古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

タグ:アリ・ハメネイ

 古村治彦です。

 イラン戦争は停戦状態となって二週間以上が経過した。その間に和平交渉が行われたが、合意には至らなかった。現在は動きが見えない状況にある。アメリカのドナルド・トランプ大統領は暴言を発したり、引いてみたりと尻尾を掴ませないように、世界を煙に巻いている。和平交渉はいきなり代表同士が会って話すものではない。双方の事務当局、外務担当の職員たちが条件を話し合いながら、叩き台を作っていく。現在はその作業が進められているのだろうが、双方の最高幹部クラスの意向が全く嚙み合わなければ、叩き台作り作業も難航するだろう。

 アメリカとしてはイランの核兵器製造能力を完全に除去したいというところだ。イランは体制の継続保証が欲しいところだ。ここにイスラエルの意向も絡んでくるので、話が複雑になる。また、現状では、イランのほうが有利な立場を保持しているという感じになっている。総合格闘技の試合を見た人は多いだろうが、体格が大きくて強い選手が相手を打撃で倒して上から覆いかぶさったところで、倒された選手が下から関節技や首の絞め技(チョークスリーパーなど)でかえって相手からギヴアップを奪うということがあるが、現状はそれに近い。アメリカとイスラエルの大規模空爆で、イランは大きな被害を受けた(最高指導者アリ・ハメネイ師まで殺害された)が、世界にとって重要なチョークポイントであるホルムズ海峡を封鎖する(絞め上げる)ことで、世界経済とアメリカ経済に悪影響を与え、対抗している。アメリカは戦闘(battle)で勝っているが、戦争(war)には負けているという状態になっている。

このような状況で、イランは簡単に妥協しない。そして、アメリカに消耗を強いて、嫌気がさすまで長引かせることによって、かえってアメリカから妥協や良い条件を引き出すという目論見を持っている。これは、大国と小国の間や宗主国と植民地の間などの、非対称的な戦争において採用されてきた戦略である。事態を打開しようとして、更に強硬な作戦、核兵器の使用や地上軍の投入を行えば、泥沼(quagmire)にはまり、事態は悪化してしまう。そのこともヴェトナム戦争が示している。イラン戦争は開始されるべき戦争ではなかった。そのことはトランプ以外のトランプ政権とアメリカ政府の最高幹部クラスは分かっていたが止められなかった。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の懐柔策と操縦が見事にはまり、トランプ大統領はイラン攻撃を決定した。この経緯については、このブログでもすでにご紹介した。

 トランプは長所である、自分の言葉や過去の行動に縛られない、無反省と定見のなさで、ピート・へぐセス国防長官当たりに開戦の責任を押し付けて更迭し、和平合意にゴーを出すべきだ。そして、外交政策はJD・ヴァンス副大統領に任せるようになって欲しい。その代わり、アメリカと世界は、トランプをあやすために、最高の栄誉や賞賛を与えるということはやるべきかもしれない。ノーベル平和賞を与えるのもその一つの方策かもしれない。

(貼り付けはじめ)

今、イランが主導権を握っている(Iran Is Calling the Shots Now

―テヘランはヴェトナムにおけるホー・チ・ミンの戦略に従っている。

マイケル・ハーシュ筆

2026年4月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/23/iran-united-states-vietnam-trump-oil-war/

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テヘランで行われた式典で、故アリ・ハメネイ師(左上)と新最高指導者モジタバ・ハメネイ師の肖像画の下で敬礼しているイランの男子生徒(2026年4月1日)

イランはまだ「もう一つのヴェトナム(another Vietnam)」ではない。アメリカ軍地上部隊が耐え難いほどの犠牲者を出している訳でもなく、週ごとの死者数を報じる見出しもなく、アメリカ国内の街頭で大規模な反戦デモが起きている訳でもない。そしてもちろん、打ちのめされたリンドン・ベインズ・ジョンソンではなく、現アメリカ大統領ドナルド・J・トランプは、この戦争に参戦してまだ数カ月しか経っていないと誇らしげに語っている。ちなみにヴェトナム戦争については「即座に(very quickly)」勝利できたはずだと豪語している。

しかし、テヘランがドナルド・トランプ大統領にかけている圧力は、ヴェトナム戦争でジョンソン大統領を困惑させた圧力と非常によく似ているように感じられる。具体的に言えば、それは北ヴェトナムの象徴的指導者ホー・チ・ミンが執拗に追求した勝利戦略(the winning strategy)に酷似している。

戦争の早期終結に向けた協議を拒否し、トランプ大統領に停戦を無期限に延長するよう迫ることで(大統領は数日前までは延長しないと断言していた)、イラン指導部(それが誰であれ)はホー・チ・ミンの戦略を踏襲しているように見える。

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クアンチ省近郊のある地域で、ヴェトナム戦争でこの地域で戦死した兵士たちを追悼するアメリカ第一騎兵師団の兵士たちが礼拝を行う野外礼拝堂として利用されている

ホー・チ・ミンと、1960年代に彼の後継者となったレ・ズアンは、西側帝国主義国家であるフランス、そしてアメリカという二つの勢力を打ち破った。彼らは、テヘランが理解していると思われる事実、すなわち、どれほど強力な侵略者であっても、遠く離れた地からの侵略者は、自分たちよりもずっと早く戦争に飽きるということ(Aggressors from far away, no matter how powerful, will tire of war well before you do)を理解していた。ホーは1946年、フランスの植民地主義者たちにこう言い放った。「私たちがあなた方の兵士を一人殺すごとに、あなた方は私たちの兵士を一人殺すかもしれない。しかし、たとえそのような不利な状況でも、あなた方は負け、私たちは勝つだろう」。

そして、テヘランが今トランプ大統領を屈辱に陥れているように、ジョンソン大統領のますます切迫した交渉要請を繰り返し拒否したのも、ホーとレ・ズアンだった。 1967年にジョンソン大統領に宛てた書簡の中で、ホー・チ・ミンは「アメリカの爆撃およびその他のあらゆる戦争行為の無条件停止(the unconditional cessation of U.S. bombing raids and all other acts of war)」が実現するまで交渉に応じるつもりはないと明言し、「ヴェトナム国民は決して武力に屈服せず、爆撃の脅威の下での交渉も決して受け入れない(Vietnamese people will never submit to force, they will never accept talks under threat of bombs)」と付け加えた。

1960年代、ジョンソン大統領は軍事会議でハノイの頑固さを度々非難し、ローリングサンダー作戦から始まった空爆の強化と継続的な爆撃作戦がなぜ北ヴェトナム指導部を交渉のテーブルに着かせることができなかったのかと疑問を呈した。「彼らは決して諦めないだろう(I don’t believe they’re ever going to quit)」と、ある時、ロバート・マクナマラ国防長官に語った。

同様にイランでも、トランプ大統領が「深刻な分裂状態(seriously fractured)」と呼んだ指導部の兆候が見られるものの、モハマド・バゲル・ガリバフ国会議長は、テヘランは「脅迫の下での交渉は受け入れない(not accept negotiations under the shadow of threats)」と宣言した。今週、イランの交渉担当者はトランプ大統領とJD・ヴァンス副大統領をホワイトハウスで不安げに待たせたままだった。結局電話はかかってこなかった。さらに、イスラム革命防衛隊(IRGC)の指揮官たちよりも穏健派とされるガリバフは、テヘランは停戦を利用して「戦場で新たな切り札を見せる(to reveal new cards on the battlefield)」準備をしていると述べた。

トランプ大統領は4月21日、トゥルー・ソーシャル上で「イラン側からの提案が提出されるまで停戦を延長する(extend the Ceasefire until such time as their proposal is submitted)」と発表した。つまり、イランが主導権を握っているように見えるということだ(Iran now seems to be calling the shots)。

ハーヴァード大学ケネディ・スクールのグローバル・ヴェトナム戦争研究イニシアティヴの共同創設者兼ディレクターであるハイ・グエンは、「ヴェトナム戦争終結から50年、アメリカはイランとの戦争で再び同じ過ちを繰り返している」と述べた。

「ヴェトナム戦争時のヴェトナムと同様に、非対称戦争(an asymmetric war)において、イランはアメリカが想像もできないほどの優位性を持っている」とグエンは私に語った。彼は続けて次のように述べた。「イランは、アメリカが何千トンもの爆弾を投下することはできても、長期戦に耐えるだけの忍耐力がないことを理解している。ヴェトナムの革命家たちと同様に、イランは国家資源に関して多大な犠牲を払ってでも長期戦を戦う覚悟ができているようだ。言い換えれば、イランはアメリカにとってのアキレス腱を理解している(Iran, in other words, understands the Achilles’ heel of the U.S)」。

「これが降伏の姿だ」と元NATO米大使のイヴォ・ダールダーはブログ記事に書いた。「停戦を望んだのはトランプ大統領だった。さらなるエスカレーションをしてしまうと、イランが譲歩しないと悟り、戦争継続(長期化)による経済的・政治的な影響を恐れたからだ。もしトランプ大統領が停戦を無期限に延長するなら、イランはそれで構わない。現状では、あらゆる面で優位に立っているのはイランであり、トランプ大統領ではない。アメリカ大統領に残された唯一の切り札は、望まない戦争を再開することだけだ(The US president’s only card is restarting a war he doesn’t want)。一方、イランは残りの切り札を全て握っている(Meanwhile, Iran holds the rest of the cards)」。

指導部の大部分が壊滅したにもかかわらず、イラン・イスラム共和国はホルムズ海峡へのアクセスを掌握しており、そのコントロールをさらに強めているようだ。今週、複数の船舶を拿捕し、アメリカの海上封鎖をかいくぐって航行している。『フィナンシャル・タイムズ』紙は、貨物追跡会社ボルテクサの情報として、火曜日時点でイラン関連の石油タンカー約34隻が海上封鎖を通過したと報じている。

一方、米国防総省国防情報局長官ジェイムズ・H・アダムス海兵隊中将は、連邦議会証言の中で、イランが「数千発」のミサイルと無人攻撃機を保有していることを認めた。CBSは4月22日、4月8日の停戦開始時点で、イランの弾道ミサイルと発射システムの備蓄の約半分が依然として無傷であり、海峡の混乱に用いられるイスラム革命防衛隊(IRGC)海軍部隊の約60%も同様に無傷で残っていると報じた。

これらの数字は、停戦開始当日に「壮大な怒り作戦は戦場における歴史的かつ圧倒的な勝利だった」と宣言したピート・ヘグセス国防長官の発言と矛盾する。

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左:1964年4月26日、ワシントンで行われた記者会見で発言するロバート・マクナマラ米国防長官。背後には、様々な軍事施設を示すヴェトナムの地図が掲げられている。

右:3月2日、ピート・ヘグセス米国防長官が、ワシントンのペンタゴンで行われたイランにおけるアメリカ軍の軍事行動に関する記者会見で発言している。

実際のところ、現在、ヴェトナム戦争を最も彷彿とさせるのは、ヘグセス長官による日々の戦場での勝利宣言だろう。彼は、ヴェトナム戦争でアメリカが勝利していると国民を繰り返し欺いた「ベスト・アンド・ブライティスト(best and brightest)」マクナマラ元国防長官の漫画版のような存在だ。マクナマラは「死者数(body counts)」などの戦場における消耗戦の統計的証拠を引用することで悪名高かった。同様に、ペンタゴン職員から「愚かなマクナマラ(Dumb McNamara)」というあだ名をつけられているヘグセス長官も、破壊したミサイル、発射装置、艦船の数、そして殺害した指導者の数を挙げることで、イランにおけるワシントンの「決定的な軍事的勝利(decisive military victory)」を数値化することに熱心だ。

しかし、それはもはや1、2カ月前ほど重要ではなくなっている。1969年のヴェトナム和平に関するパリ会談について、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は次のように記している。「私たちは軍事戦争(a military war)を戦ったが、敵は政治戦争(a political one)を戦った。私たちは物理的な消耗戦(physical attrition)を狙い、敵は私たちの心理的な疲弊(psychological exhaustion)を狙った」。

ヴェトナムは、アメリカがヴェトナム国内で十分な消耗戦を成功させるずっと前に、ワシントンにおける敵の疲弊をすでに達成していた。その結果、会談開始時にハノイは妥協を許さない姿勢を取り、キッシンジャー自身も南ヴェトナム陥落前に「和平は間近だ(peace is at hand)」と誤った宣言をするに至った。

The Vietnamese achieved exhaustion of their enemy in Washington well before the Americans

現在、イランでも同様の力学が働いている可能性がある。おそらく主な違いは、イランがホルムズ海峡を封鎖することで、経済攻撃と政治戦争の両方でトランプ大統領を急速に疲弊させようとしている点だろう。特に中間選挙まであと6カ月という時期に、これはトランプ大統領と彼の党に深刻な打撃を与える可能性がある。

「テヘランはハノイと同じ計算をしている可能性が高い。つまり、アメリカの空爆による懲罰を耐え忍び、真剣な交渉を拒否すれば、長期化する決着のつかない戦争(protracted indecisive war)に対するアメリカ国民の支持は徐々に低下し、ワシントンは交渉でより多くの譲歩を迫られることになるだろう」と米海軍兵学校の歴史家ブライアン・ヴァンデマークは述べている。

ヴェトナム戦争は経済的にもジョンソン大統領に打撃を与えた。戦争支出はジョンソン大統領と彼が熱望した「偉大な社会(Great Society)」プログラムにとって財政危機を招き、最終的には高インフレと民主党の壊滅的な選挙敗北につながった。

しかし、イランが握っている支配力(the chokehold)は、かつてホー・チ・ミンが享受していたものよりもはるかに強固で、即座に効力を発揮し、世界中のエネルギー価格を高騰させている。国際通貨基金(IMF)によると、ホルムズ海峡の封鎖は既に史上最悪の石油供給途絶(oil supply disruption)であり、世界的な景気後退につながる可能性がある。

それでも、株式市場をはじめとする各種指数は堅調に推移しており、トランプ大統領は劣勢を示唆する様子を全く見せていない。まるで時間には余裕があるかのように振る舞っている。4月21日のCNBCのインタヴューで、トランプ大統領は第一次世界大戦以降のアメリカの過去の戦争への関与に関する疑わしい数字を羅列し、現在の紛争はまだ「5カ月」しか経っていないと主張した(実際には3カ月程度)。「ヴェトナム戦争はもっと早く勝てたはずだ。もし私が大統領だったら、イラク戦争も私たちが勝利したのと同じ期間で勝てたはずだ。なぜなら、私たちはここで実質的に勝利したのだから」と彼は述べた。

しかし、今のところ、勝利したと言えるものはほとんどないようだ。

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テヘランでイスラエルとアメリカの共同攻撃現場を清掃する作業員たち(4月7日)

大国が小国に侵攻しすぎると、911以降、ワシントン自身も痛感したように、大国が犯す戦略的な過ちはあまりにもよくある。実際、トランプ政権は、地上部隊の派遣を可能な限り避けることで、イラクとアフガニスタンの泥沼化を回避しようとしてきたことを明確にしている。

アフガニスタンでは、アメリカが20年にわたる断続的な平和維持活動の末に撤退する前、タリバンは「あなたたちは時計を持っているが、私たちには時間がある(You have the watches, but we have the time)」とよく言っていた。ヴェトナム、イラク、アフガニスタンに共通するのは、ヴェトコン、イラクのジハード主義者、タリバンといった民族主義的な抵抗勢力は、強力な外国の占領者でさえも、その存続期間を凌駕することが多いという点だ。

前述のグエンが述べたように、「戦後、マクナマラは、アメリカがヴェトナムで敗北した理由の一つは、ヴェトナムが長年にわたり侵略と戦ってきた歴史を理解していなかったことだと述べた」。

昨年6月、トランプ大統領がイランの核施設に対するアメリカ・イスラエル共同作戦に関与した後、こうした紛争に懐疑的なことで知られるヴァンス副大統領は演説で次のように述べた。「私が『トランプ・ドクトリン(Trump Doctrine)』と呼ぶものは至って単純だ。第一に、明確なアメリカの国益を表明する。この場合、それはイランが核兵器を保有してはならないということだ。第二に、その問題を積極的に外交的に解決しようと試みる。そして第三に、外交的に解決できない場合は、圧倒的な軍事力を用いて解決し、長期戦に発展する前にさっさと撤退する」。

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左:リンドン・B・ジョンソン米大統領はヴェトナム戦争に関する演説の準備のためホワイトハウス閣議室の机上の書類に目を通している

右:ドナルド・トランプ米大統領は3月16日、ワシントンDCのホワイトハウス大統領執務室で書類に署名する準備をしている

トランプ大統領は、この件に関して明確な目標について言及しておらず、もし最終的にイランを交渉のテーブルに着かせたとしても、アメリカはバラク・オバマ元大統領が2015年に締結した核合意と同様の妥協を受け入れざるを得なくなる可能性が高まっている。これには、イランが保有する核兵器開発寸前の濃縮核物質(Iran’s nearly-bomb-ready enriched nuclear material)をどう扱うかという問題も含まれる。トランプ大統領が破棄する前の合意では、イランは核物質の98%を国外に搬出することが義務付けられていた。現在、トランプ大統領はイランが核物質を引き渡すと主張し続けているが、テヘラン側はそのような譲歩(concession)は一切していないと述べている。

アトランティック・カウンシルのステラティジストC・アンソニー・プファフ退役米陸軍大佐は「強国の利益が限られている場合、弱い国が強い国に勝つケースはよくある。なぜなら、強い国の方が弱い国よりも先に撤退の限界点(its threshold to quit)に達するからだ」と述べた。

プファフは続けて「今回のやり取りもまさにそうだ。たとえ私たちがテヘランに対して、彼らの視点から見て妥当な要求を提示したとしても、彼らはさらなる譲歩を求めるだろう」と語った

※マイケル・ハーシュ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。『資本攻勢:ワシントンの賢人たちはどのようにしてアメリカの未来をウォール街に渡し、我々自身と戦争を行ったのか(How Washington’s Wise Men Turned America’s Future Over to Wall Street and At War With Ourselves)』と『何故アメリカはより良い世界を築くチャンスを無駄にしているのか(Why America Is Squandering Its Chance to Build a Better World)』の2冊の本の著者でもある。Xアカウント:@michaelphirsh

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 以下に紹介している、スティーヴン・M・ウォルトの論稿は昨年9月に発表された論稿であるが、現在の状況において非常に重要な内容を含んでいるのでご紹介したい。政治的な殺害、つまり暗殺は外交や国際関係にとって危険であり、同時に国内政治においても危険である。そのことをウォルトは論稿の中で説明している。

 今回のイスラエルとアメリカによるイランに対する大規模攻撃に当てはめてみよう。アメリカはイランと核開発に関して交渉を行っていた。オマーンが仲介役を務めていた。しかし、最終的には、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に説得(洗脳)されイランに対する大規模攻撃を行った(2025年だけでネタニヤフは6回訪米し、トランプと会談を持っている)。攻撃はイラン政府や軍の指導者を多数殺害した。その中にはイランの最高指導者であるアリ・ハメネイ師も含まれている。ハメネイ師が自宅にいることを特定し、攻撃を加えて殺害した。

 ここで重要なのは、交渉中の相手国の最高指導者を、「宣戦布告もなしに」、奇襲攻撃をして、殺害したことである。これは政治的な殺害、暗殺である。下記論稿の内容に沿って考えると、なぜ暗殺が良くないかと言うと、信頼を損ない、交渉や階段を持つことが出来なくなるからだ。実際に、イランはアメリカからの交渉を拒否している。アメリカと交渉しても、交渉中に攻撃を受けるかもしれない、もしくは、交渉で合意した内容を守らないかもしれないという疑念は当然出てくる。それほどの重大事をアメリカとイスラエルは起こしている。

そして、「邪魔な奴は殺してしまえばよい」ということが当然に行われるようになれば、それは国内でも同様のことが起きる可能性にもつながる。

 アメリカとイスラエルが国際法無視で暗殺者集団と同様のことを行っていれば、国際社会における信頼を失ってしまう。それは長期的に見て、アメリカとイスラエルの国益を損ない、アメリカ国民とイスラエル国民を苦しめることになる。

(貼り付けはじめ)

暗殺はどのようにして再び常態化したのか(How Assassinations Became Normal Again

-国内外における政治的な殺害(political killings)は、かつては頻繁に起こっていたが、その後ほぼなくなり、そして再び頻繁に起こるようになった。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年9月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/09/18/assassination-political-violence-charlie-kirk-normal/

インフルエンサーのチャーリー・カーク殺害事件と、イスラエルによるハマス幹部殺害未遂事件(カタール爆撃)には、どのような共通点があるのだろうか? もちろん、明白かつ重要な相違点もある。カーク事件は動機が明らかになっていない個人による単独犯行(isolated act)とみられる一方、後者は動機が明白な選出された政府による意図的な軍事行動である。しかし、2つの事件は、国家間および国家内部における現代政治の規範の広範な崩壊(the broader erosion of norms in contemporary politics)、特に暗殺を正当な政治戦術とみなす傾向(the tendency to see assassination as a legitimate political tactic)の兆候と捉えることもできる。

政治的な殺人(political killings)は、もちろん新しい現象ではない。しかし、ウォード・トーマスが2000年に『インターナショナル・セキュリティ』誌に掲載した画期的な論文で示したように、数世紀にわたり、ある国の指導者が他国の指導者を殺害しようとする行為に対しては、極めて効果的な規範が存在していた。国家による暗殺(assassinations)は、かつては一般的だったが、時が経つにつれ、この戦術は主要諸国の間で廃れ、暗殺を禁じる規範が徐々に形成されていったとトーマスは主張した。

この変化は、物質的・戦略的な利害と、変化する規範意識が複合的に作用した結果である。暗殺は、弱小国がより強力なライヴァル国に対して用いることのできる手段であったが、大国(great powers)は暴力的な政治行動(すなわち戦争)を、自国の優位な資源が有利に働く可能性が高い戦場に限定することを好んだ。さらに、各国の支配者たちは、たとえ他の相違点がどうであれ、何千人もの国民を血みどろの戦場に送り込んで死なせようとしながらも、互いに殺し合わないという共通の利益を有していた。

暗殺に反対する規範は、国家指導者は一般市民とは異なる道徳的原則に従うのであり、国家のために行った行為について個人的に責任を問われるべきではないという、現実政治の考え方も反映していた。一般市民が人を殺害すれば起訴され有罪判決を受ける可能性があるが、「国益(in the national interest)のため」に戦争を開始した君主や首相は、その決定の結果として何千人もの命が失われたとしても、何の罰も受けずに済むことがあった。失敗に終わった戦争を始めた指導者は権力の座から追放されることはあっても、公的な立場で行動していた限り、裁判にかけられたり処罰されたりすることはほとんどなかった。

この二重基準(double standard)が最も鮮明に表れたのは、第一次世界大戦後だ。廃位されたドイツ皇帝(deposed German kaiser)ヴィルヘルム2世は、オランダでの平穏な亡命生活を送り、余生を全うすることを許された。1世紀前、ナポレオン・ボナパルトも、幾度となくヨーロッパを戦争に巻き込んだにもかかわらず、直接的な処罰を免れた。もっとも、彼は最終的に南大西洋の孤独な流刑地で老い、生涯を閉じた。驚くべきことに、この暗殺禁止の規範は、凄惨な戦争の最中でさえも守られていた。連合国(the Allies)はアドルフ・ヒトラーを暗殺しようとはしなかった(一部のドイツ人は試みた)。また、日本の昭和天皇やイタリアの指導者ベニート・ムッソリーニを直接標的にすることもなかった。(アメリカは日本の山本五十六海軍大将を標的にし、その飛行機を撃墜して殺害したが、彼は軍司令官であり、文民の公職者ではなかった。)

トーマスによれば、第二次世界大戦後、新たな倫理的・物質的配慮が定着するにつれて、この規範は崩れ始めた。ニュルンベルクおよび東京の戦争犯罪裁判において、勝利した連合国は、公的行為と私的行為との従来の区別を否定し、日本およびドイツの元政府高官たちに対し、その公的(かつ疑いようのないほど凶悪な)行為について個人的責任を問うた。同様の動きが、『世界人権宣言(the Universal Declaration of Human Rights)』の採択や、戦争犯罪(war crimes)、ジェノサイド(genocides)、その他の人道に対する罪(crimes against humanity)の責任者を処罰するという、残念ながら一貫性に欠けるものの、世界的に高まりつつある取り組みの原動力となった。その後の国際刑事裁判所(the International Criminal Court)の創設や、こうした重大な犯罪の有罪とみなされた指導者を制裁しようとする関連の取り組みも、同じ広範な潮流の一部であった。

なぜこのような規範的視点の転換が重要だったのか? それは、個々の指導者が自らの決定に対して道義的責任を負うようになったことで、特に邪悪あるいは危険であると判断された者たちに対する直接的な措置を正当化することが容易になったからである。一人の指導者(そしておそらくは少数の側近)を標的とすることは、はるかに多くの人命が失われる戦争を始めるよりも望ましいとみなされる可能性もあった。暗殺は、政治的問題に対処する上でより費用対効果の高い方法のように見え始め、少なくとも軍事的に最も能力のある国々においては、軍事技術の発展によって精密攻撃(precision strikes)や標的殺害(targeted killings)が可能になるにつれて、その傾向はさらに強まった。

そのため、国家が支援するライヴァル指導者の暗殺は極めて稀なことではなく、時が経つにつれてより一般的になった。例えば、冷戦時代には、アメリカはフィデル・カストロ、パトリス・ルムンバ、ゴ・ディン・ディエム、ムアマル・アル・カダフィ、その他複数の外国指導者を直接殺害、殺害への協力、または殺害を試みた。ブッシュ政権は2003年のイラク侵攻開始時にサダム・フセインを意図的に標的とし、2020年にはトランプ政権がミサイル攻撃でイランの精鋭部隊であるコッズ部隊の司令官カセム・ソレイマニを殺害した。(ソレイマニは軍事指導者であると同時に高官でもあった。もし外国が統合参謀本部議長を意図的に標的にしたらアメリカ人がどう反応するか想像してみて欲しい。)イスラエルは長年にわたり、ハマスやヒズボラの指導者、そして複数のイラン人民間核科学者を含む多くの政治的敵対者たちを殺害してきた。北朝鮮は1968年と1983年の2度、韓国の大統領暗殺を企てた。ウクライナは、ロシアがウォロディミール・ゼレンスキー大統領の暗殺を繰り返し試みたと主張している。かつて存在した「各国政府は他国の要人を標的にしてはならない(governments should not target their foreign counterparts)」という規範は、もはや風前の灯火(on life support)となっている。

これは少なくとも3つの理由から非常に懸念すべき事態となっている。

第一に、強力な規範であっても、強大な国家が自らの意思で行動することを完全に阻止することはできないも。しかし、確立された規範に違反すれば、違反国は評判を損なうことになり、他国は違反した国との緊密な関係や協力関係を維持することを躊躇するようになる。規範が崩壊するにつれ、評判を損なう行為によって、抑止力(deterrent)は低下し、暗殺を極端な手段ではあるものの、正当な政治行動とみなす国が増えるだろう。世界中の政府はより恐れを抱き、互いを信用しなくなり、既存の紛争に対する相互に受け入れ可能な解決策を見出すことはより困難になる。結局のところ、自らを殺害しようと積極的に企んでいる相手と、誠実に交渉できるだろうか? 規範が崩壊すればするほど、世界の政治はより醜悪で、より争いの多いものになるだろう。

第二に、そして第一の点から派生する点として、暗殺を禁じる規範を放棄することは、単に会談が危険であるという理由が発生することになり、ライヴァル同士の会談を阻害することになる。その結果、進行中の紛争に対する外交的解決の道はさらに狭まるだろう。また、第三者が外交的解決取り組みを支援しようとする意欲も削ぐことになる。これこそが、イスラエルによるカタールへの攻撃がこれほど無謀であった理由である。それは、責任ある国際社会の一員としてのイスラエルの評判をさらに損なうだけでなく、一部の国々がイスラエルの外交活動を仲介する意欲を削ぐことになるからだ。どの国も時として敵と対話する必要があり、その過程を円滑に進めるには通常、中立的な第三者の仲介が不可欠である。このようにカタールの主権を侵害し、暗殺を禁じる規範に背くことは、国際外交がより一層必要とされているこの時期に、その歯車にさらなる砂を撒き散らすことになる。イスラエルが、ワシントンから目立った制裁を受けることなく、名目上ではあるがアメリカの同盟国を攻撃する姿勢を示したことは、この地域におけるアメリカの既に傷ついている評判にさらなる打撃を与えた。もっとも、その評判がこれ以上低下する余地があるとは到底思えないのではあるが。

最後に、対立する外国の要人を標的にして殺害することは全く問題ないという考え方は、一部の人々にとって、意見の合わない国内の政治家に対する暴力行為を正当化しやすくする。いずれの場合も、標的となりうる人物はまず悪の権化(the embodiment of evil)、国家に対する致命的な脅威(a mortal threat to the nation)として悪魔化される(demonized)。一度そのレッテルが貼られると、彼らに対処するための極端な手段は許容され、場合によっては必要不可欠とさえ思えるようになる。もしあなたがアメリカ人で、国内における暴力的な政治活動の増加(JD・ヴァンス副大統領や他の政権関係者が述べている嘘とは異なり、これは圧倒的に右派によるものであり、左派によるものではない)を懸念しているのなら、アメリカ合衆国、その最も緊密な同盟諸国の一部、そして他の主要諸国が、海外における暗殺に対する規範をいかに損なってきたかについても懸念すべきである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は現在二期目であるため、次の大統領選挙には立候補できない。2028年の大統領選挙の共和党候補者として最有力なのはJD・ヴァンス副大統領だ。現在のところ、各種世論調査で2位を争っているドナルド・トランプ・ジュニア、マルコ・ルビオ国務長官に大差をつけてリードしている。

2028presidentialelectionrepublicancanidates20260317001

 JD・ヴァンスと彼を支える周辺人物たちは大統領選挙に向けて準備をしている。私はそのことを以下の記事で書いた。ヴァンスと周辺人物たちについては、拙著『』(ビジネス社、2025年)で詳しく解説している。是非お読みいただきたい。

※「20260301日 JD・ヴァンス副大統領は2028年の大統領選挙に向けてまずは地元のオハイオ州を固めていく」

https://suinikki.blog.jp/archives/90347241.html

ヴァンス副大統領は今回のイランに使嗾された、イランへの大規模攻撃に反対していた。そのことは報道が出ているし、このブログでも紹介した。トランプ大統領の決心を覆すことが出来ないと判断すると「大規模にそして迅速に(go big and go fast)」攻撃を行うようにと主張するようになったという報道が複数出ている。「ヴァンスが戦争反対の立場を変えた」という文脈での報道であるが、これは誤りだ。ヴァンスの真意は「攻撃を止めることが出来ないなら、戦争を短期間で終わらせるために、大規模でかつ迅速に攻撃を行う」ということである。ヴァンス副大統領の念頭には第一次湾岸戦争があっただろう。あの時は、アメリカ軍は圧倒的な物量と最先端の兵器で、イラク軍を鎧袖一触、良い表現ではないが、瞬殺と言える短期間での完勝であった。しかし、イラン戦争は世界中が目撃しているように、イランを屈服させることに失敗し、それどころか、アメリカやイスラエルが苦境に立たされるほどになっている。

 今年2026年11月には連邦上下両院の選挙と一部の州で州知事選挙が実施される。現在のところ、トランプ大統領への支持率が上昇せず、それに伴い、共和党が劣勢の状態に置かれている。このままでは共和党の勢力は低下する。そうなると、共和党内部からトランプ大統領に対する批判も強まる。これまでは、トランプに従っていなければ自分の選挙が危ないということで面従腹背も含めて従っていたが、中間選挙で負けて、2028年の選挙にトランプは出ないとなれば、トランプの意向や支持を気にする必要もなくなる。トランプは「レイムダック化」して力を失うだろう。その際に重要になってくるのは、ヴァンス副大統領の存在である。ヴァンスとしては、トランプを支える姿勢を示しながら、同時に違いをきちんと印象付けるということもできなくてはいけない。非常に難しいかじ取りを行うことになる。

(貼り付けはじめ)

【分析】イランとの戦争から距離を置くバンス副大統領、その姿勢はますます顕著に

CNN日本版

2026.03.16 Mon posted at 14:49 JST

https://www.cnn.co.jp/usa/35245059.html

CNN) 昨年6月、トランプ米大統領がイランの核開発計画をたたく攻撃を命じたわずか数時間後、バンス副大統領は日曜のテレビ番組2本にはしご出演し、作戦の成功を称賛した。バンス氏の言葉は熱烈で、「incredible(信じられない)」あるいは「incredibly(信じられないほど)」という単語を1分足らずの間に4回も使うほどだった。

今年1月には、ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束するトランプ氏の作戦の数時間後にX(旧ツイッター)に現れ、作戦の合法性を強い調子で擁護した。

トランプ氏がイランとの戦争を開始して2週間が経つが、バンス氏は今回、こうした公の場での支持表明のような発言をまだ行っていない。

その姿勢は13日、記者から、開戦当初やその後、トランプ氏にどんな助言をしたかと聞かれた時も変わらなかった。

バンス氏は長々と答えたものの、戦争に対する個人的な見解を表明するのは避けた。

ノースカロライナ州で取材に応じたバンス氏は記者団に対し、「期待に添えないのは嫌だが、あの機密の部屋で正確に何と言ったかを大っぴらに話すようなことはしない」とコメント。ここで言う「機密の部屋」とはホワイトハウスのシチュエーションルーム(危機管理室)を指す。

さらに「一つには刑務所に行きたくないからだが、もう一つには、大統領は側近が米国メディアにべらべらしゃべるのを心配せず側近と話をできることが重要だと思うからだ」と続けた。(バンス氏が自らの見解を表明することがどうして犯罪になるのかは不明だ。バンス氏に投げかけられた質問は、トランプ氏への助言に関する一般的な内容で、機密扱いされる類いのものでは全くなかった)

奇妙な受け答えではあるが、バンス氏がいかにこの話題を避けているかをまざまざと示すものでもある。

実際、これまでのところ最もニュース価値が高いバンス氏のコメントは、この戦争が長期化しないと請け合った発言だった。

強い支持を打ち出さないバンス氏の姿勢は少し前から目立っていたが、それはさらに顕著になっている。

CNNの報道では、バンス氏は当初、中東での新たな戦争に反対する助言を行っていたものの、トランプ氏が軍事行動に傾いているのが明らかになると立場を変え、迅速かつ決定的な攻撃を提唱するようになった。バンス氏の当初の慎重姿勢は、非介入主義の利点を説いてきた過去の発言とも一致する。

バンス氏は上院議員だった2023年の寄稿で、トランプ氏が大統領として成功した大きな理由は、戦争に関与しなかったからだとつづった。24年には、特にイランとの戦争は米国の利益にならず、「リソースの多大な浪費」につながると指摘。20年にトランプ氏がイランの軍司令官の殺害を命じた際も、バンス氏は戦争への警鐘を鳴らしていた。さらに昨年の「シグナル・ゲート」で明らかになった非公開メッセージでは、イエメンの反政府武装組織フーシに対するトランプ氏の攻撃にも懐疑的だったことが示されている。

ただ、バンス氏はトランプ氏の副大統領という立場だ。ナンバー2を含め、周囲に卑屈なまでの忠誠を求めることが多いトランプ氏の下にあって、バンス氏が少なくとも一定の慎重姿勢を保っているのには驚かされる。

政権に批判的な人の目には、政治的打算が働いているように見えるだろう。つまり、バンス氏は28年の大統領選を見据えて保身を図っているとの見方だ。しかし、バンス氏の距離を置く姿勢は政治的なアキレス腱(けん)にもなり得る。

大半の世論調査で今回の戦争への支持が低迷するなか、ホワイトハウスはしばしば、MAGA(米国を再び偉大に)運動内での強固な支持を強調してきた。ところが、国内で2番目に強力なMAGA派の政治家であるバンス氏が、十分な政治的支持を打ち出すことすら渋っているのだ。

しかも、その姿勢をさして取り繕っているわけでもない。

1月の対ベネズエラ作戦後はすぐさまXで政権を擁護したバンス氏だが、ここ2週間はSNSで非常におとなしい。実際、戦争が始まってからの個人アカウントでの投稿はわずか8回にとどまる。(ただ、ここ数カ月のバンス氏が戦争開始前からSNSでの発信を減らしているように見えた点は指摘しておいて良いだろう)

バンス氏の個人アカウントや公式アカウントにはイランに関する投稿もあるが、大半は死亡した兵士について言及したり、トランプ氏の発言を共有したりする内容で、バンス氏自身の見解ではない。イランを巡るFOXニュースとのインタビューの内容も投稿している。

ただ、今月2日に行われたこのインタビューのテーマはイランだったが、バンス氏は戦争に関する見解の表明をおおむね避けた。

特徴的なのは、トランプ氏はどう考えているか、トランプ氏はどう言っているかをバンス氏が繰り返し強調したことだ。「大統領はこう見ていた」「大統領はこう判断した」「大統領はこう考えた」「大統領はこうしたかった」「大統領は極めて明確だ」「大統領はこう望んでいる」「大統領の目的は」「大統領は満足するだろう」――。

ある程度までは、それがバンス氏の仕事ではある。大統領の見解について話すのがバンス氏の役割なのだから。ただ、昨年6月のイラン核施設攻撃の後には、個人的な考えや感じ方をもっと語っていた。

FOXニュースへの出演で大きな注目を集めたのは、今回はイラクやアフガニスタンのような数十年単位のプロセスにはならないとバンス氏が請け合った点だ。

他の公の場でもイランに関する発言は少ない。9日に国際消防士協会で行った演説では、死亡した軍の要員に短く触れただけだった。ノースカロライナ州での13日の演説でも、話題を経済にほぼ絞った。

政権との間にずれがあるのではないかとの質問は、バンス氏本人以外にも向けられている。トランプ氏もヘグセス国防長官もこの問題について聞かれた際、バンス氏の立場は大統領とは異なっているとの見方に強く反論しなかった。

トランプ氏は9日、バンス氏と意見の相違があるのかと問われ、「そうは思わない。いや、我々はこの件で非常にうまくやっている」と答えた。

しかしその後、トランプ氏はやや含むところがある様子をほのめかし、「彼は哲学的に私と少し違うようだ。私ほど攻撃に熱心ではなかったように思うが、それでもかなり熱心だった」と振り返った。

ヘグセス氏は13日、バンス氏とトランプ氏の間に「亀裂」はあるかと聞かれ、正面からの答えを避けた。

「副大統領に関して言えば、素晴らしいメンバーであり、大統領や国務長官と並んでチームのリーダーでもある」。ヘグセス氏はそう述べ、このチームは大統領にさまざまな選択肢を与えていると言い添えた。「副大統領はその中で日々、重要な声を上げる存在だ。実際、その声は欠かすことができない」

どんな理由にせよ――哲学的な理由なのか政治的な理由なのか、それともその両方なのか――バンス氏は戦争に全面的には賛同していないとの見方を打ち消す材料を全く提供していない。そして政権側も、バンス氏が距離を保つことを容認している。

しかし戦争が長引くにつれ、いつまでその姿勢を維持できるかはまだ分からない。

本稿はCNNのアーロン・ブレイク記者による分析記事です。

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JD・ヴァンス副大統領はイラン戦争に関するドナルド・トランプ大統領への助言の詳細を明かすことを拒否した。それは「機密」だからだ(Vance declines to detail his advice to Trump on Iran war: It’s ‘classified’

ジュリア・マンチェスター筆

2026年3月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5783374-vance-trump-disagreement-iran/

JD・ヴァンス副大統領は金曜日、アメリカ軍のイラン攻撃に関してドナルド・トランプ大統領にどのような助言をしたのかを明かさず、記者団に対し「機密(classified)」だと述べた。

ヴァンスは、ノースカロライナ州ロッキーマウントで記者団に対して、「皆さんを失望させるのは本意ではないが、皆さんの前で、あの機密の部屋(classified room,)で私が何を言ったのかを具体的に話すためにここにいるのではないと語った。ここで言及されている機密の部屋とはホワイトハウスのシチュエーションルーム(the White House Situation Room)のことだ。

「一つには、刑務所に行きたくないからだ。そしてもう一つは、米大統領が側近たちと直接話し合えること、そして側近たちがアメリカのメディアにその内容をペラペラ話さないことが重要だと考えているからだ」とヴァンスは続けた。

ヴァンス副大統領の発言は、イラン問題を巡ってヴァンス副大統領とトランプ大統領の間に意見の相違があるとの報道がここ数日相次いでいる中でなされた。ヴァンス副大統領は過去に、アメリカの長期にわたる海外紛争への介入に反対の立場を表明している。

トランプ大統領は月曜日、ヴァンス副大統領は開戦当初は「おそらく私ほど熱心ではなかった」と述べたものの、自分と副大統領は「この件に関しては非常にうまくやっている」と語った。

トランプは続けて、「彼は、哲学的に言えば、私とは少し違っていた。おそらく私ほど熱心ではなかったと思うが、それでもかなり熱心だった」と述べた。

トランプは次のように語った。「しかし、私はこれはやらなければならないことだと感じていた。他に選択肢はなかった。もし私たちがやらなければ、彼らが私たちにそうさせただろう」と大統領は述べた。「スティーヴ・ウィトコフ、ジャレッド・クシュナー、マルコ(・ルビオ)、ピート(・ヘグセス)、そして関係者全員との話し合いから、彼らは私たちを後押ししようとしていると感じた」。

ピート・ヘグセス国防長官は金曜日、報道された大統領とヴァンス副大統領の間の意見の相違について問われた際、ヴァンス副大統領を擁護し、政権にとって「欠かせない声(ndispensable voice)」だと述べた。

「彼は大統領や国務長官と並んで、このティームの素晴らしいメンバーであり、リーダーでもある」とヘグセス長官は国防総省での記者会見で記者団に語った。

「このティームの素晴らしさ、連携の取り方、大統領への選択肢の提示の仕方については、いくら褒めても褒め足りない」と長官は続け、「そして副大統領は、毎日、そのティームにおいて重要な役割を果たしている」と述べた。

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ピート・ヘグセス国防長官はイラン問題でJD・ヴァンス副大統領がドナルド・トランプ大統領と意見対立しているとの報道に対しヴァンスを擁護した(Hegseth defends Vance over reports of division with Trump over Iran

ジュリア・マンチェスター筆

2026年3月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5782614-hegeseth-defends-vance-iran/

ピート・ヘグセス国防長官は、イランにおけるアメリカ軍作戦を巡り、JD・ヴァンス副大統領とドナルド・トランプ大統領の間で意見の相違があるとの報道について金曜日に質問された際、ヴァンス副大統領を政権内で「欠かせない声(indispensable voice)」と称賛し、ヴァンスを擁護した。

「ヴァンス副大統領は大統領や国務長官と並んで、このティームの素晴らしいメンバーであり、リーダーでもある」とヘグセス長官は国防総省での記者会見で述べた。

ヘグセスは「このティーム、その連携の取り方、大統領に選択肢を提供する能力については、いくら褒めても褒め足りない。そして、副大統領は、毎日、そのティームにおいて重要な役割を果たしている」と続けて述べた。

過去にアメリカの長期にわたる海外紛争への関与に反対してきたヴァンス副大統領が、イラン作戦の構想に懐疑的だったとの報道が出ている。

トランプ大統領は月曜日、ヴァンス副大統領は開戦当初は「やや消極的だったかもしれない(maybe less enthusiastic)」と述べたものの、自身と副大統領は「この件に関して非常に良好な関係を築いている」と語った。

トランプ大統領は続けて、「彼は、哲学的に言えば、私とは少し違っていたと言えるだろう。彼は私ほど熱心ではなかったかもしれないが、それでもかなり意欲的だった」と語った。

トランプ大統領はさらに次のように語った。「しかし、私にはそれがやらなければならないことだと感じた。選択肢はないと感じた。もし私たちがやらなければ、彼らが私たちに同じことをしただろう。スティーヴ・ウィトコフ、ジャレッド・クシュナー、マルコ(・ルビオ)、ピート(・ヘグセス)、そして関係者全員との話し合いを通じて、彼らは私たちを後押ししようとしているように感じた」。

先週のフォックスニューズのインタヴューで、ヴァンスはイランへの攻撃が長期紛争に発展するという見方を否定した。

ヴァンスはフォックスニューズのインタヴューで、「ドナルド・トランプ大統領が、明確な終結も明確な目的もないまま、この国を何年も続く紛争に巻き込むことを許すはずがない」と語った。

ヴァンス副大統領は次のように語っている。「トランプ大統領の何が他と違うのか、そして率直に言って過去の共和党員や民主党員と何が違うのか、それは明確な目的がない限り、国を戦争に巻き込まないという点だ。彼はその目的を、イランが核兵器を保有できないようにし、核能力を再構築しようとしないという長期的な約束をさせることだと定義している。これは非常に明確で、非常にシンプルだ。そして、これはイラクやアフガニスタンで経験したような問題に陥らないことを意味すると思う」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権下のアメリカに対処することが世界の課題になっている。ドナルド・トランプの自己顕示欲と名誉欲、そして、気まぐれに私たちは振り回されている。アメリカにとっての従順な従属国である日本は、アメリカの国益の為だけに行動している。アメリカ以上に「アメリカ・ファースト」である。高市早苗首相の訪米は手に抱えきれないほどの貢物(みつぎもの)を持ち、喜び勇んで朝貢を行う対米従属・朝貢外交である。私たちが歴史の授業で習った、中国の各王朝への朝貢は、貢物の価値の何十倍ものお土産をいただいて帰ってくるものであったが、現在の対米朝貢外交はお土産などない。

 世界各国で、対トランプにとっての重要なポイントは異なる。しかし、下記論稿を読むと分かるが、共通する点としては、トランプの不確実性に備えることとアメリカ(トランプ)の言いなりにならないことである。それは、自国や地域の利益を追求する途でもある。

 以下の論稿で重要なのは、イスラエルの部分である。この論稿は2025年12月29日に発表されたもので、この段階では、アメリカによるヴェネズエラ攻撃とニコラス・マドゥロ大統領拘束も、イスラエルとアメリカによるイランへの大規模攻撃も全く予想されていなかった(可能性としては議論されていたが)。イスラエルに関しては、トランプがイスラエルへの支援を削減する可能英について言及されている。それを避けるためには、イスラエルがアメリカに見返りを与えるべきだという主張がなされている。しかし、実際には、トランプ大統領はイスラエルと共にイラン攻撃を行うという決断を行った。これは、国際関係論や世界政治の専門家から見て「例外的な」「通常では考えられない」決断であったことを示している。そして、それはまた、トランプと言う人物が原理原則にとらわれない、素人の無手勝流の判断をする人物であることを示している。

 素人の無手勝流が成功を収めることもある。しかし、多くの場合にはやはり失敗に終わる。トランプを戦争に引きずり込んだことで、イスラエル、そして、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「勝利」したということになる。アメリカが中東地域から撤退する、イスラエルに対うる支援を削減するということを阻止して、イラン攻撃に巻き込んだ。そして、トランプはそれにまんまと乗ってしまったということはアメリカにとっての失敗となった。イラン戦争によって世界経済は大きく混乱し、アメリカとイスラエルに対する反感も大きくなっていく。そして、トランプの「騙されやすさ」という最大の欠点が曝露されたことで、日本以外の世界各国はそこを利用して国益の追求を行うだろう。

(貼り付けはじめ)

2026年の世界リーダーのためのトランプへの対処に関する6つの教訓(6 Trump Lessons for Global Leaders in 2026

-『フォーリン・ポリシー』誌コラムニストたちが世界は新しいワシントンにどう対処するかについて考察する。

ゾンユアン・ゾー・リュー、ラジャ・モハン、ジェイムズ・クラブトゥリー、エリザベス・ブラウ、アガテ・デマライス、スティーヴン・A・クック筆

2025年12月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/29/trump-lessons-2026-china-india-europe-middle-east/

年初の恒例として、コラムニストたちに水晶玉(crystal ball)を覗き込み、これからの1年がどうなるかを占ってもらう。

今年は、ドナルド・トランプ米大統領がホワイトハウスに復帰した1年間の教訓を、そして世界の指導者たちが今後これらの教訓をどのように活かしていくのかを、ライターたちに考察してもらった。トランプ政権は、最初の任期よりもはるかに大きな変革をもたらし、世界中に関税を課し、同盟関係を縮小し、敵対国との妥協を模索するなど、アメリカの外交政策を変革した。混乱を極め、予測不能な展開もしばしば見られたが、各国の指導者たちは、より不安定な時代において、ワシントンとの関係をいかに築くべきかを学んでいる。

2026年の世界政治を形作るであろう、トランプ政権2期目からの6つの教訓をご紹介する。-ステファン・タイル副編集長

●中国にとっての教訓:トランプをどう操るか(Lesson for China: How to Play Trump

ゾンユアン・ゾー・リュー(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、外交評議会研究員)

トランプ政権の関税最後通牒に世界の多くが反発する中、中国は抵抗を続け、2025年をほぼ無傷で乗り切った。そこから得られた教訓は単純だが、極めて重要だ。トランプは現在、一期目の任期中よりもはるかに奔放で、予測不可能であり、アメリカ経済を武器として用いることに積極的になっている。しかし、アメリカからの最も厳しい圧力でさえ、曲げられたり、鈍化されたり、時には覆されたりする可能性がある。

特に注目すべき教訓は3つある。一つ目の教訓は、トランプの過剰な脅威は滅多に効果を発揮しない(Trump’s maximalist threats rarely stick)というものだ。注目を集める関税、制裁、ハイテク製品の禁輸措置は、市場の圧力、ロビー活動、あるいは大統領が勝利と呼べる取引を何でも手に入れたいという欲求に屈することが多かった。二つ目の教訓は、中国は貿易の多様化を加速させ、アメリカの圧力を吸収し、弱みを示唆することを避ける余裕が生まれたというものだ。三つ目の教訓は、アメリカのサプライチェインの脆弱性と政治的に敏感な支持層に対する標的型報復は、広範な反撃よりもはるかに効果的であることが証明されたというものだ。

さらに明らかになったのは、中国がトランプ政権最初の貿易戦争で洗練され、アメリカの輸出管理体制を巧みに乗り越えてきた10年近くの経験に基づいて策定された戦略を実行に移したことだ。中国は自国の輸出管理体制を洗練させ、重要鉱物やその他の上流原材料の輸出を制限することで、アメリカに対して戦略を試した。象徴的なものではなく、実効的な手段で実行した。その結果は、中国政府当局が長らく疑念を抱いていたであろう事実を裏付けるものとなった。アメリカのサプライチェインは脆弱だ。価格高騰、メーカーからの苦情、ロビー活動による圧力は、その具体的な証拠となった。トランプ大統領がNVIDIA H200チップの中国への輸出許可を撤回したのは、善意によるものではなく、北京の調整された圧力が功を奏した証拠だ。

アメリカの最新の「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」はこの解釈を裏付けている。アナリストたちは、アメリカが地政学的な闘争を軽視し、中国を主に経済的・技術的な競争相手として位置付けていることを指摘した。この文書は緊張緩和(détente、デタント)を約束しているものではないが、戦場を明確に示している。それは経済と技術の影響力であり、まさに中国が実力を発揮している分野である。

この経験は、もう一つの教訓を確固たるものにした。トランプ政権は中間選挙が近づくにつれ、中核支持層の活性化を図る必要性から、制度的な基盤がさらに薄れ、取引中心になり、短期的な政治的勝利にばかり焦点を絞るようになる可能性がある。したがって、トランプは標的を絞った圧力にさらに影響を受けやすくなる可能性がある。彼は、中国に利益をもたらす貿易や規制上の譲歩―様々な関税の緩和、技術ライセンス規則の調整、特定の中国企業の米国市場参入の許可など―を進んで行うかもしれない。同時​​に、これらの決定を勝利―交渉の成功、貿易赤字の「勝利(win)」、あるいは中国が報復措置の一部から手を引く―として位置づけるかもしれない。トランプの譲歩(concessions)がアメリカの中核的な国家安全保障上の利益を直ちに損なうものではないとしても、中国が時間をかけてつけ込む可能性のある脆弱性(vulnerabilities)を蓄積させる可能性がある。

2026年に向けた中国の姿勢は明確だ。トランプがほとんど譲歩することなく勝利を収められるような、限定的で取引的な合意を追求するだろう。ヨーロッパ、東南アジア、ペルシア湾岸諸国との関係を深めることで、アメリカの影響力を弱め、国内の技術自立を加速させるだろう。不安定さは今や構造的なものとなり、トランプが4月に予定している訪中でさえ、失われた安定と信頼を回復することはできないだろう。中国が期待しているのは緊張緩和(デタント)ではなく、時間だけだ。アメリカの脆弱性を探り、自国の体制を強化し、ワシントンの圧力が徐々に弱まるようにするための時間だ。忍耐、緻密さ、そして調整された影響力(patience, precision, and calibrated leverage)こそが、北京の国家運営における決定的な武器(Beijing’s defining arsenal of statecraft)となっている。

●インドにとっての教訓:アメリカとの関係を改善する(Lesson for India: Repair U.S. Relations

C・ラジャ・モハン(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、OP・ジンダル・グローバル大学教授)

インドのナレンドラ・モディ首相ほどトランプのアメリカ大統領復帰を熱狂的に歓迎した政府はほとんどなく、そしてこれほど失望した政府もほとんどない。

モディ首相はトランプ大統領就任後、最初に会談した世界の首脳の一人であり、インドは商業がアメリカの外交政策の中心軸となったことを認識し、速やかに貿易交渉を開始した。

しかし、インドとアメリカの戦略的パートナーシップを強化するという期待は、2025年8月にトランプ大統領がインド製品への関税を50%に引き上げたことで打ち砕かれた。問題の一因は、モディがトランプの平和構築に関する壮大な妄想、特にインドとパキスタンの軍事衝突に関する見解を誤読した点にあった。もしモディが、南アジアを自滅から救うというトランプの役割についてもっと熱心に賛辞を述べていれば、ニューデリーとワシントンの関係は少し違った展開を見せていたかもしれない。

モディ首相の側近たちは、トランプをホワイトハウスに復帰させた連合勢力をある程度把握していた。しかし、MAGA運動の力と熱狂に不意を突かれ、予想外の勢いでインドとその在外インド系市民たちに牙を剥いた。それ以来、インド政府はそのアプローチを調整し、現在は3つの原則に基づいて行動している。トランプが繰り返しパキスタンとの戦争を終結させたと主張しているにもかかわらず(インド政府はこれを虚偽だと考えている)、公の場でトランプ氏と議論することを避けること、ガザ地区とウクライナにおけるトランプの和平努力を称賛すること、そして貿易、技術、防衛といった分野におけるアメリカの幅広いシステムの関与を維持することである。

2026年には、トランプの国内での地位が低下の兆しを見せているため、インド政府はワシントンにおいて活動ができる政治的余地が拡大すると見ている。インドの戦略は今、3つの軸を中心に展開している。

第一に、2025年のトランプ政権下で沈黙を強いられた、伝統的な親インド派の支持基盤、すなわち安全保障体制、アメリカ連邦議会、ビジネス団体、そして在外インド人ネットワークを動員することだ。これまで発言をためらっていた人たちも、今こそ米印両国関係の均衡回復に貢献してくれる可能性がある。インド政府はまた、MAGA連合の少なくとも一部との関係改善策を見つけなければならないことも認識している。

第二に、インドはトランプ大統領の干渉を招く可能性のあるパキスタンとの新たな危機を回避する決意を持っている。新たな軍事紛争が勃発すれば、インドは再びトランプ大統領の奔放な衝動の標的となる可能性がある。

第三に、そして最も重要なのは、インド政府が多様化戦略(diversification strategy)を加速させていることだ。関税ショックは、インドに輸出先の拡大、ヨーロッパとの貿易交渉の迅速化、そしてロシアをはじめとする新興市場との経済連携の拡大を促した。安全保障政策においては、インドはより慎重にリスク回避(ヘッジ)を行っており、アメリカとのパートナーシップを維持しながら中国との緊張を緩和し、ロシアとの関係を深め、ヨーロッパと戦略的に関わっている。

人間と同じように、国も痛みに慣れる。モディ首相はトランプの関税への対応を学ぶ中で、ワシントンの威圧的な圧力に毅然とした態度で臨むことが国内で効果を発揮し、海外でも尊敬を得られることを学んだ。インド国内の伝統的にアメリカに懐疑的な人々にとって、トランプの2期目は、アメリカに戦略的な依存を過度に求めるべきではないという戒めとなる。楽観主義者にとっては、2025年の混乱は、トランプがその年のオリンピックのような政治的高みから退く2026年には、より良い基盤へと変わるかもしれない。この楽観主義の根底にあるのは、インドとの戦略的パートナーシップにおける25年以上にわたる超党派によるアメリカの投資が、どんなに予測不可能なホワイトハウスでさえ、1、2年で破壊される可能性は低いというインドの賭けとなっている。

●同盟諸国にとっての教訓:ヤマアラシになれ(Lesson for Allies: Become Porcupines

ジェイムズ・クラブトゥリー(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ヨーロッパ外交評議会客員研究員)

アメリカの同盟諸国やパートナーがトランプ政権下のアメリカ外交政策の変革に適応する中、彼らが直面する厳しい戦略的計算を一言で表すなら「ヤマアラシ(porcupine)」である。ウクライナ、バルト三国、ポーランドから台湾、日本に至るまで、潜在的に脆弱な国々は過去1年間から同じ不快な結論を導き出しているトランプの新世界秩序における生存は、もはや旧来のアメリカの保証に依存せず、自らを攻撃するのがあまりにも痛みを伴う存在にするということにかかっている(survival in Trump’s new world order no longer depends on old-fashioned U.S. guarantees but on making yourself too painful to attack.)。

ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領は2025年12月、2014年のロシア初侵攻以来、ウクライナの戦略的目標の礎であったNATO加盟がもはや現実的な目標ではないことを公に認めた。代わりにウクライナとヨーロッパの指導者たちはより現実的な目標に焦点を当てている。それは、将来のロシアの侵略を抑止するのに十分な軍事能力を再構築するための十分な余裕をもたらす停戦を確保することだ。ヨーロッパ委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が最近述べたように、「ウクライナは潜在的な侵略者にとって消化できない鋼鉄のヤマアラシ(a steel porcupine, undigestible for potential invaders)にならねばならない」。

アメリカの新しい「国家安全保障戦略(National Security Strategy)」は、ワシントンがヨーロッパの安全保障に関与する姿勢も、せいぜい条件付きであることを示している。ウクライナに当てはまることは、ロシアの他の潜在的な標的にしても同様である。特にヨーロッパのNATO加盟諸国が、かつての大西洋横断西側陣営の指導者に頼れなくなった今、その傾向は顕著だ。ヨーロッパ全域でトランプ・ショックは、各国に既に進行中だった「一世代で最大規模の再軍備(their most significant rearmament in a generation)」を加速させる要因となった。ドイツやポーランドといった主要諸国は軍事予算を劇的に拡大させている。

台湾もほぼ同様の計算を受け入れてきた。ワシントンの台北に対する安全保障上の関与は長らく公式には曖昧だったが、その戦略的な曖昧さは今や大統領の気まぐれに取って代わられた(that strategic ambiguity has now been replaced by changing presidential whims)。トランプ大統領が中国との「合意(deal)」と呼べるものの確保と、それに伴う国賓訪問に注力する今後数カ月は、特にこの傾向が顕著になるだろう。

台湾の頼清徳総統は最近、野心的な国防強化を発表し、2026年には軍事費をGDPの3%、2020年代末には5%に引き上げるという。これは台湾の戦略的脆弱性に対する懸念を反映している。台北の投資には、移動式対艦ミサイル、機雷、分散型防空システムなどが含まれる。これらは、アメリカの支援が不確実になる中で、中国の侵攻を高コストにすることを目的とした、いわばヤマアラシ兵器の集積である。

ヨーロッパと同様に、インド太平洋地域における長年のアメリカの同盟諸国は、2025年のトランプ大統領の不安定なアプローチを研究し、自国がより鋭い防衛戦略を開発することの賢明さを見出した。日本は防衛改革を加速させる計画で、軍事費は当初の計画より1年早い2026年にはGDPの2%を超える見込みだ。

冷戦時代と冷戦後の時代において、ワシントンは同盟諸国がアメリカの拡大抑止の下で繁栄できる秩序を築き上げた。同盟国の多くは、アメリカの安全保障保証への依存を当然のことながら高く評価していた。トランプ大統領が、アメリカは大統領が関心を持つ場合にのみ約束を守ると明確に表明した今、これらの国々は、鋼鉄の棘(steel spines)のような強靭さこそが最善の防衛手段であると判断しつつある。

●各大企業のCEOたちにとっての教訓:投資について慎重に考慮せよ(Lesson for CEOs: Think Twice About Investing

エリザベス・ブラウ(『フォーリン・ポリシー』コラムニスト、大西洋評議会上級研究員)

2025年はトランプ政権による数々の驚きの出来事に見舞われ、その中にはビジネス界に影響を与えたものも複数あった。特に経営者たちを驚愕させた事件が1つある。2025年9月にアメリカ移民税関捜査局(U.S. Immigration and Customs EnforcementICE)がジョージア州で現代自動車とLGの従業員約500人を拘束した事件だ。

労働者の中には、韓国の二大製造業大手が所有する新工場の設立を支援するためジョージア州に派遣された韓国国民317人も含まれていたことを思い出して欲しい。複雑な近代工場の設立には専門技術が必要だが、現代とLGはジョージア州で即座にそのような専門知識を持つ人々を見つけることができなかった。さらに緊急性もあった。トランプ大統領が韓国からアメリカへの輸入品に25%の関税を課した直後であり、ソウルは自国企業がアメリカにどれだけ投資できるかを示すことでホワイトハウスを喜ばせようと躍起になっていた。H-Bヴィザや類似の就労ヴィザ取得に通常かかる長い待機期間がこの取り組みを頓挫させる恐れがあった。『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じたところでは、韓国人たちは短期ビジネス訪問者向けのB-1ヴィザと、短期ビジネス訪問も認めるESTAヴィザ免除プログラムを利用してアメリカに入国した。しかしこれはICE(移民関税捜査局)の方針に反するものだったので、彼らは拘束された。

このニューズは、アメリカへの投資を検討していた製造業の経営者たちに衝撃を与えた。中国が欧米に対してより敵対的になる中、多くの欧米メーカーはアメリカへの「フレンドショア(friendshore)」計画を立てており、トランプは関税措置など明確な手段でそれを促していた。結局のところ、産業をアメリカに呼び戻すことがトランプの経済政策の中核である。経営者たちを襲った「トランプ・ショック」とは、彼の意向に沿ってアメリカに製造拠点を設けることが自社ビジネスに逆効果となり得るという認識だった。そのリスクはICE(移民関税執行局)による労働者拘束を超えている。世界中から部品を調達するアメリカ製造企業—今日ではほぼ全ての主要メーカーが該当する—は今や複数の高額関税の直撃を受けている。

2026年、このトランプ・ショックが経営陣にアメリカ以外の立地を検討させるきっかけになっても驚くことはないだろう。ヴェトナムからケベックまで、中国からの生産分散を図る企業を歓迎する国や地域が相次いでおり、こうした管轄区域は取り組みを強化する可能性が高い。アメリカは依然として魅力的なビジネス拠点だが、企業が最も嫌うのは不確実性だ。製造業には多くの段階、複雑なサプライチェイン、長期的な視野で計画された投資が伴う。いずれかの部分が機能不全に陥ったり、混乱を経験したり、新たな政策によって突然混乱に陥ったりすれば、サプライチェイン全体が狂ってしまう。

2000年代初頭の中国ショックは、欧米諸国全体で賃金抑制と製造業雇用喪失を引き起こした。迫り来るトランプ・ショックは異なる様相を呈するだろう。経営者たちが「トランプ流のアメリカ」が想定とは全く異なるビジネス環境であるという現実を認識する契機となる。

●ヨーロッパにとっての教訓:冷静さを保ち物事を実行し続ける(Lesson for Europe: Keep Calm and Carry On

アガテ・デマライス(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ヨーロッパ外交評議会上級研究員)

昨春、ウォーレン・デービッドソン米連邦下院議員は、「トランプ錯乱症候群研究法案(the Trump Derangement Syndrome Research Act)」を提出した。これは、アメリカ国立衛生研究所に対し、なぜトランプとその政策が軽蔑されるのかを調査するよう命じる法案だった。一部の外国政策立案者も、同様の症候群に陥っている可能性がある。つまり、突発的な不安から途方もない政策を採用してしまうというものだ。その一例が、昨年日本がアメリカと締結した貿易協定である。この協定では、2029年1月までに5500億ドルの日本の納税者の税金をアメリカで支出することが約束されている。

これまでのところ、ヨーロッパの指導者たちは、この危険な症候群の最悪の症状を何とか回避してきた。反対の主張があるにもかかわらず、2025年7月に締結されたアメリカとヨーロッパ連合(EU)の貿易協定は、ヨーロッパの屈服とは程遠い内容だ。むしろ、EUはトランプへの対応について、既にいくつかの教訓を学んでいるようだ。まず、EUはトランプの関税への愛着を説得する時間を無駄にせず、関税率15%で合意した。第二に、EU首脳は、自国企業と消費者に損害を与えるだけの報復関税を課したいという衝動を賢明に抑えた。第三に、EUは結束を重視した。個々のヨーロッパ各国政府は、ワシントンに駆けつけて二国間協定を締結したいという衝動をうまく抑えることができた。二国間協定は、EUの集団交渉力を弱めることになるだろう。

2026年には、ヨーロッパ首脳にとって、トランプ政権への対応策を見直す十分な機会が与えられるだろう。大西洋をまたぐ最初の戦いはウクライナ問題だ。2025年11月、ヨーロッパとウクライナの頭ごなしに提案された、米露和平協定は、トランプが主にベルギー、そして比較的小規模ながらフランスをはじめとするEU加盟国に保有されているロシア中央銀行の凍結中の準備金3000億ドルを狙っていることを非常に明確にした。第二に、アメリカはおそらく、EU製鉄鋼への関税引き下げと引き換えに、透明性、コンテンツモデレーション、データプライバシーを含むデジタルルールの緩和をヨーロッパに迫るよう圧力を強めるだろう。第三に、フロリダ州マイアミ近郊にあるトランプが所有するゴルフリゾートで開催される今年のG20サミットは、驚きに満ちたものになるかもしれない。トランプがこの会合を、世界経済の80%以上を占める首脳を説得し、アメリカに利益をもたらす二国間協定に署名させる絶好の機会と捉えることは容易に想像できる。これら3つの戦いに打ち勝つために、EUは冷静さを保ち、継続する必要がある。ヨーロッパにとって、自助努力と結束(self-help and unity)は依然として今日の合言葉である。

●イスラエルにとっての教訓:トランプは容易に支援について再考する可能性がある(Lesson for Israel: Trump Could Easily Rethink Aid

スティーヴン・A・クック(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、外交評議会研究員)

トランプの中東地域へのアプローチが驚きだったと言うのは、その言葉の意味を軽視することになる。振り返ってみよう。彼はイランの核施設への空爆を命じ、イスラエルとハマスに停戦を強制し、おそらく元ジハード(聖戦)主義者であろうシリアのアハメド・アル・シャラー大統領と大統領執務室で会談した。アメリカは現在、ガザ地区における国家建設(nation-building)を支援し、ヒズボラの武装解除に取り組み、イスラエルとレバノンの正常な関係構築を推進し、サウジアラビアへの安全保障保証の拡大について広範な協議を行っている。
これは、トランプが約1年前に大統領に復帰した際に支持者や同調者が皆に告げた中東地域からの撤退とは異なる。MAGAやそのシンクタンクの頭の中には「アメリカ・ファースト」外交政策があるかもしれないが、ホワイトハウスはそのような原則を一切遵守していない。中東地域を含むアメリカの外交政策は、トランプ大統領の直感に基づいていることが判明した。トランプ大統領は、耳を傾ける者全員にそう語ってきた。もし書面で確認したいのであれば、最新の「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」は、その一貫性のなさ、そしてこの地域におけるトランプ大統領の行動と滑稽なほど矛盾しているという点で特筆すべきものだ。

それでは、トランプ大統領は2026年に何をするのだろうか? 私は決して賭けるようなことはしないが、イスラエルへの軍事援助に関しては、トランプが事態を一変させるだろうと断言する。現在の支援協定はトランプ大統領の任期末まで期限切れにならないが、この問題は既にトランプの頭の中にある。2025年4月、ホワイトハウスでイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談した際、トランプ大統領は「私たちはイスラエルに年間40億ドルを支援している。これは多額の援助である。とにかく、おめでたいことではある」と述べた。これは、イスラエルがアメリカ内でこの援助の全てを支出しているにもかかわらず、トランプ大統領がこれを大した金額だとは考えていないことを示唆していると言えるだろう。

アメリカとイスラエルの両首都においては、私怨延長をめぐって多くの疑問が投げかけられている。これまでのところ、ネタニヤフ首相顧問のロン・ダーマーは、20年間の最終合意を提案しており、その後に支援は停止されるとしている。アメリカの軍事支援を段階的に縮小するのは良い考えだが、トランプを説得するには、イスラエル側が何か大きなものを提示しなければならないだろう。サウジアラビアが約束したように最大1兆ドルの投資を約束するだけの資金はイスラエルにはないため、工夫を凝らさなければならないだろう。トランプが3度にわたり大統領選に出馬した際、常に中心的テーマとして掲げてきたのは、アメリカは世界の平和と安定のために多大な犠牲を払っているにもかかわらず、何の見返りも得ていないという主張だった。今度はイスラエルが代償を支払う番である。

※ゾンユアン・ゾー・リュー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会モウリス・Rグリーンバーグ記念中国研究研究員。最新作に『ソヴリン・ファンド:中国共産党は如何にして世界規模の野望に資金を提供しているか(Sovereign Funds: How the Communist Party of China Finances Its Global Ambitions)』(ハーヴァード大学出版局、2023年)がある。

C・ラジャ・モハン:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。OP・ジンダル・グローバル大学モトワニ・ジャデジャ記念アメリカ研究所卓越教授。シンガポール国立大学客員研究教授。インド安全保障諮問会議元委員。Xアカウント:@MohanCRaja

※ジェイズム・クラブトゥリー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。著書に『億万長者のインド支配:インドの新たな黄金時代に続く旅路(The Billionaire Raj: A Journey Through India’s New Gilded Age)』がある。Xアカウント:@jamescrabtree

※エリザベス・ブラウ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。大西洋評議会上級研究員。著書に『さらばグローバライゼーション(Goodbye Globalization)』がある。Blueskyアカウント:@elisabethbraw.bsky.social

※アガテ・デマライス:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ヨーロッパ外交評議会地経学上級政策研究員。著書に『逆効果:制裁がいかにしてアメリカの利益に反して世界を変えていくか(Backfire: How Sanctions Reshape the World Against U.S. Interests)』がある。Blueskyアカウント:@agathedemarais.bsky.socialXアカウント:@AgatheDemarais

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会中東・アフリカ研究担当エニ・エンリコ・マッテイ記念上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東地域における過去、現在、未来(The End of Ambition: America’s Past, Present, and Future in the Middle East)』がある。Xアカウント:@stevenacook

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2026年2月28日に始まったイスラエル・アメリカによるイラン攻撃とイランによるペルシア湾岸諸国にあるアメリカ軍基地を中心とする報復攻撃は既に10日ほどが経過している。アメリカのドナルド・トランプ大統領は攻撃の成果を強調しているが、長期化の見通しが出ており、世界全体に影響が出つつある。イラン革命防衛田によるホルムズ海峡封鎖によって石油価格は高騰し、株価は下落している。「有事のドル買い」によって、円安も進行している。石油価格の上昇と円安によって、日本経済に深刻な影響が出ることが予想される。このような状況が長引くほどに、その影響も尾を引くことになる。

 以下の論稿は1年前の、2025年6月の論稿である。この時期にもイスラエルとアメリカによるイランの核開発関連施設に対する約2週間にわたる攻撃が実施された。今回、2026年2月の大規模攻撃に比べて限定的な規模にとどまったが、この2つの攻撃は一連の出来事として捉えるべきだろう。それは、以下のスティーヴン・M・ウォルトの論稿を読むと明らかだが、戦争の構造は同じだからである。

 以下の論稿では、ウォルトの厳しい批判の矛先はトランプに向かう。トランプの「注目を浴びたい、人々からの称賛を浴びたい」という肥大化した自己顕示欲が戦争に向かわせたとウォルトは主張している。ここで、私が僭越ではあるが付け加えるならば、このようなトランプの肥大化した自己顕示欲をイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に利用されたということになるだろう。イスラエル、そしてネタニヤフの狙いは、イランの弱体化である。アメリカはイランが核兵器を持っていないという判断をしていたが、これでは緊急的な脅威ということにはならない。しかし、トランプの自己顕示欲を利用して、ネタニヤフはイラン攻撃を行わせることに成功した。しかし、昨年の場合には、今回の大規模攻撃に比べて、限定的な攻撃にとどまった。今回、トランプが大規模攻撃を決断するにあたっては、マルコ・ルビオ国務長官の影響も大きかったと言われている。そして、ネタニヤフは昨年、2025年を通じて、ルビオとの関係構築を実行してきた。ネタニヤフのこうした根回りは政治家としては非常に重要な能力である。それが今回の大規模攻撃につながった。

 しかし、アメリカとイスラエルの攻撃は世界に深刻なマイナスの影響を与えている。長期化していけばより深刻な状況になり、アメリカとイスラエルに対する反感は募るということになり、それは両国の国益を損なうということにつながる。こうして世界の構造は大きく変化していく。

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ドナルド・トランプのエゴのための戦争(The War for Trump’s Ego

-イスラエルとアメリカによるイラン攻撃は見た目以上に意味を持たなかった。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年6月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/26/trump-iran-war-attack-ego/

まず、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とアメリカのドナルド・トランプ大統領によるイランとの戦争(それは戦争であった)が何を目的としていたのかを明確にしておこう。アメリカをより安全に、より豊かに、あるいは世界中でより尊敬され、賞賛される国にするためではなかった。トランプがトゥルーソーシャルで何を主張しようと、彼の忠実な支持者たちが何を言おうと、中東地域をより安定させること、あるいはイスラエルを長期的に守ることさえ目的ではなかった。

そもそも、イランは核兵器を取得する直前の段階にはなかった。これは、ホワイトハウスが彼女に屈服させ、発言を撤回させる前に、国家情報長官トゥルシー・ギャバードが連邦議会で述べた通りだ。そして、たとえテヘランがいつか核兵器を手に入れたとしても、その指導者たちがアメリカやイスラエルに対してそれを使用できない。それは、国家の自滅行為(committing national suicide)となるからだ。イスラエルは数十発の核爆弾を保有し、アメリカは数千発の核爆弾を保有している。イランの指導者たちはこのことをよく知っている。

さらに、ケネス・ウォルツが最後の論文で主張したように、イランが独自の抑止力を持つことができれば、中東はより安定する可能性がある。安全保障は強化され(つまり代理勢力に頼る必要性が減少し)、イスラエルが望む時に望む者を攻撃する能力は抑制されるだろう。もし気づいていないなら、レバノン、シリア、イエメンへの空爆に加え、2年近くガザ地区を容赦なく爆撃し、ガザ地区とヨルダン川西岸でゆっくりとした民族浄化(ethnic cleansing)を行っているのはイランではない。これらの活動を終わらせることは、地域全体の安定化に大きく貢献するだろう。ウォルツの主張には疑問に思うところもあるが、少なくともイランの爆弾は世界を一変させる大惨事(a world-altering catastrophe)となるので、いかなる犠牲を払ってでも阻止しなければならないという主張と同じくらいの説得力を持っている。

いずれにせよ、もしこの戦争の目的がイランによる核兵器取得の阻止だったとしたら、逆の効果をもたらす可能性が高い。トランプ大統領とその代弁者たち(mouthpieces)は、アメリカの攻撃は完全に成功し、イランの核インフラを破壊したと主張し続けているが、初期の被害評価では、これらのバンカーバスターの投下はイランの努力を数カ月遅らせたに過ぎないと結論付けられている。フォードウ施設内の主要構造物は無傷だっただけでなく、イランは最も濃縮度の高いウランの一部または全部を分散・隠蔽したと見られており、さらに濃縮する能力を保持している。また、これらの攻撃は、長年アメリカとの交渉に反対し、自国で核兵器を取得することを主張してきたイランの強硬派の支持を強めたようにも見え、トランプ大統領は彼らの主張に一層の説得力を与えた。もし将来イランが核兵器を取得した場合、その責任の大部分はトランプ大統領とネタニヤフ首相に帰せられるだろう。

もしこれがイランによる自国での核兵器製造を阻止するための綿密に練られた努力でなかったとしたら、一体何のためだったのだろうか? イスラエルが戦争を始めた以上、まずイスラエルの指導者たち、特にネタニヤフ首相が何を得ようとしていたのかを考えなければならない。明白な目的の1つは、イスラエルがガザ地区、そして程度は低いもののヨルダン川西岸地区で日々犯している戦争犯罪と破壊行為から世界の目を逸らすことだった。もう1つの目的は、アメリカとイランの交渉を妨害することだった。イスラエルはアメリカがイランの核インフラの一部を保持することを容認するのではないかと懸念しており、ネタニヤフ首相はイランとアメリカを対立させ続けたいと考えていた。ワシントンとテヘランの真の和解を阻止することが、ネタニヤフ首相が包括的共同行動計画(JCPOA)に反対した理由の1つである。バラク・オバマ政権は、JCPOAがアメリカとイランの緊張緩和への第一歩となることを期待していた。最後に、イスラエルはイラン高官を組織的に殺害することで、イランの体制転換につながり、イスラエルの地域的優位が確立されることを期待していた。前回のコラムで述べたように、この目標は単なる空想に過ぎないと思うが、だからといって、ますます強硬路線を強めるイスラエル政府(Israel’s increasingly hard-line government)にとって魅力的な空想ではなかった訳ではない。この地域の緊張状態を維持することは、ネタニヤフ首相を権力の座に留め(そして投獄から守ることにも)役立つ。

しかし、これらの点だけでは、トランプがなぜこの合意に同意することにしたのか、あるいはなぜ戦争は大成功だったという主張を改めて強調しているのかを説明することはできない。そこには、いくつかの明白な要因が作用していた。

第一に、この戦争は、少なくともアメリカの中東政策に関しては、ネオコンがまだ死んでいないこと、そしてイスラエル・ロビーが依然としてこの分野で大きな影響力を持っていることを改めて認識させるものだ。親イスラエルのアメリカ系ユダヤ人と福音派キリスト教シオニスト(evangelical Christian Zionists)の両方を含むこのロビーは、アメリカとイスラエルの間に特別な関係を維持したいと考えている。実際には、彼らはアメリカがイスラエルの行動に関わらずイスラエルを支持し、アメリカの力を利用してイスラエルの安全保障を強化することを望んでいる。2018年にトランプにJCPOA(包括的共同行動計画)を放棄させるにあたり、このロビーが重要な役割を果たしたことを思い出す価値がある。この戦略的失策は、イランの遠心分離機の増強と濃縮ウラン備蓄の増加を許した。先週末、AIPACや民主政治体制防衛財団(the Foundation for Defense of Democracies)といった組織団体、ミリアム・アデルソンのような裕福な政治献金者、そしてマルコ・ルビオ国務長官やマイク・ハッカビー駐イスラエル大使といった政治家たちは、ついに長年の希望であるイラン攻撃を実現させた。トランプ大統領が裕福なアラブ諸国の指導者たち(彼らは近年イランとの関係を冷やそうとしてきた)や、新たな中東戦争に反対するリアリストたちの声に耳を傾けてくれることを期待していたアメリカ国民は、またしても失望させられた。トランプ大統領は依然としてアメリカ軍地上部隊の投入には消極的で、イスラエルが「一体何を(what the fuck)」をしているのか分かっていないと批判するほどだったが、イスラエルから参戦を求められた際に、自らが戦争に踏み切った。「変化すればするほど、それは同じものである(Plus ça change, plus c’est la même chose)(The more things change, the more they stay the same)」。

しかしながら、イスラエル・ロビーはアメリカの政策を支配しておらず、戦争の最終決定権は依然としてトランプに委ねられていた。ここで鍵となったのは、トランプが持つ、注目の的でありたいという飽くなき欲求だった。彼は世界中が自分の一挙手一投足に注目し、議論し、そして理想的には称賛することを望んでいる。真の外交政策の成果、つまりアメリカをより安全で、より豊かに、より影響力のある国にする具体的な成果には、それほど関心がない。なぜなら、外交政策における大きな飛躍には、真摯な努力が必要だからだ。トランプはむしろ、自分と仲間が私腹を肥やしている間、偉業を成し遂げているように見せかけたいだけなのだ。イスラエルとの最新の戦争に加わったことで、彼は再び見出しのトップに躍り出た。そして、他国を爆撃することは、多くのアメリカ人(そして一部の洗練された観察者でさえ)が「大統領らしい(presidential)」と考える行為の1つだ。これはリアリティ番組のような政権であり、トランプはかつて人気番組「アプレンティス」で成功した実業家を演じたのと同じように、大統領を演じている。

トランプが結果(results)よりも体裁(appearances)を重視する傾向は、今に始まったことではない。トランプは最初の任期を北朝鮮の金正恩委員長とのオンライン上での激しい舌戦でスタートさせ、その後、突然、書簡を交換し「恋に落ちた(fallen in love)」と発表し、直接会談することになった。結果として行われた首脳会談は、トランプが好むようなメディアの熱狂的な反応を巻き起こしたが、準備不足の交渉は成果を上げず、北朝鮮の核兵器備蓄はそれ以来着実に増加し続けている。

この問題は他の多くの問題にも顕著に表れている。貿易政策を見てみよう。トランプが関税を脅迫、課す、延期、修正、停止、あるいは復活させるたびに、メディアは大騒ぎする。しかし、彼が交渉を約束した数々の「素晴らしい(beautiful)」貿易協定は、一度も実現していない。トランプはウクライナ戦争を「24時間以内に(in 24 hours)」終わらせると宣言し、大統領執務室でウォロディミール・ゼレンスキー大統領を叱責する(あの痛ましく気まずい会談は「素晴らしいテレビ中継だった(great television)」と発言した)が、戦争終結が予想以上に困難であることが判明すると、関心を失ってしまう。彼はメキシコ湾を「アメリカ湾」と改称したことは意義深い成果だと考えている。最近、「国防長官」ではなく「戦争長官」という肩書きに戻すことについても考えていた。トランプにとって重要なのは、肩書きと世間の印象であり、高官の能力や彼らが監督する政策の有効性ではない。目に見える成果を上げることではない。目標は、トランプとその行動に皆の注目を向け続けることだ。

現時点でこの傾向に誰も驚かないはずだ。なぜならトランプのキャリアは、何百万人もの人々に自分がそうでない何かであると信じ込ませる驚異的な能力の上に成り立っていたからだ。彼は平凡なビジネスマンだったが、新しいカモに金を貸すよう巧みに説得し、テレビで成功した大物実業家を演じることに長けていた。彼の再選は、何百万人もの人々を騙して、自分は国を偉大にする先見の明のある人物だと信じ込ませる彼の能力を改めて証明した。その一方で、彼の政権は、一般のアメリカ人が頼りにし、アメリカの力と影響力の基盤となっている多くの制度を解体している。現代アメリカの政治は、トランプのような人物のために作られている。彼の高尚な野心と真実を軽視する姿勢は、事実や実績よりもイメージ、クリック数、視聴者数が重視される世界にぴったり合っているのだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権の外交政策はマルコ・ルビオ国務長官が牛耳っている。アメリカの外交政策立案実施の特徴は、国務省とホワイトハウスに二本立てである点だ。が育成策に関して、国務長官(Secretary of State)と国家安全保障問題担当大統領補佐官(National Security Advisor)が責任者として存在する。2025年5月、国家安全保障問題担当大統領補佐官だったマイケル・ウォルツが更迭されて(2025年5月)、国連大使に転身してからは、ルビオがこの2つの職位を兼務している。ルビオには大きな権限が集まることになった。そして、トランプ政権は介入主義的な色合いを強めた。昨年のイランの核開発関連施設攻撃(2025年6月)もその一環だ。それが今回のイラン攻撃にまで続いている。

 ドンロー主義はモンロー主義の変化形である。これはアメリカは西半球まで後退するということであり、世界(全半球)帝国ではなく、西半球帝国になるという宣言である。それだと困ってしまうのはヨーロッパとイスラエルである。これらの国々は置き去りにされてしまう。ユーラシア大陸から西半球に引っ越しをする訳にもいかない。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ドナルド・トランプ大統領を洗脳に近い形で説得して、イラン攻撃を行わせた。ネタニヤフは自身のスキャンダルを免れ、国民の不満を外に逸らし、中東地域を不安定化させることで相対的にイスラエルの立場を強化し、そして、アメリカを中東から撤退させないために、イラン攻撃を実施した。彼の賭けは成功した。アメリカは中東から撤退することが出来なくなった。

 トランプ革命、ポピュリズム革命は失敗した。ワシントンの変革(ワシントンの洗濯)のために人々がワシントンに送り込んだトランプはワシントン政治の論理にからめとられてしまった。既存の政治、エスタブリッシュメントの頑強さを思う時、嘆息しか出ない。しかし、それでも人々はまた立ち上がることだろう。

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「ドンロー主義」は意味をなさない(The ‘Donroe Doctrine’ Makes No Sense

-寛大に解釈したとしても矛盾が数多く存在する。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年1月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/08/donroe-doctrine-trump-venezuela-empire/

ドナルド・トランプ政権のヴェネズエラ政策(ニコラス・マドゥロ大統領の最近の拘束事件を含む)の戦略的正当性について、もしあなたが困惑しているなら、私はそれを非難することはできない。なぜなら、これまでに提示された論拠のほぼ全ては検討に値するものではないからだ。

第一に、これはアメリカを「麻薬テロ(narcoterrorism)」から守ることではない。ヴェネズエラはアメリカに流入する違法薬物(ましてやフェンタニル)の主要な供給源ではなかっただけでなく、ドナルド・トランプ米大統領が、麻薬密売で有罪判決を受けたホンジュラスの元大統領ファン・オルランド・エルナンデスに完全恩赦を与えるという決定を最近行ったが、このことはトランプがこの問題をどれほど真剣に考えているかを示している。さらに、米司法省は、トランプ政権が昨年繰り返し騒ぎ立てた危険な麻薬カルテル「カルテル・デ・ロス・ソレス(Cartel de los Soles)」が実際には存在しなかったことを認めた。言い換えれば、それは全くの虚構の政権プロパガンダであり、繰り返し警告されながら発見されなかったイラクの大量破壊兵器と同じくらい現実味を帯びていた。

マドゥロ政権の掌握もまた、アメリカの安全保障を強化するためではなかった。ヴェネズエラは非常に脆弱な国であり、マドゥロが容易に捕らえられたことからもそれが分かる。そして、ヴェネズエラはアメリカの強力なライヴァル国にとって、緊密な戦略的同盟国ではない。中国はヴェネズエラに軍事基地を建設しておらず、イランはアメリカを攻撃するためのミサイルをヴェネズエラに運び入れていなかった。ヴェネズエラには、アメリカの貿易ルートを阻害できるほどの強力な海軍力もなかった。カラカスがもたらす、アメリカが直面する深刻な脅威について、夜も眠れずに心配していた人間は誰もいなかったし、マドゥロ政権がブルックリンで投獄された今、私たちは誰一人として安眠できていない。

トランプ大統領は既に野党指導者マリア・コリーナ・マチャドの政権掌握を断念し、依然として紛れもなく独裁主義的な政権を率いるマドゥロ政権の副大統領と交渉する意向を示していることからも、民主政治体制の促進(promoting democracy)が目的だったのではないことが分かる。

危険な麻薬の撲滅でも、深刻な安全保障上の脅威への対処でも、民主政体回復への願望でもないのであれば、それは石油に違いない、そうではないか? トランプ大統領は、これが真の理由であり、アメリカ企業が石油を奪い取ってアメリカを偉大な国にするだろうと繰り返し主張している。これもまた間違いだ。トランプ大統領は好きなように信じればいい(そしてよく信じている)が、近いうちにあmエリカにとって大規模な石油ブームが待ち受けている訳ではない。火曜日、トランプ大統領はヴェネズエラが最大5000万バレルの石油をアメリカに引き渡すことに同意したと自慢したが、これはアメリカの原油生産量の4日分にも満たない量であることを考えると、このことを知らなければ、一見素晴らしい話に聞こえる。トランプは、売却益を管理し、ヴェネズエラ経済の支援に充てると述べた。もしそう信じるなら、トランプの略奪的本能(predatory instincts)に耳を傾けていないと言えるだろう。たとえその石油収入が最終的に得られたとしても、ヴェネズエラ経済の再建に必要な資金のほんの一部になるに過ぎない。

そうだ、ヴェネズエラは世界最大の確認埋蔵量を誇っているが、その重質原油は採掘が難しく、精製コストも高い。率直に言って、良識ある生産者なら開発を試みようとしないであろう、ヴェネズエラの石油開発に最後と言えるだろう。ヴェネズエラの老朽化したインフラの危機的状況と、昨今の原油価格の低迷を考えると、なおさらだ。そして、もし奇跡的に大量の原油が世界市場に流入すれば、価格はさらに下落し、アメリカのシェール掘削業者の多くは廃業に追い込まれるだろう。

そして、トランプや大手石油会社が何を考えているかに関わらず、世界は徐々に炭化水素から離脱し、他のエネルギー源へと目を向けつつあり、ヴェネズエラの埋蔵量の価値をさらに低下させていることを忘れてはならない。実際、気候変動の現実を考えると、最も賢明なのは、石油をできるだけ地中に残しておくことだ。つまり、中国が未来のグリーン産業を支配し、その結果、影響力を拡大することにレーザー光線のように集中している一方で、トランプと彼を取り巻く戦略の天才たちは、地球を脅かす、まるで前世紀的なエネルギー政策に邁進しているのだ。

従って、この作戦の戦略的根拠についてあなたが混乱するのも無理はない。私がここで見出す唯一の「戦略的」目的(“strategic” objective)は、西半球(the Western Hemisphere)におけるアメリカの覇権(hegemony)を再確立するという大まかな考えだ。トランプはあらゆるものに自分の名前を冠することで自らのテリトリーを示すことを好むため、この考えは現在「ドンロー・ドクトリン(Donroe Doctrine)」として宣伝されており、最近出された「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」にも明確に示唆されている。これは外交政策のリアリストなら支持できる合理的な考えのように聞こえるかもしれないが、綿密な検証にも耐えられない。

モンロー・ドクトリンの本来の目的は、アメリカが西半球におけるライヴァル大国の軍事介入を心配しなくて済むようにすることだった。ジェイムズ・モンロー大統領の構想が実現するまでにはほぼ1世紀が必要であったが、最終的にアメリカは他の全ての大国を西半球から追い出し、歴史家C・ヴァン・ウッドワードが「自由な(無料の)安全保障(free security)」と呼んだものの恩恵を享受することに成功した。

しかし、トランプらが言っているのはそういうことではない。なぜなら、現在、西半球で重要な軍事的役割を果たしている大国はおらず、また、そのような役割を担おうとしている大国も存在しないからだ。「国家安全保障戦略」が明らかにしたように、トランプ政権は、発生する可能性のあるあらゆる問題において、可能な限り多くの近隣諸国に、自らの指示に従わせようとしている。彼らは現在、マドゥロ大統領の後継者たちにこう言い放っている。「私たちの要求に応じなければ、封鎖を続け、もしかしたらもっとひどいことをするかもしれない」。そして、トランプ大統領と周辺の人々は地域の他の国々がこのメッセージを理解し、従順に行動してくれることを期待しているのだ。

特に、トランプ政権は近隣諸国の経済政策を統制する権利、そして中国などの国々にとって経済的に有益となる可能性のある政策に対して拒否権を行使する権利を主張している。「国家安全保障戦略」の中で書かれているように、「私たちは敵対的な外国の侵入や重要資産の所有から自由な半球を望む」とし、外部勢力が「戦略的に重要な資産を所有または支配」してはならず、アメリカは「非米州圏の競争相手が地域での影響力を拡大することを困難にしなければならない」と付け加えている。トランプ政権は、ラテンアメリカ諸国の一部が「低コストと規制障壁の低さ(low costs and fewer regulatory hurdles)」に「惹かれて他国と取引を行う(attracted to doing business)」傾向にあることを理解しているため、「各国にそのような支援を拒否させる(induce countries to reject such assistance)」と主張している。しかしトランプ政権は、一般的に対外援助に反対し、あらゆる二国間関係において利益の大部分を独占しようとする略奪的な政権であるため、欲しいものを手に入れるのに、寛大さ(generosity)ではなく脅し(threats)に頼らざるを得ない。

しかしながら、問題は、アメリカがこのように近隣諸国の経済に干渉し続けるならば、その地域の経済状況に対する責任を負わねばならなくなる点だ。アメリカ製品より安価な中国製品(電気自動車など一部では大幅に優れた製品)をラテンアメリカ諸国が購入しないようにと命じれば、現地の消費者は不満を抱くだろう。さらに、インフラ整備や新たな機会創出につながる中国やその他の外国投資を拒否するようこれらの政府に指示すれば、ワシントンは自らそれを提供せざるを得なくなる。さもなければ、ラテンアメリカの人々を貧困に陥らせていると非難されるだろう。これに、トランプ政権が自国の問題をラテンアメリカ地域からの移民・難民のせいにする傾向や、可能な限り多くを国外退去させるという強硬な姿勢を加えれば、安定した覇権ではなく、反米感情の高まりと地域の不安定化を招く処方箋となる。

より成功したアメリカの政策との対比は明らかである。例えば第二次世界大戦後、アメリカはヨーロッパやアジア(かつての敵国であるドイツや日本を含む)で極めて成功したパートナーシップを築いた。その背景には、これらの国々がソ連からの共通の脅威を認識していたこと、そしてアメリカが新たなパートナーが第二次世界大戦から可能な限り迅速に復興できるよう、善意をもって行動したことがある。しかし、トランプは「善意のある(benevolent)」という言葉の意味を知らない。彼の人生観は「自分のものは自分のもの、あなたのものは交渉可能(what’s mine is mine and what’s yours is negotiable)」である。

銃の威力で西半球を支配しようとしても、それは過去と同様に、将来も決してうまくいくことはないだろう。トランプ大統領の補佐官であるスティーヴン・ミラーは、「歴史の鉄則(iron laws of history)」の1つは、世界は力によって支配されているということだと考えている。しかし、彼が言及しなかった「鉄則」は、力だけが重要だと考える指導者は、必然的に多くの愚かなことをしてしまうというものである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアヵウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2026年2月28日、イスラエルとアメリカはイラン空爆を実施した。イラン南部では小学校が攻撃を受け、多くの小学生が犠牲になった。また、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師が攻撃を受け死亡した。イラン政府やイラン軍の高官の死亡者も出ているという情報がある。アメリカ軍は今回の作戦を「壮大な怒り作戦(Operation Epic Fury)」と命名した。ドナルド・トランプ大統領は声明の中で、イランが核兵器開発を放棄せず、イランの核兵器がアメリカにとっての「差し迫った脅威」になっていると述べ、攻撃を正当化した。イランは、イスラエルと湾岸諸国に存在するアメリカ軍基地に報復攻撃を実施した。

 イスラエルは情報機関であるモサドがイラン政府の中枢にスパイネットワークを形成し、正確な情報を把握している。ハメネイ師をはじめとする最高幹部たちの行動や位置に関する情報も正確につかんでいる。今回の攻撃はその情報を基にして、ピンポイントでの攻撃が可能となったと考えられる。また、衛星情報、ビッグデータ分析やドローン技術などは、拙著『』で取り上げた、イーロン・マスクが率いるスペースX社、ピーター・ティールが率いるパランティア社、パルマー・ラッキーが率いるアンドゥリル社の技術が活用されたことも考えられる。

 ドナルド・トランプ大統領は変容した。第一次政権と第二次政権では全く異なる。トランプのスローガンは「アメリカ・ファースト(America First)」だ。これは、「アメリカ国内の諸問題を解決すること、アメリカ国内を最優先すること」の意味だ。外国の諸問題については、介入しないという姿勢でもある。これは「アイソレイショニズム(Isolationism)」とも呼ばれる、アメリカの伝統的な外交に関する基本姿勢である。しかし、第二次政権発足後の2025年から、トランプ大統領は外国に積極的に介入する姿勢を示してきた。そして、2026年1月には、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束し、そして、2月末にイラン攻撃を実施した。ネオコン派が牛耳ったジョージ・W・ブッシュ政権と同様のことを行っている。これは、トランプを支持した有権者に対する裏切りである。

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そもそもが、昨年(2025年)にアメリカはイランの核開発関連施設に攻撃を実施しており、それ以来、イランは核開発が進んでおらず、核兵器も所有しておらず、アメリカにとっての「差し迫った脅威」となっていない。イランが核兵器を所有して、アメリカを攻撃するというのは虚構である。今回の攻撃はイスラエルが、イランの弱体化と中東情勢の不安定化を狙って、トランプ大統領と側近たちを教唆して実施したものと私は考えている。

 イラン革命防衛隊は、ホルムズ海峡封鎖を通告している。日本、インド、中国と言った国々は、イランをはじめとする中東の石油に依存している。今回の攻撃で原油価格の高騰は避けられない。石油が届かない、他の産油国からの調達をするということになれば、日本国内の物価上昇やエネルギー不足が発生することは容易に予想される。また、世界経済全体にも大きな影響が出る。

 トランプ大統領は、イランの体制転換を口にしたが、それは空爆だけでは実現不可能だ。イスラエルもアメリカも現在のところ、地上軍の派遣を表明していない。それであるならば、アメリカとイスラエルのイランの体制転換への本気度は高くないという判断ができる。緊張が高まったままのこの状態が長期化すれば、世界全体に悪影響をもたらすことになる。

 ドナルド・トランプ大統領はアメリカの有権者を裏切り、世界を不安定化させた。トランプ革命は裏切られたと結論づけるしかない。

(貼り付けはじめ)

トランプはイランとの戦争によって支持基盤を裏切っている(Trump Is Betraying His Base By Waging War on Iran
-有権者たちはブッシュ政権時代の介入(Bush-era interventions.)ではなく、アメリカ・ファースト(America First)を約束されていた。

エンマ・アシュフォード筆

2026年2月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/28/trump-is-betraying-his-base-by-waging-war-on-iran/

土曜日、平和評議会(Board of Peace)議長、FIFA平和賞受賞者、そしてアメリカの中東における無意味な戦争の熱烈な反対者であるドナルド・トランプ米大統領は、イランにおける体制転換(regime change)のための大規模な軍事作戦を開始した。結局のところ、彼は共和党内のイラン強硬派(Iran hawks)の優位性を打ち破ることができず、さらに重要なことに、不明確な目的のために軍事力を行使するという誘惑に抵抗できなかった。

トランプのこれまで見せてきた衝動制御の弱さ(poor impulse control)を考えれば、これは驚くべきことではないかもしれない。しかし、自ら選んだ新たな戦争を開始するという決断は、大統領支持基盤だけでなく、より広範なアメリカ国民への裏切り(a betrayal not just of the president’s base, but also of the American people more broadly)でもある。トランプ自身の上級顧問たちは、大統領選挙の選挙運動中、彼を平和派候補(the peace candidate)として描写していた。スティーヴン・ミラーはかつて、カマラ・ハリス陣営を「子供たちを自分たちが決して戦わない戦争に送り込むのが好きな好戦的なネオコン(warmongering neocons [who] love sending your kids to die for wars they would never fight themselves)」と評した。

トランプはかつて非難していた通りの行動に出てしまった。長年の支持者であるタッカー・カールソンは、今回の攻撃を「極めておぞましく、邪悪(absolutely disgusting and evil)」と描写した。トランプは短期的で成功する戦争(a short, successful war)を求めて賭けに出たが、今度は、避けると約束したまさにその事態、すなわち中東地域における新たな悲惨な泥沼(disastrous Middle East quagmire)にアメリカを陥れてしまうのかどうか、見守るしかない。イランで何が起こるかを断言するのは時期尚早だ。しかし、今回の攻撃は、彼の支持基盤やアメリカ国民が望んでいたことではないことは明らかだ。

なぜこのような事態に至ったのか? トランプの外交政策は、実は2024年大統領選における彼の政策の中でも比較的良好な争点の1つだった。ウクライナからガザ、中国に至るまで、ほぼ全ての主要な外交政策において、トランプはハリスに対し、一貫して僅差ながらも大きなリードを保っていた。実際、外交政策関係者の多くが懐疑的だったにもかかわらず、トランプの「アメリカ・ファースト(America First)」というスローガンは有権者の共感を呼んだように見える。ウクライナ問題、移民問題、そして世界のあらゆる問題の解決にアメリカが責任を持つべきかどうかといったメッセージは、共和党支持者だけでなく無党派層にも支持された。

しかし、「アメリカ・ファースト」が世界との関わりにおけるアメリカの利益の再主張というより、大統領の気まぐれ(the president’s whims)、威圧的な言動(penchant for bullying)、そして軍事冒険主義への傾倒(taste for military adventurism)といった側面が強調されるようになり、トランプの外交政策に対する支持率はここ数ヶ月で41%から37%へと低下した。彼の外交政策は共和党支持者の間で依然として人気が高いものの、支持者の間でも特定の問題に対する不支持は大きい。共和党支持者の約70%がグリーンランドの占領に反対し、イランの政権交代を支持すると答えたのはわずか17%だった。

トランプ政権の外交政策は、有権者がアメリカ・ファーストに真に求めているものではないと結論づけざるを得ない。

「アメリカ・ファースト」という言葉自体が、常に多少の問題を抱えてきた。トランプが最初の選挙運動でこの言葉を使ったことは、1930年代の第二次世界大戦へのアメリカの介入(intervention)をめぐる議論との関連性を指摘し、世論を刺激した。しかし、この言葉が有権者に訴えかけたのも全く同じ理由からだった。それは、アメリカの利益とニーズを他国のそれよりも二の次にする、冷戦後の過度に単純化されたリベラルなコンセンサスへの拒絶を象徴しているように見えたのだ。

有権者たちがアメリカの世界への関与をどう見ているかに関する長期世論調査は、このことを裏付けている。最近のAP通信とNORCによる世論調査では、世界の問題解決においてアメリカがより積極的な役割を果たすことを望むアメリカ人はわずか17%で、45%がアメリカの積極的関与の縮小を望んでいることが明らかになった。また、50年以上にわたり外交政策に関するアメリカ人の世論調査を行っているシカゴ国際問題評議会によると、世界におけるアメリカの積極的な役割に対する支持は、過去5年間で10ポイント近く低下している。

実のところ、ほとんどのアメリカ人は日常的に外交政策についてあまり心配しておらず、最優先事項として挙げられることも稀だ。しかし、こうした力学が顕著に表れた大統領は、トランプが初めてではない。ジョー・バイデン前大統領が初期の外交政策のスローガンの1つとして掲げた「中流階級のための外交政策(a foreign policy for the middle class)」は、外交と国内政治を結び付け、外交政策をより目に見える形で、アメリカ国民のニーズにより応えるものにすることを目指していたことを思い出す価値がある。

しかし、バイデン政権と同様、トランプ政権下での政策は、有権者に人気があると思われる、より穏健なアメリカ外交政策からますます遠ざかっている。当初は順調に進んでいた。トランプはガザ地区での停戦合意を交渉し、ウクライナ情勢に関する協議を開始し、ラテンアメリカ諸国に移民収容者の航空機受け入れを促し、NATO加盟諸国による自国の防衛費増額に欧州各国首脳の同意を得ることさえできた。

しかしながら、2025年半ばになると、事態は悪化し始めた。トランプはイランの核開発計画に対するイスラエルの空爆に協力し、ウラン備蓄を地下に埋設することに決定させたが、核拡散問題に対する長期的な解決策は提示しなかった。貿易と関税に関する彼の威嚇的な政策は、同盟国と敵対国双方との緊張を生み出し、ほとんど良い結果をもたらさなかった。トランプ政権発足以来、2000億ドルを超える関税コストの96%をアメリカの消費者と輸入業者が負担してきた。

そして、彼の西半球政策(Western Hemisphere policy)がある。これは当初、国境警備、移民、麻薬問題といった国内問題に重点を置いていたが、これらは依然として有権者の間で広く支持されている。しかし、この政策はマルコ・ルビオ国務長官をはじめとするタカ派の大統領の側近たちの影響を受けて、ヴェネズエラへの介入やキューバの政権交代に関する軽率な発言へと変貌を遂げた。

また、トランプの政策は、ノーベル賞委員会が彼に栄誉を与えなかったことに対する彼の度重なる激しい非難のように、政策的根拠と同じくらい個人的な憤り(personal resentment)によって動かされているように思われる場合が多い。トランプの外交政策の良い点は依然として健在ですが(例えば、ウクライナ問題における和平交渉の継続)、それらはますます、大多数のアメリカ人の生活や暮らしとはほとんど関係のない、しばしば的外れな政策によって覆い隠されつつある。

実際のところ、アメリカ・ファーストの根本的な問題は、それが明確な定義を持たなかったことだ。アメリカの利益とは何か? 誰が決めるのだろうか? トランプは、伝統的なアメリカ外交政策を破壊しつくす力を持つため、ここ数十年にわたり否定されてきた聖域(the sacred cows)の多くを、アメリカ国民の利益となる形で乗り越えてきた。しかし、まさにこの大いなる予測不可能性(unpredictability)、周囲の人々を威圧し見下す傾向(the inclination to bully and belittle those around him)、そして自らの利益とエゴをアメリカ国民の利益よりも優先させる傾向(to put his own interests and ego above those of the American people)こそが、長期的に見てより持続可能な外交政策の構築を主導する人物としては、彼を不適格な人物にしている。

今日実施されたイランへの攻撃は、この問題を象徴している。先週の世論調査では、イランに対する軍事行動を支持すると答えた米国民はわずか4分の1に過ぎなかった。しかし、トランプ大統領は国民に対し、この戦争の必要性を訴える時間さえ持たなかった。彼を縛っているのは、「彼自身の道徳(own morality)」だけだ。

しかしながら、歴史が示すように、この戦争はアメリカの海外軍事介入に対する国民の嫌悪感を強める(to strengthen popular distaste for American military engagement overseas)だけだろう。アメリカ国民は有能な同盟国、安全で豊かな生活、そして世界においてより控えめな役割を担いながらも、他国と生産的なパートナーとして関わり合うことを望んでいる。彼らは中東における終わりのない戦争や、ジョージ・W・ブッシュ政権の政策がゾンビのように蘇ることを望んでいない。地球上の他の全ての国を疎外する「いじめっ子」アメリカ(America the Bully)になることも望んでいない。

アメリカ国民が必要としているのは、アメリカ国民を第一に考える外交政策だ。現トランプ政権からはそれが得られていない。

※エンマ・アシュフォード:『フォーリン・ポリシー』コラムニスト。スティムソン・センターアメリカ大戦略再構想プログラム上級研究員、ジョージタウン大学講師。著書に『石油、国家、そして戦争(Oil, the State, and War)』がある。Xアカウント:@EmmaMAshford

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ドナルド・トランプ大統領がイランに戦争を仕掛けている中で注目すべき5つのポイント(Five takeaways as Trump wages war on Iran

コリン・メイン、フィリップ・ティモティジャ筆

2026年2月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/5760747-trump-iran-regime-change/

ワシントンとテヘランの間の数週間にわたる緊張の後、アメリカとイスラエルは土曜日の朝、イランに対する一連の攻撃を開始した。

イランは速やかに報復し、イスラエルに向けて無人機と弾道ミサイルを発射したほか、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦、バーレーンを含む湾岸諸国の標的を攻撃した。

「壮大な怒り(エピック・フューリー)作戦(Operation Epic Fury)」と名付けられたこの共同作戦は、土曜日の深夜過ぎに開始され、イランの政権の治安機関を破壊し、「差し迫った脅威(imminent threat)」をもたらす地域を重点的に攻撃することを目的としたとアメリカ中央軍(the U.S. Central CommandCentcom)は発表した。

トランプ大統領は数週間にわたり、イランへの攻撃の承認を検討しており、金曜日にはイラン当局との核協議の展開に不満を表明した。

イラン外相は土曜朝、イランの政権は「二人の司令官のうち一人を失った可能性がある」と述べたものの、最高指導者アリ・ハメネイ師を含む他の高官は「私の知る限り(as far as I know)」生き残ったと述べた。しかし、複数の報道機関が報じたところによると、アメリカとイスラエルの当局者たちはその後、ハメネイ師はイスラエルの攻撃で殺害されたと考えていると述べた。

(1)アメリカとイスラエルは主要政府施設と軍事資産を標的にする(US, Israel target key government buildings and military assets

アメリカとイスラエルはアメリカ東部時間午前1時15分、イスラム革命防衛隊(the Islamic Revolutionary Guard CorpsIRGC)の指揮統制施設、弾道ミサイルおよびドローン発射場、軍用飛行場、イランの防空システムを標的とした大規模作戦を開始した。

イスラエル空軍は土曜日、イスラエル国防軍(Israeli Defense ForcesIDF)史上最大規模の軍事作戦を実施し、200機以上の戦闘機がイラン西部および中部のミサイル基地とイラン革命防衛隊の防空システムを攻撃したと発表した。

イラン赤新月社がイラン国営テレビに対し、この共同作戦でイラン国内で200人以上が死亡、約750人が負傷したと伝えた。また、攻撃は31州のうち24州を攻撃したと付け加えた。

イスラエル空軍が標的とした施設の1つは、タブリーズの地対地ミサイル発射場だった。イスラエル国防軍は、イランのミサイル発射装置や防空システムを含む500以上の標的を攻撃したと発表した。

ヴァンターが提供した衛星画像によると、イランのカナラク海軍基地で炎上する艦船から濃い黒煙が上がっているのが確認できた。ドローンは散開され、コナラクのドローン滑走路は封鎖された。

アメリカ軍は、この地域において空、陸、海の軍事資産から弾薬を発射したとアメリカ中央軍は発表した。また、タスクフォース「スコーピオン・ストライク」(Task Force Scorpion Strike)が低コストの片方向攻撃ドローンを初めて実戦で使用したことも付け加えた。

アメリカ中央軍は、イラン南部の女子校への攻撃に関する報告を調査中であると述べた。イラン政府当局によると、この攻撃で80人以上の生徒が死亡したということだ。

アメリカ中央軍報道官のティム・ホーキンス大尉は声明で、「民間人の保護は最優先事項であり、意図しない被害のリスクを最小限に抑えるために、引き続きあらゆる予防措置を講じていく」と述べた。

アメリカ中央軍によると、アメリカ軍は数百件に及ぶイランのドローン攻撃とミサイル攻撃を無事に防御し、アメリカ兵の死傷者や関連する負傷の報告はない。

アメリカ中央軍は、アメリカ軍施設への被害は「最小限であり、作戦に影響は出ていない」と付け加えた。

「壮大な怒り作戦は、この世代で最大規模のアメリカ軍の火力の地域的集中を伴う」とアメリカ中央軍は声明で述べた。

(2)イランが中東各地のアメリカ軍基地に反撃し報復の脅威を煽る(Iran strikes back at US bases across Middle East, spurring threats of retaliation

イランは土曜日、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェートのアメリカ軍基地への無人機とミサイルによる攻撃に加え、イスラエルへの集中攻撃を実施し、湾岸諸国を即座に傍観者の立場から引き離した。

サウジアラビアは、イランによる攻撃を撃退する各国を支援すると発表した。

「サウジアラビア外務省は、関係各国との完全な連帯と確固たる支持を表明し、彼らが行うあらゆる措置を支援するためにあらゆる能力を動員すると述べた」とサウジアラビア外務省は声明の中で述べた。

アラブ首長国連邦(UAE)は声明で、自国の安全保障は湾岸諸国と「不可分(indivisible)」であり、「いかなる国家の主権侵害も、地域全体の安全保障と安定に対する直接的な脅威となる」と強調した。

バーレーンとカタールも報復する権利を留保した。カタールはまた、「地域の安全保障を維持し、国民の利益を守り、より広範な対立への転落を防ぐ方法で危機を封じ込める努力」を求めた。

イラン外務省は、イスラム諸国と非同盟諸国(Muslim and non-aligned states)に対し、国連安全保障理事会の緊急会合の開催を要求するよう呼びかけた。

Xへの投稿で、イラン外務省は「この地域における敵対勢力の全ての基地、施設、資産は正当な軍事目標とみなされる。イランは、侵略が完全にかつ明確に停止されるまで、この固有の権利を断固として行使する」と述べた。

(3)トランプ大統領は政権交代を視野に入れている;パーレヴィは「最終行動」を予告する(Trump eyes regime change; Pahlavi previews ‘final action’

トランプ大統領は、土曜日夜に公開した動画で、イラン軍に対し武器を放棄するよう促し、1979年のイスラム革命以来、国家を支配してきた強硬政権を打倒するようイラン国民に呼びかけた。

「あらゆる場所に爆弾が落とされるだろう。私たちが全てを終わらせたら、あなたたちの政府を掌握して欲しい。それはあなたたちの手に渡る。おそらく、これは数世代にわたってあなたたちにとって唯一のチャンスとなるだろう。長年、あなたたちはアメリカの支援を求めてきたが、一度も得られなかった」とトランプ大統領は述べた。

トランプは続けて次のように述べた。「今、あなたたちに望むものを与えてくれる大統領が存在する。あなたたちがどう反応するか見てみたい。アメリカは圧倒的な力と圧倒的な力であなたたちを支援している。今こそ行動を起こす時だ。この機会を逃してはならない」。

イラン最後の国王の息子で、亡命中のレザー・パーレヴィは、先月イラン国内で行われた大規模抗議行動の主導した人物だが、イラン国民に対し、今は静かに過ごし、オンラインやラジオで自身のメッセージに従うよう呼びかけた。

「警戒を怠らず、準備を整えておいてほしい。そうすれば、私が皆さんに正確に告知する適切な時期に、最後の行動のために街頭に復帰できる」とパーレヴィはXへの投稿で述べた。

パーレヴィは、「私たちは最終的な勝利に非常に近づいている。イランを奪還し、再建するために、できるだけ早く皆さんのそばにいられるようにしたい」と付け加えた。

ホワイトハウス報道官カロリーヌ・リーヴィットは、トランプ大統領がマール・ア・ラーゴで国家安全保障ティームと共に状況を監視し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談したと述べた。事情に詳しい関係者が本誌に語ったところによると、大統領の隣には統合参謀本部議長のダン・ケイン将軍も同席していたということだ。

リーヴィット報道官によると、攻撃が行われる前に、マルコ・ルビオ国務長官はいわゆる「ギャング・オブ・エイト(Gang of Eight)」の8人全員に電話をかけ、作戦について通知したということだ。

攻撃に先立ち、ルビオ国務長官は「ギャング・オブ・エイト(the Gang of Eight)」の8人全員に電話をかけ、連邦議会への通知を行った。そして、8人のうち7人に連絡を取り、状況を説明することができた。

(4)連邦議会で戦争権限をめぐる議論が白熱(War powers debate heats up in Congress

イランで最初の爆撃が行われてから数時間後、トランプ大統領の戦争権限(Trump’s war powers)を検証しようとする連邦議員たちは、イランでの作戦をできるだけ早く終結させるための採決を求めていた。

ロウ・カンナ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は「ドナルド・トランプ大統領はイランとの戦争を開始した。連邦議会は月曜日に招集され、トーマス・マシー連邦下院議員(ケンタッキー州選出、共和党)と私が提出した、この戦争を阻止するための戦争権限決議案に投票しなければならない」とXに投稿した動画で述べ、アメリカ国民は海外の紛争に巻き込まれることを望んでいないと主張した。

先週、ウォーレン・デイヴィッドソン連邦下院議員(オハイオ州選出、共和党)は、トランプ大統領のイランに対する軍事行動能力を制限することを目的としたカンナ下院議員提出の決議案を支持した2人目の共和党議員となった。

デイヴィッドソン議員は土曜日に、「憲法の範囲内に収まるほど小さな政府が必要だ」と土曜日にXに投稿した。デイヴィッドソン議員は「問題を解決し、国民に奉仕できるほど効果的な政府が必要だ。そうでなければ、新しい憲法が必要だ」と述べた。

アンディ・キム連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)は、ティム・ケイン連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)の戦争権限決議案への投票を連邦上院議員たちに呼びかけた。「トランプ大統領は再び暴力の連鎖を引き起こし、それはすでにエスカレートし、制御不能に陥る恐れがある。これは容認できない」とキム議員はXへの投稿で述べた。

しかしながら、共和党議員の大半は、長年のアメリカの敵対国に対するトランプ大統領の全面攻撃をすぐに支持したため、戦争権限決議案の採決は困難なものとなった。特に連邦下院民主党議員の一部が法案に反対していることを考えるとなおさらだ。

対イランの強硬タカ派であるリンジー・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は「私はこの作戦が成功し、長年苦しんでいるイランの人々の解放は目前だと確信している」とXに投稿した。

(5)ホルムズ海峡の船舶航行が停止。原油価格は変動の恐れ(Shipping halts through Strait of Hormuz; oil prices set for swings

イランは世界のエネルギー供給にとって重要な航路であるホルムズ海峡を閉鎖する措置を取っていないものの、大手海運会社はホルムズ海峡海域を避けていると報じられている。

ロイター通信は、複数のタンカー船主、石油メジャー、商社がホルムズ海峡を通る原油、燃料、液化天然ガス(LNG)の輸送を停止したと報じた。

ある企業の幹部は「当社の船舶は数日間、この海域にとどまる予定だ」とメディアに語った。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、シェルがチャーターした超大型タンカーが、アラビア湾を通過できず、現在ペルシャ湾で停泊していると報じた。ウォールストリート・ジャーナル紙によると、数十隻のタンカーが現在のところ、ペルシャ湾を避けて航行しているということだ。

これらの混乱が、月曜日まで休場となっている世界の石油市場にどのような影響を与えるかはまだ分からない。

AP通信は、トレーダーたちが中東における戦争の長期化と拡大のリスクを見極める中、週初めに価格が変動すると予測した。

イランは1日あたり約160万バレルの原油を輸出しており、その大部分は中国向けである。もしこの供給が途絶えれば、中国国内の顧客は世界市場で原油の調達先を探すことになり、価格が上昇する可能性がある。

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アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃でハメネイ師が死亡:知っておくべき5つのこと(US-Israeli strikes on Iran result in Khamenei’s death: Five things to know

ライアン・マンシーニ筆

2026年2月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/5760920-trump-iran-regime-change/

イランは、36年間最高指導者(supreme leader )を務めたアリ・ハメネイ師を失った。土曜日にアメリカとイスラエルが共同で攻撃し、ハメネイ師が殺害された。また、イラン全土の軍事司令部やミサイル基地も攻撃された。

トランプ大統領は、アメリカ東部標準時午前2時30分にトゥルー・ソーシャルに投稿した動画で、この攻撃を発表した。イラン赤新月社が国営メディアに伝えたところによると、「壮大な怒り作戦」と名付けられたこの作戦により、少なくとも200人のイラン人が死亡し、約750人が負傷したということだ。

ハメネイ師の死去は、当初イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が報じた。ネタニヤフ首相は、イスラエルの攻撃により最高指導者がテヘランの自宅敷地内で死亡したと主張した。その後、トランプ大統領はトゥルー・ソーシャルへの投稿でハメネイ師の死を認めた。

これからハメネイ師の死去を受けて知っておくべき5つのことを挙げる。

(1)トランプ大統領がイラン国民に体制転換を訴える(Trump pushes Iranians to embrace regime change

トランプ大統領は、アメリカによるイラン攻撃の発表の中で、イラン国民に対し、政府は「あなたたちに委ねられる(will be yours to take.)」と述べた。さらに、「今後何世代にもわたって、あなたたちの唯一のチャンスになるかもしれない」と付け加えた。ハメネイ師が継承した政権は、イラン革命後の1979年以来、権力の座にあった。

トランプ大統領は、先月イランが反政府デモを弾圧した際にも、体制転換を訴えていた。『ポリティコ』誌とのインタヴューで、トランプはハメネイ師を「病人(sick man)」と呼んだ。

土曜日の攻撃の前後に声を上げた批評家たちは、「体制転換(regime change)」という概念を激しく非難し、2000年代初頭のアフガニスタン戦争とイラク戦争で使用された用語と比較した。アメリカが支援する新たな政府は権力の空白を埋めることができず、過激派グループが政権を掌握し、これらの国々やその他の国々の国民にとってより厳しい状況を作り出す余地を残している。

(2)ハメネイ師の死後、イランの将来をめぐる疑問は残る(Questions linger about Iran’s future after Khamenei’s death

ハメネイ師の死去が確認されてから数時間経った現在も、後継候補者は名乗りを上げておらず、イランの第三の最高指導者が誰になるのかは依然として不透明だ。ハメネイ師はイランの二代目の最高指導者であり、1989年に死去したルーホッラー・ホメイニ師の後を継いだ。ホメイニ師はその10年前、イラン・イスラム共和国が政権を握った際に権力を握った。

ハメネイ師の死去前には後継者は決まっていなかったが、ロイター通信は2015年に後継者が選ばれたものの、氏名は非公開と報じている。

イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は土曜日の攻撃を生き延びたと報じられている。イスラエルは、イスラエルによる攻撃でイランの国防関係の政府高官7人が死亡したと報告している。

(3)アメリカが弱体化したイランを攻撃した(US hit a weakened Iran

アメリカは昨年6月、イスラエルとの共同作戦でイランの核施設3カ所を攻撃し、イランを弱体化させた。トランプ大統領は、これらの施設は「壊滅した(obliterated)」と主張し、情報機関による評価で1カ所はほぼ破壊されたが、他の2カ所は未だ破壊されていないと報告されたことを受けて自己弁明した。

土曜日の攻撃に先立ち、イラン軍とその代理ネットワークへの壊滅的な攻撃が行われていた。トランプ大統領は最初の任期中の2020年、イランの著名なカセム・ソレイマニ将軍を殺害した無人機攻撃の功績を主張した。

中東におけるイランの代理勢力は、様々な壊滅的な打撃に直面している。ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララは、2024年9月にイスラエルの空爆によりベイルートで殺害された。イスラエルは2024年10月にハマスの兄弟であり指導者でもあるヤヒヤ・シンワルを、2025年5月にはモハメド・シンワルを殺害した。数カ月後には、フーシ派主導の政権を率いていたイエメンのアハメド・アル・ラハウィ首相もイスラエルの空爆で殺害された。

(4)トランプ大統領が軍事攻撃は継続すると表明している(Trump says military strikes will continue

トランプ大統領はハメネイ師の死亡を発表し、アメリカのイラン攻撃が継続することを示唆したが、攻撃の期間については明確な方針を示した。

トランプは「しかしながら、重度でかつ集中的な爆撃は、今週中、あるいは中東全域、ひいては世界全体の平和という我々の目標を達成するために必要な限り、中断することなく継続される!」と書いている。

大統領の発言は、1月のヴェネズエラへのアメリカ軍攻撃の結果とは異なる。アメリカ軍がニコラス・マドゥロ大統領を拘束した後、両国がヴェネズエラの石油生産と両国間の新たな関係構築の可能性について協議を開始したため、アメリカ軍の攻撃は停止された。

(5)民主党はこれに反発し、戦争権限に関する採決を求めている。(Democrats are pushing back, demanding vote on war powers

民主党は、イランへの攻撃を実行したトランプ政権を広く非難しており、連邦議会の承認なしに行われ、憲法に違反していると主張する議員も多く存在する。

トーマス・マシー連邦下院議員(ケンタッキー州選出、共和党)とロウ・カンナ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、連邦議会の承認なしにイランに対する軍事力を禁じる決議案を連邦下院で採決させると述べた。民主党議員の大半と、共和党のウォーレン・デイヴィッドソン連邦下院議員(オハイオ州選出)は、この決議案を支持する意向を示している。

一方、マイク・ローラー連邦下院議員(ニューヨーク州選出、共和党)とジョシュ・ゴットハイマー連邦下院議員(ニュージャージー州選出、民主党)は、戦争権限決議案には賛成しないと述べた。両議員は先週、この決議案は「現実の、そして進化する脅威に対応するために必要な柔軟性を制限し、危険な局面で弱さを示唆する恐れがある」と述べた。

ローラー連邦下院議員は土曜日、この決議案の成立を強く非難し、民主党は戦争権限法(War Powers ActWPA)を理解していないと非難した。また、バラク・オバマ元大統領とジョー・バイデン前大統領が連邦議会の承認なしに各国への攻撃を行ったことを例に挙げ、戦争開始を連邦議会が承認したのは1941年の第二次世界大戦の時が最後だと述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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