古村治彦です。
アメリカのドナルド・トランプ大統領がカナダやメキシコをアメリカに併合するというような話をしていた時、私たちはいくらなんでも、そんな馬鹿なと考えていた。しかし、ヴェネズエラ攻撃の後、グリーンランド領有の話をするトランプ大統領に対しては恐怖感を持つようになっている。「狂人理論(madman theory)」という考えもあるが、「こいつには常識が通じないから何をしてくるか分からない」と怯えさせて、こちらの意向を飲ませるというやり方もある。しかし、トランプ大統領と側近たちは本気のようだ。彼らはネオコンもやらなかったようなことをやろうとしている。
2025年、第二次ドナルド・トランプ政権発足1年目は、世界は、トランプをなだめすかしてごまかして時間を稼いで、任期の終わりまで何とか無事に過ごそうと考えていた。お金で済むことならばある程度は仕方がないという感じであった。ヨーロッパ諸国の防衛予算の増額や高関税政策への対応がそうであった。ちなみに、トランプ関税の増加分の負担は、外国の企業が4%、アメリカの消費者が96%だったという研究結果もある。トランプ関税はアメリカの消費者からお金を巻き上げるということになった。インフレ状況であればそれも当然である。
2026年は世界にとって大きな転換の年である。それまでのアメリカとは大きく異なるアメリカが出現した。自分たちの欲望を前面に出し、大義名分も理屈も装うことなく、自分の利益のためにまい進する超大国が出てきた。アニメ「ドラえもん」のガキ大将であるジャイアンそのものである。そして、自己利益の追及の為なら、自分の評判や将来の利益など考慮することなく、軍事力まで使用する。アメリカは静かに消え去ってくれることはない。ゴジラのように散々暴れまわることだろう。暴れまわるアメリカに対応するために、世界は団結することになるだろう。映画「インディペンデンスデイ」のように、宇宙からの脅威に対して、世界が一致して立ち向かったように。
世界は、中国という新興大国が呉氏らのように暴れまわると考えていた。しかし、実際には、アメリカがそのようになった。私たちはそのような時代に生きている。日本の行く末についてはよくよく考慮するべき時であろう。
(貼り付けはじめ)
トランプ大統領の空想的な地政学(Trump’s Fantastical
Geopolitics)
-ホワイトハウスの攻撃的な姿勢はすでに他国に数の力(strength in
numbers)を求めるよう迫っている。
ハワード・W・フレンチ筆
2026年1月13日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/01/13/trump-china-venezuela-geopolitics/
数年前、台頭する中国が世界大国としての自己イメージをどのように構築しているかを扱った書籍を調査中、突如として露骨な地政学的野心を示すリスクを描いた寓話に出会った。あまりにも衝撃的だったので、長々と引用した。ここでも改めて引用する。
戦略家エドワード・N・ルトワックによるこの一節に込められた比喩表現は、今もなおその力強さを失っていない。しかし、今日特に際立っているのは、それが適用される世界がいかに変化し、指導者たちの役割がいかに徹底的に入れ替わったかということだ。
「極度の肥満体のミスター・チャイナが、混雑したエレヴェーターに乗り込んだ途端、乗客は自己防衛のために反応せざるを得ない。彼が猛烈に太っていき、壁に押し付けられるような状況では、たとえ彼が全く威圧的ではなく、むしろ愛想が良いとしても。確かに、混雑したエレヴェーターには、ミスター・チャイナよりも太っていて、声が大きく、しばしば暴力的なミスター・アメリカが既に乗っていた。しかし、彼が長年同じ乗客だったというだけの理由で、ほとんど全員が何十年にもわたって、彼の騒々しい体格に満足のいく形で慣れ親しんできたのだ…」。
ルトワックのエレヴェーター・シナリオは、不快なボディ・イメージを伴い、10年以上前に発表されたものだ。急速に台頭する中国への不安が高まっていた時期のことだった。当時、世界最大の人口を誇り、四半世紀にわたる驚異的な経済変革の記録を持つ中国は、多くの人々を不安にさせていた。もちろん、これにはアメリカを筆頭とする西側諸国も含まれていた。彼らは長年、自国の圧倒的な富と、それが支える広範な力と影響力に慣れきっていた。当時、彼らは中国がひたひたと迫りくるのをバックミラー越しに不安げに見守るしかなくなっていた。
ルトワックが当時述べたように、中国は依然として親しみやすさを備えていたかもしれないが、「全く脅威ではない(entirely unthreatening)」とは程遠い存在だった。ルトワックが描写したように、既に満員のエレヴェーターに特大の乗客が乗ったような感覚は、日本や東南アジアの海洋国家といった中国の近隣諸国にとって、時に息苦しささえ感じさせた。中国が新たな外洋海軍(a new blue-water navy)に投資し、周辺地域のほぼ全域における超法規的な領有権主張を強めるためにそれを利用し始めたことで、彼らは公然と脅迫されていると感じていたのだ。
当時から最も大きく変わった点が2つある。1つは、いわゆるエレヴェーターの乗客のほとんどが、中国の重圧に慣れてきたことだ。もう1つは、驚異的な経済成長がやや鈍化し、そしてさらに重要なのは、衝撃的な現実としてではなく、より現実的な視点で見られるようになったことだ。また別の1つの点は、もちろん、ドナルド・トランプ大統領率いるアメリカ合衆国の驚くべき振る舞いである。
2017年に自著『天下の万物:過去が中国のグローバルパワー獲得をどう形作るのか』を執筆した際、アメリカに対し冷静さを保つよう助言するのは当然のことのように思えた。アメリカにとって最善の道は、自国の秩序を維持することだと私は助言した。それは、科学と教育における卓越した強みに継続的に投資しながら、世界に対して比較的開かれた姿勢を維持することを意味する。ワシントンは、中国の新たな力に過剰反応し、より攻撃的な行動をとったり、軍事力を過度に重視したりするといった過ちを犯すべきではない。むしろ、同盟関係を強化し、国際法を強化すべきである、というものだ。
こうしたことが、世界におけるアメリカの魅力を再び高め、中国に対しては、非常に有利な条件で競争ができるということになる。これには、ソフトパワー(soft power)、民主政治体制(democracy)、法の支配(the rule of law)、そして世界のどこの国から来たとしても才能と勤勉さを持つ人々を喜んで受け入れることが含まれる。中国はこれらの最近のいくつかの項目ではほとんど何もしていないが、外交的には控えめにしながらも将来の競争力の頭金として教育システムを強化し、自国の強みに継続的に再投資してきた。
2期にわたる断続的な大統領としての任期中、トランプは事実上、あらゆる面で正反対のことをしてきた。しかし、私にとって、ルトワックの色彩豊かな寓話がここ数週間でようやく強く蘇ってきた。
ナイジェリア、シリア、ヴェネズエラといった地理的に遠く離れた国々での過剰な攻撃行動(ヴェネズエラでは、トランプはニコラス・マドゥロの拉致を命じた後、自らを「大統領代行(acting president)」と宣言した)や、イランなどの国々へのさらなる攻撃の脅威など、今やアメリカは多くの国々をエレヴェーターの壁に押し付けている。ルトワックの比喩によれば、中国は主に経済成長によって拡大してきた。二期目のトランプ政権下では、ワシントンは全く異なる方法で拡大を模索し始めた。それは、世界で富と力(wealth and power)を競い合う国家の最初の本能が領土拡大であった帝国時代(the
imperial age)を彷彿とさせるものだった。こうした結果、エレヴェーターの寓話が書かれた時代にはほとんど想像もできなかった事態が生じた。今日では、世界の現状維持勢力として登場するのは、アメリカよりも中国であることが多い。
その最も顕著な例は、トランプが最近グリーンランド領有権を主張し始めたことだろう。これは、アメリカのイメージをならず者国家(a rogue nation)へと作り変えかねない。簡単であろうが難しかろうが、何とかして領有権を獲得すると誓う彼の言葉は、伝統的な外交というより、ハリウッドのギャングの台詞を彷彿とさせる。そして、これは最終的にワシントンとヨーロッパの関係を崩壊させ、ますます警戒を強める同盟関係を、より状況に応じた、そして潜在的に距離を置くものへと変貌させる恐れがある。
トランプがロシアのウラジーミル・プーティン大統領を好意的に見ているように見えること、そしてそれに伴い、包囲されているウクライナへの曖昧な支持を表明していることからも分かるように、これが彼の当初からの目標だったのかもしれない。このアメリカ大統領は、体系的な思考力や長期的なヴィジョンを持つ人物として、私には決して印象に残っていないが、論理的に結論づければ、ルトワックのシナリオは、急速に変化する世界で何が起こるかについて多くのことを示唆してくれる。そして、こうした変化の一部は、実際に既に始まっている。
既に満員のエレヴェーターの中で、ある乗客が攻撃的な態度を取り始め、鋭い肘を突きつけ、顔に向かって咳き込み、常識を完全に無視した行動をとった場合、他の乗客はいずれ反撃せざるを得なくなる。トランプが国際法など関係なく、自らの「道徳観(morality)」にのみ縛られると宣言した後、世界はまさにこの現実に気づき始めている。特に初期段階では、反撃は様々な形を取り、必ずしも攻撃的な行動を真似る必要はない。この巨大な存在に単独で立ち向かう勇気を持つ者はほとんどいないだろう。しかし、国際関係の用語で言えば、彼らは数の力(strength in numbers)を求め、不満を抱えた近隣諸国や、場合によっては直接の仲間ではない同情的な乗客と連携を組む。
これが、ヨーロッパが最近、長らく遅ればせながら南アメリカとの貿易協定を締結したことの、少なくとも部分的には意味するところだ。この論理は「ヘッジング(hedging)」と呼ばれている。これは、長年のパートナーシップが疑問視されたときに各国が行うことであり、誇大妄想に屈しているように見えるトランプ大統領への反応として、世界中でこのような行動がますます増えることが予想される。
もう1つ、より分かりにくく、かつ意外な例として、トランプが熱心に働きかけてきた石油大国サウジアラビアが、空軍向けに中国製戦闘機の購入交渉を進め、核兵器保有国のパキスタンと戦略的相互防衛協定を締結したというニューズが挙げられる。現大統領トランプの下、ワシントンはサウジアラビアに対し、アメリカの最新鋭戦闘機を含め、事実上あらゆる兵器を売却する用意を示してきた。問題は、トランプの気まぐれで攻撃的な言動が、他の国々と同様にサウジアラビアを不安にさせていることだ。
ラテンアメリカは、富、技術革新、技術、製造力、人口、そして考え得るほぼ全ての重要な競争指標において、NATO、日本、韓国といったアメリカの伝統的な緊密な同盟諸国と比べて見劣りする。これは、アメリカが長らく後回しにしてきたラテンアメリカへの再投資に反論するものではない。しかし、トランプ政権下のアメリカが地政学的な拠点を自国中心の半球に据えることで、より豊かで強力な国になるという考えは全くの愚策である。
しかし、さらなる問題が生じる。ヴェネズエラで行ったように、そしてコロンビア、メキシコ、キューバで脅威を与えているように、ラテンアメリカで影響力を行使することで、アメリカは自国の裏庭(backyard)にも、アメリカに対するさらなるバランシング(balancing)をもたらすことになる。それは時間の問題だ。
※ハワード・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年海外特派員を務めた。最新作に『第二の解放:エンクルマ、汎アフリカ主義、そして最高潮の世界的な黒人性(The Second Emancipation: Nkrumah, Pan-Africanism, and Global
Blackness at High Tide)』がある。Blueskyアカウント:@hofrench.bsky.social、Xアカウント:@hofrench
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』


