古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

カテゴリ: 国際関係論

 古村治彦です。

 日本の経営コンサルタントの草分けである故船井幸雄先生が創設された船井本社が発行する月刊誌『ザ・フナイ』(出版はビジネス社)に論考を掲載していただきました。

今回の『ザ・フナイ』2026年7月号(2026年6月1日発売予定)は、アメリカ建国250周年(7月4日が建国記念日)にちなみ、「建国250周年の黙示録 アメリカ帝国の崩壊とトランプの蹉跌(さてつ)」をテーマにするということで、論稿の寄稿をご依頼いただいた。師である副島隆彦先生が毎月『ザ・フナイ』に論考を掲載しており、今回、お口添えをいただいた。副島先生と『ザ・フナイ』編集部に厚く御礼を申し上げます。

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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)

 私は、「トランプとネタニヤフが始めたイラン戦争の後始末 JD・ヴァンス副大統領が『アメリカ・ファースト』の灯を灯す」という題で論稿を寄稿し、掲載していただきました。

 私の論考の内容は、アメリカのドナルド・トランプ大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が主導し、2026年2月28日に開始されたイラン戦争(現在は一時停戦中だがホルムズ海峡は封鎖中)について、攻撃決定までの内幕、JD・ヴァンス副大統領が主導している和平交渉までを、資料にもどいて描き出した。そして、トランプの後継者はヴァンスであり、ヴァンスこそがアメリカ・ファースト(America First、アメリカ国内問題解決優先主義)を引き継ぐことも合わせて書いている。
 ヴァンスを拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体』(ビジネス社)で取り上げたピーター・ティールがしっかりと支えており、2028年の大統領選挙に向けて動いていることはこのブログでもすでにご紹介している。ブログと合わせてお読みいただければ、皆さまにアメリカ政治の理解を深めていただけるものと著者として確信を持っている。

 是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権のトゥルシー・ギャバード国家情報長官が2026年6月30日付での辞任を発表した。その理由として、夫君エイブラハム・ウィリアムズが珍しい骨肉腫を発症し、闘病を支えるためとしている。このブログでは、トゥルシー・ギャバードについては長年にわたり、詳しく紹介してきた。以下のアドレスにギャバード関連記事が掲載されている。ご興味がある方は是非お読みください。

※トゥルシー・ギャバードに関する記事は以下のアドレスからお読みください↓

https://x.gd/85bqo

 ギャバードは、民主党所属の連邦下院議員(ハワイ州選出)時代の2016年、大統領選挙の民主党予備選挙で、当時の民主党全国委員会がヒラリー・クリントンを勝たせようとして不公正な選挙運営を行っていたことに抗議して、副委員長を辞任し、バーニー・サンダース連邦上院議員を応援したことで名前が知られるようになった。また、シリアやイランを訪問し、指導者たちと会談を持つなど独自の活動を展開した。連邦下院議員を4期務め、2021年に任期満了で退任してからはテレビでのコメンテイターを務めていた。そして、2022年には民主党を離党した。2024年の大統領選挙期間中、ドナルド・トランプの選挙集会に登場し、トランプ支持を表明し、更に共和党への入党を表明し、トランプを驚かせる一幕もあった。そして、第二次ドナルド・トランプ政権では国家情報長官に指名され、連邦上院での人事承認を受けて、就任した。国家情報長官になっても独自の活動は続いていて、昨年には広島を訪問し、核兵器廃絶を訴えた。

海外への介入に反対する姿勢を貫いてきたので、2026年1月のヴェネズエラ攻撃、2月末からのイラン戦争に対して反対とみられ、トランプ大統領とは意見が合わなくなっているという見方もされるようになっていた。そのために、トランプから更迭されるのではないかという観測もあったが、今回、私的な理由での辞任となった。クリスティ・ノーム前国土安全保障長官、ロリ・チャヴェス=デレマー前労働長官のようなスキャンダルによる更迭ではなかった。この点は非常に重要である。なぜなら、政治的に復活できる可能性があるからだ。2028年の大統領選挙には、JD・ヴァンス副大統領が出馬する可能性がある。副大統領候補になるかどうかは分からないが、当選後に政権入りすることは十分に考えられる。それまでに、夫君エイブラハム・ウィリアムズが快癒していることを祈るばかりだ。ちなみに、ヴァンスのウーシャ夫人はインド移民の娘ということで、トゥルシー・ギャバードと共通点がある。以下の写真は2026年2月28日のイラン戦争開戦時のもので、ヴァンス副大統領の隣にいるのがトゥルシー・ギャバードである。
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エイブラハム・ウィリアムズ、トゥルシーギャバード夫妻の闘病生活がうまくいくこと、エイブラハムの病気が快癒することを心から祈念する。

(貼り付けはじめ)
トゥルシー・ギャバードの夫とどんな人物か? 珍しいがんの診断を受けたエイブラハム・ウィリアムズについて知っておくべきこと(Who Is Tulsi Gabbard's Husband? What to Know About Abraham Williams amid Rare Cancer Diagnosis

-5月22日、トゥルシー・ギャバードは夫の「極めて珍しい骨肉腫」を理由に、ドナルド・トランプ大統領政権での役職を辞任した。

ジョーダナ・コミター筆

2026年5月22日

『ピープル』誌

https://people.com/who-is-abraham-williams-tulsi-gabbard-husband-11982549

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ロサンゼルスでのショーン・ペン・・コア・ガーラに出席のエイブラハム・ウィリアムズとトゥルシー・ギャバード(2019年1月5日)

●知っておくべきこと(NEED TO KNOW

・ドナルド・トランプ大統領の国家情報長官トゥルシー・ギャバ―ドは2015年4月にエイブラハム・ウィリアムズと結婚した。

・ウィリアムズはハワイ出身の撮影監督。

・5月22日、ギャバードは夫のがんの診断を受け、トランプ政権からの辞任を発表した。

トゥルシー・・ギャバードが、夫のエイブラハム・ウィリアムズを支えるため、ドナルド・トランプ大統領政権の役職辞任を発表した。

『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、トランプ政権下で国家情報長官を務めたギャバードは2015年4月にウィリアムズと結婚した。

5月22日、ギャバードは国家情報長官辞任を申し出て、その理由として夫が「極めて珍しい骨肉腫」と診断されたことを挙げた。

ギャバードはトランプ大統領宛の辞任書簡の中で、「この度、夫の傍に寄り添い、この闘いを全面的に支えるため、公職を離れることを決意した」と述べ、辞任は6月30日付で発効するとした。

ギャバードは次のように書いている。「11年間の結婚生活において、エイブラハムは私の支えだった。彼の強さと愛は、あらゆる困難を乗り越える力となってきた。私がこの重責と時間のかかる職務を続けながら、彼に1人で闘病生活を送るよう求めることは、良心に照らしてできない」。

それでは、トゥルシー・ギャバードの夫エイブラハム・ウィリアムズとはどんな人物なのか? これからエイブラハム・ウィリアムズについて書いていく。

●エイブラハムはハワイで育った(He was raised in Hawaii

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トゥルシー・ギャバードとエイブラハム・ウィリアムズ

『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、ウィリアムズはハワイで母親のアニャ・アンソニーと継父のティモシー・S・アンソニーに育てられた。

『ニューヨーク・タイムズ』紙が2015年に報じた当時、母親はホノルルにあるギャバード議員の選挙区事務所のマネージャーを務めており、継父はカラカウア中学校で社会科教師と英語学習者向けプログラムの運営を担当していた。

●エイブラハムは撮影監督(He is a cinematographer

ウィリアムズは、自身のウェブサイトによると、コマーシャル、長編映画、ドキュメンタリー、ミュージックビデオ、短編映画などを手掛けてきた撮影監督だ。

IMDbによると、2023年にはテレビシリーズ「私立探偵マグナム」シーズン5の1エピソードで撮影監督を務めた

●仕事を通じて2人は知り合った(They got to know each other through work

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ワシントンDCで国家情報長官の就任宣誓する前のトゥルシー・ギャバードと夫のアブラハム・ウィリアムズ(2025年2月12日)

ウィリアムズの仕事によって、ギャバードと知り合うことになった。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、2人は以前から知り合いだったが、2012年にウィリアムズがギャバードの選挙広告の撮影にヴォランティアとして参加したことがきっかけで親しくなったとギャバードは語っている(当時、彼女は連邦議会議員選挙に出馬していた)。

ギャバードはメールの中で、「それから約1年半後、共通の友人が私のために開いてくれた誕生日パーティーで、彼から初めてデートに誘われた。お互いのことを知るにつれて、共通点がたくさんあることに気づいた」と書いている。

ギャバードは、2人の友情と関係は「海とサーフィンへの共通の愛」を通して深まったと書いている。

●エイブラハムはサーフボードの上でギャバ―ドにプロポーズ(He proposed to Gabbard on a surfboard

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トゥルシー・ギャバードと夫のエイブラハム・ウィリアムズ

ギャバードは『ニューヨーク・タイムズ』紙の取材に対して、ウィリアムズはギャバ―ドにサーフボードの上で結婚の申し込みをしたと答えた。

ギャバードは次のように語った。「ワシントンDCから帰省していて、感謝祭の前日、彼が『夕方、サウスショアで夕日を見ながらサーフィンに行きたい』と言ってきた。その日は一日中会議で、出発する頃にはもう日が沈み始めていた。すごく長い赤信号で渋滞に巻き込まれて、エイブラハムはすごくイライラしていた。何がそんなに大騒ぎすることなのか、私には全然分からなかった」。

太陽が完全に沈む直前、2人は海に出た。その時、ウィリアムズは指輪を取り出し、彼女にプロポーズした。

●2人は10年以上の期間結婚を継続(They've been married for over a decade
『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、ギャバードとウィリアムズは2015年4月にハワイでヒンズー教の古い儀式(Vedic ceremony)で結婚式を挙げた。

ギャバードは結婚式の翌朝、『ピープル』誌の取材に対して、次のように答えた。「エイブラハムと私にとって大きな意味のある、深くスピリチュアルで伝統的な儀式だった。これから共に人生を歩むための重要な要素となった」。
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共和党連邦上院議員がエリス・ステファニクをトゥルシー・ギャバードの後任として国家情報長官に推すという考えを示す(GOP senator floats Stefanik to replace Gabbard as DNI

ソフィー・ブラームス筆

2026年5月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/5892105-gop-senator-floats-stefanik-to-replace-gabbard-as-dni/

ジム・バンクス連邦上院議員(インディアナ州選出、共和党)は金曜日、退任するトゥルシー・ギャバード国家情報長官(Director of National IntelligenceDNI)の後任候補として、エリス・ステファニク連邦下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)の名前を挙げ、ステファニク議員は承認手続きを難なく通過するだろうと述べた。

「ステファニクはトゥルシー(・ギャバ―ド)の後任として国家情報長官にふさわしい人物だ。承認通過も容易だろう」とバンクス議員はソーシャルメディアプラットフォームXに投稿した。

ギャバードは金曜日、夫が珍しい骨肉腫と診断されたことを理由に、6月30日付で辞任すると発表した。

『ザ・ヒル』誌が入手した辞任書簡の中で、ギャバ―ドは次のように記している。「夫は今後数週間、数ヶ月にわたり、大きな挑戦に直面するだろう。この時期、私は公職を離れ、夫の傍らに寄り添い、この闘いを全面的に支えなければならない」。

ギャバードは、トランプ政権2期目の閣僚として、この春に辞任した4人目の閣僚になる。これまでに辞任したのは、パム・ボンディ前司法長官、クリスティ・ノーム前国土安全保障長官、ロリ・チャヴェス=デレマー前労働長官だ。

トランプ大統領はギャバードの辞任発表まもなく、自身のソーシャルメディア「トゥルー。ソーシャル」で、ギャバードの辞任に伴い、アーロン・ルーカスが国家情報長官代行を務めると発表した。

しかし、彼女の後任として誰が指名されるのかという憶測がすぐに飛び交い始め、ソーシャルメディア上でステファニクの名前が挙がった。

現在の任期満了(2027年1月)で連邦議会を引退予定のニューヨーク州選出の共和党連邦下院議員であるステファニクは、トランプ大統領の最も熱烈な擁護者の一人であり、当初は2024年の大統領選挙後に国連大使に指名されていた。

しかし、ホワイトハウスはその後、ステファニクの国連大使指名を撤回した。連邦下院議員を辞任させることで、すでに僅差で過半数を維持している連邦下院での共和党の議席配分が複雑化するとの懸念からだった。

ステファニクは昨年3月、フォックスニューズの番組「ハニティ」のインタヴューで「これはティームとして力を合わせることであり、私はリーダーとして、この負託を確実に受け止め、歴史的な成果を上げるために尽力している」と、語った。

その後、一連の特別選挙での敗北、議員の死去や辞任により、共和党の議席はさらに縮小した。全議員が出席することを前提とすれば、党の方針に沿った投票で数人の離反者が出ることさえ許容できない状況だ。

ステファニクは、昨年4月に連邦議会に復帰した際、マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)によって連邦下院共和党指導部議長に任命され、党内で要職を務めている。

ステファニクは、国連大使に指名された際に、連邦下院共和党指導部で4番目に高い地位である連邦下院共和党指導部議長の職を辞任した。

また、ステファニクは、情報特別委員会、連邦下院軍事委員会、連邦教育労​​働委員会の上級委員でもある。

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トゥルシー・ギャバードがドナルド・トランプ政権の情報・諜報役職を辞任(Tulsi Gabbard to resign from Trump Intel post

レベッカ・ベイッチ筆

2026年5月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/5891647-intelligence-chief-gabbard-resigns/?tbref=hp

トゥルシー・ギャバード国家情報長官が金曜日、夫が珍しい骨肉腫の闘病中であることを理由に辞任を発表した。

ギャバ―ドは辞任書簡(『ザ・ヒル』誌が入手)の中で「夫のエイブラハムは先日、極めて珍しい骨肉腫と診断された。今後数週間、数カ月にわたり、彼は大きな挑戦に直面するだろう。この度、私は公職を離れ、夫の傍に寄り添い、この闘いを全面的に支える必要がある」と述べている。

彼女の勤務最終日は6月30日だ。

ドナルド・トランプ大統領は「残念ながら、素晴らしい仕事をしてくれたトゥルシー・ギャバードが政権を去ることになる」とトゥルース・ソーシャルに投稿し、ギャバードの夫の早期回復を祈るメッセージを送った。

トランプ大統領は「トゥルシーは素晴らしい仕事をしてくれた。私たちは寂しくなるだろう」と述べ、副長官アーロン・ルーカスが国家情報長官代行を務めると明らかにした。

ギャバードは、国家情報・諜報機関のトップを務めていた間、常に物議を醸す人物だった。

彼女は、この役職に選ばれた多くの人々が持つような伝統的な経歴を持っておらず、ロシアの主張をそのまま繰り返した発言や、大量の機密文書を漏洩したエドワード・スノーデンへの恩赦を求めたことなどで、厳しい批判を浴びた。

ギャバードはまた、バラク・オバマ政権時代の情報・諜報機関関係者を「反逆的な共謀(treasonous conspiracy)」で告発し、2016年の大統領選挙に関する情報操作を民主党の指導者たちが行ったと非難する報告書の中で、指導部を非難した。

ギャバードのメモと、その他114ページに及ぶ関連文書は、主にロシアが実際の投票結果を直接操作しようとした形跡はないという主張に基づいていた。

しかし、これは情報・諜報機関や連邦上院の報告書の結論と矛盾するものではない。これらの報告書は、「投票が改ざんされた、あるいは投票機が操作されたという証拠はない」と結論付けている。オバマ政権は、ハッカーが選挙結果を改ざんした証拠は確認されていないと述べている。

ギャバードはまた、FBIがジョージア州フルトン郡の選挙センターを捜索した際に現場に居合わせ、トランプに電話をかけ、後にスピーカーフォンにして現場の捜査官にトランプが感謝の意を伝えられるようしたことで批判を浴びた。

国家情報長官室(the Office of the Director of National IntelligenceODNI)は金曜日、ギャバードが「捏造されたロシア疑惑の真実と、オバマ政権当局者がトランプ大統領の2016年の勝利を阻害するために情報機関を武器化した方法」、そして「情報機関内部の勢力による組織的な取り組みが、2019年にトランプ大統領を弾劾する根拠として利用された陰謀を捏造した」ことを暴露したと評価した。

長官室はまた、ギャバードが兵器化作業部会を設置したこと、そして現職および元情報・諜報機関職員37人の機密情報取扱資格を取り消したことにも言及した。

リストに挙げられた職員の中には、民主党政権下で要職を務めた者も複数含まれており、彼女は証拠もなく、彼らを政治利用や情報漏洩の疑いで告発した。

「国家情報長官室(ODNI)では、前例のない透明性の向上と情報機関の信頼性回復という大きな進歩を遂げてきたが、まだやるべき重要な課題が残っていることを認識している」とギャバードは辞任書簡の中で述べている。

連邦上院情報委員会の民主党側筆頭委員であり、ギャバードを声高に批判してきたマーク・ワーナー連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)は、彼女と夫に同情の意を表したが、彼女の職務遂行については直接的なコメントは避けた。

しかし、ワーナー議員は、この役職はホワイトハウスから独立していなければならないという点を強調した。

「国家情報長官は、政府において最も重要な責任の一つを担っている。それは、政治的な思惑やホワイトハウスからの圧力に左右されることなく、政策立案者とアメリカ国民に対し、客観的で事実に基づいた情報を提供することだ。検証済みの情報と政治的に都合の良い主張との境界線が曖昧になりがちな現状、国家情報長官室が事実、独立性、そして法の支配に根ざした存在であり続けることが極めて重要だ」とワーナー議員は述べた。

ワーナー議員は「次期国家情報長官は、国家情報機関への信頼回復、情報活動の健全性の保護、そして国家情報専門家が恐れや干渉を受けることなく権力に対して真実を語れる環境の確保に尽力しなければならない」と続けた。

元連邦下院情報委員長のアダム・シフ連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、より厳しい反応を示した。

「彼女の辞任を巡る状況には同情の余地があるが、はっきりさせておきたいことがある。トゥルシー・ギャバードが国家安全保障にもたらした唯一の貢献は、彼女の辞任だけだ」とシフはXに投稿した。

「彼女は情報活動を政治化し、アメリカ国民の安全を守る重要な機関を解体し、根拠のない選挙不正疑惑を追及するために情報機関を武器化した。他にも多くの問題があった」と述べ、ギャバードの在任期間は「国家情報長官における恐ろしい例外(a terrible exception)であって、新たな常態(the new normal)であってはならない」と付け加えた。

ギャバードは辞任を発表後、共和党所属の連邦議員たちから称賛を受けた。

「彼女は、情報機関においてこれまで多くの人が拒否してきたことを率先して成し遂げた。国家情報長官在任中、ギャバード長官はトランプ大統領の優先事項の多くにおいて大きな進展を遂げ、情報機関の兵器化と政治化に対処するために必要な改革を実施するとともに、国民への透明性と情報機関内の説明責任を高めるための具体的な措置を講じた」と連邦下院情報・諜報委員会のリック・クロフォード委員長(アーカンソー州選出、共和党)は声明の中で述べた。

「ロシア共謀疑惑に関する2017年の多数派スタッフ報告書を機密解除し、国民の手に届けるために、連邦下院情報委員会が彼女の重要な支援を受けたことに感謝する。彼女は国家情報長官室に確固たる功績を残した」

ギャバードは、ここ数週間で辞任した複数の高官の一人である。

国土安全保障長官クリスティ・ノームと司法長官パム・ボンディは、今年初めにトランプ大統領によって解任された。

国家対テロセンター所長でギャバードの側近ジョー・ケントは、イラン戦争を巡り3月に辞任した。

国境警備隊の元「特命全権司令官(commander at large)」グレッグ・ボヴィーノと、米移民・関税執行局(ICE)のトッド・ライオンズ長官代行も最近辞任した。

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ギャバード米国家情報長官、6月末に辞任へ 夫のがんが判明と

BBC JAPAN 5/23() 14:08配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/a78dd00c4b8d80196e3b7574d23840e452be220f

アメリカのタルシ・ギャバード国家情報長官が22日、辞任の意向を示した。夫が骨のがんと診断されたためとしている。

辞任を表明した書簡の中でギャバード氏は、「夫の強さと愛が、あらゆる困難の時に私を支えてきた」、「私がこの多忙で時間を要する仕事にとどまる一方で、彼にこの闘いに一人で挑むよう求めることは、良心に照らしてできない」と述べた。

ドナルド・トランプ大統領はソーシャルメディアへの投稿で、ギャバード氏は「驚くべき仕事をしてきた。我々は彼女を惜しむだろう」と述べた。

ギャバード氏は630日付で辞任する予定。トランプ氏は、アーロン・ルーカス主席副長官が長官代行として職務を引き継ぐと述べた。

ギャバード氏は、2024年の大統領選でトランプ氏を忠実に支持し、トランプ政権発足後、アメリカの情報収集体制において最も強力な人物の一人となった。しかし今年に入り、アメリカがイランに対して軍事行動を取り、キューバに圧力をかけ、さらにヴェネズエラの大統領を排除した中で、公の場にほとんど姿を見せていなかった。

今年に入ってトランプ政権を離れた閣僚は、クリスティ・ノーム氏(国土安全保障長官)、パム・ボンディ氏(司法長官)、ロリ・チャヴェス=デリーマー氏(労働長官)ギャバード氏は4人目となる。

■不介入主義の退役軍人、民主党からトランプ氏支持へ

ギャバード氏は政治キャリアを通じて、海外での戦争への介入に反対する立場を取ってきた。トランプ氏が今年2月にイランへの攻撃を決定したことで、同氏との間で緊張が生じた。

アメリカとイスラエルによる攻撃後、ギャバード氏はその決定への支持を避け、3月に行われた議会公聴会でも、この紛争がもたらし得る影響について政権が認識していたかどうかという質問を、慎重に回避した。

また、野党・民主党が、ホワイトハウスと情報機関がイランの核濃縮能力について主張した内容に不一致があると指摘した点についても、質疑の中で厳しく問われた。

ギャバード氏は昨年、議会でイランは核兵器開発を目指していないと証言したが、トランプ氏はこの発言を退ける姿勢を示していた。

「彼女が何を言ったかは気にしない」とトランプ氏は当時、記者団に述べ、「彼らは兵器を保有する寸前だったと思う」と主張した。トランプ氏は、アメリカがイランと戦争状態に入った理由として、イランの核能力を繰り返し挙げている。

2カ月前には、ギャバード氏の側近だったジョー・ケント氏が、イランへの攻撃に抗議して国家テロ対策センターの所長職を辞任。大統領に対して「方針転換」を求めた。

ケント氏の辞任後、ギャバード氏は公にトランプ氏のイランに関する決定を支持。大統領には、何が差し迫った脅威かを判断する責任があると述べていた。

ギャバード氏はイラクに医療部隊と共に従軍した退役軍人であり、その政治キャリアでいくつかの「初」を達成している。

2002年に21歳でハワイ州議員に初当選。これは同州史上、最年少の選出だった。1期務めた後、州兵部隊がイラクに派遣されたことを受けて議員職を離れた。

2013年には民主党から出馬し、初のヒンドゥー教徒の連邦下院議員となった。2020年には、反介入主義の外交政策を掲げて大統領選の予備選に出馬したが、途中で撤退した。

2022年に民主党を離党し、当初は無所属として登録した。その後、FOXニュースのコメンテーターとして活動する中で、ジェンダーや言論の自由といった問題について積極的に発言し、共和党に加わる前からトランプ氏の強い支持者となった。

2024年の大統領選でもトランプ氏を支持し、選挙戦を共に展開し、選挙後には政権移行チームの一員を務めた。

ギャバード氏が国家情報長官に就任して以降、アメリカの情報機関コミュニティーの規模は縮小した。昨年、職員をほぼ50%削減する計画を発表した際、同氏はこの機関が過去20年で「肥大化し非効率になっていた」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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 古村治彦です。

 現在の世界経済をけん引しているのは、アジア諸国である。20世紀後半の日本、21世紀の中国は、歴史上類を見ない、長期にわたる高度経済成長を達成したし、韓国もまた、「漢江(はんがん)の奇跡」と呼ばれた経済成長に成功した。これら以外のアジア諸国はこれから経済成長を進めていくだろう。世界は西側諸国(the West、ジ・ウエスト)と西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)の2つに分かれているが、西側諸国は先進諸国(developed countries)、非西側諸国は発展途上国(developing countries)となる。先進諸国は経済発展がひと段落した国々となるが、どちらかと言えば、これから縮小、衰退していく。その先頭を走っているのが日本だ。発展途上諸国はこれから経済発展をしていく。そのためには、いくつかの条件があり、それを満たしている。

 経済成長の基盤となるのは「教育」だ。教育は質の高い労働力を生み出すためには必要不可欠だ。アジア諸国は歴史的に、教育の重要性を理解し、社会全体として教育を重視してきた。高い識字率や正確な計算能力は質の高い労働力となるためには必須だ。ヨーロッパ諸国においても、経済成長と一般教育の普及は相関関係を持っている。また、社会の近代化にとっても教育の普及は必要である。

女性の教育向上については否定的な見方をする人が日本でも多くいるが、子育てをするにしても知識が必要であり、子供が初めて教育を受ける相手である母親が賢いことは子供の教育にとって良いことである。21世紀の日本になっても、一部地域、特に九州で女性に教育はいらないなどと述べる時代遅れの無知蒙昧の中年男性、高齢男性が多く存在することは悲しむべき恥辱である。自分たちの努力不足、研鑽不足、才能不足を補うために、自分たちよりも劣る存在を作ろうという、さもしい考えでしかない。

アジア諸国では、教育重視が行き過ぎて、「受験地獄」と呼ばれるような、試験偏重の教育システムとなっているのはデメリットである。また、日本、中国、韓国では難関大学に進学するためには、学校以外にも予備校や塾に通い、多くの参考書や問題集を買わねばならないので、富裕層に有利になっているのは間違いない。

しかし、入学試験を突破すれば難関大学に進学でき、襲来の選択肢が増えるということは、一種の平等が担保されており、社会流動性を生み出すことにもつながっていた。現在の富裕層が資金力を使って子供に勉強させて難関大学に入れるという一種の金銭ゲームのようになっている状況は改善されねばならない。

 専門家たちはアフリカ諸国の経済成長に注目している。アフリカ諸国の経済成長にとっても、必要なのは教育であり、人的資源である。識字率の向上と知識の普及は地道な作業である。世代を超える数十年単位の、非常に困難な営為である。しかし、世界には成功例が数多くある。日本はその輝かしいモデルだ。表面的な資金や物資の支援ではなく、根本的な支援がなされることが重要だ。

 

(貼り付けはじめ)

アフリカが中国の台頭から学ぶべきこと(What Africa Can Learn From China’s Rise

-アフリカ大陸の人的資本は最大の資源である

ハワード・フレンチ筆

2024年6月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/12/africa-economy-wealth-poverty-development-growth-history/

写真

ナイジェリアのラゴスにあるモボラジ・ジョンソン駅で列車から降りる乗客たち(2024年3月2日)

1960年にアフリカ大陸を席巻したヨーロッパからの独立の波以来、アフリカ大陸のどの国も、世界で最も裕福な国々の仲間入りを果たしていない。

この点において、アフリカは決して例外ではない。第二次世界大戦後、富裕国へと成長した国々のほとんどは、マーシャル・プランの恩恵を受けたヨーロッパ諸国、オーストラリアやニュージーランドといった西ヨーロッパ諸国の植民地、そしてアジア沿岸部の少数の国々である。例外はごくわずかで、石油と天然ガスに恵まれた国々だ。

それでも、アフリカは世界の最貧国リストの上位を占めている。天然資源の豊富さだけで経済的成功が予測できるのであれば、コンゴ民主共和国やギニアなど、世界で最も経済状況が劣悪な国々を含む多くのアフリカ諸国は、今頃は上位中所得国にランクインしているか、あるいは先進国に加わっているだろう。しかし実際には、控えめな成功例がいくつか見られる。下位中所得国が数十カ国、上位中所得国がボツワナやナミビアなど数カ国あるだけだ。

アフリカがしばしば最下位に位置づけられるのは、経済実績だけが理由ではない。長年アフリカについて執筆してきた私にとって、アフリカ大陸は世界の他の地域から最も著しく不十分な注目しか受けていない大陸であると常に感じてきた。これは、海外投資、政治的関与、危機管理における外交努力、そして報道においても同様だ。例えば、スーダンは昨年、壊滅的な内戦に陥り、飢餓、1000万人の難民、そして数えきれないほどの犠牲者を出したが、世界の注目をほとんど集めることはなかった。

しかし、どれほど軽視されていようとも、アフリカの経済成長を促進することは、今世紀最大の課題の1つだ。今後数十年間、世界の人口増加の大部分はアフリカで起こるだろう。多くの先進国で急速な高齢化(rapid aging)が進む時代において、アフリカは世界最大の若年労働力供給源となる。アフリカ大陸が強固な中間層を構築できるかどうかは、世界の消費市場の規模を決定づける大きな要因となるだろう。アフリカの中間層が成長しなければ、アフリカは国際的な移民のますます大きな発生源となり、西側諸国におけるそれに伴うパニックを引き起こすことになるだろう。さらに、地球規模の気候目標を達成するには、西側諸国、あるいは近年では中国やインドのような規模の炭素排出をすることなく、アフリカの人々のために大幅に多くのエネルギーを生産する方法を見出す必要がある。今日、アフリカ大陸の多くの地域では、一人当たりの年間平均電力消費量は、アメリカの一般的な冷蔵庫の消費量よりもはるかに少ない。

アフリカの経済的困難のかなりの部分は、破壊的な外国の影響に起因している。それは、奴隷貿易(trade in enslaved peoples)が何世紀にもわたって行われ、主にヨーロッパ人によって行われた、深く極めて悲劇的な搾取と支配(exploitation and subjugation)の歴史にまで及ぶ。約1200万人のアフリカ人が、西側諸国の富の創造のためにアフリカから連れ去られた。私の最新著書『黒人として生まれて:アフリカ、アフリカ人、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans, and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War)』は、この歴史に焦点を当てている。この歴史が西側諸国の台頭に与えた重要性は、いまだに深く誤解され、過小評価されている。

19世紀末のヨーロッパによるアフリカの完全な支配と、それに続く比較的短い植民地化の時代には、もう一つの深い悲劇の流れが流れている。これは、私の近刊予定の著書の主題でもある。この時代、ヨーロッパの焦点は資源の搾取にある。ゴム、カカオ、貴金属といった天然資源に加え、ヨーロッパはアフリカ人労働力を大規模に搾取した。第二次世界大戦後も、人々が奴隷に近い状況で強制労働を強いられ、ヨーロッパの戦争で多数のアフリカ人が戦場に送られたり、荷役動物のような物資輸送に従事させられたりしたという事実を、西側諸国で理解している人はほとんどいない。

アフリカ大陸の独立後も、経済発展の停滞には他の外的要因が影響している。その1つが、過去40年以上にわたる中国の台頭だ。中国は、当初は非常に安価な労働力を用いて大規模な工業化を進めたため、いわゆる発展途上国(underdeveloped countries)の中で、中国に追随して急速な発展を遂げた国はほとんど存在しない。植民地時代の遺産である、主に小規模で内陸国が多い54カ国に深く分断されたアフリカは、この点において特に大きな制約を受けてきた。

しかし、このコラムの残りの部分で私が焦点を当てたいのは、アフリカが直面している内部的に課された障害(the internally imposed impediments)だ。(「内部的」という言葉を使うのは、どの国もその歴史から切り離して考えることはできないことを十分に認識しているからだ。)アフリカ諸国がより大きな繁栄への道を見出すためには、これらの問題に取り組む必要がある。皮肉なことに、アフリカ大陸についてほとんど、あるいは全く言及していない3人の学者の著作は、アフリカが現在抱えている国内問題の特異性と、アフリカ大陸が経済状況を変革できる可能性について、示唆を与えてくれる。

私が先日書評したワン・フェン著『中国の豊穣の時代:起源、台頭、そしてその後(China’s Age of Abundance: Origins, Ascendance, and Aftermath)』は、アフリカが抱える問題について興味深い考察を与えてくれる。カリフォルニア大学アーヴァイン校の社会学者であるワンは、本書の中で、1979年から2019年にかけて中国が驚異的な繁栄を成し遂げたのは、政治的な安定性と経済発展計画の一貫性の高さによるものだと間接的に論じている。これは主に、経験豊富で世慣れた改革派の鄧小平の後を継いだ2人の指導者が鄧小平のロードマップを忠実に踏襲したことによるものだ。

貧困からの脱出は、たとえ長期政権であっても、一人の指導者の責任ではなく、世代を超えた取り組みとなる。アフリカは、複数の問題に加え、まさにこのような世代を超えた一貫性(transgenerational consistency)を欠いてきた。概して、これらの国々は、安定した統治と制度構築を阻害する停滞した権威主義的政権に苦しめられてきたか、あるいはクーデターとその後の軍事政権という形で不安定な状態に陥ってきたかのどちらかだ。

カリフォルニア大学バークレー校の経済学者J・ブラッドフォード・デロングは、著書『ユートピアへの緩慢な歩み:20世紀の経済史(Slouching Towards Utopia: An Economic History of the Twentieth Century)』の中で、回転式政府(turnstile government)のコストについて雄弁に論じている。ニッコロ・マキャヴェッリの思想を引用しながら、デロングは、弱体で発展途上国において権力を掌握または保持する者たちの最優先事項は、食糧暴動や首都における主権の象徴に対するあらゆる攻撃を回避することだと主張する。例えば、国営テレビ局や大統領官邸が占拠された後に、弱体化した政府はしばしば崩壊する。彼らの第二の優先事項は、定期的な給与、昇進、ボーナスに加え、新型兵器、制服、その他の装備品を提供することで軍を買収し、満足させることだとデロングは述べている。三番目に挙げられるのは、官僚機構や政治家を沈黙させておくことであり、そのためにはしばしば金銭的な誘惑を用い、反対派内部の混乱を煽る。

そもそも、ほとんどの指導者は自分がその職務に最も適任だと確信している。中には、自国を発展させ、国民の繁栄を確かなものにしたいという真の希望を抱いている者もいるかもしれない。しかし、デロングが指摘するように、こうした希望は優先順位のずっと低い位置に置かれる。「政権の座が確固たるものになって初めて、開発政策に関する議論が始まる。しかし、権力の安定維持に、支配者の時間、エネルギー、資源はほぼ必ず費やされる。平均的な政権の存続期間は短すぎるため、合理的な歴史家や批評家であれば、政権が長期的な経済発展に注力することを期待することはできないだろう」。

デロングはアフリカに特化して論じている訳ではないが、こうした傾向は、おそらくアフリカで最も不安定な地域であるサハラ砂漠の南に広がるサヘル地域において、まさに顕著に表れている。サヘル地域では、2020年以降、8件ものクーデターが成功裏に発生している。

ニューヨーク市立大学のブランコ・ミラノヴィッチ教授は、著書『グローバル不平等:グローバル化時代の新たなアプローチ(Global Inequality: A New Approach for the Age of Globalization)』の中で、アフリカがさらなる発展を遂げられなかった謎を解き明かそうとしている。1960年代と1970年代にはまずまずの経済成長を遂げたアフリカ大陸だが、1990年代には大規模な経済的後退(an enormous economic setback)に見舞われた。この10年間、多くのアフリカ諸国で経済成長は事実上停止し、一部の国では実際にマイナス成長に転じた。ミラノヴィッチ教授によれば、2000年までに、アフリカ大陸の実質一人当たりGDPは1980年の水準を20%も下回るという壊滅的な落ち込みを見せた。

わずか13年後、アフリカの1人当たりGDPは1970年の水準の1.9倍にまで上昇した。これは一見素晴らしい数字に思えるかもしれないが、他の大陸と比較するとそうでもない。例えば、アジアの1人当たりGDPは同時期に5倍に増加している。

「アフリカにおける複数の問題は、これらの数字が示すよりもはるかに複雑だ」とミラノヴィッチは述べている。「アフリカ諸国はしばしば急激な成長とその後の急激な衰退を繰り返しており、長期的な成長率を控えめに維持することさえできないことが、根本的な問題となっているようだ。成長における変動は、政治的紛争、内戦(civil wars)、そしてアフリカの生産と輸出の多くを支える天然資源に影響を与える景気循環的な価格変動によって引き起こされている」。

こうした状況を踏まえると、ワンによる中国の歴史的な高成長期に関する分析に立ち返ることになる。多くの外部の人々はアフリカの腐敗を嘆くが、中国をはじめとする多くの経済的に成功した国々にも腐敗(corruption)が蔓延していたことをほとんど考慮に入れていない。実際、北京は長年にわたり、不正蓄財で有罪判決を受けた官僚たちを処刑または投獄することを公然と行ってきた。政府高官の多くは、巨額の私財を築いた者が少なくない。

中国の官僚たちが汚職(graft)に手を染めている一方で、彼らが委託または監督するプロジェクトは、割り当てられた資金が横領された後に忘れ去られるのではなく、圧倒的に建設される傾向にある。アフリカ各地で長年耳にしてきた暗いジョークに、「橋や高速道路、その他の大規模プロジェクトさえ実現すれば、たとえ官僚の不正蓄財もそれほど悪いことではない(even flagrant official enrichment wouldn’t be so bad if only the bridges, highways, and other big projects were brought to fruition)」というものがある。

しかし、ワンは、物理的なインフラ整備以上に、中国が短期間でこれほどまでに力強く発展できた要因は、一部の経済学者が「人的インフラ(physical infrastructure)」と呼ぶものへの継続的な投資にあると説得力をもって論じている。1976年の毛沢東時代終焉以前から、中国は国民の健康状態の改善において目覚ましい進歩を遂げていた。これにより、感染症(infectious diseases)や妊産婦死亡率(maternal mortality)、乳幼児死亡率(infant mortality)など、予防可能な死因による死亡者数が大幅に減少し、生産性の高い人口構成(a more productive population)へとつながった。

毛沢東の死後に始まった新たな富の創造時代は、医療の絶え間ない改善をもたらし、その成果はあらゆる統計データに表れている。例えば、平均寿命は現在78.99歳で、はるかに豊かなアメリカ合衆国の平均寿命に匹敵する。マラリアなどの熱帯病(tropical diseases)が蔓延するアフリカは、どの大陸よりも健康指標が劣悪である。都市部の水道や農村部の水道システムを改善・拡張するといった単純な政策でも、多くの命を救い、寿命を延ばすことができるだろう。

ワンの著書は、鄧小平時代に始まった中国変革のための世代的プロジェクトのもう1つの側面、すなわち教育(education)により注目している。「小学校以上のあらゆるレヴェルの就学率は飛躍的に増加した。全国の中学校の年間就学率は、1990年から2000年の間に60%以上増加し、1370万人から2260万人に達した」とワンは述べている。「高等教育機関に在籍する学生の総数は、1990年の210万人から2000年には560万人、2010年には2230万人、そして2020年には3290万人へと、それに応じて増加した」。中国は、この教育システムの飛躍的な拡大を通じて、労働力の質を劇的に、そして継続的に向上させてきた。

今日のアフリカは、教育水準においてさらに低い出発点に立たされている。非識字状態は依然として多くのアフリカ諸国で蔓延しており、多くの国で女子の就学率は男子に比べて著しく低いのが現状だ。今後数十年で経済状況を変革していくためには、アフリカ大陸は人的インフラへの投資を大幅に増やす以外に選択肢はない。アフリカの人々は、他の地域の人々と同様に生まれながらにして優れた才能を持っているが、グローバル経済においてより実りある形で参画するためには、アフリカ大陸からの知的生産を大幅に増やす必要がある。そして、アフリカの問題に対するアフリカ独自の解決策を見出すためにも、それは教育を通してのみ可能となる。

今日のアフリカの教育水準の低迷は、植民地支配の遺産と言える。当時、ヨーロッパ諸国は、教育を受けたアフリカ人の大規模な集団が、アフリカの人々と資源に対する支配を脅かすことを恐れた。今日の課題は、アフリカの指導者たちが、アフリカの人々とその知性こそが大陸最大の資源であることを理解できるかどうかだ。教育革命が全ての問題を解決するということはないが、教育革命なしには、アフリカが直面する他の多くの課題に対処することは不可能なのだ。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり特派員を務めた。最新作に『第二の解放:高潮期のンクルマ、汎アフリカ主義、そしてグローバル・ブラックネス(The Second Emancipation: Nkrumah, Pan-Africanism, and Global Blackness at High Tide)』がある。ブルースカイ・アカウント: @hofrenchbluesky.social Xアカウント:@hofrench

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アフリカはアジアの発展モデルを追いかけられるか?(Can Africa Follow Asia’s Development Model?

-アジアに関する著作で知られる経済記者が最も急速に成長している大陸に目を向けている。

ハワード・フレンチ筆

2026年4月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/24/how-africa-works-joe-studwell-review-development-economics-asia/

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エチオピアの首都アディスアベバで建設中の高層住宅ビル群(2018年11月20日)

多くの著者が知っているように、書籍の企画はしばしば偶然の出来事、つまり生い立ちや個人的な背景から生じる予期せぬ出会いや経験から生まれる。そうした基準から見ても、ジョー・スタッドウェル著『アフリカはどのように機能するか(How Africa Works)』の誕生秘話は実に印象的な物語だ。

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本書の冒頭で、スタッドウェルは、もともとは、このテーマについて書くつもりは全くなく、執筆は偶然の産物だったと述べている。確かに偶然だったかもしれないが、決してありふれた偶然ではない。スタッドウェルによれば、2016年、彼はエチオピアとルワンダの両政府からそれぞれ招かれ、両国の開発戦略(development strategies)を評価し、その結果を政府高官に報告するよう依頼された。両国の関心は、スタッドウェルが2000年代初頭から執筆してきた、東アジア(特に中国)の経済成長に関する一連の人気書籍によって高まっていた。彼は当時、ビジネス担当ジャーナリストとして中国で活動していた。

アフリカで最も急速に成長している2カ国から依頼を受けた同じ年の2016年、スタッドウェルはビル・ゲイツと偶然出会った。ゲイツはすでに彼の著作を知っていた。ゲイツは彼にこう言った。「私が本当に知りたいのは、あなたがアフリカについてどう考えているかだ」。スタッドウェル氏は当時、このことについて深く考えたことはなかったと述べているが、「2年後、博士論文を書き終え、アフリカに関する文献を少し読んだ後、この大陸について何か有益なことを言えるかもしれないと思い立った」と語っている。彼はアフリカを「グローバル開発における最後の偉大なフロンティア(the last great frontier of global development)」と呼んでいる。

その結果はしばしば興味深く、アフリカが抱える数多くの課題と真摯に向き合おうとする一貫した努力がうかがえるものの、その出来栄えにはばらつきがある。しかし、読者の皆さんはこの指摘に気後れする必要はない。これほど野心的な課題に取り組むには、数多くの困難が伴う。まず、著者のアフリカに関する知識が限られているという大きなハンディキャップがあるほか、歴史的背景、経済状況、開発戦略が国ごとに大きく異なる国々で構成されるこの大陸の、その広大さと多様性が大きな障壁となっている。

こうした考察に加え、経済学者たちでさえ、現実世界の無限の複雑さに耐えうる、国家の経済発展のための確実な青写真――ましてや大陸全体のためのものなど――を策定することには限界があることを、ますます認めるようになっているという事実がある。しかし、それにもかかわらず、彼らも、そしてスタッドウェルも、人類が直面する最大の課題に取り組むことを止めることはしていないし、そうあるべきでもない。

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1月1日、タンザニアのダルエスサラームで、人々が歩道橋に集まり新年を祝った。

『アフリカはどのように機能するか』の冒頭部分は、その試みが詰め込まれている、数十年前から続くアフリカ大陸に関する最も有名な研究成果の多くに依拠している。そのほとんどは、植民地時代から現在に至るまでのアフリカ大陸の変遷に関する西洋の考え方だ。本書のこれらの部分は、要約版のような印象を受ける。著者の視線が地域から地域へ、国から国へと移るにつれ、簡潔な記述の中に詰め込まれた事実情報の密度の高さに、まるで年鑑や百科事典を読んでいるような感覚を覚える瞬間がある。

しかし、本書の冒頭部分においても、スタッドウェルは重要な仕事ぶりを見せており、アフリカを本格的に研究したことのない読者には馴染みのない貴重な背景情報を提供している。そして、アフリカ大陸は欧米諸国の報道、教育、公共政策、外交において表面的な扱いしか受けていないため、これはまさに大多数の読者に当てはまるだろう。

冒頭近くで、スタッドウェルはアフリカ専門家の間では広く知られている(しかし一般には知られていない)、2つの根本的な事実を、アフリカの経済発展の遅れの主な原因として提示している。アフリカ大陸に関する国際的な報道を読んでいる多くの読者は、スタッドウェルが汚職も紛争も決定的な要因として上位に位置づけていないと明言していることに驚くかもしれない。

スタッドウェルによれば、第一の原因は、近年までアフリカ大陸は、熱帯病の蔓延(endemic tropical disease)と半世紀に及ぶ奴隷貿易(the half-millennium apocalypse of the slave trade)という二重の災厄によって、世界の他の地域と比べて人口密度が著しく低かったことである。

第二に、アフリカはヨーロッパ列強による、著者が「低予算」植民地主義(“low budget” colonialism)と呼ぶものにも直面した。これは、ヨーロッパ列強は教育や一般的なインフラ整備にほとんど資金を投入せず、アフリカ大陸の独立に向けた準備もほとんど行わなかった。1950年代後半にアフリカに自由が訪れた時、識字率と計算能力の低さは世界のどの地域よりも低かった(its rates of illiteracy and innumeracy were lower than any other part of the world)。

スタッドウェルは本書の冒頭で、アフリカだけでなく世界全体の未来に関わる根本的な事実を明らかにしている。それは、アフリカの人口密度がようやくアジアに追いつき始めたということだ。2030年までに、アフリカの人口密度は1960年のアジアと同レヴェルにまでなる。今世紀末には、アフリカの長きにわたる追いつき段階は完了するだろうと彼は述べている。世界の人口上位10カ国のうち5カ国がアフリカ諸国となり、アジアとアフリカを合わせると、それぞれ約40億人の人口を抱え、世界の人口構成において支配的なブロックとなる。

スタッドウェルが提示する人口動態の見通しは、アフリカに関する欧米諸国の見方にありがちな不安を煽るような要素が一切なく、実に清々しい。実際、彼は今後数十年間におけるアフリカ大陸の急速な人口増加を概ね肯定的に捉えている。そして、この人口増加によって、アフリカ大陸の多くの地域が発展を深め、より豊かになり、世界経済においてより重要な地位を占めるようになるだろうと繰り返し主張している。

スタッドウェルは、開発戦略の前提を実に明快に提示している。彼は、いわゆるアジア経済モデルの支持者であり、アフリカ諸国への提言もこのモデルから直接導き出されている。このモデルによれば、国民の福祉と繁栄の追求は、農業生産の最大化から始まるべきである。そして、これを成功させた国は、農業よりも付加価値の高い製造業に投資と起業家精神を向けるべきである。

最後に、混合経済(mixed economies)の発展において成功を望む国家は、国民貯蓄の増加(increase national savings)、資本逃避の抑制(limit capital flight)、経済の戦略的セクターへの優遇融資条件の提供(provide preferential lending terms to strategic sectors of the economy)といった施策を実施できるよう、金融システムを厳格に管理すべきである。スタッドウェルによれば、これらのセクターには輸出企業が含まれるべきである。輸出は外貨獲得につながるだけでなく、国際競争力を持つ企業は信用リスクが許容範囲内であり、効率性の向上と技術革新を推進する可能性が高いからである。

しかし、このような単純な青写真であっても、現実世界における困難は容易に想像できる。全ての政府は政治の制約と誘惑にさらされており、金融システムに対する国家の統制や強い影響力は、融資へのアクセスを決定する際に、縁故主義(cronyism)が厳格さを凌駕するという深刻なリスクを伴う。

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ルワンダの首都キガリで行われた集会でポール・カガメ大統領が支持者に手を振る(2024年7月12日)

スタッドウェルの著書は、アフリカ諸国の事例研究(case studies)へと進み、それらの国々が経済成果において大陸の他の国々とは一線を画し始めていると主張する。しかし残念ながら、多くの一般論が、読者にどの教訓が他の地域にうまく応用できるのかという疑問を抱かせる。

彼が最初に挙げる例は、南アフリカの北に位置する内陸国ボツワナである。ボツワナは1966年にイギリスから独立して以来、世界でも有​​数の経済成長率を誇っている。ボツワナは、いわば「近隣効果(the neighborhood effect)」の恩恵を受けている。アパルトヘイト時代に南アフリカの解放運動を受け入れなかったことで、ボツワナは平和と安定だけでなく、はるかに裕福な南の隣国からの投資も享受できた。

他にも、この国を重要な点で際立たせる2つの特徴がある。スタッドウェルが指摘するように、ボツワナの人口はアフリカ大陸のほとんどの国と比べて民族的多様性(ethnic diversity)が著しく低い。つまり、ツワナ族が圧倒的に多いことが、アイデンティティに基づく深刻な政治的分裂を回避するのに役立っている。少なくとも同じくらい重要なのは、ボツワナが1976年に世界で最も収益性の高いダイヤモンド鉱床の発見から恩恵を受けたことである。この鉱床は世界のダイヤモンド生産量の約3分の1を占めている。こうした鉱山からのダイヤモンド生産は比較的財政的に透明性が高く、生産量と収益の記録と管理が容易である。

そのため、スタッドウェル自身が述べているように、「資源に乏しい東アジア諸国で必要とされたほど、ボツワナでは経済変革の戦略を立てる必要はなかった」。こうした理由から、なぜボツワナが本書に取り上げられているのか疑問に思う。

スタッドウェルが次に詳しく挙げているのは、インド洋に浮かぶ島国モーリシャスだ。砂糖プランテーション経済から軽工業・専門産業へと見事に転換を遂げたこの国は、スイスの時計メーカーへの下請け業務を皮切りに、繊維、水産加工、金融サーヴィスへと多角化(diversification)を進めてきた。

しかし、モーリシャスは人口120万人の島国で、長さは約65キロ、アフリカ大陸からは約2000キロも離れている。ヨーロッパによる植民地化以前は無人島だった。こうした事実だけでも、モーリシャスがアフリカ全体とどれほど関連しているのか疑問に思うかもしれないが、さらに、人口の3分の2はインド系だ。また、少数ながらも重要な中国系住民やフランス人入植者の子孫も存在する。アフリカ系住民はわずか約30%に過ぎない。

スタッドウェルは、モーリシャスをアフリカに含める理由として、彼が「複雑な民族的多様性(fractious ethnic diversity)」と呼ぶものを根拠に挙げている。確かに、モーリシャスは大陸規模のグループやフォーラムにおいて、自らをアフリカと結びつけて活動している。しかし、経済的な観点から言えば、私は異論を唱えたい。モーリシャスはアフリカ大陸にあるとはいえ、この大陸の中でも極めて異質な存在だ。

著者が最後に挙げた2つの事例研究、エチオピアとルワンダはより詳細な検討に値する。両国とも力強く持続的な経済成長と発展を遂げた事例として描かれているが、綿密に検証すると、他のアフリカ諸国への適用には大きな限界があることが明らかになる。

長期間の内戦を経て、エチオピアは1991年から2012年まで続いたメレス・ゼナウィ政権下で目覚ましい発展を遂げた。もともと医師だったゼナウィは経済学に傾倒し、政権を握った後も大学院で学び続け、韓国の戦後の驚異的な成功からエチオピアに活かせる教訓を学ぼうとした。

彼の真摯さと決意は、世界銀行などの開発援助機関の指導者や専門家、例えばジョセフ・スティグリッツらをすぐに感銘させ、スティグリッツは国際金融機関の中でメレス・ゼナウィを擁護し始めた。1990年代初頭には世界で最も貧しい国の1つだったエチオピアは、ゼナウィ政権下で急速に発展を遂げた。スタッドウェルの東アジアモデルと同様に、その発展は農業の発展から始まった。農民には普及サーヴィスとマイクロファイナンスが提供され、新たな道路網が整備された。そして、2004年以降、穀物の平均収穫量は年率5%増加した。間もなく極度の貧困は激減し、平均寿命は飛躍的に延びた。私がアフリカにおける中国の存在に関する書籍を執筆する中で目にしたように、エチオピアはその後製造業に転換し、外国投資を歓迎する工業団地を創設した。これらの工業団地のほとんどは中国企業が運営していた。『フィナンシャル・タイムズ』紙はエチオピアとその成功を「ナイルの奇跡(miracle on the Nile)」と称した。

スタッドウェルは、東アジアでもアフリカと同様に、こうした成果は通常、政府が強力な開発連合(strong development coalitions)を構築できた場合にのみ可能になると主張する。メレス・ゼナウィは確かにそうした連合を構築したように見えるが、彼の体制は、比較的少数派であるティグレ人に不均衡な権力を与え、彼自身のカリスマ性を強く反映したものでもあった。2012年にメレス・ゼナウィが死去すると、権力の空白が生じ、それ以来、エチオピアは武力紛争の再発を含む危機に次々と見舞われている。エチオピアはこうした混乱にもかかわらず、驚異的な経済成長を維持してきたが、次の戦争がいつ起こるか分からないという不安が常に付きまとう。これは、エチオピアの歴史において、他の多くのアフリカ諸国とは大きく異なる特徴があることに起因する。すなわち、現代のエチオピア国家は、国全体に対する支配力が長らく不安定で揺らいできた古い帝国の、不安定な基盤の上に築かれたのである。

スタッドウェルが最後に挙げる例は、1994年に民族虐殺の舞台となった、ベルギーの旧植民地である小さな内陸国ルワンダだ。それ以来、ポール・カガメが政権を握り続けているルワンダは急速な経済成長を遂げ、2000年から2019年までのGDP成長率は年平均7.8%を記録している。スタッドウェルは次のように述べている。「カガメを惹きつけたのはシンガポール・モデルだった。31年間首相を務めた、実務的で清潔さにこだわり、やや強引なリー・クアンユーと、リー率いる人民行動党(PAP)は、政敵の足元をくり抜き、シンガポールの優秀な人材をPAPと政府のために引き抜いた」。

カガメは、政敵を文字通りに排除する以上のことを成し遂げている。彼はメレス・ゼナウィよりもはるかに中央集権的な体制を敷き、一切の批判を許さず、容赦なく権力を振るっている。これには、非常に効果的で威圧的な監視国家(surveillance state)体制の構築や、国外で政権の「敵(enemies)」を誘拐・殺害することさえ含まれる。

それにもかかわらず、カガメ大統領率いるルワンダの経済実績は、アフリカで多くの支持者を集めている。支持者たちは、自国の形式的ではあるものの、しばしば腐敗し経済的に非効率な民主政治体制を、カガメ大統領のような啓蒙的な独裁者による厳しく制限された権利体制(a regime of strictly limited rights under an enlightened dictator, as they perceive Kagame)と交換したいと私に語った。しかし、アフリカの独裁政権は概して芳しくない結果に終わっている。そして、エチオピアの例は、さらなる警戒を促すべきである。権力の極端な集中は、必然的に制度を弱体化させる。いずれはどの指導者もそうであるように、カガメ大統領が政界を去れば、大きな空白が生じるだろう。これは暴力と政治的混乱のリスクを高め、ルワンダの多くの経済的成果を危険にさらすことになる。

​​ルワンダが他のアフリカ諸国にとって建設的な模範とならない理由は他にもある。まず、先に述べた近隣効果(neighborhood effect)である。ルワンダは長年、軍事力と民兵組織を代理として利用し、コンゴ民主共和国の広大な鉱物資源地帯を支配し、隣国の重要な富を搾取してきた。驚くべきことに、カガメ大統領がこうした政策を実行してきた結果、ルワンダは「他のほとんどのアフリカ諸国よりも一人当たりの援助額が多い」という。言い換えれば、ほとんどのアフリカ諸国が夢にも見ないような資源の流れから恩恵を受けているのだ。

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チャドのオウレ・カッソーニにあるスーダン難民キャンプに食糧援助物資が到着した(2月24日)

『アフリカはどのように機能するか』で最も示唆に富むと感じたのは、国別調査とは直接関係のない2つの点だった。それは、西側諸国の開発援助に対する健全な懐疑(its healthy skepticism toward Western development assistance)と、アフリカの未来に対する慎重ながらも楽観的な見方(its cautiously optimistic view of the African future)である。

スタッドウェルは、援助は金の無駄遣いだというよく聞かれる主張が根拠のないものであると同時に、西側諸国のアフリカ援助(特に二国間援助)は歴史的に不安定で、時には無意味に意地悪なものであったことを、見事な筆致で論じている。

批評家たちはしばしば、アフリカ諸国が国際システムの保護下に置かれるようになったと考える。スタッドウェルは、アフリカ大陸のほとんどの国の経済発展にとって外国援助が全体的にどれほど重要であるかを過大評価するという、西側諸国によく見られる誘惑に抵抗している。同時に、スタッドウェルは、2000年以降、「1歳の誕生日を迎える前に死亡するアフリカの子どもの割合(the share of African children dying before their first birthday)」が半減し、4%になったと述べている。マラリアの発生率も同様の割合で減少した。これらの進歩を示す指標は、いずれも国際的な医療支援と密接に関係している。

さらに広く言えば、2000年以降、「援助と成長の間にはアフリカ全土で関連性があるが、成長は援助の唯一の目的ではない」とスタッドウェルは主張する。アジアでの経験を持つスタッドウェルにとって、これは驚くべきことではなかった。毛沢東時代後の改革期において、中国は世界銀行の譲許的融資の最大の受給国であり、同時に大規模な技術支援も受けていた。 「中国よりもずっと以前、アメリカは1946年から1978年の間に、韓国に総額60億ドル、台湾に24億ドルの援助を行った」とスタッドウェルは述べている。「当時としては巨額の援助であり、1950年代の韓国のGDPの15%、台湾のGDPの6%をアメリカからの援助が占めていた」。

長年アフリカについて執筆してきた私は、西側援助機関の流行に左右される姿勢をしばしば批判してきた。貧困国に対する彼らの優先事項や助言は、10年ごとに劇的に変化する。説明責任(accountability)は他者には適用されるものの、自分たち自身には決して適用されないようだ。スタッドウェルもまた、このパターンを認識している。スタッドウェルは西側援助の世界を「流行ビジネス(fashion business)」になぞらえ、「開発の特効薬を見つけようとする人間の自然な欲求に突き動かされているが、そのようなものは存在しない(driven by a natural human desire to identify a developmental magic bullet, even though none exists)」と指摘する。さらに彼は、「これは、援助国が開発の複雑さという現実よりも、単純で整然とした解決策に反応しやすいという事実を反映している(reflects the fact that donors are more responsive to simple, tidy solutions than to the reality that development is complex)」と付け加える。

より深刻な問題は、西側援助の多くに深く根付いたイデオロギー的基盤である。スタッドウェルはこの点について特に鋭く指摘している。

農業支援を謳う西側二国間援助機関の全てにおいて、左派的な政策を支持していると見なされることへの政治的な懸念から、土地改革、農民への融資、農民組合への支援といった取り組みは一切行われていない。農業協同組合の場合、これは、ほとんど全ての先進国において、農業資材の調達と販売が、コスト削減と収益最大化を実現する共同体に依存しているという事実にもかかわらず起こっている。

さらに悪いことに、西側諸国はアフリカ諸国政府との協力を拒絶し、劣悪な統治と腐敗の解決策は非政府組織との連携にあると考えているとスタッドウェルは主張する。西側の援助機関や、国連のミレニアム開発目標のような多国間枠組みは、「開発途上国政府からの意見をほとんど反映させることなく」戦略を策定してきた。しかし、こうした政府との連携を避けることのリスクの1つは、国家能力の弱さという問題を悪化させる可能性があることだ。

スタッドウェルの最も斬新な論点は、本書の終盤、アフリカの未来に目を向けた部分にある。彼が見る未来は、多くの人が想像するよりも明るいが、ナイーヴな楽観主義の兆候は一切見られない。

スタッドウェルは次のように書いている。「アフリカはかつてないほど世界の注目を集めている。今後10年間で、4%の成長率を維持すれば、アフリカ大陸の経済規模は1,5倍に拡大するだろう」。しかし、大陸の成長に伴い、その経済状況はますます地域によって異なると彼は主張する。スタッドウェル「東アフリカや西アフリカの沿岸地域などは、数億人の人口を抱える成長の中心地となるだろう。一方、サヘル地域の内陸国、特に西アフリカ諸国の北部地域は、政治的不安定と貧困に苦しむことになるだろう」と述べている。

スタッドウェルは次のように述べている。「今後、先進諸国はアフリカについて問題を抱えた大陸としてではなく、問題を抱える地域と将来有望な地域とに分けて語るようになるだろう。アフリカ大陸以外、つまりアメリカ大陸、ヨーロッパ、アジアに住んでいる人にとって、アフリカは生活の中でより大きな存在となるだろう。貿易、投資、観光、文学、音楽といった分野において、アフリカの世界システムへの統合は、半世紀以上前にアジアで起こったのと同じように始まっている」。

これは変革の青写真とは言えないだろうが、十分に根拠のある予測と言えるだろう。そして、今世紀末までに人類の約3分の1がアフリカに住むことになることを考えると、アフリカの分析を正しく行うことは、これまで以上に重要になっている。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり特派員を務めた。最新作に『第二の解放:高潮期のンクルマ、汎アフリカ主義、そしてグローバル・ブラックネス(The Second Emancipation: Nkrumah, Pan-Africanism, and Global Blackness at High Tide)』がある。ブルースカイ・アカウント: @hofrenchbluesky.social Xアカウント:@hofrench

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2026年2月28日のイラン攻撃に関して、このブログでは何度も文章を投稿してきた。その中で、攻撃開始決定において重要なポイントになったのは、2月11日のベンヤミン・ネタニヤフ首相のホワイトハウス訪問とプレゼンテーションであったことは既にご紹介した。このプレゼンテーションの場に、JD・ヴァンス副大統領はいなかった。いることができなかった。それは、アゼルバイジャンとアルメニアを訪問していたからだ。
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 日本にいると、これらの国々についてはなじみが薄い。地図でどこにあるかを指し示すことも難しい。しかし、地図を見ていただくと分かる、ロシア、イラン、トルコ、イスラエルなど、国際関係において非常に重要な国々に隣接、もしくは近隣に位置している。
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 アゼルバイジャンとアルメニアには民族紛争が存在し、アゼルバイジャン国内で、アルメニア系住民が多いナゴルノカラバフ自治州の独立をめぐり、緊張関係が続いていた。それでも、2025年に、ドナルド・トランプ大統領が両国の指導者を招いて、関係改善を促し、実現した。2026年2月のヴァンス副大統領の訪問は、この関係改善を確かなものとするためのものとなった。また、南コーカサス地方というロシアと中東を結ぶ「回廊(corridor)」と言うべき重要な地域におけるアメリカの存在感を増大させるということになる。
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 ここで私が疑問に思うのは、ネタニヤフ首相はヴァンスの「留守」中にプレゼンテーションを行ったのはどうしてかということだ。なぜなら、翌日2月12日にはヴァンスはアメリカに帰国していたからだ。ヴァンスにもプレゼンテーションを見てもらって、売り込めばよかったのだ。ここからは私の推測になるが、ヴァンスがイラン攻撃に反対するだろうということは容易に予測できる中で、プレゼンテーションの場所で、ヴァンスが強硬な反対論を唱えることで、トランプ大統領に影響を与える可能性があり、それを排除するためだったのではないか。そのために、「ヴァンスの居ぬ間に」プレゼンテーションをして、逃げ帰ったのだろうと思う。

 アゼルバイジャンとアルメニアの和平を確かなものとする裏で、イラン攻撃で地域と世界に不安定をもたらす試みをしていたベンヤミン・ネタニヤフ首相こそは世界にとって、退場してもらうべき存在ということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

ヴァンス副大統領の時宜を得た南コーカサス訪問(VP Vance’s timely TRIPP to the South Caucasus

-今週のアルメニアとアゼルバイジャンでの会談は、2009年にバイデン副大統領がジョージアを訪問して以来、南コーカサス地域への最高レヴェルの訪問となった。

アルティン・デルシモニアン筆

2026年2月11日

『レスポンシブル・ステイとクラフト』誌

https://responsiblestatecraft.org/trump-tripp/

今週、JD・ヴァンス副大統領がアルメニアとアゼルバイジャンを訪問した地域訪問ツアーは、2009年にジョー・バイデン副大統領(当時)がジョージアを訪問して以来、アメリカ政府高官による南コーカサス地域への最高レヴェルの訪問となった。これは、ワシントンがイェレヴァン(アルメニアの首都)とバクー(アゼルバイジャンの首都)を無視しているのではなく、両国の国交正常化プロセスに積極的に関与していることを示している。

ヴァンス副大統領のアルメニア訪問中、イェレヴァンが1100万ドル相当のアメリカ製防衛システムを調達したことが発表された。これはアメリカ初の事例であり、特にシールドAI社のISR(情報収集・監視・偵察)無人航空機システムであるV-BATが含まれる。また、アメリカを拠点とするAIクラウド・インフラ企業であるファイアバードが主導する画期的なAIスーパーコンピュータープロジェクトの第2段階が開始されることも発表された。これは、NVIDIA GB300グラフィックス処理ユニット4万1000個の販売・納入に関するアメリカでのライセンス契約が締結されたことを受けてのことである。

さらに、副大統領とアルメニアのニコル・パシニャン首相は、アメリカとパートナー国間の平和的な原子力協力のための法的拘束力のある枠組みを確立する「123協定」の交渉完了に関する共同声明に署名した。アメリカは、アルメニアの老朽化したソ連時代の原子力発電所を小型モジュール炉(small modular reactors)に置き換える有力候補として浮上しており、この協定はワシントンに有利な決定への道を開くものとなる。ヴァンス副大統領によると、潜在的な取引には、初期合意で「最大50億ドル」、さらに「燃料および保守契約を通じた長期支援として40億ドル」が含まれる可能性があるという。

アゼルバイジャン訪問中、ヴァンス副大統領はイルハム・アリエフ大統領と、地域連携、経済投資、安全保障および防衛問題を網羅するアメリカとアゼルバイジャンの戦略的パートナーシップ憲章(Strategic Partnership Charter)に署名した。ヴァンス副大統領は公式発言の中で、アメリカは領海保護を支援するため、「アゼルバイジャンに新型船舶を数隻送る」計画であると述べた。

ヴァンス副大統領の訪問は、ドナルド・トランプ大統領が昨年8月にホワイトハウスでパシニャン首相とアリエフ大統領を招き、歴史的な首脳会談を開催してから約6カ月後に実施された。この首脳会談の成果として、アメリカは訪問団それぞれと覚書(MOU)を締結し、アルメニアとアゼルバイジャンの外相は既に合意済みの和平・国交正常化協定の本文に署名した。

先月ワシントンでは、マルコ・ルビオ米国務長官とアルメニアのアララト・ミルゾヤン外相が、TRIPPTrump Route for International Peace and Prosperity、トランプ国際平和繁栄ルート)実施枠組みに関する共同声明を発表した。この枠組みは、アゼルバイジャンとトルコをアルメニア南部経由で結ぶ貿易回廊の技術的・規制的要素を概説するものである。

この枠組みでは、新たな回廊の輸送、貿易、エネルギー、通信インフラを建設する共同開発会社の初期契約期間を49年間と定めている。アメリカは74%の株式を保有し会社をコントロールし、アルメニアは残りの26%を保有する。在イェレヴァン米大使館によると、アメリカのエンジニアリングコンサルティング会社AECOMが最近アルメニアを訪問し、TRIPPプロジェクトの実現可能性調査を開始した。この調査は「アルメニアの長期的な経済成長、連結性、地域統合を支援する」ことを目的としている。

昨年8月の発表以来、このプロジェクトはワシントンとこの地域との関わりと関心を再び高めてきた。今週のヴァンス国務長官の地域訪問中も、こうした協議は継続された。

ワシントンの視点から見ると、TRIPPは、中央アジアとトルコ、そしてヨーロッパを結ぶアメリカ主導の戦略的動脈(an American sponsored strategic artery linking Central Asia to Turkey and Europe)として機能する、相互に連結された南コーカサスという、より広範な戦略的ヴィジョンに合致する。これは、ロシアとイランの領土を迂回しながら、ユーラシア大陸を横断する重要な貿易とエネルギーの流れにとって重要な回廊となる可能性が高い。

これらの合意は既に地域に一定の成果をもたらしている。昨年8月の会談でトランプ大統領が和平プロセスに個人的な影響力を及ぼして以来、アルメニアとアゼルバイジャンの間で戦争が再開される可能性、あるいは暴力的な衝突が起こる可能性は低下した。イェレヴァンとバクーはともに、TRIPPプロジェクトから自国が経済的、政治的に大きな利益を得られることを認識しており、ワシントンを怒らせることは戦略的に賢明ではないことも理解している。

最近、アゼルバイジャンからジョージア経由でアルメニアへの輸送が行われたが、これは主に象徴的な意味合いを持つものの、ささやかな突破口であり、互いのインフラネットワークへの直接的かつ相互的なアクセスが認められれば、将来的にさらに大きな利益につながる可能性がある。 1993年以来閉鎖されていたアルメニアとトルコの国境再開は、地域間の相互連結性を拡大する上で重要な一歩となるだろう。

南コーカサス地域は30年以上にわたり、地域といっても名ばかりになっており、繁栄を促進し、治安悪化を緩和するような統合が欠如していた。かつて南コーカサスにおけるアメリカの関与の旗手であったジョージアを、発展途上にある地域経済構造に再び組み込むことは、その長期的な成功にとって極めて重要である。最近のジョージア代表団のワシントン訪問は、トビリシとワシントンが実務的な協力関係を再構築する可能性を示唆する、心強い兆候である。昨年、ジョージアの首都トビリシで開催されたアルメニア、アゼルバイジャン、ジョージアの外務次官による三者会談は、前向きな進展であり、外務大臣レヴェルで継続されるべきものだ。

まとめると、2025年1月の政権復帰前に好ましい条件が整っていたとはいえ、トランプ政権は最終的に、過去の政権が成し遂げられなかったことを実現した。こうした過去の成功を、南コーカサスにおける長期的かつ安定したアメリカの政策へと転換させることは、同様に重要である。また、このデリケートな地域へのアメリカの関与が、さらなる不安定化を招かないようにすることも、極めて重要である。

その過程で、細心の注意を払って対処しなければならない多くの外部的な落とし穴が間違いなく存在するだろう。中でも、南コーカサスにおけるロシアとイランの利害関係、そして特にTRIPP協定に関する懸念は、極めて重要である。

ワシントンが旧ソ連全域にわたってロシアに勢力圏を「付与する(grant)」準備をしているという懸念とは対照的に、アメリカはむしろ、自国の経済的・政治的利益を放棄することなく、他の大国の安全保障上のレッドラインを尊重する姿勢を示しているように見える。実際、あるロシア人コラムニストはこう書いている。「モスクワでは失望、苛立ち、そして無力感が蔓延している。なぜなら、まさにこの地域において、近年ロシアの立場は著しく低下しているからだ」。

アメリカにとって、これはまさに綱渡りのような状況であり、その成否は、冷戦後の世代のアメリカの政治エリートにはほとんど馴染みのない、慎重な政治手腕にかかっている。ヴァンス副大統領のアルメニアとアゼルバイジャンへの訪問は、アメリカが南コーカサス地域とその周辺地域に新たな重要性を見出し、それが今後何年も続くであろうという強いメッセージを発信している。

※アルティン・デルシモニアン:クインシー責任ある国家運営研究所のユーラシア・プログラムのジュニア・リサーチ・フェロー。2022年にグラスゴー大学でロシア、東欧、ユーラシア研究の修士号を取得。修士論文では「1878年から1890年までの帝政末期ロシアにおける親ドイツ外交政策の衰退」をテーマとした。

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 古村治彦です。

 昨日に続いて、UAEをテーマにした文章を掲載する。UAEOPECを離脱したことを昨日ご紹介した。UAEはイランに対して強硬な姿勢を保ち、イスラエルに近づいている。その象徴が、2026年5月13日のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相のUAE公式訪問である。UAE側はネタニヤフ首相訪問を否定しているが、これは事実としてすでに報道されている。イランはUAEを厳しく非難している。
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 イスラエルは対空防衛システム「アイアンドーム」をUAEに供与しているということだ。これは、UAEにイスラエルの軍事要員が駐留していることを示している。アイアンドームの効果は限定的であろうが、アメリカ軍の役立たずぶりよりはだいぶお役に立ったということになるだろう。UAEは対イラン強硬姿勢が転じて、親イスラエルとなっている。イスラエルに接近している。そして、親イスラエルであることで、アメリカからの支援を受けようとしている。中東地域のイスラム教国の団結は崩れつつある。
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ムハンマド・ビン・ザイドUAE大統領

 イスラエル側からすれば、UAEを手駒として使えるようになる。UAEはイランの隣国である。UAEにアイアンドームを配備することができれば、更に「UAEの安全のためにイスラエル製のミサイルも配備しましょう」ということになる。このミサイルはイラン攻撃に使える。UAEがイスラエル製のミサイル攻撃をすれば、イランの報復はUAEに向かう。UAEもそこまで馬鹿ではないから、ミサイル配備は断るだろう。しかし、アイアンドームという「防御」システムで発射された迎撃ミサイルがペルシア湾を超えて、イランに着弾するということはある。「迎撃に失敗して、そのままイランに飛んでいってしまった」ということもできる。
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 イランを抑え、イスラム教国を分断し、中東地域を不安定化させるというのがイスラエル、正確にはネタニヤフ首相が望む姿である。そのためにUAEを利用している。中東知己の不安定化は世界にとって不幸である。石油価格が安定しない、石油自体を確保しにくいということになれば経済にも悪影響が出る。イスラエルの好戦的、独善的な姿勢が改められない限り、世界の不幸は続く。

(貼り付けはじめ)

イランとの戦争の中、UAEはイスラエルとの関係強化を選択し、サウジアラビアとの関係悪化のリスクを冒している(UAE chooses to deepen ties with Israel amid war with Iran, risking rift with Saudis

-専門家たちは、UAEはイスラエルを「他の国と同様(like any other country)」と捉え、安全保障上のパートナーと見なす現実的な見方をしている一方、リヤドをはじめとする湾岸諸国はイェルサレムをならず者国家(a rogue state)と見ている。

AFP通信、『ザ・タイムズ・オブ・イスラエル』紙スタッフ

2026年5月15日

『ザ・タイムズ・オブ・イスラエル』紙

https://www.timesofisrael.com/uae-chooses-to-deepen-ties-with-israel-amid-war-with-iran-risking-rift-with-saudis/

アラブ首長国連邦ドバイ発-イランからのミサイル攻撃によって経済的未来が脅かされたアラブ首長国連邦(UAE)は、イスラエルとの関係を強化し、かつての同盟国でありライヴァルとなったサウジアラビアとの溝を深め、テヘランに対して強硬な姿勢を取っている。

この賭けにより、人口の9割が外国人である観光大国UAEは、2800機以上のドローンとミサイルを迎撃するためのイスラエル製防空システムへのアクセスを得た。アナリストたちは、これは安定を基盤とした国家モデルを維持するために、防衛を最優先事項としたことを意味すると指摘する。

しかし、イスラエルとの協力強化は、UAEが最大の脅威と見なすイランをさらに刺激するリスクを孕み、湾岸諸国の多くと同様にイスラエルを地域における重大な存在のならず者と見なすサウジアラビアとの関係をさらに悪化させる恐れがある。

●安全保障協力(Security cooperation

UAEは将来を見据えており、経済復興を支える最良の安全保障パートナーとしてイスラエルを位置づけている」と英チャタムハウスの中東・北アフリカプログラム責任者サナム・ヴァキルは述べた。

安全保障と防衛の面において、この判断は功を奏したようだ。

火曜日、マイク・ハッカビー駐イスラエル米大使は、イスラエルが戦争中にアイアンドーム防空システムと人員をUAEに派遣したことを認めた。

戦争中、UAE当局は、攻撃が降り注ぐ中で空虚な連帯(hollow solidarity)を示すアラブ諸国を名指しこそしなかったものの、激しく非難してきた。

「建国以来、これほど深刻な脅威に直面したことはないのに、危機感が足りなかった」とUAE政府に近いレバノン系UAE人のメディア幹部で政策顧問のナディム・コテイチは語っている。

「しかし、この戦争では、イスラエルは必要な時にUAEのために姿を見せた」。

イスラエル軍やイスラエルの指導者たちは、アメリカと共同でイランに対する作戦を開始した目的は、イラン政権の軍事力を弱体化させ、核兵器や弾道ミサイル計画を含むイランの脅威を遠ざけ、イラン国民が政権を打倒するための「条件を生み出す(create the conditions)」ことだったと述べている。

トランプ大統領が4月に宣言した停戦は、戦争の主要な目標をほぼ達成しないまま終わった。

●微妙な問題が残り続けている(Sensitivities remain

UAE当局者は、戦後の湾岸地域におけるイスラエルとの協力関係を模範として挙げることがある。

先月、UAE大統領顧問のアンワル・ガルガシュは、イランの地域戦略の結果、湾岸地域におけるイスラエルとアメリカの影響力は増大する一方だと述べた。

しかし、今のところ、イスラエルと国交を正常化した湾岸諸国はバーレーンとアラブ首長国連邦(UAE)のみであり、アラブ諸国にとってこれは非常にデリケートな問題である。

水曜日、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イラン戦争中にUAEを秘密裏に訪問したと述べたが、アブダビ側はこれを即座に否定した。

アブラハム合意は当初、国交正常化の動きに勢いを与えたものの、2023年10月7日にハマス主導のテロリストがガザ地区で虐殺事件を起こし、戦争が勃発したことで、その流れは急停止した。この事件はアラブ世界全体に怒りを巻き起こし、ネタニヤフ首相はその怒りの対象となった。

キングス・カレッジ・ロンドンのアンドレアス・クリーク教授によると、ネタニヤフ首相がUAE訪問を公表したのは、イスラエルにおける、「選挙を控えた政治家としての力と才能(statesmanship in the run-up to the elections)」をアピールするためだったという。

前述のヴァキルはAFP通信に対して、「イスラエル側は両国関係を過剰に宣伝しようとしている。これはどちらかというと、実質的な安全保障と経済のパートナーシップに近い」と述べた。

ヴァキルはまた、UAEは今後もパートナーシップの多様化を進め、防衛と経済にとって重要なヨーロッパおよびアジアの同盟諸国との関係を拡大していくと述べた。

UAEとサウジアラビアの分裂(UAE-Saudi rift

中東地域での戦争勃発以来、UAEとイスラエルの関係は、この湾岸諸国サウジアラビアにとって課題となっている。

国際的な金融ハブとしての地位と、アメリカ軍の拠点を擁しイスラエルとの関係も深いアメリカにとっての主要同盟国としての地位のために、UAEはイランにとって格好の標的となっているとアナリストは指摘する。

イスラエルとの関係強化は、湾岸地域の安定に対する脅威としてイスラエルとイランのどちらがより大きいかをめぐるUAEとサウジアラビアの意見の相違を浮き彫りにし、昨12月のイエメン問題での対立以来、両国間の溝をさらに深めている。

アブダビは、たとえそれが伝統的な同盟関係を断ち切ることを意味するとしても、独自の道を歩む姿勢を示している。今月、サウジアラビア主導のOPECから離脱し、以前にはアラブ連盟(the Arab League)を激しく非難した。

また、イランに対してはより強硬な姿勢を取り、イランを敵とみなし、いかなる和平合意においても最大限の要求を表明している。

コテイチはUAEの立場について、「イスラエルの卓越性という考えに固執する人もいれば、より現実的で、イスラエルを他の国と同様に捉え、・・・地域に統合できると考える人もいる」と述べた。

サウジアラビアはアブラハム合意後、イスラエルとの関係正常化を検討していたが、ガザ戦争によってその努力は突然頓挫した。

現在、サウジアラビア王国は、湾岸諸国の多くと同様に、イスラエルをならず者とみなしている。

イスラエルは、2023年10月7日にハマスがガザ地区で約1200人を殺害し、251人を人質に取った虐殺事件を受けて、ガザ戦争を開始した。その後、イランの代理勢力であるレバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派とも戦闘を繰り広げた。両組織はイランを支援するために戦闘に参加した。

イスラエルはさらに、イランの核・ミサイル脅威を排除するため、イランとの二度の戦争も経験している。

しかしながら、イスラエルが自国の存立に対する脅威を受け入れようとしない姿勢は、地域の一部の国々から強い反発を招いている。

最近の論説で、元情報機関長官のトゥルキ・アル・ファイサル王子は、イスラエルが「地域に自国の意思を押し付ける(to impose “its will on the region”)」ために、サウジアラビアとイランの間で「戦争を引き起こそうとしている(planning to “ignite war”)」と非難した。

=====

ベンヤミン・ネタニヤフ首相がイスラエルとUAEの関係を強調する一方で、UAEの指導者たちは慎重な姿勢を崩さない(As Netanyahu spotlights Israel’s ties to the UAE, its rulers prefer to be discreet

ジュリア・フランケル筆

2026年5月16日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/2026/05/16/israel-uae-netanyahu-gaza-palestinians/9fa7ffea-50e4-11f1-97e7-22c6c29ff0d8_story.html

イェルサレム発(AP通信)-イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の緊密な関係は、通常は秘密裏に管理されている。しかし今週、その関係が公になり、イラン核戦争が地域全体を巻き込む中で、同盟関係の根底にある緊張が浮き彫りになった。

イスラエルとUAEの関係強化に最初に注目を集めたのは、マイク・ハッカビー駐イスラエル米大使だった。イスラエルがUAEをイランの攻撃から守るため、アイアンドーム防空システムと運用要員を派遣したことを明らかにした。

その後、ネタニヤフ首相は、戦争中にUAEを密かに訪問していたと発言。これに対し、UAEは慌てて公式に否定した。

ネタニヤフ首相とトランプ政権は、地域における反イラン勢力を強化する一環として、両国間の同盟関係を大々的に宣伝しているが、湾岸諸国はこうした関係を控えめに扱う傾向にある。これは、イスラエルとの公的な関係が、この地域において依然として大きな論争の的となっていることを示している。

イスラエルとUAEの関係について知っておかねばならないことを如何に掲載する。

UAEは何故ネタニヤフ首相の訪問を否定したのか?(Why would the UAE deny Netanyahu’s visit?

ネタニヤフ首相が戦時中にアブダビを訪問していたことを明らかにしたことは、特にハッカビー大使がイスラエルとUAE両国間の軍事協力を確認した直後だったこともあり、波紋を呼んだ。イスラエルの治安責任者も訪問したとの報道が飛び交った。

UAEの国営通信社WAMは、訪問に関する「流布している報道(reports circulating)」を否定する記事を掲載した。WAM通信社は、イスラエルとの関係は「周知の、公式に宣言されたアブラハム合意の枠組みの中で行われており、不透明な、あるいは非公式な取り決めに基づくものではない」と述べた。

また、この記事では、イスラエル軍代表団がUAEを訪問したという事実も否定した。

「この件は、アブダビの戦時体制という姿勢を公然と覆すことになり、事態を複雑化させる。だからこそ、否定声明はこれほど迅速に、そして慎重に言葉を選んで発表されたのだ」とマルコム・H・カー・カーネギー中東センターに所属するサウジアラビア在住の研究員ヘシャム・アルガナムは述べた。

アラブ首長国連邦(UAE)は2020年にイスラエルとの国交を正常化したが、UAEの指導者たちはこの同盟関係をある程度秘密にしておきたいと考えている。

中東地域のアラブ諸国やイスラム諸国では、ユダヤ国家に対する反感が根強く残っている。こうした反感は、イランの支援を受けた武装組織ハマスが2023年10月7日にイスラエルを攻撃し、約1200人を殺害、251人を人質に取ったガザ紛争によってさらに増幅された。

イスラエルによるガザ地区への攻撃は、ガザ地区の大部分を壊滅させ、ガザ保健省によると7万2700人以上のパレスティナ人を殺害した。ガザ保健省は民間人と戦闘員の死者を区別していない。この紛争は地域全体に波及し、イスラエルはレバノンとイエメンでイランの支援を受けた武装勢力に対し、死傷者と甚大な被害をもたらす作戦を展開し、カタールとシリアの武装勢力の標的を攻撃した。

「私たちは中東地域の醜いアヒルの子(the ugly duckling)だ」と、イスラエルの保守系シンクタンクであるイェルサレム安全保障外交センターのダン・ディカー所長は述べた。

アブラハム合意加盟国と広範な協議と関係を築いてきたディカーは、自身が頻繁に交渉する地域当局者は常に、物事を秘密裏に進めるよう求めたと語った。

●イスラエルとUAEの同盟関係はどのような基盤に基づいているのか?(What is the Israel-UAE alliance based on?

イスラエルとUAEは、イランとの戦争中に軍事的に協力した。イスラエルは、宿敵イランに地理的に近い国家であるUAEに防衛拠点を確保できたことで恩恵を受けた。一方、アラブ首長国連邦(UAE)は、アイアンドーム防空システムなどのイスラエル製軍事技術へのアクセスを得た。

この同盟は両国の経済にも恩恵をもたらしており、2020年以降、両国間の貿易は着実に増加している。

中東地域で長らく孤立していたイスラエルは、アラブ諸国とのパートナーシップによって正当性を獲得した。そしてUAEはワシントンにおける影響力を強めた。

UAEは、エジプト、ヨルダンに次いで、イスラエルと正式な外交関係を樹立した3番目のアラブ国家となった。

●ネタニヤフ首相は何故今回の訪問を公表したのか?(Why did Netanyahu publicize his visit?

ネタニヤフ首相は、イスラエルで選挙シーズンを控え、国内で激しい反対に直面している。中東地域における影響力のある仲介者(power broker)としての地位を支持層に示すことができれば、自身のイメージ向上につながると考えている。

イラン戦争は、ネタニヤフ首相の国内支持率向上にはほとんど貢献しなかった。支持率向上につながり、同時にトランプ大統領との緊張感のある関係を強化する可能性のある要因の1つは、アラブ首長国連邦(UAE)に倣って、より多くの地域大国がUAEに加わることだろう。イスラエルは現在、アブラハム合意への参加を目指し、アゼルバイジャンと協議中である。

しかし、ネタニヤフ首相がイスラエルとUAEの緊密な関係を公表することで、他国にとって模範となることを期待していたとしたら、あまり期待しない必要があるかもしれない。

アブラハム合意への参加を拒否してきた地域の大国であるサウジアラビアは、イラン戦争を通して異なるアプローチを採用してきた。サウジアラビア在住の学者アルガナムによると、サウジアラビアはテヘランとの対話ルートを維持し、パキスタンによる両国間の仲介を支持してきたという。

「その目的は、イスラエルに対して明確な立場を示すことではない。リヤドが主導権を握っておらず、制御もできない戦争に巻き込まれることを拒否することだ」とアルガナムは述べた。

アルガナムは更に次のように述べた。「リヤドがパートナー国とあらゆる選択肢をオープンに議論し、一つの路線に固執しないこと自体が戦略的なシグナルだ。地域安全保障体制は、ワシントンとテヘランが二国間交渉で合意した内容から引き継ぐのではなく、地域レヴェルで構築されるべきだ」

※イェルサレムを拠点とするフランケルは、イスラエル全土とイスラエル占領下のヨルダン川西岸地区から報道を行っている。彼女の報道は、戦争、人権、避難民問題、刑事司法に焦点を当てている。

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(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2026年5月1日、アラブ首長国連邦(UAE)が石油輸出国機構(OPEC)から離脱を表明した。OPECは1960年に設立された石油の生産量や価格を石油関連巨大資本(メジャー)から守るための国際組織であり、現在は9カ国で構成されている。OPECを主導しているのはサウジアラビアである。UAEOPEC内では2位の生産量を誇っていたが、離脱した。これによって、生産量や輸出先などを決定する自由裁量が増加することになる。
 UAEは経済多様化を進めており、石油以外の金融、観光、運輸、再生可能エネルギー、不動産などの石油以外の経済分野がGDPの約75%を占めるまでになっている。その象徴がドバイである。現在のイラン戦争ではイランからの攻撃に晒されてしまったが、世界を代表する金融センターとなっている。UAEは石油に頼る必要がない経済になっているので、OPECの「ご近所づき合い」をしなくても済むことになった。

 OPECの「ご近所づきあい」をしなくてよくなったことで、OPECは石油生産に関して、自身で決められる自由裁量を欲するようになった。OPECを支配しているのはサウジアラビアであり、サウジアラビアの意向で物事が決まる。そうなると、UAEの望むとおりにならないことも出てくる。UAEは豊富な埋蔵量を背景にして現在よりも生産量を増やすことを望んでいるが、サウジアラビアは価格の高値維持を望む。ここで利害が一致しないことで、サウジアラビアとの対立ということまで起きている。
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 そして、今回のイラン戦争である。UAEはイスラエルとの国交正常化を行っており、アメリカ軍基地も存在するために、イランからの攻撃の標的となった。ホルムズ海峡封鎖の影響も大きい。UAEはホルムズ海峡の外側にフジャイラという石油積み出し港があり、ここからホルムズ海峡封鎖の影響を受けずに、石油を輸出することができる。イラン側はフジャイラを攻撃したが、これはUAEを反イラン、親イスラエルへと動かすことになった。中東地域において新たな火種ということになる。しかも、UAEはイランとペルシア湾を挟んでの隣国である。ペルシア湾とホルムズ海峡における不安定な状況が新たに起きるということになれば、たとえイラン戦争が停戦となっても、中東地域における不安定状況が残り続ける。そうなれば、アメリカ軍は容易に撤退することはできない。UAEをイランから守るという役割を放棄することはできない。中国に肩代わりということも現在のところ考えにくい。
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 UAEが石油を増産して、石油価格が低下してくれればありがたいが、UAEとイランの関係の悪化は気がかりだ。もちろん、UAEは馬鹿ではないので、ドバイを危険に晒すようなことはしないだろうが、イランとの関係悪化はペルシア湾、ホルムズ海峡、中東地域における緊張と不安定化をもたらす。それを歓迎する国がある。イスラエルだ。イスラエルはUAEをイランに対する抑えの駒として使えることになる。イスラエルがUAEに接近しているという内容の記事を明日、ご紹介する。中東情勢は複雑怪奇、である。

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UAEOPEC離脱の真の意味(The Real Meaning of the UAE’s OPEC Exit

-地政学的な再編は、石油市場だけにとどまらない、はるかに深い意味を持つ。

アミール・ハンジャニ筆

2026年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/01/uae-opec-exit-meaning-oil-middle-east/

アラブ首長国連邦(UAE)が5月1日にOPECOrganization of the Petroleum Exporting Countries、石油輸出国機構)を脱退する際、それは単に組織を放棄するのではなく、もはやOPECが自国の利益に合致しないと宣言することを意味する。この違いは重要である。アブダビの脱退は、単一の不満に対する反応ではなく、3つの要因が重なり合った結果である。すなわち、イラン・イラク戦争、サウジアラビアとの対立の激化、そして長年にわたり進められてきたワシントンとの戦略的再編である。

アメリカとイスラエルによるイラン戦争は、UAEを予想もしなかった形で最前線国家(a front-line)へと押し上げた。イランは、アブダビが数十年にわたりワシントンと戦略的に連携してきたことを理由に、UAE領土への攻撃を正当化した。この連携は、2024年にアメリカがUAEを「主要防衛パートナー(major defense partner)」に指定したことで正式なものとなった。イランの攻撃はフジャイラの工業地帯を直撃し、ジェベル・アリ港を揺るがし、ドバイのスカイラインを煙で覆った。UAEはこの打撃をほぼ単独で受け止めた。湾岸協力会議(GCC)加盟国は連帯を示したが、アラブ首長国連邦(UAE)大統領顧問のアンワル・ガルガシュが月曜日の湾岸諸国影響力フォーラムで指摘したように、彼らの政治的・軍事的対応は「歴史上最も弱いもの(the weakest historically)」だった。OPECの発表前夜に公に表明されたこの不満は、不吉な兆候となった。

イランとの紛争は、歴史的な規模のエネルギーショックを引き起こした。イランによる湾岸諸国のインフラへの攻撃とホルムズ海峡の航行への脅威によってサプライチェーンが寸断されたため、OPECの総生産量は3月に27%減の1日あたり2079万バレルにまで落ち込んだ。その結果生じた供給量の減少は、わずか1ヶ月で1日あたり788万バレルにも達し、1973年の石油禁輸措置や1991年の湾岸戦争をも上回った。世界の原油と液化天然ガスの約5分の1が通過するホルムズ海峡は、現在、激しい攻防にさらされる要衝となっている。このような状況下で、相当な余剰生産能力を保有し、長年にわたりその拡大に投資してきたアラブ首長国連邦(UAE)は、極めて重要な地政学的価値を持つ資産を保有している。生産割当制と合意形成型のガヴァナンスを特徴とするOPECに留まることは、もはやアブダビの利益を適切に代表できない集団的枠組みに、その資産を従属させることを意味する。こうした観点からすれば、離脱の論理は合理的であると言える(The logic of exit is, in that light, rational)。

しかしながら、今回の離脱のタイミングと方法は、より根深い問題、すなわちサウジアラビアとの長年にわたる対立の結果をも反映している。湾岸地域の安定の要と称されるリヤドとアブダビの関係は、石油の支配権をめぐる根本的な問題をめぐり、長年にわたり静かに亀裂を生じさせてきた。

この対立の根源は、2016年にロシアとOPECプラスが結成されたことに遡る。当時、UAEは自国に割り当てられた生産枠が、急速に拡大する生産能力を反映していないと感じ始めた。2020年の新型コロナウイルス感染症による価格競争では、サウジアラビアが主導して大幅な減産を実施し、この溝はさらに深まった。アブダビは、生産量増加に多額の投資を行ってきたにもかかわらず、サウジアラビアの減産は不当な負担だと考えた。2021年までに、UAEはサウジアラビアが支援する生産量拡大を公然と拒否するようになり、最終的にアブダビに日量365万バレルというより高い基本生産枠を与えることで決着がついた。この妥協は意見の相違を表面化させただけで、根本的な解決には至らなかった。

その後、緊張関係はより構造的なものへと発展した。サウジアラビアは、財政均衡と「ビジョン2030」プロジェクトの実現のために、ブレント原油価格が1バレル80ドル近辺で推移することを必要としており、供給管理と高価格維持に強い関心を持っている。一方、ドバイが金融、物流、航空のグローバルハブとして機能し、経済の多角化をはるかに積極的に進めてきたアラブ首長国連邦(UAE)は、高価格の底値への依存度が低い。アブダビが石油部門に求めるのは価格管理ではなく、生産量の最大化、つまりアブダビ国営石油会社(ADNOC)の生産能力拡大に投資された数十億ドルの収益である。これらは単なる政策嗜好の違いではなく、経済モデルの違いと言える。UAEのエネルギー大臣は火曜日、アブダビが離脱を発表する前にリヤドに相談すらしていなかったことを認めた。この事実こそが、両国関係の現状を如実に物語っている。 OPECの絶対的なリーダーであるリヤドは、プレスリリースを通じてこの離脱を知った。

この物語におけるワシントンの役割も同様に重要である。アブラハム合意、イスラエルとの安全保障パートナーシップの深化、アブダビを湾岸諸国にとって不可欠な同盟国として位置づけること、これらは全て、アメリカがUAEから手を引いた場合に政治的にも戦略的にも大きな代償を払うことになるよう仕向けるためのものだ。この賭けは今まさに試されており、ワシントンは対応策を講じたようだ。スコット・ベセント米財務長官は、OPECの発表に先立ち、アブダビへの緊急ドルスワップ協定を公に支持した。長年、OPECはアメリカ軍の保護を悪用していると批判してきたドナルド・トランプ米大統領は、事実上、アブダビが離脱するための外交的後ろ盾を与えたことになる。UAEが自由に生産したいという願望と、トランプ政権がより多くの石油を低価格で世界市場に供給したいという願望が一致しているのは偶然ではない。構造的に言えば、これはワシントンとアブダビの間で何年も前から進められてきた利害の一致なのだ。

UAEはまた、中国との関係を巧みに利用してきた。アブダビのハリド・ビン・ムハンマド・アル・ナヒヤーン王太子の最近の北京訪問は、数々の経済協定を生み出した。また、UAE当局は、ドル流動性が逼迫した場合、一部の石油取引を人民元建てで価格設定する可能性を示唆している。これは、2023年にサウジアラビアが行った戦略と同様のもので、アメリカがリヤドとの外交関係を加速させるきっかけとなった。アブダビは中国に軸足を移しているのではなく、中国を利用してワシントンからより有利な条件を引き出そうとしている。UAEの政府系ファンドは依然として、アメリカとヨーロッパの資産に圧倒的に偏っている。北京のシグナルは、軸足の転換ではなく、ワシントンに対し、アブダビとのパートナーシップを当然のことと考えてはならないという警告として、慎重に調整された交渉材料と解釈するのが適切だろう。

それでは、OPEC自体にとって、今回の離脱は何を意味するのだろうか? その損失は深刻であり、中期的には存続に関わる可能性もある。UAEは、今回の離脱以前はOPEC全体の供給量の12%を占める、OPEC3位の産油国だった。アンゴラは割当量をめぐる争いを理由に2024年に離脱した。カタールは2019年に脱退した。それぞれの離脱は特異な事例として捉えられたが、その累積的なパターンは、アブダビをも巻き込んだ戦略的乖離という同じ力によって、カルテルが内部から空洞化していく様相を呈している。サウジアラビアはOPECの組織構造と、それを主導する政治的意思を維持しているが、歴史的な供給混乱の時期に、規模が縮小し能力が低下した組織を率いることは、控えめに言っても困難だろう。リヤドは今後、構造的に弱体化したOPECを率いていくことになる。

イラン核戦争は湾岸諸国を統一するどころか、むしろ既存の断層線(fault line)に沿って分裂させた。イエメン政策、経済競争、そしてワシントンとテヘランとの関係管理に関する異なる判断など、様々な面で意見の相違が加速している。この分裂は、湾岸諸国がイランに対して取った全く異なる姿勢にも表れている。戦前のアメリカとイランの核交渉を主催し、地域で最も一貫した仲介役を務めてきたオマーンは、イランの攻撃が自国領土を直撃しているにもかかわらず、外交を呼びかけ続けている。イランと広大なガス田を共有し、歴史的にテヘランとの関係を維持してきたカタールは、共存を強調し、外務省は両国が「人類の未来において隣人となる(will be neighbors for the future of humankind)」と述べている。サウジアラビアも、イランの攻撃を受けているにもかかわらず、同様に緊張緩和を望む姿勢を示しており、サウジアラビアの経済変革計画を脅かす戦争を警戒している。

アラブ首長国連邦(UAE)は単独で強硬路線(the hard line)を貫き、賠償(reparations)、ホルムズ海峡の無条件再開(he unconditional reopening of the Strait of Hormuz)、そしてイランの国力の全面的な縮小を要求している。OPECからの離脱は、アブダビをリヤドだけでなく、より広範な湾岸諸国の合意からも切り離す地政学的姿勢の結果である。UAEは、カルテルの一員としてではなく、主権国家として行動することが自国の利益に最も資すると結論付けた。この判断が正しかったかどうかは、戦争がどのように終結し、そこからどのような地域構造が生まれるかにかかっている。OPECの決定が明確に示しているのは、共通の制度と統一された利益という虚構の上に築かれた旧来の湾岸諸国間の協定はもはや存在しないということだ。

※アミール・ハンジャニ:クインシー責任ある国家運営研究所の理事であり、ニューヨークに拠点を置く戦略アドバイザリー会社KARVのパートナーである。Xアカウント:@ahandjani

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 なんだか盛り上がらないままで、ドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席との米中首脳会談は終了した。何も大きな発表はなく、イラン戦争もウクライナ戦争もそのままということで、石油価格が短期的に下落することはないだろう。一方、中国側にとって十だったのは、台湾問題である。台湾問題で、アメリカ側から何らかの譲歩を引き出すことであった。台湾有事でアメリカ軍が支援することはしないとか、独立宣言を認めないといったことを公文書で記録しておくことを中国側は求めていただろうが、これはアメリカ政界内の親台湾派が許さないということもあって、厳しかっただろう。台湾問題については、トランプ大統領は中国訪問中には何も発言しなかった。しかし、アメリカに帰国後に、フォックスニューズでのインタヴューで、台湾独立に明確に反対する姿勢を示した。

 トランプ大統領はインタヴューの中で次のように述べている。

「何より、私たちは9500マイル(15289キロ)も離れた場所まで行って戦争をしなければならないということになる。私はそんなことを望んでいない。彼らには冷静になって欲しい。中国にも冷静になって欲しい(You know, we're supposed to travel 9,500 miles (15,289km) to fight a war. I'm not looking for that. I want them to cool down. I want China to cool down)」「私たちは戦争を望んでいない。現状維持であれば、中国もそれで構わないと思う。しかし、『アメリカが私たちを支持しているから独立しよう』と言うような事態は望んでいない(We're not looking to have wars, and if you kept it the way it is, I think China's going to be OK with that. But we're not looking to have somebody say, 'Let's go independent because the United States is backing us)」

 アメリカは中国と直接戦争することができない。万が一、中国が台湾に対して武力を行使することになってもアメリカ軍は出動することはないだろう。中国は現状維持で、少しずつ経済的な統合から始めて、時間をかけながら台湾を取り込んでいくことになるだろう。ここで邪魔になるのは、反中国で凝り固まって、何が何でも中国と戦いたいとする勢力である。これは、台湾にも、日本にも、アメリカにもいる。彼らが不測の武力衝突を行わせようとしてくるのは何とも怖いことだ。日中戦争も、第一次世界大戦も一発の銃声から始まったことを考えると、このような危険な勢力の蠢動こそが世界平和にとっての害悪である。

 日本の高市早苗首相の台湾有事に関する発言はトランプ大統領の今回の発言とは全く異なる内容だ。勇ましい内容ではあったが、これによって日中関係は冷え込み、イラン戦争が起きている現状で、この冷え込みの悪影響が少しずつ出てきている。トランプ大統領は放言も多いが決して馬鹿ではない。この点が高市早苗首相との最大の相違点ということになる。そして、今回のトランプ大統領の発言からは、米中首脳会談で、米中間で台湾に関して何らかの合意なり、取り決めがあったということが推測される。勇ましいだけで、梯子を外された高市早苗首相が何とも滑稽でもある。

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トランプ大統領は中国の習国家主席との首脳会談から数時間後、台湾に対し独立宣言をしないよう警告した(Trump warns Taiwan against declaring independence, hours after summit with China's Xi

イアン・アキマン筆
BBC
2026年5月16日

https://www.bbc.com/news/articles/ce8p61v7l68o

ドナルド・トランプ米大統領は、台湾が中国からの正式な独立を宣言しないように警告を発した。

トランプ大統領は、北京で行われた習近平国家主席との2日間の首脳会談を終えた金曜日、フォックスニューズに対し、「私は誰かが独立することを望んでいる訳ではない(I'm not looking to have somebody go independent)」と述べた。

頼清徳台湾総統は以前、台湾は既に主権国家(a sovereign nation)であると認識しているため、正式な独立を宣言する必要はないと述べている。

アメリカは長年にわたり台湾を支援しており、法的義務として台湾に自衛手段を提供する義務を負っているが、この同盟関係と中国との外交関係の維持との間でしばしば折り合いをつけざるを得ない状況にある。

トランプ大統領は以前、自治権を持つ台湾について「どちらの立場にも確約はしていない(made no commitment either way)」と述べていた。中国は台湾を自国領土の一部と主張し、武力による併合も排除していない。

ワシントンの確立された立場は、台湾の独立を支持しないというものであり、北京との関係維持は、中国政府は一つであるという認識をアメリカが受け入れることを条件としている。

北京は台湾総統への嫌悪感を公然と表明しており、以前にも彼を「トラブルメーカー(troublemaker)」「両岸平和の破壊者(destroyer of cross-strait peace)」と表現したことがある。

台湾人の多くは自らを独立した国家の一部だと考えているが、大半は台湾が中国から独立も統一もせず、現状維持(the status quo)を望んでいる。

トランプ大統領はフォックスニューズのインタヴューで、この問題に関するアメリカの政策は変わっていないと改めて述べた。

「何より、私たちは9500マイル(15289キロ)も離れた場所まで行って戦争をしなければならないということになる。私はそんなことを望んでいない。彼らには冷静になって欲しい。中国にも冷静になって欲しい(You know, we're supposed to travel 9,500 miles (15,289km) to fight a war. I'm not looking for that. I want them to cool down. I want China to cool down)」。

ワシントンへの帰路、トランプ大統領は記者団に対し、習近平国家主席と台湾について「たくさん(a lot)」話し合ったと述べたが、アメリカが台湾を防衛するかどうかについては議論を避けたと語った。

トランプ大統領は、習主席は台湾に対して「非常に強い思い入れ(feels very strongly)」を持っており、「独立運動を望んでいない(doesn't want to see a movement for independence)」と述べた。

中国国営メディアによると、習国家主席は会談で「台湾問題は米中関係において最も重要な問題だ」と警告し、「対応を誤れば、米中両国は衝突、あるいは紛争に発展する可能性もある」と付け加えた。

トランプ大統領は、台湾を巡る中国との紛争を予見しているかと問われ、「いや、そうは思わない。大丈夫だろう。習主席は戦争を望んでいない("No, I don't think so. I think we'll be fine. [Xi] doesn't want to see a war)」と答えた。

中国は近年、台湾周辺で軍事演習を強化しており、地域の緊張を高め、ワシントンが築いてきたバランスを試している。

昨年後半、トランプ政権は台湾への110億ドル相当の武器売却を発表した。これには最新鋭のロケットランチャーや各種ミサイルが含まれており、北京はこれを非難した。

トランプ大統領は、この売却を進めるかどうか近いうちに決定すると述べ、習近平国家主席と「非常に詳細に(in great detail)」協議したと付け加えた。

さらに、「今、台湾を統治している人物、つまり誰のことかは皆さんも知っているだろうが、その人と話をする必要がある」と述べた。

アメリカは台湾と正式な外交関係はないものの、非公式ながら相当な関係を維持している。米大統領は伝統的に台湾の指導者と直接対話することはなく、もしそうすれば、台湾の頼清徳総統を分離主義者(a separatist)とみなす北京との間で大きな緊張が生じる可能性が高い。

台湾外交部政務次長の陳明祺は土曜日、台湾はトランプ大統領の発言の正確な意味を明確にする必要があると述べた。

陳次長はまた、アメリカによる台湾への武器売却はアメリカ国内法で認められていると述べた。

「台湾とアメリカの武器売買は、常に地域の平和と安定の礎となってきた」と付け加えた。

ロイター通信が引用した頼総統の報道官の発言によると、アメリカによる武器売却は、「アメリカによる台湾の安全保障への関与(US security commitment" to Taiwan)」の一部であり、「地域的な脅威に対する共通の抑止力として機能する(serve as a shared deterrent against regional threats)」とのことだ。

トランプ大統領はフォックスニューズに対し、「私たちは戦争を望んでいない。現状維持であれば、中国もそれで構わないと思う。しかし、『アメリカが私たちを支持しているから独立しよう』と言うような事態は望んでいない(We're not looking to have wars, and if you kept it the way it is, I think China's going to be OK with that. But we're not looking to have somebody say, 'Let's go independent because the United States is backing us)」と述べた。

アメリカは以前、独立問題に関して姿勢を軟化させたとして中国の反発を招いたことがある。

米国務省はウェブサイトから、2025年2月の台湾独立に反対するワシントンの立場を改めて表明する声明を削除した。北京はこれに対し、「分離主義勢力に誤ったシグナルを送るものだ」と批判した。

当時、台湾駐在の米当局者は「私たちは、いずれの側による一方的な現状変更にも反対すると長年表明してきた」と述べた。

台湾外交部長の林佳龍は、米中首脳会談を注視しており、「台湾とアメリカの関係の安定的な深化と台湾の利益の保護を確保するため」、アメリカをはじめとする各国と良好な意思疎通を維持していると述べた。

林部長は、台湾は常にこの地域の「平和と安定の守護者(guardian of peace and stability)」であったと述べ、中国が「攻撃的な軍事行動と権威主義的な抑圧(military actions and authoritarian oppression)」によってリスクを高めていると非難した。
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トランプ氏、台湾に独立宣言しないよう警告

AFP=時事 5/16() 7:52配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/b6dfa0610fbe746f1253b50ac4af692da2567550

AFP=時事】ドナルド・トランプ米大統領は15日、中国訪問で習近平国家主席に台湾を支持しないよう圧力をかけられた後、台湾に対し正式な独立宣言をしないよう警告した。

習氏にとって重要な問題である台湾の独立宣言について、トランプ氏は反対する姿勢を明確にし、台湾が軍事攻撃を受けた場合に米国が台湾を防衛しなければならない理由を疑問視した。

トランプ氏は米FOXニュースの番組「スペシャル・レポート・ウィズ・ブレット・ベイヤー」で、「私は誰かが独立することを望んでいない。それに、戦争をするために9500マイル(約15300キロ)も移動しなければならなくなることも望んでいない」と主張。

「彼ら(台湾)には冷静になってほしい。中国にも冷静になってほしい」「われわれは戦争を望んでいない。現状維持であれば、中国もそれで構わないと思う」と付け加えた。

米国は中華人民共和国が中国の唯一の合法政府であると承認しており、台湾の正式な独立を支持していないが、歴史的に台湾の独立に反対すると明言することは避けてきた。

米国は台湾関係法に基づき、台湾防衛のために武器を提供する義務を負っているが、米軍が台湾を支援するかどうかについては戦略的曖昧さを維持してきた。

習氏は米中首脳会談で、台湾問題で米側が対応を誤れば、「両国は衝突、さらには対立し、中米関係全体を極めて危険な状況へと押しやる可能性がある」と警告した。

台湾の頼清徳総統は、台湾は既に独立国であり、独立宣言は不要だという立場を取っている。【翻訳編集】 AFPBB News

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 古村治彦です。

 今回のドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席の首脳会談は地味なものとなった。何か大きなサプライズがあった訳でもなく、華やかなイヴェントもなかった。ドナルド・トランプ大統領が何か重大な発言をすることもなかった。習近平国家主席はこれまで通りに慎重な動きに終始した。馬鹿笑いもハグもなかったし、晩餐会で知っている曲が流れたからと言って場も弁えずに踊り出すような馬鹿なこともなかった。世界政治を動かすということは落ち着いた環境で静かになされるものだということを認識させられた。

 首脳会談の内容について具体的な内容は伝わっていない。しかし、今回の米中首脳会談は「対等な超大国間の首脳会談」という、歴史上初の出来事であったことは間違いがない。これまで中国側で実施された米中首脳会談ではもっとアメリカ側に「媚びた」内容になっていた。しかし、今回は非常に控え目であった。アメリカが中国に辞を低くして臨み、中国は過剰に謙(へりくだ)ることなく、丁寧に接遇した。

 米中首脳間の発言で注目されるのは、「トゥキディデスの罠(the Thucydides Trap)」という言葉だ。習近平主席がトランプ大統領に対して、米中両国間はこの「トゥキディデスの罠」に陥らないように注意しなくてはならないと述べた。「トゥキディデスの罠」という言葉を提唱したのは、ハーヴァード大学教授のグレアム・アリソンだ。アリソンはヘンリー・キッシンジャーの後継者として、中国を何度も訪問し、習近平主席をはじめとする最高指導部と会談し、米中関係の維持、改善に努めている。「トゥキディデスの罠」とは、古代ギリシアのスパルタとアテネのペロポネソス戦争のアナロジーであり、既存の覇権国と新興大国との間には望まなくても戦争が起きてしまうということを警告している。アリソンや「トゥキディデスの罠」について詳しくは拙著『トランプの電撃作戦』(秀和システム)をぜひお読みいただきたい。

 すでにこのブログでも書いたが、中国側は台湾問題について、アメリカ側から大きな譲歩を引き出すことができなかった。そのために、イラン戦争停戦に関して、アメリカの求める停戦に関して大きなお土産を渡すことができなかった。台湾に関して、これまで以上に、中国に有利になるような形で姿勢を変更することはいくらトランプ大統領でも難しい。連邦議会の承認も必要になるし、アメリカ政府各部にいる親台湾派勢力の抵抗もある。したがって、そもそもが今回の首脳会談で大々的に発表することはできないだろう。しかし、アメリカ側の姿勢に何かしらの変化が見られるならば(たとえ小さくても)、何かしらの合意がなされたと見ることは可能であろう。

 今回の米中首脳会談は非常に地味であったが、時代の転換点を象徴する非常に重要な出来事であった。このことは間違いない。

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ドナルド・トランプ・習近平首脳会談は驚くほど平凡だった(The Trump-Xi Summit Was Remarkably Banal

-より自信を持つようになっている中国はトランプ大統領の訪問を軽視することを喜んで行っている。

ジェイムズ・パルマー筆

2026年5月15日

『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/05/15/trump-xi-summit-china-us-presidential-visit/

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ドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席は北京の天壇公園(Temple of Heaven)を訪問した(2026年5月14日)

今週、中国の報道を読み、見ていた人なら、ドナルド・トランプ米大統領の北京訪問を全く見逃していたとしても仕方ないことだ。

トランプ大統領が到着した水曜日、国営英字紙『チャイナ・デイリー』紙の一面は、習近平国家主席がタジキスタン大統領と握手する写真で埋め尽くされた。一方、中国共産党機関紙『人民日報』紙は、トランプ大統領の訪問に関する論評を3面まで追いやった。

中国で最も視聴率の高い夜のニュース番組「新聞聯報」は、月曜日にわずか12秒の報道でトランプ大統領の訪問を報じた。比較のために付け加えると、その後には「長江デルタの統合的発展は新たな突破口を開き続けている」と題した約6分間の特集が続いた。水曜日のトランプ大統領と習近平国家主席の会談は、放送時間でわずか2分半しか割かれず、13番目に位置づけられた。

結果的に、中国側がドラマチックな演出をほとんどしなかったのは、むしろ適切だったと言えるだろう。トランプ大統領の訪問は退屈極まりないものだった。習主席は政治的な決まり文句に終始し、台湾、民主政治体制と人権(democracy and human rights)、中国の「方途とシステム(path and system)」、そして「発展の権利(development right)」といったお決まりのレッドライン(red lines)について語った。「発展の権利」とは、ワシントンに押し下げられることなく、世界経済の階段を駆け上がる中国の能力を指す。

習主席はまた、お気に入りの話題にも触れた。二国間関係は競争(competition)ではなく安定(stability)でなければならない。既存の強大国と新興大国の間の対立というトゥキディデスの罠(the Thucydides Trap)を回避しなければならない。アメリカと中国は共に、常に未来に向かって前進し続けなければならない。

トランプ大統領と習主席は、貿易に関するいくつかの小さな譲歩、例えばアメリカ産食肉処理場の中国への輸出許可などを除けば、実質的な合意はほとんどなかったようだ。しかし、それもすぐに覆されたようだ。(この明らかな逆転は、突然の不遇の兆候ではなく、すでに政府の保護を求めていた中国の農業関係者による迅速なロビー活動の結果だと解釈すべきだろう。)

中国がボーイング機を購入するという約束など、期待されていた合意は会談前の噂を下回り、市場を失望させた。イラン、台湾、日本、その他の地政学的に係争中の問題については、進展はおろか、本格的な議論すら見られなかった。トランプ大統領は習近平国家主席がイランへの武器供与を「強く(strongly)」拒否したと述べたが、中国によるイランへの軍事支援は既に水面下で行われているため、この発言は何の意味も持たない。

しかし、過去の米大統領の中国訪問は、たとえ重要な成果がほとんど得られなかったとしても、中国の厳しく統制されたメディアで大々的に報じられていた。なぜ今回の訪問について、北京はこれほど沈黙を守ったのだろうか? 一つの理由は予測不可能性(unpredictability)だ。過去の米大統領は中国訪問の際、事前に合意された議題に沿って行動し、発言も抑制的かつ慎重だった。トランプ大統領にそのような姿勢を期待する者は誰もいない。

過去の訪問では、中国メディアは事前に準備を整え、万が一事態が悪化した場合に自らの立場が危うくなるリスクを負うことなく、事前に報道することができた。今回は、どの新聞編集者もメディア検閲官も、トランプ大統領の訪問を肯定的に報じれば、大統領の激しい発言後に「重大な政治的過ち(serious political mistakes)」と非難されることを恐れた。

過去の大統領訪問の際も、中国指導者たちはワシントンからの承認を通じて自国の正当性(validation)を確立しようとした。アメリカは世界的な超大国(the global superpower)として認められ、中国は対等な立場で寛大なホスト国(a peer and a gracious host)として振る舞うことで、自国民の目から見て地位を高めた。米大統領はもちろん、それほど地位の高くない要人でさえ訪れたレストランは、たちまち人気スポットとなった。今回、トランプ大統領の随行員の一人である台湾系アメリカ人のIT界の大物ジェンスン・フアンだけが、こうした人気を集めることができた。

ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマの中国訪問は、メディアで大きく取り上げられ、国民の強い関心を集めた。2017年のトランプ大統領の初訪問も同様だった。しかし今回は、イラン戦争におけるアメリカの失敗を皮肉るコメント(sardonic commentary over U.S. failure in the Iran war)や、トランプ大統領の従順で礼儀正しい態度を称賛する声(some praise for Trump’s submissive and mannered approach)を除けば、ソーシャルメディアのユーザーたちでさえ関心を示さなかったようだ。(中国のソーシャルメディアは、重要な国賓訪問の際によくあることだが、いつも以上に検閲されていた。)

中国はもはやアメリカからの承認を必要としていない(China no longer needs that validation from the United States)。製造業超大国(a manufacturing superpower)としてだけでなく、技術・科学大国(a technological and scientific giant)としても、その世界的な優位性は十分に確立されている。一方、アイソレイショニズム的で同盟諸国に敵対的、そして軍事的に苦戦している政権下で、アメリカの世界的なリーダーシップはかつてないほど不安定に見える。長年のパートナー国でさえ、ワシントンに対抗するために北京に接近している。

実際、今回の訪問中、承認を求めていたのはトランプ大統領の方だったようだ。しかも、国家レヴェルではなく、個人的な承認を求めていた。トランプ大統領は習近平国家主席を惜しみなく称賛し、フォックスニューズに対し、「ハリウッドに行って、映画に出演する中国の指導者を探しても・・・彼のような人物は、容姿も含めて、どこにも見つからないだろう」と語った。

トランプ大統領から予想外の称賛を受けた他の人物とは異なり、習主席はカリスマ性で知られているわけではない。中華人民共和国建国の父の一人の息子である習近平は、党の長老たちが「太子党(princelings)」に対して一般的に警戒心を抱いていたにもかかわらず、最高指導者の地位に就くことを許された。その理由の1つは、彼らが習近平を、同じく太子党出身の薄熙来のような危険なカリスマ性を持たない、堅実な共産党員だと誤解していたからである。

トランプ大統領は強権的な指導者を好むことで知られ、中国の独裁体制をしばしば称賛してきたが、今回は習近平から何か特別なものを求めていたようだ。奇妙なことに、トランプ大統領は「とルース・ソーシャル(Truth Social)」における投稿で、習近平がアメリカを「おそらく衰退国家(perhaps being a declining nation)」と「上品に(elegantly)」表現したと述べた。これは会談の中国側の発表には記載されていない。トランプ大統領が過去の発言を指していたのか、あるいは想像上の発言だったのかは不明だが、いずれにせよ、トランプ大統領は習近平がバイデン政権のことだけを指していたに違いないと示唆した。なぜなら、今のアメリカは「世界で最も熱い国(the hottest Nation anywhere in the world)」だからだ。

トランプ大統領の卑屈な態度(Trump’s obsequiousness)は、米中間の力関係と認識の真の変化を反映しているのかもしれない。しかし、これは地政学的な問題というよりは心理的な問題であり、支持率の低下とイラン戦争をめぐる弁明の強化によって、トランプ大統領自身の不安が高まっていることの表れとも言えるだろう。

いずれにせよ、米中関係の相対的な安定は今のところ揺るぎないように見える。その大きな理由は、米中両国とも他国との紛争に巻き込まれ、国内経済も停滞しているため、戦争を望む余裕がないからだ。

※ジェイムズ・パルマー:『フォーリン・ポリシー』誌副編集長。Blueskyアカウント:@beijingpalmer.bsky.social

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首脳会談からドナルド・トランプと習近平が求めるもの(What Trump and Xi Want From Their Summit

-両首脳は貿易、台湾問題、イラン核戦争について協議すると予想されている。

ジェイムズ・パルマー筆

2026年5月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/12/trump-xi-china-summit-visit-taiwan-trade-japan/

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ワシントンのホワイトハウスを出発する際に報道陣に語りかけたドナルド・トランプ米大統領(2026年5月12日)

今週に北京で開催されるドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席による待望の首脳会談についてプレビューする。

ドナルド・トランプ米大統領は水曜日に北京に到着し、習近平中国国家主席と2日間の首脳会談を行う予定だ。現職の米大統領による中国訪問は、2017年(トランプ大統領の1期目)以来となる。

こうした会談に歴史的な意義を見出したくなるのは当然だろう。特に、1972年のリチャード・ニクソン元大統領の中国訪問が大きな転換点となったことが記憶に残っているためだ。実際には、米大統領は中国大統領と定期的に会談しており、その結果も通常は定型的だ。しかし、今回の会談間隔は異例に長い。

ジョー・バイデン前大統領は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる二国間関係の悪化のため、在任中に中国を訪問することはなかった。トランプ大統領にとって今回の北京公式訪問は2回目となり、歴代大統領の訪問回数とほぼ同水準となる。バラク・オバマ大統領は在任中に3回、ジョージ・W・ブッシュ大統領は4回、ビル・クリントン大統領は1回北京を訪問している。

習近平国家主席は、13年間の在任期間中にアメリカを公式訪問したのは4回だが、他の行事の場で歴代大統領と会談したことは数多くある。

しかし、これらの首脳会談は、太平洋のどちら側で開催されようとも、依然として機会となっている。例えば、2015年には、オバマ大統領と習近平国家主席はワシントンへの公式訪問中に、重要なサイバーセキュリティ協定に合意した。では、両首脳はこの首脳会談で何を求めているのだろうか?

トランプ大統領は明らかに、何らかの象徴的な貿易協定または投資協定を狙っている。会談は主に米財務省が主導しており、トランプ大統領は多数の企業CEOを同行させている。彼の1期目の対中政策を特徴づけていた構造改革要求やタカ派的な優先事項の多くは姿を消し、政府内の国防・安全保障専門家は首脳会談に向けた準備段階で蚊帳の外に置かれている。

新たな貿易協定が締結されれば、2020年に合意された「第一段階(Phase One)」の合意を必然的に想起させるだろう。この合意では、中国は2000億ドル相当のアメリカ製品を購入すると約束したが、新型コロナウイルスの影響もあり、その約束は果たされなかった。今回中国が約束を履行するかどうかは、トランプ大統領にとって見かけ上の印象ほど重要ではないだろう。彼は、見出しを飾り、自身の支持率低下を相殺できるような象徴的な数字を求めているのだ。

注目すべきは、人権問題がアメリカの議題から完全に抜け落ちていることだ。トランプ政権下では人権は事実上死文(a dead letter)となっている。せいぜい、交渉担当者が求めるのは、中国の出国禁止措置の対象となっている少数のアメリカ市民の釈放くらいだろう。別の政権であれば、サイバーセキュリティも議題に上がるはずだ。特に昨年、ソルト・タイフーン・ハック(the Salt Typhoon hack)がワシントンに衝撃を与えた後ではなおさらだ。

習近平国家主席の優先事項はやや異なる。関税引き下げは歓迎すべきことではあるが、必須ではない。中国はトランプ政権の貿易戦争を比較的容易に乗り切り、昨年の輸出額は過去最高の3兆8000億ドルに達した。習主席はむしろ安全保障面での譲歩を求める可能性が高く、特に注目すべき分野が3つある。

第一に、中国は短期的には、自国経済と湾岸諸国の経済を圧迫しているイラン戦争の終結を望んでいる。中期的には、中国は、トランプ大統領が日本の高市早苗首相に対し、中国による台湾侵攻は日本の軍事介入を正当化するという立場を撤回するよう働きかけることを望んでいる。

最後に、中国は長期的には、台湾に関するアメリカの立場を恒久的に変更することを望んでおり、これには武器売却の停止、さらには中国による侵攻があった場合のアメリカの介入の可能性も含まれる。

最初の目標は、少なくとも中国の圧力だけでは実現しそうにない。2つ目の目標は、トランプ大統領が昨年、北京の意向を代弁して高市首相に電話をかけたことを考えると、より現実的だ。しかし、それが東京の姿勢に影響を与えるとは限らない。高市首相は、政策問題に関しては自らの立場を堅持しつつ、トランプ大統領を巧みに取り込む手腕を発揮してきたからだ。

台湾に対するアメリカの対応は大きな問題であり、習近平国家主席は、中国がアメリカに対して圧力をかける姿勢を昨年、アメリカが中国に対して圧力をかける姿勢よりも強かったことを考えると、優位な立場で首脳会談に臨むことになる。中国の重要鉱物資源に関する脅威はホワイトハウスを動揺させ、米中両国間の報復関税の応酬が急激に沈静化するきっかけとなった。

習近平はトランプが媚びへつらいを好むことを理解しているものの、小国が時折見せるような露骨な迎合行為(the overt displays of deference)には手を染めない。ここで金冠を戴くようなことはあり得ない。習近平自身の国内イメージにとって、トランプと対等(equal)、あるいはそれ以上の存在(superior)として見られることが重要なのだ。

一方、トランプは中国に対する経済制裁の行使にますます消極的になっており、エヌヴィディア(NVIDIA)のジェンスン・フアンCEOの働きかけを受けて、高度な人工知能チップの輸出をほぼ全面的に容認した。中国は、主要分野における依存度と安全保障上の弱点を軽減する能力を高めている。

しかし、台湾問題でアメリカから実質的な譲歩を引き出す可能性は低い。既に述べたように、アメリカが台湾防衛を放棄する代わりに中国が譲歩するという、信頼できる「大取引(grand bargain)」は成立し得ない。トランプ大統領の約束だけでは信用できず、事実上台湾を明け渡すという拘束力のある約束は、アメリカ連邦議会を通過することは決してないだろう。

それでも、北京は象徴的な勝利を収めることができるかもしれない。中国当局は台湾に関する用語に極めて重きを置き、しばしば言葉のニュアンスを他国の政治的立場を示す指標として解釈する。こうした好ましい表現は、指導者たちが愛国心を示そうとするにつれて、時代とともに変化していく。

例えば、2010年代初頭、中国の国営メディア幹部は、英語の報道において「台湾人(Taiwanese)」という呼称を用いることは、台湾を国家として認めることを意味するとして、使用を禁止した。北京は状況に応じて、台湾を「台湾島(Taiwan island)」「台湾省(Taiwan province)」「台湾地域(Taiwan region)」などと使い分けることができる。

トランプ大統領に中国の立場を反映した表現、例えば「アメリカは台湾が中国の一部であることを認める(the United States accepts that Taiwan is part of China)」といった表現を使わせるのは容易かもしれない。しかし、これは長年にわたる複雑なアメリカの政策とは相容れない。アメリカの政策は「一つの中国(one China)」という概念と中国共産党の正統な代表を認めつつも、台湾が中国の一部であるか否かについては公式な立場を取らず、中国が台湾を中国の一部と主張する立場を容認しているに過ぎない(no official stance on whether Taiwan is a part of China, although it acknowledges China’s position that it is.)。

トランプ大統領がこのような発言をすれば、台北では警戒感が高まり、ワシントンでは超党派の反発を招くだろう。台湾支持は共和党、特に連邦上院議員の間で強く、議員たちは首脳会談を前に既に懸念を表明している。

こうした反発がトランプ大統領にとってどれほど重要かは不明だ。彼は来月には容易に立場を撤回する可能性があり、そもそも立場変更を認めない可能性もある。

※ジェイムズ・パルマー:『フォーリン・ポリシー』誌副編集長。Blueskyアカウント:@beijingpalmer.bsky.social

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 下記論稿は米中首脳会談が実施される前に発表された論稿である。ドナルド・トランプ大統領の3日間にわたる(実質は2日)北京訪問は、中国とアメリカが「peer(対等、同僚)」の関係にあり、世界の「G2」であるということを明確に示す機会となった。中国側にとっての最大のおもてなしは、中国最高指導部が職務を行い、居住する「中南海」にトランプ大統領を招き入れ、昼食やお茶を共にしながら会談を行ったことであろう。歴代のアメリカ大統領でいえば、キャンプ・デイヴィッド、トランプ大統領であれば邸宅マール・ア・ラーゴに外国首脳を招き入れるようなものだ。

今回の首脳会談では、共同宣言や共同記者会見は実施されなかったので、会談の中身を詳しく知ることはできないが、イラン問題についてアメリカ側から積極的な働きかけがあり、台湾問題については中国側から積極的な働きかけがあったと考えられる。アメリカとしては、自分たちが不利な状況のままで膠着状態のイラン戦争を早く停戦させたい。そして、中東地域から離脱したい。中国としては「ほうほう、それはお困りですね。私にできることはして差し上げたいですが、私どもにも問題がありましてね」ということで、台湾問題に関して、アメリカから台湾有事の際にアメリカ軍を出動させないという確約を求めたいところだ。イラン問題解決を条件にして、台湾有事不介入確約を中国は求めたはずだ。

 しかし、これがうまくいかなかったのだろう。アメリカ政界内には強硬な反中、新台湾勢力がいる。民主、共和両党にまたがっている。トランプ政権だけでこれをどうこうすることはできない。イラン戦争停戦と天秤にかけて、台湾に関して重大な譲歩をするところまでは追い込まれていないということになる。中国側もそれならばイラン戦争に関して、私たちにできることは限られますねということになる。そうなると、米中首脳会談の成果はゼロどころかマイナスになって、トランプが何をしでかすか分からない。そこで、飛行機や大豆を買ってやって宥める、あやすということをして、「経済面で大きな進展があった」というお土産を持たせてあげたということになる。

 「お土産をいただいて、国内でその成果を誇る」という形は、これは朝貢である。日本も歴史上、中国の歴代王朝に朝貢をしていた。朝貢とは自分たちが持っていたものよりも価値のあるものを貰って帰ってくることだ。今回の米中首脳会談はアメリカ側による朝貢だというのは言い過ぎになってしまうだろうが、実質はそうだ。トランプ大統領としては経済的成果を強調して、支持率を少しでも上げたいところだ。関連して重要なのは、9月に習近平夫妻をアメリカに招待したことだ。アメリカの中間選挙前、中国の国慶節前ということで、ここでも何かしら成果の強調(中国によるアメリカへの投資など、中国とアメリカが台頭になっていることの強調)が行われるということになるだろう。この時に、イラン戦争停戦に関して何かの動きがあれば、「世界をリードする対等な超大国中国とアメリカが平和をもたらす」ということになる。しかし、イラン戦争に関しては9月までとは言わずに、一日も早い停戦が望まれるところであるが。

(貼り付けはじめ)

対中強硬派だったトランプに何が起こったか?(What Happened to Trump the China Hawk?

-アメリカ大統領ドナルド・トランプは緊張緩和(detente)と交渉合意(dealmaking)の姿勢で北京へ向かう。

リシ・イエンガー筆

2026年5月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/12/trump-china-hawk-xi-jinping-covid/

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ドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席(右)が北京の人民大会堂で開かれた公式晩餐会(a state dinner)に出席(2017年11月9日)

ドナルド・トランプ米大統領が約10年前に最後に北京を訪問して多くのことが起きたが、そうでないと考える人がいても無理はない。

トランプ大統領は水曜日に中国の首都北京へ向かう。今回の訪問は、平和共存(peaceful coexistence)、巨額のビジネス取引(business deals with big dollar amounts attached)、習近平中国国家主席への称賛(praise for Chinese President Xi Jinping)といった、2017年の前回訪問時と同様の、イメージを重視したものになると予想されている。

しかし、この2回の訪問の間、トランプ大統領は2018年7月に始まった数年にわたる貿易戦争、中国のハイテク企業ファウェイ(Huawei)に対する長年にわたる世界的な攻勢、中国のソーシャルメディアプラットフォームティックトック(TikTok)の禁止、そして中国企業がアメリカの先端技術にアクセスするのを阻止するための輸出規制などによって、対立を激化させてきた。

そして、もちろんのことだが、2019年末に中国で発生した新型コロナウイルス感染症の流行は、トランプ大統領の北京に対する怒りを決定づけた転換点となったようだ。

「特に、パンデミックが世界経済を完全に崩壊させ、大統領の再選の可能性をほぼ確実に潰してしまうという認識が広まったことがきっかけだった」と地政学的リスクアドヴァイザリー会社ガーノート・グローバルのマネージングディレクターであるライザ・トービンは語っている。第一次トランプ政権の国家安全保障会議の中国担当ディレクターを務めたトービンは、トランプのタカ派への転換(Trump’s hawkish turn)を間近で見てきた。「彼は習近平がパンデミックを早期に封じ込められなかったことを非難し、その後、この関係はうまくいっていないので、デカップリングする時だと判断した」と彼女は付け加えた。「そしてその時点で、彼はスタッフにデカップリング政策を推進する権限を与え、それが任期の残りの期間、私たちが実行したことだった」。

トランプは再選に関して正しかった。2020年11月の選挙で落選し、民主党のジョー・バイデンが後任となった。バイデンはホワイトハウスに入るにあたり、トランプがワシントンの国際的地位に与えた損害を修復すると公約した。しかし、対中政策に関しては、バイデンはトランプの路線を踏襲し、多くの技術輸出規制を強化し、中国製自動車の輸入禁止といった新たな政策を導入し、実際にTikTokの禁止法に署名した。

バイデン政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務め、対中政策の主要立案者の1人だったジェイク・サリヴァンは次のように語っている。「トランプ政権時代を通して、米中関係の中核的な原則として、『関与(engagement)』というスローガンが『競争(competition)』というスローガンに取って代わられたことを認識した。トランプ政権時代、私たちは効果的に競争できると同時に、その競争を効果的に管理できる戦略を策定することに時間を費やした」。

その結果、過去6年間で、中国がアメリカにとって最大の敵対国であり国家安全保障上の脅威であるという超党派のコンセンサスがワシントンで形成され、民主党と共和党双方を駆り立ててきた。

しかしながら、それが今もトランプ大統領を駆り立てているかどうかは定かではない。トランプ政権はこの1年間で、テクノロジー大手エヌヴィディア(Nvidia)が製造する一部の先端半導体チップの中国への販売を承認し(ただし、実際に販売されたチップはまだない)、中国の技術的脅威を担当する商務省の主要人員を削減し、国家安全保障会議を大幅に縮小した。その中には、中国関連の専門家を10人以上解任することも含まれている。さらに、TikTokに対しても方針転換し、中国の親会社であるバイトダンス(ByteDance)が株式とアルゴリズムの管理権を維持することを認める合意を締結し、TikTokのアメリカでの事業継続を認めた。

トランプ大統領は習近平国家主席への称賛を惜しみなく続け、月曜日の記者会見では習主席を「素晴らしい人物(amazing man)」と呼び、中国を「鉄の拳で(with a pretty iron fist)」統治する手腕に感嘆を示した。また、トランプ大統領は(今回が初めてではないが)習主席との会談で台湾への武器売却について協議する意向を示した。これは、数十年にわたり米台関係を支えてきた「6つの保証(Six Assurances)」のうち2つ目を破ることになる。

​​それでは、トランプ大統領の2期目における明らかな心変わりは何が原因なのだろうか?かつての対中強硬派のトランプ大統領はどうなったのか? そして、このより融和的な姿勢は、今週後半に予定されている習主席との会談にどのような影響を与えるのだろうか? これらの疑問を解明するため、『フォーリン・ポリシー』誌は、トランプ政権内部の協議内容を匿名で語ることを希望した現職および元政府関係者十数名と、長年中国情勢を注視してきた専門家数名に話を聞いた。トランプ大統領の2期目における対中政策の転換は、彼の性格(personality)、プラグマティズム(pragmatism)、そして優先事項(priorities)によって左右されるものだということが明らかになった。

トランプ政権1期目と2期目の対中戦略の最大の違いは、中国問題にとどまらず、トランプ政権の統治方法の変化にもある。トランプ大統領は、1期目と比べて意思決定をはるかに中央集権化し、専門知識よりも忠誠心を重んじ、ごく少数の側近のみを信頼するようになった。その中心人物は、不動産開発業者出身で友人でもあるスティーヴ・ウィトコフと、娘婿のジャレッド・クシュナーだ。彼らはガザ地区、ウクライナ、イランにおける3つの戦争終結に向けた交渉の中心人物として活躍してきた。

しかし、ウィトコフとクシュナーが関与していない唯一の分野は中国問題だ。スコット・ベセント財務長官が主導権を握り、世界最大の2つの経済大国間の「安定(stability)」と「均衡(equilibrium)」を提唱している。「リスクを軽減する必要があるが、デカップリングは避けるべきだ」とベセント長官は先月『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙に語った。

しかし、第二次トランプ政権では、トランプ自身の意見以外で中国問題に関して発言する余地ははるかに少なくなっている。第一次トランプ政権の国務省で中国政策を担当し、第二次政権で昨年4月まで国家安全保障会議に所属していたデイヴィッド・フェイトは次のように語っている。「トランプ大統領は最初の任期中、政権全体とホワイトハウスのあらゆる部署から、中国とのあらゆる競争に関するアイデアを提案する、かなりボトムアップ型の政策プロセスを監督していた。2期目では最初の任期とは異なるやり方で政権運営を行っている。それは全体的に言えることであり、中国に関しても同様だと思う」。

トランプ政権の幹部には依然として伝統的な対中強硬派が何人かいるものの、彼らは概して蚊帳の外に置かれ、発言権を奪われている。「2期目のトランプ大統領が1期目とは異なる対中姿勢を取っていることを示す一例として、大統領の外交・国家安全保障問題担当大統領補佐官がマルコ・ルビオであることが挙げられる。ルビオは過去10年間、ワシントンで最も雄弁で、あらゆる面で対中強硬派として知られていたが、現政権では対中活動は極めて限定的かつ選択的で、ほとんど沈黙に近い形でしか行っていない」とある元トランプ政権高官は語った。この人物は続けて、「ルビオは対中問題に非常に真剣かつ思慮深く、トランプ大統領が望み期待する国家安全保障問題担当大統領補佐官兼国務長官になろうと真剣に取り組んでいる。彼は大統領が望む側近でなければならない」と述べた。

特に対中問題において、トランプ政権はこれまで以上にトランプ大統領自身から直接指示を受けている。国務省報道官トミー・ピゴットは『フォーリン・ポリシー』誌に次のように語っている。「大統領が外交政策を策定し、政権がそれを実行する。ティームメンバー間の素晴らしい協力関係と個人的な関係は、大統領のマネジメント能力とリーダーシップ能力の証拠となっている。そして、歴史的な成果は紛れもない事実だ。マルコ・ルビオ国務長官は、より安全で、より強く、より繁栄したアメリカの実現に向けて取り組むトランプ大統領政権の一員であることを光栄に思っている」。

トランプ大統領のより穏健なアプローチを後押しするもう1つの要因は、北京がワシントンに対して反撃する意思と、実際に大きな打撃を与える能力を持っていることだ。

トランプ大統領は、2025年2月に中国製品に10%の関税を課し、その後複数回にわたって引き上げ、最終的には145%にまで引き上げるという、1期目の終盤と同様のやり方で2期目を開始した。

しかし今回は、中国は強力な反撃に出た。4月には、世界生産を支配しているレアアース鉱物数種に輸出規制を課した。これらのレアアースは、アメリカが依存する多くの技術や軍事用途において不可欠な要素である。この強硬な動きは、ほぼ即座に一連の協議につながり、6月にはアメリカが一部の輸出規制を緩和する代わりに、中国が重要鉱物の採掘許可を再開するという合意に至った。それから約4カ月後、トランプ大統領は2期目に入って初めて習近平国家主席と韓国の釜山で直接会談し、より広範な貿易休戦協定(a more expansive trade truce)を結んだ。

「実際、政権は北京が解放記念日の関税措置に対し、重要鉱物資源への攻撃的な対応で応じたことに、ほとんど不意を突かれた形だった」とトランプ政権の元高官は述べた。「大統領や側近の多くは、この事態に大きな懸念を抱き、中国との関係をより慎重に進める必要があると認識した。そして、この考えは昨年の政権運営の多くを説明している」。

ジェイコブ・ヘルバーグ米国務次官(経済成長・エネルギー・環境担当)は、トランプ政権は現在、中国との関係安定維持に注力すると同時に、自国のサプライチェインの多様化にも力を入れていると述べた。ヘルバーグは、重要鉱物資源を含むハイテクサプライチェインの安全確保を目指すアメリカ主導の国際協力枠組みである「パックス・シリカ(Pax Silica)」構想を統括している。この構想には現在、ノルウェー、フィンランド、オーストラリア、イスラエル、インド、日本、フィリピンなど15カ国が加盟している。

ヘルバーグは、中国によるレアアースの兵器化は、アメリカだけでなく世界各国にとって「前例のない転換点(unprecedented watershed)」だと述べた。続けて、「政権は、これは全く容認できないと明確に表明し、当然ながら多くの協議を経て、より良い均衡を見出すことができた。それが釜山合意につながり、現状は安定している」とも語った。

ヘルバーグは、こうした変化がトランプ大統領の政策における大きな転換点であるという見方を否定し、次のように述べた。「マスコミは、指導者の心理や国家元首の頭の中で何が起こっているのかを過剰に解釈し、憶測しようとする傾向がある。現在、世界情勢が不安定な中で、世界最大の経済大国である米中両国の安定は、世界の利益にかなう。政治的安定を維持しながら、経済的に平和的に競争することは可能だ。大統領はこの点について明確に述べており、矛盾はないと考える」と語った。

トランプ大統領の見解は、昨年12月に発表された国家安全保障戦略(national security strategy)で概説されたように、中国を「ほぼ同等の国near-peer()」と広く認識するようになったことによっても強化されている。この戦略は、ワシントンがあらゆる場所で、あらゆることを同時に行おうとする姿勢から脱却し、自国の勢力圏(spheres of influence)を優先することを強調している。今年初めのヴェネズエラ侵攻決定や、キューバの政権交代を画策したとされる動きは、その典型例と言える。

ワシントンDCにあるアメリカン・エンタープライズ研究所の研究員で、バイデン政権時代に国務省の米中関係担当顧問を務めたライアン・フェダシウクは次のように述べている。「大統領の外交政策を概ね理解する最良の方法は、彼が勝てる戦いを選んでいると考えることだ。中国は、現政権にとって勝てる戦いの対象ではない」。

しかしトランプ大統領は、中東地域における新たな政権転覆工作にも苦慮しながら北京へ向かう。2カ月以上前に開始したイランとの戦争は、今や脆弱な停戦協定にかかっている。そのため、中国との平和維持は喫緊の課題となっている。2017年の訪中時に習近平国家主席に対し北朝鮮の核兵器開発計画放棄を迫ったように、トランプ大統領は今回も習主席に圧力をかけ、中国のもう1つの同盟国であるイランに圧力をかけると見られている。イランは中国にとって主要な石油供給国であり、国際的なパートナーでもある。トランプ大統領はこれまでも繰り返し、イランを交渉のテーブルに着かせるために北京がより多くの行動を取るよう促してきた。

共和党のリンジー・グラハム連邦上院議員は火曜日の連邦上院公聴会で、トランプ大統領に同行するピート・ヘグセス国防長官に質問した際に次のように述べた。「トランプ大統領、中国を訪問する際には、あなたが話をする相手がロシアとイランを支援している人物であることを認識すべきだ」。グラハム議員はさらに、「世界中のどの国よりも、中国こそがこの戦争を終結させる上で最も大きな影響力を持つことができる国だ」と続けた。

イラン問題以外で、トランプ大統領にとって今週の首脳会談の重点は、積極的な取引を通じて中国との関係をさらに正式なものにすることにあるだろう。アップルのティム・クックCEOやテスラのイーロン・マスクCEOなど、中国とのつながりが深い企業幹部10数名がトランプ大統領に同行し、ボーイング機やアメリカ製農産物の中国による購入に関する重要な発表が期待されている。

ハーヴァード大学ケネディ・スクールの創設学部長で政治学教授のグラハム・アリソンは、「トランプ大統領はまさにビジネスマンの視点からこの問題に取り組んでいる」と述べ、「基本的にはライヴァル関係にあるが、非常に相互依存(interdependence)が強く、その相互依存は双方にとって有益であるべきだと考えている」と続けた。

アリソンは、トランプ大統領や習近平国家主席が「和解(rapprochement)」や「緊張緩和(detente)」といった言葉を使うとは予想していないが、「新たなパートナーシップ、あるいは素晴らしいパートナーシップの始まりと呼ぶかもしれない(might call this a new partnership or the beginning of a beautiful partnership)」と述べた。

このパートナーシップがどれくらいの期間、機能し続けるかはまだ分からない。ここ数週間、トランプ政権からはタカ派的な動きがいくつか見られ始めており、イラン産原油を処理する中国の精製業者に対する二次制裁や、4月下旬にホワイトハウスがディープシーク(DeepSeek)などの中国製AIモデルの訓練において中国が「アメリカ産業の革新技術を組織的に抽出し、模倣している」と非難する覚書などが含まれる。

前述のトービンは次のように語っている。「数カ月前までは、『中国』という言葉を口にすることさえ許されなかった。休戦協定があったので、中国を公然と批判することさえ許されなかった。しかし、今は明らかに状況が変わった。中国は現在、休戦協定を破るような重大な行動は控えつつも、より一般的な国家安全保障上の行動に積極的に関与している」。

トービンは、中国はおそらくこの慎重な姿勢を維持しようとするだろうと付け加えた。その一因として、トランプ大統領と習近平国家主席とのさらなる首脳会談の開催を模索している。習主席は今年後半にワシントンを訪問する予定であり、両首脳による追加会談も視野に入っている。

トービンは次のように述べている。「中国は、トランプ大統領をこうした一連の対話に引き込むことができれば、成功とみなすだろう。なぜなら、トランプ大統領が他国の首脳との直接会談をいかに重視しているか、そして首脳会談に向けて官僚主義的な動きを抑える傾向があることを、中国は既に認識しているからだ。もし彼らが、より多くの会合を開くという確約を取り付け、トランプ陣営に新たな輸出規制、新たな関税、新たな投資規制などを保留させるような心理的な制約を課すことができれば、それは成功と言えるだろう」。

※リシ・イエンガー:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Blueskyアカウント: @iyengarish.bsky.socialXアカウント:@IyengarishInstagramアカウント:@iyengar.rishi

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 古村治彦です。

 アメリカ一極支配体制がすでに終焉を迎えつつあるということを私たちは日々目撃している。毎日毎日の報道ではどうした、こうしたという細かい動きが報じられるが、少し長いスパン、数年のスパン、数十年のスパンで見ていけば、アメリカは国力を大幅に低下させ、世界を支配する力を失いつつあることは明らかだ。

 2022年のウクライナ戦争によってはっきりしたのは、「西側諸国(the West、ジ・ウエスト)」対「西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」の二極構造だ。ロシアに侵攻されたウクライナを西側諸国が支援し、ロシアに対しては結束して経済制裁を加えるという構図になったが、ロシアは戦争を継続できた。これは、ロシアに対して、積極的ではないが、西側以外の諸国が陰ながら支援を行ってきたことが理由の一つに挙げられる。さらに、イラン戦争において、「西側諸国」を率いるアメリカの世界支配の正統性にまで疑義が出ている。

 中国とロシアをはじめとする西側以外の国々は経済成長が進み、これから世界において重要な役割を果たすようになっていく。その中核がBRICS(拡大されたBRICS)であり、G20に入っている菱西側諸国である。一方で、欧米に日本を含む西側諸国は少子高齢化がますます進行し、経済力を失い、世界の中心的な役割を担えなくなっていく。拡大BRICSを見ると、それぞれの地域の中心的な諸国が入っている。これらがそれぞれの地域で大国として主導的な役割を果たすようになる。
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拡大BRICS
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G20諸国

 現在から約15年後の2040年には世界の状況は大きく変化しているだろう。1945年に第二次世界大戦が終結し、2045年で100年、中国が西洋(イギリス)に敗れ、屈辱の苦しい時代に入ったアヘン戦争開戦からは2040年で200年、屈辱的な不平等条約となった天津条約からは2042年で200年ということになる。2040年から2045年となるとまだ先のようであるが、それまでの20年ほどという期間は、世紀単位のスパンで見れば、短い期間とも言える。西側諸国の衰退、西側以外の国々の経済成長と台頭は進んでいるだろう。そうした中で、アメリカ一極支配は終わり、「そんな時代もあったね」と、有名な歌の歌詞にあるセリフを私たちは話していることになるだろう。下記論稿のサブタイトルの通り、「10年後、世界は大きく様変わりしているだろう」。

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トランプ後の世界における3つのシナリオ(Three Scenarios for a Post-Trump World

―10年後、世界は大きく様変わりしているだろう。

ハル・ブランズ筆

2026年3月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/23/post-trump-world-order-cold-war-spheres-of-influence/?tpcc=recirc_more_from_fp051524

イタリアの哲学者アントニオ・グラムシは1930年に次のように記した。「旧世界は滅びつつあり、新世界は生まれようとあがいている(The old world is dying, and the new world struggles to be born)」。マルクス主義の信条を持つグラムシだが、トランプ時代にも違和感を覚えるだろう。ここでいう旧世界とは、第二次世界大戦後、アメリカ合衆国が西側諸国に築き上げ、冷戦勝利後にグローバル化を目指した国際秩序(the international order that the United States built in the West after World War II and then sought to globalize after its victory in the Cold War)のことである。この計画は、世界を変えるほどの平和、繁栄、そして自由をもたらした。しかし今日、旧秩序はその役割を終えようとしている。

長年にわたり、修正主義国家、特に中国とロシアは、この秩序を徐々に侵食してきた。そして今、アメリカ合衆国もまた、この秩序と戦っているように見えることがある。10年後、世界は大きく様変わりしているだろう。しかし、この過渡期の先に何が待ち受けているのか、新しい世界がどのような形をとるのかは、まだ誰にも分からない。

一つの可能​​性は、冷戦時代を彷彿とさせる二極世界シナリオ(a two-worlds scenario reminiscent of the Cold War)、すなわち世界がワシントンと北京が率いる二つの陣営に分断されるシナリオだ。二つ目の可能性は、二つの陣営ではなく、複数の帝国が跋扈する時代(an age not of two blocs but of several empires)、すなわち様々な勢力が地域的な勢力圏を掌握していく(an array of potentates capture regional spheres of influence)時代だ。三つ目の可能性は、自力救済の世界(a self-help world)、すなわちアメリカの行動が略奪的になり、システムが無政府状態の深淵へと陥る世界(U.S. behavior turns predatory and plunges the system into an anarchic abyss)だ。

現状がこれほど不安定に感じられるのは、これらのシナリオがどれも現実味を帯びており、しかもそれぞれが、葛藤を抱える超大国の外交政策によって支えられているからだ。多くのことが不確定要素であり、今後のアメリカの決断と選挙サイクルに大きく左右される。しかし、この過渡期(interregnum)の先に何が待ち受けているのかを探ることは、たとえ最良のシナリオであっても、私たちがこれまで経験してきた世界よりもさらに分裂し、激化するだろう未来に備えるための第一歩となるだろう。

現代世界はアメリカが生み出したものだ。第二次世界大戦後、アメリカはユーラシア大陸周辺に世界規模の同盟関係を築き上げた。荒廃した国々を復興させ、世界貿易を再建した。遠洋航路の航行の自由(freedom of navigation)を守り、その他の公共財(public goods)を提供した。世界政府に最も近い存在は、国連ではなくアメリカだった。こうした政策は、繁栄する西側体制の基盤となり、その後ソ連を打倒し、冷戦後には拡大する自由主義的な秩序へと発展した。

あらゆる英雄的偉業と同様に、この偉業にも神話、省略、誇張(myths, elisions, and exaggerations)が存在する。ワシントンは、時に残忍な軍事介入(military interventions)や秘密工作(covert intrigues)といった非自由主義的な手段を用いて自由主義秩序を維持した。同盟諸国の連帯を称える賛歌は、1956年のスエズ危機から2003年のアメリカ主導によるイラク侵攻に至るまで、民主政治体制世界を揺るがした激しい対立を無視している。アメリカは、都合が悪くなると自らのルールを無視したり変更したりしてきた。1971年に国際金融のブレトン・ウッズ体制を離脱したのもその一例だ。偽善と強制(hypocrisy and coercion)なしに秩序は成り立たない。

しかし概して言えば、パクス・アメリカーナ(Pax Americana)は、驚異的な力(power)を用いて、極めて広範な自己利益観を支えてきた。それは、地理的に孤立した大国であっても、弱小国を繁栄させ、安全を確保することによってのみ、自らの力で繁栄できるという認識である。この組み合わせは、歴史を覆すほどの恩恵をもたらした。一世代のうちに二度の世界大戦を経験した後、アメリカが築いた秩序は、数十年にわたる大国間の平和をもたらした。アメリカ主導の経済は、生活水準の飛躍的な向上をもたらした。アメリカの影響力は、民主政治体制の優位性を確立し、「国家の死(state death)」、すなわち独立国家の暴力的な消滅(the violent eradication of independent countries)を、衝撃的で稀なものにした。ワシントン自身も、比較的平和で活気に満ちた時代に生きたことだけでなく、同盟やその他の協力ネットワークによって、比類なき力を増幅させ、世界的な影響力を拡大させたことで、莫大な利益を得た。

しかしながら、何事も永遠ではない。そして、アメリカが築き上げた秩序、特に冷戦後に台頭したグローバル志向の秩序は終焉を迎えつつある。この秩序は外部からの攻撃にさらされている。北京、モスクワ、そしてその同盟諸国は、この秩序を自らの野望を阻む障壁であり、これらの国々の独裁体制への脅威とみなしている。彼らは、ユーラシア大陸全域で、勢力均衡(the balance of power)や、海洋の自由、武力による征服の禁止といった重要な規範を揺るがしている。これらの国々、特に中国は、内部からも秩序を破壊しようとしている。北京は世界経済への参入を利用して、現在アメリカに挑戦するために用いる製造力と軍事力を築き上げてきた。一方、ワシントン自身も、自らが築き上げた秩序に疲弊し、おそらくは致命的な幻滅を感じているのだろう。

こうした複雑な感情は、現実的な問題に根ざしている。アメリカの同盟関係における根強い不均衡とフリーライダー問題、グローバライゼーションに伴う経済的・物理的な不安、中東地域におけるアメリカの戦争がもたらした反動、そして自由主義秩序が中国の台頭を助長した経緯などだ。こうした感情は、少なくともアメリカの関与の条件を積極的に再交渉しようとする政権、そしてしばしばアメリカの国力を回復するには既存の体制を解体する必要があると主張する政権に、今や顕著に表れている。

こうした状況が、今の不安定な雰囲気を生み出している。ワシントンの国力は依然として比類なきものである。アメリカの同盟関係やG7といった、既存の秩序を支える主要な構造は依然として健在だ。しかし、その秩序の将来は暗く、おそらくは終焉を迎えようとしているように見える。断末魔(the death throes)の苦しみが終わった後、一体何が起こるのだろうか?

過去10年間、アメリカ主導の世界は二つの世界に分裂し、統合された世界秩序という夢は、陣営間の争いへと転じるだろうと思われていた。このシナリオでは、中国主導の陣営には、攻撃的なユーラシアの独裁国家に加え、キューバからパキスタン、そしてグローバル・サウス(global south)の広範囲にわたる国々が加わる。一方、アメリカ主導の陣営は、ユーラシア周辺部の民主政体同盟諸国で構成される。インドからサウジアラビア、ブラジルからインドネシアといった様々なスイングステート(swing states)は、これらの陣営に選択的に加わりながら、その間を巧みに動き回るだろう。国際政治の未来は、冷戦時代へと回帰するだろう。

これは完全な再現ではない。世界と繋がった中国は、クレムリンがかつて持っていたよりもはるかに優れた経済的誘引力と強制力を持っている。しかし、このシナリオでは、制裁とサプライチェインが武器化されるにつれ、国際経済は徐々に分断されていくことになるだろう。デカップリング(decoupling)は、起こるかどうかという問題ではなく、いつ、誰の条件で起こるかという問題となるだろう。冷戦時代と同様、二極構造の対立(a bipolar rivalry)があらゆる地域を巻き込むことになる。ウクライナ、台湾、南シナ海といった最も危険な地域は、地政学的な境界線上に位置することになる。

好むと好まざるとにかかわらず、強力な構造的力(strong structural forces)がこの未来を後押ししている。米中間の緊張は、首脳会談や危機によって高まったり低まったりするかもしれない。ドナルド・トランプ米大統領は習近平中国国家主席について畏敬の念をもって言及すべきかもしれない。しかし、中国が基幹技術、世界貿易、西太平洋における覇権を追求する動きが、アメリカの国力と特権に衝突するにつれ、根本的な対立は激化する一方だ。大国間の争い(Great-power fights)は世界政治を分極化させる傾向があり、相互依存(interdependence)は激しい紛争の中で脆弱性(vulnerability)の源泉となる。多くの点で、この未来への勢いは加速している。ロシアによるウクライナ侵攻は、ユーラシア大陸の独裁国家間の経済、技術、軍事面での連携(alignment)を加速させた。習近平国家主席とウラジーミル・プーティン大統領は、民主政体国家を相手に一斉に戦うことでしか勝利できないことを理解している。真の問題は、ワシントンが依然として自由世界を結集できるかどうかである。

トランプ政権の政策における善意の側面は、新たな冷戦においてワシントンとその同盟諸国を成功へと導く可能性を秘めている。しかし、その裏にある悪意は全く異なる様相を呈している。

トランプ政権の功績として、相互に絡み合う脅威に対抗するため軍事費の増額を要求することで、武装した民主政体共同体を構築している点が挙げられる。同盟国からの投資をアメリカの技術革新基盤にもたらす貿易協定は、中国の経済規模に対抗するために必要な資源と生産の統合を促進する可能性がある。重要鉱物資源に関するパートナーシップは、中国の支配から脱却するための道筋を示す(ただし、その道のりは長い)。そして何よりも、トランプはイランとヴェネズエラという弱小国を攻撃することで、独裁国家の枢軸に打撃を与えた。次はキューバかもしれない。歴史が示唆するところでは、西半球における覇権の再確立を目指すトランプの熱意(his drive to reassert hemispheric hegemony)―ドンロー主義(Donroe Doctrine)―は、より広い世界における影響力拡大の前提条件となるだろう。

大国が主導権を握り(call the shots)、小国は運命を受け入れる(accept their lots)というトランプの姿勢は、彼をアメリカの同盟国の大半よりも習近平やプーティンにとって都合の良い相手にしている。彼の強圧的で非対称的な交渉手法は、民主政体共同体の強化よりも、そこから最大限の譲歩(maximum concessions)を引き出すことに重点を置いているという印象を与える。グリーンランドとカナダに対するトランプの要求は、ワシントンを領土拡大を渇望する修正主義者たちと結びつけ、自由世界の核心である大西洋を挟んだ同盟関係を崩壊させる恐れがある。ヨーロッパの同盟諸国は、中国、ロシア、そしてアメリカという三つの強欲な大国に挟まれることをますます恐れている。もしそうなれば、新たな冷戦は起こらないだろう。なぜなら、独裁国家の勢力を弱める民主政体ブロックは存在しないからだ。

それでも、二極世界シナリオを軽視すべきではない。トランプ時代は、破壊(carnage)だけでなく建設(construction)ももたらすだろう。独裁政権の脅威が強まるにつれ、民主政体国家間の取引的な協力さえも促すインセンティヴが高まる。トラ​​ンプの後継者たちが、単なる自己利益追求ではなく、共通の目的を訴える物語を語ることができれば、新たなレヴェルの集団的努力(collective effort)と負担分担(burden-sharing)への新たなアプローチを伴う、自由世界の協定を再構築できるかもしれない。この未来にも危機と紛争はつきまとうだろう。危険は尽きない。しかし、それでもなお、全ての民主政体国家にとって最善のシナリオである。二極世界は、中国が支配する体制、あるいはさらに分裂する体制よりも望ましい。

第二のシナリオは、ポスト・アメリカ世界が二つの巨大ブロックではなく、いくつかのより小さな地域圏に分裂するというものだ。アメリカは、ホノルルからヌーク(グリーンランド)、北極圏、アルゼンチンにまたがる半球帝国(a hemispheric empire)に再び焦点を当てることで、戦略的な孤立(strategic insulation)を図る。ワシントンが大洋を越えた重荷から解放されるにつれ、中国は東南アジアから北東アジアにかけての広大な三日月地帯(the vast crescent)で支配権を握る。ロシアは、旧ソ連圏と東ヨーロッパの一部で、おそらくは血なまぐさい手段を用いて、支配を固めるだろう。

しかし、この勢力圏の分割(this spheres-of-influence partition)は、大国間のゲームにとどまらない。分裂する世界において、インドは南アジアとインド洋での支配を狙う。トルコは、ヨーロッパ、中東地域、アフリカの交差点に、オスマン帝国崩壊後の領域を築こうとする。イスラエル、サウジアラビア、その他の国々は、ペルシャ湾とアフリカの角を結ぶ紅海地域で覇権を争う。パクス・アメリカーナの後には、諸帝国存立の新たな時代(a new age of empires)が到来する。

これらの帝国は、ナチス支配下のヨーロッパのように、完全に閉鎖されたり軍事占領されたりする必要はなく、覇権は多様な形態で表現される。しかし、この未来において、世界秩序は勢力政治の岩礁に打ち砕かれる。

国際法が崩壊し、地域の有力者たち(regional potentates)が許容される行動規範を定め、従わない従属諸国(disobedient clients)に圧力をかけたり、打倒したりする。地域の支配者たちは貿易、投資、資源の流れを再構築し、弱い近隣諸国の他国との関係に厳しい制限を課す。新たな帝国の時代において、ラテンアメリカにヨーロッパやアジアの軍事基地は存在せず、ワシントンの海外同盟は崩壊するか、あるいは崩壊寸前となるだろう(Washington’s overseas alliances are dead or in tatters)。これは、世界の様々な地域におけるモンロー主義の集合体と考えることができる。

歴史的には、勢力圏はギャングの協定によって形成されてきた。その典型的な例は、アドルフ・ヒトラーとヨシフ・スターリンによる東欧分割(the division of Eastern Europe)である。現代のアナリストの中には、習近平、トランプ、プーティンが世界分割を企むような協定を結ぼうとしていると考える者もいる。しかし、勢力圏は非公式に、あるいは段階的に形成されることもある。

もしアメリカがNATO加盟国から領土を奪うことでNATOを崩壊させれば、西半球におけるアメリカの勢力圏の台頭は、東ヨーロッパにおけるロシアの勢力圏の台頭を助長する可能性がある。もし中国の容赦ない軍備増強によって、日本から台湾、フィリピンに至る第一列島線(the first island chain)が防衛不可能になれば、たとえ国防総省が明言しなくても、西太平洋は北京の影に覆われることになるだろう。つまり、ワシントンが半球覇権に全力を注ぎ込み、トランプ大統領自身が述べているように、遠い海を隔てた出来事は他国の問題だと考えるならば、多圏的な世界(a multisphere world)が生まれる可能性がある。

まさにその方向に向かっているように感じられる。ロシアと中国は長年にわたり地域支配(regional mastery)を争ってきた。そして今、トランプ大統領は南北アメリカ大陸においてワシントンの権威を容赦なく押し付けている。敵対的な支配者を強制的に排除し、重要な資源を主張し、公海上で致命的な武力を行使する一方で、ユーラシア大陸の最前線に位置する同盟諸国には自国の防衛を担うよう迫っている。トランプ大統領の国際法に対する軽視は、19世紀にリチャード・オルニー国務長官が「ワシントンはこの大陸において事実上主権者である(practically sovereign on this continent)」と宣言した言葉を21世紀に彷彿とさせる。西半球支配が、グローバルなプレゼンスを可能にするのではなく、いずれ取って代わる可能性が、今まさに見え始めているのだ。

しかし、トランプは決して厳格な半球主義主義者(hemisphericist)ではない。遠く離れた大陸での和平交渉を推進し、中東地域では野心的な戦争を繰り広げながら、ドンロー主義を声高に主張している。おそらくそれは、世界が厳密に勢力圏に分割されることが超大国アメリカにとって大きな痛手となることを彼が理解しているからだろう。

アメリカの保護を必死に求めるユーラシアの同盟諸国との一方的な貿易協定はもはや成り立たなくなり、日本やドイツがドルの支配を支える理由もなくなる。活気ある経済、重要な貿易ルート、そして高付加価値のサプライチェインを擁する東アジアからアメリカが締め出されれば、中国との競争は間違いなく困難になるだろう。台湾とホンジュラスの交換は、決して良い取引とは言えない。グローバルな影響力は、グローバルな関与から生まれる。

そして、勢力圏に基づくシステムがアメリカの国力を弱体化させるならば、その支持者が切望する安定性そのものをも弱体化させる可能性がある。理論上、勢力圏は小国の従属(lesser-power subservience)を通じて大国の平和を維持する。強大な国家は世界を分割し、手に負えない勢力を抑え込む。確かに、ワシントンが西太平洋から撤退すれば、台湾を巡る米中衝突は起こらないだろう。しかし、永続的な平和を期待することはできない。

複雑な相互依存関係は、勢力圏への移行を険悪なものにする。南アメリカにおける中国のデジタル浸透とインフラ整備を後退させるには、アメリカによる相当な圧力が必要となるだろう。逆に、東アジアにおける勢力圏の確立は、中国の野望の終わりではなく、始まりに過ぎないかもしれない。アメリカにとって、西半球における支配は、世界への介入の出発点だったのだ。

より重要なのは、勢力圏は単に与えられるものではないということだ。その起源はしばしば血塗られた歴史に彩られている。野心的な独裁国家は、支配地域において残虐行為、さらには大規模虐殺さえも厭わない傾向がある。そして、中小国家は、自分たちに何が待ち受けているかを認識しているため、支配をただ受け入れる以外の選択肢を持っている。ウクライナはロシア帝国から逃れるために激しく戦ってきた。日本も同様の行動をとるかもしれないし、あるいは単に核兵器を開発して北京に対する服従を避けるかもしれない。この危険性は、衰退していく秩序の後に起こりうる第三のシナリオ、すなわち醜悪で暴力的な混乱(ugly, violent disarray)を示唆している。

今年の世界経済フォーラムで、カナダのマーク・カーニー首相は、旧秩序の崩壊はミドルパワー国家にとって好機をもたらすと宣言した。協力し、能力を強化することで、これらの国々は大国間の道を切り開き、自らにとって許容可能なシステムを維持できると彼は主張した。

これは古くからの夢である。1970年代以来、学者や戦略家たちは、支配者なきルールの世界、つまり小国家が、たとえアメリカの指導力が失われた後でも、アメリカが築いた秩序の最良の部分を何とか維持できる世界が実現できると期待してきた。しかし、それは幻想(an illusion)に過ぎない。秩序は、最も強大な国々の関与なしには、ましてや反対を押し切っては維持できない。したがって、新たな冷戦や新たな帝国主義の時代に対する最も可能性の高い代替案は、無政府状態の混乱(an anarchic mess)である。

このシナリオでは、アメリカは暴走する。トランプのより暗い衝動は、残忍で規範を破る超大国の出現を予兆している。ワシントンは攻撃的な領土拡大に乗り出すだろう。アメリカは、武力や強制によって弱小国家から重要な資源を奪い取り、従属国家にますます大きな貢納(tribute)を要求し、非自由主義的なポピュリストのためにヨーロッパをはじめとする地域の政治に絶えず干渉している。アメリカは、自らのグローバルな役割を放棄するどころか、むしろ武器として利用している。

このような状況が深刻なのは、アメリカの行動によって、三大強国(米中露)全てが強欲で貪欲な歴史修正主義者として振る舞う世界が作り出されているからだ。特にユーラシア大陸の紛争地帯に位置する小国家は、四方八方から圧迫される危険に晒される。自助努力、つまり各国が自国のために戦うことこそが、唯一現実的な対応策と言えるだろう。

領土侵略、ひいては国家の消滅さえも、現状維持(status quo)や弱小国家の主権擁護に尽力する大国が存在しないために、はるかに頻繁に起こるようになる。自助努力の世界では、脆弱な国家が破壊され、従属させられ、あるいは分断されることになるだろう。ウクライナ戦争は、過去の醜い記憶ではなく、未来の予兆となるかもしれない。他の国々は、生き残るための最善策として核兵器を求めるなど、猛烈な勢いで軍備を増強するだろう。

一方、アメリカの力によって長らく抑え込まれてきた対立が再燃する可能性もある。ヨーロッパ連合が(おそらくアメリカとロシアの圧力によって)分裂する中で、ヨーロッパ諸国が再軍備を進めれば、かつてヨーロッパ大陸で頻繁に見られた軍拡競争と安全保障上の競争が再び激化する恐れがある。航行の自由はもはや過去のものとなるだろう。国際社会の安定が崩壊するにつれ、各国、さらには準国家主体(quasi-state actors)までもが、パナマ運河や北極海航路からバブ・エル・マンデブ海峡、ホルムズ海峡に至るまで、重要なチョークポイントの支配権を巡って争奪戦を繰り広げることになる。無法地帯と化した世界(a lawless world)では、貿易、資源、市場の物理的な支配がますます重要視されるようになり、それは征服の動機をさらに強めるだけである。

たとえ世界が最終的に新たな安定モデルを見出したとしても、1945年以降の輝かしい成果が、その間の混乱の中で失われてしまう可能性もある。

これは悪夢のように聞こえるかもしれない。しかし、歴史の視点から見れば、決して荒唐無稽な話(a stretch)ではない。

1900年代初頭のイギリス覇権の終焉は、すぐに新たな世界をもたらしたわけではない。それは数十年にわたる混乱の幕開けとなったのだ。イギリスの覇権が台頭する何世紀も前、当時は国際システムの中心地だった多極化したヨーロッパ(a multipolar Europe)は、専制政治と戦争の温床(a hothouse of tyranny and war)だった。

相対的な安定が常態であり、横行する残虐行為は例外であるという私たちの信念は、何世代にもわたるアメリカの穏やかな覇権が残した知的遺産(the intellectual residue)である。もしその覇権が終焉を迎えるか、あるいは略奪的なものへと変貌すれば、恐ろしい逆戻りに備えなければならない。

実際、無政府状態は私たちが考えているほど完全に抑圧されることはなく、自助努力の世界の兆候は既に現れている。アメリカの信頼性(U.S. reliability)に対する懸念は核への関心を刺激している。韓国と日本が原子力潜水艦の取得に関心を示していること、あるいはスウェーデンやドイツでさえ核兵器に関する議論が激化していることがその証拠だ。最悪の事態を想定した計画が広まりつつある。カナダは、何世代にもわたって初めて、アメリカの侵略から自国を守るための準備を進めていると報じられている。

新たな防衛協力関係が生まれつつあり、しばしば新たな緊張を生み出している。昨年締結されたパキスタンとサウジアラビアの防衛協定は既にインドの不安を煽っており、トルコが加われば、イスラエルとの中東における対立をさらに激化させる可能性がある。主要地域では、対立(rivalry)が激化している。ペルシャ湾岸地域は言うまでもなく紛争の渦中(awash in conflict)にある。しかし、複数の大国が資源と戦略的要地を巡って代理戦争(proxy wars)を繰り広げるリビアやアフリカの角地域における状況は、これから起こる多極化の混乱(multipolar disorder)を予見させるものかもしれない。

この混乱は永遠に続くものではない。いずれは新たなルールに基づく新たな階層構造(a new hierarchy)が確立されるだろう。しかし、パクス・ブリタニカとパクス・アメリカーナの間の空白期間を埋めるには、世界恐慌と二度の世界大戦が必要だった。たとえ世界が最終的に新たな安定モデルを見出したとしても、その間の混乱の中で、1945年以降の輝かしい成果が失われてしまったことに気づくかもしれない。

今この瞬間を、世界の政治がいくつもの道筋を辿る岐路について考えてみよう。それぞれの道が全く異なる目的地へと繋がるため、不確実性(uncertainty)は極めて大きい。すでに分かっているのは、次の時代は前時代よりも分断され、危険な時代になるということだ。

10年前、新たな冷戦は最悪のシナリオのように思われた。しかし今や、それはおそらく私たちにとって最良の希望と言えるだろう。二つの世界が存在するシナリオでは、危険な危機が頻発し、世界経済はさらに分断されるだろう。自信に満ち、好戦的な中国に対抗するには、民主政体陣営からの莫大な資源と卓越した知恵が必要となる。しかし、このシナリオは少なくとも、かつてディーン・アチソン元米国務長官が述べたように、「世界の半分(half a world)」を維持するものだ。それは、許容範囲内の勢力均衡を維持し、北京の最も野心的な衝動を抑えるために、十分な民主主義的協力が必要となることを意味する。他のシナリオ―宣伝されていたほど安定も利益も得られない新たな帝国の時代、あるいは再び混沌へと陥るシナリオ―は、より悲惨なものだ。そうした道は、パクス・アメリカーナ以前の時代がいかに悲惨だったかをほとんど忘れてしまった超大国を誘惑するかもしれないが、その結末は必ず暗黒に終わる。

皮肉なことに、アメリカは自らが築き上げた秩序のその後に何が起こるかについて、依然として大きな発言力を持っている。なぜなら、良くも悪くも、世界最強のアクターの選択が依然として最も重要だからだ。もしアメリカがトランプ政権の最良の政策を踏襲すれば、大きく動揺しながらも改革された民主政体共同体を、独裁的な圧力に抵抗するために必要な集団的努力へと導くことができるかもしれない。しかし、ワシントンが海外の舞台から撤退すれば、勢力圏争奪戦(a spheres-of-influence scramble)を招くことになるだろう。もしアメリカが反逆者(renegade)となれば、旧秩序を破壊しようとする修正主義者たちに加わり、世界を新たな自助努力の時代へと突き落とすことになるだろう。

トランプの折衷的な(eclectic)外交政策には、これら3つの傾向全てが見られる。今後数年間、そしてアメリカの選挙サイクルによって、これらの傾向のうちどれが定着し、覆すことがますます困難になるパターンへと発展していくかが決まるだろう。

グリーンランド併合に対するアメリカ国内の支持の欠如は、トランプの行き過ぎた行動が、いずれ彼の過激な本能を失墜させることを示しているのかもしれない。後継者、民主党であれ共和党であれ、より伝統的な外交政策の理念を、「アメリカ・ファースト(America First)」時代の国内政治の現実と融合させる方法を見出すかもしれない。その大統領は、トランプの混乱を緩和しつつ、彼の有益な遺産を活用して、新たな冷戦(a new cold war)に向けて自由世界を再構築するだろう。

あるいは、トランプの軍事冒険の一つが裏目に出る可能性もある。その結果、MAGA運動のネオアイソレイショニズム派、つまりタッカー・カールソンなどの評論家から影響を受けた派閥が勝利し、超大国が自国の勢力圏に固執することになるかもしれない。あるいは、共和党と大統領職におけるトランプの真の後継者は、彼がアメリカの力を駆使して既存秩序を破壊するには不十分だったと主張する人物かもしれない。革命が最終的に最も過激な勢力に乗っ取られるというのは、決して初めてのことではない。

旧秩序は崩壊しつつある。グローバル志向のリベラルな国際秩序を称賛したところで、それが復活するわけではない。今後10年間で答えを出すべき重要な問いは、ワシントンがその世界を、困難を伴うものの容認できるものに置き換えようとするのか、それとも現在の不確実性をさらに悪化させる方向へと推し進めるのかということだ。

※ハル・ブランズ:ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際関係大学院(School of Advanced International StudiesSAIS)ヘンリー・A・キッシンジャー記念国際問題担当教授。アメリカ・エンタープライズ研究所上級研究員。マクロ・アドヴァイザリー・パートナーズ経営担当部長。Xアカウント:@HalBrands

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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