古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:アメリカ中間選挙

 古村治彦です。

 2022年アメリカ中間選挙が終わった。まだ最終結果は確定していない。現在のところの確定した結果は以下の通りになっている。

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2022年11月10日現在の結果

 連邦下院(435議席)では共和党が過半数(218議席)を奪還すると見られているが、連邦上院(100議席)では接戦が続いており、共和党の過半数獲得(51議席)は微妙な情勢だ。議席数が50対50になれば、副大統領が議長役で1票を投じることになるので、民主党が過半数を獲得ということになる。
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民主、共和全体の支持率の推移(赤線は共和党)
 ジョー・バイデン大統領の支持率の低迷とインフレイション率の急上昇によって、中間選挙は共和党が優勢で、連邦上下両院で過半数を奪取するのではないかと見られていた。その後、民主党が支持率を回復し、連邦下院では過半数を失うが、連邦上院では何とか過半数(50議席以上)を維持できるのではないかと見られていた。

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バイデン大統領の支持率の推移(赤線は不支持率)
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アメリカのインフレ率

 共和党側では、ドナルド・トランプ前大統領が支持推薦した候補者たちが多数当選した。トランプはツイッター上に「1749敗だ」と投稿した。150名以上のトランプ派が当選したことは、バイデン政権の議会対策を難しいものとすることは間違いない。私は、現在も続いている連邦下院での2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件に関する特別委員会の活動は停滞するだけでなく、ジョー・バイデン大統領と息子ハンター・バイデンのウクライナ疑惑に関する調査が実施されるのではないかと見ている。この結果如何では、バイデン大統領の弾劾訴追まで進むものと考えている。

 ウクライナ戦争に関しては、民主党進歩主義派と共和党のトランプ派は共に早期停戦とロシアに対する制裁に反対する姿勢を示している。来年の連邦議会ではウクライナ戦争に関して、停戦に向けた動きが進む可能性がある。「アメリカ・ファースト」、「アイソレイショニズム(国内問題解決優先主義)」が出てくることになるだろう。

 今回の中間選挙の結果は、共和党側からすれば「赤い波(レッド・ウェイヴ)」を引き起こすまでの大勝利ということにはならず、民主党側からすれば、大敗北を避けることができたということで、民主党の粘り勝ちという評価になるようだ。共和党内を見てみれば、エスタブリッシュメント派にとっては議席が増えたことは喜ばしいが、トランプ派が大量にワシントンにやってくることは忌々しいということになる。トランプ派への対応を間違うと、民主党と対峙する以前に党内抗争を戦わねばならないということになる。共和党は分裂含みということになる。民主党もまた進歩主義派が影響力を持つことで分裂含みということになる。共和党内のトランプ派と民主党内の進歩主義派は共にポピュリズムということになり、ポピュリズムがワシントンを席巻するという状態が続くことになる。

(貼り付けはじめ)

中間選挙の5つの重要なポイント(Five early takeaways from the midterms

ナイオール・スタンジ筆

2022年11月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3726836-five-early-takeaways-from-the-midterms/

水曜日の夜明けとともに、2022年の中間選挙はいくつかの決定的な結果を残した。

しかし、劇的な一夜を経て、既に明らかになっている教訓も存在する。

これから5つの重要なポイントを挙げていく。

(1)民主党にとっては予想よりも良い夜となった(A better night than expected for Democrats

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マギー・ハッサン連邦上院議員(ニューハンプシャー州選出、民主党)は、選挙前の数週間に共和党が期待を寄せていたドン・ボルデューの挑戦を退け上院の議席を維持した

専門家たちの一部や世論調査が予測した共和党の「赤い波」が実現しなかったことが明らかになり、民主党は火曜日、一晩中安堵のため息をついていた。

フロリダ州知事ロン・デサンティス(共和党)と連邦上院議員マルコ・ルビオ(共和党)の両候補の圧勝が予測された際に、共和党は夜明け前に最高水位を記録した。

しかし、そこからは共和党にとって下り坂となった。

最も劇的な結果は、これまでのところ、全米で最も注目されている連邦上院議員選挙の1つであるペンシルヴァニア州で、民主党のジョン・フェッターマンが共和党のメフメト・オズを破ったことだ。

上院議員のラファエル・ウォーノック(ジョージア州選出、民主党)は、元アメフト選手のハーシェル・ウォーカー(共和党)に対してやや有利な結果となっているようだが、12月の決選投票が避けられるかどうかはまだ分からない。

その他の結果も、軒並み民主党の希望を後押ししている。

マギー・ハッサン連邦上院議員(民主党)は、選挙戦の最終週に共和党が追い上げていたニューハンプシャー州での議席を維持した。

連邦下院では、エリッサ・スロトキン連邦下院議員(ミシガン州)をはじめ、民主党の落選予想リストに指定されていた有名議員が議席を確保した。連邦下院では、エリッサ・スロトキン(ミシガン州)、アビゲイル・スパンバーガー(ヴァージニア州)、マーシー・カプチャー(オハイオ州)など、民主党の落選予想リストに掲載された有名な政治家たちが何人も選挙に勝ち残った。

各州の知事選挙では、民主党が直前まで神経質になっていたミシガン州知事グレッチェン・ウィットマーとニューヨーク州知事キャシー・ホーチュルは圧勝した。

民主党が連邦下院の議席を減らすことは確実であり、過半数を失う可能性も十分ある。

しかし、これはバイデン大統領が率いる民主党が期待した通りの中間選挙結果であった。

今、厳しい問題に直面しているのは共和党である。

高いインフレ率とバイデン大統領の低い支持率という強力な追い風にもかかわらず、共和党は非常に僅かな利益しか得ることができなかった。

(2)フェッターマンが大勝利を収めた(Fetterman pulls off a huge victory

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ペンシルヴァニア州連邦上院議員選挙で、ジョン・フェッターマン副知事が共和党のメフメト・オズを降した。民主党は安心のために大きなため息をつくことができた

水曜日の未明に確定したフェッターマンの勝利は民主党にとって大きな追い風となった。

この数週間、型破りな副知事フェッターマンのリードはどんどん縮まり、支持者は心配し通しだった。

特に、オズはフェッターマンの犯罪記録に対する攻撃で支持を得ていたようで、その中には州恩赦委員会の委員長として、在任中に以前よりはるかに多くの減刑を勧告したことが含まれていた。

5月に脳卒中を発症したフェッターマンは、10月に行われた両候補の唯一のテレビ討論会でも、訥々とした様子を見せていた。

しかし、頭を剃り上げ、パーカーを着たフェッターマンの勝利は、全米で最も分断の激しい激戦州においても、彼の主張する進歩主義的ポピュリズムが通用することを証明するものとなった。

この勝利は、純粋に数学的な意味でも民主党にとって必要不可欠なものとなった。

今回の選挙におけるペンシルヴァニア州の連邦上院議員の議席は、共和党のパット・トゥーミー連邦上院議員の引退によって空席になったものだった。

民主党は、アリゾナ州とネヴァダ州の2つの州(本稿執筆時点ではまだ集計中)を失ったとしても、共和党から奪ったこの議席によって、余裕を確保することができることになった。

(3)デサンティスがフロリダを赤く染める(DeSantis turns Florida red

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共和党にとって大きく失望させられる夜となったが、フロリダ州知事ロン・デサンティスは、再選勝利へ進んだ

フロリダ州知事ほど良い夜を過ごした共和党員は他にいなかった。

デサンティスの2期目への再選は予想されていた。しかも、その差は歴然としており、民主党の対立候補であるチャーリー・クリスト元連邦下院議員20ポイントほども引き離していた。

その背景には、4年前にデサンティスが1ポイント以下の差で知事職を獲得し、2年前にドナルド・トランプ前大統領が約3ポイント差で勝利したことがある。

2024年の大統領選挙に関心が移り始める中、彼の信頼性を証明するという意味では、まさにデサンティス知事にとってのブースターとして思惑通りの結果となった。その点では、火曜日の結果が、トランプにとってせいぜい凡庸な結果にとどまったことも、彼を助けたと言える。

デサンティスの勝利の他の輪郭のいくつかは特に重要で、特に、人口が多くヒスパニック系の多いマイアミ=デイド郡を押さえたことが大きい。

デサンティスは勝利演説で「政治地図を塗り替えた」と自画自賛したが、ヒスパニックの多い地域での勝利はそれが単なる誇張ではなかった理由の1つである。

マルコ・ルビオ連邦上院議員もヴァル・デミングス連邦下院議員(民主党)に約17ポイントの差をつけて圧勝した。

デサンティスとルビオによる2つの勝利の規模を見れば、フロリダが共和党優勢州になったことは明らかだ。

そして、「フロリダは全米最大の激戦地だ」という考え方はもはや通用しないことになった。

(4)連邦下院での共和党の過半数は良くても大きなものとはならないだろう(GOP House majority will be narrow at best

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連邦下院少数党(共和党)院内総務ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)は共和党が連邦下院の過半数を確保すると予想しているが、その差は予想より小さくなりそうだ

連邦下院少数党院内総務ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)が、当初終了予定だった1時間後に祝勝会の壇上に立ったが、詳細な物語を語った。

東部時間午前3時30分の時点で、共和党が連邦下院の過半数を奪取するという予測は、主要な報道機関からはまだ出ていなかった。

マッカーシーは聴衆に対して、「明日起きたら私たちが多数派で、ナンシー・ペロシが少数派になっている」と選挙の結果に自信を見せた。

彼が正しいことは、やがて証明されることだろう。しかし、共和党の連邦下院過半数奪取が、夜が更けても確定しないということは、この夜が共和党にとっていかに残念な夜であったかを物語っている。

また、たとえマッカーシー議員が連邦下院議長に就任するにしても、共和党が過半数を獲得しても民主党との差が小さい場合には、マッカーシーには大きな試練が待ち受けている。

このシナリオの場合、共和党の最も強硬なメンバーが非常に大きな影響力を持つことになり、それを利用することは間違いない。

水曜未明、マージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)は声明を発表し、「我が党が敗北しないよう、戦いをリードしていく」と主張した。

(5)民主党の2人のスターが消えてしまった(Two Democratic stars fade

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ステイシー・エイブラムスは、現職のジョージア州知事のブライアン・ケンプ(共和党)に2度目の知事選でも敗れ、今後、民主党内でのスター性が薄れる可能性がある。

民主党全体では、予想よりも上の結果が出たかもしれないが、2つの敗北が党全体を直撃した。

2つの敗北は共に州知事選でのことだった。ジョージア州ではステイシー・エイブラムスが現職のブライアン・ケンプ知事(共和党)に敗れ、テキサス州ではビトー・オルーク元連邦下院議員が現職のグレッグ・アボット知事(共和党)に敗北した。

これら2つの敗北という結果は予想されていたことで、エイブラムス、オローク両候補は世論調査の結果でかなりの差でリードされていた。

しかし、それでも、それぞれの候補者は、少し前まで、民主党の輝くスターと見られていた。

火曜日、エイブラムスがケンプに連敗し、オロークは2018年の連邦上院議員選挙でテッド・クルーズ上院議員(共和党)に敗れ、2020年の民主党大統領選挙予備選への挑戦を断念した後、3度目の敗北となったことを考えると、彼らの輝きは今ひどく損なわれることになった。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


 

 古村治彦です。

 

 今回は、2014年の中間選挙の結果を見ていきたいと思います。と言っても、全てを見ていくことはできませんので、連邦上下両院の結果を特に見ていきたいと思います。私が注目したいのは、2012年の大統領選挙で激戦州と呼ばれ、大統領選挙では常にどちらに転ぶか分からない州の結果です。上院は2年後に3分の1ずつ改選していきますので、1回の選挙で全ての州で上院議員選挙がある訳ではありません。下院議員は2年ごとに全員が改選ですので、下院議員は2年ごとに選挙があって大変です。

 

 私が注目する激戦州というのは、ニューハンプシャー州、ペンシルヴァニア州、オハイオ州、ヴァージニア州、ノースカロライナ州、ミシガン州、ウィスコンシン州、アイオワ州、コロラド州、ネヴァダ州、フロリダ州です。これらの州の動きに敏感になっていれば、大統領選挙の結果も予想しやすくなります。

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アメリカの地図 

 

 さて、上院議員選挙から見ていきます。選挙が行われたのはニューハンプシャー州、ヴァージニア州、ノースカロライナ州、ミシガン州、アイオワ州、コロラド州で、ヴァージニア州では結果が出ていません。結果が出ている5州のうち、ニューハンプシャー州とミシガン州で民主党の現職が議席を守り、ノースカロライナ州、アイオワ州、コロラド州で共和党の新人が勝利を収めました。選挙前は民主党5人でしたが、選挙後は民主党2名対共和党3名となった訳です。


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2014年中間選挙・上院議員選挙の結果(茶色は共和党が民主党から議席を奪った州)

 下院議員選挙についてみていきます。議席数の変更が起きたのは、ニューハンプシャー州(民主:2→民主:1;共和:1)、ノースカロライナ州(民主:4;共和:9→民主:3;共和:10)、アイオワ州(民主:2;共和:2→民主:1;共和:3)、ネヴァダ州(民主:2;共和:2→民主:1;共和:3)でそれぞれ共和党が1議席を増やしています。ペンシルヴァニア州(民主:5;共和:11)、オハイオ州(民主:4;共和:12)、ヴァージニア州(民主:3;共和:8)、ミシガン州(民主:5;共和:9)、ウィスコンシン州(民主:3;共和:5)、コロラド州(民主:3;共和:4)、フロリダ州(民主:10;共和:11)では議席数の変動はありませんでした。フロリダ州では、民主党が共和党から1議席を奪取し、共和党も民主党から1議席を奪取しましたので、総数では変更はありませんでした。

 

 私は民主党惨敗、バラク・オバマ大統領惨敗という報道に対してその通りだとは思うのですが、大統領選挙を絡めて見ると、民主党もオバマ大統領もそこまで負けていないのではないかと考えています。激戦州での動きは小さいものだと言えます。彼らは自分たちが取るべきところはきちんと死守したのではないかと思います。2006年の下院議員選挙(ジョージW・ブッシュ前大統領最後の中間選挙)でも、民主、共和党寮で30議席以上の変動があり(民主:233対共和:202)、現職2期目の大統領の最後の中間選挙は大統領を出している党が弱いということが言えると思います。現職に飽きてきたという感情が国民の中にあり、それが個々の政策課題についての批判となって噴出するのだと思います。


 選挙前にあれだけの逆風、共和党には多額の資金がりゅうリュウした状況下で、そこまで負けなかったと思うのです。その証拠の一つとして、2012年の大統領選挙の結果と2014年の下院議員選挙の結果を地図にしたものを挙げたいと思います。

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2014年中間選挙・下院議員選挙の結果(茶色は共和党が民主党から議席を奪った選挙区で、濃い青のシマの部分は逆) 

 
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2012年の大統領選挙の結果(下院議員選挙の選挙区ごと)
 

これら2枚を見比べていただくと分かると思いますが、ほぼ同じです。民主党は太平洋沿岸、東海岸、大都市圏では勝利を収めています。2008年の選挙から2010年、2012年、2014年と3回の選挙がありましたが、民主党は2008年の時の貯金を吐きだしたと言えますが、致命的な後退はしていないのです。

 

 そうなると、次は2016年の選挙と言うことになりますが、現在の情勢下では、民主党はヒラリー・クリントン前国務長官が候補者として有力視されています。この2年間で、リーダーシップを見せつけ、大統領選挙に臨むことになるだろう。今回の中間選挙はその第一歩であったと言うことができます。

 

(終わり)








 

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