古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 東京や関東近郊では本日発売の『週刊現代』2024年4月20日号の佐藤優先生の書評コーナー「名著、再び」(64-65ページ)にて、『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』をご高評いただきました。2ページにわたり、拙著から多くの引用をしながら、評価をしていただきました。佐藤先生には、『週刊ダイヤモンド』2024年3月2日号でも、拙著をご紹介いただきました。佐藤優先生、まことにありがとうございます。皆様には、是非手に取ってお読みくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
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(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 昨年12月27日に刊行した、私の最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を、佐藤優先生が『週刊ダイヤモンド』の「佐藤優 知を磨く読書」コーナーでご紹介くださいました。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

雑誌の86ページに掲載されています。コンビニでは場所によって置いていないところもありますが、駅のキオスク、書店にはありますので、是非お読みください。『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』の第3章で取り上げた、ウクライナ戦争に関する分析について「秀逸だ」「説得力がある」と評価していただきました。佐藤先生、まことにありがとうございます。

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 発売から2カ月が過ぎていますが、大型書店ではまだ購入できます。以下の写真は、2月中旬に私が、東京・池袋にあるジュンク堂書店と東京・新宿にある紀伊國屋書店本店を訪れた際に撮影しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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ジュンク堂書店「陰謀論」コーナーにて

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紀伊國屋書店「話題の本 アメリカ」コーナーにて

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2024年元旦にあたり、本ブログをお読みいただいている皆様にご挨拶を申し上げます。新年あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年もよろしくお願いいたします。

 個人としましては、昨年、新型コロナウイルス感染で体調を崩しましたが、同時期に書籍出版のお話をいただき、無事、2023年12月27日に4冊目となる単著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行することができました。私が代表を務めています、「副島隆彦の学問道場」のホームページの全面リニューアルも同時期でありましたので、昨年後半は色々と大変なことがありましたが、皆さまのお力添えをいただき、何とか乗り越えることができました。ありがとうございます。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 日本国内と世界に目を向けますと、大変化が起きる予兆が起きていると感じています。最新刊でも書きましたが、西洋支配の終焉と非西洋世界の勃興、西洋支配が成立前の状態に戻るということが起きつつあります。そうした中で、様々な出来事や事件が起きました。それらを大きく見て指し示す方向性は、簡単に言えば、戦後のアメリカ支配体制の終わりと中国の勃興から世界覇権国への変化です。

 日本国内ですが、既に衰退に向けて進んでおり、その速度が上がっています。日本は先進諸国の中で、衰退への道の先頭を走っています。日本は30年間も成長がなかった国であり、世界から取り残された国です。私が昨年読んだ論稿の中で「中国は刑務所、ヨーロッパは美術館、日本は老人ホーム」というフレーズが言いえて妙で、今でも忘れられません。日本は、これから人類史上初の「超高齢社会」となり、人口減少と産業の衰退を経験します。

 そうした中で、戦後社会も終わり、格差社会と貧困、道徳の崩壊といったことを経験することになるでしょう。小室直樹博士が紹介した、エミール・デュルケームの提唱した概念「急性アノミー(acute anomie)」が重要な分析概念となるでしょう。価値観や規範の崩壊によって、社会が不安定になり、暴力や殺人、自殺が増加すると考えられます。人口減少もあり、量的には犯罪件数自体が減るでしょう。しかし、質として、低程度の暴力、肩がぶつかっても謝らない、暴言を吐くと言ったものが拡散し、警察の統計に入らない暴力が社会の後半に拡散し、それによって常に「不機嫌な社会」となります。結果として、ブレーキや歯止めがきかずに些細なことからの事件も増えていくでしょう。私たちはこれから生きづらい生活を生き抜いていくこと、まずは生きていくこと、これが基準となると考えます。

 この生きづらい世の中で、自分を保つことが難しい中で、私たちはそれでも生きていく。よりむき出しの生を生きていくことになるでしょう。

 元旦にこのような挨拶になりましたが、本年もお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』が発売になります。よろしくお願いします。


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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 今回も最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で取り上げたカート・キャンベルとイーライ・ラトナーの論文をご紹介する。キャンベルとラトナーがバイデン政権の対アジア、対中政策の責任者である。2人がどのようなことを考えているかを知ることは重要だ。彼らの認識は「中国をここまで大きくしたのはアメリカだ。中国を世界市場にアクセスさせ、世界の潮流に晒せば、中国は変化すると考えたのは誤算だった」というものだ。アメリカは中国の安い製品を大量に輸入することで、中国を経済発展させる。経済発展に伴って人々の生活は向上し、世界の情報を得るようになり、中国の体制変革を求めるようになるとアメリカは考えた。一人当たりのGDPが6000ドルに達すると、民主化に向かうという仮説もある。

 しかし、中国共産党政府はそのような方向に進むことを警戒し、国内体制の強化を行った。また、中国国民も中国共産党政府を支持した。「私たちの生活を豊かにしてくれた中国共産党を支持する」ということになった。アメリカの中国の体制変革の目論見は崩れた。そして、気づいてみれば、アメリカは強大な中国というライヴァルを自分自身で生み出してしまった。今や中国は「西側諸国(the West)対西側以外の国々(the Rest)」という、世界を二分する構造の中で、西側以外の国々の旗頭である。

 こうした状況に陥り、アメリカは中国とどのように対峙するか、ということになる。最悪のシナリオは米中覇権戦争(Sino-US hegemonic war )であるが、アメリカは中国との戦争に踏み切れない。戦争に踏み切って中国を打倒しても、アメリカは致命的なダメージを受けて立ち直れない。アメリカ一国で中国と対峙することはできない。そこで、アメリカの同盟諸国、パートナーの出番である。その一番手は地理的なことから考えても、日本である。日本を中国にけしかけて、戦争まではいかなくても、武力衝突位させるのがアメリカである。最近では、アメリカは対ロシアを名目に、NATOまで対中封じ込めに利用しようとしている。こうしたことは、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』に詳しく書いている。

 日本は何があっても中国と直接衝突してはいけない。そのことを私たちは肝に銘じておかねばならない。

(貼り付けはじめ)

中国に関する計算(The China Reckoning

-北京はいかにしてアメリカの期待を裏切ったか

カート・キャンベル、イーライ・ラトナー筆

2018年3・4月(発行日:2018年2月13日)号
『フォーリン・アフェアーズ』誌

https://www.foreignaffairs.com/articles/china/2018-02-13/china-reckoning

アメリカは常に、中国の行く末を決めることができると過大な期待を抱いてきた。しかし、その野望は何度も失敗に終わってきた。第二次世界大戦後、アメリカの中国特使だったジョージ・マーシャルは、中国内戦における国民党と共産党の和平を仲介することを望んだ。朝鮮戦争中、ハリー・トルーマン政権は毛沢東軍に鴨緑江を渡らせないようにできると考えた。リンドン・ジョンソン政権は、北京が最終的にヴェトナムへの関与を抑制すると考えていた。いずれの場合も、中国の現実はアメリカの予想を覆した。

リチャード・ニクソン米大統領の対中国交正常化で、ワシントンはこれまでで最大かつ最も楽観的な賭けに出た。ニクソンも国家安全保障問題担当大統領補佐官であったヘンリー・キッシンジャーも、和解(rapprochement)によって北京とモスクワの間にくさびが打ち込まれ、やがて中国がアメリカに接近するにつれて、中国自身の利益に対する考え方が変わると考えていた。1967年秋、ニクソンは本誌(フォーリン・アフェアーズ)に次のように書いている。「中国が変化するまで、世界は安全にはなり得ない。したがって、私たちの目的は、出来事に影響を与えることができる範囲において、変化を誘導することであるべきだ」。それ以来、商業的、外交的、文化的な結びつきを深めることが中国の内部発展と対外的な行動を一変させるという前提が、アメリカの戦略の根幹をなしてきた。中国の意図に懐疑的なアメリカ政界の人々でさえも、アメリカの力と覇権(power and hegemony)が中国を容易にアメリカの意のままに形作ることができるという根底にある信念を共有していた。

ニクソンが和解に向けた最初の一歩を踏み出してから半世紀近くが経過し、ワシントンが再び、中国の方向性を形成する力を過信しすぎたことは、次第に明らかになっている。自由貿易主義者や金融主義者は中国の開放が必然的に進むと予測し、融合主義者は国際社会との交流が深まれば北京の野心も抑えられると主張し、タカ派はアメリカの優位が続けば中国の力は弱まると信じていた。

ニンジンも棍棒も、予測されたようには中国を揺さぶることができなかった。外交的、商業的関与は政治的、経済的開放をもたらさなかった。アメリカの軍事力も地域的なバランシング(勢力均衡)も、北京がアメリカ主導のシステムの中核的な構成要素を置き去りにしようとするのを阻止していない。リベラルな国際秩序は、中国を期待されたほど強力に誘い込むことも束縛することもできなかった。中国はその代わりに独自の路線を追求し、その過程でアメリカの様々な期待を裏切ってきた。

この現実は、アメリカの対中アプローチを明確な目で見直すことを正当化する。現在の枠組みを擁護する人たちは、二国間関係を不安定化させたり、新たな冷戦を招いたりしないよう警告するだろう。しかし、より強固で持続可能な対中アプローチ、そして対中関係を構築するには、多くの基本的な前提がいかに間違っていたかを正直に語る必要がある。イデオロギーの違いを超えて、われわれアメリカの外交関係者たちは、中国に対する期待(経済、国内政治、安全保障、世界秩序に対する中国のアプローチ)に、それに反する証拠が積み重なっても、更に多く投資し続けてきた。そのような期待の上に築かれた政策は、われわれが意図した、あるいは期待したような形で中国を変えることはできなかった。

●市場の力(THE POWER OF THE MARKET

中国との商業交流の拡大は、中国経済の段階的だが着実な自由化をもたらすはずだった。ジョージ・HW・ブッシュ大統領が1990年に発表した国家安全保障戦略(1990 National Security Strategy)では、世界との結びつきを強化することが「中国が経済改革の道を再び歩む上で極めて重要である」と説明された。この主張は数十年にわたって優勢だった。1990年代に中国に最恵国待遇を与え、2001年には世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)への加盟を支援し、2006年にはハイレヴェル経済対話の枠組みを創設し、バラク・オバマ大統領の下で、二国間投資条約を交渉するというアメリカの決定を後押しした。

米中間の物品貿易は、1986年には80億ドルに満たなかったが、2016年には5780億ドルを超えるまでに爆発的に増加した。しかし、今世紀初頭以降、中国の経済自由化は停滞している。欧米諸国の期待に反して、北京は豊かになる一方で国家資本主義モデル(state capitalist model)を強化してきた。一貫した成長は、開放を促進する力になるどころか、中国共産党とその国家主導の経済モデルを正当化するのに役立っている。

複数のアメリカ政府高官は、債務、非効率、より高度な経済への要求から、更なる改革が必要になると考えた。2007年、温家宝首相は中国経済を「不安定、不均衡、調整不能、持続不可能(unstable, unbalanced, uncoordinated, and unsustainable)」と呼んだ。しかし、中国共産党は競争拡大のために国を開放するのではなく、経済の支配を維持することを意図し、代わりに国有企業を統合し、航空宇宙、生物医学、ロボット工学などの重要な分野で国家技術チャンピオンを促進することを目的とした産業政策(industrial policies)(特に「メイド・イン・チャイナ2025(Made in China 2025)」計画)を追求している。また、繰り返し約束したにもかかわらず、北京は外国企業の競争条件を公平にするというワシントンやその他の国からの圧力に抵抗してきた。市場アクセスを制限し、非中国企業に合弁企業との契約や技術共有を強要する一方で、国の支援を受けた国内企業には投資や補助金を与えてきた。

つい最近まで、アメリカの政策立案者や経営者たちはこのような差別をほぼ黙認していた。潜在的な商業的利益があまりにも大きいため、保護主義や制裁で関係を根底から覆すのは賢明ではないと考えたからだ。潜在的な商業的利益があまりにも大きいため、保護主義(protectionism)や制裁(sanctions)で関係を破壊するのは賢明ではないと考えたのだ。しかし現在では、かつては中国とのビジネスにおける短期的なフラストレーションにすぎないと考えられていたものが、より有害で恒久的なものに思えるようになっている。アメリカ商工会議所は昨年、アメリカ企業の約8割が、数年前に比べて中国において歓迎されていないと感じていると報告し、60%以上の企業が、中国が今後3年間で市場をさらに開放するという確信がほとんどない、あるいはまったくないと回答した。ドナルド・トランプ政権が新たに開始した「包括的経済対話(Comprehensive Economic Dialogue)」も含め、中国経済を開放するための協力的で自発的なメカニズムは大方失敗に終わっている。

成長は更なる経済開放だけでなく、政治的自由化(political liberalization)ももたらすと考えられていた。急成長する中国の中産階級が新たな権利を求め、現実主義的な政府高官たちが更なる進歩に必要な法改正を受け入れるという好循環が、発展によって引き起こされると考えられていた。ソヴィエト連邦が崩壊し、韓国と台湾が民主政体移行を行った後、この進化は特に確かなものに思えた。「外国の思想を国境で阻止しながら、世界の商品やサーヴィスを輸入する方法を発見した国は地球上に存在しない」とジョージ・HW・ブッシュ大統領は宣言した。アメリカの政策は、技術を共有し、貿易と投資を促進し、人と人との交流を促進し、アメリカの大学に何十万人もの中国人留学生を受け入れることによって、このプロセスを促進することを目的としていた。

1989年の天安門広場での民主化デモ参加者たちへの弾圧は、中国における選挙制民主政治体制の台頭への期待を薄れさせた。しかし、アメリカの専門家や政策立案者の多くは、中国政府がより大きな報道の自由を認め、より強力な市民社会(civil society)を許容する一方で、共産党内と地方レベルの両方でより多くの政治的競争を徐々に受け入れることを期待していた。彼らは、1990年代の情報技術革命が、中国市民を更に世界に晒し、開放への経済的インセンティヴを高めることで、そうした傾向を後押しするだろうと考えていた。ビル・クリントン大統領が述べたように、「思考し、質問し、創造する完全な自由がなければ、中国は、国富の最大の源泉が人間の心に宿るものである情報化時代において、完全に開放された社会と競争することになり、明らかに不利な立場に立たされる」ということだった。北京の指導者たちは、個人の自由を認めることによってのみ、中国がハイテクの未来で繁栄できることを理解するようになるだろう、と考えられていた。

しかし、開放の拡大が国内の安定と政権の存続の両方を脅かすのではないかという恐怖から、中国の指導者たちは別のアプローチを模索するようになった。天安門事件の衝撃とソヴィエト連邦の崩壊は、民主化と政治的競争の危険性を示す証拠となった。そのため、北京は開放というポジティブなサイクルを受け入れるのではなく、壁を建設し、国家統制(state control)を強化することでグローバライゼーションの力に対応した。今世紀に入り、経済の減速、政府と軍部における腐敗の蔓延、世界各地での民衆蜂起の不吉な例など、体制に対する更なるストレスによって、権威主義は弱められるどころか、更に強化されている。

実際、過去10年間の出来事は、政治的自由化に対するささやかな希望さえも打ち砕いた。2013年、文書第9号として知られる共産党の内部メモは、「西側の立憲民主主義」やその他の「普遍的価値」を、中国を弱体化させ、不安定化させ、さらには分裂させることを意図した、当て馬(stalking-horses)として、明確な警告を発した。このガイダンスは、中国の政治的将来に対する米中の期待のギャップが広がっていることを示した。アメリカの代表的な中国専門家であるオーヴィル・シェルはつぎのように述べている。「中国は、1980年代の鄧小平よりも、1970年代の毛沢東を彷彿とさせるような政治情勢へと、不可避的に後退しつつある」。今日、ジャーナリスト、宗教指導者、学者、社会活動家、人権派弁護士に対する弾圧が止む気配はなく、2015年だけで300人以上の弁護士、法務助手、活動家が拘束された。

西側の多くの人々が予測したように、中国国民に権力が委譲されるどころか、通信技術は国家の統制力を強め、中国当局が情報の流れをコントロールし、市民の行動を監視するのに役立っている。検閲、拘束、そして中国のインターネットに対する政府の広範なコントロールを認める新しいサイバーセキュリティ法は、中国の「グレート・ファイアウォール(Great Firewall)」内部での政治活動を妨げている。中国の21世紀の権威主義には現在、ビッグデータと人工知能を融合させ、政治的、商業的、社会的、オンライン上の活動に基づいて中国市民に報酬を与え、罰する「社会信用システム(social credit system)」を立ち上げる計画も含まれている。顔認識ソフトウェア(Facial recognition software)は、中国全土に遍在する監視カメラと組み合わされ、国家が数分以内に物理的に人々の居場所を特定することさえ可能にしている。

アメリカ外交とアメリカの軍事力の組み合わせ、つまり、ニンジンと棍棒の組み合わせは、アメリカが主導するアジアの安全保障秩序に挑戦することは不可能であり、またその必要もないと北京を説得するはずだった。クリントン政権が1995年に発表した『国家安全保障戦略』によれば、ワシントンは「近隣諸国を安心させ、自国の安全保障上の懸念を解消するために、中国が地域の安全保障メカニズムに参加することを強力に推進」し、軍事対軍事の関係やその他の信頼醸成措置によってこれを後押しした。このような関与の仕方は、「ヘッジ(hedge)」、すなわちこの地域におけるアメリカの軍事力の強化と、有能な同盟諸国やパートナーによる支援と結びついていた。その結果、アジアにおける軍事的競争が緩和され、地域秩序を変えようとする中国の欲望が更に制限されることになると考えられていた。北京は軍事的充足に落ち着き、狭い地域の不測の事態のために軍備を増強する一方で、そのリソースの大半を国内の必要性に充てるだろうと考えられた。

その論理は、中国が自国の発展のために自称「戦略的な機会の窓(strategic window of opportunity)」に集中しているというような単純なものではなかった。アメリカの政策立案者や学者たちは、中国がソ連から、アメリカとの軍拡競争に巻き込まれた場合の破滅的なコストについて、貴重な教訓を学んだとも考えていた。したがって、ワシントンは中国の侵略を抑止するだけでなく、米国防総省の言葉を借りれば、中国が対抗しようとすることさえ「思いとどまらせる」ことができたのである。レーガン、ブッシュ両政権の高官であったザルマイ・ハリルザドは、アメリカが優位に立てば、「中国指導部に、挑戦の準備は困難であり、追求するのは極めて危険であると確信させることができる」と主張した。加えて、中国がアメリカの優位に挑戦したくてもできるかどうかは不明だった。1990年代後半まで、中国人民解放軍(People’s Liberation Army PLA)はアメリカやアメリカの同盟諸国の軍隊より何十年も遅れていると考えられていた。

このような背景から、アメリカ政府関係者は失敗して中国と対立関係にならないように、相当な注意を払っていた。政治学者のジョセフ・ナイは、ビル・クリントン政権時代に国防総省のアジア担当部署を率いていたときの考え方を次のように説明している。「中国を敵として扱うなら、将来も敵になることが保証されることになる。中国を友人として扱ったとしても、友好関係を保証することはできないが、少なくともより良い結果が生じる可能性を残しておくことはできる」。国務長官に指名されていたコリン・パウエルは、2001年1月の人事承認のための公聴会で、「中国は敵ではない。私たちの課題は、その状態を維持することだ」と述べた。

中国政府は、新たに得た富を軍事力により多く投資するようになっても、ワシントンを安心させようと努め、鄧小平が打ち出した慎重で穏健な外交政策を引き続き堅持する姿勢を示した。2005年、共産党幹部の鄭必堅は本誌に、中国は決して地域の覇権を求めず、「平和的台頭(peaceful rise)」を約束し続けると書いた。2011年、中国の指導者たちの間でギアチェンジの時期かどうかが活発に議論された後、戴秉国国務委員は「平和的発展は中国の戦略的選択である」と世界に断言した。2002年から、米国防総省は連邦議会が義務付けた中国の軍事に関する年次報告書を作成していたが、アメリカ政府高官の間では、中国は依然として遠くに存在するだけの、管理可能な課題であるというのがコンセンサスだった。

しかしながら、このような見方は、中国の指導部がどれほど不安と野心を同時に抱いているかを過小評価していた。北京にとって、アジアにおけるアメリカの同盟関係と軍事的プレゼンスは、台湾、朝鮮半島、東シナ海と南シナ海における中国の利益にとって受け入れがたい脅威であった。北京大学の王緝思教授の言葉を借りれば、「中国では、ワシントンは新興大国を阻止しようとすると強く信じられている。ワシントンは新興大国、特に中国の目標達成と地位向上を阻止しようとするだろう。そこで中国は、アメリカが主導するアジアの安全保障秩序を切り崩し始め、この地域へのアメリカ軍のアクセスを拒否する能力を開発し、ワシントンとその同盟国との間にくさびを打ち込むことにした」ということになる。

結局のところ、アメリカの軍事力もアメリカの外交的関与も、中国が自力で世界トップクラスの軍隊を作ろうとするのを思いとどまらせることはできなかった。イラクやその他の場所でアメリカの力をハイテクで誇示したことは、中国人民解放軍を近代化する努力を加速させただけだった。中国の習近平国家主席は、中国人民解放軍をより殺傷力の高いものにし、中国国外にも軍事力を展開できるようにするための軍事改革を開始した。3隻目の空母を建造中と報じられ、南シナ海に高度な軍事施設を新設し、ジブチに初の海外軍事基地を設置した中国は、アメリカがソ連以来見たことのないような軍事的ライヴァルになる道を歩んでいる。中国の指導者たちはもはや、中国が繁栄するためには「その能力を隠し、その時を待つ(hide [its] capabilities and bide [its] time)」という鄧小平の考えを繰り返すことはない。習近平は2017年10月、「中華民族は立ち上がり、豊かになり、強くなった」と宣言した。

●秩序の制約(THE CONSTRAINTS OF ORDER

第二次世界大戦後、アメリカは世界政治とアジアの地域力学を構造化するのに役立つ制度とルールを構築した。通商と航行の自由、紛争の平和的解決、国際的な課題に対する国際協力など、広く受け入れられた規範は、19世紀の勢力圏に取って代わった。このリベラルな国際秩序の主要な受益者として、北京はこの秩序の維持にかなりの利害関係を持ち、その継続が中国自身の発展にとって不可欠であると考えるようになった。アメリカの政策は、中国を主要な国際機関に迎え入れ、グローバル・ガバナンスや地域の安全保障について中国と協力することで、北京の関与を促すことを目的としていた。

中国が多国間機関に参加するにつれ、アメリカの政策立案者たちは、中国がルールに従うことを学び、やがてその維持に貢献し始めることを期待した。ジョージ・W・ブッシュ(子)政権時代、ロバート・ゼーリック国務副長官が北京に対し、国際システムにおける「責任ある利害関係者(responsible stakeholder)」になるよう呼びかけたのは記憶に新しい。ワシントンの立場からすれば、中国が国際システムから多大な利益を得ている以上、大きな力には大きな義務が伴う。オバマ大統領が強調したように、「私たちは、中国が自分たちを成功に導いたルールを守る手助けをすることを期待している」のだ。

特定の場において、中国は、ばらつきはあるにせよ、着実にこの責任を担っているように見えた。1991年にアジア太平洋経済協力機構(Asia-Pacific Economic Cooperation organizationAPEC)に加盟し、1992年には核拡散防止条約(Nuclear Nonproliferation TreatyNPT)に加盟、2001年には世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)に加盟し、北朝鮮とイランの核兵器開発に対処するための6カ国協議(six-party talks)やP51交渉など、主要な外交努力に参加した。また、国連の海賊対策や平和維持活動にも大きく貢献するようになった。

しかし北京は、アメリカ主導の秩序(U.S.-led order)を構成する他の中心的な要素に脅威を感じ続けており、そうした要素に取って代わろうとする姿勢を強めている。特に、経済制裁や軍事行動も、アメリカやパートナー諸国による国家主権の招かれざる侵害と見なされてきた。例えば、人権侵害から人々を守るために介入する国際社会の権利や責任に関するリベラルな規範は、外国からの干渉から自国の権威主義体制を守ることを最優先とする中国に真っ向からぶつかってきた。いくつかの顕著な例外を除いて、中国は多国間制裁に水を差したり、欧米諸国の非難から政権を守ったり、国連安全保障理事会が介入主義的な行動を承認するのを阻止するためにロシアと共通の大義を作ったりすることに忙殺されてきた。スーダン、シリア、ベネズエラ、ジンバブエなど、多くの非民主的政権がこうした妨害の恩恵を受けている。

中国はまた、既存の機関への関与を深めるのではなく、アメリカを外側に置いて、独自の地域機関や国際機関の構築に着手した。アジアインフラ投資銀行、新開発銀行(ブラジル、ロシア、インド、南アフリカとともに)、そして最も注目すべきは、中国と世界の大部分を結ぶ陸路と海路を建設するという習近平の壮大なヴィジョンである「一帯一路構想(the Belt and Road Initiative)」を立ち上げたことだ。これらの制度やプログラムは、中国に独自の議題設定力や招集力を与える一方で、既存の国際機関が支持する基準や価値観からしばしば逸脱している。北京は、アメリカやヨーロッパの諸大国とは異なり、援助を受ける条件として統治改革を受け入れることを各国に要求しないことで、開発へのアプローチを明確に差別化している。

一方、自国がある地域では、北京は安全保障のバランスを変えることに着手し、アメリカの軍事的反応を刺激しない程度の小さなステップで現状を少しずつ変えている。世界で最も重要な水路の一つである南シナ海で、中国は沿岸警備船や合法的な戦争、経済的な強制力を巧みに利用して、領有権を主張してきた。場合によっては、単に紛争地域を占領したり、人工島を軍事化したりしている。北京は時折、自制心や戦術的な慎重さを見せることもあるが、全体的なアプローチからは、近代的な海洋勢力圏(modern maritime sphere of influence)を築きたいという思惑が伺える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年夏、中国は国連海洋法条約に基づく法廷による画期的な判決を無視した。同判決は、南シナ海における中国の広範な領有権の主張は国際法上違法であるとした。アメリカ政府高官たちは、圧力や羞恥心、そしてルールに基づく海洋秩序を求める自国の願望が何らかの形で組み合わさり、北京が時間をかけて判決を受け入れるようになるだろうと誤って考えていた。それどころか、中国はそれを真っ向から否定した。判決から1年後の2017年7月、コロラド州アスペンで開催された安全保障フォーラムで、CIAの上級アナリストは、この経験は中国の指導者たちに「国際法に逆らっても逃げ切れることを教えた」と結論づけた。アジア地域の国々は、中国への経済的依存とアメリカのアジアへの関与に対する懸念の高まりの両方によって揺さぶられており、アメリカの政策立案者たちが期待したほどには、中国の自己主張に反発していない。

●現状把握(TAKING STOCK

アメリカの中国政策を牽引してきた前提が次第に弱く見え始め、アメリカの期待と中国の現実とのギャップが拡大するにつれ、ワシントンはその大部分を別の場所に集中させてきた。2001年以来、アメリカの国家安全保障はジハード主義テロとの戦いに費やされ、中国が軍事、外交、商業の面で飛躍的な進歩を遂げつつあったまさにその時期に、アジアの変化から目を逸らしてきた。ジョージ・W・ブッシュ(子)大統領は当初、中国を「戦略的競争相手(strategic competitor)」と呼んでいた。しかし、9月11日の同時多発テロを受け、2002年に発表した国家安全保障戦略では、「世界の諸大国は、テロリストの暴力と混乱という共通の危険によって結束した、同じ側にいることに気づく」と宣言した。バラク・オバマ政権時代には、アジアへの戦略的注目の「軸足(pivot、ピヴォット)」、すなわち「再均衡(rebalancing、リバランシング)」が試みられた。例えば、国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)の中東担当スタッフの数は、東アジア・東南アジア全体の3倍だった。

この戦略的な目移りは、中国に自国の優位性を押し付ける機会を与えたが、その動機となったのは、アメリカが、より広い意味での西側諸国とともに、どうしようもなく急速に衰退しているという見方が中国でますます顕著になっていることだ。中国当局者は、世界金融危機、アフガニスタンとイラクにおける高価な戦争努力、ワシントンにおける深まる機能不全によって、何年も足かせをかけられているアメリカを見ている。習近平は、中国が今世紀半ばまでに「総合的な国力と国際的影響力の面で世界のリーダーになる」ことを求めている。習近平は、中国の発展モデルを「他国にとっての新たな選択肢」として売り込んでいる。

ワシントンは今、近代史上最もダイナミックで手強いライヴァルに直面している。この課題を正しく理解するには、アメリカの対中アプローチを長年特徴付けてきた希望的観測から脱却する必要がある。トランプ政権初の国家安全保障戦略は、アメリカの戦略における過去の前提を問い直すことで、正しい方向への一歩を踏み出した。しかし、二国間の貿易赤字に焦点を絞る、多国間貿易協定を放棄する、同盟の価値を疑問視する、人権や外交を軽視するなど、ドナルド・トランプの政策の多くは、ワシントンが中国に対して、競争的なアプローチではなく、対立的なアプローチを採用する危険性をはらんでいる。

より良いアプローチの出発点は、アメリカが中国を変える能力について新たな謙虚さ(humility)を持つことである。中国を孤立させ弱体化させようとすることも、中国をより良い方向に変えようとすることも、アジアにおけるアメリカの戦略の主軸に据えるべきではない。ワシントンはその代わりに、自国の力と行動、そして同盟諸国やパートナー諸国の力と行動にもっと焦点を当てるべきである。中国についてのより現実的な仮定に基づいた政策を採用することで、アメリカの利益をより向上させ、二国間関係をより持続可能なものにするだろう。そのためには努力が必要だが、最初のステップは比較的容易なものである。

※カート・M・キャンベル:「ジ・アジア・グループ」会長。2009年から2013年まで国務次官補(東アジア・太平洋問題担当)を務めた。

※イーライ・ラトナー:外交評議会マウリス・R・グリーンバーグ記念中国研究上級研究員。2015年から2017年までジョー・バイデン副大統領国家安全保障問題担当次席大統領補佐官を務めた。

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