古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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カテゴリ: 世界政治

 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権は昨年4月に高関税政策を実施し、世界に混乱をもたらした。日本に対しても高関税を課すということで、当時の石破茂政権の赤沢亮正経済再生担当大臣が短期間で何度も日米間を往復し、交渉をまとめ、関税引き下げに成功した。トランプが「国際緊急経済権限法」を根拠にして進めた高関税は米連邦最高裁判所によって「違法」の判断が出た(2026年2月)。これに対して、トランプ政権は国際緊急経済権限法以外の法律を根拠にして高関税政策を進めようとしている。

 アメリカとイスラエルが始めたイラン戦争によって世界経済は混乱と不安に陥っている。何よりも世界の重要なチョークポイントであるホルムズ海峡の選別的封鎖によって、石油価格が高騰している。更には一部の国では、石油の備蓄が底を突き、石油不足に陥っている。お金があってお石油が買えないという状態の国が出ている。日本は1970年代のオイルショックの教訓を基にして備蓄をしているが、先行き不安ということは他国と大差はない。石油価格が上昇すれば日本国内のガソリンなどの価格が上昇し、石油を減量するとする製品や物流コストの上昇によって物価は上昇する。

 アメリカ国内においてもドル安とインフレが発生し、国民生活は苦しい状況が続いている。その苦しさは日本の比ではない。人々はトランプに経済対策を期待して投票した。しかし、現在は全く逆の状態になっている。アメリカは中東地域の石油に依存しておらず、従って、戦争の影響を受けない、戦争の影響を受けるのは中国だという主張もあった。ところが、石油価格の高騰はアメリカ国内を直撃している。中国も当然苦しいが、現状で苦しくない国というのは存在しない。さらに言えば、ペルシア湾岸地域は投資を集める、煌びやか大都市をつくり、日本でも憧れの対象となっていた、ドバイやアブダビ(両方ともアラブ首長国連邦)、ドーハ(カタール)は現在のところ、戦争の中にある。現状が続けば、経済は大きく毀損されることになる。

 トランプにとっては戦争よりも、経済問題対応こそがより重要な課題である。それを外して、安易に国内の不平不満を逸らそうとして、戦争を始めてしまったのが大きな間違いだったのだ。トランプとネタニヤフの思惑通りあれば、影響は小さかっただろう。しかし、2026年の経済はイラン戦争の継続のために、厳しい状況が続くことになる。

(貼り付けはじめ)

イランはトランプにとって唯一の戦争ではない(Iran Isn’t Trump’s Only War

-ドナルド・トランプはテヘランに対して戦争を仕掛けているにもかかわらず、アメリカの貿易相手諸国に対する経済戦争の火にも再点火している。

キース・ジョンソン筆

2026年3月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/18/trump-trade-war-iran-economics-section-301/

ドナルド・トランプ米大統領のイランに対する戦争は、市場、同盟諸国、農家、半導体メーカー、そして海運保険会社を混乱させている。

しかし、トランプ大統領が今月戦っているのは、この戦争だけではない。先週、トランプ政権の貿易担当機関は、最高裁によって無効とされた以前の関税措置に続き、新たな関税措置の導入を前に、世界の他の国々による「不公正な(unfair)」貿易慣行と称する一連の調査を開始した。しかし、今回の関税措置は効力が強く、法的異議申し立てを受けにくい。つまり、トランプ大統領の貿易戦争は終わりなく続く可能性があるということだ。

シンガポールのヒンリッチ財団で貿易政策部門責任者を務め、アメリカの貿易法の難解な部分に精通しているデボラ・エルムズは「私たちは振り出しに戻ってしまう可能性が高い。プランCではなく、プランAに戻ったのだ」と述べた。

トランプ政権が行ったことは、ヴェネズエラでの小規模な戦争、キューバ獲得の脅威、イランでの紛争などに気を取られている人々にとって、数年前に自らが始めた世界貿易戦争を、まさに同じ手段を用いて再燃させているように見えている。

トランプ政権は特に、1974年通商法第301条(後に2度改正)に依拠している。これは行政府への広範な貿易権限委譲であり、トランプ大統領は1期目において、中国への関税賦課にこの権限を行使した。これらの関税はジョー・バイデン大統領によって維持されたが、現在はさらに強化されている。

エルムズは「連邦議会は明らかに大統領に権限を委譲しすぎている」と述べ、1934年以降、ホワイトハウスに連邦議会よりも大きな貿易に関する発言権を与えてきた一連の法案に言及した。エルムズはさらに「しかし、彼らは大統領が合理的で分別のある行動をとるだろうと考えて権限を委譲したのだ」と語った。

トランプ政権が他の手段に頼ろうとしているのは、連邦最高裁判所が2月に、政権がカーター政権時代の法律を用いて世界のほぼ全ての国に関税を課したことは違法であるとの判決を下したためだ。最初の回避策は、1974年通商法第112条に依拠することだったが、これには期限があり、連邦議会の監視を受ける可能性もあった。これらの関税は7月に期限切れとなるため、トランプ政権は急いでいる。政権が現在頼ろうとしている同法の条項は、より長期にわたり、期限が定められておらず、議会の監視も含まれていない。同じ1974年通商法の第122条による関税とは異なり、第301条による関税は、いわば「フリーパス」のようなものだ。トランプが2月に頼った関税は、7月24日以降も継続するには連邦上下両院の承認が必要だったが、新たな関税にはその必要はない。

エルムズは「通商法301条は永久に続く可能性がある。だからこそ、非常に危険なのだと私は考えている」と述べた。

トランプ政権1期目には、貿易政策には一定のプロセスがあった。長年貿易に携わってきたロバート・ライトハイザーが統括していた。彼は保護主義者であると同時に完璧主義者でもあった。しかし、2期目に入ると、トランプ政権の貿易ティームは以前ほど綿密ではなくなった。例えば、昨年(2025年)4月にトランプが「相互主義(reciprocal)」と称した関税措置を導入した際、ペンギンに輸入関税を課しただけでなく、新たな関税率表の計算自体が間違っていたため、世界中から嘲笑を浴びた。

最新のアメリカの貿易措置は、2つの異なる点を標的としている。1つは、16の経済圏(アメリカの主要貿易相手国全てを含む)を対象としたもので、各国による「差別的(discriminatory)」行為、具体的には、製品を製造して海外に販売しているという行為である。もう1つは、60の経済圏を対象としたもので、海外での労働コスト削減のために強制労働が用いられ、アメリカ企業に不利な状況を作り出しているとされる行為を問題視している。

トランプ大統領の貿易戦争の大きな問題点は、非生産的であることに加えて、アメリカの同盟諸国との関係を悪化させていることだ。今週、トランプ大統領はイランとの戦争において同盟諸国に支援を求めたが、何の支援も得られなかった。

しかし、トランプ大統領の貿易戦争が続く中で懸念すべき理由は他にもある。特に、彼が始めた戦争によってアメリカ国内の燃料価格が高騰し、アジア各国の経済が苦境に陥っている現状においてはなおさらだ。それは、アメリカ経済にさらなる打撃を与える可能性が高いからである。

2024年、アメリカ経済は世界の羨望の的だった。しかし先週、米商務省は昨年第4四半期のGDP成長率予測を下方修正した。トランプ政権は主要貿易相手国16カ国に対し、イランが世界の経済生命線であるホルムズ海峡を依然として支配下に置いている中で、圧力を強めている。ホルムズ海峡は通常、世界の石油と天然ガスの5分の1が通過する海峡である。

ホワイトハウスの首席経済補佐官ケヴィン・ハセットは火曜日、消費者物価の上昇は「今のところ私たちの懸念事項の中で最も優先順位が低い」と述べた。イランへのミサイル攻撃であれ、同盟諸国に対する貿易調査であれ、トランプ政権は物価上昇問題で自ら敗北を招こうとしているように見える。

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌地経学・エネルギー担当記者。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.socialXアカウント:@KFJ_FP

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2026年4月1日のアメリカ国内のプライムタイム(夜間の良い時間帯)において、ドナルド・トランプ大統領がイランについての演説を行った。メディアでは何か新しい内容が話されるのではないかという予想もあったが、実際には具体性に欠けた内容であった。記者とのやりとりやSNS上で発信される発言以上の内容はなく、イランに対して「石器時代に戻してやる」という脅しを行ったがそれ以上の内容はなかった。一部には、アメリカのNATO脱退について言及されるのではないかという予想もなされていたが、それもなかった。即時の停戦、もしくは大規模な地上軍を使っての攻撃についての言及がなく、市場は失望から原油価格が上昇し、株価は下落した。

 イラン戦争はアメリカ国民の支持を得ていない。トランプ大統領の支持率はじりじりと下がり続けている。支持率は40%台中盤の数字を維持してきたが、それが40%台から30%台後半の数字を記録するようになっている。平均すれば支持率は40%程度、不支持率は55%程度となっている。世界的な石油価格上昇の影響はアメリカ国内経済にも波及し、アメリカ国内の状況は厳しさを増している。現状の厳しさの最大の要因はイラン戦争であるが、トランプ大統領の支持率の低迷がイラン戦争決断の理由の1つだったことは考えられる。イランを早期に叩き、核開発を阻止し、邪悪な体制を倒したということになれば、支持率は一気に上昇しただろう。しかし、このような目論見は完全に外れた。トランプの決断は失敗だったということになる。今となっては、戦争のエスカレーションをさせないことが重要になっているが、イスラエルがトランプの意向を無視することも考えられる。

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 今回のトランプ演説には大きな効果はなかった。言葉だけで状況を改善することはできない。決断と行動が必要である。時間が経過すればするほど、決断と行動の選択肢は狭くなっていく。最後には逃げるようにして、最後っ屁のように「勝利宣言」をして逃げ出さねばならなくなる。そうなれば、トランプ政権と共和党は終わりだ。2028年の大統領選挙にまで影響を与える。これからのトランプ政権は無力化することになる。そして、更に支持率上昇の賭けに走ることになる。世界はさらに不安定さの中に進むことになる。

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イランに関するドナルド・トランプ大統領による演説の5つのポイント(Five takeaways from President Trump’s address on Iran

ナイオール・スタンジ筆

2026年4月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5812338-trump-address-iran-war/

ドナルド・トランプ大統領は水曜夜、イランとの戦争開始から1カ月以上が経過した時点で、プライムタイムにイラン戦争に関する演説を行った。

イスラエルと連携して戦争を開始したトランプ大統領の決断は、ますますリスクの高いものに見えるようになっている。

この紛争は開始当初から国民の支持を得られていない。ガソリン価格の高騰と金融市場の混乱は、アメリカ国民の負担を増大させている。

各種世論調査では、トランプ大統領の支持率は2期目の最低水準、あるいはそれに近い水準まで低下している。

トランプ大統領と支持者たちは、イランに対する行動を起こした大統領の手腕を称賛​​し、アメリカ軍が達成した成果を強調している。

以下に、トランプ大統領の演説の主なポイントを挙げる。

(1)見出しの主張:「完了間近」(The headline claim: “Nearing completion”

トランプ大統領は約19分間の演説を実施したが、その内容は既に発言したりソーシャルメディアに投稿したりした内容の繰り返しに過ぎなかった。

ホワイトハウスがこの演説で意図した見出しは、トランプ大統領が「アメリカの核心的戦略目標が完了間近である(core strategic objectives are nearing completion)」と主張した点だったようだ。

その後、トランプ大統領は「私たちは非常に速いペースでこれを完了させるつもりだ。私たちは終了に非常に近づきつつある」と付け加えた。

この発言は、イラクやアフガニスタン、あるいは一世代前のヴェトナムで見られたような泥沼化(quagmire)が再び起こる危険性はないとアメリカ国民を安心させることを目的としている。

しかし、トランプ大統領の発言には具体的な内容がほとんどなかった。彼が言及した目標は、本質的に主観的なものだ。

また、トランプ大統領の発言には、イランに対してさらなる破壊行為を示唆する、これとは対照的な一面もあり、結果的に同じくらい注目を集めている。

(2)言及されなかった点で注目される演説(A speech notable for what was not said

ニュースという観点から見ると、この演説は期待外れだった。

演説開始直前の数分間は憶測が飛び交ったが、―今思えば、それはあまりにも行き過ぎだった。

トランプ大統領がNATOからの脱退に踏み切るか、イランの濃縮ウランを掌握するために地上部隊の投入に踏み切るかという予測は、いずれも誤りだった。

トランプ大統領は、イランの長年にわたる対米敵対行為を改めて強調し、バラク・オバマ前大統領時代に締結された核開発に関する合意を批判し、イラン海軍と空軍に与えた損害を誇らしげに語った。

問題は何か? トランプ大統領がこれまで戦争について述べてきたことを少しでも知っている人にとっては、これらの発言は全く驚くべきことではなかったということになる。

トランプ大統領にとって最大の政治的困難は、なぜ今この戦争が必要なのかという明確な根拠を示せていないように見えることだ。

この失敗は、共和党内の一部の議員をも困惑させている。先月、トム・ティリス連邦上院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)は、ABCの番組「ディス・ウィーク」に出演した際、この戦争の「主要な目的(primary objective)」は何かと問われた。

ティリスは「分からない。目的が分からないこと、これが本当に問題だと私は考える」と答えた。

これは、トランプ大統領が水曜夜に明らかに解決できなかった問題である。

(3)市場からの最初の反応はマイナス評価だった(An initial thumbs-down from the markets

トランプ大統領は、自身の言動に対する市場の反応を常に非常に重視している。

Trump always places a great deal of importance on reaction to his words and deeds on the markets.

水曜夜の反応は、彼にとって決して満足のいくものではなかっただろう。

彼の発言後、原油価格は急騰した。演説直前に1バレル100ドルをわずかに下回っていたブレント原油は、演説終了から約1時間後には106ドルを超えた。WTI原油も4%以上上昇した。

アメリカの主要3指数全てにおいて、株価先物も急落し、約1%下落した。

確かに、市場はすぐに回復する可能性があり、先物市場は特に急激な方向転換に影響を受けやすい。

しかし、市場のネガティブなセンティメントは、紛争からの脱却に向けた明確な時間軸が示されなかったことと、トランプ大統領の演説における好戦的な要素という2つの要因によって引き起こされたようだ。

後者には、イランに「極めて厳しい(extremely hard)」打撃を与えるという約束が含まれていた。

「今後23週間で、彼らを本来あるべき石器時代に戻すつもりだ」とトランプ大統領は付け加えた。さらに「その間、協議は継続することになる」と述べた。

(4)トランプ大統領はガソリン価格の高騰について国民を安心させようと努めイランに責任を押し付けようとしている(Trump tries to reassure public — and blame Iran — on gas prices

戦争が継続する中で、燃料費の高騰はアメリカ国民を苦しめている。アメリカにおけるレギュラーガソリン1ガロンあたりの平均価格は、紛争開始前よりも1ドル以上高くなっている。

水曜日、トランプ大統領は、アメリカ国民が経験している物価上昇は「短期的な上昇(short-term increase)」に過ぎないという主張を改めて繰り返した。

さらに、価格上昇の責任をイランに直接押し付けようとし、「イラン政権が近隣諸国の商業石油タンカーに対して狂気じみたテロ攻撃を仕掛けたことが、全ての原因だ」と述べた。

これについてトランプは、「イランに核兵器を任せることは決してできないという、さらなる証拠だ」と述べた。

イランは、ペルシア湾岸諸国の石油施設を攻撃し、攻撃を受けた場合にはホルムズ海峡を封鎖しようとするだろうと広く予測されていた。ホルムズ海峡の再開が実現していないことは、トランプ大統領にとって大きな課題となっている。

演説の後半で、トランプ大統領は「この紛争が終われば、海峡は自然に開通し、ガソリン価格は急速に下落するだろう」と主張した。

(5)NATO加盟諸国にとっては比較的束の間の休息と言える状態になった(A brief respite — relatively speaking — for NATO allies

トランプ大統領がNATO、そしてその主要同盟諸国に本気で打撃を与えるだろうという予測は誇張だったことが証明された。

トランプがこうした、同盟諸国との緊張関係に言及したのは、最近のソーシャルメディアへの投稿とほぼ同じ内容の発言だけだった。

彼は、現在燃料不足に苦しんでいる多くの国々は、「イランの首脳部排除に関与することを拒否した国々だ。私たちは自らそれをやらざるを得なかった」と述べた。

トランプは続けて、そうした国々はアメリカから石油を購入するか、「遅ればせながら勇気を振り絞って・・・海峡へ出ていって石油を入手すべきだ」と付け加えた。

この発言は、近年のどの米大統領も発言しないような内容だったが、NATO加盟諸国の一部が覚悟していたような全面的な非難には程遠いものだった。

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ドナルド・トランプは最新の世論調査で支持率が過去最低を記録しコア支持層からの支持を失いつつある(Trump losing support from core supporters as approval drops to record low in new polling

サラ・フォーティンスキー筆

2026年4月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5810850-trump-approval-hits-new-low/

今週発表されたYouGov・エコノミスト誌の世論調査で、ドナルド・トランプ大統領の支持率は過去最低を記録した。これは、大統領の支持基盤からの支持低下が主な要因となっている。

最新の調査によると、トランプの支持率は35%、不支持率は58%となっている。支持率と不支持率の差はマイナス23ポイントになっている。

これは、先週のマイナス18ポイント、その前の週のマイナス19ポイント、さらにその前の週のマイナス15ポイントから大幅に低下したことを意味する。また、この数字は、バイデン前大統領の同時期の支持率マイナス6ポイント、トランプ大統領の1期目の同時期の支持率マイナス11ポイントと比べても著しく低い。

バイデン前大統領の支持率と不支持率の差の最低値もマイナス23ポイントで、これは大統領在任中に2回しか記録されておらず、いずれも任期最終年だった。

トランプ大統領の支持率と不支持率も、過去最高水準に近い水準にある。YouGovとエコノミスト誌の調査によると、トランプ大統領の支持率は、2期にわたって一度しか今回の水準を下回っていない。それは2017年11月にアメリカ国民の34%が支持した時だ。

同様に、不支持率も現在の水準を上回ったのは一度だけで、2026年2月に59%が不支持を表明した時である。

トランプ大統領の支持率低下は、主に支持基盤からの支持の弱まりによるものであり、これはイランにおけるアメリカ軍の軍事行動の強化、一部政府機関の閉鎖、そして株価の下落といった状況下で起こっている。

最新の調査によると、2024年の大統領選挙でトランプに投票した有権者のうち、大統領の職務遂行を支持する人は76%、不支持は19%となっている。両方の差は57ポイントだ。3週間前の調査では支持が84%、不支持が12%であり、その差は72ポイントであった。3週間で支持と不支持の差は15ポイント低下している。

最新の世論調査によると、トランプ大統領の65歳以上の有権者における支持率は、2期目に入ってから最低を記録した。支持率は40%、不支持率は57%で、差はマイナス17ポイントとなっている。先週の数字はマイナス10ポイントで、就任当初はマイナス1ポイントだった。

30歳以下の有権者の支持率も急激に低下しており、今週はマイナス40ポイント。先週はマイナス25ポイント、その前の週はマイナス39ポイント、さらにその前の週はマイナス29ポイントだった。

若年層の支持率は、2期目開始時のプラス5ポイントから、2025年10月には最低のマイナス54ポイントにまで落ち込んだ。

今回の調査は3月27日から30日にかけて実施され、回答者数は1679人、誤差は3.2ポイントだ。

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 古村治彦です。

 アメリカのドナルド・トランプ大統領は、イラン戦争の終結について度々言及している。戦争とは国際的な問題を解決する手段としての機能を持つ。話し合いをしても解決ができないという場合に最後は武力に訴えるということにあり、国際問題解決の最終手段である。今回のアメリカとイスラエルによるイラン攻撃は、宣戦布告なしの先制攻撃であり、その点で国際法違反である。さらに、イランとはオマーンを仲介役として核兵器開発に関する交渉を行っていたこともあり、騙し討ちでもある。イランは報復攻撃を行い、ホルムズ海峡の餞別的な封鎖(航行できる船舶を選別している)を実施して対抗している。

 軍事力、攻撃能力だけ見れば、アメリカとイスラエルはイランを圧倒している。その強大な軍事力を叩きつければ、イラン政府は機能停止状態に陥り、イラン国民は現体制への不平不満から政府を打倒し、新たな政府と政権が樹立され、親米路線になるという見通しがあったがそれは完全に外れてしまった。イランは武力面でのエスカレーションを実施せずに、ホルムズ海峡の封鎖という手段を用いて、非対称戦を戦い、世界を巻き込むという手段で、状況を有利に進めている。アメリカとイスラエルは戦争の目的である、イランの弱体化を田性出来ずに、自分たちが追い込まれている。下記論稿にある通りに、「戦闘では勝ちながら、戦争には負けている」ということになる。

 イラン戦争は一刻も早い停戦が望ましい。アメリカ国民の支持も得られていない中で、トランプ大統領としては、できれば誰かに責任を押し付けて(ピート・ヘグセス国防長官あたりか)、「勝利宣言」をして、イランから手を引きたいということになるだろう。そうなれば、イスラエルは一緒に「勝利をした」と宣言して、一旦は矛を収めるだろう。しかし、戦争目的は達成されていない。実質は敗北ということになる。それでも、イラン戦争は停戦こそ望ましい。

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ドナルド・トランプはイランとの戦争に敗北しつつある(Trump Is Losing the War in Iran

-開戦から1カ月が経った現在、イラン・イスラム共和国は生き残ること自体が勝利と言えるだろう。

ラヴィ・アグラワル筆

2026年3月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/30/trump-war-iran-israel-lebanon-gulf-winner-loser/

アメリカはイランにおいて成功を収めているだろうか? それは誰に質問するかによって答えが変わる。先週発表されたピュー・リサーチ・センターの調査によると、ドナルド・トランプ米大統領のイラン紛争への対応を批判するアメリカ人は61%、支持するアメリカ人は37%だった。この数字はトランプ大統領への支持率を反映しており、意見の分裂は主に党派的な傾向に基づいていることを示唆している。注目すべきは、共和党支持者の10人中7人がホワイトハウスのこれまでの戦争遂行を支持しているのに対し、民主党支持者では10人中わずか1人しか支持していない点だ。

アメリカとイスラエルによるイランへの共同攻撃の成功を検証するう1つの方法は、被害の規模を分析することだろう。この指標で見ると、戦闘開始から1カ月が経過した時点で、アメリカとイスラエルはイランに与えた損害をはるかに上回っている。最高指導者アリ・ハメネイ師を含むイランの政治・軍事指導者数名が殺害され、イランの空軍と海軍はほぼ壊滅状態となり、核開発計画はさらに後退した。イランの弾道ミサイル発射能力は低下しており、イランの主要同盟諸国の1つであるレバノンを拠点とする武装組織ヒズボラは激しい砲撃を受けている。一方で、イランは主要な交通・貿易ルートを遮断することに成功し、今のところ大きな永続的な損害を与えていないという点も注目に値する。

それでは、なぜアメリカは戦い(the battle)には勝利しているが、戦争(the war)には敗北しているように感じられるのだろうか? その答えは、おそらく期待(expectations)にあるだろう。そしてこの点において、イラン政権の存続と、世界経済に打撃を与え、アメリカの敵対諸国を潤す能力自体が、イラン・イスラム共和国が優位に立っていることを示唆している。戦争が起きた場合、イランは常に存続と混乱を戦略目標としてきた。トランプ大統領の明らかな苛立ちは、彼が望んでいた迅速な作戦(the quick operation)が実現していないことを明確に示している。

アメリカが敗北する可能性があると見なされる第一の理由は、開戦当初のアメリカの過剰な目標設定にある。2月28日にトゥルーソーシャルに投稿された動画の中で、トランプ大統領は、イランのミサイル開発能力の喪失、代理勢力による地域不安定化の阻止、そして核兵器保有の阻止に加え、政権交代・体制転換(regime change)を望んでいるかのように示唆した。しかし、これらの目標はいずれも今のところ達成されていない。

開戦当初、『フォーリン・ポリシー』誌の複数のアナリストが指摘したように、イラン・イスラム共和国は政権存続を確実にするため、主要な政治・軍事要職の後継者を慎重に選定していた。確かにミサイル発射能力は低下しているものの、イランはイスラエルや地域のアメリカの同盟諸国に向けてミサイルを発射し続けている。テヘランは昨年(2025年)6月のアメリカとイスラエルによる攻撃後、わずか数カ月でミサイル計画を再構築した実績があり、今回の戦争が終結すれば再び同様の行動に出る可能性が高い。ヒズボラは壊滅的な打撃を受けたものの、存続している。そして、イランが紛争を長期化させるための周到な計画を立てている証拠として、イエメンのフーシ派反乱軍が最近になって参戦し、週末にはイスラエルに向けてミサイルを発射した。さらに、イラン国内には依然として約440キログラムの高濃縮ウランが存在し、新たな指導者たち(しかも、より復讐心に燃える指導者たち)が戻ってくるのを待っている。

イランとの戦争をアメリカの失敗とみなす2つ目の理由は、イランがこれまでに世界に与えた莫大な経済的コストである。ジェット燃料の価格は今年120%上昇した。世界の原油価格の主要指標であるブレント原油も同時期に87%以上上昇した。これは主に、イランがホルムズ海峡をほぼ完全に封鎖したことが原因である。ホルムズ海峡は通常、世界の原油の5分の1が毎日通過する海峡であり、液化天然ガス(LNG)の20%も同様だ。LNGの供給途絶に加え、イランのミサイル攻撃でカタールの主要ガス田が損傷したことで、今月ヨーロッパでは天然ガス価格が70%以上も急上昇した。ホルムズ海峡は、世界のヘリウム供給量の3分の1(子供の風船だけでなく半導体製造にも重要な成分)と世界の肥料販売量の3分の1の輸送路でもある。封鎖が長引けば長引くほど、世界はエネルギー危機に加え、半導体と食糧の危機にも直面する可能性が高まる。こうした波及効果は、イラン・イスラム共和国が黙って引き下がるつもりはないということを世界に知らしめる手段と言えるだろう。エジプト、ケニア、ナイジェリア、パキスタン、サウジアラビア、南アフリカで世論調査を実施したゲオポルによると、今回の紛争とその世界的なコストについてイランを非難する回答者はわずか18%にとどまった。その代わりに、29%がアメリカを、38%がイスラエルを非難している。これは、中立的な観察者たちが有望視していた外交交渉の最中に攻撃が発生したことが一因であることが考えられる。

アメリカが今回の戦争で敗者となりつつある第三の理由は、ジョージ・W・ブッシュ政権下でのイラク戦争の失敗とは異なり、今回は国内的にも国際的にも承認を求めなかったことにある。今回は、民主政治体制の推進やルールに基づく秩序といった建前は存在しなかったのだ。この戦争においてアメリカが真に味方としているのはイスラエルだけだが、イスラエル自身もここ一世代で最も国際的に孤立し、支持を集めなくなっている。トランプ大統領は、まずNATO同盟諸国に支援を要請し、その後、支援が得られないと悟ると、支援は必要ないと否定するという、極めて恥ずべき行動に出た。この戦争によって、大西洋を挟んだ関係は弱体化した。そして、ワシントンが自らルールを積極的に破壊している体制のリーダーとして振る舞う能力もまた、弱体化した。

第四に、この戦争はアメリカの敵対諸国を潤すという予期せぬ結果をもたらしている。原油価格の高騰を抑制するため、米財務省はイランとロシアに対する既存の石油制裁を解除した。その結果、テヘランは戦争開始前よりも多くの原油収入を日々得ている。一方、モスクワは紛争が続く限り、毎日1億5000万ドルの石油収入を得ており、この資金は間違いなくウクライナでの戦争に使われるだろう。ペルシア湾岸諸国から石油の半分以上を調達している中国にとっては、状況はより複雑だ。北京は供給面で多少の制約に直面しているものの、外交政策はワシントンが常に直面しているような、複雑な問題に比較的縛られていない。中国軍指導部は、アメリカがミサイル迎撃ミサイルをどれほど急速に消費しているかを注視している可能性が高い。それは、アメリカは他の分野での攻撃を抑止する能力が低下することになるからだ。

最後に、この戦争は共和党議員の間でトランプ大統領への支持を揺るがしている。米国防総省は、イランにおける継続的な軍事活動を支援するため、2000億ドルの追加予算を要求する意向を示しているものの、正式な提案はまだ行っていない。これは、連邦議会で十分な支持が得られるかどうかについて、疑念が高まっているためと考えられる。共和党所属の、サウスカロライナ州選出のナンシー・メイス連邦下院議員は、先週、イランに関する連邦下院軍事委員会の非公開会合に出席した後でX上に、「繰り返すが、私はイランへの地上部隊派遣を支持しない。今回のブリーフィングを受けて、その姿勢はさらに強固になった」と述べた。

戦争の真の評価は、戦争終結後にしかできない。アメリカは今後、イランの軍事インフラにさらなる打撃を与え、この評価を覆す可能性もある。すでに、各陣営が結果をどのように解釈するかは想像に難くない。イランは世界最大の軍事大国、地域覇権国であり、アメリカに立ち向かったことを誇示するだろう。イスラエルは、たとえ一時的であっても、敵の軍事力を壊滅させたと主張するだろう。そしてアメリカは、圧倒的な武力誇示を行ったと述べるにとどまるだろう。

しかし、たとえ戦争が数日のうちに終結したとしても、イラン政権の残存勢力は生き残っただけで正当化されるだろう。指導者たちは復讐心に燃え、報復を国内でも国際的にも実行に移すだろう。イランの将来の指導者たちはこの紛争を研究し、最大の抑止力は世界経済に莫大な損害を与える能力であると認識するだろう。それは、戦後の指導部が攻撃ドローンやミサイルの兵器庫を迅速に再構築することを意味するかもしれない。また、北朝鮮のように、古い核兵器使用禁止のファトワを放棄し、爆弾こそが最良の安全保障手段だと判断する可能性もある。そもそもこの紛争は何のために起こったのだろうか? イスラエルにとっては、地域の敵対勢力を繰り返し叩き潰す戦略だったのかもしれないが、ワシントンにとってはそうではない。トランプ大統領は長年、中東における高コストの長期化する戦争を非難してきた。彼はイラン政権の本質、そしてその規模と地理的条件が、アメリカが一夜にして指導者を捕らえたヴェネズエラとは大きく異なる点を、おそらく見誤っていたのだろう。

この地域で長年苦しんできた住民たちのことを考えてみよう。イランとレバノンでは、数千人が命を落とし、100万人以上が避難を余儀なくされた。イスラエルでは、2年近くにわたり、サイレンが鳴り響くとすぐに地下壕に駆け込む人々がいる。そして、ペルシア湾岸諸国では、ドバイやドーハに移住した外国人や移民労働者たちが、移住当初には想像もしていなかった不安定な状況に直面している。もしこれら全てが、将来の戦争に繋がるためだけのものだとしたら、一体何のためにこんなことをしてきたのだろうか?

※ラヴィ・アグラワル:『フォーリン・ポリシー』誌編集長。Xアカウント:@RaviReports

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(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカとイスラエルがイランを攻撃して始まったイラン戦争は開戦から約1カ月が経過した。停戦の見通しは立っていない。人命や世界経済に対するマイナスの影響を考えると一日も早い停戦が望ましい。ホルムズ海峡の安全に関する懸念が続く中で、日本をはじめとする世界各国で石油に関する不安が出ている。アメリカとイスラエルは当初の目論見を完全に外しており、失敗を認めて、イラン側の要求に従って謝罪と賠償を行うべきであるが、それはできないことであろう。

 アメリカとイスラエルは開戦直後に、イラン政府と軍の最高指導層を排除すれば、国内での体制に対する不満が高まり、政権転覆、体制転換に進むと考えていた。2026年1月にアメリカが実施したヴェネズエラ攻撃とニコラス・マドゥロ大統領拘束連行の成功によって、イラン攻撃へのハードルも下がった。成功体験によって、冷静なリスク分析が受け入れられることはなかった。さらに、イランの報復攻撃とホルムズ海峡の封鎖によって、アメリカとイスラエル側が圧力を受けることになった。アメリカ海軍が民間船舶のホルムズ海峡通貨護衛を拒否したことで(事態のエスカレーションを避けるという意向もあるが)、世界経済も混乱に陥った。戦力的に見れば、アメリカとイスラエルはイランを上回っているが、世界でも有数のチョークポイントであるホルムズ海峡をイランは「武器」として利用することによってアメリカとイスラエルに対抗するという戦略を取っており、それは成功している。

現状を打破するためにはアメリカとイスラエルは地上軍の派遣までも検討する段階になっているが、そうなればイラン戦争はエスカレートしていき、更なる混乱と不安を世界に与えることになる。そうなればアメリカとイスラエルは非常に厳しい状態に追い込まれることになる。

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イラン戦争はその立案者たちの意図から外れている(The Iran War Has Escaped Its Authors

-事態のエスカレーションはワシントンが抱く支配の幻想を既に打ち砕いている。

ロバート・A・ペイプ、アリ・ヴァエズ筆

2026年3月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/30/iran-war-trump-israel-escalation-hormuz/

アメリカとイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始してから1カ月が経過した。数週間にわたる反撃によって、迅速かつ決定的な勝利への期待は薄れつつある。ワシントンとテヘランは、それぞれの作戦によって相手側に対して最大限の要求を突きつけるだけの圧力をかけたと考えているため、外交的解決への見通しはしばらくの間は暗いことになるだろう。

選択戦争には、ある種の自信がつきまとう。それは、暴力の度合いを制御できると信じる指導者たちの自信だ。攻撃は鋭く、標的は限定的で、エスカレーションは制御される。敵は挑発されるのではなく懲らしめられ、戦争は開始した側の意のままに進行すると考える。

戦争の過程で、アメリカとイスラエルはイランに大きな打撃を与えることに成功した。イランの政治・軍事指導者たちを標的にし、ミサイルの備蓄と生産能力を低下させ、多数の海軍艦艇を撃沈した。しかし、テヘランはこれに対し、イスラエル、ペルシア湾岸地域の各国にあるアメリカ軍基地、そして湾岸アラブ諸国に向けて、ドローンやミサイルによる定期的な攻撃を実行してきた。特にホルムズ海峡とその周辺における南岸沖での船舶への一連の攻撃は、この重要な航路の交通量を大幅に減少させるのに役立っている。

ここ数週間、事態収拾や交渉の可能性についての議論が飛び交っている。しかし、ワシントンとテヘランの立場が根本的に相容れないことを考えると、事態はエスカレーションすると考える方が、可能性が高いように思われる。アメリカにとっては、イラン領土へのアメリカ軍派遣、あるいはイランによるホルムズ海峡の継続的な利用の阻止といった形が考えられる。一方、イランにとっては、イエメンのフーシ派同盟軍の紛争に介入することで、紅海の交通を脅かし、さらなる不安定化を招く可能性がある。

歴史的に見て、強大な国家は、一連の明らかな勝利の後にこそ、最大の危険を冒す傾向がある。1月のヴェネズエラ空爆のような成功は、ドナルド・トランプ大統領に、武力行使はクリーンかつ予測可能で、長期的な代償を伴わずに済むという印象を強固なものにした。成功という認識は、支配力の錯覚を生み出し、指導者のリスク許容度を高め、エスカレーションを加速させる。

これは、現在アメリカとイスラエルがイランと戦っている戦争を形作っている力学である。精密な作戦として提示されたこの作戦は、戦略的な過信というお決まりのパターンにますます似てきている。ワシントンは、初期の軍事的成果を政治的な影響力と誤解し、戦術的な成功を永続的な秩序への道と混同している。イランは最高指導者、司令官、核施設、そして軍事資産を失ったかもしれない。しかし、より重要な問題は、イランに打撃を与えることができるかどうかではなく、この打撃が政府の降伏につながるかどうかであった。

そこには、空軍力の錯覚が働いている。攻撃を受けている政権は、崩壊するよりもむしろ強固になることが多い。爆撃を受けた社会において、必ずしも支配者に反旗を翻すとは限らない。多くの場合、爆弾を投下する外国勢力に対して最初に反旗を翻す。

イランも例外ではない。この戦争以前、イラン・イスラム共和国は国内で深刻な不満を抱えており、その多くは正当なものだった。しかし、外部からの攻撃は政治的感情を変容させる力を持っている。かつて不満が占めていた空間を、ナショナリズムが埋め始めている。平時には脆弱に見えた国家が、自国が包囲されると、より強固に見えるようになる。

ワシントンで語られる論評の多くは、依然としてイランを単に攻撃を受け、怒りに任せて反撃しているだけの国として捉えている。しかし、テヘランは長年にわたりその戦略を形作ってきた論理に基づいて戦っている。それは、通常戦力でアメリカやイスラエルに対抗できないのであれば、その戦力を行使することをより困難かつ高コストにすることで、両国を凌駕できるという論理である。

イランの攻撃パターンは、派手な報復というよりも、戦略的な混乱を狙ったものであることを示唆している。標的設定は、レーダーの無力化、指揮系統の弱体化、ミサイル迎撃ミサイルの備蓄量の減少、そしてホルムズ海峡を通る船舶とエネルギー輸送のほぼ停止による経済的圧力の増大という4つの優先事項を示している。

テヘランの視点から見ると、これは戦争を火力による戦いから持久戦へと転換しようとする試みを反映している。イランの計画立案者たちは、紛争の初期段階では迎撃ミサイルの備蓄を枯渇させ、ミサイル防衛網の弱点を露呈させるために、高頻度で攻撃を行う必要があると長年考えてきた。そうして初めて、戦争はより持続可能な消耗戦の段階へと移行し、より少ないミサイルやドローンで弱体化した防衛網を突破できる可能性が高まる。イスラエルにおける警戒時間の短縮や湾岸地域の一部における防衛網の弱体化を示唆する報告は、この論理が既に機能し始めていることを示している。

イランの地域的な標的設定についても同様のことが言える。中東地域各地のアメリカ軍基地が繰り返し圧力に晒されれば、アメリカ軍の作戦維持コストは急激に上昇する。イランはアメリカ軍を完全に打ち負かす必要はない。必要なのは、アメリカ軍の軍事的優位性を行使する際のコストと政治的負担をより大きくすることだ。

イランの視点がしばしば見落とされているのは、まさにこの点である。テヘランの目的は単なる報復ではない。新たな戦略的均衡を強制的に作り出すことにある。その均衡は、ミサイルだけでなく地理的要因にも深く関わっている。ホルムズ海峡は常にイランの抑止力ドクトリンの中核を成してきたが、今回の戦争は、テヘランが抽象的な影響力を具体的な交渉力へと転換しようとしていることを示唆している。もし海峡の航行がイランの寛容さにますます依存するようになり、あるいは各国が安全な航行を確保するために独自の取り決めを模索し始めるならば、それはワシントンが長年否定しようとしてきた事実、すなわちイランが世界の主要経済動脈の1つに対して依然として大きな強制力を持っているという事実を、静かに認めることになるだろう。

ホルムズ海峡だけが圧力のかかるポイントではない。フーシ派が参戦したことで、圧力はバブ・エル・マンデブ海峡にも及び、紅海の航行も遮断される可能性がある。そうなれば、紛争はアジア、ヨーロッパ、中東を結ぶ海上交通の要衝を巡る争いへと発展する。

だからこそ、ドナルド・トランプ米大統領は、イランにホルムズ海峡の再開を迫るため、地上部隊をイラン領の島々に派遣することを検討しているのだ。しかし、これは単なる段階的な行動ではなく、エスカレーションの罠に足を踏み入れる一歩となる。空軍力は混乱や弱体化をもたらすことはできるが、領土を確保したり、永続的な政治的成果を強制したりすることはできない。そして、これらの目標が達成できない場合、地上部隊への圧力が高まる。いったんその一線を越えれば、紛争の構造は変化する。

同時に、イラン・イスラム共和国の旧体制派、つまり経験豊富でより慎重な行動を取ってきた人物が殺害されたことで、イランはより危険な賭けに出やすくなっている。たとえこうした事態がなくても、イラン領土への地上部隊の投入は、海峡への機雷敷設、アメリカ地上部隊への攻撃、地域インフラへの放火、そしてフーシ派によるバブ・エル・マンデブ海峡封鎖といった事態のエスカレーションを招く可能性を著しく高めるだろう。

イランは軍事的にも経済的にも依然として深刻な圧力に晒されており、国民は甚大な犠牲を払っている。しかし、弱体化は戦略の排除を意味するものではない。強大な側は、あらゆる段階でより大きな損害を与えることができるため、エスカレーションを支配できると考える。

しかし、エスカレーションの支配(escalation dominance)が、エスカレーションの制御(escalation control)につながらない。アメリカとイスラエルは、あらゆる武力衝突で勝利したとしても、紛争の軌道と目的を制御できなくなる可能性がある。これが、制御の幻想に駆り立てられた戦争の根本的な危険性だ。全体的な道筋がますます危険になり、方向転換が困難になっても、一歩一歩が前の行動によって正当化されているように見えてしまう。

現実には、抑止力(deterrence)、制裁(sanctions)、主権(sovereignty)、そして核問題(the nuclear issue)をスローガンや空想ではなく、より真剣な形で扱う停戦に向けた真剣な取り組みがなければ、戦争はアメリカやイスラエルだけでは制御できない形でエスカレートしていくことになるだろう。そうなれば、戦争が数週間から数カ月に及ぶにつれて、その代償は取り返しのつかないものになる。地域のアクターたちは紛争を拡大させる動機をますます強め、直接的な戦域を超えたテロのリスクも高まる。

各国が制御された戦争(controlled war)という幻想に陥る最も危険な瞬間は開戦時ではない。むしろ、問題となるのは、見かけ上の成功の後、つまり指導者たちが前回と同じ理由で次のエスカレーションも成功すると信じ込んでしまう瞬間だ。こうして国家は自らの力に囚われ、戦争は自らの意図から逸脱してしまうのである。

※ロバート・A・ペイプ:シカゴ大学政治学教授、シカゴ大学安全保障・脅威プロジェクト部長。著書に『勝利のための爆撃:戦争における航空攻撃力と威圧(Bombing to Win: Air Power and Coercion in War)』と『サブトラックのエスカレーションの罠(The Escalation Trap on Substack)』がある。

※アリ・ヴァエズ:「インターナショナル・クライシス・グループ」イラン・プロジェクト部長。共著に『制裁はどのように機能するか:イランと経済戦の衝撃(How Sanctions Work: Iran and the Impact of Economic Warfare)』がある。Xアカウント:@AliVaez

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 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権の目玉政策にゴールデンドーム・ミサイル防衛システム(Golden Dome missile shield)がある。政権発足直後の2025年1月27日に、トランプ大統領はゴールデンドーム計画を発表した。これは、イスラエルのミサイル防衛システムであるアイアンドームをアメリカに適用する計画だ。国土の大きさを考えると、大規模な計画になり、約1850億ドル(約30兆円)規模の大型プロジェクトである。私は拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(2025年11月、ビジネス社)でゴールデンドーム計画について分析を行った。そして、これは、ピーター・ティールが率いるパランティア・テクノロジーズ社、イーロン・マスクが率いるスペースX社、パルマー・ラッキーが率いるアンドゥリル・インダストリーズ社が重要や役割を果たす、特に、オペレイティングシステムで重要な役割を果たすと書いた。

 以下の記事にあるように、パランティア社とアンドゥリル社がゴールデンドーム計画のソフトウェア開発を行っているということが報道された。この約30兆円に及ぶ巨大プロジェクトの根幹を両社が請け負うということである。さらに私は両社は長期的にゴールデンドーム計画に関与し、長期契約(サブスクリプション)で安定して利益を上げるということを目指しているとも書いた。実際にその通りに動いているようだ。

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 何度も宣伝になり申し訳ないが、是非、拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』をお読みいただきたい。

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アンドゥリル社とパランティア社がゴールデンドーム・ミサイル防衛システムのソフトウェアを開発中と情報源が述べる(Anduril, Palantir developing Golden Dome missile shield's software, source says

ロイター通信

2026年3月25日

https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/anduril-palantir-developing-golden-dome-missile-shields-software-source-says-2026-03-24/

2026年3月24日(ロイター通信)。米大統領ドナルド・トランプが推進するミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」構想向けソフトウェアの開発で、アンドゥリル社とパランティア・テクノロジーズ(PLTR.O)社が協力しているとこのテーマに詳しい取材源が火曜日に取材に対して答えた。

1850億ドル規模のゴールデンドーム・ミサイル防衛計画(Golden Dome missile defense project)は、弾道(ballistic)ミサイル、巡航(cruise)ミサイル、極超音速(hypersonic)ミサイルを迎撃できる宇宙配備型防衛システムの構築を目指しており、数百社が防衛システム開発で役割を果たそうとして競っている。

アンドゥリル社とパランティア社は、ゴールデンドーム構想の発足当初から参画に関心を示してきた。ロイターは昨年、アンドゥリル社とパランティア社がイーロン・マスクの率いるスペースX社と共同でプロジェクトの様々な部分で協力していると報じた。

アンドゥリル社は昨年(2025年)11月、ゴールデンドーム関連の小規模契約を6件獲得し、競合するミサイル防衛システムの試作機を開発する企業の1つにも選ばれた。情報源によると、アーリリア・テクノロジーズ社(Aalyria Technologies)、スタートアップ企業のスケールAIScale AI)、そしてソフトウェア企業のスウープ・テクノロジーズ社(Swoop Technologies)もこのプロジェクトに取り組んでいるという。

各社はロイターのコメント要請に期日までに応じなかった。この件は『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が火曜日に最初に報じた。

ロッキード・マーティン社(LMT.N)、RTX社(RTX.N)、ノースロップ・グラマン社(NOC.N)は既に主契約企業としてこのプログラムに参加している。

プログラムの責任者は先週、主要な宇宙関連能力の開発を加速させるため、プロジェクト費用が100億ドル増の1850億ドルになったと述べた。

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