古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:アメリカ政治

 古村治彦です。

 今回は、私の最新刊『バイデンを操(あやつ)る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)をご紹介いたします。発売日は2023年12月27日です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 『バイデンを操(あやつ)る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』は私にとって4冊目の単著で、ジョー・バイデン成立後のアメリカ政界の動きと世界政治の動きを網羅した内容になっています。何とか年内に出すことができました。2023年を振り返る、冬休みの一冊として、是非手に取ってお読みください。

 以下に、副島隆彦先生の推薦の言葉、はじめに、目次、おわりにを掲載します。

(貼り付けはじめ)

推薦の言葉 副島隆彦(そえじまたかひこ)

 本書『バイデンを操(あやつ)る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』は、私の弟子である古村治彦(ふるむらはるひこ)君にとって4冊目の単著となる。

 古村君の前著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム、2021年6月刊)は、アメリカ政治研究の専門家たちから高い評価をいただいた。それで、本書がその続編として書かれた。前著を読んだ編集者から執筆の話をいただいたと聞いた。大変ありがたいことだ。

 前著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』では、古村君は、アメリカのバイデン政権を作っている、ディープステイト(超[ちょう]財界人と米軍需産業)側の政府高官たちが、中国・ロシアとの対決、戦争をどのように仕組んで、どのような計画で実行しているかを、正確にはっきりと説明した。なんと、この本が出てから8カ月後に、実際にウクライナ戦争が始まった(2022年2月24日)。これは真に驚くべきことだ。

 アメリカの国防政策と外交政策を実際に操(あやつ)っている、ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社とその創設者のミッシェル・フロノイ元(もと)米国防次官(アンダーセクレタリー)のことを、詳しく紹介していた。これは日本初(はつ)のことで、国際関係論(インターナショナル・リレイションズ)の研究者である古村君の学問業績である。本書に続いてお読みください。

 本書では、古村君は、引き続き、アメリカ国際政治の悪の司令塔であるウエストエグゼク社と、米国防総省(ペンタゴン)の密接な結びつきを丹念に追っている。ウエストエグゼク社が、米国防総省と、民間のハイテク企業群のグーグル、フェイスブック(現在はメタ)などのビッグテック(Big Tech 巨大IT企業)を結び付けて、アメリカの軍事部門の先端技術(ハイテク)と武器開発の優位を保っている様子を、精(せい)(かく)に描いている。古村君はこのことを「新(しん)・軍産(ぐんさん)複合体」と表現している。今も前著の帯に書かれた「アメリカをWestExec(ウエストエグゼク)社が動かす!」の通りだ。

 古村君は、バイデン政権の進めている「産業政策(Industrial Policy(インダストリアル・ポリシー))」に注目している。産業政策は日本語で書くと珍腐なコトバだが、アメリカ政治学における重要な概念だ。この産業政策という概念を生み出したのは、日本研究学(ジャパノロジー)の大(だい)学者だったチャルマーズ・ジョンソン博士だ。私は、当時アメリカ留学中だった古村君を伴(ともな)って、カリフォルニア州サンディエゴにあるチャルマーズの自宅を訪問し、長時間にわたって話し込んだ。2004年4月のことだ。このことを懐かしく思い出す。

 古村君は、本書の後半部で世界政治における「西側諸国(the West[ザ・ウエスト[)対(たい) 西側以外の国々(the Rest[ザ・レスト] 残りの部分の意味)の分裂と対立」を描き出している。ウクライナ戦争は、アメリカのディープステイトが、何が何でも、プーチン政権を罠(わな)に嵌めてウクライナにおびき出して、ロシアを弱体化することが目的だった。この外交・軍事戦略を決定して実行した者たちが、まさしく今のバイデン政権の高官たちだ。一方、中国、インド、サウジアラビアなど、非()西洋、即ち西側以外の国々は、継続してロシアから石油を輸入することでロシアを支えた。ウクライナ戦争は膠着(こうちゃく)状態だが、英と米のディープステイト側の敗北、そしてロシアとロシアの苦境を支える西側以外の国々の勝利が見えてきた。

 本書『バイデンを操(あやつ)る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で、古村君は、「世界覇権がアメリカから中国に移動する、中国は焦らず、じっくりと熟柿(じゅくし)作戦で覇権(ヘジェモニー)が泰然自若(たいぜんじじゃく)で手に入るのを待つ。大国の風格だ」と書いている。まさしくその通りで、もうすぐ世界覇権の移動が起きる。

 この一冊で、最新のアメリカ政治と世界政治の動きを理解することができる。ぜひ、読者諸賢にお読みいただきたい。

2023年12月

副島隆彦(そえじまたかひこ) 

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はじめに 古村治彦(ふるむらはるひこ)

 私は2021年6月に、著書『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)を発表した。その中で、ジョー・バイデン Joe Biden(1942年~、81歳。大統領在任:2021年~)政権の高官たちの多くが、アメリカの首都ワシントンDCにあるコンサルティング会社の、ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社 WestExec Advisors の出身者であることに着目し、この会社を中心とする人脈からバイデン政権を分析した。

 このウエストエグゼク社が米国防総省 United States Department of Defense(ユナイテッド・ステイツ・デパートメント・オブ・ディフェンス) や軍事産業と関係が深い点に注目し、「バイデンとバイデン政権の高官たちは中露に対して強硬な姿勢を取る、もしかしたら戦争になるかもしれない」と書いた。

 翌年の2022年2月24日にウクライナ戦争が始まった。バイデン政権の下でロシアが絡(から)む戦争が起きたということで、私の本に注目してくださる方が増えた。アメリカと中露が直接戦う戦争ではなかったが、アメリカはウクライナに対して大量の武器を支援しており、ウクライナがアメリカの代理 proxy(プロキシー) となり、ロシアと戦っている。

 しかし、バイデン政権の活動の根幹を担っている、ウエストエグゼク社と同社の出身者たちの人脈に対して、日本では大きく注目されるところまではいかなかった。私はそのことを残念に思っていた。

 しかし、2023年9月2日、講談社が運営するウェブサイト「現代ビジネス」の「ニュースの深層」というコーナーを長年にわたり担当している、ヴェテランのジャーナリスト歳川隆雄(としかわたかお)氏が、「米バイデン政権『国務副長官』の後任は……政府要職を占めるコンサル出身者のからくり」(https://gendai.media/articles/-/115663)という題名の記事の中で、ウエストエグゼク社について取り上げた。歳川氏は、バイデン政権に数多くのウエストエグゼク社出身者がいることを指摘し、バイデン政権にとって重要だと書いた。

 歳川氏の記事が出てから、「あの記事で取り上げられていたウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社は、あなたが本の中で取り上げていた会社ですね」「あなたの方が先に注目していたことになる」という嬉しい声を多くいただいた。これでウエストエグゼク社と出身者たちについて、日本でも注目されるようになるだろうと考えている。

 本書では引き続き、ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の動きから、バイデン政権の意図を分析する。さらに、アメリカ国内政治、国際政治の最新の動きを網羅的に捉(とら)え、日本の主流メディアでは紹介されない、見方や考え方を提供する。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる──目

推薦の言葉 1

はじめに 5

第1章 中国に対する優位性の確保に苦労するバイデン政権──米中で実施される産業政策でも中国が有利

バイデン政権の産業政策に深く関わるウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社 20

ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社とはどのような会社か 22

ウエストエグゼク社出身者が重要高官を占めるバイデン政権はヒラリー政権でもある 27

国防総省がウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社と関係を深めている 30

ウエストエグゼク社創設者ミシェル・フロノイは国防総省の予算を使いやすくするように提言報告書を執筆 35

産業政策の本家本元は日本 40

バイデン政権が進める産業政策 46

バイデン政権で産業政策を推進する人材としてのジャレッド・バーンスタイン 51

ジェイク・サリヴァン大統領補佐官が産業政策の熱心な支持者 54

産業政策の成功例である中国 66

ファーウェイがiPhoneと同水準のスマートフォンを開発──21世紀のスプートニク・ショック(Sputnik Crisis(クライシス)) 70

軍事面で優位に立つためには技術面での優位が必要──長期計画ができる中国が有利ということが明らかに 75

第2章 2024年米大統領選挙は大混迷

米大統領選は100年に一度の大混乱 80

アメリカ大統領選挙はマラソンレース──まずは党の候補者を決める予備選挙から 82

アメリカ大統領選挙本選挙は各州の選挙人の取り合い 85

現職大統領なのに支持率が上がらないバイデン──有権者は高齢問題を憂慮 88

民主党全国委員会はバイデン当選に向けて露骨な依怙贔屓 91

民主党予備選挙に出馬宣言したロバート・F・ケネディ・ジュニア──大いなる期待 99

ケネディ・ジュニアが無所属で大統領選挙本選挙に出馬表明という怪しい動き 104

共和党ではトランプが圧倒的に有利な情勢 110

トランプを尊敬する新人候補ヴィヴェック・ラマスワミが大健闘 111

アメリカ史上初めての連邦下院議長解任まで起きた連邦下院共和党の分裂 115

連邦下院では10月から始まる2024年度の予算が可決成立していない 123

共和党内の分裂で注目を集めるフリーダム・コーカスは「トランプ派」議員連盟ではない 127

「大統領の犯罪」を隠(いん)(ぺい)するためにはどうしても勝たねばならないバイデン 136

第3章 ウクライナ戦争から見えてきた世界の分断

長期膠着状態に陥っているウクライナ戦争の戦況 142

アメリカ軍やNATOの評価が低い、そして自分勝手なウクライナ軍では勝てない 149

「ゼレンスキー疲れ」「ウクライナ疲れ」に陥ったヨーロッパとアメリカ 153

国際関係論の大物学者ミアシャイマーが「ウクライナ戦争の責任は、アメリカとNATOにある」と喝破 157

ヘンリー・キッシンジャーの提示する「落としどころ」が停戦の基本線 164

「世界の武器庫」であるべき西側諸国、特にアメリカの武器増産が進まずに武器不足に陥る 171

「大統領の犯罪」ノルドストリーム爆破事件──アメリカは平気で自分の同盟諸国を苦境に陥れる 177

戦争直後の国連でのロシア非難決議の採決で世界の分断が明らかになった 187

ウクライナ戦争の結末はどうなるか 191

第4章 「西側諸国 the West」対「西側以外の国々 the Rest」の分断が世界の構造を変える

「西側以外の国々」の中核となるBRICS(ブリックス)(ブリックス) 199

多元的な国際機構や枠組みで重層的な関係を築いている西側以外の国々 202

サウジアラビアがバイデン大統領の依頼を断り、中国寄りの姿勢を鮮明にした 208

中国の習近平国家主席がサウジアラビア訪問で石油取引の人民元決済に言及 210

アメリカを追い詰めすぎると怪我するということで、「ブリックス通貨」導入は見送り 218

国際社会で仲介者になるほどに中国の大国としての存在感は高まっている 225

アメリカはインド・太平洋で中国を封じ込めたい──QUAD、AUKUS、NATOのアジア進出 229

「アジアの皇帝」カート・キャンベル国務副長官指名は、バイデン政権の対中強硬姿勢を鮮明に 234

ハマスによるイスラエルに対する大規模攻撃とイスラエルの反撃 240

アメリカの意向を無視するイスラエルがアメリカを追い詰める 246

ウクライナ戦争とパレスティナ紛争から見えてくるアメリカの威信の低下 253

第5章 覇権国でなくなるアメリカとこれから覇権国になる中国

国際関係論の覇権国交代理論である覇権戦争論と長期サイクル論 261

世界は西洋支配の前の状態に戻る 269

米中間で戦争が起きるか 273

米中は戦争の可能性を視野に入れて体制強化を図る 277

ウクライナ戦争とパレスティナ紛争が長引けば、国際情勢はアメリカと西側諸国にとって不利になる 279

ウクライナ戦争とパレスティナ紛争で抑制的な動きをしている中国だが国際情勢は中国有利になる 284

アメリカはこれから同盟諸国にバック・パッシング(責任転嫁)を行う 287

短期的に見て怖いのは、直接戦争ができないアメリカが日本に代理戦争をさせること 290

おわりに 295

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おわりに 古村治彦(ふるむらはるひこ)

 本書の一貫したテーマは、アメリカを筆頭とする西側諸国(the West[ザ・ウエスト])の衰退と中国を筆頭とする西側以外の国々(the Rest[ザ・レスト])の台頭が世界に大きな変化をもたらしている、ということだ。そのことを、アメリカ国内政治と世界政治の分析を通じて描き出そうと努めた。

 本書の執筆中、10月になって、アメリカ国内では、史上初の連邦下院議長解任が起き(10月3日)、国際的に見れば、ハマスによるイスラエルへの攻撃が起き、イスラエルがガザ地区に報復攻撃を開始した(10月7日)。そのため、本書の構成を一部変更せざるを得なくなったが、これらの出来事は、本書で掲げたテーマを裏付けるものだ。

 アメリカ国内政治は混迷の中にある。アメリカ国内の分裂と衰退はもう隠すことができないところまで来ている。アメリカ国内では、2024年の大統領選挙で、高齢問題もあり、有権者から全く支持されていないバイデンが再選を果たすことになると私は見ている。合法、非合法、あらゆる手段で、アメリカ国民の意思を捻()じ曲げて、バイデン勝利とするだろう。そうしなければならない理由を、私は本書で書いた。バイデン勝利が「作り出されたcreation(クリエイション)」後に、アメリカでは、バイデンが大統領選挙で勝利した州を中心にして、アメリカ国民による大規模な抗議活動が起き、アメリカ国内の分裂はさらに深まる。

 さらには、バイデン再選とそれに対する抗議運動がきっかけになって、アメリカが新たな「南北分裂」状態に陥ることも考えられる。私は、本文の中で、バイデン勝利は「アメリカ民主政治体制の死」を意味すると書いたが、さらに進んで「アメリカ合衆国の死(解体)」にまで進む可能性も高い。

 バイデン政権は、分裂を避けるために、国内政策に注力しなければならなくなる。対中封じ込め政策を強化しようとしているが、国内対策に足を取られて、思い通りに物事を進められない状態になる。国内経済の先行きも不透明になる中で、アメリカは分裂と衰退に向かう。アメリカの分裂と衰退は、西側諸国全体にも悪影響を及ぼすことになる。

 世界政治の構造も大きく変化している。アメリカの分裂と衰退で利益を得るのは、中国を中心とする西側以外の国々だ。ウクライナ戦争では、西側以外の国々はロシアを間接的に支え切り、ロシアは戦争初期の厳しい段階を乗り越えて、守備を重視した、負けない体制を構築し、戦争継続が可能となっている。西側諸国は、武器生産能力が限界を迎え、資金面でも、限界に来ており、全体に厭戦気分が広がっている。

 西側以外の国々は、重層的な国際組織を結成し、宗教、政治体制、経済体制の面で、多様な国々が連携できるネットワークづくりを進めている。その中心がBRICS(ブリックス)であり、中国が核となっている。石油の人民元(じんみんげん)決済やドル以外の共通通貨(脱[だつ]ドル化)の話が出ているのは、アメリカの戦後支配体制の揺らぎを象徴している。中国は、アメリカとの対立激化を避けながら、アメリカの自滅を待つという姿勢だ。できるだけ労力をかけないようにしながら、慌てず急がずで、世界覇権を手にする。

 西洋近代は、もちろん素晴らしい成果を収めた部分もある。西洋近代がもたらした科学(サイエンス)(学問)の発展や価値観、制度によって、人類はより快適で豊かな生活を享受することができた。その点は認めなければならない。しかし、一方で、西洋中心主義 Ethnocentrism(エスノセントリズム) によって、西洋的な価値観と制度を世界中に押し付け、結果として、西洋化することで世界を一色にまとめ上げようとしてきた。

 非西洋諸国の文明化 civilization(シヴィライゼイション) は、社会工学 socialengineering(ソーシャル・エンジニアリング) を通して行われた。非西洋の土台の上に無理やり、西洋社会の価値観や制度が移植された。社会工学は「文明化外科手術(ぶんめいかげかしゅじゅつ)」とも呼ばれるべきもので、不自然な移植のために、制度がうまく機能しないことも起きた。それに対して、西洋諸国は、「近代化の出来ない落ちこぼれ」というレッテルを貼った。

 しかし、これから、世界の「優等生」たちが力を失い、これまでの「落ちこぼれ」たちが力をつけていく。そうした時代に入っていく。西洋近代、戦後世界の終わりの始まりである。

 本書の構成を友人に話したところ、「世界の今が分かるということですね」と言われて、私は少し驚いた。私としては、そのような大それた目的をもって執筆を始めた訳ではなかった。しかし、本書を通じて、読者の皆さんに、現在の世界情勢を理解するための情報や視点を提供できるとすれば、それは筆者として、何よりの喜びだ。

 師である副島隆彦(そえじまたかひこ)先生には、力強い推薦文をいただきました。徳間書店学芸編集部の力石幸一氏には、本書の企画から出版までお世話になりました。記して御礼申し上げます。

2023年12月

古村治彦

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ジョー・バイデン政権1期目(任期4年)も後半に入った。アメリカ政治は2024年11月の大統領選挙(と連邦議会選挙:連邦下院は全議席、連邦上院は一部議席、更には州知事選挙)に向けて動き出す。民主党は現職大統領を抱える側であり、共和党は挑戦者の立場だ。

ジョー・バイデンが2期目を目指して選挙に出馬するかどうかがまず現在の関心事だ。バイデンは現在80歳(1942年生まれ)、2024年の大統領選挙投開票日あたりには82歳になっている。現在でも現職としては史上最高齢であり、2年後に当選すればこれまで史上最高齢となる。人間の寿命は確実に伸びている。先進諸国は多少の違いはあるものの高齢化社会(日本は高齢社会)である。80歳で現役は良いじゃないか、という主張もあるだろうが、判断力や健康の面で不安があるというのが正直なところだ。民主党の中から挑戦者が出る様子は今のところない。バイデンが病気やスキャンダルで2期目に出られないとなれば、カマラ・ハリス副大統領が候補者として出ることになるだろう。

 興味深いには、民主党が大統領選挙の民主党予備選挙(民主党の大統領選挙本選挙候補者決める選挙)で、各州で実施される予備選挙や党員集会の日程を変更して、アフリカ系アメリカ人有権者が選挙の結果を左右する州が早めに予備選挙や党員集会を実施できるようにしようとしていることだ。これは民主党エスタブリッシュメント派が、進歩主義派を抑え込もうとする動きである。

アフリカ系アメリカ人有権者は民主党エスタブリッシュメント派の支持基盤である。バイデンが2020年の大統領選挙民主党予備選挙で、勝利を決定づけたのはアフリカ系アメリカ人有権者の多いアメリカ南部サウスカロライナ州の予備選挙だった。早めに民主党エスタブリッシュメント派の候補者が勝利を印象付けられるようにするための日程変更である。2016年の民主党予備選挙ではバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)がヒラリー・クリントンに対して東部などで善戦し、戦いが長引き、批判合戦が激しくなり、結果としてヒラリーにマイナスに働いた。日程変更はそのようなことが起きないようにしようという動きだ。

 共和党側では、エスタブリッシュメント派はトランプを排除したい、トランプ支持勢力の力を削ぎたいということになる。そのために、トランプ支持の有力者である、共和党全国委員長ロナ・マクダニエルの再任を阻止しようという動きに出ている。また、保守派の大口献金者であるコーク・インダストリーズの総帥チャールズ・コークの意を受けたフリーダム議連が、トランプの協力者であるケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)の連邦下院議長選出をことごとく妨害し続けたことは記憶に新しい。トランプが共和党の大統領選挙候補者になるかならないか、ここはアメリカ政治においての大きな焦点ということになるだろう。共和党エスタブリッシュメント派はアメリカ主流派マスコミと組んで、フロリダ州知事ロン・デサンティスの待望論を醸成してくことだろう。

 2022年の中間選挙では事前の予想に反して、民主党がそこまで負けなかった。2024年に向けて、共和党としては挑戦者として民主党に戦いを挑む形になる。今年に行われる州規模の選挙(州議会議員や州知事の選挙)は注目を集めることになる。ここで共和党が勝利を収めることになれば、2024年の大統領選挙の序盤の流れがそれによって形成されることになる。これからアメリカは少しずつではあるが、激しい政治の季節に入っていく。

(貼り付けはじめ)

2024年の政治状況を形作るであろう今年の政治的イヴェント5選(Five political events this year that will shape 2024

マックス・グリーンウッド筆

2023年1月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3812434-five-political-events-this-year-that-will-shape-2024/

大統領選挙での予備選挙や党員集会が始まるまでに1年以上ある。今後数カ月は、2024年にほぼ間違いなく重要な意味を持つ、アメリカ政治における重要な出来事が次々と起きることになる。

共和党と民主党の両党は、今後数週間のうちに政党のために大きな決定を下す予定で、今年11月にはいくつかの州で選挙が行われ、来年の状況がどのように見えるかについて政治ウォッチャーたちに早い段階でのプレヴューを提示する。

この論稿では、2024年について何らかのヒントを与えてくれる、今年起きる5つの政治的な出来事を紹介する。

(1)バイデンの再選表明(Biden’s reelection announcement)(日付は未定)

この2年間、民主党にとって最大の問題の1つは、ジョー・バイデン大統領がホワイトハウスの2期目を目指すかどうかということだった。そして、バイデン大統領がその意思を持っていることが明らかになりつつある。

バイデン大統領は今後数週間のうちに大統領選挙再出馬の計画を明らかにすると予想され、2月の一般教書演説の前後に発表することが有力視されている。

もしバイデン大統領が最終的に再選の選挙戦を進めるのであれば、ホワイトハウスへの野心を持つ他の民主党の政治家の動きが封じられる可能性がある。その結果、民主党は、2024年の大統領選挙で、激しい戦いとなりうる予備選挙シーズンを免れ、バイデンは、2期目の大統領就任に向けた説得にのみ集中することができるようになるかもしれない。

バイデンは、それでもなお、いくつかの疑問を抱えて再選キャンペーンに臨むことになる。80歳という年齢は、既に大統領執務室の主としては史上最高齢者である。2024年11月に2期目を勝ち取れば、大統領2期目の宣誓をする頃には82歳になっている。

もちろん、ドナルド・トランプ前大統領が再びホワイトハウスに挑戦するために選挙への立候補を表明しているが、彼はバイデンに比べてそれほど若いという訳ではない。バイデンの存在が、現職大統領と明確な対比を描ける可能性がある若い候補者選出に共和党を誘導する可能性があるかどうかが、1つの疑問点として残っている。

(2)共和党冬季ミーティング(The GOP’s winter meeting)(1月25-27日)

共和党全国委員会(Republican National CommitteeRNC)は2023年1月末、カリフォルニア州ダナポイントで開催される会合において、次期全国委員長を選ぶことになっている。そして、現在のリーダーであるロナ・マクダニエルは、共和党の組織上の最高ポストをもう1期務めようとしているが、彼女と協力者たちが期待したほどには、彼女の再選は安泰とは言えない。

6年近く全国委員長を務めてきたマクダニエルは、2016年の大統領選挙でトランプがサプライズでの勝利を収めた後、全国委員長に抜擢された。

しかし、2022年の中間選挙で共和党が連邦上院の主導権を取り戻すチャンスを逸し、連邦下院では僅差の過半数にとどまったことから、マクダニエルに対しては共和党内部からのプレッシャーが強まっている。

月曜日には、アラバマ州共和党の運営委員会はマクダニエルに対する不信任声明を発表し、共和党全国委員会委員長としてマクダニエルがもう1期務めることを支持しないと表明した。

また、マクダニエルは共和党内でトランプ前大統領の最も熱心な擁護者の1人という評価を得ているが、彼女は他の2人のトランプ支持者、共和党全国委員会のハルミート・ディロンと枕製造で大成功を収めたマイク・リンデルからの挑戦を受けることになった。ディロンは、「2020年の大統領選挙では自分に対して不正に行われた」というトランプの虚言の最も大きな後ろ盾を務める1人になってしまった。

このコンテストで全国委員長に選ばれる人物は、2024年の大統領選挙を通じて協和党全国委員会を率いる任務を負うことになる。しかし、トランプ前大統領の忠実な支持者の存在は、前大統領を党の現在の課題の少なくとも部分的な責任とみなす共和党内の人々にとって、事態を複雑にする可能性がある。

(3)民主党冬季ミーティング(The Democrats’ winter meeting)(2月初頭)

民主党の幹部たちは、民主党の伝統的な大統領予備選の日程を大幅に変更する計画を進めており、人種的に多様な各州が指名プロセスにおいてより大きな発言力を持つことを望んでいる。

この計画は、来月初旬にフィラデルフィアで開催される民主党全国委員会(Democratic National CommitteeDNC)の冬季ミーティングで主要な投票が行われる予定だ。

この新提案では、2024年2月3日の予備選は、数十年にわたって大統領予備選の集会を開催してきたアイオワ州に代わって、サウスカロライナ州が先頭に立つことになる。その次は、2月6日にニューハンプシャー州とネヴァダ州、2月13日にジョージア州、2月27日にミシガン州という順番になる。

もし、民主党全国委員会がこの新提案を採用すれば、従来の投票日程だけでなく、大統領候補の選挙戦への取り組み方も根本的に変わることになる。

もちろん、まだ障害は残っている。早期予備選の提案に該当する5州のうち、ジョージア州とニューハンプシャー州の2州は、早期に予備選を実施するための委員会の要件を満たそうと、民主党全国委員会に延長を要請している。

更に言えば、共和党は既に、アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州、ネヴァダ州の伝統的な順番を維持した予備選カレンダーを採用している。このことも、民主党が日程を組み替えることを難しくしている。

(4)保守政治行動会議(Conservative Political Action ConferenceCPAC)(3月1-4日)

毎年恒例の保守政治行動会議(CPAC)は、過去2年間、フロリダ州とテキサス州で開催されたが、今年3月にワシントンDCに戻ることが決まっている。

フロリダ在住のトランプが再び大統領選に出馬し、フロリダ州のロン・デサンティス知事(共和党)が2024年の選挙戦を考慮する中、保守派の活動家と共和党関係者の有名な集会が中立地帯に戻ることになる。

過去数年間、CPACはトランプと共和党の彼のグループの決起集会のようなものであった。しかし、今年のCPACをめぐる大きな疑問は、これまでとは異なるトーンで開催されるかどうかということだ。

一つには、トランプがもはや共和党の大統領候補として有望視されていないことがある。最近の世論調査では、仮に予備選で対決した場合、デサンティスが前大統領を引き離すという結果が出ている。更には、共和党は2022年の中間選挙の影響と、トランプが共和党を次の選挙サイクルで党を率いるのに最適な人物であるかどうかを決めかねている状況だ。

(5)2023年選挙投開票日(Election Day 2023)(11月7日)

ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミシシッピ州の3州が今年州レヴェルの選挙を予定している。しかし、最大の関心はヴァージニア州に集まりつつある。ヴァージニア州の有権者は今年11月に州議会でどちらの党が過半数を握るかを決定することになる。

ヴァージニア州では近年、左派が確実に支持を拡大し続けていた。しかし、2021年にグレン・ヤングキン知事(共和党)がテリー・マコーリフ前知事を破り、共和党が州下院において僅差で過半数を占めると、状況が一変した。

今年は、共和党が州下院の過半数を維持するだけでなく、民主党が僅差で握っている州上院の過半数を獲得しようと試みるだろう。これらの州議会選挙がどのように展開されるかは、2024年に向けての政治環境を占う上で、何らかのヒントになる可能性がある。

同時に、ケンタッキー州のアンディ・ベシア知事(民主党)が知事2期目を目指しており、既に共和党側の対抗馬と競い合っている。

ベシアは2019年、現職だったマット・ベヴィン知事(共和党)を僅差で破り、知事職に就任した。しかし、当時の政治情勢は民主党に有利なものであったが、今年はより厳し選挙戦が待っていると予想されている。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 アメリカは民主党と共和党の二大政党制(two-party system)ということは広く知られている。しかし、連邦議会のほぼ全議席を占めているのが民主、共和両党であるので二大政党とも言えるのだが、この2つの政党以外にも数多くの政党が存在する。しかし、選挙制度が二大政党に有利になっていることもあって、第三党の勢力はなかなか拡大しない。リバータリアン党や緑の党といった政党は大統領選挙で数%の得票率を記録するがそれ以上のことはない。

 そうした中で、アメリカ国内では第三党待望論、第三党があっても良いのではないか、今の二大政党では自分たちの考えを正しく反映できていないという考えが出てきているようだ。それは下の記事の中で紹介されている。最新の世論調査の結果では二大政党制でうまくいっていると答えたのは4分の1程度だったということだ。
 2020年のアメリカ大統領選挙、2021年のニューヨーク市長選挙で民主党予備選挙(本選挙で民主党の候補者となるための選挙)に出馬したアンドリュー・ヤンは昨年、所属していた民主党を離党し、前進党(フォワード党、Forward Party)を結成した。極端な主張に与するのではなく、穏健な主張を行うということのようだ。今年に入り、民主党や共和党で連邦議員や知事を務めた経験を持つ出身者たちが作った諸団体と前進党が合同した。第三党を求める人々の声に応えるという動きでもあるようだ。

 アンドリュー・ヤンの掲げる政策は中道的であるが、注目を集めるのは「ベイシック・インカム」である。ベイシック・インカムとは簡単に言うと、国民全員に毎月一律の金額を配布するというものだ。

 前回もご紹介したが、直線的な政治スペクトラムでの右と左の二項対立という構図は変化しつつある。民主、共和両党はそれぞれアレクサンドリア・オカシオ・コルテスらの左派、トランプを支持する右派が力を持ち、それぞれ左と右に引っ張っている状況だ。これは既成の民主、共和両党内部のエスタブリッシュメント派やエリートたちに対する反発の動きでもある。ヤンたちの行動は既成の民主、共和両党から飛び出した外での行動ということになる。

 二大政党制がすぐに崩れるということはないだろうが、二大政党制に対する不信感や無力感がアメリカ国民の間で広がっているのは確かなようだ。それはアメリカ政治全体に対する不満ということを基にしている。このまま続けば、アメリカ政治は変容を余儀なくされることだろう。

(貼り付けはじめ)

ヤン率いる前進党(フォワード党)と元共和党幹部たちが率いるグループと合併(Yang’s Forward party merges with groups led by former GOP officials

サラ・ポラス筆

2022年7月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/3577267-yangs-forward-party-merges-with-groups-led-by-former-gop-officials/

ニューヨーク市長選挙と大統領選挙の民主党予備選挙に出馬した経験を持つアンドリュー・ヤンが、元共和党、民主党、無党派の人々と共同して「前進党(フォワード党、Forward Party)」として政党を結成した。水曜日にヤン自身が発表した。

前進党は昨年10月に結成されたが、現在は3つのグループが合併し構成されている。ヤン自身が結党した前進党、トランプ政権下でホワイトハウス職員を務めたマイルズ・テイラーが率いる元共和党員たちが結成した「リニュー・アメリカ・ムーヴメント(Renew America Movement)」、民主党出身者、無党派、共和党出身者が結成し、元連邦下院議員のデイヴィッド・ジョリー(フロリダ州選出、共和党)が代表を務める「サーヴ・アメリカ・ムーヴメント(Serve America Movement)」である。

ヤンは本誌への声明の中で、「積極的な統一された第三党運動(third party movement)を構築することは困難な事業である。しかし、何百万人ものアメリカ人が待ち望んでいたことでもあるのだ。だからこそ、私たちは成功を収めることになるだろう」と述べた。

前進党のリーダーたちは、政治における極端な考えや主張を排除し、共通点を追求すると述べ、アメリカ国内最大の第三政党になると主張している。

前進党のウェブサイトに掲げられているスローガンは「左派でもなく、右でもない。右でもない。前進だ」となっている。

2021年10月に民主党を離党する際、ヤンは離党発表声明の中で同様の思いを語っている。

声明の中でヤンは「この国には、政治を再編成し、国を引き裂く二極化を逆転させるための新しいタイプの政党が必要だと考えた」と書いている。

ヤン、ジョリー、クリスティン・トッド・ホイットマン元ニュージャージー州知事(共和党)は、ワシントンポスト紙に寄稿した水曜日の論説の中で、「前進党はアメリカ国民を団結させるだろう」と述べている。

彼らは「アメリカは新しい政党を本当に必要としている。穏健で常識的な多数派を反映する政党が必要なのだ」と書いている。

ヤンの声明によると、前進党は現在、既にいくつかの州で投票用紙に候補者の名前を記載している。

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Just 1 in 4 say two parties good enough to represent Americans’ political views: poll

世論調査:アメリカ国民の政治的見解を代表する政党は2つで十分と答えた人は4人に1人(Just 1 in 4 say two parties good enough to represent Americans’ political views: poll

USAトゥディ』紙とサフォーク大学の最新の共同全国世論調査によると、調査対象者の約26%が第三政党は必要だと考えており、約33%が3つ以上の複数の政党が必要だと回答していることが明らかになった。

シリン・アリ筆

2022年728

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/changing-america/respect/diversity-inclusion/3578382-just-1-in-4-say-two-parties-good-enough-to-represent-americans-political-views-poll/

要約:

USAトゥディ』紙とサフォーク大学による最新の世論調査によると、アメリカ人の約4分の1が、政党の選択肢に満足していないことがわかった。

・約26%は第三政党が必要だと考えていると答えた。

ニューヨーク市長選挙と大統領選挙の民主党予備選挙に出馬したアンドリュー・ヤンが「前進党(フォワード党)」という新しい政党の血統を発表した。彼の願いは叶うかもしれない。

アメリカ人は現在の政党の選択肢に満足していないようで、最新の全米規模の世論調査で登録済有権者の4分の1は第三極が必要だと考えていることが明らかになった。

USAトゥディ』紙とサフォーク大学の最新全国世論調査によると、調査対象者の約26%が第3の政党が必要だと考えており、約33%が3つ以上の複数の政党が必要だと回答していることが明らかになった。

現在の民主・共和両党による二大政党制で十分だと答えたのは約24%に過ぎない。

ジョー・バイデン大統領の経済的支持率が30%を記録し、4月時点より5ポイント低下した。また、ドナルド・トランプ前大統領を11ポイントも下回っている。そうした中でこのような結果が出た。

USAトゥディ』紙とサフォーク大学の世論調査は、全米の登録済有権者1000人を対象に行われ、回答者の約76%が、この国は間違った方向に進んでいると考えていることが明らかになった。

「連邦議会選挙が今日行われるとしたら」という質問には、約44%が民主党の候補者に投票すると答え、約40%が共和党の候補者を選ぶと答えた。

しかし、47%近くが「バイデンにほとんど歯向かう新しい連邦議会を見たい」と答え、約42%が「大統領に協力的な議会を見たい」と答えた。

ニューヨーク市長選挙と大統領選挙の民主党予備選挙に出馬したアンドリュー・ヤンが「前進党(フォワード党、Forward Party)」と呼ばれる新党を発表した直後に、この厳しい内容の新しい調査データが発表された。

これは、ヤン氏の前進党(フォワード党)、「リニュー・アメリカ・ムーヴメント」、「サーヴィス・アメリカ・ムーヴメント」という3つの別々の政党の合同を意味する。3つとも、民主党出身者、共和党出身者、無党派層で構成されている。

前進党(フォワード党)のウェブサイトによると、極端な政治を否定し、アメリカ政治に代表されない大多数の人々のための問題に取り組む意向であるとしている。

「前進党は、党派的な極端さを捨て、この国をより良くするための実際的な方法を見つけようとする全ての人のための政治的な拠点を作る。民主党か共和党か、あるいは無党派かどうか、ID(指示や立場)をチェックするようなことはしない」と、前進党のウェブサイトは述べている。

前進党は、今度の中間選挙の投票用紙に独自の候補者を立てないが、厳選された候補者への支持を提供する予定だ。この新政党は、今年末までに15の州で、2024年末までにアメリカのほぼ全ての州で法的承認を得ることを望んでいる。

データによると、新しい政党を導入するには良い時期かもしれないが、前進党がアメリカ国民に受け入れられるかどうかはまだ分からない。

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ヤンの新党は「前進党(フォーワード党)」と呼ばれる(Yang’s new party will be called ‘The Forward Party’

モニク・ビールズ筆

2021年923

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/technology/573653-yangs-new-party-will-be-called-the-forward-party/

大統領選挙に立候補したアンドリュー・ヤンの新しい第三党の名称は「前進党(フォワード党)」になる。ヤンが最新刊の中で明らかになった。

『ビジネス・インサイダー』誌は、この名前が明らかになったのは、ヤンの『前進:私たちの民主政治体制の未来に関する覚書(Forward: Notes on the Future of Our Democracy)』と題された本の最後の部分にその名前が明らかになったと報じた。

この著書には、ヤンの新しい政党の指針となる理念も詳しく書かれている。「優先順位付投票制と開かれた予備選挙(ranked-choice voting and open primaries)」、「事実に基づく統治(fact-based governance)」、「人間中心の資本主義(human-centered capitalism)」などが挙げられている。また、2020年の大統領予備選で彼が一定の支持を得たアイデアである「ユニバーサル・ベイシック・インカム(universal basic income)」を推進するとも書かれている。

ヤンはまた、アメリカの二大政党制(two-party system)の「複占(duopoly、訳者註:ある市場に2つしか企業が存在しない状態)」を批判しており、これはアメリカが最近耐えている「危機の連鎖(cascade of crisis)」に対応するために作られたものではないと主張している。『ビジネス・インサイダー』誌が報じた。

『ビジネス・インサイダー』誌によると、ヤンは著書の中で、「機能不全は私たちを殺すだろう(The dysfunction is going to kill us)」と述べている。「更に悪いことに、それが変わると考えられる理由はない。民主、共和の既成政党が勝つ戦争に私たちははめ込まれてしまうだろう。彼らは依然として、国内で最も裕福な地域の一つで権力を売買してうろつくだけであろうし、国民は敗北してしまうだろう」。

2020年の大統領選挙民主党予備選挙から撤退した後、ヤンはニューヨーク市長の座を狙っていたが、より実績のある候補者たちよりも長く選挙戦にとどまった。

彼の著書は10月5日に発売予定だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 日本でもアメリカでも政治に関する意見は多種多様だ。それぞれの立場を大きく分類すれば右と左、保守と革新、中道とか、穏健と過激といった言葉にまとめられる。日本で言えば自民党や維新は右、共産党や社民党は左ということになる。アメリカで言えば、共和党が右、民主党が左ということになる。右から左までの分類については以下の図が参考になる。こうした図は政治スペクトラム(political spectrum)と言う。
politicalspectrumstraight511

 右と左は激しく対立し合うということはこれまでの定番の考え方だ。しかし、ドナルド・トランプ大統領誕生以降、こうした単純な、直線的な政治スペクトラムでは分析ができないことが数多く起きている。まず、ドナルド・トランプ大統領誕生からして右と左という枠組みでは分析できない事件だった。

トランプ大統領を支持したのは白人の貧しい労働者たちであったが、彼らは民主党支持であるはずだった。しかし、民主党の強固な基盤であった、アメリカの工業地帯(元・工業地帯と述べた方が正確か)であるラストベルト(Rust Belt)でトランプ大統領は勝利した。トランプは民主党と共和党の主流派に喧嘩を売った。規制の政治や主流派エスタブリッシュメント派やエリートたちに対する一般の人々による怒りが政治を動かした。これをポピュリズム(Populism)と言う。

 民主党側でもポピュリズムの勃興によって生み出されたのが、民主党左派であり、その代表格がアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)だ。彼女もまたエスタブリッシュメント派やエリートたちに対する人々の不満を掬い上げ、連邦下院議員にまで駆け上がった。

 トランプはと言うべき共和党極右派と、社会主義者と揶揄される民主党極左派は同じような行動を取る。ウクライナ戦争勃発直後から戦闘の停止と停戦交渉、ロシアに対する制裁の反対、ロシアからの石油の禁輸反対を訴えている。連邦議会での投票行動でも同様の行動を取っている。こうした状況を説明するのが「蹄鉄理論(horseshoe theory)」だ。下の図を参考にして欲しい。

politicalspectrumhorseshoemodel511

 直線的ではなく、馬の蹄(ひづめ)につける蹄鉄のような形になっている。極左と極右が近づく形で直線ではなく、ぐにゃんと曲がっている。勅撰的なスペクトラムを針金に例えるならば、針金に力を加えてひしゃげた形になる。この加えられた力こそがポピュリズムである。ポピュリズム勃興時代の政治を理解するためには、この蹄鉄理論が有効ということになる。是非、掲載した図を見比べて考えてみて欲しい。

(貼り付けはじめ)

アメリカの極右と極左がウクライナ支援に反対する理由(Why America’s Far Right and Far Left Have Aligned Against Helping Ukraine

-ロシアのウクライナ戦争をめぐる言説は奇妙な仲間を生み出している。

ジャン・ダトキウィックス、ドミニク・ステキュラ筆

2022年7月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/07/04/us-politics-ukraine-russia-far-right-left-progressive-horseshoe-theory/

2022年2月24日にロシアがウクライナを無差別に攻撃して以来、アメリカ国内で生まれたこの戦争をめぐる言説は奇妙な政治的同志たちを作り出している。ジョー・バイデン米大統領を筆頭にアメリカ国民の大多数がウクライナに支持と支援を提供しているが、左右を問わず、ロシアのウラジミール・プーティン大統領政権を擁護したり、少なくともアメリカがウクライナ防衛に介入しないよう求めたりしている人が少なくない。

フォックス・ニューズの顔であり、アメリカのケーブルニュースで最も人気のある番組の司会者であるタッカー・カールソンは、数カ月にわたってクレムリン寄りの論調を拡散してきた(ロシア国営テレビで頻繁に再放送されている)。他の右派の人物も定期的に反ウクライナの偽情報を主張し、ウクライナへの重火器の提供に異議を唱えている。

一方、アメリカの左翼知識人の大御所であるノーム・チョムスキーは、ドナルド・トランプ前米大統領がウクライナの武装に反対していることを、冷静な地政学的政治家としてのモデルとして持ち出している。『ジャコバン』誌、『ニューレフト・レヴュー』誌、『デモクラシー・ナウ』などの左派は、ロシアの侵略についてNATOの膨張を理由とし、ウクライナへの軍事援助に反対するという党派的な路線に忠実だった。

ネット上では、左翼と右翼の多くのアカウントがウクライナの政治、政策、大統領を批判している。連邦議会では、最も熱烈な保守的トランプ支持者のうち7名の議員たちが、進歩主義派のイルハン・オマル連邦下院議員とコリ・ブッシュ連邦下院議員とともに、ロシアの化石燃料の輸入禁止に反対票を投じた。更に驚くべきことには、オマルとブッシュは、いわゆる「スクアッド」のメンバーであるアレクサンドリア・オカシオ・コルテス、ラシダ・トライブ両議員や共和党の極右派とともに、アメリカ政府がロシアのオリガルヒの資産を差し押さえることに反対したのである。

これらの動きは全て、政治スペクトルの両端が奇妙な同盟関係を結んでいることを浮き彫りにしている。問題は、その理由であり、「何故」なのか?ということになる。

極左と極右が奇妙に一致する、現代版「蹄鉄理論horseshoe theory」のような政治が展開されているようだ。歴史的には悪名高い理論だが、ロシア・ウクライナ戦争をめぐるアメリカの世論を見ると、この理論は驚くほどよく成り立っているように見える。しかし、これはイデオロギーの対称性とはあまり関係がなく、またロシアやウクライナとも関係がない。むしろ、「左翼」「右翼」、「保守主義」「進歩主義」といった単純な概念では、もはや政治の展開を理解するための有用な試行錯誤とはなり得ない、アメリカ政治の脆弱な現状と関係がある。

フランスの哲学者ジャン=ピエール・フェイは、政治的イデオロギーのスペクトルは、従来、社会主義や民主的集団主義からブルジョア・リベラルの中心を経て、全体主義やファシズムに至る直線的なものと考えられてきたが、より離れた政治的立場を結ぶ直線ではなく、むしろ馬蹄形に近く、両極はほとんど磁力を受けて曲がって互いに連動していると考えていたのである。

1930年代初頭のドイツ国内政治においてはファシスト政党と共産党の連携、そしてモロトフ・リッベントロップ協定に代表される国際政治におけるナチス・ソ連の連携が実現した。これらの観察に基づいて、フェイは、政治スペクトラムの従来の解釈が示唆する以上に、両極端に共通点があると信じていた。

政治面での蹄鉄という考えは、その知的厳密性の欠如と、中道派が反対派(主に、表向き反対している保守派と比較されうる左派)の信用を落とすために武器として用いることの両方から、長い間批判を浴びてきた。この理論を批判する人々は「極左と極右の間の政治的立場の収束のように見えるもの、たとえば、自由民主政治体制、グローバライゼイション、社会問題に対する市場ベースの解決策への批判は表面的なもので、はるかに深く乖離した思想や政策の好みを隠している」と指摘する傾向がある。むしろ、極左と極右を結びつけているのは、リベラルな中道に対する反発であり、だからこそ、リベラルな中道は馬蹄を極左と極右を攻撃する棍棒として使うことが多いのだと評論家は主張している。

しかし、この理論は再浮上し続ける。それは、極左と極右が思想と政策の両面で一致し続けるように見えるからである。

その理由の一つは、伝統的な一次元の左派・右派スペクトラムが、アメリカ政治における他の政治的分裂の軸、例えば、進歩主義や保守主義といった伝統的に知的な概念ではなく、「体制派・エスタブリッシュメント(the establishment)」に対する否定的態度や広義のポピュリズムに支配されている軸を説明できないことであろう。以前、私たちの一人が指摘したように、アメリカにおけるポピュリズムは、右派の「アメリカを再び偉大にする(Make America Great AgainMAGA)」と叫ぶトランプ支持者たちに限定されるものではない。むしろ政治的なスペクトラムに分布しており、政治的な左派(例えばバーニー・サンダース連邦上院議員の支持者たち)にも右派(トランプ支持者たち)にもポピュリストがいるのである。

フェイの比喩に従えば、馬蹄の両端を結合しているように見えるのは、保守主義や進歩主義といった高尚な概念ではなく、エリートたち、民主、共和両党のエスタブリッシュメント派、主流派報道機関という伝統的な体制を守る門番たちに対する反対である。ロシアのウクライナ侵攻に関して言えば、蹄鉄理論への支持だけでなく、それを超えるもの、つまり単純な左右のパラダイムではアメリカ政治を理解する上で特に役立たないという考え方もある。

ロシアが今年に入ってウクライナに侵攻して以来、民主、共和両党を支持するアメリカ人の大多数はアメリカ政府の立場を支持している。ウクライナへの軍事・人道支援を支持し、驚くべきことに、ウクライナ難民のアメリカへの受け入れにさえも、かなりの超党派の支持がある。しかし、ロシアにも声が大きい支持者たちがいる。

ヨーロッパ各国の極右政党の多くがクレムリンとイデオロギー的にも金銭的にも密接な関係にあり、プーティンの大量虐殺キャンペーンを支持していることはほとんど知られていない。しかし、共和党所属の連邦議員の一部を含むアメリカの右派のかなりの部分は、侵攻以来、公然とロシア側に立っている。

共和党は歴史的に反ソ連(1989年以前)・反ロシア(1989年以降)の立場を政治的に大きな効果を上げるために行使してきた。何しろ、「ゴルバチョフ氏よ、この壁を取り壊せ!(Mr. Gorbachev, tear down this wall!)」と主張した政党である。2012年、当時の共和党大統領候補ミット・ロムニーは、ロシアをアメリカにとっての地政学上の主要な敵であり、「世界の最悪の行為者のために常に立ち上がる」国であると呼んだ。2022年になると、ドナルド・トランプ前大統領、長男のドナルド・トランプ・ジュニア、マディソン・コーソーン連邦下院議員(まもなく元議員となる)、オハイオ州の連邦上院議員候補のJD・ヴァンス、ローラ・イングラハムなどのフォックス・ニューズのパーソナリティたち、キャンディス・オーエンスなどの保守派有力者たちが、党派を超えてウクライナとそれを支援するアメリカの努力を酷評するようになった。

このような右派から批判の中には、NATOの拡大がプーティンを追い詰め、侵略につながったという主張や、ウクライナへの軍事援助に使う金は国内問題に使った方がよいという主張が繰り返し登場する。たとえ、ミズーリ州選出のジョシュ・ホウリー連邦上院議員のように、アメリカ・メキシコ国境の軍事化の継続を継続すべき国内問題だと主張している人々もいる。

一方、アメリカ民主社会党(Democratic Socialists of AmericaDSA)のメンバーや彼らが支持する政治家たち、左翼の学者やエッセイスト、ネット上で「反帝国主義者(anti-imperialists)」を自称する人々を含む進歩主義的左派の多くは、最近の記憶に残る植民地侵略の明確な例の一つであるロシアに味方する(あるいは少なくとも被害者のウクライナに味方しない)傾向にある。彼らの主要な主張は右派のものと同様だ。戦争の引き金となったのはNATOの拡張とロシアの正当な安全保障上の懸念、そして国内問題の解決に使われるはずの資金の不正使用だが、彼らは戦争全面反対を表明し、時にはロシアを全面的に支持する。その全ては、しばしば「アメリカ帝国主義(U.S. Imperialism)」と解釈されるアメリカの海外介入(U.S. intervention abroad)への反対という言葉に含まれている。

極左には常に、侮蔑的に「タンキーズ(tankies、訳者註:欧米諸国において旧ソ連や現在の中国の政策や行動を称賛する人々)」と呼ばれる少数派の声が存在する。マルクス・レーニン主義者を自認する彼らは、ソ連や中国のような権威主義的な共産主義政府の抑圧的な行動を擁護することが多い。この侮蔑語はもともと、1956年にハンガリーで起きた反ソ連蜂起を弾圧するためにソ連がブダペストに戦車を送り込んだ際に、西側諸国の共産主義者たちが喝采したことに対して、仲間である左翼が投げかけた言葉が始まりである。今日、この言葉は主にネット界で使われ、抑圧的な政権の支持者たちを指し、不透明な資金で運営されるオルタナティブ・ニュースソースで働く、シリアのバシャール・アサド大統領のような独裁者を賞賛する少数派のジャーナリストたちが持つ意見に適用されている。

ウクライナに関して言えば、タンキーズの多くが親モスクワの立場を取り、クレムリンの話法をオウム返しにし、おそらく権威主義的資本主義・寡頭政治国家(authoritarian capitalist-oligarchic state)であるロシアとその前身である権威主義的共産主義国家(authoritarian communist state)であるソヴィエト連邦との区別をつけることに失敗している。こうした立場には、ウクライナの2014年のユーロ・マイダン抗議運動はアメリカが支援したクーデターであるという誤った主張も含まれ、これはアメリカ民主社会党に支持されたニューヨーク市議会議員のクリスティン・リチャードソン・ジョーダンなどの選出議員によって、オンラインのタンキーによる偽情報へのリンクという形で直接共有されてきた。しかし、同様の主張はQアノンを後押しする共和党のマジョ―リー・テイラー・グリーン連邦議員や、ノーム・チョムスキーやシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授など、一見真面目そうな一流の学者たちによってもなされてきた。

実際、ウクライナに関して馬蹄の両端を引き寄せているのは、単に紛争への反対やロシアへの応援ではなく、これらの立場に合った政治的スペクトルを超えた考えをすぐに受け入れていることだ。つまり、馬蹄理論の批判者たちが主張するのとは逆に、ウクライナに関しては、表面的な政治的類似性だけでなく、ご都合主義とはいえ、はるかに深いイデオロギーの一致が見られるのである。

ここで参考になるのが、ミアシャイマーの研究である。ミアシャイマーは国際関係論に大きな影響力を持つ学者で、世界情勢分析における「攻撃的リアリズム(offensive realism)」学派の主要な提唱者の一人として知られている。この学派は、各国家は、特に大国は無秩序な世界システムの中で自国の軍事力を最大化するために合理的に行動する、つまり自国の安全に対する脅威が認識されると暴力的に反応する可能性が高いと主張するものだ。

ミアシャイマーのウクライナに関する議論への最も大きな貢献は、2014年のユーロ・マイダンをアメリカの支援をクーデターと見なしたこと以外に、ロシアのウクライナ侵攻は、NATOが東ヨーロッパやバルト地域でのロシアの勢力圏を拡大し、ウクライナに接近したことが直接的原因であるとするものである。攻撃的リアリストの分析によれば、ロシアの攻撃は、このアメリカ主導の拡張を食い止めるものである。この説は、紛争の初日から広く異議を唱えられたにもかかわらず、ミアシャイマーの説明は広く伝わっている。

ミアシャイマーは『エコノミスト』誌のコラムや『ニューヨーカー』誌のインタヴューでその考えを披露している。ミアシャイマーの各論稿は、億万長者ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ財団(Open Society Foundation)とコーク財団(Koch Foundation)を資金源とするクインシー記念責任ある国家戦略研究所、コーク財団とランド・ポール連邦上院議員の支援を受けるディフェンス・プライオリティーズなどのシンクタンクに所属する識者たちによって言及されている。同様に、公然と社会主義を掲げる『マンスリー・レヴュー』誌、センスの良い雑誌である『カレント・アフェアーズ』誌、信頼すべき社会民主主義の雑誌『ネイション』などの左派出版社からアメリカのウクライナ政策を批評した人たちにその仕事が紹介されてきた。ミアシャイマーはまた、ロシア外務省にリツイートされている。

通常、ウクライナに関するミアシャイマーの考えは、攻撃的リアリズムに関する彼の広範な理論とは別に議論されることが多い。歴史的な例を挙げれば、1961年にキューバをアメリカの勢力圏内にあるソ連の中継基地として侵略しようとした時、アメリカの進歩主義的なエリートたちがソ連を支持したことは想像に難くない。しかし、この「歯も爪も真っ赤な(red in tooth and claw)」リアリズムは、まさに攻撃的リアリズムが意味するところである。

アメリカの外交政策と残忍な国際介入主義(international intervention)を激しく批判するチョムスキーと、その外交政策と残忍な国際介入主義の多くを構築したヘンリー・キッシンジャー元米国国務長官には、同様の引用の運命が訪れている。ウクライナ紛争の終結をめぐるこの2人の理論が重なると、馬蹄の両端が事実上キスすることになる。最近、この2人は欧米諸国とウクライナに対し、ロシアとの紛争をエスカレートさせず、「和平(peace)」を模索するよう呼びかけた。

そして、彼らは両方とも、しばしば並行して、ウクライナに関する彼らの主張を支持するために左派と右派の両方の批評家たちよって引用されてきた。最新の『ニューヨーク』誌の記事において、左派党派は一緒になって、アメリカには紛争に介入する権利などないが、プーティン大統領とウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領を交渉のテーブルに連れて行く力と権利の両方を持っていると主張している。

もちろん、多様な政治的傾向を持つ人々が同じ専門家の政治分析を参考にしてはならないという理由はないが、自分の受け入れやすい考えを共有しているというだけで学者や政治家を無闇に受け入れるのは、極左も極右も同様に、真の政治分析の欠如を示すものである。両者ともウクライナについては意見が一致しているので、自分たちの立場を確認する専門家(ほとんどがアングロサクソンの大物で、ウクライナの専門家はほとんどいない)を引き合いに出しているのである。

左派がキッシンジャーの主張を認め、共和党がチョムスキーに賛成するというのは、非常に興味深いことだ。しかし、チョムスキーとキッシンジャー(そしてミアシャイマー)が同意しているのなら、彼らが正しいに違いない、という議論になる。しかし、彼らはそうではない。プーティンは最近、自らをピョートル大帝(Peter the Great)になぞらえ、ロシアが以前の植民地に進出する権利を主張し、ウクライナ侵攻の決定に西側からの挑発が大きく関係しているというふりを止めた時、自らそう言ったのである。そして、馬蹄の両端にある最も強い主張、つまり、これはアメリカが主導する西側のせいだという主張が消えた。実は、ウクライナに関する馬蹄の説明は、結局のところ、ウクライナとはあまり関係がない、ということなのかもしれない。

極左と極右の政治的目標や動機はそれぞれ異なるが、両者を結びつけているのは、アメリカ政治との関係である。両者が認識している現状維持の欠点(faults of status quo)に反対し、体制とエスタブリッシュメント派に不信感を抱き、粗野な反米主義を主張している。

政治的右派では、グリーン、コーソーン、ポール・ゴーサー連邦下院議員、マット・ゲーツ連邦下院議員など、アメリカの対ウクライナ支援に反対する議員たちの行動は、民族的・人種的に多様な民主国家であり、2015年に最高裁が下した同性婚合法化判決「オベルゲフェル対ホッジス」が(少なくとも現時点では)実際的な法律(the law of the land)となっているアメリカへの深い嫌悪感によってもたらされているように思える。

極右の多くはその現実を軽視し、ロシアのLGBTQコミュニティの生活を極めて困難にするなど、プーティンの業績と見られるものと自分たちの政治目標がイデオロギー的に近いと認識している。プーティンの一般的な主張は、元トランプ顧問で現在MAGAのインフルエンサーであるスティーヴ・バノンによって賞賛されている。ロシアのプロパガンダ・マシーンは、アメリカの文化戦争(U.S. culture wars)の言語に著しく精通しており、プーティンとロシアはその文化戦争戦線において共和党のMAGAグループと同盟関係にあるという認識が広まっている。

もう一つは、アメリカ政治の二極化の中で、党派性が国益に優先してしまっており、バイデンに対して何らかの支援をすることは単純に容認できないという事実である。バイデンと民主党がある一つの立場を取れば(どんな立場でも)、それは単に間違っていて、悪意を持って反対されなければならないということになる。そのダイナミズムは、2018年のトランプ大統領の集会で、2人の男性が「民主党員であるよりもロシア人でいた方がまし(I’d rather be a Russian than a Democrat)」と書かれたTシャツを誇らしげに着ている有名な写真によって表現されている。残念ながら、私たちが強調してきたように、多くのMAGAを主張する政治家たちは口先だけでなく、その面で実際に行動しているのだ。

進歩主義的な左派の人々は、プーティンの政策に賛同しているというよりも、アメリカの外交政策に対する不信感を抱いている。こうした政治分野にいる多くのアメリカ人は、アメリカは様々な戦争(特にアフガニスタン、イラク、ヴェトナム)を通じて海外に多くの痛みを与えた悪い国際的な行為者であるという物語に非常に深く関与している。その結果、外国の紛争に対するアメリカの政策が何であれ、それは利己的であるか、あるいは帝国主義的であるに違いないという視点が、反射的にデフォルトになってしまっている。このため、多くの左翼は、NATOの拡張をアメリカの一方的な帝国主義であるとするクレムリン寄りの主張を繰り返し、更に奇妙なことに、ミアシャイマーのような人物、加えてキッシンジャーというアメリカ左翼の伝統的敵の名前を引用して、その主張を支持することになる。

もちろん、このような枠組みは、ポーランドなどの国がNATOに加盟するために行った長年のロビー活動や、これらの国々がこの政治方針を追求した理由を見逃しており、これらの国々が自らの未来を切り開くための主体性を暗黙のうちに奪ってしまっている。ソ連崩壊後のスラブ諸国を対象とした単なる文化的優越主義(cultural chauvinism)ではなく、冷戦の分析的な後遺症や明白な人種差別によって説明される可能性がある。同様の一連の議論がスウェーデンとフィンランドに対して展開されている。この両国はどちらもNATOに参加する予定となっている。

どちらかといえば、このアプローチは、進歩主義的な人々がそうでないと公言していることと全く同じであることを導く(あるいは、明らかにする)ものだ。それはアメリカ中心主義である。アメリカを事実上のグローバル・パワーとして扱うことで、たとえ自分たちが反対する大国であっても、アメリカはウクライナで停戦を実現し、その条件をロシアとウクライナの両方に指示すべき(できる)という大国主義を不用意に繰り返してしまう。これには、アメリカはウクライナの領土とそこに住む人々をロシアに譲り渡すよう説得すべきだという考えも含まれている。

ヤルタ会談の考え方を復活させた、しかし左派の、表向きは進歩主義者である者たちは、ウクライナ人の代理人であることを拒否し、アメリカの武力関与(U.S. armed involvement)に反対している。そして、アメリカにはウクライナの平和と引き換えにウクライナの土地を分割する力と権利があると信じている。この倒錯した左翼的反帝国主義(leftist anti-imperialism)の中心には、帝国主義的権力を行使する非帝国主義的衝動がある。しかし、表向きは平和の名においてのみ、現地の人々の意思に関係なく、帝国主義的力を行使するのだ。

アメリカの極右と極左が統一的な外交政策ヴィジョンを共有しているものではないが、ウクライナに対するヴィジョンとして素朴な反介入主義(anti-interventionism)を共有している。しかし、このような奇妙な組み合わせの存在は、馬蹄理論を裏付けるというよりも、政治スペクトラムを左右一体型の政治空間として単純化することに疑問を投げかけるべきかもしれない。

サンダースをはじめとする国際主義(internationalism)、社会正義(social justice)、再分配政策(redistributive policies)などを支持する左派の中には、アメリカの海外軍事展開に反対するなど、彼らの政治観と一致する理由からウクライナを支持する者も少なくない。また、自由市場を信奉し、一般に保守的な社会政治的立場をとる右派の人々も、世界政治における米国の強力な役割のヴィジョンなど、彼らの政治と一致する理由からウクライナの武装化を支持している。広義の中道派もまた、実際の政策では比較的コンセンサスが得られている。

それでは、馬蹄の端が互いに磁気的に引き付けられ、スペクトルの残りの部分から引き離される理由は何だろうか?

その磁力は、スペクトルの両側の政治的内容から来るものではない。政治学者のフィリップ・コンヴァースが1964年に示したように、そしてその後、他の学者も示したように、圧倒的多数のアメリカ人は一貫したイデオロギー的見解を持っていない。そして、そのような人たちは、多くの意味で「はみ出し者(outliers)」である。つまり、馬蹄の背後にある力は、政治の別の側面である。この側面がなければ、チョムスキーとキッシンジャーが、他の多くの点では決して両者に同意しない人々によって受け入れられる理由を、とりわけ理解することは不可能であろう。それはアメリカ政治のポピュリズム、反体制的な側面である。

ポピュリズムという言葉は空疎な記号(signifier)のようなもので、多くの人にとって侮蔑的な言葉になっている。ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領、ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相、ポーランドの政治家ヤロスワフ・カジンスキー、そしてトランプといった土着的な右翼指導者たちと結びついているが、サンダースの大統領選挙キャンペーンともまた結びついている。どちらかというと、アメリカ国内においては、ポピュリズムは歴史的に見て、ポピュリスト党(Populist party)の平等主義的な政治とその後の左翼的な進歩主義的な運動と結びついている。

しかし、ここでいうポピュリズムとは、簡単に言えば、ポピュリストが腐敗しているとみなす「エリートたち(the elites)」に対して、平均的な市民である「民衆(the people)」を対峙させる世界観のことである。このことは、保守的なポピュリストと進歩的なポピュリストとでは、異なる意味を持つ。

例えば、右派では、「アメリカ・ファースト(America First)」のナショナリズム、孤立主義(isolationism)、専門家たちやニューズメディアへの不信感として現れる。一方、左派の場合は、伝統的な政党のエスタブリッシュメント派、ビジネス関係者、主流派のコメンテーターたちに対する不信感という形で現れている。そのため、馬蹄の両側のポピュリストたちは一般に、従来の主流報道機関やそのエリート論客たちに不信感を抱き、より表向きは独立した、明らかにイデオロギー的に整合した情報源から情報を得ようとすることが多くなる。また、アメリカが海外に関与する場合、それは自国の政界や財界のエリートの利益のために行われるという信念に根ざした孤立主義が人々を内向きに押しやっている。

どちらの場合も、ウクライナ支援のような国民的コンセンサスが希薄な問題で、おそらく最も顕著に見られる逆張り主義(contrarianism)を助長している。この場合、左右のポピュリストの動機が対照的であることから、両者は同じ立場に達する。つまり、ウクライナ戦争を「両成敗(both-sides)」し、ウクライナ人の代理権を否定し、プーティンの手にかかるような立場に立つのである。そして、極右思想にも極左思想にも、ロシア支持やウクライナ人の苦境への反発につながるようなものは内在していないにもかかわらず、このようになるのである。

そこで、フェイが概念化した馬蹄理論は、完全には正しくないのかもしれない。政治的スペクトルの両端は、本質的に互いに曲がっている訳ではない、つまり、共産主義者とファシストが本質的に一致しているものではない。どちらかといえば、政治的スペクトルの両端は、意見において幅広い異質性を持つ傾向がある。むしろ、両端にあるポピュリストや反体制の衝動が、イデオロギーが違っても一致する信奉者の細部を切り離してしまうのだ。

もちろん、伝統的で一次元的な政治的スペクトル自体が、人々の政治的コミットメントの全体を理解するための試行錯誤を通じて欠陥があることは、特にアメリカのような国では助けにはならない。経済協力開発機構(Organization for Economic Cooperation and DevelopmentOECD)の基準は、ある人を左派としてマークし、民主的な選挙の結果を否定することは、その人をかなり主流の右翼と見なすことになる。

しかし、ある種のポピュリズムが右にも左にも蔓延し、それがオンラインやメディアにおける議論を形成し、民主党や共和党の所属政治家たちの政治メッセージや政策の優先順位をも形成していることは、政治状況だけでなく政治言説(political discourse)の性質が深く分裂していることを示す。これは単に両極化(polarization)という問題ではなく、政治的現実に対する理解の共有がますます不可能になっているという、より深い問題なのである。ウクライナはこの流れの主人公というよりは、来るべき事態の前兆に過ぎない。

※ジャン・ダトキウィックス:ハーヴァード大学法科大学院ブルックス・マコーミック・ジュニア動物関連法・政策プログラム政策研究員。ツイッターアカウント:@jan_dutkiewicz

※ドミニク・ステキュラ:コロラド州立大学政治学助教授。ツイッターアカウント:@decustecu
(貼り付け終わり)

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 古村治彦です。
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悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 2021年5月29日に最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)が発売になりました。5月29日に新宿にある紀伊國屋書店に行きましたところ、3階の政治・社会のアメリカ関係の棚に平積みして置いてありました。他の地域や書店では棚への配置が若干遅れてしまうことがあります。できましたら、6月1日以降に書店にお出かけいただき、手に取ってお読みいただください。
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 アマゾンでは昨晩、全体で600位台、アメリカのエリアスタディ部門で2位を記録しました。好調なスタートとなりました。電子書籍版も発売スタートとなりました。私の友人、知人数名から「電子書籍版で早速手に入れた」という連絡を貰い、電子書籍が結構普及しているものだと認識することができました。
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 アマゾンで「一時的に在庫切れ」という表示が出て慌てました。出版社やアマゾンは何をやっているんだと頭に来ましたが、すぐに「在庫あり」となりました。アマゾンは完全にコンピュータ管理になっていて、アマゾンの倉庫に在庫がなくなり、取次会社の倉庫に注文が入り届けられるまでに表示される定型のフレーズだとそうです。

 全国の書店やアマゾンで「一時的に在庫切れ」となって注文が舞い込む形になればと密かに願っています。是非、手に取ってお読みください。

(終わり)

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