古村治彦です。
第二次ドナルド・トランプ政権は昨年4月に高関税政策を実施し、世界に混乱をもたらした。日本に対しても高関税を課すということで、当時の石破茂政権の赤沢亮正経済再生担当大臣が短期間で何度も日米間を往復し、交渉をまとめ、関税引き下げに成功した。トランプが「国際緊急経済権限法」を根拠にして進めた高関税は米連邦最高裁判所によって「違法」の判断が出た(2026年2月)。これに対して、トランプ政権は国際緊急経済権限法以外の法律を根拠にして高関税政策を進めようとしている。
アメリカとイスラエルが始めたイラン戦争によって世界経済は混乱と不安に陥っている。何よりも世界の重要なチョークポイントであるホルムズ海峡の選別的封鎖によって、石油価格が高騰している。更には一部の国では、石油の備蓄が底を突き、石油不足に陥っている。お金があってお石油が買えないという状態の国が出ている。日本は1970年代のオイルショックの教訓を基にして備蓄をしているが、先行き不安ということは他国と大差はない。石油価格が上昇すれば日本国内のガソリンなどの価格が上昇し、石油を減量するとする製品や物流コストの上昇によって物価は上昇する。
アメリカ国内においてもドル安とインフレが発生し、国民生活は苦しい状況が続いている。その苦しさは日本の比ではない。人々はトランプに経済対策を期待して投票した。しかし、現在は全く逆の状態になっている。アメリカは中東地域の石油に依存しておらず、従って、戦争の影響を受けない、戦争の影響を受けるのは中国だという主張もあった。ところが、石油価格の高騰はアメリカ国内を直撃している。中国も当然苦しいが、現状で苦しくない国というのは存在しない。さらに言えば、ペルシア湾岸地域は投資を集める、煌びやか大都市をつくり、日本でも憧れの対象となっていた、ドバイやアブダビ(両方ともアラブ首長国連邦)、ドーハ(カタール)は現在のところ、戦争の中にある。現状が続けば、経済は大きく毀損されることになる。
トランプにとっては戦争よりも、経済問題対応こそがより重要な課題である。それを外して、安易に国内の不平不満を逸らそうとして、戦争を始めてしまったのが大きな間違いだったのだ。トランプとネタニヤフの思惑通りあれば、影響は小さかっただろう。しかし、2026年の経済はイラン戦争の継続のために、厳しい状況が続くことになる。
(貼り付けはじめ)
イランはトランプにとって唯一の戦争ではない(Iran Isn’t Trump’s
Only War)
-ドナルド・トランプはテヘランに対して戦争を仕掛けているにもかかわらず、アメリカの貿易相手諸国に対する経済戦争の火にも再点火している。
キース・ジョンソン筆
2026年3月18日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/03/18/trump-trade-war-iran-economics-section-301/
ドナルド・トランプ米大統領のイランに対する戦争は、市場、同盟諸国、農家、半導体メーカー、そして海運保険会社を混乱させている。
しかし、トランプ大統領が今月戦っているのは、この戦争だけではない。先週、トランプ政権の貿易担当機関は、最高裁によって無効とされた以前の関税措置に続き、新たな関税措置の導入を前に、世界の他の国々による「不公正な(unfair)」貿易慣行と称する一連の調査を開始した。しかし、今回の関税措置は効力が強く、法的異議申し立てを受けにくい。つまり、トランプ大統領の貿易戦争は終わりなく続く可能性があるということだ。
シンガポールのヒンリッチ財団で貿易政策部門責任者を務め、アメリカの貿易法の難解な部分に精通しているデボラ・エルムズは「私たちは振り出しに戻ってしまう可能性が高い。プランCではなく、プランAに戻ったのだ」と述べた。
トランプ政権が行ったことは、ヴェネズエラでの小規模な戦争、キューバ獲得の脅威、イランでの紛争などに気を取られている人々にとって、数年前に自らが始めた世界貿易戦争を、まさに同じ手段を用いて再燃させているように見えている。
トランプ政権は特に、1974年通商法第301条(後に2度改正)に依拠している。これは行政府への広範な貿易権限委譲であり、トランプ大統領は1期目において、中国への関税賦課にこの権限を行使した。これらの関税はジョー・バイデン大統領によって維持されたが、現在はさらに強化されている。
エルムズは「連邦議会は明らかに大統領に権限を委譲しすぎている」と述べ、1934年以降、ホワイトハウスに連邦議会よりも大きな貿易に関する発言権を与えてきた一連の法案に言及した。エルムズはさらに「しかし、彼らは大統領が合理的で分別のある行動をとるだろうと考えて権限を委譲したのだ」と語った。
トランプ政権が他の手段に頼ろうとしているのは、連邦最高裁判所が2月に、政権がカーター政権時代の法律を用いて世界のほぼ全ての国に関税を課したことは違法であるとの判決を下したためだ。最初の回避策は、1974年通商法第112条に依拠することだったが、これには期限があり、連邦議会の監視を受ける可能性もあった。これらの関税は7月に期限切れとなるため、トランプ政権は急いでいる。政権が現在頼ろうとしている同法の条項は、より長期にわたり、期限が定められておらず、議会の監視も含まれていない。同じ1974年通商法の第122条による関税とは異なり、第301条による関税は、いわば「フリーパス」のようなものだ。トランプが2月に頼った関税は、7月24日以降も継続するには連邦上下両院の承認が必要だったが、新たな関税にはその必要はない。
エルムズは「通商法301条は永久に続く可能性がある。だからこそ、非常に危険なのだと私は考えている」と述べた。
トランプ政権1期目には、貿易政策には一定のプロセスがあった。長年貿易に携わってきたロバート・ライトハイザーが統括していた。彼は保護主義者であると同時に完璧主義者でもあった。しかし、2期目に入ると、トランプ政権の貿易ティームは以前ほど綿密ではなくなった。例えば、昨年(2025年)4月にトランプが「相互主義(reciprocal)」と称した関税措置を導入した際、ペンギンに輸入関税を課しただけでなく、新たな関税率表の計算自体が間違っていたため、世界中から嘲笑を浴びた。
最新のアメリカの貿易措置は、2つの異なる点を標的としている。1つは、16の経済圏(アメリカの主要貿易相手国全てを含む)を対象としたもので、各国による「差別的(discriminatory)」行為、具体的には、製品を製造して海外に販売しているという行為である。もう1つは、60の経済圏を対象としたもので、海外での労働コスト削減のために強制労働が用いられ、アメリカ企業に不利な状況を作り出しているとされる行為を問題視している。
トランプ大統領の貿易戦争の大きな問題点は、非生産的であることに加えて、アメリカの同盟諸国との関係を悪化させていることだ。今週、トランプ大統領はイランとの戦争において同盟諸国に支援を求めたが、何の支援も得られなかった。
しかし、トランプ大統領の貿易戦争が続く中で懸念すべき理由は他にもある。特に、彼が始めた戦争によってアメリカ国内の燃料価格が高騰し、アジア各国の経済が苦境に陥っている現状においてはなおさらだ。それは、アメリカ経済にさらなる打撃を与える可能性が高いからである。
2024年、アメリカ経済は世界の羨望の的だった。しかし先週、米商務省は昨年第4四半期のGDP成長率予測を下方修正した。トランプ政権は主要貿易相手国16カ国に対し、イランが世界の経済生命線であるホルムズ海峡を依然として支配下に置いている中で、圧力を強めている。ホルムズ海峡は通常、世界の石油と天然ガスの5分の1が通過する海峡である。
ホワイトハウスの首席経済補佐官ケヴィン・ハセットは火曜日、消費者物価の上昇は「今のところ私たちの懸念事項の中で最も優先順位が低い」と述べた。イランへのミサイル攻撃であれ、同盟諸国に対する貿易調査であれ、トランプ政権は物価上昇問題で自ら敗北を招こうとしているように見える。
※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌地経学・エネルギー担当記者。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.social、Xアカウント:@KFJ_FP
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』



