古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 中東政治

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 パレスティナのガザ地区を実効支配している武装組織であるハマスがイスラエルとの紛争状態に入り、ガザ地区での戦争が続いて既に8カ月になろうとしている。イスラエルはハマスを徹底的にせん滅するまで作戦を続けるとしているが、同時に、10月7日のハマスによる攻撃で連れ去られた人質の奪還も目指している。人質の奪還のためには、交渉も必要となる。
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 現在の中東の国際関係を見れば、イスラエル対ハマス・ヒズボラ・これらを支援するイランということになる。ガザ地区での紛争がイスラエル・イランの戦争に拡大し、新たな中東戦争になるのではないか、両者が核兵器を撃ち合うことになるのではないかという懸念の声は、昨年の紛争ぼっ発直後から出ている。アメリカはイランと国交を持たないために、影響力、交渉力が限定的であり、イランとイスラエルの仲介をすることはできない。仲介することができるとすれば、両国と関係を持つロシアということになる。
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 イスラエル、イラン両国の指導者層は、核兵器を使った本格戦争まで望んでおらず、両国間関係を悪化させないようにしている。両国は国境を接しておらず、本格戦争となれば、戦闘機やミサイルによる攻撃ということになる。しかし、ハマス、ヒズボラといった武装組織がイランの代理勢力としてイスラエルと対峙している。この点では、イスラエルの方が直接対峙している分、厳しい状況となる。イスラエルはこれらの武装組織を支援している、イランのイスラム革命防衛隊の担当者たちを殺害することで報復をしている。

 イランとしては、後方にロシア、そして中国の支援を期待できる状態であり、紛争がエスカレーションしないように管理しながら、紛争を続けることができる。イスラエルとしては、外敵からの脅威をアピールすることで、国民の納得も得られやすい。現状は、両国にとって、ある面では非常に望ましい状態である。「誰も大規模な中東戦争を望んでいない」という前提のもとで、現状は維持される。問題は突発的な、予想外の、計算違いのことが起きる可能性があるということだ。そうなれば、どうなるか分からない。最終的に必要なのは、イランの持つ恐怖、不安感を持たせないようにすることで、それにはアメリカとイスラエルとの間に意思疎通のチャンネルを開くということが必要である。

 日本は民間、経済レヴェルでイランとの関係が深い国であり、その関係は今も続いている。この点で、日本は国際関係に貢献できるところがある。

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イラン・イスラエル戦争は始まったばかりだ(The Iran-Israel War Is Just Getting Started

-イラン・イスラエル両国が紛争し続ける限り、同盟諸国がどのような助言をしても、両国は打撃を与え合うことになるだろう。

ラファエル・S・コーエン筆

2024年4月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/22/israel-iran-attack-war-retaliation-escalation/

4月13日の早朝、2つの小さな奇跡が起った。1つ目としては、イスラエルが、イギリス、フランス、ヨルダン、アメリカの支援を受けて、驚くべき技術的能力を発揮し、主にイランからイスラエルに向けて発射された約170機の無人機、約120発の弾道ミサイル、約30発の巡航ミサイルを迎撃し、99%の成功率を記録し、迎撃の効果は大きく、人命やインフラへの被害は最小限度に抑えられたという報告があった。2つ目としては、何ヶ月にもわたって主に否定的なメディア報道と国際的圧力の高まりを受けてイスラエルは苦しい立場にあったが、今回のイランからの攻撃で、イスラエルはある程度の同情と肯定的な報道を享受できた。攻撃の撃退とイスラエルのイメージ向上という二重の成功を踏まえ、ジョー・バイデン米大統領はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に次のように助言したと伝えられている。「あなたは1つの勝利を手にした。最終的な勝利を掴め(You got a win. Take the win)(訳者註:イランとの紛争に入るな)」。他の多くの同盟諸国の指導者たちや専門家たちもイスラエルに対して同様のアドバイスをした。

しかし、イスラエルはこの助言を受け入れることにほとんど関心を示していない。報じられているところによると、即時反撃(immediate counterattack)を中止し、バイデン大統領が要請してきていた通りに「事態を遅らせる(slow things down)」ことに満足しているようだ。しかし、ヨアヴ・ガラント国防相、ヘルジ・ハレヴィイスラエル国防軍司令官、ベニー・ガンツ戦時内閣閣僚、そしてネタニヤフ自身を含むイスラエル指導者たちは全員、報復を約束した。そして、金曜朝、イスラエルはイラン中部のイスファハーンにあるイラン空軍基地の防空システムに対する反撃を実施した。この攻撃は主に象徴的なものだったようだが、それにもかかわらず、「なぜイスラエルは再びアメリカや他の同盟諸国の意見に従わないのか、そもそもこれらの国々はイスラエルの支援をしているのに?」という疑問が生じている。

結局のところ、イスラエルが反撃した理由については、悪いものが多く挙げられている。しかし、重要な良い点も1つある。それは、イスラエルとイランはもともと戦争状態にあり、この戦争は今日以降も続くという事実だ。この紛争が続く限り、この紛争の操作ロジックはエスカレーションに向かって進む。

なぜイスラエルが反撃したのかという疑問に対する答えは、ネタニヤフ首相の野心に帰着するという人もいる。この物語によれば、彼は単に自分自身を救おうとしているだけのこととなる。ネタニヤフ首相はイスラエル国内で非常に不人気だ。彼の支持率はわずか15%に過ぎない。彼の政治的正統性の主な源泉である、イスラエルの安全保障を保証するという彼の主張は、10月7日のハマスによる虐殺とその後に起こったあらゆる出来事によってひどく打ち砕かれている。したがって、当然のことながら、イランの現政権を含む、観察者の一部は、ネタニヤフ首相が国内でのイメージを回復するため、あるいは少なくとも10月7日の大惨事からの政治的清算を長引かせるため、イランとの戦争を望んでいると主張している。このプロセスにより、彼の政治的生存の可能性が高まるということになる。

ネタニヤフ首相は絶望しているのかもしれないが、報復への動きは彼だけから出ている訳ではない。実際、反撃を求めるイスラエル国内の大きな声の一部は、ガンツやギャラントをはじめとする、ネタニヤフの失敗で政治的に最大の利益を得る、ネタニヤフの政敵たちからのものだった。世論調査の結果によると、今日選挙が行われればガンツが首相になる可能性が高い。

また、イランに対する攻撃がネタニヤフ首相や他の誰かにとって良い政治的行動であるかどうかも明らかではない。ヘブライ大学が先週発表した世論調査によると、イスラエル人の約74%が「同盟諸国とのイスラエルの安全保障同盟を損なう場合には」、イランに対する反撃に反対すると答えた。同じ世論調査では、イスラエル人の56%が、「長期にわたって持続可能な防衛システムを確保する」ために、イスラエルは「同盟諸国からの政治的、軍事的要求に積極的に対応すべき」と回答していることが判明した。ネタニヤフ首相の連立政権内でさえ、金曜日のイスラエルの限定的な反撃は明確な政治的勝利と考えない閣僚がいた。例えば、右翼のイタマール・ベン・グヴィル国家安全保障相は、X(ツイッター)上で、今回の行動を「不十分(lame)」であると批判した。

対照的に、イスラエルは反撃が象徴的な内容にとどまった理由を述べている。イスラエル政府高官たちはテヘランに「メッセージを送り」、「教訓を教える」必要性について語った。しかし、イスラエル自身の最近の歴史は、しっぺ返しの暴力(tit-for-tat violence)が意図した教育効果をもたらすことはほとんどないことを示している。10月7日の虐殺が如実に示したように、今回の戦争以前のガザ地区でのイスラエルによる4回の限定的な軍事作戦は、その間に更に限定的な攻撃を挟んだが、ハマスを排除したり抑止したりすることはできなかった。そしてイランは、イスラエルへの攻撃を正当化するために、シリアやその他の地域にいる工作員を攻撃しないようイスラエルに「教える」必要があるというほぼ同じ言葉を使っている。これら全てが、今度は、イスラエルがイランを「教える」努力をもっと効果的に行うことができるかどうかという疑問を提起する。

公平を期すために言うと、イスラエルが実際に敵対者に教訓を教えることに成功した例は数例ある。おそらくその最良の例は、ヒズボラ工作員がイスラエルに侵入し、8人のイスラエル兵を殺害し、残り2人を誘拐した後に始まった2006年のレバノン戦争だろう。紛争後、ヒズボラ指導者のハッサン・ナスララは記者団に対し、作戦開始の決定を遺憾に思うと語った。ナスララは「もしこの作戦がそのような戦争につながることを事前に知っていたら、私はそれを実行するだろうかと質問しているのか。その答えはノーで、絶対に実行しなかったと言える」と述べた。しかし、この教訓のために、121人のイスラエル兵士、数百人のヒズボラ戦闘員、1000人以上の民間人の命が犠牲となり、イスラエル・レバノン双方で100万を超える人々が避難した、34日間にわたる本格的な非常に破壊的な戦争が含まれていた。イスラエルがイランに対して行ったばかりの限定的攻撃とは程遠いものだった。

もちろん、イスラエルがイランを攻撃したいという背後には、より基本的な動機がある、それは復讐(revenge)である。結局のところ、攻撃が最終的に効果などなかったとしても、イランは約60トンの爆発物をイスラエルに直接投げつけ、イスラエルとイランの影の戦争(Israel-Iran shadow war)の不文律を打ち破り、たとえ一夜限りとはいえ、国全体を緊張状態に保ったのだ。当然のことながら、一部のイスラエル人は反撃を望んでおり、反撃したいと考え続けている。

しかし、ブレット・スティーブンスが『ニューヨーク・タイムズ』紙で読者に思い出させたように、「復讐は忘れたころにするのが良い(revenge is a dish best served cold、復讐は冷めてから出すのが最良の料理だ)」。一般に、感情的な決定は賢明な戦略にはならない(emotional decisions do not make for a prudent strategy)。地域戦争が勃発した場合、イスラエルと地域全体の軍事的・外交的利害を考慮すると、これは特に妥当性を持つ言葉だ。そして実際、イスラエルによる、イスファハーンに対する攻撃はそのようなエスカレーションを引き起こさないように意図的に調整されているように見える。

更に言えば、イスファハーン以前から、あるレヴェルでは既にバランスシートは均衡していた。結局、イランはイスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard CorpsIRGC)の高級幹部7人を失った。モハマド・レザー・ザヘディ将軍は、2020年にアメリカがイラクでカセム・スレイマニを殺害して以来、殺害された最高位のコッズ部隊メンバーである。ザヘディダマスカスのイラン外交施設に対するイスラエルの攻撃で死亡した。イスラエルはイランの攻撃によって、これに匹敵するものを何も失っていない。

しかし、現在および将来のイスラエルによるイラン攻撃には悪い理由がたくさんあるとしても、少なくとも1つの良い理由がある。それはイスラエルとイランが戦争状態にあるということだ。この戦争は何年間もほぼ秘密にされてきたが、10月7日以降、影から姿を現した。ハマス、ヒズボラ、フーシ派、そして半年以上にわたってイスラエルを攻撃してきた他の組織の共通点は、程度の差こそあれ、いずれもイランから資金提供、訓練、装備を受けていることだ。その結果、イランとヒズボラおよびアサド政権との関係を調整したザヘディを含む7人の革命防衛隊工作担当者たちが3月下旬にダマスカスに現れたとき、イスラエルは、彼らがシリアの複数のレストランで試食するために来たのではないと結論づけた。これは、おそらく正しい結論である。

イランの報復集中砲火とイスラエルの反撃の後、この奇妙にパフォーマンス的な軍事力の誇示というゲームにおいては、ボールはイラン側にある状態である。最初の兆候は、イランが少なくとも当分の間、ボールに触らない可能性があるということだ。そうなれば、アメリカも地域も安堵のため息をつくだろう。

しかし、残念なことに、どんな休息も長くは続かないだろう。イスラエルは、イランから代理勢力への物的・戦略的支援の流れを断ち切る、あるいはおそらく妨害するためだけでも、海外のイラン工作担当者たちに対する攻撃を続ける必要があるだろう。「問題は解決したと見なせる」というイランの主張に反して、イランが代理勢力を支援し続け、その代理勢力がイスラエルとの紛争に関与し続ける限り、ダマスカスのイラン大使館でのような攻撃の作戦上の必要性は残ることになる。

そして、くすぶっている従来の紛争がイスラエルの対イラン軍事行動を促す十分な理由でないとすれば、イランの核開発という、より大きな理由が迫っていることになる。イラン核合意としても知られる包括的共同行動計画が崩壊して以来、イラン政府は核兵器保有に一歩ずつ近づいている。イスラエルの指導者たちは、核武装したイランが、イスラエルを全面的に攻撃するために兵器を使用しないとしても、代理勢力への支援を増加させる勇気を得るのではないかと長年懸念してきた。多くのイスラエル人にとって、先週末のイラン攻撃はそうした不安を強めるだけだった。結局のところ、広く疑われているイスラエルの核兵器が、イランの通常攻撃を抑止するには不十分であることが現時点で証明されているのであれば、なぜイスラエルは、ひとたび核兵器を持てばイランを首尾よく抑止できると信じられるだろうか? このため、いくつかの重大な軍事的課題にもかかわらず、イスラエルがイランの核開発計画に対して先制攻撃を行う可能性が一層高まっている。

その観点からすれば、イスラエルは、たとえ疑わしい政治的動機、あいまいな抑止力の考え方、あるいは単なるありのままの感情を取り除いたとしても、イランの目標を攻撃し続ける必要があるだろう。イスラエルとイランが紛争を継続する限り、米国や他の同盟国が激化を避けるためにイスラエルにどのような助言をしようとも、両国は打撃を与え合うことになるだろう。

結局のところ、アメリカとヨーロッパが中東での地域戦争の可能性を未然に防ぎたいのであれば、イランに対して、代理勢力の力を抑制し、核開発計画について何らかの措置を講じるよう説得する必要があるだろう。そうしないと、紛争はさらにスパイラル化するだろう。

※ラファエル・S・コーエン:ランド研究所「プロジェクト・エア・フォース」戦略・ドクトリンプログラム部長。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2024年5月19日に、イランのエブラヒム・ライシ大統領とホセイン・アミール=アブドラヒアン外相、他に政府高官たちが乗ったヘリコプターが墜落事故を起こし、搭乗員たちが全員死亡した。大統領と外相という最重要の政府高官たちが同じヘリコプターに登場していたというのは、安全管理の面から解せないところであるが、ライシ大統領の事故に、アメリカやイスラエルが絡んでいるということはひとまずないようだ。
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 今回の事故で、イランとイスラエルとの間の状況がさらに悪化するということはないと考えられる。これまで、イスラエルがシリアのダマスカスにあるイラン大使館を攻撃し、イスラム革命防衛隊の司令官クラスを殺害している。報復として、イランはイスラエルにドローンやミサイルによる攻撃を行った。両国間の関係が悪化し、より大規模な戦闘ということになれば、両国が直接領土を接してはいないので、航空機やミサイルによる攻撃が主体となり、最後は核兵器使用ということまで考えられる。ライシ大統領は、イランの国家最高指導者であるアリ・ハメネイ師の意向に沿って、強硬な態度を取ってきた。しかし、同時に、状況がさらに悪化しないように、細かい点で配慮を見せてきた。この流れは変わらないようだ。しかし、イスラエルと対峙する、レバノンのヒズボラとガザ地区のハマス、それらを支援するイスラム革命防衛隊を強化することは忘れないだろう。
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 イランにしてみれば、イスラエルとそれを支援するアメリカが国際世論の批判に晒されて、孤立することが望ましい。実際に、イスラエルによるガザ地区での作戦実行が過剰な防衛であって、一般市民に大きくの犠牲者が出ているということは、批判を招いている。ハマスについては、パレスティナ内部でも決して大きな支持を集めている訳ではないが、パレスティナの代表のような振る舞いをし、イランにとって有効な存在になっている。ハマスとヒズボラを使って、イスラエルを攻撃するということはイランにとって重要な戦略となっている。
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更には、イランが紅海の入り口にあるイエメンのフーシ派も支援していることも大きい。これによって、貿易海運に影響が出ており、アメリカが率いる西側諸国にとっては頭が痛い問題である。

イランが中国やロシアの支援を受けて、中東での動きを活発化させている。それは、中国が仲介してのサウジアラビアとの国交正常化合意が実現したことが大きい。サウジアラビアも向米一辺倒から脱却しており、中東におけるアメリカとイスラエルの重要性が縮小している。重要なのは、中東の現状が核兵器使用の大きな戦争にまで進まないようにコントロールすることであり、イランもそれを望んでいるようだ。
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イランがイスラエルに勝てると信じているその理由(Why Iran Believes It’s Winning Against Israel

-イラン政府は、地域秩序の再構成(regional reordering)が進行中であると結論づけた。大統領と外務大臣が亡くなってもその流れは変わらないだろう。

アリ・ヴァエス、ハミドレザ・アジジ筆

2024年5月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/20/iran-israel-war-deterrence-raisi-crash/?tpcc=recirc_latest062921

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バグダッドのイラン大使館前にて、イランの故エブラヒム・ライシ大統領を弔う人々のキャンドルリストの横で警備するイラク軍兵士(5月20日)

日曜日(5月19日)、イランのエブラヒム・ライシ大統領とホセイン・アミール=アブドラヒアン外相を含む数名の政府高官がヘリコプター墜落事故で死亡した。この事件は、4月にイランとイスラエルの間で前例のないエスカレーションが起こった後に発生し、イランの地域政策と現在進行中のイスラエルとの対立に潜在的な影響を与えるのではないかという予測が出ている。

イラン行政府のトップに突然空白が生じたにもかかわらず、イランの外交・地域政策の戦略的方向性は、主に最高指導者アリ・ハメネイ師(Ayatollah Ali Khamenei)によって決定され、イスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard CorpsIRGC)の影響を受けており、今後も変わらないと見られている。しかし、イランとイスラエル間の最近の事態悪化は、既にイランの戦略的思考(strategic thinking)と地域的計算(regional calculations)に影響を与えている。

イランにとって、イスラエルが4月1日にダマスカスにあるイラン大使館を攻撃し、高級指揮官を含む、イスラム革命防衛隊メンバー数人を殺害したことは一線を越えた。イランの立場からすれば、標的の幹部と施設の性格の両方が、イスラエルによる容認できない、事態悪化を意味する。

当面の問題として、テヘランは、イランが主権領土に相当すると見なしている場所への攻撃を放置すれば、イスラエルがイラン領内で、更に多くのイラン政府高官を標的にする可能性があると考えている。しかし、おそらく、より重要なことは、イラン政府関係者たちが、ダマスカスにあるイラン大使館攻撃を、ヒズボラの後方支援を断ち切ることを目的としたものであり、イスラエルによるレバノン侵攻という、より大きな目的に向けての中間的な動きと認識したことであろう。

2023年12月にイスラエルがダマスカス郊外で、イスラム革命防衛隊のラジ・ムサビ准将を殺害したことで、レヴァント地域におけるイランの非国家同盟組織の支援を担当する、イランの後方支援担当責任者(chief of logistics)が排除された。2024年1月の同様の攻撃で、シリアにおけるイスラム革命防衛隊の情報諜報責任者が解任され、4月1日にはモハメド・レザ・ザヘディ将軍が殺害されたことで、レヴァント地域の作戦責任者が排除された。

イランはまた、国内および地域の同盟国、組織の面子を保つ必要もあった。4月のダマスカス攻撃後、一部の強硬派は指導部を公然と批判し始めた。そのため、テヘランは武力で対応しなければならないと考えたが、戦争を引き起こすことなく、ある程度の抑止力を回復する必要があった。

414日未明、イスラエルに対し、高度に電波誘導を用いた大規模な無人機とミサイルによる攻撃を実施することで、戦争にならない範囲での報復を行った。優先事項は死と破壊ではなく、むしろイスラエルの領土を直接攻撃する勇気があることを示すことであった。もちろん、攻撃の規模を考えると、死と破壊の危険が当然のこととしてあった。イラン政府はおそらく、イスラエルとアメリカの防衛能力に関する重要な情報を収集しながら、自国が持つ能力のどの部分を公開するかを選択した可能性が高い。

イスラム革命防衛隊の航空宇宙戦隊司令官は、イランが今回の作戦のために準備した能力の20%未満しか投入しなかったのに対し、イスラエルは、アメリカや他の同盟諸国の支援を受け、防衛兵器をフル動員しなければならなかったと示唆した。これらの主張が少しでも正確であれば、イランがより高度な兵器を用いて、更なる大規模な攻撃を行う場合、特に奇襲的で長期間に及ぶような攻撃の場合、今回成功した防衛を再現できるのかという疑問が生じる。

イスラエルとそのパートナーたちは、この攻撃をほぼ無力化すること(neutralizing)に成功したが、テヘランは支持者・支援者の間での立場を強め、おそらくアラブ各国の路上で、パレスティナの権利擁護を公言し実行しているという評判を高めた。ガザでの戦争の惨状から国際的な関心をそらすことなく、このようなことが成し遂げられた。この事実は、アメリカやヨーロッパ諸国の大学キャンパスで行われた親パレスティナ派の抗議行動によって、より浮き彫りにされた。

この観点からすると、今回のイランによる攻撃の成功は、その限定的な軍事的成果からではなく、より強力な超大国の支援を受けている、強力な敵を直接標的にしたという事実そのものからもたらされた。ハメネイ師が主張しているように、イランがイスラエルに送った重要なシグナルは、イスラエルがイラン軍を切り崩し、レヴァントでの行動ができないようにすることを目的とする、今後の作戦を抑止するために、テヘランはある程度のリスクを受け入れることができるということであった。

しかし、この攻撃の直後に、イスラム革命防衛隊の最高司令官が設定したレッドライン(イランの標的に対するいかなる攻撃も、イランがイスラエルを再び直接攻撃する原因となる)は、イスラエルが現地時間4月19日にイスファハンで行った空対地ミサイル攻撃(イラク領空からS-300ミサイル防衛システムのレーダーを空対地ミサイルで攻撃、ナタンツの機密核施設に近接)に照らして、すぐに空威張りであることが示された。

イランにとって、イスラエルとの暗闘が現状に戻ることは、おそらく受け入れられる結果だろう。テヘランからすれば、せいぜい、シリアにおけるイランの武器輸送と施設を標的とするイスラエルのマバム(「戦争の中の戦争[war within the wars]」)キャンペーンの範囲を制限する方法を見つけることだろう。イランは少なくとも、イスラエルがイランの上級指揮官を標的にすること、そして、イラン国内で屈辱的な秘密工作を行うのを止めさせたいと考えている。イランがこれらの目的を達成できるかどうかを判断するのは時期尚早である。

今、重要なのは、イスラエルとイランの二国間の対立(bilateral rivalry)が、より広い地域情勢の中でどのように位置づけられるかということである。イスラエルとアメリカは、アラブ諸国との一時的な地域協力関係(ad hoc regional cooperation with Arab states)を活性化させ、ミサイルの一斉射撃を阻止したと自慢することができた。しかし、関係するアラブ諸国は、イスラエルから名指しされたり、味方についたと見られたりすることを避けたがった。イスラエルがアラブ諸国の行動を、自国に有利な反イラン地域同盟(anti-Iran regional alliance)の出現を示唆するものだと決めつけようとしたのとは反対に、アラブ諸国の指導者たちは、イスラエルとイランとの間の緊張が、自国を銃撃戦に巻き込む可能性があるという、以前から恐れていたことが証明されたと考えたのである。

イランの指導者たちは、ヒズボラという地域的な槍の先端を使わなかった、自分たちの報復が、更なる事態悪化の可能性を軽減することに成功したと、今のところは確信しているようだ。イランの攻撃からイスラエルを守るには10億ドル以上の費用がかかり、少なくとも5カ国が参加する大規模なティームワークが必要であるのに対し、イランには攻撃に2億ドルの費用がかかったということは、イスラエルもアメリカも、更なる戦闘を求めていないことを暗示している。したがって、イスラエルとアメリカ軍がおそらく同じことをしているのと同じように、イランには学んだ教訓に焦点を当てる余地がある。

イランがパンチを手加減してやったと主張しているにもかかわらず、アメリカ政府当局者たちは、その目的は「明らかに重大な損害と死者を引き起こすことであった」と評価している。今回の場合、パンチは当たらなかった。これは攻撃の脆弱性と防御力の両方の結果であると思われる。長距離を飛行するイランの無人機はほぼリアルタイムで探知され、発射体の多くはイスラエル領土に到達する前に迎撃されたからだ。かなりの割合(おそらく半分程度)が迎撃された。弾道ミサイルのうち多くが、自然に失敗して到達できなかったと報じられている。

これらの欠陥を正すために、イランはイスラエルに近い地域で武器の開発と備蓄を強化し、シリアでのプレゼンスの強化を必要とするだけでなく、将来の攻撃手段の一環として極超音速ミサイルを含むより先進的なミサイルの開発を加速させようとする可能性がある。

イスラエルによるイランへの報復は、イスラエルがイランの核施設に重大な損害を与える能力を持っていることをイランの指導者たちに思い知らせるものだった。また、イラン国内における、S-400のような、より高性能な防空システムの欠如や、近隣の空域に侵入するイスラエルの本質的に揺るぎない能力といった、テヘランの主要な欠点も露呈した。前者の欠点に対処するため、テヘランは、イランとヨーロッパの関係を更に悪化させることになるとしても、弾道ミサイルと引き換えにロシアの最新兵器を入手する努力を強化するだろう。

後者の欠点に対処するために、特にシリアでは、ロシアに助けを求める可能性もある。しかし、イラクではアメリカ軍が立ちはだかり、イランは、イラクの民兵組織にアメリカ軍基地を狙い続けるよう促し、イラク政府への政治的圧力を強めることで、イラクから約2500人のアメリカ軍を追い出そうとする動機をより高める可能性が高い。

テヘランはまた、シリアのユーフラテス川以東で、既に不安定な状態にあるクルド人主導のシリア民主軍の支配を緩めるための努力を強化する可能性が高い。これにより、イランは、シリアへの(そしてその先のレバノンへの)陸上アクセスポイントを増やし、同時にユーフラテス川西岸のデイル・エゾル州での影響力を強化することができる。最後に、テヘランは度重なる諜報活動の失敗により、国外にいる上級指揮官の所在が明らかにされてしまったことや、国内が脆弱になったことへの対処にも注力するだろう。

イラン指導部は、イランが10月以来実証してきた能力、つまり地域パートナーの非対称戦闘能力と、イスラエル上空を飛ぶイランのミサイル弾頭の永続的なイメージが、ガザ紛争の余波と相まって、地域秩序の再構成の前兆となる可能性があると信じている。

イラン政府の目には、イスラエルは世界的にますます排斥されると映っている。ロシア、中国、インドのような他の大国が影響力を拡大するにつれ、アメリカはもはやこの地域の最も重要なプレーヤーではなくなるだろう。そしてペルシア湾岸アラブ諸国(Gulf Arab states)は、イランに対して団結することを避け、代わりにシリアやヒズボラなどのイランの同盟国や組織との関係改善を目指すことになるだろう。

イラン指導部は、短期間に核弾頭を開発できる、制限核兵器保有国(threshold nuclear weapons state)としてのイランの地位を強化したいという願望でこのヴィジョンを補完している。特に、西側諸国が効果的で持続的な経済制裁緩和を行う能力があるかについてのテヘランの悲観的な見方を考慮すれば、イランの核能力の大幅な縮小を目的とした将来の合意は困難ということになるだろう。

しかし、イランの指導者たちは、永続的な現実が彼らの強気な物語を台無しにし、短期および中期の両方のリスクをもたらすことに気づくかもしれない。イランとイスラエルがゲームの新しいルールをまだ完全に定義してテストしていないことを考えると、特にイランは自慢の戦略的忍耐力(strategic patience)を放棄し、より攻撃的な姿勢に置き換えるべきだと信じる、政府内の人々が優勢であるように見えるため、両国は誤算を示す可能性がある。これらの強硬派は、イスラエルが、近いうちにイランが越えてはならない一線を堅持する姿勢を試すことになり、イランがそれに失敗すれば、4月14日に取った多大なリスクから得られる利益は失われると信じている。

そうなれば、双方の誤算(miscalculation)のリスクが高まり、壊滅的な打撃を与えかねない状況悪化の連鎖につながりかねない。中期的には、イランが中東で消滅しつつあるパクス・アメリカーナ(Pax Americana、アメリカによる平和)に代わる新たな秩序が生まれつつある、と見ていることが、かえってペルシア湾岸アラブ諸国が、アメリカの安全保障をより強固なものにする要求を倍加させ、テヘランが直面する脅威に対する認識を深めることになりかねない。

※アリ・ヴァエス:インターナショナル・クライシス・グループのイランプロジェクト部長、ジョージタウン大学外交学部非常勤講師。ツイッターアカウント:@AliVaez

※ハミドレザ・アジジ:ジャーマン国際・安全保障問題担当研究所訪問研究員。シャヒド・バレスティ大学地域研究助教(2016-2020年)。テヘラン大学地域研究学部訪問講師(2016-2018年)。ツイッターアカウント:@HamidRezaAz

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ライシ大統領の死がイランの未来に意味するもの(What Raisi’s Death Means for Iran’s Future

-ヘリコプター墜落事故によるライシ大統領の突然の死は、地域的な混乱の中でイランに不確実性をもたらす。

ジャック・ディッチ筆

2024年5月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/20/iran-president-helicopter-crash-raisi-politics-supreme-leader/

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イラン大統領エブラヒム・ライシがシリアのダマスカスを訪問(2023年5月3日)

イランのエブラヒム・ライシ大統領は日曜日、他のイラン政府高官たちの一団を乗せたヘリコプターがイラン北部の山中に不時着した事故で死亡し、イランと中東地域の将来に大きな疑問を生じさせた。

イラン国営のイスラム共和国通信が確認したところによると、ホセイン・アミール=アブドラヒアン外相と他の高官たちもイランの東アゼルバイジャン州を移動中に墜落し死亡した。墜落現場が発見されるまでの数時間、濃霧が捜索・救助活動を妨げた。霧は非常に濃く、イラン側はヘリコプターの位置を特定するためにヨーロッパ連合(EU)の衛星の支援を要請せざるを得なかった。

ライシ大統領の死は、イランが強硬な方向(hard-line direction)に進み、中東を地域戦争(regional war)の危機に晒される恐れがあったイラン政治の短い変革の時代(transformative era)に終止符を打った。ライシは政権の座に就いて約3年間、イランの国内政治と社会政策をより保守的な方向に動かし、2017年の大統領選挙でライシを破った前任者のハッサン・ロウハニの後、イランをこの地域における明らかなアメリカの敵対者の立場へと更に推し進めた。ロウハニは、代理攻撃(proxy attacks)を強化する前に、まずイランの核開発をめぐる西側諸国との緊張緩和を模索した。

イスラム法学者で、アリ・ハメネイ師(Ayatollah Ali Khamenei)との緊密な関係で知られ、多くの当局者や専門家たちが高齢化する最高指導者の後継者候補とみなされてきた、ライシの大統領在任期間中、イランはウラン濃縮(uranium enrichment)を加速させ、包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action)の交渉を遅らせた。アメリカはライシが大統領に就任する3年前の2018年に協定を離脱した。

ライシ政権下のイランはまた、シャヘド自爆ドローンや大砲の大規模な輸出でウクライナに対するロシアの戦争を支援し、ハマスによる2023年10月のイスラエルへの越境攻撃の後、アメリカとイスラエルに対する地域の代理民兵組織(regional proxy militias)による攻撃を増加させ、ライシの死のわずか1カ月前には、イスラエルに対して大規模なドローンとミサイル攻撃を開始した。

複数の専門家によれば、ライシの後任が誰になろうとも、彼が追求した戦略はイランの政治的・聖職的指導部の上層部の間で堅持されており、変わることはないだろうという。

民主政治体制防衛財団(Foundation for Defense of DemocraciesFDD)のイラン上級研究員ベーナム・ベン・タレブルーは次のように述べている。「ライシがいてもいなくても、政権は10月7日以降の中東の成り行きに満足している。イランは、アメリカとイスラエルに対して、代理人を使って直接攻撃したが、4月に見られたような、一触即発(tit-for-tat)の状況にも何度か直面しながら、状況を有利になるように進めている」。

イラン憲法では、選挙が実施されるまでの50日間は、ムハンマド・モクバー筆頭副大統領が政権のトップを務めることになっている。アナリストによれば、最近の議会選挙は記録的な低投票率だったという。更に、2021年の前回の大統領選挙では、ライヴァルたちを追い落とし、ライシ候補の勝利を確実にするために、ハメネイと協力者たちは多大な努力を行った。

ライシは大統領に就任する前、1988年に推定5000人の反体制派の処刑を担当した、イラン検察委員会の委員を務めていた。ライシは国連から人道に対する罪で告発され、米財務省から制裁を受けていた。そして、その強圧的なアプローチは、2022年9月にイラン道徳警察が、22歳のマフサ・アミニが公共の場で適切にヒジャブを着用しなかったとして交流した後に死亡した事件がそれに続き、これが全国的な抗議活動を引き起こした。

臨時選挙や来年に予定されている正式な大統領選挙という地平線の先には、イランの支配層のトップに激震が走る可能性がある。国家元首(head of state)の息子であるモジタバ・ハメネイ以外に、85歳のハメネイの後継者となりうる人物は限られているため、ライシの死はイランの政治的未来を更なる混乱に陥れる可能性がある。

イラン経済の主要部分を支配するイラン国軍最大の部隊である、イスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard CorpsIRGC)も、この混乱を利用して自らの力を増大する可能性がある。

米国防大学近東アジア戦略研究センター教授で退役米陸軍大佐のデービッド・デ・ロシュは、「ライシがいなくなってしまう場合、後継者は明白になっていない。本当に興味深いのは、イスラム革命防衛隊が基本的に、スローモーションクーデター(slow-motion coup)を完了するかどうかを見ることだ」と述べている。

救助隊が墜落したライシのヘリコプターを捜索中に、国営メディアはイラン国民にライシのために祈るよう求めた。その代わりに、墜落の報道を受けて、イラン国民の一部は祝賀の花火を上げ、強硬派の指導者の死について歓喜したようだ。

米海軍大学院准教授で、ヴェテランのイラン専門家であるアフション・オストヴァールは、ライシ大統領の死去が確認される前に、「今日の墜落とライシ大統領と外相の死亡の可能性はイラン政治を揺るがすだろう」とXへの投稿で書いた。オストヴァールは続けて、「原因が何であれ、不正行為(foul play)の認識は政権内に蔓延するだろう。野心的な分子が利益を求めて圧力をかけ、政権の他の部分からの反発を強いられる可能性がある。このような事態が起きることに備えておくべきだ」。

専門家たちは、臨時選挙でも2025年のイラン大統領選挙でも、自由化を進める人物が現れる可能性は低いとしながらも、ライシの死は、水面下で続いてきた抗議運動の復活にわずかな隙を残す可能性があると述べている。

「民主政治体制防衛財団の専門家ベン・タレブルーは、「講義運動は死んでいない。これらの運動は、ストライキや労働組合など、低レヴェルの周辺地域で活動している。全国的な引き金になるかもしれないし、何も起こらないかもしれない。しかし、イランの抗議運動の物語はいつ起こるか、起きるかどうかの問題でもある」と述べた。

※ジャック・ディッチ:『フォーリン・ポリシー』誌国防総省・国家安全保障担当記者。ツイッターアカウント:@JackDetsch

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 昨年10月に始まった、パレスティナ紛争、イスラエルによるパレスティナ側への報復攻撃は半年を超えて継続している。その間にパレスティナ側の民間人の死傷者が増加し、その様子が連日世界中で報道される中で、イスラエルによる過剰な報復、この機会を使用して、二国共存による解決(two-state solution)を無効化しようとする動きに対して、批判が高まっている。これまで、イスラエルを無前提、無条件で支援してきたアメリカでも、国内世論はイスラエルに批判的になっていることはこのブログでも既に紹介した。アメリカ全土の大学での抗議活動で逮捕者が出ていることは日本でも報道されている。

 アメリカのジョー・バイデン政権は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権に対して、自制を求めているが、イスラエル側は、アメリカが支援を止めることはないし、アメリカ国内にイスラエル・ロビーと呼ばれる、親イスラエルの強力な組織が複数あるといいうことから、バイデン政権の要請を無視してきた。バイデン大統領はネタニヤフ首相の姿勢に不満を表明してきた。そして、以下のような状況になっている。アメリカはイスラエルへの弾薬の輸送を停止した。そして、ハマスが戦闘停止の提案に賛意を示し、イスラエル側は提案内容に不満を示しながらも、交渉の継続を発表した。

(貼り付けはじめ)

米、イスラエルへの弾薬輸送停止 ハマスとの戦闘開始後初と報道

5/6() 0:33配信 共同通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/d63cc6d470f4bd6fb499b4dc7b6ed03d097ba3cf

 【ワシントン共同】米ニュースサイト、アクシオスは5日、米国がイスラエルへの弾薬輸送を先週停止したと報じた。複数のイスラエル当局者が明らかにした。昨年107日にパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まって以降、兵器の輸送を停止したのは初めて。

 イスラエル政府は輸送停止に懸念を強めているという。全米の大学ではイスラエルの自衛権を支援するバイデン政権の対応に抗議するデモが続いている。

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●「ハマス、ガザ停戦案の受け入れ表明 イスラエルは「要求からかけ離れた内容」」

BBC JAPAN  2024年5月7日

https://www.bbc.com/japanese/articles/c1rv23v8j13o

パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘の一時停止とイスラエル人人質の解放にむけた交渉で、イスラム組織ハマスは6日、カタールとエジプトの仲介役に対し停戦案を受け入れると伝えたことを明らかにした。

ハマス関係者は「(交渉の)ボールは今、イスラエル側のコートにある」と述べた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスの提案は「イスラエルの基本的な要求からかけ離れたもの」だとしつつ、交渉担当者による話し合いは継続されると述べた。

イスラエル国防軍(IDF)がガザ地区南部ラファの東側から避難するよう現地のパレスチナ人に指示をした数時間後に、ハマスは停戦案を受け入れると発表した。

ラファでの作戦では、数万人のガザ市民が影響を受けると考えられている。6日には多くの人がぎゅうぎゅう詰めの車やロバが引く荷車で移動した。

IDFは避難命令を出した後に空爆を実施した。ハマス関係者は「危険なエスカレーション」だとしている。

■停戦案を「承認する」と

ハマスは6日夜に声明を出し、同組織の政治指導者イスマイル・ハニヤ氏がカタールの首相とエジプト情報局の長官に「停戦合意に関する提案を承認する」と伝えたことを明らかにした。

この提案に詳しいパレスチナ側の高官は、条件が満たされれば「敵対的な活動を永久に」終わらせることにハマスが同意したと、BBCに語った。

これは、ハマスが武装闘争の終結を熟考している可能性をうかがわせるものだが、それ以上の詳細は明らかにされなかった。

提案では、停戦は段階的に行われる。第1段階では、イスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人囚人50人(終身刑の囚人数人が含まれる)の釈放と引き換えに、ハマスの人質となっているイスラエル人女性兵士らを解放することが含まれる。

1段階は42日間かけて実施される。この期間中、IDFはガザ内にとどまる。しかし、戦闘の一時停止が始まってから11日以内に、ガザ中部にあるIDF施設の解体を開始し、ガザを南北に走る主要ルート、サラ・アル・ディン通りや、海岸沿いの道路からIDFは撤退する。

停戦開始から11日後には、家を追われたパレスチナ人のガザ北部への帰還が認められる。

2段階も42日間で、前出のパレスチナ側の高官は、「持続可能な長期的な平穏」とガザ封鎖の完全解除で締めくくられるとしている。

「イスラエルが停戦合意に応じるのか、それともそれを妨害するのか。ボールは今、(イスラエル側の)コートにある」とハマス高官はAFP通信に語った。

■イスラエルの反応

ハマスの声明を受け、ガザではお祝いムードが広がった。

しかし、イスラエル政府関係者の1人はロイター通信に対し、ハマスが受け入れるとした提案は、エジプトが提案した内容が「弱められた」もので、イスラエルが受け入れることのできない「広範囲におよぶ」決定が含まれていると述べた。

そして、「イスラエルが合意を拒否する側であるように見せかけるための策略のようだ」と指摘した。

イスラエルの首相官邸はその後、「ハマスの提案がイスラエル側の基本的な要求からかけ離れていても、イスラエルは交渉の代表団を派遣し、イスラエルが受け入れられる条件のもとで合意に達する可能性を追及する」と声明で述べた。

イスラエルの戦時内閣は同じころ、ラファでの作戦継続を決定した。「人質の解放、ハマスの軍事・統治能力の破壊、そしてガザが将来、イスラエルにとって脅威とならないようにするという、我々の戦争目標を達成するため、ハマスに軍事的圧力をかけるため」だとしている。

■アメリカ、合意実現への努力継続と

米国務省のマシュー・ミラー報道官は、アメリカはハマスの反応を検討し、「我々のパートナー国と話し合っている」と記者団に述べた。アメリカはカタールやエジプトとともに、停戦交渉の仲介を試みている。

「我々は人質解放の合意がイスラエル国民の最善の利益になると信じ続けている」

「(人質解放は)即時停戦をもたらすだろう。人道的支援の動きも拡大できるようになるだろう。だからこそ、我々は合意に到達するための努力を続けていく」

昨年107日のハマスによるイスラエル奇襲では、イスラエル側で約1200人が殺害され、250人以上が人質となった。イスラエルは直後に報復攻撃を開始した。

ハマス運営のガザ保健省は、ガザでのイスラエルの軍事作戦でこれまでに34700人以上が殺されたとしている。

11月には、1週間の停戦が実現し、この間にイスラエルの刑務所にいたパレスチナ人囚人約240人と引き換えにハマスの人質105人が解放された。

イスラエルによると、ガザでは依然、128人の人質の行方がわかっていない。

そのうち少なくとも34人は死亡したと推定されている。

(貼り付け終わり)

 アメリカのジョー・バイデン政権としては、ウクライナ問題よりも、パレスティナ問題について優先的に目途をつけたいと考えている。今年11月の大統領選挙を控え、各種世論調査で共和党のドナルド・トランプ前大統領に負けているジョー・バイデンは、まずは民主党支持者を固めたい。民主党支持者はイスラエルへの支援に反対が多い。民主党支持者を固めるには、パレスティナ問題が優先課題だ。また、全米各地の大学での学生たちによる抗議運動もバイデンにとっては脅威だ。彼らが今年夏の民主党大会において、激しい抗議活動を行えば、バイデン陣営と民主党にとっては大きな痛手だ。1968年の民主党大会の例を引くまでもなく、2016年の民主党大会で、ヒラリー・クリントンに反対する若者たちの抗議活動の激しさは記憶に新しい。バイデンとしては党大会までに、パレスティナ問題を何とかしたいところだ。そのために、イスラエル・ロビーの圧力を避けながら、イスラエルに対して、停戦に向けて圧力をかけるだろうと私は書いたが、そのような動きになっている。

 更に言えば、そもそも論として、イスラエルをここまで傲慢にし、増長させて、結果として中東の不安定化を進めたのはアメリカである。アメリカが無条件にイスラエルを支援し続けたことが、イスラエルの傲岸不遜、選民思想丸出しの戦争国家にしてしまった。また、イスラエルの極右派は、アメリカが主導した二国間共存解決を反故にしようとしている。アメリカの面子など、イスラエルは全く気にしない。アメリカはイスラエルに利用され、虚仮にされてきた。

 アメリカの世論も大きく変わろうとしている。無条件のイスラエル支援に対しては疑問の声、反対の声が大きくなっている。そうした声はこれまで「反ユダヤ主義的」として封じ込められてきたが、そのようなレイべリング(ラベリング、labeling)の有効性が小さくなっている。それほどにイスラエルの行動は酷いもので、国際的な孤立を招いている。そして、アメリカに対する反感も募っている。アメリカの対イスラエル政策を見直す時期が来ていると言ってよいだろう。

(貼り付けはじめ)

アメリカが中東の燃え盛る炎に油を注いだ(America Fueled the Fire in the Middle East

-イスラエルは、ますます大きくなる危険の中にあるが、その責任はテヘランよりもワシントンにある。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年4月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/15/middle-east-war-crisis-biden-america-iran-israel/

 

2024年4月1日、テヘランにて、イスラエルによるシリアのイラン領事館への空爆を非難する抗議デモで、アメリカ国旗を燃やすイランの抗議者たち

シリアのダマスカスにあるイランの領事館に対するイスラエルの攻撃に対し、イランが無人機とミサイル攻撃で報復するという決定を下したことは、バイデン政権が中東をいかにひどく誤って扱ってきたかを明らかにしている。ハマスが2023年10月7日にイスラエルを攻撃する前夜に、この地域は「ここ数十年来で最も静か(quieter than it has been for decades)」だと自らを納得させてきた、アメリカ政府高官たちは、それ以来、悪い状況を、更に悪化させるような対応をしてきた。ドナルド・トランプ、バラク・オバマ、ジョージ・W・ブッシュ、ビル・クリントンの各政権も多くの場合失敗している。

2023年10月7日のハマスの残忍な攻撃に対するジョー・バイデン政権の対応には、3つの主な目的があった。第一に、イスラエルへの揺るぎない支持を伝えようとした。レトリック的に支持し、イスラエル政府高官たちと定期的に協議し、ジェノサイドの非難からイスラエルを擁護し、国連安全保障理事会での停戦決議に対して拒否権を行使し、イスラエルに殺傷能力の高い兵器を安定的に供給した。第二に、ワシントンはガザ紛争がエスカレートするのを防ごうとしてきた。最後に、パレスティナの市民への被害を抑え、アメリカのイメージと評判へのダメージを最小限に抑えるため、イスラエルに自制的な行動をとるよう説得してきた。

この政策は、その目的が本質的に矛盾していたために失敗した。イスラエルに無条件の支援を与えることは、イスラエルの指導者たちへのアメリカからの自制の呼びかけに耳を傾ける動機をほとんど与えなかったため、彼らがそれらを無視したのは驚くべきことではない。ガザは破壊され、少なくとも3万3000人のパレスティナ人(1万2000人以上の子供を含む)が死亡し、アメリカ政府当局者たちは、ガザの民間人が飢餓状態に直面していることを認めている。イエメンのフーシ派民兵組織は停戦を要求していると主張し、紅海の船舶を標的にし続けている。イスラエルとヒズボラの間の低レヴェルの紛争は依然としてくすぶっている。そして占領下のヨルダン川西岸では暴力が急増した。そして今、イランは4月1日の総領事館爆破に対して報復としてイスラエルに無人機とミサイル攻撃を開始しており、更に広範な戦争の可能性が高まっている。

アメリカ人はイランが悪の体現者であるということを聞き慣れているため、読者の中には、この問題全てをテヘランのせいにしたくなる人もいるかもしれない。たとえば先週、『ニューヨーク・タイムズ』紙のトップ記事は、イランがヨルダン川西岸地区の不安をあおるために武器を「洪水のように大量に(flooding)」持ち込んでいると報じた。

この見方では、イランは既に炎上している地域にガソリンを注いでいることになる。しかし、この話にはさらに多くの要素があり、そのほとんどはアメリカの実情をあまり良く反映していない。

はっきりさせておきたい。イランは残忍な神権的政権(brutal theocratic regime)によって統治されており、私は同情することはない。しかし、その支配下で暮らし、アメリカの制裁による懲罰に耐えなければならない何百万人ものイラン人には同情する。イランの政権の行動の中には、例えばロシアのウクライナ侵略への支持など、非常に不快なものもある。しかし、ヨルダン川西岸(あるいはガザ地区)に小火器やその他の武器を密輸しようとするその努力は、特に凶悪なことだろうか? また、最近イスラエルが領事館を攻撃し、その過程で2人のイラン人将軍を殺害したことに対して、報復の決定は驚くようなものだろうか?

ジュネーブ条約によれば、「交戦的占領(belligerent occupation)」下にある住民には占領軍に抵抗する権利がある。イスラエルが1967年以降、ヨルダン川西岸と東エルサレムを支配し、70万人以上の不法入植者によってこれらの土地を植民地化し、その過程で何千人ものパレスティナ人を殺害してきたことを考えれば、これが「交戦的占領」であることに疑いようがない。もちろん、抵抗行為には戦争法が適用される。ハマスや他のパレスティナ人グループは、イスラエルの民間人を攻撃する際に戦争法に違反している。しかし、占領に抵抗することは正当であり、苦境にある住民を助けることは必ずしも間違っている訳ではない。たとえイランがパレスティナの大義に対する深い関与からではなく、独自の理由から支援を行ったとしても、それは間違っていない。

同様に、イスラエルが自国の領事館を爆撃し、イランの将軍2人を殺害した後に報復するというイランの決定も、特にイランが戦争を拡大する意図がないと繰り返し表明していることを考えると、生来の攻撃性(innate aggressiveness)の証拠とは言えない。実際、その報復はイスラエルにかなりの警告を与える方法で行われ、イラン政府がこれ以上エスカレーションするつもりはないことを示すように設計されていたようだ。アメリカとイスラエルの政府当局者たちが武力行使の際によく言うように、イランは単に「抑止力を回復(restore deterrence)」しようとしているだけだ。

忘れてはならないのは、アメリカは何十年もの間、中東に兵器を「氾濫(flooding)」させてきたということだ。イスラエルには毎年何十億ドルもの高度な軍備を提供し、アメリカの支援は無条件であると繰り返し保証している。

イスラエルがガザ地区の民間人を爆撃し飢餓に陥れても、アメリカからの支持は揺らいでいない。イスラエルが最近、アントニー・ブリンケン米国務長官の訪問を歓迎し、ヨルダン川西岸地区における、1993年以来最大規模のパレスティナ人所有の土地の没収を発表したときも、その支持は揺るがなかった。エクアドルが最近キトのメキシコ大使館を襲撃したことを非難しているときでさえ、イスラエルがイランの領事館を爆撃したとき、ワシントンは何の動きも起こさなかった。それどころか、国防総省の高官たちは支持を示すためにエルサレムに向かい、ジョー・バイデン大統領はイスラエルへの関与が「鉄壁(ironclad)」であることを強調した。イスラエルの高官たちが、アメリカからの忠告を無視できると考えるのは不思議だろうか?

権力が抑制されていない国家はそれを濫用する傾向があり、イスラエルも例外ではない。イスラエルはパレスティナ人よりもはるかに強力であり、更に言えばイランよりも有能であるため、パレスティナに対して罰を受けずに行動することができ、実際にそうしている。数十年にわたるアメリカの寛大かつ無条件の支援により、イスラエルはやりたいことを何でもできるようになり、それがイスラエルの政治とパレスティナ人に対する行動が時間の経過とともにますます過激になる1つの要因となった。

第一次インティファーダ[First Intifada](1987-1993年)のように、パレスティナ人が効果的な抵抗を動員できるようになったのは珍しい機会であった。イツハク・ラビン元首相のようなイスラエルの指導者たちは、妥協の必要性を認め、和平を試みることを余儀なくされた。残念ながら、イスラエルは非常に強く、パレスティナ人は非常に弱く、アメリカの調停者はイスラエルに一方的に有利だったため、ラビンの後継者は誰もパレスティナ人が受け入れられるような取引を提示しようとしなかった。

イランがヨルダン川西岸地区に武器を密輸していることにまだ憤慨しているのなら、もし状況が逆だったらどう思うかを自問してほしい。エジプト、ヨルダン、シリアが1967年の第三次中東戦争に勝利し、何百万人ものイスラエル人を脱出させたとしよう。勝利したアラブ諸国がその後、パレスティナ人が「帰還権(right of return)」を行使し、イスラエル・パレスチナの一部または全部に独自の国家を樹立することを許可することを決定したとする。加えて、100万人ほどのイスラエル系ユダヤ人が、ガザ地区のような狭い飛び地に閉じこもる無国籍難民(stateless refugees)になってしまったとする。そして、元イルグン(Irgun)の戦士や他のユダヤ人強硬派が抵抗運動を組織し、その飛び地を支配下に置き、新しいパレスティナ国家の承認を拒否したとする。更に、彼らは世界中の同調支持者から支援を得て、飛び地への武器の密輸を開始し、その武器を使って近隣の入植地や最近建国されたパレスティナ国家の町を攻撃した。そして、そのパレスティナ国家が、飛び地を封鎖し爆撃することで応戦し、何千人もの民間人の死者を出したとする。

こうした状況を踏まえると、アメリカ政府はどちらの側を支持すると考えるか? 実際、アメリカはこのような状況の出現を許すだろうか? 答えは明白であり、アメリカがこの紛争に一方的に取り組んでいることを雄弁に物語っている。

このような悲劇的な皮肉は、イスラエルを批判から守り、次から次へとアメリカの歴代政権に、たとえ何をするとしてもイスラエルを支持するよう圧力をかけることに最も熱心だったアメリカ国内の個人や組織が、せっかく熱心に支援しても、実際にはイスラエルに多大な損害を与えてきた。

過去50年間、「特別な関係(special relationship)」がどこにつながってきたかを考えてみよう。二国家間解決(two-state solution)は失敗し、パレスティナ人の抱える問題は将来も未解決のままである。その理由の大部分は、ロビー活動によって、歴代の米大統領がイスラエルに意味のある圧力をかけることができなくなったからである。1982年にイスラエルが行った無策のままのレバノン侵攻(ヨルダン川西岸地区をイスラエルの支配下に置くという愚かな計画の一環)は、ヒズボラの出現につながり、ヒズボラは現在イスラエルを北から脅かしている。ベンヤミン・ネタニヤフ首相をはじめとするイスラエル政府高官たちは、パレスティナ自治政府を弱体化させ、ハマスへの密かな支援によって二国家解決への進展を阻止しようとし、2023年10月7日の悲劇を招いた。イスラエルの国内政治はアメリカ以上に偏向しており(これはある意味当然だが)、ロビーの大半のグループがことあるごとに擁護しているガザでの行動は、イスラエルの孤立国家(pariah state)への道を助長している。多くのユダヤ人を含む若いアメリカ人のイスラエルへの支持率は低下している。

この不幸な状況のおかげで、イランはパレスティナの大義を擁護し、核兵器保有に近づき、イランを孤立させようとするアメリカの努力を妨害することができた。もしアメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)とその盟友たちが自らを省みることができるのなら、自分たちがイスラエルに支援してきたことに愕然とするだろう。

対照的に、イスラエルの行動の一部を批判してきた私たち(反ユダヤ主義者、ユダヤ人嫌い、あるいはそれ以上の汚名を着せられるだけだった)は、実際には、アメリカにとってもイスラエルにとっても同様に良かったであろう政策を推奨してきた。私たちの助言に従っていれば、イスラエルは今日より安全になり、何万人ものパレスティナ人がまだ生きていて、イランは核開発から遠ざかり、中東はほぼ確実にもっと平穏になり、アメリカの人権と規則に基づく秩序の擁護者(principled defender of human rights and a rules-based order)としての評判も回復しただろう。最後に、もしこれらの土地が実行可能なパレスティナ国家の一部であれば、イランがヨルダン川西岸地区に武器を密輸する理由はほとんどないだろうし、イランの指導者たちが独自の核抑止力を持っていればより安全になるのではないかと熟考する理由も少なくなるだろう。

しかし、中東に対するアメリカの政策にもっと根本的な変化が起こらない限り、こうした希望に満ちた可能性は依然として手の届かないものであり、私たちをここに導いた過ちは繰り返される可能性が高い。

スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年10月7日にガザ地区を実効支配するハマスによるイスラエルへの攻撃で、約1200人が殺害され、250人以上が拉致された。そのうちの一部は解放されたが、大部分は拉致されたままだ。被害者家族たちは即時の解放を求めている。イスラエルは人質の解放とハマスの壊滅を掲げて、ガザ地区に侵攻し、激しい攻撃を加えた。ガザ地区では民間人の死傷者が多数出ており、イスラエル軍の過剰な反撃に対しては国際的な非難が高まっている。イスラエルを全面的に支持し、これまでも手厚い支援を行っているアメリカでも、国内世論がイスラエルの過剰な反撃に対して嫌悪を示している。その世論を背景にして、ジョー・バイデン米大統領はイスラエルに対して不満を隠そうとはしていない。

 これまでも何度か行われた停戦交渉で拉致された人質の一部が解放されているが、イスラエルの軍事的な反撃が激しさを増しながら、半年を過ぎようとしているが、人質救出の目途は立っていない。イスラエル国内でもベンヤミン・ネタニヤフ首相の強硬路線に対する反対の声が上がるようになっている。ネタニヤフ首相は政権内部の極右勢力の閣僚たちを頼りに政権運営を行っているが、一番の問題は「ハマスを壊滅させることもできず(ハマス以外の過激派組織が成長することも含めて)、人質を救出することもできず」という状態にあることだ。
 軍事力だけで比べれば、イスラエルがガザ地区を徹底的に破壊して、再占領をすることは容易なことだ。しかし、ガザ地区再占領が今回の軍事作戦の目的ではない。人質を解放することが最優先だ。ハマスの壊滅はそれに比べれば重要度は低い。ネタニヤフ首相はそのことを履き違えている。しかも、軍事作戦を進めれば進めるほどに、国際的な非難の声は大きくなるばかりだ。イスラエルはガザ地区での作戦を中止し、一部部隊を撤退させた。ネタニヤフ首相はただガザ地区を破壊し、パレスティナ人の憎しみを増大させ、肝心の人質の救出にはつながっていない。半年も経ってこのような状態では、ネタニヤフ首相は大きな失敗をしたと言わざるを得ない。

 バカ極右が下手に軍事力を持つとどのようなことを起こすか、日本にとって良い教訓だ。

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ネタニヤフ首相の戦争戦略は意味をなしていない(Netanyahu’s War Strategy Doesn’t Make Any Sense

-イスラエルの計画は、それ自体の条件から見てもつじつまが合わない。

アンチャル・ヴォ―ラ筆

2024年4月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/05/israel-gaza-war-netanyahu-strategy/

2023年11月、私はテルアヴィヴでハマスに人質として拘束されたリリ・アルバッグの父親エリ・アルバッグに会った。ベギン通りの真ん中で19歳の娘の写真を手にしながら、彼はハマスに圧力をかける政府の軍事作戦を支持すると言った。「ハマスが自ら人質を解放すると思うか?」 しかし、アルバッグは我慢の限界に達したようだ。2024年3月下旬、彼はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に最後通牒を突きつけ、家族たちはもう支援集会を開かず、反ネタニヤフ抗議運動の拡大に加わって街頭に集まると地元メディアに語った。

問題となっているのは、人質の家族が、親族の帰還(the return of their relatives)とハマスのイスラエルに隣接するガザ地区からの排除(Hamas’s removal from their neighborhood)を、この順で勝利と見なしている一方で、多くの人がこの2つの戦争目的が矛盾していることを以前から知っていたことだ。しかしネタニヤフ首相は軍事作戦開始以来、人質解放よりもハマスの排除を意図的に優先してきたが、実際にはどちらも達成するための一貫した計画はない。

ネタニヤフ首相は、戦争を終結させ、人質を解放し、平和をもたらす見通し、ヴィジョンを欠いたまま、ただ出来事に反応しているだけだと、軍事アナリストやイスラエル国民の一部から非難されることが増えている。

しかし、ネタニヤフは依然として憤慨している。抗議デモに対してネタニヤフ首相は、「勝利がもうすぐ訪れるこの時期に早期の選挙は国を麻痺(paralyze)させ、ハマスを利するだけだ」と述べた。彼は今、100万人以上のパレスティナ人が避難しているガザ地区南部のラファに目をつけている。このような攻撃は国際的な怒りを買うだけでなく、ハマスとの交渉をより難しくするだろう。

2023年10月7日、ハマスがイスラエルの町やキブツ(kibbutzim)を襲撃し、約1200人を殺害、250人以上を拉致した直後、ネタニヤフ首相は宣戦布告した(declared war)。ガザ地区を空爆することでハマスに圧力をかけ、捕虜を解放させ、同時にハマスを排除するというのが、人質の家族に対する基本的なメッセージだった。

しかし、ハマスは、ガザ地区をはじめとするパレスティナ地域だけでなく、レバノン、シリア、イランなどにも拠点を構え、国民から絶大な支持を得ている。ハマスは、どのように排除するつもりなのかという、より根本的な問題については、ネタニヤフ首相は口をつぐんだ。アメリカの情報諜報機関が毎年まとめている脅威評価によれば、イスラエルはハマスの何年にもわたる抵抗に直面する可能性がある。

何年にもわたる対反乱作戦の末、イスラエルの治安部隊がガザ地区でハマスを壊滅させることができたとしても、将来のどうようなグループの再来はどうなるだろうか? イスラエル国防軍(IDF)が更に長い期間をかけてハマスの分派を壊滅させたとしても、ネタニヤフ首相は、政治的解決の目処が立たないまま、武装抵抗をどのように排除するのだろうか?

安全保障担当のある政府高官は匿名を条件に本誌に次のように語った。「私たちはハマスの全24大隊のうち18大隊を壊滅させたが、ハマスの撲滅にはどれだけの距離があるだろうか? それは大きな疑問だ。ハマスを排除することは可能だが、その期限を決めることはできない。もちろん、他のグループが台頭する可能性もある」。

ガザ地区内でのイスラエルの軍事作戦は、ハマスのインフラと軍事能力に大きなダメージを与えたが、平和は保証されていない。イスラエルの世界的に有名な国防軍と治安機関が、10月7日の攻撃の2人の首謀者、モハメド・デイフとヤヒヤ・シンワルを逮捕することができていないという事実、今もガザの裂け目のどこかに2人が身を潜めているという事実が、イスラエルの限界と、ハマス指導部が今も受けている支援の大きさを物語っている。

2月にネタニヤフ首相がついに計画の概要を発表したが、詳細はほとんどなく、イスラエルの専門家たちによって「計画ではない(non-plan)」としてすぐに却下され、「現実から切り離されている(untethered from reality)」と形容され、ただの大騒ぎのように聞こえた。結局のところ、ガザ地区再占領への行程表(ロードマップ、roadmap)以上のものではなかった。

ネタニヤフ首相は、ガザ地区を当面の間、「安全管理(security control)」し、この地域が完全に非武装化されて初めて復興を許可すると述べた。また、パレスティナ人の非武装化を望んでおり、パレスティナの国家承認を否定している。いかなる合意も、イスラエル人とパレスティナ人の「直接交渉によって(through direct negotiations)」のみ達成されるとネタニヤフは語ったが、交渉の時期は明らかにしていない。報道によると、流布された計画では、戦後のガザ地区の文民行政は、ハマス以外の非敵対的な地元の各グループによって運営されることになっている。

パッと見たところでは、ハマスの残忍な攻撃を受けて恐怖に怯え、安全に暮らしたいと願うイスラエル国民にとっては理に適っている。しかし、よくよく考えてみると、辻褄が合わない。最初に、ネタニヤフ首相はイスラエル軍を無期限に派遣するつもりなのか、それとも必要なときに必要なだけイスラエル軍に自由に立ち入ることを望んでいるのか、明らかにしていない。前者はガザ地区の再占領を意味し、後者は事実上の支配を意味する。どちらの選択肢も、イスラエル国民やイスラエルの国際的パートナーにはまだ提示されていない。

たとえ、ネタニヤフ首相が、イスラエルが最近国交を結んだ、アラブ諸国からなる多国籍軍がガザ地区の治安維持を引き継ぐことに同意したとしても、そのような多国籍軍がパレスティナ人の間でどのような信頼を得られるかについては疑問が残る。ハマスの大隊を全て非武装化するのは短期的な課題かもしれないが、その残党や別組織と戦うには何年も、もしかしたら何十年もかかるだろう。治安維持部隊にとっては、反目する準国家を監視するよりは、反乱軍に対処する方がまだ扱いやすい仕事だが、イスラエル軍には大きな犠牲を強いることになる。イスラエルの高圧的な態度は、イスラエル国内でのパレスティナ人の攻撃を抑制するか、もしくは助長するかのどちらかだ。

イスラエルの元国家安全保障担当次席補佐官エラン・ラーマンは、パレスティナ人の非急進化(deradicalize)という目標は、永続的な和平に向けたものだと語った。ラーマンは、「私たちは一過性の現象であり、遅かれ早かれ圧力で崩壊するだろうというパレスティナ人の認識を変える必要があるため、非急進化がカギとなる」と述べた。学校やモスクでの非急進化プログラムは、「イスラエルの生存権を認めない」人々(those who do not “accept Israel’s right to exist”)を対象にしたものだ。

しかしパレスティナ人は、これもまた二国家共存による解決を遅らせるためのネタニヤフ首相の戦術だと言う。結局のところ、パレスティナ人は単にハマスのプロパガンダによってイスラエルに反対しているのではない。パレスティナ人の多くは、イスラエル国家と入植者による土地収奪の犠牲者であり、それは現在の戦争による苦しみ以前の問題なのだ。ネタニヤフ首相は、パレスティナ人の自決の考えをより生産的な形で形成する方法についての計画を明らかにしていない。

ネタニヤフ首相の、地元住民に最終的な文民統制権を与えるという提案もまた、軽率に思える。いったい誰を念頭に置いているのだろうか? あるイスラエル安全保障関係者は、イスラエルに友好的なアラブ諸国、特にアラブ首長国連邦に従順な現地人はテストに合格するだろう、と語った。しかし、そのような指導者はイスラエルの操り人形とみなされ、パレスティナ人の間では立場が弱いかもしれない。ヨルダン川西岸のマフムード・アッバス率いるパレスティナ自治政府(Palestinian Authority)のように、嘲笑の的になるかもしれない。

ネタニヤフ首相のハマス壊滅、ガザ地区の非武装化、パレスティナ人非武装化キャンペーンは、事実上ガザ地区の再占領に等しい。ガザ地区を再占領することは、イスラエル国民の多くが快く思っていないとしても、ネタニヤフ首相の、計画になっていない計画はそこに向かっている。イスラエル国防軍で報道官を務めたジョナサン・コンリカスは「イスラエル人は占領という言葉を使いたがらないが、他に選択肢はない」と述べている。

先月、アメリカは停戦を求める国連安全保障理事会の採決を棄権した。ガザ地区の再占領は亀裂を更に広げるだろう。言い換えれば、ネタニヤフ首相の戦略は、ガザ地区とその200万人の住民、ますます疎外されるアメリカ政府、国際的孤立の増大に対する責任という形で、悲惨な勝利に向かう可能性がある。

※アンチャル・ヴォ―ラ:ブリュッセルを拠点とする『フォーリン・ポリシー』誌コラムニストでヨーロッパ、中東、南アジアについて記事を執筆中。ロンドンの『タイムズ』紙中東特派員を務め、アルジャジーラ・イングリッシュとドイツ国営放送ドイチェ・ヴェレのテレビ特派員を務めた。以前にはベイルートとデリーに駐在し、20カ国以上の国から紛争と政治を報道した。ツイッターアカウント:@anchalvohra

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 昨年10月に始まった、イスラエルとハマスの紛争は半年以上が経過した。4月7日に、イスラエルはラファへの大攻勢を前にして、ガザ地区から部隊を撤収させると発表した。「勝利の一歩手前まで来ている」中で、一部部隊を撤収させた。その前には、アメリカのジョー・バイデン大統領による、イスラエルのガザ地区への攻勢による民間人の死者の増加や国際支援団体の西側諸国の国民の死亡などについて、不満の表明がなされていた。イスラエルとしては、アメリカ側の不快感を増加させないようにするため、一旦停止ということになったようだ。イスラエルは傍若無人であるが、唯一と言ってよい支援国のアメリカの機嫌を損ねたら立ち行かないことは分かっている。

 このブログでも紹介したが、アメリカ国内の世論は、昨年11月の段階での、イスラエル支援への賛成が多数という状況から変化している。イスラエル支援を求めるアメリカ国民は過半数を割っているのが現状だ。これは、アメリカのジョー・バイデン大統領にとっては、アメリカの世論の動きを背景にして、イスラエルに対して強く出られる。「戦闘を停止せよ、アメリカ世論がそのように求めている。もし停止しない場合には、支援についても再検討する」ということで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に圧力をかけることができる。イスラエル側としては、アメリカからの支援が減らされてしまえば、孤立を避けられない。

 アメリカとしては、イスラエルがハマスを支援しているということで、イランに対して攻撃を加えることを迷惑に思っている。ウクライナ戦争もママらない状況で、中東で更に戦争が起きることは好ましくない。そうしている間に主敵である中国がどんどん伸びていく。現在、イスラエルがシリアにあるイラン大使館を攻撃し死傷者が出て、それに対して、イランがイスラエルに報復攻撃を行った(イランの武器が旧式で効果はかなり限定的だったと言われている)。イランが抑制的であったという見方もできるが、中東が不安定化していることは間違いない。それで誰が得をするのかということを考えると、それはアメリカではない。

 アメリカ国内でのユダヤ系の人々の影響力の強さ・大きさはこれまでも語られてきた。マスコミにも多くのユダヤ系の人々がおり、世論形成にも影響を与えてきたと言われている。しかし、今回、アメリカ国内でもイスラエルに対しての批判が高まっているという状況になっている。イスラエルとしては、昨年10月のハマスによる攻撃を利用して、ガザ地区を攻撃し、ハマスの弱体化(育てたのはイスラエルなのに)とガザ地区の破壊、そして、イスラエルとパレスティナの二国共存を葬り去ろうということだったのだろうが、当てが外れている。半年が経過してもイスラエルの思い通りにはなっていない。また、世界中でイスラエルとアメリカに対する批判が高まっている。アメリカは何とかイスラエルを止めたい。そのために、アメリカ国内の世論の動向も武器として使いながら、支援条件を厳しくするなどの圧力をかけていこうとするだろう。

(貼り付けはじめ)

アメリカはイスラエルをどのように抑制できるか(How the U.S. Can Rein in Israel

-条件付き援助(conditional aid)を求める声が広がる中、バイデン大統領は非常に効果的な外交手段を見落としている可能性がある。

バーバラ・エリアス筆

2024年2月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/16/us-israel-gaza-conditional-aid-diplomacy/

ラファへのイスラエル軍の攻撃が迫る中、アメリカはガザで進行する人道災害に対処する上で、引き続きいくつかのディレンマに直面している。アメリカ国民や政策立案者たちの声はますます高まっており、アメリカがパレスティナの民間人を保護しながら同時にイスラエルの安全保障をどのように支援できるかを問う声が高まっている。

同盟諸国に矯正するのは難しい外交業務であり、特に国防に対する相手国のアプローチを制限する政策を推進する場合にはそうだ。更に言えば、アメリカのイスラエルに対する長年の関与により、アメリカの交渉力はさらに低下する。危機に陥ったイスラエルの意思決定者たちは、アメリカに恩義があると感じるどころか、フーシ派やイランを含む共通の大胆な敵に対して確立された戦略的パートナーシップを維持するというアメリカの利益が、アメリカ政府がイスラエルの政策立案者たちに厳しく圧力をかけることはできないだろうということに賭けている可能性が高い。

アメリカがパートナー諸国に圧力をかける手段として最も頻繁に議論されるのは、諸改革を援助の条件とすることだ。先週、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員とクリス・ヴァン・ホーレン連邦上院議員を含む著名な民主党議員たちからの圧力の高まりを受けて、ジョー・バイデン大統領は、アメリカの戦略的パートナー諸国全てに対し、アメリカが提供した軍事援助が国際法に従って使用されていることを証明する書面による確認書の提出を求める「歴史的」指令に署名した。しかし、これがイスラエルの政策にどのような影響を与えるのか、またバイデン政権が違反行為にどのように対応するのかは不明である。この措置がガザのパレスティナ人やアメリカとイスラエルの関係にどのような影響を与えるのかが明確でない理由の1つは、援助を改革の条件とすることに伴う複雑な問題を理解していないことにある。

アメリカの外交官たちが以前にもこのようなことを行おうとした。アメリカは自国の利益を保護しながらパートナーを幅広く支援することを目指しているが、これはイラクやアフガニスタンでの戦争で地域の同盟諸国とともにこれまで直面してきた課題である。もちろん、カブールとバグダッドはイスラエルに比べて制度的および軍事的能力がはるかに限られていたため、反乱鎮圧のための占領に関するこれらの同盟はアメリカとイスラエルのパートナーシップとは大きく異なっていた。それにもかかわらず、これらのパートナーシップの力学には大きな違いがあるにもかかわらず、アメリカ政府は、民主政治体制の促進や人権保護といったアメリカの規範や利益を維持しながら、重要な同盟国を支援する方法を見つけ出す必要があった。

歴史が示しているように、イスラエルにガザ政策の穏健化を行わせるために圧力をかける場合、条件付き援助(conditional aid)は、見落とされがちな外交手段である。しかし、アメリカの一方的な行動の脅威(the threat of unilateral U.S. action)ほどには機能しない可能性がある。

理論的には、条件付き援助の形での「厳しい措置・愛の鞭(TOUGH LOVE)」により、アメリカは影響力と物資を交換することができる。しかし実際には、そのようなアプローチの政治は、見た目よりも複雑で、アメリカにとってリスクが高い。

第一に、援助を制限することはパートナーを弱体化させるリスクがあり、それはほぼ常にアメリカの利益に反することになる。パートナーが失敗した場合、そもそものパートナーシップを動機づけた共通の脅威に対して、アメリカの立場も不安定になる。ワシントンが従えばアメリカも結果に苦しむことをパートナー諸国は理解しているため、このことはそのような脅しの信頼性を制限することになる。

2009年、当時のバラク・オバマ大統領はアフガニスタンのハミド・カルザイ大統領に対し、アフガニスタンにおける汚職と麻薬取引の取り締まりを公式に求めた。なぜアメリカが上記改革を活用するために軍隊と援助を差し控えなかったのかとの質問に対し、元駐アフガニスタン米国大使は率直にその議論は「愚かだ(stupid)」と述べた。なぜなら、カルザイの弱体化はタリバンを活性化させ、アメリカの介入を延長し、アメリカが自国とアフガニスタンのパートナー国に設定した主要な国家建設の基準を後退させる危険性があるからである。

第二に、援助の削減はパートナーシップの将来に損害を与える可能性がある。パートナー諸国が、ワシントンが自国の安全を損なったと判断すれば、イスラエルの場合はロシアを含め、代替の同盟国を探すようになる可能性がある。現在のイスラエルの不安と孤立についての考え方は、並外れた技術を持って行動しない限り、進行中のイスラエル国防軍の作戦中に軍事援助を大幅に制限するというアメリカの脅しは、イスラエル当局者の怒りと抵抗に見舞われる可能性が高いことを意味している。

第三に、専門家たちとは違い、政策立案者たちは、ワシントンのハッタリを非難し、アメリカの要求に従うことを拒否する重要な同盟諸国に対処するという重い責任を負っている。反抗的な同盟諸国はアメリカにとって、双方にとって不利なシナリオを作り出す。アメリカ政府当局者たちが宣言した罰則を遵守し、戦略的パートナーを弱体化させ、場合によっては共通の敵対国を勇気づけるリスクを冒すか、コストを課すことに失敗して信頼性と将来の影響力を失うかのどちらかである。したがって、バイデン政権がイスラエルへの武器供与を遅らせる意向があるとの報道にもかかわらず、ホワイトハウスがまだ明確な計画を発表していないのは驚くべきことではない。

これらのリスクにより、援助の条件付けは、持続可能な外交アプローチとは対照的に、アメリカの外交官たちが通常は使うことを控える、露骨な戦術となっている。アメリカがパートナー諸国に依存すればするほど、援助の条件は魅力的ではなくなる。確かに、無条件援助は、たとえ恐ろしいものであっても、パートナー諸国の政策に対して少なくとも部分的に責任をアメリカに負わせることになるため、無条件援助にもリスクが伴う。たとえば、イラクでは、スンニ派の政治勢力を政府に組み込もうとするアメリカの要請に抵抗するというヌーリ・アル・マリキ元首相の決意が、2014年にイラクとシリアの一部を占拠した反乱の一因となった。幸いなことに、パートナーに圧力をかけるための別の方法がある。

その代わりに、アメリカは、パートナー諸国の参加の有無にかかわらず、それらの国々の国内政治に影響を与える政策を一方的に実施すると脅すことで、パートナー諸国の行動を変えることができる。パートナー諸国に対する強制的なメッセージは、「あなたが政策Xを実施するか、それとも私たちが実行するか、どちらかだ」というものであり、「政策Xを実施しなければ、アメリカは支援を打ち切る」という援助条件の論理とは異なる。前者のメッセージは、同盟国や同盟に広範な損害を与える可能性のある主要資源を削減するという脅しではなく、問題になっている特定の政策に焦点を当てている。

選択的一方的行動(select unilateral action)の脅威は、アメリカの大規模な介入(wide-scale U.S. intervention)を提案することを意図したものではなく、アメリカの利益にとって特に有害な地方政策に影響を与えるように調整することができる。同盟諸国はこれを自国の自治に対する強制的な脅威と認識し、このメッセージを歓迎しない可能性が高いが、目標は賭け金を高め、同盟諸国に妥協に達するよう圧力をかけることだ。

イラク、ヴェトナム、アフガニスタンでは、パートナー諸国の不作為に対して、アメリカが一方的行動を起こすと脅すことで、現地の同盟国がアメリカの要求に従うように仕向けることが多かった。例えばイラクでは、2010年にアメリカがマリキをスンニ派との関与を強めるためにこのアプローチをうまく利用できたのは、バグダッドのシーア派指導者の支持の有無にかかわらず、アメリカが従順なスンニ派指導者との関与を継続すると信頼できる脅しをかけていたからである。(しかし、2011年のアメリカ軍のイラク撤退に伴い、スンニ派民兵を一方的に支援するとの脅しがなくなったことで、アメリカはイラクにおける影響力を失った)。

アメリカが南ヴェトナムの参加の有無にかかわらず、北ヴェトナムとの妥協を進めるという確かな脅しがあったため、アメリカの撤退中にサイゴンの現地パートナーから譲歩を引き出すこともできた。 2010年、アメリカは国連当局者を招いて進捗状況を報告させることで、アフガニスタンにおける穏健な汚職撲滅改革を推進することができた。アフガニスタン政府は傍観されるのではなく、監視プロセスを監視し、途中で政策を形成するという目的もあり、妥協して監視プロセスに参加した。

一方的な行動を取ることで、アメリカの要求を満たすように重要な同盟諸国をうまく誘導してきた実績がある。しかし、それはアメリカが要求された政策を実行する唯一の能力を持っている場合にのみ適用される。例えば、パートナーに国内法の変更や攻撃的作戦からの撤退を強制するためには利用できない。これらはパートナーの参加なしにはアメリカが実施できない改革だからだ。

しかしながら、アメリカは、イスラエルがガザ地区での攻撃をより選択的に行うよう強制するために、この方法を使うことはできない。しかし、ワシントンは、たとえば、ガザ地区での標的に関する詳細な情報を一方的に公開すると脅すことで、イスラエルに活動の透明性と説明責任を高めるよう動機づけることはできる。アメリカの政策立案者たちはまた、監視とモニタリングの一形態として、ガザ地区での民間人の死亡に関する独立調査機関(independent inquiry)の設立を提案したり、紛争に対処するためにアメリカの機関を利用したりすることもできる。ヨルダン川西岸地区でパレスティナ人に対する暴力を扇動した4人のイスラエル人に対し、金融制裁(financial sanctions)を科すという最近のアメリカの決定は、この方向への一歩である。

現在のガザ地区での緊急事態に関して、イスラエルがこの重要な援助を妨害した場合、アメリカは一方的に人道援助(humanitarian aid)を提供すると脅すことができる。たとえば、USNSマーシーやUSNSコンフォートなどの、アメリカ海軍の災害対応艦艇を派遣し、この地域に配属されている空母打撃群(carrier strike groups)に参加させることで、そうすることができる。当然ながら、この措置はイスラエルの軍事作戦を弱体化させかねないと主張する批評家たちもいるだろうが、そうした立場は、パレスティナの民間人とハマスの過激派を区別できないイスラエルの失敗に安住しすぎている。アメリカは、ガザの市民が基本的なニーズと生存を確保できるよう支援することを申し出ることで、現在の攻撃に対する不快感を示すことができる。アメリカの一方的な援助をガザに送り、イスラエル側の協力があろうとなかろうと、この援助は行われると伝えれば、3つの重要なメッセージを送ることができる。

第一に、歴史的記録は、アメリカの一方的な行動に対する確かな脅しが、アメリカによる政権転覆などを避けるためにイスラエルをアメリカの立場に近づける可能性があることを示唆している。第二に、それは地域におけるアメリカの交渉の信頼性を高め、アメリカが紛争における自主的な主体であることと、イスラエルの献身的な同盟国でもあることを強化する。アメリカがイスラエルによるガザ地区占領の継続に反対し、ヨルダン、サウジアラビア、エジプトなどのアラブの主要パートナーとの関係を強化する必要がある可能性があるため、これはますます重要になる可能性がある。最後に、一方的な行動により、アメリカはパレスティナの民間人の死をただ嘆く以上のことができるようになる。アメリカが10月7日に残酷に虐殺されたイスラエルの民間人を守るために行動を開始したのと同じように、現在国連が「終末的な(apocalyptic)」状況と呼ぶ状況に直面しているパレスティナの民間人を守るために、アメリカも行動を開始する可能性がある。

あらゆる国家外交の手段と同様、これはアメリカの外交ツールキットに含まれる数多くのアプローチの1つに過ぎない。条件付援助と比較して議論されることが少ないとはいえ、戦略的パートナーに参加を強制しようとしての一方的な政策行動の威嚇は、安全保障上の同盟関係とパートナーへの物質的支援を維持しつつ、特定のパートナーの政策を問題視することができるので、より微妙でリスクも少ない。加えて、ガザ地区での一方的な政策実行を脅かすことは、アメリカが選択的な援助条件や、イスラエルの立場に異議を唱える国連行動の阻止を再考するなど、さらなる圧力経路(pathways of pressure)を検討することを妨げるものではない。

ガザ地区への攻勢を含むイスラエルの政策がアメリカの利益を侵害するものであっても、アメリカはイスラエルを支援しながら影響を与えようとするため、ワシントンは外交的アプローチにおいて機敏かつ目的意識を持つ必要がある。アメリカはもっとできることがあるし、そうすべきである。

※バーバラ・エリアス:ボードウィン・カレッジ政治学・法学准教授。著書に『同盟国が反乱を起こす理由:反乱鎮圧戦争における反抗的な地元パートナー諸国(Why Allies Rebel: Defiant Local Partners in Counterinsurgency Wars)』がある。ワシントンDCにある国家安全保障公文書館アフガニスタン、パキスタン、タリバンプロジェクト責任者を務めた。

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