古村治彦です。
2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
ウクライナ戦争は長期化し、イスラエルとハマスの紛争も半年を超えた。どちらも民間人の犠牲者が多く出ている。どちらも停戦が望ましい状況なのに、世界はまだ戦いを続けさせようとしている。アメリカ連邦議会は、ウクライナとイスラエルの支援を含むパッケージ法案を可決成立させ、ジョー・バイデン大統領も署名して、法律として発効することになった。同時期に、日本の岸田文雄首相が訪米し、米連邦議事堂での演説と言う、属国の指導者に対しては、最高の栄誉を与えられた。岸田首相の米連邦議事堂での演説は以下のように報じられた。
(貼り付けはじめ)
●「米議員らが首相演説を高評価 ウクライナ支援訴え大きな拍手浴びる」
毎日新聞 2024/4/12 10:40(最終更新 4/12 15:35)
https://mainichi.jp/articles/20240412/k00/00m/030/070000c
国賓待遇で訪米中の岸田文雄首相は11日、連邦議会の上下両院合同会議で演説した。英語による約34分間のスピーチで、拍手を浴びたのは48回以上。ロシアの侵攻を受けるウクライナの支援法案の審議が共和党の一部の反対で難航する中、米国の孤立主義に警鐘を鳴らし、米議員から「重要なメッセージを届けた」と高く評価された。
「日本はこれからもウクライナと共にある」。米国のウクライナ支援の重要性を訴えた後、首相が日本の姿勢を強調すると、大多数の議員が立ち上がり、この日一番の拍手を送った。
米議会では、民主党のバイデン政権が求めるウクライナ支援法案の審議が停滞している。上院は既に通過し、下院でも多数の議員が賛意を示している。しかし、法案を採決するかどうかを判断する共和党のジョンソン下院議長は、党内の保守強硬派の反発を懸念し、態度を決めかねている。採決すれば可決は確実とみられるが、ウクライナ支援の継続に懐疑的な保守強硬派が議長解任の動きを見せているからだ。
首相は11日の演説で、孤立主義的なトランプ前大統領や下院の保守強硬派を念頭に「一部の米国民の心の内で、世界における米国のあるべき役割に自己疑念を持たれていると感じる」と踏み込んだ。それまで拍手が相次いでいた議場では「自己疑念」という言葉が出た後に雰囲気がやや重くなったが、首相は「米国のリーダーシップは必要不可欠だ」「米国は独りではない。日本は米国と共にある」と鼓舞した。
取材に応じた議員らは演説を歓迎した。将来の大統領候補に名前が挙がるクロブシャー上院議員(民主党)は「首相がウクライナへの行動を求めると、実質的に(議員)全員が支持した。非常に重要なことだった」と強調。上院軍事委員会の筆頭委員であるウィッカー上院議員(共和党)も「インド太平洋地域にとっても、民主主義国のウクライナを支援するのは重要だとの訴えは非常に正当なものだ。下院がウクライナ支援に向け、前進することを願う」と述べた。
バロン下院議員(民主党)は「孤立主義に関する訴えは素晴らしいものだった」と評価。キャピト上院議員(共和党)も「米国の努力を評価した上で、米国が独りではないと伝えてくれた。ウクライナに関するメッセージも響いた」と語った。一方、米メディアによると、ウクライナ支援に反対し、議長解任の動きを見せている保守強硬派のグリーン下院議員(共和党)は、首相がウクライナに言及した際には拍手せず、手元の携帯電話を見ていたという。【ワシントン秋山信一】
(貼り付け終わり)
岸田文雄首相の訪米の後に、ウクライナ支援とイスラエル支援のパッケージ法案が可決した。昨年の11月から、ジョー・バイデン大統領がいくら求めても、連邦下院で過半数を握る共和党はウクライナ支援に反対してきた。世論調査を見ても、ウクライナ支援については、アメリカ国民の過半数が反対している、「もう十分にしてやったではないか」と考えているということはこのブログでも紹介したし、『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも書いている。岸田首相の訪米がきっかけになったかのように、急に、共和党と民主党の主流派、エスタブリッシュメント派が合同して、賛成多数で一気に成立してしまった。共和党の議員たちは有権者、世論を裏切ったことになる。下の記事にある通り、選挙区に帰って有権者たちから批判を浴びるだろう。そして、ジョンソン議長はこの法案可決と引き換えにして、議長の地位から追われることも考えられる。しかし、アメリカのエスタブリッシュメント派に対する功績は大であり、これから安泰であろう。しかし、アメリカ政府もお金が厳しい中で、すんなりと成立してしまったのはどうしてだろうか。ここで、私は次の3つの要素を挙げたいと思う。落語には、お客から3つの題をもらって、短時間で(時には数日間で)、落ちのある落語を作るということがある。これは三題噺(さんだいばなし)と呼ばれる。「芝浜」という冬になると高座にかかる、有名な噺があるが、これも元々は三題噺から生まれた。
さて、私が挙げたいのは「ウクライナ支援、岸田訪米、円安ドル高(円を売ってドルを買う)」という三題だ。そして、この噺で出てくる落ち(結論)は、「日本がアメリカのウクライナ支援分を肩代わりする、そのためにドルが必要になってドルを買っている」ということになると思う。そんな荒唐無稽な、と思うかもしれないし、日本政府がドルを買う資金源は何だ、と言われるだろう。日本の予算には、一般会計と特別会計がある。一般会計は私たちがよく耳にするもので、毎年3月末に国会で成立する、20204年度は約112兆円だ。特別会計はその3倍以上の460兆円規模である。こちらはあまり注目されない。特別会計から裏金をねん出する、もしくは外国為替関係で操作をする。そうやって、ウクライナ支援分である600億ドル(約9兆3000億円)を作り出すことになる。岸田首相訪米では、日米防衛協力ということで、自衛隊のアメリカ軍の下請け化、二軍化が話し合われたが、それは表向きのことで、裏では、この600億ドル分のことが「命令」されたと考えるべきだ。「アメリカと共にある、ウクライナと共にある、と言ったんだから、誠意を見せろ」と、チンピラまがいの恫喝で金を出させられたのだろうと思う。これが属国の役割だと言えばその通りだが、日本もいつまでもATMをやれるということはない。金を出すからには、こちらにも何か見返りになることをと言えるようになるべきだが、アメリカの衰退が目に見えるようになっている時期、そろそろその準備を始める頃だと考える。
(貼り付けはじめ)
連邦下院が対外援助法案を可決、ウクライナとイスラエルに援助を送る(House
passes foreign aid bill, sending help to Ukraine and Israel)
-この法案は来週連邦上院に提出され、ジョー・バイデン大統領も支持を表明している。
マリアナ・ソトマイヤー、メーガン・ヴァスケス筆
2024年4月20日
『ワシントン・ポスト』紙
https://www.washingtonpost.com/politics/2024/04/20/house-vote-ukraine-israel-aid-johnson-2/
連邦下院は土曜日、世界的な脅威の中で外国の同盟諸国を支援するため、950億ドル(約14兆7000億円)規模の大規模な支援策を可決した。マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)は、極右勢力が今回の可決によって彼を追放すると脅しているが、世界におけるアメリカの役割に対する幅広い支持を示した。
採決直後、ジョンソン議長がウクライナ支援を前進させた場合、議長の座から追い出すと公約していたマージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)は行動を起こさなかった。グリーン議員は記者団に対し、同僚議員たちが今週休会中に有権者からの反発に直面し、それから、ワシントンに戻ってから議長追放の取り組みに加わることを検討してほしいと語った。
連邦上院は来週初めに対外援助策を審議し、バイデン大統領が署名する予定になっている。
バイデンは土曜日の採決後の声明で、連邦下院が「歴史の呼びかけに応え、私が何カ月もかけて確保しようと闘ってきた、緊急に必要とされる国家安全保障法案を可決するために団結した」と評価した。
連邦議場では「ウクライナ!」の大合唱と青と黄色の旗が振られ、出席した民主党所属の連邦下院議員たちと少数派の共和党議員たちが、数カ月に及ぶ法制上の行き詰まりを打破し、ロシアとの戦争に巻き込まれたウクライナへの600億ドル(約9兆3000億円)の援助を承認した。採決は311対112となり、反対したのは共和党の保守派ばかりだった。
米国防総省が、ウクライナにとって最大の軍事的支援者であるアメリカからの援助がなければ、ウクライナは着々とロシア軍に更に多くの陣地を譲り、死傷者の数をさらに増やすという、驚異的な状況に直面するだろうと警告しているため、ウクライナへの資金はロシアとの戦争において、ウクライナにとって重要な岐路にある。また、ジョンソン議長にとっては、自身の職が脅かされているにもかかわらず、優先度の高い法案の可決に向けて、連邦下院共和党主流派と民主党の連合をリードし、大きな勝利を得た。
土曜日の民主党議員の会合中、ある議員は、民主党の支持によって政府への資金提供が可能になり、外国の脅威を監視するアメリカのスパイ機関の再認可が可能になったことを踏まえると、民主党が事実上過半数を支配していると誇らしげに叫んだ。
「連邦下院民主党はこの機会に立ち上がり、ジョー・バイデン大統領もこの機会に立ち上がり、マイク・ジョンソン議長率いる伝統的保守派もこの機会に立ち上がりました」と民主党のハキーム・ジェフリーズ連邦下院少数党(民主党)院内総務は高らかに宣言した。
ウクライナ支援の可決は、ドナルド・トランプ前大統領への大きな反撃でもある。トランプは長年ウクライナを批判する一方で、ロシアの指導者ウラジミール・プーティンに繰り返し同調し、既に占領した土地をロシアに保持させることで戦争を解決すると側近たちに語ってきた。トランプはウクライナの援助を融資に変えることを推し進め、共和党は土曜日の法案に融資の要件を盛り込むよう促した。
ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、「民主、共和両党、そしてマイク・ジョンソン連邦下院議長個人に対し、歴史を正しい方向に導いてくれた決定に“感謝する”」とXに記した。
ウクライナ問題で問題解決に向けて動いてきたジョンソン議長は、「法案への批判者たち(critics
of the legislation)」がいたにもかかわらず、超党派で外国の同盟諸国への資金提供を進める決定を下したことに開き直った。
ジョンソン議長は、「これは完璧な法律ではない。政府が分裂し、様々な意見が存在する時代には、完璧な法案が可決される保証される訳ではない」とジョンソン議長は語った。
ミッチ・マコーネル連邦上院少数党(共和党)院内総務(ケンタッキー州選出、共和党)は、法案可決を祝し、「連邦議会は、同盟とパートナーシップの強さ、公約の信頼性、そしてアメリカを守り侵略を抑止するための軍隊の能力を高めるために不可欠なこの投資がついに前進した」と述べた。
連邦下院はまた、イスラエルへの260億ドル(約4兆円)の資金拠出を圧倒的多数で可決した。その中には、90億ドル(約1兆3500億円)の人道支援が含まれ、その一部はガザ地区に割り当てられる。イスラエルが先週末、イランが発射したミサイルと無人機への報復としてイランを攻撃した数日後にこの法案は可決した。
共和党所属の連邦下院議員21名がこの法案に反対し、民主党議員37名に加わったが、その多くは、ガザ地区への人道支援が含まれていたにもかかわらず、同地域に支援を提供できる国連機関への資金を剥奪するという理由でこの法案に反対票を投じた。
10月7日のハマスによるイスラエルへの越境攻撃に国連機関のガザ地区職員1万2000人のうち12人が参加したことがアメリカ情報諜報機関とイスラエルによって判明したことを受け、アメリカは国連救済事業機関(U.N. Relief and Works Agency、UNRWA)への資金提供を停止した。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、今回の援助について、「非常にありがたい」と述べ、「イスラエルに対する超党派の強い支持を示し、西洋文明を守るものだ」とXに投稿した
連邦下院はまた、中国の脅威に直面するインド太平洋地域の同盟諸国への80億ドルの支援を、385対34で圧倒的な差で可決した。反対票を投じたのは共和党の極右議員ばかりだった。
連邦下院はまた、「TikTok」を禁止する可能性、ウクライナに売却するためのロシア資産の差し押さえ、融資という形で提供されるウクライナ支援に条件をつけることなど、超党派の優先事項が多く含まれる法案を可決した。
ジョンソン議長は次のように述べた。「連邦上院の白紙委任(blank check)とは異なり、連邦下院の法案には非常に重要な特徴がいくつもある。ウクライナ支援に対する説明責任が強化される。私たちは議員たちの声を反映した。私たちは彼らにチャンスを与えた。私たちは彼らに、より良いプロセスを提供し、最終的にはより良い政策を実現した」。
連邦下院共和党は、アメリカの資金は南部国境の管理など国内問題に費やしたほうが良いと主張し、ウクライナへの送金にますます慎重になっている。ジョンソン議長はまた、南部国境での移民を取り締まる厳しい法案を提出したが、共和党の強硬派議員3人が連邦下院規則委員会での手続き動議を拒否したため、法案は否決された。
ジョンソン議長は、グリーン議員の行動が自分を議長職から追い落とそうとする動議の検討を早めるきっかけとなる可能性があることを認識し、リスクを冒して支援策可決を進めた。しかし、ジョンソン議長は今週初め、民主政治体制を維持するためにアメリカが介入し、独裁政権と戦う同盟諸国を支援する歴史上重要な時期に直面していると指摘し、リスクや党派争いに関係なく前に進むことを決意した。
ジョンソン議長は、「私は議長解任動議の心配をしながらこの議事堂の中を歩き回っているのではない。私は自分の仕事をしなければならない。私は、連邦議会の意思を尊重し、正しいと信じることをしたまでのことだ」と述べた。
グリーンは今週、ジョンソンを解任する動議を提出し、トーマス・マシー議員(ケンタッキー州選出、共和党)の支持を得た。トーマス・マシー議員とポール・A・ゴーサー議員(アリゾナ州選出、共和党)の支持を得た。マイク・ギャラガー議員(ウィスコンシン州選出、共和党)が辞職し、共和党の多数派が1議席に減少した今、議長を追放するには十分な数だ。ただし、民主党がジョンソン議長の救援に乗り出さない限りは、である。ジョンソン議長はウクライナ支援のために行動したため、民主党はその可能性を真剣に検討している。
グリーン議員は、共和党の同僚たちに有権者の意見を聞き、来月ワシントンに戻ったらジョンソン議長を続投させるかどうかについて議員らに話し合ってもらいたいため、土曜日に動議を提出しないことに決めたと語った。
グリーンは、ウクライナへの資金提供を支援した共和党の同僚について「この国のアメリカ人は全員激怒すべきだと思う。誰がこんな人たちに投票するだろう?
どうすればこの人たちに投票できるだろうか? 彼らは私たちの国に奉仕していない」と語った。
マシー議員は、ジョンソン議長が「辞任を自発的に表明すれば、議長不在期間が長期化することは避けられる」と述べた。もしジョンソン議長が辞任しなければ、年内に議長が解任されるだろうと予想した。
マシー議員は次のように述べた。「彼はレームダックになった議長(lame-duck
speaker)だ。私たちは連邦議会が機能するようにしようとしている。ジョンソン議長に集められている募金がケビン・マッカーシー前議長時代の募金の半分以下であるのには理由がある。それは、レームダックになった議長などに誰も会いたがらないからだ」。マシー議員は続けて、「私たちのオフィスには、2025年1月3日に再選できる人物が必要だ。そしておそらくここにいる人々はそれを認めたくないかもしれないが、ジョンソンがそこに到達するつもりがないことは私にとって非常に明白だ」と述べた。
土曜日、11月まで連邦下院議長でいられると思うかと質問されたジョンソン議長は、「はい」とだけ答えた。
ジャクリーン・アレマニー、トビ・ラジがこの記事の作成に貢献した。
=====
連邦下院がウクライナとイスラエルへの数十億ドルの援助を数ヶ月の闘いの末に可決。次は連邦上院だ(The
House passes billions in aid for Ukraine and Israel after months of struggle.
Next is the Senate)
-連邦下院は、ウクライナ、イスラエル、その他のアメリカの同盟諸国に対する950億ドルの対外援助パッケージを、連邦議会での数ヶ月の混乱の後、承認した。
スティーヴン・グローヴス、リサ・マスカロ筆
2024年4月21日
『APニューズ』紙
https://apnews.com/article/ukraine-aid-israel-tiktok-congress-a8910452e623413bf1da1e491d1d94ba
ワシントン発(AP通信)。連邦下院は、ウクライナ、イスラエル、その他のアメリカの同盟諸国に対する950億ドル(約14兆7000億円)の対外援助を、週末の議会で承認した。週末にこのようなことが行われるのは珍しいことだ。これは、ロシアの侵略を撃退するためのアメリカの新たな支援をめぐって、数ヶ月にわたる強硬な右派の抵抗の後、民主党と共和党が結束したことで達成された。
土曜日、610億ドル(約9兆5000億円)にのぼるウクライナへの支援は圧倒的な賛成多数で、数分で可決された。戦争で引き裂かれた同盟国への新たな支援策をめぐって、アメリカの連邦議員たちが争う中、この支援は力強いものとなった。民主党所属の下院議員の多くが連邦議場で歓声を上げ、ウクライナの青と黄色の旗を振った。
イスラエルや他の同盟諸国への援助も、人気プラットフォーム「TikTok」を取り締まる措置と同様に、大差で承認された。法案全体は連邦上院に送られ、早ければ火曜日にも可決される可能性がある。ジョー・バイデン大統領は直ちに署名すると約束している。
マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)は、「私たちはここで務めを果たしたし、歴史はそれを高く評価するだろう」、自らの職を賭して法案成立に尽力し、疲れ切った様子で語った。
ホワイトハウスによれば、ジョー・バイデン大統領はジョンソン議長および民主党のハキーム・ジェフリーズ連邦下院少数党(民主党)院内総務と個別に会談し、法案を推進することで「わが国の安全保障を最優先してくれたこと(putting our national security first)」に感謝した。
バイデン大統領は、「私は、連邦上院がこのパッケージを速やかに私の机に送り、私が署名して法制化し、ウクライナの緊急の戦場でのニーズに応えるために武器と装備を速やかに送ることができるようにすることを強く求める」と述べた。
ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領は、連邦下院の民主、共和両党と「歴史を正しい軌道に乗せた決断に対して個人的にマイク・ジョンソン議長に感謝している」とX(旧ツイッター)で述べた。
ゼレンスキー大統領は「アメリカ、ありがとう」と述べた。
連邦議会でのこの場面は、多数派を握っているものの対外援助、特にウクライナに対する援助をめぐって大きく意見が分かれている共和党によって煽られた数カ月間の機能不全(dysfunction)と膠着状態(stalemate)を経て、印象的な行動を示した。ジョンソン議長は、2022年12月以来となるウクライナへの主要政策となる軍事資金(military funding)と人道資金(humanitarian funding)の承認を確実に得るために民主党に頼った。
その日の朝は、厳粛かつ真剣な議論と異常な目的意識で始まり、共和党と民主党の指導者たちが団結して迅速な承認を求め、アメリカが同盟諸国を支援し、世界舞台でリーダーであり続けることが確実になると述べた。連邦議会の訪問者ギャラリーは見物人で混雑していた。
連邦下院外交委員会委員長のマイケル・マッコール下院議員(テキサス州選出、共和党)は「世界の目が私たちに注がれており、我々が今ここで行うことは歴史が判断を下すだろう」と述べた。
連邦下院の法案通過により、ウクライナの軍事物資が不足し始めた2023年10月に初めて提出された、バイデン大統領のウクライナへの支援資金承認要請に対する最大のハードルが取り除かれた。
共和党が過半数を占める連邦下院は何をすべきかで数カ月にわたり苦悩し、まずウクライナ支援を米国・メキシコ国境の政策変更と結びつけるよう要求したが、まさにその方針に沿った超党派の連邦上院提案の法案を即座に拒否した。
ジョンソン議長にとって終盤戦に到達することは、ジョンソン議長の決意と共和党内での支持の両方を試す、厳しい試練となっている。現在、ジョンソン議長を公然と議長職から解任するよう求める声は少数ながらも増えている。しかし、連邦議会の各党の指導者たちは、この投票を歴史の転換点として位置付けて投票を行った。アメリカの同盟諸国がヨーロッパ大陸から中東、インド太平洋に至る戦争や脅威に悩まされている中での差し迫った犠牲をアメリカは払うことになる。
ニューヨーク州選出の連邦下院議員で、連邦下院外交委員会民主党側筆頭委員であるグレゴリー・ミークスは、「今日の私たちもそうであるが、歴史を生きていると、私たちが連邦下院本会議で行った投票の行動の重要性や、それが将来に及ぼす影響についてその時の段階では理解できないことがある。しかし、これは歴史的な瞬間だ。」と発言した。
反対派、特にジョンソン議長を含む多数派と対立している、共和党極右派は、アメリカは、国内の国境警備や国の債務増加に対処する国内の戦線に注力すべきだと主張し、海外で使用される兵器を製造するために、大部分がアメリカの軍需メーカーに流れ込むことになる、更なる資金の支出に警鐘を鳴らした。
それでも、連邦議会は、ゼレンスキー大統領から日本の岸田文雄首相まで、ここ数カ月の間に世界の指導者たちがワシントンを次々と訪れ、連邦議員たちに援助を承認するよう懇願しているのを目にした。世界的に見れば、この遅れは同盟国に対するアメリカの関与に疑問を投げかけるものだった。
バイデンの外交政策の最優先事項の1つ、ロシアのプーティン大統領のヨーロッパ進出を阻止することが問題になっていた。ジョンソン議長と秘密裏に会談した後、バイデン大統領はすぐにジョンソン議長の案を支持し、最終的な採決に必要な手続き上のハードルを乗り越えるために民主党が法案を支持する道を開いた。
ジェフリーズ院内総務は「民主党員や共和党員としてではなく、アメリカ人として、民主政治体制が危機に瀕しているところならどこでも守る責任がある」と、議場での討論の中で述べた。
ウクライナへの援助が共和党所属の議員たちの過半数を獲得できなかった一方で、数十人の進歩主義的な民主党所属議員たちは、数万の市民を殺害したガザ地区への攻撃の停止を要求し、イスラエルへの援助法案に反対票を投じた。約20人の共和党強硬派は、イスラエルや台湾のような伝統的に共和党の支持を得てきた同盟諸国への援助も含め、援助パッケージのあらゆる部分に反対票を投じた。
共和党所属議員の一部も、採決中に民主党議員たちがウクライナの国旗を振ったことに怒って反対した。フロリダ州選出の共和党所属のカット・カマック連邦下院議員は、X(旧ツイッター)で、民主党議員たちの行動に「激怒」しており、連邦下院議場での外国の国旗の掲示を禁止する法案の作成に取り組んでいると述べた。
同時に、共和党の大統領候補と目されるドナルド・トランプは、「アメリカ・ファースト(America
First)」を掲げて共和党をよりアイソレーショニズム的なスタンスに傾けるため、ソーシャルメディア上の発言や連邦議員たちとの直接電話を通じて遠くから意見を述べるなど、この戦いに大きな影を落としている。
ウクライナの防衛はかつて連邦議会で超党派の強固な支持を得ていたが、戦争が3年目に入ると、共和党議員の過半数が更なる援助に反対するようになった。トランプ前大統領の盟友であるマージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員は、資金をゼロにする修正案を提出したが、否決された。
超保守的な連邦下院共和党の議員連盟であるフリーダム・コーカスは、この法案を「アメリカ最後の」対外戦争対策案(the “America Last” foreign wars package)と嘲笑し、法案には国境警備措置が含まれていないとして、共和党指導部に反抗し、法案に反対するよう議員らに促した。
グリーンを筆頭とする3人の共和党所属の議員たちが、議長解任の投票につながる「解任動議(motion to vacate)」を支持したため、ジョンソン議長の連邦議長職の維持の可能性が小さくなっている。極右派に後押しされるように、グリーン議員の側には、アリゾナ州選出のポール・ゴーサー議員(アリゾナ州選出、共和党)を含む多くの議員に加わっている。ゴーサー下院議員、トーマス・マシー連邦下院議員(ケンタッキー州選出、共和党)など、ジョンソン議長に自発的に退くよう求める議員も増えている。
このパッケージには、民主党が支持した、あるいは少なくとも受け入れることを望んでいる共和党の優先事項がいくつか含まれている。その中には、ウクライナ再建のために、アメリカが凍結されたロシア中央銀行の資産を差し押さえることを可能にする提案や、イラン、ロシア、中国、鎮痛効果のある合成ドラッグであるフェンタニルを取引する犯罪組織に対する制裁、人気動画アプリ「TikTok」の中国に拠点を置くオーナーに対し、1年以内に株式を売却するか、アメリカでの取引を禁止することを求める法案などが含まれている。
それでも、これらの法案を議会で成立させようと全力を挙げているのは、アメリカ国内政治だけでなくウクライナの現実を反映している。国家安全保障に関連する各委員会の理事である議員たちは、機密扱いのブリーフィングを受けることができるが、ロシアが兵力と弾薬の不足に悩むウクライナ軍を打ちのめし、戦況が悪化することを深刻に懸念している。
ニューヨーク州選出のチャック・シューマー連邦上院多数党(民主党)院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)は、火曜日に連邦上院がこのパッケージの手続き投票を開始すると発表し、「世界中の同盟諸国がこの時を待っていた」と述べた。
共和党のミッチ・マコーネル連邦上院少数党(共和党)院内総務は、来週、右派の反対を押し切る準備をしながら、「目の前の課題は緊急だ。歴史を作るために再び連邦上院の出番となる」と述べた。
(貼り付け終わり)
(つづく)
ビッグテック5社を解体せよ