古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:アメリカ・ファースト

 古村治彦です。

 アメリカに関しては外交政策に注目が集まっている。「ドンロー主義」というモンロー主義と棍棒外交を足して、再植民地化という要素を掛け合わせた、アメリカの新たな外交政策は、各国から脅威と見られている。ドナルド・トランプ大統領が外交に注力しているのは、国内問題から目を逸らさせるためだ。国内には大きな不満が溜まり、不安定な状況になっている。不法移民摘発から火がつきそうな国内での暴力や生活費が下がらないインフレ状況は、トランプ政権を苦しめている。結果として、移民(有色人種)や外国を攻撃することで、不満を逸らさせるという、古典的な方法を採用している。

 MAGA派の中で分裂があったのは、ジェフリー・エプスタイン事件の文書、エプスタインファイルの公開をめぐってのことであった。トランプ大統領は選挙期間中、エプスタインファイル公開を公約に掲げていた。しかし、大統領就任後には、エプスタインファイルは存在しないと述べ、批判者たちを「弱虫」と呼んだ。誰もが、エプスタインファイルにトランプの名前があって、未成年の女性たちとの性的な関係があったのだろう、だからファイルを公開できないのだろうと推測した。トランプ大統領のこれまでの行状から、それくらいは織り込み済みで、それが暴露されたからと言って、支持が大きく減ることはないとも言えた。ここからは私の推測だが、エプスタインファイルにはイギリス王室やイギリス貴族たちの名前があったのだろう。アンドルー元王子に責任を全部負わせているが、更なる重要人物たちの名前があったものと推測される。トランプ大統領が当選してから、二度もイギリスを訪問し、チャールズ国王を先頭に大変な歓迎であったことは、口止めをお願いしてのことだったのではないか。エプスタインファイルは結局公開されたが、のり弁当のように一面真っ黒な文書もあった。「被害女性のプライヴァ氏―を守る」ということにすれば、重要な部分を消して公開することも可能だ。

 アメリカ国内のインフレ(物価高)、生活苦の影響を一番に受けているのはMAGA派、失業している白人労働者たちである。彼らの中から「こんなはずでなかった」とトランプ支持を止める人たちも出てきている。同時に、「トランプの進める世直しはこれからが本番だ」と支持する人たちもいる。こうして、支持基盤に分裂が起きることになる。そして、支持派はどんどん過激になっていく。先鋭化していく。アメリカ社会の分断は続き、アメリカの衰退は進むことになる。

(貼り付けはじめ)

抑制されない過激主義がMAGAを内部から分裂させている(Unchecked extremism is tearing MAGA apart from within

スヴァンテ・マイリック筆

2025年11月10日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/5595297-maga-movement-antisemitism-controversy/

MAGA運動にとって、この1カ月は厳しい月だった。有権者たちがトランプ大統領と同調する候補者を拒否する一方で、MAGAの指導者たちは、運動にどの程度の反ユダヤ主義的偏見(antisemitic bigotry)や過激主義(extremism)を受け入れるべきかを巡って互いに争っていた。これは決して好ましい状況ではない。

論争の中心となったのは、元FOXニューズ司会者のタッカー・カールソンが、ヒトラーとスターリンを崇拝するネット上の有名人ニック・フエンテスに親近感を持って行ったインタヴァューだった。フエンテスは、人種差別、反ユダヤ主義、女性蔑視、白人キリスト教ナショナリズム、暴力の脅し、そしてアメリカ民主政治体制がファシスト独裁政治に取って代わられることへの切望(racism, antisemitism, misogyny, white Christian nationalism, threats of violence and a yearning for American democracy to be replaced with a fascist dictatorship.)を日々発信し、疎外された若い白人男性の間で支持を集めてきた。

フエンテスは右翼系ポッドキャスト番組に出演し、インタヴュアーたちの助けを借りて評判を高め、過激主義を軽視してきた。カールソンはFOXニューズを去って以来、極右の熱狂的な支持基盤にどっぷり浸かってきたため、彼がフエンテスをより幅広い聴衆に届ける手助けをする人物になったことは、それほど驚くべきことではなかった。

驚くべきは、MAGA運動においておそらく最も影響力のある団体であるヘリテージ財団のケヴィン・ロバーツ会長が、保守派がカールソンとフエンテスとの軽率なインタヴューを非難し始めた後、公にカールソンを擁護せざるを得なくなったことだ。

ロバーツは水面下で仲間を擁護しただけではない。彼は、保守運動はカールソンやフエンテスを「キャンセル(cancel)」すべきではないと宣言するヴィデオ映像を録画した。ヘリテージ財団と有料メディア関係にあるカールソンは、シンクタンクの「常に」親しい友人であり続けると明言した。

それだけでも十分に良くないのだが、ロバーツはさらに踏み込み、カールソンを批判する人々を「悪意のある連合(venomous coalition)」で、「グローバリスト階級(globalist class)」の一部だと非難するという、典型的な反ユダヤ主義の比喩を使った。

ロバーツのヴィデオは、ヘリテージ財団内、そしてその支持者や政治的同盟者の間で怒りと混乱を引き起こした。彼が公私ともに謝罪したにもかかわらず、この混乱は続いている。

ロバーツとカールソンは親密だ。ロバーツは昨年の共和党全国大会でヘリテージ財団のイヴェントにカールソンを特別講演者として招待した。カールソンは聴衆に対し、「キリスト教徒を殺す(kill Christians)」ことを望む人々との「精神をめぐる戦い(spiritual war)」に臨んでいると述べた。

カールソンはJD・ヴァンス副大統領の大ファンでもあり、トランプにヴァンスを副大統領候補に選ぶよう勧めた。そして、ヴァンスもカールソンをホワイトハウスに招待し、チャーリー・カーク暗殺後に自身が司会を務めた番組「チャーリー・カーク・ショー」に出演させた。カールソンの息子はヴァンスのために働いている。

MAGAの継承者を目論むヴァンスは、運動の一部が求める「右翼に敵なし(no enemies to the right)」の立場を取らざるを得ないだろう。ロバーツは動画の中でこの立場を支持しているように見えた。そのため、ヘリテージ財団のスタッフの中には、保守派の大きな組織がカールソンやフエンテスのような人物を排除できないことを意味するのかと疑問を呈する者もいる。

ヴァンス自身もいかがわしい仲間と交流し、極右の人物たちと付き合っている。その中には民主政治体制に敵対する者もいれば、フエンテスとそれほど変わらない見解を持つ者もいる。

ヴァンスは最近、共和党の若手党幹部グループの間で流出したテレグラムのチャットで明らかになった人種差別的・ナチス的な感情を軽視した。この発言に対する超党派の激しい非難の中、ヴァンスは「子供」や「少年」の間で交わされた冗談を「大袈裟に誇張している(pearl clutching)」と揶揄した。

しかし、彼らは子供ではなかった。ほとんどが24歳から35歳までの大人であり、ヴァンスは人々に彼らを許すよう促していた。トランプ政権が人種差別や陰謀論を助長する高官たちを許してきたのと同じだ。

さらに最近、ヴァンスは「ターニングポイントUSA」のイヴェントで講演した。ある質問者は、アメリカのイスラエル支援について質問した際、「彼らの宗教はアメリカの宗教と一致しないだけでなく、アメリカの宗教の迫害を公然と支持している」と主張した。ヴァンスはこの質問に反論する機会を逃した。

こうした状況において、フエンテスは勝利を収めた。彼はヘリテージ財団が「私とタッカーに同情的な人々にとっての安全な避難所であり、踏切板になりつつある」と主張した。これは、彼の支持者(通称グロイパー[groypers])を共和党に浸透させ、保守的な組織を乗っ取ろうとする彼の試み​​における画期的な出来事だった。

フエンテスは、ヴァンスの最近の行動について言及し、副大統領は共和党の寄付者を喜ばせたいという欲求と、選挙活動中にヴァンスを執拗に追い回すと断言する「グロイパー」たちを疎外させたくないという願望の間で板挟みになっていると自慢げに語った。

これはMAGA運動が自ら招いた事態だ。

トランプは初の大統領選挙キャンペーンを開始して以来、排外主義者、白人至上主義者、そしてキリスト教至上主義者を活気づけてきた。偏見を持つ人々が誇りを持って自己表現できるよう、彼は彼らを勇気づけてきた。ますます不人気となっている自身の運動と政権に彼らを招き入れ、フエンテス、カールソン、ロバーツらが引き起こしたような衝突を避けられないものにしてきた。

一方、民主党候補は全米各地で勝利を収め、強力で包括的な連合を築き、私たち全員のために機能するアメリカというヴィジョンを掲げて若者たちを鼓舞した。そこに私たちの未来がある。共に築こう!

※スヴァンテ・マイリック:「ピープル・フォ・ジ・アメリカン・ウェイ」会長。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)」「MAGA」「アメリカ・ファースト(America First)」というスローガンと共にドナルド・トランプは大統領にまで駆け上がった。一敗地に塗れても再び、捲土重来で大統領に返り咲いた。それは、アメリカの有権者たちの意思がそこにあったからだ。「アメリカはもう世界の警察官を辞めて国内優先に戻ろう」「他国に攻め入るのや止めよう」という、生活に疲れたアメリカの有権者たちの叫びがトランプ大統領を生み出したのだ。これは、ポピュリズム(既存の政治やエリートたちに対する異議申し立て)の勝利であった。そして、トランプ革命は実現するはずだった。

しかし、現在、トランプ革命は進んでいない。既存のエリートたちに対する最大の攻撃材料であるエプスタイン文書は日本の戦後の教科書の如く黒塗りとなった。国内の物価高は依然として続いている。2025年4月に高関税政策を打ち出したが、その後はかなり後退している。こうした国内政策の不調をごまかすために外国の問題に首を突っ込むという常套手段をトランプもまた選択した。

 トランプを支持した有権者の間でも支持と不支持が分かれるだろう。トランプ個人を支持する人々は今回のヴェネズエラ攻撃も支持するだろう。しかし、トランプの主張した「アメリカを再び偉大に」「アメリカ・ファースト」の考えを支持する人々にとっては、今回の攻撃は受け入れられない。「海外に軍隊を出さないと言ったではないか」ということになる。これに「エプスタイン文書もなんだか訳の分からない形で形だけ公開しただけだ」という不満も重なれば、トランプに対する不満も高まることになる。

 「トランプが三期目を目指す」という話もあった。アメリカの大統領職は2期8年しかできないと憲法の規定でなっている。それを覆すという話もあったが、自身の熱心な支持基盤であるMAGA有権者たちの間で分裂が起きてしまえばそれも沙汰やみということになるだろう。トランプが次の選挙に出ないということになれば、トランプはやりたい放題だ。後は野となれ山となれである。トランプ自身がトランプ革命の主導者でありながら、トランプ革命を崩壊に導くということになる。裏切られたトランプ革命で2026年の年が明けたということになる。世界は不安定さを増し、アメリカの衰退とドル離れは促進される。この現実を私たちは重く受け止めばならない。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプがヴェネズエラ体制転換に可能性を残す中でMAGA層に分裂が生じる(MAGA divide emerges as Trump leaves door ajar to regime change in Venezuela

アル・ウィーヴァー筆

2026年1月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/5673779-conservative-concerns-trump-venezuela/

ドナルド・トランプ大統領がヴェネズエラへの地上部隊派遣と政権交代の可能性を残した決定は、保守派からは冷ややかな受け止められ方をしている。彼らは、トランプ大統領が「永遠の戦争(forever wars)」を終わらせ、外国紛争に介入しないという重要な選挙公約を危険に晒していると警告している。

トランプ大統領は長年にわたり、中東地域における長期にわたる紛争を招いたジョージ・W・ブッシュ政権の政策を激しく非難し、「アメリカ・ファースト(America First)」運動を標榜してきた。

しかし、トランプ大統領の評価はここ数カ月で低下しており、その筆頭は週末の出来事、そしてさらに重要なのは、トランプ大統領が適切な政権移行が行われるまでこの南アメリカの国を「統治(run)」する計画を打ち出した後の今後の展開である。

トランプ大統領の元ホワイトハウス補佐官スティーヴ・バノンは月曜日のポッドキャスト番組「ウォー・ルーム」で次のように述べた。「MAGAはトランプ大統領と精緻な軍事作戦、そしてマドゥロのマドゥロを全面的に支持した。彼を捕まえて裁判にかけたい?  捕まえて裁判にかけろ。人々がここで懸念しているより大きな問題は、トランプ大統領が『私たちは地上部隊を派遣する(Hey, we’re going to do boots on the ground)』と発言し、昨夜は『国家を再建する(We’re going to rebuild the country)』と発言したことだ」。

バノンはさらに、マドゥロがブルックリンのメトロポリタン拘置所から周辺地域を通って移送される様子を捉えた写真や動画を多数挙げ、皮肉を込めて「素晴らしい(lovely)」と評した。

バノンは「マドゥロがブルックリンの拘置所からブルックリンの美しい土地、そしておそらくブロンクスの一部を通って移送された時、アメリカはカラカスよりもひどい状況に見えた。おそらく、アメリカにも焦点を当てるべきだろう」と述べた。

トランプ大統領の発言は週末の様々な時点で行われ、当局は徐々に撤回し、そのようなことは何も起こっていないと主張した。

マルコ・ルビオ国務長官は日曜日のインタヴューで、現在、アメリカ軍はヴェネズエラに駐留していないと述べた。

しかしながら、トランプ大統領は、依然として異なる調子で歌い続けている。MAGA支持層の一部を警戒させた最初の発言は、石油産業を維持するためにヴェネズエラに軍隊を残留させる可能性のある計画に焦点を当てたものだった。

トランプ大統領は記者団に対して、「私たちは石油インフラを再建する。私たちはそれを適切に運営し、ヴェネズエラ国民の安全を確保する」と述べた。

週末後半には、かつてマドゥロ大統領が率いていたヴェネズエラの将来に対する懸念も一蹴した。

トランプ大統領は『アトランティック』誌のインタヴューで次のように語った。「あの国の再建や政権交代、何と呼ぼうと、今の状況よりはましだ。これ以上悪くなることはない」。

一連の発言は、複数のMAGAの主要な支持者を動揺させている。その中には、アフガニスタンとイラクでの長年の戦争を背景に成人した若者たちも含まれる。

彼らの目には、ヴェネズエラで起こっていることは、彼らが支持してきたことではないということになる。

「ヴェネズエラは、シリア、アフガニスタン、イラクが『解放された(liberated)』ように『解放』された」と右派の論客キャンディス・オーエンズは週末、ソーシャルプラットフォームXに投稿し、「CIAは『グローバリストのサイコパス(globalist psychopaths)』の命令で、またしても国家の敵対的乗っ取り(hostile takeover of a country)を企てた」と述べた。

トランプ大統領と彼のティームによる対外行動への反応として、こうした議論が巻き起こったのは今回が初めてではない。6月にアメリカがイランの核施設への攻撃を開始した際も、多くの著名な保守派連邦議員たちが同様の懸念を表明した。トランプ大統領は、この敵対国の体制改革について同様の見解を示した。

しかし、マドゥロ大統領の拘束とヴェネズエラ政府の不透明な将来が、事態をさらに悪化させている。かつてはMAGAの正会員だったものの、トランプ大統領の支持基盤から排除されたマージョリー・テイラー・グリーン前連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)は、今回の動きをロシアによるウクライナ侵攻や中国による台湾併合の可能性になぞらえた。

グリーン前議員は週末、「政権交代、外国の戦争への資金提供、そしてアメリカ人の税金が外国の活動、国内外の外国人、そして外国政府に流れ続ける一方で、生活費、住宅費、医療費の高騰に直面し、税金の詐欺や不正利用について知ることに対し、ほとんどのアメリカ人が激怒している。特に若い世代はそうだ」と語った。

グリーン前議員は続けて、「アメリカ国民が、アメリカ政府による終わりなき軍事侵略と外国戦争への支援(our own government’s never ending military aggression and support of foreign wars)に嫌悪感を抱くのは正しい。なぜなら、私たちはその費用を負担せざるを得ず、共和党も民主党も常にワシントンの軍事機構に資金を提供し、活動させているからだ。MAGAの多くのメンバーは、これを終わらせるために投票したと考えている。しかし、それは全くの間違いだった」と述べた。

しかし、MAGA傘下の他の人々は、今後起こりうる事態について公に不満を表明している人々は、不必要にそうしていると主張している。

彼らは、政権の行動は限定的であり、トランプの発言にもかかわらず、長期にわたる政権交代への懸念は単なる雑音に過ぎないと主張している。

トランプの有力な支持者であるエリック・シュミット連邦上院議員(ミズーリ州選出、共和党)は次のように述べた。「現代においておそらく最も複雑で秘密裏に行われた任務を遂行した際、私たちは約5時間にわたり地上部隊を派遣した。皆さんが目にしているのは、アメリカ国民を守るために、この半球(西半球)における適切な権限がより一層行使されているということだと考える」。

他の人々の目には、この動きはMAGA全体に広く反響を呼ぶだろう。その理由は単純だ。

トランプ政権に近いある情報筋は、MAGAのアイソレイショニスト派を「声高な少数派(loud minority)」として軽視し次のように語った。「結局のところ、MAGAにとって重要なのは勝利だ。これは、アメリカ合衆国を善の力、つまり、badaとして強化することだ。もし採掘が失敗していたら、私たちは別の話をしていただろう」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 2025年11月21日に『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』 (ビジネス社)を刊行します。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
 最新刊の刊行に連動して、最新刊で取り上げた記事を中心にお伝えしている。各記事の一番下に、いくつかの単語が「タグ」として表示されている。「新・軍産複合体」や新刊のタイトルである「シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体」を押すと、関連する記事が出てくる。活用いただければ幸いだ。ブログ継続のために書籍の購入をいただけますよう、よろしくお願いいたします。

 ドナルド・トランプという人物が常に人々の注目を集めるのは、それが不動産開発業者として大成功して巨万の富を築いても、テレビ番組の有名人になっても、そして大統領になっても(しかも2期)、「融通無碍」であるからだ。その点では一貫している。変化を恐れない。「あの時と言っていることが違うじゃないか」「やっていることがでたらめだ」と非難されても、そうした批判に苦しむことなく、言動や姿勢を軽々と変更する。それがトランプの強さである。そんなことに苦しんでいても何にも物事が進まない、良いことはないということをトランプは分かっているようだ。最たる例は、エプスタイン文書公開をめぐる態度だ。選挙期間中は公開を主張し、政権を担ってからは、パム・ボンディ司法長官からトランプの名前があったという報告もあり、「顧客名簿のようなものない」「公開しない」と姿勢を変え、それに支持基盤の有権者たちから反発を受けると「弱虫ども」と批判した。それが再び、公開に姿勢を変えた。

 外交政策の面では、ウクライナ戦争をすぐに終わらせると主張してきたが、現在、先週終結の目途は立っていない。戦争勃発後、満4年となる2026年2月24日に何か動きがあるかもしれないと考えるが、ロシアは戦争継続可能な状況で、ウクライナが大反抗をすることができない中で、状況が膠着し、無駄に時間だけが過ぎており、死傷者が増えていく。ウクライナ国内のヴォロディミール・ゼレンスキー大統領の支持率も下がっており、停戦の潮時ではないかと思う。トランプ支持の有権者たちはウクライナ支援に否定的であったが、トランプは大統領就任直後の会談ではゼレンスキー大統領を叱責したが、その後の会談ではウクライナ支援の継続を発表した。ここでも、トランプの融通無碍さが発揮されている。

 トランプの「融通無碍さ」は学術研究の対象になりにくいが、後の歴史家たちがどのような評価をするのかが楽しみだ。私のトランプに対する評価は「衰退するアメリカ帝国の墓堀人」である。

(貼り付けはじめ)

トランプが支持基盤を裏切り続ける理由(Why Trump Keeps Betraying His Base

-専門家集団(The Blob、ザ・ブロブ、既成の外交政策エリートや広範な官僚機構、学識経験者、シンクタンクなどの総体)が帰ってきた-そしてトランプ政権の外交政策の二転三転の理由を説明する。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年7月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/07/21/trump-betray-base-foreign-policy-epstein-putin-ukraine-iran-syria-war/
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ドナルド・トランプ米大統領は2025年3月4日、ワシントンの米連邦議会議事堂で上下両院合同会議の演説を終えた後、マージョリー・テイラー・グリーン下院議員にキスをした

トランプ政権とMAGA派支持者にとってこれは奇妙な瞬間だ。私が言っているのは、ジェフリー・エプスタインのスキャンダルのことではない。このスキャンダルは、この奇妙な政治カルトの少なくとも数名のメンバーに、深刻な欠陥を抱えた指導者トランプへの奴隷的な忠誠心を疑問視させるに至った。むしろ、トランプの外交政策における最近の転換について述べている。それは、彼がこれまでとってきた立場とは明らかに異なるものだ。

トランプは、2024年の大統領選で約束したように、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領と合意し、ウクライナ戦争を「24時間以内(within 24 hours)」に終結させるどころか、ウクライナへのアメリカの援助を永久に停止するどころか、今やキエフへの軍事支援を増強すると約束し、さらにはウォロディミール・ゼレンスキー大統領にモスクワへの直接攻撃を促した(この助言は、このストーリーが発覚後、撤回された)。トランプはバイデン政権時代のようなレヴェルの支援を約束しておらず、この新政策が続くかどうか疑問視する十分な理由もあるが、それでもこれは衝撃的な変化であり、以前は忠実なMAGA派だった扇動的な連邦下院議員マージョリー・テイラー・グリーンやトランプ元側近のスティーヴ・バノンなどから厳しい批判を招いている。

同様に、エルブリッジ・コルビー国防次官などの当局者が長らく主張してきたように、ヨーロッパから手を引いてアジアに急激に軸足を移すのではなく、トランプはNATOへの新たな愛着も表明している。中東問題も放棄していない。イスラエルのやりたいことを何でもさせている(これは最近の歴代米大統領たちがしてきたことだ)。しかし先月、イスラエルの要請でイランとの戦争に突入し、アメリカ軍にイランの核開発計画を廃棄する試みとして爆撃を命じたが、失敗に終わった。ビル・クリストルなどトランプ支持者ではないネオコン派は当然ながら大喜びしたが、タッカー・カールソンなどかつてのトランプ支持者は落胆した。最後に、トランプは最近、NVIDIAが中国への最新チップ販売を再開することに同意した。これは、輸出規制によって中国の技術進歩を抑制しようとした過去の試みから手を引いていることを示唆している。

トランプが新人だと言っているのではない。彼は依然として経済に疎く、関税戦争(tariff war)に固執し、中国とのバランスを取るためにアメリカが必要とする主要同盟諸国との関係を依然として損なっており、かつて優位に立っていたアメリカの科学界を骨抜きにし、一流大学を弱体化させようとする、息を呑むほど愚かな試みを続けている。中国の指導者たちは、きっと大喜びしているに違いない。科学技術の優位性が世界覇権の鍵となる時代に、トランプ政権は一方的な軍縮行為(act of unilateral disarmament)に手を染めている。

トランプは、個人的に敵とみなした者への復讐を続け、認知能力の低下の兆候が顕著になりつつあり、アメリカ史上最も腐敗した政権を平然と率いている。高齢であるトランプが別人のようになることはないだろう。しかし、彼の最近の行動は、彼が約束した外交政策や支持者が期待していた外交政策とはかけ離れている。

こうした変化をどのように説明できるだろうか? 少なくとも3つの可能性が考えられる。

明白な説明の1つは、トランプが外交政策の「ブロブ(Blob)」を抑え込もうとしたにもかかわらず、再びトランプを打ち負かしているということだ。私の前著で述べたように、外交政策のエスタブリッシュメントはトランプの最初の任期中、政府の仕組みを理解しておらず、エスタブリッシュメントを打破するための明確な戦略も、自身のヴィジョンを忠実に実行に移す忠実な官僚集団も持たなかったため、トランプの努力の大半を阻んだ。したがって、貿易政策を除けば、アメリカの外交政策の本質はトランプの最初の任期中、ほとんど変化しなかった。いつも通り、トランプは自身の多くの失敗をいわゆる「ディープステート(deep state)」のせいにし、もし次の機会があれば改善すると誓った。

今回、トランプは、ピート・ヘグゼス国防長官のような写真映えする忠実な支持者や、マルコ・ルビオ国務長官やトゥルシー・ギャバード国家情報長官のような簡単に操れる日和見主義者たち(easily manipulated opportunists)を、閣僚の主要ポストやその他の影響力のある役職に任命することで、専門家集団を克服しようとした。

しかし、主要省庁のトップに従順な部下を置くことは、トランプの期待通りには機能していない。第一に、トランプは部下に明確で一貫性のある、一貫した指示を与えることができない、無能な管理者だ。第二に、多くの人が懸念していたように、ヘグセスは資格も能力もない無能な行政官であり、度重なる失態を犯し、彼のオフィスは機能不全に陥っていると、元側近は語っている。ルビオはネオコン的な傾向が強いイデオローグで、上司に逆らうことはしないものの、危険な方向に導こうとするだろう。

さらに言えば、元司令官たちを解任し、多くの文民職員を解雇することで主要機関の人員が不足し、効率が低下することはあっても、残留した人々の世界観を変えることも、トランプの本能に反する可能性のある政策の推進を阻止することもできない。結局のところ、専門家集団に対抗するには、大統領は賢く、経験豊富で、知識豊富な人材を重要なポストに多く配置し、彼らと協力して、異なる原則を反映した一貫した戦略を策定する必要がある。大統領にはこの目標を達成する機会が2度あったが、いずれも失敗に終わった。

別のより納得のいく説明は、トランプが現実に適応しているだけだというものだ。プーティンとの友好関係は、ロシアの指導者に対する自身の影響力をそれほど強めておらず、プーティンがトランプの意向で戦争を終わらせるつもりもないことにも気づいた。トランプは、プーティンは邪悪な指導者であり、決定的に打ち負かすべきだとするジョー・バイデン前大統領の見解には賛同しないだろうが、プーティンは最終的な勝利を確信している限り真剣に交渉しないだろうと認識し、バイデンのアプローチに近づいている。ウクライナへのアメリカの援助再開は、プーティンに合意を迫る圧力となるはずだが、トランプが約束している援助の規模は、その目的を達成するにはおそらく不十分だろう。それでも、この解釈では、トランプの最近の態度の変化は、彼が学びつつある証拠であり、ディープステートの影響力の残存を示すものではない。

中東についても同様のことが言えるだろう。バイデンと同様に、トランプもイスラエルに本格的な圧力をかけるつもりはなかった。だからこそ、ガザ地区に対するジェノサイド的な戦争は、アメリカの積極的な支援を受けて今もなお続いている。イランは、トランプとルビオが要求する核濃縮能力の放棄に決して同意するつもりはなかった。外交が凍結されていたため、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、空爆によってイランの核開発計画を完全に排除し、イスラエルの地域的優位を確固たるものにできるとトランプを説得することに成功した。

しかしながら、この戦争はこれらの目的を達成することができず、イスラエルは依然としてこの地域で真の覇権を確立するには小国すぎる。しかし、この確かに寛大な解釈によれば、トランプは地域の情勢の進展に合わせてアメリカの政策を現実的に調整し、長期にわたる空爆作戦や地上軍のプレゼンスの増強を求める声に抵抗していたと言えるだろう。

中国に関して言えば、トランプ大統領と補佐官たちは、北京との全面的な経済戦争はアメリカ経済に甚大な打撃を与えるものの、中国の技術進歩を阻止することはできないと認識していたのかもしれない。もしそうであれば、NVIDIA製チップの輸出禁止を解除し、何らかの暫定的な貿易協定を交渉することは理にかなっていると言えるだろう。

この説明が正しく、トランプが変化する状況に適応しようとしていると信じたい。しかし、そこにはある程度の一貫性と戦略的ヴィジョンが暗示されているが、その内容は見極めが難しい。イスラエルによるガザ地区住民の殺害を支援し、フーシ派、レバノン、シリアへの爆撃をイスラエルが望む時に許しても、アメリカやイスラエルの安全保障は強化されない。イランへの爆撃は、イランの指導者たちに、潜在的な核兵器国のままでいるのではなく、核爆弾へと突き進むよう促す可能性が高い。ウクライナにパトリオットミサイルシステムやその他の兵器をさらに送っても、戦場の状況やプーチティンの政治的計算は変わらない。そして、政権は両陣営が受け入れ可能な政治的解決策を提示することも、解決策がないことを認めて歩み寄ることもしていない。(トランプ大統領は今年初めに後者の選択肢をほのめかしたが、最終的には撤回した。)確かに、トランプ大統領のホワイトハウスは(全ての大統領がそうであるように)出来事を考慮して政策を修正したが、そのさまざまな対応の背後にある十分に練られた戦略を見るにはかなり目を凝らさなければならない。

残る選択肢は3つ目のものだ。トランプ大統領の外交政策における最近の変化は、主に大統領のエゴによるものだ。ウクライナへの武器供与を増やしているのは、ウクライナの独立に新たな決意を固めたからではなく、プーティン大統領のせいで自分のイメージが下がったからだ。NATO事務総長マーク・ルッテから中世の廷臣並みのおべっかを浴びせられた後、NATOは問題ないと判断した。中東で無意味な戦争に突入したのは、結果に関わらず、何かを爆破すれば自分が主導権を握っているように見えるからだ。

トランプ大統領の関税に対する断続的なアプローチも、この説明と完全に一致している。彼が関税を好むのは、皆の注目を自分に釘付けにできるからだ。関税は上がったり下がったりし、一時停止されたりしてまた導入される。そのたびにメディアは大騒ぎし、再びトランプについて語り始める。

『フィナンシャル・タイムズ』紙のジャナン・ガネーシュをはじめとする一部の観察者たちは、トランプの一貫性や首尾一貫した世界観の欠如と、自身のイメージへの執拗なこだわりこそが、MAGA支持層に共通する教条主義的な過激主義(the doctrinaire extremism)よりも好ましいと考えている。なぜなら、関税と貿易赤字への執着を除けば、真の政策的信念や深く根付いた政策志向が欠如しているため、必要に応じて方針転換が容易になるからだ。

私はそうではないと考える。トランプは国益(the national interest)と彼の個人的利益(personal interest)を切り離すことができず、人材を見極める目も依然として乏しく、おべっかに弱いことでも知られているため、トランプ政権下でのアメリカの外交政策は、これまで以上に不安定で、内部的に一貫性がなく、逆効果になっていることが証明されている。

ワシントンは、かつて唯一の超大国だった頃は(様々な愚行[follies]で多大な代償を払ったとはいえ)これで済んでいたかもしれない。しかし、今日の世界情勢ははるかに容赦ない。大国としての歴史上、最も手強い競争相手と対峙している現代において、衝動的で気まぐれな指導者が、能力ではなく忠誠心で選ばれた部下に命令を下すようなことは、成功への道筋とはなり得ない。

アメリカ人は、ドイツ首相オットー・フォン・ビスマルクが「神は酔っ払い、愚か者、そしてアメリカ合衆国のために特別な摂理を持っている(God has a special providence for drunkards, fools, and the United States of America)」と言ったとされる言葉が正しかったことを願うしかない。アメリカはまさにそれを必要としているだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 第2次ドナルド・トランプ政権は様々な施策を行っているが、トランプ関税を発表した後に、それから後退する姿勢を見せるなどしたために、行き当たりばったりのように見えている。しかし、下記論稿の著者トーマス・キャロサーズによると、実際には相互に関連する4つの主要なプロジェクトを通じて、比較的まとまりのあるヴィジョンを追求しているということだ。

第一のプロジェクトは、アメリカ社会の社会文化的変革だ。トランプ政権は「保守」を法と秩序や伝統的な社会価値観を重視する一方で、反エリート主義を強調している。さらに、移民政策や多様性を排除する試みを通じて、長年の進歩主義的な施策を覆そうとしている。具体的には、銃規制や中絶の制限、教育省の縮小などを通じて、これまで社会政策の変更を進めている。

第二のプロジェクトとして、アメリカ経済の再構築だ。トランプ政権は、減税や規制緩和、化石燃料の生産促進を重視し、過去の共和党政権の政策を推進している。トランプ政権は他国との貿易交渉や高関税を用いてアメリカの製造業の拡大を目指している。

第三のプロジェクトは、新しい政治システムの確立だ。トランプ政権は、行政権の統制を強化し、批判を抑制する方向に進んでいる。彼は専門的知識を持たない人物を任命し、裁判所や連邦議会の権力を弱める政策を進めている。また、反対派に対する抑圧的な手法を用いて、その影響力を排除しようとしている。

第四のプロジェクトは、アメリカの外交政策の転換だ。「アメリカ・ファースト」を掲げ、アメリカの国益を優先する取引主義的な外交路線を進めている。国際組織への参加を縮小しつつ、他国との関係をアメリカ製品の購入増加につなげるような圧力をかけている。また、右翼ポピュリストとの関係を強化し、国際的な民主政体支援をほぼ廃止しようとしている。

これらのプロジェクト間には緊張関係が存在するが、トランプ政権は全体的なヴィジョンを持ち、それを推進し続けている。彼の目指すところは、アメリカとその国際的アイデンティティを再構築することで、プロジェクトは過去からの根本的な脱却を進めようとしている。

 私は、拙著『トランプの電撃作戦』(秀和システム)で、トランプが目指すのは「維新(restoration)」だと主張した。そして、最近になって考えるのは、アメリカ国民の考えを大きく変えようとしているということだ。アメリカ人の消費志向、楽をして金を儲けるという考えを叩き直そうということではないかと考えている。トランプは、アメリカの双子の赤字である、財政赤字と貿易赤字は、アメリカ人の贅沢とわがままの結果だと考えているのだろうと想像する。これらを減らすために、アメリカ国民にも痛みを覚えさせるということではないかと考えている。それが成功するかどうかは分からない。私は悲観的で、甘え切ったアメリカは衰退の道を進むしかない、後は、衰退のスピードとレヴェルをどれだけ緩やかにするかということだけだと考えている。

(貼り付けはじめ)

実際には、ドナルド・トランプには一貫したヴィジョンがある(Actually, Trump Has a Coherent Vision

-混沌としているように見えるものが、実はアメリカを再構築するための統一された計画なのだ。

トーマス・キャロサーズ筆

2025年5月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/29/trump-us-maga-republican-politics-economy-foreign-policy-culture-society/?tpcc=recirc_trending062921

ドナルド・トランプ米大統領と政権は、大統領就任以来、あまりにも急速に動き回っており、観察者たちにとっては木を見て森を見失いがちだ(to lose sight of the forest for the trees)。トランプ政権の行動範囲の広さ(wide-ranging scope of the administration’s actions)、頻繁な矛盾(frequent inconsistencies)、規範を破る手法(norm-breaking methods)、そして明らかに性急な動き(apparent rush)は、包括的な計画(overarching plan)が存在しないという印象を与えかねない。

しかし、トランプ政権の行動を、衝動的で気まぐれな大統領の個人的な気まぐれを反映した、支離滅裂な行動の寄せ集め(an incoherent jumble of actions reflecting the personalistic whims of an impulsive, mercurial president)としか見ない人たちは、全体像を見失っている。

トランプとそのティームは、比較的まとまりのあるヴィジョンを追求している。それは、社会文化的プロジェクト、経済プロジェクト、政治プロジェクト、そして外交政策プロジェクトという、相互に関連する4つの主要な取り組みの組み合わせとして理解するのが最も適切である。トランプがアメリカをどこに導こうとしているのかを理解するには、これらのプロジェクトをそれぞれ個別に理解する必要がある。これらを総合すると、アメリカの国民的アイデンティティの中核となる価値観、規範、そして目標を書き換え、国を根本的に保守的で内向きで、より民主的ではない軌道へと方向転換させることを目指している。

(1)保守的な社会(1. A conservative society

トランプの最初のプロジェクトは、アメリカ社会の社会文化的変革であり、多くの側面において根本的に保守的になることを目指している。

トランプ政権は「保守(conservative)」を、馴染みのある方法と新しい方法の両方で定義している。法と秩序、いわゆる伝統的な社会価値観、そして公共生活における宗教のより大きな地位など、長年にわたる文化戦争(culture-war)の優先事項を包含している。しかし、これに、エリート大学への攻撃に最も鋭く表れている、鋭い反エリート主義(a pointed anti-elitism)が加わり、伝統的にアメリカの保守主義と結び付けられてきた経済的、文化的エリート主義(the economic and cultural elitism traditionally associated with American conservatism)とは対照的となっている。

これらの価値観は、トランプ政権の社会文化的課題の最前線に立つ問題を形作ってきた。焦土作戦的な移民政策(scorched-earth immigration policies)は、法と秩序(law and order)を促進し、白人の地位に対する不安を軽減し、労働者階級のアメリカ人の雇用競争を緩和することを目的としている。一方、公的機関と私的機関の両方における多様性、公平性、包摂性(diversity, equity, and inclusionDEI)の取り組みを排除しようとする激しい試みは、政権が数十年にわたる社会の進歩主義的な再構築(progressive reengineering of society.)と見なしているものを覆そうとする意欲を反映している。

これらの2つの主要な推進力に加えて、政権は、伝統的な文化戦争の視点(traditional culture-war views)、あるいは新たなMAGAポピュリズム(the new MAGA populism)のいずれかに基づいて、一連の社会政策の変更を推進している。これには、銃規制の緩和(loosening gun control regulations)、中絶と避妊へのアクセスの制限(restricting access to abortion and birth control)、公共生活におけるキリスト教的価値観の優先(prioritizing Christian values in public life)、学校選択の拡大(increasing school choice)、教育省の大幅な縮小(decimating the Department of Education)、トランスジェンダーの人々に関する政策の再構築(reshaping policies related to transgender people)、小児ワクチンに関する医学的コンセンサスへの攻撃(attacking the medical consensus on childhood vaccines)などが含まれる。

(2)再構築された経済(2. A remade economy

トランプ氏とそのティームは、社会を再構築すると同時に、アメリカ経済の再構築も目指している。彼らは、ここ数十年にわたる正統派保守派の経済政策の主要要素(major elements of the orthodox conservative economic agenda)、すなわち減税(lower taxes)、規制緩和(reduced regulations)、そして特に化石燃料を利用したエネルギー生産の増加(higher energy production, especially using fossil fuels)を重視している。これらは過去の共和党政権の政策を彷彿とさせるが、トランプ陣営はそれをはるかに推し進めている。例えば、規制の削減にとどまらず、規制国家の根幹を揺るがすような政策を試み、気候変動危機を単に無視するだけでなく、その対策を積極的に撤回しようとしている。

こうした保守派の経済政策の優先事項に加え、トランプ政権はよりトランプ的な目標、すなわち、アメリカ経済を国内製造業の拡大に向けて再構築するという目標を加えている。火炎放射器のような関税(flamethrower-like imposition of tariffs)は、この目標達成に貢献するものであると同時に、同時に、トランプ大統領がアメリカに対して敵対的な貿易政策を採用していると考える他国を懲らしめ、他国への影響力を与える手段として関税を好んでいることも反映している。

トランプ大統領の従来の経済政策に加え、大統領とその家族、顧問、支持者による金銭的な私利私欲を伴う行動も見られる。これには、連邦政府機関の監察官の解任(firing inspectors general of federal agencies)といった説明責任の枠組みの撤廃(eliminating accountability guardrails)、2024年大統領選への寄付を行った有罪判決を受けた重罪犯の恩赦といった前例のない方法での寄付者への報奨、イーロン・マスクと彼の政府効率化局(Department of Government EfficiencyDOGE)ティームがマスクの事業活動に対する法的・規制上の監督責任を負う連邦政府機関を攻撃することを認めること、トランプ個人のミームコインを作成し、その投資家に大統領特別晩餐会で報いることなど、多岐にわたる。観察者の一部にとって、私利私欲(self-dealing)は「この政権を特徴づけるテーマ(a defining theme of this administration)」であり、表明されている国家経済目標と同等、あるいはそれ以上の重要性を持つ経済目標として理解するのが最も適切である。

(3)新しい政治システム(3. A new political system

トランプとそのティームは、アメリカの政治システムを再構築し、大統領が行政権を統制し、行政府の他の全ての機関を統制し、政府の他の全ての機関に対して完全な支配力を持ち、国内の批判や異議を抑制、あるいは少なくとも大幅に制限できるようにしようとしている。

トランプ大統領は、この超大統領主義的な行政府のヴィジョン(super-presidentialist vision of the executive branch)を追求する中で、独立機関に対する権限拡大を主張し、公務員に対する政治的支配を強化する措置を講じ、DOGEに連邦官僚機構の弱体化と削減を主導する権限を与えた。トランプ大統領は、政軍関係に党派主義を一層強めている。連邦政府機関の長に対する統制をさらに強化し、その地位にふさわしい専門的権限を持たない資格不足の人物を任命し、機関長らの周囲に政治的な「お目付け役(minders)」を配置して、彼らの意のままに動いているかを確認している。

トランプ大統領は、連邦政府全体と共に、裁判所と連邦議会が自身の権力を制限する能力を制限することに最優先で取り組んできた。トランプ大統領とそのティームは、政権の政策に反する判決を下す裁判官、行政権を制限する裁判所の権限に疑問を呈する裁判官、そして、気に入らない司法判断を無視し、部分的にしか、そしてゆっくりとしか従わない裁判官を激しく非難している。トランプ政権は、歳出予算を差し押さえ、連邦議会の許可なく連邦政府機関やその他の機関を解体し、連邦議会の監督全般を削減または無視することで、連邦議会の予算の役割に挑戦している。

トランプ政権はまた、州政府および地方自治体の権限を制限しようとしており、移民政策の執行など、連邦政府の政策指示に従わせるため、特定の州および地方自治体への資金提供を停止すると脅している。

トランプ政権は、法的措置、金銭的脅迫、そして政治・市民活動家に対する修辞的な攻撃を通じて、反対勢力の抑制に取り組んでいる。これには、トランプ大統領に対する過去の訴訟に関与した弁護士への報復(retribution against lawyers associated with past legal actions against Trump)、独立系メディアへの攻撃、トランプ政権に反対する政治団体に対する司法省の調査(Justice Department investigations of political groups that oppose the administration)、そして、DEIやその他の問題に関してトランプ政権の意向に従わないと見なされる大学やその他の市民団体への攻撃などが含まれる。

(4)世界における変化した役割(4. A changed role in the world

最後に、トランプとそのティームは「アメリカ・ファースト(America First)」という大義名分の下、アメリカの外交政策を転換させようとしている。彼らは、アメリカが長らく自国の利益よりも他国の利益を優先し、他国からただ乗りと不当な扱い(freeloading and mistreatment)を受けてきたというトランプの確信に基づいて行動している。

この計画の中核を構成するのは、アメリカが国際ルールに基づく安全保障と経済秩序の保証人としての役割から撤退し、代わりにアメリカに直接利益をもたらす取引を追求することである。協力よりも強制を強調し(emphasizing coercion more than cooperation)、より広範な国際的価値よりも当面の国益を重視する。

安全保障面では、これはアメリカの安全保障上の保証と関与を削減し、防衛負担をパートナー国に転嫁することを意味する。ロシアとウクライナ間の和平交渉、そしてイランとの核合意の実現を目指す政権の姿勢は、この削減計画の主要な要素であり、同時に、世界の平和推進者となるというトランプの野望を実現する手段でもある。「アメリカ・ファースト」の考え方のもう1つの要素は、国際機関へのアメリカの参加を縮小し、アメリカの力を制約する可能性のある法的義務を撤廃または回避することだ。やや意外なことに、トランプはこの考え方に、カナダ、ガザ、グリーンランド、パナマ運河といった領土拡大主義(territorial expansionism)を加えている。

経済面では、トランプ政権は関税をはじめとする経済的・外交的圧力を用いて、他国に対しアメリカ製品への関税引き下げと、特に天然ガスと石油をはじめとするアメリカ製品の購入拡大を迫っている。「アメリカ・ファースト」の経済政策には、世界の戦略鉱物資源へのアメリカのアクセスを最大化し、他国への経済開発援助をほぼ停止することも含まれる。

アメリカの外交政策転換におけるもう1つの側面は、こうした取引主義的な考え方(transactionalist outlook)とは相容れない、よりイデオロギー的な色合いを帯びている。トランプは右派ポピュリストの友人ネットワークを構築し、彼らの政治的影響力を高めようとしている。これには、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相、エルサルバドルのナジブ・ブケレ首相、アルゼンチンのハビエル・ミレイ首相といった指導者たち、そして「ドイツのための選択肢(the Alternative for GermanyAfD)」やブラジルのジャイル・ボルソナロ前大統領といった、現政権に反対する極右政党や政治家が含まれる。この取り組みに関連して、アメリカの国際的な民主政治体制支援の大半が廃止された。トランプ政権は、これらの支援がしばしばこれらのポピュリスト指導者や政党に対して使われてきたと主張している。

●統一されたヴィジョン(A unified vision

これら4つのプロジェクトの間には、多くの緊張関係が見受けられる。例えば、連邦政府の役割縮小を求める訴えと、特定の分野における政権による連邦政府の権力の押し付けがましい主張を両立させることは困難だ。

しかし、全体として、トランプ政権はこれらのプロジェクトを相互に補完し合うものと捉えている。アメリカ経済の変革は、アメリカの国際経済における姿勢の再構築と密接に関連している。全能で制約のない行政府の樹立は、トランプにとって個人的な目標であるだけでなく、強引な社会文化的変革を推し進め、彼が「国と世界を統治できる(run the country and the world.)」と信じる極めて個人的な外交政策を追求するためにも不可欠だ。

各プロジェクトには、確かに矛盾や緊張が見られる。例えば経済面では、ビジネスにフレンドリーな経済の構築という目標と、関税の積極的な活用との間に、鋭い対立が見られる。外交政策の分野では、アメリカの安全保障上の関与削減の願望と、トランプの領土拡大への願望は相容れない。

こうした矛盾は、トランプのティームが極めて異なる政治勢力と人物で構成されていることに起因している。しかし、このグループ内では、これら4つのプロジェクトに示された全体的なヴィジョンについて、矛盾点も含めて前進を続けるのに十分な基本的合意が存在している。

それぞれのプロジェクトは、過去からの根本的な脱却を象徴している。社会文化プロジェクトは、ここ数十年にわたりアメリカの生活を形作ってきた進歩主義政策の中核要素からの急激な転換を予見している。経済プロジェクトは、国内製造業の拡大、主要貿易相手国との関係見直し、そして政府の規制役割の大幅な縮小に向けた大規模な構造改革を想定している。政治プロジェクトは、行政における超大統領主義的優位性(super-presidentialist predominance within the executive)、司法と連邦議会に対する行政の優位性(primacy of the executive over the judiciary and Congress)、そして、制約され、従順な市民社会(a constrained and compliant civil society)を特徴とする、ソフトな権威主義(soft authoritarianism)を目指している。外交政策プロジェクトは、ルールに基づく国際秩序の要としてのアメリカの役割を放棄し、狭義の経済・安全保障上の利益を追求する、あからさまに利己的な大国へと変貌させようとしている。

これらを総合すると、私たちの記憶に残る中で、アメリカとその国際的アイデンティティを再構築しようとする最も深遠な試みと言えるだろう。トランプ政権に反対する人々は、主にその手法に注目している。その手法の多くが前例のない、無法で、無謀であることを考えると、それも無理はない。しかし、より広範な支持を得るためには、トランプが追求しているより大きな方向性をアメリカ国民に伝え、同等の規模と野心を持つ対抗ヴィジョンを明確に示す必要がある。

※トーマス・キャロサーズ:カーネギー国際平和基金民主政治体制・紛争・統治プログラム部長。Xアカウント:@CarnegieDCG

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(終わり)
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 古村治彦です。
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※2024年10月29日に佐藤優先生との対談『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』(←この部分をクリックするとアマゾンのページに飛びます)が発売になります。予約受付中です。よろしくお願いいたします。

 ドナルド・トランプの主張は突き詰めれば、「アメリカ・ファースト(America First)」だ。このブログでも何度も書いているが、これは「アメリカが一番!」という単純な話ではない。「アメリカ国内の抱える深刻な諸問題を解決することを最優先しよう」ということであり、「アメリカ国内(問題解決)優先主義」と訳すべき言葉だ。これに関連して、「アイソレイショニズム(Isolationism)」という言葉もあるが、これも「孤立主義」と簡単に訳すのは間違っている。アメリカが完全に孤立することはできない。こちらもやはり「国内優先主義」と訳すべきだ。だから、「アメリカ・ファースト」と「アイソレイショニズム」はほぼ同じ意味ということになる。

 「アメリカ国内優先主義」ということになれば、アメリカが現在、世界中に派遣しているアメリカ軍をアメリカ国内に戻す、世界経営から手を引くということになる。これに困ってしまうのはヨーロッパである。ヨーロッパは第一次世界大戦、第二次世界大戦と20世紀の前半で二度の破壊を極めた戦争を経験した。戦後ヨーロッパは統合と、アメリカによる安全保障への関与という方向に進んだ。ヨーロッパ諸国はお互いが戦わないように、調停者・仲裁役・抑え役・お目付け役としてアメリカを必要とした。そして、対外的には、具体的には、ソ連、そしてロシアに対しては、アメリカ軍の存在を前提とした軍事力の軽度の整備(軽い負担で済んできた)を行ってきた。それが、アメリカが手を引くということになったらどうなるか。ヨーロッパ域内での調和は乱れ、ロシアに対しては足並みが乱れ、各国の判断で、より軍事力を強化する方向に進む国と、ロシアとの友好関係を重視する国に分かれるだろう。

 ヨーロッパは戦後の制度設計をアメリカの存在を前提にして築いてきた。そして、協調が進み、繫栄することができた。しかし、その良い面とは裏腹に、アメリカの力が衰えた場合、アメリカが手を引く場合の備えができていなかった。そして、現在は、アメリカの国力の衰退が現実のものとなっている。アメリカが手を引けばヨーロッパは混乱状態になる。私たちがヨーロッパから学ぶべきことは、アメリカを関与させない、対等な地域統合組織を作ること、そして、それをアジアで実現することだ。時代と状況の変化はここまで来ている。いつまでも、世界一強のアメリカ、超大国のアメリカということをのんきに信じ込んでいる訳にはいかない。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプの復帰はヨーロッパを変貌させることになるだろう(Trump’s Return Would Transform Europe

-ワシントンが掌握しなければ、ヨーロッパ大陸は無政府的で非自由主義的な過去に逆戻りする可能性がある。

ハル・ブランズ筆

2024年6月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/26/europe-security-eu-nato-alliances-liberal-democracy-nationalism-trump-us-election/

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どっちが本当のヨーロッパだろうか? 過去数十年間、ほぼ平和で民主的で統一された大陸? それとも、それ以前に何世紀にもわたって存在していた、断片化され、不安定で、紛争に満ちたヨーロッパ(fragmented, volatile, and conflict-ridden Europe)? 11月の米大統領選挙でドナルド・トランプが勝利すれば、こうした疑問の答えはすぐに分かるかもしれない。

トランプは大統領としての最初の任期中に、アメリカをNATOから離脱させることに執心した。彼の元側近の中には、もし二期目に当選したら本当にやってくれるかもしれないと信じている人もいる。そして、このように語っているのはトランプ大統領だけではない。アメリカ・ファーストの有力信奉者の一人であるJD・ヴァンス連邦上院議員は、「ヨーロッパが自立する時が来た([The] time has come for Europe to stand on its own feet)」と主張している。アメリカ・ファーストの精神に明確に賛同していない人々の間でも、特にアジアにおいて、競合する優先事項への影響力はますます強くなっている。ポストアメリカ(アメリカ後)のヨーロッパについてより考慮されるようになっている。それがどんな場所になるかを聞いてみる価値はある。

楽観主義者たちは、たとえ7月にワシントンで開催されるNATO加盟75周年記念首脳会議で、NATO首脳たちが祝賀するアメリカの安全保障の傘を失ったとしても、ヨーロッパが繁栄し続けることを期待している。この見方では、アメリカは自国に引き上げることになるかもしれないが、過去80年間で豊かになり、安定し、確実に民主政治体制を築いてきたヨーロッパは、多極化した世界において建設的で独立した勢力として行動する用意ができている。

しかし、おそらくポスト・アメリカのヨーロッパは、直面する脅威に対抗するのに苦労し、最終的には過去のより暗く、より無秩序で、より非自由主義的なパターンに逆戻りする可能性すらある。「今日の私たちのヨーロッパは死に向かっているようだ。死に至る可能性がある」とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は4月下旬に警告した。アメリカ・ファーストの世界では、そうなるかもしれない。

第二次世界大戦後、ヨーロッパは劇的に変化したため、多くの人々、特にアメリカ人は、この大陸がかつてどれほど絶望的に見えたかを忘れている。古いヨーロッパは、歴史上最も偉大な侵略者や最も野心的な暴君を生み出した。帝国の野心と国内の対立が紛争を引き起こし、世界中の国々を巻き込んだ。飛行家で、著名な孤立主義者でもあったチャールズ・リンドバーグは1941年、ヨーロッパは「永遠の戦争(eternal wars)」と終わりのないトラブルの土地であり、アメリカは、そのような呪われた大陸に近づかないほうが良いと述べた。

根本的な問題は、限られたスペースにあまりにも多くの強力なプレイヤーたちが詰め込まれている地理にあった。この環境で生き残る唯一の方法は、他者を犠牲にして拡大することだった。この力関係により、ヨーロッパは壊滅的な紛争のサイクルに陥ることになった。 1870年以降、この地域の中心部に、産業と軍事の巨大企業としての統一ドイツが出現したことにより、このビールはさらに有毒なものになった。ヨーロッパ大陸の政治は、ヨーロッパ大陸の地政学と同じくらい不安定だった。フランス革命以来、ヨーロッパは、自由主義と歴史上最もグロテスクな形態の暴政(tyranny)の間で激しく揺れ動いた。

1940年代後半、第二次世界大戦によって、こうした争いのサイクルが壊れたと考える理由はなかった。古い対立が残ったままとなった。フランスは、ドイツが再び蜂起して近隣諸国を破壊するのではないかと恐れていた。ソ連とその支配下のヨーロッパ共産主義者という形で、新たな急進主義が脅威に晒される一方、ポルトガルとスペインでは右翼独裁政権が依然として力を持っていた。多くの国で民主政治体制が危機に瀕していた。経済的貧困が対立と分裂(rivalry and fragmentation)を加速させた。

新しいヨーロッパの誕生は、決して必然ではなかった。長い間大陸間の争いを避けようとしていた同じ国(アメリカ)による、前例のない介入(unprecedented intervention)が必要だった。この介入は冷戦によって引き起こされ、遠く離れた超大国にとってさえヨーロッパにおける均衡(European equilibrium)の更なる崩壊が耐え難いものになる恐れがあった。1940年代後半から1950年代前半にかけて、しばしば混乱した状況の中、ヨーロッパは徐々に統合されていった。そして、それは革新的な効果をもたらす一連の連動した取り組みを特徴としていた。

最も重要なのは、NATOを通じたアメリカの安全保障への取り組みと、それを裏付ける軍隊の派遣であった。アメリカ軍による保護は、西ヨーロッパをモスクワから、そして西ヨーロッパ自身の自己破壊的な本能から守ることで、暴力の破滅のループを断ち切った。アメリカがこの地域を保護することで、宿敵同士はもはや互いを恐れる必要がなくなった。1948年に、あるイギリス政府当局者は、NATOが「ドイツとフランスの間の長年にわたるトラブルは消滅するだろう」と述べた。西ヨーロッパ諸国はついに、他国の安全を否定することなしに、安全を達成することができるようになった。その結果、この地域を悩ませていた政治的競争や軍拡競争が回避され、NATO加盟諸国が共通の脅威に対して武器を確保できるようになった。

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マーシャル・プランのポスターには、ヨーロッパ各国の国旗をシャッターに、アメリカ国旗を舵に見立てた風車が描かれている

こうしてアメリカの政策は、前例のない経済的・政治的協力という第二の変化を可能にした。マーシャル・プランを通じて、アメリカは復興支援の条件としてヨーロッパ域内の協力を積極的に推し進め、後にヨーロッパ経済共同体(European Economic CommunityEEC)やヨーロッパ連合(European UnionEU)となる国境を越えた構造を生み出した。アメリカ軍の存在は、かつての敵同士が安全保障を損なうことなく資源を出し合うことを可能にし、この協力を促進した。1949年、西ドイツのコンラート・アデナウアー首相は「アメリカ人は最高のヨーロッパ人だ」と述べた。言い換えれば、ワシントンの存在によって、ヨーロッパの同盟諸国は過去の対立関係を葬り去ることができたのである。

第三の変化は政治的なものであった。侵略が独裁政治に根ざしているとすれば、ヨーロッパの地政学を変革するには、その政治を変革する必要があった。その変革は、連合諸国の占領下にあった西ドイツの強制的な民主化(forced democratization)から始まった。この変革には、脆弱な民主政治体制国家を活性化させ安定させるためにマーシャル・プランによる援助が用いられた。この変革もまた、アメリカの軍事的プレゼンスによって可能になった。アメリカの軍事的プレゼンスは、ヨーロッパの民主政治体制を消し去ろうとするソ連の覇権(hegemony)を食い止めると同時に、急進的な左派や右派を疎外する寛大な福祉プログラムに投資することを可能にした。

これは、ヨーロッパの問題に対するアメリカ独自の解決策だった。アメリカだけが、ヨーロッパを敵から守るのに十分な力を持ち、しかもヨーロッパを征服して永久に従属させるという現実的な脅威をもたらさないほど遠い存在だった。アメリカだけが、荒廃した地域の再建を支援し、繁栄する自由世界経済をもたらす資源を持っていた。民主的自由を守りながら、そしてより強化しながら、ヨーロッパの対立を鎮めることができるのはアメリカだけであった。実際、西ヨーロッパにおけるアメリカのプロジェクトは、冷戦が終結すると、単純に東へと拡大された。

アメリカの介入は、歴史家マーク・マゾワーがヨーロッパを「暗黒の大陸(dark continent)」と呼んだように、拡大する自由主義秩序の中心にある歴史後の楽園(post-historical paradise)へと変えた。それは世界を変えるほどの偉業であったが、今ではそれを危険に晒すことを決意したかのようなアメリカ人もいる。

アメリカのヨーロッパへの関与は、決して永遠に続くものではなかった。マーシャル・プランを監督したポール・ホフマンは、「ヨーロッパを自立させ、私たちの背中から引き離す(get Europe on its feet and off our backs)」ことが彼の目標だったと口癖のように語っていた。1950年代、ドワイト・D・アイゼンハワー米大統領は、ワシントンが 「腰を落ち着けていくらかリラックスできる(sit back and relax somewhat)」ように、ヨーロッパがいつ一歩を踏み出せるかと考えていた。アメリカは何度も、駐留部隊の削減、あるいは撤廃を検討した。

これは驚くべきことではない。ヨーロッパにおけるアメリカの役割は、並外れた利益をもたらしたが、同時に並外れたコストも課した。アメリカは、核戦争の危険を冒してでも、何千マイルも離れた国々を守ることを誓った。対外援助を提供し、広大な自国市場への非対称的なアクセスを可能にすることで、アメリカはヨーロッパ大陸を再建し、外国がアメリカ自身よりも速く成長するのを助けた。

フランスのシャルル・ド・ゴール大統領など、アメリカが提供した保護に対して積極的に憤慨しているように見える同盟諸国の指導者を容認した。そしてワシントンは、最も尊敬されてきた外交の伝統の1つである邪魔な同盟への敵意を捨てて、長らく問題でしかなかったヨーロッパ大陸の管理者となった。

その結果、両義的な感情が冷戦の必要性によって抑えられ、また批評家たちがアメリカ抜きで実行可能なヨーロッパ安全保障の概念を提示できなかったからである。しかし今日、古くからの苛立ちが根強く、新たな挑戦がワシントンの関心を別の方向へと引っ張っているため、アメリカのヨーロッパに対する懐疑論はかつてないほど強まっている。その象徴がトランプである。

トランプは長い間、ワシントンがNATOで負担している重荷を嘆いてきた。彼は、ただ乗りしているヨーロッパの同盟諸国に対して、襲撃してくるロシアに「やりたいことを何でもやらせる(whatever the hell they want)」と脅してきた。トランプは明らかにEUを嫌っており、EUを大陸統一の集大成としてではなく、熾烈な経済的競争相手として見ている。非自由主義的なポピュリストとして、彼はヨーロッパの自由民主主義の運命に無関心である。私たちの間には海があるのに、なぜアメリカ人がヨーロッパの面倒を見なければならないのか? トランプがアメリカ・ファーストの外交政策を謳うとき、それはアメリカが第二次世界大戦以来担ってきた異常な義務を最終的に放棄する外交政策を意味している。

はっきり言って、トランプ大統領が就任後に何をしでかすかは誰にも分からない。NATOからの全面的な脱退は、共和党に残る国際主義者たち(Republican internationalists)を激怒させるだろうし、政治的代償に見合わないかもしれない。しかし、トランプが大統領の座を争い、彼の信奉者たちが共和党内で勢力を伸ばしていること、そして中国がアジアにおけるアメリカの利益に対する脅威をますます強めていることから、アメリカがいつか本当にヨーロッパから離脱するかもしれないという可能性を真剣に受け止め、次に何が起こるかを考える時期に来ている。

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2023年5月16日、アイスランドのレイキャビクで開催されたヨーロッパ評議会首脳会議で演説するウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領

楽観的なシナリオでは、ヨーロッパは民主政治体制を維持し、結束し、敵に対抗するために団結する。アメリカが撤退すれば、EUは現在の戦争中もウクライナを支援し、和平後もキエフに意味のある安全保障を与え、ロシアや、これまでアメリカが防いできたその他の脅威を撃退するために、自らを世界的な軍事的主体へと変貌させることができる。こうしてヨーロッパは、自由主義的な世界秩序の強力で独立した柱として台頭することになる。ワシントンは他の優先事項に集中することができ、民主政体世界においてより効率的な分業が構築される。

ヨーロッパには自活するだけの資源がある。1940年代後半のような脆弱で没落した場所ではなく、民主政治体制と協力が規範となった、豊かで潜在的な力を持つ共同体なのだ。EUGDPはロシアの約10倍である。2022年以降、EU諸国は共同してアメリカを上回る軍事援助やその他の援助をウクライナに与えており、冷戦後に萎縮した防衛産業への再投資もようやく進みつつある。さらに、ヨーロッパの指導者たちは、ポーランドがそうであるように、自国を本格的な軍事大国へと変貌させたり、パリで長年の優先事項となっているヨーロッパの戦略的自立を再び推し進めることを提唱したりして、すでにポスト・アメリカの未来に備えている。「より団結し、より主権があり、より民主的な」大陸を構築する時期は過ぎたとヨーロッパのポスト・アメリカの展望について最も強気であると思われる指導者マクロンが4月に宣言した。

楽観的なシナリオの問題点は、簡単に見出せる。マクロンは、アメリカのリーダーシップに代わるものとしてヨーロッパ統合を喧伝しているが、ヨーロッパが統一され、まとまってきたのは、まさにワシントンが安心感を与えてきたからだということを忘れているようだ。例えば、1990年代初頭のバルカン戦争の始まりのように、アメリカが一歩引いてヨーロッパ勢力の前進を許した過去の例では、その結果、戦略的な結束よりもむしろ混乱が生じることが多かった。EUは2022年2月まで、ロシアの侵略をどう扱うかについて深く分裂していた。この教訓は、利害や戦略文化が異なる数十カ国の間で集団行動を調整するのは、誰かが優しく頭を叩いて覇権的なリーダーシップを発揮しない限り、非常に難しいということだ。

独立した、地政学的に強力なヨーロッパが素晴らしく聞こえるとしても、誰がそれを主導すべきかについては誰も同意できていない。フランスは常に自発的な活動に積極的だが、パリに自国の安全を扱う傾向や能力があるとは信じていない東ヨーロッパ諸国を不快にさせている。ベルリンには大陸をリードする経済的素養があるが、その政治指導者階級は、そうすればドイツの力に対する恐怖が再び高まるだけだと長年懸念してきた。おそらく彼らは正しい。冷戦後のドイツ統一が近隣諸国にとって容認できたのは、アメリカとNATOに抱きしめられたベルリンがヨーロッパの優位性を追求することは許されないと彼らが保証されていたからだ。アメリカがヨーロッパの一員ではないからこそ、ヨーロッパ人たちがアメリカのリーダーシップを容認してきたという結論から逃れるのは難しい。アメリカはヨーロッパの一員ではないため、かつて大陸を引き裂いた緊張を再び高めることなく権力を行使できるのだ。

このことは、最後の問題と関連している。自国の安全保障問題を処理できるヨーロッパは、現在よりもはるかに重武装になるだろう。国防支出は多くの国で2倍、3倍に増加せざるを得ないだろう。ヨーロッパ各国は、ミサイル、攻撃機、高度な戦力投射能力など、世界で最も殺傷力の高い兵器に多額の投資を行うだろう。アメリカの「核の傘(nuclear umbrella)」が失われることで、ロシアを抑止したいと願う最前線の国々、とりわけポーランドは、独自の核兵器を求める可能性さえある。

仮にヨーロッパが本格的な武装を行ったとしよう。アメリカの安全保障という毛布がなければ、ヨーロッパ諸国が外からの脅威に立ち向かうために必要な能力を開発するという行為そのものが、域内での軍事的不均衡が生み出した恐怖を再び呼び起こす可能性がある。別の言い方をすれば、アメリカの力に守られたヨーロッパでは、ドイツの戦車は共通の安全保障に貢献するものである。ポスト・アメリカのヨーロッパでは、ドイツの戦車はより脅威的に映るかもしれない。

二つ目のシナリオは、ポスト・アメリカのヨーロッパが弱体化し、分裂するというものである。このようなヨーロッパは、無政府状態(anarchy)に戻るというよりは、無気力状態(lethargy)が続くということになるだろう。EUはウクライナを解放し、自国の東部前線国家を守るための軍事力を生み出すことができないだろう。中国がもたらす経済的・地政学的脅威に対処するのに苦労するだろう。実際、ヨーロッパは攻撃的なロシア、略奪的な中国、そしてトランプ大統領の下では敵対的なアメリカに挟まれることになるかもしれない。ヨーロッパはもはや地政学的対立の震源地ではなくなるかもしれない。しかし、無秩序な世界では影響力と安全保障を失うことになる。

これこそが、マクロンや他のヨーロッパ各国の首脳を悩ませるシナリオだ。既に進行している、または検討中のヨーロッパの防衛構想の多くは、これを回避するためのものである。しかし、短期的には、ヨーロッパが弱体化し分裂することはほぼ確実だろう。

なぜなら、アメリカの撤退はNATOの根幹を引き裂くことになるからだ。NATOは、その先進的な能力の大部分を有し、その指揮統制体制を支配している国である最も強力で最も戦いを経験した加盟国アメリカを失うことになる。実際、アメリカは NATO の中で、ヨーロッパの東部戦線やその先の戦線に断固として介入できる戦略的範囲と兵站能力を備えている唯一の国だ。このブロックに残るのは、主にアメリカ軍と協力して戦うように設計されており、アメリカ軍なしでは効果的に活動する能力に欠けているヨーロッパ各国の軍隊の寄せ集めとなるだろう。これらは、脆弱で断片化した防衛産業基盤によって支えられることになる。ヨーロッパのNATO加盟諸国は、170を超える主要兵器システムを重複して寄せ集めて配備している。この基盤は、迅速かつ協調的な増強を支援することができない。

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ポーランドのノヴァ・デバで多国籍軍の訓練に参加するポーランド兵(2023年5月6日)

アメリカの撤退後、軍事的に弱体化したヨーロッパは、ここ数十年のどの時期よりも高い動員ピッチに達したロシアと対峙することになるが、ヨーロッパがすぐに弱体化を是正する選択肢はほとんどない。

アメリカの力なしでロシアと均衡を図るには、ヨーロッパの軍事費の膨大で財政的に負担の大きい増額が必要となるだろうが、ロシアがウクライナを制圧し、その人口と経済をクレムリンの軍事機構に統合することに成功すれば、更にその必要性は高まるだろう。巨額の赤字を永久に続けるという米国政府の「法外な特権(exorbitant privilege)」がなければ、ヨーロッパ諸国は不人気な巨額の増税を課すか、社会福祉プログラムを削減しなければならないだろう。ポーランドやバルト三国などの一部の国は、独立を維持するためにその代償を払うかもしれない。また、軍事的な準備は社会契約を破る価値はなく、攻撃的なロシアに従う方が賢明だと判断する人もいるかもしれない。

あるいは、ヨーロッパ諸国はどのような脅威に対抗すべきかについて意見が対立するだけかもしれない。冷戦時代でさえ、ソ連は西ドイツを、たとえばポルトガルを脅かすよりもはるかに厳しく脅していた。EUが成長するに従って、脅威に対する認識の相違という問題はより深刻になっている。東部と北部の国々は、プーティン率いるロシアを当然恐れており、互いに防衛のために力を合わせるかもしれない。しかし、西や南に位置する国々は、テロや大量移民など非伝統的な脅威のほうを心配しているかもしれない。ワシントンは長い間、NATO内のこのような紛争において誠実な仲介役を果たし、あるいは単に、大西洋を越えた多様な共同体が一度に複数のことを行えるような余力を提供してきた。このようなリーダーシップがなければ、ヨーロッパは分裂し、低迷しかねない。

それは酷い結果だが、最も醜い結果ではない。三つ目のシナリオでは、ヨーロッパの未来は過去によく似ているかもしれない。

このヨーロッパでは、弱さは一時的なものであり、EUの安全保障のような集団行動(collective-action)の問題を克服できないのは、その始まりに過ぎない。ワシントンの安定化への影響力が後退するにつれ、長い間抑圧されてきた国家間の対立が、最初はゆっくりとかもしれないが、再燃し始めるからである。ヨーロッパ大陸における経済的・政治的主導権をめぐって争いが勃発し、ヨーロッパ・プロジェクトは分裂する。国内のポピュリストや外国の干渉に煽られ、離反主義的な行動(revanchist behavior)が復活する。穏健な覇権国が存在しないため、古くからの領土問題や地政学的な恨みが再び表面化する。自助努力の環境の中で、ヨーロッパ諸国は自国の武装を強め始め、核兵器だけが提供できる安全保障を求める国も出てくる。非自由主義的で、しばしば外国人嫌いのナショナリズムが暴走し、民主政治体制は後退する。数年、あるいは数十年かかるかもしれないが、ポスト・アメリカのヨーロッパは、急進主義と対立の温床(hothouse of radicalism and rivalry)となる。

これは、1990年代初頭に一部の著名な専門家たちが予想していたことである。バルカン半島での民族紛争、ドイツ再統一をめぐる緊張、ソ連圏崩壊後の東ヨーロッパにおける不安定な空白地帯(vacuum of instability)の全てが、このような未来を予期していたのである。冷戦終結後、アメリカはヨーロッパの影響力を縮小させるどころか拡大させた。ボスニアとコソヴォに介入して民族紛争を消し去ると同時に、EUが東方拡大(eastward expansion)について逡巡し遅滞する中で、東ヨーロッパをNATOの傘下に収めたからだ。しかし、だからといってヨーロッパの悪魔が二度と戻ってこない訳ではない。

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2019年11月7日、ブダペストでハンガリーのヴィクトール・オルバン首相と会談するトルコのレジェップ・エルドアン大統領(左)

今日、バルカン半島では激しいナショナリズムの炎が揺らめいている。トルコやハンガリーでは、修正主義的な不満(revisionist grievances)と独裁的な本能(autocratic instincts)が指導者たちを動かしている。2009年のヨーロッパ債務危機とそれに続く数年にわたる苦難と緊縮財政(austerity)は、ドイツの影響力(この場合は経済的影響力)に対する恨みが決して深く埋まらないことを示した。ウラジーミル・プーティンがヨーロッパ諸国に協力するあらゆる理由を与えている今日でさえ、ウクライナとポーランド、あるいはフランスとドイツの間に緊張が走ることがある。

懸念すべき政治的傾向もある。ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相は何年もかけてハンガリーの民主主義を解体し、「非自由主義国家(illiberal state)」の台頭を喧伝してきた。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領も自国で同様のプロジェクトを進めている。フランスの国民連合(National Rally)のような政党は世論調査で上昇し、何世紀にもわたる歴史的不満が覚醒する準備を整え、ゼロサムの地政学的思考に陥りやすい硬直したナショナリズムを売りにしている。極右の「ドイツのための選択肢(Alternative for GermanyAfD)」は、より過激になりながらも、政治的な競争者であり続けている。こうした運動の勝利は、ヨーロッパ諸国を互いに対立させようと躍起になり、政治戦争を繰り広げるロシアによって助長されるかもしれない。

分裂したヨーロッパが古代の悪魔(ancient demons)に支配されるというのは悪夢のシナリオであり、悪夢は通常、実現しない。しかし、理解すべき重要なことは、ポスト・アメリカのヨーロッパは、私たちが知っているヨーロッパとは根本的に異なるということである。アメリカのパワーとヨーロッパに対する傘によってもたらされた地政学的ショックアブソーバーはなくなる。地位と安全保障をめぐる不安定な不確実性が戻ってくる。各国はもはや、以前の時代を特徴づけていたような行動(軍備増強や激しい対立)に頼らなくても、自分たちの生存を確保できるという自信を持つことはないだろう。今日のヨーロッパは、アメリカが作り上げた歴史的にユニークで前例のないパワーと影響力の構成の産物である。75年もの間、旧態依然とした悪習を抑制してきた安全策が撤回されれば、旧態依然とした悪習が再び姿を現すことはないと、私たちは本当に言い切れるのだろうか?

ヨーロッパが今日の平和なEUへと変貌を遂げたことは、決して元に戻せないと考えてはいけない。

ヨーロッパが今日の平和なEUへと変貌を遂げたが、決して以前の状態に戻らないと考えてはいけない。結局のところ、ヨーロッパは1945年以前、例えばナポレオンが敗北した後の数十年間、比較的平和な時期を過ごしたが、勢力均衡(balance of power)が変化すると平和は崩壊した。見識を持ったように見える大陸に悲劇が起こることはあり得ないと考えてはならない。アメリカが関与する以前のヨーロッパの歴史は、世界で最も経済的に先進的で、最も近代的な大陸が、自らを引き裂くことを繰り返してきた歴史であった。実際、ヨーロッパの過去から学ぶことがあるとすれば、それは、現在想像できるよりも早く、そして険しい転落が訪れる可能性があるということだ。

1920年代、自由主義の勢力が台頭しているように見えた。しかし、イギリスの作家ジェイムズ・ブライスは、「民主政治体制が正常かつ自然な政治形態として普遍的に受け入れられた(universal acceptance of democracy as the normal and natural form of government)」と称賛した。新しく創設された国際連盟(League of Nations)は、危機管理のための斬新なメカニズムを提供していた。それからわずか10年後、大陸が再び世界大戦に突入する勢いを作り出したのはファシズム勢力だった。ヨーロッパの歴史は、物事がいかに早く完全に崩壊するかを物語っている。

アメリカ第一主義者(America Firsters)たちは、アメリカはコストを負担することなく、安定したヨーロッパの恩恵を全て受けることができると考えているかもしれない。現実には、彼らの政策は、ヨーロッパにはもっと厄介な歴史的規範があることを思い起こさせる危険性がある。それはヨーロッパにとってだけでなく、災難となる。ヨーロッパが弱体化し、分裂すれば、民主政体世界がロシア、中国、イランからの挑戦に対処することが難しくなる。暴力的で競争過剰な(hypercompetitive)ヨーロッパは、世界的な規模で影響を及ぼす可能性がある。

ここ数十年、ヨーロッパが繁栄する自由主義秩序の一部であることで利益を得てきたとすれば、その自由主義秩序は、平和的で徐々に拡大するEUを中核とすることで利益を得てきた。ヨーロッパが再び暗黒と悪意に染まれば、再び世界に紛争を輸出することになるかもしれない。アメリカが大西洋を越えて後退する日、それはヨーロッパの未来以上のものを危険に晒すことになるだろう。

※ハル・ブランズ」ジョンズ・ホプキンズ大学国際高等大学院(SAIS)ヘンリー・A・キッシンジャー記念特別国際問題担当教授兼アメリカン・エンタープライズ研究所上級研究員。ツイッターアカウント:@HalBrands

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