古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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カテゴリ: 中国政治

 古村治彦です。

 先日、江沢民(1926-2022年、96歳没)国家主席中国の国務院総理(在任:1998-2003年)を務めた朱鎔基(1928-2026年)が97歳で亡くなった。朱鎔基は1950年代にテクノクラートとなり、大躍進運動や文化大革命の時期には左遷、下放され苦しい時代を過ごし、鄧小平に見出され、改革開放政策を推進した。改革開放を推進しながら、同時に汚職に対する厳しい姿勢を示し、「100個の棺桶を用意しろ、1個は自分の分だ、残りはお前らの分だ」という厳しい啖呵を切った姿を覚えておられる方も多いだろう。

 中国を現在の地位まで引き上げた改革開放政策の主任設計者は鄧小平(1904-1997年 92歳没)だった。1979年に始まった改革開放政策は、1989年の天安門事件で頓挫しかけたが、その後、1992年に鄧小平が南巡講話を行い、路線が堅持された。1990年代から2000年代にかけての改革開放の成功は朱鎔基の剛腕に負うところが多い。

 先日、このブログでもご紹介したが、中国の正式な時代区分は、革命→社会主義建設→改革開放ということになっている。習近平時代に入って、改革開放期間は1979年から2012年ということになり、習近平が国家主席就任してからは「新時代」と規定されている。習近平時代の改革は以下のように規定されている。

(引用貼り付けはじめ)

今日の中国における改革には一連の「条件」や「前提」が伴っており、それらは実際には改革そのものよりも重要視されている。つまり、共産党の指導(CCP leadership)、質の高い発展(high-quality development)、共同富裕(common prosperity)、技術面の自立(technological self-reliance)、サプライチェインおよび産業チェインの安全保障(supply-chain and industrial-chain security)、国内循環戦略(the domestic circulation strategy)、新たな質の生産力(new quality productive forces)、そして発展と安全の調和(coordinating development and security)といった要素が優先される。まず政治的・安全保障的・国家戦略的な目標が設定され、市場はその枠組みの中で機能することが求められる(Political, security, and national strategic objectives are set first, and the market is then required to function within the boundaries set by those objectives)。

(引用貼り付け終わり)

 経済の市場志向の改革開放は定着した中で、国家の機能の強化や復活を習近平体制は目指している。これは、中国が新たな段階に進もうとしていることを示している。それは、アメリカとの対等な関係、世界のもう一つの陣営の指導的な立場の超大国としてのふるまいを行うということで、政治と安全保障、国際関係により注意を向けていくということを示している。朱鎔基の逝去は中国の新時代を印象付ける出来事ということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

朱鎔基の死去は中国の急進的な改革時代の「終わりの鐘」となる(Zhu Rongji’s Death Is the Final Knell for China’s Breakneck Reform Era)

-習近平体制下では実質的な変革よりも政治と安全保障が優先されている。

デン・イーウェン筆

2026年8月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/08/14/zhu-rongji-jiang-zemin-reform-china-xi/

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北京で決議案の採決を行う中国の朱鎔基首相(左)と江沢民国家主席(右)(2002年11月14日)

8月17日は、2022年に96歳で死去した中国共産党の元総書記である江沢民の生誕100周年にあたる。在任中、彼は中国指導部の第3世代における「核心(core)」と公式に位置づけられていた。北京ではすでに一連の盛大な記念行事が始まっている。

そして今、江沢民と共に国政を担った朱鎔基もまた、8月12日に97歳で死去した。時期が重なったのは単なる偶然だが、このことは、2人が象徴した「猛烈な勢いで進められた改革の時代(the era of breakneck reform)」の終焉として受け止められている。

江沢民と朱鎔基は、1990年代に政権を担った中国共産党第3世代指導部における「黄金コンビ(golden partnership)」だった。2人は協力して、現代中国史上最も広範かつ抜本的な改革の時代を主導した。

もっとも、中国の改革はこの2人から始まった訳ではない。1979年に改革の時代を切り開いたのは鄧小平であり、地方改革、経済特区(special economic zones)の設置、価格改革、そして民間経済の台頭といった動きは、江沢民と朱鎔基の取り組みよりも前に始まっていた。しかし、市場志向の改革が部分的な試行段階から経済システム全体へと拡大し、計画経済(the planned economy)の色合いが濃い国から市場経済の基本機能を備えた国へと中国を急速に変貌させたのは、鄧小平による1992年の「南巡講話(southern tour」」以降、とりわけ江沢民・朱鎔基の体制下でのことだった。

朱鎔基に対する公式な追悼文には、あの時代の制度的遺産とも言える数々の成果が列挙されている。インフレの抑制、財政・税制改革の推進、金融規制システムの再構築、国有企業の再編、政府機構や住宅制度の改革、経済開放の拡大、アジア通貨危機への対応、そして世界貿易機関(WTO)への加盟などだ。今日から見れば、これらは単なる無味乾燥な政策の羅列に映るかもしれない。しかし、1990年代という文脈においては、それらは中国の経済秩序を根本から作り変えるほどの大規模な再編を意味していた。

江沢民・朱鎔基時代がこれほどの成果を上げた要因は何だったのか? 第一に挙げられるのは、市場主導型改革の方向性が極めて明確だったことだ。当時、改革が目指す方向について説明を要する余地はほとんどなかった。それは、計画経済の縮小と市場機能の拡大、行政による資源配分から価格メカニズムや競争への依存への転換を意味していた。中国共産党第14回党大会では「社会主義市場経済(socialist market economy)」の構築が正式な目標として掲げられ、続く第15回党大会では、公有制を主体としつつ多様な所有形態が共存・発展する体制が改めて確認された。今日ではこうした表現も当たり前のものに聞こえるかもしれませんが、当時は根本的な変化を告げるものだった。

江沢民・朱鎔基時代においても、所有形態に基づく差別が完全になくなった訳ではなく、国有企業は依然として強力な地位を占めていた。しかし、経済成長に占める民間企業、外資、輸出製造業の割合は拡大していった。資本が雇用や富、税収を生み出すのであれば、それが「国有」か「民間」かということは、かつてほど政治的に大きな問題とされる必要はなくなっていた。

また、中国は積極的にグローバル化を推進し、その集大成として2001年に世界貿易機関(WTO)への加盟を果たした。その根底にあったのは、中国が発展するためには世界市場に参入し、国際的なルールを受け入れ、外資・技術・経営ノウハウを導入し、さらに外部との競争を通じて国内改革を促さなければならないという考え方だった。

改革派は迅速に行動し、極めて困難な課題にも果敢に取り組んだ。価格、企業、住宅、雇用、金融、税制、貿易といった難題に対し、改革は同時並行で進められた。労働単位制度(work unit system)や西側諸国経済との関係など、長らく困難あるいは政治的にデリケートすぎると見なされていた問題にも、正面から取り組んだ。単なる小手先の修正にとどまらず、改革派は経済の機能する仕組みそのものを直接的に変革した。

その過程では、甚大な社会的痛みを甘受した。その最も顕著な例が、国有企業の再編とそれに伴う大量解雇だ。数千万人に上る国有企業の労働者が解雇されたり民間部門へ移されたりし、その多くが福利厚生などの既得権益を失った。同時に、赤字を抱える多数の企業が閉鎖、合併、あるいは再編の対象となった。新たな市場システムを構築するためであれば、短期的かつ極めて深刻な社会的コストを支払うことも正当化されるというのが、この時代の基本的な論理だった。

「効率が最優先、公平は考慮する(Efficiency first, with due consideration to fairness)」という方針は、単なるスローガンにとどまらなかった。それは一つの発展の論理そのものを体現するものだった。すなわち、一部の地域や人々を先行して豊かにし、格差の拡大を容認し、成長によってさらなる資源を生み出し、分配の問題は後回しにする、というものだ。この方法は急速な成長をもたらしたが、同時に深刻な問題も引き起こした。格差の拡大(widening inequality)、汚職(corruption)、構造改革が原因の失業(unemployment caused by restructuring)、そして年金・医療・労働者の権利など多くの分野における適切な社会保障の欠如(a lack of proper social protections in pensions, health care, labor rights, and many other areas.)などだ。

中国共産党の視点から見ておそらく最も重要な要素は、強力な政府が市場化を「代替」するのではなく、むしろ市場化を「推進」するために利用されたという点にある。国家は自らの能力を弱めることはしなかった。それどころか、まず中央の財政力、金融監督、マクロ経済管理の機能を強化し、その強化された行政能力を行使して市場改革を推し進めた。中央政府が歳入のより大きな割合を確保するようになった1994年の「分税制改革」(the 1994 tax-sharing reform)は、その典型的な例と言える。

江沢民・朱鎔基の時代においても政治は確かに重要でしたが、経済政策立案の議論においては、成長、効率性、インフレ、為替レート、財政政策、金融、産業構造、国際競争力といった要素がはるかに重視された。朱鎔基自身、専門的な知見、データ、制度設計、そして行政的な実行力を重んじるテクノクラート(技術官僚)世代の統治スタイルを体現していた。当時、経済問題を解決する官僚の能力は、政治的な評価において大きな比重を占めていた。

経済改革が急速に進展する一方で、政治改革はそれに追いつくことができなかった。市場が拡大し、社会が多様化し、個人がより大きな経済的自由を手にするようになったにもかかわらず、政治権力の構造はそれに見合う形で変化することはなかった。こうして江沢民・朱鎔基時代は、市場志向を強める経済と、高度に中央集権的なままの政治体制という、際立った組み合わせを生み出すこととなった。

もちろん、今日の北京でも改革は絶えず議論されている。中国共産党の「三中全会」は「改革のさらなる全面的深化」を求め、第15次五カ年計画や2026年の政府活動報告も同様に、統一国内市場の構築、民間経済の振興、財政・金融改革、そしてさらなる対外開放を強調している。

今日の中国における改革には一連の「条件」や「前提」が伴っており、それらは実際には改革そのものよりも重要視されている。つまり、共産党の指導(CCP leadership)、質の高い発展(high-quality development)、共同富裕(common prosperity)、技術面の自立(technological self-reliance)、サプライチェインおよび産業チェインの安全保障(supply-chain and industrial-chain security)、国内循環戦略(the domestic circulation strategy)、新たな質の生産力(new quality productive forces)、そして発展と安全の調和(coordinating development and security)といった要素が優先される。まず政治的・安全保障的・国家戦略的な目標が設定され、市場はその枠組みの中で機能することが求められる(Political, security, and national strategic objectives are set first, and the market is then required to function within the boundaries set by those objectives)。

江沢民・朱鎔基時代における改革とは、概して、それまで政府が統制していたものを市場へと移管し、比較的閉鎖的だった中国経済を世界へと押し出し、個人や企業を旧来の制度的制約から解放することを意味していた。一方、今日の改革が意味するのは、国家による市場の再編、資本の誘導、技術資源の配分、自律的な産業システムの構築、そして経済のダイナミズムを維持しつつも制御可能な状態を保つことだ。

江沢民・朱鎔基時代は、今となっては想像しがたい時代だった。当時の与党は旧来の経済的領域から繰り返し後退し、市場や社会の力が急速に拡大することを容認していた。そして、中国が開放と改革を続ければ、発展に伴う問題の大部分はやがて解決できると信じていた。

その時代は多大な成果を生み出したが、同時に多大な代償も伴った。決して「黄金時代(a golden age)」ではなかった。しかし、ある時代を懐かしく思う気持ちは、その時代がいかに素晴らしかったかということよりも、むしろ「その後に何が続いたか」によって左右されることがある。

※デン・イーウェン:中国の作家・学者。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。ブログ継続のために書籍の購入をお願いいたします。

 

 アメリカで公開中のドキュメンタリー映画「ザ・デーティング・ゲーム」の紹介記事が興味深かったのでご紹介する。監督は中国系の女性で、中国国内に住む結婚したいのに、出会いに苦労している若い男性たちとそのような男性たちの「コーチ」を登場させている。中国でも日本と同様、正確には日本よりもスピード感を持って、少子高齢化が進んでいる。そして、若者たち、特に男性たちにとって深刻なのは「男余り」だ。記事によると、中国の申請時の男女比は、男性116対女性100となっている。日本やその他の国々では、だいたい男性105対女性100となっている。日本でもそうであるが、伝統や文化の面で、男の子を望む傾向が強く、中国の場合には一人っ子政策という縛りもあり、「1人しか産めないなら男の子」ということになって、男性が多くなっている。そうなると、単純な算数で考えても、結婚適齢期になると、男性が余ってしまう。容姿が良かったり、実家が富裕であったり、学歴が高かったりであれば結婚できるが、「何の取り柄もない」男性は振り向いてもらえない。仄聞するところでは、中国では結婚する際に、男性側が家(マンション)を用意しなければならないということだ。そうなると、経済力がない若い男性は結婚相手に選んでもらえない。

 そこで、結婚相手探しに苦労している若い男性たちに女性と出会って結婚まで持ち込むための技術を教える「コーチ」が登場する。彼らは女性を振り向かせるための技術を持つ、日本語で言えば「ナンパ師(pickup artists)」である。SNSに掲載するプロフィール写真やSNSでのやり取りについてアドヴァイスをする。また、国家が主催するお見合いパーティーも開催されている。日本で言えば、「婚活」が中国でも盛んなようだ。しかし、人口統計的に見れば、どうしても女性と出会えない男性が出てくる。結婚は同い年同士ですることは少ない、年齢差があるのが一般的だが、上下数年で見ても、男性が偏って多い以上、対象を拡大しても厳しい状況は変わらない。私はそのうち、中国でも、外国からお嫁さんを連れてくるということが起きるだろう、いや既に起きているのではないかと考える。日本でも、特に農村部で同様の問題があり、東南アジアの女性を結婚するということがあった。中国もそのようなことになるだろう。

 こうなると、社会に対して不満を持ち、女性を攻撃するマンスフィア(男性優位志向ネットワーク[と私は訳した])が発生する。自身が持つ不安を社会や女性にぶつけるということになる。これは社会にとって大きな不安定要因となる。日本でも、氷河期世代(1970年代から80年代初頭くらいまでに生まれた人たち)も同様の境遇にある。日本の氷河期世代の場合は人口統計上の問題ではなく、経済や社会、政治上の失敗が原因であるが。記事に書かれているが、中国では結婚をすることを諦める若者たちが多く出ている。日本もそうであったが、不満をため込みながら、社会から退くことを選ぶ人たちが多く出ると、社会の運営効率は落ち、社会は崩壊に向かう。身も蓋もない表現をすれば、中国の問題は、最終的には金で解決できるかもしれない。外国から女性に来てもらうということで(そのために経済力や高い生活水準が必要であるが)、解決ができるかもしれない。2024年の新生児出生数が過去最低を記録したという報道を見ながら、日本の場合には既に回復は望めないと悲観的になってしまう。

(貼り付けはじめ)

中国の余剰男性に何が起きているのか?(What Happens to China’s Surplus Men?)
-一人っ子政策(one-child policy)による性別間の不均衡(gender imbalance)は、絶望的な独身男性(desperate bachelors)、疑わしい教祖(dubious gurus)、そして男性優位志向ネットワークの台頭(a rising manosphere)を生み出した。

ドリュー・ゴーマン筆

2025年12月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/12/china-gender-dating-demographic-population-documentary/

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中国・重慶で、デーティング・ブートキャンプの一環として独身の周がハスキー犬たちとポーズを取り、デーティング・コーチのハオが写真を撮っている(ドキュメンタリー映画「ザ・デーティング・ゲーム」)

恋愛がうまくいかない時は、イメージチェンジが容易に始められる場所となる。問題は、何を変える必要があるのか​​、必ずしも分からないことだ。中国の独身男性、周、呉、李に対し、デート・コーチのハオは率直に次のように答える。「全てを変える」。

ヴァイオレット・ドゥ・フェン監督のドキュメンタリー映画『ザ・デーティング・ゲーム(The Dating Game)』(現在ニューヨークで公開中)は、かつての中国の一人っ子政策を受けて、デートライフを刷新しようとする男性たちの姿を追っている。長年続いた男児優遇政策は、世界でも最も顕著な性別間の不均衡を生み出した。「中国には女性がいない」とハオは語る。実際、この政策が終了に至った2015年には、中国では女児100人に対し男児が約116人が出生しており、おそらく男児のほぼ5人に1人が生涯独身(a lifetime of singledom)を強いられていることになる。

フェンが取り上げる登場人物たちは、恋愛の見込みのなさに自己不信と不安(self-doubt and anxiety)に苛まれている。結婚へのプレッシャーはあらゆる方面から押し寄せてくる。家族、友人、そして若者に結婚と出産を公然と迫る国家さえも。

デート・コーチのハオは3000人以上の顧客を抱えていると言い、そのほとんどが労働者階級の男性だ。アパートを所有することが結婚の必須条件とされるこの国では、妻を見つける可能性が最も低い層だ。ハオは彼らを失敗者(failures)と切り捨てながらも、愛を得るチャンスは与えられるべきだと言う。しかし、独身男性たちの旅が展開するにつれ、視聴者はハオのやり方に疑問を抱き始めるかもしれない。そして、約束された成功をもたらさないデート・システムがもたらす社会的影響を懸念するかもしれない。デート・システムは、男性たちを危険な怨恨政治(the dangerous politics of resentment)へと駆り立てる可能性がある。

私たちは中国・重慶のショッピングモールで初めて、女たらし志願の男たちに出会う。ハオは1週間かけて、現代のデジタル時代に女性を惹きつける方法を教えると約束する。36歳の周は最も懐疑的だ。ハオのファッションアドヴァイスに難色を示し、故郷の人たちは自分が太字のピンクのシャツを着ているのを見たら驚くだろうと言う。美容院では、周が「私はハンサムじゃない。スタイリングする意味がどこにある?」と発言する。スタイリストは「顔の形による弱点を目立たなくしてしまう」と答える。こうした率直な発言は、登場人物たちの尊厳を何度も傷つける。独身男性たちが中国の金銭中心のデート文化について語るのも同様に率直だ。周は、女性をディナーに連れて行き、プレゼントを買い、仲人に料金を払うと、月収の半分にあたる300ドルもかかることを嘆く。その後、ある女性は理想のパートナーは「月に1500ドル以上」稼いでくれる人だと語った。

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独身の李はデートのためのプロフィール写真でポーズを取る

経済的な不利を補うため、ハオは独身男性たちに事実上、偽りの自分を見せることを教え、時にはあからさまに嘘をつくよう助言する。例えば、男性たちが高級高層ビルでデートのプロフィール写真のためにポーズを取る場面が見られる。そして、周は明らかに犬を怖がっているにもかかわらず、ふざけた瞬間に12匹ほどのハスキー犬を連れている場面も見られる(大型犬は中国の多くの都市で厳密には違法であり、ステータスシンボルとなっている)。周は新しいプロフィール写真を使うのをためらう。なぜなら、そこには自分が経験したことのない経験が写っているからだ。女性は見抜くだろうと彼は主張する。ハオは、誰もがオンラインでは騙されていると反論する。呉は「私は偽るのは好きじゃない。私は私だ」と反論する。ハオはただ、本物かどうかなんて気にするなと彼らに告げる。

ハオが男性たちに、路上で見知らぬ女性に声をかけWeChatのアカウント情報を聞き出すなど、過酷なデートの練習を指導するにつれ、視聴者はハオの能力不足を疑い始める。男性たちは昔ながらの方法で真の繋がりを切望しているにもかかわらず、一日中、見境なく右にスワイプして相手を探すように指示されるのだ。

映画監督のフェンは彼らの失敗(そして稀に起こる衝撃的な成功)を一切コメントなしで紹介し、視聴者がハオのやり方について独自の意見を形成できるようにしている。しかし、やがて、これらのいわゆるテクニックは、実際には単なるナンパ師(pickup artist、PUA)の行動であることが明らかになる。

1960年代に遡るアンダーグラウンドムーヴメントのようなピックアップ・アートは、ニール・ストラウスの2005年の著書『ザ・ゲーム』の出版をきっかけに、爆発的に主流へと躍り出た。心理操作と安っぽいテクニックで女性を誘惑するナンパ師たちは、女性を物のように扱い、男性に常識的な境界線をはるかに超えた恋愛や性的欲求を抱かせるとして、広く非難されてきた。

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ハオがスプレーを使って髪の毛を整えている

近年、ナンパ師たちは「男性優位志向ネットワーク(manosphere)」という異形の類縁関係を生み出している。男性優位志向ネットワーク(マノスフィア)とは、女性蔑視的な見解を唱え、より狂信的なケースでは、伝統的なジェンダー階層の復活を目的とした暴力を擁護する、緩やかなオンラインコミュニティの集合体のことだ。調査ジャーナリストのジェイムズ・ブラッドワースが著書『ロストボーイズ:マノスフィアを巡る個人的な旅(Lost Boys: A Personal Journey Through the Manosphere)』で記録しているように、男性の権利団体、ナンパ師組織、「非自発的独身(involuntary celibate)」フォーラム、そして過激な女性蔑視的インフルエンサーといった広範なネットワークが相互に関連している。例えば、2014年に殺人事件を起こす前、イギリス系アメリカ人の殺人犯エリオット・ロジャーは恋人ができないことを嘆き、恋愛における失敗の原因の一部はナンパ師のテクニックの失敗にあると非難していた。

ナンパ師からマノスフィアへのパイプラインは、ネガティヴな態度、派手な仕草、あるいは挑発的なタッチなど、適切な条件を揃えればガールフレンドを「獲得(acquire)」できるという、薄汚い思い込みで覆われている。しかし、どれだけ気取った振る舞いをしようと、最初の一言がどれだけウィットに富んでいようと、最終的には他の人間との真の紐帯(a genuine bond with another human being)を築かなければならないのだ。

このことを最も強く裏付ける証拠は、独身男性の試練ではなく、ハオと自身もデート・コーチであるウェンとの結婚生活にある。2人の関係は映画の意外な感情的中心となり、ブートキャンプを覆い隠すほどだ。ブートキャンプが気まずく滑稽な一方で、フェンとハオ、ウェンの接点は親密で緊張感に満ち、ほとんどスキャンダラスだ。私たちは本当にこんな光景を目にするべきなのだろうか?

ウェンは多くの点でハオとは対照的な存在だ。指導する女性たちに、ウェンは本物であることと自己改善(authenticity and self-improvement)を説く。それは勤勉と内省(hard work and introspection)を必要とする。それとは対照的に、ハオのやり方は暗く、醜く、破滅的な印象を与える。ウェン自身も、こうしたやり方こそがハオの当初の嫌悪感であり、不誠実だと感じていた部分だと述べている。この2人のアプローチとメンタリティの乖離は、悲劇的で不可解だ。視聴者として、ウェンがハオの泥沼のようなナンパの嵐をかき分けて彼の良い面を見ようとした理由も、この2人を結びつけている理由も、ほとんど理解できない。2人はデートの仕方だけでなく、人間関係の理解や個人としての尊重の仕方についても、正反対の考え方を持っているように見える。この軋轢は耐え難いものとなり、私は何度も目をそらさざるを得なかった。

この展開を目の当たりにしている視聴者にとって、なぜ何千人もの男性がこのひどいアドヴァイスに賛同しているのか、いささか不可解な点がある。

ハオの主張が魅力的な理由の1つは、農村部の労働者階級の男性の多くが、少女との交流をほとんど持たずに育ったことだ。24歳の李は、自分の村では「少年12人に対して少女は数人しかいない」と語る。一方、多くの親は急速な国家工業化政策に携わるため都市部へ移住し、子供たちは祖父母に育てられた。あるアーカイヴ映像では、当時の指導者である鄧小平が国民に対し、中国を速やかに近代化するよう訴えている。国民に豊かな生活を提供できなければ、国は行き詰まってしまうからだ。

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(左から)ハオ、呉、李、周がモールの中を歩く 

中国が経済減速に直面し、若者の間で不満が広がっている現状を考えると、フェンがこの映像をこの時期に取り上げたことは、非常に的を射ているように感じられる。都市部の若者の公式失業率は約17%、2026年には過去最大の大学卒業者数が見込まれる中、若い中国人は独特の倦怠感(a distinctive malaise)を抱えながら労働力として働き始めている。こうした経済的な課題は、世代全体の恋愛の見通しに暗い影を落としている。そして、「996」労働制度(“996” work system)で悪名高い中国では、これまで必死に追い求めてきたものはすべて幻だったという感覚が広がっている。若者の中には、経済的・社会的に無力感を抱き、収入と恋愛の成功があまりにも密接に結びついているため、恋愛から完全に身を引く男女もいる。

デートのプールにとどまり続ける人々は、型破りな手段に訴えることもある。ハオのコーチングはそうしたアプローチの1つに過ぎないが、フェンはまた、成人した子供たちのパートナーを見つけることを望む親たちの、かなり憂鬱な集まりなど、さまざまなお見合い(matchmaking)の試みも紹介している。

別の場所では、国家が主催するお見合いイヴェントで、共産党代表が集まった独身者たちに「あなたたちは未来だ」と語りかける。参加者たちは、将来のパートナーに求める条件―「従順であること(obedient)」「仕事を持っていること([has] a job)」「太りすぎていないこと(not too fa)」―を挙げ、ぎこちないアイスブレイクゲームで盛り上がる。男女が無事にカップルになると、司会者は2人に抱き合い、手を繋ぐように促し、幸せな結婚を祈る。出生率が急落する中、奥ゆかしさはもはや通用しない。

フェンはここに怒りを露わにしている。一人っ子政策、今や幻想としか思えない経済的利益のために引き離された家族、そして中国の若者の孤独を少しでも和らげようとする努力を妨げる構造への怒りだ。しかし、現代社会を生き抜くのに苦闘する人々への真の同情が、その怒りを和らげている。彼女は主に、国家の失策を繊細に批判している。それらを記録すること自体が、十分な非難なのだ。

彼女の最も直接的な政治的発言は、映画の終盤で現れる。「歴史的に、社会における男性の過剰は、国内および地政学的な不安定化を招いてきた」とスクリーン上のテキストは述べている。この映画の慎重な抑制は、登場人物たちの実体験や、より広く中国におけるデートの苦悩を浮き彫りにする上で素晴らしいものだが、この特定の点は、繊細さだけでは提供できない何かを求めている。「デーティング・ゲーム」は、不満を抱えた何百万人もの男性が社会全体に及ぼす潜在的な危険に言及しているものの、国家がどのようにしてそのような状況に陥ったのかという切実な問いを、あまり時間をかけて検証していない。

中国人男性に押し付けられる恋愛プレッシャーは深刻だ。なぜなら、恋に破れた男性は時に暴力に訴えるからだ。それは、挫折感や憤りを根源的に払拭するための手段であり、今日では、アメリカ、トルコ、イギリスなど、極右運動の旗印の下に長年結集してきたマノスフィア(男性融資志向ネットワーク)のインフルエンサーやライフスタイルの教祖によって、ソーシャルメディア上で育まれている。

この男性の憤りという生態系(ecosystem)は、中国のみならず世界中で勢力を拡大しており、ナンパ技術はその始まりに過ぎない。男性融資志向ネットワーク(マノスフィア)は確かに扱いにくく、支離滅裂な怪物だが、「デーティング・ゲーム」はその毒性に満ちた鉱脈に触れており、それと同等の深掘りを必要とする。

※ドリュー・ゴーマン:『フォーリン・ポリシー』誌版権担当副編集長。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 一昨日(2025年6月29日)、中国政府が、9月3日に実施する戦勝80周年記念の軍事パレードに、アメリカのドナルド・トランプ大統領を招待する意向であるという報道が出た。このパレードにはロシアのウラジーミル・プーティン大統領も出席する予定と報じられており、トランプが出席するということになれば、北京の地で、習近平、トランプ、プーティンの「三帝会談」が実現する可能性もある。「ヤルタ2.0」と言っても良い。戦勝80周年記念パレード開催に合わせて、上海協力機構(SCO)首脳会談も実施される予定で、こちらに参加する首脳たちも戦勝80周年記念式典に参加する予定だ。上海協力機構にはイランが参加しており、イランがどのクラスの首脳を出席させるかによるが、アメリカとイランとの間の最高首脳クラスの接触ということも考えられる。
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 アメリカと中国は、トランプ関税の発表以来、緊張関係が続いている。しかし、両国は、第二次世界大戦の戦勝国で、国連安保理(the United Nations Security Council)の常任理事国(permanent members)である。これにロシアも加わる。私は、これまでの著作で、世界構造は大きく変化しつつあり、「西側諸国(the West、ジ・ウエスト)対西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」の対立構造になっていると書いた。そうした中で、西側諸国を率いるアメリカと、西側諸国以外の国々のリーダーとなっている中国とロシアは、日本とドイツをはじめとする枢軸国(the Axis)に勝利して、国際秩序を成立させたという「共通点」を持っている。連合国(the Allied Powers)と枢軸国の色分けの地図を見てもらうと分かるが、ユーラシアの両端(ドイツと日本)と戦った中国とロシア、大西洋と太平洋の2つに面しており、大西洋からヨーロッパ、太平洋からアジアで、ドイツと日本を圧迫し、撤退させ、ロシアや中国を支援したアメリカという構図を改めて認識すべきである。
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中国はアメリカとの関係修復のために、日本に対する戦勝記念というカードを利用してきた。トランプ大統領とアメリカ政府が招待に応じることはないだろうが、トランプは何をしてくるか分からない。

 現在、日本国内で排外主義と歴史修正主義、復古主義が勢いを持っている。日本会議系・統一教会系に影響された故安倍晋三元首相支持の勢力がおり、それが国民民主党や参政党へと流れている。こうした人々は自分たちが危険な火遊びをしていることに気づかない。国内にしか目が向かないからだ。現在の世界秩序の中で、日本は「敗戦国であり、世界の秩序に逆らったという前歴を持ち、頭を下げて国際社会に復帰させてもらった存在」である。ドイツも同じだ。この枠組みを変更しようという動きが大きくなれば、「国際社会に弓を引く」という解釈をされかねない。日本は中国とロシアと国境を接している。この両国に付け入る隙を与えてはならない。慎重に、かつ低姿勢で事を進めていかねばならない。今回の中国の動きでそれを改めて認識しなければならない。

(貼り付けはじめ)

【独自】中国、閲兵式にトランプ氏を招待 9月、抗日戦勝記念で方針

6/29(日) 21:00配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/8fd7bcfe96026e4780c2431f506ca056fb98d101

 【北京共同】中国政府は9月3日に北京の天安門広場周辺で行う「抗日戦争勝利80年」記念の軍事パレード(閲兵式)にトランプ米大統領を招待する方針を固めた。また今年で創設80年の国連の総会が9月に米ニューヨークで開かれるのに合わせて、米政府が中国の習近平国家主席の訪米を提案したことも分かった。関係筋が29日、明らかにした。

 両首脳が対面で会談すれば第2次トランプ政権では初めて。軍事パレードにはロシアのプーチン大統領が参加する見通し。トランプ氏も参加すれば米中ロ首脳が共に「対日戦勝」を祝うことになり、日本にとっては大きな懸念事項になる。

 関係筋によると、トランプ氏自身は訪中に意欲を示しているため、軍事パレード参加にも前向きな姿勢だと中国側は分析している。ただルビオ米国務長官ら政権の要職に就いている多数の対中強硬派が反対するとみている。

 国連総会に合わせた習氏訪米について、中国側はメディアの前でトランプ氏と激しい口論になったウクライナのゼレンスキー大統領の二の舞いになることを警戒している。
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中国が第二次世界大戦終結80周年記念軍事パレードを9月3日に開催(China to hold military parade Sept. 3 for 80th anniv. of end of WWII)

共同通信(KYODO NEWS ) 2025年6月24日

https://english.kyodonews.net/news/2025/06/41e9f30a4b57-china-to-hold-military-parade-sept-3-for-80th-anniv-of-end-of-wwii.html#google_vignette

中国は火曜日、第二次世界大戦終結80周年を記念し、9月3日に北京の天安門広場で軍事パレードを開催すると発表した。習近平国家主席が式典で演説を行う予定だ。

国営新華社通信によると、1937年から1945年にかけての抗日戦争における勝利を記念するこのパレードでは、「無人情報システム、水中戦闘部隊、サイバー・電子戦力、極超音速兵器といった新型戦闘能力を披露する(display new-type combat capabilities such as unmanned intelligent systems, underwater combat units, cyber and electronic forces and hypersonic weapons)」という。

ロシアのウラジーミル・プーティン大統領もこの式典に出席するとみられている。習近平国家主席は5月、モスクワで行われたヨーロッパにおける第二次世界大戦終結80周年記念式典(ロシアでは戦勝記念日)と赤の広場で行われた軍事パレードに参加した。

中国は今秋、北京近郊の天津でロシアも参加する上海協力機構(the Shanghai Cooperation Organization、SOC)首脳会議を主催する予定で、加盟諸国の首脳たちは北京で行われる戦勝記念日の式典に出席する見込みだ。

この地域機構には現在、中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、インド、パキスタン、イラン、ベラルーシの10カ国が加盟している。

戦後80周年を記念する行事の一環として、中国は、日本との本格的な開戦のきっかけとなった1937年の盧溝橋事件(the Marco Polo Bridge Incident)を記念する式典を7月7日に、同じ1937年に日本軍による南京大虐殺(the massacre in Nanjing)の犠牲者を追悼する式典を12月13日に開催すると発表した。

北京市南西部の石橋(盧溝橋[Lugou Bridge]としても知られる)付近で発生した日中両軍の小競り合い(a skirmish)は、1945年に日本が連合国(the Allied Powers)に降伏するまで続く本格的な紛争(a full-scale conflict)へと発展した。

中国は、旧南京(江蘇省)で日本軍が30万人以上を虐殺したと主張している。一方、日本の歴史家たちは、中国の民間人と兵士の死者数を数万人から20万人と推定している。

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(終わり)

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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。世界を大きく見るための枠組みを提示しています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2024年は中国にとっても厳しい年となりそうだ。経済が減速し、若者たちは就職で苦労し、結果として、社会に対する幻滅や国家に対する信頼が揺らぐということになる。中国は経済運営に関して、人類史上でも類を見ないほどにうまく対応してきた。日本の戦後の成長は「奇跡の経済成長」と賞賛されてきたが、中国の経済成長は期間とその規模で日本を上回っている。

 2024年の中国に関する5つの予測という記事が出た。この記事によると、中国の2024年は暗いようだ。不動産価格の下落、若者の就職が厳しい状態、若者たちの幻滅はすでに起きており、今年も続くということだ。中国の不動産価格は下落するだろう。日本の都市部の不動産価格の高騰は中国マネーが入ってきているからであり、中国の富裕層は日本に目を向けている。中国の若者たちの厳しい現実と幻滅に中国政府は本格的に対処することになるだろう。

 中国の政治指導部で複数の閣僚の更迭が起きたが、これは、アメリカとの不適切なつながりがあったためだ。中国の最高指導層はこの点を非常に厳しく見ている。敵と不用意にかつ不適切につながっている人物を排除するということで、非常に厳しい態勢を取っている。それだけ米中関係のかじ取りが難しいということも言える。お互いに、敵対的な関係にはなりたくないが、好転するという状況にはない。ジョー・バイデン政権はウクライナとイスラエルという2つの問題を抱えて、更に中国と敵対することは不可能だ。何とか宥めながら、状況を悪化させないようにしようとしている。

 台湾の総統選挙は民進党の候補が勝利すると見られている。これで何か起きるということは米中ともに望んでいない。現状がそのまま続くことになる。台湾に関しては、バイデン政権が超党派の代表団を送り、台湾の代表もアメリカで活発に動いているようであるが、大きな変化はないだろう。アジアで何かを起こすことは、アメリカにとっても致命傷になってしまう。アジアの平穏は世界にとっても重要だ。日本も中国とは敵対的な関係にならないように配慮していく2024年になるだろう。

2024年の中国に関する5つの予測(5 Predictions for China in 2024)

-台湾に関する小さな危機から若者層で拡大する幻滅まで、来年(2024年)に中国が直面するであろう5つの問題について見ていく。

ジェイムズ・パーマー筆

2023年12月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/12/26/china-predictions-2024-taiwan-economy-xi-jinping/

2020年代は今のところ、中国の失われた数十年のように感じられる。経済は減速し、若者は幻滅して、職を失い、彼らの親は資産価値の暴落を目の当たりにしている。経済は減速し、若者たちは幻滅し、職を失い、親たちは資産価値の暴落を目の当たりにしている。2023年は北京にとって困難な1年であり、次の1年もそれほど幸せなるとは見えない。以下に、2024年の中国に関する5つの予測をまとめた。

(1)台湾の小規模な危機(A Taiwan Mini-Crisis)

台湾では1月13日に総統選挙が行われ、今年は海峡における小さな危機から始まる可能性がある。蔡英文(Tsai Ing-wen)総統の下で働き、民進党(Democratic Progressive Party、DPP)に所属する現台湾副総統、頼清徳(Lai Ching-te)が、世論調査の結果では僅差でリードしている。彼の選出は北京を激怒させるだろう。彼はより独立した台湾の擁護者であり、中国共産党 Chinese Communist Party (、CCP) に強く反対しています。

頼は、北京の最終防衛線(レッドライン)である台湾の正式な独立や中華民国を名乗ることはないと述べているが、台湾の主権は「事実(fact)」であり、北京の基準では候補者全員が独立派であることを念押ししている。

頼が勝利すれば、海軍の作戦行動や領空侵犯など、北京の積極的な動きが予想される。先週、習近平が11月にジョー・バイデン米大統領と会談した際、台湾との統一について発言したという報道があり、ワシントンはパニックに陥ったが、侵攻の可能性は極めて低い。特に中国が他の危機と闘っているときには、それは危険で困難なことだろう。

1月13日に台湾の野党・国民党(Kuomintang、KMT)が勝利したとしても、いくつかの問題が生じる可能性がある。国民党は民進党よりも親中派だが、この島の鍵を中国政府に渡すことはまずないだろう。中国当局者は、国民党の選挙勝利を台湾における中国の影響力の表れとみなして、その重要性を過大評価している可能性がある。最近の調査では、台湾の有権者の17%が中国を主な関心事だと答えたが、その2倍以上が経済を選んだ。

(2)拡大する不動産苦境(Growing Property Woes)

中国の住宅価格は何年にもわたって危険な状態に陥っていたが、2024年はついに危機の瀬戸際に立たされる年になるかもしれない。今年の不動産開発業者たちの危機は、カントリー・ガーデン(Country Garden)のような、かつては比較的安全と考えられていた企業にまで及んだ。しかし、中国政府が本当に恐れているのは住宅価格の下落だ。結局のところ、中国の家計資産の70%は不動産に投資されている。

政府はデータを改ざんし、解説者たちを脅迫して、中国経済が実際にどれだけ厳しい状況にあるのかについて人々が語るのを阻止しようとしているようだ。現在、公的な住宅価格指数と実際に市場で売れる不動産価格の間には大きな乖離がある。多くの都市では価格が少なくとも15%下落し、北京では最大30%下落している。

こうした傾向が広がるにつれ、公式の数字ですら現実をよりよく認識する必要が生じる可能性があり、そうなるとより広範囲にわたる信頼の危機を引き起こすことになるだろう。

(3)政治指導者の交代(Political Leadership Shake-ups)

2023年には、秦剛(Qin Gang)外交部長と李尚福(Li Shangfu)国防部長という2人の最高指導層の指導者たちが失脚した。両者の解任の全容は依然として不透明だが、習近平が昨年トップポストに忠実な人物を詰め込んだにもかかわらず、中国共産党の最高指導部の政治は新年を迎えても不安定なように見える。

それは驚くべきことではない。習近平は政党政治において有能であるが、彼の統治は、特に過去3年間、中国にとって酷いものとなった。義務的な崇拝によっても、彼は不安を感じたり、多くの人がこの国の現状について自分を責めていることを認識したりするのを止めることはできない。この不安は、習近平の気まぐれに生命、富、自由が左右される他の指導部にも影響を与える。こうした緊張が来年、劇的な政治な結果を生み出す可能性が高い。

派閥や協力者たちについて語られることはあっても、中国共産党の政治はある意味で組織犯罪の力学に似ている。もし習近平に対して重大な動きがあるとすれば、それは習近平が推し進め、後援してきた人々から起こるかもしれない。

(4)若者たちの幻滅(Youth Disillusionment)

先週、AP通信のデイク・カン記者は、過去3年間の中国における大衆の気分の変化を捉えた2つの微博(Weibo)メッセージを自身のアカウントで共有した。2020年6月、見知らぬ人が彼に「中国から出て行きやがれ(Get the fuck out of China)」とメッセージを送った。 今月(2023年12月)、同じアカウントから「申し訳ありません」というメッセージが届いた。

中国の若者の多くがここ数年で同じ道をたどった。国家主義的な教育は、2020年の夏に新型コロナウイルス感染症に対する明らかな勝利とともにもたらされた誇りと勝利の感情を彼らに呼び起こし、世界の他の国々が緊急体制を取る一方で、中国は比較的正常な状態に戻った。その感情は西側諸国、特にアメリカに対する敵意(hostility)の高まりと融合し、アメリカを非難するパンデミックに関する、複数の権力者共同謀議論(conspiracy theories)が定着した。

しかし、2021年と2022年の中国の新型コロナウイルス感染ゼロ政策への不満と経済危機が相まって、国民、特に若者の感覚は大きく変化している。この変化の兆候の1つは、中国の対米世論が急上昇していることである。これは、中国政府の方針に対する不満を表現する暗号化された方法である。 2024年には、2020年代の初めに既に明らかだった将来に対する悲観が更に悪化する可能性が高くなる。

民衆の間にあるナショナリズムの低下と若い新卒者たちの悲惨な経済見通しが、中国の18歳から24歳のうつ病の増加につながっているようだ。若者の失望と怒りは2022年12月に爆発し、中国は新型コロナウイルス感染ゼロ政策に反対する過去数年で最大の大規模抗議デモを経験した。来年(2024年)はそのようなことはないだろうが、虚無主義と他国への逃亡願望(そうする資力のある人々の間での)は、2024年もいわゆる逃避学(runology)を煽り続けるだろう。

10年前、中国共産党が反体制派潰しに走った主な理由の1つは、党が若者の支持を失っているという確信だった。この新たな恨みに対する政府の対応は、強制的な愛国心の誇示とネット空間の検閲強化を主張することだろう。2023年には、別のゲーム機性が終わったが、中国政府に中国の若者が望むような未来を提供する能力はほとんどない。

(5)米中関係の崩壊はないが、回復もない(No Collapse in U.S.-China Relations, but No Recovery Either)

2023年11月にサンフランシスコで行われた習近平とバイデンの首脳会談は成功し、双方はこれを勝利とみなしたようだが、長年下り坂だった関係に一時的な冷却期間をもたらした。重要なのは、北京とワシントンのハイレヴェル軍事協議が再開されたことだ。中国の国営メディアでは、反米的な言動は比較的控えめだが、それでも絶え間なく流れ続けている。

それが長続きするとは思わない方がいい。両大国間の構造的緊張は十分に激しく、何らかの新たな危機が中国をいわゆる狼戦士モードに戻すことは避けられないだろう。しかし、この態勢が2020年のような高みに達することはないだろう。中国には、しばらくの間、あまり大きな問題を起こすリスクを避けるために十分な他の問題がある。

選挙期間中、ワシントンの反中レトリックが関係を悪化させるという懸念は常にある。しかし実際のところ、アメリカの有権者たちは投票箱を前にして中国を気にしていないようだ。本当に危険なのは、中国による選挙干渉の試みかもしれない。選挙干渉は、中国系有権者の多い地域の特定の政治家を狙ったものだろうが、おそらくはドナルド・トランプ支持路線に沿ったものとなるだろう。

※ジェイムズ・パーマー:『フォーリン・ポリシー』誌副編集長。ツイッターアカウント:@BeijingPalmer

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界的な問題になって3年余りが経過している。思い返してみればその最初は中国の武漢市であった。その当時、日本でもアメリカでも武漢市での混乱の様子や人々が戸惑い慌てている様子を連日報道していた。中国政府はうまく対応していない、強権的に人々を抑圧している、中国はパンデミックでたいせいに大きな影響が出るのではないかというような主張もなされていた。その後、同じような光景が世界各地で見られた。西側諸国の感染者数や死亡者数(それぞれ1000人あたりの数)を見れば、先進諸国がうまく対応してきたと評価する人は少ないと思う。

 アメリカの外交専門誌『フォーリン・ポリシー』誌に感染拡大初期の中国の様子を現地に住む人物が回顧して書いた記事が掲載された。その内容は「中国政府がいかに効果的に新型コロナウイルス感染拡大に対応したか」というものだ。著者エリック・リーは英語で文章が書けるくらいの人物であり、おそらく中国以外の英語圏で教育を受けたものと考えられる。中国系の苗字であるが、国籍は中国ではないのではないかとも考えられる。中国の上海に在住し、子供たちは中国の公立学校で教育を受けているところから、中国でこれからも暮らすことを選択しているのだろう。彼の各内容はある程度割り引いて読まねばならないだろうとは思う。

 しかし、中国が新型コロナウイルス感染拡大に対して国家を挙げて、ある程度効果的に対応したということは認めなければならない。私は中国の対応は、「戦時態勢に向けた訓練」という意味が強かったのではないかと思う。第三次世界大戦が勃発し、中国が攻撃を受ける場合を想定しての

 中国の戦時態勢を率いるのが習近平だ。習近平がこれまでの慣例を破って、中国国家主席として3期目に突入しているが、このブログで何度も指摘しているが、戦時態勢構築のためである。中国国民は「賢帝」習近平を先頭にして戦時態勢の準備を進めているということになる。習近平の人気、支持率の高さは一般国民の意思が反映されているという解釈もある。「賢帝」という言葉はいささか過剰な高評価とも思われるが、そういう評価があるということを私たちは知っておくことも良いのだろう。民主的な選挙で選ばれた指導者が「賢帝」になり得ないということを私たちは身近で経験できているのは悲しいことだ。

(貼り付けはじめ)

習近平は「賢帝」である(Xi Jinping Is a ‘Good Emperor’)

-一人の中国の擁護者は、なぜ新型コロナウイルス感染拡大によって習近平、党、北京への信頼が高まったかを語る。

エリック・リー筆

2020年5月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/05/14/xi-jinping-good-emperor-coronavirus/

上海では、生活も仕事も徐々に平常に戻りつつある。私も同僚もオフィスに戻った。レストランやバーも再開し、入り口で体温チェックをしている。私が出資している中国最大の自転車シェアリング会社「ハローバイク」は、利用者が大流行前の70%に戻ったと報告している。中国の他の地域でも程度の差こそあれ、同じようなことが起こっている。永遠に続くと思われた悪夢は、もう終わったのかもしれない。この機会に、中国の社会と政府について私が学んだ5つのことについて話してみよう。中国は時宜を得て正しい指導者を持つという幸運に恵まれた。

中国の人々は、自分たちの政治機関を信頼している。私たちの中国に対する理解は、権威主義的一党独裁国家(authoritarian one-party state)は国民の真の信頼を維持することができないという定義に支配されてきた。しかし、そろそろそれを脇に置く時期が来ている。大自然がこれほどのインパクトを与えてくれたのだから、もはや現実は無視できない。

2020年1月23日、中国政府は武漢市を封鎖し、更に総人口5600万人の湖北省全域に人類史上最大の検疫(quarantine)を命じた。2日後、チベットを除く全ての省が最高レヴェルの健康緊急事態を宣言し、7億6000万人以上の都市住民が家に閉じこもり、必要な時だけ外出を許され、公共の場ではマスク着用が義務づけられた。ほとんどの農村も閉鎖された。当時、全国で報告された感染者は571人、死亡者は17人であり、その後の世界的な状況を考えると、むしろ少ない方であった。

この措置の大きさには中国全土が驚かされた。人口2400万人の上海で、数日前まで渋滞していた道路が一夜にして人も車もいなくなった。最初は1週間か2週間で終わるだろうと思っていた。しかし、封鎖は継続した。人々は家に留まり、通りは空いたままだった。

何億人もの人々が即座に、そしてほぼ完全に封鎖に従ったことは、私にとって本当に驚きとなった。中国に行ったことがある人なら、中国の人々がどれほど手に負えないように見えるかを知っているだろう。中国の正規の警察は非武装である。上海の街角では、交通違反の切符をめぐって警察官と口論している人を見かけることがよくある。これほど長い間、多くの人がこのような大規模な封鎖に完全に服従したのは、自発的な行動以外に説明のしようがない。確かに、誰も病気になりたくないという利己心で説明できる部分もある。しかし、教養ある若者の大群が政府の命令や警告に公然と反抗してビーチやクラブに集まり(少なくとも初期の段階では)、警察の厳しい取締りが今も続いている他の国々と比較すれば、利己心だけでは説明できないことは明らかである。政治機関の専門性と自分たちを守る能力に対する国民の極めて高度な信頼だけがこのような服従をもたらす。

このような服従は、中国の厳格な治安維持体制によるものだと主張する人もいるかもしれない。これは2つの理由で的外れである。第一に、治安部隊が有効なのは少人数の活動家に対してであり、数億人の膨大な人口が集団で不服従を選択した場合には有効にはならない。第二に、感染拡大期間中、監禁を強制する大規模な強制行動があったという報告はほとんどなく、証拠もほとんどない。

また、中国政府は国民とのコミュニケーションにも余念がない。毎日、市、県、全国的レヴェルで新しいデータが発表された。テレビでは毎時間、政府の専門家たちが新型コロナウイルスと国の対応について詳しく話していた。どの新聞も、ソーシャル・ディスタンシングを置くことの重要性について書いている。つまり、信頼は盲目的なものではなかった。

中国の市民社会は健在だ。2月初旬に中国のソーシャルメディアにどっぷり浸かっていたら、逆の結論になったかもしれない。文化大革命終結後の最大の国民的トラウマの中で、国民の怒りが渦巻いていたのだ。15年前のSARS流行後に政府が構築した、地方当局が北京に早期警報する仕組みは、コロナウイルス発生の初期段階で明らかに失敗していた。その原因は、官僚が悪い知らせを上層部に伝えることを恐れていたためと推測され、中国の政治体制に重大な欠陥があることが露呈された。12月にコロナウイルスの危険性を最初に警告し、地元警察から口止めされた武漢の医師李文亮が自らウイルスに感染し、騒動は最高潮に達した。それだけを見れば、中国のチェルノブイリの瞬間、あるいは「アラブの春」の始まりと見る向きもあろう。しかし、結果はそうではなかった。

中国中央政府が人類史上最も大規模な疫病対策に動員をかけると、国は一つにまとまった。50万人のヴォランティアが湖北省の最前線に向かい、衛生要員、検疫要員、後方支援要員として健康と生命を危険に晒しながら活動した。全国では200万人以上の国民がヴォランティアとして登録し活動した。ソーシャルメディアは、彼らの感動的なストーリーや画像で溢れ始めた。カフェやレストランでは、ビジネスが壊滅的な損失を被っているにもかかわらず、ヴォランティアに食べ物や飲み物を無料で提供していた。ある写真には、武漢のコミュニティワーカーが宅配用の薬包で肩からつま先まで覆われている様子を写したもので、話題になった。ほぼ全ての地域で24時間体制の検問所が設けられ、ヴォランティアと警備員が出入りを管理し、人々の体温をチェックした。また、多くの地域がヴォランティアを組織し、高齢者などの弱い立場の住民の生活をチェックした。14億人もの人々が、全ての道路、全ての地域、全ての村で、このようなことが起こっていることを想像してみて欲しい。犯罪はほぼ皆無だった。

インターネット上では、政府や様々な社会機関がコロナウイルスの特徴やパンデミックの進行状況について膨大な量の情報を発信した。ソーシャルメディアでも大規模な市民参加型の情報発信が行われた。今、私はCNNやBBCで、欧米諸国の専門家や当局者たちが、ウイルスが硬い表面やエアロゾル状で生存できる時間の長さなどについて話しているのを見ている。しかし、こうしたことは、2月の時点で既に何千万人もの中国のネットユーザーが毎日、毎時間話していたことだ。

政府はトップダウンで、パンデミックに対する「人民の戦争(people’s war)」を呼びかけた。そして、これはまさにボトムアップで起こったことだった。私はこれまで、中国では権威主義的な政党支配国家が市民社会の発展を許さないから市民社会が弱いのだという、多くの政治思想家の共通認識を、多少なりとも信じていた。しかし、それは、市民社会が国家とは別のもの、あるいは国家と対立するものであるという、一般的なリベラル派の定義に基づいていることに思い至った。中国の市民社会を古典的な定義、すなわちアリストテレスが「コイノニア・ポリティケ(koinonia politike)」(国家と区別されない政治的共同体)と呼んだもので見てみると、このパンデミックを通じて、おそらく世界で最も活気に満ちているように見えた。

中国では、国家の能力は市場よりも重要である。中国に限らず、最も議論が尽きないテーマの一つが、市場と国家の関係(relationship between the market and the state)である。今回は、国家が勝利し、大勝利を収めた。最も熱心な新自由主義者以外には、市場の成長とともに国家の能力を維持することが、何百万人とは言わないまでも何十万人もの死者を出すかもしれない想像を絶する破滅から中国を救ったことは極めて明白である。

1月下旬の疫病対策が始まると、中国国家は行動を開始した。中央政府は国家の医療資源を調整し、いち早く湖北省に集中させた。全国から217の医療チーム、4万2,000人以上の医療関係者が機材や物資とともに湖北省に派遣された。中央政府は、約1万7千台の人工呼吸器の湖北への輸送を調整した。その結果、流行の中心地である湖北省では、人工呼吸器が大きく不足することはなかった。

At the onset of the counter-epidemic operation in late January, the Chinese state swung into action. The central government coordinated national medical resources to quickly concentrate on Hubei province. In total, 217 medical teams with more than 42,000 medical personnel were dispatched to Hubei from around the country, along with equipment and supplies. The central government coordinated the shipment of around 17,000 ventilators to Hubei. The result was that the epicenter of the outbreak never experienced any major shortage of ventilators.

武漢では、10日間で1000床の巨大な新病院が建設された。その後、コンヴェンションセンターなどの既存の建造物を利用して、市内16カ所、計1万3000床の仮設病院を建設し、隔離された環境で軽症の患者を治療した。工業用マスクの原料を生産する国営エネルギー大手シノペックは、35日間かけて生産ラインを設計し直し、医療用マスクの生産に対応させた。自動車メーカーも組立ラインからマスクや医療用品を送り出した。マスクの生産量は1月の1日2千万枚から2月下旬には1億1600万枚になった。

それでは、これらのことを誰がやったのか? 全国から湖北に派遣された医師や看護師は、ほとんどが国営病院に勤務する国家公務員であった。病院を建設し、マスクを製造したのも国有企業である。

広大な国土にもかかわらず、この作戦は非常によく組織化されていた。北京から、中央政府が毎週、時には毎日、地方に対策を展開する。北京から、中央政府が週単位、時には日単位で地方に施策を展開し、地方政府には、その地方の事情に合わせた自由な発想で指示が出された。そして、省政府が市や県に同じように下降線を引いていく。また、その逆もある。また、その逆もしかりで、地方政府から北京へも意見が上がってくる。例えば、武漢のある学術チームは、既存の病院では、感染の恐れのある軽症の患者を多数収容することができないことを発見し、「仮設病院」のアイデアを提案した。その結果と提案を北京に送ったところ、承認され、24時間以内に実施するよう命じられた。

また、中国は国家としては経済危機の影響を和らげるために迅速に行動した。企業への直接の補助金に加え、政府は労働法の施行方法を調整し、不況時に従業員に給与を全額支払う義務を免除するようにした。その代わり、各企業は従業員を解雇せず、最低賃金と健康保険を維持するよう求められた。また、地主が国有企業の場合は、家賃の減額や免除を受けることができた。

中国共産党が中心的な役割を果たしてきた。この危機を乗り越えるにあたり、3名の人物が無名から全国的な名声を得るに至った。警告を無視した最初の内部告発者である李医師は、新型コロナウイルスで死亡した。鍾南山は、このパンデミックのための国家公衆衛生総責任者であり、アメリカのアンソニー・ファウチと同様に、対疫病作戦の表の顔として活躍している。張文宏は、上海で流行対策活動を主導してきた華山病院の医師である。経歴も地域も世代も全く異なる3人だが、2つの共通点がある。まず、全員が医師である。コロナウイルスを最初に警告し、警察に口止めされた武漢の医師がウイルスに感染したことで、騒動は最高潮に達した。

この試練の中で、中国共産党は最も目立つ存在であった。張は、私の家の2ブロック先にある病院で働いている。上海防衛のための医療チーム編成について語る彼の姿がヴィデオに収められていた。「党員は問答無用で真っ先に行け!」と叫んでいた。このヴィデオはインターネット上で大いに拡散された。

連日、武漢に向かう中国共産党の旗の前で宣誓する党員ヴォランティアの映像が中国のインターネット上に溢れ、自分の命より他人の命を優先させることを誓った。4月29日現在、前線で死亡した496人の医療従事者とヴォランティアのうち328人が党員である。

中国の習近平国家主席は「賢帝(good emperor)」だ。何年か前に、アメリカの政治学者フランシス・フクヤマが、「悪帝問題(bad emperor problem)」という言葉を作った。権威主義的な政治体制では、たとえ良い統治者が出るにしても、この体制では悪い統治者が権力を持って国を滅ぼすことを防ぐことはほとんどできないという理論的な意味である。今は、この理論を議論する時期でも場所でもない。しかし、今、私が知っていることは、習近平は「賢帝」だということだ。

1月28日、習近平は世界保健機関(WHO)のトップとの会談で、自分が伝染病対策作戦の直接の責任者であることを国民に告げた。このとき、未来はこれほど暗く、不確かなものではないと感じたが、日和見主義や責任回避はこの最高指導者の性格には存在しない。武漢と湖北を封鎖することは、非常に大きな結果をもたらすので、彼一人の決断であったろう。武漢・湖北の封鎖は、彼一人の決断であったろうが、結果的に国家を破滅から救う決断となった。彼は、政治局常務委員会(Politburo Standing Committee)の会議を主宰し、政策指示を出し、それを公表するという前代未聞の行動に出た。公の場ではマスクを着用した。17万人の第一線の政府関係者や有志とテレビ会議を行った。まさに「人民の戦争」は、全国民の前で彼自身が主導した。

習近平は強力な指導者として、特に国際的に、しかし国内的にも非難されることが多かったし、今後もそうであることは間違いない。欧米諸国のメディアや政府は、メディアや政治的異論に対する規制を強化し、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒に対する政策が物議を醸しているとして、習近平政権を攻撃している。国内の反対派の中には、北京に政治権力を集中させようとする最近の動きに反対する者もいる。しかし、私の知人や中国の政治評論家の間では、最も厳しい批判をする人たちでさえ、この一世一代の危機における彼の舵取りを認めている。私は、この後、習近平の国民的人気は急上昇すると思っている。

習近平の指導力は、政府全体の社会的信用を高めた。初期段階でミスがあり、その結果、発生時の対応が遅れたことは明らかである。そして、特に内部告発者(whistleblower)である李医師の明らかな口封じに対する正当な怒りもあった。しかし、中国がほとんど知られていないウイルスに不意を突かれたことも事実である。今、中国人は、14億人の人々が数ヶ月にわたって何が起こるかを世界に示した後にもかかわらず、多くの国の政府がパンデミックの抑制に苦心しているのを恐怖の目で見ているため、自国政府の最初の誤りは、検討と反省に値するものの、もはやそれほど許しがたいとは思えない。中国のインターネット上には、武漢に向かうヴォランティアが中国共産党の旗の前で宣誓する画像が溢れかえっていた。

私にとっても、世界中の多くの人にとっても、新型コロナウイルスは生涯で最も特別な出来事であることは間違いない。ビジネスマンとして、政治学を学ぶ者として、確かに影響を与えた。しかし、親として最も感情的な影響を受けたのはこの出来事だった。私の子どもたちは、上海の公立学校に通っている。1月27日、上海は2月に予定されていた春学期の開始を延期すると発表した。子供たちは喜んだ。しかし、その喜びは長くは続かなかった。2週間後、上海市教育局から学校再開の命令が出た。上海市教育局では、全教育課程をオンライン学習に対応させるべく、記録的な速さで準備を進めていた。その新しい教材がメールで送られてきて、プリントアウトするように言われた。2日目に自宅のインクジェットプリンターが壊れた。そこで、業務用のレーザープリンターを購入し、中学校の教科書を1000ページ以上印刷した。

全ての学校は、毎日、朝8時から夕方4時まで、中国語、数学、物理、英語と、普段の学校と同じようにパソコンの画面の前で、次々と授業を続けている。宿題は毎晩、プリントアウトしたものを写真に撮り、学校のシステムにアップロードして提出する。翌朝、採点され、訂正を求められる。子供たちが家にいるのは良いことだ。しかし、私たち親の負担は大変なものだ。子供たちにこれほど怒鳴ったことはなかった。

3月19日の朝、私は目を覚まし、約2カ月間毎朝続けてきたように、前日のコロナウイルスの数値を確認しようとスマホに手を伸ばした。その朝、中国で確認された感染者数は8万928人、累積死亡者数は3245人であることを確認した。「新たな確定症例はゼロ!」となった。

私は急いで1階に降りて、子供たちに良い知らせを伝えた。子供たちの臨時教室になっているダイニングルームに入ると、国歌の前奏が聞こえてきて、私は足を止めた。子供たちは制服姿でパソコンの前に立ち、国旗掲揚の儀式を見守っていた。私は久しぶりに涙を流した。

※エリック・リー:ヴェンチャー・キャピタリスト、政治学者。上海在住。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 21世紀に入り、2030年頃に中国は経済成長を続け、アメリカを逆転するという予測がなされるようになった。1820年当時、当時の清朝が支配した中国は世界のGDPの3分の1を占める世界最大の経済大国であった。現在は16%ほどを占め、25%ほどを占めるアメリカを追いかけている。中国の経済成長率がアメリカの経済成長率を上回り続ければ、GDPで中国がアメリカに追いつき、追い越すということになる。

gdpuschinajapan2030s511

 日本は経済成長がない状態が約30年間も続き、1968年に当時の西ドイツを抜いて世界第2位の経済大国になったものが、2011年に中国に追い抜かれて、42年ぶりに世界第3位に後退した。世界第3位でも大したものではあるが、世界のGDPに占める割合は5%ほどであり、アメリカと中国に置いて行かれている現状だ。ここから奇跡の経済成長を起こして上位2カ国に追いつくということは絶望的だ。日本は衰退国家である、ということを前提にして議論を行うことが建設的であると思う。

 中国の近現代史、特に1949年の中華人民共和国成立後の大きな流れとしては、大躍進運動(Great Leap Forward、1958-1962年)とプロレタリア文化大革命(Great Proletarian Cultural Revolution、1966-1976年)である。中国建国から1978年からの鄧小平が主導する改革開放(reform and opening-up)までの約30年のうち、半分以上の期間は動乱状況にあったが、それを起こしたのが建国の父である毛沢東であったことは皮肉なことであった。大躍進運動は、第二次五か年計画(five-year plan)の中での農産物の大増産と鉄鋼の生産量の急激な拡大を目指し、無残に失敗した。ソヴィエト連邦に依存せずに、急激な経済成長でイギリスを抜いてやろうという野心的な政策であったが、無残な失敗に終わった。鉄鋼生産に関しては、農村に粘土で釜を築いて鉄を溶かして鋼鉄を造るという「土法高炉」が用いられた。しかし、これでは実際には粗悪な鉄しか製造できなかった。農民たちはこの作業に熱狂して、自分たちの鍋や鎌を溶かして「鋼鉄」を製造した。

 中国は半導体製造で「大躍進運動」に比する動きをしていると下の論稿の著者は述べている。半導体の国産化を目指すあまりに無理をして失敗するだろうというのが結論だ。半導体製造の国産化はしかしながら重要な政策である。ウクライナ戦争勃発後、半導体不足が世界規模で発生し、日本国内ではエアコン、冷蔵庫や洗濯機など半導体を使用する家電の品不足が続いたことは記憶に新しい。半導体は現代世界においては産業の米である。半導体がなければ生活が立ち行かないということになる。更に言えば、高度な武器にも使われることを考えると、安定供給は国家安全保障にとっても重要である。世界の現状は不安定化しており、第三次世界大戦の可能性が高まっている。

 中国はこれまでの歴史の失敗を教訓にして、半導体の確保を進めるだろう。それは経済問題というよりも国家安全保障上の政治問題ということになる。

(貼り付けはじめ)

習近平の産業面での大きな野心は失敗するだろう(Xi’s Grand Industrial Ambitions Are Likely to Flop)

-疑念の遺産が中国の指導者の意思決定を妨げている。

クリストファー・マーキス筆

2022年10月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/10/14/xi-mao-campaigns-chips-industry/

習近平は、間近に迫った第20回中国共産党大会で中国の最高指導者の3期目を担当することを目指して、共産主義中国の革命家だった毛沢東の悲惨な在任期間の後、数十年にわたる指導者たちを縛ってきた規範を破っている。習近平の動きを毛沢東の再来(second coming)に譬える人は多い。毛沢東の革命スローガンを頻繁に引用して自らの戦略を正当化し、演説では毛沢東の真似をし、毛沢東の記念碑を訪れる。

しかし、毛沢東の遺産は、習近平と彼の中国統治へのアプローチを理解する上で、どのように役立つのだろうか?

毛沢東の統治の強力な側面は、政治運動と産業界の野心を組み合わせたものであった。1950年代後半、毛沢東は中国が工業化においてソヴィエト連邦の成功に早く追いつくことを望んでいた。毛沢東が主導した大躍進政策(Great Leap Forward)では、農業の労働力を工業に振り向け、鉄鋼生産の失敗から、農民たちに金属製の調理器具を溶かすことが命じられた。その結果、3年にわたり大飢饉が発生し、少なくとも3000万人が餓死した。そして、1960年代から1970年代にかけて、毛沢東が開始した文化大革命(Cultural Revolution)は敵を排除し、民衆を革命に動員し続けた。この10年間、中国は制度上の激変と混乱に見舞われた。

習近平は毛沢東のように、「力を結集して大きなことをやる(Concentrate strength to do big things)」という毛沢東スローガンで推進する産業重視のキャンペーンに執着している。習近平が最高指導者として3期目に入る中で、これらはより一般的になる可能性がある。しかし、大躍進運動の時と同様、習近平の計画は経済の現実を把握できていないように見える。その最大の例が、「メイド・イン・チャイナ2025(Made in China 2025)」プログラムで打ち出された、半導体分野で世界的リーダーを目指す中国の動きである。

10年前、私は中国を代表する半導体メーカーであるSMIC(中芯国際集成電路製造有限公司、Semiconductor Manufacturing International Corp)の社内に5カ月間滞在し、創業者のリチャード・チャンをはじめSMIC幹部たちと何度も話し合いした。彼らは、半導体生産の複雑さとグローバルな相互接続性(globally interconnected nature)を考えると、中国が低付加価値アプリケーションで使用される数世代前のチップを提供する低コストサプライヤー以外の何者でもあり得ないと認識していることを明確に示していた。中国は、グローバルな知識や供給チェイン、特に工作機械へのアクセスが限られており、これが永続的な障害となっていた。

今日、半導体製造の専門知識は、これまで以上に世界の様々な地域に拡散し、それぞれが数十年にわたる研究開発の上に、独自の長所と比較優位性(comparative advantage)を持っている。しかし、中国の半導体開発は独自性があり、自給自足(self-sufficiency)を目指しており、経済的動機よりも政治的動機、特に台湾の半導体産業の優位性によって形成されており、その指針は大きく異なっている。例えば、SMICの上海工場では、地元政府を満足させるために4000人を雇用しているが、台湾の同種の工場では1000人しか雇用していないと聞いたことがある。

最近になって、このような中国のやり方には根本的な問題があることが分かってきた。2014年に発足し、通称「ビッグファンド(Big Fund)」と呼ばれる中国集積回路産業投資ファンド(China Integrated Circuit Industry Investment Fund)は、2回の資金調達で400億ドル以上を集めた後、その大部分が失敗に終わったことが判明した。最近行われた一連の粛清では、汚職の横行が非難される中、ビッグファンドに携わった様々な金融・技術関係者たちが逮捕された。また、数十億ドルの資金を誇った多くのチップ企業が、1つもチップを製造することなく倒産している。政府の補助金や助成金が実質的に無制限である以上、資源の方向性を誤り、効果のない目標に向かったとしても不思議はない。

2015年に発表された「メイド・イン・チャイナ2025」計画では、中国は2020年までに国産化率を40%にするはずだったが、実際にはわずか16%にとどまっているのが現状だ。私が滞在していた頃、SMICは「中国トップ5の特許保有企業」と喧伝していた。しかし、特許の質ではなく量にこだわったため、10年後の現在でも、最先端メーカーから2世代(約4年の開発期間)も遅れており、私がSMICのキャンパスに住んでいた頃とほぼ同じ状態である。

習近平の半導体への取り組みは、1950年代の毛沢東の製鉄への取り組みの2020年代版だと私は考える。表向きは賢明な開発優先策だが、トップダウン式のキャンペーンの論理に導かれ、経済的現実との関連性を欠くため、失敗に終わるだろう。それでもさすがに大飢饉を引き起こすことはないだろう。アメリカをはじめとする世界各国は、中国のこの分野での成長を制限するためのチップ政策を実施する際に、中国のキャンペーン戦略の失敗を念頭に置くべきである。最終的に達成できない目標に慌てるのではなく、アメリカの指導者は多国間アプローチに焦点を当て、いかなる金銭的インセンティヴも中国での観察可能な生産と密接に関連することを確認する必要がある。

習近平が毛沢東的な人格崇拝を復活させたことはよく知られているが、それが権力への渇望によるものである以上に、なぜ彼が毛沢東以後の指導者の規範を覆す必要を感じているのかについては、あまり合意が得られていない。毛沢東のもう1つの主要な政治運動が、いくつかのヒントを与えてくれる。

学者たちは、文化大革命として知られる10年にわたる国家公認の暴力が、中国の民衆に永続的な悪影響を与えたことを明らかにしている。政治学や経済学の研究によると、文化大革命を経験して、一般市民の間の信頼感が著しく低下し、制度、特に政治指導者に対する尊敬の念が薄れることが明らかになっている。

クンユアン・チャオとの共同研究で、企業経営者にも同じようなパターンがあることが分かった。文化大革命の経験者たちは、賄賂などの犯罪に手を染め、借金を踏み倒し、海外に移住して中国からの脱出を目指す傾向が強い。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のヨンイ・ソンは、「文化大革命は人を獣に変えてしまった」と述べている。不動産開発業者のフアン・ヌーボーは、「文化大革命は、それを経験した人々を "悪魔(鬼)"にした」と述懐している。

習近平の国内・国際規範に対する姿勢には、こうした信頼の欠如が見て取れる。習近平は文化大革命の産物である。革命家一族の子孫で、1962年に粛清された父親は文化大革命で何年も獄中にいたが、習近平は地方に追放された。陝西省の農村で7年間暮らし、15歳で正規の教育を受けた後、1975年から1979年まで北京に戻って清華大学に「労働者・農民・学生」として通うまで、事実上、教育を受けることはなかった。中国のプロパガンダは、彼がこの時期に学んだとされる一般労働者への共感を強調するが、真実はもっと暗いのかもしれない。習近平は2000年、中国人ジャーナリストのチェン・ペンとの対談で、そのことをほのめかしている。彼は次のように語った。「権力とのつながりがない人々は常にこれらのことを神秘的で新奇なものであるとみている。しかし、私が見ているのは、権力、花、栄光、喝采といった表面的なものだけではない。私は、牛舎(紅衛兵が使用した即席の牢獄の呼称)や、人々がいかに熱くなったり冷たくなったりするかを見ている」。

従って、彼が継承に関する事前の中国の規範や法律を無視したことは驚くことではないのだろうか? 中国が世界貿易機関から香港の統治に至るまで、国際的な合意を無視するのは当然だろうか? そして、中国は習近平に逆らうと他国の国民を拉致して投獄するのか?

第20回党大会後、前例のない3期目に突入した習近平は、その地位を確保し、新型コロナウイルス感染拡大対策をはじめとする強硬な政策手法も和らぐのではないかと予想するアナリストたちもいる。しかし、文化大革命の影響の深さを考えると、一般的には逆で、党大会後、習近平は更に奮起し、これまで明らかに習近平が志向してきた毛沢東戦略をさらに強化する可能性がある。

横断的歴史比較(cross-historical comparisons)には、常に何事も鵜吞みにせず、疑いの目を持つことが重要だ。しかし、毛沢東のキャンペーンが習近平の政治とガヴァナンスに与えた影響から学ぶべきことは多いし、それは中国が経済的な問題を抱え続け、それに伴って西側諸国との緊張がますます高まることを予感させる。

※クリストファー・マーキス:ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネススクール中国経営学担当シンイ記念教授。著書に『毛沢東と市場:中国企業の共産主義的ルーツ(Mao and Markets: The Communist Roots of Chinese Enterprise)』がある。

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 古村治彦です。

 先週末に中国共産党第20回党大会と第20期中国共産党中央委員会第1回総会(1中総会)が閉幕した。政治局員24名と政治局常務委員7名が発表された。中国国内政治で大きな力を持っていた中国共産主義青年団(共青団)派は追い落とされた。胡春華国務院副総理は政治局員にも残れずに降格となった。第6世代(1960年代生まれ)と共青団派のプリンスが失脚したということになる。政治局常務委員、政治局員はほぼ習近平派に独占された形になる。
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 今回の人事では、金融や銀行業務に精通した人物ではなく、航空、宇宙、軍事といった部門の優秀なテクノクラートたちが引き上げられ、政治局員(24名)に抜擢された。このことについては本ブログで既にご紹介した。下にリンクを張っているので是非お読みいただきたい。

※「第20回中国共産党大会のキーワードは「宇宙クラブ」 2022年9月15日」↓

http://suinikki.blog.jp/archives/86587517.html

※「習近平体制の延長:フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領を彷彿とさせる戦争対応体制の構築ではないか 2022年9月11日」↓

http://suinikki.blog.jp/archives/86579263.html

 中国は国外の動乱、混乱に備える体制を整えつつある。具体的にはウクライナ戦争から端を発する第三次世界大戦とも言える状況に備えるということだ。ウクライナ戦争で世界は既に戦時状況になっている。物価高や食料不足、エネルギー不足の生活への影響は深刻さを増している。習近平の第3期政権は国内外の難題に対処するために構築された戦時体制政権である。

 私たちが危惧するのは、アメリカや日本などにいる、短慮、思慮不足、好戦的な、戦争煽動家たちが「ウクライナの次は台湾だ。中国が台湾を攻撃する」「アメリカと中国が戦う」などという根拠のない誇大妄想的な言辞を振り回し、状況を悪化させ、最悪の結果を引き起こすことだ。中国が今台湾に侵攻するメリットはない。既に着々と経済的な統合を進めている。私たちが恐れるべきはアジア地域での戦争だ。戦争を起こしてはいけない。安倍晋三元首相が銃撃によって暗殺され、日本の好戦的なグループは頭目を失っている状態だ。日本の地理的な位置、アメリカとの関係を考えるならば、日本は実は非常に危うい立場にある。「日本は何があっても戦争をしない」という立場を鮮明にすることが何よりも重要だ。

 話が逸れた。中国にとって、2042年の「アヘン戦争後の屈辱の南京条約締結200年」、2049年の「中華人民共和国建国100年」の2040年代に「中華王国(Middle Kingdom)」として、あらゆる面で世界最大最高の国家に復帰することが何よりも重要だ。その過程で台湾との関係はますます深まって実質的な統一、統合は果たされるだろうし、国家体制もまた変化していくことだろう。私たちは今時代の分岐点、大変化の前の混乱の中にいる。

(貼り付けはじめ)

中国共産党第20回党大会:習近平は圧倒的な人事権を行使するが、経済復活の糸口は見つかっていない(The 20th Party Congress: Xi Jinping Exerts Overwhelming Control Over Personnel, but Offers No Clues on Reviving the Economy)

ウィリー・ウー=ラップ・ラム(林和立)筆

2022年10月24日

『チャイナ・ブリーフ』(ジェイムズタウン財団)

https://jamestown.org/program/the-20th-party-congress-xi-jinping-exerts-overwhelming-control-over-personnel-but-offers-no-clues-on-reviving-the-economy/

習近平・中国共産党中央委員会総書記は、先日閉幕した第20回党大会と第20期中央委員会第1回総会(1中総会)で習近平総書記が圧倒的な勝利を収めた。習近平が選んだ政治局常務委員たちは、純粋な支持者ばかりだが、イデオロギーやプロパガンダ、「党建設(party construction)」などに精通した官僚が多く、金融や経済に精通した実利的なテクノクラートはほぼ皆無に等しい構成となった。その結果、「新型コロナウイルスゼロ」をはじめとする習近平の保守的で準毛沢東主義的な政策の多くは、当分の間、継続されることになりそうだ。

●習近平派のために他派閥が一掃された

中国共産党の中枢である新しい政治局常務委員会(Politburo Standing Committee、PBSC)では、習近平は引き続き中央委員会総書記と中央軍事委員会主席を兼任する。他の6人の政治局常務委員は習近平派とされる。2002年から2007年まで浙江省で習近平の下で働いた上海市党委書記の李強(Li Qiang)が国務院総理に就任する予定だ。その他、最高意思決定機関には現職の政治局常務委員を含む習近平の盟友が就任する。全国人民代表大会(National People’s Congress)常務委員長に就任する中央紀律検査委員会(Central Commission for Discipline Inspection、CCDI)書記の趙楽際(Zhao Leji)、中国人民政治協商会議(Chinese People’s Political Consultative Conference)主席に就任する思想家の王滬寧(Wang Huning)らが名を連ねる。李強のほか、習近平の子飼いの3人が昇進した。北京市党委書記の蔡奇(Cai Qi)は中国共産党中央書記処書記に、広東省党委書記の李希(Li Xi)は次期中央紀律検査委員会に就任する。中国共産党中央弁公庁(CCP General Office)主任で習近平の秘書長を務める丁薛祥(丁薛祥)は常務副総理に就任予定だ(新華網:10月23日;明報:10月23日;日経アジア:10月23日)。

次期政治局を構成する24人の委員と次期中央委員会を構成する205人のうち、習近平に忠誠を誓う人々が大多数を占めている(新華社・ウェイボ:10月23日)。13人の一般政治局員の引退によって、習近平には習近平派閥の人物たちを系政治局員に登用する機会を与えた。全中央委員205人のうち133人(65%)が新たに就任したため、習近平は反主流派グループや他派閥のメンバーを排除する余地が出た(新華網:10月22日)。新政治局委員24人のほぼ全てが習近平派閥だ(Radio Free Asia:10月23日)。新疆ウイグル自治区の馬興瑞(Ma Xingrui)党委書記は、中国航天科技公司(China Aerospace Science and Technology Corporation、CASC)の元総経理で、中国国家宇宙局局長を務めた。遼寧省党委書記である張国清(Zhang Guoqing)は、中国北方工業集団公司(China North Industries Group Corporation)の副社長を務めた。浙江省党委書記の袁家军(Yuan Jiajun)は中国航天科技公司の経営トップを務めた。山東省党委書記の李干杰著名な核物理学者である(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:10月23日)。

次期政治局には、中国共産党の他の2大派閥である共産主義青年団(Communist Youth League Faction、CYLF)と上海閥(Shanghai Gang)の代表はいない。元広東省党委書記で元共産主義青年団第一書記の胡春華(Hu Chunhua)副総理は、政治局の一般委員の座と常務副総理に就くと予想されていた。しかし、胡は、政治局常務委員会はおろか、政治局にも残れなかった(Zaobao.com:10月23日;連合日報:10月23日)。この「一党独大(yidangduda、only one party running the show)」という異常な現象は、最高指導者である習近平の隣に座っていた、共青団派の指導者で胡錦涛元前総書記が、土曜日の第20回党大会閉会式の半分ほどで無残にも引きずり出されたことに起因していると言われている(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:10月22日)。新華社通信は、この出来事について胡錦濤が急病になったからだと報じた。しかし、オブザーヴァーたちの間では、胡錦濤は新しい中央委員会と政治局常務委員会の名簿に公然と不満を表明しており、それは自分の長い間守ってきた派閥の傍流化を示すものであったからだというのが一致した見方である。文化大革命以来の主要な党大会では、胡錦濤のような公然の反対表明は珍しい(ジャパン・タイムズ:10月23日;Hong Kong Free Press:10月22日)。

習近平のもう一つの大きな業績は、中国共産党綱領を改正し、「新時代の中国の特色ある社会主義に関する習近平思想(Xi Jinping Thought on socialism with Chinese characteristics for a new era)」を今後の党と国家の指導原理として明記したことである。これは「2つの確立(two establishes、两个确定、Liang ge queli)の1つである。もう1つの「確立」は、習近平が「中央党当局の核心であり全党の核心(core of the central party authorities and the core of the entire party)」であり続けることで、実質的に毛沢東主席と同じ地位に昇格させることだ(Gov.cn:10月22日;人民日報:10月22日)。

●中国式近代化(Chinese-style Modernization)

習近平思想の重要な要素は、いわゆる「中国式近代化(Chinese-style modernization、中国式现代化、zhongguoshi xiandaihua)であり、習近平は10月16日の党大会冒頭報告で初めて提起した(新華社:10月16日)。事実上、中国式近代化とは、最高指導者である習近平が21世紀の中国の状況に適したと判断したマルクス主義・社会主義の教義のみを全ての政策決定の基盤とすることを意味する。習近平自身が示した定義によれば、「中国式現代化」は、党の厳格な指導、中国式社会主義的教訓の堅持、「質の高い発展(high-quality development)」の実現、人民の「精神世界(spiritual world)」の充実、共同富裕(common prosperity)の達成、人間と自然のバランスの追求、世界平和と「全人類運命共同体(common destiny for all mankind)」の目標の推進といった要素から構成される(VOA Chinese,:10月20日;人民日報:10月19日)。

習近平の大会報告では、鄧小平の「改革開放政策(reform and open door policy)」について4回言及されているが、習近平は経済発展や国際市場の開放よりも、国家の安全や内外の敵との「争斗(waging struggles、douzheng)」を優先させたことが明らかである。今後の政策では、特に半導体やAIなどの先端分野における自立を意味する「内部循環(internal circulation)」、公企業と民間企業の両方を厳しく管理することを含む経済の党管理、共同富裕の推進、アメリカとその同盟諸国の「反中(anti-China)」政策がもたらす挑戦への言及と見られる「複雑で困難な世界情勢(complex and challenging global situation)」への国民の備えといった、準毛沢東主義的、閉鎖主義的価値観(autarkist values)に重きが置かれるだろう(BBC Chinese :10月16日)。

外交については、習近平チームは、特に中国の台湾再統合と世界のルール設定者としての「中央の王国(Middle Kingdom)」の地位の回復に関連して、ナショナリズムを引き続き昂揚させるだろう。2049年の中華人民共和国建国100周年までに、アメリカとの差を縮め、世界最強の国にすることも、第20回大会以降の中国共産党の優先課題である。改訂された中国共産党綱領では、北京が「台湾独立に断固として反対し、阻止する」ことを初めて指摘した。これに対し、旧綱領は「中国共産党は民族統一を実現する責任がある」とだけ述べていた(Chinanews.com:10月24日;News Radio French International:10月23日)。

●外交・軍事政策(Foreign and Military Policy)

習近平による閉会演説を含む第20回党大会期間中、アメリカに対する言及はなかった。しかし、最高指導者の習近平と幹部たちの発言は、アメリカ主導の「反中国(anti-China)」連合との全面的な競争激化を意図したものであったように思われる。習近平は繰り返し、党大会の出席者たちと全ての中国人に、他国の「覇権主義と虐め(hegemonism and bullying)」に対抗することを呼びかけ、「闘争を行う勇気と闘争に長けること(rave enough to wage struggle, and to be good at waging struggle)」を促した(NPC.gov.cn:10月24日;News.cn:10月18日)。国際ビジネスや中国人と欧米人の通常の人的交流の分野でも、習近平は中国当局が経済的配慮よりも国家の安全保障を優先させることを示唆している。習近平と新しい政治局は、軍事的近代化に対してより多くの資源を投入する可能性があり、台湾や南シナ海で「熱い戦争(hot war)」が勃発する可能性が高まる(VOA Chinese:10月18日;Deutsche Welle Chinese:10月16日)。

習近平は、外交政策の遂行を最新鋭の軍に大きく依存していることを反映し、「68歳定年」の常識を破り、中国共産党中央軍事委員会副主席の張又侠(hang Youxia)を更に1期5年続投させた。張副主席は1950年生まれで、今年退任するものと思われていた。しかし、張副主席の父親と習近平の父親が国共内戦以来の親しい間柄であったことから、張は最高司令官である習近平から全幅の信頼を寄せられている。7人の委員からなる中国共産党中央軍事委員会の新任将官2人である、何衛東(He Weidong、1957年生まれ)副主席、苗華(Miao Hua、1955年生まれ)委員は、福建省の第31野戦軍や、福建省と浙江省の南京軍区(現在は消滅)にいた経験がある。習近平は1985年から2007年まで、福建省と浙江省で様々な役職に就いていた時に、この2人の将官と初めて知り合った可能性が高い。何副主席は台湾を管轄する東部戦区司令部の元司令官であり、苗華はヴェテランの政治委員(political commissar)で、現在は中国共産党中央軍事委員会の政治工作部部長を務めている(Businesstoday.com.tw:10月23日;サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:10月23日)。

他の新委員は、軍の規律と腐敗防止を担当する張勝民(Zhang Shengmin、1958年生まれ)、中国人民解放軍陸軍司令員を務め、統合参謀本部参謀総長への就任が予想されている劉振立(Liu Zhenli、1964年生まれ)、航空宇宙技術に優れ、現職の中国共産党中央軍事委員会装備開発部長である李尚福(Li Shangfu、1958年生まれ)の3人だ(Headline News. HK:10月24日;Breakingdefense.com:10月17日)。

●結論(Conclusion)

社会主義諸国の主要な党大会や会議の多くは具体的な目標への確かな道筋を示すよりも、大言壮語や誓約が多いにもかかわらず、習近平をはじめとする指導者たちの報告が行われた第20回党大会では、「中国式近代化(Chinese-style modernization)」、「中華民族の偉大な復興(the great renaissance of the Chinese nation)」、「闘争の敢行(daring to wage struggles)」など、ほとんど理論化された概念ばかりが強調されている。国家統計局が2022年第3四半期のGDP成長率を3.9%と発表したばかりだが、世界銀行など独立系の研究者やシンクタンクの多くは、中国経済の年間成長率を約2.8%かそれ以下と予想している(Scio.gov.cn:10月24日;CNBC.com:10月18日)。この4カ月間、経済の指揮を執った退任する李克強(Li Keqiang)総理は、外資導入の拡大と新型コロナウイルス感染対応体制の合理化を求め、習主席の訓示に反している(China Brief:7月18日)。しかし、李総理をはじめとする国務院のテクノクラートが推奨する唯一の「切り札(trump card)」は、経済成長を引き上げるためにインフラプロジェクトへの刺激策を強化することだ(Rthk.hk:8月30日;English.gov.cn:7月29日 )。しかし、政府投資は古くからある手段であり、過剰なレバレッジ、無駄、支出に対するリターンの減少を招きやすい。習近平とその取り巻きは今大会での圧勝を喜んでいるが、特に最近アメリカとその同盟諸国から中国に科されている厳しい制裁とボイコットを考えると、彼らは国民と国際社会に対して中国経済の立て直しが可能であると納得させなければならない。

党大会の人事で気になるのは、欧米で教育を受け、市場原理を重視する幹部が次々と退任していることだ。引退した李克強首相の最後の発言の中に、「黄河と長江の水は逆流しない(the waters of the Yellow and Yangtze River won’t flow backwards)」という言葉があった。これは、習近平が行った毛沢東主義復古(restoration)を叱責したものと見られている。この他、習近平の側近だったハーヴァード大学出身の経済学者の劉鶴(Liu He)副首相、アメリカの大学の経済学教授だった中国人民銀行総裁の易綱(Yi Gang)、銀行監督官庁トップの郭樹清(Guo Shuqing)らが欧米諸国で仕事を経験した経歴のある幹部たちが退任することが明らかになった。

新中央委員会メンバー表から、劉鶴に代わる経済担当副首相の候補は国家発展改革委員会主任の何立峰(He Lifeng)が確実視されている(新華網:10月22日)。しかし、何立峰が習近平の信頼を得たのは、主に福建省で長年一緒に仕事をしたことが理由である。何力峰には改革派としての資質がほとんどない。習近平は、数字に強いテクノクラートよりも、プロフェッショナルな党員を好むため、中央委員会と政治局には経済や金融の専門家が少ないという事情もある。この状況を改善し、新型コロナウイルスゼロ体制から厳しい党による経済統制まで、硬直したイデオロギー的教条を形だけ譲歩しない限り、中国が2049年までに超大国の地位を獲得するという夢を実現できるとは、中国と海外の観測筋は信じてくれないだろう。

※ウィリー・ウー=ラップ・ラム(林和立)博士:ジェイムズタウン財団上級研究員、『チャイナ・ブリーフ』定期寄稿者。香港中文大学歴史学部・国際政治経済プログラム修士課程非常勤講師を務める。中国に関する著書が6冊あり、代表作に『習近平時代の中国政治(Chinese Politics in the Era of Xi Jinping)』(2015年)がある。最新作は『中国の未来のための戦い(The Fight for China’s Future)』(ルートレッジ社、2020年)である。

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(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 来週に第20回中国共産党大会が予定されている。ここで新しい人事が行われ、習近平国家主席の続投、第7世代(1970年代生まれ)が指導部層に多く入ってくると見られている。今回の共産党大会は非常に重要な大会ということになる。

 中国人民解放軍(People’s Liberation Army)は1927年8月1日の南昌蜂起が健軍の日とされており、軍の徽章には「八一」の文字が入っている。人民解放軍を統括(領導)するのは中華人民共和国中央軍事委員会(Central Military Commission of the People’s Republic of China)だ。中央軍事委員会には中華人民共和国中央軍事委員会と中国共産党中央軍事委員会(Central Military Commission of the Communist Party of China)の2種類が存在するが、メンバーと役職は全く一緒なので、実質的には中国共産党中央軍事委員会が中国人民解放軍を統括する。中央軍事委員会主席は国家主席である習近平が務め、副主席2名と委員は中国人民解放軍の将官から出ている。中国人民解放軍は中国共産党に従属している形となっている。

 私たちは報道で「中国の習近平国家主席」という言葉を耳にする。「中国で一番偉いのは習近平なのだ」ということは分かっている。しかし、どれくらい偉いかということは分かっていない。習近平は中国国家主席(アメリカの大統領に相当する国家元首)、中国共産党中央委員会総書記(中国共産党の最高幹部、党首に相当)、中華人民共和国中央軍事委員会主席(これはそのまま中国共産党中央軍事委員会主席)を務めている。習近平は中国全体を領導する中国共産党のトップであり、中国人民解放軍のトップであり、中国という国家のトップ(行政府の国務院を従えている)ということになる。

 最近になって、中国人民解放軍がクーデターを仕掛けて習近平国家主席を追い落とそうとしたという噂が流れた。法輪功という中国で禁止されている宗教に関連するメディアが出所で、それをインドのメディアが報じたことで話が大きくなったようだ。しかし、以下の記事にあるように、これは「中国の政治について知識がないために流れた噂話で、それが大きくなった」ということのようだ。

 中国人民解放軍がクーデターを起こそうと思えば、これまででもいくらでも機会があった。しかし、中国人民解放軍はクーデターを起こしたことはなく、中国共産党に従ってきた。大躍進運動や文化大革命といった国家的な動乱状態にあっても、動きを自重してきた。それは、国共内戦を指導した鄧小平以来の我慢強さであり、「軍が軽挙妄動すれば国家が乱れて外患を誘致することになる」ということが分かっているからだ。

 人間は自分の希望に沿うような形で将来を予測してしまうことが多い。また、ベクトルのかかった情報を流して自分たちに有利なように状況を作ろうとする。どのようなベクトルがかかっているのか、誰が利益を得るのか、ということを考えながら情報報に接するだけで、根拠のないうわさ話に振り回されることはだいぶ少なくなる。

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誤ったクーデターの噂が中国政治について明らかにすること(What a False Coup Rumor Reveals About Chinese Politics)

-根拠のない物語がすぐに拡散したが、これは北京の内部での動きについて、どれほど多くの世界の人々が誤解しているかを示している。

ジェイムズ・パーマー筆

2022年9月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/09/28/china-false-coup-rumor-viral-politics/

今週のハイライト:クーデターについての根拠のない噂は北京政治に関する誤解を荒木かにしている。ウクライナの対ロシア侵攻についての成功が台湾でいくつかの疑問を生じさせている。中国の国連大使が領土の一体性について曖昧な声明を発した。

●クーデターに関する誤った噂話が拡散(False Rumor About Coup Goes Viral)

先週末、李橋銘上将が習近平国家主席に対してクーデターを起こしたという、まったく裏付けのない中国に関する主張が、中国の亡命者たちの間で、そしてインドのメディアにも大々的に流布された。習近平は火曜日、公の場に姿を現し、噂を一掃した。もちろんクーデターの話は嘘だったが、一時的に多くの人に伝わり、著名人までもが噂を繰り返した。

習近平国家主席が中国共産党内でクーデターに直面する可能性は全くないとは言えない。いつか遭遇するかもしれない。中国の経済や政策の失敗は拡大し、中国のエリートたちの不満も高まっている。しかし、先週末のような根拠のない主張は、中国国外でも頻繁に見受けられる。このような噂がどのように広まり、なぜ広まったのかを考えると、中国政治の中枢についていかに知られていないか、そしていかに酷い誤解を受けているかが分かる。

今回のクーデターの噂はよくあるパターンに沿ったものだった。中国の亡命者たちの反中国共産党的な部分は、北京の内部での陰謀の噂話でしばしば騒がれるが、そのほとんどは何も根拠がない。ソーシャルメディアは、かつてはマイナーな亡命新聞やゴシップサークルの間でしか共有されなかった話を増幅させる。今回のケースでは、中国で飛行機が欠航という反体制派ジャーナリストの主張が噂の発端となった。クーデターの前兆は中国の宣伝機関の掌握ということになるだろう。

1999年に中国で禁止された、国際的な新宗教運動である法輪功(Falun Gong)は陰謀論的な話を共有する傾向があり、通常、こうした噂を広める重要な役割を担っている。法輪功系のジャーナリストは9月23日、この噂を取り上げ、何度もツイートした。そこから、インドのメディア、特に国粋主義的なチャンネルであるインドTVと一部の政治家がこの話を増幅させた。しかし、中国に詳しい学者たちが繰り返し反論したため、やがてこの噂は沈静化した。

それでは、今回の噂は中国の政治について何を示しているのだろうか?

第一に中国共産党の厳しい情報統制が噂を呼び起こす。先週末のクーデターの証拠とされたのは、習近平が9月22日に中央アジアから帰国して以来、公の場に姿を現していないことだ。習近平も人間であり、インフルエンザにかかったり、休んだりする。しかし、中国共産党は指導部層を非常に大切にしているため、病気や休暇を公式に認める訳にはいかない。もしそのようなことを認めると、指導者たちは弱者ではなく、努力し、英雄的であるというイメージが崩れてしまう。

このような警戒心の強さは、中国共産党の地下運動としての歴史の名残であり、中国の官民の機関に共通する特徴である。中国共産党の指導部は部外者と情報を共有しないので、彼らの私生活を調査することは、中国で深刻な問題を引き起こす近道となる。習近平とその側近は、海外で過ごした後、単に隔離されていた可能性もある。しかし、政府がそのようなことを発表する訳にはいかない。

世界の大多数の人々は中国の日常的な現実を知らない。飛行機が欠航になったというニューズについても、新型コロナウイルス・ゼロ体制で中国の飛行機が頻繁に欠航になっていることは、中国の人々がよく知っていることなので怪しく思えたかもしれない。一方、全長80キロ(ほぼ50マイル)の車列が北京を取り囲んだという主張は、首都に住む数千万人の住民が誰もその写真を投稿しないことでそれが本当ではないと信じる必要があった。中国の検閲は厳しいが、全てを包含している訳ではない。

中国以外の世界における中国での生活に関する知識と実際の生活との差は新型コロナウイルス感染拡大期間の孤立によって大きくなっている。注目すべきは、中国に特派員を置いているインドのメディアが、噂を増幅させるのではなく、むしろ弱めたことである。

最後に、軍隊は中国を救うことはないだろう。中国におけるクーデターに関する噂は、ほとんどの場合、軍部が権力を掌握することに焦点が当てられている。しかし、それはレーニン主義国家における権力の正統性と中国共産党が軍を強く支配していることについて根本的に誤解している。旧ソ連でも中華人民共和国でも、軍隊が国家の重要な部分であるにしても権力闘争を主導したことはない。反習近平運動を想定した場合、軍隊は宮廷の護衛はしていても、クーデターを主導するのは中国共産党のメンバー自身であろう。

しかし、部外者が軍に注目するのは、トルコからタイに至るまで、独裁国家の多くは軍が権力を握り、自らを国家の救世主と見せかけてきた歴史があるからだ。習近平と中国共産党はまた、中国において真の野党権力の源泉となりうる他のあらゆる組織を効果的に破壊してきた。軍事クーデターはあり得ないが、中国共産党の崩壊を願う人々には、それしか残されていないのかもしれない。

●私たちが追いかけているもの(What We’re Following)

台湾は戦えるのか? ウクライナがロシアとの闘いで防衛に成功した一方で、台湾の人々は自分たちの軍隊が任務に耐えられないのではないか、中国の侵略によって、台湾は2022年よりも2014年のウクライナのようになるのではないかと懸念している。台湾は重武装だが、2020年にジャーナリストのポール・ファンが『フォーリン・ポリシー』誌がに寄稿した記事の中にあるように、徴兵制をわずか4カ月に短縮したことで軍隊を弱体化した。

しかし、韓国やイスラエルのように、敵対的な隣国を前にして採用している軍事国家(garrison state)という考えに、台湾の人々のほとんどは熱狂していない。しかし、台湾は、島国(island state status)でない国々とは事情が異なる。台湾の自由は、おそらく海岸や海上で勝ち負けが決まるため、防衛側に有利となる。

中国の曖昧な国連安保理声明。ウクライナ占領地でのロシアによる虚偽の住民投票を受け、中国の張軍国連大使は国連安保理で声明を発表した。「ウクライナ問題をどのように把握し、どのように処理するかについて私たちの立場と提案は一貫しており明確である。それは全ての国家の主権と領土の一体性が尊重されるべきであるということである」。ここで疑問が生じる。中国が言っているのは、誰のための領土の一体性なのか?

張大使の発言は、国民投票の正当性を前提にすれば、親ウクライナ的とも親ロシア的とも解釈されかねない。この発言は、戦争中、中国がしばしば平和や国際秩序に言及し、どちらかを非難したり支持したりすることはなかった典型的なものである。一方、中国の国営メディアや検閲機関は、親ロシア的に傾いている。

●テクノロジーとビジネス(Tech and Business)

スパイの告発。中国は、アメリカ国家安全保障局(U.S. National Security Agency)が政府出資の重要な大学の機密人事情報にアクセスしたと非難している。確かにその可能性はあるが、攻撃者がアメリカ英語のキーボードを使用していたなど、いくつかの証拠は決定的なものではないようだ。

興味深いことに、ハッカーはアメリカ東部標準時の午後4時に退社し、週末は仕事をしていないという証拠がある。これは、中国政府のハッカーを特定する際によく使われる方法(例えば、最近行われたフェイスブックの影響力工作に関する調査)で、中国政府の職員が享受している2時間の昼休みを思い起こさせるものだ。

不動産業の資金難。カイシン(Caixin)の調査によると、地方政府は不動産市場の崩壊によって生じた資金調達の穴をあらゆる手段で埋めようと必死になっている。地方債を販売する地方政府の資金調達機関が、自ら事業に乗り出し、政府から土地を購入するよう圧力をかけられている。地方財政収入に占める不動産売買の割合は、税金を除いて計算すると、2000年にはわずか5.9%だったが、2021年には42%を占めるようになった。

しかし、このギャップを地方自治体の資金調達手段が埋められるものではない。国が値下がりを容認するのを待っている買い手の需要がないのだ。2020年以前にも、地方政府の資金調達車は債務危機の発生に寄与した。

弱い人民元(人民元安)、弱気な予測。中国人民銀行による下支え努力にもかかわらず、人民元は下落を続け、月曜日には対ドルで28ヶ月ぶりの安値をつけた。来月開催される中国共産党第20回全国代表大会を前に、強い人民元(人民元高)はアメリカとの経済力の均衡を意味すると一般的に考えられているため、弱い減(人民元安)は恥ずべき事態となりかねない。

更に悪いことに、来年の中国経済の見通しが暗澹たるものになりそうだ。世界銀行は4月に発表したGDP成長率の予測を5%からわずか2.8%に引き下げ、他の金融機関もこの動きに追随している。中国のような発展途上の経済では、これは国民にとって景気後退のように感じられる。政府が設定した5.5%の成長目標に達しないということは失敗ということになる。

※ジェイムズ・パーマー:『フォーリン・ポリシー』誌副編集長。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今年秋の第20回中国共産党大会で習近平(Xi Jinping、1953年-、69歳)中国国家主席は2期10年務めた最高権力者の座から降りることなく、更に1期5年、権力の座にとどまり続けるという話になっている。そうなると10年ごとに若い世代に最高指導部を引き継ぐという江沢民(Jiang Zemin、1926年-、95歳)と胡錦濤(Hu Jintao、1942年-、79歳)の時に行われた習慣が崩れることになる。ポスト習近平時代の中心と目されていた中国共産党指導部第6世代(1960年代生まれ)から最高指導者(国家主席・中国共産党総書記、中国中央軍事委員会主席を兼ねる)人物は出ないということになる。そして、次の第7世代(1970年代)から最高指導者が出る可能性が取り沙汰されている。最高指導者を出せなかった第6世代は「悲劇の世代」ということになりそうだ。
 習近平がこれから更に2期10年最高指導者を務めるならば、第6世代から最高指導者は出ないが、1期5年で退けば、1期5年を第6世代からの最高指導者が務める可能性がある。第6世代のトップランナーは胡春華(Hu Chunhua、1963年-、59歳)副首相である。最近になって、習近平が胡春華を重用し始めているという報道もある。習近平が3期目の国家主席となる場合に、胡春華を政治局常務委員に引き上げ、首相のポストを与える可能性もある。そして、習近平が胡春華を最高指導者に引き上げて自身は院政を敷くという可能性もある。現在の政治局員序列第2位の李克強(Li Keqiang、1955年-、67歳)首相は全国人民代表大会常務委員長か中国政治協商会議主席に転身するということも考えられる。江沢民、胡錦涛の時とは違ったイレギュラーな人事となるが、これであれば第6世代の悲劇性を少しは薄めることもできるだろう。
 習近平は中国共産党中央委員会主席(Chairman of the Central Committee of the Chinese Communist Party)の職位を復活させ、この地位に就くという観測も出ている。党主席は権力が集中するポジションであり、1945年に設置され、毛沢東が亡くなる1976年までその地位に就いていた。その後は1976年から1981年まで華国鋒(Hua Guofeng、1921-2008年、87歳没)、1981年から1982年まで胡耀邦(Hu Yaobang、1915-1989年、73歳没)が就任したが、権力集中への反省から、鄧小平が廃止した。

 この中国共産党中央委員会主席を復活させて、習近平が権力を掌握する可能性が出ている。現在、中国では習近平が中国共産党の「終身核心(eternal core)」とされている。習近平が権力を掌握したままで、これからの厳しい時代を乗り越えようとしている。中国はこれからの時代に備えようとしている。

(貼り付けはじめ)

分析:習近平は胡春華の「第6世代」全体をスキップする準備をしている(Analysis: Xi prepares to skip over Little Hu's '6th generation')

-習近平国家主席陣営の内外で有望な政治家たちはトップにはなれない。

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習近平主席のゆっくりだが着実な政治改造は中国の他のトップリーダーの生活をも変えようとしている。5月13日、河南省で小麦の収穫を観察する党総書記と複数の側近たち。

カツジ・ナカザワ筆

2022年5月20日

『アジア日経』紙

https://asia.nikkei.com/Editor-s-Picks/China-up-close/Analysis-Xi-prepares-to-skip-over-Little-Hu-s-6th-generation

東京発。中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は胡春華(Hu Chunhua、1963年-、59歳)副首相をどう見ているのだろうか?

58歳の胡春華副首相は、将来のトップリーダーと目されていた時期があった。胡錦濤(Hu Jintao、1942年-、79歳)前国家主席や李克強(Li Keqiang、1955年-、67歳)首相と同じく、胡春華は共産主義青年団(Communist Youth League)の第一書記を務めた経歴がある。

胡錦涛と同じく、胡春華も長年にわたり、チベット自治区で働いた。チベット自治区は、動乱と民族紛争で知られていた。

胡錦涛前国家主席と同じ苗字だったことから、胡春華は「リトル・フー(Little Hu)」と呼ばれるようになった。

2008年、胡春華は国内最年少で河北省長に就任した。45歳の時だった。毛沢東(Mao Zedong、1893-1976年、82歳没)、鄧小平(Deng Xiaoping、1904-1997年、92歳没)、江沢民(Jiang Zemin、1926年-、95歳)、胡錦濤(Hu Jintao、1942年-、79歳)、習近平(Xi Jinping、1953年-、69歳)と続く、中国指導者のいわゆる「第6世代(Sixth Generation)」の顔であることは間違いないところだ。

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左から毛沢東主席、鄧小平、江沢民主席、胡錦濤主席、習近平主席。中国に6代目のリーダーが誕生するのは、しばらく先のことかもしれない。

胡春華(リトル・フー)の運命は2012年に習近平が中国共産党総書記に就任し、その直後に国家主席に就任すると一変した。習近平は太子党出身で政治的背景が異なり、2人の胡とは対立する派閥に属していた。

しかし、不安があるにもかかわらず、胡春華(リトル・フー)は生き延びてきた。

だから、2022年5月中旬に習近平(67歳)が河南省を訪問した際、胡春華が大勢の側近の一人として同行したことは特筆すべきことだった。視察に参加した5人の政治局員の1人であるだけでなく、国営放送の中国中央テレビで習主席と歩きながら話す姿も映し出された。

派閥の関係もあってか、胡春華は習主席の視察に常に同行する人物ではない。習近平の側近である劉鶴(Liu He、1952年-、70歳)副首相がその地位を確固として占めている。

劉鶴が習主席の河南省視察に同行しなかったことは噂の種になっている。

習近平と胡春華が手を結んでいるのか? 習近平と胡春華はより接近しているのか?

河南省訪問直前の5月12日、米紙『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、中国政府がアメリカとの閣僚級貿易協議の代表を劉鶴から胡春華に交代させることを検討していると報じた。

商務部の報道官は記者会見でこの報道を否定したが、中国の対米窓口担当者を交代させることは、経済関係の行き詰まりを打開する一つの方法となり得るだろう。

胡春華(リトル・フー)にとって、習近平時代の9年間、眠れない夜が続いたに違いない。

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5月13日、河南省南陽市で撮影された習近平と胡春華。北京は、胡春華がアメリカとの閣僚級貿易協議の中国代表に就任するとの噂を否定している。

中国の国会である全国人民代表大会は2022年3月、副首相をより柔軟に任命・解任しやすくする法案を押し通して可決させた。

この新ルールにより、習近平は側近を副首相に昇格させ、その人物を次期首相にする道を開いたとの憶測が飛び交っている。

習近平は同じ全人代で、内モンゴル自治区の石炭産業の腐敗を問題にした。習近平は内モンゴル自治区の石炭産業の腐敗を問題視し、「関係者を何世代にもわたって炙り出し、徹底的に処罰する」と宣言した。

胡春華はかつて内モンゴル自治区のトップを務めた。

習近平は2022年の5年に1度の中国共産党大会を控え、政治的に敏感な時期にこのような激しい言葉を発したのである。

4年前(2017年)、前回の全国大会の直前、同じく第6世代の新星、孫政才(Sun Zhengcai、1963年-、59歳)が汚職容疑で突然粛清された。孫政才は当時、重慶市のトップで政治局員だった。

孫政才の失脚は、習近平が次代の国家指導者候補の政治生命を決める権利を有していることを思い知らされる衝撃的な失脚であった。

胡春華(リトル・フー)は自分の微妙な立場を自覚し、目立たないように、着実に任務をこなしてきた。

ある古くからの知人は、胡春華の人柄と能力を高く評価している。この人物は「彼は相当な酒豪で、いろいろな話題について自分の意見を言うことができるインテリだが、今の胡は、よく観察しておくしかない」と付け加えた。

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2017年10月、北京の人民大会堂で開催された共産党全国大会において、重慶市共産党の陳敏爾書記が重慶市代表団の討論会に出席した。

2年前、習近平は同様に、胡春華を伴って注目の地方視察を行った。

2019年4月、習近平は重慶にいた。ホスト役を務めたのは側近の陳敏爾(Chen Min'er、1960年-、61歳)、重慶市のトップだった。陳は60歳だ。しかし、そこには胡春華の姿もあった。視察の主目的は、胡春華が副首相として担当する政策分野である貧困撲滅である。

今回の習近平の河南省訪問の主な目的は、「南北分水嶺プロジェクト(South-to-North Water Diversion Project)」の視察であった。胡春華は、水の豊富な中国南部と北部を結ぶメガプロジェクトの責任者だ。

書類上、担当の副首相である胡春華が習近平に同行するのは当然であった。その気になれば、習近平は胡春華が他の政治的な目的で今回の視察同行に選ばれたのではないことを説明できたはずだ。

しかし、チャイナ・ウオッチャーたちがどのような分析を行おうとも、一つだけはっきりしていることがある。胡春華が中国の新しい対米貿易交渉のトップに抜擢されるかどうかはともかく、彼はもはや将来の習近平の後継者候補ではない。

それは胡春華が習近平と対立する派閥に属しているからではない。同じことは、習近平の側近で第6世代に属する陳敏爾や上海市トップの李強(Li Qiang 、1959年-、63歳)にも言える。

陳敏爾と李強は、習近平が浙江省トップを務めていたときの部下であった。彼らは習近平の政治集団の中核をなす「浙江派(Zhejiang faction)」に属している。しかし、習近平が政権を維持する以上、どちらも真の後継者にはなり得ない。

複数の党幹部は「第6世代」の悲劇についてささやき始めた。彼らは、「この言葉は無意味になった」とささやき合っている。

ある中国共産党高官は、「第6世代リーダーを語ることは政治的に難しくなった。この世代は追い越され、現在50歳前後の若い世代に注目が移っている」と語った。

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「李強のような第6世代のリーダーについて語ることは政治的に難しくなっている」。

習近平は2017年、指導者の10年の任期の途中で、将来のトップリーダー候補を少なくとも2人、政治局常務委員会(Politburo Standing Committee)に登用し、後継者として育成できるようにするという長年の党の伝統を破った。

習近平は、2012年に総書記に就任する5年前の2007年に政治局常務委員に就任している。習近平のライバルである現職の李克強首相も2007年に政治局常務委員に就任している。

胡春華をはじめとする第6世代のリーダーたちは、2022年の中国共産党大会に向けて、更なる昇進を目指した戦いに挑むことになる。

しかし、競争に勝って常務委員会に入った者は誰であっても、党の最高指導者への道を歩む名誉を得ることはできない。加えて、政治局常務委員や首相の権限は大幅に縮小されるかもしれない。

習近平は権力を集中的に手中に収めている。習近平は党総書記、国家主席の地位にとどまることなく、さらに高い地位、場合によっては党主席を目指すだろう。

毛沢東が終身在任した党主席という地位は、1982年に鄧小平が独裁を防ぐために正式に廃止した。習近平が復活させれば、政治局常務委員や首相の地位は低下することになる。

一方、習近平の側近たちは、これまでとは違った人生を歩むことになる。2022年の全国代表大会以降に新設される習近平を中心とした中央集権体制のもとで、重要なポストを担うことになるだろう。

新しい統治システムの構築が水面下で始まろうとしている。その制度設計は、人事以上に重要な意味を持つ可能性が高い。
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は膠着状態に入り、欧米諸国はロシア軍の戦争犯罪を糾弾する姿勢を取っている。アメリカのジョー・バイデン大統領は「ロシアのウラジミール・プーティンは虐殺者であり、戦争犯罪人なので裁判を受けさせる」と述べている。どのような形の裁判を行うのかということは全くの不明確だが、国際刑事裁判所(International Criminal Court、ICC)に提訴する意図があるがもしれないが、アメリカはICCによるアメリカ国民の訴追に反対し、基本法となるローマ条約に署名していない。一体どうやろうというのか。

 ウクライナ戦争によって世界規模で物流が混乱し、食料やエネルギー不足の懸念が高まっている。ロシアやウクライナで多く生産される小麦の生産や輸入が減少すればしぜんとそういうことになる。農業生産は1年で2倍に増やすというようなことはできない。原産は可能であるが増産は困難である。アメリカではロシア製の肥料が手に入らない状況でさく付け状況が悪くなるということが予想されている。

 そうした中で、興味深い動きを見せているのが中国だ。中国は最近になって、世界の動きと逆行するかのように、新型コロナウイルス感染拡大を理由にして都市のロックダウンを始めている。しかし、その数を見てみると、絶対数で見てみても人口比で見てみても、ロックダウンが必要な数字とは思われない。過剰な反応のように思われる。

 しかし、ここで「戦時体制への移行」という補助線を引くと分かりやすい。中国ではこれからの大動乱に向けて、戦時体制への移行が始まっている。食料は配給制になり、厳しくカロリー計算に基づいた制限がなされ、「過食」「飽食」「食料廃棄」が制限されるようになるだろう。そのためのスタートとして最大都市である上海でロックダウンを開始し、食糧配給の「訓練」が始まっていると見ることができる。食料価格の高騰が懸念される中で、一部の富裕層に食料が集中しないように、公平に食料を分配するということが実施されるだろう。

 中国はロシアからの食糧やエネルギー輸入を止めないので西側諸国のように急激な影響を受けることは少ないだろう。しかし、中国まで巻き込まれるような大動乱が起きる可能性はある。中国政府最高幹部クラスはそのように考えているのだろう。私たちも大動乱に備えて長期保存可能な食料をある程度備蓄しておくというような自衛策を取ることが必要になるだろう。

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●「ロックダウンの上海 中国共産党が異例の闘争指示」

4/7(木) 16:09配信 テレビ朝日

https://news.yahoo.co.jp/articles/1780c3af782e6373e733d196e05b73b573dbb68a

 中国共産党が上海市の感染拡大を抑え込むため、「不屈の闘志で最前線に立て」と一般の共産党員に呼び掛ける異例の文書を公開しました。

 文書は「上海市内のすべての共産党員へ」と題しています。

 「上海は中国共産党の誕生の地」だとし、一般の共産党員に対して率先してコロナ対応にあたるよう呼び掛けています。

 文書は「コロナと戦う人物や感動的な話を積極的に広める」よう指示しているほか、「感染拡大のための施策をかく乱し、破壊する行為に対しては剣を抜いて戦え」として、SNS上で発信される偽情報を追及し、事実を明らかにするよう求めています。

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●「「物資が欲しい!」住民の“叫び”…ロックダウンの上海市で配給不足」

4/6(水) 17:36配信 テレビ朝日

https://news.yahoo.co.jp/articles/15aee31704d30481c1b5ba5c10d115acda6bfd53

 中国の上海市で、ロックダウンが始まってから6日で10日目となります。一部の住宅では食料が届かないなどの問題が起こっています。

 マンション住人:「物資が欲しい!物資が欲しい!私たちは物資が欲しい!」

 住民たちが食料を求めて叫ぶ動画。上海市北部の隔離されている住宅で撮影されました。

 上海市では先月28日から市の東部でロックダウンが始まり、現在もほぼ全域で都市が封鎖されたままです。

 上海市では政府などが主導し、食料の配給などが行われていますが、一部の地域では人員不足で物流が滞り配給が届かないなどの問題が起きています。

 今月5日の上海市の新規感染者は過去最多の1万7077人で、当局は再び全市民に対しPCR検査か抗原検査を行うと発表しています。

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●「「食料をください!」“ロックダウン”延長で住民は… 中国・上海」

4/5(火) 20:42配信 日テレNEWS

https://news.yahoo.co.jp/articles/5842e6f145d29f81748b1432b678020956516542

事実上のロックダウンが続く中国の上海では、新たな感染者が過去最多になるなど、拡大に歯止めが掛かっていません。こうした事態を受けて制限が延長されましたが、外出禁止が続き、市民生活に影響が広がっています。

   ◇

「食料をください!」「食料をください!」

中国・上海で、夜の団地に響き渡るのは、食料を求める大勢の叫び声です。

「食べ物がほしい! おなかがすいた、餓死してしまう!」

感染対策のため、この団地では、もう10日以上外出が禁止されています。住人たちは食料などが足りず、ベランダから助けを求めていました。

3月末から事実上の“ロックダウン”を始めた中国・上海市。市を東西2つのブロックに分け、それぞれ4日間ずつ住民の外出禁止や交通機関の運行停止など大規模な封鎖を行うとしていました。

しかし、市のほぼ全域で封鎖が継続されることになったのです。

記者(中国・上海、5日)

「当初の予定ではきょうの午前3時に封鎖が解除される予定でしたが、今も封鎖は続いています」

封鎖の終わりが見えない中、市民にも影響が広がっています。

封鎖エリアの住民

「市に電話してもずっとつながらない。食べ物がない」

この女性は、その後、SNSで窮状を訴えたことがきっかけで食べ物を送ってもらうことができたといいます。

   ◇

封鎖が解除されなかった理由が、止まらない感染の拡大です。

実は大規模な封鎖が始まる前、3月26日に確認された感染者は2676人でしたが、4月4日に全市民を対象にPCR検査を行った結果、新規感染者は1万3354人と初めて1万人を上回る事態になりました。

医療機関がひっ迫しているため、市内には感染者を隔離する施設や臨時の病院が次々と建設され、軍や周辺の街から医療従事者など3万人以上が応援に入っているということです。

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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