古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:アメリカ

 古村治彦です。

 政治学分野における、近代以降の古典的名作の1つとされるのがニコロ・マキャベリの『君主論』だ。現在の緻密な研究書とは異なるが、古典的名著として読み継がれている。ニコロ・マキャベリの主張の柱は、「愛されるよりも恐れられる方がよい」ということがある。政治指導者は被支配者から愛されることに越したことはないが、「恐れられる」(公正に悪いことは罰する)ということの方が重要で、その方が被支配者を支配しやすいということになる。「恐れられる」ためには、首尾一貫した判断や行動が必要となる。気まぐれや気分でその時度の行動を変えるということは許されない。そうなれば、人々は「恐れる」というよりも「何をしてよいのか分からない」ということになり、反発を覚えるようになる。これは、個人生活でもよくあることだが、「同じことをしてもあの人は怒られないのに、私ばかり怒られる」という不満が大きくなるということはよくあることだ。

 良い君主とは良い判断をして失策をしない、失策をしてもすぐにリカヴァリーをするということも大切だ。そのためには首尾一貫した戦略が重要になってくる。現代のような複雑で動きが早い状況だとそれも難しいが、首尾一貫した戦略があれば、大きな失敗はしなくて済むだろう。マキャベリは国益のためならば信義を破る(簡単に言えば嘘をつく)ことも容認した。

 これらのことから考えると、トランプはあまり良い評価に張らないということになる。首尾一貫した戦略がないために、失策を重ねている。イラン戦争がその最たる例だが、トランプは海外では戦争を起こさないという公約で選挙に当選している。それなのに、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に騙されたということはあるが、イラン戦争を始めてしまった。首尾一貫した考え、戦略があれば、戦争を始めることはなかっただろう。物価高が続き、格差拡大は酷いという中で、支持率が低下し、逆転を狙ってのことだっただろうが、逆転を狙うような状況になってしまっているのはそれだけでもう負けである。また、発言や考えをころころと変えて、「狂人理論」で相手を翻弄するということでもあったが、最近では、「どうせ最後には尻尾を巻いて逃げる」ということを見透かされて、強気に出られてうまくいかないということが続いている。

 トランプの第1期目は「恐れられて」いた。しかし、現在は「呆れられて」いる。アメリカが偉大ではなくなりつつあるのは、トランプだけの責任ではないし、大きな流れは止められない。それならば、その流れを緩やかにするために戦略を練るということもできるだろうが、それもしないとなると、流れは止められないどころか、加速していきそうである。トランプの2期目はこれから中間選挙を迎える。これは中間試験の意味合いもあるが、あまり良い成績は取れそうにない。

(貼り付けはじめ)

マキャベリがドナルド・トランプについて何を言うだろうか(What Machiavelli Would Say About Trump)

-米大統領は「極めて悪い君主(a very bad prince)」になるための手本を示している。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年9月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/09/23/trump-machiavelli-leadership-military-iran-war-power-principles/

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ニコロ・マキャベリの肖像画

ポール・クルーグマンは先週、自身のニューズレター・プラットフォーム「サブスタック」に興味深い記事を投稿した。そこでクルーグマンは、諸外国がドナルド・トランプ米大統領に対する恐れを急速に失いつつあり、トランプの気まぐれで略奪的な外交姿勢に対抗するために結束し始めていると指摘している。クルーグマンの指摘はもっともだが、私が特に注目したのは、クルーグマンがニコロ・マキャヴェッリの成功する君主についての格言である「君主は愛されるよりも恐れられる方がよい(it is better to be feared than loved)」を引用した点だ。理想を言えば、君主は愛されることと恐れられることの両方を目指すべきだが、マキャヴェッリはそれを成し遂げるのは困難だと説いている。したがって、どちらかを選ばなければならないなら、恐れられる方が望ましい。なぜなら、人間は気まぐれで、その愛情は当てにならない(men are fickle and their affections are unreliable)からだ。しかしながら、恐れ(fear)というものは「決して逃れられない罰への恐怖(by a dread of punishment that never fails)」によって維持されるものだ。

クルーグマンが指摘するように、トランプが他者を脅し威圧する力は、彼自身の失策(イランとの戦争など)や、政権全体の無能さや一貫性のなさによって損なわれてきた。私が言いたいのは次のことだ。数カ月後には気が変わって合意を破棄しかねない相手と交渉したり、合意に達したりすることに、一体何の意味があるのか?

そして、トランプがマキャヴェッリの助言に反した行動を取っているのはこれだけではない。実際、『君主論』の重要な箇所を注意深く読めば(数週間前、私のリアリズムの授業の学生たちがそうしたように)、トランプが多くの点で「いかにして極めて悪い君主になるか」の典型例であることが明らかだ。

まず、マキャヴェッリは「愛されるより恐れられる方がよい」と論じた後、それ以上に悪い事態があることを指摘している。それは、憎まれたり軽蔑されたりすることだ(hated or despised)。そうした事態を避けるため、マキャベリは君主に対し、臣民の財産や女性に手を出さないよう戒めている。トランプは間違いなく前者のルールを破っている。公費を使って私腹を肥やし、誤った経済政策によって多くのアメリカ人の生活を脅かしてきたからだ。さらに、彼自身の不品行な私生活やジェフリー・エプスタインとの親密な関係は、女性に対する極めて略奪的な態度を露呈させている。こうした態度は、テイト兄弟のような女性嫌悪主義者には受けるかもしれないが、同時にかなりの数のアメリカ人が抱く深い憎悪の一因ともなっている。

軽蔑されることについてはどうだろうか? マキャベリは、君主が「気まぐれ、軽薄、女々しい、臆病、優柔不断」と見なされると軽蔑の対象となる(rendered despicable by being thought changeable, frivolous, effeminate, timid, and irresolute)」と警告している。トランプを「女々しい(effeminate)」と評する人はいないだろうが、他の形容詞は彼に十二分に当てはまる。マッチョな虚勢を張ってはいるものの、トランプの態度の揺れや一貫性のなさは今や周知の事実となっており、より強固な意志を持つ指導者たち(例えば中国の習近平国家主席など)はそれを見抜き、巧みに利用してきた。第2期政権の初期にトランプに屈服した企業トップ、大学学長、法律事務所などは、臆病かつ愚かに見える一方で、彼に立ち向かった人々は勇敢かつ先見の明があるように映る。トランプはかつてほど恐れられなくなっただけでなく、今や憎悪と軽蔑の対象になりつつある。

マキャベリはまた、君主は過度に「リベラル(liberal)[漢代を意味する]」であってはならず、「ケチだという評判を気にしてはならない(must care little for the reputation of being a miser)」とも論じている。この助言は直感に反するように聞こえるかもしれない。なぜケチであることが権力の維持に役立つのか。しかし、『君主論』の第16章を注意深く読めば、彼の主張の核心は、賢明な君主は財政を慎重に管理すべきであり、浪費によって臣民の忠誠を買おうとしてはならないという点にあることが分かる。もし浪費に走れば、やがて資源を使い果たし、「重税を課したり、強引な手段で金銭を搾取したり、あらゆる手段を講じて資金を調達したりせざるを得なくなる(be forced to impose heavy taxes, become exortionate, and do everything possible to obtain money)」だろう。そして、そうした行為こそが、臣民から憎まれる原因となるのだ。

トランプは私生活において債権者への支払いを踏み倒すようなケチ(a cheapskate who many have alleged liked to stiff creditors in his private life)だったと言われているかもしれないが、大統領としては常習的な浪費家(as president, he’s a chronic spendthrift)である。公平を期すために言えば、巨額の財政赤字を出し、富裕層への減税を行い、軍事費を過剰に支出して国家債務を増大させた大統領は彼が初めてではないし、連邦上下両院の共和党議員たちの積極的な協力なしには、こうした政策のいずれも実行できなかったはずである。

しかし、これまでのどの歴代大統領も、自身の個人的な娯楽(ゴルフなど)にこれほど多額の公金を費やしたことはない。また、5000ドルの小切手を支給すると約束することで、自党への投票と引き換えに国民に金銭を支払おうとした最初の大統領でもある。はっきり言えば、これは違法であるだけでなく、実質的には国民自身の税金を使って国民を買収するに等しい行為であり、財政赤字をさらに拡大させることになる。債券市場の見解もマキャベリの教えも一致している。トランプの財政規律の欠如(Trump’s lack of fiscal discipline)は極めて賢明ではない。

マキャベリは『君主論』の中で一章を丸ごと軍事問題に割き、君主を志す者に対して軍事の術を熟知するよう説いている。彼がこの問題にこれほど注力したのは、もちろん戦乱の絶えないルネサンス期のイタリアにおいて軍事力が中心的な役割を果たしていたからだ。現代では求められる能力も異なると言えるだろう。現代の政治指導者に、軍隊全体はおろか、部隊や艦船の指揮の仕方まで知っていることなど誰も期待していない。もっとも、軍事的な「評判(street cred)」をつけようとして滑稽な振る舞いをするようでは逆効果である。

しかし、軍事力の役割と限界、そして戦争の成否を分ける条件について確かな理解を持つことは、現代の政治家にとっても依然として不可欠だ。軍事面での対応を誤り、重大な戦略的失策を犯した結果、そのキャリアを終えることになった、世界の指導者(数人の米大統領を含む)の例は枚挙にいとまがない。中には命を落とした人物さえもいる。

トランプによるイランとの破滅的な対立は、マキャベリの助言がいかに賢明であったかを裏付けている。兵役を逃れた大統領が、無能な国防長官を任命し、従順な指揮官を要職に据え、さらに外交の重要ポストを、経験が不足している義理の息子や国際情勢の知識が皆無の不動産専門弁護士に任せた。

彼は自身の誕生日にワシントンで軍事パレードを行うことに固執する一方で、イランとの開戦に伴う利害得失の慎重な検討を怠った。その結果、今や勝利の見込みのない紛争の泥沼(quagmire)にはまり込んでいる。この紛争は世界経済に甚大な被害を及ぼし、中東地域をはじめとする地域でのアメリカの立場を弱め、さらには次の中間選挙での民主党の勝利を後押しする可能性さえある。大統領に軍事の専門家であることを求めるべきではないかもしれないが、マキャベリであれば、トランプのように軍事の術に対してあまりに無知で能天気な指導者を、冷ややかな目(askance)で見ることだろう。

さらに、正義の問題もある。マキャベリは、君主は断固たる態度で統治すべきであり、相応の理由があるならば(命を奪うことを含め)罰を与えることを躊躇してはならないと確信していた。しかし彼は、君主がそうするのはあくまで「適切な正当化の理由と明白な根拠がある場合(there is a proper justification and manifest reason for it)」に限られると強調している。言い換えれば、正義の執行は正当なものでなければならない。君主は時に残酷な振る舞いを強いられることもあるだろうが、それは恣意的、利己的、あるいは個人的な理由によるものであってはならない。さもなければ、再び民衆の憎悪を招くことになりかねないからだ。

言うまでもなく、司法省を武器化し、自分が個人的な敵とみなす人々(自分の第一次政権の元メンバーの一部を含む)への報復に利用しようとするトランプの動きは、リチャード・ニクソン元大統領やJ・エドガー・フーバー元FBI長官による同様に疑わしい行為の域をはるかに超えている。ジャック・スミス元特別検察官、ジェームズ・コミー元FBI長官、アンソニー・ファウチ元国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長などに対して彼が仕掛けた報復の数々は、正義(そして必要に応じて罰)は適切かつ正当な方法で行使されるべきだというマキャベリの警告に反するものだ。マキャベリは、指導者が時に非情な振る舞いをせざるを得ないことを理解していたが、恣意的な残酷さについては、危険かつ誤ったものとして反対していた。

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ワシントンでホワイトハウス勤務のスタッフにささやきかけるドナルド・トランプ米大統領(2020年9月26日)

しかし、話はそれだけではない。マキャベリは欺瞞(deception)の必要性を認め、君主は時に約束を破る必要があるかもしれないと主張している。彼の言葉を借りれば、「賢明な君主は、約束を守ることが自らの利益に反する場合には、それを守るべきではない(a prudent ruler ought not to keep faith when by so doing it would be against his interest)」のである。それは何故か? 他者も同様に行動するからだ。つまり、彼らにとって別の場所に利益があるならば、あなたとの約束を守ろうとはしないだろう。

詐欺や虚偽、約束破りを繰り返してきたトランプのこれまでの経緯を見れば、彼がその助言を深く心に刻んでいるように思えるかもしれない。しかし、マキャベリの助言はもっと微妙なニュアンスを含んでいる。マキャベリは、時に欺瞞が必要であることや、君主が道徳的原則に反するように見える行為を避けるべきではないことを認めつつも、指導者はそうした性質を徹底して隠すべきだと強調している。彼の言葉は次の通りだ。

「したがって、君主が前述の(徳のある)資質を全て備えている必要はないが、それらを備えているように見せかけることは極めて重要である。・・・君主は、前述の・・・資質に満ちていない言葉を口にしないよう細心の注意を払わねばならず、その言動において、慈悲、誠実、高潔、人間味、そして信心深さを体現しているように見せかけるべきである」。

言い換えれば、成功する君主とは、「巧みに装い、本心を隠す達人(a great feigner and dissembler)」でなければならない。つまり、約束を破ったり、不誠実あるいは残酷な振る舞いを繰り返したりすることはできないということだ。そうすれば、あなたが危険で信用できない人物であることが、すぐに周囲に露呈してしまうからだ。

公平を期して言えば、トランプの政治的成功の大部分は、実際とは全く自分(トランプ)を人々に信じ込ませるという驚くべき能力によるものだ。トゥルース・ソーシャルに投稿される、彼を軍の英雄や宗教的指導者などに見立てた数々の奇妙な投稿も、「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」を信奉する支持者たちの間で、そうした神話を維持し続けるためのものだと言えるだろう。

しかしながら、彼が今直面している問題は、その「お決まりの芸風」が飽きられ、彼がこれまで装ってきたような人物とは程遠いことが明らかになってきた点だ。トランプが記者団に対し、生活費の負担(affordability)など気にしないと話したり、「アメリカ国民の経済状況など考えもしない。誰のことも考えていない」と発言したりした際など、公の場での「仮面」が剥がれ落ちる場面が何度もあった。これほど真実を突いた言葉もないだろう。

マキャベリが説いた​​「成功するリーダーシップの指針」は、しばしば政治の「闇の術策」を記した非道徳的(不道徳的ではなく)な手引きだと誤解されがちだ。そのため、特に狡猾で道徳的節操に欠ける政治家を「マキャベリ的(Machiavellian)」と呼ぶ傾向がある。しかし、マキャベリが「目的は手段を正当化する(the end justifies the means)」と記した際、彼が念頭に置いていたのは、極めて具体的かつ道徳的に正当化しうる目的だった。彼が君主に成功を求めたのは、秩序と安定をもたらし、内乱や外部からの干渉から国家を守るためにそれが必要だと信じていたからだ。君主が「善ならざる者となる術を学ばなくてはならない(learn how not to be good)」の、自身の楽しみや利益、あるいは放縦のためではなく、あくまで国家を存続させるためなのだ。

それゆえ、賢明な君主は、必要な場合にのみ悪事を行う。「善ならざる者となる術を学び、事態の必要性に応じてその知識を行使したり、あるいは行使しなかったりすることを学ばねばならない(One must learn how not to be good, and to use this knowledge and not use it, according to the necessity of the case)」とマキャベリは書いている。目的が手段を正当化することはあっても、どんな目的でも良いということではなく、ましてやリーダーの個人的な気まぐれが正当化されることなど決してない。

在任期間が5年を超えた今、トランプはその原則を繰り返し踏みにじってきた。彼の大統領職はアメリカを「より偉大な国」にはしなかった。それどころか、国内の分断は深まり、腐敗が進み、信用は低下し、海外からの尊敬も大きく失われた。トランプが数多くの国際的なパートナーシップや、かつて世界をリードしていたアメリカの科学・学術機関を破壊し尽くそうとしていることで、国の長期的な未来さえも危うくなっている。

その代わりに彼が残したものとは何か? 自身と家族の個人資産を20億ドル以上増やしたことに加え、ホワイトハウスに新しい舞踏室を建設したり、可能な限り多くの公共施設に自分の名前を冠しようとしたりしている。

マキャベリは君主による統治を支持していなかった。その逆に、共和制という統治形態を強く支持していた。それでも、彼は、「王の自由と安全を支える数多くの優れた制度」を備えた「秩序ある(well-ordered)」フランス王国の美点さえも称賛していたほどだ。したがって、彼の著作の中で『君主論』はある種の異色作と言える。その理由の1つは、『君主論』がある意味で「失敗に終わった就職活動」の一環として書かれたものだからだ。マキャベリはフィレンツェの新たなメディチ家政権の覚えをめでたくしようと(そしてかつての公職に復帰しようと)してこの本を執筆した。それゆえ、『君主論』はロレンツォ・デ・メディチ(おそらく彼自身は一度もこの本を読まなかっただろう)へのへつらいに満ちた献辞から始まっている。

しかし、もしマキャベリが現代に生きていたとしたら、気まぐれで自己中心的な権力者による支配よりも秩序ある共和制の方が望ましいことの好例として、ドナルド・トランプを挙げるのではないだろうか。それどころか、彼は自身の名著の改訂版にトランプを登場させ、「君主がなすべきではないこと」を示す典型的な事例として取り上げるかもしれない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。彼は、現代世界を理解・展望する上で不可欠な主要概念を解説する5部構成のニューズレター・シリーズ『新しい地政学(The New Geopolitics)』著者。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social Xアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)


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『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 昨年出した拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社、2025年)で、シリコンヴァレーを拠点とした「新・軍産複合体(Neo Military-Industrial Complex)」が作られているということを明らかにした。私がアメリカで新・軍産複合体の形成が進んでいるということを本として発表したのは、『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(終話システム、2021年)からだ。それから数年が経過し、その姿が明らかになりつつある。書籍へのリンクはページの下にあるので、そこで是非お買い上げいただき、お読みください。

新・軍産複合体は戦車やミサイル、戦闘機ではなく、ドローンとソフトウェア、AIが主力製品である。そして、アメリカ国家も大きな防衛システムにテック産業を中心に参画させようとしている。それが、ドナルド・トランプ大統領がぶち上げた「ゴールデンドーム計画」である。これは、アメリカの国全体を1つのドームで覆うようにして(物理的にではなく)、防衛システムを構築するということであり、そのためにはビッグデータ解析などのプログラムが必要になる。そこに、トランプ大統領を支持し、2016年の大統領選挙で当選させたピーター・ティールのパランティア社やトランプと就かず離れずの盟友イーロン・マスクのスペースX社、VR開発の若き天才と称賛され、ティールやマスクの支援を受けてドローン開発企業を立ち上げ成功したパルマー・ラッキーのアンドゥリル社が参画することがすでに決まっている。

 先週、ピート・ヘグセス国防長官が現役将校を前にした演説(「軍の現状」という題名)を行い、」その中で、将官クラスの人員を20%削減するという内容があり、日本でも報道された。重要なことは、「プロジェクト・メリディアン(経線、子午線の意味)」の立ち上げを発表したことだ。これは、自律型(AI)兵器や最先端技術の兵器利用の開発・試験。実践配備のための大枠を答申することを目的としている。

このプロジェクトの共同座長に、イーロン・マスク、パルマー・ラッキー、そして、ニュート・ギングリッジ元連邦下院議長が就任し、120日後に報告書を発表するといとになった。マスクとラッキーについては繰り返さないが、ギングリッジは下院議長を退いて長いが、アメリカ政界に隠然たる影響力を保持している。共同座長にマスクとラッキーが任命されていることの意味は大きい。なぜならば、アメリカ軍と共同で兵器開発やソフトウェア開発を行うのは彼らの創業した企業群であり、そこにはピーター・ティールのパランティア社も絡んでくるのは理の当然だからだ。ここから「自律型戦軍」が立ち上がると、マスクやラッキーの影響力も大きく働く部隊が誕生するということになる。シリコンヴァレーのテック企業が国家プロジェクトに参画し、大きな利益を得る。それが新・軍産複合体の構造ということになる。

 シリコンヴァレーの起業家たちはリバータリアンと呼ばれる、市場と自由を至上とし、国家の介入を嫌う、国家に関わることを嫌うとされてきた。しかし、実際には国家と深く結びつくことで技術開発を進め、巨額の利益を得るという形になっている。新自由主義時代の次は国家の時代が戻ってくる。それをシリコンヴァレーが先取りしていると言えるだろう。

(貼り付けはじめ)

ピート・ヘグセス国防長官が軍事兵器開発プロジェクトにイーロン・マスクを起用(Pete Hegseth Taps Elon Musk For Military Weapons Development Project)

アントニオ・ペケーノ四世(『フォーブス』誌スタッフ、テック産業などの特報担当ニューズ記者)筆

2026年9月30日

『フォーブス』誌

https://www.forbes.com/sites/antoniopequenoiv/2026/09/30/pete-hegseth-taps-elon-musk-for-military-weapons-development-project/

●重要事項(Topline)

ピート・ヘグセス国防長官は、スペースX社の経営者であるイーロン・マスクを「プロジェクト・メリディアン(Project Meridian[子午線・経線・頂点の意味])」の共同リーダーに指名した。この億万長者である実業家は、アメリカ軍向けの新たな兵器や技術の開発について調査・特定・提案を行うこの新イニシアティヴにおいて、主導的な役割を担うことになる。

●重要な事実(Key Facts)

・ヘグセス長官は、マスクが、アンドゥリル(Anduril)社およびオキュラス(Oculus)社の共同創業者であるパルマー・ラッキー、そして、元連邦下院議長ニュート・ギングリッチ(ジョージア州選出、共和党)と共に、このプロジェクトを共同で主導する。

・「プロジェクト・メリディアン」の立ち上げに関する覚書には、このプロジェクトが「将来の戦場を研究し」、アメリカ軍将兵が「そうした環境で優位に立つ」ための兵器や技術を特定し、さらに「それらの能力の開発、試験、実戦配備を開始する(start developing, testing and fielding these capabilities)」ための解決策を提案すると記されている。

・覚書の中でマスクの名は明示されていないが、「プロジェクト・メリディアン」は「国防総省外の重要な視点を活用し、トップクラスの技術者、イノヴェーター、ビジネスリーダー、政策立案者、国家安全保障の専門家からなるグループの知見を取り入れる」としている。

・このプロジェクトの調査結果と提言は2027年1月28日までにヘグセス長官のオフィスへ提出される予定だ。

●注目すべきポイント(What To Watch For)

アメリカ国防総省のウェブサイトによると、このプロジェクトの提言は、機密指定されていない報告書として一般に公開される予定だ。

●重要な背景(Key Background)

国防総省によるこのプロジェクトは、昨年「政府効率化省(Department of Government Efficiency、DOGE)」を率いたことに続く、マスクとトランプ政権との新たな関わりを示すものとなる。DOGEにおいて、マスクは「特別政府職員」として組織を主導したが、法的に定められた130日間の任期満了をもって退任した。「プロジェクト・メリディアン」におけるマスクの役割は、公式な役職というよりは、むしろ助言を行う立場に近いものと見られる。マスクは2024年の大統領選挙でドナルド・トランプを支持・献金し、トランプの2期目の初期には自ら「親密な相棒(First Buddy、ファースト・バディ)」という呼称を受け入れていた。しかし、連邦財政赤字を拡大させると主張してトランプの「一つの美しい予算案(Big Beautiful Bill)」を激しく批判したことで、両者の関係は決裂した。マスクが新党結成を示唆し、さらにこの予算案への批判を続けたのに対し、トランプはテスラ社やスペースX社への連邦補助金を打ち切ると警告した。両者の対立は2025年6月に決定的となった。当時、マスクは未公開の「エプスタイン文書」にトランプの名前が含まれており、それこそが文書が公開されない理由だと主張した。その後、両者の関係は修復に向かい、今週ホワイトハウスで開催されたハイテク・サミットでは、マスクが重要な役割を果たした。このサミットは、人工知能(AI)とそれが人類にもたらす短期的な存続の危機に対する懸念が高まる中で開催された。

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ニュート・ギングリッチが国防総省の「将来の戦争」に関する120日間のタスクフォースで共同リーダーに指名される(Newt Gingrich Tapped by Pentagon to Co-Lead 120-Day Future of Warfare Task Force)

コリン・ラッグ筆

2026年10月1日

『コリン・ラッグ・ニューズ』

https://www.collinruggnews.com/newt-gingrich-tapped-by-pentagon-to-co-lead-120-day-future-of-warfare-task-force/

ニュート・ギングリッチ元連邦下院議長が、国防総省の「プロジェクト・メリディアン(Project Meridian)」を共同主導する人物として選出された。これは、将来の戦場におけるアメリカの優位性を確保するために必要な兵器、自律型システム、および先端技術を特定することを目的とした、120日間の取り組みだ。ピート・ヘグセス国防長官は、ヴァージニア州クワンティコ海兵隊基地で行った「軍の現状(State of the Force)」に関する演説の中でこの人事を発表し、ギングリッチをイーロン・マスクやパルマー・ラッキーといった著名なテクノロジー業界のリーダーたちと並ぶ役割に据えた。

この戦略パネルは、21世紀型の防衛能力を開発・試験・実戦配備するための、実行可能な提言をまとめることを目指している。ヘグセス長官は、軍事戦略の抜本的な見直しの一環としてこの諮問プロジェクトを立ち上げ、ロボット工学、人工知能(AI)、最先端の作戦用ハードウェアを軍がどのように運用すべきか、そのあり方を再構築する任務を民間出身のリーダーたちに託した。

「プロジェクト・メリディアンは、イーロン・マスク、パルマ―・ラッキー、そしてニュート・ギングリッチという、我が国屈指の英知を持つ3名によって共同主導される」。

●プロジェクト・メリディアンの内部:現代の戦闘に向けた120日間の青写真(Inside Project Meridian: The 120-Day Blueprint for Modern Combat)

「プロジェクト・メリディアン」の使命は、高強度紛争においてアメリカ軍が直面し得る具体的な作戦上のギャップを特定することにある。単なる理論的な研究にとどまらず、この諮問グループは即座に実行可能な導入プロセスを確立しなければならない。ヘグセス長官は、この委員会が全軍にわたり重要技術を試験・実戦配備するための実行可能な計画案を提示し、最終的に包括的な公開報告書と機密扱いの付録を作成することになると述べた。

このタスクフォースは、軍の指揮系統における大規模な構造改革と並行して活動する。ヘグセス長官は、戦闘軍全体にロボット・自律型システムを迅速に展開・拡大させることを目的に、「Autowarcom(オートウォーコム)」と称される新たな4つ星大将級の統合戦闘軍「自律型戦軍」を創設した。これにより、自律型システムに関するドクトリンが、高レヴェルの戦闘計画策定に直接組み込まれることになる。

●何故ギングリッチなのか? 政策のヴェテランがテック業界の巨人たちに合流(Why Gingrich? Policy Veteran Joins Tech Industry Giants)

イーロン・マスクやパルマー・ラッキーといったテック業界の有力者が、スペースX社やアンドゥリル・インダストリーズ社(両社とも国防総省と最大41億6000万ドル規模の契約を締結)を通じて防衛産業で大きな存在感を示す一方で、ニュート・ギングリッチは、数十年にわたる国家安全保障戦略および連邦議会工作の経験をもたらしている。ギングリッチはテック業界との直接的なビジネス上のつながりこそないが、軍事政策や防衛プロジェクトには長年関与し続けており、空軍大学(Air University)から名誉博士号も授与されている。

ギングリッチは長年にわたり、積極的な外交政策の姿勢を提唱してきた。その一例として、2005年当時からイランの脅威に対して一貫して厳しい態度を取ってきたことが挙げられる。ギングリッジが加わることで、政治・ドクトリン面での経験と民間セクターの迅速な開発能力が融合し、政策面での実績と商業的な製造力がバランスよく組み合わされることになる。

●防衛技術の優先順位をめぐるバランス調整(Balancing Defense Tech Priorities)

国防総省が防衛生産、ソフトウェア統合、無人プラットフォームのあり方を検討する中、このイニシアティヴは極めて重要な戦略的バランスの調整を迫られている。

・実戦配備の迅速化:数年を要する調達サイクルを短縮し、最前線の戦闘員向けに迅速な試作・実証(prototyping)を行う。

・自律型システムの大量展開:陸・海・空にまたがる多正面紛争シナリオに対応するため、自律型ハードウェアを大量に配備する。

・宇宙・サイバー領域での優位性確保:通信やリアルタイムの標的捕捉を支える軌道上での作戦上の優位性を維持する。

●再編をめぐる対立:文民改革派 vs. 軍上層部The Restructuring Divide: Civilian Reformers vs. Senior Brass

国防総省の主要な見直しは常に職業軍人が主導するものだという誤解が広く存在しますが、「プロジェクト・メリディアン」はこの前例を覆すものだ。共同リーダー3名はいずれも現役軍人としての経歴を持たず、ギングリッチはヴェトナム戦争時に学生および父親であることを理由とした徴兵猶予を受けており、マスクとラッキーは民間産業を通じて影響力を築いてきた。

今回の任命は、国防総省全体で大規模な組織・人員削減が進められる中で行われた。ヘグセスは、軍の将官(陸・空・海兵隊の将軍および海軍の提督)のポスト約800のうち20%を1月までに削減する計画を発表した。これは当初示唆されていた10%削減の倍にあたる。ヘグセスは、こうした将官の整理・削減は、肥大化した官僚機構や重複する階層を排除し、作戦上のヴィジョンを民間セクターのイノヴェーターや信頼できる政治家へと転換するために不可欠であると説明している。

■ニュート・ギングリッチ:防衛政策のドクトリン、長期的地政学戦略、そして、立法・行政間の連携調整

■イーロン・マスク:民間ロケット打ち上げシステム、宇宙領域での作戦、および軌道上防衛インフラ

■パルマ―・ラッキー:自律型兵器システム、AI搭載戦闘プラットフォーム、および巡航ミサイルの拡張可能な生産体制

提言策定までの期間はわずか120日間であり、ギングリッチをはじめとする共同リーダーたちは、1月に予定される指揮官ポストの削減が実施される前に、軍の近代化の優先順位を抜本的に見直すという極めて厳しいスケジュールに直面している。

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ピート・ヘグセス国防長官による将校への演説から得られる7つのポイント:戦争の未来、信仰、そして新たな地盤(7 takeaways from Hegseth’s address to officers: Warfare’s future, faith and a new base)

フィリプ・ティモティジャ、エレン・ミッチェル筆

2026年9月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/6121765-pete-hegseth-takeaways-command-warfare-base/

ピート・ヘグセス国防長官は水曜日、現役の将校たちに向けた広範な演説の中で、矢継ぎ早にいくつかの発表を行った。

演説の冒頭、長官は自身の「十八番(bread and butter)」とも言えるテーマに終始した。すなわち、文化戦争(culture-war)をめぐる不満の表明、国防総省(DOD)からの「ウォーク(woke:社会正義や多様性に過度に配慮する姿勢)」の排除、イランとの戦争に関する報道をめぐるメディアへの批判、そして「戦士精神(warrior ethos)」の復活とアメリカ軍の「再建(rebuilt)」の宣言だ。

しかし一方で、長官は注目すべき発表もいくつか行った。それらは、信仰を重視する自身の姿勢を反映したものや、新たな戦闘軍(combatant command)の創設、大学との連携、そして各州知事が誘致を競い合うことになるであろう国内の新規軍事基地の構想などが含まれていた。

ヴァージニア州クワンティコ海兵隊基地で行われたヘグセス長官の52分間にわたる演説の要点は以下の通りだ。

(1)自律型戦闘に特化した新たな統合軍(New combatant command focused on autonomous warfare)

ヘグセス長官は、ドローンや防衛用ロボット技術といった自律型戦闘能力(autonomous warfare)の開発に特化した、新たな4つ星大将が指揮する戦闘軍の創設を発表した。

ヘグセス長官によると、この組織は「現代の軍事史上、平時における最も迅速な転換」として、戦闘軍全体に自律型・ロボット技術の能力を拡大・展開するための「軍種(陸・海・空軍など)に匹敵する権限」を持つことになる。運用開始は来年10月1日を目指している。

「自律型戦闘軍」、通称「AutoWarCom(オートウォーコム)」は、当初、元海兵隊員で現在は国防総省の「国防イノヴェーション・ユニット(Defense Innovation Unit、DIU)」を率いるオーウェン・ウェストと、海軍特殊部隊SEALsの上級曹長であるマックス・ストラサイザーが主導する。その後、4つ星大将の指揮官が発表される予定だ。

「この司令部は、専任の人員、予算、調達権限を有し、将校および下士官・兵のための専門的な軍務キャリアパスを構築することになる」と、ヘグセスは水曜日の覚書で述べた。

ヘグセス長官は覚書の中で、この新しい司令部が演習や過酷な環境下で「現実的な対抗勢力(realistic opposition)」を相手に装備や部隊編成の試験を行い、戦場で何が有効かを見極めることになると説明した。

(2)「プロジェクト・メリディアン」と戦争の未来(Project Meridian and warfare’s future)

ヘグセス長官は、戦争の未来を検討する国防総省の新たな取り組み「プロジェクト・メリディアン」を、スペースX社およびxAI社のCEOであるイーロン・マスク、アンドゥリル社の共同創業者パルマー・ラッキー、そしてニュート・ギングリッチ元連邦下院議長(ジョージア州選出、共和党)が主導することを明らかにした。

ヘグセス長官は、このプロジェクトの目的は、アメリカのイノヴェーター、上級指導者、技術者らの力を結集し、数十年先を見据えて「明日の紛争に向けた独創的な解決策を予測すること」にあると述べた。

「意図的に未来志向のものにしている」とヘグセスはこのプロジェクトについて語り、新たな戦略や政策を策定するためのものではないことを明確にした。

「将来の紛争を最も的確に予測できる人々が、必ずしも国防総省内にいる訳ではないということを認める謙虚さを持つべきだ」とヘグセスは述べた。「自ら問いを立て、自らそれに答えることには、明白なバイアスやリスクが伴うからだ」。

ヘグセス長官によると、マスク、ラッキー、ギングリッチは、エミール・マイケル国防次官(研究・工学担当)の指揮の下、「地下から月の彼方に至るあらゆる将来の戦場において、私たちの子供や孫の世代が必要とする兵器やシステムを、創造的な制約や制限にとらわれることなく発見、開発、実戦配備すること」に注力することになる。

ヘグセス長官が発表を行った際、これら3人の男性は全員ペンタゴン(米国防総省)に同席しており、ヘグセス長官は「プロジェクト・メリディアン」に関する最初の会合を、このイヴェントの直後に同省内の機密情報取扱施設(SCIF)で行うと述べた。

(3)各州に対して「次なる偉大なアメリカ軍基地」の誘致を求める(States invited to bid for ‘next great American’ base)

ヘグセスは各州知事に対し、「次なる偉大なアメリカ軍基地」の受け入れ先となるための誘致提案を行うよう呼びかけた。

「我々は全米の知事および州兵総監に対し、この偉大な共和国のために立ち上がり、最高の提案を提示するよう呼びかける」とヘグセス国防長官は述べた。

「もしもあたなの州が、1万5000人から2万5000人の偉大なアメリカ軍将兵を受け入れる名誉を望むなら、その理由と具体的な実現方法を示して欲しい。煩雑な手続きを排除し、用地を提供し、軍人の家族を最大限に歓迎する体制を整える」と、彼は演説の中で語った。

ワシントン州のエヴェレット海軍基地は1990年代に開設された、アメリカ国内で最後に建設された基地である。この基地には、複数の誘導ミサイル駆逐艦や沿岸警備隊の艦船が配備されている。

ヘグセス長官は、新しい基地は「無機質な政府施設」にはならないと述べ、ペンタゴンは「ダイナミックかつ自立した戦力投射の拠点」を計画・設計していくと主張した。

ペンタゴンによると、この基地は商用電力網から独立し、独自の発電設備、自律型システム、高度な防空機能を備えたものになるということだ。

「自家発電、近代的な防空システム、最先端技術を備えた、数十万エーカー(数千平方キロメートル)規模の施設だ。まさに要塞(fortress)だと考えていただきたい」とヘグセス長官は語った。将兵には「最高級の兵舎や世界水準の訓練施設」が提供され、その家族には「質の高い住宅、学校、保育、医療施設を備えた活気あるコミュニティ」が用意されることになる。

ヘグセス長官は、国防総省のエネルギー・施設・環境担当次官補であるデール・R・マークスに対し、国防総省が進める基地の最適地の特定、評価、選定、および準備に向けた取り組みを主導するよう指示した。

「破壊的技術の急速な進歩、対等な敵対国間での戦略的連携の強化、そして国防や国土の重要インフラに対する執拗かつ巧妙なサイバー攻撃の継続、これらにより、現代的かつ強靭な態勢の構築が不可欠となっている」とヘグセス長官は水曜日の覚書で述べた。

(4)基地を民間送電網から切り離す「フォートレス・アメリカ」構想(‘Fortress America’ takes bases off civilian grid)

水曜日に明らかにされたもう1つの新たな取り組みが「要塞化されたアメリカ(Fortress America、フォートレス・アメリカ)」構想である。ヘグセス長官はこの構想について、「アメリカ本土のための国家的な保険(a national insurance policy for the American homeland)」になると主張した。

「フォートレス(Fortress)」とは、「強靭性、部隊リソース、エネルギー供給、生存性のための連邦業務(Federal Operations for Resilience, Troop Resources, Energy Supply and Survivability)」の頭文字をとったものであり、ヘグセス長官によれば、この構想の下ではアメリカ内の全ての主要軍事施設が、民間の送電網から独立して独自の電力を供給することになるという。

「敵対勢力がサイバー攻撃や破壊工作、あるいはその他の手段で送電網を停止させたとしても、私たちの基地の明かりは消えない。航空機は飛び続け、指揮センターの機能が停止することもない」とヘグセス長官は語った。

この取り組みはまた、レアアース(希土類)、特殊金属、半導体、推進剤といった重要なサプライチェインを国内回帰させることも意図している。これらは全て「アメリカで採掘され、米国で精製され、米国の労働者によって米国で製造される」ものとなる。

加えて、ヘグセス長官は、弾薬、燃料、医薬品、血液といった極めて重要な物資について、国防総省が戦略的備蓄を積み増すと述べた。その備蓄量は、「世界の供給網が寸断されたとしても、実際の戦争では間違いなく寸断されるものだが、アメリカが戦い続けられるほど十分な規模」にするという。

これを実現するため、ヘグセス長官は、アメリカ軍が「アメリカ国内のあらゆる施設をサイバー侵入、破壊工作、ドローン攻撃に対して強靭化し(hardening)、高地や電波領域、衛星、周波数帯といった優位性を確保している」と語り、国防総省こそが「国家全体の保険(the insurance policy for the entire nation)」になるだろうと主張した。

(5)士官候補生のための非アイヴィーリーグ大学と連携(New non-Ivy League partnerships for cadets)

ヘグセス国防長官はまた、士官候補生の層を拡大するために、新たに5つの大学と提携すると発表した。

「アメリカズ・コア・オブ・カデッツ(America’s Corps of Cadets)」と呼ばれるこの軍事訓練プログラムには、ルイジアナ州立大学、リバティ大学、タスキーギ大学、ミシシッピ州立大学、ヒルズデール・カレッジが参加する。

ヘグセス長官は、「私たちには、士官学校や上級軍事大学といった教育機関から輩出される士官がさらに必要であり、今日、それを実現する」と述べた。

ヘグセス長官によれば、各校は「卓越した軍事大学(distinguished military college)」として位置づけられ、「士官候補生の規律、戦術教育、軍事組織のあり方において、極めて高い水準を維持すること」が求められるという。

アメリカ軍の士官の多く​​は、陸軍士官学校(ウェストポイント)、海軍兵学校(アナポリス)、空軍士官学校といった士官学校から任官しており、テキサスA&M大学やシタデル(サウスカロライナ州の軍事大学)などの上級軍事大学がそれに続いている。

水曜日に公表された国防総省の覚書によると、ヘグセス長官のオフィスは30日以内に実施に着手し、4カ月以内には、アンソニー・タタ国防次官(人事・即応担当)がこのプログラムの主導的な担当部署へと移行することになる。

「アイヴィーリーグからリベラルアーツ・カレッジに至るまで、私たちの大学は、反米的かつDEI(多様性・公平性・包摂性)を崇拝する『ウォーク(Woke)』思想の工場(anti-American DEI [diversity, equity and inclusion] worshipping woke factories)と化してしまった。不屈の精神や勇気といった資質は、ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)や社会正義に取って代わられた」とヘグセス氏は述べた。「神と国家は、チェ・ゲバラやクリティカル・セオリー(批判理論)と置き換えされたのだ」。

(6)宗教問題担当室の設置(Creates Office of Religious Affairs)

ヘグセス長官は最後の宣言の中で、国防総省内に「トップに直属する」宗教問題担当室を設置すると表明した。

「最先端技術、新たな基地や駐留体制、そしてより優れた教育の仕組み、これらは全て、私たちの共和国にとって最も不可欠な要素である『信仰(faith)』がなければ不完全なものに過ぎない」とヘグセス長官は集まった軍人たちに語りかけた。

ヘグセス長官は、部隊がどこに派遣されようとも「最高水準の宗教的支援(first-class religious support)」を提供することは国防総省の「神聖な責務(a sacred duty)」であると述べ、この問題を二の次として扱ってきた過去の政権を厳しく批判した。

「ポリティカル・コレクトネスや世俗的ヒューマニズムは発言権を得たが、従軍牧師(chaplains)はそうではなかった。予算は削減され、資源や人員の必要性は無視され、基地内の礼拝所は荒廃した」とヘグセス長官は主張した。「信仰や宗教に関する決定は、個室にこもる世俗的なキャリア官僚や、お役所仕事の規則を振りかざす弁護士たちによってなされてきた」。

ヘグセス長官は、水曜日から「宗教問題担当室(Office of Religious Affairs)」が「長官への直通ルート」を持つことになり、この部局は「予算の確保、インフラ整備の要求、そして宗教的支援の強化」を行うことになると述べた。

ヘグセス長官は頻繁に自身の信仰について言及しており、軍人の精神的な健康は、身体的・精神的な健康と「同等に重要である」と明言している。

ヘグセス長官は今年初め、アメリカ軍の従軍聖職者団(Chaplain Corps)の制度を刷新し、聖職者である将校が階級章を着用するのを廃止し、代わりに自身の宗教的所属を示す記章を着用すると発表した。これは従軍聖職者団組織に対する2つの大きな変更点の1つだ。

(7)ヘグセス長官が将官の削減を擁護(Hegseth defends officer cuts)

演説の冒頭で、ヘグセス長官は国防総省における将官(陸軍・空軍の将官および海軍の提督)の20%を削減するという自身の計画を擁護し、国防総省においてこの大規模な刷新は長らく必要とされていたものだと主張した。

「メディアはこれを粛清(a purge)と呼ぶが、私はこれを説明責任(accountability)であり、長らく遅れていた措置、率直に言えば、最低限必要なことだと捉えている。いつものことだが、メディアが非難の言葉として投げかけるものを、私はむしろ成果(an accomplishment)として誇りに思っている」とヘグセス長官は述べた。

ヘグセス長官は「私は申し上げたい、その組織文化を助長してきた当の本人たちを使って、文化を変えることなどできない。どの階層においても、人事はすなわち政策そのものなのだ」と語った。

この動きは陸軍、海軍、空軍の全軍にわたる上級幹部職に影響を及ぼすものであり、ヘグセス長官が将官の数を10%削減する措置を主導してから1年を経て実施されるものとなる。

彼はすでに各軍種にわたり20人以上の高級将校を解任または退任に追い込んでおり、こうした人事異動は、与野党双方の連邦議会議員に動揺を与えている。

ヘグセス長官は演説の中で次のように述べた。「昨年の演説は、あの将軍たちに向けたものではなかった。あれはあなた方、つまり私たちの軍の屋台骨であり、最前線に立つ現在および将来のリーダーたちに向けたものだった」

(貼り付け終わり)

(終わり)


sekaiwashuukyousensounitotsunyuushita002
『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 イスラエルとパレスティナの和平こそは現代の最大の難事と言わざるを得ない。ウクライナ戦争やイラン戦争の停戦ももちろん難事であるが、イスラエルとパレスティナ紛争はこれらよりも解決が難しいのではないかと思ってしまうほどだ。イスラエルとパレスティナ国家の二国共存が決まってからも、イスラエルはその実態を骨抜きにしようとし、入植地拡大という形で占領地を固定化しようとしている。さらに、日本と同様に、極右勢力が政権を奪取して以降、国際協調などには目もくれず、暴力的な施策を進めている。

 ドナルド・トランプ米大統領はイスラエル寄りの姿勢を崩していないが、平和評議会(Board of Peace)を設立し、パレスティナ問題の解決を図ろうとしている。しかし、ガザ地区の非武装化は良いとしても、パレスティナ人を移動させて、リゾート開発を行う(「中東のリヴィエラを目指す」)という青写真を出して世界を困惑させている。それには、岐阜ドナルド・トランプと同様に不動産開発にも携わる娘婿ジャレッド・クシュナーの存在もある。クシュナーはウクライナ戦争やイラン戦争の停戦交渉にも関わり、同時に、パレスティナ問題にもかかわっている。義父ドナルド・トランプの代理人とも言える立場にある。

 パレスティナ側はこのような動きを受け入れていない。トランプやイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスの武装解除を強く求め、ハマス側はイスラエル軍のガザ地区での攻撃停止と完全撤退を条件として合意したが、実質的には不可能であろう。イスラエルがガザ地区からの撤退を実施する可能性は限りなく低いからだ。少なくとも、ベンヤミン・ネタニヤフ政権が続く限り、イスラエルがパレスティナ国家との二国共存を推進するということはあり得ない。

しかし、その姿勢は既に世界各国に明らかになっている。アメリカ国内でもイスラエルに対する支持が現書している。そうなると、ますます意固地になって、居丈高な姿勢を取ることになるだろう。パレスティナ問題について国際社会がどのようなそしきや機関を作っても意味はない。イスラエルが解決する意向を持たねば何も進まない。そして、現在のアメリカはそれを支持し、擁護するだけの力を持っている。しかし、アメリカが西半球に引きこもる時代が近いうちにやってくる。そうなると、イスラエルは、そして、日本は国際的な孤立を避けられないということになる。そのことを認識して、問題解決を進めることが重要だが、残念なことに、イスラエルも日本も内部にいる人間たちは「アメリカに従って、アメリカの威を借りて威張っていれば大丈夫」という考えから抜け出せないでいる。
(貼り付けはじめ)

誰もがトランプ氏のガザ和平案が消滅するのを待っている(Everyone Is Waiting for Trump’s Gaza Plan to Die)
-平和評議会(the Board of Peace)はあまりに欠陥が多く、完全に実行不可能であることが明らかになった。

アンチャル・ヴォーラ筆

2026年6月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/05/trump-gaza-peace-board-israel-war/?tpcc=recirc_latest062921

donaldtrumpboardofpeace2025001
2025年10月13日、エジプトのシャルム・エル・シェイクにて、ガザ紛争終結に向けた首脳会議の看板の横で身振りを交えながらポーズをとるドナルド・トランプ米大統領。イスラエルとハマスの間では、米国が仲介した捕虜・人質の交換および停戦合意が成立している。

2025年10月、ドナルド・トランプ米大統領はハマスとイスラエルの間の停戦実現に尽力し、大々的な宣伝と共に、この長引く紛争を解決するための青写真として20項目の計画を発表した。当時、イスラエルは人質の奪還を、ハマスはガザ地区への容赦ない爆撃の停止を必死に求めていた。しかし、双方は自らの最大限の要求について譲歩するつもりはなく、また、成果を挙げることに執念を燃やす米大統領の機嫌を損ねることも望んでいなかった。

両者はそれぞれ独自の理解に基づいてトランプの計画に同意した。イスラエルは合意された境界線まで撤退するがガザ地区の約53%の支配権を維持し、ハマスが武装解除した後にのみ、破壊し尽くされた地域の再建を許可するつもりであった。一方のハマスは、将来のパレスティナ国家樹立に向けた確実な道筋が整った段階で武装解除について協議する構えだった。どちらの側も先に譲歩する用意はできていなかった。計画には、実行の順序が明記されていなかったからだ。

これが計画の唯一の欠陥という訳ではない。計画では、「ガザ地区の非武装化プロセス(process of demilitarization of Gaza)」を独立した監視団の監督下で、「合意された武装解除プロセスを通じて(through an agreed process of decommissioning)」実施するとされていた。しかし、誰が監視団となるのか、あるいはそのプロセスが具体的にどのようなものになるのか―例えば、ハマスがまず重火器を放棄するのか、それとも小火器やトンネル、兵器製造施設を放棄するのか―については何ら明記されていなかった。

こうした混乱こそが、ガザ紛争に決定的な終止符を打つはずだったトランプ主導の「平和評議会(Board of Peace)」の進展を遅らせる主要な原因となっている。トランプの関心がイランとの戦争に向けられる中、ガザ地区の人々は依然として悲惨な環境下で暮らす以外にない状況が続いている。

平和評議会の重要な任務の1つは、ガザ地区の治安を維持するための国際安定化部隊(an international stabilization force)、アラブ諸国やヨーロッパ諸国、さらにはインドネシアなどの一部のアジア諸国からの部隊で構成される部隊を編成することであった。言い換えれば、必要とあれば武力を行使してでもハマスの武装解除を断行することが期待される国際武装部隊である。

ガザ地区に上陸した兵士は一人もいない。国際安定化部隊(ISF)は依然として構想段階にとどまり、現地で活動する実力組織にはなっていない。元イスラエル軍情報部大佐で、かつて国家安全保障担当首相補佐官代理を務め、現在はイェルサレム戦略安全保障研究所(Jerusalem Institute for Strategy and Security、JISS)の副所長であるエラン・レルマンは、『フォーリン・ポリシー』誌に対し、「私たちの代わりにハマスと戦うという任務を担おうとする者は誰もいない」と語った。

ブルガリア元国防相ニコライ・ムラデノフが平和評議会の上級代表(high representative)に任命され、ガザ統治のための新たなテクノクラート(technoctatic)主導のパレスティナ組織「ガザ行政国家委員会(National Committee for the Administration of Gaza、NCAG)」を率いている。NCAGのウェブサイトによれば、NCAGはガザ地区における「日常的な公共サーヴィス」の運営を担うことになっており、事実上のガザの「亡命政府(government in exile)」と広く見なされている。しかし、NCAGは数カ月にわたりカイロのホテルで足止めされており、ガザの地には一歩も足を踏み入れていない。

ヨーロッパ外交問題評議会(European Council on Foreign Relations、ECFR)の客員研究員であるムハンマド・シェハダは、ハマスがムラデノフを「イスラエルの圧力下で動いている」と疑っており、意図的にNCAGのガザ訪問を阻止していると指摘した。その狙いは、ハマスが武装解除に応じるまで、復興や政治プロセスの進展を遅らせることにあるとされている。3月には、ハマスの意思決定機関である政治局のメンバーであるバセム・ナイムがXに投稿し、ムラデノフが「アメリカやイスラエルを喜ばせるため(to please the Americans and Israelis)」、パレスティナの人々を犠牲にして「自身の目的(own ends)」を達成しようとしていると非難した。

一方、ガザの住民は、紛争前と比べて半分以下の広さの地域に密集して暮らしている。イスラエル軍は停戦後もさらに土地を占拠し、いわゆる「イエローライン(yellow line)」を越えて進出した。この境界線は、イスラエルが管理するガザ地区の53%の地域とハマス支配地域を隔てる、黄色のコンクリートブロックで示された境界だ。

イスラエル軍はさらに約11%の領土を占拠するまでに拡大し、現在ではガザ地区の64%を支配下に置いている。新たにイスラエルが支配する区域の境界は、地図上で「オレンジライン(orange line)」として示され、事実上の新たな境界線となっていると報じられている。イエローラインとオレンジラインの間(イスラエルが拡大した緩衝地帯にあたる地域)に居住する人々に支援物資を届けるには、イスラエル側の事前承認が必要とされている。

また5月末には、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がイスラエル軍に対し、ガザ地区の70%を掌握するよう指示したと述べた。この発言は、イスラエルがガザ地区の領土拡大や占領を意図しているのではないかという疑念を強めるものとなった。

さらに活動家たちは、パレスティナ人の追放が国家政策の一環として行われていると指摘している。パレスティナ人の移動の自由を擁護するイスラエルの法律団体「ギシャ(Gisha)」や、イスラエル国内のアラブ人の権利を支援する法律センター「アダラ(Adalah)」は、ガザ地区での生活の様々な側面について実態を記録し続けてきた。2月には、エジプト経由のラファ検問所からガザ地区への帰還を試みるパレスティナ人住民に対し、「嫌がらせや違法な制限」が課されていると主張し、それらの「即時停止」を求める書簡をイスラエル当局に送付した。

ギシャは2月、戦争中にガザ地区を離れた人々のうち再入国を許可されたのはごくわずかであると主張した。また、イスラエル国防省の部局である「占領地政府活動調整官(COGAT)」が、2023年の開戦前にガザ地区外にいたパレステクナ人の帰還を阻んでいるとも指摘している。

ギシャの事務局長タニア・ハリーは、「エジプトには10​​万人以上のパレスティナ人が滞在しており、そのうち約3万人がガザ地区への帰還を希望して登録しているが、入国が許可されるペースは極めて遅い」と述べている。ハリーによれば、交渉で合意された条件に基づき、毎日50人の患者が付き添い人と共にガザ地区から出国し、同数の人々がガザ地区へ帰還できるはずだといいます。しかし、実際に行き来している人々の数は「人為的に低く抑えられている」とハリーは指摘している。

交渉の際、エジプトは、出国を許可される人々の数と帰還する人々の数を同数にすべきだと主張した。イスラエルがパレスティナ人を呼び戻さないのではないかという懸念から、エジプトやその他のアラブ諸国はガザ地区を離れるパレスティナ人を受け入れざるを得なくなる事態を恐れている。一方で、『フォーリン・ポリシー』誌の取材に応じた活動家たちは、イスラエルは帰還を望むパレスティナ人を受け入れることよりも、パレスティナ人がガザ地区から出ていくことを強く望んでいると指摘した。

ハリーは、ガザ地区からパレスティナ人を追放することが国家の方針であるように見えると述べた。「イスラエルは、パレスティナ人にガザ地区から出ていくことを望むという意向を非常に率直に示しており、それを隠そうともしていない。イスラエルのカッツ国防相は、ガザ地区のパレスティナ人を受け入れてくれる国を探しているとさえ発言している。政策の目標は極めて明確だ」と彼女は『フォーリン・ポリシー』誌に語った。

人権団体「ギシャ」や「アダラ」は、パレスティナ人のガザ地区への帰還を阻むことは「住民の強制移送(forcible transfer of a population)」にあたり、戦争犯罪を構成すると主張している。

レルマンは、イスラエルの極右勢力の一部がガザ地区を占領し、パレスティナ人を追放する意向を表明していると指摘した。これはおそらく、ネタニヤフ政権の一員であり、ガザ地区からのパレスティナ人の「自発的移住(voluntary emigration)」を支持してきたイタマル・ベン・グヴィル治安相やベザレル・スモトリッチ財務相を指しているだろう。

しかしながら、レルマンは、パレスティナ人の追放が政府の方針であるとは考えていないとも付け加えた。レルマンによれば、その構想は、ハマスがもはや脅威ではなくなるまでイスラエル軍がガザ地区に駐留し続けるというものだ。

「ムラデノフはイェルサレムに対し、ハマスが武装解除に応じる気配はなく、国際安定化部隊も派遣されないことをネタニヤフ首相に伝えるよう求めた」とレルマンは述べた。つまり、ハマスの武装解除に必要な条件をイスラエル自身が作り出さなければならないということだとレルマンは付け加えた。

「その戦略はガザ地区を征服することではなく、ハマスの司令官を排除し、全面的な衝突には至らない範囲で少しずつ前進しながらハマスの支配地域を縮小していくことにある」と、レルマンは『フォーリン・ポリシー』誌に語った。

ECFR(欧州外交評議会)の研究員であるシェハダは、イスラエルが完全な武装解除を出発点としようとしているのに対し、ハマスは段階的な兵器廃棄を求めているという点が問題だと指摘した。シェハダによれば、もしハマスが小火器などを手放せば、イスラエルの入植者がその地域に入り込み、占拠する恐れがあるということだ。

シェハダは、「もし兵器がなくなり、ハマスが解体されれば、ヨルダン川西岸地区で起きているのと同様に、入植者たちが入り込み、数カ月のうちにガザ地区を掌握してしまうだろう」と述べ、ヨルダン川西岸地区における入植者による暴力行為に言及した。「トランプの和平案における取り決めは、イスラエルによる占領を防ぐための保証とは見なされていない」。

一方、イスラエル政府は、2023年10月7日のような攻撃の再発を防ぐためにハマスの武装解除を図っているに過ぎないと主張している。イスラエル国内では、ハマスを打倒する前にパレスティナ国家樹立について議論することは、10月7日の攻撃に対する「ご褒美」と見なされ、ハマスを勢いづかせる恐れがあるとの懸念が出ている。またハマス側は、イスラエル軍に兵器を引き渡せば、イスラエルと協力関係にある地元の敵対勢力から攻撃されることを危惧している。

ハマスは、パレスティナ国家樹立に向けた現実的な道筋が整うまでの間(5年、10年、あるいは15年)、NCAGの監督下で武器を廃棄または保管する用意があると表明している。ハマスのナイムは昨年12月、「停戦や休戦の期間中は一切武器を使用しないというパレスティナ側の保証を前提に、武器の凍結、保管、あるいは放棄について協議することは可能だ」と述べている。

一方、レルマンはNCAGを非武装の組織と見なしており、そのようなプロセスを実効的に監視する能力はないと考えている。「ハマスの言葉が本心だとは到底信じられないし、(武器の保管という提案は)観測気球(a trial balloon)に過ぎないように聞こえる」と彼は指摘する。

要するに、事態を前進させることに消極的な姿勢は、単なる不信感だけでなく、イスラエルとパレスティナ双方が(たとえそれが自滅的な結果を招くものであっても)自分たちの方が優位に立っていると感じていることに起因している。ハマスは、イランをめぐる紛争におけるアメリカとイスラエルの失態や、レバノンの武装組織ヒズボラが存続していることに勢いづいているようだ。自らが守るべき人々が困窮し荒廃した生活を送っているにもかかわらず、ハマスは武器を保持し続け、いずれまた戦術を再開できると考えているのである。

イスラエルは自国の軍事的優位性を認識しており、パレスティナ人を追放し、戦禍に見舞われた200万人もの人々から住居や医薬品、義肢を奪っているとの非難を浴びながらも、ハマスを効果的に追い詰めていると考えている。イスラエルとパレスティナの双方は、トランプがホワイトハウスを去ること、そして、平和評議会が静かに消滅することを待ち構えている。

※アンチャル・ヴォーラ:ブリュッセルを拠点とする『フォーリン・ポリシー』誌のコラムニストであり、ヨーロッパ、中東、南アジア情勢について執筆している。これまでに『タイムズ・オブ・ロンドン』紙で中東情勢を取材したほか、アルジャジーラ・イングリッシュやドイチェ・ヴェレ(DW)でテレビ特派員を務めた経験を持つ。以前はベイルートやデリーを拠点とし、20カ国以上で紛争や政治に関する報道を行ってきた。Xアカウント:@anchalvohra

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(終わり)


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『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカのドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーティン大統領は個人として良好な関係を続けているが、米露関係は停滞気味である。スティーヴ・ウィトコフ特使とトランプの娘婿ジャレッド・クシュナーがウクライナ戦争停戦に向けて動いているが、進展はない。戦争が長引けば長引くほど、ウクライナにしても、ロシアにしても戦争を停止するハードルが上がる。戦争は止め時が難しい。一方的に勝利できる場合(第二次世界大戦における連合国と枢軸国の関係)であれば、武力的な抵抗が終わり、降伏の意思表示ということになるが、戦争が大きな進展がないままに、日常化してしまうと、結局、その状態が固定化されてしまう。ウクライナ戦争で言えば、ロシア側は攻撃初頭でウクライナ軍が崩壊し、降伏するという計算違いを起こし、ウクライナ側は大攻勢をかけようとして失敗してしまった。現状は大きな進展はない。疲れ果てるまでこの状況を続けるしかない。しかし、ヨーロッパ諸国をはじめとする西側諸国は、ウクライナが死なない程度に「輸血」をして(ロシアに対して大きな効果を持つ武器は与えないが、小競り合い程度には勝つ武器を与え)、ロシアに対して出血を強要するという状況の維持を行っている。それは、ロシアの弱体化が自分たちの国益につながると考えているからだ。ロシアからの安いエネルギー資源輸入で生きてきたヨーロッパ諸国はなんと愚かだろうか。

 下記論考では、トランプ大統領がプーティン大統領との良好な関係を利用して、停戦を進める、そのためにロシアに条件を受け入れ、ロシアと「ウィン・ウィン」の関係を築こうとやっきになっていることに警鐘を鳴らしている。その根拠として、サブプライムローン危機で、アメリカ経済が厳しい状況だった際に、プーティン大統領が中国に、「債権を売り払って暴落させて、アメリカ経済に大ダメージを与えよう」と持ち掛けたことを取り上げている。中国側は断ったが、プーティンは時刻も大きなダメージを受けるが、アメリカのダメージを優先するような人物だとザカリアは述べている。

 この主張には説得力があるが、2008年当時と現在の世界の状況が大きく変化をしているとも考慮しなければならない。当時のロシアはジョージア侵攻を行っており、アメリカはそれに対して厳しい態度で臨んでいた。ロシアとしては戦争に負ける訳にはいかない。アメリカを牽制するためにもそのような行動に出た。重要なことは、債券を売るということがアメリカ側に伝わるように、中国側に話を持ち掛けたことである。中国に断られたので取りやめたが、自分たちはやる気だとアピールすることで、アメリカを怯えさせ、牽制する動きに出たのである。もちろん、アメリカに打撃を与えるという意図もあっただろう。しかし、本気でアメリカに大打撃を与える意図はなかったと考える方が合理的だ。そして、この時から、ロシアは外貨準備高におけるドルの割合を減らし、金保有を進めて、また、決済システムの構築を行ってきた。ウクライナ戦争が継続できているのもこれらが要因になっている。

 トランプ大統領はウクライナ戦争を停戦することを公約として当選した大統領である。公約実現のために、プーティンとの関係を利用するのは当然のことだ。それが米露両国にとって利益になれば良いことである。プーティンと「ウィン・ウィン」の関係を築けないと考えるのは浅慮であると言わざるを得ない。そのような関係を築かざるを得ない方向に進めることが外交の巧者であると言えるだろう。現在のアメリカにそのような匠はいない。

(貼り付けはじめ)

ウラジーミル・プーティン大統領との「ウィン・ウィン」という危険な幻想(The Dangerous Fantasy of a Win-Win With Putin)

-ロシアの大統領は取引の成立を目指すビジネスマンではない。

ファリード・ザカリア筆

2026年9月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/09/11/putin-trump-united-states-russia-ukraine-negotiations-deal-foreign-policy/

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モスクワで拍手を送るロシアのウラジーミル・プーティン大統領(9月9日)

ドナルド・トランプ大統領の交渉担当者であるスティーヴ・ウィトコフとジャレッド・クシュナーは、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領との最近の会談に、心底圧倒された様子だった。ウィトコフは、これらの会談は自身の人生における経験の中で「最高(thee top)」のものだと熱っぽく語っている。ウィトコフとクシュナーは両方ともロシアを潜在的なパートナーと見なし、トランプと同様に、プーティンとの「ウィン・ウィン(win-win)」な解決策を模索するビジネスマンの視点でロシアに向き合っている。

そこで、同じくビジネスの世界から政府高官に転身した人物、ゴールドマン・サックスの元CEOのハンク・ポールソンがプーティンについて学んだ教訓を振り返る価値があるだろう。財務長官だったポールソンは、2008年8月の北京オリンピックに合わせて訪中した。当時、世界金融危機が深刻化しつつあり、市場はアメリカの住宅ローンの大半を保証する巨大機関であるファニーメイ(Fannie Mae、連邦住宅抵当公庫)とフレディマック(Freddie Mac、連邦住宅金融抵当公庫)をめぐって懸念を強めていた。

北京でポールソンは、「息が止まるほど驚いた(took my breath away)」と述べた知らせを受けた。ロシア当局者が中国に接触し、中露両国でファニーメイとフレディマックの証券を大量に売却しようと持ちかけたというのだ。その狙いは、すでに揺らいでいたアメリカ経済への圧力を強め、おそらくは破綻へと追い込むことにあった。中国はこの提案を拒否した。

このストーリーが何を物語っているかを考えて欲しい。アメリカの金融システムが大恐慌以来最悪の危機に瀕していたその時、プーティンはアメリカが窮地に陥っている隙を突く方法を探っていた。たとえアメリカの深刻な経済崩壊が、ロシアを含む世界全体に必然的に打撃を与えることになる可能性があってもそのようなことをしていたのである。プーティンは、アメリカに大打撃を与えられるのであれば、共倒れ(lose-lose)の結果を招くリスクさえも受け入れる姿勢を見せていた。

それは、ビジネスマンの思考とは正反対に近いものだ。しかし、プーティンはこれまで一度も、取引(deal、ディール)を求めるビジネスマンであると自称したことはない。彼はロシアのナショナリストであり、経済的、人口動態的、そして政治的に世界の舞台で国力が後退していく中でも、ロシア帝国やソヴィエト帝国の崩壊とともに失われた力と領土を回復しようと目指している人物だ。

アメリカとその影響力を弱めることを目指した外交政策をプーティンが長年追求してきたことを、現在のドナルド・トランプ政権が認識するには何が必要なのだろうかという疑問が出てくる。トランプとイランとの対立について考えてみよう。イランにとって最大の軍事同盟国である大国はどこか? ロシアはテヘランに対し、最新鋭の航空機や戦車、その他多数の兵器を供給してきた。ロシアはイランと情報を共有しており、ウクライナの戦場で鹵獲(ろかく)したアメリカの兵器をイランに送っている。これは、イランがそれらを逆行分析(reverse engineer)し、アメリカに対して使用できるようにするためだ。『フィナンシャル・タイムズ』紙は最近、ロシアがアメリカの空母を脅かす能力を持つラムジェット推進の超音速巡航ミサイルの開発を、イランに対して密かに支援してきたことを明らかにした。これらは、抽象的な地政学的ゲームのための兵器ではない。アメリカの防衛網を突破し、米兵を殺傷するために設計されたものだ。

トランプは、アメリカが圧倒的な優位に立つ西半球(a Western Hemisphere in which the U.S. reigns supreme)というヴィジョンを抱いている。そのヴィジョンに反する動きを長年続けてきた大国はどこだろうか? 2001年から2018年にかけて、ヴェネズエラの武器輸入の70%以上をロシアが占めていた。現在、トランプ政権はキューバやニカラグアにも目を向けているが、キューバやニカラグアの軍事装備もまた、その大部分がロシア製だ。

こうした動きはアフリカにも及んでいる。モスクワは武器、資金、政治的支援、そして傭兵を活用して影響力を拡大し、西側諸国を排除しようとしてきた。ワグネル・グループは当初、ロシアの国家権力と連携して活動する組織として始まったが、やがてリビアからサヘル地域に至るまで、モスクワの野望を遂行するための手段となっていった。さらにロシアは、アメリカを主要な戦略的敵対国とみなす他の2つの核保有国、北朝鮮や中国との軍事的な連携も強化している。

ロシア・ウクライナ戦争を終わらせるためのトランプ政権のアプローチは、基本的にこの紛争においてモスクワの側に立つというものだった。トランプは、ウクライナが開戦したという誤った主張を行い、ウォロディミール・ゼレンスキー大統領を独裁者と呼んだ。トランプ政権は、ウクライナをNATO(北大西洋条約機構)に加盟させないこと、ロシアが占領した領土の多くを返還させないこと、そしてウクライナの軍事力を制限することなど、ロシア側の主張をあらかじめ容認する姿勢を示してきた。

アメリカの軍事支援は縮小し、一時は極めて重要な情報共有さえも停止されていた。キエフ訪問中に話を聞いたウクライナの将軍や兵士たちは、アメリカの支援が失われたことを、ロシアによる侵攻以来、ウクライナが被った最大の戦略的打撃だと語った。ウクライナとそのヨーロッパのパートナーたちは、ロシアの攻撃に耐え、それに対抗する術を見出してきた。しかし彼らが何よりも懸念しているのは、アメリカに見捨てられることによる、より深刻で長期的なダメージだ。

プーティンとの取引を模索することや、全ての当事者が何らかの利益を得られるような解決を望むこと自体に、何ら問題はない。しかし、外交とは、交渉の相手を理解することから始まる。ウィトコフやクシュナーは、プーティンを「ウィン・ウィン」を求めるビジネスマンだと見なしている。しかし、プーティンのこれまでの行動は、彼が全く異なる人物であることを示唆している。彼は、アメリカを弱体化させることができるのであれば、自国ロシアに犠牲を強いたり、他国を不安定化させたり、あるいは自ら損失を被るリスクを冒したりすることも厭わない人物だ。

ハンク・ポールソンは18年前、北京でその教訓を学んだ。現在、外交の場に立つアメリカのビジネスマンたちもまた、モスクワでその教訓を学んでくれることを期待したい。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。彼は『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria
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『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 先日の米中首脳会談については、このブログでも私の考えを書いた。その記事を是非読んでいただきたい。アメリカの有識者は米中首脳会談についてどのような感想を持ったのかが分かる記事を以下にご紹介したい。その内容を簡単に言えば、「習近平国家主席はドナルド・トランプ大統領のふるまいを身近で観察し、アメリカが進むべき方向を見失っていると感じ取ったのではないか」ということである。

 以下の論考の著者ハワード・W・フレンチは憶測であるとしながらも、トランプの「滑稽な姿」や国内政治と外交の区別をつけることができない様子を見て、「アメリカ自体が自信を失い、進むべき方向性を見失っている」と感じ取っただろうと書いている。この観察と感想は非常に重要である。フレンチが具体例として出しているのは、ホワイトハウスの壁に飾られた歴代大統領の肖像画(肖像写真)をトランプが習近平に紹介しているシーンだ。トランプは、ジョー・バイデンの肖像写真をオートペン(署名が自動できる装置で歴代大統領も使用)の写真に変更して飾らせている。そして、紹介する際に、必ずバイデンを笑いものにする。習近平は周りにつられて笑いはしたが、駄々っ子のトランプをあやすかのようだ。国内政治で対立し、激しく非難し合っていても、他国に対してはそのようなことをしないというのは不文律である。しかし、トランプがバイデンを嘲笑する姿を見て、習近平は哀れを感じたことであろう。
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 私たちがもっと悲しむべきは、日本の高市早苗首相がこの署名の紹介のところで、トランプに媚びて、下卑た馬鹿笑いをしているところだ。フレンチのような有識者、外交について長年見てきた人物から見て、トランプの姿は滑稽であり、哀れを誘うということになる。それならば、そのような哀れを誘うトランプに対して、下卑たお追従をする日本の高市早苗首相にはどのような感想を持つだろうか。もはや独立国の指導者とすら思われないだろう。それが日本の真の姿であるということを私たちは認識しなければならない。
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こんな無能な思考力の欠如した指導者しか選べない日本とはなんと哀れな国だろう。自信を失った、哀れな国家に付き従う属国の悲哀ということについて、私たちはよくよく考えねばならない。現実から目を背けて、「日本の●●は世界一!」「二歩人は世界で最も●●な民族!」と言わねば、精神が保てないということは分かるが、私たちは冷静になって、現実を見る目を養わねば、悲惨な歴史を繰り返すことになる。もしくは、アメリカの作家マーク・トウェインが述べた、「歴史は繰り返さないが、歴史は韻を踏む(History doesn't repeat itself, but it rhymes)」という言葉を拳拳服膺しなければならない。私は歴史が繰り返すにしても、韻を踏むにしても、非常な器具を持っている。それは、今から81年前と同様の結果が起きるのではないかと考えているからだ。

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習近平は実際にトランプについてどう考えているのか(What Xi Actually Thinks of Trump)

-習近平中国国家主席はドナルド・トランプ政権下のアメリカは進むべき道を見失ったと結論づけた可能性が高い。

ハワード・W・フレンチ筆

2026年9月28日

『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2026/09/28/xi-trump-summit-washington-us-china/

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ワシントンのホワイトハウスにあるローズ・ガーデンに姿を見せたドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席(9月24日)

ワシントンで行われたドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席との首脳会談における最も重要な成果の1つは私たちがすぐに、そしてこれからもずっと見ることができないものであろう。

それは、米中両国が共同声明を発表できなかったことや、会談内容に関する双方の発表に大きな食い違いがあることとは関係ない。むしろそれは、習金平が訪米を終えるにあたり、2つの関連する問いについて持ったであろう、個人的な見立てに関わるものである。すなわち、「トランプとは本質的にどのような人物なのか?」、そして「彼の政権は、世界の現行超大国としてのアメリカの現状について何を物語っているのか?」という問いについてである。

こうしたコラムは必然的に推測の域を出ないものだが、あえて私の見解を述べてみたい。第一の点は単純明快だ。トランプ大統領が習主席をレッドカーペットで厚遇し、事あるごとに持ち上げたあの極端なへつらい(extraordinary unctuousness)は、トランプ自身がしばしば信じているような、2人の間に真の友情を芽生えさせることなど到底あり得ないものだった。

他の国々と同様、中国も過去数十年にわたり多くの過ちや誤算を犯してきた。しかし、毛沢東時代以降の中国では、規律あるプロセスを経て政策が策定されている。その目的は、中国の、少なくとも中国共産党の、利益を冷静かつ合理的に評価することだ。一般的な意味での個人的な友情など、このプロセスとは何の関係も持たない。この原則は、習主席とロシアのウラジーミル・プーティン大統領(モスクワは北京にとって状況に応じた同盟相手である)との間で見られる、あの親密さを演出するパフォーマンスにさえ当てはまるだろう。

やや推測が進んでしまうことになるが、習主席は、トランプ大統領が「権威主義的なリーダーシップとはこうあるべきだ」と解釈して見せる振る舞いを、非常に滑稽なものとして見ていたかもしれない。トランプが国王のような権力を夢見ているというのは、アメリカの政治評論においてよく語られる話だ。そうでなければ、彼が金(ゴールド)を多用することや、記念碑的な建造物、とりわけ後世に自分の名を残すようなものを熱望することをどう説明できるだろうか? しかし、トランプが習主席をホワイトハウス内で案内し、ヘリポートや建設中の舞踏室を誇らしげに紹介する様子を見ていた習主席は、トランプを「馬鹿者(a fool)」だと見なしたに違いないと私は考えずにはいられない。習主席が過去13年余りにわたり自らの手中に強大な権力を集中させてきた一方で、彼が個人的な誇示や自己顕示のために費やした労力は、ほとんど皆無に等しい。

トランプが習主席をあるパヴィリオンへと案内した際、習主席は相手に対して悪い印象を抱いたに違いない。そこは金箔を施した壁に歴代米大統領の肖像画が掲げられた場所で、肖像画は昇順に並べられ、トランプのものが一番高い位置に飾られていたからだ。それだけでも悪趣味極まりないが、さらにトランプは、自身の前任者であるジョー・バイデン氏の肖像画が飾られた額縁の前で立ち止まった。そこにはバイデンの肖像画の代わりに、オートペン(署名代行機)の写真が収められていた。これはバイデンが(歴代大統領と同様に)公的な文書に署名する際によく使用していた機器である。

トランプ大統領が認識していなかったと思われるのは、国内政治と最高レヴェルの国際関係は、日常的に慎重に区別されるべきものだという点だ。「政治は水際で終わる(politics stops at the water’s edge)」という、外交に関するアメリカの古くから尊重されてきた格言が示す通りである。習主席自身、2022年10月に中国共産党の最高幹部が集まる党大会の場で、前任者の胡錦濤を退席させたことで波紋を呼んだことがある。これは、内部の不和が公の場に表れることが稀な中国において、異例の出来事であった。しかし、習主席が海外で前任者の誰かを公然と悪く言うなど、到底考えられないことだ。なぜなら、国家運営の心得を十分に備えた多くの国の指導者と同様に、習主席もまた、海外での重要な責務の1つは、自国とその体制の結束した姿をアピールすることだと理解しているからだ。

少なくとも習主席は、トランプが自身の前で米メディアをこき下ろし、中国メディアが北京の意向通りに報道することに対して隠しきれない羨望を口にした際、トランプが事態を根本的に取り違えていると感じたはずだ。トランプは、政府寄りの報道とは、自身の気に障る批判を行う報道機関を排除することによって実現するものだと考えているようだ。だが、習主席はそうではないことを知っている。アメリカと中国の報道体制の違いは、民主政治体制と独裁制という根本的な相違に根ざしているからだ。

しかし、そこにはさらなる要素がある。アメリカ憲法によって保障された報道の自由は、単なる法的な規定にとどまらず、自らを批判する者を恐れない体制が持つ、より深い国家としての自信を長年にわたって反映してきた。こうした状況を目の当たりにし、私は次のような疑問を持つに至った。習近平は、単に1人の大統領が漫画のような滑稽な姿(cartoonishness)を晒しているのを見ていたのではなく、中国の指導者たちが長年敬意を抱き、時には羨望の眼差しさえ向けてきたあの自信(the self-confidence)を含め、進むべき道を見失いつつある国家の兆候をそこに見て取ったのではないか?

比較のために、それぞれが全く異なる体制の頂点でどのように振る舞ってきたかを見てみよう。習近平の統治は、戦略的かつ極めて強い意志を持って、ほぼ絶対的な権力(near-absolute power)を掌握しようとする動きとして捉えるべきだ。一部の人々にとっては、その動きは彼が2012年後半に中国の指導者に就任する前から始まっていた。2012年9月、彼は約2週間にわたって公の場から姿を消したことがある。多くの説によれば、彼はこの空白期間を利用して古参幹部たちに迫り、毛沢東時代以降に就任した他の指導者たちよりもはるかに大きな権限を自分に与えるよう確約させたという。

それ以来、習近平は徹底した反腐敗キャンペーンを巧みに利用してきた。単に汚職を取り締まるだけでなく、自身の忠誠心が疑わしい党幹部を排除するためである。中国人民解放軍の上層部に対しても同様の手法をとり、主要な将官クラスの有力者たちを次々と投獄したり、退役させたりしてきた。こうした一連の動きにより、習近平は毛沢東時代から続いてきた「5年任期を2期まで(two five-year mandates)」とする慣例を回避し、無期限に統治する権力を手中に収めた。彼の権力掌握の手法は、大蛇(a boa constrictor)が獲物を仕留める様子に例えられるかもしれない。つまり、徐々に、しかし容赦なく締め付けを強めていく方法である。

だからと言って、習近平が国を正しい方向に導いているとか、中国の台頭が不可避であるとか、あるいは中国内部に深刻な矛盾がないなどと考えるべきではない。しかし、トランプ率いるアメリカについても、同じことが言える訳ではない。

トランプの行動、とりわけ2期目における行動がアメリカの利益につながると結論付けるのは難しい。私が悲観的になる理由の多くは、彼のリーダーシップのスタイルにある。習近平と比べると、トランプは全くの素人のように見える。好奇心に欠け、知識も乏しく、直感や気まぐれで動く即興的な人物だ。自制心に乏しく衝動的で、自らの偉大さや機知、知恵を誇示することに喜びを見出すような人物だ。

これを厳しい評価だと感じるなら、共和党への近年の最大級の献金者の1人である億万長者、ピーター・ティールによる、トランプのリーダーシップに対する最近の批判を考えてみてほしい。ティールは、トランプの第2次政権が第1次政権時の内部対立を是正しようとするあまり、行き過ぎた対応をとったと指摘している。具体的には、忠誠心テスト(loyalty tests)を課した結果、彼の言葉を借りれば「頭はそれほど良くないが忠実な人々で構成された政権」が生まれた。そうした選択がもたらす戦略的な帰結は今、イランや中東全域からウクライナ、さらには東アジアに至るまで、世界の舞台で現実のものとなりつつある。

その結果、トランプは、習主席が陥りかねない最も危険な誤算の1つを、現実のものとする可能性を著しく高めてしまった。習主席は今後、自らの能力や中国の力を過大評価する(例えば、台湾や日本をめぐる力関係において)一方で、トランプ政権下の自滅的な失態からアメリカが立ち直る可能性を過小評価するようになるかもしれない。言うまでもなく、その回復は決して容易なことではないことは明らかだ。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授、長年にわたり海外特派員を務めた。最新作に『第二の解放:高潮期のンクルマ、汎アフリカ主義、そしてグローバル・ブラックネス(The Second Emancipation: Nkrumah, Pan-Africanism, and Global Blackness at High Tide)』がある。ブルースカイ・アカウント: @hofrenchbluesky.social、 Xアカウント:@hofrench

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 古村治彦です。

 第二次世界大戦後のアメリカの「お家芸」は、戦争の泥沼(quagmire)にはまることである。朝鮮戦争、ヴェトナム戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争、イラン戦争と泥沼にはまることを続けている。湾岸戦争は自制的に進めたことで泥沼にはまることはなかった。アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンは、退任演説で外国との恒久的な同盟構築を回避するように訴えた。対外戦争を非常に危惧した。それは、泥沼にはまる状況を危惧してのことだったのだろうと私は考えている。

 戦争が泥沼にはまる際の要素として、下記論考のスティーヴン・M・ウォルトは以下を挙げている。「無知(Ignorance)、誤った助言(Bad advice)、集団思考(Groupthink)=偏った意思決定プロセス(a biased decision-making process)、過信(Overconfidence)、信頼できない現地のパートナー(Unreliable local partners)、信認について懸念(Credibility concerns)」ということになる。

これらを使って、イラン戦争に当てはめて考えてみたい。まず、無知であるが、これはイランについての情報や知識が欠けているということになる。専門部署はきちんと機能して、報告を上層部に伝達しても、それを活かせるかどうかということになる。最終決定を行うドナルド・トランプ大統領がまともに報告書(日本で言えばA4用紙一枚程度)を読んでいたとは考えにくい。アメリカ軍制服組の上層部は戦争に反対していたが、トランプの無知の前には効果を持たなかった。誤った助言は、このブログでも紹介したし、『ザ・フナイ』に掲載した論考にも書いたが、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が2025年に複数回、ホワイトハウスを訪問し、トランプにイラン攻撃を働きかけた。ネタニヤフは真実を伝えず、楽観論を伝え続けた。トランプの決定はネタニヤフの誤った助言に影響を受けることになった。意思決定プロセスの問題であるが、アメリカ軍、政権幹部(ピート・ヘグセス国防長官以外)は反対していた。しかし、トランプの決定を変更させることはできなかった。過信については、言わずもがなであろう。世界最強のアメリカ軍と、中東地域で精強を誇るイスラエル軍が攻撃すれば、イランはもろくも崩れ去るということは多くの人が考えることだろう。トランプもネタニヤフもそう考えていたことだろう。信頼できない現地のパートナーとしてはイスラエルが筆頭であろう。また、アメリカに亡命しているイランの王太子も含まれる。どちらにしてもイランを攻撃し、体制転換を迫る上で役立つパートナーではなかった。最後に、信任について懸念であるが、これは、「アメリカはパートナー、同盟国として信頼できない」「アメリカ軍は強くない」ということである。これを避けるためには、何とか「勝利」と呼べる状態を出現させたい。そのために、戦争が長引いてしまう。トランプもこの状況に陥っている。

 泥沼にはまらないためには何が必要か。対外戦争をしないことだ。自国から遠く離れて戦争をしないことだ。今回のイラン戦争を通じて、中国は改めてそのことを学んでいることだろう。

(貼り付けはじめ)

泥沼の事態に陥る兆候(Top Signs You’re Heading for a Quagmire)

-何を見るべきかを知っていれば失敗に終わる戦争は予測可能だ。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年9月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/09/10/top-signs-quagmire-war-global-military-conflict/

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イギリスのボルドン近郊の演習場で横転した戦車を回収する兵士たち(2022年3月14日)

大国間の競争(great-power competition)が激化する世界において、ある国の外交手腕が真に問われるのは、資源を浪費し、注意を逸らし、最終的には国力を強化するどころか弱体化させるような、高くつく紛争や無益な事態を回避できるかどうかという点にある。言い換えれば、「泥沼(quagmires)」のような事態に陥るのを避けられるかということだ。大国は往々にして、ライヴァル国が戦略的な「流砂(quicksand)」にはまり込むのを歓迎し、時にはそうした事態を助長することさえあるが、賢明な指導者はこうした厄介事に関わらないよう努めるものだ。

ここ数十年の間、中国はアメリカやロシアに比べて、泥沼のような事態を回避する点で、はるかに巧みな立ち回りを見せてきた。冷戦後の慢心から、アメリカの指導者たちは多岐にわたる世界的責務を背負い込んだが、その中には理にかなったものもあれば、そうでないものも数多くあった。イラクやアフガニスタンでの「終わりのない戦争(forever wars)」は、もちろん後者の最も明白な例だが、アメリカは「対テロ世界戦争(global war on terror)」の一環として、リビア、イエメン、シリア、そしてアフリカ各地における小規模な紛争にも深入りし、泥沼化させてきた。

さらに、イスラエルとパレスチナの和平仲介に向けた長きにわたる稚拙かつ実りのない取り組みも挙げられるだろう。この取り組みは大統領の多大な時間と関心を費やしたものの、最終的には失敗に終わった。その大きな要因は、ワシントンが公平な仲介者(a fair-minded mediator)としてではなく、「イスラエルの弁護人(Israel’s lawyer)」のように振る舞ったことにある。そして今、ドナルド・トランプ米大統領は、自ら招いたイランとの泥沼の対立に、その危険性を承知の上で足を踏み入れた。この対立は、利益は皆無か、あってもごくわずかな一方、コストの増大は明らかであり、屈辱的な撤退(a humiliating retreat)以外に出口が見当たらない状況にある。

同様に、ロシアも2000年以降、近隣諸国との間で一連の「凍結された紛争(a series of frozen conflicts 訳者註:解決に至らない対立状態)」を抱え込み、ウクライナのヴィクトル・ヤヌコヴィッチ元大統領やシリアのバッシャール・アル=アサド指導者といった友好勢力を支えきれず、現在はウクライナでの戦争という「存在し続ける傷口(the running sore 訳者註:深刻な泥沼)」に足を取られています。こうした行動は、ロシア経済や国民に多大な犠牲を強いただけでなく、ヨーロッパ諸国の大部分との関係を悪化させ、ロシアを中国への依存度を強める方向へと追い込んだ。ワシントンとモスクワの双方に、そうした行動に出たなりの理由はあった。しかし、それら一連の冒険的行動によって、どちらかの国が世界的な地位を強化できたと主張するのは難しい。

ワシントンとモスクワの双方に、それぞれの行動を取った理由はあった。しかし、こうした一連の冒険的行動によって、どちらかの国の世界的な地位が強化されたと主張するのは難しいだろう。

対照的に、中国は、多大なコストを要する泥沼の事態を避け、国内での国力増強に注力してきた。南シナ海での人工島建設、対外的な外交プレゼンスと影響力の拡大、備蓄や準備金の積み増しによる対外圧力への耐性強化、そしてレアアースやグローバル・サプライチェインの要所を支配することによる交渉力の確保といった取り組みである。確かに、軍事力の増大やますます強硬さを増す外交政策は近隣諸国に警戒心を抱かせ、それらの国々が北京に対抗する動きを促す結果にもなった。しかし、ロシアやアメリカとの関係において、中国の全体的な地位は著しく向上している。中国のアプローチは、対外的なトラブルに深入りしないことが極めて賢明な戦略であることを示唆している。

それでは、なぜ国家は泥沼の事態に陥ってしまうのか。そして、将来それを回避するにはどうすればよいのだろうか。ここでは、いくつかの危険信号(the warning signs)を挙げてみたい。

無知(Ignorance)。長期化し、多大なコストを要し、あまつさえ敗北に終わるかもしれないと予想される戦争を、自ら始めようとする人間はいない。つまり、事態がどう展開するかを事前に知っていれば、ほとんどの指導者は別の道を選んでいただろうということだ。

このことは、泥沼の事態が往々にして、対峙する相手国や直面する困難、あるいは他の行動主体の反応に対する「無知」から生じることを示唆している。教訓は次のようになる。ほとんど知識のない国に介入しようとする際は十分に警戒すべきだ。

誤った助言(Bad advice)。介入の決定は、何もないところから突然生まれるということはない。誰かがその案を考案し、決定権を持つ人々にそれを採用するよう説得する必要があるからだ。したがって、泥沼の事態を避けたいのであれば、介入を望む独自の動機を持つ利害関係者たち(self-interested parties)からの助言に対して、極めて懐疑的な姿勢をとるべきだ。

アメリカ軍の力を利用して権力の座に就こうと画策していたアフメド・チャラビのような、開戦を主張するイラクの亡命者たちの言葉に耳を傾けたことは、ジョージ・W・ブッシュ政権にとって誤りだった。同様に、イランとの戦争を説くイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の主張を信じたり、米国内の好戦派による甘い言葉に注意を向けたりしたトランプ大統領の行動も極めて愚かなことだった。

この問題は何も新しいものではない。ニコロ・マキャヴェッリは著書『ディスコルシ 「ローマ史」論 (Discourses on Livy)』の中で、指導者たちに対し、利害関係者(彼の場合は亡命者[exiles])の証言を真に受けすぎないよう特に警告している。

「祖国を追われた者たちの言葉や約束ほど無駄なもの(vain)ははない。・・・彼らは故郷へ戻りたいというあまりに強い願望を抱いているため、事実ではないことを信じ込んでしまったり、意図的に話に付け加えたりしがちである。その結果、彼らが本気で信じていることと口先だけで言っていることが混ざり合い、指導者たちに過度な期待を抱かせることになる。もしその言葉を信じて行動を起こせば、無駄な出費を強いられるか、あるいは破滅を招くような事業に巻き込まれることになるだろう」。

ここで注目すべきは、最初の2つの問題が互いに悪影響を及ぼし合っているという点だ。無知であればあるほど、事態を熟知していると主張する人々の助言を鵜呑みにしやすくなるからだ。

集団思考(Groupthink)。選択肢について明確かつ公平な議論が行われない場合、国家は泥沼の事態に陥りやすくなる。追従者や忠実な側近に囲まれた自信過剰な独裁者(ロシアのウラジーミル・プーティン大統領やトランプなどがその具体例となる)は、こうした過ちを犯しがちだが、異論を聞くことを拒絶し、自身の先入観に合わない情報を無視する傾向がある指導者たちも同様だ。

誰もが、自分の望む行動を裏付ける証拠を過大評価し、自分が間違っていることを示す証拠を軽視する傾向を持っている。だからこそ、泥沼の事態を避けようとする指導者たちは、積極的に代替案に耳を傾け、開戦の根拠となっている前提条件について徹底的にストレステストする(stress-test)よう助言者たちに促すべきだ。指導者がこうした行動を怠ると、「無知(ignorance)」「誤った助言(bad advice)」「偏った意思決定プロセス(a biased decision-making process)」が組み合わさり、事態は直ちに・・・。

過信(Overconfidence)。無知と誤った助言が重なると、意思決定者は「成功は容易だ」と信じ込まされがちだ。その根拠とされるのは、相手の軍事力が劣っている、相手国政府が脆弱で即座に崩壊する、現地住民が不満を抱いており侵略者を歓迎するだろう、あるいはそれらの複合的な要因などだ。こうした見方が実際に正しいこともあるが、それは稀だ。また、軍事的に劣る敵を打ち負かすという純粋な軍事的任務以上に、勝利後の事態を収拾することの方がはるかに困難な場合もある。

したがって、泥沼の事態を避けたいのであれば、勝利した後にどうするのかを慎重に検討しておく必要がある。さらに重要なのは、「勝利に至る最良のケースセオリー」が誤りであり、長期戦を強いられることになった場合に備えて、「プランB」を用意しておくことだ。

信頼できない現地のパートナー(Unreliable local partners)。ヴェトナム、アフガニスタン、イラク、そしてイランにおけるアメリカの経験は、同様の教訓を物語っている。有能かつ信頼できる現地のパートナーがいなければ、泥沼の事態を避けるのは困難になる。アメリカは最初の3つの事例において、国家建設(nation-build)に巨額の資金を投じたが、現地の協力者たちは内部分裂し、腐敗しており、それぞれ独自の思惑で動いていた。トランプは、政権中枢の指導者さえ排除されれば、不満を抱くイラン国民(多数存在する)が蜂起するだろうと考えていたようだが、それは、政権側の組織化された治安部隊の存在や、組織化された反体制派の不在という現実を完全に無視した空想に過ぎなかった。

プーティンも同様の誤算を犯した。彼は、自軍が国境を越えた途端にウクライナ政府が崩壊する(あるいは侵攻部隊がキーウに到達すれば、親露派の傀儡政権に容易に取って代わられる)と考えていた。しかし、それはウクライナ国民の強烈な愛国心を理解していなかったことを露呈する、根拠のない期待に過ぎなかった。

開戦前の楽観的な見通しが誤りであり、戦争が長期化し困難なものになると明らかになった時点で、新たな問題が生じる。たとえ損切りをして撤退するのが賢明な判断だとしても、指導者たちが多大な犠牲を伴う泥沼の状況から抜け出すのを難しくする、少なくとも2つの明白な理由が存在する。

信認について懸念(Credibility concerns)。政府は多くの場合、揺るぎない姿勢や信頼性を維持するためには「方針を堅持(stay the course)」しなければならないと考えがちだ。例えば、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は、アメリカがヴェトナム戦争に勝利できないことを理解しており、そもそも参戦すべきではなかったかもしれないと認めてさえいた。しかし彼は、50万人のアメリカ軍を投入した以上、ヴェトナムの「重要性という問題は決着済み(settled the issue of the importance of)」だと主張した。なぜなら、撤退すればアメリカの信認が損なわれ、同盟諸国がアメリカを見限るだろうと(誤って)信じていたからだ。キッシンジャーは戦争に勝ち目がないことや、ヴェトナムの戦略的重要性が低いことを知っていたが、信認への執着が戦争をさらに6年間長引かせる一因となった。

また、ダニエル・エルズバーグが有名な論考で論じたように、これには国内政治上の類似した側面もある。指導者たちは、明白な失敗が招く国内政治的な結果を恐れるあまり、泥沼化した状況から抜け出すことをためらいがちになる。勝利の可能性が低いと分かっていても、問題を先送りし、後任者に押し付ける道を選んでしまう。リンドン・ジョンソン大統領はヴェトナム問題をリチャード・ニクソンに引き継ぎ、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ、ドナルド・トランプも、それぞれアフガニスタン問題を後任者に委ねた。ジョー・バイデン大統領は、勝利の可能性が低いと理解していた戦争を終わらせる勇気を示したが、アメリカ軍撤退に伴う(避けようのない)混乱した結末に対しては、激しい批判を浴びることになった。

トランプがイランとの戦争において、単に損切りをして戦争を終わらせようとしないのも、こうした理由からかもしれない。彼は依然として、「勝利(victory)」として宣伝できるような成果を何とか得られないかと期待している。幸運を祈るだけだ。

皮肉なことに、こうした国内政治的な結果への恐れは、見当違いなものかもしれない。サダム・フセインは、自ら始めたイランとの愚かな戦争を8年間の戦闘の末に終わらせたが、権力の座を追われることはなかった。また、第一次湾岸戦争で屈辱的な敗北を喫した後も、イラクの指導者の地位にとどまり続けた。ロナルド・レーガン大統領は、テロ爆撃で240人以上のアメリカ軍兵士が犠牲になった後、レバノンから撤退したが、それでもなお、強硬な姿勢を持つタカ派の大統領として広く認識された。バイデンでさえ、就任1年目に行ったアフガニスタンからの撤退による長期的なダメージはほとんど受けなかった。あの初期の決断は、2024年の選挙戦や、その後のカマラ・ハリスの敗北において、ほとんど何の影響も及ぼさなかった。

「勝利はもうすぐそこだ(Victory is just around the corner)」。強大な国家は、戦い続けるだけの余力があり、新たな手法を試すための資源も持ち合わせているがゆえに、泥沼の紛争から抜け出せなくなることがある。

アダム・スミスは「一国が破綻に至るまでにはかなりの余力(ruin)があるものだ」と記したが、この言葉は特に、人口が多く経済規模の大きい国に当てはまる。たとえ利害がそれほど大きくなく、勝利の見込みが薄い場合でも、大国は愚かな戦争を長期間続けることができる。特に、志願制の軍隊に頼り、増税ではなく財政赤字で戦費を賄い、勝利への鍵となることを期待して新たな戦略や兵器を次々と試すことができる状況であればなおさらだ。過去4年間にロシア(およびウクライナ)が試みてきた数々の手段や、アメリカが過去に陥った泥沼の紛争の中で試みた様々な選択肢や戦略的革新を思い起こせば、そのことは明らかだろう。

実際、ヴェトナム戦争においてアメリカ人は「転換点を迎えた(turn the corner)」と繰り返し聞かされていたが、この決まり文句は後にイラクやアフガニスタンの紛争でも再び持ち出され、繰り返されることとなった。ヴェトナム戦争において、ワシントンは威圧的な爆撃、カンボジア侵攻、北ヴェトナムの港湾への機雷敷設、エイジェント・オレンジのような「枯葉剤(defoliants)」の広範な使用、現地住民を保護するための「戦略村(strategic hamlets)」建設、「ヴェトナム化(訳者註:南ヴェトナム軍への権限委譲)」など、あらゆる手を尽くしたが、どれも徒労に終わった。2007年にイラクで行われた増派(surge)は、軍事的には短期的な成果をもたらしたものの、イラクのより広範な政治的問題を解決するには至らなかった。また、2009年に国防総省がバラク・オバマ大統領に押し付けたアフガニスタンへの同様の増派も、同じく失敗に終わった。富裕な国家は長期間にわたって様々な選択肢を試し続けることができ、あと少し努力すれば成功するかもしれないという可能性が、常にわずかながら残されている。そうした希望こそが、泥沼の紛争を長引かせる要因となる。

結局のところ、泥沼の紛争が生じるのは、戦争を始めることよりも終わらせることの方が困難だからである。したがって、泥沼の紛争を避けたいと望むなら、外国の戦争に関与することに対して辛抱強い慎重さを抱くことこそが、最善の防衛策となるだろう。国家には依然として、真に死活的な国益を守るために戦う意欲を持つ国民と、有能な軍事力が必要だ。しかし、安易に勝てると見込んで、希薄な理由や些末な動機のために「選択的な戦争(wars of choice)」を仕掛ければ、勝利も容易な終結も望めない紛争に深入りすることになる。これまでのところ、中国の習近平国家主席とその側近たちは、トランプやその歴代の多くの大統領よりも、この原則をよく理解しているようだ。その状況が続く限り、優位に立つのは北京ということになる。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。彼は、現代世界を理解・展望する上で不可欠な主要概念を解説する5部構成のニューズレター・シリーズ『新しい地政学(The New Geopolitics)』著者。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social Xアカウント:@stephenwalt

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『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争とイラン戦争、近年の大型戦争が示しているのは、防衛側が有利であるということだ。アメリカとロシアという国連安全保障理事会常任理事国にして核兵器保有国、軍事力で見れば世界有数の強国がウクライナとイランを攻撃し、短時間で屈服させることはできなかった。ウクライナもイランも多大な犠牲を払いながらも攻撃をはねのけ、戦力としては劣勢でありながらも、相手の急所を大型ではないが効果的な武器で攻撃し、強大なロシアとアメリカに影響を与えている。また、経済面でも世界的な波及効果を及ぼし、停戦に向けた圧力も生み出している。こうして見ると、下記論考でスティーヴン・M・ウォルトが述べているように、「防衛優位(Defense-Dominance)」ということになる。これからは、外国を攻めるだけの武力があり、実際に攻めても、その効果は限定的で、目的を達成することができないということになる。

 戦車や戦闘機、大型空母を持ち、海外遠征能力を持ち、大規模攻撃を行っても、第一波攻撃で相手を屈服させることができず、相手から反撃を受けるともう駄目ということになる。トランプ大統領はヴェネズエラ攻撃を行い、ニコラス・マドゥロ大統領夫妻を逮捕したが、あれは特殊部隊による急襲であり、何よりもヴェネズエラ政府内部に協力者、スパイを配置するなど用意周到な作戦を練り、成功させたのだろう。これからは大規模な作戦ではなく、ターゲットを絞った攻撃の方が有効ではないかと思う。バラク・オバマ政権時代にオサマ・ビン・ラディンを捕捉し、殺害した出来事を思い出す。あの時もドローンが活躍した。

 日本は第二次世界大戦で悲惨な敗北を経験し、専守防衛を国是(national credo)として戦後世界に復帰した。その国是が崩れつつある。国民の思考力や判断力の低下傾向が続く中で、極右勢力が政権を握るまでになった。そして、軍事力増強が続く。仮想敵国となるのは中国や韓国、北朝鮮、ロシアということになる。大枠で言えば、日本国憲法には第九条で戦争放棄の規定があり、それがまだ効力を持っている。この改定を目指す高市早苗首相や小泉進次郎防衛相をはじめとする、統一経協会に汚染された自民党極右勢力がその試みに成功すれば、日本は戦争ができる国になる。しかし、これまで述べてきたように、戦争を引き起こすことは何の利益にもならない。日本が攻められるという主張もあるが、日本は武力侵攻をするほどの価値もない国家である。武力以外の要素で締上げれば済む国であり、何より、高市早苗という人物を首相にして、選挙に勝たせてしまうほどに思考力と判断力が欠如した国民の住む国である。勝手に自爆して滅んでしまう。怖いのは自爆する際に、破れかぶれで周りを巻き込むことだけだ。そこさえ気を付けて対処していれば済む。日本は本来の国是である、戦争放棄と国際協調に戻るべきである。しかし、もうすでにそれが不可能なところにいるのかもしれないと悲観的になってしまうところもある。

(貼り付けはじめ)

防衛優位の新たな世界へようこそ(Welcome to the New Defense-Dominant World)

-軍事力の有効性が低下する中である古い国際関係論が再評価されている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年9月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/09/01/defense-dominant-theory-international-relations-military-power-ukraine-iran-war/

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プラハで行われたIIHF男子アイスホッケー世界選手権の準々決勝アメリカ対チェコ共和国戦で反応する米代表のゴールキーパーのチャーリー・リンドグレン(2024年5月23日)

ロシアによる無謀なウクライナ侵攻や、それと同様に愚かなアメリカとイランの対立は、私たちが「防衛優位(defense dominance)」の新しい世界、すなわち、大国や強国であっても領土を征服したり、はるかに弱小な国家から大きな譲歩を引き出したりすることが困難な世界に突入したことを示唆している。国連のアントニオ・グテーレス事務総長も同様の認識を抱いているようで、『フィナンシャル・タイムズ』紙に対し、「近年の出来事を見れば、超大国が様々な状況下で自らの意志や力、武力を行使して相手を従わせる能力は、著しく制限されている」と語っている。

その直接的な要因を特定するのは難しくない。高度なドローンや精密誘導ミサイルの開発に加え、監視・標的捕捉能力が向上したことで、大規模な部隊が遮蔽物のない開けた場所で活動することが困難になったからであり、そうした場所では、隠れた防衛側から標的にされやすいためだ(the development of sophisticated drones and accurate missiles, as well as improved surveillance and targeting capabilities that have made it harder for large units to operate in the open where they can be targeted by hidden defenders)。同様に、巨額の費用を投じた戦力投射能力[power projection capabilities](空母やステルス機など)も防衛側の攻撃に対して脆弱になりつつあり、安価で隠蔽が容易なドローンや弾道ミサイルを排除するのに苦慮している。断固たる意志を持つ敵の手に渡れば、こうした新たな能力によって、比較的弱小な相手であっても自国領土を強力に防衛したり、遠距離から相手に打撃を与えたりすることが容易になる。その結果、客観的に見てより強大な国が相手を降伏させることは、いっそう困難になるのである。

こうした状況は、敵に対してほぼ無傷で行動し、「共有地を支配すること(command of commons)」で敵への戦力投射を可能にする優位性を享受することに慣れきったアメリカにとって、特に厄介な問題となり得る。確かに、こうした優位性があったからといって、北ヴェトナムやタリバンといった、断固たる意志を持つ現地の敵を打ち負かせた訳ではない。しかし、サダム・フセイン、ニコラス・マドゥロ、ムアマル・カダフィといった脆弱な独裁者を打倒したり、1983年のグレナダ侵攻や1991年のパナマ侵攻のような圧倒的な戦力差がある紛争に勝利したりすることは可能であった。

しかしながら、重要な問いは、近年の動向が、軍事力の有効性(すなわち、軍事力が成功の裡に活用できる目的)や国際政治のより広範な性質において、根本的な変化をもたらしているのかどうかという点にある。実は、この問いに直接関わる国際関係論の諸理論が存在する。それは議論の余地を含みつつも広範に展開されてきたもので、「攻撃防衛バランス(offense-defense balance)」という、単純でありながら捉えどころのない概念に基づいている。

ジョージ・クエスター、ロバート・ジャーヴィス、スティーヴン・ヴァン・エヴェラ、チャールズ・グレイザー、ハイム・カウフマンなどによって展開された「攻撃防衛理論(offense-defense theory)」は、征服の容易さや困難さが、国家の安全保障や国家間の関係性に甚大な影響を及ぼしうると論じている。簡潔に言えば、征服が容易であれば、定義上、全ての国家の安全は脅かされることになる。征服が容易であること、そして規模を拡大することが長期的な生存の可能性を高めるかもしれないという理由から、領土拡大を試みようとする国家が現れるだろう。その結果、帝国を築くことは容易でも、それを維持することは困難になる。また、防衛よりも攻撃の方が容易な状況では、他国が戦争を始めるのを待つことは合理的ではないため、先制戦争と予防戦争(preemptive and preventive wars)が頻発するようになる。さらに、他国を信頼したり、軍備を制限したり、あるいは何らかの譲歩を行ったりすることが、ライヴァル国につけ込まれる不利な状況を招きかねないと懸念されるため、軍拡競争(arms races)は激化し、相互不信も深まるだろう。加えて、攻撃が容易な状況では、多くの国家が攻撃的な軍事態勢や軍事ドクトリンを採用することになり、その結果、危機の安定性(crisis stability)が低下し、相手国に悪意があるという相互認識(mutual perception)が強化されてしまう。ジャーヴィスが画期的な論文で強調したように、防衛よりも攻撃の方が容易な場合、「安全保障のディレンマ(the security dilemma)」は特に深刻なものとなる。

しかしながら、攻撃よりも防衛の方が容易な状況であれば、これら全ての影響は逆転する。小国であっても、より大きな大国を抑止したり打ち負かしたりすることが容易になり、広大な帝国を築き上げることは困難になる。期待される利益を得ることが難しいため、先制攻撃や予防戦争を行う合理性は低下する。国家間での信頼関係も築きやすくなり、軽率な譲歩や協力的な行動によって他国に対して脆弱な立場に置かれることを過度に心配する必要もなくなる。さらに、防衛が有利であり、かつ攻撃的な軍事態勢と自国領土の防衛のみを目的とした態勢とを区別できるのであれば、現状維持を望む国家は防衛的な軍事力やドクトリンを採用することができる。そうすることで、他国の安全を脅かすことなく、自国の安全を強化することが可能になる。安全保障のディレンマは緩和され、国際協力の維持はより容易になるだろう。

攻撃と防衛のバランスは何によって決まるのか? その提唱者たちによれば、このバランスは、機動力(mobility)、火力(firepower)、奇襲能力(the capacity of surprise)、地理、(geography)外交的効率性(diplomatic efficiency)、政治的結束力(political cohesion)といった多くの要因の関数として決まる。例えば、山脈、河川、海洋といった地理的障壁は征服を困難にする一方、迅速な移動を可能にする技術は征服を容易にする。国民が結束し、強力な共通のアイデンティティを共有している国家を征服するのは困難だが、国民が分断されており、侵略者が「分割統治(divide-and-rule)」の手法を用いられる国を制圧するのは容易だ。近代ナショナリズムの発展と拡大は、遠隔地に帝国を築いたり維持したりするコストを高め、植民地時代の終焉を早める一因となった。また、攻撃の準備を容易に察知できる場合や、迅速な通信手段によって侵略者に対抗する均衡維持のための連合(a balancing coalition)が容易に形成できる場合も、征服は困難になる。そして、もし防衛が容易であり、かつ多くの指導者がそのことを理解していれば、そこには、恒久的な平和(perpetual peace)とは言えないまでも、より平穏な世界をもたらす条件が整うことになる。

要するに、攻撃防衛理論は、「新たな領土を征服すること」と「自国を防衛すること」のどちらが容易かという単一の概念を、世界政治の多くの側面を規定する「主要変数(a master variable)」として用いている。したがって、この理論が最初に提示された際に大きな注目を集め、私自身の研究を含め、この分野における初期の多くの研究に影響を与えたことは、決して驚くべきことではない。

しかし、野心的なあらゆるアイデアと同様に、攻撃防御理論もいくつかの重要な批判に直面した。懐疑的な論者たちは、この均衡を定義したり測定したりすることは決して単純ではないと主張した。彼らは、ほとんどの兵器は攻撃にも防御にも使用できるため、征服を目的とした戦力と純粋に防御を意図した戦力を区別することは困難であると強調した。さらに、攻撃と防御のバランスが「体系的特性(systemic property)」(すなわち、ほぼあらゆる状況に当てはまる性質)なのか、それとも個別の事例ごとに分析すべきものなのかも不明確だった。例えば、A国を征服するのは困難でも、B国を征服するのは極めて容易であるという状況があり得る。それは、両国の位置、地理的条件、政治的特性などが大きく異なるからだ。もしそうだとすれば、防衛が極めて容易な国家もあれば、極めて脆弱な国家も存在することになり、世界政治全体に関する一般的な結論を導き出すことはより困難になる。最後に、戦争の歴史は、国家が戦争の勃発後に何が起こるかをしばしば誤認することを示唆している。つまり、征服が容易かどうかを判断する唯一の確実な方法は、実際に戦争を始めてみて、その結果を見ることだということになる。

更に言えば、新たな兵器の発明や戦術の洗練に伴い、攻撃や防御の能力は急速に変化し得る。例えば第一次世界大戦後、軍の戦略立案者たちは、将来のヨーロッパにおける戦争もまた泥沼の膠着状態に陥ると想定していた。しかし、ドイツが「電撃戦(blitzkrieg)」を開発したことで、適切な状況下であれば迅速な征服が可能であることが示された。もし攻撃と防衛のバランスが急速かつ予測不能に変化し得るならば、安全保障のディレンマが完全に消滅することはなく、国家が真に安心できる状態も訪れないだろう。核兵器がもたらした「防衛優位」への劇的な転換でさえ、防空・ミサイル防衛システムや敵戦力無力化(counterforce、カウンターフォース)戦略、さらには核戦争を戦い抜いて勝利する方法の模索といった動きによって、すぐにその前提が揺るがされることになった。核の応酬による「受け入れがたい被害」の可能性を排除することはほぼ不可能かもしれないが、だからといって主要な核保有国がその目標の達成を断念する訳ではない。

こうした批判はあるものの、国家は現在、他国の領土を(大部分)征服したり、武力で相手を屈服させたりすることがますます困難になり、かつ許容できるコストでそれを行うのが難しくなるという状況に直面している。より賢明な世界であれば、こうした状況は、野心的な報復主義(revanchism)の縮小や外交への依存度の高まり、そして妥協や相互調整を通じた既存の紛争解決に向けたより真剣な取り組みへとつながるはずである。残念ながら、いくつかの理由から、そのような賢明さが発揮される可能性は低いと言わざるを得ない。

第一に、国家間の競争が終わることはなく、ライヴァル国は決定的な軍事行動を行う能力を回復し得る「魔法の弾丸(magic bullets)」を求め続けるだろう。この状況は、大国だけでなく、より小規模な国家にも当てはまる。例えば、現在の軍事技術の進展は、中国による侵攻の可能性に対抗する強力な手段を台湾にもたらすかもしれないが、北京の軍事戦略家たちが、台湾が開発中のドローン、地対地ミサイル、機雷、その他の兵器を克服する手段を見つけ出そうと躍起になっていることは間違いない。戦争が多大な犠牲を伴い、かつ賢明な選択ではない場合であっても勃発し得るという認識は、一部の国家に核兵器の保有を検討させることにつながるだろう。核兵器は、依然として攻撃を抑止するための最も確実な手段だからである(もちろん、核保有を阻止するための予防戦争を仕掛けられる前に、実際に核兵器を入手できるという前提ではあるが)。

第二に、直接的な軍事攻撃が費用対効果に見合わないとしても、強大国が弱小国を威圧しようとする動きは止まらないだろう。すでに様々な場面で見てきたように、強制の手段は他の領域へと移行していく。すなわち、相互依存関係の武器化(weaponized interdependence)、誰もが貧しくなるような貿易戦争(trade wars that leave everyone poorer)、封鎖の試み(attempted blockades)、さらには海域の名称変更(trying to rename bodies of water)といった手段である。こうした戦術はしばしば失敗に終わるものの、だからといって試みられなくなるということはない。

第三に、防衛面での優位性がなく、純粋に軍事的な障害がそれほど大きくない地域も依然として存在する。グリーンランドはその典型例だ。グリーンランドを占領することの戦略的・経済的根拠は微々たるものであり、アメリカにとっての政治的コストも甚大となるだろうが、イランとの戦争が実際にそうであったように、実行に移すのはそれほど困難ではないだろう。そして歴史は、騙されやすい、あるいは虚栄心の強い指導者たちが、敵は脆弱であり、武力行使は迅速かつ低コストで、莫大な利益をもたらすと説得する巧妙な報告者たちに、今後も弱みをつかれ続けるだろうと警告している。悲しいことだが、征服が客観的に困難であり、ほとんどの国家が他国に過度な脅威を与えることなく自国の安全を確保できる世界であっても、主要な指導者たちがそうは信じていない限り、それほど平和な世界にはならないかもしれない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。彼は、現代世界を理解・展望する上で不可欠な主要概念を解説する5部構成のニューズレター・シリーズ『新しい地政学(The New Geopolitics)』著者。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social Xアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 イラン戦争は沈滞ムードに入り、限定的に軍事攻撃が行われているが、大規模な軍事衝突は起きていない。停戦交渉も停滞ムードだ。国連総会に合わせて、イラン代表団とアメリカ代表団がニューヨークで会談を持ち、トランプ大統領が会談について評価したということはあるが、中間選挙までに一定の成果を出すという見通しは立っていない。トランプ大統領としては支持率低迷が続き(支持率が約40%、不支持率が約59%)、打開策を求めているが非常に難しい。対イラン政策については支持率が約32%、不支持率が約63%となっている。参考までに、ウクライナ問題については、支持率が約34%、不支持率が約59%となっている。

イラン戦争停戦は原油価格に対する影響を考えても、世界経済、私たちの日常生活にとって重要である。イラン戦争は完全に失敗であった。アメリカのドナルド・トランプ大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は完全に戦争の見通しを見誤った。アメリカでは対外戦争について不支持が多い状況で(ウクライナ戦争への支援にも反対が多い)、イラン戦争を始めたことで、トランプ大統領はドツボにはまった。アメリカ軍は強大で高性能な武器でイランを攻撃し、最高指導者アリ・ハメネイを含む政治の最高指導部層をはじめ多くの人々を殺傷し、イラン国内のインフラなどに大きな被害を与えた。しかし、イランからの反撃で湾岸諸国にあるアメリカ軍基地は破壊され、湾岸諸国にも被害が出た。アメリカ軍は湾岸諸国を防衛することに失敗した。さらに、イラン側の抵抗、ホルムズ海峡封鎖などもあり、予想外に戦争が長引くことで、武器を含む装備品や物資の欠乏に陥り、将兵の士気も低下している。

 イラン戦争でアメリカは負けている。戦闘で勝っているが、戦争では負けている。「出口」をきちんと想定せず、「アメリカが攻撃すれば、イランは耐えられずに崩壊するだろう」という根拠薄弱な前提で戦争を始めた時点でアメリカとイスラエルは負けていたのだ。そして、世界に大きな悪影響を与えている。イラン側はハマス、ヒズボラ、フーシ派を使い、弱点を突いている。サウジアラビアはアメリカに「見捨てられた」という感覚を持っているだろう。そして、ますます中国に近づくということになる。イランの体制転換を起こすことができなかったことで負けなのだ。アメリカは人命や戦費を浪費していく。一方、ライヴァルである中国は無駄なことをせずに、資源を成長に正しく使うことができる。その点でもアメリカは負けている。

 私はトランプが彼の持つ底知れない無神経さと屈託のなさで「失敗しました」と認める方が状況はまだましになるだろうと考えていた。しかし、いくら何でもそれはできない相談のようだ。中間選挙での敗北もあり、トランプ政権については厳しい状況が続いていく。そして、アメリカ政治は2028年の大統領選挙に向かって進んでいく。

(貼り付けはじめ)

ほぼ全ての指標においてアメリカは対イラン戦争に負けつつある(By Nearly Every Metric, the U.S. Is Losing the Iran War)

-ある専門家は「アメリカが主要な戦略目標の達成に失敗したことは明白だ」と述べた。

ジョン・ホルティヴァンガー筆

2026年9月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/09/17/trump-united-states-losing-iran-war/

donaldtrumpdancaine20260406001

ワシントンのホワイトハウスでイランとの戦争について語るダン・ケイン統合参謀本部議長を見つめるドナルド・トランプ米大統領(4月6日)

3月初旬、ドナルド・トランプ米大統領は、対イラン戦争においてアメリカはすでに「勝利した(won)」ものの、まだ「任務を完遂する(finish the job)」必要があると述べた。それから数カ月が経過し、地域全体で戦闘が激化し外交が停滞する中、その「任務(job)」は未完のまま、終わりの見えない状況が続いている。

トランプは水曜日、「願わくは戦争は終結に向かっている」と語り、イランが合意を望んでいるとの見方を示唆した。しかし、現地で起きている現実はそうした楽観論(optimism)を裏切るものであり、テヘランが合意を熱望しているという証拠もほとんどない。

アメリカはこの戦争で軍事的な成功を収めてはいるものの、全体として見れば、この紛争はワシントンにとって戦略的な災厄(strategic disaster)であった。戦闘によってアメリカ軍の深刻な脆弱性(vulnerabilities)が露呈し、兵力は分散を余儀なくされたほか、これまでに推定381億ドルの費用を費やし、世界的なエネルギー危機も引き起こした。この戦争はアメリカの有権者から極めて不評であり、連邦議会では紛争終結に賛成する共和党議員が増加している。ある共和党連邦下院議員に至っては、この戦争をめぐってピート・ヘグセス国防長官の弾劾を求める動きさえ見せている。

しかし、これほどの代償を払ったにもかかわらず、アメリカがイランに関して達成できたことはほとんどなく、むしろ事態が悪化した側面さえある。代理勢力を通じた地域への影響力行使能力、軍事力、体制の強固さ、核開発計画の状況など、ほぼあらゆる指標において、アメリカはこの戦争に敗北しつつある。さらに、テヘランはホルムズ海峡を長期にわたって封鎖できることを証明した。これは彼らが長年誇示してきた能力ではあるが、実際に実証されたことはこれまでなかった。

「2月に時計の針を戻し、アメリカが当時何を目指していたかを見れば、アメリカが主要な戦略目標の達成に失敗したことは明白だ」。ユーラシア・グループの上級アナリストでイラン情勢の専門家であるグレゴリー・ブリューは『フォーリン・ポリシー』誌にそう語った。

●代理勢力(Proxies)

トランプ大統領は2月下旬、イランに対する本格的な戦闘作戦の開始を発表した際、「テロを行う代理勢力がもはや地域や世界を不安定化させたり、アメリカ軍を攻撃したりできないようにする」と述べた。同様に、統合参謀本部議長のダン・ケイン大将も3月初旬、アメリカは「現在および将来にわたり、イランが国境の外で力を行使する能力を解体すること」を目指していると語った。開戦から1カ月後、国民向けのゴールデンタイムの演説において、トランプ大統領はさらに、アメリカは「アメリカを脅かしたり、国境の外へ武力を行使したりするイラン政権の能力を組織的に解体しつつある」と述べた。

しかし、アメリカがこれを達成したことを示す証拠はない。紛争開始時には開かれていた水路であるホルムズ海峡の支配権をめぐる争いが数カ月にわたって続いているという事実は、中東地域およびより広い世界における事態の推移に影響を及ぼすテヘランの能力が依然として健在であることを示している(これについては後述する)。

開戦から数カ月が経過しても、テヘランの代理勢力は依然として大きな脅威であり、地域の混乱と原油価格の高騰を助長し続けている。イランが支援するイエメンのフーシ派反政府勢力は今月、サウジアラビアが支援するイエメン政府軍に対する猛攻を展開し、紅海沿岸にある港湾都市モカやペリム島などの戦略的要衝を制圧するなど、大幅な領土拡大を果たした。その結果、フーシ派は、紅海とアデン湾を結び、アラビア半島とアフリカ大陸を隔てるもう1つの重要な水路であるバブ・エル・マンデブ海峡の実質的な支配権を掌握するに至った。

バブ・エル・マンデブ海峡は、開戦前から重要な海上交通路だったが、ホルムズ海峡の閉鎖に伴い、その重要性はさらに高まりまった。テヘランとフーシ派は、アメリカが戦争を続ければバブ・エル・マンデブ海峡が封鎖される可能性があると数カ月前から警告してきたが、今やその脅しを実行に移せる状況にある。

一方、フーシ派とサウジアラビアの間では交戦が続いており、2014年に始まったものの2022年の停戦合意以降は概ね沈静化していた内戦に関連する緊張が再燃している。現在、イエメンが本格的な内戦状態に逆戻りするのではないかという懸念が高まっている。

サウジアラビアは先週、全長750マイル(約1200キロ)に及ぶ東西石油パイプラインを一時停止した。これは、イラク国内のイラン支援武装勢力によるものとサウジアラビア側が断定したドローン攻撃でこのパイプラインが損傷しただが、いつ稼働が再開されるかは不透明だ。このパイプラインはサウジアラビアの東部から紅海沿岸のヤンブー港まで原油を輸送するものであり、その一時停止は世界の石油供給量の約4%に影響を及ぼしている。

確かに、ハマスやヒズボラ(後者は長らく中東地域におけるテヘランの最強の同盟勢力と見なされてきた)といったイランの他の代理勢力は、数年前と比べて著しく弱体化している。しかし、これはほぼ全面的に、ガザ地区やレバノンにおけるイスラエルの軍事行動によるものだ。

●弾道ミサイルとドローン(Ballistic missiles and drones)

トランプ政権は、イランの弾道ミサイルおよびドローン関連の能力を破壊することも戦争の目的として掲げていた。4月、ヘグセスは、イランのミサイル計画は機能的に破壊され、イランは「もはやミサイルを製造できない(no longer build missiles)」状態にあると述べた。トランプもまた、イラン軍は「完全に壊滅した(totally destroyed)」と主張している。

確かに、イラン軍はこの戦争によって甚大な打撃を受けている。空爆が始まって以来、イラン軍や情報機関の幹部多数が殺害され、産業能力は低下し、通常戦力の海軍も大部分が壊滅した。

しかし、テヘランが依然としてミサイルやドローンを用いて地域各地の標的を攻撃し続けているという事実は、この目標がいまだ達成されていないこと、そしてトランプ政権が自らの軍事的成果を大幅に誇張していたことを示している。

また、イラン軍の弱体化の程度に関するトランプ政権の公的な主張は、情報機関による分析結果とも矛盾している。報道によれば、イランは開戦当初にアメリカ軍がミサイル施設や発射拠点を標的として数千回に及ぶ攻撃を行ったにもかかわらず、地下施設での弾道ミサイル生産を再開した。また、ドローンは製造が容易でコストも低いことから、イランのドローン運用能力を完全に破壊することは、そもそも困難なことだった。

●体制転換(Regime change)

トランプ政権は、イランの現体制を打倒することを主要な目標とすべきかどうかについて態度を揺れ動かしてきたが、開戦当初、イラン指導部の打倒がホワイトハウスの重要な目標の1つであったことは明らかだった。

トランプは2月28日、「誇り高きイランの偉大な国民の皆さん、今夜私はこう申し上げたい。皆さんの自由の時は近づいている」と述べた。「私たちの任務が終わった暁には、自分たちの手で政府を引き継ぐ。それは皆さんが手にするものとなるだろう。これはおそらく、何世代にもわたって訪れることのない唯一の好機となるはずだ」。

前最高指導者アリ・ハメネイ師を含むイランの最高幹部らが殺害されたものの、体制は依然として強固に維持されており、多くの面でむしろ硬直化(calcified)している。

「体制転換が目標であったとするならば、アメリカの行動はほぼ完全に逆効果(counterproductive)だった。体制は今や、より強固に定着している。国内での立場に対する自信を深め、より大胆になっている。現在の体制を主導しているのは軍や治安部門の指導者層であり、彼らは現実的な側面を持ち合わせているとはいえ、一様に西側諸国に対して敵対的であり、アメリカや西側諸国全般との広範な和解には関心を示している」と前述のグレゴリー・ブリューは指摘した。

●核開発プログラム(Nuclear program)

他のどの問題よりも、トランプはイランの核開発計画をこの戦争の主要な焦点として繰り返し取り上げてきた。トランプ大統領は、テヘランによる核兵器の保有を阻止するために戦争を継続する必要性を主張する一方で、アメリカがイランの核開発プログラムを「完全に抹消した(obliterated)」かのように誤解を招く発言も行っている。

アメリカの攻撃によってインフラが破壊され、国内の重要人物たち(トップクラスの科学者たちを含む)が殺害されたことで、イランの核開発プログラムが後退したのは疑いようのない事実だが、イランは依然として約440キログラム(約970ポンド)の高濃縮ウラン(highly enriched uranium、HEU)を保有している。専門家たちは繰り返し強調しているが、正確な所在が不明なこの備蓄にイランがアクセスできる限り、イランの核開発プログラムは脅威であり続け、無力化されたとは見なせない。

国際原子力機関(International Atomic Energy Agency、IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は今週、イランの核開発計画に対する同機関の監視体制が今年に入って「悪化(deteriorated)」したと懸念を表明した。「私たちは6カ月以上にわたり、イラン国内での現地検証活動を行っていない」とグロッシは述べ、IAEAがイランのウラン備蓄に関する「情報の継続性(lost continuity of knowledge)」を失ってから「1年以上が経過している(well over a year)」ことを強調した。

「この核物質に関する情報が不足し、それを検証するための施設へのアクセスもできないという状況は、核拡散の観点から深刻な懸念事項であり、極めて緊急に対処する必要があります」とグロッシは語った。

トランプは、アメリカの高濃度ウラニウム(HEU)備蓄を回収すべきかどうかについて発言を二転三転させており、過去のアメリカの攻撃によって瓦礫の下に埋もれ、アクセス不能になっている可能性を示唆したこともある。「私たちはそれを回収するつもりだ。私たちには必要ないし、欲しくもない。回収後は恐らく廃棄するだろうが、彼らに持たせる訳にはいかない」とトランプは5月に述べている。

また、戦略国際問題研究所(the Center for Strategic and International Studies、CSIS)の最近の分析によると、核関連施設と疑われる「ピッケックス・マウンテン(Pickaxe Mountain)」において、2026年に建設活動の「急増(surge)」が見られたことが衛星画像で明らかになっている。

先週、トランプ氏はピッケックス・マウンテンでの建設活動の報告を受け、アメリカが行動を起こす可能性があることを示唆した。「ピッケックスで何らかの動きがあることは把握している」とトランプは述べ、「イランには小細工を弄さないよう(not to get cute)忠告しておく。さもなければ、私たちは彼らを徹底的に叩くことになるだろうから」と語った。

そうした勇ましい言葉とは裏腹に、トランプ政権の実際の行動は、イランの核開発問題がホワイトハウスの優先順位リストにおいて後回しにされつつあることを如実に示している。核問題に進展が見られないことや、より広範な戦争において当初の目標を達成できなかったことを受け、トランプ政権は関心を他の目標へと移しているのだ。

トランプ政権はイランを経済的に追い詰めるべく動き出しており、海軍による海上封鎖に加え、「オペレーション・エコノミック・アウトキャスト(Operation Economic Outcast、経済的追放作戦)」と名付けた金融制裁などの措置を講じ、テヘランをさらに孤立させようとしている。スコット・ベセント財務長官は8月下旬にこの取り組みを発表した際、「私たちの目標は、テヘランが孤立無援の状態に陥るまで、この専制的な体制を支えるあらゆる経済的生命線を断ち切ることにある」と述べた。

しかし、イラン指導部は数十年にわたりアメリカの経済的圧力に耐え抜いてきた実績がある。そのため、今回のアプローチによって事態が実際に動き、将来の交渉でイラン側が譲歩するようになるのかどうかについては疑問の声も上がっている。

●ホルムズ海峡のコントロール(Control of Hormuz)

この戦争は今や、本質的にはホルムズ海峡における石油と海上輸送路をめぐる争いとなっている。

前述のグレゴリー・ブリューによれば、8月初旬にはホルムズ海峡を1日あたり約400万〜500万バレルの石油が通過していたが、現在その量は約1000万バレルに迫っているという。これはアメリカにとって好ましい状況であり、イランの石油輸出が完全に停止していることから、海軍による海上封鎖が功を奏していることも示唆している。一方で、ホルムズ海峡の通航量は開戦前の約5分の1にとどまっており、このことは、現在の状況が「極めて多大なリソースを投入することによって維持・管理されている」という事実を浮き彫りにしている。

このプロセスでは、アメリカ海軍や航空戦力が、小規模な船団を組んで海峡を通過するタンカーの防衛にあたっている。この体制により、過去1カ月間で海峡を通る石油の輸送量は着実に増加した。グレゴリー・ブリューによれば、これはエネルギー市場における「全面的な危機(general crisis)」の発生を遅らせる役には立っているものの、「リスクそのものを排除するものではない(not removing the risk)」という。

石油の国際的な指標であるブレント原油の価格は、木曜日の時点で1バレルあたり約104ドルだった。戦争が始まった2月直前の価格は、およそ72ドルだった。

トランプがこの戦争はアメリカにとって好ましい形で終わると考えているかという点について、ホワイトハウス当局者は『フォーリン・ポリシー』誌に対し、匿名を条件に次のように語った。「イランからは絶えず連絡があり、合意を強く求めている」ものの、大統領は「イランが核兵器保有の意図を恒久的に放棄するような、好条件の合意を結ぶ用意があるだけだ」とのことです。またこの当局者は、トランプは「適切な状況下(right circumstances)」であれば対話に応じる姿勢はあるが、「イラン側と交渉する必要はない」とも述べている。

「歴代大統領とは異なり、トランプ大統領はイラン政権にいいようにあしらわれることはない。トランプ大統領は、避けられないイランの崩壊という事態の推移を静観することに満足している」とこの当局者は語った。

※ジョン・ホルティヴァンガー:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Blueskyアカウント:@jchaltiwanger.bsky.social、Xアカウント:@jchaltiwanger

(貼り付け終わり)

(終わり)


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『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 中国の習近平国家主席が国賓としてアメリカの首都ワシントンDCを訪問した。ドナルド・トランプ大統領は空港で出迎え、首脳会談、公式晩餐会を実施した。アメリカ側としては最大限の歓迎とおもてなしをしたということになる。国連総会出席のために訪米した高市早苗首相とドナルド・トランプ大統領との会談は約35分間だった。もちろん比べるようなことではない。対等な世界の超大国である中国と、衰退先進国である日本とは比肩しうる立場にはない。人間もそうだが立場が違えば取り扱いも変わってくるものである。

 中国はレアアースの輸出規制という武器を持ち、アメリカに台湾問題で介入させない、武器輸出をしない、台湾は中国の国内問題であり、「中国は一つ」の原則を堅持させようとしてきた。今回の首脳会談などで、何か大きな成果は出ていない。しかし、話される言葉、使われる言葉を聞いて、私は非常に不安を感じている。日本が国際的孤立に進んでいる、最悪の場合には、日本が米中両国共通の敵とみなされるのではないかということを考えてしまった。私はこれまで堕した本の中で繰り返し、「日本が米中両国共通の敵というようなことにならないようにしなければならない」「勇ましい言葉を使って対中強硬姿勢を取って、最後にアメリカにはしごを外されるのが怖い」ということを書いてきた。そのような動きに進んでいるのではないかということを感じさせたのが、今回の米中首脳会談でのドナルド・トランプ米大統領と習近平中国国家主席の言葉であった。

 トランプ大統領が中国を「第二次世界大戦時の同盟国」と呼んだことについて、日本の一部右翼新聞は「当時は中華民国であり、中華人民共和国は同盟国ではない」という「ファクトチェック」まがいの苦しい言葉を使っている。しかし、根本的に中国の国土で戦ったのは中国人とアメリカ人であり、その相手は日本人であったことは間違いない。習近平国家主席も「中国とアメリカの人々(人民)が肩を並べて戦った」という言葉を使って対応している。

この論法ならば、「当時、中国大陸を侵略したのは大日本帝国であり、日本国ではない」と言うことができる。それを使って、「日本には責任がない」ということを国際舞台で言って回ればよい。誰にも相手にされない。しかし、高市早苗首相は若手の国会議員時代に、「自分は戦後生まれであって、責任はない」というようなことを国会で述べて顰蹙を買ったことがある。どうもそれが抜けきれないのか、学ばないのか、思考力が決定的に欠如しているのか、何か宗教的な信念に動かされているのか、中国に対して強硬な姿勢を取り続け、国際的な孤立を深刻化させようとしている。

 高市早苗首相が国連総会での演説で、国連憲章にある「敵国条項」の削除を訴えたことについて、第二次世界大戦時の同盟国という言葉と併せてここで述べておく。私たちが「国際連合」と呼ぶ国際的な機構であり「United Nations」は正確には中国でそうされているように「聨合国(連合国)」と訳されるべきだ。連合国の最高機関である安全保障理事会(United Nations Security Council)の常任理事国(permanent members)は、第二次世界大戦を勝利に導いた(日本とドイツをはじめとする枢軸国側を倒した)主要諸国であるアメリカ、イギリス、フランス、ソ連(ロシア)、中国である。中国は中国国家を代表する政府が後退していることから、中華人民共和国を第二次世界大戦時の同盟国と呼ぶことは不都合ではない。

「敵国条項」は既に死文化しているが、躍起になって削除を求めるというのは、痛くもない腹を探られるということになる。「今でも不都合はないのに、何か怪しい動きをしようとしているのではないか」と勘繰られてしまう。

 さらに言えば、トランプ大統領の発言には原稿がある。その原稿はホワイトハウスの添削も入っている。これはアメリカ政府の意思であるということになる。そして、日本の右翼新聞のファクトチェックまがいの言葉である「当時の同盟国は中華民国だ」、すなわち、現在の台湾だということになるが、トランプが使った「中国」という言葉を「中華民国」に限定してしまうと、台湾にいる中華民国は困ったことになる。なぜなら、トランプがはっきりと

中華民国は同盟国ではない(助ける必要はない)と言明したことになる。ここで敢えてどちらでも捉えられる中国という言葉だけにしておけば、曖昧さが残り、台湾にいる中華民国にもまだ立つ瀬が残る。日本の右翼新聞のファクトチェックまがいの言葉遣いは、贔屓の引き倒しになって、台湾を窮地に追い込むことになる。

 習近平国家主席は「血と火の中で築かれたこのような友情は、きっと世代を超えて受け継がれていくことだろう」と述べたことに私は注目したい。ここで「血」という言葉を使っているが、中国が国家間の関係で「血」という言葉を使うということで思い出されるのは北朝鮮だ。中国と北朝鮮は朝鮮戦争でアメリカと戦うことで「血の盟約」を結んだ。習近平主席は米中の関係においても「血」という言葉を用いた。米中は共に血を流した間柄だということになる。問題は「誰に対して“血”を流したか」ということだ。もちろん、「日本」である。

 中国は、高市早苗首相とその周辺に巣くう極右勢力について、「新型軍国主義」と非難している。中国側か見れば、高市早苗首相の出現は「日本軍国主義の侵略者」の悪夢・亡霊が現代に蘇って、現実として迫ってきているということになる。第二次世界大戦の推移を見れば、中国側からすれば「日本は何をしてくるか分からない、墓穴を掘って、間違った選択をし続け、どうしようもなくなって、最後は自暴自棄になって、周りを巻き込んで自爆する」ということになる。高市政権の誕生はその可能性が上がったことを意味する。その対応のために、米中関係をしっかり固めておきたいということになる。今回の米中首脳会談はその機会となったということになる。今回の米中首脳会談で使われた言葉を見て、何も思わないような人たちは「お花畑の住人」であり、「平和ボケ」の人であると言わざるを得ない。そして、残念なことに、そのような人が多いので、現状を出現させてしまっているのである。

(貼り付けはじめ)

「共通の利益に集中」…トランプ氏、習氏の前で抗日「同盟」にまで言及(1)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2026.09.25 06:581 글자 작게

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https://japanese.joins.com/JArticle/355503

ドナルド・トランプ米大統領は24日(現地時間)、習近平中国国家主席と「安全保障、技術、超知能〔SI、トランプ氏が人工知能(AI)を指す言葉〕に関する喫緊の懸案を議論する」と予告した。また「共通の利益に集中すべきだ」と強調する中で、第2次世界大戦当時に米国が中国の抗日闘争を支援したことに言及し、これを米中間の「同盟」とまで表現した。

トランプ氏はこの日、ホワイトハウスで開かれた習近平夫妻のための国賓歓迎式典での演説で「今日われわれがこの分野で下す決定は、数十年にわたって平和と繁栄を増進することができる」と述べた。また「(習主席は)米国を2回目の公式国賓訪問することになった中国初の指導者」と今回の訪米の意味を強調し、「協力することで、われわれは両国が直面する懸案で大きな進展を成し遂げた」と両国間の協力に重点を置いた。「今年5月の訪中時にわれわれは貿易委員会を新設し、この全く新しいメカニズムを通じて信じられないほど大きな成功を収めた。われわれの実務陣は米国の農家と畜産業者のための新たな市場アクセス権を含め、より均衡の取れた貿易関係を構築するために努力してきた」と述べた。

特にトランプ氏は、米中には長い協力の歴史があるとして、第2次世界大戦中の1941~42年、中華民国の抗日戦争を支援するためルーズベルト米政権の承認の下で組織された米国人義勇パイロット部隊「フライング・タイガース」(中国名・飛虎隊)に言及した。「われわれが共通の利益に集中すれば、成し遂げられることは多いと確信している。歴史的に共通の利益の追求は、第2次世界大戦当時にはわれわれを同盟国にまでした」と述べた。

トランプ氏は「勇敢な米国人パイロットが中国の存立のために志願して中国にやって来た」とし、フライング・タイガースを「伝説的な部隊」とたたえた。続けて「米海兵隊が中国人と接した経験は、海兵隊が現在も使っている『Gung-ho(ガンホー)』という中国語表現を取り入れるきっかけになった」と説明した。中国語の「工合」に由来する言葉で、「共に働く」という意味だ。

トランプ氏がフライング・タイガースに言及したのは、米中間の対決ではなく協力重点を置こうという趣旨とみられるが、敵対的な競争国の首脳を歓迎するため、現在の同盟国である日本を撃退しようと力を合わせた歴史的事例に言及した形となり、注目される。高市早苗首相の台湾海峡関連発言をきっかけにした中日間の対立が依然として深刻なうえ、中国が国際社会で日本を圧迫するためにたびたび持ち出す「抗日連帯」という歴史的叙事をトランプ氏が先に持ち出したとみることができるためだ。前日、トランプ氏が自ら空港に出向いて習近平夫妻を出迎えたことをめぐっても、他の同盟・友好国の首脳には見せたことのない手厚い待遇だとの声が出た。

これに先立ち2015年の習近平主席の初の国賓訪問時にも、バラク・オバマ元大統領が晩餐会の乾杯の辞で第2次世界大戦当時の両国間の協力に言及した。ただ、オバマ氏は「中国の村人たちが米国人パイロットをかくまい、食事を与え、負傷を治療した」とし、人道的な側面を強調した。

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「共通の利益に集中」…トランプ氏、習氏の前で抗日「同盟」にまで言及(2)

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2026.09.25 07:001 글자 작게

글자 크게
https://japanese.joins.com/JArticle/355504

続く発言で習主席も協力の重要性を強調したが、競争の不可避性も同時に浮き彫りにした。特に守るべき競争の一線と軍事的危機管理の必要性を強調したが、すでに米国と対等な立場で戦略的覇権を争っているという認識を示したとみる余地が大きい。

習主席は「中米が競争に言及することを避ける必要はない。ただし競争は健全で一定の一線を守らなければならず、互いに先を争う競走であって、相手が負けて自分が勝つ格闘になってはならない」と述べ、「ゼロサムゲーム」を警戒した。また「米中双方は衝突せず、対決しないというマジノ線を守らなければならない」とし、「両国軍は定例対話を維持し、危機コミュニケーションおよび予防システムを改善しなければならない。『トゥキディデスの罠』は克服できる」と強調した。

習主席は特にAIの危険性を管理する必要性についても基本的な共感を示した。「両国にはAIを適切に発展させ、管理する能力と責任があり、AIが常に人間の統制下で国民に恩恵を与えるようにしなければならない」と述べた。ただ、その一方で「中国と米国はいずれもAI強国だ」と前置きしたが、米国とのAI開発競争で後れを取る考えはないという意思も明確にしたものと解釈される。

習主席は具体的な協力議題も提案した。「中国は麻薬取り締まりや法執行などの分野で米国との協力を強化する用意がある」とし、フェンタニル問題で協力できることを改めて確認した。このほか両国間の直行便の増便、今後5年間で米国の青少年10万人を中国に招待するなど具体的な事業も提示した。「ここでうれしい知らせを一つお伝えする。数日後には2頭のパンダ『平平(ピンピン)』と『福双(フーシュアン)』がアトランタ動物園の新しいすみかに到着し、米国国民と会うことになる」とし、ジャイアントパンダの到着も自ら伝えた。

習主席はトランプ氏がフライング・タイガースに言及したことについて、「第2次世界大戦当時、中国と米国はファシスト侵略者に対抗して共に戦った。両国国民はこれを決して忘れないだろう」と応じることも忘れなかった。

両国首脳は歓迎式典後、単独会談と拡大会談を続けた。国賓晩餐会の前にもホワイトハウスのイーストルームで両国首脳がもう一度発言する予定だ。この場でこの日の会談で成立した合意の輪郭が明らかになるとみられる。

最近、BRICS首脳会議の晩餐会を欠席したことで健康異常説が浮上していた習主席が、2回もトランプ氏と共に公開の場で発言する点も目を引く。トランプ氏の手厚い歓待に習主席が応えると同時に、メディアの前に登場する公開日程をこなすことで健康状態をめぐる不要な臆測を払拭しようとしている可能性もある。

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【速報】習近平国家主席夫妻がトランプ氏主催晩さん会に出席…テクノロジー業界の経営者らも参加

9/25(金) 8:57配信 読売新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/262fccf3295f9a9505fb706f969c22407fdc32bd

https://news.yahoo.co.jp/articles/262fccf3295f9a9505fb706f969c22407fdc32bd?page=2

 【ワシントン=中根圭一】中国の習近平(シージンピン)国家主席夫妻は24日夜、ホワイトハウスに到着し、米国のトランプ大統領主催の晩さん会に出席した。

 晩さん会に米側からはメラニア夫人やバンス副大統領らのほか、テクノロジー業界を中心に民間企業経営者も参加する。

 19:44 習氏夫妻がホワイトハウスに到着し、トランプ氏主催の晩さん会に出席した。米側からはメラニア夫人やバンス副大統領らのほか、テクノロジー業界を中心に民間企業経営者も同席した。

 19:55 トランプ氏は晩さん会でスピーチし、習氏との関係は「かつてないほど良好だ」と述べた。

 20:00 トランプ氏はスピーチを終えると、習氏に大きなハクトウワシの像を贈呈した。

 20:06 習氏は晩さん会でスピーチを行い、「半年足らずの間に、中国と米国の首脳が互いに国賓訪問を行い、両国関係において歴史的な一歩を踏み出した。本日、トランプ大統領と私は率直かつ深い意見交換を行い、多くの問題について共通認識に達した。これにより、戦略的安定を基盤とする建設的な米中関係に新たな内容をもたらし、米中関係に新たな戦略的指針を示した」と述べた。

 20:10 習氏はスピーチで、米国の初代大統領ジョージ・ワシントンが数多くの中国陶磁器を収集していたエピソードを紹介。米中間の外交を「ピンポン外交」と例える。

 20:11 習氏がスピーチの際、第2次世界大戦に触れ、「80年以上前、中国と米国の人々は、日本軍国主義の侵略者との戦闘で肩を並べて戦った」と述べた。さらに、「日本の侵略に対する抗日戦争の間、数十万もの中国人の命を犠牲にしながらも、中国の軍人や民間人は数百人の米国人パイロットを救出した。血と火の中で築かれたこのような友情は、きっと世代を超えて受け継がれていくことだろう」と話した。

 21:00 米テレビのCNNとMS NOWは、両テレビの記者が、晩さん会で招待客が到着する際の取材をホワイトハウス側から阻止されたと報じた。

21:35 米紙ニューヨーク・タイムズは、中間選挙期間中に共和党を支援している大口献金者4人が晩さん会に出席したと報じた。4人の中には、動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の株式を大量に保有する投資会社の経営者ジェフ・ヤス氏が含まれているという。

 21:40 晩さん会には米中合わせて130人以上が招待された。出席した米国のテクノロジー企業幹部には、アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス氏、スペースXのイーロン・マスク氏、エヌビディアのジェンスン・フアン氏、アップルのティム・クック氏などがいた。中国側は主に政府関係者が招待されていた。

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トランプ氏「中国は大戦時の同盟国」 習氏の抗日歴史観に呼応の危うさ

米中首脳会談

2026年9月25日 5:51

(2026年9月25日 11:33更新) 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN24AYT0U6A920C2000000/?n_cid=SNSTW005&n_tw=1790290949

【ワシントン=飛田臨太郎、田島如生】トランプ米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は24日、首脳会談に先立ちホワイトハウスで演説した。トランプ氏は中国を「第2次世界大戦時の同盟国」と呼び、日本と戦った米国人義勇兵にも言及した。

習指導部は台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁に反発し、政権の防衛政策や歴史観を「新型軍国主義」だと批判している。習氏はトランプ氏に共に日本と戦った歴史に焦点を当てるよう呼びかけてきた経緯があり、呼応したと受け止められかねない。

トランプ氏は「共通の利益の追求は多くの違いを乗り越えて両国民を結びつけ、第2次世界大戦において私たちを同盟国にした」と切り出した。

当時、中国で日本軍と戦った米国人義勇兵の部隊「フライング・タイガース」に触れ「彼らの活躍はまさに信じがたいものだった」と強調した。「力を合わせて戦争に勝利したように、習氏と私は、今後も協力し続ける」と訴えた。

そもそも米国と中国が同盟関係にあったのは現在の中華人民共和国ではなく、蔣介石が指導者だった中華民国の時代だ。

習氏「中米は日本の軍国主義と戦った」

トランプ氏の後に登壇した習氏は「第2次世界大戦中、中米両国は肩を並べてファシズムの侵略に立ち向かった」と述べた。「この歴史を中国人民は決して忘れていないし、米国の人々も忘れていない」と指摘した。

さらに会談が終わった後の晩さん会のスピーチで、再び第2次世界大戦に触れ「80年以上前、中国と米国の人々は、日本軍国主義の侵略者との戦闘で肩を並べて戦った」と述べた。

トランプ氏の午前中の演説を聞いて、日本を名指しする発言に切り替えた。「日本の侵略に対する抗日戦争の間、数十万もの中国人の命を犠牲にしながらも、中国の軍人や民間人は数百人の米国人パイロットを救出した」と主張した。

さらに「血と火の中で築かれたこのような友情は、きっと世代を超えて受け継がれていくことだろう」と話した。

習氏は2025年11月の高市首相の台湾有事を巡る答弁に反発した。その後にトランプ氏と電話協議した際「今こそ第2次世界大戦勝利の成果を共に守り抜くべきだ」と呼びかけていた。

米中が共に戦ったというトランプ氏の発言は、「抗日」を巡る中国のナラティブ(言説)を補強する材料に利用される懸念がある。日本たたきを強める中国の勢いを後押ししかねない。

米国は日本と同盟を結んでいる。近年、中国による威圧的な行動が増えるなかで、米大統領は日本の立場にも配慮した言動をしてきた。高市首相も22日のトランプ氏との会談で、中国に対する日本の懸念を直接伝えていた。

過去の米大統領が似た発言をしたことはある。1998年、当時のクリントン大統領は江沢民(ジアン・ズォーミン)国家主席との晩さん会の挨拶で「第2次世界大戦における同盟関係」と触れたことがある。

トランプ氏は5月に北京を訪問した際の晩さん会でも「第2次世界大戦の同盟国」と言及したが、フランクリン・ルーズベルト大統領の発言を紹介する文脈で使った。今回、トランプ氏は自身の言葉としてより強調して用いた。

トランプ氏の言動には習氏のメンツを立てようという苦悩がにじむ。23日には米国に到着した習氏をアンドルーズ空軍基地まで出迎えた。体面上、習氏の要求に応えられるものであれば最大限応じようとする姿勢が見え隠れする。

トランプ氏は11月3日に迫る米中間選挙を前に、中国による米産品の追加購入などの確約を探る。その取引(ディール)の一環として、過去の歴史に触れるという、言葉による「返礼」が使われた可能性がある。

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習近平主席「米中は競い合うべき、衝突や対立の回避という一線を守らなければならない」…米中首脳演説の主な内容

2026/09/25 03:52

https://www.yomiuri.co.jp/world/20260925-GYT1T00075/?ref=yahoo#google_vignette

 ■ 習近平シージンピン 中国国家主席の演説の主な内容

 国賓として訪問できることを大変嬉しく思う。14億人を超える中国人民を代表して米国の独立250年を祝福する。中国と米国は共に偉大な国だ。歴史的な変化に直面する今日、中国と米国は大国として人類の発展と進歩を担う重責がある。今年5月の中国での首脳会談の際、中米の建設的戦略安定関係を構築することで合意した。

 トランプ氏と共に、米中関係という大船を安定して遠くへと導きたい。中国と米国は国情が異なるが、相互理解を深め、相違点を認め合うことで、相互信頼を築くことができる。トランプ氏とは尊敬し合い、個人的な信頼関係を築いてきた。外交や貿易、金融など各分野での対話を強化し、両国の交流を拡大する。

 米中の協調領域はたくさんある。我々の協力なしに世界の多くの問題を解決することは困難だ。中国は門戸を開き、米国企業の投資や事業展開を歓迎する。我々は、中国企業が米国で公正に扱われることを望む。

 中国と米国は共にAI大国だ。AIを適切にコントロールし、発展させる能力と責任がある。AIの発展を常に人間が管理し、福祉へ貢献する。麻薬対策や法執行の分野でも米国との協力を強化する。両国の往来や貿易の促進も可能だ。

 我々は平和的に共存すべきだ。中国と米国は、協力すれば利益を得られ、対立すれば共に損をする立場にある。勝ち負けを争う取っ組み合いではなく、競い合うべきだ。衝突や対立を回避するという一線を守らなければならない。両国の軍は、定期的な対話を維持し、危機管理や意思疎通の仕組みを改善すべきだ。(新興勢力が台頭し、既存勢力を脅かす存在になると戦争が起きる危険性が高まる)「ツキディデスの罠」は乗り越えることができる。

 第2次大戦中、中国と米国は肩を並べてファシズムの侵略に立ち向かった。中米関係は、未来の若者たちにかかっている。今後5年間で、交流や学習のために10万人の米国の若者を中国に招く。中国と米国の友好の使者として2頭のパンダ「平平(ピンピン)」と「福軒(フーシュアン)」が(米南部ジョージア州)アトランタの動物園に着く。

(貼り付け終わり)

(終わり)


sekaiwashuukyousensounitotsunyuushita002
『世界は「宗教戦争」に突入した 「神に選ばれた」支配者の使命と論理』

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 今回は、2026年9月24日発売の副島隆彦先生の最新刊『新版 人類の月面着陸は無かったろう論』(徳間書店)をご紹介する。本書は、2004年に出版された『人類の月面着陸は無かったろう論』(徳間書店)に誤字訂正を施した新版となっている。

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『新版 人類の月面着陸は無かったろう論』←クリックするとアマゾンのページに移動します

 宇宙「開発」に関するニューズで言えば、アルテミス計画(Artemis program)が報じられ、2028年に人類を「再び」月面に送り込むとアメリカは豪語している。50年以上前のアポロ計画、そして、アルテミス計画について何の疑問も持たず、「再び月面着陸があるんだな」と思っているような人に本書を読んでいただきたい。少しでも「変だな」と思うようになると、見える景色が変わってくる。「頭にひびが入る」感覚を是非味わっていただきたい。

 以下に親版を出すにあたって、まえがき、目次、あとがきを掲載します。参考にして、是非『新版 人類の月面着陸は無かったろう論』を手に取ってお読みください。

(貼り付けはじめ)

新版を出すにあたって 副島隆彦(そえじまたかひこ)

 この『人類の月面着陸は無かったろう論』は、今から22年前の2004年6月に刊行された。NASA(ナサ)(米航空宇宙局)によって有人月面着陸(ランデイング・オン・ザ・ムーン)が成功したとされる、1969年7月20日からは57年が経(た)つ。

 この人類全てを騙(だま)し続けた月面着陸の嘘(うそ)、捏造(ねつぞう)(hoax[ホウクス])は、まだ虚偽(きょぎ)(fake [フェイク])であることが、真実露呈(ろてい)(truth[トルース] revealing[リヴイリング])しない。もうすぐである。おそらくあと2年の2028年には、真実が満天下に、則ち世界中に大きく露出(ろしゅつ)する。何故なら、NASAは2028年に有人月面着陸(マンド・ランデイング)を再(さい)実現すると、公然と声明を出しているからである。

 今年の4月1日から10日までのあのNASAのアルテミス2(トウー) Artemis II 計画による有人で月周回(つきしゅうかい)したとされる宇宙ロケット(搭乗員4人)の直前にNASAの年間予算は24%削減された。だからNASAは責任を取って国家機関として解体消滅させられるのである。トカゲの尻尾切りでもある。57年前のインチキ、即ちアポロ11号(さらに5回、アポロ17号の1972年まで)の月面着陸、月面活動が全て捏造(ホウクス)であったことを、アメリカ帝国(エムパイア)(まだなんとか世界覇権国[ヘジエモニック・ステイト])は、己(おのれ)自身の衰亡(すいぼう)(decline [デクライン] and[アンド] fall[フォール])と共に、明白に世界に見せつけるだろう。

 アメリカ帝国の没落、瓦解と軌(き)を一(いつ)にして(同時に)人類月面着陸の大ウソがバレる。この本の著者である私、副島隆彦はこのように予言する。

 この年(2028年)はトランプ大統領の大(おお)ホラ吹き政治が終わる年である。そしてその次のJ(ジエイ)D(デイ)ヴァンス大統領(今は副[ふく])は、淑々(しゅくしゅく)と戦争処理をしながらアメリカ合衆国(ユナイテツド・ステイト)は、地球儀を大きく半分に割った、南北アメリカ大陸だけの西(にし)半球(hemi(ヘミ)-sphere(スフイア))に撤退する地域大国(リージヨナル・ヘジエモニー)へと収縮(しゅうしゅく)してゆく。この時、宇宙通信でもAI(エイアイ)半導体でも鉱物資源開発でも、中国が全てのし上がって次の世界覇権国(はけんこく)になる。私はずっとこのように書いてきた。

 この22年ぶりの新版を出すに当って、私は、本文に、小さな誤字訂正の他は加筆訂正を一切やらない。この本は、人類月面着陸を捏造して「人類(全ての人間)の知能を欺(あざむ)いた大犯罪」を犯したアメリカ合衆国の国家犯罪(ステイト・クライム)、権力(者)犯罪(パウア・クライム)を勇気をもって公然と告発(アキユーズ)した本として、のちのち長く記念に残る本として古典(クラシツクス)になる堅固不羈(けんごふき)の証拠である、という私の深い決意に基(もと)づいて2004年に書かれた本だからだ。

 この本を書いたあとの22年間でさらに積み上がった新らしい証拠や事件については、私は続編の本を書くべくずっと準備している。それは、アメリカの力が、あと一段ガタンと落ちて、月面着陸の虚偽(ウソ)が大きく露出して、多くの人々が「もしかして、やっぱり人間(アメリカの宇宙飛行士[アストロノウト])は月に行ってない」と俊敏に察知して動揺が広がった時に、一気に出版するつもりでいる。それまでは私は、やっぱり、この本で、現状を持ち堪(こた)え、これまで同様、我慢に我慢の人生の、徹底抗戦、持久戦(じきゅうせん)をやり続ける。

2026年8月

副島隆彦

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まえがき

 この本は「人類の月面着陸は本当に有ったのか」の疑惑を真っ正面から追及する本である。

 今から35年前の1969年7月20日の、NASA(ナサ)(米航空宇宙局)が行なったアポロ計画の有人宇宙飛行であったアポロ11号による、人類初の月面着陸、そして月からの生還という大実験はおそらく無かっただろう、という内容の本である。

 アメリカ政府は今から35年前のあの時、私たち地球上の全(すべ)ての人を大きく騙(だま)したのである。そして今なお騙し続けている。だからアメリカ政府とNASAは、35年間にわたって、私たち人類を巨大な欺罔(ぎもう)と迷蒙(めいもう)の中に置き続けているのである、と主張する本である。

 この一冊丸々で、これでもかこれでもかとたくさんの証拠を挙げてこの事実を証明する。

 「こんな本を書いて、あなたは正気か? 頭は大丈夫か?」と、問われるのは覚悟の上である。

 私は、この『人類の月面着陸は無かったろう論』、即ちあれはアメリカ政府が捏造(ねつぞう)した巨大な権力犯罪である、という立論をして、このことを日本国民に本気で訴えかけようと思う。

 私は「アポロ計画」自体が無かったとは言っていない。

 アポロ計画は実際に有ったし、今も月面には、何機かのアメリカ製の月ロケットが軟着陸に失敗して地表に激突した痕跡(こんせき)が残っているはずである。従って、私は、「アポロは月へ行っていない」という不正確な書き方はしない。アポロという名のロケット(ただし全て無人)の残骸(ざんがい)はあるのだ。だが、人間(人類)は、月には降り立っていない。そんなことは無理なのだ。

 従って、NASAが公表している、あれらの月面での飛行士たちの活動の映像は全て偽り(フォールス)であり、偽造品(フェイク)である。

 とてもではないが、人類はいまだに人類を月に送るどころか、月面探査機を月の軌道上で周回させて無事に地球に戻すだけの宇宙ロケット技術さえ持っていない。今の今でも地表からの高度400キロメートルぐらいの地球の周りをグルグル回る以上のことをできはしないのである。だから私は、この本の書名を慎重に構えて『人類の月面着陸は無かったろう論』とした。

今のこの2004年の人類の最新技術を全て寄せ集めても、無人の探査ロケットが月まで行って周回して、軟着陸して、月面を探検して、試料(サンプル)を集めて、そして再発射して、地球まで無事帰ってこさせることはできない。それだけでもあと30年ぐらいかかるのではないか。

 そうすると、あのアポロ飛行士たちが月から持ち帰ったという〝月の石〟というのは一体、何なのか?

 人類の月面旅行が今なお無理である大きな理由(根拠)のひとつは、あのスペースシャトル「コロンビア号」の失敗である。乗員7人を乗せたコロンビア号は地球帰還の寸前の着陸の途中に爆発事故を起こした。昨年の2003年2月1日のことである。人類はまだ地表からたかだか250キロメートルから400キロメートルのあたりを、グルグルと周回する以上のことはできないのだ。有人ロケットを地球から出たり入ったりさせるだけでも爆発炎上するぐらいの技術力しかないくせに、どうしてあの遠い月(38万キロも彼方[かなた]にある。晴れた夜には私たちにも見える)まで行って帰ってこれたなどと主張したのか。そして今もみんなでよくもまあ信じ込んでいるものだなと私は、ひとりであきれかえる。

 この世を冷酷に見切っていた優れたコラムニストの故・山本夏彦(やまもとなつひこ)氏が書いたごとく、まさしく一体、「何用あって月世界へ?」(何のために月に行くなどと言い出したのだ)なのである。

 人類(アメリカの宇宙飛行士たち12人もが!)は月には行っていない。行けはしない。これから30年たっても行けない。宇宙は真空である上に放射線(宇宙線)に満ちた恐ろしく危険な所だから、生身(なまみ)の生物は、とてもではないが、何千キロ、何万キロもの遠くまで人間を乗せた宇宙飛行などできはしないのである。せいぜい、まだまだ空気(地球大気)がかなりある地表から1000キロメートルぐらいのところまでしか行けない。その先には、恐ろしい「ヴァンアレン帯」という放射能地帯がある。

 私は騙されない。

 他の多くの、日本国民の99・99パーセントが、「アポロ計画がアメリカのついた大きな嘘(うそ)だった、なんてとても信じられない」と言って、私を精神病者扱いしても私は構わない。この問題を扱うと決めた私の決意は堅くて深いのである。どうせ、あと5年ぐらいで大きな真実は明らかになるのである。

副島隆彦

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新版 人類の月面着陸は無かったろう論 目次

緒言 1

新版を出すにあたって 3

まえがき 7

第一章 今でもスペースシャトル打ち上げにさえ失敗を繰り返している 19

人類を騙(だま)す大(おお)嘘(うそ)つきのアメリカ帝国

映像から次々と湧(わ)き上がる捏造(ねつぞう)の疑問点

月面着陸のたったの3週間前に予備実験で猿のボニーが死んでいる

わずか3年半で、6回も慌ただしく月面着陸をして、その後ピタリと消えた!?

陰謀をめぐらしているアメリカ政府の悪業を暴く

例の宇宙遊泳はせいぜい地表近接の300キロ

6回の月面着陸とも全(すべ)て、全(まつた)く同じ背景写真と場所!!

「解像度」「分解能」について

宇宙空間は放射能で満ちているから、人間は行けるわけがない

人類の月面着陸の捏(ねつ)造(ぞう)はアメリカ政府の人類に対する大犯罪である

理科系人間はただの気の弱い計算ロボットだ

「人類の月面着陸は無かったろう」論に納得のいかない理科系読者からの投稿

このNASA公開映像を本当に月だと思うのか

副島宛てのメール

副島隆彦の返信  大嘘つきの大詐欺師たちは、もがき苦しむ

第二章 NASA肯定派はこの4つの疑問に答えるべきだ 87

NASA肯定派の異常な反応の裏に世界規模の「権力犯罪」のカラクリが……

「アポロは月に行ったか」ではなく「人類の月面着陸の有無」という呼び方に私はこだわる

「月の丘」を鼻歌まじりでスキップする宇宙飛行士  なんとも無残な大嘘つきの所業

ガラガラ崩れるNASA側の反論  恥を知りなさい見苦しい「名無しのごんべえ」たち

日本国民の99・99%を騙せても、この副島隆彦だけは騙されない

この4つの疑問に答えなさい

さあ、もう一度月へ行ってこい

月面の残骸(ざんがい)をさっさと写せ

月への軟着陸はまだできない

第三章焦りだしたNASAとその手先たち 133

私はプロの思想戦闘員である

月面のレーザー反射鏡を根拠とする反論

副島隆彦の反論  自分の脳をこそ疑え。大きく全体を見よ

人類月面着陸信奉の読者からの再投稿

副島隆彦の再反論  決定的な指摘にまっ正面から答えよ、逃げるな

副島隆彦の学問道場は公共の自由な言論の場を大切にする

「公(おおやけ)」とは「みんなが見ているところ」という意味。「国のために死ね」ではない

「99%月行った派」の読者からの投稿  「オタクの視点」

宇宙線と被曝量の問題

「月の石」について

第四章 これは人類すべてを騙(だま)した巨大な権力犯罪である 183

NASAに監視されている私の言論

理科系人間の洗脳された脳ミソに遠隔操作でヒビを入れてやる

巨大組織は暴走する

人類の月面着陸は有ったのか、無かったのかは事実の問題だ  有ったことの証明責任はNASAにある

「2ちゃんねる SF・ファンタジー板」で見つけた重要な書き込み

UFOと円盤と宇宙人について

第五章 NASAよ「有人月面着陸」を再現しなさい! 211

「科学的証明とは実験による再現性のことである」衝撃など受けていない、理科系読者

からのメール

35年前にできたのだから、今なら簡単に行けるよな。行ってこい

近代学問において「検証する」とはこういうこと  ガリレオ、コペルニクスの「地動説」と「人類月面着陸」

ヨーロッパが打ち上げた月面探査機ではっきり決着がつく

「ナチュラル・サイエンスは政治に従属する」この大きな事実から理科系の人たちは目をそらせない

山田宏哉の書き込みにショックを受けた横山の投稿

アメリカ情報公開法を踏まえて月面有人着陸の証明責任を考察する

JAXA広報部に押しかけてのやりとり

第六章 世界各地で連携しておこるNASAへの怒り 257

テレビ朝日の月面着陸の捏造指摘番組を私も見た

NASAがキューブリック監督につくらせた月面ニセ映像

宇宙用ロケットも核ミサイルも中身は同じ

属国日本の惨めな宇宙開発

中国「神舟5号」打ち上げ成功の裏側

世界規模の捏造を罰する法律はあるのか

私は、日本代表として闘い続ける

あとがき 291

ふろく1 月ロケット・探査機の歴史年表

ふろく2 最近の〝アポロ疑惑〟の広がりの表

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あとがき

 本書、『人類の月面着陸(1969~1972)は無かったろう論』が出版されたあとは、私に何が起きてもおかしくない。そんなことは覚悟の上である。私はこの本に評論家、言論人としての勝負を賭(か)ける。私が勝つか、それともアメリカが振り撒(ま)く虚偽に追随し続けて自己保身で汲々(きゅうきゅう)としている頑迷な人々が勝つか、一本勝負である。

 アメリカ政府は今もイラクで愚かきわまりないことをやり続けている。実情としては、この本は日本の言論界で無視されて(恐れられ、タブー視され、敬遠されて)ほったらかしにされるだろう。人間はいくら根性と気概(きがい)、気迫(これをヴァーチュー virtue と言う)があっても、その時々の時代の風と、時の運(これをフォルチュナfortuna と言う)に恵まれなければどうにもならない。その時々の時代の風潮に受け容(い)れられなければどうにもならない。

 だから、じっと我慢して耐えなければならない。「周(しゅう)の粟(ぞく)を喰(く)らわず」と言って餓死(がし) した伯夷叔斉(はくいしゅくさい)の中国の故事に倣(なら)うことも時として大切である。忍従のまま人生が終わることも多い。しかしきっと数年のうちに、この本は、雄々(お)しく甦(よみがえ)るだろう。それは遠からず数年のうちに、人々の間に静かに広がる噂(うわさ)となり、それがやがて津波のように日本国にも満ちて大きな真実が白日の下に露呈する。

 私が、人類の月面着陸は無かっただろうと主張する上で、日本国内で高く評価するのは、『アポロは月に行ったのか?』(2002年刊、五十嵐友子訳、雷韻出版)原著“Dark(ダーク) Moon(ムーン):Apollo(アポロ) and(アンド) the(ザ) Whistle(ホイツスル)‐Blowers(ブロウアーズ), 1999 by Mary(メアリー) Bennett(ベネツト), David(デイヴイツド) S(エス). Percy(パーシー)”である。著者たちは勇気あるイギリス人たちである。それが269頁のテレビ番組『オペラシオン・リューヌ』につながっている。この本を日本に紹介するために翻訳出版した雷韻出版社長・山田一成氏、と数人の先人たちに敬意を表する。

 それからテレビ朝日内にあって、「アポロ疑惑」を、アメリカ政府とNASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)からの陰に陽にの圧力にもめげず、前記外国フィルム作品等を部分的に使いながら、日本国内でも放送し続けてきた山本隆司(やまもとたかし)プロデューサー始め皆さんに敬意を表する。

 それに対して、NASAの〝手先〟となり大きな虚偽に加担し続けている的川泰宣(まとがわやすのり)氏(現JAXA職員)や『宇宙からの帰還』(中央公論社、1983年刊)の著者、立花隆(たちばなたかし)氏らに対しては軽蔑の念しかない。私は彼らに公然と喧嘩(けんか)を売る。必ず決着をつけてみせる。全てはアポロ11号から17号までの飛行士の月面着陸(13号を除く)は有ったのか、無かったのか、の一点にかかっている。この一点の事実判明から誰ひとりとして逃れることはできない。

 日本国民の間に広がっている「アポロ疑惑」を打ち消すために、NASAから特別に抜(ばつ)擢(てき)されて「噂打ち消し業務」に従事している前述した的川氏らに対して、これから私は激しく挑みかかることになるだろう。「お前なんか相手にしないよ」ということであればそれでもいい。機会を待ち続けるだけである。

 私がこの本で標的(ターゲツト)にしているのは、日本の500万人の理科系の技術者や研究者たちである。彼らが日本を豊かにした真の功労者である。だが、彼らにしても敗戦後からアメリカが計画的に植えつけた〝アメリカ科学(という名の)信仰〟の忠実な信者たちである。理科系の人々は、数字(数学)を駆使し、実験と観察で冷静にものごとを判断するから、文科系の人間たちよりも理知的であることになっている。その反面、理科系は泥くさい人間関係の機(き)微(び)を知らないので、やや愚鈍だとも評されることも多い。それなのに、月面問題のような大きな話になるとコロリと騙(だま)される。理科系もたいしたことはない。

 今から35年前のあの「アポロ月面着陸」の映像シーンに感動して科学者を志(こころざ)した人は多い。今でもそのように信じ込んでいる。彼らから見れば私は、荒唐無稽(こうとうむけい)を通り越した変人(へんじん)の極(きわ)みということになるであろう。まあ、いいさ。そのうち彼ら自身の信念が崩れ出す。〝アメリカ科学宗教〟に依ってきた日本の理科系人間たちがやがて激しい自己崩壊感覚を味わうことになるだろう。脳に強い痛みやきしみのようなものを感じるだろう。それが日本の理科系の洗脳(ブレインウォッシュあるいはマインド・コントロール)からの解放という脱洗脳(だつせんのう)=脱魔術化(だつまじゅつか)(disenchantment ディスエンチャントメント)になるだろう。

 ちなみに、日本で本当に優秀な技術改良を企業の製造現場で行なった人々は本当は、大卒ではなくて工業高校や高専(高等工業専門学校)を出た人々である。理学部や工学部の大学院を出たような理科系エリートたちよりも、本当は、工業高校出の現場の技術屋たちが日本の真の技術革新をやってきたのである。なぜなら、高卒、高専卒の人々は、家が貧しかっただろうから、少年時代に、科学雑誌など買ってもらえなかった人たちだ。だから工場の現場で真剣に、目の前の製品改良に立ち向かい悩むことで、それで無数の小さな技術改良がなしとげられていった。それが日本の各種の工業製品を世界一にした。NHKの秀作シリーズ『プロジェクトX』に描かれるとおりである。

 それに比べて、総じて〝いいところの坊(ぼつ)ちゃん〟である勉強秀才の理科系エリートたちは、少年時代から、『科学と学習』(学研)や『ニュートン』(ニュートンプレス)を買ってもらって読みふけり、あるいは学研の「科学実験セット(キット)」を買い与えられて熱中し、〝宇宙への夢〟を育(はぐく)んだ人々だ。この人々ほどアメリカ科学(という名の)宗教を信仰し続けている。私は彼らの脳に打撃を与えようと思う。

 ところで、今の子供たちの〝宇宙への夢〟はどうなったのか? 今の子供たちのほとんどは、〝宇宙への夢〟など持っていない。ごく一部のオタクの宇宙少年や天文少年を除いて。私たちの時代とは大きく違うのである。

 私たちの世代は、何かと言うと「大きな夢を持て。宇宙にまで広がる広大な人類のフロンティア(未開拓地)を目指せ」と教え込まれ尻をたたかれてきた。それで理科系の科学少年たちが日本には大量に出現した。彼らの脳(頭)を形成し、強く動機づけたのは、まぎれもなく、あのアポロ11号(から17号まで? この区別が映像でつく人が一体何人いるのか?)の飛行士たちの月面での活動の映像であった。この事実はとてつもなく大きい。そして35年後の今、彼らかつての科学秀才少年たちの脳に疑念のひびが入る時代が到来した。

 だから人類の宇宙への夢など嘘寒(うそさむ)い、と薄々感じて分かっている今の若い世代は、どこへ向かったのか。「人間は宇宙へなんか行けないよ。宇宙は放射線でいっぱいなんだよ。だから実際に行ってないじゃないか。いつまでたっても地球の周りをぐるぐる回っているだけじゃないか」と若い人たちは気づいている。勘(かん)づいている。

 それで、今の若者たちはどこへ向かったか。思想家としての私はこのことを真剣に考えた。宇宙(空)がだめなら、それなら広大な海(海底)へか。そんなチンケな話ではない。海や海底資源開発なんかたいしたことではない。バイオ・テクノロジー(人ゲノム解明を含む)やナノ(超微小)テクノロジーや、ネット革命(情報通信革命)もたいしたことはなかった。それでどこへ向かったかと言うと、「福祉と介護」のほうへ向かいつつあるのである。介護とは、身体障害者と老人の入浴の支援やおむつの交換のことである。ここが人類の新しいフロンティアなのである。

 今、日本の若者たちは確実に「〝宇宙〟から〝介護〟へ」向かいつつある。私の周りの学生たちが、介護福祉士(国家資格)や、ヘルパー2級(県知事が指定。介護ビジネスで働ける)の資格を取ることに真剣である。今の若者は大学を出てもふつうの企業に就職できない者たちがたくさんいるから、追いつめられているから「人間の排せつ物(うんこ)のおむつの交換」に向かうのだ、などと既成の偏見に満ちた頭で考えないほうがいい。本当に人間(人類)は今、宇宙開発などという、どうせ大してできもしない嘘くさい人騙しに向かわないで、自分たちの身近のフロンティアに向かっている。私は旧い世代を乗り越えてゆく、新しい世代のこの強靭(きょうじん)さにこそ期待する。アメリカ科学宗教の虜(とりこ)である宇宙少年と科学少年のなれのはてたちになど用はない。全て死に絶えてゆくがよい。

 本書の第二章で詳しく書いたが、私は次の4つの点を掲げて、「月面着陸は有ったに決まっている。変な陰謀論をふりまくな」派の人々に論戦を挑み続けるだろう。

 1 92頁で書いているNASA(およびJAXA)が公開している月面歩行している飛行士たちの映像は本物か? 一体、誰がどこから撮影したのだ。真空、無重量の中に人間がそんなに簡単に出てゆけるのか?

 2 今から35年前に、人類の月面着陸を連続6回成功させたのだから、もう一度行って見せてくれ。

 3 どうして月面を精密に写さない。できるはずなのだ。地球と同様に月面の10センチ四方の物体まで写しているはずなのだ。90年代にもルナ・プロスペクターなどの月面探査機(ただし地上帰還はまだ無理だろう)をたくさん飛ばして、地表の直径数センチまで写せる解像(分解能)技術があるはずなのにどうして公表しないのだ。月の表面だけは、この35年間なぜか絶対に写し出さない。

 月面に激突しているはずの多くの月ロケットの残骸(ざんがい)を写している多くの写真を公表せよ。なんなら月面に残してきたというアポロ11号~17号の着陸船下部や月面走行車その他の機材でもいいから、ちゃんと写したものを見せてくれ。

 4 今の今でもロケットの軟着陸、そして再発射はできない。それもやって見せてくれ。スペースシャトル「コロンビア号」のように、地球の周りをグルグル回っているのが今でも関の山である。そして、地球上から出たり入ったりするだけで爆発炎上しているくせに、よくも38万キロメートルのかなたの月を周回して無事帰還できたものだと、不思議きわまりない。

 以上の4点である。この4点に絞り込んで、私はこれからも月面着陸は当然有った派(NASA肯定派)に対して言論攻撃をかけ続ける。「過ぎ去った昔のことだから、もうどうでもいいではないか」と言って責任逃れしようとする者たちも許さない。私を黙らせることはできない。

 私が勝つか負けるか、この本の読者になってくれる皆さんは観客席からしっかり見届けてほしい。「真実は権力よりも強い(はず)」なのである。“Pen(ペン) is(イズ) mightier(マイテイア) than(ザン) sword(ソード)”である。「おまえなんか、無視の包囲網で押さえ込んでやる。いい気になって威張るのはやめろ」と私に向かって、奇怪な言論封殺攻撃を仕掛けているおかしな人物たちとの闘いも続く。

 だからここではっきり書いておく。もし私の主張が明白に間違いで、アポロ11号の飛行士たちが月面に着陸していたことの明白な証拠が出てきたら、その時は私は筆を折る。もう二度と本を書いて出版することをしない。これだけの深い決意で私は本書を書いた。本当の人生の一本勝負である。

 これまでに私の主張を裏づけ応援してくれて、かつ、自分自身でも真実を探究しようとしている理科系の技術者や研究者たちであるジョー君、横山君、PBS(ピービ―エス)君たちが、私のこの本に続いて、「人類月面着陸問題」について、学術的かつ厳密な専門的な本を次々に書いて出版してくれることを心から希望する。そのために私が全力で応援する。彼らは私がインターネット上で主宰する「副島隆彦の学問道場」http://soejima.to/ (現在は、https://snsi.jp/)で育った私の優秀な弟子たちである。

 最後に、本書の出版を決断してくださった担当編集者の石井健資氏にお礼を申しあげる。編集プロダクション、トライ・プランニングの守屋汎氏と小暮周吾君にお世話になった。そして、徳間書店出版局編集長の力石幸一氏にも暖かく見守っていただいた。重ねてお礼を言います。

2004年5月31日

副島隆彦(そえじまたかひこ)

(貼り付け終わり)

(終わり)


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