の増加はアメリカにとって深刻な問題となっている。

 アメリカの白人男性の平均寿命が短くなっている問題については、アン・ケース、アンガス・ティートン著『絶望死のアメリカ』(松本裕訳、2021年、みすず書房)に詳しいが、アルコールや麻薬の過剰摂取による死亡は、緩慢な自殺であり、これを著者たちは「絶望死(deaths of despair)」と呼んでいる。

 アメリカにはメキシコから麻薬が流入しており、「麻薬戦争(drug war)」と呼ばれる状態になっている。今回ご紹介する論稿では、フェンタニルの原薬(active pharmaceutical ingredientAPI)や前駆体化学物質(precursor chemicals)は中国から輸出されていること、中国政府の取り締まりもあるが、各地方の省政府がフェンタニル製造を奨励しており、その中で、中小企業がネットワークを形成して、原薬や前躯体化学物質をメキシコなどの外国に輸出している様子が描かれている。

 また、麻薬でお金を儲けても、それを使うためには、資金洗浄(マネーロンダリング)をしなければならないが、マネーロンダリングのネットワークや方法についても論稿で紹介されている。ここで興味深かったのは、フェンタニル輸出に絡んで莫大なお金を設けた中国人たちは、資金洗浄のために、ヴァンクーバーモデルという方法を使っているということだ。

このモデルについて、論稿では「富をオフショアに移そうとする中国人顧客がヴァンクーバーに飛ぶ前にマネーロンダリング業者が管理する銀行口座に人民元を入金することから始まる。到着すると、顧客たちはカナダの通貨(通常は麻薬の販売で得た汚れた金)を集め、すぐにカジノに行き、それをチップと交換する。少額の賭けを数回行った後、クライアントはチップを準クリーンマネーと引き換えるが、事前交渉された全額現金の不動産購入の決済に使用して保護する必要がある」と書かれている。

 中国人たちは、マネーロンダリング業者に資金を入金し、それをカナダで引き出し、現金取引で不動産購入に充てているということだ。その不動産は保有しておいても良いし、売却しても良い。それで、この中国人は、「きれいな」カナダドルを手に入れる。このマネーロンダリングに絡んだ不動産購入で、ヴァンクーバーの地価は7.5%も上昇したということだ。これを敷衍して考えると、現在、東京や日本の大都市圏の不動産価格が高騰していることも、このようなマネーロンダリングに使われている可能性があると言えるのではないか。私たちは、不動産価格高騰で、「中国人が買っているらしい」という噂話を耳にする。中国の小金持ち層までが日本の不動産を割安だとして買いあさっているという話を聞く。それだけではなく、マネーロンダリングの方法として、日本の不動産が売買されているのではないかということが考えられる。

(貼り付けはじめ)

中国はいかにして自国をアメリカのフェンタニル危機に巻き込まることになったか(How China Trapped Itself in America’s Fentanyl Crisis

-中央政府の政策とマネーロンダリングが密売人を助けるネットワークを作り上げた。

ゾンユアン・ゾエ・リュー筆

2024年7月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/07/10/china-fentanyl-crisis-america-mexico-api-manufacture-banking/

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中国衡陽市の医薬品工場の生産ラインで働く従業員(1月4日)

意図しない結果と無関心が重なり、中国はアメリカのフェンタニル危機において重要な役割を果たしている。これは北京とワシントンの間で激しい論争の的となっている。アメリカの政治家たちは、中国がアメリカの麻薬危機(U.S. drug crisis)を故意に煽っていると非難している。中国は、自国が重要な役割を果たしているのであり、アメリカは中国をスケープゴートにしているだけだと反論している。

しかし、中国の規制に関する実際のストーリーは、はるかに複雑で厄介であり、利益動機がいかに強力で、規制の効果がいかに意図しない結果をもたらすかを示している。中国政府は、フェンタニルとその前駆体化学物質(precursor chemicals)の生産と流通を規制しているが、その取引を止めるのは至難の業だ。中国の化学・医薬品の開発と輸出を促進することを目的とした政策は、代わりに何十万もの小規模な化学工場や原薬(active pharmaceutical ingredientAPI)製造業者からなる広大な家内工業を生み出し、それに伴い、中国の銀行システムの高度なリアルタイム決済機能を利用した、膨大なマネーロンダリング産業も生み出している。

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2019年6月24日、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港の郵便施設で、米税関・国境警備局(Customs and Border Protection、CBP)の職員が小包の中に錠剤を発見した。数十人の法執行官が小包を調べてフェンタニルを探している。

フェンタニルを制御する方法を理解するには、まず、その製造方法を理解する必要がある。フェンタニルには、化学的には異なるものの、体内で同様の反応を引き起こす、似た響きの名前を持つ多くの変種(variants)が存在する。それらの変種は、単に同じケーキの上に異なトッピングを施したものに過ぎない。

1959年の創出以来、研究者たちはフェンタニルの少なくとも3つの異なる製造方法を開発しており、それぞれがプロセスの一部として異なる前駆体化学物質に依存している。犯罪者たちは、バターがなくなったからマーガリンを使うなど、より簡単に入手できる前駆体化学物質を幅広く使用するために、これらのプロセスを適応させ続けている。可能性のある製造方法は無限だ。フェンタニルから利益を得ようとする犯罪者たちと、フェンタニルの供給を管理しようとする各国政府は、終わりのない競争に巻き込まれており、新たな対策が講じられるたびに、フェンタニル規制を回避する更なる技術革新が促進されている。

長年にわたり、中国の伝統的に厳格な麻薬取締政策を維持しようとする中国の規制当局は、フェンタニルの新たな変種が管理上の規制薬物リストに追加されるよりも早く出現したため、課題に直面していた。2012年から2015年の間に新たに出現したフェンタニルの変異種は6つのみだったが、2016年だけで63件の新たな変種が発生した。これに応じて、中国政府は2019年5月時点で、フェンタニルの全ての変種を規制物質リストに載せている。

米麻薬取締局(U.S. Drug Enforcement AdministrationDEA)が2020年の国家麻薬脅威評価で指摘したように、2019年以来、中国からアメリカへのフェンタニルの直接供給は「大幅に減少(decreased substantially)」している。しかし、米国務省の2023年国際麻薬規制戦略報告書によると、フェンタニル前駆体(メキシコや他の中米諸国でフェンタニルの製造に使用される化学物質)は引き続き中国から供給されている。

中国政府は麻薬の製造を厳しく規制し、原薬や最終的な錠剤の流通を厳しく監視している。2023年12月の時点で、3つのフェンタニル関連原薬(フェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル)の製造および販売ライセンスを持っている企業は2社だけだ。フェンタニル関連の医療製品を最終剤形で販売するライセンスを持っている企業は、合計で7社だけだ。湖北省に本拠を置く宜昌ヒューマンウェル製薬(Yichang Humanwell Pharmaceutical)は業界の有力企業で、2022年のフェンタニル関連の国内売上高は2億9200万ドルに上った。

宜昌ヒューマンウェル製薬の最も重要な競争相手は、アメリカのコングロマリットであるジョンソン・エンド・ジョンソンと同社のフェンタニル・パッチの輸入である。宜昌ヒューマンウェル製薬は、アメリカにフェンタニルを輸出していない。2017年のフェンタニル輸出に関する同社の最後の声明によると、宜昌ヒューマンウェル製薬の海外顧客は全て、エクアドル、フィリピン、スリランカ、トルコ、ヴェトナムの公的調達機関、現地で認可された販売代理店、または輸入国政府から製造許可を得た工場であった。

法律により、宜昌ヒューマンウェル製薬などの中国の麻薬メーカーは、指定された国内卸売業者3社(シノファーム、上海製薬、重慶製薬)にのみ製品を販売できる。これらの国営卸売業者は、地域の病院やその他の医療機関に医薬品を供給する認定された地域卸売業者に医薬品を流通させる。使用後のパッチの廃棄も厳密に監視されている。

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2019年10月2日、カリフォルニア州サンイシドロにあるメキシコとの国境検問所で歩行者の書類をチェックする米税関・国境警備局職員。

高度な産業集中と厳しく管理された流通経路により、中国で製造された相当量のフェンタニルが違法薬物取引に転用される可能性は低い。

アメリカの路上で販売されているフェンタニルの供給源は中国ではなく、主にメキシコにある秘密製造所で、中国やその他の国々の小規模生産者から購入した前駆体化学物質からフェンタニルを合成している。2022年には、16万社を超える中国の中小企業が政府の監視が比較的少ない状態で化学品を製造していた。原薬製造業者は医薬品ライセンスを必要とし、一定の監視を受けているが、ほぼ全ての州に、1600以上の製造業者が存在するため、政府がコンプライアンスを強制することは困難だ。

2021年、中国政府は、計画の欠如、参入障壁の低さ、監督不足などを理由に、中国の化学工業団地579カ所のうち約20%を「高リスク」または「比較的高リスク」と認定した。中国の化学薬品および原薬メーカーのほとんどは小規模な民間企業であり、設備投資は控えめで、柔軟な運営を行っているだけだ。

フェンタニルに関連し、中国人に対して行われたほぼ全てのアメリカ政府の執行措置は、昨年起訴された中国の化学会社4社と幹部8人、あるいは昨年10月に制裁を受けた中国密輸ネットワークのメンバー28人など、化学前駆物質の製造に関係している。どちらの場合も、関与した企業は中国最大の化学工業団地の建設で知られる江蘇省、福建省、湖北省、河北省、河南省、安徽省などの省に拠点を置く小規模な民間企業だった。

中国の各省は医薬品製造産業を誘致するために互いに激しく競争しており、その結果、規制を緩めてしまうことになる。アメリカ政府の制裁を受けた企業4社が湖北省に進出しており、湖北省政府は原薬生産基地開発のための2021~2025年の実施計画の中で特にフェンタニルを優先事項に挙げている。国家レヴェルでは、政策により、原薬サプライチェーンをより監督が容易な工業団地に統合することが奨励されている。

中国は世界トップの原薬輸出国であり、依然として小規模生産者が業界の根幹を形成している。中国の比較優位は、原材料が最大のコストとなる、汚染が深刻な低価値原薬において最も顕著である。中国がヴァリューチェーンを駆け上がるためには業界の統合が不可欠だが、北京にとっては依然として遠い目標である。薄い利益率で操業する小規模生産者間の熾烈な競争により、一部の企業がフェンタニルやメタンフェタミンなどの合成麻薬の前駆体を世界中の誰にでも、どんな目的であれ、需要のある人に日和見的に販売する傾向が今後も続く可能性が高い。

2017年、中国政府が2つの一般的なフェンタニル関連化学前駆物質を規制下に置いたとき、中国の生産者はフェンタニルの製造に使用されるまだ規制されていない他の3つの化学物質(4-APboc-4-AP、ノルフェンタニル)の販売に切り替えた。これらの化合物は2022年11月に国連の規制物質リストに追加され、米麻薬取締局は、2020年5月から何らかの形でこれらの化学物質を規制している。中国政府当局も近いうちに追随する可能性が高いが、犯罪者側は次々と新たな前駆物質を発見するだろう。

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2023年1月4日、衡陽の製薬会社で働く従業員

アメリカ政府は中国に対し、中国の化学物質輸出業者に対する「顧客確認(know your customer)」(KYC)規則を導入するよう圧力をかけているが、少なくとも現時点では中国が同意する可能性は低い。中国の小規模生産者にとってKYCルールの導入は多大なコストがかかり、施行にも費用がかかる。2022年、当時の駐米中国大使の秦剛は、KYC規則は、国連の麻薬取締条約に基づく中国の義務を「はるかに超えている(far exceed[ed])」と述べた。

これまでのところ、中国政府は生産者に対し、米麻薬取締局が管理する前駆体化学物質のメキシコやその他の国への輸出について「警戒する(cautious)」よう警告しているだけだ。実際のところ、この警告はほとんど効果を持たない。中国の小規模化学メーカーは、麻薬カルテルが新しい生産方法を見つけるのと同じくらい早く、自社の事業を適応させることができる。

中国の小規模化学メーカーは、外国人バイヤーがWeChatのようなインスタント・ペイメントに対応したメッセージングアプリを使って簡単に注文や支払いを行えるようにしている。バイヤーはWeChatのアカウントを開設する際に本人確認をするだけでよく、このステップは簡単に回避できる。完全な匿名性を求めるバイヤーのために、2021年9月以降、中国ではそのような取引が違法となっているにもかかわらず、暗号通貨(cryptocurrency)を支払い手段として受け入れる企業もある。中国の小規模な化学企業の多くは、違法薬物を製造するための既知の前駆体化学物質の「ステルス」販売(“stealthy” sales)を宣伝することで、怪しげなビジネスを誘致しているようだ。

ブロックチェーンおよび暗号分析会社エリプティックの研究者たちは、彼らが取引した90社以上の中国に本拠を置く化学会社がフェンタニル前駆体を供給することに前向きであり、その多くがメキシコへの同じ化学物質の以前の出荷について言及し、フェンタニル自体を供給することに意欲的であることを発見した。また、これらの化学会社の90%が暗号通貨による支払いを受け入れており、そのほとんどがビットコインを使用しており、テザー、いわゆるステーブルコイン(stablecoin)を使用している企業は少数であることも判明した。

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2019年11月7日、中国がアメリカのバイヤーにフェンタニルを違法販売したとして9人を投獄した後、河北省の邢台中級人民法院の外で警備に当たる警察

中国は、アメリカの路上で起きているフェンタニル危機の上流と下流の両方で重要な位置を占めている。中国企業は、フェンタニルの製造に使用される化学前駆体の最大の供給国である。中国はまた、フェンタニルの販売を促進する犯罪マネーロンダリング組織の活動拠点としても機能している。2021年3月の議会証言で、米海軍のクレイグ・S・ファラー提督(当時米南方軍司令長官)は、中国のマネーロンダリング組織を国際犯罪組織の「ナンバーワン身元引受人(No. 1 underwriter)」と表現した。

2021年、一人の中国人がメキシコ麻薬カルテルのために資金洗浄を行った罪で、米連邦刑務所での懲役14年の刑を言い渡された。米検察当局は、この事件は中国の犯罪組織が国際的なマネーロンダリングを「支配(dominate)」するようになった「最近の現象(recent phenomenon)」を反映していると述べた。これらのマネーロンダリング業者は、アメリカ、メキシコ、カナダにある中国人所有の中小企業の広範なネットワークの中に根付いている非公式の融資文化を利用しようとしている。これらのビジネスの多くは現金ベースであり、商品や製品を中国から直接輸入している。スペイン語圏の多くの国では、これらのビジネスが非常に普及しているため、想像できるあらゆるものを販売するディスカウント コーナー ストアを表す新しい俗語が誕生した。

典型的な中国の貿易ベースのマネーロンダリング計画には、少なくとも4つのグループが関与している。それらは、(1)取引を仲介する中国の犯罪組織、(2)中国から商品を輸入する地元企業、(3)資本規制を回避して富を海外に移そうとする裕福な中国人、(4)少額の米ドルの現金を過剰に保有する麻薬密売人である。

最初の2つの関与者は、参加する単純な利益動機を持っている。マネーロンダリング業者は、平均1~2%の手数料を稼ぎ、企業はどの銀行が提供するよりも安価な輸入融資を獲得する。最後の2つの関与者は、ほぼ相殺する問題を抱えている。裕福な中国人は、中国の銀行システムに資本を持っているが、それを取り出して米ドルに換金する方法がなく、麻薬密売人は合法的に使用できない米ドルを持っている。マネーロンダリング業者の目標は、他の全ての当事者間で三者交換を実行し、裕福な中国人の手に米ドルを渡し、麻薬密売人の銀行口座にあるお金を洗浄することだ。

中国のマネーロンダリング組織は、競合他社よりも安く、速く、安全だ。米麻薬取締局特殊作戦課のヴェテラン捜査官であるトーマス・シンドリックによると、コロンビアのマネーロンダリング業者は通常、サーヴィスに対して13~18%の手数料を請求する。それに比べて、中国のマネーロンダリング業者は通常、わずか1~2%、場合によっては0.5%という格安料金を請求する。

中国の犯罪者たちは、他の犯罪組織と同じ基本的なマネーロンダリングモデルを使用している。彼らはその資金を現金ベースのビジネスを運営するパートナーのネットワークに分配し、そこで正規の資金源からの現金と混ぜて、小分けにして銀行システムに入金する。中国人を際立たせているのは、そのターボチャージされたスピードと、膨大な米ドルの流れを吸収する能力だ。これが可能なのは、中国のマネーロンダリング業者が中国の銀行システムへのアクセスを利用して、違法に入手した米ドルの供給と、裕福な中国人による闇市場での海外ドルの需要を一致させているからである。中国居住者が合法的に米ドルを購入するには、フォームに記入して銀行に申請し、返答を待つ必要がある。承認後も、海外電信送金は年間わずか5万ドルに制限される。

中国政府は、中国の自国通貨である人民元(通常は元として知られる)を米ドルなどの外国通貨に販売する独占権を熱心に守っている。これは、個人が自由にお金を両替できるようにすると、経済に悪影響を与える資本逃避(capital flight)につながる可能性があるという懸念である。最近の中国経済の低迷、アメリカとの関係悪化、習近平国家主席の「共同繁栄(common prosperity)」政策のおかげで資本逃避はさらに深刻化しており、中国のエリート層には、海外での自分たちの財産がより安全になるかもしれないと考える多くの理由が与えられている。

昨年8月、上海市警察は外貨の闇市場(black market for foreign currency)取り締まりの一環として、「移民サーヴィス(immigration services)」会社の有力幹部を含む5人を拘束した。同様の顧問会社の多くは、裕福な中国人が犯罪的なマネーロンダリング組織のサーヴィスを利用できるように、慎重かつ慎重な仲介者として機能している。

汚いお金の引き渡しが確認されるとすぐに、マネーロンダリング業者は、中国の顧客が米ドルに変換するために送金した人民元を使用して、中国の銀行システム内で一連のミラー取引を実行するという作業を開始する。マネーロンダリング業者は、資金の出所を曖昧にし、資金を少額に分割するために資金洗浄用口座やダミー会社を利用する。5万元(約7000ドル)以下の銀行口座間の送金は、中国の中央銀行である中国人民銀行が運営する高額決済システムを使用して、異なる銀行間であってもほぼ瞬時に決済される。このプロセス全体は、モバイルバンキングアプリのみを使用して行うことができ、完了までにかかる時間はわずか3時間だ。

マネーロンダリング業者は、中国から汚いお金の元の所有者の居住国に輸出される商品の支払いに利用できる、顧客の追跡が不可能な新しい人民元の銀行預金を作成することを目指している。この貿易ベースのマネーロンダリングモデルでは、商品の輸入業者は、汚い米ドルを提供するために使用された中国所有の小規模企業の同じネットワークのメンバーである。これらの現金ベースの中小企業は、輸入品を地元経済に販売している。これらの販売による収益は、現地通貨でのクリーンな銀行預金として、ダーティマネーの元の所有者に送金され、合法的に使用したり、必要に応じて別の通貨に変換したりすることができる。他の場所では、マネーロンダリング業者の中国人顧客が目的の米ドルを集める。かつては汚いお金だったが、現在はきれいになっている。これにより、お金の循環の流れが完成する。

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邢台市での会見中に、予海斌(左)中国禁毒委員会副主任と、中国駐在米国移民関税執行官オースティン・ムーアが握手する(2019年11月7日)

アメリカと中国の当局は、マネーロンダリング対策コンプライアンスチームが厳しく監視しているSWIFTなどの国境を越えた決済システムを利用していないため、このモデルのマネーロンダリングと戦うのに苦労している。中国の銀行システム内では、当局への報告のきっかけとなる送金金額は比較的高額で、個人口座の場合1日あたり50万元(約7万ドル)だ。対照的に、アメリカの銀行は通常、1日の合計取引額が1万ドルを超えるたびに報告書を提出する。経済指標に対する貿易ベースのマネーロンダリングの影響を検出することさえ容易ではない。1つの兆候は、中国の公式貿易黒字と税関領収書に基づく暗黙の貿易黒字水準との間のギャップが拡大していること(年間約5000億ドル)だろう。

広く普及しているものの、あまり洗練されていないマネーロンダリング手法の1つは、ヴァンクーバーモデルとして知られている。ヴァンクーバーモデルは、多くの中国人エリートの子供たちが故郷と呼ぶカナダの都市にちなんで名付けられた。このモデルでは、富をオフショアに移そうとする中国人顧客がヴァンクーバーに飛ぶ前にマネーロンダリング業者が管理する銀行口座に人民元を入金することから始まる。

到着すると、顧客たちはカナダの通貨(通常は麻薬の販売で得た汚れた金)を集め、すぐにカジノに行き、それをチップと交換する。少額の賭けを数回行った後、クライアントはチップを準クリーンマネーと引き換えるが、事前交渉された全額現金の不動産購入の決済に使用して保護する必要がある。ブリティッシュコロンビア州政府の委託による2019年の報告書は、2018年の同州の不動産取引で最大53億カナダドル(約40億米ドル)がマネーロンダリング活動に関連し、住宅価格を最大7.5%押し上げたと推定した。

これまでのところ、逮捕や処罰は中国人犯罪者のマネーロンダリング行為を阻止するのにほとんど役に立っていない。2021年10月、中国国籍でアメリカに帰化したリー・シージは、グアテマラの薄汚いカジノを通じて麻薬カルテルのために少なくとも3000万ドルを洗浄した罪で、懲役15年の判決を受けた。リーのような大物が自らの行為で処罰されるたびに、さらに多くの犯罪者がその見返りはリスクを冒す価値があると考えている。

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メキシコの捜査当局は、エンセナダ近郊で押収された数百ポンドのフェンタニルとメスをメキシコのティフアナにある本部に降ろす(2022年10月18日)

ワシントンと北京は、この問題をめぐってしばしば激しい言葉の応酬をしているが、双方は違法なフェンタニル取引を阻止することに共通の関心を持っている。フェンタニル危機との関連によって、中国の国際的イメージに与えられた損害は、化学製造産業に生じる可能性のある関連利益をはるかに上回っている。アメリカの法執行機関は、メキシコで処罰を受けずに活動している麻薬カルテルへの化学前駆体の供給を抑制するために、中国の地方政府当局者や警察の協力を必要としている。麻薬密売に関連した国際的なマネーロンダリング活動を容認することは、政府部門の汚職も可能にするため、どちらの政府にとっても利益になることではない。

中国は、フェンタニルについては、時間をかけて対処できる問題とみているが、アメリカはフェンタニルを今すぐ行動が必要な危機とみている。昨年1月に初めて開催された米中麻薬対策作業部会(U.S.-China Counternarcotics Working Group)の会合では、双方が実質的な解決策について話し合う準備ができていることが示された。しかし、アメリカ政府は中国政府に優先事項を再考するよう、うまく要請する以上のことをしなければならないだろう。中国政府にとって重要な他の分野での譲歩も俎上に上らなければならないだろう。潜在的な段階的な措置には、中国企業がより厳格な取引規制リスト(Entity List、エンティティリスト)に移行するまでに米商務省の未検証リストに残ることができる期間の延長や、中国企業と個人に対するより柔軟な輸出最終用途検査が含まれる。中国政府は、国連の麻薬および向精神薬の違法取引禁止条約(U.N. Convention Against Illicit Traffic in Narcotic Drugs and Psychotropic Substances)に含まれるリストと一致するように、中国の規制前駆体化学物質のリストを更新することで報復する可能性がある。

アメリカ政府と中国政府は、フェンタニルの違法取引に深刻な打撃を与えるために協力するためのインフラとツールを整備している。この問題で中国の協力を勝ち取る代償は、アメリカ国民が既にフェンタニルに支払った恐るべき代償に比べれば微々たるものである。

※ゾンユアン・ゾエ・リュー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会中国研究モーリス R. グリーンバーグ記念研究員。最新作に『ソヴリン・ファンド:中国共産党は如何にして世界的な野心に対して資金を調達しているか(Sovereign Funds: How the Communist Party of China Finances Its Global Ambitions)』(ハーヴァード大学出版局、2023年)がある。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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