古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:アイソレイショニズム

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領はグリーンランド領有に関して、反対したヨーロッパ諸国への関税措置を撤廃し、買収交渉を行うという姿勢の転換を行った。「俺たち(アメリカ)が第二次世界大戦で助けてやらなかったら今頃お前たちはドイツを話していたんだぞ、そして、片言の日本語も話していただろう」ということをスイスで開かれているダヴォス会議で発言し、ヨーロッパ諸国の国民の不興を買っている。トランプにすればそんなことはお構いなしだ。「アメリカ・ファースト」で突き進むだけだ。グリーンランドのレアメタルと、中露両国が開発し、アジア諸国にとって便利な北極海航路に対する嫌がらせ(と通行料の徴収ができれば最高)でアメリカ国民に利益をもたらす、お金を配ることが最重要の目的だ。
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 この伝で行けば、パナマ運河もアメリカに戻せということになる。グリーンランドとパナマ運河を押さえることで、世界の物流を押さえることができる。それがトランプと側近たちの狙いだろう。しかし、それは中露両国も黙ってはいないだろう。

 トランプの交渉術は相手にショックを与えて、思考力を奪っておいて、それで交渉を行うというものだ。とんでもないことを言ったり、行ったりして、相手がひるんでいる隙に、自分の要求を通すということだ。交渉という点では、トランプは世界でも指折りの才能と経験を持っている。日本の政界で太刀打ちできる人はいないだろう。経済界ではいるかもしれないが。

 しかし、このようなトランプの交渉術は既に見切られている。トランプが強く出る場合に、相手も強く出て、トランプをひるませることができれば、トランプは引く。実際に、高関税政策に対して、中国は強く出てトランプを引かせている。今回のグリーンランドに関することでも、ヨーロッパ諸国がアメリカ国債の売却をちらつかせることで、トランプは引いた。世界の先進諸国はアメリカ国債を「安全資産」と保有してきたが、その売却という、一種の自爆的な方法を取るぞと脅すことで、トランプを引かせるという方法を採用している。

 トランプの「アメリカ・ファースト」外交は、アメリカの衰退を促進する。そして、世界は、世界覇権国アメリカの衰退に対応するために、この時期を過ごすことになる。

(貼り付けはじめ)

トランプは外交をどのようにやるかを全く分かっていない(Trump Has No Idea How to Do Diplomacy

-たとえ部分的に正しいとしても、彼は間違っている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年8月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/08/19/trump-diplomacy-putin-ukraine-europe/

アラスカで行われたウラジーミル・プーティン大統領とのあの奇妙な首脳会談と、ワシントンで行われたNATO首脳会議の組み合わせは、ドナルド・トランプ米大統領がひどい交渉者であり、「譲歩の術(art of the giveaway)」の達人であることを改めて思い知らせる出来事だった。トランプは準備を怠り、部下に事前に根回しをする(lay the groundwork beforehand)、会議に臨むたびに自分が何を望んでいるのか、どこまで譲歩(red line)すべきかさえ分からずにいる。戦略もなければ細部にも関心がなく、行き当たりばったりで臨む。

最初の任期中、北朝鮮の金正恩委員長との的外れなリアリティ番組のような会合に時間を浪費したことで分かったように、トランプが本当に求めているのは注目と、自分が主導権を握っていることを示唆するドラマチックなヴィジュアルだけだ。彼が締結するであろう合意の中身は、無関係とまでは言わないまでも、二次的なものに過ぎない。だからこそ、最近発表された貿易協定の中には、彼が主張するほどアメリカにとって有利ではないものもあるのだ。

トランプの突飛な外交失策に人々が注目するのは、彼が世界最強の国の大統領であり、カルト的な共和党の卑怯な議員たちが彼の気まぐれに付き従い続けているからに他ならない。しかし、トランプ、マルコ・ルビオ国務長官、そして外交の素人スティーヴ・ウィトコフのような軽薄な人物が、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領やセルゲイ・ラブロフ外相といった人物と対峙すれば、後者がアメリカから巧みに利益を得ることは目に見えている。自問自答してみて欲しい。トランプがアラスカでプーティンと会談した際、アメリカ、同盟国、あるいはウクライナのために何か得たものはあっただろうか? プーティンは何かを譲歩しただろうか? さらに言えば、ウクライナを見捨てないよう説得するために現れたヨーロッパ各国の首脳からトランプはどのような譲歩(concessions)を得たのだろうか?

強力な敵対国との交渉を成功させるには、双方の利益、力、そして決意を冷徹かつ容赦なく現実的に評価する必要がある。プーティンのような指導者を、単に好意を抱いているから、あるいは滑走路にレッドカーペットを敷いたからといって、魅了して譲歩させることは不可能だ。希望的観測にふけったり、誰も真剣に受け止めないような脅しや約束をしたりしても、何の成果も得られない。

この最後の問題は、10年以上にわたり西側のロシア・ウクライナ政策を悩ませてきた。大半の西側諸国の政治家や評論家たちは未だ認めたがらないが、問題の根本原因はロシアと西側諸国の動機付けにおける根本的な非対称性(a fundamental asymmetry)にある。これは双方の脅威認識(perceptions of threat)と致命的な国益の定義(definitions of vital interests)の相違から生じる非対称性だ。(記録のために付記すれば、この認識の隔たりこそが、2014年に私たちのうちの何人かがこの道を進むことに警鐘を鳴らした理由である)。プーティンが自らの行動に数多くの理由を抱えていたとしても、最も重要なのは、ウクライナのNATO加盟がロシアにとって存亡の危機(an existential threat to Russia)をもたらすという恐怖、ロシアの政治スペクトル全体に広く共有されていた恐怖であった。

この問題において西側の立場を最も損なったのは、外交政策エリートたちが「無制限なNATO拡大(open-ended NATO enlargement)」、特に2008年のウクライナとジョージアへの将来加盟申請準備招待が戦略的失策(a strategic blunder)であった事実を、現実逃避的に認めてこなかったことだ。これがプーティンが和平合意で対処すべきと主張する「根本原因(root causes)」の中で最も重要であり、西側諸国の拡大推進の使徒たち(the Western apostles of expansion)が最も激しく否定、無視しようとしてきた点だ。これらはいずれもプーティンの違法な予防戦争(Putin’s illegal preventive war)を正当化するものではないが、そもそも紛争が起きた原因を誰も認めず対処しなければ、深刻な対立を終結させるのは困難である。

非愉快な現実は、モスクワは自国の経済を戦時体制に置き、数十万人の命を犠牲にすることを厭わなかったのに対し、ウクライナを支援する西側諸国はそうしておらず、今後もそうするつもりはないということだ。ウクライナ人は祖国を守るために計り知れないほどの英雄的な犠牲を払ってきたし、西側諸国はキエフに多額の資金、武器、情報、訓練、外交支援を提供してきた。しかし、ヨーロッパや北アメリカの他の国々が、自国の軍隊をキエフに派遣してそこで戦死するなどということについては、最初から明らかだった。(繰り返すが、西側諸国の指導者たちが2008年、あるいは2014年以降にこの点をもっと慎重に検討していればよかったのにと思う。)NATOが自ら参戦すべきだったと考える人々もおり、私は彼らの一貫した姿勢を尊敬しているが、彼らが関係する国民や指導者を説得することは全くできなかった。

その結果、ロシアは戦場で優位に立っており、ウクライナの失策(例えば2023年夏の不運な反撃など)もその一因となっている。ウクライナが失った領土(クリミアを含む)を全て奪還し、NATOとヨーロッパ連合に加盟することが唯一の受け入れ可能な結果だと依然として主張する人たちにはこの目標を具体的にどのように達成するつもりなのか説明を求めるべきだ。この奇跡をどのように実現するのか、首尾一貫した説得力のある戦略を提示するまでは、交渉のテーブルに彼らを招き入れるなど全く馬鹿げている。

したがって、トランプが先日のアラスカ首脳会談でプーティン大統領の側に立ったのは正しかったのだろうか? そして、トランプの姿勢を固めようとワシントンを訪れたヨーロッパ諸国の首脳たちの甘言や嘆願(blandishments and pleas)に抵抗すべきだったのだろうか? 答えはノーだ。

ここではより大きな利害関係が絡んでおり、アメリカとヨーロッパの交渉戦略はこれらに焦点を当てるべきである。プーティン大統領の要求の一部は将来の和平協定で受け入れざるを得ないとしても、NATO加盟国の一部からの軍撤退や、ウクライナの「非ナチ化(de-Nazified)」と部分的な武装解除といった要求は即座に拒否されるべきだ。ロシアが、将来ウクライナに駐留するかもしれないと懸念する外部勢力から自国を守る必要があると主張するならば、ウクライナはロシアによる新たな攻撃から守られ、自国を防衛する手段を与えられるべきである。

後者の懸念は、ウクライナや他の欧州諸国が、NATO第5条のような、正式な加盟国ではないものの何らかの安全保障保証に関心を持つ理由である。しかし、この考えには少なくとも2つの明白な反対意見がある。第一に、第5条は完全な安全保障の誓約ではなく、攻撃を受けた加盟国を支援するために同盟軍の派遣を自動的に引き起こすような仕掛けでは決してない。第5条は、加盟国の1つへの攻撃は加盟国全体への攻撃とみなされ、各加盟国は個別および集団的に「必要と考える行動(such action as it deems necessary)」をとると述べているだけだ。第二に、そして同様に重要な点として、トランプは生涯にわたって約束を破り、予告なしに方針を転換してきた経歴を持つ。それを考えると、分別のある国が彼の約束や誓約をなぜ信じるだろうか? たとえウクライナに対する何らかの安全保障の誓約について最終的に合意に達したとしても、誰がそれを真剣に受け止めるだろうか?

プーティン大統領とゼレンスキー大統領の直接会談の実現も検討されており、おそらくアメリカが仲介役を務めることになるだろう。これは、これまでそのような要請に抵抗してきたプーティン大統領にとって象徴的な譲歩となるだろう。しかし、戦場の現状やウクライナの長期的な展望に大きな変化がない限り、そのような会談が永続的な平和をもたらすとは到底思えない。繰り返しになるが、個人的な会談というドラマに惑わされないことが重要だ。メディアは騒ぎ立てるが、(トランプとウィトコフが関与している場合)成果はほとんどない。

一体何が期待できるというのだろうか? 戦闘の進展状況、そしてロシアがこの問題をウクライナ以外の国よりも重視しているという事実を考えると、モスクワは望んでいたことの一部を得ることになるだろう。しかし、ロシアがすでに支払ってきた莫大なコストと、ウクライナが今後も外部からの寛大な支援を受け続けることでさらに大きな損失が生じる可能性を考えると、西側諸国の利益にならないものをロシアに提供することを拒否することは可能であるはずだ。

トランプ大統領のオンオフの繰り返しや、その他多くの問題でヨーロッパの同盟諸国と争おうとする姿勢とは対照的に、最良の合意を得るための最善の方法は、アメリカがヨーロッパとの統一戦線(a unified front)を維持し、NATOがウクライナに寛大な軍事支援を継続し、ウクライナとアメリカが双方の交渉状況を現実的に評価した上で、ロシアとの真剣かつ綿密な交渉を進めることだ。しかしながら、真剣かつ綿密な交渉を遂行してくれる人物を探しているのであれば、ペンシルベニア通り1600番地は私としてはお勧めしない。

こうした状況を考えると、もし昨年(2024年)11月にカマラ・ハリス米副大統領が大統領に選出されていたらどうなっていただろうかと疑問に思う。ハリスは優れた外交政策戦略家とは言えず、バイデン政権もロシアとウクライナへの対応で幾度となく失策を犯していた。しかし、ワシントン(そして民主党エリート層)では、ウクライナがその目的の全てを達成することは不可能であり(たとえそれが抽象的にどれほど望ましく正当であったとしても)、アメリカ大統領選が終結した暁には戦争を終結させる必要があるという認識が広く共有されていた。ハリスなら、バイデンのティームを他の有能な顧問に交代させ、その成果を追求するよう指示し、困難な状況下でもウクライナが可能な限り最良の合意を得られるよう支援し続けただろうと私は思う。

もちろん、ハリス政権が成功したかどうかは分からない。しかし、信頼できる有能な外交アクターとしてのアメリカの評判をトランプ氏以上に傷つけることはできなかっただろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)」「MAGA」「アメリカ・ファースト(America First)」というスローガンと共にドナルド・トランプは大統領にまで駆け上がった。一敗地に塗れても再び、捲土重来で大統領に返り咲いた。それは、アメリカの有権者たちの意思がそこにあったからだ。「アメリカはもう世界の警察官を辞めて国内優先に戻ろう」「他国に攻め入るのや止めよう」という、生活に疲れたアメリカの有権者たちの叫びがトランプ大統領を生み出したのだ。これは、ポピュリズム(既存の政治やエリートたちに対する異議申し立て)の勝利であった。そして、トランプ革命は実現するはずだった。

しかし、現在、トランプ革命は進んでいない。既存のエリートたちに対する最大の攻撃材料であるエプスタイン文書は日本の戦後の教科書の如く黒塗りとなった。国内の物価高は依然として続いている。2025年4月に高関税政策を打ち出したが、その後はかなり後退している。こうした国内政策の不調をごまかすために外国の問題に首を突っ込むという常套手段をトランプもまた選択した。

 トランプを支持した有権者の間でも支持と不支持が分かれるだろう。トランプ個人を支持する人々は今回のヴェネズエラ攻撃も支持するだろう。しかし、トランプの主張した「アメリカを再び偉大に」「アメリカ・ファースト」の考えを支持する人々にとっては、今回の攻撃は受け入れられない。「海外に軍隊を出さないと言ったではないか」ということになる。これに「エプスタイン文書もなんだか訳の分からない形で形だけ公開しただけだ」という不満も重なれば、トランプに対する不満も高まることになる。

 「トランプが三期目を目指す」という話もあった。アメリカの大統領職は2期8年しかできないと憲法の規定でなっている。それを覆すという話もあったが、自身の熱心な支持基盤であるMAGA有権者たちの間で分裂が起きてしまえばそれも沙汰やみということになるだろう。トランプが次の選挙に出ないということになれば、トランプはやりたい放題だ。後は野となれ山となれである。トランプ自身がトランプ革命の主導者でありながら、トランプ革命を崩壊に導くということになる。裏切られたトランプ革命で2026年の年が明けたということになる。世界は不安定さを増し、アメリカの衰退とドル離れは促進される。この現実を私たちは重く受け止めばならない。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプがヴェネズエラ体制転換に可能性を残す中でMAGA層に分裂が生じる(MAGA divide emerges as Trump leaves door ajar to regime change in Venezuela

アル・ウィーヴァー筆

2026年1月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/5673779-conservative-concerns-trump-venezuela/

ドナルド・トランプ大統領がヴェネズエラへの地上部隊派遣と政権交代の可能性を残した決定は、保守派からは冷ややかな受け止められ方をしている。彼らは、トランプ大統領が「永遠の戦争(forever wars)」を終わらせ、外国紛争に介入しないという重要な選挙公約を危険に晒していると警告している。

トランプ大統領は長年にわたり、中東地域における長期にわたる紛争を招いたジョージ・W・ブッシュ政権の政策を激しく非難し、「アメリカ・ファースト(America First)」運動を標榜してきた。

しかし、トランプ大統領の評価はここ数カ月で低下しており、その筆頭は週末の出来事、そしてさらに重要なのは、トランプ大統領が適切な政権移行が行われるまでこの南アメリカの国を「統治(run)」する計画を打ち出した後の今後の展開である。

トランプ大統領の元ホワイトハウス補佐官スティーヴ・バノンは月曜日のポッドキャスト番組「ウォー・ルーム」で次のように述べた。「MAGAはトランプ大統領と精緻な軍事作戦、そしてマドゥロのマドゥロを全面的に支持した。彼を捕まえて裁判にかけたい?  捕まえて裁判にかけろ。人々がここで懸念しているより大きな問題は、トランプ大統領が『私たちは地上部隊を派遣する(Hey, we’re going to do boots on the ground)』と発言し、昨夜は『国家を再建する(We’re going to rebuild the country)』と発言したことだ」。

バノンはさらに、マドゥロがブルックリンのメトロポリタン拘置所から周辺地域を通って移送される様子を捉えた写真や動画を多数挙げ、皮肉を込めて「素晴らしい(lovely)」と評した。

バノンは「マドゥロがブルックリンの拘置所からブルックリンの美しい土地、そしておそらくブロンクスの一部を通って移送された時、アメリカはカラカスよりもひどい状況に見えた。おそらく、アメリカにも焦点を当てるべきだろう」と述べた。

トランプ大統領の発言は週末の様々な時点で行われ、当局は徐々に撤回し、そのようなことは何も起こっていないと主張した。

マルコ・ルビオ国務長官は日曜日のインタヴューで、現在、アメリカ軍はヴェネズエラに駐留していないと述べた。

しかしながら、トランプ大統領は、依然として異なる調子で歌い続けている。MAGA支持層の一部を警戒させた最初の発言は、石油産業を維持するためにヴェネズエラに軍隊を残留させる可能性のある計画に焦点を当てたものだった。

トランプ大統領は記者団に対して、「私たちは石油インフラを再建する。私たちはそれを適切に運営し、ヴェネズエラ国民の安全を確保する」と述べた。

週末後半には、かつてマドゥロ大統領が率いていたヴェネズエラの将来に対する懸念も一蹴した。

トランプ大統領は『アトランティック』誌のインタヴューで次のように語った。「あの国の再建や政権交代、何と呼ぼうと、今の状況よりはましだ。これ以上悪くなることはない」。

一連の発言は、複数のMAGAの主要な支持者を動揺させている。その中には、アフガニスタンとイラクでの長年の戦争を背景に成人した若者たちも含まれる。

彼らの目には、ヴェネズエラで起こっていることは、彼らが支持してきたことではないということになる。

「ヴェネズエラは、シリア、アフガニスタン、イラクが『解放された(liberated)』ように『解放』された」と右派の論客キャンディス・オーエンズは週末、ソーシャルプラットフォームXに投稿し、「CIAは『グローバリストのサイコパス(globalist psychopaths)』の命令で、またしても国家の敵対的乗っ取り(hostile takeover of a country)を企てた」と述べた。

トランプ大統領と彼のティームによる対外行動への反応として、こうした議論が巻き起こったのは今回が初めてではない。6月にアメリカがイランの核施設への攻撃を開始した際も、多くの著名な保守派連邦議員たちが同様の懸念を表明した。トランプ大統領は、この敵対国の体制改革について同様の見解を示した。

しかし、マドゥロ大統領の拘束とヴェネズエラ政府の不透明な将来が、事態をさらに悪化させている。かつてはMAGAの正会員だったものの、トランプ大統領の支持基盤から排除されたマージョリー・テイラー・グリーン前連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)は、今回の動きをロシアによるウクライナ侵攻や中国による台湾併合の可能性になぞらえた。

グリーン前議員は週末、「政権交代、外国の戦争への資金提供、そしてアメリカ人の税金が外国の活動、国内外の外国人、そして外国政府に流れ続ける一方で、生活費、住宅費、医療費の高騰に直面し、税金の詐欺や不正利用について知ることに対し、ほとんどのアメリカ人が激怒している。特に若い世代はそうだ」と語った。

グリーン前議員は続けて、「アメリカ国民が、アメリカ政府による終わりなき軍事侵略と外国戦争への支援(our own government’s never ending military aggression and support of foreign wars)に嫌悪感を抱くのは正しい。なぜなら、私たちはその費用を負担せざるを得ず、共和党も民主党も常にワシントンの軍事機構に資金を提供し、活動させているからだ。MAGAの多くのメンバーは、これを終わらせるために投票したと考えている。しかし、それは全くの間違いだった」と述べた。

しかし、MAGA傘下の他の人々は、今後起こりうる事態について公に不満を表明している人々は、不必要にそうしていると主張している。

彼らは、政権の行動は限定的であり、トランプの発言にもかかわらず、長期にわたる政権交代への懸念は単なる雑音に過ぎないと主張している。

トランプの有力な支持者であるエリック・シュミット連邦上院議員(ミズーリ州選出、共和党)は次のように述べた。「現代においておそらく最も複雑で秘密裏に行われた任務を遂行した際、私たちは約5時間にわたり地上部隊を派遣した。皆さんが目にしているのは、アメリカ国民を守るために、この半球(西半球)における適切な権限がより一層行使されているということだと考える」。

他の人々の目には、この動きはMAGA全体に広く反響を呼ぶだろう。その理由は単純だ。

トランプ政権に近いある情報筋は、MAGAのアイソレイショニスト派を「声高な少数派(loud minority)」として軽視し次のように語った。「結局のところ、MAGAにとって重要なのは勝利だ。これは、アメリカ合衆国を善の力、つまり、badaとして強化することだ。もし採掘が失敗していたら、私たちは別の話をしていただろう」。

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(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 20世紀は「アメリカの世紀」と言ってよいだろう。アメリカが世界の中心となって、覇権国となって、世界の政治や経済を動かしてきた。その中心的な考えとなったのは、リベラル国際主義(liberal internationalism)であった。これは第二次世界大戦前までのアイソレイショニズムを放棄して、戦争終結後もアメリカが世界の安定に寄与するために、世界各国と同盟関係を結び、戦後世界秩序を構築した。しかし、ドナルド・トランプ大統領の出現によって、アメリカの外交政策は大きく変化している。リベラル国際主義は戦後の長い間、つまり、アメリカの世紀においては主流となる考え方だったが、トランプが二期目の政権に就くことで大きく変化している。リベラル国際主義への懐疑論は政治的な立場を超えて広がりを見せている。

アメリカの国際的な役割が問われる中、トランプ大統領のもとでの政策の一貫した批判や不安が高まっている。下記論稿では、その背景に、過去の戦争や秘密作戦による国民の信頼の損失があることも指摘されている。戦後世界秩序を守るためには、常に継続的な努力が求められてきたが、トランプ政権の下で、その基盤が特に急速に揺らいでいる現実が浮き彫りになっていると下記論稿では指摘されている。

 戦後世界におけるアメリカの役割が大きかったことを否定する人は少ないだろう。しかし、その負の側面もまた指摘しなければならない。そして、アメリカの国力が低下する中で、アメリカの役割が変化することは自然な流れである。アメリカ国民が内向きになることは自然なことだ。トランプ大統領は、アメリカの国家としての生命力とアメリカ国民の内向き意識を汲み取り、外交政策を大きく転換しようとしている。それは混乱や不信感を生み出しているが、大きくとらえるならば、時代が変化する中で、新しい時代を生み出すための「陣痛」と言えるかもしれない。

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第二次世界大戦後の体制は常に脆弱だった(The Post-World War II System Was Always Fragile

-フランクリン・D・ルーズヴェルトは平和な時期においてもアメリカの世界に対する義務は継続すると警告を発した。

ジュリアン・E・ゼリザー筆

2025年5月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/12/post-world-war-two-international-system-fragile/

第二次世界大戦が終結してから80年が経過した。第二次世界大戦の終結という歴史的な瞬間は、祝賀ムードと高揚感、そして人類全体の安堵をもたらした。壊滅的な戦争はついに終結し、ファシズムは敗北したかに見えた。アメリカの当時の雰囲気を最もよく表しているのは、1945年8月14日、日本降伏のニューズが報じられた後、ニューヨーク市のタイムズスクエアでアメリカ海軍の水兵が女性にキスをしているという象徴的な写真だろう。

しかし、アメリカ人が国際的な脅威がまだ終わっていないことに気づくのに、それほど時間はかからなかった。第二次世界大戦後、ソ連とアメリカ合衆国の間に、冷戦が急速に広がった。核兵器の出現により、全面衝突(full-scale confrontation )を回避することのリスクは劇的に高まった。

これに対し、ハリー・S・トルーマン大統領(民主党)とドワイト・D・アイゼンハワー大統領(共和党)は、リベラル国際主義(liberal internationalism)のヴィジョンを推進した。2人の大統領は連邦議会と協力し、2025年まで存続する一連の制度と政策を構築した。この戦後秩序は、人類が想像しうる最悪の軍事紛争(the worst military conflict)を阻止し、ヨーロッパに一定の安定をもたらした。これはアメリカの国家安全保障と経済力にとって不可欠であることが証明された。

今日、第二次世界大戦後のシステム全体が深刻な脅威に晒されている。ドナルド・トランプ大統領は、トルーマン大統領とアイゼンハワー大統領が築き上げたものに、組織的な攻撃を開始した。アメリカ政治の多くの要素と同様に、トランプ大統領は長年の前提の脆弱性(fragility)を露呈させた。アメリカ大統領による正面攻撃を受けたことで、外交政策の根幹は崩れ始めた。

トランプ大統領はわずか数カ月で主要な国際関係を深刻に緊張させ、あるいは断絶させ、カナダの敵意さえ招いた。イーロン・マスクは米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSID)にチェーンソーを振りかざした。トランプ大統領はNATOについて辛辣な批判を繰り返し、同盟への関与の維持に懸念を表明する一方で、ロシアやハンガリーといった独裁国家(autocratic countries)を称賛している。トランプはテレビでウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領を侮辱し、ロシアとの戦争におけるウクライナへのアメリカの支援期限が迫っていることを明らかにした。

トランプ大統領は1940年代後半に確立された国家安全保障機構の多くを空洞化させてしまった。ヘンリー・キッシンジャーが1973年と1975年にリチャード・ニクソン大統領とジェラルド・フォード大統領の下で国家安全保障問題担当大統領補佐官と国務長官を務めていた当時、政府機関において1人の人物が絶大な影響力を持つと考えられていた。今月初め、マルコ・ルビオが2つの職を兼任する史上二人目の人物となった際、専門家のほとんどは、ルビオの役割は大統領の望むことを何でも承認することだと合理的に推測した。

第二次世界大戦終結以前から、フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領は、アメリカの世界に対する義務は継続すると警告していた。1945年1月の最後の就任演説で、ルーズヴェルトは次のように述べた。「私たちは、恐ろしい代償を払って教訓を学び、そこから利益を得るだろう。私たちは、平和に1人で生きることはできないこと、私たち自身の幸福は遠く離れた他国の幸福にかかっていることを学んだ。私たちは、ダチョウのようにも、飼い葉桶の中の犬のようにもならず、人間として生きなければならないことを学んだ。私たちは、世界市民(citizens of the world)、人類社会のメンバー(members of the human community)となることを学んだ。エマーソンが述べたように、『友人を持つ唯一の方法は、友人になることだ(The only way to have a friend is to be one)』という単純な真実を学んだ。猜疑心や不信感を抱いたり、恐怖心を抱いたりして平和に近づいても、永続的な平和を得ることはできない」。

1945年以来、このヴィジョンはあらゆる困難と挫折に直面してきたが、観察者の多くは、その基本的前提は維持されていると考えていた。ネオ・アイソレイショニズムは終焉を迎えたとみなされ、リベラル国際主義が主流となった。トランプ政権の最初の任期後も、その基盤は生き残ったように見えた。

しかし、トランプが二期目に、数十年にわたりアメリカの外交政策を導いてきた国際システムを解体しようとしている今、その基盤の弱さ(the foundation’s weakness)が際立ってきている。

歴史的に見れば、リスクは常に存在していた。国家安全保障体制が構築され始めた初期の頃、リベラル国際主義者たちは、永続的な国際的関与を主張し、激しい抵抗に直面した。国防総省、国家安全保障会議、中央情報局を創設した1947年の国家安全保障法をめぐる連邦議会審議の際、推進派は「兵営国家(garrison state)」がアメリカが反対すると主張する全体主義そのものを助長するのではないかという懸念を克服しなければならなかった。

歴史家マイケル・ホーガンの著書『鉄の十字架(A Cross of Iron)』は、その抵抗の根深さを詳細に描いている。トルーマンの公約に反対したオハイオ州選出のロバート・タフト連邦上院議員のような保守派共和党員、ソ連との不必要なエスカレーションを懸念したヘンリー・ウォレス副大統領のような進歩主義派、そして連邦政府資金による研究の制約を懸念する大学の科学者たちなど、抵抗の根深さが見て取れる。1945年から1953年の間、トルーマンは中道(middle path)、すなわち新たな制度を制限し、文民の国防長官を軍事担当に任命するなど、安全保障措置を講じる道を模索した。連邦議会は、元将軍または元海軍提督が連邦議会の許可なしに任命される資格を得るには最低10年の勤務期間が必要であると定めた。

トルーマン大統領は、恒久的な戦時体制は予算を膨れ上がらせるという財政保守派の懸念を払拭するため、国内政策の予算削減も受け入れた。トルーマン大統領は、自らが望んでいたより野心的な国民皆兵訓練(universal military trainingUMT)プログラムではなく、戦時における兵員補充のための平時における選抜徴兵制度(Selective Service System)を採用した。国民皆兵訓練は、18歳になると全ての男性に軍事訓練を受けることを義務付けるものだった。アメリカ社会主義労働党から全米教育協会に至るまで、幅広い反対派連合が国民皆兵訓練を建国の理念に反するとして攻撃していた。

北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty OrganizationNATO)に対する懸念も長年続いていた。連邦上院におけるNATOに関する議論の最中、タフト連邦上院議員は次のように宣言した。「非常に遺憾ではあるが、北大西洋条約の批准に賛成票を投じることはできないという結論に至った。なぜなら、この条約には、我が国の費用で西ヨーロッパ諸国の軍備増強を支援する義務が伴うと考えるからだ。この義務は、世界における平和ではなく戦争を促進するものだと私は考えるからだ(with that obligation I believe it will promote war in the world rather than peace)」。

NATO設立に貢献した軍事指導者のアイゼンハワーでさえ、ヨーロッパの同盟諸国に対し、より多くの責任を負うべきだと考え、非公式に不満を表明した。NATOへの批判は、1990年代初頭の冷戦終結後、ますます強まった。ソ連の脅威が後退するにつれ、アメリカの外交政策を他国の利益に縛り付ける根拠を疑問視する声が高まった。

NATOの拡大はロシアを不必要に刺激するのではないかと懸念する人たちもいた。1997年、軍備管理協会(Arms Control Association)は当時のビル・クリントン大統領に対し、「最近のヘルシンキ・サミットとパリ・サミットの焦点となっている、アメリカ主導のNATO拡大への取り組みは、歴史的な規模の政策的誤りである。NATOの拡大は同盟諸国の安全保障を低下させ、ヨーロッパの安定を揺るがすと私たちは考えている」と警告した。

国連もまた、長らくNATOの標的となってきた。1964年、共和党の大統領候補だったバリー・ゴールドウォーター連邦上院議員は、国連は無力だと批判した。ジョン・バーチ協会(the John Birch Society)は1960年代、アメリカの脱退を求めるキャンペーンを展開した。1984年、ロナルド・レーガン大統領は、ユネスコの腐敗と反西側偏向を非難し、アメリカを脱退させた。 2000年の改革党大会で、パット・ブキャナンは当時の国連事務総長コフィ・アナンに言及し、「コフィ氏よ、失礼ながら年末までに出て行かなければ、荷造りを手伝うために数千人の米海兵隊員を派遣する」と述べ、アメリカからの国連の立ち退きを求めた。

リベラル国際主義への懐疑論は、右派に限ったことではない。ジョンソン首相がヴェトナム戦争をエスカレートさせると、多くのリベラル派や進歩主義者は外交政策のコンセンサスに反旗を翻した。この戦争は、デイヴィッド・ハルバースタムの言葉を借りれば、「ベスト・アンド・ブライティスト」の信用を失墜させ、アメリカの指導者たちが帝国ではなく民主政治体制の名の下に(in the name of democracy rather than empire)真に行動しているという信頼を揺るがした。学生運動家や連邦議会の支持者たちは、アイゼンハワー大統領が退任演説で「軍産複合体(military-industrial complex)」と呼んだもの、つまり請負業者、連邦議員、国防当局者による不道徳な同盟が、予算の肥大化と戦略の逸脱を生み出していると非難した。

1973年の徴兵制度の廃止は、ほとんど抗議されることなく可決された。そして、1975年から1976年にかけて、フランク・チャーチ連邦上院議員率いる委員会がCIAFBIによる国内監視や無許可の暗殺を含む秘密作戦を暴露すると、国民の信頼は地に落ちた。最終報告書は次のように結論づけている。「諜報機関は国民の憲法上の権利を侵害してきた。その主な理由は、憲法の起草者が説明責任を果たす(assure accountability)ために設計した抑制と均衡の仕組みが適用されていないためだ」。

政府機関の指導者たちは信頼回復に努めたものの、依然として脆弱な状態が続いていた。911事件以降、監視と拷問(surveillance and torture)に関する暴露は国民の信頼をさらに損なわせた。2004年、CBSのダン・ラザー記者は、黒いマントとフードをかぶった囚人が機械に指を繋がれた状態で小さな段ボール箱の上に立たされている映像が放映された際、厳粛な声で「アメリカ人はイラク人囚人にこのようなことをした(Americans did this to an Iraqi prisoner)」と述べた。ラザー記者によると、囚人は小さな箱から落ちれば感電すると告げられたという。イラクにおける連合軍作戦担当副部長マーク・キミットは「兵士たちを常に誇りに思える日ばかりではない(Some days we’re not always proud of our soldiers)」と認めた。アブグレイブ収容所での暴露が例外的な事態ではなく、政府の戦略の一部であることが明らかになると国民の怒りはより高まった。

共和党の大統領と同様に、民主党も同盟諸国の対応が不十分だと攻撃してきた。熱心な国際主義者だった当時のバラク・オバマ大統領は、2016年に『アトランティック』誌のジェフリー・ゴールドバーグに対し、「フリーライダーは私を苛立たせる()free riders aggravate me」と語った。

厳しい真実は、戦後の国際秩序が確固たる政治的基盤の上に築かれたことは決してなかったということだ。抵抗は当初から存在していた。トルーマンとアイゼンハワーが築き上げたものを守るには、常に継続的な努力が必要だった。批判は、時にはシステムの中核原則(core principles)に向けられ、また時には、破滅的な政策や制度の濫用に端を発した。いずれにせよ、トランプがアメリカの統治の柱であるこの秩序を標的にしたとき、多くの外交政策のヴェテランが予想していたよりも急速に崩壊し始めた。

リベラル国際主義の欠点を明確に理解していたとしても、その貢献については否定することはできない。第二次世界大戦後に生まれた同盟(alliances)、制度(institutions)、そして、関与(commitments)は、核による惨事を防ぎ、世界情勢を安定させ、アメリカの経済力を支え、国家危機の際には経験豊富な助言を提供してきた。

戦後システムの支持者たちは今、途方もない闘いに直面している。反対の声は声高であるだけでなく、深く根付いている。彼らが自分たちのヴィジョンを守り、正当な批判に率直に反応できない限り、彼らが生涯をかけて守ってきた世界秩序が崩壊し、アメリカ・ファーストの深淵に取って代わられるのを、彼らはすぐに目撃することになるかもしれない。

※ジュリアン・E・ゼリザー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。プリンストン大学歴史学・公共問題教授。独自の視点のニューズレター「ザ・ロング・ヴュー」の著者。Xアカウント:@julianzelizer

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 ドナルド・トランプの主張は突き詰めれば、「アメリカ・ファースト(America First)」だ。このブログでも何度も書いているが、これは「アメリカが一番!」という単純な話ではない。「アメリカ国内の抱える深刻な諸問題を解決することを最優先しよう」ということであり、「アメリカ国内(問題解決)優先主義」と訳すべき言葉だ。これに関連して、「アイソレイショニズム(Isolationism)」という言葉もあるが、これも「孤立主義」と簡単に訳すのは間違っている。アメリカが完全に孤立することはできない。こちらもやはり「国内優先主義」と訳すべきだ。だから、「アメリカ・ファースト」と「アイソレイショニズム」はほぼ同じ意味ということになる。

 「アメリカ国内優先主義」ということになれば、アメリカが現在、世界中に派遣しているアメリカ軍をアメリカ国内に戻す、世界経営から手を引くということになる。これに困ってしまうのはヨーロッパである。ヨーロッパは第一次世界大戦、第二次世界大戦と20世紀の前半で二度の破壊を極めた戦争を経験した。戦後ヨーロッパは統合と、アメリカによる安全保障への関与という方向に進んだ。ヨーロッパ諸国はお互いが戦わないように、調停者・仲裁役・抑え役・お目付け役としてアメリカを必要とした。そして、対外的には、具体的には、ソ連、そしてロシアに対しては、アメリカ軍の存在を前提とした軍事力の軽度の整備(軽い負担で済んできた)を行ってきた。それが、アメリカが手を引くということになったらどうなるか。ヨーロッパ域内での調和は乱れ、ロシアに対しては足並みが乱れ、各国の判断で、より軍事力を強化する方向に進む国と、ロシアとの友好関係を重視する国に分かれるだろう。

 ヨーロッパは戦後の制度設計をアメリカの存在を前提にして築いてきた。そして、協調が進み、繫栄することができた。しかし、その良い面とは裏腹に、アメリカの力が衰えた場合、アメリカが手を引く場合の備えができていなかった。そして、現在は、アメリカの国力の衰退が現実のものとなっている。アメリカが手を引けばヨーロッパは混乱状態になる。私たちがヨーロッパから学ぶべきことは、アメリカを関与させない、対等な地域統合組織を作ること、そして、それをアジアで実現することだ。時代と状況の変化はここまで来ている。いつまでも、世界一強のアメリカ、超大国のアメリカということをのんきに信じ込んでいる訳にはいかない。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプの復帰はヨーロッパを変貌させることになるだろう(Trump’s Return Would Transform Europe

-ワシントンが掌握しなければ、ヨーロッパ大陸は無政府的で非自由主義的な過去に逆戻りする可能性がある。

ハル・ブランズ筆

2024年6月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/26/europe-security-eu-nato-alliances-liberal-democracy-nationalism-trump-us-election/

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どっちが本当のヨーロッパだろうか? 過去数十年間、ほぼ平和で民主的で統一された大陸? それとも、それ以前に何世紀にもわたって存在していた、断片化され、不安定で、紛争に満ちたヨーロッパ(fragmented, volatile, and conflict-ridden Europe)? 11月の米大統領選挙でドナルド・トランプが勝利すれば、こうした疑問の答えはすぐに分かるかもしれない。

トランプは大統領としての最初の任期中に、アメリカをNATOから離脱させることに執心した。彼の元側近の中には、もし二期目に当選したら本当にやってくれるかもしれないと信じている人もいる。そして、このように語っているのはトランプ大統領だけではない。アメリカ・ファーストの有力信奉者の一人であるJD・ヴァンス連邦上院議員は、「ヨーロッパが自立する時が来た([The] time has come for Europe to stand on its own feet)」と主張している。アメリカ・ファーストの精神に明確に賛同していない人々の間でも、特にアジアにおいて、競合する優先事項への影響力はますます強くなっている。ポストアメリカ(アメリカ後)のヨーロッパについてより考慮されるようになっている。それがどんな場所になるかを聞いてみる価値はある。

楽観主義者たちは、たとえ7月にワシントンで開催されるNATO加盟75周年記念首脳会議で、NATO首脳たちが祝賀するアメリカの安全保障の傘を失ったとしても、ヨーロッパが繁栄し続けることを期待している。この見方では、アメリカは自国に引き上げることになるかもしれないが、過去80年間で豊かになり、安定し、確実に民主政治体制を築いてきたヨーロッパは、多極化した世界において建設的で独立した勢力として行動する用意ができている。

しかし、おそらくポスト・アメリカのヨーロッパは、直面する脅威に対抗するのに苦労し、最終的には過去のより暗く、より無秩序で、より非自由主義的なパターンに逆戻りする可能性すらある。「今日の私たちのヨーロッパは死に向かっているようだ。死に至る可能性がある」とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は4月下旬に警告した。アメリカ・ファーストの世界では、そうなるかもしれない。

第二次世界大戦後、ヨーロッパは劇的に変化したため、多くの人々、特にアメリカ人は、この大陸がかつてどれほど絶望的に見えたかを忘れている。古いヨーロッパは、歴史上最も偉大な侵略者や最も野心的な暴君を生み出した。帝国の野心と国内の対立が紛争を引き起こし、世界中の国々を巻き込んだ。飛行家で、著名な孤立主義者でもあったチャールズ・リンドバーグは1941年、ヨーロッパは「永遠の戦争(eternal wars)」と終わりのないトラブルの土地であり、アメリカは、そのような呪われた大陸に近づかないほうが良いと述べた。

根本的な問題は、限られたスペースにあまりにも多くの強力なプレイヤーたちが詰め込まれている地理にあった。この環境で生き残る唯一の方法は、他者を犠牲にして拡大することだった。この力関係により、ヨーロッパは壊滅的な紛争のサイクルに陥ることになった。 1870年以降、この地域の中心部に、産業と軍事の巨大企業としての統一ドイツが出現したことにより、このビールはさらに有毒なものになった。ヨーロッパ大陸の政治は、ヨーロッパ大陸の地政学と同じくらい不安定だった。フランス革命以来、ヨーロッパは、自由主義と歴史上最もグロテスクな形態の暴政(tyranny)の間で激しく揺れ動いた。

1940年代後半、第二次世界大戦によって、こうした争いのサイクルが壊れたと考える理由はなかった。古い対立が残ったままとなった。フランスは、ドイツが再び蜂起して近隣諸国を破壊するのではないかと恐れていた。ソ連とその支配下のヨーロッパ共産主義者という形で、新たな急進主義が脅威に晒される一方、ポルトガルとスペインでは右翼独裁政権が依然として力を持っていた。多くの国で民主政治体制が危機に瀕していた。経済的貧困が対立と分裂(rivalry and fragmentation)を加速させた。

新しいヨーロッパの誕生は、決して必然ではなかった。長い間大陸間の争いを避けようとしていた同じ国(アメリカ)による、前例のない介入(unprecedented intervention)が必要だった。この介入は冷戦によって引き起こされ、遠く離れた超大国にとってさえヨーロッパにおける均衡(European equilibrium)の更なる崩壊が耐え難いものになる恐れがあった。1940年代後半から1950年代前半にかけて、しばしば混乱した状況の中、ヨーロッパは徐々に統合されていった。そして、それは革新的な効果をもたらす一連の連動した取り組みを特徴としていた。

最も重要なのは、NATOを通じたアメリカの安全保障への取り組みと、それを裏付ける軍隊の派遣であった。アメリカ軍による保護は、西ヨーロッパをモスクワから、そして西ヨーロッパ自身の自己破壊的な本能から守ることで、暴力の破滅のループを断ち切った。アメリカがこの地域を保護することで、宿敵同士はもはや互いを恐れる必要がなくなった。1948年に、あるイギリス政府当局者は、NATOが「ドイツとフランスの間の長年にわたるトラブルは消滅するだろう」と述べた。西ヨーロッパ諸国はついに、他国の安全を否定することなしに、安全を達成することができるようになった。その結果、この地域を悩ませていた政治的競争や軍拡競争が回避され、NATO加盟諸国が共通の脅威に対して武器を確保できるようになった。

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マーシャル・プランのポスターには、ヨーロッパ各国の国旗をシャッターに、アメリカ国旗を舵に見立てた風車が描かれている

こうしてアメリカの政策は、前例のない経済的・政治的協力という第二の変化を可能にした。マーシャル・プランを通じて、アメリカは復興支援の条件としてヨーロッパ域内の協力を積極的に推し進め、後にヨーロッパ経済共同体(European Economic CommunityEEC)やヨーロッパ連合(European UnionEU)となる国境を越えた構造を生み出した。アメリカ軍の存在は、かつての敵同士が安全保障を損なうことなく資源を出し合うことを可能にし、この協力を促進した。1949年、西ドイツのコンラート・アデナウアー首相は「アメリカ人は最高のヨーロッパ人だ」と述べた。言い換えれば、ワシントンの存在によって、ヨーロッパの同盟諸国は過去の対立関係を葬り去ることができたのである。

第三の変化は政治的なものであった。侵略が独裁政治に根ざしているとすれば、ヨーロッパの地政学を変革するには、その政治を変革する必要があった。その変革は、連合諸国の占領下にあった西ドイツの強制的な民主化(forced democratization)から始まった。この変革には、脆弱な民主政治体制国家を活性化させ安定させるためにマーシャル・プランによる援助が用いられた。この変革もまた、アメリカの軍事的プレゼンスによって可能になった。アメリカの軍事的プレゼンスは、ヨーロッパの民主政治体制を消し去ろうとするソ連の覇権(hegemony)を食い止めると同時に、急進的な左派や右派を疎外する寛大な福祉プログラムに投資することを可能にした。

これは、ヨーロッパの問題に対するアメリカ独自の解決策だった。アメリカだけが、ヨーロッパを敵から守るのに十分な力を持ち、しかもヨーロッパを征服して永久に従属させるという現実的な脅威をもたらさないほど遠い存在だった。アメリカだけが、荒廃した地域の再建を支援し、繁栄する自由世界経済をもたらす資源を持っていた。民主的自由を守りながら、そしてより強化しながら、ヨーロッパの対立を鎮めることができるのはアメリカだけであった。実際、西ヨーロッパにおけるアメリカのプロジェクトは、冷戦が終結すると、単純に東へと拡大された。

アメリカの介入は、歴史家マーク・マゾワーがヨーロッパを「暗黒の大陸(dark continent)」と呼んだように、拡大する自由主義秩序の中心にある歴史後の楽園(post-historical paradise)へと変えた。それは世界を変えるほどの偉業であったが、今ではそれを危険に晒すことを決意したかのようなアメリカ人もいる。

アメリカのヨーロッパへの関与は、決して永遠に続くものではなかった。マーシャル・プランを監督したポール・ホフマンは、「ヨーロッパを自立させ、私たちの背中から引き離す(get Europe on its feet and off our backs)」ことが彼の目標だったと口癖のように語っていた。1950年代、ドワイト・D・アイゼンハワー米大統領は、ワシントンが 「腰を落ち着けていくらかリラックスできる(sit back and relax somewhat)」ように、ヨーロッパがいつ一歩を踏み出せるかと考えていた。アメリカは何度も、駐留部隊の削減、あるいは撤廃を検討した。

これは驚くべきことではない。ヨーロッパにおけるアメリカの役割は、並外れた利益をもたらしたが、同時に並外れたコストも課した。アメリカは、核戦争の危険を冒してでも、何千マイルも離れた国々を守ることを誓った。対外援助を提供し、広大な自国市場への非対称的なアクセスを可能にすることで、アメリカはヨーロッパ大陸を再建し、外国がアメリカ自身よりも速く成長するのを助けた。

フランスのシャルル・ド・ゴール大統領など、アメリカが提供した保護に対して積極的に憤慨しているように見える同盟諸国の指導者を容認した。そしてワシントンは、最も尊敬されてきた外交の伝統の1つである邪魔な同盟への敵意を捨てて、長らく問題でしかなかったヨーロッパ大陸の管理者となった。

その結果、両義的な感情が冷戦の必要性によって抑えられ、また批評家たちがアメリカ抜きで実行可能なヨーロッパ安全保障の概念を提示できなかったからである。しかし今日、古くからの苛立ちが根強く、新たな挑戦がワシントンの関心を別の方向へと引っ張っているため、アメリカのヨーロッパに対する懐疑論はかつてないほど強まっている。その象徴がトランプである。

トランプは長い間、ワシントンがNATOで負担している重荷を嘆いてきた。彼は、ただ乗りしているヨーロッパの同盟諸国に対して、襲撃してくるロシアに「やりたいことを何でもやらせる(whatever the hell they want)」と脅してきた。トランプは明らかにEUを嫌っており、EUを大陸統一の集大成としてではなく、熾烈な経済的競争相手として見ている。非自由主義的なポピュリストとして、彼はヨーロッパの自由民主主義の運命に無関心である。私たちの間には海があるのに、なぜアメリカ人がヨーロッパの面倒を見なければならないのか? トランプがアメリカ・ファーストの外交政策を謳うとき、それはアメリカが第二次世界大戦以来担ってきた異常な義務を最終的に放棄する外交政策を意味している。

はっきり言って、トランプ大統領が就任後に何をしでかすかは誰にも分からない。NATOからの全面的な脱退は、共和党に残る国際主義者たち(Republican internationalists)を激怒させるだろうし、政治的代償に見合わないかもしれない。しかし、トランプが大統領の座を争い、彼の信奉者たちが共和党内で勢力を伸ばしていること、そして中国がアジアにおけるアメリカの利益に対する脅威をますます強めていることから、アメリカがいつか本当にヨーロッパから離脱するかもしれないという可能性を真剣に受け止め、次に何が起こるかを考える時期に来ている。

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2023年5月16日、アイスランドのレイキャビクで開催されたヨーロッパ評議会首脳会議で演説するウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領

楽観的なシナリオでは、ヨーロッパは民主政治体制を維持し、結束し、敵に対抗するために団結する。アメリカが撤退すれば、EUは現在の戦争中もウクライナを支援し、和平後もキエフに意味のある安全保障を与え、ロシアや、これまでアメリカが防いできたその他の脅威を撃退するために、自らを世界的な軍事的主体へと変貌させることができる。こうしてヨーロッパは、自由主義的な世界秩序の強力で独立した柱として台頭することになる。ワシントンは他の優先事項に集中することができ、民主政体世界においてより効率的な分業が構築される。

ヨーロッパには自活するだけの資源がある。1940年代後半のような脆弱で没落した場所ではなく、民主政治体制と協力が規範となった、豊かで潜在的な力を持つ共同体なのだ。EUGDPはロシアの約10倍である。2022年以降、EU諸国は共同してアメリカを上回る軍事援助やその他の援助をウクライナに与えており、冷戦後に萎縮した防衛産業への再投資もようやく進みつつある。さらに、ヨーロッパの指導者たちは、ポーランドがそうであるように、自国を本格的な軍事大国へと変貌させたり、パリで長年の優先事項となっているヨーロッパの戦略的自立を再び推し進めることを提唱したりして、すでにポスト・アメリカの未来に備えている。「より団結し、より主権があり、より民主的な」大陸を構築する時期は過ぎたとヨーロッパのポスト・アメリカの展望について最も強気であると思われる指導者マクロンが4月に宣言した。

楽観的なシナリオの問題点は、簡単に見出せる。マクロンは、アメリカのリーダーシップに代わるものとしてヨーロッパ統合を喧伝しているが、ヨーロッパが統一され、まとまってきたのは、まさにワシントンが安心感を与えてきたからだということを忘れているようだ。例えば、1990年代初頭のバルカン戦争の始まりのように、アメリカが一歩引いてヨーロッパ勢力の前進を許した過去の例では、その結果、戦略的な結束よりもむしろ混乱が生じることが多かった。EUは2022年2月まで、ロシアの侵略をどう扱うかについて深く分裂していた。この教訓は、利害や戦略文化が異なる数十カ国の間で集団行動を調整するのは、誰かが優しく頭を叩いて覇権的なリーダーシップを発揮しない限り、非常に難しいということだ。

独立した、地政学的に強力なヨーロッパが素晴らしく聞こえるとしても、誰がそれを主導すべきかについては誰も同意できていない。フランスは常に自発的な活動に積極的だが、パリに自国の安全を扱う傾向や能力があるとは信じていない東ヨーロッパ諸国を不快にさせている。ベルリンには大陸をリードする経済的素養があるが、その政治指導者階級は、そうすればドイツの力に対する恐怖が再び高まるだけだと長年懸念してきた。おそらく彼らは正しい。冷戦後のドイツ統一が近隣諸国にとって容認できたのは、アメリカとNATOに抱きしめられたベルリンがヨーロッパの優位性を追求することは許されないと彼らが保証されていたからだ。アメリカがヨーロッパの一員ではないからこそ、ヨーロッパ人たちがアメリカのリーダーシップを容認してきたという結論から逃れるのは難しい。アメリカはヨーロッパの一員ではないため、かつて大陸を引き裂いた緊張を再び高めることなく権力を行使できるのだ。

このことは、最後の問題と関連している。自国の安全保障問題を処理できるヨーロッパは、現在よりもはるかに重武装になるだろう。国防支出は多くの国で2倍、3倍に増加せざるを得ないだろう。ヨーロッパ各国は、ミサイル、攻撃機、高度な戦力投射能力など、世界で最も殺傷力の高い兵器に多額の投資を行うだろう。アメリカの「核の傘(nuclear umbrella)」が失われることで、ロシアを抑止したいと願う最前線の国々、とりわけポーランドは、独自の核兵器を求める可能性さえある。

仮にヨーロッパが本格的な武装を行ったとしよう。アメリカの安全保障という毛布がなければ、ヨーロッパ諸国が外からの脅威に立ち向かうために必要な能力を開発するという行為そのものが、域内での軍事的不均衡が生み出した恐怖を再び呼び起こす可能性がある。別の言い方をすれば、アメリカの力に守られたヨーロッパでは、ドイツの戦車は共通の安全保障に貢献するものである。ポスト・アメリカのヨーロッパでは、ドイツの戦車はより脅威的に映るかもしれない。

二つ目のシナリオは、ポスト・アメリカのヨーロッパが弱体化し、分裂するというものである。このようなヨーロッパは、無政府状態(anarchy)に戻るというよりは、無気力状態(lethargy)が続くということになるだろう。EUはウクライナを解放し、自国の東部前線国家を守るための軍事力を生み出すことができないだろう。中国がもたらす経済的・地政学的脅威に対処するのに苦労するだろう。実際、ヨーロッパは攻撃的なロシア、略奪的な中国、そしてトランプ大統領の下では敵対的なアメリカに挟まれることになるかもしれない。ヨーロッパはもはや地政学的対立の震源地ではなくなるかもしれない。しかし、無秩序な世界では影響力と安全保障を失うことになる。

これこそが、マクロンや他のヨーロッパ各国の首脳を悩ませるシナリオだ。既に進行している、または検討中のヨーロッパの防衛構想の多くは、これを回避するためのものである。しかし、短期的には、ヨーロッパが弱体化し分裂することはほぼ確実だろう。

なぜなら、アメリカの撤退はNATOの根幹を引き裂くことになるからだ。NATOは、その先進的な能力の大部分を有し、その指揮統制体制を支配している国である最も強力で最も戦いを経験した加盟国アメリカを失うことになる。実際、アメリカは NATO の中で、ヨーロッパの東部戦線やその先の戦線に断固として介入できる戦略的範囲と兵站能力を備えている唯一の国だ。このブロックに残るのは、主にアメリカ軍と協力して戦うように設計されており、アメリカ軍なしでは効果的に活動する能力に欠けているヨーロッパ各国の軍隊の寄せ集めとなるだろう。これらは、脆弱で断片化した防衛産業基盤によって支えられることになる。ヨーロッパのNATO加盟諸国は、170を超える主要兵器システムを重複して寄せ集めて配備している。この基盤は、迅速かつ協調的な増強を支援することができない。

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ポーランドのノヴァ・デバで多国籍軍の訓練に参加するポーランド兵(2023年5月6日)

アメリカの撤退後、軍事的に弱体化したヨーロッパは、ここ数十年のどの時期よりも高い動員ピッチに達したロシアと対峙することになるが、ヨーロッパがすぐに弱体化を是正する選択肢はほとんどない。

アメリカの力なしでロシアと均衡を図るには、ヨーロッパの軍事費の膨大で財政的に負担の大きい増額が必要となるだろうが、ロシアがウクライナを制圧し、その人口と経済をクレムリンの軍事機構に統合することに成功すれば、更にその必要性は高まるだろう。巨額の赤字を永久に続けるという米国政府の「法外な特権(exorbitant privilege)」がなければ、ヨーロッパ諸国は不人気な巨額の増税を課すか、社会福祉プログラムを削減しなければならないだろう。ポーランドやバルト三国などの一部の国は、独立を維持するためにその代償を払うかもしれない。また、軍事的な準備は社会契約を破る価値はなく、攻撃的なロシアに従う方が賢明だと判断する人もいるかもしれない。

あるいは、ヨーロッパ諸国はどのような脅威に対抗すべきかについて意見が対立するだけかもしれない。冷戦時代でさえ、ソ連は西ドイツを、たとえばポルトガルを脅かすよりもはるかに厳しく脅していた。EUが成長するに従って、脅威に対する認識の相違という問題はより深刻になっている。東部と北部の国々は、プーティン率いるロシアを当然恐れており、互いに防衛のために力を合わせるかもしれない。しかし、西や南に位置する国々は、テロや大量移民など非伝統的な脅威のほうを心配しているかもしれない。ワシントンは長い間、NATO内のこのような紛争において誠実な仲介役を果たし、あるいは単に、大西洋を越えた多様な共同体が一度に複数のことを行えるような余力を提供してきた。このようなリーダーシップがなければ、ヨーロッパは分裂し、低迷しかねない。

それは酷い結果だが、最も醜い結果ではない。三つ目のシナリオでは、ヨーロッパの未来は過去によく似ているかもしれない。

このヨーロッパでは、弱さは一時的なものであり、EUの安全保障のような集団行動(collective-action)の問題を克服できないのは、その始まりに過ぎない。ワシントンの安定化への影響力が後退するにつれ、長い間抑圧されてきた国家間の対立が、最初はゆっくりとかもしれないが、再燃し始めるからである。ヨーロッパ大陸における経済的・政治的主導権をめぐって争いが勃発し、ヨーロッパ・プロジェクトは分裂する。国内のポピュリストや外国の干渉に煽られ、離反主義的な行動(revanchist behavior)が復活する。穏健な覇権国が存在しないため、古くからの領土問題や地政学的な恨みが再び表面化する。自助努力の環境の中で、ヨーロッパ諸国は自国の武装を強め始め、核兵器だけが提供できる安全保障を求める国も出てくる。非自由主義的で、しばしば外国人嫌いのナショナリズムが暴走し、民主政治体制は後退する。数年、あるいは数十年かかるかもしれないが、ポスト・アメリカのヨーロッパは、急進主義と対立の温床(hothouse of radicalism and rivalry)となる。

これは、1990年代初頭に一部の著名な専門家たちが予想していたことである。バルカン半島での民族紛争、ドイツ再統一をめぐる緊張、ソ連圏崩壊後の東ヨーロッパにおける不安定な空白地帯(vacuum of instability)の全てが、このような未来を予期していたのである。冷戦終結後、アメリカはヨーロッパの影響力を縮小させるどころか拡大させた。ボスニアとコソヴォに介入して民族紛争を消し去ると同時に、EUが東方拡大(eastward expansion)について逡巡し遅滞する中で、東ヨーロッパをNATOの傘下に収めたからだ。しかし、だからといってヨーロッパの悪魔が二度と戻ってこない訳ではない。

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2019年11月7日、ブダペストでハンガリーのヴィクトール・オルバン首相と会談するトルコのレジェップ・エルドアン大統領(左)

今日、バルカン半島では激しいナショナリズムの炎が揺らめいている。トルコやハンガリーでは、修正主義的な不満(revisionist grievances)と独裁的な本能(autocratic instincts)が指導者たちを動かしている。2009年のヨーロッパ債務危機とそれに続く数年にわたる苦難と緊縮財政(austerity)は、ドイツの影響力(この場合は経済的影響力)に対する恨みが決して深く埋まらないことを示した。ウラジーミル・プーティンがヨーロッパ諸国に協力するあらゆる理由を与えている今日でさえ、ウクライナとポーランド、あるいはフランスとドイツの間に緊張が走ることがある。

懸念すべき政治的傾向もある。ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相は何年もかけてハンガリーの民主主義を解体し、「非自由主義国家(illiberal state)」の台頭を喧伝してきた。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領も自国で同様のプロジェクトを進めている。フランスの国民連合(National Rally)のような政党は世論調査で上昇し、何世紀にもわたる歴史的不満が覚醒する準備を整え、ゼロサムの地政学的思考に陥りやすい硬直したナショナリズムを売りにしている。極右の「ドイツのための選択肢(Alternative for GermanyAfD)」は、より過激になりながらも、政治的な競争者であり続けている。こうした運動の勝利は、ヨーロッパ諸国を互いに対立させようと躍起になり、政治戦争を繰り広げるロシアによって助長されるかもしれない。

分裂したヨーロッパが古代の悪魔(ancient demons)に支配されるというのは悪夢のシナリオであり、悪夢は通常、実現しない。しかし、理解すべき重要なことは、ポスト・アメリカのヨーロッパは、私たちが知っているヨーロッパとは根本的に異なるということである。アメリカのパワーとヨーロッパに対する傘によってもたらされた地政学的ショックアブソーバーはなくなる。地位と安全保障をめぐる不安定な不確実性が戻ってくる。各国はもはや、以前の時代を特徴づけていたような行動(軍備増強や激しい対立)に頼らなくても、自分たちの生存を確保できるという自信を持つことはないだろう。今日のヨーロッパは、アメリカが作り上げた歴史的にユニークで前例のないパワーと影響力の構成の産物である。75年もの間、旧態依然とした悪習を抑制してきた安全策が撤回されれば、旧態依然とした悪習が再び姿を現すことはないと、私たちは本当に言い切れるのだろうか?

ヨーロッパが今日の平和なEUへと変貌を遂げたことは、決して元に戻せないと考えてはいけない。

ヨーロッパが今日の平和なEUへと変貌を遂げたが、決して以前の状態に戻らないと考えてはいけない。結局のところ、ヨーロッパは1945年以前、例えばナポレオンが敗北した後の数十年間、比較的平和な時期を過ごしたが、勢力均衡(balance of power)が変化すると平和は崩壊した。見識を持ったように見える大陸に悲劇が起こることはあり得ないと考えてはならない。アメリカが関与する以前のヨーロッパの歴史は、世界で最も経済的に先進的で、最も近代的な大陸が、自らを引き裂くことを繰り返してきた歴史であった。実際、ヨーロッパの過去から学ぶことがあるとすれば、それは、現在想像できるよりも早く、そして険しい転落が訪れる可能性があるということだ。

1920年代、自由主義の勢力が台頭しているように見えた。しかし、イギリスの作家ジェイムズ・ブライスは、「民主政治体制が正常かつ自然な政治形態として普遍的に受け入れられた(universal acceptance of democracy as the normal and natural form of government)」と称賛した。新しく創設された国際連盟(League of Nations)は、危機管理のための斬新なメカニズムを提供していた。それからわずか10年後、大陸が再び世界大戦に突入する勢いを作り出したのはファシズム勢力だった。ヨーロッパの歴史は、物事がいかに早く完全に崩壊するかを物語っている。

アメリカ第一主義者(America Firsters)たちは、アメリカはコストを負担することなく、安定したヨーロッパの恩恵を全て受けることができると考えているかもしれない。現実には、彼らの政策は、ヨーロッパにはもっと厄介な歴史的規範があることを思い起こさせる危険性がある。それはヨーロッパにとってだけでなく、災難となる。ヨーロッパが弱体化し、分裂すれば、民主政体世界がロシア、中国、イランからの挑戦に対処することが難しくなる。暴力的で競争過剰な(hypercompetitive)ヨーロッパは、世界的な規模で影響を及ぼす可能性がある。

ここ数十年、ヨーロッパが繁栄する自由主義秩序の一部であることで利益を得てきたとすれば、その自由主義秩序は、平和的で徐々に拡大するEUを中核とすることで利益を得てきた。ヨーロッパが再び暗黒と悪意に染まれば、再び世界に紛争を輸出することになるかもしれない。アメリカが大西洋を越えて後退する日、それはヨーロッパの未来以上のものを危険に晒すことになるだろう。

※ハル・ブランズ」ジョンズ・ホプキンズ大学国際高等大学院(SAIS)ヘンリー・A・キッシンジャー記念特別国際問題担当教授兼アメリカン・エンタープライズ研究所上級研究員。ツイッターアカウント:@HalBrands

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