古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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カテゴリ: 中東政治

 古村治彦です。

 戦争はどの国にとっても大きな負担となる。世界の超大国であるアメリカでもそれは変わらない。そして、イスラエルにとってもそれは同じだ。イスラエルは人口約1000万人(ユダヤ系が約74%、イスラム教が多いアラブ系が約18%、キリスト教徒やドルーズ教徒が約8%)の比較的小さな国であるが、GDPは約5400億ドル(約87兆円)で世界第20位である(日本は約4.38兆ドル、約690兆円で世界第4位)。一人当たりのGDPは約6万ドルとなり、こちらも世界第20位となっている。ちなみに、日本は約3万4000ドルで世界第24位である。出生率(約2.84)も高いが、これは超正統派ユダヤ教徒の出生率(約6.66)が大きく貢献している。超正統派ユダヤ教徒は労働に従事しない傾向があり(イスラエル国家から補助されている)、兵役も免除されている。イスラエル国内で、超正統派ユダヤ教徒の割合が増えており、そうなれば、労働をせず、兵役にも就かない人が増えることになり、イスラエル国家全体にとって大きな負担となる。

 イスラエルは現在、イランとの戦争状態にあり、さらに、ガザ地区を実行支配するハマス、レバノンのシーア派組織ヒズボラ、イエメンのシーア派組織フーシ派との戦闘も続いている。戦争にはお金がかかる。戦費はイスラエル経済に重くのしかかる。アメリカからの支援やイスラエル以外に住むユダヤ人からの支援はあるにしても、戦争が永久的に続くことはイスラエルにとっては大きな負担である。また、人口が1000万人の国家で、一定数の国民が兵役に就くが、同時に兵役が免除されている超正統派ユダヤ教徒が労働に従事しないということはイスラエル経済や社会にとっては大きな痛手だ。

 さらに、イスラエルにとってはアメリカからの支援が頼みの綱であるが、アメリカ国民、特に若年層を中心にしてイスラエルの政策に反対する割合が増加しているのは懸念材料である。アメリカからの無条件の厚遇をいつまでも期待できるということはない。

 こうして見ると、イスラエルにとって武力による制圧というのは得策ではないということになる。圧倒的な軍事力があり、戦争を続けても、最終的な勝利を得られていないという状況は、人命や資金を浪費しているということに他ならない。イスラエル国内の情勢が大きく変化し、極右勢力が退潮しなければ、イスラエルはその大きな力によって滅亡の途をすすることになりかねない。

(貼り付けはじめ)

イスラエルが戦争で払っている代償(The Price Israel Is Paying for Its Wars

―複数の戦線での戦闘はイスラエルの軍事力、経済、そしてアメリカとの関係に大きな負担をかけている。

デイヴィッド・E・ローゼンバーグ筆

2026年4月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/14/israel-war-hamas-hezbollah-iran-economy-military/

2月28日にアメリカとイスラエルによるイラン攻撃が始まった時、イスラエルはベンヤミン・ネタニヤフ首相が主張する地域大国(the regional power)、ひいては大国(the great power)そのもののように見えた。ネタニヤフの言葉を疑う理由はほとんどなかった。過去2年半の間、イスラエルは宿敵であるハマス、ヒズボラ、そしてイランを事実上打ち負かしたかに見えた。イスラエル国防軍(IDF)は長期戦を遂行できる能力を示し、ヒズボラへのポケベル攻撃のような卓越した技術力を披露し、イランやイエメンのフーシ派への攻撃を通じて地域全体にその力を誇示してきた。そして今、ネタニヤフ首相が「全ての戦争を終わらせる戦争(a war to end all wars)」と豪語した、イランの核・弾道ミサイルの脅威を排除するための最終決戦(a final blow)に乗り出そうとしていた。

6週間後、イランの軍事力は著しく低下し、経済は崩壊、主要インフラは破壊され、主要な政治・軍事指導者の多くが死亡した。しかし、ネタニヤフ首相とトランプ大統領が作戦開始時に掲げた目標は、達成には程遠い状態にある。イランの政権は依然として権力を維持し、濃縮ウランを保有し、弾道ミサイルとドローンを大量に保有していると報じられている。そして何よりも深刻なのは、イランがホルムズ海峡を封鎖できることを示したことだ。一方、ヒズボラはイスラエルの予想をはるかに上回る抵抗を見せ、武装解除の意思を全く示していない。

それでは、この戦争によってイスラエルは以前よりも弱体化したのか、それとも強くなったのか? これは極めて重要な問いである。なぜなら、ネタニヤフ首相はイラン戦争を大勝利と喧伝する一方で、戦いはまだ終わっていないとも述べているからだ。「私たちにはまだ達成すべき目標があり、合意によってか戦闘再開によってか、いずれにせよそれを達成するだろう。・・・私たちは引き金に指をかけている」とネタニヤフは先週、ドナルド・トランプ米大統領による停戦宣言を受けて述べた。

イスラエルの戦後における国力に関する問いへの答えは、イランとヒズボラにも少なからず関わっている。彼らの損失の程度、そして復興・再建能力は、おそらく時間が経つにつれて明らかになるだろう。この不確実性こそが、イスラエルの戦略的課題をより複雑にしている。一方で、イスラエルの資産と能力ははるかに評価しやすく、現状は決して楽観視できるものではない。

イスラエルの国力は主に3つの柱に支えられている。すなわち、圧倒的な軍事力、ますます費用がかさみ、長期化する戦争を支える経済力と国民力、そしてアメリカとの同盟関係である。ネタニヤフ首相はこれら3本の柱を限界まで活用し、さらにその限界を超えようとしているように見える。

軍事:純粋に戦術的なレヴェルでは、イスラエル国防軍は2023年10月7日のハマスによる攻撃以降、数々の目覚ましい成果を上げてきたが、それらは莫大な兵器、人員、そして資金の投入によって達成された。イスラエル銀行の推計によると、イランとヒズボラとの現在の戦争が始まる以前でさえ、他の戦争によってイスラエルの6600億ドル規模の経済に対し、約1160億ドルの直接的な国防費が費やされた。現在のイラン攻撃の費用については議論の余地があるが、110億ドルから180億ドルと推定されている。

たとえイランとレバノンでの作戦が間もなく終結したとしても、イスラエルの国防費は依然として高水準にとどまるだろう。イスラエル軍はガザ地区の半分とシリア南部の広範囲に部隊を配備し続けている。ヨルダン川西岸にも多数の新たな入植地を守るため、さらに多くの兵士が派遣された。ネタニヤフ首相はレバノンとの交渉に渋々応じたものの、レバノン南部にいわゆる「安全保障地帯(security zone)」を設置する構想も示しており、そのためにはさらに多くの地上部隊が必要となる。ネタニヤフ首相はどこからも撤退するつもりはなく、先月「私たちは安全保障の概念を変えた。攻撃を開始し、敵を奇襲するのは私たちだ」と述べた。

イスラエル政府は軍の資源が無限であるかのように扱い、新たな攻勢や占領の拡大を軍に求めている。しかし、それらを遂行するのに十分な人員を確保するための措置は一切講じていない。徴兵制の延長や、超正統派ユダヤ教徒に認められている徴兵免除の廃止に関する法案は未だに可決されていない。人員不足を補うため、予備役兵がほぼ不可能なほど長い期間召集されている。エヤル・ザミル参謀総長は先月、閣僚に対し、約1万5000人の兵員不足を背景に「イスラエル国防軍は崩壊寸前だ(IDF is going to collapse in on itself)」と警告したと報じられている。装備に関しては、イスラエル国防軍の備蓄量や装備の摩耗状況は厳重に秘密にされているが、特に迎撃ミサイルの供給において、問題の兆候が時折表面化している。

経済:過去20年間、イスラエル経済は度重なる戦争に直面しながらも、驚くべき回復力を見せてきた。最近の戦争も例外ではない。2023年のハマスによる攻撃後の数カ月間、そして昨年6月のイランとの12日間の戦争中、GDPは縮小した。そして、現在の戦争でもほぼ確実に再び縮小しただろう。しかし、いずれの場合も経済活動は急速に回復し、戦争によってイスラエルの国防費負担が世界最高水準にまで上昇したにもかかわらず、経済は成長を続けた。

この回復力の一因は、イスラエルの企業や労働者が戦争に慣れ、対処メカニズムを発達させてきたことにある。しかし、政府が財政を健全に保ち、比較的小幅な財政赤字にとどめ、債務(対GDP比)を削減してきたことも同様に重要である。イスラエルのハイテク産業と天然ガス生産は、数十億ドル規模の海外投資を呼び込み、経常収支の黒字を継続的に維持することを可能にしてきた。ガザ紛争勃発以来、アメリカから総額約220億ドルに上る多額の援助を受けてきたことも、経済的な負担を軽減する一因となっている。イスラエルは戦争費用を負担できる経済力を持っている。

しかし、ネタニヤフ首相の政策は、この経済力の限界を試している。膨大な戦闘費用を賄うため、イスラエル政府は概して増税や民間向け支出の削減を避けてきた。これは経済成長を維持するのに役立ってきたが、同時に、イスラエルの公的債務はガザ紛争前のGDP比60%という比較的低い水準から、2026年末には70.5%に達すると予測されるほどに急増した。この債務水準は危険なほど高いとは言えないものの、ネタニヤフ首相は軍事費への支出を止めようとはしていない。今後10年間で国防予算に1160億ドルを追加する計画であり、これはGDPの6%という巨額の国防費を国防に充てることになる。この支出水準は、債務の増加、増税、民間支出の削減などを通じて、経済に重くのしかかるだろう。アメリカ:2023年のハマスによる攻撃は、イスラエルに前例のない規模のアメリカの軍事的、財政的、外交的支援をもたらした。イランへの共同攻撃は、その支援を新たなレヴェルへと引き上げたように見える。しかし、これら全ては、実際にはアメリカ・イスラエル関係の頂点となる可能性もある。

イスラエルの国力を構成する3つの要素全てがますます脆弱になっているにもかかわらず、ネタニヤフ首相はまるで何事もなかったかのように振る舞っている。彼には他に選択肢があるのだろうか?

批判者たちは、ネタニヤフ首相はイスラエルの軍事的成果を外交的合意形成に活用すべきだと指摘する。しかし、ネタニヤフ首相は国家安全保障が絡む合意にはほとんど信頼を置いていないことを示してきた。ある程度、彼の見解は正当化される。レバノンとシリアの政府は約束を履行する力が弱く、イランとハマスはイスラエルの存在そのものにイデオロギー的に反対しており、実質的な合意交渉に応じる姿勢は見られない。

問題は、イスラエルが敵国に対して圧倒的な軍事的優位性を持っているにもかかわらず、彼らを屈服させることができていないことだ。ハマスでさえ、戦前の軍事力と指導部をほぼ全て失い、ガザ地区の半分を支配下に置いたにもかかわらず、屈服を拒否している。したがって、イスラエルは資源が枯渇し、後ろ盾であるアメリカの全面的な支援も得られない中で、終わりのない戦争(forever wars)という不確実な未来に直面する運命にあるように見える。

※デイヴィッド。E・ローゼンバーグ:『ハアレツ』紙英語版経済担当編集員兼コラムニスト。著書に『イスラエルのテクノロジー経済(Israel’s Technology Economy)』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 イスラエルはハマスからの奇襲攻撃を受け、人質を取られたことで、それを奇貨として大規模な反撃を行い、ガザ地区での大規模な破壊を行った。多くの民間人が犠牲となった。アメリカの仲介による停戦は実行されたが、現在も状況は改善していない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、自身のスキャンダル隠しと訴追逃れのために、戦争状態を継続している。アメリカのドナルド・トランプ大統領のエプスタイン文書隠し、日本の高市早苗首相の自民党と統一教会の爛れた関係隠しと同様であるが、日本の場合は人間が殺されないだけまだましと言えるだろう。

 話は逸れたが、イスラエルは中東地域において地域覇権ではなく、生存を最優先にしてきた。そのために戦いながら、同時に交渉を行い、スパイ活動を行いながら情報戦を行いながら、近隣諸国と裏舞台では協力関係を保ってきた。中東諸国もイスラエルを公式には認めないスタンスであったが、裏では取引ができるようにしていた。

 ネタニヤフ首相の武力偏重のスタンスで、ガザ地区への大規模な攻撃は、せっかく進められていたサウジアラビアとの国交樹立交渉にも影響を与えた。サウジアラビアとしても、アラブの盟主として、イスラエルを公式に認めることができない状態になってしまった。中東地域の安定という地域共通の利益をイスラエルが破壊していることが根本の問題である。

 イスラエルのガザ地区とイランへの攻撃は短期的には一定の成果を上げるだろうが、中長期的に見て、それがイスラエルの利益になるとは考えられない。イスラエルが中東地域を支配することはあり得ない。武力で中東地域を従わせることはできないし、そもそもがそのような制度設計になっていない。結局のところ、ネタニヤフ首相の私戦を戦っているに過ぎない。これは、イスラエルにとっては一時的な逸脱という見方もできる。

(貼り付けはじめ)

イスラエルは(地域)覇権国にはなれない(Israel Can’t Be a Hegemon

-イスラエル政府は成功する可能性の低い地域支配を狙っている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年6月16日

https://foreignpolicy.com/2025/06/16/israel-iran-war-middle-east-hegemon/

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イェルサレムの政府報道室(Government Press OfficeGPO)での記者会見で、中東の地図の前で演説するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(2024年9月4日)

イスラエルによるイランへの広範囲にわたる攻撃は、地域のあらゆる敵対勢力を排除または弱体化させるためのキャンペーンの最新のラウンドである。2023年10月のハマス攻撃を受けて、イスラエルはパレスティナ人を意味のある政治勢力として破壊するための残忍なキャンペーンを遂行しており、主要な人権団体や多くの学術専門家たちはこれをジェノサイド(genocide)と呼んでいる。レバノンでは空爆(airstrikes)、爆弾を仕掛けた携帯電話(booby-trapped cellphones)、その他の手段でヒズボラの指導部を壊滅させた。イエメンではフーシ派を攻撃し、アサド政権崩壊後のシリアを爆撃して武器貯蔵庫を破壊し、危険と見なす勢力が政治的影響力を行使するのを阻止した。そして、イランに対する最新の攻撃は、イランの核インフラに損害を与えたり破壊したりする以上のことを目的としている。イスラエルは少なくとも、イランの核計画をめぐる交渉を終わらせたいと考えている。イランの最高指導者、軍関係者、外交官、科学者を殺害することでイランの反撃能力を弱体化させ、可能であればアメリカを戦争にさらに深く引きずり込む。最大限には、イランの体制を崩壊させるまで弱体化させることを望んでいる。

これらの行動はいずれも、少なくとも短期的には、また部分的には成功している。では、今やイスラエルを地域覇権国(a regional hegemon)とみなすべきだろうか? もしそのような国家が「特定の地域における唯一の大国(the sole great power within a particular region)」であり、「全面的な軍事力の試練において、他のいかなる国家(あるいは国家連合)も本格的な防衛力を発揮できない(no other states (or combination of states) could mount a serious defense in an all-out test of military strength)」と定義されるならば、イスラエルは今やその資格を満たしていると言えるだろうか? もしそうであれば、近隣諸国も覇権国に直面した際に他の国々がしてきたように行動することを期待すべきだろうか? つまり、「その優位性を認め、覇権国にとって極めて重要な問題においては従う(recognize its superior power and defer to it on matters of vital interest to the hegemon)」ということだろうか?

一見すると、この可能性は非現実的に思える。人口1000万人にも満たない国(そのうちユダヤ人は約75%に過ぎない)が、数億人(主にイスラム教徒のアラブ人)と9000万人以上のペルシャ人を抱える広大な地域を、どのようにして支配できるのだろうか?

しかしながら、イスラエルが近隣諸国に対して多くの優位性を持っていることを考えると、この考えはより説得力を持つように思える。イスラエル国民はアラブ諸国の国民よりも教育水準が高く、愛国心が強く、より有能な指導者に導かれてきた。イスラエルは裕福で政治的に影響力のあるディアスポラ(diaspora、離散民)から惜しみなく揺るぎない支援を受けており、過去にはイギリスやフランスといった大国からも多大な支援を受けてきた。アラブ諸国のライヴァル諸国の多くは、様々な内部分裂(internal schisms)、動乱(upheavals)、クーデター(coups)に直面し、アラブ諸国間の対立(divided by inter-Arab rivalries)によって分断されてきた。

さらに言えば、現代の軍事力は単なる兵力よりも、技術力、訓練、そして能力の高い指揮統制に大きく依存しているため、イスラエル国防軍(Israel Defense ForcesIDF)は常に、敵対する軍よりもはるかに優れた能力を誇ってきた。この優位性は、戦争が高価で高度な兵器にますます依存するようになるにつれて、さらに高まっている。ヒズボラとハマスは共に時とともに能力を高めていったものの、どちらもイスラエルの存在を脅かしたり、イスラエルがヒズボラとハマスに与えることのできる損害に匹敵したりすることはできなかった。イスラエルの膨大な核兵器と評価の高い情報能力はその立場をさらに強化した。

何よりも重要なのは、イスラエルがアメリカから広範かつほぼ無条件の支援を受けていることだ。アメリカ政府はイスラエルの行動の如何に関わらずイスラエルを支持し、イスラエルの「質的軍事優位性(qualitative military edge)」を維持することを正式に約束している。この支援がなければ、約1000万人のイスラエル人は自国の領土を守ることはできるが(核兵器を保有していることを忘れてはならない)、周辺地域を支配する可能性はほとんどない。

以上の点を考慮すると、イスラエルがより広い中東知己を支配するという考えはそれほど突飛なものではない。しかし、イスラエルを真の地域覇権国と見なすのは誤りだろう。

第一に、地域覇権国は近隣諸国に比べて非常に強力であるため、近隣諸国から重大な安全保障上の脅威を受けることはなく、真のライヴァルがすぐに出現することを心配する必要もない。これは、20世紀初頭までにアメリカが達成した立場だ。他の大国は西半球(the Western Hemisphere)から撤退し、この地域のどの国や組み合わせも、アメリカの経済力と軍事力の組み合わせに近づくことはできなかった。キューバ危機(外部の大国(ソ連)が核兵器搭載ミサイルを西半球に送り込んだ)という短い例外を除けば、アメリカは19世紀後半以降、西半球地域からの重大な軍事的脅威に直面していない。この特権的な立場により、ワシントンは外交・防衛政策をユーラシアに集中させ、戦略的に重要な地域で他の大国が同様の地位を獲得するのを阻止することができた。

今日のイスラエルは、その基準を満たしていない。例えば、フーシ派は依然として反抗的な姿勢を崩しておらず、イスラエル国防軍はガザ地区の住民に甚大な被害を与えたにもかかわらず、依然として泥沼に足を取られている状況だ。イスラエルはヒズボラとハマスを著しく弱体化させたが、これらは非国家アクターであり、イスラエルの存在に実存的な脅威を与えたことはこれまで一度もない。今日、アラブ諸国や連合軍でイスラエルに匹敵するものは存在しない。しかし、トルコとイランはどちらも強力な軍事力とはるかに大きな人口を有しており、総力戦(all-out war)が発生した場合、たとえ最終的に敗北するにしても、それぞれ信頼性の高い防衛体制を構築することができる。つまり、イスラエルはこれらの国々を計算から除外したり、これらの国々が従うと想定したりすることはできない。イランの継続的な抵抗がそれを如実に示している。最近の攻撃に対するイランの報復は、被った被害に比べれば少ないものの、決して軽微なものではなく、紛争はまだ終わっていない。たとえ今回の戦闘で敗北することになったとしても、テヘランが自国の利益をイスラエルに進んで従属させる兆候は見られない。その理由だけでも、イスラエルは地域の覇権国とは言えない。

さらに言えば、これらの最新の攻撃の正当化の根拠は全て、イランがいつの日か核兵器を入手するかもしれないという懸念にあった。リスクは、イランが自殺行為となる核兵器でイスラエルを攻撃することではなく、むしろイランの核兵器が、イスラエルがこの地域で無制限に武力を行使する能力を制限する可能性にあった。イスラエルの指導者たちが、より大きな抑制をもって行動せざるを得なくなる可能性を危険と見なしたことは、彼らが世界唯一の真の地域覇権国であるアメリカが長年享受してきたような「無料の安全保障(free security)」を享受していないことを示している。

イスラエルの最近の戦場での成功も、イスラエルが支配する地域の人口の約半分を占めるパレスティナ人というより根本的な問題を解決してはいない。イスラエルの優れた軍事力と情報能力は、2023年10月にハマスが数百人のイスラエル人を殺害するのを防げなかった。また、それに対する報復としてイスラエルが5万5千人以上のパレスティナ人を殺害したことで、この紛争の政治的解決に近づいた訳でもない。むしろ、イスラエルの世界的なイメージは著しく傷つき、長年の同盟諸国でさえ支援を弱めている。

最も重要なのは、イスラエルが依然としてアメリカ国内の後援者に決定的に依存している点だ。アメリカは、隣国を攻撃するために必要な航空機、爆弾、ミサイルの大半を供給し、絶え間ない外交的保護を提供している。真の地域覇権国は近隣地域を支配するために他国に依存する必要はないが、イスラエルは依存せざるを得ない。強力な国内利益団体の影響力により、アメリカの支援は何十年にもわたって揺るぎないものだったが、近年、この関係には緊張の兆しが見られ、アメリカの力そのものの衰退に伴い、この関係を維持することはさらに困難になるだろう。そして、今回の戦闘が最終的に米国を巻き込むことになれば、ドナルド・トランプ米大統領がアメリカの平和を維持すると信じていた MAGA の支持者たちを含め、より多くのアメリカ国民が、「特別な関係(special relationship)」のためにアメリカが支払っている多大な代償を認識することになるだろう。

最後に、永続的な地域覇権は、近隣諸国が覇権国の優位な地位を受け入れる(場合によっては歓迎する)ことを必要とする。そうでなければ、覇権国は常に新たな反対勢力の出現を懸念し、反対勢力の出現を阻止するために繰り返し行動を取らざるを得なくなる。自らの特権的な地位(privileged position)を他国に受け入れてもらうためには、永続的な覇権国はある程度の寛容さ(forbearance)をもって行動しなければならない。これは、フランクリン・D・ルーズヴェルト元米大統領がラテンアメリカに対して「善隣(Good Neighbor)」政策を採用した際に示したものである。ナポレオン時代のフランス、ナチス・ドイツ、大日本帝国といった地域覇権国を志向した国々が一時的に優位な地位を獲得したものの、当初の成果を固めることができず、最終的にはより強力な反対勢力の連合に屈服したことを想起することに価値がある。

しかし、隣国への寛容を持っての処遇はイスラエルの得意分野ではなく、イスラエルの右翼勢力や宗教過激派の影響力拡大によって、その可能性はさらに低くなっている。これらを総合すると、イスラエルが地域の覇権国となるには程遠い。指導者たちがその地位を望んでいることは疑いない—当然だろう—。しかしそれは永遠に手の届かないものとなる。つまりイスラエル国家の長期的な安全保障は、結局のところパレスティナを含む近隣諸国との永続的な政治的解決の達成にかかっている。これは、永続的な安全保障が最終的に依存するのは力だけではなく政治であるという、また1つの教訓なのである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialX:アカウント@stephenwalt

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。

イスラエルとハマスの紛争、ガザ地区への攻撃と民間人殺傷は、停戦合意によって、小康状態になっているが、民間人の苦境は続いている。イスラエルに対する国際刑事裁判所のカリム・カーン検察官が、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防大臣に対して逮捕状を請求したことによる。カーンは同時にハマスの指導者に対しても逮捕状を請求した。これに対して、ネタニヤフ首相はカーンを反ユダヤ主義者と非難し、法律専門家もカーンがイスラエルとハマスを同じレベルに置いたことに動揺した。多くの一般市民も怒りを抱くが、その感情だけではカーンの訴えの根拠を判断するのは難しい。しかし、カーンは証拠を集めるため、国際法の専門家からなる委員会に相談し、その結果、彼が特定した容疑者が戦争犯罪や人道に対する罪を犯したと信じるに足る合理的な根拠があると結論付けた。ネタニヤフ首相とガラント大臣に対する主な容疑は、ガザの民間人に対する共通の計画として、飢えや暴力を用いた行為に関与した点である。つまり、これは人道支援の妨害が失策ではなく、意図的な行為であったという主張を基にしている。カーンはビデオや衛星画像などを資料として提示しているが、具体的な証拠は公にはされていない。
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テオドール・メロン

国際刑事裁判所において重要な役割を果たしたのは、ユダヤ人の著名な法学者テオドール・メロンである。メロンは、入植地の問題についても指摘している。1967年における入植の開始時、彼は法的な観点から問題があることをイスラエル政府に伝えたが、無視された。仮にイスラエル政府が当時のアドバイスに従っていれば、入植地はなかったかもしれず、中東の平和にも違った道があったと考えられる。入植地の存在がイスラエルの外交政策に影響を与え、特にネタニヤフ政権においてその傾向が強化された。そのような人物が国際刑事裁判所で重要な役割を果たした。メロンという人物はイスラエルの愛国者と言える存在だろう。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は私利私欲のために、ナショナリズムを利用し、中東と世界に災厄を与えている。メロンは現在も存命である(95歳)。彼に続き、イスラエルのために、イスラエルの政策を批判する人たちはたくさんいる。私たちはそのことに思いをいたすべきだ。

(貼り付けはじめ)

イスラエルをイスラエル自身から救おうとした男(The Man Who Tried to Save Israel From Itself

-今回、イスラエルはテオドール・メロン(Theodor Meron)の警告に従わなければならない。

ガーショム・ゴレンバーグ筆

2024年6月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/04/israel-settlements-occupation-theodor-meron-gaza-netanyahu/?tpcc=recirc062921

「ハーグの偽善(the Hague’s Hypocrisy)」と、イスラエルの大衆向け日刊紙は見出しに大々的に書き立てた。ライヴァル紙は負けじとばかりに「ハーグの恥辱(the Hague’s Disgrace)」と見出しを付けた。

国際刑事裁判所のカリム・カーン検察官が、人道に対する罪(crimes against humanity)でイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント国防大臣に対して逮捕状を請求すると発表したとき、イスラエル国内で最も明らかな国民の反応は激怒だった。カーン検察官が同時にハマスの指導者3人の逮捕を要請しても、この怒りは収まらなかった。

ネタニヤフ首相は予想通り、カーンが「反ユダヤ主義の火(the fires of antisemitism)」を煽っていると非難した。しかし、首相に深く批判的なイスラエルの法律専門家ですら、カーンがイスラエルとハマスの司令官を同じカテゴリーに入れているように見えることに動揺している。ある人は「攻撃者(ハマス)と攻撃される側(イスラエル)の間に法的同等性を設けるのは容認できない」と書いた。

私もごく普通のイスラエル人なので、その反射的な怒りをいくらか共有できる。世界はイスラエルの行動に過剰な注目を払い、2023年10月7日にどちらの側が残虐行為を犯し、この戦争を引き起こしたのかを忘れているようだ。

しかし、怒りは、カーンがネタニヤフとガラントを訴える根拠となるかどうかを判断する上で、あまり有効な手段ではない。私にとって、その疑問に答える鍵は、ある名前にある。テオドール・メロンだ。

カーンは、要請書を提出する前に、戦争法に関する主要な専門家で構成される委員会に証拠を提出した。委員会は全員一致で、「カーンが特定した容疑者が、国際刑事裁判所の管轄権の範囲内で戦争犯罪および人道に対する罪を犯したと信じるに足る合理的な根拠がある」と結論付けた。ホロコースト生存者であり、法学者であり、元イスラエル外交官でもある94歳のテオドール・メロンは、これらの専門家の中でも群を抜いて著名な人物である。

私が「T・メロン」という名前に初めて出会ったのは、20年以上前、占領地におけるイスラエル人入植地の歴史に関する著書『偶然の帝国(The Accidental Empire)』の調査中に、イスラエル国立公文書館でのことだった。故レヴィ・エシュコル・イスラエル首相の事務所から機密解除されたファイルのページ下部に、彼の署名があった。ページ上部には「極秘(Most Secret)」と記されていた。その間に記された情報が、私を彼についてもっと知りたいという気持ちにさせた。

メロンは1930年、ポーランドのカリシュで、彼自身が「中流階級のユダヤ人家庭(middle-class Jewish family)」と表現する家庭に生まれた。「幸せだったが、残念ながら短かった幼少期」は、9歳の時にドイツ侵攻によって終わりを迎えた。ナチスが支配するゲットーや強制労働収容所で暮らしながらも、どうにかホロコーストを生き延びた。しかし、彼の家族のほとんどは生き延びられなかった。終戦直後、15歳の時、彼は当時イギリス領だったパレスティナのハイファ市に移住した。

それからの6年間、彼にとって唯一の学校教育は苦痛に満ちたものとなった。失われた教育の年月は「私に学びへの強い渇望を与えてくれた」と彼は後に語っている。彼は新しい言語で高校を卒業し、ヘブライ大学で法学の学位を取得し、ハーヴァード大学で博士号を取得し、ケンブリッジ大学で国際法の博士研究員として研究を行った。

1957年、学術界のポストに就く見込みのないメロンは、イスラエル外務省からのオファーを受けた。1967年の六日間戦争(第三次中東戦争)直後、37歳にしてイスラエル外務省の法律顧問、つまり事実上イスラエル政府における国際法の最高権威に任命された、天才(wunderkind)なのである。

大使としての10年の任期を経て、彼は学術界に戻った。多くのイスラエル人学者と同様に、これは海外留学を意味した。メロンの場合は、ニューヨーク大学ロースクールへの留学だった。彼の法律に関する論稿は、「国際刑事裁判所(international criminal tribunals)の法的基盤構築に貢献した」と評されている。国際刑事裁判所の始まりは、ユーゴスラビア崩壊後の戦争犯罪を扱うために1993年に国連が設立した裁判所である。

当時アメリカ市民であったメロンは、2001年に国際刑事裁判所の判事に任命された。彼は数年間、同裁判所の所長と控訴裁判所判事を務めた。インタヴューで、彼は自身の立場を「胸が締め付けられる(poignant)」と同時に「気が重くなる(daunting)」と語った。かつてナチスの少年囚人だった彼が、今やジェノサイドを含む犯罪の裁判長を務めているのだ。彼は特に、「レイプと性奴隷制を人道に対する罪と定義した」判決を誇りに思っている。

メロンは、1990年代後半、再びオックスフォード大学の法学教授として、また最近ではイスラエルとハマスの指導者に対する訴訟を担当する国際刑事裁判所所長カーンの顧問も務めている。

カーンの令状請求は有罪判決ではないことを肝に銘じておくことが重要だ。メロンをはじめとする専門家たちが確認したのは、証拠と法律がネタニヤフとガラント、そしてハマス関係者のヤヒヤ・シンワル、モハメド・デイフ、イスマイル・ハニヤを裁く根拠を提供しているということだ。

専門家たちの報告書は、国際刑事裁判所(ICC)に訴訟適格がないとするイスラエルの主張を否定した。「ガザ地区を含むパレスティナは、国際刑事裁判所規程の適用上、国家である」と専門家たちは述べた。イスラエルとは異なり、パレスティナは国際刑事裁判所の管轄権を受け入れている。したがって、国際刑事裁判所はガザ地区における行動、そしてイスラエル領内でのパレスティナ人の行動について判決を下すことができると報告書は述べている。

『フィナンシャル・タイムズ』紙に寄稿した共同意見記事の中で、メロンと同僚たちは「これらの容疑は紛争の理由とは全く関係がない」と強調した。その点を敷衍すると、イスラエルは正当化可能な防衛戦争(a justifiable war of defense)を行っているかもしれないが、政府首脳を含む一部のイスラエル人は、その戦争遂行の過程で罪を犯した可能性がある。

シンワル、デイフ、ハニヤに対する起訴案には、10月7日のイスラエル攻撃における民間人殺害という人道に対する罪である絶滅(extermination)、人質の確保、強姦といった戦争犯罪が含まれている。

ネタニヤフとガラントに対する主な容疑は、ハマスを根絶やしにし、イスラエル人人質を解放し、ガザ地区の住民を処罰するために、「ガザ地区の民間人に対する飢餓やその他の暴力行為を用いるという共通の計画(a common plan to use starvation and other acts of violence against the Gazan civilian population)」に関与したという点である。言い換えれば、人道支援の妨害は失策ではなく、戦争遂行のための意図的な手段だったとされている。

カーンは、生存者へのインタヴュー、ビデオ資料、衛星画像など、自身が収集した証拠の種類を列挙している。しかし、証拠そのものは公表していない。今のところ、私たちは専門家全員の一致した見解に頼るしかない。そして、カーンの主張が確固たるものかどうかを判断できるのは、おそらくメロン以上に適任な人物はいないだろう。メロンがイスラエルを迫害していると示唆するのは滑稽であり、彼が反ユダヤ主義者だと主張するのは言語道断だ。

これは判決ではない。告発を真剣に受け止めるべき理由だ。

実際、イスラエル政府がテオドール・メロンの訴えをもっと早く、つまり私がアーカイヴで発見した覚書を書いた1967年9月に真剣に受け止めていれば、イスラエルはこのような状況には陥っていなかっただろう。

当時、エシュコル首相は、3カ月前の予期せぬ戦争でイスラエルが征服した領土に入植地を建設すべきかどうかを検討していた。エシュコルは、1948年にアラブ軍に制圧されたキブツ、クファル・エツィオンの再建に傾いていた。その場所は、ヨルダン川西岸地区のヘブロンとベツレヘムの間にあり、その間ヨルダンの支配下に置かれていた。エシュコルはまた、同じくイスラエルに最近征服されたシリア領ゴラン高原への入植にも関心を持っていた。

しかし、閣議において法務大臣は「施政下」地域[administered” territory](政府が占領地を指す用語)への民間人の定住は国際法違反になると警告していた。エシュコルの局長は外務省の法律顧問に意見を求めた。

メロンの回答は断定的だった。「私の結論は、施政下における民間人の定住は、ジュネーブ条約第4条の明示的な規定に違反となる」。メロンによると、1949年の戦時における文民保護に関する条約は、占領国が自国民の一部を占領地に移動させることを禁じている。この規定は、征服国による「植民地化を防止することを目的としている(aimed at preventing colonization” by the conquering state)」と彼は書いている。

9日後、イスラエルの若者の一団が政府の支援を受けてクファル・エツィオンに入植地を設置した。当初、この入植地は公に軍事前哨基地(a military outpost)とされていた。メロン自身も指摘していたように、占領地に臨時の軍事基地を建設することは合法だった。しかしこれは策略であり、新たな入植地の民間性が高まるにつれ、その効果は急速に薄れていった。

そこでイスラエル政府はすぐに、著名なイスラエル人法学者イェフダ・ブルムとメイア・シャムガルの主張に頼るようになった。彼らは、ジュネーブ条約第4条はヨルダン川西岸地区には適用されないと主張した。ヨルダンの主権は国際的にほぼ完全に承認されていないため(というのが彼らの主張だった)、ヨルダン川西岸地区は占領地ではないという主張だ。

メロン自身が最初の覚書から50年後の2017年に書いたように、この理論は根拠がない。ジュネーブ条約は国家や主権主張を守ることを目的としたものではない。占領下の人々を占領国の行為から守るものだ。

ここで疑問が生じる。もしエシュコル政権が1967年に歯を食いしばり、自国の弁護士の意見を受け入れていたらどうなっていただろうか?

まず、占領地に入植地は存在しなかっただろう。イスラエルの広大な郊外、より小規模なゲート付き郊外、そして小さな前哨基地からなるネットワーク全体は存在しなかっただろう。イスラエル軍はこれらのコミュニティを警備する必要もなく、イスラエルは占領地に自らを縛り付けるために莫大な資源を投入することもなかっただろう。

今頃、イスラエルの隣にパレスティナ国家が誕生していたのか、あるいはどこか別の場所で平和が実現していたのか、私たちには分からない。入植地は和平合意の唯一の障害ではなかった。しかし、大きな障害の1つであることは確かだ。さらに、入植地の一部、つまりイデオロギー的な郊外は、土地の放棄に断固反対するイスラエルの過激な宗教右派の温床となってきた。ネタニヤフ政権の二大極右政党は入植者によって率いられており、入植地を中核的な支持基盤としている。入植地がなければ、イスラエルが現在の苦境を回避できた可能性は高かっただろう。

当時、メロンの意見を受け入れていれば、イスラエルの政治家や軍指導者の間に国際法に対する異なる姿勢、すなわち厳格な遵守の姿勢が確立されていたかもしれない。おそらくそのような姿勢が、ネタニヤフとガラントに、現在の戦争を異なる方法で遂行させ、国際刑事裁判所の検察官が現在主張しているような行為を回避させていたかもしれない。

しかし、キーワードは「疑惑(alleged)」だ。カーンが主張する犯罪の重要な要素は、それらが意図的であったこと、つまり飢餓(starvation)やその他の民間人の死因が政策として設定されていたことだ。

イスラエルの指導者たちが、ガザ地区の人々への食糧やその他の基本的なニーズの供給を意図的に阻止した可能性は確かにある。つまり、援助が遮断されたのは、ハマスに人質解放、あるいはガザの支配権を放棄するよう圧力をかけるためだ。ハマスはガザ地区の民間人を人間の盾として利用してきた。おそらくネタニヤフ首相は、彼らの苦しみをハマスに対する武器として利用しようとしたのだろう。

ガザ地区の人々に食糧を届けられなかったのは、戦闘の混乱、エジプトの失策、ハマスの行動、イスラエル兵が援助活動員に誤射したこと(イスラエル兵が時折、他のイスラエル人に対して誤射したことも同様)、そしてイスラエル政府の無能さ(10月7日にイスラエルを無防備な状態に陥れた悲惨な無能さの継続)といった複数の要因が重なった結果である可能性もある。

世界中のあまりにも多くの人々が、主に先入観やメディア報道の洪水に基づいて、これらの可能性のどれが真実なのかを既に確信しているようだ。しかし、もしカーンがネタニヤフとガラントを裁判にかけることに成功したとしても、確固たる証拠によって意図を立証する必要があるだろう。

メロンの1967年のメモを発見したことで、もう1つ教訓を得た。政府の意図を示す最良の証拠は、しばしば何十年も秘密にされた文書の中に隠されているということだ。これは戦争における決定においてはなおさら当てはまり、イスラエル自身がガザ地区で何が起きたのかを調査すべき理由をさらに強めるものだ。

国際刑事裁判所がイスラエルの機密文書にアクセスする可能性は低い。一方、10月7日の悲惨な情報漏洩以降の戦争遂行の全過程を調査するイスラエルの国家調査委員会は、そのようなアクセスを要求し、政府高官や将校を召喚して証言を求めることができるだろう。

カーンの発表で明確に示されたのは、イスラエルが容疑犯罪について独自に「独立かつ公平な(independent and impartial)」調査を実施するのであれば、カーンはイスラエルの判断に従うという点だ。これは「補完性(complementarity)」の原則であり、国際刑事裁判所の管轄権は各国の司法制度が機能しない場合にのみ適用される。

調査委員会は刑事手続きではない。しかし、イスラエルが自国で調査を実施するのであれば、カーンには自らの調査を中断または終了する十分な理由があるだろう。

しかし、イスラエル国内では、ネタニヤフ政権が必要な独立性と広範な権限を有する調査委員会を設置することはないのは明らかだ。それは、国の深刻な政治危機が政権の崩壊と新たな選挙に繋がった場合にのみ可能となる。

ネタニヤフ首相は、カーン首相による逮捕状請求に対する国民の反射的な怒りを利用して、失った支持をいくらか回復させようとしている。しかし、理性的な反応は正反対だ。国際刑事裁判所での訴訟の可能性は、ネタニヤフ政権を終わらせ、戦争のあらゆる側面を調査する新たな理由となる。

言い換えれば次のようになる。1967年、占領開始当初、イスラエル政府は国際法に関する非常に若い顧問からの警告を無視した。今日、イスラエルは戦争法に関する非常に老練な権威、つまり同じ人物からの新たな警告に耳を傾ける必要がある。

※ガーショム・ゴレンバーグ:イスラエルのジャーナリスト・歴史家。最新作に『影の戦争:暗号解読者、スパイ、そしてナチスを中東から追い出すための秘密の闘争(War of Shadows: Codebreakers, Spies, and the Secret Struggle to Drive the Nazis From the Middle East)』がある。ツイッターアカウント:@GershomG

(貼り付け終わり)

(終わり)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 

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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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中国は、中東情勢における重要な出来事である、2025年6月のイスラエルとイランの停戦を受けて、中国は中東地域における紛争が中国の国益にどう影響するかを考慮している。中国は中東地域から石油を輸入しており、中東の安定は中国の国益に適うことになる。また、中東地域やアフリカの各国との協力関係を深めており、中東情勢の悪化によって地域が不安定化し、戦争が起きたり、政府が倒されたりということは望ましいことではない。
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一方で、中東地域において、アメリカがイスラエルへの支援に偏重することで、他の中東地域の国々、特に伝統的な同盟国であるサウジアラビアとの関係が悪化したり、中東地域におけるアメリカの役割が縮小したりする事態は中国にとって望ましいことでもある。中国としては、中東地域のある程度の事態悪化までは容認できるという考えもある。そのために、イランを更に支援するということも考えられる。

 しかし、事態悪化が中国にとって都合の良いレヴェルで収まってくれるという保証はない。それどころか、コントロールできないということになれば、事態悪化が中国にとって都合が悪いということになってしまう。従って、合理的な判断は、事態の鎮静化、地域の安定ということになる。

 これに対して、アメリカはこのような複雑な思考ができず、ひたすらイスラエル支援にまい進している。イスラエルを支援すればするほど、イスラエルを危険に晒すということすらも分かっていない。イスラエルがガザ地区で行っている残虐な行為をアメリカが支援している、アメリカが化膿しているという構図を世界に晒し続けることは、イスラエルを危険に晒すだけではなく、アメリカも危険に晒す、国益に反する行為だ。このような判断すらもできなくなっているアメリカに世界覇権国の資格はないし、アメリカの支配層の劣化は目を覆いたくなるほどに酷い状況になっている。
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 日本もよくよく考えておくべきだ。アメリカに隷従しておけばよいという時代は終わった。そして、日本国民は賢くならねばならない。しかし、この失われた30年で、十分に痛めつけられ、日本の再興はかなり期待できない状況になっていると私は悲観している。

(貼り付けはじめ)

北京は中東情勢の激化を歓迎するだろうか?(Would Beijing Welcome Escalation in the Middle East?

-中国は不安定化によって大きな損失を被ることになる。

デン・ユウェン筆

2025年6月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/26/china-xi-middle-east-iran-israel-peace-trump/

北京は、アメリカのイラン攻撃とそれに伴うイスラエル・イラン間の(不安定ながらも)停戦を受けて、自らの立場を模索している。紛争が長期化すれば、必然的に波及し、アメリカ以外の主要諸国までも巻き込む可能性がある。それでは、この紛争は中国の国益にどう影響するのか? 北京は紛争のさらなる激化を望むのか、それとも公式声明が示唆するように、緊張緩和(cool down)と停戦(a cease-fire)の実現を真に望んでいるのか?

この問いに答えるには、中国の中東戦略とアメリカとの広範な戦略的競争という2つの側面から分析する必要がある。

一見すると、イスラエルとイランの紛争は中国とほとんど関係がないように思える。しかし、この紛争は中国の「一帯一路」構想(China’s Belt and Road InitiativeBRI)を混乱させ、エネルギー安全保障に影響を与え、さらには米中対立にも波及する可能性がある。つまり、中国は紛争の行方に真の利害関係を有している。

中国の中東戦略は、主にエネルギー安全保障の確保を最重要視している。それは、中国は湾岸諸国やイランから大量のエネルギーを輸入しているためだ。次に、同地域における経済的利益、すなわち一帯一路プロジェクトの実施が位置づけられる。最後に、アラブ諸国やイランとの政治的協力が挙げられる。この協力は、結局のところ前者の2つの目標に奉仕するものである。もし中国が中東産油への依存度がそれほど高くなく、過剰な工業生産能力を同地域に輸出する必要がなければ、中東諸国との緊密な関係維持やイランとサウジアラビアの仲介に、これほど強い動機は持たなかっただろう。

中国はウクライナ紛争後、ロシア産原油の購入を増やしているものの、依然として石油埋蔵量の大部分は中東産である。停戦が崩壊し紛争が拡大すれば、中国の中東における一帯一路構想プロジェクトは必然的に影響を受けるだろう。

過去10年間、一帯一路構想は中東において他のほとんどの地域を凌駕する大きな進展を遂げてきた。戦争によって引き起こされた協力の減速、あるいは強制的な停止は、中国の輸出と経済全体に直接的な打撃を与えるだろう。もしイランがホルムズ海峡封鎖の脅しを実行に移した場合、その結果生じる経済混乱は中国の原油輸入と経済回復に深刻な影響を与えるだろう。

しかしながら、このシナリオは北京にとって最悪の事態ではないかもしれない。中国が最も恐れているのは、アメリカ・イスラエル共同の軍事圧力によってイランの神政政治体制(Iran’s theocratic regime)が転覆することだ。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、アメリカによるイランの核施設への攻撃を受け、イラン国民に対し、政府への反乱を公に呼びかけた。ドナルド・トランプ米大統領も政権交代を示唆している。もしそれが現実のものとなった場合、中国の長年にわたるイランへの投資と関与は水の泡となり、アメリカ主導の反乱に対する北京自身の長年の懸念を裏付けることになるだろう。

北京が現在のイランと連携していることで、イスラエルとは疎遠になっている。アメリカとイスラエルの支援を受ける新たなイラン政権は、少なくとも当初は中国を脇に追いやる可能性が高く、イランだけでなく中東全体における中国の立場に大きな打撃を与えるだろう。

中国の中東戦略の観点から言えば、北京はこの戦争がエスカレートすること、特に本格的な地域紛争に発展することを望んでいない。中国が停戦と地域の安定を求め、アメリカのイラン攻撃を非難するのは、単に道徳的な優位性のためだけではない。真の懸念を反映しているのだ。

しかし、イスラエルとイランの紛争は、より広範な米中競争にも影響を与えている。そして、場合によっては、これが中国の地域戦略(regional strategy)に取って代わる可能性もある。紛争の悪化が、たとえ短期的な経済的痛みを犠牲にしても、アメリカの影響力に対抗しようとする北京の努力に有利に働くならば、北京は実際には、アメリカがイスラエルを支持するのと同様に、限定的なエスカレーションを容認、あるいは支持する傾向にあるかもしれない。ジョン・ミアシャイマーなどの学者たちは、イスラエルによるイランの核施設への空爆、そして、アメリカによるイスラエル支援への介入は、最終的にはアメリカを犠牲にして中国に利益をもたらすと主張している。

最近のインタヴューで、ミアシャイマーはイスラエルとトランプ政権が危機を煽っていると批判した。アメリカは中国からのより大きな戦略的脅威に直面しており、ペルシャ湾で資源を浪費するのではなく、東アジアに資源を集中させるべきだと主張した。

ワシントンは湾岸地域から東アジアへの海軍・航空戦力の再展開を計画していたが、イスラエルのエスカレーションにより、ニミッツ級空母と爆撃機を湾岸地域に戻した。より広範な地域戦争は、アメリカが東アジアからさらに多くの軍事力の撤退を余儀なくさせ、弾薬備蓄(ammunition stockpiles)を枯渇させ、中国に対する抑止力を損なうことになるだろう。ミアシャイマーの見解では、中東情勢の動向は明らかにアメリカの利益にならない。

アメリカの視点からすれば、この論理は妥当である。エスカレーションによって紛争が長引けば、アメリカ軍は膠着状態(bog down)に陥り、東アジアにおけるプレゼンスが低下する可能性がある。そうなれば、アメリカは中国との長期的な競争を維持する能力を弱めることになる。

しかし、アメリカに損害を与えるものが必ずしも中国の利益になるとは限らない。ミアシャイマーの論理が成り立つためには、エスカレーションはイランの体制転換(regime change)に至ることなく、イランが長期にわたる軍事闘争を維持する能力を維持しなければならない。イラン政権が崩壊した場合、新政府がアメリカにとって強力な敵であり続けるかどうかは不透明だ。政権が存続した場合、トランプ大統領が長期的な軍事資源を投入して対立を継続するかどうかも同様に不透明だ。

北京の観点からすれば、イランとイスラエルの紛争が「第二のアフガニスタン(second Afghanistan)」となり、アメリカの注意を逸らすためには、イランは軍事力を維持しなければならない。そのためには、直接的な軍事支援、あるいはパキスタンなどの第三者を介した軍事支援、あるいはイラン国内の防衛産業への支援が必要になるかもしれない。北京による公然たる軍事支援は考えにくいものの、イランの自立性(ran’s self-sufficiency)を強化するための静かな支援はあり得る。

要するに、東アジアにおけるアメリカの戦略的圧力を軽減するために、北京はイスラエルとイランの紛争がエスカレートすることを、ある程度までは有利と見なすかもしれない。しかし、それはイランがホルムズ海峡を封鎖したり、内部崩壊したりしない限りの話だ。エスカレーションが始まれば、どこで止まるかを予測するのは困難だ。北京の立場は本質的に矛盾しており、停戦を求める声には少なくともある程度の誠実さが込められている。

これまで、北京は戦争に対するこの立場を明確にしてきた。カザフスタンのアスタナで最近行われた中国・中央アジア首脳会議において、習近平国家主席はウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領にこの問題を提起し、イスラエルの軍事行動が地域の緊張の高まりを招いていると批判した。

習主席はまた、ロシアのプーティン大統領ともこの紛争について協議し、双方、特にイスラエルに対し、緊張緩和と外交ルートへの復帰を促した。中国の王毅外相は、イランとイスラエルの外相、そして他の中東諸国の外相たちと会談し、イスラエルを厳しく批判するとともに、イスラエルのギデオン・サール外相に対し、イスラエルによるイランへの攻撃は国際法違反であると訴えた。北京はまた、イランの核施設に対するアメリカの空爆を強く非難した。

北京のメッセージは明確だ。外交的にはイランを支持し、イスラエルとアメリカを非難し、より広範な地域的不安定化を避けるため自制を求めている。しかし同時に、全面戦争(total war)を回避し、外交への回帰を促している。

中国国内には密かにエスカレーションを望んでいる人間たちもいるかもしれないが、北京が一貫して平和を重視していること、特に一帯一路構想と中国の石油安全保障への潜在的な損害を考慮すると、少なくとも今のところは、北京は紛争が制御不能に陥ることを望んでいないことが窺(うかが)える。

※デン・ユウェン:中国の作家・学者。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※2025年11月に新刊発売予定です。新刊の仮タイトルは、『「新・軍産複合体」が導く米中友好の衝撃!(仮)』となっています。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。

 2023年10月から始まったイスラエル・ハマス紛争はイランやシリア、レバノンを巻き込んでの地域紛争となっている。イスラエルがシリアやレバノンを攻撃し、紛争を拡大している。イスラエルに対しても、イランからのミサイル攻撃が実施されるなど、厳しい状況が続いている。ガザ地区ではイスラエル側による住民への非人道的な攻撃が続いている。

 イスラエルがなぜこのような残虐な行為を続けているのか。自国の安全保障のため、自国の存在を守るためという理由付けがされるが、実際のところは、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が自身と家族のスキャンダルによる裁判、投獄を避けるために、権力に妄執し、極右勢力を内閣に引き入れて、戦争を継続、拡大させているからだ。自身の汚職の責任を取りたくないために、投獄されることを避けるために、首相の座を握る必要がある。そのために戦争を拡大させている。このことは、2024年に出した、佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相』(秀和システム)で、佐藤先生が指摘している。そのことがアメリカでも報道されているようだ。

 そして、ガザ地区の紛争ぼっ発当初からの窮状について、その時に政権を握っていた、ジョー・バイデン前大統領と側近たちは、その実情を知りながら、知らないと嘘をつき、そのようなことは起きていないと嘘を重ねながら、イスラエルを支援し続けたという告発がなされている。バイデン政権のそのような虚偽を押し通す姿勢に抗議して職を辞した人物たちもいて、そうした人々が声を上げている。遅きに失したという批判はあるだろうが、声を上げない(ゼロ)よりも、声を上げる(イチ)ということは、「ゼロからイチへ」という大きな行動である。

 現状、ガザ地区で日々命の危機に去られている人々への責任は当事者全てにある。アメリカは免罪されない。アメリカこそが重大な責任を負っている。ネタニヤフの延命に手を貸しているということでいけば、イスラエル国民に対しても責任を負っている。ドナルド・トランプ大統領が登場して、イスラエルへの支援を続けている。状況は変わっていない。しかし、トランプ大統領はイラン空爆を行って、事態を一応収めている。イスラエルにこれ以上の攻撃は無用、もし攻撃をすればアメリカの意向に反する行為だと釘を刺している。ネタニヤフはガザ地区で非人道的な攻撃を繰り返して、イランやイスラム組織を挑発し、先に手を出させて、イスラエルの攻撃の正当性を担保しようとしている。どこまでいっても、ガザ地区の人々は救われない。大きく見れば、世界的にイスラエルとアメリカが行っている行為は、多くの批判を浴び、怒りを集めている。結局のところ、これらはイスラエルとアメリカの国益に適わない。無理に無理を重ねていけばいつか続かなくなる。イスラエルの国際社会での立場はのけ者にならざるを得ない。イスラエルの良識あるっ勢力が権力を獲得することが何よりも重要だ。

(貼り付けはじめ)

バイデンのティームはガザ地区について嘘をついた。彼らの責任を問う時だ(Biden’s Team Lied About Gaza. It’s Time to Hold Them Accountable.

-戦争犯罪を幇助したことへの免罪符はアメリカの民主主義を弱体化させる。

マシュー・ダス筆

2025年7月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/07/18/biden-war-crimes-israel-gaza-accountability/

7月11日、『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』誌は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が政治的な理由でガザ紛争を長期化させている実態を詳細に取材した記事を掲載した。この記事は、首相が自らの連立政権維持に狂信的なまでに執着し、投獄を免れるために、数万人(そして今も増え続けている)のパレスティナ人を殺害し、イスラエル人人質の命を犠牲にし、自国イスラエルを国際的なのけ者(an international pariah)にしようとしていることを示しているだけでなく、バイデン政権の戦争対応を非難する検察側の報告書における新たな証拠となっている。ジョー・バイデン前米大統領は、無責任で気難しい人物として描かれ、ネタニヤフ首相に方針転換を迫り、彼がそうすると言ったら信じ、そしてネタニヤフ首相がどうしてもそうしないと激怒するという描写が繰り返されている。

偉大なアメリカの詩人ジョージ・W・ブッシュの言葉を借りれば、「私を一度騙すなら、それはあなたが悪い。一度騙されたら、二度と騙されることはない(Fool me once, shame on you. Fool me—can’t get fooled again)」ということになる。

たとえバイデンが騙されていたとしても、言い訳はできない。もしバイデンが、何が起きているのか正確に知らなかったとしても、彼の国家安全保障ティームの他の幹部たちは確実に知っていた。数週間前、国務省のマシュー・ミラー前報道官は、イスラエルがガザ地区で「戦争犯罪を起こしていることは疑いなく事実だ」と発言して話題となった。しかし、スマートフォンを持っている人なら既に知っていたことだ。歴史上、被害者と加害者の双方によってこれほど詳細に記録され、リアルタイムで放送された大規模残虐行為(mass atrocity)はない。それでも、ミラーのような人物の発言は注目に値する。彼は以前、その証拠を見たことがないと繰り返し否定するのが仕事だった。

バイデン政権のガザ地区政策の基礎となった嘘は、ガザ地区で市民に加えられた甚大な被害は意図的なものではないというものだった。民間人に危害を加えることは、イスラエルの戦略の一部なのだ。国際司法裁判所での南アフリカの裁判でも明らかになったように、イスラエル政府高官の多くは、この点に関する彼らの意図をかなり公言している。

この戦争に関する膨大なリアルタイムの報告、とりわけパレスティナ人自身による報告に加え、スージー・ハンセンによる最近のニューヨーク・タイムズ・マガジンのカバーストーリーは、バイデン政権高官がいつ何を知っていたのかについて、これまでで最も詳細な説明を提供している。ミラーの告白とともに、政権高官たちは戦争犯罪が行われていることに気づいていなかったという主張は、これで一掃されるはずだ。それにもかかわらず、重大な人権侵害や人道援助の制限で告発されている軍への武器供与を禁止するアメリカの法律に違反して、彼らは武器を供与し続けたのだ。

バイデン政権の高官たちが、この歴史的大惨事(historic catastrophe)における自分たちの役割を正当化するために用い、そして今も用いている主な論拠について、簡単に触れておく価値がある。国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたジェイク・サリヴァンが公の場でこの件について質問された際に、サリヴァンがそれらの論拠を一つ一つ説明しているのを見たことがあるだろう。

第一に、イスラエルの敵対勢力はアメリカによる武器供給停止を攻撃の動機と解釈し、バイデン政権が避けたかった地域情勢の激化につながる可能性があるというものだ。これは二つの理由から疑問視される。一つ目は、ハマスにとって大きな失望であったが、その同盟者と目されるヒズボラとイランは、象徴的な武力誇示以外には戦争に参加する意思がなかったことは明らかである。バイデンがアメリカの大きな影響力を行使して戦争を終結させたとしても、この計算が変わらなかったという証拠は見当たらない。二つ目に、戦争が最終的に地域的に激化した際、それをエスカレートさせたのはバイデンの支援を受けたイスラエルであった。

もう一つの主張は、武器供給を維持することで、武器供給が停止されていたならば失われていたであろう、イスラエル政策に対するアメリカの影響力が一定程度発揮できたというものだ。この主張が明らかに機能しなかったという事実に加え、私がこの主張を非常に奇妙に思う理由の一つは、現在主張している同じ人物が以前はそれを否定していたという事実だ。

2018年11月、バラク・オバマ政権の元高官30人が、イエメン戦争への残虐な介入を理由にサウジアラビアへの武器供給停止を支持する公開声明を発表した。署名者たちは、以前は「同盟軍に国際人道法を遵守させ、並行する外交努力を支援するための影響力を得るために」サウジアラビアを支持していたが、今にして思えばこれは間違いだったと説明している。署名者のほぼ全員が後にバイデン政権で働いた。そして今、イスラエルのガザ戦争への支持を、サウジアラビアのイエメン戦争への支持を正当化した際に後悔したのと全く同じ言葉で正当化している人もいる。

この主張をする政府高官たちは、多大な努力によって、イスラエルが本来提供していたであろう以上の援助をガザ地区に時折送り込むことができたと指摘する。その援助が、そうでなければ援助を受けられなかった少数の人々にとって確かに大きな変化をもたらしたことは認めるべきだが、イスラエルの攻撃を支援し続けることの代償を帳消しにするには程遠い。時折ジェノサイドにブレーキをかけたからといって、大して評価されるべきではないと思う。

しかし、問題はここにある。たとえ、その正当性が理にかなっていたとしても、バイデン政権がイスラエルの行為について国内外に誤解を与え続ける必要はなかった。人道支援を妨害するイスラエルの政策には明確な証拠があるが、アメリカの安全保障上の利益は、支援を打ち切るのではなく、武器を供給し続けることが最善であると述べて、支援を継続するために法的な権利放棄の権限を使うこともできたはずだ。そうすれば、少なくとも率直な議論ができたはずだ。

しかし、彼らはそうしなかった。彼らは嘘をついた。何度も嘘をついた。組織的虐待の証拠はないと主張した。彼らは「あまりにも多くのパレスティナ人が殺された」などという奇妙な表現に頼った。イスラエルは人道支援を促進するために「十分なことをしていない」と言い、政策上の問題を物資供給の問題(a logistic problem)であるかのように装った。

バイデン政権は、イスラエルの行為の現実を曖昧にすることに全力を注いでいたため、幻想(the illusion)を持続させる目的でまったく新しいプロセスを作り出した。2024年2月にバイデンが率いるホワイトハウスが発表した国家安全保障覚書第20号は、米国務省に対し、「(アメリカの)防衛品と、必要に応じて防衛サーヴィスを受け取る外国政府から、アメリカと国際法を遵守するという、一定の信頼できる書面による保証を得る」よう指示した。

ここ数カ月、私はホワイトハウス、米国務省、そしてペンタゴンで働いていたバイデン政権の元高官たちと数多く面会してきた。彼らのほとんどは、この事実を否定していない。イスラエルが意図的に民間人に危害を加えており、バイデン政権はあらゆるレヴェルでそれを認識していたことを認めている。彼らは、この政策に対して政権内部で抵抗を続けてきたと主張している。彼ら全員に対する私の返答は一貫して同じだ。それは、「今すぐ声を上げ、それについての真実を語って欲しい(Speak up now and tell the truth about it)」だ。

しかし、今のところ、彼らが声を上げている姿を見ていない。ごくわずかな例外を除いて、イスラエル・パレスティナ問題担当元国務次官補のアンドリュー・ミラーや、元ホワイトハウス特別顧問のイルアン・ゴールデンバーグなどはそうしているが、彼らのほとんどは、バイデン政権が助長した残虐行為の甚大さ、そして国と世界にもたらすであろう極めて悲惨な結果について、公の場で真摯に反省しようとさえしていない。前国務長官のアントニー・ブリンケンは、ドナルド・トランプ大統領のイラン攻撃に関する最近の『ニューヨーク・タイムズ』紙の論説で、いかなる成功も自分の手柄にするという臆面もなく姿勢を示しながら、「ガザ地区」という言葉に一度だけ言及した。

それでは、アメリカの政治家と有権者たちは、この問題に対してどうすべきだろうか。バイデン政権の高官たちが外交政策エスタブリッシュメントに再び戻っていく中、これは重要な問いだ。マシュー・ミラーが上司である大統領の建前を言い続けること選んだと認めたことは、バイデンを二度と信頼できる人物として扱うべきではないことを明確に示している。しかし、私たちは既にそのことを承知しており、たとえ遅きに失したとしても、ミラーが今声を上げたことは非常に重要なのだ。

彼の同僚たちから、彼らが何を知っていたのか、いつ知ったのか、そして政策変更の試みが高官たちによって繰り返し阻止された経緯について、もっと多くの話を聞く必要がある。たとえ非常に遅ればせながらでも、声を上げる元高官たちを攻撃するのではなく、歓迎すべき。ガザ地区でのジェノサイドとされる事件の再発を防ぐには、そしてそれが最優先事項でなければならないのは、人々が歴史の記録に何が間違っていたのかを語り、遅かれ早かれそれを実行するために、知っていることを私たちに伝える場を作ることだ。

重要な時に声を上げ、公に辞任するという職業上のリスクを負った高官や任命された人々も、私たちは認めるべきだ。ジョシュ・ポール、タリク・ハバシュ、ハリソン・マン、リリー・グリーンバーグ・コール、そしてステイシー・ギルバートは皆、名誉ある公務員とはどういうことかを私たちに示してくれた。彼らは「ノー」と言う勇気を持っていた。彼らはまさに、この国が政府に必要としている人材だ。

バイデンのガザ政策を立案した人々はそうではない。率直な発言によって最終的に政府に復帰できる可能性のある、より若い高官たちとは異なり、この大惨事の最も責任のある人々は、将来の政権においていかなる役割も担うべきではない。

元政権の同僚や他の民主党員から聞いた主張の1つは、トランプとトランプ主義という真の脅威に焦点を当て、民主党連合内で争うべきではないというものだ。これは、2009年にバラク・オバマ元大統領がブッシュ政権下の拷問者たちの法的責任追及を断念した際に述べた言葉と重なる。「過去を振り返るのではなく、未来を見据えよう(Look forward as opposed to looking backward)」というものだ。

しかし、この主張には2つのポイントが欠けている。第一に、これは単に「過去を振り返る」ことではないということだ。ガザ地区でのジェノサイドは今も続いている。今まさに起こっている。むしろ、激化している。説明責任追及(accountability)は、将来の犯罪を防ぐだけでなく、現在発生している犯罪を阻止するためにも必要だ。

第二に、オバマ大統領の決定は、その時点では賢明な政治的判断だったかもしれない。しかし、2008年に経済を崩壊させた企業幹部に何の責任も負わせなかった決定と同様に、エリート層の不処罰というシステム(a system of elite impunity)を強化し、アメリカの民主政治体制を蝕んでしまった。トランプが「システムは不正に操作されている(the system is rigged)」と発言して支持を集めるのは、システムが不正に操作されているからだ。それはトランプのような富裕層のために不正に操作されている。そして、想像し得る最悪の犯罪を幇助しても、法的、職業的、その他の面で何の責任も問われない、元政府高官のようなコネと影響力を持つ人々のために不正に操作されているのだ。

アメリカの民主政治体制の再建を真剣に考えるならば、不正操作を是正し、不処罰を終わらせることが不可欠だ。ガザ地区問題への責任追及を求める闘いは、トランプ主義との闘いと切り離せない。

※マシュー・ダス:国際政策センター筆頭副会長。2017年から2022年までバーニー・サンダース連邦上院議員の外交政策アドヴァイザーを務めた。Xアカウント:@mattduss

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 2025年6月13日にイスラエルはイランの核開発関連施設に対する攻撃を行った。イランの革命防衛隊の司令官と参謀総長が死亡した。イランはイスラエルに向けてミサイルを発射し、報復攻撃を行った。その後、イスラエルはイランに対しての空爆を継続し、イランの国防省を攻撃し、イラン国内の油田・石油採掘施設を攻撃するなど攻撃を拡大している。アメリカのドナルド・トランプ政権はイランとの交渉を行っている最中でのイスラエルによる攻撃に不満を持っている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は極右勢力に支えられ、かつ、自身の汚職からイスラエル国内、国外の注目を逸らさせるために、戦争を拡大しようとしている。極め付きは、アメリカにイラン攻撃への参加を求めている。非常に危険な動きだ。イスラエル、正確にはベンヤミン・ネタニヤフと極右勢力には「自分たちにはアメリカがついている、いや、アメリカ国内政治を動かして自分たちの思い通りに動かせる」という思い上がりがある。

 第1次ドナルド・トランプ政権では、前任のバラク・オバマ政権で成立した、イランとの核開発をめぐる合意から離脱した。そのために、イランは核開発を継続した。それが、第2次ドナルド・トランプ政権では姿勢を転換し、イランとの交渉を開始した。そうした中で、イスラエルによるイラン攻撃が実施された。第2次トランプ政権のイランとの関係修復は賢明な動きである。何よりも、バイデン政権後半で、中国の仲介によって、サウジアラビアとイランの関係改善が成功した。アメリカは中東においてその役割を縮小させ、存在感を減らしている。イスラエルにとってアメリカの中東地域における減退・撤退は死活問題である。イスラエルはアメリカのバイデン政権の仲介で、サウジアラビアとの関係改善、国交正常化を目指していた。しかし、イスラエル・ハマス紛争によってその動きは頓挫した。

 こうして考えてみると、中東地域においても、私の分析の枠組みである「西側諸国(ジ・ウエスト、the West)」対「西側以外の国々(ザ・レスト、the Rest)」、「グローバル・ノース(Global North)」対「グローバル・サウス(Global South)」の対立が反映されていると考える。イスラエルは核兵器さえも持つ軍事強国であるが、今回の攻撃は、一種の不安からの暴走であると考えている。

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ドナルド・トランプ大統領が中東で正しく判断したこと(What Trump Got Right in the Middle East

-アメリカ大統領によるイランへの和解(olive branch)は、ワシントンの外交政策におけるパラダイム・シフト(a paradigm shift)となる可能性がある。

ハワード・W・フレンチ筆

2025年5月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/16/trump-middle-east-trip-iran-us-foreign-policy/

あるニューズ・イヴェントの重要性は、主流メディアがそれをどれだけ軽視、あるいは完全に無視するかによって測られることがある。今週、ドナルド・トランプ米大統領が中東歴訪中に、アメリカの外交政策のパラダイム・シフト(a paradigm shift)に繋がりかねない発言をした時、まさにその通りだった。

トランプが二期目初の外遊を開始して以来、メディアの注目は、旧型エアフォースワンの後継機としてカタールから超高級機ボーイング747を受け入れるという決定(批評家たちからは露骨な腐敗の兆候[a breathtaking sign of corruption]だと広く非難されている)と、アメリカがダマスカスに対する長年の経済制裁を解除すると発表した後にシリアの新大統領アハメド・アル・シャラーと電撃会談を行ったことに集中している。

どちらの話題も、真剣に検討する価値がある。しかし、トランプ大統領が裕福なアラブ諸国を次々と訪問する間、アメリカの各報道機関は、いくつかの例外を除き、中東およびその周辺地域に重大な地政学的影響を及ぼす問題、すなわちトランプ大統領がイランに和解(olive branch)の手を差し伸べる決断について、比較的少ない言葉しか割(さ)かなかった。

トランプ大統領は火曜日、アメリカが40年間執拗な敵として扱ってきたイランと直接交渉する決意を表明した。トランプはリヤドでの演説の中で、「繰り返し示してきたように、たとえ両国の間に大きな隔たりがあったとしても、過去の紛争を終わらせ、より良く安定した世界のために新たなパートナーシップを築く用意がある」と表明した。

ワシントンにおいて、イスラエルとの足並みを揃えた同盟関係、ひいては中東地域の大国にイスラエルの宿敵であるイランの封じ込めを支援するよう働きかける必要性ほど、外交政策に関する信念が深く根付いているものは少ない。この戦略を少なくとも部分的にキャリアに重ねてきた多くのアナリストは、今回の訪問後、トランプ大統領がすっかり忘れてテヘランへの働きかけを放棄するか、あるいはイランがホワイトハウスに考えを変えさせるような挑発的な行動に出るかを期待、あるいは信じているかもしれない。

関税を軸とした経済政策が示すように、トランプは一貫性のある人物と見られている訳ではない。そのため、イランとの和解(rapprochement with Iran)に向けた言葉だけの試みが長続きしないと考えるのは愚かなことではない。しかし、アメリカがこの考えを真剣に追求しないのであれば、それは遺憾である。同盟諸国への高関税から、ガザ地区をパレスティナ人を排除した高級不動産開発地とするという提案(トランプは今回の訪問でもこの提案を繰り返したが、ガザ地区におけるイスラエルの壊滅的な懲罰的軍事作戦にはほとんど注意を払っていない)まで、奇妙でしばしば無意味に混乱を招く姿勢に満ちた外交政策の実績の中で、これは今のところトランプが正しかった数少ないアイデアの1つだ。

1979年のイラン・イスラム革命、そして、1979年後半のイラン人質事件に始まる、長年にわたるアメリカのイランに対する敵意が、どのような結果をもたらしたかを考えてみて欲しい。それは醜悪なバランスシートだ。例えば、アメリカはイラクを支援することで、1980年から1988年にかけてのイラン・イラク戦争を助長した。この戦争では、50万人から100万人の死者が出ており、前世紀で最も多くの死者を出した紛争の1つとなっている。

この歴史において、罪のない主体は存在しない。テヘランは、レバノンのヒズボラ、ガザ地区のハマス、イエメンのフーシ派といった過激派組織に武器と資金を提供し、世界最悪の現代独裁政治の1つである、最近打倒されたシリアのアサド王朝を支援してきた。イランはまた、イスラエルの破壊を主張してきた。

テヘランの忌まわしい立場を弁解する訳にはいかないが、そもそもなぜそのような事態に至ったのかを問わなければならない。その答えの1つは、西側諸国がイランの主権を歴史的に軽視してきたことにある。それは、1953年にCIAの支援を受けて民主的に選出されたモハンマド・モサデク首相が打倒され、イラン国王モハンマド・レザー・パーレヴィが親西側の独裁政権を樹立したことに遡る。イランが長らくイスラエルを敵対的なアメリカと西側諸国の代理と見なしてきたのも、当然のことである。

2000年代以降、ワシントンは1979年に初めて導入したイランの核開発計画を理由に、対イラン経済制裁を着実に強化してきた。しかしながら、イランがなぜ核技術の習得を必要としているのかを公に問うアナリストはほとんどいない。イランが核攻撃に対する正当な恐怖感や、究極の抑止力あるいは自衛手段としての核技術を必要としている可能性を考慮しようとしないからだ。イスラエルが、イランが近いうちに核兵器を開発する可能性に脅威を感じるのは当然だが、イスラエル自身も核兵器を保有している。また、シリアへの継続的な爆撃や領土侵攻が示すように、イスラエルは長年にわたり隣国を攻撃してきた。

2000年代を通じて、私は5年間北朝鮮を取材した。北朝鮮の状況は少なくとも部分的にはイランと類似している。北朝鮮による自国民への弾圧はテヘランよりもさらに顕著であり、海外でも挑発的で忌まわしい行動を頻繁に行っている。北朝鮮には、脅威を感じる歴史的な理由もある。専門家を除けば、朝鮮戦争が70年経った今も公式には終結していないことを認識している人はほとんどいない。そして、国際的に交渉された包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of ActionJCPAP)の下で、北朝鮮はイランと同様に、核開発計画の放棄または制限と引き換えに制裁解除を提案されている。

しかし、1980年代に北朝鮮が核兵器開発に真剣に取り組むようになって以来、それ以降のアメリカ大統領の試みは、北朝鮮の核開発を阻止することには繋がっていない。近年の世界史は、北朝鮮のような国が方針転換に抵抗する多くの理由を示している。ウクライナはソ連時代に自国領土に配備されていた核兵器を放棄したが、数十年後にはロシアの侵攻を受けた。リビアの独裁者ムアンマル・アル=カダフィは、違法な化学兵器開発計画を自主的に停止したが、西側諸国の支持を得て打倒され、最終的には暗殺された。今日のリビアは破綻国家であり、暴力と武器密売の氾濫によってサヘル・アフリカの大部分が不安定化している。

トランプ大統領の最初の任期中の北朝鮮へのアプローチは、最近のイランに対する発言の背後にある論理を示唆している。彼は金正恩委員長とハイレヴェルの個人外交を行い、潜在的に破滅的な地政学的状況を打開するため、二国間の緊張緩和に努めた。トランプの外交は、他の多くのことと同様に、不安定で計画性に欠けていた。朝鮮半島情勢を根本的に変えることもできなかった。

だからといって、トランプの行動の根底にある真実が必ずしも否定される訳ではない。際限のない軍備増強と将来の大惨事の可能性を回避する唯一の方法は、時に長年の敵国と交渉し、相互信頼(mutual confidence)と安全保障の保証(guarantees of security)を築く道を見つけることである。それは性急には達成できない。

イランと交渉することさえ、ワシントンの多くの者にとって受け入れ難いことであり、イスラエル政府にとっては考えられないことだろう。イスラエルは、イランの核兵器開発可能性を理由に、イランを存亡の危機とみなしているだけではない。アメリカの永遠の敵国であるイランの存在は、長年にわたり、アメリカによるイスラエルへの揺るぎない政治的支援、そして継続的な重武装の強力な根拠となってきた。トランプは木曜日、アメリカとイランは核合意の条件について「一応」合意したと主張したが、詳細は依然として不明であり、これがどのように展開するかは不透明だ。

しかし、他の地域では状況が変化しつつあるようだ。ドナルド・トランプ大統領の訪問以前から、サウジアラビアをはじめとする地域におけるイランの伝統的なライヴァル諸国は、テヘランとの緊張緩和への意欲を示し始めていた。こうした動きは、イランを好戦的に封じ込める政策は行き詰まりに陥るという確信から生まれたものと考えられる。地域大国は、数十年にわたる戦争によって中東の豊富な資源と人的資源の両方が浪費されてきたことを認識し始めている。この歴史的悪循環に終止符を打つには、人口9000万人、世界第19位の経済大国であるイランを冷遇から救い出し、テヘラン、アラブ諸国、そしてイスラエルの間に新たなポジティヴ・サム(positive-sum)の力学を構築する必要がある。

もちろん、私たちがこれを実現するには程遠く、多くの欠点や特異な点を抱えるトランプ大統領がそれを実現できる可能性は低い。しかし、何かを変えるためには、あるテーマを提起し、議題に載せなければならない。それがトランプ大統領の中東訪問の最も重要な遺産かもしれない。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり特派員を務めた。最新作に『黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War.)』がある。ブルースカイ・アカウント: @hofrenchbluesky.social Xアカウント:@hofrench

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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

 イスラエルを中心として、中東地域では不安定さが増している。中東地域においての地域大国としては、サウジアラビア、イラン、イスラエル、トルコなどが挙げられるが、サウジアラビアの動きがあまり見えてこない。イスラエルのガザ地区攻撃については、ムハンマド・ビン・サルマン王太子は「大量虐殺(ジェノサイド)」と呼んで非難しているが、中東情勢安定化のために、具体的には積極的には動いているようには見えない。自分たちは騒動の輪から外れようとしているようだ。

なによりも、サウジアラビアはバイデン政権下でイスラエルとの国交正常化交渉の下準備を進めており、2023年9月の段階で、国交正常化交渉の準備は順調に進んでいるとジョー・バイデン政権のジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が発言していた。それから1カ月後にハマスによるイスラエル攻撃が実施された。私は「サウジアラビアとイスラエルの国交正常化を阻むための動き」と見ている。サルマン王太子がイスラエルに対して「大量虐殺」という言葉を使ったことは国交正常化に向けて大きなハードルとなる。サウジアラビアは既に中国の仲介で、イランとの関係を正常化している。それ以上のことは、現在は望まないという意思を示しているかのようだ、

以下の論稿では、サルマン王太子が過去の失敗から学び、地域の混乱を避けるために内向きになっている可能性があると指摘している。彼は、国内の安定を確保することに重きを置いており、イランとの関係を利用して地域の安定を図ろうとしている。サウジアラビアは多額の投資を行っているため、基本的な安定を求めることが重要であり、イランとの関係を悪化させる理由はない。サウジアラビアは安定を求めているということだ。中東地域の安定は、サウジアラビアだけではなく、世界にとっても重要だ。

 サウジアラビアが動かないとなると、中東地域に安定をもたらすにはアメリカが出てこざるを得ない。具体的には、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の戦争拡大を止めるのはトランプの役割ということになる。トランプにそれができるかどうかが注目される。

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サウジアラビアがイランに傾斜する当の理由(The Real Reason for Saudi Arabia’s Pivot to Iran

-テヘランに対するムハンマド・ビン・サルマンの論調の変化は見かけほど混乱していない。

スティーヴン・M・クック筆

2024年12月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/12/02/saudi-arabia-mohammed-bin-salman-pivot-iran/?tpcc=recirc062921

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サウジアラビアの首都リヤドで開催された未来投資イニシアティヴFII会議に到着したムハンマド・ビン・サルマン(2018年10月24日)

ここ数週間、同僚、上司、恩師、そして高校時代の友人たちから、「ムハンマド・ビン・サルマンはどうなっている?」という質問を受けた。11月11日、リヤドで開催されたイスラム諸国首脳会議で、サウジアラビアの王太子は国際社会(翻訳:アメリカ)に対し、イスラエルに「姉妹国であるイラン・イスラム共和国の主権を尊重し、その国土を侵害しない」よう強制するよう呼びかけた。同じ会合で彼は、イスラエル国防軍がガザ地区で行ったことを「集団虐殺(collective genocide)」と表現した。

このレトリックは、ワシントンのほとんどの人々が信じてきたムハンマド・ビン・サルマンについてのすべてに反するものであり、それゆえ「どうなっている?」という疑問が出ている。そして、少なくとも今回は、ワシントンの外交政策関係コミュニティは想像していない。

首脳会談でのムハンマド・ビン・サルマンの言葉は、質的な変化であるように見える。結局のところ、王太子はかつてこう質問した。「イスラム教徒の土地を支配し、(イスラム世界にトゥエルバー・ジャファリ宗派を広めなければならないという)過激派イデオロギーの上に築かれた政権とどのように対話するのか?」。彼は美辞麗句を並べてごまかしていたが、知識がある人が聞けば、彼の発言はイランを指しているのは明らかだった。公平を期すなら、それは2017年のことで、暴徒がテヘランのサウジ大使館を襲撃し、両国関係の断絶を促した翌年のことだった。しかし、中国政府が2023年3月にサウジアラビアとイランの国交再開を仲介した後も、リヤド政府高官はいまだにテヘランの意図に懐疑的で、イラン指導部に対する不信感を抱いている。

イスラエルについて、サウジ当局者は以前から、国交正常化は「もし(可能性)」ではなく「いつ(時期)」の問題だと示唆してきた。彼らはそれを頻繁に発言したので、しばらくすると誰もあまり気に留めなくなった。もちろん、ガザ地区での残酷な戦争によって、サウジアラビアが国交正常化のためにイスラエルに要求する代償は着実に増えている。それでも昨年、リヤドの高官たちはイスラエルとの和解に尽力していたようだ。イスラエルは戦争の初期からジェノサイド(genocide、大量虐殺)で非難されてきたが、11月11日のイスラム諸国首脳会談の前まで、ムハンマド・ビン・サルマンはこの言葉を使うことはなかった。

それでは、いったい何が起きているのか? サウジアラビアは「方向転換(pivoting)」しつつあるのか? 私はサウジのレトリックの変化を説明するために3つの理論を持っている。

第一に、長年議論されてきたアメリカとサウジアラビアの安全保障協定をめぐるドナルド・トランプ次期大統領との交渉の口火を切ることである。ムハンマド・ビン・サルマンはイランに対する態度を変えたかもしれないが、それは皮肉にすぎない。トランプ政権の政権移行関係者がイランに「最大限の圧力(maximum pressure)」をかけ直すと宣言しているのと同時に、サウジアラビアとイランの関係をレトリック的にでも改善することは、サウジアラビアを味方につけておくためにトランプ・ティームから利益を引き出す戦略の一環かもしれない。まるで王太子が、「次期大統領、あなたは交渉の達人気取りのようだ。私がお相手しよう。あなたは何を提供できる?」と述べているかのようだ。

私は数日間、この説に納得していた。しかし、結局のところ、しっくりこない。イラン指導部と仲良くしてアメリカ政府高官を操ろうとするのは、2010年代にトルコのレセップ・タイイップ・エルドアン大統領がやったことだが、サウジアラビアがそれに倣ったようではない。ムハンマド・ビン・サルマンはエルドアンを見習っているのかもしれないが、それが彼のスタイルだとは私には思えない。

第二に、イランに逃げ込むことで、ムハンマド・ビン・サルマンはイスラエルとの国交正常化の可能性から逃げていると考える方が説得力を持つ。ガザ地区におけるイスラエルの軍事作戦の残忍さは、サウジアラビアの多くの人々を激怒させている。最近のサウジアラビア訪問で、私と同僚は、ガザ地区で続いている殺戮をめぐるバイデン政権への批判の集中砲火を浴びた。その中で少なくとも1回は、「恥ずべき(shameful)」という言葉が出てきた。それがムハンマド・ビン・サルマンの考えの一部に違いない。王太子は万能だが、世論と無縁ではない。イスラエルとの国交正常化は、ガザ地区破壊に対する国民の怒りの深さを考えれば、短期的には彼にとってほとんど価値がない。

王太子が「大量虐殺」という言葉を使ったのは、アブラハム合意に続くものとしてイスラエルとサウジアラビアの国交正常化を重視するトランプ次期政権への明確な警告でもある。サウジアラビアの指導者たちは、イスラエルの入植者たちがトランプは併合の邪魔をしないと信じるようになった今、国交正常化に関わりたいはずがない。元アーカンソー州知事のマイク・ハッカビーを駐イスラエル大使に任命したことは、彼らが間違っていないことを示唆している。イスラエルの正式な主権がヨルダン川西岸地区の一部にまで拡大され、トランプ大統領に祝福されるだけで、王太子が国交正常化の道を歩むのは非常に恥ずかしいことだ。大量虐殺を引き合いに出すことで、サウジアラビアは現状では前進する用意がないことを次期大統領に示しているのだ。

最後に、ムハンマド・ビン・サルマンの明らかな方向転換について、最も説得力のある説明がある。それは、イエメン内戦に介入し、カタールを封鎖し、レバノン首相を辞任に追い込み、リビアで国際的に認められた政府の反対派を支援し、失敗した後だというものだ。王太子は、自分の目標を達成するために、この地域を自分の意志通りに変化させることは自分の力の範囲内ではできないと結論づけた。代わりに、彼は今では内向きになり、王国内の安定を確保しようと努めている。イランに傾斜することは、混乱をサウジアラビア国境外に留め続ける1つの方法だ。

ムハンマド・ビン・サルマンはサウジアラビアの将来を形作るために数千億ドルを投じているため、この変化は彼にとって最も重要である。ネオムの新都市やジェッダのキディヤ海岸観光プロジェクトなど、彼のメガプロジェクトやギガプロジェクトの賢明さに疑問を抱く人もいるだろう。しかし、彼が彼らに多額の投資をした今、サウジアラビアの指導者たちが、たとえそれを達成するために我慢しなければならないとしても、彼らに成功のチャンスを与えるために基本的な経済的および政治的安定を求めないのは賢明ではないだろう。サウジアラビアが突然イランを信頼する兆候はないが、サウジアラビアが国内で行っていることを台無しにする口実を彼らに与えたくはない。

それほど遠くない昔、サウジアラビア人はリヤル(サウジアラビアの通貨単位)政治(riyalpolitik)を実践し、基本的に地域問題が王国を取り囲まないようにするためにお金を払っていた。ムハンマド・ビン・サルマンが世界にイスラエルを抑制するよう呼び掛け、イランを(現金の入った袋を持たずに)家族の一員と見なしていることを明らかにしたときの行動には同様の響きがある。皇太子が座っている場所から見ると、これはイランへの傾斜ではなく、むしろサウジアラビアへの傾斜である。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会エニ・エンリコ・マッテイ記念中東・アフリカ研究上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、将来』は2024年6月に刊行予定。ツイッターアカウント:@stevenacook

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になりました。よろしくお願いいたします。

イランとイスラエルの攻撃の応酬は、中東地域の状況を不安定化させている。何よりも核戦争の可能性を高めている。イスラエルは公式には認めていないが、核保有国であり、イランは核兵器開発を進めている。『世界覇権国交代劇の真相』の中で、佐藤優先生は、サウジアラビアは核保有国で、通常はパキスタンに預けてあると述べている。中東における核戦争の危険性は絵空事ではない。
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イランは、イスラエルとは、レバノンのヒズボラ、ガザ地区のハマス、イエメンのフーシ派といった非国家的な勢力を支援することで、「間接的に」対峙してきた。イランは、中東地域において、サウジアラビアとイスラエルと対立してきた。最近になって、中国の仲介によって、サウジアラビアとの国交正常化を行うことで、中東地域における主敵はイスラエルということになった。しかし、イランとイスラエルは国境を接していないので、攻撃は飛行機化ミサイルということに限られる。全面的な地上戦ということにはならないが、イランの国家安全保障戦略の柱はミサイルということになり、核弾頭開発ということになる。イランは核開発の必要性を高めているということが言える。

これもまた『世界覇権国交代劇の真相』の中で、佐藤先生が指摘しているように、イランもイスラエルも政府当局者のほとんど対立をエスカレートさせたくないのである。だから、お互いに激しい言葉で押収しても、攻撃はアリバイ的だったり、限定的だったりしてきた。そのような「制限」が外れてしまうことが何よりも怖いことだ。コントロールが効かない状況で対立がエスカレートするのは避けねばならない。
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 重要なことは、イランとイスラエルの対立は、中東地域を不安定化させ、世界にとってマイナスになっている。中東地域における重要なプレイヤーとして存在してきた、アメリカがこの対立の激化を止められない現状がある。イスラエルはアメリカにとって重要な同盟国(保護国)であるが、同時に、中東におけるアメリカの存在感や影響力にマイナスに働く存在になっている。アメリカがいつまでも世界覇権国であるということはできない。アメリカの国力が低下した場合には、イスラエルの存続にも関わる問題になりかねないという問題が起きる。イスラエルは国の進むべき方向性を再検討する時期に来ている。

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イランの対イスラエル戦略は既に変化している(Iran’s Israel Strategy Has Already Changed

-たとえより広範な戦争が勃発していなかったとしても、この地域は二度と同じようにはならないだろう。

アラシュ・レイシネジャッド筆

2024年10月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/10/11/irans-israel-strategy-has-already-changed/?tpcc=recirc062921

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2005年11月26日、イランのテヘランで、ルーホラ・ホメイニ師によるイスラム共和国創立25周年を記念するイランのバスィージ民兵組織のパレード

イランは10月1日、2回目のミサイル攻撃でイスラエル本土を攻撃し、現在進行中の2つの地域大国(regional power)間の対立を著しくエスカレートさせた。イスラエルが7月にハマスの指導者イスマイル・ハニヤをテヘランで暗殺し、最近では、ベイルートでヒズボラの指導者ハッサン・ナスララとイスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard CorpsIRGC)のアッバス・ニルフォルーシャン将軍を殺害した後、イランは宿敵に対してあからさまで、実質的かつ直接的な攻撃を開始した。イランとイスラエルの対立は、今や中東全体を全面的な地域戦争(regional war)の瀬戸際に追いやる危険をはらんでいる。

そのような地域戦争が起こるかどうかにかかわらず、イランとイスラエルによる攻撃の応酬は既に、この特定の対立をはるかに超えて続く、新たな地域の力の方程式(power equation)をもたらした。イランとイスラエルの対立がもたらす7つの遠大な戦略的帰結が明らかになった。

第一に、イランの国家安全保障と軍事戦略の基盤は、地域における非国家軍事同盟への依存(reliance on nonstate military allies in the region)から、新たな形態の抑止(new form of deterrence)へと徐々に移行しつつある。この重大な変革は、イラン軍事組織の主要人物の交代に見られる。地域におけるイランの国外の軍事作戦の責任者で革命防衛隊コッズ部隊の司令官が、元司令官カセム・ソレイマニ将軍からイスラム角栄防衛隊の航空宇宙軍の司令官アミール・アリ・ハジザデ将軍に交代した。これはハマスやヒズボラを含む非国家同盟勢力による間接的衝突(indirect conflict)を優先したイランのグレーゾーン戦略が、今や補完的なアプローチ(complementary approach)になりつつあることを示唆している。

第二に、イランは「戦略的忍耐(strategic patience)」の姿勢も放棄した。イラクとの8年にわたる血なまぐさい戦争が終結して以来、イランの軍事指導者たちは、相当な苦痛を吸収しつつ、好きなタイミングで報復することを基本とする秘密戦略(covert strategy)を採用してきた。それにもかかわらず、数十年にわたるイスラエルによるイラン国内での継続的な破壊工作により、イランの「戦略的曖昧さ(strategic ambiguity)」は、報復行動をとらないことで知られる消極的な戦略的忍耐へと格下げされた。イランは国内政治において大胆な決断を下すことに消極的であるように見えるが、現在、2度目の戦略的忍耐を放棄している。有力な支持者や国内の広範な世論からの強い圧力を受け、報復に失敗すれば戦略的転換点になると判断したのである。

第三に、イランは現在、抑止力に関する公的に識別可能な政策を確立している。イスラム革命防衛隊の強力な報復は、イスラエルに損害を与える攻撃を行うイランの意志と能力を示すものだった。ほとんどのイランのミサイルと無人機が阻止された4月の最初の攻撃とは対照的に、2回目のミサイル攻撃はイスラエルの高度防衛システム(Israeli advanced defense systems)を貫通し、より成功したことが証明された。イスラエルは世界で最も厳重に防衛された空域の1つであり、最も洗練された対ミサイル技術を備えているにもかかわらず、イランのミサイル数発がイスラエルの重要な飛行場を攻撃することに成功した。このことは、イランの国家安全保障戦略におけるミサイル戦力の中心性を浮き彫りにし、イランのミサイル戦力が今後も西側諸国との協議において譲れないものである可能性を強めるものである。その中には、スホーイSu-35戦闘機の配備、ロシア製対ミサイル防衛システムの購入、モスクワとの軍事協力の拡大などが含まれる。

第四に、イスラエルに対するイランの新たなレッドラインも明確になった。テルアビブは15年近く、シリアのイラン軍基地を破壊的に攻撃し、イランの上級将官を直接標的にしてきた。しかし、4月上旬にイスラエルがダマスカスのイラン領事館を攻撃したことで、重大な閾値(critical threshold)を超えた。これは、イランのイスラエルに対する伝統的なレッドラインの崩壊を意味した。テヘランでのハマス指導者暗殺やベイルートでのヒズボラ暗殺など、イスラエルの継続的な行動に対し、イランの報復は抑止力の再確立を狙ったものだった。イランは自国領土からイスラエル領土を攻撃し、核保有国を標的にするという、2つの重大なレッドラインを越えたのである。興味深いことに、イランはその10カ月も前に、同じく核保有国であるパキスタンの領土を攻撃している。イスラエルの空爆からレヴァント地方(地中海東部沿岸地域)の軍事基地を完全に守ることはできなくても、自国の領土の神聖さは政府と社会の双方にとって基本的なレッドラインである。イランとイスラエルの対立を封じ込めるレッドラインがしっかりと確立されていない以上、特に今年の米大統領選を前に、双方は一触即発の攻撃を続けることで境界線を引き直そうとするだろう。

第五に、アラブ諸国の一般国民に対するイランの影響力が明らかに高まっている。テヘランによるシリアのバシャール・アサド政権への揺るぎない支持によって失墜したイスラム世界におけるイランの人気を、今回の攻撃によってソフトパワーが獲得されたことで、回復できる可能性がある。ガザ地区でのハマスとの戦争以来、パレスティナ人やアラブ社会におけるイランの支持率は著しく上昇している。最近のイラン大統領選挙でのマスード・ペゼシュキアンの勝利は、モハンマド・ジャヴァド・ザリフ戦略問題担当副大統領とアッバース・アラグチ外相が率いる地域協力の強い声と相まって、テヘランとペルシャ湾のアラブ諸国との間の緊張緩和に役立つかもしれない。しかし、イランにはまだ強力な地域主導権がなく、このチャンスを十分に生かし、この影響力を地域の勢力図に具体的な変化をもたらすには、難題に直面する可能性がある。

第六に、イスラエルによるイランへの報復作戦は、テヘランの核政策を大きく変える可能性がある。イランでは、強硬派を中心に、完全な抑止力を回復する戦略的手段として核保有を主張する声が強い。こうした推進派は、イスラエルの侵略を抑止するためのイランの最も効果的な手段は、核兵器を完全に開発するという戦略的決断にあると主張する。この主張の背景には、イスラエルがイランの核インフラを報復攻撃する可能性があることから、その勢いが増す可能性がある。その結果、イスラエルによる軍事攻撃は、テヘランの核保有追求をより加速させることになるかもしれない。イランの完全武装解除に執着する西側諸国は、イスラエルにレヴァント地方やイラン領内のイランの非国家的同盟勢力に圧力をかける白紙委任状を与えることと相まって、「核武装したイラン」という思わぬ結果を招きかねない。

第七に、この紛争は、技術力と地政学的力の間の衝突を浮き彫りにしている。イランが地政学的に大きな利点を得ているのに対し、イスラエルのアキレス腱は、ヨルダン川と地中海に挟まれた小さな領土に限定された地政学的脆弱性(geopolitical vulnerability)にある。この地政学的な違いが、イランが非国家的同盟勢力のネットワークに支えられたグレーゾーン作戦を好むのに対し、イスラエルが技術的優位に根ざした先制攻撃戦略に依存するように、両国の戦略を形成してきた。テクノロジーは軍事革命においてますます重要な役割を果たすようになっているが、地政学的な要因は、地域的な競争の軌跡を形成する上で引き続き不可欠である。テクノロジーは、地政学的な現実の重みを減じるが、それを完全に消し去ることはできない。

その意味で、激化するイラン・イスラエル紛争は、アメリカの外交政策における「中東の終焉(end of the Middle East)」という単純化された物語に挑戦するものだ。より広範な文脈では、インド太平洋地域とユーロ大西洋地域におけるワシントンの大競争の運命は、テヘランがモスクワや北京との結びつきを強めているペルシャ湾・レヴァント地方軸の下にますます投じられるようになっている。このダイナミックな動きは、中東の地政学を再び動かしている。イランとイスラエルの対立は、その初期の表れの1つであるが、最終章にはほど遠い。

※アラシュ・レイシネジャッド:ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス中東研究センター非常勤研究員。

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 中東情勢は悪化の一途を辿っている。2023年10月にハマスの攻撃に対する報復として、イスラエル軍はガザ地区での軍事作戦を開始し、民間人に多くの死傷者が出ている。ハマスの人質となった人々の救出は思うように進んでいない。更には、イスラエルは、イランの首都テヘランでハマスの最高指導者を殺害し、イランから報復攻撃を受けている。加えて、レバノンの武装組織ヒズボラに対しても軍事作戦を開始している。ヒズボラのメンバーたちが使用していたポケベルに爆発物を仕込み、一斉に爆発して大きな被害を出したニューズは日本でも多く報道された。このポケベルはイスラエルから輸出されたものということが後に分かった。私は「イスラエルからの輸出された製品というのは怖いな。何が仕込まれているか分からないではないか」という感想を持った。イスラエルは危険な国という印象を多くの人々に与えたと思う。

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 このポケベルでの攻撃は衝撃的であったが、それ以外にも、イスラエルはレバノン、ヒズボラへの攻勢を強めている。ガザ地区に続いて、2つ目の戦線を開いたと言える。イスラエルの軍事的な優位性もあり、二正面作戦はまだ耐えられるだろうが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は戦争の段階を引き上げようとしている。イエメンのフーシ派の空額も実施している。ハマス、ヒズボラ、フーシ派は全部がイランからの支援を受けている。ネタニヤフ率いるイスラエルはイランとの全面戦争(all-out war)へと進む危険性を持っている。

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そうなると、中東全体が戦争地域ということになり、石油の供給に大きな影響が出る。そうなれば、世界経済は大きなダメージを受ける。もっと怖いのは、核戦争勃発の可能性だ。核戦争に対する禁忌が破られるとなると、核兵器使用のハードルが大きく下がることになる。それはまた世界を危機に晒すことになる。戦争の段階を引き上げるべきではない。

 アメリカは現在、大統領選挙期間中で、しかも現職のジョー・バイデン大統領が再選を目指さないということになり、レイムダック化(無力化)している。そうした中で、イスラエルのネタニヤフ首相は暴走している。アメリカはコントロールする力を失っている。イスラエルへの資金援助や武器援助をアメリカが止めない限り、イスラエルはこうした状況を変えることはしないだろう。

 イスラエルのネタニヤフ首相は家族ぐるみでお金に関するスキャンダルを抱えており、平和に復帰すれば、家族ごと有罪判決を受け、牢獄行きとなる。そのために、戦争状態を続けたいということはあるだろう。しかし、それは世界に追って大きな不幸である。

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ヒズボラのポケベル爆発は皆が考える以上に危険だ(The Hezbollah Pager Explosions Are More Dangerous Than You Think

-人権問題を超えて、今回の攻撃は中東におけるアメリカとイスラエルの政策にも疑問を投げかけるものとなった。

ハワード・フレンチ

2024年9月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/09/24/hezbollah-pager-explosions-lebanon-israel-middle-east-iran-us-policy/

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9月18日、ベイルート南部の地区で、前日にレバノン全土で発生したポケベルの爆発で死亡した人々の葬儀でヒズボラの旗を手にする男性。

先週、イスラエルがレバノンとシリアでヒズボラを攻撃した際、地政学的にどのような立場にあったにせよ、専門家の多くが最初に抱いたのは畏怖の感情(awe)だった。

敵対国も友好国も関係なく、作戦をやり遂げるために必要な、イスラエル情報・諜報機関の洗練の度合いに驚嘆した。イスラエルのために働く諜報員たちは、ポケベルやトランシーバーの中に微量の爆発物を仕込む仕事に重視し、これを宿敵の手にうまく渡さなければならなかった。この偉業は、1967年の六日間戦争でのアラブ連合軍に対する勝利、1976年の民間旅客機ハイジャック事件で捕らえられた人質を解放するためのウガンダのエンテベ空港攻撃、1990年代後半にさかのぼる過激派グループを攻撃するためのブービートラップ付き携帯電話の使用など、イスラエルの技術的・作戦的洗練の長い歴史を思い起こさせるものとなった。

今回の攻撃は、技術的なレヴェルでは素晴らしいものだったが、多くの批判も当然出ている。1つには、民間人に壊滅的な打撃を与えたことだ。ポケベルはヒズボラ・メンバーのものだったが、爆発によって少なくとも40人が死亡、3000人以上が負傷し、多くの非戦闘員が危険に晒される結果となった。もし運転手や親族がポケベルを携帯していたら、車の乗客や食卓にいた子どもたちはどうなっていただろうか? ヴィデオ映像によれば、市場や街角で爆発したものもあった。

政治理論家のマイケル・ウォルツァーは、『ニューヨーク・タイムズ』紙の論説ページで、攻撃の瞬間には積極的に戦争に従事していなかったヒズボラの工作員を標的にした爆発は、「戦争犯罪の可能性が非常に高い(very likely war crimes)」と書いている。レオン・パネッタ元国防長官・元CIA長官でさえも、今回の攻撃がテロの一形態であることに「疑問の余地はないと考える(think there’s any question)」と述べている。

 

イスラエルへのロケット弾発射に使われる南部のヒズボラ陣地に対するエスカレートする空からの攻撃など、レバノンにおけるイスラエルの最近の戦術に対する私の懸念は、更にその先にある。ポケベルを爆発させての攻撃という衝撃が落ち着いた後、アナリストたちはイスラエルがこの攻撃で戦略的利益を得たかどうかを問い始めた。その答えは依然として不明だ。イスラエルがガザ地区でハマスに対して1年近く攻撃を続けている間、同じことが言える。そこでは、基本的な疑問が未解決のままである。その疑問とは、イスラエルは軍事作戦が終了した後に、一体何をするのか?

この2つのキャンペーンを結びつけているのは、イスラエルは軍事的優位の政策と無制限の攻撃作戦によって長期的な安全保障を達成できるという、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の明白な見解である。アメリカは、イスラエルに対する弱腰の批判とほぼ無制限の武器供給を通じて、この立場を黙認している。ガザ地区が示し始めたように、またレバノンとの戦争が起これば、それが再確認される可能性が高いように、このアプローチは、イスラエルが平和を達成するために、巻き添え被害の有無にかかわらず「悪者たち(bad guys)」を十分に殺せるという妄信的な希望をもって、近隣の土地を焦土と化すことに等しい。

このアプローチの1つ目の、明確な欠陥は、各軍事作戦が新たな敵を生み出し、イスラエルと近隣諸国との間の敵意を永続させる危険性があることだ。例えば、ガザ地区におけるイスラエルの完全な軍事支配は、パレスチナ人の政治的および領土的権利の差し迫った必要性に対処するものではない。実際、この地域の絶望と支配は、将来、イスラエルに対する新たな形態の抵抗を確実にするだろう。同様に、イスラエルのレバノン南部への侵攻は、両国間に敵対の新たな境地を生み出すだけであり、この作戦による死と破壊により、より多くのレバノン人がイスラエルに対する暴力的報復の方向に駆り立てられるのと同じくらい確実である。

しかし、私が最も懸念しているのは、それだけにとどまらず、イスラエルと同様に、アメリカの戦略にも関わることだ。ここ数十年、同盟関係にある両国は、イランを中東における暴力と不安定化の究極の原因とみなしてきた。しかし、イランに核兵器開発を断念させるための国際的な努力を除いては、イスラエルはともかく、アメリカはイランに政治的に関与する創造性をほとんど示してこなかった。イランと政治的な関わりを持つための非現実的な前提条件、たとえばテヘランがまず自国の政治体制を変えることや、イスラエルの生存権を認めることなどは、その数には入らない。

中東地域の問題を特に扱いにくくしているのは、イスラエルとイランの両方が古い文明的および宗教的アイデンティティの化身であるということだ。西側諸国の多くは、イスラエルが聖書の国であり、多くのユダヤ人がシオニズムへの正当な支持を、部分的には古代イスラエルの存在に基づいており、その物語が旧約聖書の本質を構成していることを知っている。専門家の領域以外ではあまり理解されていないが、イランははるか古代に遡る言語、文化、アイデンティティ、帝国、国家の伝統の継承者でもある。

ガザ地区での終わりの見えない暴力に対し、多くの人々が怒りの声を上げている。ユダヤ人もパレスチナ人も、現在紛争で分断されている土地から消えることはないということを認識することに代わるものはない。つまり、永続的な和平には、この深い溝を隔てた両側の人々、ひいては国家が、互いのニーズと利益を認識することが必要である。

これはイランにも同じことが言える。人口9000万人の国を悪者扱いする政策では、イランを消し去ることはできない。実際、西側諸国がイランの孤立化を図ろうとしても、イランはヒズボラやイエメンのフーシ派といった非国家的な代理勢力を増強し、ロシアや中国との関係を深めようとする決意を強めるだけである。

イスラエルと同様、西側諸国でも中心的な関心事となっているのは、イランの核開発計画であり、テヘランが長引く研究・精製段階を脱し、すぐにでも使用可能な核兵器を開発するのではないかという見通しである。残念ながら、核保有国の核軍縮に関する世界的な実績は極めて芳しくない。ウクライナは、ソ連時代から受け継いだ核兵器を廃棄した唯一の例であり、このことが悲しいことに、ウラジーミル・プーティンのロシアに対して脆弱な国になってしまった。例えば、北朝鮮をめぐる欧米諸国とアジアの長年にわたる外交は、平壌に核プログラムを放棄するよう説得することができなかった。好むと好まざるとにかかわらず(私は好まないが)、それは北朝鮮の体制がその将来について根本的な不安を感じているからだ。更に言えば、イスラエルは公式には認めていないが、何十年もの間、核兵器を保有していることは広く知られている。

イランの核開発プログラムに対する懸念は、テヘランともっと話をし、この地域の敵対関係を和らげる方法を模索する妨げになるはずはない。イスラエルを含む中東地域の広範な安全保障を確保する唯一の方法は、何らかの形でイランを西側諸国とより深く接触させ、最終的にはイスラエルやサウジアラビアなどの他国、パレスチナ人とともに、イランの安全保障上の懸念に対処することである。欧米諸国がそうするのは早ければ早いほどよい。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり海外特派員を務めた。最新作に黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War.)』がある。ツイッターアカウント:@hofrench

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 古村治彦です。

 2023年10月7日にガザ地区を実効支配するイスラエル過激派ハマスのイスラエルに対する攻撃、人質連れ去りとイスラエルのガザ地区への報復攻撃はまだ継続している。停戦交渉も行われているようだが、まだ厳しい状態だ。ガザ地区での民間人犠牲者が増加していること、イスラエルから連れ去られた人質たちの解放が進まないことに対して、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対する批判が大きくなっている。

 今回のイスラエル・ハマス紛争に対しては、イスラエル北部国境を接するレバノンの過激派民兵組織ヒズボラ、イエメンのフーシ派がハマスを支援する形で、攻撃を行っている。イスラエルはヒズボラとも戦闘状態にある。イスラエルは南部ガザ地区でハマス、北部国境地帯でヒズボラと二正面作戦を展開しなければならない。ヒズボラはイランからの支援を受けやすく、装備や訓練がハマスに比べて上回っている。また、ヒズボラがレバノンの北部に撤退しながらの戦闘ということになれば、イスラエルはレバノン国内に入っての戦闘を行うことになり、そうなれば、戦争はどんどんエスカレートしてしまう危険がある。
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 イスラエルはハマスとヒズボラとの戦闘を、イランのとの戦争の一部と見なしている。この二正面作戦はイランとの戦争における2つの戦線ということになる。二正面作戦はあまり得策ではない。各個撃破が戦術の基本だ。ハマスもヒズボラもイスラエル国防軍にしてみれば強敵という訳ではない。将兵の人数や装備で言えばイスラエル国防軍が圧倒している。しかし、これまで殲滅できなかったのは、ハマスやヒズボラが正規軍ではないからだ。イスラエルが戦線を拡大し、ヒズボラとも激しい戦いということになれば、イスラエル国内も不安定になり、また、中東全体も不安定になる。今のところ、全ての当事者がエスカレートを望んでいないようであるが、戦闘で予想外の出来事が起きればどうなるか分からない。まずは、停戦が何よりも重要である。

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イスラエルとヒズボラの間の戦争はどのようなものになるのか(What a War Between Israel and Hezbollah Might Look Like

-レバノンの武装集団はハマスよりもかなり優れた訓練と装備を備えている。

エイミー・マキノン筆

2024年6月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/18/israel-hezbollah-lebanon-conflict-war-border-gaza/?tpcc=recirc_latest062921

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イスラエル軍とヒズボラ戦闘員の間で国境を越えた衝突が続く中、6月16日、レバノンとの国境に近いイスラエル北部の町キルヤット・シュモナで、ヒズボラのロケット弾が当たった家を確認するイスラエル兵士

ガザ地区でのイスラエルとハマスとの戦争は過去8カ月間、世界の多くの注目を集めてきたが、第二前線(second front)、つまりレバノンとの北部国境での戦闘は現在激化している。

レバノンの過激派組織ヒズボラは先週、ヒズボラ幹部を殺害したイスラエルの空爆への報復として、これまでで最も大規模なロケット攻撃をイスラエルに対して開始し、紛争が急速に悪化する可能性があるとの懸念が高まった。

イランの支援を受けるヒズボラが数千発のロケット弾、対戦車ミサイル、無人機をイスラエルに発射し、イスラエル空軍も数千回の空爆で対抗しており、北部国境での戦闘は何か月も継続している。国境の両側で約14万人が家を追われている。

火曜日、アントニー・ブリンケン米国務長官は、イスラエルもヒズボラもより広範な戦争を求めていないと信じているが、それでも「潜在的にその方向への勢い(momentum potentially in that direction)」があると述べた。イスラエル側のカウンターパートであるイスラエル・カッツ外相は火曜日、イスラエルが開戦するかどうかの決定に近づいていると指摘し、「総力戦になればヒズボラは破壊され、レバノンは大きな打撃を受けるだろう(in a total war, Hezbollah will be destroyed and Lebanon will be hit hard)」と警告した。

しかし、イスラエルも血にまみれることになるだろう。国際戦略研究センター(Center for International and Strategic StudiesCISS)によると、ヒズボラはハマスよりもはるかに手強い敵である。ヒズボラは世界で最も重武装した非国家主体であると考えられているからだ。このグループはイラン、シリア、ロシアの援助を受けて洗練された兵器を獲得している。

オバマ政権時代に駐米イスラエル大使を務めたマイケル・オーレンは「ハマスはイスラエル国家に対する戦術的脅威(tactical threat)を表している。ヒズボラはイスラエル国家にとって戦略的脅威(strategic threat)だ」と語った。

ヒズボラは約13万発のロケットとミサイルを保有していると推定されており、これらはすぐに国の高度な防空システムを制圧し、最大都市を攻撃する可能性がある。

オーレンは「ヒズボラが3日間で私たちに何をするかという試算を読んだことがあるが、それはまさに恐ろしいことだ」と語った。オーレンは、イスラエルの核研究施設の敷地について言及し、「我が国の重要なインフラ、製油所、空軍基地、ディモナの全てを破壊することについて話している」と語った。

火曜日、ヒズボラは、レバノン国境から27マイル離れたイスラエルのハイファ港のドローン映像を公開したが、これは明らかにイスラエルの防空網を突破して国内奥深くまで到達する能力を実証する目的で行われた。

イスラエルとヒズボラは、2006年に34日間の戦争を戦い、緊迫した膠着状態に終わった。それ以来、ヒズボラは兵器を強化し、シリアで重要な戦場経験を積み、内戦中に窮地に陥ったシリアの指導者バッシャール・アル・アサドを支援するために、イランのイスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard Corps)と共闘した。ヒズボラの司令官は2016年にヴォイス・オブ・アメリカに対し、この紛争は次のイスラエルとの戦争に向けた「予行演習(dress rehearsal)」だったと語った。

ハマスと同様、ヒズボラもレバノン地下を通るトンネル網を開発したと考えられており、イスラエルのアナリストの一部は、そのトンネル網はハマスが使用したものよりも、更に広範囲であると主張している。そして、テヘランの支援者から地理的に孤立しているガザ地区とは異なり、イランは、全面戦争の際にヒズボラ軍を維持するために使用できる、イラクとシリアを経由してレバノンに至る地上および空からの補給ルートを確立している。

イスラエルがレバノンの首都ベイルートやその他の都市を標的にする可能性が高く、ヒズボラが「国家の中の国家(state within a state)」を運営していると評されているレバノンにとっても、エスカレーションは壊滅的な打撃となるだろう。

イスラエルのヨアヴ・ガラント国防大臣は、戦争が起きた場合、イスラエルは「レバノンを石器時代に戻す(return Lebanon to the Stone Age)」だろうと警告を発した。

ガザ地区のハマスと同様、ヒズボラはレバノンの民間人に深く浸透している。2006年の戦争中、イスラエルは過剰な武力行使を行い、銀行、学校、政治事務所などヒズボラに関連する各種の非軍事目標を攻撃し、国の民間インフラを攻撃したとして、人権団体から広く批判された。

シンクタンクの民主政治体制防衛財団の研究担当上級副会長ジョナサン・シャンツァーは、「その計画は、ヒズボラが支配するこの国におけるヒズボラの支配の見せかけをすべて破壊することを目的とするだろう。私たちは多大なる被害について懸念している」と語った。

2006年の戦争後の数年間の比較的平穏な日々は、2023年10月7日の攻撃を受けてヒズボラが明らかにハマスとの団結を示し、イスラエルにロケット弾とミサイルを一斉射撃したことで突然終わった。ジョージタウン大学外交学部のダニエル・バイマン教授は、イスラエル北部国境の危機を緩和する道は、ガザ地区を通る可能性が高いと述べた。

バイマンは、「ハマスが停戦に同意すれば、ヒズボラもそれを尊重すると思う。ヒズボラは、全体として、ハマスの動きに合わせようと努めてきた」と語った。ヒズボラの幹部たちはエスカレーションを望まないとも述べた。

イスラエル内外の当局者やアナリストの多くは、ガザ地区をイランとの広範な戦争における前線の1つにすぎないと見ており、ヒズボラとの衝突激化はほぼ避けられないと確信している。イスラエルの元国家安全保障問題担当補佐官エヤル・フラタは、「彼ら(イラン)が核開発で前例のない進歩を遂げる一方で、ヒズボラとの衝突はそれから目を背けさせるものではないかと心配している」と語った。

ジョー・バイデン米大統領の世界エネルギー担当特使であるエイモス・ホッフスタインは、先月カーネギー基金が主催したイヴェントで、両国が戦争を回避することを望んでいたとしても、戦争に至る可能性があると述べた。ホッフスタインは、「イスラエルとヒズボラはほぼ毎日のように銃撃戦を続けており、事故やミスによって状況が制御不能になる可能性がある」と述べた。

ホッフスタインは、国境沿いの緊張緩和を目指すバイデン政権の交渉の中心人物となった。ホッフスタインは今週、レバノンとイスラエルの代表者らと会談する予定だ。

ホッフスタインは次のように述べている。「私が毎日心配しているのは、計算ミスや事故、目標を狙った誤ったミサイルが目標を外したり、他のものに衝突したりすることだ。そうなれば、どちらかの国の政治体制が、私たちを戦争に引きずり込む形で報復せざるを得なくなる可能性がある」。

イスラエル政府は、9月の新学期開始に合わせて、戦闘によって家を追われた約6万人が北部国境沿いのコミュニティに戻れるような解決策を見出すよう圧力を強めている。

バイマンは「双方向に政治的圧力がある。国中のイスラエル人を避難所に強制収容するような、終わりの見えない大規模な全面戦争は、政治的にもあまり魅力的ではない」と述べた。

アナリストたちは、10月7日のハマス主導の攻撃をヒズボラの戦略の1ページと評し、ハマスがイスラエルへの地上侵攻に備えて何年にもわたって訓練を行っていたことを指摘した。たとえ交渉がロケット弾発射の阻止に成功したとしても、ヒズボラによる更なる攻撃への懸念により、イスラエル国民の安全感を回復する取り組みは困難になる可能性が高い。

ホッフスタインはカーネギー財団のイヴェントで、「双方が発砲を止めただけでは、基本的に10月6日の現状に戻ることだけのことになり、イスラエルの人々が安全に自宅に戻ることはできない」と述べた。ホッフスタインは、民間人が国境の両側の故郷に戻れるようにするためには、より広範な合意が必要だと述べた。

※エイミー・マキノン:『フォーリン・ポリシー』誌国家安全保障・情報諜報担当記者。ツイッターアカウント:@ak_mack

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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